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朝乃山 謹慎開始、復帰…節目の名古屋場所で「2桁&優勝争い」20代最後の名古屋への思い

名古屋場所に向けた稽古を開始し、ダンベルを持ち上げて筋力強化に努めた朝乃山

大相撲で大関経験者の朝乃山(29=高砂)が5日、都内の部屋で名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)に向けて稽古を開始した。幕内力士として2年ぶりに土俵に立った5月の夏場所では、東前頭14枚目で12勝3敗の優勝次点という好成績。その千秋楽から1週間の休みを経た、稽古始めのこの日は四股やすり足といった基礎運動、ダンベルを使った筋力強化などに終始し、相撲は取らなかった。

稽古休みの1週間は、主に体のケアなどに充てたという。ただ「3月の大阪場所よりも疲れは出ていないですね。やっぱり幕内は十両とは雰囲気も違った。でも声援をもらえてうれしかったし、そういう声援に乗せられた気がする」と、場所後は疲労感よりも充実感が大きかった様子。終盤戦まで4年ぶり2度目の優勝が期待される活躍を見せたが、優勝の意識は「逆になかったですね。やっぱり12日目、13日目で負けたので、優勝は見えてこなかった」と、全くなかったという。

本来は上位との対戦はない番付だった。だが好成績で終盤戦に入っていたため、12日目に関脇大栄翔、13日目には横綱照ノ富士との割が組まれた。そこで連敗し、自力優勝が消滅。特に照ノ富士戦を振り返り「自分なりに考えて取った。左は下からおっつけるつもりだったけど差してしまい、その左をきめられた。決められたら抜けなかった」と、誘われるように差してしまった左の使い方を課題に挙げた。

新型コロナウイルスのガイドライン違反で6場所の出場停止が始まったのが、21年の名古屋場所だった。本場所には出場しないが、その時も名古屋には同行し、稽古していた。名古屋のファン、後援者に顔を合わせるのは「やっぱり気まずかった」と振り返った。そして1年後、謹慎明けで三段目から復帰したのも、22年の名古屋場所。そこから1年で今度は、幕内上位から中位に番付を戻すことが予想される。

「幕内上位になるかは分からない。でも、あれ(復帰)から1年で、ようやくここまで来ることができた。名古屋は(出身の)富山から車だと来やすいらしく、準ご当所だと思っている。応援に来てくれた人の前で、自分の相撲を取り切って白星を挙げたい。番付的に、今場所よりは厳しくなるけど、2桁白星と優勝争いに絡むことを目標にしたい」。

夏場所前と変わらない目標を立てたのは、大関経験者の意地ではない。今年中に、少しでも早く、三役に戻りたいという挑戦者の気持ちの表れ。今月は茨城県内、静岡県内と、2カ所で行う部屋の合宿で、一段と相撲漬けの生活を送る予定。さまざまなことがあった20代の名古屋場所の最後に、鮮やかな足跡を残す準備を進めている。【高田文太】

名古屋場所に向けた稽古を開始し、ダンベルを使って筋力強化に努めた朝乃山
名古屋場所に向けた稽古を開始し、すり足を繰り返した朝乃山

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新十両勇磨、元益荒雄の先代阿武松親方にもらったえんじ色の着物で会見「ずっと着ていなかった」

新十両昇進会見に臨む勇磨

日本相撲協会は31日、東京・両国国技館で大相撲名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)の番付編成会議を開き、十両昇進力士5人を発表した。28日まで行われた夏場所を、東幕下5枚目で5勝2敗だった勇磨(24=阿武松)は新十両昇進が決定。両国国技館で師匠の阿武松親方(元前頭大道)同席で会見し、開口一番「本当によかった。メチャクチャうれしい」と、声を弾ませ、満面の笑みを見せた。

これまでに左膝のけがで三段目から番付外まで、さらに幕下に上がった後も3度の左手首の手術で、なかなか番付を上げられなかった苦労人。特に左手は「左利きなんですが、はしを持つこともできなくなったので、両利きになりました」というほど、日常生活にも支障を来す大けがだった。

それでも先代の阿武松親方(元関脇益荒雄)や現在の師匠らによる、粘り強い指導で徐々に番付を上げていった。この日は、先代の阿武松親方が退職した19年に、もらっていたえんじ色の着物で会見。「新品のままずっと着ていなかった。ようやく着る機会ができた。本当にいい色」と、大事に保管しており、晴れの日に感謝の意を示した。また現師匠からは「本当に無理するなよ。無理な時は『無理』とはっきり言えよ」と、常々気に懸けてもらうなど、親身になって指導してもらった。番数を多くこなせない時は、四股やすり足など、基礎を繰り返し、力を蓄えてきた。

女手一つで兄勇吹(いぶき)さん、弟で元阿武松部屋力士だった勇聖さんとの、3兄弟を育ててくれた、大阪・枚方市に住む母操絵(みさえ)さんへの感謝の思いも尽きない。「母には1番最初に(昇進したことを)連絡しました。母は『おめでとう』と『よかった』を、延々と繰り返していました」と、笑顔で冗談交じりに話した。続けて「これからが恩返し。みんなが喜んでくれるのが1番うれしい。頑張ってよかったなと思う」と、しみじみと話した。

昨年9月の秋場所では、大関経験者の朝乃山を破った経験もある。6場所の出場停止から明け2場所目の朝乃山が、復帰後初黒星を喫したのが勇磨だった。勇磨も「あの白星で勢いに乗った」と、何よりも自信がついた。徐々に増やしてきた体重は現在128キロ。「立ち合いの圧力がついて、押されても残せる。前にも出られる」と、確かな手応えもある。初めて経験する15日間連続の取組に「大変だとは思うけど楽しみ。自分の取組を見て、元気が出るような相撲を取りたい」。苦労を重ねてきた分、この日の着物のように、鮮烈な関取デビューを目指している。【高田文太】

新十両昇進会見に臨んだ勇磨(左)は師匠の阿武松親方と握手する
新十両昇進会見に臨む勇磨。右は師匠の阿武松親方

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【大関昇進伝達式】最近昇進した大関の口上/写真特集

霧馬山の大関昇進伝達式が行われた。最近誕生した大関は、伝達式でどんな口上を述べたのか。写真特集で紹介します。

霧馬山(2023年5月31日)

「大関の名を汚さぬよう、今まで以上に稽古して頑張ります」

大関昇進の伝達を受け口上を述べる御嶽海(中央)。左は出羽海親方(2022年1月26日撮影)

大関昇進伝達式を終えた霧馬山(上)は若い衆の騎馬の上でガッツポーズ。左から勇輝、神谷、大日堂(撮影・小沢裕)

「霧島」に改名する霧馬山。大関昇進伝達式に駆けつけた母エンフゲレルさん(左)父ビャンブチュルンさんのキスに笑顔(撮影・小沢裕)

御嶽海(2022年1月26日)

「大関の地位を汚さぬよう、感謝の気持ちを大切にし、自分の持ち味を生かし、相撲道にまい進してまいります」

大関昇進伝達式を終えお祝いのタイを手に笑顔を見せる霧馬山(前列左から3人目)。前列左から陸奥親方夫人、陸奥親方(元大関霧島)、1人おいて伊勢ノ海理事。霧馬山の後ろは母エンフゲレルさん(後列右から4人目)父ビャンブチュルン(同3人目)(撮影・小沢裕)

大関昇進の伝達を受け、タイを手に笑顔の御嶽海(手前中央)(2022年1月26日撮影)

大関昇進を伝達された後、肩車で祝福される御嶽海(2022年1月26日撮影)

大関昇進の伝達を受け、記念撮影に応じる、左から御嶽海の父大道春男さん、御嶽海、母マルガリータさん(2022年1月26日撮影)

照ノ富士(2021年3月31日)

「謹んでお受けします」

大関再昇進を果たした照ノ富士(左から2人目)は伊勢ケ浜親方夫妻らと記念撮影。左はツェグメド・ドルジハンド夫人(2021年3月31日撮影)

大関昇進に笑顔の照ノ富士(中央)。左から淳子夫人、1人おいて伊勢ケ浜親方(2015年5月27日撮影)

大関昇進を決めた照ノ富士は、騎馬に乗ってガッツポーズ(2015年5月27日撮影)

正代(2020年9月30日)

「至誠一貫の精神で相撲道にまい進してまいります」

大関昇進の伝達を受ける正代(中央)。右は枝川親方(2020年9月30日撮影)

大関昇進の伝達を受ける朝乃山(右)と高砂親方(2020年3月25日撮影)

若手力士らに担がれ笑顔を見せる朝乃山(2020年3月25日撮影)

朝乃山(2020年3月25日)

「大関の名に恥じぬよう、相撲を愛し、力士として正義を全うし、一生懸命努力します」

タイを手に笑顔の朝乃山(中央)。前列右側は高砂親方夫妻、後列左から2人目は父の石橋靖さんと母の佳美さん(2020年3月25日撮影)

大関昇進の伝達式で口上を述べる貴景勝(左)、右は千賀ノ浦親方(2019年3月27日撮影)

大関昇進の伝達式を終え騎馬で祝いを受ける貴景勝(2019年3月27日撮影)

貴景勝(2019年3月27日)

「大関の名に恥じぬよう、武士道精神を重んじ、感謝と思いやりの気持ちを忘れず、相撲道に精進してまいります」

大関昇進の伝達式を終え鯛を手にする貴景勝(2019年3月27日撮影)

大関昇進伝達式に臨む、左から春日野親方の紀子夫人、栃ノ心、春日野親方、使者の出羽海理事、大鳴戸委員(2018年5月30日撮影)

大関昇進伝達式を終えた栃ノ心(中央)はお祝いの鯛を手に、前列左から春日野親方の紀子夫人、1人おいて先代春日野親方、春日野親方ら関係者と記念撮影に臨む(2018年5月30日撮影)

栃ノ心(2018年5月30日)

「親方の教えを守り、力士の手本となるように稽古に精進します」

大関昇進伝達式を終えた栃ノ心(中央)はジョージア国旗を掲げて、部屋の若い衆が作った騎馬上で笑顔を見せる(2018年5月30日撮影)

大関昇進伝達式で口上を述べる高安(左から2人目)と田子ノ浦親方、琴美夫人。右は片男波審判(2017年5月31日撮影)

高安(中央)は母ビビリタさん(左)と父栄二さん(右)らと記念撮影する(2017年5月31日撮影)

高安(2017年6月1日)

「大関の名に恥じぬよう、正々堂々精進します」

大関昇進伝達式の後、高安は母ビビリタさん、父栄二さんと記念撮影する(2017年5月31日撮影)

大関再昇進の伝達を受ける照ノ富士(中央)と伊勢ケ浜親方夫妻(2021年3月31日撮影)

大関再昇進を果たした照ノ富士(上)は部屋の関取衆から祝福される。左から宝富士、翠富士、錦富士(2021年3月31日撮影)

照ノ富士(2015年5月27日)

「今後も心技体の充実に努め、さらに上を目指して精進いたします」

大関昇進を決めた照ノ富士は、お祝いのタイを手ににっこり。左は伊勢ケ浜親方、右は淳子夫人(2015年5月27日撮影)

大関昇進伝達式に臨む、左から陸奥親方夫人、口上を述べる霧馬山、陸奥親方(撮影・小沢裕)

大関昇進伝達式後の記者会見で師匠のしこ名「霧島」への改名を発表し色紙を持つ霧馬山(左)と陸奥親方(撮影・小沢裕)

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霧馬山は「今まで以上に稽古して-」 過去の大関昇進伝達式での主な口上/一覧

大相撲夏場所番付編成会議 井筒部屋の若い力士がつくる騎馬上で喜ぶ霧島(1990年3月撮影)

日本相撲協会は31日、東京・両国国技館で大相撲名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)の番付編成会議と臨時理事会を開催し、関脇霧馬山(27=陸奥)の大関昇進を全会一致で承認した。

東京・墨田区の陸奥海部屋で昇進伝達式に臨んだ霧馬山は、協会から送られた使者から昇進が決まったことを伝えられると「大関の名を汚さぬよう、今まで以上に稽古して頑張ります」と口上を述べた。また、しこ名を師匠の陸奥親方(元大関)の現役時代のしこ名「霧島」に改名すると発表した。

過去の大関昇進伝達式での口上では、貴ノ花(後の横綱貴乃花)の「不撓(ふとう)不屈」、若ノ花(後の横綱3代目若乃花)の「一意専心」、さらに琴奨菊の「万里一空」や正代の「至誠一貫」など、四字熟語も、用いられることがあった。

【過去の大関昇進伝達式での主な口上】

・霧島「稽古に精進し、大関の名を汚さぬよう一生懸命頑張ります」(1990年春場所後)

・曙「大関の地位を汚さぬよう稽古に精進致します」(92年夏場所後)

・貴ノ花「不撓不屈の精神で、相撲道に精進致します」(93年初場所後)

・若ノ花「一意専心の気持ちを忘れず、相撲道に精進致します」(93年名古屋場所後)

・武蔵丸「日本の心を持って相撲道に精進致します」(94年初場所後)

・出島「力の武士(もののふ)を目指し、精進、努力致します」(99年名古屋場所後)

・武双山「大関として常に正々堂々、相撲道に徹します」(2000年春場所後)

・魁皇「大関の地位を汚さぬよう稽古に精進します」(00年名古屋場所後)

・朝青龍「大関の名に恥じぬよう、一生懸命頑張ります」(02年名古屋場所後)

・白鵬「大関の地位を汚さぬように、全身全霊を懸けて努力します」(06年春場所後)

・琴奨菊「大関の地位を汚さぬよう万理一空の境地を求めて、日々、努力精進致します」(11年秋場所後)

・稀勢の里「大関の名を汚さぬよう、精進致します」(11年九州場所後)

・鶴竜「お客さまに喜んでもらえるような相撲が取れるよう努力します」(12年春場所後)

・照ノ富士「今後も心技体の充実に努め、さらに上を目指して精進します」(15年夏場所後)

・貴景勝「武士道精神を重んじ、感謝の気持ちと思いやりを忘れず相撲道に精進して参ります」(19年春場所後)

・朝乃山「相撲を愛し、力士として正義を全うし、一生懸命努力します」(20年春場所後)

・正代「至誠一貫の精神で相撲道にまい進してまいります」(20年秋場所後)

・御嶽海「感謝の気持ちを大切にし、自分の持ち味を生かし、相撲道にまい進してまいります」(22年初場所後)

大関昇進伝達式に臨む、左から陸奥親方夫人、口上を述べる霧馬山、陸奥親方、使者の伊勢ノ海理事、枝川審判委員(撮影・小沢裕)
大関昇進伝達式に臨む、左から陸奥親方夫人、口上を述べる霧馬山、陸奥親方、使者の伊勢ノ海理事、枝川審判委員(撮影・小沢裕)
大関昇進伝達式に臨む、左から陸奥親方夫人、口上を述べる霧馬山、陸奥親方(撮影・小沢裕)
大関昇進伝達式後の記者会見で師匠のしこ名「霧島」への改名を発表し色紙を持つ霧馬山(左)と陸奥親方(撮影・小沢裕)

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霧馬山が大関昇進、全会一致で承認 3場所合計34勝 モンゴル出身は照ノ富士以来6人目

霧馬山(2023年5月29日撮影)

日本相撲協会は31日、東京・両国国技館で大相撲名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)の番付編成会議と臨時理事会を開催し、関脇霧馬山(27=陸奥)の大関昇進を全会一致で承認した。この後、協会から送られた使者が東京・墨田区の陸奥海部屋を訪れ、霧馬山は昇進伝達式に臨む。

伝達式で最も注目されるのが口上だ。貴ノ花(後の横綱貴乃花)の「不撓(ふとう)不屈」、若ノ花(後の横綱3代目若乃花)の「一意専心」、さらに琴奨菊の「万里一空」や正代の「至誠一貫」など、それまで聞き慣れない四字熟語も、用いられることがあった。

関係者によると、モンゴル出身で実直な人柄の霧馬山は、飾らない言葉で口上を述べる見通しだという。師匠の陸奥親方(元大関霧島)が、大関昇進の際に用いた「一生懸命」を継承するかどうか。平成以降では霧島のほか、朝青龍、朝乃山も用いたこのフレーズを盛り込むかも注目される。

霧馬山は、今年の初場所を11勝4敗、春場所では12勝3敗で初優勝を飾り、大関とりの夏場所は11勝4敗だった。この3場所で合計34勝を挙げ、大関昇進の目安とされる「三役で直近3場所33勝」を上回った。三役は計6場所で通過。モンゴル出身力士では15年夏場所後の照ノ富士以来6人目となる。

◆霧馬山鐵雄(きりばやま・てつお)本名ビャンブチュルン・ハグワスレン。1996年4月24日、モンゴル・ドルノドゥ生まれ。体験入門を経て15年夏場所で初土俵を踏み、19年春場所で新十両昇進。20年初場所で新入幕。優勝1回、技能賞3回、敢闘賞1回。得意は左四つ、寄り、投げ。186センチ、143キロ。血液型O。家族は両親、兄、妹。愛称は「ハグワ」。

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31日大関昇進の霧馬山、伝達式での口上は? 師匠陸奥親方が用いた「一生懸命」継承するか注目

霧馬山(2023年5月29日撮影)

大相撲の関脇霧馬山(27=陸奥)が31日、名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)の番付編成会議、臨時理事会を経て、正式に大関に昇進する。それを受けて行われる伝達式で最も注目されるのが口上だ。貴ノ花(後の横綱貴乃花)の「不撓(ふとう)不屈」、若ノ花(後の横綱3代目若乃花)の「一意専心」、さらに琴奨菊の「万里一空」や正代の「至誠一貫」など、それまで聞き慣れない四字熟語が、用いられることがあった。

ただ関係者によると、モンゴル出身で実直な人柄の霧馬山は、飾らない言葉で口上を述べる見通しだという。師匠の陸奥親方(元大関霧島)が、大関昇進の際に用いた「一生懸命」を継承するかどうか。平成以降では霧島の他、朝青龍、朝乃山も用いた人気フレーズを盛り込むか注目される。

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横審の山内委員長「全ての力士にとって鑑」復活優勝の横綱照ノ富士を大絶賛 4関脇も高評価

横綱審議委員会の山内委員長(2023年5月4日撮影)

日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審)の定例会合が、夏場所千秋楽から一夜明けた29日、東京・両国国技館で開かれた。

記者会見に応じた山内昌之委員長(75=東大名誉教授)は、8度目の優勝を飾った横綱照ノ富士を絶賛。各委員から出た意見と私見を合わせ「横綱としての責任を十二分に果たした。横綱というものの存在感。その存在感の大きさというものも、併せて示した。今回、照ノ富士の示した大きさというものは、全ての力士にとってかがみとなる、模範となるようなものであったという大変高い評価が出ました」と話した。

また山内委員長は大関昇進を確実としている霧馬山、来場所で大関とりとなる豊昇龍、大栄翔、若元春という、いずれも夏場所で2桁白星を挙げた4関脇についても高く評価した。その上で私見として「大関の数については、こだわる必要はないのではないか」と、来場所で大関とりの3人が、いずれも好成績を挙げて、複数人の昇進があることを期待していた。

他に大関経験者で、夏場所では2年ぶりに幕内力士として土俵に立った前頭朝乃山についても「よく戻ってきた」と称賛した。さらに「名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)における朝乃山の活躍を期待したい」と、三役以上の力士以外で唯一、名指しで話題にしていた。

大相撲令和5年夏場所の優勝一夜明け会見に臨む横綱照ノ富士(撮影・小沢裕)
28日、賜杯を手に愛息のテムジン君にキスする横綱照ノ富士
28日、伊勢ケ浜部屋での祝賀会で長男・テムジン君を抱きながら笑顔を見せる照ノ富士
28日、伊勢ケ浜部屋での祝賀会でツェグメド・ドルジハンド夫人(右)から手渡された長男・テムジン君を笑顔で抱く照ノ富士。前列右から2人目はおかみさんの淳子夫人

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朝乃山は12勝で2年ぶりの幕内復帰場所を終える「背中を押してくれた」相撲ファンに感謝

朝乃山(右)は寄り切りで剣翔を破る(撮影・足立雅史)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

大関経験者で東前頭14枚目の朝乃山(29=高砂)が、幕内では自己最多に並ぶ12勝目を挙げ、2年ぶりに幕内力士として戻った今場所を終えた。

剣翔をじっくり攻め、最後は上手を引きつけて万全の寄り切り。12勝3敗とし、他の力士の結果を待たずに、14日目に優勝を決めた横綱照ノ富士の優勝次点となることが決まった。

取組後は「自分の形になった。上手を取れたので、引きつけて出ていった」と、落ち着いて取り切った相撲にうなずいた。12勝という結果には「幕内では12番までしか勝ったことがない。あと1、2番は勝ちたかった」と、率直な感想を述べた。

15日間を振り返り「十両と違って、負けたくないプレッシャーもあった。でも土俵に上がると、声援が力になった。背中を押してくれた。楽しく、思い切ってできた」と、相撲ファンに感謝した。

来場所は大きく番付を上げることも予想されるが「来場所が勝負。今の三役は非常に強い。(このままだと)全く通用しないと思う」と、強い危機感も示した。最後、報道陣に「15日間、ありがとうございました」と、頭を下げ、大きな声で感謝の思いを伝えて引き揚げた。

朝乃山は寄り切りで剣翔を破る(撮影・足立雅史)
朝乃山(左)は剣翔を寄り切りで破る(撮影・小沢裕)

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明生が初の殊勲賞 霧馬山は3場所連続で技能賞、若元春も初受賞 敢闘賞は受賞者なし

夏場所9日目、照ノ富士(右)を寄り切りで破る明生(2023年5月22日撮影)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

日本相撲協会は28日、大相撲夏場所が開催されている両国国技館で同場所の三賞選考委員会を開き、千秋楽の結果を待たずに受賞力士が決まった。

殊勲賞は、14日目までにただ1人、優勝した横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)に9日目に土をつけ金星を挙げた、東前頭6枚目の明生(27=立浪)が、初の殊勲賞を受賞した(三賞は21年春場所の敢闘賞以来2度目)。

敢闘賞は、千秋楽で勝った場合という条件付きで、関脇豊昇龍(24=立浪)、関脇若元春(29=荒汐)、平幕の朝乃山(29=高砂)の名前が候補に上がったが、いずれも出席委員の過半数の得票に至らず、受賞者なしに終わった。

技能賞は、14日目まで優勝争いに加わり、大関昇進をほぼ確実にした関脇霧馬山(27=陸奥)が3場所連続3度目の受賞(三賞は20年初場所の敢闘賞を含め4度目)を決めた。

もう1人の技能賞は初受賞の関脇若元春で、こちらは三賞も初受賞となった。

夏場所12日目、懸賞金の束を手に土俵を引き揚げる霧馬山(2023年5月25日撮影)
夏場所11日目、北青鵬(奥)をうっちゃりで破る若元春(2023年5月24日撮影)

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八角理事長、照ノ富士Vに「やはり横綱」敗れた霧馬山に「自分から勝負しないと」

幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

4場所連続休場明けの横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、過去9戦全勝と合口のいい関脇霧馬山(27=陸奥)に貫禄勝ち。寄り切って、ちょうど1年(6場所)ぶり8度目の優勝を遂げた。

合口がいいとは言え、相手は大関昇進を確実にし、優勝争いでも1差にピタリとつける霧馬山。左おっつけ、右からのいなし、右前まわし探りながら頭をつけるなど、横綱攻略に万策を尽くした。それでも横綱は冷静に対処。腰を低くドッシリ落とし、寄り切った。

霧馬山が勝てば、3敗の朝乃山(29=高砂)を含め3人に優勝の可能性を残し、千秋楽を迎えるところだった。報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、取組前に「照ノ富士は力強いし体も柔らかい。(霧馬山とすれば)二本差すより前みつだろう」と、霧馬山の勝機を探るように展望していた。白熱した一番が終わると開口一番「よく頑張った」と、1人横綱の重責を果たした照ノ富士を称賛。続いて霧馬山について「攻めきれなかった。まわしを取られても、自分から勝負しないと(ダメ)」と敗因を分析した上で、さらに「よく頑張った。(照ノ富士の優勝は)最高でしょう。精神的に、やはり横綱。よく頑張ってくれた」と再び、休場明けVをたたえていた。

土俵下で見守った藤島審判長(元大関武双山)は、照ノ富士の気迫を見逃さなかった。「相当、集中していました。気迫が入ってましたね」と仕切りから発散される横綱の気合を感じ取った様子。さらに「初日に正代に、すくい投げで勝ったと思いますが、あれで『動けるんだ』というを、つかめたと思います。残すところは残し、攻めるところは攻める。ただ、精神的に普通の人とは違うんです。すごいものを背負っていて、成績いかんでいろいろなことが起こるかもしれない」と、負けが込めば進退問題に発展するかもしれない横綱の重責を強調。それを克服しての優勝を、称賛に値するものと評価した。

照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
照ノ富士(右)は霧馬山を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける

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朝乃山が738日ぶりに三役から白星 小結正代破り「今日という一番を思い切ってやった」

朝乃山(手前右)は正代を寄り倒しで破る(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

今場所、2年ぶりに幕内力士として土俵に立った東前頭14枚目の朝乃山(29=高砂)が、738日ぶりに三役から白星を挙げた。同じ大関経験者の小結正代を、立ち合いから押し込んだ。土俵際で粘る相手に、覆いかぶさるように寄り倒し。際どい勝負だったが、攻め込んだ朝乃山の左腕が土俵につくのが、正代が落ちるよりも遅く、勝ち名乗りを受けた。

12日目は関脇大栄翔、前日13日目は横綱照ノ富士を相手に連敗していたが、11勝3敗とした。取組終了時点では辛うじて優勝の可能性を残していたが、結びの一番で1敗の照ノ富士が、2敗の関脇霧馬山を破って8度目の優勝が決定。朝乃山の4年ぶり2度目の優勝は、来場所以降に持ち越しとなった。

取組後は「左(前まわし)を取れた感触はあったけど切れた。止まったら、しぶとい正代関。右を差され、土俵際で巻き替えられたけど、体を預けて寄り倒した。(倒れ込んだ際に左腕を引っ込めたのは)無意識。よかったです」と振り返った。前日は照ノ富士に敗れたが「何も考えず、今日という一番を思い切ってやった。昨日(13日目)の横綱戦は精いっぱい、思い切ってやった結果。負けは仕方ないと切り替えられた」と、11勝目を挙げることだけに集中して臨んでいた。

三役に勝つのは、新型コロナウイルスのガイドライン違反で、6場所出場停止となる前の21年5月19日、夏場所11日目で関脇隆の勝に勝って以来だった。「三役とやるのは(12日目の大栄翔戦に続き)2人目。来場所は全員と当たりたい。4関脇3小結に、今のままだと勝てない。1年の謹慎で三役の顔ぶれが変わったけど、負けないようにしたい」。

まずは千秋楽の相手に決まった、剣翔戦に勝って12勝目を挙げることが目標。少しでも来場所の番付を上げ、名古屋場所(7月9日初日、名古屋市・ドルフィンズアリーナ)では、三役以上から多くの白星を重ねるつもりだ。

正代(左)を寄り倒しで破る朝乃山(撮影・中島郁夫)
正代(左)を寄り倒しで破る朝乃山(撮影・中島郁夫)

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照ノ富士が復活の優勝、新関脇の若元春は10勝目、朝乃山は11勝目

照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士が復活の優勝を飾った。

星1つ差で追っていた関脇霧馬山と対戦。外四つの厳しい体勢となったが、右を巻きかえて一気に体を寄せて寄り切った。

昨年秋場所の途中休場から4場所連続の休場。横綱の威厳を示す形で6場所ぶり8度目の優勝を飾った。

新関脇の若元春は大関貴景勝を押し倒して2桁10勝目。先場所は小結で11勝をあげており、来場所は大関とりに挑む権利を得た。

幕内に復帰の東前頭14枚目・朝乃山は、小結正代を寄り倒し、11勝目をあげた。

照ノ富士(右)は霧馬山を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
貴景勝(右)を土俵際へ攻め込む若元春(撮影・小沢裕)

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横綱照ノ富士が6場所ぶり8度目の復活V 3場所連続全休した横綱では89年初場所の北勝海以来

拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活Vを果たした。結びで1差で追う関脇霧馬山との直接対決を寄り切りで制した。千秋楽を残して6場所ぶり自身8度目の賜杯。3場所以上続けて全休した横綱が優勝したのは、1989年初場所を制した北勝海(現八角理事長)以来34年ぶりのこととなった。

照ノ富士は昨年9月の秋場所で途中休場。翌10月に両膝の手術を受けた。再起へ懸命なリハビリを行い、復帰に向けて準備してきた。今場所は初日から負けなしの8連勝でストレート給金を達成。9日目に明生に金星を配給したが「引きずってもしょうがない」とすぐに気持ちを切り替えた。12日目に若元春を退け、8日目以来、今場所2度目の単独トップに立った。そして迎えた大一番で、朝乃山を物ともせず12勝目。22年夏場所以来の優勝へ大きく前進した。

「最後まで優勝に絡まないといけない」という横綱としての強い覚悟。今場所後の大関昇進が確実の霧馬山も下しての自力優勝を決め、満員の両国国技館で自身の復活を印象付けた。【平山連】

拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた照ノ富士は詰め掛けた観客の拍手を受けながら花道を引き揚げる(撮影・小沢裕)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける

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照ノ富士、横綱が復帰場所で優勝なら3人目「あと2日間しっかり頑張る」平常心を貫き霧馬山戦へ

照ノ富士は朝乃山(手前)を小手投げで破る(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇13日目◇26日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活Vに王手をかけた。1差で追う元大関の平幕朝乃山を小手投げで退け、1敗を守った。14日目の結びで2敗の関脇霧馬山に勝利すれば、千秋楽を残して6場所ぶり8度目の優勝が決まる。

   ◇   ◇   ◇

照ノ富士が貴重な1勝を手にした。低く当たって左を差しにきた朝乃山の攻めにも動じず、右の小手で振って豪快に仕留めた。過去5戦全勝と合口の良い相手にも「土俵に上がったら、いつ、何が起こるか分からないので」と警戒を怠らず、貫禄のある相撲で館内を沸かせた。意図した展開に「落ち着いてやれたかな」と振り返った。

ここまで終始、冷静な取り口が光る。誰が相手でも関係ない。「勝っても、負けても自分のやるべきことを精いっぱいやるだけ」。場所中、事あるごとに口にしてきたことを体現した。「ここまでは悪くない」と手ごたえを感じている。

昨年9月の秋場所で途中休場。翌10月に両膝の手術を受けた。再起へ懸命なリハビリを行い、復帰に向けて準備してきた。今場所は初日から負けなしの8連勝でストレート給金を達成。9日目に明生に金星を配給したが「引きずってもしょうがない」とすぐに気持ちを切り替えた。12日目に若元春を退け、8日目以来、今場所2度目の単独トップに立った。そして迎えた大一番で、朝乃山を物ともせず12勝目。22年夏場所以来の優勝へ大きく前進した。

横綱が3場所以上続けて全休したのは昭和以降で過去に14例。その中で復帰場所で優勝したのは、1968年秋場所の大鵬と89年初場所での北勝海の2人だけと数少ない。「最後まで優勝に絡まないといけない」と横綱としての強い覚悟を見せる照ノ富士。14日目に関脇霧馬山戦で勝てば優勝が決まる状況だが、「あと2日間しっかり頑張ります」。自らに言い聞かせるかのように、平常心を貫いている。【平山連】

照ノ富士に小手投げで敗れた朝乃山(右)(撮影・小沢裕)
土俵に一礼する照ノ富士(撮影・中島郁夫)
朝乃山(右)を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)
支度部屋で囲み取材を受ける照ノ富士(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】照ノ富士追う霧馬山に勝機あり、長期戦になれば逆転も 朝乃山は攻め半テンポ遅い

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇13日目◇26日◇東京・両国国技館

大関時代に照ノ富士に5戦全敗していた時の朝乃山の取り口は、攻めきったと思われた土俵際で、上半身が伸びてしまう印象がありました。下半身で相撲を取っていなかったということです。

2年たったこの日の対戦で改善点があったことは評価に値します。立ち合いも頭から強く当たって、左からのおっつけで横綱を後退させました。その左を差した体勢でも上体は伸びきっていない。ただ、残念ながらここからの攻めが半テンポ遅かった。差した左もかいなを返すわけでもなく、これでは横綱に抱えられるだけです。前に出るにしても、もっと腰を相手にぶつけるようにしないと圧力が伝わりません。これでは横綱の思うつぼ。劣勢に見えて照ノ富士には状況判断する余裕がありました。幕内上位と当たる体力が、まだついていないうちの幕内復帰で、今場所の朝乃山は気力で乗り切っていると思います。残る2日も大事な土俵になります。

優勝争いは、14日目に照ノ富士が直接対決で霧馬山に勝てば優勝決定です。ただ霧馬山にも勝機は十分あります。この日の北青鵬戦で見せたように、上手を取って頭をつけ半身の体勢で横に食い付いたり、足技で横綱を崩したり、いろいろ作戦はあります。長い相撲にでもなれば、より霧馬山が有利かなと思います。勝って優勝を決めたい照ノ富士は右を差して霧馬山を起こし、早めに勝負を決めたいところでしょう。(日刊スポーツ評論家)

朝乃山(左)を小手投げで破る照ノ富士(撮影・中島郁夫)
朝乃山を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(右)は外がけで北青鵬を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)

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朝乃山、照ノ富士に敗れ自力優勝は消滅「絶対に負けないという気持ちの部分」が現時点での「差」

取組後の囲み取材で悔しそうな表情を見せる朝乃山(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇13日目◇26日◇東京・両国国技館

大関経験者で東前頭14枚目の朝乃山(29=高砂)は、1差で追うトップの横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)に敗れ、10勝3敗で自力優勝の可能性が消滅した。

同じ右四つの照ノ富士に、これで6戦全敗。立ち合いで相手に右を差させないよう、左はおっつけにいった。だが相手に左を抱えられ、前への推進力を利用されて小手投げに敗れた。「横綱の右手が抜けて、押し込んでいく時に左を差してしまったのがダメだった。抱えられて、上体が伸びて、起きてしまった」と、悔しそうに振り返った。

過去5度の対戦は、いずれも自身が大関で、照ノ富士の方が番付下位だった。6度目で初めて、自身の方が番付下位で顔を合わせたが、合口の悪さは変わらなかった。加えて朝乃山が結びの一番で取組を行うのは、大関時代の21年5月17日、夏場所9日目で阿武咲に勝って以来、739日ぶり。「久しぶりの結びで緊張した」と、冷静に取り切ることはできなかった。一方で久々の結びの一番で「思い切ってできた。照ノ富士関が横綱になってから初めてできたのもよかった」と、独特の雰囲気を思い出し、胸の高鳴りも覚えた様子だ。

それでも、現時点で照ノ富士とは「まだまだ差はたくさんある」と、課題も強く残った一番となった。現時点での「差」について朝乃山は「絶対に負けないという気持ちの部分。それが今日の小手投げにも出ていた」と、肩を落とした。

4月の春巡業中には、同じ右四つということもあり、何度もアドバイスをもらった。特に印象的だったのが「胸から行く相撲で、体が伸びきっている。それを直した方がいい」というものだった。自身が、何となくばくぜんと感じていた課題を、ズバリと言葉で表現された。今場所は「前にはたかれてもいいぐらい、体を起こさず、体を丸めて猫背にしていきたい」と、照ノ富士のアドバイスをもとに、低い立ち合いを心掛け、好成績につなげていた。

照ノ富士戦の白星に向けて「これまでの対戦も、胸からいったり(頭から)かましていったり…。どうやったら勝てるのか、ずっと考えていた」と、試行錯誤を繰り返してきていた。師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)には、この日の朝稽古中に呼ばれ「ガップリになると横綱の方が力が強い。下から中に入るような相撲を取れ」と、アドバイスを受けた。照ノ富士本人の言葉を含むさまざまな助言、対戦して得たさまざまな感触をつなぎ合わせ、白星を目指したが、またもはね返された。

結びの一番が久々なら、横綱戦は20年3月21日、春場所14日目で鶴竜に敗れて以来、1161日ぶりだった。照ノ富士と対戦するのも、21年3月27日、春場所14日目以来、790日ぶりだった。この日の取組後は「(照ノ富士戦は取組前まで)5連敗していたし、毎回勝ちたい思いはあったけど負けて悔しい」と、唇をかんだ。

前日の取組後、照ノ富士に1差をつけられ、この日で2差に広がった。残り2日間、自身が連勝、照ノ富士が連敗、さらに2敗の霧馬山も千秋楽で敗れるという、逆転優勝には極めて少ない可能性しかなくなった。「これで2差がついた。優勝は厳しいかもしれないけど、来場所のために、あと2つ(残り2番)、自分の相撲を取り切るように頑張りたい」。今場所の復活優勝は極めて厳しくなったが、来場所以降の復活優勝への思いを強めていた。

照ノ富士に小手投げで敗れた朝乃山(右)(撮影・小沢裕)
朝乃山(左)を小手投げで破る照ノ富士(撮影・中島郁夫)

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八角理事長「悪くない、いい当たりだった」朝乃山の攻めを評価、照ノ富士の盤石ぶりたたえる

照ノ富士に小手投げで敗れた朝乃山(右)(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇13日目◇26日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、合口のいい平幕の朝乃山(29=高砂)との約2年ぶりの対戦を制し、優勝に一歩、前進した。

朝乃山の大関時代に、番付で下だった照ノ富士とは5度対戦し、すべて照ノ富士の勝利。朝乃山が攻め込むも、土俵際の詰めを欠いたりする場面が多かった。

2年前までを再現するかのように、朝乃山が左おっつけから、その左を差して攻め込むが、後退しながら照ノ富士は右の小手に巻いて、渾身(こんしん)の力で打った小手投げで勝負を決めた。1敗と単独トップをキープした照ノ富士と、3敗に後退し優勝争いから大きく後退した朝乃山。明暗がクッキリ分かれた。

報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、取組前に「いい相撲を期待したい。ガップリになって、お互いに力を出し合って」と期待していた。勝負は、時間にすれば3秒7と短かったが、勝負が決すると同理事長は「(朝乃山は攻めを)考えたけどね。(相撲は)悪くない。いい当たりだった」と朝乃山の攻めを評価。その上で「照ノ富士がドッシリしていたということ」と番付最上位の盤石ぶりもたたえた。

土俵下で見守った浅香山審判長(元大関魁皇)は、照ノ富士の気迫を見逃さなかった。「気合の入った厳しい相撲でした。仕切っているときから気迫が、照ノ富士から感じるものがありました」と取組前の横綱の精神状態を察知。朝乃山についても「しっかり当たって攻めたけど、タイミング良く決まった感じでした。(横綱は)踏み込まれていても余裕はあった」と、やはり横綱の強さを評価していた。

取組後の囲み取材で悔しそうな表情を見せる朝乃山(撮影・小沢裕)
朝乃山(右)を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)

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照ノ富士が8度目V王手、14日目に1差の霧馬山と直接対決で勝てば優勝 貴景勝はかど番脱出

朝乃山を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)

<大相撲夏場所>◇13日目◇26日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士が8回目の優勝に王手をかけた。東前頭14枚目・朝乃山を小手投げで12勝目。14日目に1差で追う関脇霧馬山との直接対決に勝てば、優勝が決まる。

霧馬山は北青鵬をそとがけで11勝目とし、大関昇進をより確実にした。

かど番の大関貴景勝は立ち合い変化から、明生を送り出し。勝ち越しを決めてかど番を脱出した。

朝乃山(左)を小手投げで破る照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
朝乃山(右)を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)

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照ノ富士が朝乃山下し1敗守り単独トップ維持 昨年5月夏場所以来1年ぶり8度目幕内優勝近づく

朝乃山を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)

<大相撲夏場所>◇13日目◇26日◇東京・両国国技館

4場所連続休場明けの横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、優勝争いを左右する大一番を制した。

大関経験者で東前頭14枚目の朝乃山(29=高砂)を下し、1敗を守り単独トップを維持した。昨年5月の夏場所以来、1年ぶり8度目の幕内優勝にぐっと近づいた。14日目の結びで対戦する関脇霧馬山から勝利すると、千秋楽を残して自力優勝が決まる。

膝痛の悪化で昨年9月の秋場所で途中休場。翌10月に両膝を手術した。再起を懸けて懸命なリハビリを行い、今場所に向けて準備してきた。初日から横綱の貫禄をみせ、負けなしの8連勝でストレート給金を達成。9日目に明生に金星を配給したが、「引きずってもしょうがない」とすぐに気持ちを切り替えた。

12日目に若元春を退け、初日から無傷で勝ち越しを決めた8日目以来、2度目の単独トップとなった。勢い余って土俵から飛び降り、着地の際には膝を痛そうにするしぐさもあったが、「大丈夫」ときっぱり言った。

過去5戦全勝と合口が良かった朝乃山を物ともしなかった。「やることは誰でも一緒。最後まで優勝に絡まないといけない」。横綱としての強い覚悟を示し、残り2日間も自分の相撲を取りきる。

朝乃山(左)を小手投げで破る照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(右)は外がけで北青鵬を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
貴景勝は送り出しで明生(手前)を破る。左奥から土俵下控えの照ノ富士、霧馬山(撮影・小沢裕)
朝乃山(右)を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)
土俵に一礼する照ノ富士(撮影・中島郁夫)

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“鶴竜2世”霧馬山、鶴竜親方断髪式は「良い報告を持って」 2場所連続Vへ1差で照ノ富士追う

貴景勝(右)を激しく攻める霧馬山(撮影・鈴木正人)

<大相撲夏場所>◇12日目◇25日◇東京・両国国技館

大関とりの関脇霧馬山(27=陸奥)が、今場所後の大関昇進を確実にした。かど番の大関貴景勝を寄り切り10勝目を挙げ、昇進の目安とされる3場所合計33勝に到達。終盤戦にかけて力強い立ち合いが増え、相撲内容も安定してきた。2場所連続優勝へ、首位を1差で追う。朝乃山が大栄翔に敗れ2敗に後退し、1敗を守った横綱照ノ富士が単独トップに立った。

霧馬山が会心の相撲から節目の1勝を手にした。「思い切り当たっていく気持ちだった」と狙い通りの攻めで貴景勝から先手を取ると、深く右を差したまま休むことなく押し込み、圧倒した。勝負が決まると大きく息を吐き「勝ってうれしかった」。この日、NHKのテレビ解説を務めた兄弟子の元横綱鶴竜親方からも「ここ4日間は相撲の流れがいい」とたたえられた。

大関とりまで8年半。力士になる前段のテストを受けるため14年10月に来日した。もともと相撲経験はなかったが、師匠の陸奥親方(元大関霧島)が素質を見抜いて翌15年1月に正式入門した。100キロに満たなかった体重を徐々に増やしながら、モンゴルの遊牧民生活で培ったスタミナと強い足腰で出世。19年春場所で新十両に昇進し、その半年後、先代井筒親方(元関脇逆鉾)の死去に伴い井筒部屋に所属力士が移籍してきた。これが転機となった。

来日前からテレビで取組を見て憧れていた横綱鶴竜が兄弟子となり、土俵内外で指導を受けた。食事は茶わん3杯のご飯を食べるまで付きっきりで監視され、激しい稽古で地力をつけた。今では組んでも良し、押しても良しの万能型に成長。型にとらわれず自分の体に任せて取る柔軟な取り口はまるで“鶴竜2世”だ。

公私にわたって支えてくれた横綱は21年3月に現役引退し、場所後の6月3日に断髪式を控える。世話になった恩に報いる気持ちから「『大関霧馬山』という名前で行けたら。良い報告を持っていく」と誓って大関昇進を確実としたが、満足はない。2場所連続優勝へ1差でトップに立つ横綱照ノ富士を追う。「まだ3日間あるんで、最後まで一番、一番頑張ります」。引き締まった表情のまま国技館を後にした。【平山連】

貴景勝(右)を寄り切りで破る霧馬山(撮影・中島郁夫)

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