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大嶽親方、怒りの平手打ち/記者が振り返るあの瞬間

06年7月15日、大相撲名古屋場所7日目で土俵下でにらみ合う千代大海(右)と露鵬

<スポーツ担当記者 マイメモリーズ>(36)

政府の緊急事態宣言が延長され、スポーツ界も「自粛」状態が続いている。

日刊スポーツの記者が自らの目で見て、耳で聞き、肌で感じた瞬間を紹介する「マイメモリーズ」。サッカー編に続いてオリンピック(五輪)、相撲、バトルなどを担当した記者がお届けする。

   ◇   ◇   ◇

はじめはよく見えなかった。大関千代大海の盛り上がった肩の筋肉から腹へ、細くて赤い筋が何本も流れていた。

06年名古屋場所。打ち出し後の役員室に怒髪天をつく形相の千代大海がバスタオル姿で入ってくる。目が慣れてきて分かった。上半身に小さいガラスの破片が数え切れないほど刺さっていた。粉々になったガラスを浴びたのだ。

すぐにロシア出身の平幕の露鵬も来る。師匠の大嶽親方(元関脇貴闘力)がこわばった顔で付き添う。本割で感情的になった2人が風呂場でもめ、露鵬がドアを破壊した。

帰り支度で騒がしかった役員室が無音になった。お互いにいつでも襲いかかりそうな殺気だ。北の湖理事長(元横綱)は事情を聴き「いつまでも遺恨を残すな。握手して仲直りしなさい」と言った。

露鵬が千代大海に「これからも頑張って」と言う。番付上位の先輩力士に対して、何より加害者としては間違った言葉遣いだった。

直後、大嶽親方が「お前は~」と怒鳴りながら顔面を平手で打った。すさまじかった。記者だったら失神、いや、脳振とうは免れない。張り手で千代の富士、小錦、曙に挑んだあの貴闘力の平手打ちだ。その一撃を受けても露鵬は顔をそむけず正面を向いたまま。映画のようだった。

この時、露鵬はフラッシュを嫌がり、カメラマンに暴力をふるい、出場停止処分になった。

後日、巡業先の体育館で寂しそうに座っていた。目があった。「カメラマンの人には悪いことをしました。大関にも悪い態度、反省しています」と言った。気まずい空気が流れ、話をつなごうと焦り「(平手打ち)ものすごかったね。痛かったでしょ」と聞いた。すると「あんなの痛くない。それよりも悔しかった。俺は強いんだって、みんなに分かってほしかった」。顔の前を太い右腕で振り払うようにした。よみがえった記憶を払いのけようとしているようだった。屈辱に顔はゆがんでいた。

番付が力を示す相撲社会を取材して、こんなきわどい瞬間にはほとんど出会えなかった。ただ、ケンカ沙汰はいたるところにあるとはうすうす感じていた。相撲界は時津風部屋での力士暴行死事件、元横綱日馬富士の暴行問題という不祥事から暴力追放を目指してきた。現在は暴力への問題意識も格段に広まっているだろう。記者が遭遇したあの瞬間は、もう過去のものであると信じている。【井上真】

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正代が徳勝龍に雪辱の押し出し「優勝だったじゃん」

徳勝龍(左)を押し出しで下す正代(撮影・鈴木正人)

<大相撲春場所>◇初日◇8日◇エディオンアリーナ大阪

先場所13勝で関脇に復帰した正代(28=時津風)が、リベンジに成功した。

先場所優勝を争った徳勝龍(33=木瀬)を相手得意の左差しから一方的に押し出した。「なんであれが先場所でなかったんですかね。優勝だったじゃん」。口も滑らかになる快勝だった。

時津風部屋には場所前、白鵬と鶴竜の両横綱をはじめ、大関とりの関脇朝乃山ら実力者が出稽古に訪れた。正代は「いろんなタイプの力士と稽古ができた」。良質な稽古で優勝にわずかに届かなかった部分を埋めた。

昨年九州場所から2桁勝利と好調が続く。「初日に勝つといい流れの場所が続いている。そういう流れに乗りたい」。無観客開催の特別な場所で、目指す目標は初優勝で変わりない。

徳勝龍(左)を押し出しで下す正代(撮影・鈴木正人)

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豊山「稽古は完璧」電車道で白鵬持って行く場面も

豊山(2020年1月22日撮影)

大相撲春場所(8日初日、エディオンアリーナ大阪)で1年半ぶりに上位との戦いに挑む東前頭3枚目豊山(26=時津風)が、納得の形で稽古を締めくくった。

5日、大阪市内の時津風部屋に出稽古してきた横綱白鵬(34=宮城野)に指名され、三番稽古で16番取った。相手の出足に屈して一気に寄りきられる場面が目立ったが、電車道で持っていく力強い一番もあった。「毎日いろんな関取衆に稽古をしてもらって、最後に横綱。場所前の稽古は完璧」とうなずいた。

上位戦が組まれるのは18年秋場所以来9場所ぶりで、白鵬とも対戦が予想される。この日の稽古ではその白鵬から「(番付が)下がったこともあったけど、盛り返してきた。重さを感じた」と評価され、豊山は「光栄です」と笑みをこぼした。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、不要不急の外出は控えている。無観客での開催になるが「逆に考えれば、こういう経験はできない。一生に一度。プラスにできれば今後につながる」と前向きに話した。

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白鵬、無観客開催も懸賞申し込みに「ありがたい」

永谷園の懸賞

大相撲の横綱白鵬(34=宮城野)が5日、新型コロナウイルス感染拡大の影響により史上初の無観客開催となる春場所(8日初日、エディオンアリーナ大阪)に向けた本格的な調整を終えた。

連日となる大阪市内の時津風部屋への出稽古で、三番稽古で東前頭3枚目豊山(26=時津風)を指名。16番取って14勝2敗と圧倒した。前日は四つ相撲の前頭正代、十両逸ノ城らを指名したが、この日は押し相撲のホープ。「この頃は四つ相撲(の相手)をイメージしていたので、ちょうど良かった」。

初日まで残り3日。「それまでは(場所開催が)どうなるかと左右されていたが、やることはやった。無事に千秋楽まで取り切る」。休場明けとなる今場所。優勝した昨年九州場所以来2場所ぶりの皆勤へ、気持ちを高めた。

無観客開催の影響により、昨年比で懸賞の申し込み数が激減しているが、それでも1000本超の申し込みがある。通算43度の優勝を誇る第一人者は「素晴らしいこと。プロとしては勝利へのこだわり、勝つことの難しさを知っているので。ありがたいです」と、協賛企業に感謝した。

初日前日の7日に行われる恒例の土俵祭りは、新型コロナウイルス感染拡大の対策として、三役以上の力士が出席しないことになっている。通常とは違うルーティンを過ごすことになる中で「(7日は)部屋で参加しているような気持ちで(過ごす)」と話した。

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白鵬「ケガしてからは初」1カ月半ぶり関取衆と稽古

白鵬(2020年1月14日撮影)

無観客で開催される大相撲春場所(8日初日、エディオンアリーナ大阪)で、2場所ぶり44回目の優勝を狙う横綱白鵬(34=宮城野)が4日、大阪市東成区の時津風部屋で出稽古した。

連続優勝を狙った1月の初場所は「腰部挫傷、右踵部裂傷蜂窩(ほうか)織炎」のため4日目から休場。その後は土俵に入っての稽古はしたものの、この日は「関取衆と稽古したのはケガしてからは初めてかな」と、約1カ月半ぶりに関取衆と相撲を取った。平幕の小兵・照強(伊勢ケ浜)に連勝、十両の巨漢・逸ノ城(湊)に3勝1敗、関脇復帰の正代(時津風)に14連勝と合計20番で19勝。逸ノ城にガップリ胸を合わされ一気に走られた以外は、四つに組み止めて、足の運びやまわしを取る位置を確認しながら、険しい表情の中にも楽しむように、相撲をジックリ取った。

「(土俵での)感触、感覚をですね」と確かめながら約30分間、第一人者の貫禄で土俵を独占した。痛めた足については「右足は新しいケガで、体全体には、どこかしらに痛みはある。それはみんなそう。古傷も(治ったと思っても)突然(痛みが)来るもの。力を抜いたりしたときに古傷の痛みが来たり、まあ1つ1つという感じですかね」と説明した。

これまで話しているように、無観客開催の本場所は「どんなもんか想像がつかない。不思議な感じ」と、雲をつかむような話のようだ。春場所4日目の11日に35歳の誕生日を迎える。東日本大震災があった9年前のその日は八百長問題で春場所自体が中止、そして今回は戦後初の無観客開催と、深く心に刻まれることになる。ただ、35歳という年齢には、数字から受けるアスリートとしての一般的なイメージとして「けっこう年を取ったと思う(思われる)だろうけど」と前置きしながら「全くないね」と精神的な若々しさを、あらためて強調。一方で、ケガをしがちで慎重を期す意味でも「寒いから何とか頑張らんとね」とも付け加えた。

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大関とりに挑む朝乃山 無観客も「集中するだけ」

時津風部屋へ出稽古した朝乃山

無観客で開催される大相撲春場所(8日初日、エディオンアリーナ大阪)で大関とりに挑む関脇朝乃山(26=高砂)が3日、大阪市東成区の時津風部屋で出稽古した。

出稽古組の力士でにぎわう中、関取衆で申し合い。時折、自分から得意四つとは逆の、左を差して出る相撲も試したが、ほとんどが左の前まわしを取り、右を差して寄る、自分の型を貫いた。やはり伊勢ケ浜部屋から出稽古に来た宝富士、照ノ富士らを相手に、まずは5連勝。湊部屋から来た逸ノ城に圧力負けし寄り切られた後、5番を置いて再び土俵へ。千代大龍、豊山を寄り切りで破った後、照ノ富士に寄り切られた。再び9番後に入り逸ノ城、照強に勝ち、最後は千代大龍に押し出され合計12番で9勝3敗だった。

「自分の一番いい形。本場所で出来ないと意味がない」と言う、立ち合いで当たって踏み込み瞬時に左前みつを取る理想の形を追求している。この日の内容を「ボチボチ」と話し、やや物足りないと思われる12番の番数にも「体は動いているので大丈夫」と問題なしを強調。4日以降の出稽古の予定については「未定です。体と相談して」と話した。

2月24日の番付発表から連日、取材対応している。時々刻々と変化する、新型コロナウイルス問題で無観客となることにも腹を据えて構える。「自分の中では中止か無観客だと思い、無観客に決まった。ということは(場所は)開催されるということ。その日から体を作っていこうと、気持ちの切り替えはしてます」と言う。もちろん、無観客での相撲は想像も出来ないが「イメージがわかないけど、自分の相撲に集中するだけ」と5日後の初日を見据えた。

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朝乃山、無観客開催に「テレビを意識して臨みたい」

時津風部屋の稽古場に向かう朝乃山(撮影・佐藤礼征)

大相撲春場所(3月8日初日、エディオンアリーナ大阪)で大関とりに挑む関脇朝乃山(26=高砂)が2日、大阪市の時津風部屋に出稽古した。

関脇正代、前頭豊山らと計13番取って9勝。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、前日1日に史上初となる無観客開催が決まった。電話で取材に対応した朝乃山は「決まったからにはやるしかない。力士はみんな同じ気持ちだと思う。イメージはわかないけど、テレビで見られていることを意識して臨みたい」と意気込んだ。

相撲解説者の舞の海秀平氏(元小結)が、稽古を見学。26歳の大関候補について、舞の海氏は「体の張りや顔のつやが良かった。本場所はさらに集中力を高めると思う」と期待を寄せた。

舞の海氏は無観客の中、NHK大相撲の解説を務める。土俵まわりは静寂に包まれることが予想され「声が(土俵上の)力士に聞こえてしまうかも」と苦笑い。異様な空気感で場所に臨む力士には「一生に1度の本場所になる。お茶の間であがっている歓声に思いをはせてほしい」とエールを送った。

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鶴竜「全く想像できない」無観客開催に困惑隠せず

部屋での稽古後、取材に応じた鶴竜

大相撲の横綱鶴竜(34=陸奥)が、春場所(8日初日、エディオンアリーナ大阪)の無観客開催決定から一夜明けた2日、大阪・堺市の部屋で稽古後、報道陣の取材に応じた。

力士会会長でもあるだけに「(無観客開催が)はっきりと決まったので、あとは準備してやるだけ。力士は、言われた以上、やるだけ」と、全力士の思いを代弁するように真剣な表情で語った。

それでも、無観客は初体験だけに「全く想像できない」と、困惑も隠せない。前相撲や序ノ口など、開場後間もない取組と似た雰囲気とも想像されるが「序ノ口でもお客さんはいるから」と、無観客との違いは大きいと強調。八百長問題を受けて11年3月の春場所が中止、同5月は技量審査場所として無料で開催された。当時も鶴竜は幕内だったが「あの時もお客さんは入っていた。無観客は全くの未知。これから考えていきたい」と、今後どのような準備が必要かを模索していくという。

自身は横綱白鵬と交互に結びの一番を取ることになる。大歓声の中での取組が日常となっているが「時間(いっぱい)になったら静かになるから(無観客と)一緒だと思う。テレビの前で応援してくれていると思ってやりたい」と、集中力を欠く不安はない。

この日の稽古は報道陣非公開で行われたが「土俵の中の稽古を充実させて臨みたい」と、通常の場所前と変わらず、今後は時津風部屋や追手風部屋などを候補に、出稽古で仕上げていくつもりだ。稽古後は、サインを求めたファンに渋々断りを入れた。「サインしたり、写真を撮ったり、ふれ合うことができないのは申し訳ない。こればかりは仕方ない」と、ファンに理解を求めた。「とにかく1日1日。今はやることをやっていくしかない」。自らに言い聞かせるように話していた。

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朝乃山「気になる」26歳誕生日より春場所開催可否

申し合い稽古で豊山(左)と相撲を取る朝乃山

日本相撲協会は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて3月1日に臨時理事会を開き、春場所(8日初日、エディオンアリーナ大阪)の開催可否について、無観客開催か中止に絞って最終決断を下す。

1日に26回目の誕生日を迎える大関とりの関脇朝乃山(高砂)は2月29日、大阪市の時津風部屋に出向き、居合わせた平幕の高安らと申し合い稽古を行った。春場所に向けて調整する一方で、複雑な心境を吐露した。

  ◇    ◇    ◇

26回目の誕生日よりも、断然関心が高い事がある。出稽古を終えた朝乃山は、報道陣に翌日の誕生日を指摘されるも「全然気にしていません。(祝いは)高校までです」と話題を流し、「とりあえず(相撲協会の)決断が気になります」とそわそわした。

3月1日に臨時理事会を開き、春場所開催について無観客開催か中止かの決断を下す。通常開催の選択肢もあったが、尾車事業部長(元大関琴風)が先日「相撲協会だけ通常開催はありえない」と個人的見解を示し、状況的にも可能性は極めて低い。そんな中で朝乃山は「無観客で開催したとして、もし途中で協会員の誰かが感染してしまったらどうなるんですかね?」などと心配の声を上げた。

それでも本場所のために準備は進める。この日は大関経験者の高安や関脇正代らと申し合い稽古を行い、12番取って6勝。馬力のある高安相手に得意の右四つの感触を確かめた。「(高安と)普段なかなかできないのでやりたかった。悪くはない。いい稽古ができた」。開催の可否が頭の片隅にちらつきながらも、大関とりに向けて順調に仕上げている様子だった。

尾車事業部長は臨時理事会前日のこの日も、先発事務所で高島春場所担当部長(元関脇高望山)らと話し合いを行った。「明日みんなでしっかりと話し合って決める」。戦後初の無観客開催か、八百長問題の影響で開催できなかった11年春場所以来3度目の中止か。歴史的決断がいよいよ下される。

時津風部屋に出稽古した関脇朝乃山

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朝乃山「悪いところが出た」鶴竜と6番取り勝てず

横綱鶴竜と三番稽古する関脇朝乃山

大相撲春場所(3月8日初日、エディオンアリーナ大阪)で大関とりに挑む関脇朝乃山(25=高砂)が27日、大阪市の時津風部屋に2日連続で出稽古し、横綱鶴竜と三番稽古を行った。

鶴竜から指名されて6番取って0勝。右を差すもアゴが上がって力が伝わらずに後退するなど、思うような相撲が取れず。「今日は自分の形になるけど攻めきれなかった。悪い所がたくさん出たから直していきたい」と前を向いた。

稽古後には、同じく出稽古に来ていた大関経験者で十両の照ノ富士から身ぶり手ぶりで指導してもらう一幕もあった。「相四つですし僕ができないことを教えてくれた。これから教えてもらったことをできるようにしたい」と感謝。指導内容については「そこはあまり話したくはない」と明かさなかったが、充実した表情を浮かべた。

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朝乃山「ありがたい」元大関照ノ富士から右四つ講義

ぶつかり稽古で胸を出す朝乃山(左)(撮影・実藤健一)

大関とりの関脇朝乃山(25=高砂)は26日、時津風部屋への出稽古で9番とり、5勝4敗だった。

先場所十両優勝の元大関照ノ富士から「右四つ講義」を受けたという。

「引きつけや形の作り方を話してくれた。ありがたい」。大関とり最大の武器完成へ大きな助言を得た。とはいえ、春場所開催は決まっていない状況。「どうなるんですかね、春場所。(仮に)無観客なら寂しい。力士は声援で頑張ろうとする。声援がないのは寂しい」。運命を左右する大事な場所で通常開催を切に望んだ。

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進退問われる鶴竜が本格始動、出稽古で圧倒し手応え

出稽古後、取材に応じる横綱鶴竜(撮影・実藤健一)

昨年秋場所から3場所連続途中休場の横綱鶴竜(34=陸奥)が26日、復活を期す大相撲春場所(3月8日初日、エディオンアリーナ大阪)に向け大阪市内の時津風部屋への出稽古で本格始動した。

「今日はこの2人とやろうと決めていた」という関脇正代、東前頭3枚目・豊山を相手に17番で全勝。豊山に「久々に感じた。あの圧力、重くて低いからビクともしない」と言わせた力強い相撲で先場所ともに2桁白星と活躍の両者を圧倒。「いい稽古ができた。(内容は)皆さんに聞きたいね」と口も滑らかだった。

先場所は4日目までに3個の金星を配給し「左足関節炎」で途中休場した。「体は十分にケアしてきた。後は土俵内の動き」。3場所連続千秋楽まで土俵を務められなかった。横綱の責任を果たせず、進退問題が問われる場所を、番付で38年ぶりに横綱が大関を兼ねる「横綱大関」として迎える。

ただ、新型コロナウイルスの影響で、場所開催の可否は3月1日の臨時理事会で決められる。「力士はベストを尽くしていくしかない。若い衆が買い物とか外に出る機会が多いので、気をつけないといけない」と話し、自身の調整については「このままの調子で稽古を重ねていければ」と復活への手ごたえを語った。【実藤健一】

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正代「勝ち急いだ」徳勝龍の“魔術”かかり2敗

1敗対決を制して大きく息を吐く徳勝龍(左)と、敗れてしばらく膝をつく正代(撮影・河田真司)

<大相撲初場所>◇14日目◇25日◇東京・両国国技館

幕尻の西前頭17枚目徳勝龍(33=木瀬)が、記録ずくめの初優勝に王手をかけた。平幕で1敗同士の正代との直接対決を制し、単独トップに立った。

   ◇   ◇   ◇

正代までも、徳勝龍の“魔術”にかかってしまった。相手得意の左四つで、引き込まれるようにまわしが取れないまま前に出る。そして土俵際に落とし穴。朝稽古後に「土俵際は注意していきたい」と話していた突き落としを食らった。

支度部屋では放心状態。「勝ちを急ぎすぎましたね。以上です」と話し、その後の問いかけには「すいません」と無言。しかし帰り道、囲まれたファンへのサービスには応じ「立ち合いがよくなかった。もうちょっとはじければ、余裕もあった」と振り返った。

「なるようにしかならないんで」と優勝争いの重圧を消してきたが、さすがにじわじわときた。「寝付きは悪くなりつつある」と明かしていた。「こういうの(優勝争い)は初めてなんで。いい経験をさせてもらっている」。その怖さが14日目の大一番に訪れた。

権利は失っていない。千秋楽、御嶽海に勝ち、徳勝龍が敗れれば12年夏場所の旭天鵬-栃煌山以来となる平幕同士の優勝決定戦に持ち込める。部屋の九州の後援者からすでに優勝祝賀用のタイが送られているという。師匠の時津風親方(元幕内時津海)は「まだ終わりじゃないから。明日がある」。時津風部屋では63年(昭38)名古屋場所の大関北葉山以来、57年ぶりとなる優勝へ、最後まで全力を尽くす。【実藤健一】

徳勝龍(左)は突き落としで正代を破る(撮影・小沢裕)

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正代「だいぶ興奮」貴景勝破り花道奥でガッツポーズ

勝ち越しを決めた正代は懸賞の束を手に、観客の声援を受けながら花道を引き揚げる(撮影・小沢裕)

西前頭4枚目の正代(しょうだい、28=時津風)が、大関貴景勝(23=千賀ノ浦)を突き落としで破った。1敗を守り、自己最速となる9日目での勝ち越し。優勝争いのトップに、徳勝龍と並んでいる。

  ◇  ◇  ◇

正代は喜びを隠しきれなかった。貴景勝に勝つと、土俵上で軽く2、3度、跳びはねた。懸賞の束を初めて両手で受け取り、笑みを浮かべながら西の花道を小走りで引き揚げた。右手でガッツポーズをつくり、付け人と喜びを分かち合った。「勝ち越して、大関に勝ったので、だいぶ興奮しました」と振り返った。

立ち合いで当たり勝ち、押し込んだことが勝因だった。突き返されたが、余裕をもって右に動き、相手を突き落とした。「大関戦なので、思い切りいけました。タイミングもすごく良かったと思います」。

受け取った懸賞は38本(手取り114万円)。支度部屋に戻っても、束の封を解くことはせず「場所が終わってから開けます。楽しみに取っておきたい人です」と喜びをかみしめた。

帰路は多くの観客に囲まれ、「正代頑張ってよ! 優勝、優勝」の声が飛んだ。周囲のムードは高まりつつある。時津風部屋の枝川親方(元幕内蒼樹山)は取組前に、正代の好調の要因についてこう言っていた。「正代が正体を現した。わはは。ウチの部屋からもしかして…、というのを期待している。そうなったら、前の枝川親方(元大関北葉山)以来なんだよな…」。

そんな期待をよそに、本人は足元を見つめている。NHKのインタビュールームで、今後への「欲」について聞かれると「まだ出てこないです。一番一番集中して取れたらいいです」。残り6日間、楽しみが広がっている。【佐々木一郎】

ファンに囲まれながら引き揚げる正代(撮影・狩俣裕三)

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北勝富士が鶴竜破り3連勝「三役で挙式」目標が力に

鶴竜(左)を攻める北勝富士(撮影・河田真司)

<大相撲初場所>◇3日目◇14日◇東京・両国国技館

東前頭2枚目北勝富士(27=八角)が横綱、大関総なめに王手をかけた。横綱鶴竜から17年名古屋場所以来の白星。初日、2日目の大関連破に続いて3連勝とした。現役最多の十両逸ノ城の8個に次ぐ7個目の金星を獲得した。6日に婚姻届を提出して心機一転。4年連続で初優勝力士が誕生している初場所で波乱を巻き起こす。白鵬も敗れて両横綱がともに2敗目を喫した。

   ◇   ◇   ◇

北勝富士がのど輪を見舞うと、上体が伸びきった鶴竜は逃げるように引いた。「自分の圧力が横綱を引かせた。嫌がってくれたと思う」。下から起こし続け、最後は両はず押しで決めた。場所前には時津風部屋への出稽古で2日連続、鶴竜の胸を借り「その成果が出たんじゃないですか」と自画自賛。6場所ぶりの3連勝発進に、支度部屋での鼻息は荒かった。

10月に一般女性の真美さん(31)との婚約を発表し、今場所前には交際記念日かつ大安の6日に婚姻届を提出した。場所後は新居に引っ越し“愛の巣”で新婚生活が始まる。6月には挙式、披露宴を予定。「三役で式を挙げたい」という明確な目標が、背中を後押ししている。

初優勝の可能性を信じて疑わない。三役経験は2場所だが、幕内上位は1年以上維持。「(上位陣で自分が)1回も勝ったことのない人はいない。当たり前かもしれないけど、全部合わせれば優勝できる」。昨年は自身より角界入りが遅い、同じ高砂一門の朝乃山が初優勝。刺激を受け、昨年12月の冬巡業中には「自分もできるはず」と力を込めた。

現役では単独2位となる7個目の金星を獲得したが「うれしいけど、いつまでも金星取ってる場合じゃない」と笑顔は少なかった。4日目は白鵬戦。「気持ちは高まっている。それを切らさないように集中してやるだけ」。今年の目標は三役定着。横綱、大関を総なめして、金星獲得はこれで最後にする。【佐藤礼征】

金星を挙げ支度部屋で髪を整える北勝富士(撮影・小沢裕)
金星を挙げた北勝富士はインタビューを終え支度部屋へ引き揚げる(撮影・小沢裕)
子供のファンにサインしながら国技館を引き揚げる北勝富士(撮影・鈴木正人)

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鶴竜、出足鋭く復調気配「やっと毒が出た感じ」

前頭の北勝富士(左)と三番稽古を行う横綱鶴竜

2場所連続休場中の横綱鶴竜が、復調の兆しをみせた。

都内の時津風部屋に出稽古し、前頭の北勝富士との三番稽古で計15番取って12勝。出足の鋭い相手に、さらに鋭く前に出て一気に寄り切るなど好調だった。年末年始は体調不良に悩まされ、体重も減るなどしたが「100%ではないけど、場所までには問題ない。やっと毒が出た感じがする」とうなずいた。

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新入幕の霧馬山にネスレの化粧まわし 三賞で恩返し

ネスレ日本から化粧まわしを贈呈され、化粧まわしのデザインと同じくコーヒーを飲む霧馬山(撮影・佐藤礼征)

大相撲初場所(12日初日、東京・両国国技館)で新入幕を果たした東前頭17枚目霧馬山(23=陸奥)が8日、東京・渋谷区のネスカフェ原宿で「ネスレ日本」から化粧まわしを贈呈された。

陸奥部屋には、15年からネスレのコーヒーマシンが稽古場、ちゃんこ場、師匠の部屋と3カ所に設置されており、力士らは日常的に「ネスカフェ」のコーヒーを飲んでいる。自身がコーヒーを飲むデザインに、霧馬山は「素晴らしい。うれしいです」と笑顔を見せた。贈呈式に出席した師匠の陸奥親方(元大関霧島)は「いい成績を残して(ネスレに)恩返ししてほしい」と、初場所での活躍を期待した。

故郷のモンゴルではコーヒーを飲む機会はほとんどなく、日本に来てコーヒーの魅力に気づいた。「(コーヒーは)好き。稽古が始まる前とかに1日1杯くらい、ブラックで飲んでいる」。ネスレは「陸奥部屋ポリフェノールたっぷりちゃんこ鍋セット」を8日から、ネスカフェ原宿にて1000円で提供する。初場所中に霧馬山が白星を挙げた翌日は、半額の500円での提供に。霧馬山は「(ちゃんことコーヒーの)セットで食べたことはない。これから食べてみたい」と目を輝かせた。

この日の朝は、兄弟子の横綱鶴竜とともに時津風部屋への出稽古で初場所に向けて調整した。同じモンゴル出身の横綱白鵬に指名され、三番稽古で5番取って全敗。ぶつかり稽古では鶴竜には胸を出してもらい「めっちゃ疲れたっす。フラフラになった」と苦笑いを浮かべた。それでも両横綱と肌を合わせる貴重な機会。「ありがたいこと」と感謝した。

新入幕の初場所は初物ずくめになる。鶴竜の土俵入りでは露払いを務める予定で、前日7日に東京・明治神宮で行われた奉納土俵入りでは“デビュー”した。「緊張したけど、思ったよりできた。ドキドキしたけど」。初めての幕内の舞台。新入幕で10勝以上を挙げれば、三賞獲得にも前進する。陸奥親方は「本人は2桁勝って敢闘賞を狙っていると思う。期待している」とニヤリ。師匠のプレッシャーを受け、23歳のホープは「(星勘定は)考えないで頑張りたい」と、照れくさそうに話した。【佐藤礼征】

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照ノ富士「昔感じたことが最近、復活」初場所へ自信

申し合い稽古中に充実した表情を浮かべる十両照ノ富士

大相撲の西十両13枚目照ノ富士(28=伊勢ケ浜)が8日、都内の時津風部屋に出稽古し、初場所(12日初日、東京・両国国技館)に向けて自信をのぞかせた。新関脇の朝乃山や前頭の北勝富士、正代、豊山らと相撲を取り、計7番取って6勝1敗。「先場所よりは今場所という感じでよくなってきているのは事実」と手応えを口にした。

申し合い稽古を行う前には、土俵まわりで入念にすり足を行うなど、準備に余念がなかった。稽古中の表情は、引き締まりながらも明るく「前よりも体調はいい。汗もよく出る。(準備を)ただやるだけよりも、意識してやっている」と意図を持って稽古している。

膝の負傷と手術、内臓疾患などで番付を大関から序二段まで落とし、1度は引退を心に決めたが再起。4場所連続全休から昨年春場所で復帰し、初場所には10場所ぶりに関取として戻ってくる。理想の自分とはまだ程遠いが「ちょっとずつ足の軽さが取れてきたし、怖さも少しずつ取れてきている。昔感じたことが最近、復活している。1場所1場所ずつ上がっていけばいい」と復調を自分でも実感していた。

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阿炎が右足負傷で連合稽古を欠席 前日痛める

阿炎

大相撲初場所(12日初日、東京・両国国技館)が4場所連続の三役在位となる小結阿炎(25=錣山)が8日、右足の負傷により東京・江東区の尾車部屋で行われた二所ノ関一門の連合稽古を欠席した。前日7日の時津風部屋への出稽古で、申し合いで十両照ノ富士に浴びせ倒しで敗れた際に、右足を痛めていた。

連合稽古後、取材に応じた師匠の錣山親方(元関脇寺尾)は「昨日の出稽古で痛めたみたい。今日病院で診察に行っている。足はひきずっていた」と、弟子の状態を明かした。

阿炎は新三役だった昨年7月の名古屋場所から3場所連続で勝ち越している。13年夏場所の初土俵から、休場は1度もない。錣山親方は「(病院での)診断次第。取組編成会議(10日)を楽しみにしていてください」と、現時点での出場可否については話さなかった。

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鶴竜動き軽快も稽古量心配、高熱で体調不良見舞われ

奉納土俵入りをする鶴竜。太刀持ちは正代(撮影・鈴木正人)

大相撲初場所(12日初日、東京・両国国技館)を5日後に控えた7日、横綱鶴竜(34=陸奥)が高熱による体調不良に見舞われていたことを明かした。この日、東京・墨田区の時津風部屋への出稽古で、三番稽古で新関脇の朝乃山を指名して10番を全勝。左前ミツを素早く取る場面が目立ち、寄りや投げなど多彩な技で圧倒したが「稽古はもうちょっとやりたかった。熱がある。昨日(6日)点滴を打った。(熱は)38度ちょっと。インフルエンザではない」と明かした。

この日の午後は、東京・明治神宮で横綱白鵬とともに奉納土俵入りを行った。通常は社殿前の石畳で行われるが、雨天のため社殿内での披露となり「新鮮だった。雨はしょうがない。雨の中でもたくさんの方がいらっしゃってくれた」と、悪天候の中で駆け付けた約200人のファンに感謝した。弟弟子の霧馬山が今場所の新入幕に伴い、初めて露払いを務めた。本場所でも務める予定で“露払いデビュー”を終えた弟弟子について「いい感じでできていた」と目を細めた。

2場所連続休場中で、初場所では6度目の優勝を果たした昨年7月の名古屋場所以来の15日間皆勤を目指す。「15日間取り切ることを意識したい。稽古をしてしっかり体をつくりたい」と話した。

時津風部屋へ出稽古した鶴竜(撮影・佐藤礼征)
奉納土俵入り後、報道陣の質問に答える鶴竜(撮影・鈴木正人)

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