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照ノ富士が新横綱V王手「日に日に疲れ」兄弟子証言も、思い秘め千秋楽へ

照ノ富士(手前)に投げ飛ばされた貴景勝とぶつかる式守伊之助(撮影・鈴木正人)

<大相撲秋場所>◇14日目◇25日◇両国国技館

新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、2場所ぶり5度目の優勝に王手をかけた。結びで大関貴景勝を下して12勝目。2敗で単独首位をキープし、優勝の可能性は3敗を守った妙義龍との2人に絞られた。千秋楽は妙義龍が負けるか、照ノ富士が大関正代に勝てば、優勝が決まる。新横綱場所での優勝は17年春場所の稀勢の里に続き、1場所15日制となった1949年(昭24)以降では5人目の快挙となる。

   ◇   ◇   ◇

巻き込まれた行司が吹っ飛ぶほどの、強烈な上手投げだった。照ノ富士は、貴景勝の突き押しを真っ向から受け止めた。出足の勢いを殺すと流れの中で相手のもろ差しとなったが、つかまえれば主導権は照ノ富士。左から豪快な上手投げでたたきつけた。土俵を転がった貴景勝と行司の式守伊之助が激突、土俵下に吹っ飛んでしまう勢いだった。

混戦模様の終盤戦は、新横綱が再び土俵を締めている。全勝ターンから一転、後半戦だけで2敗を喫したものの、千秋楽を単独首位で迎えることができた。1差で追走する妙義龍が負けるか、自身が勝てば優勝が決定する。

初めて経験する横綱としての15日間を残り1日で乗り切る。これまでと違うのは、毎日行う約1分50秒の横綱土俵入り。現役時代、腰痛に苦しんだ鶴竜親方(元横綱)も「(せり上がりで)攻めすぎると体に負担がかかる。その点、照ノ富士は(膝に不安がありながら)力強い」とたたえた。古傷である両膝に厳重なテーピングを施し、迫力ある不知火型を披露して観客を沸かせた。

取組後は3日連続でリモート取材に応じず、思いを内に秘めて千秋楽に備える。「(朝の)稽古場でもだいぶ疲れがたまってきているなと。日に日に(疲れが)表れている」と話すのは、兄弟子で伊勢ケ浜部屋付きの安治川親方(元関脇安美錦)。逆境に立ち向かいながら、新横綱場所を最高の形で飾る。【佐藤礼征】

▽幕内後半戦の高田川審判長(元関脇安芸乃島) 照ノ富士は当たりをどんと受け止めて、最後は上手を取って投げた。落ち着いていた。集中力が違う。妙義龍は最高の相撲。ただ正代は最低の相撲。どっちが大関か分からない。

貴景勝(左)のまわしをつかみ攻める照ノ富士(撮影・河田真司)
新横綱優勝

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照ノ富士11勝単独首位 14日目にもV 史上6人目の新横綱優勝の快挙へ

御嶽海を寄り切りで破り、勝ち名乗りを受ける照ノ富士(撮影・河田真司)

<大相撲秋場所>◇13日目◇24日◇東京・両国国技館

照ノ富士(29=伊勢ケ浜)の新横綱優勝が、14日目にも決まる。関脇御嶽海を下して2敗をキープ。14日目に3敗の阿武咲、妙義龍、遠藤の平幕3人が敗れ、自身が勝てば2場所ぶり5度目の優勝が決定する。さらに、この日で初の年間最多勝が確定。史上最速タイ記録で決めた。優勝争いは4敗までが圏内となり、2敗の照ノ富士、3敗の平幕3人、4敗で平幕の隠岐の海と5人に絞られた。

   ◇   ◇   ◇

重圧のかかる結びで、照ノ富士が単独トップの座を死守した。3敗の妙義龍と阿武咲が、連続で大関を撃破して迎えた一番。負ければ3敗の平幕3人に並ばれる中で、2度の優勝経験を持つ難敵を退けた。

先手は御嶽海に奪われた。頭から当たられて上体が起きたが、左下手を命綱に何とか持ち直す。半身の体勢だったが、下手で振りながらじっくりと胸を合わせて、上手を取って体を寄せた。得意とは逆の左四つでも、出足さえ止めれば照ノ富士のペースだった。

一年を通じて見ると、モンゴル出身の先輩横綱2人に並ぶ強さを示している。13日目終了時で年間勝利数を60に乗せた。2位で43勝の正代と御嶽海が、仮に来場所まで全勝しても上回らないため、初の年間最多勝が確定。秋場所13日目で決めるのは、1場所15日制が定着した1949年(昭24)夏場所以降では2005年朝青龍、10年白鵬に並ぶ史上最速タイ。安定感は頭一つ抜けている。

取組後は2敗目を喫した前日12日目の明生戦と同様、リモート取材を拒んだ。前日は敗れた直後の土俵下で古傷の左膝を気にする動きを見せるなど、試練が続く。場所前には、横綱昇進にあたって後援者に感謝を伝えるとともに「膝は万全ではないけど、精いっぱい頑張ります」と伝えた。この日の勝ち名乗り後、受け取った懸賞は34本。手取りで102万円で、今場所では初めて100万円を超えた。企業を含めて周囲は、古傷や病気とも戦いながら、序二段陥落から横綱まで上り詰めた不屈の精神を今場所も期待している。

新横綱優勝を果たせば、17年春場所の稀勢の里に続く。年6場所制となった1958年以降では史上6人目となる快挙は、手の届くところまで近づいている。【佐藤礼征】

▽幕内後半戦の藤島審判長(元大関武双山) 照ノ富士は本来は右を差したかったんでしょうけど左の下手を取った。慌てることなく上手を取るまで我慢した。精神的にも修羅場をくぐり抜けてきた。精神的に強い。(優勝争いは)横綱は(後続に)1差あるが、3敗勢にもチャンスはある。

御嶽海(手前)を寄り切りで破る照ノ富士(撮影・河田真司)
懸賞金の束を手に引き揚げる照ノ富士(撮影・山崎安昭)

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貴景勝が史上初のかど番脱出劇「可能性がある以上は」気がつけばV争い圏内

宝富士(左)を攻める貴景勝(撮影・鈴木正人)

<大相撲秋場所>◇12日目◇23日◇東京・両国国技館

大関貴景勝(25=常盤山)が、史上初となる3連敗発進からのかど番脱出を果たした。西前頭5枚目宝富士を押し出して、勝ち越しを決める8勝目。現行のかど番制度となった1969年名古屋場所以降、初日から3連敗を喫しながらかど番を脱出するのは初めて。1敗で単独先頭を走っていた横綱照ノ富士が敗れたため、優勝争いは混戦模様。他力ながら4敗の貴景勝にもチャンスがある。

    ◇    ◇    ◇

序盤は大関陥落も心配された貴景勝が、今では最も勢いづいているかもしれない。3連敗発進したのが一転、7日目から破竹の6連勝。宝富士の左差しを封じながらいなしで崩し、3発で土俵外に持っていった。「実力がなければ負け越す。結果が全て。できることは集中することしかない」。自らを奮い立たせるように、言葉に力を込めた。

日を追うごとに、本来の馬力が戻ってきた。先場所は2日目に首を痛めて途中休場。序盤戦は調整不足も感じさせる相撲内容が続いた中で、現役時代は同じ押し相撲だった師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)は信じていた。「貴景勝は気持ちが強い。1勝すれば波に乗れるはず」。4日目に初日を出すと、相撲勘を取り戻すように調子を上げてきた。

母校・埼玉栄高相撲部の山田道紀監督は今場所、毎日のように貴景勝に電話をかけ励ましてきたという。「今場所は勝ち越しだけでいい。首も万全にして、また来場所から横綱を目指してほしい」と山田監督。恩師の言葉にも後押しされながら、協会の看板と呼ばれる地位を守った。

優勝争いは混戦模様で、他力ながら2差の貴景勝にも優勝の芽が出てきた。「4敗しているので優勝とか、本当はそう考える立場ではない」と現状を認識した上で、はっきりと意欲を口にした。「可能性がある以上は一生懸命目指さないといけない」。連敗発進から優勝すれば史上初。試練を乗り越えた25歳は、千秋楽まで全力を尽くす。【佐藤礼征】

宝富士(左)を攻める貴景勝(撮影・鈴木正人)
宝富士を押し出しで破った貴景勝(撮影・鈴木正人)

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「筋トレの話」する宇良の“裏返し” 照ノ富士「余裕あった」Vへ連敗回避

照ノ富士(右)の上手投げをまわしをつかんで必死にこらえる宇良(撮影・小沢裕)

<大相撲秋場所>◇10日目◇21日◇東京・両国国技館

西前頭6枚目宇良(29=木瀬)が、自身初の結びの一番で魅せた。横綱照ノ富士(29=伊勢ケ浜)と1分32秒に及ぶ大熱戦。上手投げに屈したが、業師らしく肩すかしや足取り、最後はブリッジ姿勢で粘るなど会場を沸かせた。負けはしたが、新横綱に今場所最も長く相撲を取らせて苦しめた。ケガなどで一時は序二段まで番付を落とした苦労人2人には、会場から盛大な拍手が送られた。

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照ノ富士は、宇良との大熱戦を感慨深く振り返った。宇良の粘りを振り切って、単独首位を維持する9勝目。驚異的な身体能力で上手投げを堪えられたが「(自分は)まだ余裕あったので」と、冷静に相手の反撃を対処した。

宇良とは陥落から復活までの過程で、通ずる部分がある。「よく頑張ってきたなと。同じケガして、序二段まで落ちて」。お互いに両膝の負傷に苦しんで、幕内から序二段まで番付を落とした経験があるだけに、存在は気になっていた。同じ筋トレ好きと知って、より興味が湧いたという。「一生懸命筋トレしていると(話を)聞いていた。たまに会ったときに筋トレの話をしていた。結びで2人で取れたのは、良かったんじゃないですか」。この日が初顔合わせ。“業師”と呼ばれる相手だけに「いろいろやってくるだろうと思って落ち着いて見ていった」と警戒心を高めて臨んだ。

前日9日目に横綱初黒星を喫したが、連敗は回避した。1差で追う2敗勢は2人、2差の3敗勢は6人。17年春場所の稀勢の里に続く新横綱優勝に向けて、油断のできない終盤5日間に入る。【佐藤礼征】

宇良(手前)と間合いをとる照ノ富士(撮影・河田真司)
照ノ富士(右)の上手投げをまわしをつかんで必死にこらえる宇良(撮影・小沢裕)
照ノ富士(右)が上手投げを打つも宇良はまわしをつかみ食い下がったが万事休す。驚異の粘り腰に審判を務めた谷川親方もびっくり(撮影・小沢裕)
照ノ富士(右)が上手投げを打つも宇良はまわしをつかみ食い下がったが万事休す。驚異の粘り腰に審判を務めた谷川親方もびっくり(撮影・小沢裕)

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照ノ富士新横綱Vへ史上6人目ストレート給金 “戦友”&観客拍手が力に

玉鷲を寄り切りで破り勝ち名乗りを受ける照ノ富士(撮影・鈴木正人)

<大相撲秋場所>◇8日目◇19日◇東京・両国国技館

照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、冷や汗をかきながらも2場所連続のストレート給金を決めた。東前頭4枚目玉鷲に土俵際まで押し込まれたが、踏ん張って逆襲した。

新横綱の中日勝ち越しは1場所15日制が定着した1949年(昭34)夏場所以降では、17年春場所の稀勢の里に続いて6人目の快挙。横綱昇進を決めながら、賜杯を逃した先場所の悔しさを胸に新横綱Vを目指す。平幕の妙義龍が1差で追走する。

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館内に悲鳴が上がると、土俵際の新横綱も顔をしかめながら踏ん張った。立ち合いは玉鷲の奇襲。左にずれながらのおっつけ、右のど輪で崩され、照ノ富士の上体が伸びかけた。「一生懸命だった」と余裕はなかったが、差した左でかいなを返して圧力を逃がす。すかさずもろ差しから体を入れ替えて、反撃に転じた。中日勝ち越し。今場所初めてヒヤリとさせられたが、新横綱では史上6人目の快挙だった。

1週間前の日曜日に“戦友”が駆け付けてくれた。照ノ富士の付け人を約5年間務めた元幕下駿馬(しゅんば)の中板秀二さん(39)が“横綱デビュー”となる初日を、正面マス席の1列目から観戦。堂々とした土俵入りに中板さんも「うれしいとか感動とか、いろんな感情がいっぺんにきた」と胸いっぱいになった。

今場所に懸ける思いを察している。横綱昇進を手中に収めた先場所の千秋楽後、照ノ富士に連絡を取ったが、喜んでいる様子はなかったからだ。「『優勝を逃して悔しいです』と。今場所はテレビで見ていても“顔つき”が違うんです」。長く苦楽をともにしてきたからこそ、表情一つで感じるものがある。

新横綱として2度目の日曜日を、土つかずで迎えることができた。コロナ禍で上限は5000人に制限されるが、集まった観客の拍手が力になる。「土俵の上でいい相撲を見せられたらいいなと思っている」と照ノ富士。3度目の日曜日は、賜杯を抱えた姿を見せるつもりだ。【佐藤礼征】

玉鷲(左)を攻める照ノ富士(撮影・鈴木正人)

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照ノ富士7戦全勝、土俵入りは心機一転「永谷園」の化粧まわしで土俵入り

照ノ富士は琴ノ若(左)を寄り切りで破る(撮影・小沢裕)

<大相撲秋場所>◇7日目◇18日◇東京・両国国技館

照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、史上6人目の新横綱ストレート給金に王手をかけた。西前頭3枚目琴ノ若を下して初日から7連勝を飾り、単独首位をキープ。今場所最長となる22秒4と時間をかけて、焦らず寄り切った。新横綱が中日勝ち越しなら1場所15日制が定着した1949年(昭24)夏場所以降では、17年春場所の稀勢の里らに続く快進撃。1敗も平幕の妙義龍だけとなり、独走態勢も目前となっている。

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上位経験の少ない相手にも、照ノ富士は確実に白星をつかみ取る。もろ差しを許しても、強引には引っ張り込まない。琴ノ若の巻き替えに乗じて両上手を浅い位置で取ると、万全の形になった。相手は初めての横綱戦だが「いいもの持っている。体格も重さもあるし」と油断はない。今場所最長の22秒4をかけて、じわりじわりと体を寄せた。

誰が照ノ富士に勝てるのか。先場所は千秋楽の横綱白鵬戦まで14連勝。土俵下で取組を見守った幕内後半戦の藤島審判長(元大関武双山)も「琴ノ若も右を差させないようにしたけど、慌ててくれないのでどうにもならない」と、冷静ぶりに舌を巻いた。

中盤戦に差し掛かり、土俵入りでは心機一転した。5日目から3日連続で、お茶漬けなどで知られる「永谷園」から贈られた三つぞろえの化粧まわしを使用。富士山、鷹、茄子がデザインされ、日本を象徴する縁起物の後押しを受ける。特に富士山は日本画家の大家、横山大観の「霊峰富士」が描かれた。同作品を所蔵する「足立美術館」(島根県安来市)の担当者は「同じ山陰地方で関係性もあるし、応援したいです」とエール。照ノ富士は18歳でモンゴルから来日し、鳥取城北高に相撲留学して基礎を固めた。山陰地方の縁も力に、快進撃を続ける。

史上6人目となる新横綱場所での中日勝ち越しで、後半戦に弾みをつけたい。1差で追うのは平幕の妙義龍だけ。「1日一番集中してやっていきたい」。後続を振り返らず、賜杯に突き進む。【佐藤礼征】

横綱土俵入りに臨む照ノ富士(撮影・小沢裕)
勝ち名乗りを受ける照ノ富士。後方左は弓取り式を務める聡ノ富士(撮影・小沢裕)

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貴景勝ついに初日も「勝ち負けで何事も判断しちゃダメ」一喜一憂せずに

豊昇龍(手前)を突き落とす貴景勝(撮影・河野匠)

<大相撲秋場所>4日目◇15日◇東京・両国国技館

初日から3連敗を喫していたかど番の大関貴景勝(25=常盤山)が、必死の相撲で初日を出した。新鋭の東前頭筆頭豊昇龍を突き落として1勝3敗。首の状態が懸念される中、本来の圧力ではなかったが、相手の攻めをしのいで白星をもぎ取った。成績的には苦しい滑り出しとなったが、2度目の大関陥落阻止に向け、ひとまずトンネルを脱した。新横綱の照ノ富士ら4人が初日から4連勝とした。

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後手に回る展開だったが、貴景勝の執念が上回った。のど輪で豊昇龍に押し込まれて、一時はまわしも許した。小手投げで何とか振りほどいて距離が生まれると、突っ込んできた相手を左にかわして突き落とし。快勝ではなかったが、悪い流れはひとまず断ち切った。

前日の逸ノ城戦では、立ち合いでもろ手突きを選択。先場所を途中休場する原因となった首のケガが心配されたが、この日は頭から何度も当たった。「相手がどうより、自分がどういう気持ちでやっていくかしか、考えていない」。持ち味の突き押し相撲を信じて土俵に上がった。

不振の中でもがき続ける姿勢に、周囲も復調を期待する。「必死さだよね、必死さ」と勝因を挙げたのは八角理事長(元横綱北勝海)。「当たりが弱いし重さはない」と状態の悪さを指摘するが「でも、本場所でこういう相撲を取っていけば重さは出てくる。我慢しながらということが大事。光が見えてきたんじゃないか」と話した。

師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)によると、場所前の約2週間で番数は1日15~16番。「いつもより多くはこなせなかったが、量より質で頑張ってきた。1回勝てば乗っていけるはず」。師匠も願うように話す。19年秋場所以来となる陥落阻止に向け、きっかけとなりそうな白星だが「勝ち負けで何事も判断しちゃダメ」と貴景勝。勝ち負けに一喜一憂しない信条を胸に、窮地を乗り切ってみせる。【佐藤礼征】

豊昇龍を下した貴景勝は土俵を下りて疲れたような表情を見せる(撮影・河野匠)

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かど番貴景勝、3連敗で大関陥落危機「一生懸命やって負けたら弱いだけ」

逸ノ城(左)に上手投げで敗れる貴景勝(撮影・鈴木正人)

<大相撲秋場所>3日目◇14日◇東京・両国国技館

かど番の大関貴景勝(25=常盤山)が陥落の危機に直面した。小結逸ノ城に上手投げで敗れて、初日から3連敗を喫した。先場所2日目に首を痛めて途中休場し、負け越せば2度目の大関陥落となる今場所。患部の状態について場所前から万全を強調しているが、本来の突き押し相撲の威力を発揮できず、苦しい展開が続く。新横綱の照ノ富士は危なげなく初日から3連勝とした。

   ◇   ◇   ◇

貴景勝の試練が続いている。自身4度目のかど番となる場所だが、3日目を終えても初日が出ない。「一生懸命やって負けたら弱いだけ。もちろん勝てるように日々やってるけど、そう簡単にいかない」。不振の現状を受け止めた。

立ち合いの激しいぶちかましが持ち味だが、この日はもろ手突きを選択した。取組後に「まわしを取られないように」と狙いを説明したが、圧力は不十分。押し込まれて1度距離を取り、不得意の四つ身で前に出たが、土俵際で逸ノ城の上手投げに屈した。

土俵下で取組を見守った幕内後半戦の伊勢ケ浜審判長(元横綱旭富士)は「立ち合いの圧力がない。前さばきも遅い。自分の相撲を取り切れていない」と、状態の悪さを指摘した。出足の鋭さを欠く相撲内容。貴景勝も「(圧力が)負けてるということは、そうですね」と淡々と認めた。先場所2日目に立ち合いの衝撃で首を負傷し、3日目から休場。「頸椎(けいつい)椎間板ヘルニアによる神経根症」で、相撲を取る稽古を再開したのは約2カ月後の先月下旬だったという。

今場所直前には「もう治ってるし、ケガはもう関係ない。首のケガなんて別に今に始まったことじゃない」と、万全で臨んでいることを強調していたが、現状は厳しい。19年秋場所以来2度目の大関陥落は避けたいところ。「今日もしっかり準備してきたが、明日も準備するだけ」。まず初日を出して、復調の兆しをつかみたい。【佐藤礼征】

逸ノ城に上手投げで敗れた貴景勝(撮影・鈴木正人)
逸ノ城に上手投げで敗れた貴景勝(撮影・鈴木正人)

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照ノ富士が盤石連勝発進、師匠の地元青森・五所川原市長エール「頑張って」

豊昇龍を寄り倒しで下し、懸賞金の束を手に土俵から引き揚げる照ノ富士(撮影・河田真司)

<大相撲秋場所>◇2日目◇13日◇東京・両国国技館

新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、盤石の相撲で連勝発進を決めた。東前頭筆頭の豊昇龍の変化に落ち着いて対応し、豪快に寄り倒した。三役以上の連勝発進は照ノ富士だけ。17年春場所の稀勢の里に続く史上5人目の新横綱優勝に向けて、上々の滑り出しとなった。両大関は正代が初白星を挙げたものの、かど番の貴景勝は連敗発進を喫した。

   ◇   ◇   ◇

死角が見当たらない。相手の工夫した攻めにも、照ノ富士に慌てる様子はなかった。立ち合いで豊昇龍が左にずれて右を差し込んできたが、照ノ富士は肩越しの左上手から振りまわす。体勢を崩した相手に対して素早く体を寄せて、あおむけにさせた。

圧倒的な相撲内容に照ノ富士も「落ち着いて取れていると思います」とうなずいた。土俵下で取組を見守った幕内後半戦の高田川審判長(元関脇安芸乃島)は「向こう(豊昇龍)が下手の体勢だったが、照ノ富士は無理な体勢にならず一呼吸置いて圧力をかけた」と評価する。新横綱場所2日目。早くも貫禄が備わっている。

自分を信じ、地道に努力してきたからこそ、今がある。伊勢ケ浜部屋では秋場所前の8月は毎年、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)の地元である青森・五所川原市で合宿を行う。コロナ禍で最後に開催されたのは2年前の19年。照ノ富士は復活の途上で幕下だった。その時の激励会で同市の部屋後援会長を務める佐々木孝昌市長(67)に「必ず大関に戻りますから」と強気に伝えた。以来、わずか2年で幕下から大関を超えて最高位。佐々木市長からは「まさか横綱まで上がるとは。伊勢ケ浜部屋の力士が活躍すれば(師匠の地元である)五所川原も盛り上がる。頑張ってほしい」とエールを送られた。

その注目の新横綱場所は、三役以上では照ノ富士だけが連勝発進となった。周囲の期待を一身に背負い、残り13日間を突っ走る。【佐藤礼征】

豊昇龍(手前)を寄り倒しで破る照ノ富士(撮影・鈴木正人)

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照ノ富士“横綱相撲”で白星発進、土俵入りも堂々 1人横綱の責任果たした

逸ノ城(右)を寄り切りで破る照ノ富士(撮影・鈴木正人)

<大相撲秋場所>◇初日◇12日◇東京・両国国技館

新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、初陣を飾った。結びで小結逸ノ城を難なく寄り切って白星発進。取組前には初めて観客を前に不知火型の土俵入りを披露し、大きな失敗もなく堂々と務めるなど幸先のいい初日となった。

部屋に新型コロナウイルス感染者が発生して白鵬が休場し、一人横綱として務める今場所。貴景勝、正代の両大関が黒星発進となった中で、最高位として土俵を締めた。

   ◇   ◇   ◇

文字通りの“横綱相撲”だった。相四つの逸ノ城に対して、得意の左前みつを強烈に引きつけると、一気に体を寄せた。大関陣が立て続けに敗れた中で迎えた結びの一番となったが、波乱の予感は一切なかった。

取組同様に注目された土俵入りも、堂々と務めた。不安を抱える両膝に、厳重にテーピングを施して登場。明治神宮で初披露した先月の奉納土俵入りと比べて6秒長い、1分48秒をかけて師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)直伝の不知火型を披露した。独特の緊張感に「思ったより雰囲気が慣れなかった」と首をひねったが、大きなミスはなし。17年春場所の稀勢の里以来4年ぶりに誕生した新横綱の晴れ姿に、会場からも大きな拍手が巻き起こった。

“日本人”としても初めての一番だった。場所前の8月4日に日本国籍の取得が官報で告示され、引退後に親方として協会に残る資格を得た。国籍変更を考え始めたのは、序二段まで番付が転がり落ちていたころだったという。「(前回大関だった)一番いいときはそういうのも考えたこともなかった。若かったもので。その中でどん底に落ちて、落ちたときでも支えてくれた方々と相談した」。決断を後押ししたのは、復活を支えた周囲への感謝。「新たに今、この自分の相撲人生の中で学んできたことをまた次に伝えていけるチャンス」と将来を描いてきた。

心機一転の場所となるが、重圧の大きさもこれまでと違う。新横綱の一人横綱は93年春場所の曙、03年春場所の朝青龍以来だが、2人はともに10勝止まり。過去の名横綱も苦しんだ中で、照ノ富士は「できることをやって頑張るしかない」。歴史的な復活、昇進劇を見せてきた男が、新たなドラマをつくる。【佐藤礼征】

◆不知火型 せり上がりの際に、両手を左右に開く。積極的な攻撃を示すものといわれ、背に回った結び目の輪は2つ。第11代横綱不知火光右衛門の豪快かつ優美な型を踏襲したといわれるが、現在の土俵入りは第22代横綱太刀山の型を基にしている。

横綱土俵入りに臨む照ノ富士(中央)。行司は式守伊之助、左は太刀持ちの宝富士、右は露払いの照強(撮影・小沢裕)

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新横綱照ノ富士に一人横綱の重圧 優勝額贈呈式でも終始厳しい表情

贈呈された優勝額の前に立つ照ノ富士(代表撮影)

大相撲秋場所(12日初日、東京・両国国技館)を新横綱で迎える照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、17年春場所の稀勢の里に続く新横綱Vに向けて、緊張感を漂わせた。

初日を翌日に控えた11日、両国国技館で恒例の土俵祭りが行われた。新型コロナウイルスの感染対策で力士は参加しなかったが、照ノ富士はその後に行われた夏場所の優勝額贈呈式に出席。記念撮影でも笑顔は一切なく、厳しい表情を崩さなかった。

一人横綱として重圧がのし掛かる。先場所を全勝で制した横綱白鵬は、宮城野部屋に新型コロナウイルス感染者が出たため休場。報道陣の電話取材に応じた、協会ナンバー2の事業部長を務める尾車親方(元大関琴風)は「気負ったところがなければ、今場所もやってくれるんじゃないか」。1場所15日制が定着した49年夏場所以降5人目となる新横綱Vへ、期待は大きい。

照ノ富士は優勝額贈呈式を終えて、協会の公式ユーチューブチャンネルを通じ「皆さんにいい相撲を見せられるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。横綱として頑張っていきます」と意気込んだ。今場所の目玉として、責任を果たす15日間が始まる。【佐藤礼征】

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照ノ富士「勝って恩返ししたい」史上5人目の新横綱Vへ白鵬に特別な思い

照ノ富士(左)に張り手を浴びせる白鵬(2021年7月18日撮影)

日本相撲協会は30日、秋場所(9月12日初日、東京・両国国技館)の新番付を発表し、新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)は西横綱に就いた。1場所15日制が定着した49年夏場所以降5人目、17年春場所の稀勢の里に続く新横綱優勝を目指す。東西の横綱に並び立つ白鵬には、全勝決戦となった先場所千秋楽で敗戦。同じモンゴル出身の先輩横綱に「勝って恩返ししたい」と特別な思いを示した。

   ◇   ◇   ◇

一時は大関から序二段まで番付を落とした「照ノ富士」のしこ名が、最も大きな字となった。新たな番付表を確認し、オンラインでの会見に出席。「綱を巻いて実感はあったので(番付表を見て)そんなに驚くことはなかった。土俵の上でも土俵の下でも、みんなに尊敬される横綱になりたい」。24日に明治神宮で行われた奉納土俵入りなどを経て、最高位の自覚が増してきた。

史上5人目の新横綱Vが期待される中で、白鵬の存在は避けては通れない。横綱昇進を射止めた先場所は、千秋楽の全勝対決に敗れて3場所連続5度目の優勝を逃した。白鵬の父ムンフバトさんにはモンゴルで柔道を指導してもらうなど、縁もある。その白鵬と今場所から東西の横綱を形成。「(白鵬は)角界に入る道を開いてくれた先輩。勝って恩返ししたいと思っている」と誓った。

今月4日付の官報で日本国籍の取得が告示された。大きな節目となる場所まで、2週間を切った。「自分のできることを精いっぱい準備して土俵の上に出していければいい。横綱として初めての場所なので、その姿を見てもらいたい」と気持ちを高めた。【佐藤礼征】

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照ノ富士「仕方ないこと」初の横綱土俵入りは“無観客”3000人動画視聴

奉納土俵入りを披露する横綱照ノ富士。太刀持ち宝富士、露払い照強(代表撮影)

大相撲で新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が24日、東京・明治神宮で横綱推挙式に臨み、不知火型の土俵入りを披露した。

古傷の両膝にテーピングを施して1分42秒、力強い四股やせり上がりを見せた。同部屋の幕内力士である照強を露払い、宝富士を太刀持ちに従え、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)や、兄弟子の元日馬富士も使用した三つぞろえの化粧まわしを着用。緊張感も漂う初披露だったが、照ノ富士は「まだ自分の目で見てないので何とも言えないけど、ちゃんとできたかなと思う」とうなずいた。土俵入りの出来栄えに、師匠は笑みを浮かべ「67点くらい」と“辛口”採点も「体が大きいし、横綱土俵入りが似合いますね」と上機嫌だった。

動画配信を通じて約3000人のファンが照ノ富士の晴れ舞台を見守った。平時なら観客が集まるが、新型コロナウイルスの感染対策としてこの日は観覧が不可。それでも「これは仕方ないこと。逆にこうやって土俵入りできたことを感謝して、ちょっとずつみんなに元気を与えていきたい」。第73代横綱として、大きな1歩を踏み出した。【佐藤礼征】

奉納土俵入りで不知火型を披露する横綱照ノ富士。太刀持ち宝富士(代表撮影)
奉納土俵入りに向かう横綱照ノ富士。太刀持ち宝富士、露払い照強(代表撮影)
八角理事長(左)から横綱推挙状を受け取る照ノ富士(代表撮影)
照ノ富士の奉納土俵入りを見守った師匠の伊勢ケ浜親方(中央)(代表撮影)

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照ノ富士、膝痛めたからこそ磨いた“前に出る相撲”絶対的な攻めに

大相撲名古屋場所13日目 正代に力強く寄る照ノ富士(2021年7月16日)

<第73代横綱誕生~不屈の照ノ富士~>

大関照ノ富士の横綱昇進が決まった。26場所ぶりに誕生する横綱は、いかなる復活劇を遂げたのか。連載「第73代横綱誕生~不屈の照ノ富士~」で答えに迫る。

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かつての強引な取り口は、劇的に改善されている。幕内に復帰した昨年7月場所以降、左前みつを素早く取って強烈に引きつける相撲が、照ノ富士の躍進を支えている。元横綱千代の富士や、兄弟子の元横綱日馬富士らを参考にしているという形。大関昇進の伝達式で照ノ富士は「自分は1つのことしかできない。右四つで前に出てやっていくという形を、もっともっと強くしていきたいなと思います」と話していたが、言葉通り絶対的な攻めとなりつつある。

鳥取城北高で照ノ富士を指導した同校相撲部コーチのレンツェンドルジ・ガントゥクス氏(36)は「昔は引っ張り込む相撲が多かったけど、今は前に出ることだけに集中しているように見える」と変化を口にする。師匠の伊勢ケ浜親方は「抱え込んで相撲を取ったり、強引な投げを打ったり、反り返ったり、そういうのはなくなってきている。やっぱり前に出なければ相撲は取れないですよね。膝が悪い力士は」と説明。古傷の両膝の状態が悪いからこそ、前傾姿勢を維持して膝に負担がかからない取り口を意識してきた。

現行のかど番制度となった69年名古屋場所以降、大関陥落を経験して横綱昇進を果たしたのは三重ノ海だけ。その元横綱三重ノ海の石山五郎氏(73)は「今の前に出る相撲を貫けばいい。照ノ富士の大きな体を生かした相撲だと思う」と太鼓判を押す。192センチ、177キロの体を存分に生かして、最高位を務める。【佐藤礼征】

横綱昇進伝達式で口上を述べる新横綱照ノ富士(中央)、左は伊勢ケ浜親方、淳子女将(撮影・柴田隆二)

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新横綱照ノ富士「品格」と「力量」追求 記録ではなく生き方で「見本に」

横綱昇進伝達式で口上を述べる新横綱照ノ富士(右中央)、右奥は伊勢ケ浜親方、淳子女将。左から浅香山審判委員、高島理事(撮影・柴田隆二)

「第73代横綱照ノ富士」が誕生した。日本相撲協会は21日、都内で臨時理事会と秋場所番付編成会議を開き、照ノ富士(29=伊勢ケ浜)の横綱昇進を全会一致で決定。都内の部屋で伝達式に臨んだ照ノ富士は「不動心を心がけ、横綱の品格、力量の向上に努めます」と口上を述べて決意を示した。横綱土俵入りのお披露目は未定だが、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は自身と同じ「不知火型」を伝授することを明かした。

   ◇   ◇   ◇

描いた横綱像を、照ノ富士はよどみなく言葉で表現した。協会の使者を迎えた午前9時31分。両手、両膝をついたまま昇進の報告を受け、口上を述べた。

「謹んでお受けいたします。不動心を心がけ、横綱の品格、力量の向上に努めます。本日は誠にありがとうございました」

「不動心」。両膝のケガなどで番付が転がり落ちたときは「引退」の2文字が何度も頭をよぎった。「いろんなことがあったけど、何事にもぶれない精神を持ってこれからも頑張っていきたいという思い」。

横綱の「品格」と「力量」も追求する。「記録とかじゃない」と照ノ富士。実績ではなく「生き方」こそ、横綱の品格とイメージしているという。「横綱という地位がどういう地位か理解して、みんなの見本になるような横綱でいたい」。大関復帰を決めた3月以来、4カ月ぶり3度目の口上。自己採点は「自分の中では満点」と胸を張った。

本来なら伝達式の翌日に新しい綱を作る「綱打ち」、その翌日に東京・明治神宮で奉納土俵入りが行われるのが通例。コロナ禍のため、奉納土俵入りは未定で照ノ富士も「まだ感情が沸いていない」と実感できずにいるが、師匠と同じ「不知火型」の土俵入りが伝授されることも決まった。

新横綱場所で賜杯を抱けば、17年春場所の第72代横綱稀勢の里(現荒磯親方)に続く。「常に言っている通り、その日の一番に全力をかけて頑張りたい」。最高位に就いても、照ノ富士の謙虚さは変わらない。【佐藤礼征】

◆照ノ富士春雄(てるのふじ・はるお)本名・ガントルガ・ガンエルデネ。1991年11月29日、ウランバートル市生まれ。18歳で来日し、鳥取城北高に留学して相撲を始める。3年時に中退して間垣部屋に入門。しこ名「若三勝」で11年技量審査場所で初土俵。13年春場所後に伊勢ケ浜部屋に転籍。同年秋が新十両昇進で「照ノ富士」に改名。初優勝した15年夏場所後に大関昇進。17年秋場所後に大関陥落。5場所連続休場して19年春場所に西序二段48枚目で本場所に復帰。192センチ、177キロ。得意は右四つ、寄り。

▽八角理事長(元横綱北勝海) 横綱は、大関にはないものを求められ、今まで以上に多くの期待や重圧と闘わなければならないと思うが、これからもその強い精神力と今までの経験を糧に乗り越えていって欲しい。綱の重みをしっかりとかみしめて、立派な横綱になってくれることを期待している。

伝達式後、騎馬で祝う新横綱照ノ富士(上)(撮影・柴田隆二)
伝達式後、乾杯する新横綱照ノ富士(左から3人目)と右端はツェグメド・ドルジハンド夫人(撮影・柴田隆二)

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照ノ富士の膝を支えたサポーター NBAコービー・ブライアントも愛用

照ノ富士(2021年7月12日撮影)

<第73代横綱誕生~不屈の照ノ富士~>

大関照ノ富士の横綱昇進が事実上、決まった。26場所ぶりに誕生する横綱は、いかなる復活劇を遂げたのか。連載「第73代横綱誕生~不屈の照ノ富士~」で答えに迫る。

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万全ではない古傷の膝を支えたのが、NBAの「スーパースター」が愛用したサポーターだった。

途中休場した昨年秋場所のことだった。その場所は何とか勝ち越しを決めて返り三役を確定的にしたが、照ノ富士の左膝は、四股を踏むことすら容易ではないほど悪化していた。出合ったのが、ドイツ・バウアーファインド社のサポーター「ゲニュTrain(トレイン)」。国内で同製品を扱う福祉用具卸販売の「パシフィックサプライ」(大阪・大東区)を、後援者ら知人がつないでくれた。

「ゲニュ-」は03年から米バスケットボールNBAのトレーナーズ協会(NBATA)とパートナー契約を結ぶなど、世界的信頼を得ている。人気拡大のきっかけは、昨年1月に死去したNBAの元スーパースター、コービー・ブライアント。コービーがドイツで膝を手術した際に「ゲニュ-」を使い始め、NBA内での普及した経緯があった。パシフィックサプライ社によると、現役力士が使用するのは元大関把瑠都以来2人目という。

パシフィックサプライ社の筏(いかだ)政人さん(25)は、昨年秋場所後に照ノ富士の相談を受けた。「『大関復帰を見据えての何場所かになる。何とかしたい』と」。同製品のサイズは7種だが、最も大きい「6番」ではサイズが合わない。発注から手元に届くまで約3週間かかるものの、特注サイズを作ることになった。メインカラーはグレーの「チタンカラー」だが、協会の規則に従い、取り扱っていないベージュ色で発注。ドイツから届いたのは昨年11月場所直前だったが、照ノ富士は早速使用。13勝で優勝同点の成績を残した。

同製品の特徴は動きを制限せずに、体の内部にある「固有受容器」と呼ばれる深部感覚に圧を与えて刺激することで、患部の安定感を生み出す。

筏さんによると、照ノ富士は「『かかってくる圧がすごくいい感じ。今まで使ってきたもので一番いい』と言っていた」と同製品にゾッコンという。「大関自身も膝のことを勉強されていたようで、非常に詳しくて説明が非常に楽だった。ケガに苦しんでいるアスリートに貢献できることは、非常にうれしく思っています」と筏さん。綱とりへの歩みには、周囲の支えが不可欠だった。【佐藤礼征】

7月18日、白鵬(奥)に敗れ悔しそうな表情で引き揚げる照ノ富士(手前)

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照ノ富士の横綱昇進が事実上決定 復活劇の裏で取り組んだ“砂のやつ”

互いに張り手を浴びせ合う照ノ富士(左)と白鵬(撮影・小沢裕)

<第73代横綱誕生~不屈の照ノ富士~>

大関照ノ富士の横綱昇進が事実上、決まった。26場所ぶりに誕生する横綱は、いかなる復活劇を遂げたのか。連載「第73代横綱誕生~不屈の照ノ富士~」で答えに迫る。

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再入幕した昨年7月ごろだった。照ノ富士は前回の大関時代に取り組んでいた「横綱になるためのトレーニング」を、再び始めた。通称「砂のやつ」。袋いっぱいに約100キロの砂を詰め込み、それを持って3、4段重ねたビールケースに上げ下げする。若い衆だと3回ほどでも苦しい。照ノ富士は全体のトレーニング終わりに20回ほど欠かさずに行い、体をいじめてきた。

もともと稽古場以外のトレーニングに対する好奇心は旺盛だ。ベンチプレスは200キロ、スクワットは300キロを優に超える。伊勢ケ浜部屋では、トレーナーを務める篠原毅郁氏の指導の下、ヨガやプールでの導入。照ノ富士も積極的に利用した。

稽古場以外でのトレーニングに、重きを置く理由がある。照ノ富士はかつて「昔ほどは(番数を)取れない。年齢も変わって、やり方も変わってくるから」と明かしている。土俵上では古傷の膝に対する負荷の懸念がぬぐえない分、トレーニングでカバーするしかない。序二段で復帰した19年春場所後は、コロナ禍以前は毎日のようにジムに足を運んでいるという。

元付け人で元幕下富栄の冨田龍太郎さん(29)は「親方に言われてたまたま夜10時くらいにジムに行ったら、ちょうど大関も来ていた。この時間にやってるんやなと思った」。日付をまたぐことも珍しくなかった。冨田さんによると、ジムの後に行く銭湯で体を癒やすのが楽しみだったという。【佐藤礼征】

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照ノ富士横綱へ 横審委員は絶賛の嵐「大谷翔平のように憧れられる横綱に」

横綱昇進が事実上決まり、会見に臨む照ノ富士

大相撲の横綱審議委員会(横審)は19日、都内で定例会を開き、名古屋場所で14勝1敗の優勝次点となる成績を残した大関照ノ富士(29=伊勢ケ浜)を、満場一致で横綱に推挙した。21日の臨時理事会と秋場所番付編成会議で、第73代横綱に正式に昇進する。一方で横審委員からは“白鵬批判”が相次ぎ、照ノ富士に「白鵬のようにはなって欲しくない」と「品格ある横綱」へ期待する意見も出た。

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浮かれる様子は全くなかった。昇進が事実上、決まっている照ノ富士はリモートでの会見に臨み「まだ決まったわけじゃないので、まだそういう感情はない」と一言。表情に喜び、安心といった感情を一切出さなかった。

推挙を決めた横審委員からは、絶賛の嵐だった。矢野弘典委員長(産業雇用安定センター会長)は「ケガで序二段まで落ちたわけですが、奇跡といわれる復活を遂げたのは長い相撲の歴史でも特筆に値するもの。近頃まれになった言葉に根性、辛抱、我慢、不屈の精神、節制、といった言葉があるけど、それらをほうふつさせるものがあった」と賛辞の言葉を並べた。矢野委員長の評価を受けて、照ノ富士も「磨いて頑張ってきたことで、ちょっとでも皆さんがそういう思いになってくれることがありがたい」と感謝した。

“反面教師”を期待する声も多い。千秋楽で荒々しい取り口を見せるなどした白鵬について、この日出席した横審委員からは苦言が止まらなかった。杉田亮毅氏(日本経済新聞元社長)のように「白鵬の力強さに学びつつ、マナーの点はまねをしないで」と、相撲の実力を認めつつ白鵬を引き合いに出す委員もいれば、山内昌之氏(東大名誉教授)は「白鵬のようにはなって欲しくないですね。大谷翔平のように誰にも憧れられる横綱に」と、ストレートな言葉で照ノ富士に期待を込めた。

何はともあれ、21日には横綱昇進が正式に決定する。伝達式で述べる口上について照ノ富士は、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)とおかみさんと相談して決めることを明かした。憧れ続けた横綱の地位。「改めて横綱がどんな地位か、どんな生き方をするべきか考えて(口上を)うまく形にできれば」。照ノ富士の相撲道は、復活劇からいよいよ新章に突入する。【佐藤礼征】

○…白鵬の横綱としての品格に、横審からは批判が集まった。14日目の正代戦では仕切り線から大きく下がって立ち合い、張り手を連発。千秋楽の照ノ富士戦では、立ち合いで右のかち上げを浴びせて勝った際に土俵上でガッツポーズした。矢野委員長は「実に見苦しいと思いました。大相撲が廃れていくという深い懸念をみんなで共有した」とばっさり。山内委員は「14(日目)、15(千秋楽)はもうあり得ない。最低のレベルの相撲。終わった後のガッツポーズとか雄たけびとか鬼の表情とか。あれはなんだい。全然問題外でしょ」と厳しく批判した。一方、昨年11月場所後の定例会で白鵬に対して出して「注意」の決議は取り下げることで決定した。

18日、名古屋場所千秋楽に白鵬(右)へ張り手を見舞う照ノ富士

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令和初の横綱誕生へ 照ノ富士、後援者に感謝 15日間全て違う化粧まわし

白鵬(右)に張り手を浴びせる照ノ富士(撮影・小沢裕)

<大相撲名古屋場所>◇千秋楽◇18日◇ドルフィンズアリーナ

大関照ノ富士(29=伊勢ケ浜)は、白鵬との全勝対決に敗れて優勝こそ逃したものの、事実上、横綱昇進が決まった。審判部は八角理事長(元横綱北勝海)に、昇進を審議する臨時理事会の開催を要請。理事長も横綱審議委員会へ諮問することを決めた。17年初場所後の稀勢の里以来となる横綱誕生は確実。21日の秋場所番付編成会議後に開く理事会で「第73代横綱照ノ富士」が正式に誕生する。

   ◇   ◇   ◇

令和初の横綱が誕生する。照ノ富士は3場所連続5度目の優勝こそ逃したものの、14勝1敗の優勝次点。昇進を審議する臨時理事会の開催も決まった。2年半前は序二段にいた男が、歴史的な綱とりを成就させた。

激しい一番となった白鵬との全勝対決には敗れた。花道を引き揚げる際は悔しさを押し殺すような表情を見せたが、リモート取材では「見ている通り、自分が弱かっただけ。出し切って負けてる。まだ弱い」と落ち着いた表情だった。

満身創痍(そうい)の中で最高位を射止めた。両膝のケガや内臓疾患などを乗り越えてきたものの、照ノ富士の膝には、半月板がほとんどない。途中休場した昨年秋場所時点で、四股も満足に踏めない状況だった。手術という選択肢もあるが、メスを入れれば本場所に出られない。ここ1年は場所が終盤に近づくと、痛みが増していく。そんな中でも言い訳は一切ない。「場所ごとにちょっとずつ良くなっている感覚がある」と、前だけを見ている。

今場所は15日間全て違う化粧まわしを締めた。横綱土俵入りでは露払い、太刀持ちと三つぞろいの化粧まわしを使う。実質、この日が最後になった幕内土俵入り。贈ってくれた後援者らへ、感謝の思いを示すように臨んだ場所だった。

稀勢の里以来、4年以上の期間を経て新横綱が誕生する。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「まだ昇進が決まったわけじゃないから」と言葉を選びつつ「勝ち星を挙げたのは良かった」とたたえた。「照ノ富士」のしこ名は、師匠の「旭富士」、部屋の大横綱「照国」と2人の横綱が由来。師匠が「横綱になってほしいから」と込めた願いが、ついにかなう。【佐藤礼征】

◆横綱になると…

▽収入 月給は大関の250万円から300万円に増額。巡業などの宿泊、日当は1日9500円から1万1000円へ。協会から昇進祝いの名誉賞100万円が贈られる。師匠への養成奨励金も10万円増えて30万円が1場所ごとに支給。引退時の養老金も基本給が500万円増の1500万円に。

▽付け人 大関の3人程度から10人近くに。綱締めなどがあるためで、身の回りの物を入れる明け荷も1つから3つに増える。

▽待遇 負け越しても休場が続いても、地位は下がらない。引退後、5年間はしこ名のまま年寄として、協会に残ることができる。

幕内土俵入りに臨む照ノ富士(撮影・小沢裕)

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横綱確実の照ノ富士「自分の今できることを精いっぱい」 白鵬と全勝対決

大相撲名古屋場所14日目 照ノ富士(奥)が高安を寄りきりで破る(土俵下は白鵬)(撮影・森本幸一)

<大相撲名古屋場所>◇14日目◇17日◇ドルフィンズアリーナ

綱とり挑戦の大関照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、横綱昇進を確実にした。関脇高安を寄り切って、初日から無傷の14連勝。千秋楽で敗れても1差での優勝次点。横綱昇進は決定的となった。千秋楽は結びの一番で、同じく14戦全勝とした横綱白鵬と直接対決。12年名古屋場所の大関日馬富士-横綱白鵬以来9年ぶりで、1場所15日制となった49年夏場所以降では史上6度目となる、全勝同士の相星決戦が実現する。

    ◇    ◇    ◇

文句なしの昇進へ、照ノ富士が力強く踏み出した。幕内復帰した昨年7月場所から1勝4敗と、関脇以下では唯一の“難敵”高安戦。圧力十分の相手からこの日も簡単にまわしを奪えなかったが、いなしで崩して左上手を取ると、猛然と土俵下へ吹っ飛ばした。全勝を守って3場所連続5度目の優勝まで残り1日。「自分の今できることを精いっぱいやりたい」。表情は変わらない。

横綱昇進へ、雑音はもう聞こえない。幕内後半戦の藤島審判長(元大関武双山)は「明日の昼に審判部で集まって話し合います」と説明した。横綱審議委員会の内規によると、昇進の条件は「大関で2場所連続優勝か、それに準ずる成績」。前日13日目終了時で伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)は「成績的には十分」との見解を示しており、星を重ねたことで昇進は確実の情勢だ。

「心」を見直して戻ってきた。前回の大関時代は、負ければ支度部屋で熱くなり、荒い言葉を吐くこともあった。3月の春場所限りで現役を引退するまで、照ノ富士の付け人を務めた元幕下富栄の冨田龍太郎さん(29)は「カッとなる性格だったけど、今は『次、頑張ろう』と言うようになった」と明かす。付け人に頼り切っていたテーピングを着用する作業も、自身で行うようになった。

史上6度目の全勝決戦に向けて気負いはない。「1日1日必死にやるだけなので」。第73代横綱誕生を、自身初となる全勝優勝で花を添える。【佐藤礼征】

◆横綱昇進までの流れ 日本相撲協会審判部が横綱昇進に相当と判断した場合、八角理事長に場所後の理事会招集を要請する。理事長は横審に対し横綱昇進について諮問。これを受けて横審は、千秋楽翌日の19日に行われる定例会で審議する。出席委員の3分の2以上の賛成があれば横綱推薦を理事長に答申。これが事実上の最終決定となり、答申を受けて21日に開催される見通しの理事会で横綱昇進が正式決定する。

▽幕内後半戦の藤島審判長 (千秋楽全勝決戦について)久しく全勝同士はない。力比べが見たい。照ノ富士が白鵬に対してどれぐらい力をつけているのか。白鵬も照ノ富士にどうか。がっぷり四つの相撲が見たい。

照ノ富士(右)は白鵬に力水をつける(撮影・森本幸一)

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