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横審の山内委員長「全ての力士にとって鑑」復活優勝の横綱照ノ富士を大絶賛 4関脇も高評価

横綱審議委員会の山内委員長(2023年5月4日撮影)

日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審)の定例会合が、夏場所千秋楽から一夜明けた29日、東京・両国国技館で開かれた。

記者会見に応じた山内昌之委員長(75=東大名誉教授)は、8度目の優勝を飾った横綱照ノ富士を絶賛。各委員から出た意見と私見を合わせ「横綱としての責任を十二分に果たした。横綱というものの存在感。その存在感の大きさというものも、併せて示した。今回、照ノ富士の示した大きさというものは、全ての力士にとってかがみとなる、模範となるようなものであったという大変高い評価が出ました」と話した。

また山内委員長は大関昇進を確実としている霧馬山、来場所で大関とりとなる豊昇龍、大栄翔、若元春という、いずれも夏場所で2桁白星を挙げた4関脇についても高く評価した。その上で私見として「大関の数については、こだわる必要はないのではないか」と、来場所で大関とりの3人が、いずれも好成績を挙げて、複数人の昇進があることを期待していた。

他に大関経験者で、夏場所では2年ぶりに幕内力士として土俵に立った前頭朝乃山についても「よく戻ってきた」と称賛した。さらに「名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)における朝乃山の活躍を期待したい」と、三役以上の力士以外で唯一、名指しで話題にしていた。

大相撲令和5年夏場所の優勝一夜明け会見に臨む横綱照ノ富士(撮影・小沢裕)
28日、賜杯を手に愛息のテムジン君にキスする横綱照ノ富士
28日、伊勢ケ浜部屋での祝賀会で長男・テムジン君を抱きながら笑顔を見せる照ノ富士
28日、伊勢ケ浜部屋での祝賀会でツェグメド・ドルジハンド夫人(右)から手渡された長男・テムジン君を笑顔で抱く照ノ富士。前列右から2人目はおかみさんの淳子夫人

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優勝の照ノ富士、初めて語った第1子長男への思い「モチベーション」の回答に見えた横綱の責任感

大相撲令和5年夏場所の優勝一夜明け会見に臨む横綱照ノ富士(撮影・小沢裕)

大相撲夏場所で8度目の優勝を飾った横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、初めて第1子の長男について語った。

同場所千秋楽から一夜明けた29日、都内の部屋で会見。長男の杉野森照務甚(すぎのもり・てむじん)くんについて「去年の11月に生まれて、自分の子ですし、何て言うのか…。本当にかわいいですね」と話した。千秋楽の支度部屋では、一緒に記念撮影に納まったり、抱っこしてあやしたりといった場面を披露していた。

昨年9月の秋場所から4場所休場していた照ノ富士にとって、夏場所は照務甚くん誕生後、最初の本場所だった。それがモチベーションになったか問われると「何かがあるから、余計にこうしよう、ああしようという思いでは、もともと場所に臨んでいない。その場所、その場所、その日、その日が全部大事だと思っている。いつ何が起きるか分からないので。こういうことがあったから、この場所が大事という思いはない。もちろん、家庭のことだから、この子にこうしてあげたいなという思いは、ありますけど。だからといって、その場所だけということではありません」ときっぱり。あくまで横綱の責任感、復活と目標とする優勝10度への思いが、原動力だった様子だ。

「テムジン」は、モンゴル帝国の初代皇帝チンギスハンの本名と同じ。大きく育ってほしいという父親としての思いをうかがわせた。

それだけに昨年7月の名古屋場所以来となる、本場所15日間を完走し「(疲れが)ないと言ったらウソになる。無事に終わったなという感じ。1日1日を無駄に過ごしていなかったのがよかった」と、心身への負担が大きかったことをうかがわせた。昨年10月に手術した両膝については「大丈夫です」と断言。名古屋場所(7月9日初日、ドルフィンズアリーナ)では、自身3度目の2場所連続優勝の期待が懸かる。

その名古屋場所では、関脇霧馬山が大関に昇進して臨むことになる見通しだ。同じモンゴル出身の先輩として「(大関に)上がるのは、もちろん努力を積み重ねたからのこと。(大関の地位を)維持するという思いでやれば、落ちることしかない。逆にその上(横綱)を目指して、という思いでやってほしい」と、エールを送っていた。

大相撲令和5年夏場所の優勝一夜明け会見に臨む横綱照ノ富士(撮影・小沢裕)
大相撲令和5年夏場所の優勝一夜明け会見に臨む横綱照ノ富士(撮影・小沢裕)
大相撲令和5年夏場所の優勝一夜明け会見に臨む横綱照ノ富士(撮影・小沢裕)
大相撲令和5年夏場所の優勝一夜明け会見に臨む横綱照ノ富士(撮影・小沢裕)
夏場所千秋楽、伊勢ケ浜部屋での祝賀会で長男・テムジン君を抱きながら笑顔を見せる照ノ富士(2023年5月28日撮影)
夏場所千秋楽、伊勢ケ浜部屋での祝賀会でツェグメド・ドルジハンド夫人(右)から手渡された長男・テムジン君を笑顔で抱く照ノ富士。前列右から2人目はおかみさんの淳子夫人(2023年5月28日撮影)
夏場所千秋楽、伊勢ケ浜部屋での祝賀会でツェグメド・ドルジハンド夫人(右)から手渡された長男・テムジン君を抱く照ノ富士。前列左は師匠の伊勢ケ浜親方、前列右から2人目はおかみさんの淳子夫人(2023年5月28日撮影)
夏場所千秋楽 優勝し、賜杯を手に愛息のテムジン君にキスする横綱照ノ富士(2023年5月28日撮影)
夏場所千秋楽 優勝し、賜杯を手に愛息のテムジン君を抱いて笑顔を見せる横綱照ノ富士(2023年5月28日撮影)
伊勢ケ浜部屋前で子供から花束贈呈を受けハイタッチする照ノ富士。後方左から師匠の伊勢ケ浜親方とおかみさんの淳子夫人(撮影・小沢裕)
照ノ富士(右)の優勝インタビューに拍手を送る所ジョージ(中央左)と格闘家の安保瑠輝也(同右)(撮影・足立雅史)

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明生が殊勲賞、照ノ富士からの金星評価も終盤6連敗に「悔しい。もっと星を積み上げたかった」

殊勲賞の明生(代表撮影)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

東前頭6枚目の明生(27=立浪)が、優勝した照ノ富士を唯一破り、金星を挙げたことを評価されて殊勲賞を初受賞した。三賞は21年春場所の敢闘賞に次いで2度目。

中盤戦まで優勝争いにも加わった。この日は小結琴ノ若に押し出され、6連敗締めの8勝止まりで「悔しい。もっと星を積み上げたかった」と唇をかんだ。

琴ノ若(左)に押し出しで敗れた明生(撮影・足立雅史)
三賞を受賞しガッツポーズする左から殊勲賞の明生、技能賞の霧馬山と若元春(代表撮影)
【イラスト】名古屋場所の予想番付

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【若乃花の目】貴景勝の当たりを受け止めた照ノ富士 鬼気迫る表情の横綱がいてこそ土俵が締まる

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

照ノ富士は前日に優勝を決め、一方の貴景勝もかど番脱出を既に決めていました。昨年名古屋場所以来となる、千秋楽結びの横綱-大関対決でしたが、1人横綱と1人大関を背負ってきた2人の、それなりに意味のある一番でした。やるだけのことはやった、というのが貴景勝です。突っ張りではなく、もろ差し狙い。意表を突いて横綱を少し慌てさせました。かど番を脱出して相手が横綱だからこそ出来たのだと思います。あえてもろ差し狙いの相撲で向かった、こういう相撲を取り入れていけば今後、余裕が出てきます。精神的に土俵際まで追い詰められて学ぶことがあります。今場所の貴景勝はまさにそうで、最後のもろ差し狙いの相撲にそれが表れていました。

貴景勝の当たりを受け止めた照ノ富士の横綱としての生きざまは、優勝インタビューに表れていました。若い力士と戦うのは楽しい、というニュアンスのことを話していましたね。そんな言葉には横綱としての責任感が込められています。自分のレベルまで後輩を引き上げないと引退できない、自分を倒して追い出す力士が出ないことには辞められない-。大相撲の歴史に脈々と受け継がれてきたことで、それが本来の姿なんです。鬼気迫る表情の横綱がいてこそ土俵が締まる。今場所の照ノ富士が体現してくれました。看板力士がいてこそ大相撲ということを2人が身をもって示してくれた場所でした。(日刊スポーツ評論家)

照ノ富士(左)は押し出しで貴景勝を下す(撮影・足立雅史)
照ノ富士(手前)の横綱土俵入りを見つめる所ジョージ(中央)(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
照ノ富士(左)に押し出しで敗れた貴景勝(撮影・足立雅史)
優勝インタビューで笑顔を見せる照ノ富士(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)
優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)

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5場所ぶり実現した横綱-大関戦に八角理事長「締まった場所に」責務全うの照ノ富士&貴景勝絶賛

優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、昨年名古屋場所以来、5場所ぶりに実現した横綱-大関戦を制し、14勝1敗の好成績で優勝に花を添えた。

ここまで5勝4敗と拮抗(きっこう)していた大関貴景勝(26=常盤山)と対戦。突っ張りでなく、もろ差し狙いで向かってきた大関に、少しばかり意表を突かれる格好となったが、冷静に対応し、最後は押し出し14勝目を挙げた。

報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、まず敗れた貴景勝について言及。「今、持っている力を発揮した」と評価。来場所に向けて「体調を治して、もっといい相撲を取れるように」と注文し、最後は照ノ富士との番付上位対決が5場所ぶりに実現したこともあって「締まった場所になった」と責務を全うした1横綱1大関をほめた。

取組前にも、2人の健闘ぶりについて語った。「体調面で難しいが1横綱、1大関ともによくやっている。照ノ富士は(復帰の今場所で)結果を残したけど、貴景勝も1月(の初場所)に(優勝という)結果を残して踏ん張っている。今の精いっぱいの自分を出し切ることが大事」。さらに照ノ富士について「これだけ休んで出てきて優勝。なかなか大変なことだ。1人しか(横綱が)いないプレッシャーの中、休むのも勇気がいるんです。周りは(休場して)楽だな、と思うかもしれないけど、逆にきつい。そんな中、よく我慢して(土俵に)帰ってきて、14日目に優勝。最高の優勝じゃないかな」と、自身も体験した3場所以上の全休明けからの優勝に、賛辞を送っていた。

照ノ富士(左)に押し出しで敗れた貴景勝(撮影・足立雅史)
優勝インタビューで笑顔を見せる照ノ富士(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)
満員御礼となった両国国技館(撮影・足立雅史)

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横綱照ノ富士「本当に優勝したんだな」恒例の優勝賞品、金色の巨大マカロンも受け取る

優勝インタビューで笑顔を見せる照ノ富士(撮影・足立雅史)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

6場所ぶり8度目の優勝を決めていた横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)は千秋楽に大関貴景勝を押し出して14勝1敗で場所を終えた。

表彰式では八角理事長から1年ぶりに賜杯を渡された。日仏友好杯の副賞で恒例の巨大な金色のマカロンも受け取った。土俵下での優勝インタビューでは、まず四方に頭を下げ「本当に優勝したんだなと。(膝の)手術して復帰できて本当にうれしいです」とホッとした表情を見せた。若手力士も台頭してきたが「力をつけた若い力士と対戦するのはうれしいし、ワクワク感がある」と振り返った。

14日目の27日は1差で迎えた2敗の関脇霧馬山との直接対決。寄り切りで制して13勝目を挙げ、千秋楽を残して6場所ぶり8度目の優勝を決めていた。3場所以上続けて全休して優勝した横綱は3人目。1989年初場所を制した北勝海(現八角理事長)以来34年ぶりの復活劇となっていた。

幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
照ノ富士(左)に押し出しで敗れた貴景勝(撮影・足立雅史)
照ノ富士(手前)の横綱土俵入りを見つめる所ジョージ(中央)(撮影・足立雅史)
照ノ富士(右)の優勝インタビューに拍手を送る所ジョージ(中央左)と格闘家の安保瑠輝也(同右)(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
八角理事長から賜杯を受け取る照ノ富士(代表撮影)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
夏場所で優勝し、木原誠二内閣官房副長官(右)から内閣大臣杯を受け取る照ノ富士(左)(代表撮影)
満員御礼となった両国国技館(撮影・足立雅史)
賜杯を手に万歳する横綱照ノ富士(代表撮影)
賜杯を手に愛息のテムジン君を抱いて笑顔を見せる横綱照ノ富士(代表撮影)
賜杯を手に愛息のテムジン君にキスする横綱照ノ富士(代表撮影)
賜杯を手に万歳する横綱照ノ富士(代表撮影)
優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)
オープンカーの上でバンザイする照ノ富士。左は翠富士(代表撮影)
オープンカーの上で敬礼する照ノ富士。左は翠富士(代表撮影)
優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)
照ノ富士の優勝パレードを見送る大勢のファンら(撮影・足立雅史)
伊勢ケ浜部屋前で地元住民の祝福を受ける照ノ富士(撮影・小沢裕)
師匠の伊勢ケ浜親方と抱き合う照ノ富士(右)。左は淳子夫人(撮影・小沢裕)
師匠の伊勢ケ浜親方から水を付けてもらう照ノ富士(右)。左は親方の淳子夫人(撮影・小沢裕)
伊勢ケ浜部屋前で子供から花束贈呈を受けハイタッチする照ノ富士。後方左から師匠の伊勢ケ浜親方とおかみさんの淳子夫人(撮影・小沢裕)
伊勢ケ浜部屋での祝賀会でツェグメド・ドルジハンド夫人(右)から手渡された長男・テムジン君を抱く照ノ富士。前列左は師匠の伊勢ケ浜親方、前列右から2人目はおかみさんの淳子夫人
伊勢ケ浜部屋での祝賀会で長男・テムジン君を抱きながら笑顔を見せる照ノ富士
伊勢ケ浜部屋での祝賀会で、前列左から師匠の伊勢ケ浜親方、1人おいておかみさんの淳子夫人、長男・テムジン君を抱くツェグメド・ドルジハンド夫人と関係者に囲まれながらお祝いの鯛を掲げる照ノ富士
伊勢ケ浜部屋での祝賀会でツェグメド・ドルジハンド夫人(右)から手渡された長男・テムジン君を笑顔で抱く照ノ富士。前列右から2人目はおかみさんの淳子夫人
伊勢ケ浜部屋での祝賀会でお酒が注がれた大盃を手に笑顔を見せる照ノ富士

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1年ぶり復活優勝の横綱照ノ富士、貴景勝を下して14勝目 豊昇龍は11勝で来場所大関とり挑む

照ノ富士(左)は押し出しで貴景勝を下す(撮影・足立雅史)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士が復活優勝を14勝目で飾った。大関貴景勝との一番。もろ差しを許すが、かまわず前に出て最後は押し出した。

照ノ富士の14勝以上は全勝した21年九州場所以来。両膝の不安を抱えながら、横綱としてきっちり土俵を締めた。

関脇豊昇龍は、霧馬山を下手投げで11勝目。先場所も関脇で10勝をあげており、来場所は大関とりに挑む。

照ノ富士(手前)の横綱土俵入りを見つめる所ジョージ(中央)(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山(手前)を下手投げで破る豊昇龍(撮影・足立雅史)
豊昇龍(右)は下手投げで霧馬山を破る(撮影・小沢裕)
豊昇龍(右)は下手投げで霧馬山を破る(撮影・小沢裕)

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照ノ富士「1日でも早く復帰して闘う姿を見せたかった」1年ぶり8度目V 賜杯手にし喜び語る

照ノ富士(左)は押し出しで貴景勝を下す(撮影・足立雅史)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士が復活優勝を14勝目で飾った。1年ぶりの賜杯を手にし館内インタビューで喜びを語った。

-今の心境は

照ノ富士(以下照) 本当に優勝したんだな、と。手術してからやっと相撲をとることができた。途中で優勝は決まったけど、最後まで気を抜かずにいきました。

-支度部屋に戻って

照 本当にやったなという思い。

-休場明けで

照 昨年の10月に手術して1日でも早く復帰して闘う姿を見せたかった。最初からやれるという気持ちでいった。その気持ちで最後までいくことができた。

-優勝争いは

照 力つけている若い力士も多い。(霧馬山との一番は)優勝かかった一番でもあったし、もう大関になったというつもりで対戦した。

-ファンへ

照 国技館へ足を運んでくれた人たち、声援を聞いて頑張ってよかったと思った。

-来場所へ

照 まだ場所が終わったばかりなんで。次の場所にむけてもう1回、体と向き合って頑張りたい。

照ノ富士(手前)の横綱土俵入りを見つめる所ジョージ(中央)(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)

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序二段は聖富士が決定戦制す「緊張より楽しいが勝ちました。お客さんも満員で明るい」

序二段優勝の聖富士(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

序二段は東60枚目の聖富士(さとるふじ、18=伊勢ケ浜)が、西7枚目・欧勝竜(27=鳴戸)との決定戦を上手投げで制し、優勝を飾った。

「緊張より楽しいが勝ちました。お客さんも満員で明るいというかまぶしくて。早く上がりたいと思いました」

初めて番付に載った先場所は、東序ノ口12枚目で5勝2敗に終わった。横綱照ノ富士からもアドバイスをもらえる恵まれた環境で、力をつけた成果を出した。

同じ静岡・飛龍高出身の十両・熱海富士が当面の目標になる。「今は体作りですね。体を大きくしてから。小さくても大きな相手を投げられるのが相撲の醍醐味(だいごみ)。徐々に(番付を)上げていけたら」と意気込みを新たにした。

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朝乃山は12勝で2年ぶりの幕内復帰場所を終える「背中を押してくれた」相撲ファンに感謝

朝乃山(右)は寄り切りで剣翔を破る(撮影・足立雅史)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

大関経験者で東前頭14枚目の朝乃山(29=高砂)が、幕内では自己最多に並ぶ12勝目を挙げ、2年ぶりに幕内力士として戻った今場所を終えた。

剣翔をじっくり攻め、最後は上手を引きつけて万全の寄り切り。12勝3敗とし、他の力士の結果を待たずに、14日目に優勝を決めた横綱照ノ富士の優勝次点となることが決まった。

取組後は「自分の形になった。上手を取れたので、引きつけて出ていった」と、落ち着いて取り切った相撲にうなずいた。12勝という結果には「幕内では12番までしか勝ったことがない。あと1、2番は勝ちたかった」と、率直な感想を述べた。

15日間を振り返り「十両と違って、負けたくないプレッシャーもあった。でも土俵に上がると、声援が力になった。背中を押してくれた。楽しく、思い切ってできた」と、相撲ファンに感謝した。

来場所は大きく番付を上げることも予想されるが「来場所が勝負。今の三役は非常に強い。(このままだと)全く通用しないと思う」と、強い危機感も示した。最後、報道陣に「15日間、ありがとうございました」と、頭を下げ、大きな声で感謝の思いを伝えて引き揚げた。

朝乃山は寄り切りで剣翔を破る(撮影・足立雅史)
朝乃山(左)は剣翔を寄り切りで破る(撮影・小沢裕)

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明生が初の殊勲賞 霧馬山は3場所連続で技能賞、若元春も初受賞 敢闘賞は受賞者なし

夏場所9日目、照ノ富士(右)を寄り切りで破る明生(2023年5月22日撮影)

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

日本相撲協会は28日、大相撲夏場所が開催されている両国国技館で同場所の三賞選考委員会を開き、千秋楽の結果を待たずに受賞力士が決まった。

殊勲賞は、14日目までにただ1人、優勝した横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)に9日目に土をつけ金星を挙げた、東前頭6枚目の明生(27=立浪)が、初の殊勲賞を受賞した(三賞は21年春場所の敢闘賞以来2度目)。

敢闘賞は、千秋楽で勝った場合という条件付きで、関脇豊昇龍(24=立浪)、関脇若元春(29=荒汐)、平幕の朝乃山(29=高砂)の名前が候補に上がったが、いずれも出席委員の過半数の得票に至らず、受賞者なしに終わった。

技能賞は、14日目まで優勝争いに加わり、大関昇進をほぼ確実にした関脇霧馬山(27=陸奥)が3場所連続3度目の受賞(三賞は20年初場所の敢闘賞を含め4度目)を決めた。

もう1人の技能賞は初受賞の関脇若元春で、こちらは三賞も初受賞となった。

夏場所12日目、懸賞金の束を手に土俵を引き揚げる霧馬山(2023年5月25日撮影)
夏場所11日目、北青鵬(奥)をうっちゃりで破る若元春(2023年5月24日撮影)

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照ノ富士復活優勝の陰に安治川親方の助言 手術を後押し「体が続く限り頑張ってもらいたい」

断髪式ではさみを入れてくれた照ノ富士(右)と握手をかわす元安美錦の安治川親方(2022年5月撮影)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活優勝を果たした。

1差で迎えた2敗の関脇霧馬山との直接対決。寄り切りで制して13勝目を挙げ、千秋楽を残して6場所ぶり8度目の賜杯を決めた。3場所以上続けて全休して優勝した横綱は3人目。1989年初場所を制した北勝海(現八角理事長)以来34年ぶりの復活劇となった。

    ◇    ◇    ◇

元関脇安美錦の安治川親方(44)は、伊勢ケ浜部屋の部屋付き親方だった頃、弟弟子の照ノ富士に膝の手術をするように助言していた。約22年半の現役生活の大半を右膝のケガと闘ってきただけに、膝の痛みを抱えながら現役を続ける苦労を人一倍理解する。「(当時の照ノ富士の膝は)使えば使うほど、悪くなっていく」状況だった。だからこそ、「どこかで手術するしかないんじゃないか」と後押しした。

最終的に、照ノ富士は師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)と相談した上で、昨年10月に両膝の内視鏡手術を受けた。信頼する兄弟子からの言葉は、大きな決断に踏み切る上で背中を押したに違いない。安治川親方は「思い切ってメスを入れて、もう1度現役をやろうと思えるのが彼の良さであり、横綱としての責任感なんだろう」と言った。

昨年12月に伊勢ケ浜部屋から独立し、6月中旬に東京・江東区に創設する安治川部屋での部屋開きに向けて準備する。場所中は部屋の力士たちの活躍を気にかけながら、両膝にサポーターをつけて土俵に上がる照ノ富士を追った。復帰場所で8度目の優勝を飾った弟弟子に「体が続く限り、頑張ってもらいたいね」とエールを送った。【平山連】

優勝を決め遠くを見つめる照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた照ノ富士は詰め掛けた観客の拍手を受けながら花道を引き揚げる(撮影・小沢裕)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)

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幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活優勝を果たした。1差で迎えた2敗の関脇霧馬山との直接対決。寄り切りで制して13勝目を挙げ、千秋楽を残して6場所ぶり8度目の賜杯を決めた。3場所以上続けて全休して優勝した横綱は3人目。1989年初場所を制した北勝海(現八角理事長)以来34年ぶりの復活劇となった。

強い横綱が帰ってきた。1年ぶり8度目の優勝を飾った照ノ富士は「素直にうれしいです」と実感を込めた。両膝のケガから復活を果たし、願っていた結果を手にした。「10月に手術をして1日、1日を無駄にしたくないという思いでやっていました。頑張ってきてよかった」とかみしめた。

大関昇進を確実にしている霧馬山を盤石の攻めで寄せ付けなかった。「本当に力をつけてきた」という同じモンゴル出身の27歳の挑戦を、がっぷり四つに組んで受け止めた。チャンスとみるや、逃さず土俵際まで持っていき寄り切った。

昨年9月の秋場所で両膝の状態が悪化して途中休場。特に右膝は、骨が完全にずれるほどのダメージを負っていた。翌10月に両膝の手術を受けたが「人工関節が必要」と言われるほどの症状は重かった。痛みがゼロになるわけではなく「将来を考えたら、今でもやめたいよ」と漏らしたこともあった。

2代目若乃花の間垣部屋にいた頃からの縁で、照ノ富士が信頼する伊勢ケ浜部屋の呼び出しの照矢は「手術しても決して完全に治るわけではない。少しでも状態が戻ればと思ったんでしょう」と代弁する。休場中も万全にはならない膝と向き合い、トレーニングを怠らなかった横綱の姿が印象に残る。下半身の踏ん張りを少しでも補うため、大きな筋肉の間の細かい筋肉まで鍛えるメニューを実践。「自分の相撲に必要な部位を鍛えるため、あんなにこだわってやっている力士は他に見たことがありません」。再起をかけて奮起する日々も「いつもと変わらない横綱。落ち込むことはありませんでした」という。そんな日々の鍛錬があったからこその優勝だった。

手術をするか否か、出場をするか否かも、常に師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)と相談しながらやってきた。「親方、おかみさんがいないと今の自分はいない。本当に1つの優勝では返せないくらい恩を感じています」と感謝の言葉を並べた。残すは千秋楽の大関貴景勝戦。「まだ1日ありますから。良い千秋楽を迎えられるように」。引き締まった表情のまま、余韻に浸ることなく気持ちを切り替えた。【平山連】

幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
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霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活優勝を果たした。1差で迎えた2敗の関脇霧馬山との直接対決。寄り切りで制して13勝目を挙げ、千秋楽を残して6場所ぶり8度目の賜杯を決めた。3場所以上続けて全休して優勝した横綱は3人目。1989年初場所を制した北勝海(現八角理事長)以来34年ぶりの復活劇となった。

    ◇    ◇    ◇

強い横綱が帰ってきた。1年ぶり8度目の優勝を飾った照ノ富士は「素直にうれしいです」と実感を込めた。両膝のケガから復活を果たし、願っていた結果を手にした。「10月に手術をして1日、1日を無駄にしたくないという思いでやっていました。頑張ってきてよかった」とかみしめた。

大関昇進を確実にしている霧馬山を盤石の攻めで寄せ付けなかった。「本当に力をつけてきた」という同じモンゴル出身の27歳の挑戦を、がっぷり四つに組んで受け止めた。チャンスとみるや、逃さず土俵際まで持っていき寄り切った。

昨年9月の秋場所で両膝の状態が悪化して途中休場。特に右膝は、骨が完全にずれるほどのダメージを負っていた。翌10月に両膝の手術を受けたが「人工関節が必要」と言われるほどの症状は重かった。痛みがゼロになるわけではなく「将来を考えたら、今でもやめたいよ」と漏らしたこともあった。

2代目若乃花の間垣部屋にいた頃からの縁で、照ノ富士が信頼する伊勢ケ浜部屋の呼び出しの照矢は「手術しても決して完全に治るわけではない。少しでも状態が戻ればと思ったんでしょう」と代弁する。休場中も万全にはならない膝と向き合い、トレーニングを怠らなかった横綱の姿が印象に残っている。下半身の踏ん張りを少しでも補うため、大きな筋肉の間の細かい筋肉まで鍛えるメニューを実践。再起をかけて奮起する日々も「いつもと変わらない横綱。落ち込むことはありませんでした」という。そんな日々の鍛錬があったからこその優勝だった。

手術をするか否か、出場をするか否かも、常に師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)と相談しながらやってきた。「親方、おかみさんがいないと今の自分はいない。本当に1つの優勝では返せないくらい恩を感じています」と感謝の言葉を並べた。残すは千秋楽の大関貴景勝戦。「まだ1日ありますから。良い千秋楽を迎えられるように」。引き締まった表情のまま、余韻に浸ることなく気持ちを切り替えた。【平山連】

霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける

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【若乃花の目】照ノ富士は技術的なうまさがあるからこそ横綱 1人横綱を脅かす2大関に期待

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

数字上は当確でも、前半戦の相撲内容を消極的と指摘された霧馬山としては、不評を払拭(ふっしょく)するためにも「横綱に勝って大関文句なし」の相撲を見せたかったでしょう。

引っ張り込んで前に出たかった照ノ富士に、そうはさせまいと浅い左差しで食い付きました。よく考えて取ったと思います。ただ、相手はやっぱり横綱です。落ち着きはらっていました。引っ張り込むことが無理とみるや、腰をドッシリ落として対処しました。大きな体であれだけ低く構えられ、最後は胸が合ってしまっては、霧馬山も太刀打ちできません。勝負を決める前に、霧馬山の右上手を切ったことも見逃せません。体の大きさが有利なのはもちろんですが、ただ引っ張り込んできめたり、強引な小手投げを打つだけではない、技術的なうまさがあるからこそ横綱なんです。

私の経験からしても、4場所休場明けというのは、精神的にきつかったはずです。今場所の照ノ富士も初日は心配でしたが、3日目ぐらいから流れをつかんだのでは、と思います。強引さもあり、うまさもありの相撲で、現状では頭1つ2つ抜きんでています。来場所は2大関が確実で、関脇陣も複数人が大関挑戦になります。1人横綱を脅かす力士が出て、さらなる白熱した土俵に期待します。(日刊スポーツ評論家)

霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
照ノ富士(右)は霧馬山を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)

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八角理事長、照ノ富士Vに「やはり横綱」敗れた霧馬山に「自分から勝負しないと」

幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

4場所連続休場明けの横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、過去9戦全勝と合口のいい関脇霧馬山(27=陸奥)に貫禄勝ち。寄り切って、ちょうど1年(6場所)ぶり8度目の優勝を遂げた。

合口がいいとは言え、相手は大関昇進を確実にし、優勝争いでも1差にピタリとつける霧馬山。左おっつけ、右からのいなし、右前まわし探りながら頭をつけるなど、横綱攻略に万策を尽くした。それでも横綱は冷静に対処。腰を低くドッシリ落とし、寄り切った。

霧馬山が勝てば、3敗の朝乃山(29=高砂)を含め3人に優勝の可能性を残し、千秋楽を迎えるところだった。報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、取組前に「照ノ富士は力強いし体も柔らかい。(霧馬山とすれば)二本差すより前みつだろう」と、霧馬山の勝機を探るように展望していた。白熱した一番が終わると開口一番「よく頑張った」と、1人横綱の重責を果たした照ノ富士を称賛。続いて霧馬山について「攻めきれなかった。まわしを取られても、自分から勝負しないと(ダメ)」と敗因を分析した上で、さらに「よく頑張った。(照ノ富士の優勝は)最高でしょう。精神的に、やはり横綱。よく頑張ってくれた」と再び、休場明けVをたたえていた。

土俵下で見守った藤島審判長(元大関武双山)は、照ノ富士の気迫を見逃さなかった。「相当、集中していました。気迫が入ってましたね」と仕切りから発散される横綱の気合を感じ取った様子。さらに「初日に正代に、すくい投げで勝ったと思いますが、あれで『動けるんだ』というを、つかめたと思います。残すところは残し、攻めるところは攻める。ただ、精神的に普通の人とは違うんです。すごいものを背負っていて、成績いかんでいろいろなことが起こるかもしれない」と、負けが込めば進退問題に発展するかもしれない横綱の重責を強調。それを克服しての優勝を、称賛に値するものと評価した。

照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
照ノ富士(右)は霧馬山を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける

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朝乃山が738日ぶりに三役から白星 小結正代破り「今日という一番を思い切ってやった」

朝乃山(手前右)は正代を寄り倒しで破る(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

今場所、2年ぶりに幕内力士として土俵に立った東前頭14枚目の朝乃山(29=高砂)が、738日ぶりに三役から白星を挙げた。同じ大関経験者の小結正代を、立ち合いから押し込んだ。土俵際で粘る相手に、覆いかぶさるように寄り倒し。際どい勝負だったが、攻め込んだ朝乃山の左腕が土俵につくのが、正代が落ちるよりも遅く、勝ち名乗りを受けた。

12日目は関脇大栄翔、前日13日目は横綱照ノ富士を相手に連敗していたが、11勝3敗とした。取組終了時点では辛うじて優勝の可能性を残していたが、結びの一番で1敗の照ノ富士が、2敗の関脇霧馬山を破って8度目の優勝が決定。朝乃山の4年ぶり2度目の優勝は、来場所以降に持ち越しとなった。

取組後は「左(前まわし)を取れた感触はあったけど切れた。止まったら、しぶとい正代関。右を差され、土俵際で巻き替えられたけど、体を預けて寄り倒した。(倒れ込んだ際に左腕を引っ込めたのは)無意識。よかったです」と振り返った。前日は照ノ富士に敗れたが「何も考えず、今日という一番を思い切ってやった。昨日(13日目)の横綱戦は精いっぱい、思い切ってやった結果。負けは仕方ないと切り替えられた」と、11勝目を挙げることだけに集中して臨んでいた。

三役に勝つのは、新型コロナウイルスのガイドライン違反で、6場所出場停止となる前の21年5月19日、夏場所11日目で関脇隆の勝に勝って以来だった。「三役とやるのは(12日目の大栄翔戦に続き)2人目。来場所は全員と当たりたい。4関脇3小結に、今のままだと勝てない。1年の謹慎で三役の顔ぶれが変わったけど、負けないようにしたい」。

まずは千秋楽の相手に決まった、剣翔戦に勝って12勝目を挙げることが目標。少しでも来場所の番付を上げ、名古屋場所(7月9日初日、名古屋市・ドルフィンズアリーナ)では、三役以上から多くの白星を重ねるつもりだ。

正代(左)を寄り倒しで破る朝乃山(撮影・中島郁夫)
正代(左)を寄り倒しで破る朝乃山(撮影・中島郁夫)

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照ノ富士が復活の優勝、新関脇の若元春は10勝目、朝乃山は11勝目

照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士が復活の優勝を飾った。

星1つ差で追っていた関脇霧馬山と対戦。外四つの厳しい体勢となったが、右を巻きかえて一気に体を寄せて寄り切った。

昨年秋場所の途中休場から4場所連続の休場。横綱の威厳を示す形で6場所ぶり8度目の優勝を飾った。

新関脇の若元春は大関貴景勝を押し倒して2桁10勝目。先場所は小結で11勝をあげており、来場所は大関とりに挑む権利を得た。

幕内に復帰の東前頭14枚目・朝乃山は、小結正代を寄り倒し、11勝目をあげた。

照ノ富士(右)は霧馬山を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
貴景勝(右)を土俵際へ攻め込む若元春(撮影・小沢裕)

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横綱照ノ富士が6場所ぶり8度目の復活V 3場所連続全休した横綱では89年初場所の北勝海以来

拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活Vを果たした。結びで1差で追う関脇霧馬山との直接対決を寄り切りで制した。千秋楽を残して6場所ぶり自身8度目の賜杯。3場所以上続けて全休した横綱が優勝したのは、1989年初場所を制した北勝海(現八角理事長)以来34年ぶりのこととなった。

照ノ富士は昨年9月の秋場所で途中休場。翌10月に両膝の手術を受けた。再起へ懸命なリハビリを行い、復帰に向けて準備してきた。今場所は初日から負けなしの8連勝でストレート給金を達成。9日目に明生に金星を配給したが「引きずってもしょうがない」とすぐに気持ちを切り替えた。12日目に若元春を退け、8日目以来、今場所2度目の単独トップに立った。そして迎えた大一番で、朝乃山を物ともせず12勝目。22年夏場所以来の優勝へ大きく前進した。

「最後まで優勝に絡まないといけない」という横綱としての強い覚悟。今場所後の大関昇進が確実の霧馬山も下しての自力優勝を決め、満員の両国国技館で自身の復活を印象付けた。【平山連】

拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた照ノ富士は詰め掛けた観客の拍手を受けながら花道を引き揚げる(撮影・小沢裕)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける

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照ノ富士、横綱が復帰場所で優勝なら3人目「あと2日間しっかり頑張る」平常心を貫き霧馬山戦へ

照ノ富士は朝乃山(手前)を小手投げで破る(撮影・小沢裕)

<大相撲夏場所>◇13日目◇26日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活Vに王手をかけた。1差で追う元大関の平幕朝乃山を小手投げで退け、1敗を守った。14日目の結びで2敗の関脇霧馬山に勝利すれば、千秋楽を残して6場所ぶり8度目の優勝が決まる。

   ◇   ◇   ◇

照ノ富士が貴重な1勝を手にした。低く当たって左を差しにきた朝乃山の攻めにも動じず、右の小手で振って豪快に仕留めた。過去5戦全勝と合口の良い相手にも「土俵に上がったら、いつ、何が起こるか分からないので」と警戒を怠らず、貫禄のある相撲で館内を沸かせた。意図した展開に「落ち着いてやれたかな」と振り返った。

ここまで終始、冷静な取り口が光る。誰が相手でも関係ない。「勝っても、負けても自分のやるべきことを精いっぱいやるだけ」。場所中、事あるごとに口にしてきたことを体現した。「ここまでは悪くない」と手ごたえを感じている。

昨年9月の秋場所で途中休場。翌10月に両膝の手術を受けた。再起へ懸命なリハビリを行い、復帰に向けて準備してきた。今場所は初日から負けなしの8連勝でストレート給金を達成。9日目に明生に金星を配給したが「引きずってもしょうがない」とすぐに気持ちを切り替えた。12日目に若元春を退け、8日目以来、今場所2度目の単独トップに立った。そして迎えた大一番で、朝乃山を物ともせず12勝目。22年夏場所以来の優勝へ大きく前進した。

横綱が3場所以上続けて全休したのは昭和以降で過去に14例。その中で復帰場所で優勝したのは、1968年秋場所の大鵬と89年初場所での北勝海の2人だけと数少ない。「最後まで優勝に絡まないといけない」と横綱としての強い覚悟を見せる照ノ富士。14日目に関脇霧馬山戦で勝てば優勝が決まる状況だが、「あと2日間しっかり頑張ります」。自らに言い聞かせるかのように、平常心を貫いている。【平山連】

照ノ富士に小手投げで敗れた朝乃山(右)(撮影・小沢裕)
土俵に一礼する照ノ富士(撮影・中島郁夫)
朝乃山(右)を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)
支度部屋で囲み取材を受ける照ノ富士(撮影・小沢裕)

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