元年俸120円Jリーガー安彦考真、格闘家プロ3戦目はダウン奪われるも引き分け「巻き返せた」

元年俸120円Jリーガーで20年末から格闘家に転向した安彦考真(44=Executive Fight 武士道)が23日未明、スイス・チューリヒで開催された格闘技大会「ノックアウト・ファイトナイト8」でプロ3戦目を戦い、パトリック・カバシ(25)と引き分けとなった。
試合は2分3ラウンドで行われた。1ラウンド目は相手の攻撃を受ける形となりダウンを奪われたが、2ラウンド目から反撃を開始。得意の膝でじわじわとダメージを与えると、3ラウンドで右フックを命中させ、ダウンを奪い返した。最後は疲れで足が止まった約20歳年下の相手を攻め込む場面もあったが、KOとはならず試合終了。判定で引き分けとなった。
試合の模様は、指導を受ける元K-1王者の小比類巻貴之氏(44)のYouTubeチャンネルで生配信された。安彦は引き分けという結果に悔しさをにじませつつも「だんだん持ちかえしてきて、みなさんの声援を背負ってやりきれた。膝が入り始めて、練習通りのことができたかなと思います」と語った。
セコンドについた小比類巻氏は、試合が3分3ラウンドから急きょ2分3ラウンドへ変更されたことを明かしつつ「1ラウンド目でダウンをとられましたが、取り返してくれた。20歳若い選手にスタミナで押して、根性勝ちした。最後は拍手ももらって、内容の濃いいい試合でした」と振り返った。
相手のパンチとローキックの間合いに入らないようにしていたといい、1ラウンド目は距離をとりながらの試合となった。安彦は「スイスの地でしっかり巻き返せたかなと。本当にいい経験をさせて頂きました。課題の残った試合かなとも思いますし、また小比類巻会長、仲間と一緒に次のステージに向かっていきたい」と話した。
今大会は小比類巻氏とも親交のあるスイス出身の元キックボクサー、アンディ・フグ氏が練習していたジムが主催しているもの。安彦は21年4月にアマチュア格闘技イベント「EXECUTIVE FIGHT 武士道」で格闘家デビューし、ここまで4戦4勝(1勝は不戦勝)。プロとしては22年2月16日にRISEでデビューで飾ると、元西武投手の相内誠(28)にKO勝利。同6月24日のRISE159にも出場し、49歳でプロデビューを迎えたYO UEDA(TARGET SHIBUYA)にもKO勝利し、プロ2連勝としていた。
格闘家転向時から目標に掲げるのは、年末の格闘技イベント「RIZIN」への出場。関係者によると国内大会からのオファーもあったというが、“挑戦モンスター”を自称する安彦はあえて海外での戦いを選択。完全アウェーでの激闘も経験し、挑戦者としての誇りを示した。
◆安彦考真(あびこ・たかまさ)1978年(昭53)2月1日、神奈川県生まれ。高校3年時に単身ブラジルへ渡り、19歳で地元クラブとプロ契約を結んだが開幕直前のけがもあり、帰国。03年に引退するも17年夏に39歳で再びプロ入りを志し、18年3月に練習生を経てJ2水戸と40歳でプロ契約。出場機会を得られず19年にJ3YS横浜に移籍。同年開幕戦の鳥取戦に41歳1カ月9日で途中出場し、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新。20年限りで現役を引退し、格闘家転向を表明。同年12月には初の著書「おっさんJリーガーが年俸120円でも最高に幸福なわけ」(小学館)を出版。オンラインサロン「Team ABIKO」も開設。21年4月にアマチュア格闘技イベント「EXECUTIVE FIGHT 武士道」で格闘家デビュー。22年8月に同大会75キロ以下級の王者に輝いた。プロとしては22年2月16日にRISEでデビュー。同6月24日のRISE159にも出場し、プロ2連勝中。175センチ、74キロ。
- スイス・チューリヒで開催された格闘技大会「ノックアウト・ファイトナイト8」で対戦したパトリック・カバシ(左)と記念撮影する安彦考真