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五城楼、史上2度目の珍事とは/夏場所プレイバック

取り直しの1番が取れないため琴春日の不戦勝が決まる(2005年5月14日撮影)

コロナ禍により大相撲夏場所が中止になり、本場所開催まで待ち遠しい日々が続きます。そんな中、日刊スポーツでは「大相撲夏場所プレイバック」と題し、初日予定だった24日から15日間、平成以降の夏場所の名勝負や歴史的出来事、話題などを各日ごとにお届けします。7日目は“チン事”ではない、57年ぶりに起きた珍事です。

<大相撲夏場所プレイバック>◇7日目◇2005年5月14日◇東京・両国国技館

それは十両の五城楼(現浜風親方)-琴春日戦で起きた。土俵際で相手を突き落とし軍配をもらった五城楼だが、物言いがつく。ただ、この一番で右膝を負傷した五城楼は人の肩を借りなければ土俵から下りられなかった。協議が行われている間、土俵上の審判団と五城楼が何やら意思確認。直後、五城楼は車いすで退場した。そして押尾川審判長(元大関大麒麟)の場内説明。「土俵に着くのが同時とみて同体取り直しと決定致しましたが五城楼が負傷しており、相撲が取れず琴春日の不戦勝と致します」。

取り直しの一番が一方の力士の負傷で不戦決着となるのは、48年秋場所6日目の力道山-前田山戦(力道山の不戦勝)以来、史上2度目の珍事。呼び出しが慌てて持ってきた「不戦勝」の旗が掲げられ琴春日が勝ち名乗りを受けた。もちろん五城楼の不戦意思と、琴春日の取り直し意思は確認された末の結末だ。ちなみに琴春日にも不戦意思があれば「痛み分け」になる。

五城楼の診断は右ひざ半月板損傷および同外側側副靱帯(じんたい)損傷の疑い。場所中も酸素カプセル(通称「ベッカムカプセル」)に入り体調管理には万全を期し、場所後の俳優松方弘樹とのマグロ釣りを楽しみにしていた。ここまで休場14回、うち途中休場5回と満身創痍(そうい)が続き「どこかに、靱帯とか筋肉は売ってないかな」と嘆いたことも。1場所2度の反則負け(03年九州場所)という史上初の不名誉記録も持ち「記憶に残る力士」ともいえそうだ。

車椅子で待機中の五城楼は、不戦敗の裁定と負傷の痛みでガックリ(2005年5月14日撮影)

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隆の勝 10年で開花、中卒たたき上げ/プロに聞く

地元の千葉・柏での巡業で犬と記念写真に納まる

大相撲で勢いに乗る幕内力士の1人、隆の勝(25=千賀ノ浦)に話を聞いた。今年で入門10年。史上初の無観客開催となった春場所では12勝3敗の好成績で優勝次点、初の敢闘賞も獲得した。近年は高校、大学を経由して角界入りする力士が多くなる中、貴重な中卒たたき上げ。大家族で育った幼少時代の経験などを明かした。

丸顔に癒やし系の笑顔で“おにぎり君”の愛称で親しまれる隆の勝にとって、相撲との出会いは必然だった。父俊哉さんは大相撲観戦が好きで、地元の千葉・柏市は相撲が盛ん。幼稚園や小学校に相撲大会出場を勧誘するチラシが多数張られており、相撲クラブに所属していない少年も積極的に参加していたという。隆の勝は小1のときに初めて地元の相撲大会に参加。小3から柏市スポーツ少年団で本格的に相撲を始めた。同学年には大翔鵬(現十両)、後輩には元横綱琴桜を祖父に持つ琴ノ若(現前頭)や琴勝峰(現十両)が在籍。強豪のクラブチームだった。

「中卒で大相撲に入るまでずっと通っていました。稽古は厳しかったけど、小さい頃はとにかく相撲が楽しかった記憶があります。クラブには全国で2位、3位になるような強い子もいて、僕も小4から小6までわんぱく相撲の全国大会に出場していましたが、飛び抜けて強いわけではありませんでした」

クラブの練習は1日4時間で、土日の週2回。他のスポーツは習っていないため、平日の放課後は友達と遊ぶ時間が多かったが、学年が上がるにつれて、クラブ以外での稽古時間が増えたという。

「家では週に2、3回はみっちり四股を踏んでいました。回数はあまり覚えていないけど、30分くらいだったかな。めちゃくちゃ厳しく指導されたわけじゃありませんが、父親の監視の下で踏んでいたことを覚えています」

6人きょうだいの4番目として生まれた。母雅代さんは整体師。相撲を始めた頃から、痛いところがあればすぐに治療をしてくれた。今でも実家に戻ると体を診てくれるという。両親は子どもたちを特別厳しく育てたわけではないが、隆の勝にとって印象深い「ルール」がある。

「テレビゲームはいいけど、携帯ゲームは禁止されていましたね。他の家だと『目が悪くなるから』『勉強をしなくなるから』って理由が多いと思うんですけど、うちの場合は『姿勢が悪くなるから』とよく言われました。ゲームに限らず姿勢のことはよく注意されていましたね。いま思うと、整体師らしい視線だなと思います。ちなみに、今も携帯ゲームはやっていませんよ(笑い)」

大家族の存在は今でも力になっている。場所中は家族のライングループに母親が自身の取組動画を投稿。負けが込むと、姉からは「顔が死んでいるよ」と一喝される。

「昔から家族はみんな応援してくれた。今もだけど、家族の存在はずっと力になっています」

春場所では初めての敢闘賞を受賞するなどブレークした。力のある突き押し、右を差して素早く寄る相撲も目立ったが、現在の形が確立され始めたのは最近のこと。

「自分の相撲をつかみ始めたのは出稽古を積極的にするようになった3、4年前くらいからです。自分の型というのは、本来なら早めに決めた方がいいのかもしれないけど、今となっては焦らずに決めなくて良かったのかもしれない。だからこそ、若いときから四股やすり足の基礎(運動)で体をつくることが重要だと思う」

師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)や同部屋の力士が口をそろえて「稽古熱心」と評価する真面目な性格。地道な鍛錬で自身と向き合い続け、その才能を開花させた。【佐藤礼征】

◆隆の勝伸明(たかのしょう・のぶあき)本名・石井伸明。1994年(平6)11月14日、千葉県柏市生まれ。小3から柏市スポーツ少年団で相撲を始め、小4から小6までわんぱく相撲全国大会出場。先代千賀ノ浦親方(元関脇舛田山)からの誘いを受け、千葉・西原中を卒業後、千賀ノ浦部屋に入門。10年春場所で初土俵。17年九州場所で新十両、18年秋場所で新入幕。20年春場所では12勝3敗の好成績で初の敢闘賞を受賞。家族は両親、兄、姉2人、妹、弟の8人家族。183センチ、163キロ。血液型O。得意は押し。

幕内土俵入りする隆の勝
春場所で敢闘賞を受賞した隆の勝(右)
大相撲春場所 9日目 玉鷲(右)との立ち合いで顔をうち出血するも押し出しで破る隆の勝

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夏場所中止に理事長「現況の終息願う」コメント全文

3月22日、大相撲春場所千秋楽で協会挨拶を行う八角理事長

日本相撲協会は4日、臨時理事会を開き、2週間延期して24日に初日を予定していた大相撲夏場所(東京・両国国技館)の中止を決定した。同時に7月の名古屋場所(7月19日初日)は会場を名古屋市のドルフィンズアリーナから東京・両国国技館に変更し、無観客開催を目指す方針も決めた。9月の秋場所後に予定していた秋巡業は中止する。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、政府発令の6日期限の緊急事態宣言が、31日まで延長。これを受けて、通常開催を断念した。

    ◇    ◇    ◇

日本相撲協会が発表した八角理事長(元横綱北勝海)のコメントは以下の通り。

このたび、緊急事態宣言の延長が発令されたことを鑑み、ファンの皆様並びに関係者の皆様の健康と安全を確保するため、五月場所の開催中止を決定いたしました。

また、秋巡業につきましても、開催は10月ではございますが、開催できるかどうかの目処が立たない中で準備を進めさせていただくことは、主催者である勧進元様に多大なるご迷惑となることと判断し、中止を決定いたしました。

なお、夏巡業につきましては、東京オリンピックが予定されていたこともあり、すでに中止を決定しております。

一方で、七月の名古屋場所につきましては、大人数による東京から名古屋への移動・長期滞在を避けるために、特別開催としまして、7月19日から8月2日、東京で行うこととし、両国国技館での無観客開催を目指す所存です。

相撲観戦を楽しみにしていらっしゃるファンの皆様には、大相撲をお見せ出来る日が先になってしまい、大変残念に思いますが、力士を初めとする協会員一同、今後も国民の皆様と同様に、一生懸命、新型コロナウィルス感染症の感染予防に努めて参ります。そして、開催できた暁には、精一杯の迫力ある相撲をご覧いただけますよう、これからも取り組んで参ります。

一刻も早く現況が終息することを願うとともに、感染症により亡くなられた方とそのご遺族に心よりお悔やみを申し上げます。また、現在治療中の患者の皆様、ご家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。そして、全国各地で感染症の治療・ケアにあたられている医療関係者の皆様に心から感謝するとともにエールを送らせていただきます。

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大相撲夏場所は中止、名古屋場所は無観客東京開催へ

閑散とする両国国技館

日本相撲協会は4日、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2週間延期して24日に初日を予定していた大相撲夏場所(東京・両国国技館)の中止を発表した。本場所の中止は八百長問題の影響を受けた11年春場所以来、9年ぶり3度目となった。

協会内ではこれまでに、高田川親方(元関脇安芸乃島)や十両白鷹山ら計7人の新型コロナ感染者が判明。全国での感染拡大も深刻化する一方で、協会は夏場所の開催可否について政府の要請に沿って対応する構えを見せていた。

この日には政府発令の6日期限の緊急事態宣言が、31日まで延長された。「我々は国の方針に従うのは当たり前。中止は当然でしょう」、「感染者が出ているのだから当然の判断。みんなそうなると思っていた」と話す親方衆がいるなど、協会内でも夏場所中止を訴える声が出ていた。

また7月19日に初日を予定していた名古屋場所の開催場所を、名古屋市内のドルフィンズアリーナから東京・両国国技館に変更することも発表。3月の春場所同様に無観客開催を目指す方針を示した。

9月の秋場所後に予定していた秋巡業の中止も発表した。

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朝乃山昇進で「横綱大関」併記1場所で解消/新番付

大関昇進の伝達を受ける朝乃山(右)と高砂親方(代表撮影=2020年3月25日)

日本相撲協会は27日、大相撲夏場所(5月24日初日、東京・両国国技館)の新番付を発表した。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、夏場所開催の可否は決まっていない。

横綱は3場所連続で東に白鵬(35=宮城野)、西に鶴竜(34=陸奥)が就いた。3月の春場所では、千秋楽相星決戦で優勝を争った両者は、白鵬が2場所連続45回目、鶴竜が5場所ぶり7回目の優勝を目指す。

新大関の朝乃山(26=高砂)は西に就いた。新大関誕生は昨年夏場所の貴景勝以来で、高砂部屋からは02年秋場所の朝青龍(元横綱)以来、富山県出身では1909年(明治42年)夏場所の太刀山以来、111年ぶりとなる。近大出身では、師匠の高砂親方(元大関朝潮)以来37年ぶり、学生相撲出身では07年秋場所の琴光喜以来8人目。三役在位3場所での新大関昇進は、照ノ富士の2場所に次ぎ大鵬、豊山、雅山と並ぶ2位のスピード昇進(58年以降)。三段目付け出しデビューでの大関昇進は初めてとなった。

また、5場所ぶり2度目のかど番となる貴景勝(23=千賀ノ浦)は東大関。先場所は大関が貴景勝1人で、38年ぶりに西横綱鶴竜が番付上「横綱大関」と併記されたが、それも1場所で解消された。

関脇は先場所、西だった正代(28=時津風)が、2場所連続在位の東へ(三役も2場所連続)。西は御嶽海(27=出羽海)が、3場所ぶりに(三役としても)復帰した。

小結は、東が2場所ぶり復帰の大栄翔(26=追手風)、西はベテラン隠岐の海(34=八角)が4年(24場所)ぶりの返り咲きとなった(三役としては関脇だった16年九州場所以来、21場所ぶり)。

夏場所は、通常通りなら5月22日の取組編成会議で初日と2日目の対戦相手が決定。24日の初日を迎える(いずれも未定)。

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豊ノ島「最後の勇姿」家族に見せられずも…悔いなし

16年初場所13日目、琴奨菊(右)をとったりで破る豊ノ島(2016年1月22日撮影)

せめてもの願いはコロナ禍に打ち砕かれた。日本相撲協会は17日の理事会で、元関脇豊ノ島(36=時津風)の引退及び年寄井筒の襲名を承認した。今後は部屋付き親方として後進の指導にあたる。

幕内在位71場所中に三役を13場所務め、三賞も10回受賞。168センチの小兵ながら差し身のうまさでもろ差しを得意とし、相撲巧者として活躍したが力尽きた。

   ◇   ◇   ◇

関取復帰をかけた無観客開催だった3月の春場所。東幕下2枚目で2勝5敗と負け越し再十両の可能性が消えた豊ノ島は「幕下で負け越して1つの決断をする時なのかなという思いはある」と話していた。心中は九分九厘、引退に傾いていたが父親の顔で「あとは娘との闘いかな」とも。千秋楽から1週間後に帰京し沙帆夫人、7歳の長女希歩ちゃんに引き際を告げた。

一度は引退の腹を決めていた。東十両11枚目で臨んだ1月の初場所。4勝11敗と負け越し2度目の幕下陥落が決定的となった千秋楽に「体がボロボロだから」と家族に打ち明けた。だが幕下で無給生活になることを幼心に感じていた希歩ちゃんの「普通のお父さんになるのはイヤ! 私がお金を貸してあげるから」と泣き叫ぶ姿もあって翻意。同時に「本当に最後になるんだったら、この子に最後の姿を見せないといけない。でも、それをしてないじゃないか」という思いを明かしていた。

負け越したら引退、そうなっても家族や親を大阪に呼んで最後の姿を見せられる-。そんな現役生活最後の望みは、新型コロナウイルスの影響による無観客開催で消された。白星目前で逆転の小手投げを食らい3敗目を喫した、5番相撲の魁との一番で衰えを痛感。腹をくくった瞬間だった。

返り入幕の10年九州場所では、14勝1敗で並んだ横綱白鵬との優勝決定戦にも出た。思い出の相撲にその一番と、琴奨菊が優勝した16年初場所で僚友にとったりで勝った一番を挙げた。アキレス腱(けん)を断裂し16年九州場所では約12年ぶりに幕下に陥落したが、不屈の闘志で2年後に関取復帰。18年間の角界生活を「長かったような短かったような。もう終わったという感じ」と振り返った。コロナ禍で会見も出来ず代表電話取材となったが「悔いはありません」と恨み節はかけらもなかった。【渡辺佳彦】

◆豊ノ島(とよのしま、本名・梶原大樹)1983年(昭58)6月26日、高知県宿毛市生まれ。168センチ、157キロ。宿毛高から02年初場所初土俵。04年夏場所で新十両、同年秋場所で新入幕、07年夏場所では新三役の小結に昇進。通算成績は703勝641敗68休、金星4個。各段優勝は序ノ口1回、序二段1回、十両2回。

春場所9日目、魁(右)に小手投げで敗れる豊ノ島(2020年3月16日撮影)

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豊ノ島が引退、年寄井筒襲名 36歳関取復帰ならず

豊ノ島(2018年9月14日撮影)

三役を13場所務め、三賞も10回受賞し相撲巧者として活躍した幕下の豊ノ島(36=時津風)の引退17日、決まった。

日本相撲協会は同日、理事会を開き、豊ノ島の引退及び年寄井筒の襲名を初任した。

豊ノ島は高知・宿毛高から02年初場所で初土俵。04年夏場所で新十両、同年秋場所で新入幕を果たした。得意のもろ差しを武器に07年夏場所では新三役の小結に昇進。以後、三役を13場所務め、三賞10回、金星は4個獲得。10年九州場所では、14勝1敗で横綱白鵬と並び優勝決定戦にも出たが敗れ、幕内優勝はなかった。

アキレス腱(けん)を断裂し16年九州場所では約12年ぶりに幕下に陥落したが、2年後の18年九州場所で十両に復帰。関取として8場所務めたが、今年1月の初場所では東十両11枚目で4勝11敗と負け越し。2度目の幕下陥落となった今月の春場所は、東幕下2枚目から関取復帰を目指したが、2勝5敗と負け越し。「幕下で負け越して1つの決断をする時なのかな、とかいろいろ思いはある。ゆっくり進退は考えたいと思います」と話していた。

◆豊ノ島(とよのしま) 83年6月26日、高知県宿毛市出身。本名・梶原大樹。168センチ、157キロ。通算成績は703勝641敗68休。各段優勝は序ノ口1回、序二段1回、十両2回。家族は夫人と1女。

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大相撲夏場所2週間延期も、協会は「開催」こだわり

閑散とする両国国技館正面出入り口(撮影・河田真司)

日本相撲協会は3日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、5月10日に初日を迎える予定だった大相撲夏場所(両国国技館)開催の2週間延期を決定した。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けての決定で、夏場所の新日程は5月24日が初日で、6月7日が千秋楽。協会は今後も情勢に注視しながら、通常開催、縮小開催、無観客開催、中止などを検討するとした。合わせて7月の名古屋場所開催の2週間延期も発表した。

  ◇    ◇    ◇

新型コロナの感染拡大の影響を受け、角界がまた1つの決断を下した。臨時理事会を終え、記者会見に出席した八角理事長(元横綱北勝海)は「予定されていた5月場所を2週間延期することを決議しました」と発表した。

3月に行った春場所は史上初の無観客開催に踏み切り、協会員からの感染者を出すことなく15日間完走した。各方面で大会やイベントが軒並み中止や延期となる中で1つの結果を示したが、社会情勢は深刻化する一方。同理事長は「日に日によくなっているとは言えない中で開催するにはどうすればいいのかというところで2週間の延期を決めた」と理由を語った。

あくまで、開催を目指した上での延期となる。夏場所の番付発表は通常通り27日に行う。今後、政府からの「緊急事態宣言」が出た場合についても、芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「その時点で理事会を招集しながらどういう方向性にするかを決める。今の時点では中止とは言えない」と慎重に言った。

八角理事長も「通常開催を目指しながら、縮小しての開催、無観客開催、あるいは中止を含め、あらゆる角度から柔軟な姿勢で検討を重ねる」と話した。今後も日程などの変更があり得る可能性は十分にあるとしながらも、協会は「開催」へのこだわりを見せた。

しかし、検討結果の発表時期は未定で、縮小開催の具体的な内容についても同理事長は「何も決まっていない。期間が2週間延期するということだけ」と話すにとどめた。合わせて名古屋場所開催の2週間延期も発表したが、芝田山広報部長は「今の状況で会場が空いているのか空いていないのか分からない。担当者が調整する」と困惑。本来なら4日から販売開始予定だった夏場所の前売り券も販売開始日が未定のままなど懸案事項は多い。

理事会後には師匠会が行われ、各部屋の師匠に同様の説明が行われた。発熱した場合の対処法や各地域の保健所の確認、力士らに春場所同様に朝と夜の検温を義務づけさせるなど、協会は各部屋に徹底した体調管理を求めた。また、これまで代表取材で行われてきた報道陣による朝稽古取材もついに禁止に。前代未聞の状況に、角界も大きく揺れ始めた。

◆主な本場所の日程変更 45年夏場所は無料公開で明治神宮にて興行の予定のところ、5月23日の初日に大空襲があり6月7日へと延期。89年初場所は1月8日初日予定も昭和天皇崩御のため9日に変更。00年秋場所は9月10日初日予定も、同年のシドニー五輪の日程を考慮して前年の98年11月に9月3日に変更と決定。13年夏場所も5月5日に初日予定だったが、前年の12年5月に1週間後の5月12日に変更と決めた。

 ★大相撲の日程★

◆初場所 1月12~26日 両国国技館 19年12月24日番付発表 徳勝龍が史上2度目の幕尻優勝。

◆春場所 3月8~22日 エディオンアリーナ大阪 2月24日番付発表 史上初の無観客開催。白鵬が優勝し、朝乃山が場所後に大関昇進。

◆春巡業 3月29日の三重・伊勢神宮を皮切りに近畿、東海、関東などで4月26日まで開催予定も中止、または21年に延期。

◆夏場所 5月24日~6月7日 両国国技館 4月27日番付発表 5月10日に初日予定も2週間の延期。

◆名古屋場所 7月19日~8月2日 愛知・ドルフィンズアリーナ 番付発表当初は6月22日予定も現時点では未定 7月5日初日予定も2週間の延期。

◆オリパラ場所 8月12、13日に両国国技館で「大相撲東京2020オリンピック・パラリンピック場所」開催予定も、東京五輪の延期により21年の同時期に延期する方針。

◆秋場所 9月13~27日 両国国技館 番付発表8月31日

◆九州場所 11月8~22日 福岡国際センター 番付発表10月26日

閑散とする両国国技館正面出入り口(撮影・河田真司)

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「自分の相撲」風格も生んだ意識改革/朝乃山連載3

タイを手に笑顔の朝乃山(中央)。前列右側は高砂親方夫妻、後列左から2人目は父の石橋靖さんと母の佳美さん(代表撮影)

<新大関朝乃山 “富山の人間山脈”の軌跡(3)>

大相撲春場所を11勝4敗で終えた関脇朝乃山(26=高砂)が、富山県出身では太刀山(横綱)以来111年ぶりとなる大関昇進を確実にした。連載「新大関朝乃山 “富山の人間山脈”の軌跡」では、朝乃山の相撲人生を振り返る。

   ◇   ◇   ◇

令和最初の幕内優勝を飾った昨年夏場所から、朝乃山の心境に変化があった。初土俵から10場所目の17年秋場所で新入幕。順調に出世したが、その後、約1年半は幕内下位から中位を行ったり来たり。伸び悩んでいた。昨年春場所は勝ち越し王手から5連敗で負け越した。同場所中に食べたカキにあたり、体調を崩していた。師匠の高砂親方にも未熟さを指摘された自己管理を徹底。場所中は禁酒した。何より「相手のことは考えず自分の相撲を取りきる」と自分と向き合った。

それまでは、翌日の対戦相手のことを考えて寝付けないこともあった。「昔はよく相手の取組をビデオで見ていたけど、見なくなった。最近、見るのは自分の相撲だけ。悪いところがあれば直すように。『相手が変化するかも』とか考えたら硬くなる」。口癖だった「自分の相撲を取る」という意識に拍車が掛かった。仕切りの際は、可能な限り自ら先に両手をついて待った。しかも「立ち合いの時は相手を見ない。目を合わせない。目を合わせると、のまれそうになる」と誰が相手でも同じリズム。余計な感情が生じる隙を与えず「自分の相撲」を貫いた。

初優勝後は「優勝したことを自信にしたい」と話す通り、言動に余裕も出てきた。何げない雑談でも以前は「富山弁が出ちゃった」と、方言を気にしていた。それが優勝後は自ら報道陣にクイズを出題し「富山弁で『今日はオレが、だいてやる』って、どういう意味か分かりますか? 『おごってやる』って意味です」とニヤリ。周囲の目を気にし、コンプレックスのように感じていた部分を、逆に愛する故郷をアピールする武器に変えた。

土俵上でも土俵外でも、やることや思いは変わらないが、意識改革と自信が成長と風格をもたらした。「はたきができるのは器用。自分はできない。負けてもいいので前に出る。負けるなら前に出て負けたい」。不器用と呼ばれても構わない。令和を引っ張る大器に、大関の看板が託された。(おわり)【高田文太】

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朝乃山、新大関へ口上「正義を全うし一生懸命努力」

朝乃山

日本相撲協会は25日午前、大阪市内で関脇朝乃山(26=高砂)の大関昇進をはかる臨時理事会を開き、全会一致で承認した。この後、同協会の出羽海理事(元前頭小城ノ花)と高砂一門に所属する審判部の千田川親方(元小結闘牙)が使者として大阪市内の高砂部屋に向かい、伝達式が行われた。使者から昇進決定を言い渡された朝乃山は「謹んでお受けいたします。大関の名に恥じぬよう、相撲を愛し、力士として正義を全うし、一生懸命努力します」と口上を述べた。

春場所千秋楽の22日、審判部(境川部長代理)の総意として八角理事長(元横綱北勝海)に、朝乃山の大関昇進を諮る臨時理事会の招集を要請。これを了承され、この日の臨時理事会の開催となった。

朝乃山は新三役として小結に昇進した昨年11月の九州場所で11勝、今年1月の初場所で10勝を挙げた。春場所は11勝4敗で、大関昇進の数字的な目安とされる3場所通算33勝に1勝足りなかったが、相撲内容と4場所連続2けた勝利の安定感などが評価された。

新大関誕生は19年夏場所の貴景勝(千賀ノ浦)以来、平成以降では27人目。今から約260年前、江戸時代の宝暦7年の雪見山から数えて通算250人目となった。平成生まれでは照ノ富士、高安、貴景勝に続いて4人目。富山県出身では、明治以降で1902年の梅ケ谷、1909年の太刀山(元横綱)以来、111年ぶり3人目の大関誕生となった。高砂部屋からは02年秋場所の朝青龍以来。学生相撲出身では8人目で、15年導入の三段目100枚目格付け出しでは初めての大関となった。また、3場所での三役通過は、昭和以降8位タイ、年6場所制となった58年以降2位タイの速さとなった。

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新大関朝乃山が誕生!臨時理事会で全会一致承認

高砂親方(左)と朝乃山

日本相撲協会は25日午前、大阪市内で関脇朝乃山(26=高砂)の大関昇進をはかる臨時理事会を開き、全会一致で承認した。

この後、同協会の理事と高砂一門に所属する審判部の代表が使者として大阪市内の高砂部屋に向かい、伝達式が行われる。

春場所千秋楽の22日、審判部(境川部長代理)の総意として八角理事長(元横綱北勝海)に、朝乃山の大関昇進を諮る臨時理事会の招集を要請。これを了承され、この日の臨時理事会の開催となった。

朝乃山は新三役として小結に昇進した昨年11月の九州場所で11勝、今年1月の初場所で10勝を挙げた。春場所は11勝4敗で、大関昇進の数字的な目安とされる3場所通算33勝に1勝足りなかったが、相撲内容と4場所連続2けた勝利の安定感などが評価された。

新大関誕生は19年夏場所の貴景勝(千賀ノ浦)以来、平成以降では27人目。今から約260年前、江戸時代の宝暦7年の雪見山から数えて通算250人目となった。平成生まれでは照ノ富士、高安、貴景勝に続いて4人目。富山県出身では、明治以降で1902年の梅ケ谷、1909年の太刀山(元横綱)以来、111年ぶり3人目の大関誕生となった。

高砂部屋からは02年秋場所の朝青龍以来。学生相撲出身では8人目で、15年導入の三段目100枚目格付け出しでは初めての大関となった。また、3場所での三役通過は、昭和以降8位タイ、年6場所制となった58年以降2位タイの速さとなった。

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貴ノ花「不撓不屈の精神」/大関昇進伝達式主な口上

大関昇進伝達式では決意を込めた口上が披露される。主なものを紹介する。(しこ名は当時)

▽朝潮「大関の名に恥じぬよう、これからも一生懸命頑張ります」(1983年春場所後)

▽貴ノ花「不撓(ふとう)不屈の精神で」(93年初場所後)

▽若ノ花「一意専心の気持ちを忘れず」(93年名古屋場所後)

▽武蔵丸「日本の心を持って」(94年初場所後)

▽朝青龍「大関の名に恥じぬよう、一生懸命頑張ります」(2002年名古屋場所後)

▽白鵬「全身全霊をかけて努力」(06年春場所後)

▽琴奨菊「万理一空の境地を求めて」(11年秋場所後)

▽稀勢の里「大関の名を汚さぬよう、精進」(11年九州場所後)

▽鶴竜「お客さまに喜んでもらえるような相撲が取れるよう努力」(12年春場所後)

▽豪栄道「大和魂を貫いて」(14年名古屋場所後)

▽貴景勝「武士道精神を重んじ、感謝の気持ちと思いやりを忘れず相撲道に精進」(19年春場所後)

▽朝乃山「大関の名に恥じぬよう相撲を愛し、力士として正義を全うし、一生懸命努力します」(20年春場所後)

(共同)

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朝乃山が大関昇進へ、富山県出身力士111年ぶり

朝乃山(左)は貴景勝を押し倒しで破る(撮影・小沢裕)

<大相撲春場所>◇千秋楽◇22日◇エディオンアリーナ大阪

関脇朝乃山(26=高砂)の大関昇進が事実上、決まった。

横綱、大関の昇進をあずかる日本相撲協会審判部の錦戸副部長(元関脇水戸泉)は全取組終了後、八角理事長(元横綱北勝海)に、場所後の25日に朝乃山の大関昇進をはかる臨時理事会の招集を要請。これを快諾された。境川部長代理(元小結両国)が明かした。

この臨時理事会で承認され、その後の大相撲夏場所(5月10日初日、両国国技館)番付編成会議をへて、正式に大関昇進が決まる。

朝乃山は千秋楽で大関貴景勝に勝ち11勝4敗で今場所を終えた。大関昇進の目安とされる三役で3場所通算33勝には1勝届かないが、33勝というのはあくまでも数字上の目安。相撲内容や安定した取り口などが評価され、審判部内の総意で推薦することで意見が一致した。

~朝乃山が大関になると~

◆新大関誕生 19年夏場所の貴景勝(千賀ノ浦)以来、平成以降では27人目。

◆富山県出身 1909年6月の太刀山(元横綱)以来、111年ぶり。

◆高砂部屋 02年秋場所の朝青龍以来となる。

◆学生相撲出身 豊山、輪島、朝潮、武双山、出島、雅山、琴光喜に続き8人目で、近大出身では師匠の高砂親方(元朝潮)以来2人目になる。

◆付け出し 豊山(幕下10枚目)輪島(幕下60枚目格)朝潮(同)武双山(同)出島(同)雅山(同)琴光喜(同)に続き、三段目100枚目格では初めて。

◆三役通過 昇進目安の番付を「3場所連続三役」とすれば、新三役から所要3場所で大関昇進は00年名古屋場所の雅山以来約20年ぶり。

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鶴竜「やるだけ」白鵬と75カ月ぶり千秋楽相星決戦

朝乃山(右)は先に上手投げを打つも下手投げで鶴竜に敗れる(撮影・小沢裕)

<大相撲春場所>◇14日目◇21日◇エディオンアリーナ大阪

大関とりの関脇朝乃山が、横綱鶴竜に下手投げで負けて今場所4敗目を喫した。

1分20秒に及ぶ協議を、鶴竜は自信を持って、冷静に見つめていた。「自分でしっかり見えていたので大丈夫だろうとは思っていた」。投げの打ち合い、左肘が先についた朝乃山に対して、鶴竜は頭から落ちる執念で勝利をつかんだ。「自然とそうなっただけ」。2敗を守り、13年九州場所の日馬富士-白鵬以来、6年3カ月ぶりとなる千秋楽相星決戦で白鵬と対戦する。

前回の反省があった。昨年秋場所では相手得意の右四つから「無理矢理投げにいって負けた」。今回は攻め急がず、右四つから巻き替えてもろ差し。重心を十分に落とし、土俵際の粘り腰を生んだ。連日、横綱が若手の壁になっているが「そういうのは意識していない」と淡々。昨年9月の部屋移籍後、優勝はおろか15日間を皆勤したことがなかったが、横綱の責任を果たす活躍を見せている。7度目の優勝へ「ここまできたらやるだけ」と、短い言葉に決意を込めた。

◆千秋楽相星決戦 1場所15日制となった49年夏場所以降では38例ある。横綱同士は過去に24回で、全勝同士は5回。最多は千代の富士の9回で4勝5敗、次いで北の湖、貴乃花の2人が7回登場している。白鵬は過去1勝3敗、鶴竜にとっては初めての千秋楽相星決戦となる。

記者の質問に答える鶴竜(撮影・前岡正明)

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錦富士「狙ってた」幕下V、助言の元安美錦に恩返し

幕下優勝を決めた錦富士は笑顔で下がりを見せる

<大相撲春場所>◇13日目◇20日◇エディオンアリーナ大阪

青森県十和田市出身で東幕下49枚目の錦富士(23=伊勢ケ浜)が、西幕下22枚目の旭蒼天を送り出し、7戦全勝で幕下優勝を決めた。

関取昇進目前だった昨年秋場所に左肘筋断裂で途中休場して手術。リハビリなどの助言を受けてきた青森・深浦町出身で部屋付きの安治川親方(41=元関脇安美錦)への恩返しV。10月に予定されている同親方の引退相撲までに、関取に昇進することも誓った。福島市出身で東十両11枚目若元春(26)と西十両2枚目若隆景(25)は、師匠の荒汐親方(64=元小結大豊)が定年前最後の場所で、兄弟ダブル勝ち越しを届けた。

   ◇   ◇   ◇

錦富士が頭で鋭く当たると、左からのいなしで相手を土俵下に送り出した。「5番目を勝ったくらいから安治川親方にも『自信を持って優勝を狙って相撲をとっていい』と言われたので、1番1番を大事に狙っていました」と笑顔。東幕下3枚目だった昨年秋場所に左肘のケガを悪化させ、以降は治療とリハビリを重ねてきた。「これで最高位に近い位置まで行けると思うので頑張りたい」。ともに近大を中退して角界に入った同期の十両翠富士(23=伊勢ケ浜)の背中も追う。

昨年9月20日の手術後に寄り添ってくれたのが、現役時代に付け人を務めた安治川親方。両膝のケガで苦しんだ自身の経験をもとに、プールトレーニングや下半身強化法などの助言をくれた。「今場所は、験担ぎもしてくれたんです」。取り組み前日に必ず差し入れてくれている大阪が本店の「上等カレー」が必勝飯だ。「親方も『もう飽きたよ~』って言いながら一緒に食べてくれています」と感謝した。「今日は自分がカレーを作って、食べてもらいます」。カレー祝勝会をもてなすつもりだ。

10月4日には同親方の断髪式を含む引退相撲(両国国技館)が予定されている。「本当は現役中に(十両に)上がって恩返ししたかったけれど、そこには間に合わせたい。肘も順調に回復していますし、体を作りながら強くなりたい」。夏場所、名古屋場所も、華麗な素早い相撲を継続する。【鎌田直秀】

錦富士(左)が送り出しで旭蒼天を破り、幕下優勝を決めた(撮影・外山鉄司)
若元春(右)は木崎海を押し出しで破る(撮影・前岡正明)
寄り切りで若隆景が美ノ海を下した(撮影・外山鉄司)

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錦富士が幕下復活V、元安美錦がリハビリ寄り添い

幕下優勝を決めた錦富士(撮影・小沢裕)

<大相撲春場所>◇13日目◇20日◇エディオンアリーナ大阪

幕下優勝は錦富士(にしきふじ、23=伊勢ケ浜)7戦全勝。

旭蒼天を送り出し、左肘痛から復活した。東幕下3枚目の昨年秋場所に筋断裂で途中休場し手術。リハビリに寄り添ってくれたのは部屋付きの安治川親方(元関脇安美錦)だった。

10月には引退相撲も予定されているだけに「感謝していますし(そこまでに)強くなりたい」と意気込む。

◆東49枚目 本名・小笠原隆聖。青森県十和田市出身。16年秋場所初土俵。183センチ、141キロ。左四つ、寄り。

錦富士(右)は送り出しで旭蒼天を下し幕下優勝を決める(撮影・小沢裕)

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白鷹山が勝ち越し、強靱な下半身生んだ徹底した基本

矢後(右)を寄り切りで破る白鷹山(撮影・河田真司)

<大相撲春場所>◇11日目◇18日◇エディオンアリーナ大阪

山形県置賜郡白鷹町出身で東十両12枚目の白鷹山(24=高田川)が、6人いる東北出身関取の勝ち越し一番乗りを決めた。

同10枚目の矢後を寄り切って8勝3敗とし、関取では初の6連勝と7場所ぶりの勝ち越し。昨年春場所で左足を骨折して番付を下げたが、体重を含めたパワーアップでつかんだ再十両場所で、優勝争いでも1差につける。

   ◇   ◇   ◇

白鷹山が左はず押し、右おっつけで、矢後を土俵下まで力強く寄り切った。立ち合いで強く当たった頭を、相手のあごの下で何度も突き上げる。差されても構わず前へ。「押せたのは良かったけれど、まだまだ課題も多い。右の脇が甘いし、頭もへそとみぞおちの間くらい低くいかないと。勝ち越せたことはうれしいですけれど、その気持ちを明日に引きずってはいけない」。残り4日間に気を引き締め直した。

昨年初場所で、十両3場所連続勝ち越し。だが、新入幕目前だった同春場所に左足首を骨折して途中休場すると、翌夏場所も全休し、幕下に陥落した。復帰後の成長には「かなり体重が増えました」。当時155キロあった体は、約20キロ増加。糖尿病の影響もあって太りにくかったが、飲食物を工夫しながら結実した。「それを支えるにはどうしたらいいのか。はたき、いなしにも対応していかないと」。四股、てっぽう、すり足の基本も再度見直し、強靱(きょうじん)な下半身を作り上げてきた。

器用な技があるわけでなく、体を生かした前に出る突進力が最大の武器だと理解している。「やれることは少ないし、限られているので、1つ1つ極めたい。より良い形に進化させて圧倒していければ良い」。18年秋場所以来の2ケタ勝利も見えてきたが、まずは福島市出身の若隆景(25=荒汐)と対戦する12日目の一番に集中する。【鎌田直秀】

矢後(奥)を寄り切りで破る白鷹山(撮影・河田真司)

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阿武咲「昔から見ていた大横綱」白鵬から初の金星

白鵬(左)と頭をぶつけあう阿武咲(撮影・上田博志)

<大相撲春場所>◇10日目◇17日◇エディオンアリーナ大阪

西前頭5枚目阿武咲(23=阿武松)が、恩返しの1勝で優勝争いを混沌(こんとん)とさせた。無敗の横綱白鵬を初めて破り、17年秋場所以来2年半ぶりの金星を挙げた。白鵬が主催する少年相撲「白鵬杯」の第1回大会で団体優勝し、メダルをかけてもらってから10年、成長した姿を見せつけた。平幕の碧山が1敗を守って白鵬に並び、横綱鶴竜、朝乃山ら2敗勢4人が追いかける。

  ◇    ◇    ◇

阿武咲が、横綱白鵬のかち上げを攻略した。相手の前腕を左ではね上げ、横綱を大きくのけ反らせた。密着を避けるように回り込み、引いた瞬間を逃さず前に出た。「何をしてくるか分からないけど、来たのに対応しようとした」。

前半戦は張り差しを多用するなど、選択肢の多い相手の立ち合いを警戒しつつ、体の反応に任せて対応した。取組を見守った八角理事長(元横綱北勝海)は「白鵬に勝つにはこういう相撲だというお手本。距離を空けて、しぶとく足を出しながら取った」と賛辞を贈った。

11年越しの因縁があった。白鵬が相撲普及のため主催する少年相撲「白鵬杯」で、10年に行われた第1回大会で青森県代表として出場。団体戦で優勝し、表彰式ではメダルをかけてもらった。当時は中学2年生。「昔から見ていた大横綱。10年前はこうなるとは思ってなかった」。18年初場所以来、3度目の対戦での殊勲星だった。

前師匠にも成長した姿を示したい。昨年9月、入門時から指導を受けてきた先代阿武松親方(元関脇益荒雄)が、体調不良などを理由に日本相撲協会を退職。「押し相撲の自分をつくってくれたのは先代。その押し相撲で勝てたのは恩返しになった」。18年初場所に右膝を負傷するまで、出世争いで同学年の貴景勝らをリードしていた。「けがして2年になる。そろそろ復活しないといけない」。決意を固めた23歳の三役経験者が、優勝争いを面白くした。【佐藤礼征】

▽白鵬(阿武咲に金星を配給)「ようやく、そういう日が来たなという感じ。ここまでしっかりと育っているなという感じ」

白鵬を破り笑顔で記者の質問に答える阿武咲(撮影・前岡正明)

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御嶽海3度目の優勝へ「朝乃山らが頑張ってくれる」

遠藤(右)を攻める御嶽海(撮影・前岡正明)

<大相撲春場所>◇10日目◇17日◇エディオンアリーナ大阪

御嶽海が3場所ぶりの勝ち越しを決めた。右前まわしを狙う遠藤を、鋭い出足から右のど輪を交えて一気に押し出した。

給金直しは2度目の優勝を果たした昨年の秋場所以来。白鵬が初黒星を喫し“3度目”に向けてムードが高まってきたが「(朝乃山らが)頑張ってくれるんじゃないですか」。平常心を強調するように報道陣の笑いを誘った。

遠藤(左)を押し出しで破る御嶽海(撮影・上田博志)

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隆の勝が主役!1敗守った  おにぎり君の笑顔満開

玉鷲(左)との立ち会いで激しく当たる隆の勝(撮影・清水貴仁)

<大相撲春場所>◇9日目◇16日◇エディオンアリーナ大阪

東前頭9枚目隆の勝(25=千賀ノ浦)が新風を巻き起こす! 玉鷲を押し出して1敗を守り、関取としては自己最速の勝ち越しを決めた。無観客開催の中、同部屋の大関貴景勝と稽古を重ね、実力を伸ばしている押し相撲のホープが無欲に突き進む。横綱白鵬が無傷の9連勝。隆の勝と碧山の平幕2人が1差で追い、横綱鶴竜ら2敗の5人が食らいつく。

  ◇    ◇    ◇

隆の勝が押し相撲の実力者を難なく退けた。立ち合い当たって右を差すと、すくって玉鷲の体勢を崩し、最後ははず押し。自己最高位の場所ながら、自己最速で給金を直した。「うれしい。勝ち越しのかかった相撲は緊張するけど、今日は周りが見えていた」。ファンから“おにぎり君”の愛称で親しまれる、癒やし系の笑顔を咲かせた。

力をつける環境が整っている。旧貴乃花部屋の力士らが千賀ノ浦部屋に移籍して約1年半。タイプの違う関取衆と手合わせする機会が増えた。特に貴景勝は同じ押し相撲。「場所前に大関(貴景勝)と相撲を取ることが大事。大関はストイックで頭がいいし、立ち合いの強さ、ぶれない下半身は見習いたい」と強調する。貴景勝から戦略面の助言もしばしばあり、この日の朝も「先に攻めた方がいい。無理やり(右を)入れてもいい」と声をかけられた。実際に右を差してから主導権を握る展開。大関の言葉を白星につなげた。

異例の無観客開催だが、図らずも好結果につながっている。「最初は寂しかったけど、慣れてくれば稽古場に似ている」と隆の勝。師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)も「稽古場で強い。無観客でプレッシャーが薄れてるかも」と好調の要因を推察した。

1月の新年会では、師匠に口頭で「年内での三役昇進」を決意した。「同年代が先に上がって負けてられない」。素質を開花させつつある中卒たたき上げの25歳が、主役候補に躍り出てきた。【佐藤礼征】

〈隆の勝(たかのしょう)〉

◆本名 石井伸明(いしい・のぶあき)

◆あだ名 ノブ。おにぎり君。

◆生まれ 1994年(平6年)11月14日、千葉県柏市。

◆家族 両親と兄、姉2人、妹、弟の6人きょうだい、8人家族。

◆相撲歴 小3から柏市相撲スポーツ少年団で相撲を始め、小4~小6までわんぱく相撲全国大会出場。

◆角界入り 先代千賀ノ浦親方で現常盤山親方(元関脇舛田山)からの誘いを受け、中卒で入門。10年春場所で初土俵。17年九州場所で新十両、18年秋場所で新入幕。

◆しこ名 新十両を機に、現師匠の現役時代のしこ名から1字取って「舛の勝」から改名。

◆サイズ 183センチ、163キロ。

取組中に出血するも玉鷲を押し出しで破る隆の勝(撮影・清水貴仁)
妙義龍を破り、2日連続で流血しながら引き揚げる隆の勝(撮影・河田真司)

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