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「悪魔王子」の右フック/井上真吾トレーナーの一撃

ナジーム・ハメド

<ボクシング、忘れられない一撃~17>

一発のパンチですべてが変わるボクシング。選手、関係者が「あの選手の、あの試合の、あの一撃」をセレクトし、語ります。

世界3階級王者井上尚弥(27=大橋)を指導する父の真吾トレーナー(49)は、「プリンス」「悪魔王子」の異名を取った元WBO、WBC、IBFフェザー級王者ナジーム・ハメド(英国)の「右フック」を選んだ。セイド・ラワル戦の衝撃の一撃を振り返った。(取材・構成=奥山将志)

    ◇    ◇    ◇

▼試合VTR 96年3月16日、前の試合でWBO世界フェザー級王座を獲得した当時22歳のハメドが、ナイジェリア人のラワルとの初防衛戦に臨んだ。

両腕を下げたままガードをしない。相手の攻撃はダンスを踊るようなステップと、柔らかな上半身の動きでかわす。ひとたび攻撃のスイッチが入れば、予測不能、変幻自在な動きからスピードに乗った強烈なパンチを放ち、KOの山を築く。そんな「天才」のV1戦はわずか35秒で終わった。

ゴングと同時に両者がゆっくりとリング中央に歩み寄ると、やや重心を下げながら急激にスピードを加速させたハメドが強烈な右フックを振り抜いた。後ろに崩れ落ちたラワルはどうにか立ち上がったが、ダメージは深く、その後右アッパー2発を浴びてストップ。ハメドが放ったパンチはわずか3発、ラワルは0発で試合が終わった。

    ◇    ◇    ◇

うそでしょ!? 世界戦でこんなことあるの!? って、この試合は本当に驚きましたね。当時、私は25歳。まだ尚弥も拓真もボクシングを始める前で、デラホーヤやトリニダードなど、海外の試合をよく見ていた頃です。

ハメドは、見たことがない独特のスタイルで、試合当時は、まだ穴を指摘されたり、実力が完全に認められる前だったと思います。

この右フックの瞬間は、放送したテレビの映像も、試合開始に合わせて、遠目から観客席を含めたリング全体を映していました。その直後、2人が接近した瞬間に、相手が倒れたので、最初は何が起きたのか分かりませんでした。

サウスポーから右にシフトして下から突き上げるようなアッパーでKOしたり、その動きは、とにかく予測不能。ただ、ガードこそしていませんが、防御をしながら、相手の攻撃はしっかりと見切っている。多くの選手がハメドのまねをしましたが、誰もあの域には近づけませんでした。

指導者の立場でみれば、参考にしにくいボクサーですが、変則的であれ何であれ、それを徹底して追求し、自分のものに出来れば、それは技術なんです。驚きという意味で、この試合、最初の右フックは忘れられないですね。

◆井上真吾(いのうえ・しんご)1971年(昭46)8月24日、神奈川・座間市生まれ。中学卒業後、塗装業の仕事に就いて修業。20歳で明成塗装を起業。ボクシングはアマで戦績2戦2勝。39歳でアマチュアの井上ジムを設立したが、長男尚弥の大橋ジム入門に合わせ、大橋ジムのトレーナーに就任。14年に最も功績を残したトレーナーに贈られる「エディ・タウンゼント賞」を受賞。家族は美穂夫人と1女2男。

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 ライト級は長嶺克則(21=マナベ)が無敗対決を制した。序盤は佐藤拓茂(27=石神井)のヒット&アウェーにポイントを取られた。中盤から接近戦での打ち合いに持ち込み、ボディーからの攻勢で2-1の判定勝ち。

 宣言したKOを逃して「でかい顔したのに…。次はKOして面白いことをやります」。ファンのナジーム・ハメドをマネし、ヒョウ柄のトランクスに髪も刈り上げ。明海大3年だが、卒業後も世界王者を目指すという。

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