前WBC王者矢吹正道の娘・佐藤夢月がU12女子ボクシング優勝「緊張したけど楽勝」と笑顔

ボクシングの前WBC世界ライトフライ級王者矢吹(本名・佐藤)正道(30=緑)の長女、佐藤夢月(ゆづき、中日本地区、12=緑)がベルトを獲得した。未来の世界王者への登竜門、ジュニアチャンピオンズリーグ全国大会が4日、後楽園ホールで行われ、夢月はU-12女子35キロ級で優勝した。
東日本地区の田端妃翼(本多)と対戦。開始直後から手数で圧倒した夢月は1回にスタンディングダウンを奪い、2回も圧力をかけて連打を浴びせたところでレフェリーが試合を止め、TKO勝ちした。夢月は「緊張したけど楽勝」とはにかんだ。
10日に三重・四日市市での再起戦を控える矢吹は会場に行けなかったが、セコンドとして弟の東洋太平洋スーパーフェザー級王者の力石政法を送り込み、送られた動画で試合を確認した。「かなり硬かった。倒そうと意識しすぎていたのか、技術的にはまだまだ」と辛口も「とりあえずホッとしました。肩の荷が下りた感じで自分の試合に集中できる」と父の顔で喜んだ。
夢月は小学1年から空手を始め、3年時にボクシングに“転向”した。「最初は走るとかつらくて練習がイヤだった」が、「考えながらやって、うまくいくことがだんだん楽しくなった」という。身長147センチのオーソドックスで父譲りの左ボディーとカウンターが武器。セコンドとして見守った力石も「かなり緊張していたけどセンスは高い。将来が楽しみ。五輪を目指してほしい」と将来性に太鼓判を押す。
来春、中学に進学するが部活は考えず、ボクシングに打ち込むという。当初は父と同じ世界王者が夢だったが、昨年の東京五輪で金メダルを獲得した入江聖奈(日体大)の活躍に刺激を受け、「金メダルがほしい」と五輪も目指していく道となった。ロサンゼルス五輪が開催される6年後は18歳。世界王者の娘が、日の丸を掲げる光景を見られるかもしれない。
“モンスター”井上尚弥ら世界王者を輩出した大会で鮮やかな勝利を飾り、自分のベルトを手にした。「ほんのちょっと将来の夢の世界チャンピオンに近づいた」という夢月の夢も自信も膨らんだ。【実藤健一】
◆ボクシング・ジュニアチャンピオンズリーグ全国大会 日本プロボクシング協会(JPBA)、日本ボクシングコミッション(JBC)主催で将来プロを目指す若年層を対象にしたボクシング大会。18年に第1回が行われ、今回は新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催。男女各U-18、U-15、U-12、U-9の年齢別に体重制限で階級を分けた各カテゴリーで実施。東日本、中日本、西日本、西部日本の各地区代表が争う。前身の全国U-15ジュニアボクシング大会からは井上尚弥、拓真兄弟、田中恒成、中谷潤人の世界王者を輩出している。
- U-12女子35キロ級を制した前世界王者矢吹の長女、佐藤夢月はガッツポーズ(力石政法選手提供)