波乱含みの初防衛戦、いなして倒した王者谷口将隆「これも良い経験」体重超過の挑戦者にもエール

<ボクシング:WBO世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦>◇22日◇東京・後楽園ホール
WBO世界ミニマム級王者谷口将隆(28=ワタナベ)が波乱含みの初防衛戦をTKO勝ちで締めた。前日計量で2・5キロ近く体重超過した同級5位石沢開(25=M.T)との初防衛戦に臨み、11回2分29秒、TKO撃破。ギリギリで当日計量をパスした石沢の強打を回避し、自由自在に動き回って手数多く攻め続けた。11回に左ストレートでぐらつかせ、レフェリーストップに追い込んだ。
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負ければ空位となる変則的な防衛戦で、谷口は躍動した。石沢と離れたかと思えば、その直後には至近距離へ。サウスポースタイルから左ボディー、左ストレート、右アッパーと多彩なパンチを繰り出し、4回以降は完全に主導権を握った。粘り強かった挑戦者に向け「体調不良の中、試合に出てくれた石沢選手に感謝したい。まじめで一本気な性格だと思う。これからの彼をみていただけたら。失敗から何かがある」と熱いエールを送った。
試合後、リング上で石沢から「すみません」と謝罪を受けた。体重超過はプロ失格ではあるが、両陣営の合意通り、当日午後5時半の計量もリミット(47・6キロ)より3キロ増で収めた。その誠意を認め「謝らなくていいよ」とノーサイドの気持ちを伝えた。19年9月以来2年7カ月ぶりの再戦で返り討ち。「(石沢は)進化していた。序盤はやりにくいなと。余裕はなかった。彼も処分を受けるし思い詰めたはず。いろいろあったが、(計量後)ご飯を食べたら頑張ればいいと思えた」と笑顔をみせた。
入場時のポンチョ風ガウンの背中に「MATADOR(マタドール=闘牛士)」と刻んだ。世界王座獲得後、愛称に決めた。「攻める相手をいなして倒したい」と込めた思いを身にまとい、KO率81%だった強打の石沢を攻略した。トランクスには母校の龍谷大をはじめ、計4社の新スポンサーがついた。背負うものが増え「最後の最後までムキにならずクールに戦えた」と自ら及第点を出した。
セコンドにいた「盟友」WBA世界ライトフライ級スーパー王者京口とのダブル世界戦を希望し、海外防衛戦への思いも膨らんだ。挑戦者の体重超過という波乱含みの初防衛戦をTKO撃破で締め「これも良い経験。すべて良い経験になれば」と納得するようにうなずいた。【藤中栄二】
◆谷口将隆(たにぐち・まさたか)1994年(平6)1月19日、兵庫・神戸市生まれ。中学1年でボクシングを始め、神戸一高、龍谷大でボクシング部に所属。アマ戦績55勝(16KO)19敗。16年4月にプロデビューし、17年4月の日本ミニマム級王座決定戦、同11月の東洋太平洋同級王座決定戦で、いずれも判定負け。18年11月にタイでWBOアジアパシフィック同級王座獲得。19年2月にWBO世界同級王者サルダールに判定負け。20年12月に日本同級王座獲得。昨年12月に当時の王者ウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)に11回TKO勝ちし、新王者に。身長162センチの左ボクサーファイター。家族は母、姉3人、弟2人。
- 谷口(手前)は石沢に11回TKO勝ちしガッツポーズ(撮影・足立雅史)
- 健闘をたたえ抱き合う谷口(右)と石沢(撮影・足立雅史)
- 1回、石沢(右)にパンチを放つ谷口(撮影・横山健太)