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井上尚弥2年連続2冠 最優秀選手賞と年間最高試合

ドネアを破りWBSS優勝を果たした井上尚弥はアリ・トロフィーを掲げる(2019年11月7日撮影)

ボクシングの19年度年間表彰式が8日に都内で開催され、WBAスーパー&IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が、最優秀選手賞と年間最高試合で2年連続2冠となった。

ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)準決勝では2回TKOでIBF王座を獲得し、決勝では5階級制覇のWBA世界同級スーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)に判定勝ちでWBA王座を統一した。

最優秀選手は4人の候補がいたが、年間最高試合とも32票中27票を獲得した。いずれも2年連続3度目の受賞で、14年はKO賞と3冠で3度目の複数受賞となった。

技能賞は日本人初の4階級制覇を達成して初防衛した井岡一翔(30=Reason大貴)、殊勲賞はWBA世界ミドル級王座を奪回して初防衛した村田諒太(34=帝拳)が初受賞した。村田は2連続KOでKO賞も初受賞し、初の複数受賞となった。

この賞は日本ボクシングコミッション、日本プロボクシング協会、東京および関西運動記者クラブ・ボクシング分科会の主催、選考による。各賞の受賞者は以下の通り。

◆最優秀選手賞 井上尚弥(大橋)=2年連続3度目

◆技能賞 井岡一翔(Reason大貴)=初

◆殊勲賞 村田諒太(帝拳)=初

◆努力敢闘賞 永野祐樹(帝拳)=初

◆KO賞 村田諒太(帝拳)=初

◆新鋭賞 中谷潤人(M.T)=初

◆年間最高試合 WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一戦 井上尚弥(大橋)-ノニト・ドネア(フィリピン)

◆世界戦以外の最高試合 WBOアジア太平洋ウエルター級王座決定戦 矢田良太(グリーンツダ)-別府優樹(久留米櫛間&別府優樹)

◆女子最優秀選手賞 天海ツナミ(山木)=2年連続2度目

◆女子最高試合 WBC世界フライ級王座戦 藤岡奈穗子(竹原&畑山)-天海ツナミ

◆優秀選手賞 井岡一翔(Reason大貴)、井上尚弥(大橋)、岩佐亮佑(セレス)、京口紘人(ワタナベ)、田中恒成(畑中)、寺地拳四朗(BMB)、村田諒太(帝拳)

◆特別賞 河野公平(ワタナベ)、田口良一(ワタナベ)、福原辰弥(本田)、故三迫仁志(元日本プロボクシング協会会長)

◆優秀トレーナー賞 加藤健太(三迫)

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井上尚弥3団体統一王者へ、初ベガスでカシメロ戦

WBAスーパー・IBF・WBO世界バンタム級王座統一戦の発表会見に臨む井上尚(撮影・小沢裕)

本場で3本目のベルトをつかみ取る。ボクシングのWBA、IBF世界バンタム級統一王者井上尚弥(26=大橋)が1月31日、都内で会見し、4月25日(日本時間26日)に米ラスベガスのマンダレイベイ・リゾート&カジノで、3階級制覇の実績を持つ、WBO同級王者ジョンリール・カシメロ(30=フィリピン)と対戦すると発表した。

井上は、プロ20戦目で初のラスベガス進出で、日本人初の3団体統一王者を目指す。

    ◇   ◇   ◇

ラスベガスのメインイベント。日本人初の3団体統一戦。難敵カシメロ。気持ちが高ぶる要素の比重を問われた井上尚は「全部です」と即答し、プロ20戦目の重要性をにじませた。荒々しいファイトを武器に11月に3階級制覇を果たしたカシメロについては「野性味あふれる選手。危険なハードパンチを持っている」と警戒しつつ、「プレッシャーはない。じっくり、じっくり、ダメージを与えて削っていく」と、落ち着いた口ぶりで試合を見据えた。

プロ6戦目での世界王座奪取や、伝説となったナルバエス戦での2階級制覇。数々の扉を拳でこじ開け、米老舗ボクシング専門誌「ザ・リング」選定のパウンド・フォー・パウンド(PFP=階級を超越した最強王者)で日本人初のトップ3入りを果たした「怪物」に、新たな勲章もかかる。

これまで日本ジム所属王者で、2団体統一を果たしたのはミニマム級の高山、井岡、ライトフライ級の田口とバンタム級の井上尚の4人。「スーパーフライ級ではかなえられなかった」と目標に掲げる4団体統一にさらに近づく一戦に向け、準備に余念はない。ラスベガスの乾燥した気候での減量対策や時差などを考慮し、一般的なスケジュールより2週間近く早い、試合3週間前の渡米を計画。2月中旬からは海外から3人の世界ランカーをスパーリングパートナーとして招く予定と、じっくりと仕上げていく。

昨年11月の元5階級王者ドネア戦では右眼窩(がんか)底など2カ所の骨折を負ったが、患部は順調に回復。米プロモート大手トップランク社との契約後、初めての試合で「パウンド・フォー・パウンド3位にふさわしい試合を世界のみなさんにお届けしたい」と井上尚。本場のリングで、世界に「モンスター」の力を見せつける。【奥山将志】

◆日本のジム所属王者の複数団体統一 12年6月に井岡一翔が八重樫東とのミニマム級王座統一戦を制し、初のWBA、WBC統一王者となった。ミニマム級では、高山勝成もWBO、IBFの両団体の王座を獲得。17年12月にはWBAライトフライ級王者田口良一がIBF王者との統一戦に勝利し、2団体の王座を統一した。WBAバンタム級王者井上は、昨年5月にIBF王座を奪い、4人目の複数団体王者となった。

WBAスーパー・IBF・WBO世界バンタム級王座統一戦の発表会見に臨んだ井上尚。左は井上トレーナー、右は大橋会長(撮影・小沢裕)

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田口良一氏が引退式「2日間断酒」内山氏とスパー

引退セレモニーを前に内山高志氏(右)を相手にスパーリングを行った田口良一(撮影・たえ見朱実)

元WBA&IBF世界ライトフライ級王者田口良一氏(33)の引退式が、10日に東京・後楽園ホールで行われた。ワタナベジムの先輩である元世界王者内山高志氏(40)を相手にスパーリングを披露。10カウントゴングが鳴らされ、現役としてのリングに別れを告げた。

スパーは2分3回で、田口氏がKOなら300万円、内山氏なら10万円の賞金がかけられた。最終3回にはともにヘッドギアを脱いで、詰めかけた1587人の観衆を沸かせた。

内山氏は2年前に引退したが、アマジムを経営しながら、自らもトレーニングを欠かさない。田口氏もアマジム経営を目指している。現在はトレーナー修業中だが、体の絞り具合も、動きのよさも、防衛回数通り? 先輩に分があった。ロープを背にしてパンチをかわしきられ、じだんだを踏んだ。左ボディーを食うと、ロープまで後退する場面も。手が出なくなって苦笑いしたりした。

スパー後には、内山氏から大好きなラーメン1年分の目録がプレゼントされた。内山氏は「このために2日間だけ酒をやめて練習してきた。人柄を示して、こんなにお客さんが入った。第2の人生も応援してあげて」とリングから呼び掛けた。

田口氏は時折声を詰まらせて、ファンにあいさつした。「18歳で世界王者を目指して始めたが、何度も辞めようと、心が折れかけた。みなさんの応援のおかげで世界王者になれた」と頭を下げた。さらに「後輩達も応援してください」と田口氏らしいお願いで締め、グローブをつるした。

引退セレモニーで10カウントを数える田口良一(撮影・たえ見朱実)
引退セレモニーを前に内山高志氏(左)を相手にスパーリングを行った田口良一は、笑顔でファンの声援に応える(撮影・たえ見朱実)

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トリプル世界戦イメージガール異例未経験美女ら選出

大みそかボクシング興行イメージガールに選ばれたウェディシンハ理沙さん(左から2番目)と保科凛さん(同3番目)。左端は田口良一氏、右端は吉田実代

大みそかのボクシングWBOトリプル世界戦(東京・大田区総合体育館)のイメージガールに保科凛さん(23)、ウェディシンハ理沙さん(28)が選出された。

30日、都内で約250人の応募者から書類審査などを通過した10人による最終選考会が開催され、選ばれた2人が試合当日の3大世界戦でラウンドガールを務めることになった。

宮城・仙台市出身の保科さんは身長162センチ、体重47キロで、3サイズは81-60-85の和風美女。今秋は小学館の日本ラグビー応援ガールズ「80ミニッツガールズ」メンバーとしても活動していた。「すごく今日は緊張していて昨夜も1時間ぐらいしか寝られなかった。本当にうれしいです」と満面の笑み。

また大阪府出身で名古屋在住のウェディシンハさんはスリランカ人の父と日本人の母を持つ。身長160センチ、体重45キロで、3サイズはDカップ(数字非公表)-58-84の健康美女。モデルやタレント活動の経験がないため、異例の抜てきととなる。「まさか選ばれると思わなかったです。年末にラウンドガールをできることが楽しみです」と意気込んだ。

今回、大みそかに初防衛戦を控えるWBO女子世界スーパーフライ級タイトルマッチに臨む王者吉田実代(31=EBISU K,S BOX)、現役引退したばかりの元2団体統一ライトフライ級王者田口良一氏(33)らが審査員を務めた。吉田は「試合に花を添えてもらえること楽しみにしています。2人とも笑顔が素敵です」と歓迎。田口氏は「今まで選ぶ側はやったことがなかったので、新鮮でした」と振り返った。

大みそかには吉田のほか、WBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔の初防衛戦、WBO世界フライ級王者田中恒成の3度目の防衛戦が開催される。

大みそかボクシング興行イメージガールに選ばれたウェディシンハ理沙さん(左から2番目)と保科凛さん(同3番目)。左端は田口良一氏、右端は吉田実代
大みそかボクシング興行のイメージガールの最終選考会に選ばれた10人

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引退の田口良一「世界王者の夢を実現。やりきった」

引退を発表した元世界王者田口良一

元WBA&IBF世界ライトフライ級王者田口良一(32=ワタナベ)が、現役を引退してフィットネスジム経営を目指す。

20日に都内で引退を発表した。2階級制覇へ3月にWBO世界フライ級王者田中恒成(24=畑中)に挑戦も判定負け。「世界戦に2連敗し、モチベーションが上がらなかった。世界王者の夢を実現して大満足。やり切った」と引退を決意した。

「きのうラーメン食べたんで、顔むくんでないですか?」。引退会見は田口らしい一言で始まった。田中戦から2カ月ぐらいで引退を決め、一番支えてくれた父勝良さんに真っ先に報告した。「4回戦でもスタミナなく、8回戦も無理だと思った。世界戦を戦ってきて、引退会見までするとは。今は不思議な感じ」との心境を口にした。

思い出の試合を問われると「1つに決めきれない。デビュー戦も、新人王も…」と、田中戦まで次々列挙した。中学でボクシング教室に通ったのが最初。横浜光ジムに入門も2ケ月で足が遠のいた。芝商高時代に通学途中で車窓から見たワタナベジムに入門。ヘルニアでブランクを作り、「5年でも成長の実感がなかった」と挫折の連続だった。

今やスーパースターの井上尚弥の存在が開花につながった。12年に高校生だった井上とのスパーリングでボコボコにされた。1年後に日本王者となると、初防衛戦で井上の挑戦を受けた。判定負けも連続KOを止めた。

「あの試合があったから世界王者になれた。それ以降の相手は井上より強くない。気持ちが楽になった」。陣営ではミニマム級で世界挑戦のプランだった。渡辺会長は「世界戦より井上とやりたいと言った。気持ちが強く、根性があった」と振り返った

14年にWBA王者アルベルト・ロセル(ペルー)に世界初挑戦し、ジム3人目となる世界王者になった。昨年にはIBF王者ミラン・メリンド(フィリピン)に判定勝ちで、日本人3人目の2団体統一王者に。初の統一王者で初防衛戦は判定負けで陥落も、7度防衛は日本人歴代8位タイを誇る。

引退後は大好きな麺類の飲食店を経営するのが目標に掲げていた。「好きなだけで無知。失敗してからボクシングに戻るのも…。経験と知識でジムの方が勝算がある」。近い将来にフィットネスジムを開くつもりだ。

現在はジムの先輩だった柴田明雄代表のSOETEジムでトレーナー修行している。「なるべく早くやりたい。プロのボクシングジムもやりたいと思うようになれば。軌道に乗ったら飲食店も」と、次の夢もあきらめていない。

前夜は漫画「はじめの一歩」の30周年記念トーナメントで、後輩の応援に駆けつけた。ボクシングに興味を持ったのは、親からもらった地域振興券3000円で、ゲームソフト「はじめの一歩」を購入がきかっけだった。会場で作者の森川ジョージと初対面し、記念撮影した。「現役最後でいい思い出ができた」と笑みがこぼれた。

戦績は27勝(12KO)4敗2分。12月10日の東京・後楽園ホールで引退式に臨む。10カウントゴングを聞き、グローブをつるす。

ベルトの重さに耐えられなくなって笑う元世界王者田口良一
引退を発表した元世界王者田口良一(左)と渡辺均会長

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田口良一が引退発表 元2団体統一世界王者

田口良一

元WBA&IBF世界ライトフライ級王者田口良一(33=ワタナベ)が20日、都内で現役引退を発表した。2階級制覇を狙って3月にWBO世界フライ級王者田中恒成(24=畑中)に挑戦。0-3で判定負けしたが進退は保留していた。

芝商高時代に通学途中で車窓から見たワタナベジムに入門し、06年にプロデビューした。07年に全日本新人王となり、12年には高校生だった井上尚弥とのスパーリングでボコボコにされた。1年後に日本王者となり、初防衛戦で井上の挑戦を受けた。判定負けも連続KOを止めて、成長を示して一躍注目された。

14年にWBA王者ロセル(ペルー)に世界初挑戦し、ジム3人目となる世界王座を獲得した。昨年にはIBF王者メリンド(フィリピン)と対戦し、日本人3人目の2団体統一王者となった。初の統一王者で初防衛戦は判定負けで陥落も、7度防衛は日本人歴代8位タイだった。戦績は27勝(12KO)4敗2分。

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下田昭文氏「丁寧に楽しい指導を」アマジムを開設

自身のジムのプレオープンに集まった新旧世界王者らと記念撮影する元WBA世界スーパーバンタム級王者下田氏(最前列左から3番目)

ボクシング元WBA世界スーパーバンタム級王者下田昭文氏(35)が、埼玉県さいたま市浦和区にアマチュアジム「シュガーフィット・ボクシングジム」を開設した。

17日には報道陣、関係者向けのプレオープンのイベントが開かれ、新旧世界王者らが集結。帝拳ジムで指導を受けた浜田剛史代表(元WBC世界スーパーライト級王者)をはじめ、同門の元WBC世界バンタム級王者山中慎介氏、元WBC世界ライトフライ級王者木村悠氏、世界2階級制覇王者粟生隆寛、他ジム勢からも元WBA世界スーパーフェザー級王者内山高志氏、元2団体統一ライトフライ級王者田口良一、WBA世界ライトフライ級スーパー王者京口紘人のワタナベジム勢や前WBO世界スーパーフェザー級王者伊藤雅雪(横浜光)らが集まった。

引退後は帝拳ジムで練習生を指導し、2年前から「シモサイズ」と名付けたボクシングフィットネス教室も開催するなど指導者として活動していた下田氏は「1年前ぐらいから(アマチュア)ジムを考えていた。丁寧に楽しい指導をしていきたい」と抱負を口にした。JR北浦和駅から徒歩数分という立地にジムを構え「以前からこの周辺でボクシング教室を開いていたこともあったのでこの場所にしました」と経緯を説明。3週間前にジム近くに自宅の引っ越しも終え、11月20日夕方から正式オープンする予定だ。

「夢はいずれプロのボクシングジムをやること」と掲げている下田氏は「まずは、ちゃんと自分でジムを運営し、経営も勉強していきたい。筋トレをやるだけでも良いのでうちのジムに来て欲しいですね」と意欲を示した。このプレオープンでは、伊藤とIBF世界スーパーフェザー級3位尾川堅一(帝拳)によるマスボクシング、下田代表自らがミットを持ち、京口や元東洋太平洋ウエルター級王者亀海喜寛氏のパンチを受け、出席者から大きな拍手を受けていた。

◆シュガーフィット・ボクシングジム 所在地=埼玉県さいたま市浦和区北浦和3-8-2メリア北浦和1階。電話=048・749・1955

WBA世界ライトフライ級スーパー王者京口(右)のパンチをミットで受ける元WBA世界スーパーバンタム級王者下田氏
帝拳ジムの浜田代表(右端)、元WBC世界バンタム級王者山中氏(左端)とジムのプレオープンで乾杯する元WBA世界スーパーバンタム級王者下田氏

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井上尚弥が究極階級王者!ドネア下しWBSS頂点

アリトロフィーを掲げる井上尚(撮影・横山健太)

<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級決勝>◇7日◇さいたまスーパーアリーナ

3階級王者のWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が真の階級最強王者の称号を手にした。ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝で5階級王者のWBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)と対戦。3-0の判定で勝利を飾った。

   ◇   ◇   ◇

史上4人目となる階級最強を証明するアリ・トロフィーをリングで掲げた。「ザ・グレーテスト」の愛称で知られる元世界ヘビー級王者ムハマド・アリの名を冠した優勝副賞を手にし、歓喜に浸った。WBA王座3度目、IBF王座初防衛にも成功。過去に井岡一翔、高山勝成、田口良一が2つの王座を同時保持したが、井岡と高山はすぐに返上。田口が日本人で初めて2つの王座を懸けて防衛戦に臨んだが、王座陥落していたため、日本人初となる複数王座の防衛にも成功した。

5年前となる14年11月24日、尚弥は父真吾トレーナー、弟拓真とともに大橋ジムでドネアと対面した。当時のドネアはWBA世界フェザー級スーパー王座から陥落し、スーパーバンタム級にカムバック。井上尚は2階級制覇を狙い、WBO世界スーパーフライ級王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)に挑戦する前だった。その際、過去にナルバエスに判定勝ちしていたドネアから助言を受けた。

この頃は2階級も違うウエートで戦っていたこともあり、尚弥は「体が大きいと思った」と当時の印象を振り返りつつ「階級も違うし、対戦するとは思っていなかった」。この5年間。尚弥はスーパーフライ級でWBO王座を7度防衛、バンタム級に転級し、WBA王座を獲得。一方のドネアはWBO世界スーパーバンタム級王座を獲得し、18年4月までフェザー級を主戦場としていたが、WBSS参戦に合わせて7年ぶりにバンタム級へと電撃復帰。ついに2人の時間軸が交わった。大橋ジムの大橋秀行会長は「2人は戦う運命にあった」と表現した。

昨年7月、WBSSバンタム級トーナメント8選手が出そろった際、尚弥が真っ先に挙げた対戦相手はドネアだった。記憶に残る名勝負もドネアのベストバウトとなる11年2月19日、米ラスベガスで開催されたWBC・WBO世界バンタム級王座統一戦。挑戦者ドネアが、長谷川穂積との王座統一戦を制したばかりの王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)を左フック1発で2回TKO勝ちを収めた試合を挙げた。

「研究ではなく、ドネアの技術を自分に取り入れるために見ていた」と井上尚。ドネアは「この階級の最強の1人で恐るべき存在。数年前に会い、それ以降、彼の成長を見てきた。このように怪物に成長した井上選手と戦えることを楽しみにしている」と。戦う運命にあり、宿命だったと言っていい。

5月18日のWBSS準決勝でエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2回TKO撃破した後、本格的なスパーリングを開始したのは8月6日。約3カ月も実戦トレから離れたのは故障以外では初めてで、蓄積した肉体的なダメージを回復させた。9月には米老舗誌ザ・リング選定パウンド・フォー・パウンド(階級超越の王者)1位で世界最速3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)の練習パートナー、ジャフェスリー・ラミドと計20ラウンドのスパーリングを消化。1度、左ボディーでダウンを奪った。ロマチェンコも計130ラウンドで1度ダウンを奪っているものの、大橋会長は「ロマチェンコを超えた」と絶賛する内容だった。

試合前、井上尚は「最大のキャリアになるのは間違いない。そして、その先にある道、景色に自分がすごく興味を持っている。最大のパフォーマンスを出し切って優勝し、アリトロフィーを無事にゲットしたい」とリングに向かった。WBSS制覇は、過去の日本人世界王者が誰も到達しなかった領域へ、井上尚が足を踏み入れた瞬間だった。

◆ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS) 階級最強を決める賞金争奪トーナメント。リチャード・シェイファー氏、カレ・ザワーランド氏の米独両プロモーターが企画。シーズン1として17年秋から約1年間かけてスーパーミドル級とクルーザー級で初開催。クルーザー級決勝は昨年7月にロシアで開かれ、オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)が4団体統一王者に。またスーパーミドル級は同年10月、サウジアラビアで開かれ、カラム・スミス(英国)が優勝。シーズン2はバンタム級、スーパーライト級、クルーザー級で18年秋からスタート。

4回、流血しながらもドネアに必死に食らいつく井上尚(撮影・足立雅史)
11回、ドネアからダウンを奪い勝利かと思われたが相手が立ち上がりあぜんとする井上尚(撮影・足立雅史)
観戦に訪れたセイキン(左)とヒカキン(撮影・鈴木みどり)
ドネアに勝利した井上尚(中央)は布袋寅泰(右)、和田アキ子(左)と記念撮影(撮影・鈴木みどり)

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中谷潤人「中盤に倒す」無傷20連勝で世界の扉開く

計量をクリアした中谷潤人(左)とミラン・メリンド

ボクシング前日本フライ級王者中谷潤人(21=M.T)が、元世界王者との世界前哨戦に臨む。5日に東京・後楽園ホールで、元IBF世界ライトフライ級王者ミラン・メリンド(31=フィリピン)と対戦する。4日は都内で計量があり、中谷は51・6キロ、メリンドはリミットの51・7キロでクリアした。

中谷はデビュー19連勝中(14KO)で、昨年獲得した日本王座を7月に返上した。WBA2位、WBCとWBO3位、IBF11位と、すでに4団体で世界ランク入り。「大事な一戦。世界へアピールしたい。世界前哨戦とするつもり」と決意を口にした。

メリンドは16年に暫定王座を獲得し、17年に正規王者八重樫東(大橋)との王座統一戦に初回TKO勝ち。その後はWBA王者田口良一(ワタナベ)との団体統一戦、WBC王者拳四朗(BMB)に挑戦は黒星も経験豊富。

今回も米ロサンゼルスでスパーリングを積み、帰国後も統一戦を控える井上拓真(大橋)らを相手に100回以上をこなしてきた。身長差は13センチあるが、タフで大きく振ってくる相手に「最初は気をつけて慎重にいき、中盤に倒すのが理想」と、KOで20連勝を飾って世界へステップを期した。

計量をクリアしてフェースオフする中谷潤人(左)とミラン・メリンド

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田中恒成カウンター右ボディーは圧巻の技/大橋秀行

ゴンサレス(左)にTKOで勝利しガッツポーズをする田中恒成(撮影・森本幸一)

<プロボクシング:WBO世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇24日◇愛知・武田テバオーシャンアリーナ

王者田中恒成(24=畑中)が2度目の防衛に成功した。

同級1位ジョナサン・ゴンサレス(28=プエルトリコ)との指名試合に7回TKOで勝利。王座奪取の木村翔戦、宿敵田口良一とのV1戦と激闘2連戦後の“落とし穴”をクリアした。

   ◇   ◇   ◇

実に高性能なカウンターパンチを見せてもらった。最初のダウンを奪った3回のシーンだ。挑戦者の右ストレートに合わせ、田中がすかさず出した右ボディーストレートは圧巻のテクニックと言っていい。相手の拳を回避しながら強烈な一撃を腹部に打ち込んだ一連の流れは、やはり並の王者ではないと感じさせた。

試合展開を分析しながら早めに攻めどころを見つけた部分も評価したい。1、2回とロープ際やコーナーに追い込んだが、相手が冷静に対処し、カウンターを狙ってきた。ここで顔面ではなく、ボディーにパンチを集めた判断が良かった。すべてボディーでダウンを奪ったところに、それが証明されている。

惜しむらくは4回に接近戦から左フックでダウンを許してしまった点。そして続く5回に焦りからか、パンチに力みが出てきたところが課題だろう。ただ今回は世界戦で初対戦というサウスポーに対して技術的に上回り、TKOで下した意味は大きい。また1ランク上の王者になったと思う。(元WBA、WBC世界ミニマム級王者)

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田中恒成がV2、年内に統一戦経て来年4階級制覇へ

WBO世界フライ級タイトルマッチ 祖父の遺影を手に勝利しチームで記念撮影をする田中恒成(撮影・森本幸一)

<プロボクシング:WBO世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇24日◇愛知・武田テバオーシャンアリーナ

王者田中恒成(24=畑中)が2度目の防衛に成功した。同級1位ジョナサン・ゴンサレス(28=プエルトリコ)との指名試合に7回TKOで勝利。王座奪取の木村翔戦、宿敵田口良一とのV1戦と激闘2連戦後の“落とし穴”をクリアした。年内にフライ級でもう1戦、他団体王者との統一戦を検討しており、その後、WBOスーパーフライ級王者井岡一翔に次ぐ、国内ジム選手2人目の世界4階級制覇を狙うシナリオだ。

3回に右ボディーブローでダウンを奪ったが、ゴンサレスのスピードに苦しんだ。6回を終えた時点でポイントで負けていた。それでも7回、ボディーで3度のダウンを奪い、勝ちきった。試合後は「内容は最悪です。苦しい展開でしたけど何とかKOできて良かったです」。笑顔はなかった。試合前の「難しさはちょっとあります。どうしても内容を伴って、になる。正直勝てると思うけど、そういう時は、あまりいい試合ができてないんで」という言葉どおりの内容だった。

フライ級王座を奪った木村戦は2-0判定の死闘だった。V1戦はライトフライ級時代に統一戦が内定し、流れた田口との運命的な戦いを判定勝ち。「もうフライ級に興味のある相手はいない」というほど、精魂の尽きた2試合だった。

「意味ある試合」を求める男が迎えたV2戦。WBO本部に義務づけられたランク1位との指名試合は、落とし穴になりかねない。「ちょっとパランポンの時と似てる。“圧倒的に勝つ”と思ってたら、予想外に強くて…」。17年9月、ライトフライ級のV2戦は9回TKOで勝ったが、初回にダウンを喫し、両目眼底下骨折を負った。

「こういう試合はこれからもある。それに勝っていかなきゃいけない」。将来の世界5階級制覇を公言する王者が今回自分に課したテーマは「原点回帰」だ。アマチュア時代から最大の武器だったスピードが鈍っていた。プロ転向でパワーをつけた代償。「6対4」になった前後の体重配分を「5・5対4・5」にし、スピードを取り戻す。スピーディーなゴンサレスを、スピードで駆逐した末の完勝を自らに課した。

自分に勝つには、我慢がいる。ところが、そもそもムラっ気が強い。「単純な練習が1番嫌い」という天才肌には、きつい。プロ転向時から田中の体力強化を担当する河合貞利トレーナー(45)は「とびっきりのウサギの恒成が、がカメになれるか? そこが今回のテーマ。嫌だと思って投げない、抜かない。“気分でやるな”と言い聞かせました」。カメの心を持つウサギを目指した。

指名試合という義務は、果たした。年内に見据える次戦のターゲットは? 田中はWBOスーパーフライ級王者井岡に興味を持っているが、関係者の話を総合すると次戦での実現は困難。そうなればV1戦後「フライ級で(興味が)あるのはベルト」と話しており、フライ級の他団体王者との統一戦が最大の選択肢。いずれにしてもビッグマッチ実現の可能性が高い。

ドリームボーイの行く先に、夢が広がっていく。

◆田中恒成(たなか・こうせい)1995年(平7)6月15日、岐阜・多治見市生まれ。トレーナーの父斉さんに幼少から空手を習い、ボクシングは市之倉小6年から。岐阜・中京(現中京学院大中京)で高校4冠。13年プロ転向。15年にWBOミニマム級で日本最速5戦目の世界王座奪取。16年に同ライトフライ級で井上尚弥と並ぶ日本最速8戦目の世界2階級制覇。昨年9月にWBAライト級王者ロマチェンコと並ぶ世界最速12戦目の世界3階級制覇。中京大経済学部卒。164センチの右ボクサーファイター。

WBO世界フライ級タイトルマッチ ジョナサン・ゴンサレス(左)から、このラウンド三度目のダウンを奪う田中恒成(右)(撮影・森本幸一)
WBO世界フライ級タイトルマッチ 7R、ジョナサン・ゴンサレス(左)にパンチを放つ田中恒成(右)(撮影・森本幸一)

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田中恒成「目指せ塩試合」V2戦はパンチもらわない

WBC世界ライトフライ級ユース王者加納陸(右)とスパーリングを行ったWBO世界フライ級王者田中恒成(撮影・加藤裕一)

WBO世界フライ級王者田中恒成(24=畑中)が24日、同級1位ジョナサン・ゴンザレス(28=プエルトリコ)との2度目の防衛戦(8月24日、愛知・武田テバオーシャンアリーナ)で「塩試合」を狙うことを誓った。

この日、名古屋市内の同ジムでWBC世界ライトフライ級ユース王者加納陸(21=大成)と公開スパーリングを行った後「『目指せ、塩試合』です」とV2戦のテーマを口にした。

何とも珍妙な響きだが、そこには深い意図がある。同級王座を奪取した木村翔戦、初防衛に成功した田口良一戦はともに、打ち合い上等のどつき合い。名古屋風に言えば“みそ煮込み”の濃厚さだった。

「前の2試合と違って、まず(パンチを)当てることより、もらわないことです」。早ければ年末にも階級をスーパーフライに上げ、日本ジム所属選手で2人目の「世界4階級制覇」という青写真がある。

挑戦者ゴンザレスはスピードあるサウスポーだが、自分も「最大の武器」と自負するスピードで圧倒し、完勝でその資格を得たい。

「塩試合」と言っても、ポイントアウトを狙う意識はさらさらない。

「まあ判定になるようじゃダメです。決めるときは一瞬で決めるのが理想。KO狙いと塩試合は対極的な表現のようだけど、実際はそうでもない。もらわないで、ペースと距離感をつかめば、思い切りいいパンチを当てられますから」

この日は挑戦者と同じくサウスポーでスピードのある加納と4回のスパーリングを消化。今回、技術的に最重要視するバックステップを生かしたフットワークなどを確認した。それでも、加納が鼻血を出し「全部が速い。ハンドスピードもそう。僕より1階級上であのスピードは恐ろしい」と舌を巻く内容だった。

田中は25日からは、加納のいる大成ジムに出向き、さらにスパーリングを重ねる。鮮烈なKO防衛を飾るため「順調に来ています」と手応え十分な様子だった。

WBC世界ライトフライ級ユース王者加納陸(手前)とスパーリングを行うWBO世界フライ級王者田中恒成(撮影・加藤裕一)

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日本王者中谷潤人「内容問われる」世界前哨戦気合い

元世界王者との世界前哨戦に臨む中谷潤人

ボクシング日本フライ級王者中谷潤人(21=M.T)が、元世界王者との世界前哨戦に臨む。

元IBF世界ライトフライ級王者ミラン・メリンド(31=フィリピン)と、10月5日に東京・後楽園ホールでのノンタイトル10回戦で対戦する。22日に相模原市内のジムで発表した。

中谷はデビュー19連勝中(14KO)で、昨年日本王座を獲得した。6月の初防衛戦は相手のケガでノンタイトル戦に1回KO勝ち。すでにWBC3位など3団体で1ケタ世界ランク入りに「上に行くタイミングで世界へアピールするチャンス。目標は世界王者で防衛していくことで、足踏みしていられない」。日本王座は防衛することなく返上する。

メリンドは37勝(13KO)4敗で、16年に暫定王座を獲得して2度防衛後、17年に正規王者八重樫東(36=大橋)との王座統一戦に初回TKO勝ちした。大みそかにWBA王者田口良一(32=ワタナベ)との団体統一戦には判定負け。昨年には拳四朗(27=BMB)に挑戦も7回TKO負けも経験豊富だ。

中谷は元世界王者相手に「素直に気持ちが入った」と笑み。「メリンドはタフな印象。身長も小さいのでコツコツとダメージを蓄積させていく」。さらに世界前哨戦だけに「内容が問われる。KOで世界へ行っていいと言ってもらえる試合にしたい」と意気込む。

8月1日には市内に居酒屋「とん丸」をオープンする。実家は三重・東員町でお好み焼き店を経営していたが、中谷のサポートもあって閉店して上京していた。店は両親が切り盛りするが、店主として負けるわけにはいかない。開店後は恒例の米国でのスパーリング合宿の予定で、本業の大一番に備える。

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拳四朗V6田口良一以来15人目 現役国内王者最長

ジョナサン・タコニン対拳四朗 1回、タコニン(左)に右ストレートを見舞う拳四朗(撮影・上田博志)

<プロボクシング:WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦>◇12日◇エディオンアリーナ大阪◇観衆6500人

王者拳四朗(27=BMB)が、挑戦者の同級1位ジョナサン・タコニン(32=フィリピン)を4回TKOで下し、6度目の防衛に成功した。

元WBA同級王者具志堅用高の持つ日本記録(13連続防衛)更新を夢見る男は、V5後「ボクサーになってきた」と自らの覚醒を認識。現役の国内ジム所属王者中最長の防衛数を更新した。

◆国内ジム所属世界王者の6連続防衛 WBA世界ライトフライ級王者田口良一(7連続防衛後の昨年5月20日に陥落)以来15人目で12位タイ。最長記録は元WBAライトフライ級王者具志堅用高の13連続で、2桁以上は12連続の元WBCバンタム級王者山中慎介、11連続のWBAスーパーフェザー級王者内山高志、WBCバンタム級王者長谷川穂積を含め4人だけ。

◆拳四朗(けん・しろう)本名寺地拳四朗で、漫画「北斗の拳」の主人公ケンシロウから命名。1992年(平4)1月6日、京都府城陽市生まれ。東城陽中3年時、高校のスポーツ推薦入学を狙い、ボクシングを開始。奈良朱雀高3年でインターハイ準優勝、関大4年で国体優勝。一時はボートレーサーを志すが、試験に2度失敗。14年8月にプロデビュー。趣味はオシャレ、食べ&飲み歩き。家族は両親、兄。右ボクサーファイター。164センチ。

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ 拳四朗ージョナサン・タコリン 1R、ジョナサン・タコリン(左)と接近戦を行う拳四朗(撮影・加藤哉)

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拳四朗V6「ボクサーになってきた」覚醒の第2章へ

拳四朗対タコリン 4回、タコリンにTKO勝ちし笑顔で両手を広げる拳四朗(撮影・加藤哉)

<プロボクシング:WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦>◇12日◇エディオンアリーナ大阪◇観衆6500人

王者拳四朗(27=BMB)が、挑戦者の同級1位ジョナサン・タコニン(32=フィリピン)を4回1分0秒TKOで下し、6度目の防衛に成功した。元WBA同級王者具志堅用高の持つ日本記録「13連続防衛」の更新を夢見る京都出身の27歳。7度目の世界戦にして初の地元関西の試合で、現役の国内ジム所属王者で最長の防衛数を更新した。王者は16戦全勝(9KO)。

   ◇   ◇   ◇

リングで互いの体が交錯し、タコニンがよろけて倒れた。拳四朗の右ショート。計算ずくのカウンター。「練習通り。左を空振りさせての右」。4回1分ジャストで決着させた会心の一撃を「抜けたような感じ」と振り返った。

V6を決めた勝利インタビューで絶対王者らしさを見せた。「目標は具志堅さん。まだ半分。スタート地点に立ったぐらい」と言った後で「強い人、どんどん挑戦してきてください!」。リングサイドで観戦したWBAスーパー王者京口に呼びかけるように、笑顔で言い放った。

世界王座連続防衛の日本記録「13」更新へ。夢のシナリオは第2章に入った。「これからは強い相手とやりたい」。京口との統一戦など他団体のベルトに興味がある。V5までは違った。楽に勝てるならと、むしろ弱者を歓迎した。

「ボクサーになってきたんですかね」と自己分析する。ファイトマネーも人気もまだ足りない。左で距離を支配するスタイルに自信を深め、この日は距離の取りづらい左の強打者に完勝。相打ち覚悟で捨て身の32歳を退けた。自信は確信に変わりつつある。

強くなりたいから、姿勢も変わった。V6戦に向け、拠点の東京から日帰りで5度、大阪を訪れた。父の寺地永会長の現役時も担当した篠原茂清トレーナー主宰のジムへ、Tシャツ、短パンで新幹線に乗って訪れ、約2時間鍛えて東京に帰る。篠原トレーナーは「具志堅さんの記録にはあと3年は絶対かかるから、うまくいって30歳。ここからが大事で“落ちてきた”と気づいた時は、遅い。それを分かっている」。3年先を見据え、脈拍数を上げて負荷をかけるメニューをこなし始めた。

地元関西の世界戦は7度目で初めて。「ヤジなかったですか? やったー!」。スマイル・アサシン(笑顔の狙撃手)は、どんどん強くなる。【加藤裕一】

◆国内ジム所属世界王者の6連続防衛 WBA世界ライトフライ級王者田口良一(7連続防衛後の昨年5月20日に陥落)以来15人目で12位タイ。最長記録は元WBAライトフライ級王者具志堅用高の13連続で、2桁以上は12連続の元WBCバンタム級王者山中慎介、11連続のWBAスーパーフェザー級王者内山高志、WBCバンタム級王者長谷川穂積を含め4人だけ。

◆拳四朗(けん・しろう)本名寺地拳四朗で、漫画「北斗の拳」の主人公ケンシロウから命名。1992年(平4)1月6日、京都府城陽市生まれ。東城陽中3年時、高校のスポーツ推薦入学を狙い、ボクシングを開始。奈良朱雀高3年でインターハイ準優勝、関大4年で国体優勝。一時はボートレーサーを志すが、試験に2度失敗。14年8月にプロデビュー。趣味はオシャレ、食べ&飲み歩き。家族は両親、兄。右ボクサーファイター。164センチ。

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ 拳四朗ージョナサン・タコリン 4R、タコリン(右)にTKO勝ちした拳四朗(撮影・加藤哉)

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木村翔が世界再挑戦に失敗 ホーム中国で偉業ならず

木村翔(19年5月14日撮影)

<プロボクシング:WBA世界ライトフライ級級王座戦12回戦>◇26日◇中国江西省撫州市

WBA世界ライトフライ級2位木村翔(30=青木)が、ホームの中国で世界再挑戦に失敗し、2階級制覇はならなかった。無敗の同級王者カルロス・カニサレス(26=ベネズエラ)のV2戦で世界再挑戦。

判定負けを喫し、再び中国で王座に返り咲きはできなかった。日本人対決に実質団体統一戦の井上尚弥を除くと、日本人の世界挑戦は昨年大みそかから10連敗となった。

  ◇    ◇

木村にとって中国は5試合目だった。中国の英雄と言われた鄒市明から王座を奪い、雑草魂で一躍中国で人気になった。今回も初の開催地でセミながら、中国全土にテレビ中継された。中国代表と言える待遇と期待も、王座返り咲きで応えることができなかった。

異例の階級を下げての2階級制覇挑戦だった。元々はライトフライ級だけに「元に戻して減量しただけ」と影響なし。3日までのタイ合宿後は菓子やジュースは封印。栄養士のアドバイスで玄米にするなど「ボクサーらしい食生活」に改善も怠らなかった。

再起戦から2カ月足らずも、4月からタイで約2週間の合宿を張った。毎日スパーかミットで12回、それも1回4分でインターバル45秒。今回は15回のミット打ちも2日。気温40度を超す最も暑い時期の屋外ジムで強化した。減量苦はなく、体力にスタミナを生かせるはずだった。

カニサレスは田口良一のV5戦で世界初挑戦して引き分けていた。昨年に小西令弥との決定戦を制してのV2戦。21勝(17KO)1分と無敗に、木村は「無敗が最強ではない。挑戦者として倒しにいく」と宣言していたが及ばなかった。

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木村翔が初偉業へ「自信ある」中国での2階級制覇

WBA世界ライトフライ級タイトルマッチが決まった木村は、スペインの守り神とされるトカゲのオブジェの前でベルト奪取を誓う(撮影・大野祥一)

ボクシングWBA世界ライトフライ級2位木村翔(30=青木)が、日本人初の海外で2階級制覇に挑戦する。

26日に中国江西省撫州市で、王者カルロス・カニサレス(26=ベネズエラ)のV2戦で挑戦が、14日に都内で正式発表された。木村は17年にWBO世界フライ級王座を中国上海で奪取。再び海外で奪取となれば、日本人2階級制覇で初となる。

2階級制覇挑戦に木村は「正直興味はない。どこの団体でもどこの階級でもいいから、もう1度ベルトを巻くのが目標」と、王座奪回だけに集中する。

初のタイトル挑戦前まで、元々ライトフライ級だった。「フライ級は楽すぎた。元に戻すイメージ。今回はちゃんと減量するだけ」と話す。きっちりと準備と対策だけは怠らず、3日までのタイ合宿後は、お菓子やジュースは封印した。栄養士のアドバイスを受けて玄米にするなど「ボクサーらしい食生活をしてます」と笑った。

中国での試合は5試合目となる。最初の世界戦は五輪連続金メダルで、中国の英雄といわれた王者鄒市明に挑戦。「あの時はすごいアウェーだったが、今やアウェー感はない。ホームに感じる」。メインは会場となる撫州出身の出身中国人3人目の世界王者徐燦(25)のV1戦だが、セミの木村の試合から中国全土に生中継される。

カニサレスは16年に、田口良一のV5戦で世界初挑戦して引き分けている。昨年に小西令弥との決定戦を制して王座に就いた。21勝(17KO)1分といまだ無敗を誇る。木村は「黒星をつける。体力負けはしないし、練習している自信がある。負ける気しない。11回に倒せるかな」と自信満々だった。

メインでは元WBA世界スーパーバンタム級王者でWBAフェザー級10位久保隼(29=真正)が、2階級制覇に挑戦する。

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黒田雅之、王者の連打に屈する「力は出し尽くした」

IBF世界フライ級タイトルマッチ 12回、モルティ・ムザラネのパンチを食らう黒田(撮影・たえ見朱実)

<プロボクシング:IBF世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇13日◇東京・後楽園ホール

IBF世界フライ級4位黒田雅之(32=川崎新田)が世界再挑戦に失敗し、令和第1号の世界王者を逃した。同級王者モルティ・ムザラネ(36=南アフリカ)のV2戦で6年ぶりに世界再挑戦。左ボディーを軸に最後まで攻めたが、的確なパンチをもらって0-3の判定負け。高1からアルバイト生活で、世界初挑戦失敗から挫折を乗り越えてきたが、入門17年目で41戦目の悲願達成はならず。日本人の世界挑戦は日本人対決を除いて7連敗となった。

黒田は打たれても打たれても攻めた。5回には左目上をカットし、終盤は右目周囲もはれ上がった。それでも最後まで攻めたが、ボディー以外の有効打を奪えず。6年ぶりの再挑戦に「下手くそながら、最後まで攻めて、力は出し尽くした」が、手数の多い王者の連打に屈した。

徐々に距離を詰められ、逆にジャブをもろにもらい、細かい連打を浴びた。「想定より拳1個分リーチが長かった。2回で右目がかすんだ。ボディーに持っていくしかなかった」。王者はボディーに効いた素振りもまったく見せず、実力差を認めるしかなかった。

13年の世界初挑戦は大差で判定負けし、その後も厳しい状況が続いた。新田会長が強制的に自腹で1カ月のメキシコ武者修行させたが現地で判定負け。再起後2度の日本王座挑戦にも失敗しながら、やっとつかんだ世界再挑戦の舞台だった。

12年には、井上尚弥のプロテストの相手で圧倒された。試合やスパーした田口良一、拳四朗、木村翔、田中恒成らも、追い越して世界へ上っていった。「自分にイラだった日々」を晴らすことはできなかった。

高1の03年に川崎新田ジムの開設を知って入門した。会員番号18はジム第1号プロの最古参。会長は一番弟子に「結果がすべても、前回と違って気持ちと手は出せた」。6年での進歩は評価したが「今後は体のことも考えて白紙」と話した。黒田は「今はからっぽ」と苦笑し、令和初の国内世界戦で散った。【河合香】

IBF世界フライ級タイトルマッチ モルティ・ムザラネに判定負けした黒田(撮影・たえ見朱実)

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黒田雅之判定負けで世界王者逃す 会長との夢叶わず

ムザラネ(奥)に判定負けした黒田(撮影・たえ見朱実)

<プロボクシング:IBF世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇13日◇東京・後楽園ホール

IBF世界フライ級4位黒田雅之(32=川崎新田)の世界再挑戦は失敗し、令和第1号の世界王者を逃した。同級王者モルティ・ムザラネ(36=南アフリカ)のV2戦で6年ぶりに世界再挑戦。左ボディーを中心に最後まで攻めたが、的確なパンチをもらってリードされ、0-3の判定負けを喫した。高1からアルバイト生活で、13年の世界初挑戦失敗から挫折を乗り越えてきたが、入門17年目で41戦目の悲願達成はならず。日本人の世界挑戦は日本人対決を除いて7連敗となった。

   ◇   ◇   ◇

黒田は打たれても打たれても攻めた。5回には左目の上をカットし、終盤は右目周囲もはれ上がらせた。それでも最後まで攻めたが、左ボディー以外の有効打を奪えず。手数の多い王者の連打に屈した。「想定より拳1個分リーチが長かった。結果にあーだこーだ言えない。実力不足」と負けを認めた。

13年の世界初挑戦は大差の判定負けを喫した。その後も厳しい状況が続いた。再起戦は引き分け、2戦目に日本王座挑戦もTKO負けした。新田会長が強制的に、自腹で1カ月のメキシコ武者修行に出したが、現地で判定負け。再起後2度の日本王座挑戦にも失敗していた。

高1から自宅、ジム、バイト先の3カ所をめぐる生活を送ってきた。趣味も特にない。会長から深夜や早朝の電話で日程変更され、夜中に後援者との食事に呼び出された。ピンチの挽回力が課題に、いじめでタフさを鍛えられ、危機対応力が増した。17年に日本暫定王座を獲得し、やっとつかんだ世界再挑戦の舞台だった。

田口良一とは引き分けている。12年に井上尚弥のプロテストのスパー相手では圧倒された。拳四朗、木村翔、田中恒成、比嘉大吾らも、黒田を踏み台に世界へ駆け上がっていった。黒田は「自分にイラだった日々」を過ごしてきた。

中学まで剣道部も小柄で体力差を感じ、徳山昌守の世界戦に刺激を受けた。高1時に専門誌で川崎新田ジムのオープンを知るとすぐに入門。会員番号18で、ジム第1号プロの最古参で新田会長の一番弟子。二人三脚でこぎ着けた令和初の国内世界戦も、夢はかなわなかった。

◆黒田雅之(くろだ・まさゆき)1986年(昭61)7月17日、東京・稲城市生まれ。中学では剣道部で2段。永山高1年時に開設した川崎新田ジムに入門し、05年プロデビュー。06年全日本新人王MVP。11年に日本ライトフライ級王座獲得で4度防衛。13年にWBA世界フライ級王者レベコ(アルゼンチン)に世界初挑戦も判定負け。17年に再起後3度目の挑戦で日本同級暫定王座獲得。王座統一を含め4度防衛。167・5センチの右ボクサーファイター。家族は母と妹。

▽前WBO世界フライ級王者木村翔 ディフェンスのいいチャンピオン。黒田選手がガードを破れなかった。僕がやるしかないと思った。

▽元3階級制覇王者八重樫東 左ボディー中心で攻める黒田選手の狙いは良かったが12回の長丁場の中では単調になってしまう。王者の引き出しの多さが勝敗を分けた。

▽黒田のあだ名「ラストサムライ」の元祖、元WBCスーパーフライ級王者川嶋勝重氏 黒田選手はコンビネーションがワンパターンになってしまった。その差が出た。顔も腫れていたし、パンチが効いていた様子だったがそれでも気持ちの強さで何とか判定に持ち込んだ。頑張った。

IBF世界フライ級タイトルマッチ 1回モルティ・ムザラネにパンチを見舞う黒田雅之(撮影・たえ見朱実)

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王者ムザラネ「完璧に仕上がった」黒田雅之と対戦

オレがNO1と誇示する王者モルティ・ムザラネ

ボクシングIBF世界フライ級王者モルティ・ムザラネ(36=南アフリカ)が9日、都内のジムで練習を公開した。13日に東京・後楽園ホールでのV2戦で、同級4位黒田雅之(32=川崎新田)の挑戦を受ける。

15分間の縄跳びに始まり、サッドバッグとミット打ちと内容は軽めも、たっぷり1時間汗を流した。09年から14連勝中というベテラン。「ボクシングにすべてかけている。今がベストの体。プロの役目だ」と、練習で裏打ちされた実力維持の一端を見せた。

本来は右も左構えが多かった。3年前から指導するコリン・トレーナーは、昨年に2団体王者田口良一(ワタナベ)を破ったヘッキー・ブドラー(南アフリカ)も指導している。当時の公開練習でも同じ手法で手の内は見せなかった。

サウスポーかと問われると、コリン・トレーナーは「知らなかったのか?」。田口戦も同じだったの問いには「忘れた」とおとぼけ。偵察した黒田陣営の孫トレーナーが「黒田は左には5連勝中」と突っ込むと、練習中にメモする姿を挙げて「黒田が負けると書いたのか」と応酬した。

「ユーチューブを見てくれ」と、自身についても、黒田についても、具体的な言葉は一切なかった。ムザラネは「完璧に仕上がった。試合が楽しみ。海外は慣れているし、ベルトは持って帰る」。前回は坂本真宏(六島)を7回TKO。再び日本人キラー発揮へ自信を示した。

黒田陣営の新田会長は徹底した手の内隠しに苦笑い。「参考にならないが、コンディションはすごく良さそう。身のこなしもいいし、スタミナもありそう。ともにベストは臨むところ」と受けて立つ。勝負のカギに「接近戦に持ち込ませず、自分の距離を保てるか」と話した。

ネイサン・コリン・トレーナー(左)と王者モルティ・ムザラネ

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