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【若乃花の目】貴景勝の当たりを受け止めた照ノ富士 鬼気迫る表情の横綱がいてこそ土俵が締まる

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

照ノ富士は前日に優勝を決め、一方の貴景勝もかど番脱出を既に決めていました。昨年名古屋場所以来となる、千秋楽結びの横綱-大関対決でしたが、1人横綱と1人大関を背負ってきた2人の、それなりに意味のある一番でした。やるだけのことはやった、というのが貴景勝です。突っ張りではなく、もろ差し狙い。意表を突いて横綱を少し慌てさせました。かど番を脱出して相手が横綱だからこそ出来たのだと思います。あえてもろ差し狙いの相撲で向かった、こういう相撲を取り入れていけば今後、余裕が出てきます。精神的に土俵際まで追い詰められて学ぶことがあります。今場所の貴景勝はまさにそうで、最後のもろ差し狙いの相撲にそれが表れていました。

貴景勝の当たりを受け止めた照ノ富士の横綱としての生きざまは、優勝インタビューに表れていました。若い力士と戦うのは楽しい、というニュアンスのことを話していましたね。そんな言葉には横綱としての責任感が込められています。自分のレベルまで後輩を引き上げないと引退できない、自分を倒して追い出す力士が出ないことには辞められない-。大相撲の歴史に脈々と受け継がれてきたことで、それが本来の姿なんです。鬼気迫る表情の横綱がいてこそ土俵が締まる。今場所の照ノ富士が体現してくれました。看板力士がいてこそ大相撲ということを2人が身をもって示してくれた場所でした。(日刊スポーツ評論家)

照ノ富士(左)は押し出しで貴景勝を下す(撮影・足立雅史)
照ノ富士(手前)の横綱土俵入りを見つめる所ジョージ(中央)(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
照ノ富士(左)に押し出しで敗れた貴景勝(撮影・足立雅史)
優勝インタビューで笑顔を見せる照ノ富士(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)
優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)

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照ノ富士復活Vの陰にあった緻密な筋トレ「あんなにこだわってやっている力士は見たことがない」

幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活優勝を果たした。1差で迎えた2敗の関脇霧馬山との直接対決。寄り切りで制して13勝目を挙げ、千秋楽を残して6場所ぶり8度目の賜杯を決めた。3場所以上続けて全休して優勝した横綱は3人目。1989年初場所を制した北勝海(現八角理事長)以来34年ぶりの復活劇となった。

強い横綱が帰ってきた。1年ぶり8度目の優勝を飾った照ノ富士は「素直にうれしいです」と実感を込めた。両膝のケガから復活を果たし、願っていた結果を手にした。「10月に手術をして1日、1日を無駄にしたくないという思いでやっていました。頑張ってきてよかった」とかみしめた。

大関昇進を確実にしている霧馬山を盤石の攻めで寄せ付けなかった。「本当に力をつけてきた」という同じモンゴル出身の27歳の挑戦を、がっぷり四つに組んで受け止めた。チャンスとみるや、逃さず土俵際まで持っていき寄り切った。

昨年9月の秋場所で両膝の状態が悪化して途中休場。特に右膝は、骨が完全にずれるほどのダメージを負っていた。翌10月に両膝の手術を受けたが「人工関節が必要」と言われるほどの症状は重かった。痛みがゼロになるわけではなく「将来を考えたら、今でもやめたいよ」と漏らしたこともあった。

2代目若乃花の間垣部屋にいた頃からの縁で、照ノ富士が信頼する伊勢ケ浜部屋の呼び出しの照矢は「手術しても決して完全に治るわけではない。少しでも状態が戻ればと思ったんでしょう」と代弁する。休場中も万全にはならない膝と向き合い、トレーニングを怠らなかった横綱の姿が印象に残る。下半身の踏ん張りを少しでも補うため、大きな筋肉の間の細かい筋肉まで鍛えるメニューを実践。「自分の相撲に必要な部位を鍛えるため、あんなにこだわってやっている力士は他に見たことがありません」。再起をかけて奮起する日々も「いつもと変わらない横綱。落ち込むことはありませんでした」という。そんな日々の鍛錬があったからこその優勝だった。

手術をするか否か、出場をするか否かも、常に師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)と相談しながらやってきた。「親方、おかみさんがいないと今の自分はいない。本当に1つの優勝では返せないくらい恩を感じています」と感謝の言葉を並べた。残すは千秋楽の大関貴景勝戦。「まだ1日ありますから。良い千秋楽を迎えられるように」。引き締まった表情のまま、余韻に浸ることなく気持ちを切り替えた。【平山連】

幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
優勝を決め遠くを見つめる照ノ富士(撮影・中島郁夫)

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照ノ富士3場所連続全休から復活V「今もやめたい」漏らしたことも 日々鍛錬で両膝手術から再起

霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、3場所連続全休からの復活優勝を果たした。1差で迎えた2敗の関脇霧馬山との直接対決。寄り切りで制して13勝目を挙げ、千秋楽を残して6場所ぶり8度目の賜杯を決めた。3場所以上続けて全休して優勝した横綱は3人目。1989年初場所を制した北勝海(現八角理事長)以来34年ぶりの復活劇となった。

    ◇    ◇    ◇

強い横綱が帰ってきた。1年ぶり8度目の優勝を飾った照ノ富士は「素直にうれしいです」と実感を込めた。両膝のケガから復活を果たし、願っていた結果を手にした。「10月に手術をして1日、1日を無駄にしたくないという思いでやっていました。頑張ってきてよかった」とかみしめた。

大関昇進を確実にしている霧馬山を盤石の攻めで寄せ付けなかった。「本当に力をつけてきた」という同じモンゴル出身の27歳の挑戦を、がっぷり四つに組んで受け止めた。チャンスとみるや、逃さず土俵際まで持っていき寄り切った。

昨年9月の秋場所で両膝の状態が悪化して途中休場。特に右膝は、骨が完全にずれるほどのダメージを負っていた。翌10月に両膝の手術を受けたが「人工関節が必要」と言われるほどの症状は重かった。痛みがゼロになるわけではなく「将来を考えたら、今でもやめたいよ」と漏らしたこともあった。

2代目若乃花の間垣部屋にいた頃からの縁で、照ノ富士が信頼する伊勢ケ浜部屋の呼び出しの照矢は「手術しても決して完全に治るわけではない。少しでも状態が戻ればと思ったんでしょう」と代弁する。休場中も万全にはならない膝と向き合い、トレーニングを怠らなかった横綱の姿が印象に残っている。下半身の踏ん張りを少しでも補うため、大きな筋肉の間の細かい筋肉まで鍛えるメニューを実践。再起をかけて奮起する日々も「いつもと変わらない横綱。落ち込むことはありませんでした」という。そんな日々の鍛錬があったからこその優勝だった。

手術をするか否か、出場をするか否かも、常に師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)と相談しながらやってきた。「親方、おかみさんがいないと今の自分はいない。本当に1つの優勝では返せないくらい恩を感じています」と感謝の言葉を並べた。残すは千秋楽の大関貴景勝戦。「まだ1日ありますから。良い千秋楽を迎えられるように」。引き締まった表情のまま、余韻に浸ることなく気持ちを切り替えた。【平山連】

霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける

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【若乃花の目】照ノ富士は技術的なうまさがあるからこそ横綱 1人横綱を脅かす2大関に期待

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

数字上は当確でも、前半戦の相撲内容を消極的と指摘された霧馬山としては、不評を払拭(ふっしょく)するためにも「横綱に勝って大関文句なし」の相撲を見せたかったでしょう。

引っ張り込んで前に出たかった照ノ富士に、そうはさせまいと浅い左差しで食い付きました。よく考えて取ったと思います。ただ、相手はやっぱり横綱です。落ち着きはらっていました。引っ張り込むことが無理とみるや、腰をドッシリ落として対処しました。大きな体であれだけ低く構えられ、最後は胸が合ってしまっては、霧馬山も太刀打ちできません。勝負を決める前に、霧馬山の右上手を切ったことも見逃せません。体の大きさが有利なのはもちろんですが、ただ引っ張り込んできめたり、強引な小手投げを打つだけではない、技術的なうまさがあるからこそ横綱なんです。

私の経験からしても、4場所休場明けというのは、精神的にきつかったはずです。今場所の照ノ富士も初日は心配でしたが、3日目ぐらいから流れをつかんだのでは、と思います。強引さもあり、うまさもありの相撲で、現状では頭1つ2つ抜きんでています。来場所は2大関が確実で、関脇陣も複数人が大関挑戦になります。1人横綱を脅かす力士が出て、さらなる白熱した土俵に期待します。(日刊スポーツ評論家)

霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
照ノ富士(右)は霧馬山を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】照ノ富士追う霧馬山に勝機あり、長期戦になれば逆転も 朝乃山は攻め半テンポ遅い

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇13日目◇26日◇東京・両国国技館

大関時代に照ノ富士に5戦全敗していた時の朝乃山の取り口は、攻めきったと思われた土俵際で、上半身が伸びてしまう印象がありました。下半身で相撲を取っていなかったということです。

2年たったこの日の対戦で改善点があったことは評価に値します。立ち合いも頭から強く当たって、左からのおっつけで横綱を後退させました。その左を差した体勢でも上体は伸びきっていない。ただ、残念ながらここからの攻めが半テンポ遅かった。差した左もかいなを返すわけでもなく、これでは横綱に抱えられるだけです。前に出るにしても、もっと腰を相手にぶつけるようにしないと圧力が伝わりません。これでは横綱の思うつぼ。劣勢に見えて照ノ富士には状況判断する余裕がありました。幕内上位と当たる体力が、まだついていないうちの幕内復帰で、今場所の朝乃山は気力で乗り切っていると思います。残る2日も大事な土俵になります。

優勝争いは、14日目に照ノ富士が直接対決で霧馬山に勝てば優勝決定です。ただ霧馬山にも勝機は十分あります。この日の北青鵬戦で見せたように、上手を取って頭をつけ半身の体勢で横に食い付いたり、足技で横綱を崩したり、いろいろ作戦はあります。長い相撲にでもなれば、より霧馬山が有利かなと思います。勝って優勝を決めたい照ノ富士は右を差して霧馬山を起こし、早めに勝負を決めたいところでしょう。(日刊スポーツ評論家)

朝乃山(左)を小手投げで破る照ノ富士(撮影・中島郁夫)
朝乃山を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(右)は外がけで北青鵬を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】若元春の相撲に見た役力士の意地と計算された取り口 攻め手あればもっと強く

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇11日目◇24日◇東京・両国国技館

役力士の意地と計算された取り口を、若元春の相撲に見ました。左を差せば、かなりの自信を持って取れる若元春が、あそこまで深く差しながら北青鵬に右の上手を引かれたことで、長い相撲になることは予想したでしょう。左膝を使いながらの切り返しとか攻め手はあったでしょうが、何せ相手は2メートルを超す北青鵬です。ここは無理な攻めは我慢しました。ガップリ胸を合わせながら、北青鵬の腰の高さを察知して、勝負を決めるのは右上手からの攻めか、うっちゃりという選択肢が頭にあったと思います。北青鵬が寄り立てるところで、最後は腰が高い相手を腹に乗せて見事なうっちゃり。何があっても左が入れば勝てるという自信と、激しい攻防の中でも計算できる冷静さで役力士の面目を保ちました。

今場所の若元春は、自分に気合を入れながら、落ち着いて自分を見失わない相撲で、横綱の次に内容のいい相撲を取っていると思います。今場所、逆転優勝でもすれば大関昇進もあるかもしれないし、2ケタ勝てば間違いなく来場所は大関とりです。右を引っ張り込んでばかりだと相手も慣れてしまうので、もう1つ2つの攻め手があれば、もっと強くなるでしょう。あとは、気迫をもっと前面に出していいかな、と思います。(日刊スポーツ評論家)

北青鵬(右)をうっちゃりで破る若元春(撮影・野上伸悟)
北青鵬(右)をうっちゃりで破る若元春(撮影・野上伸悟)
北青鵬(奥)をうっちゃりで破る若元春(撮影・野上伸悟)
北青鵬(奥)をうっちゃりで破る若元春(撮影・野上伸悟)
北青鵬(右)をうっちゃりで破る若元春(撮影・鈴木正人)
北青鵬(右)をうっちゃりで破る若元春(撮影・鈴木正人)
北青鵬(上)をうっちゃりで破る若元春(撮影・鈴木正人)
北青鵬(後方)をうっちゃりで破る若元春(撮影・鈴木正人)
北青鵬(左)をうっちゃりで破った若元春(撮影・鈴木正人)

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【若乃花の目】後半戦は割を崩しても朝乃山を三役以上と ファンの期待応え上位倒してV争いに

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇9日目◇22日◇東京・両国国技館

8連勝こそ逃した朝乃山ですが最小限の1敗で勝ち越しを決めました。ここまで平幕下位が相手でしたが、先場所は上位だった竜電には立ち合いを止められ相手に相撲を取られてしまった印象です。右を差しても二の矢の攻めを防がれ苦戦しましたが、竜電に次の攻めがないことに救われました。左を巻き替え慎重に圧力をかけて勝負を決めました。10日目はまた少し番付が上がり平戸海ですが、スピードはあるけど体力差は明らか。土俵際で詰めの甘さが出なければ、1敗のまま残り5日の後半戦に入ると思います。

その後半戦は割を崩しても、朝乃山を優勝争いの三役以上と当てて、ファンの期待に応えてほしいと思います。心の面できつい思いをした2年間だったでしょう。ただ体の面ではケガもなく、技術面で衰えるわけもなく、何より次期横綱候補と期待された大関経験者です。2年前の「強かった朝乃山」をファンに再び見せるためにも、番付下位でなく上位を倒しての優勝争いに加わってほしいと思います。

結びの一番では明生が、理想の攻めで全勝の横綱に土をつけました。膝を曲げてすり足で相撲を取りたい照ノ富士を、左右に動かし足を伸ばさせた攻めは光りました。これで再び3人が1敗で並び、1差で4人が追う白熱の展開です。その中に朝乃山がいます。だからこそ、朝乃山の上位戦に期待します。(日刊スポーツ評論家)

朝乃山は竜電(左)を寄り倒しで破る(撮影・横山健太)
朝乃山は竜電(右)を寄り倒しで破る(撮影・横山健太)
朝乃山は竜電(右)を寄り倒しで破る(撮影・横山健太)
朝乃山は竜電(右)を寄り倒しで破る(撮影・横山健太)

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【若乃花の目】7連勝の明生、動きいいが気になる「いなし」後半戦も熱い優勝争い見せてほしい

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇7日目◇20日◇東京・両国国技館

立ち合いの鋭い出足と当たりの強さに定評のある明生ですが、今場所はさらにいいですね。この1発目の当たりで、二の矢の攻めをカバーしています。その二の矢として放ったのが横からの攻めで、右からいなしました。ちょっとどうかな…と思ったけど、引くまでではないから良しとしましょう。体はよく動いているし反応もいいので、このままの相撲を取り続ければ、もともと三役経験もある実力者なので優勝争いに加わるでしょう。

ただ、注意しなければいけないのは、対戦経験のある相手にとって明生のいなしは「次の攻めで出してくる」と想定内であることです。そう考えさせるスキを与えないためにも、いなしは前に出て攻めている時に出すことです。攻められている時のいなしは、引きと同じように呼び込んでしまうし明生の場合、胸で攻めを受けてしまいがちです。あとは防戦となり、土俵際で捨て身の小手投げを打つ場面が明生にはありますが、1回打って打開できなくてもあきらめず、何度でも打つことでしょう。

全勝力士が複数人いて中日を迎えるのも、最近では少ないことです。幕内下位との対戦が多い朝乃山が単純に考えれば優勝に最も近いけど、横綱の復活優勝も現実味があるし、関脇陣も充実しています。場所は折り返しますが、後半戦もファンをくぎ付けにするような相撲に期待しています。(日刊スポーツ評論家)

明生は佐田の海(手前)を突き落としで破る(撮影・小沢裕)
初日から7連勝を飾り勝ち名乗りを受ける明生(撮影・小沢裕)
取組後の土俵下控えであごを押さえる明生(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】霧馬山、大関意識しすぎ消極的な相撲 単なる数字合わせでなく問われる本当の強さ

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇5日目◇18日◇東京・両国国技館

霧馬山は前半戦を4勝1敗で乗り切れば大関昇進の10勝に届くと、場所前に展望しました。

その数字は確かにクリアしています。ただ、相撲内容は消極的で立ち合いの変化や、引いたり回り込むような相撲ばかりで、この日の琴ノ若戦もうまくかわせただけ。いつもの霧馬山ではありません。2ケタという数字を意識しすぎていると思います。

気持ちは分かりますが、横綱や大関になろうという人は単に勝てばいい、ではいけません。関脇との間には大きな壁があり、強さを植え付けなければいけない地位です。最近の大関が、すぐに陥落する現状もあって、単なる数字合わせでなく昇進しても本当に強いのかが問われます。

そういう厳しい目で見ることも必要で、それが大関という選ばれた者しか就けない地位を傷つけず守ることにもなります。このままではイメージがよくありません。ファンにも納得してもらい、その声で一押ししてもらうためにも一生懸命に、最後まで前に出て攻めきる相撲で白星を重ねてほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)

琴ノ若(左)と攻め合う霧馬山(撮影・鈴木正人)
琴ノ若(手前)をすくい投げで破る霧馬山(撮影・鈴木正人)
琴ノ若(手前)をすくい投げで破る霧馬山(撮影・鈴木正人)
琴ノ若(手前)をすくい投げで破る霧馬山(撮影・鈴木正人)
霧馬山は琴ノ若(右)をすくい投げで破る(撮影・小沢裕)
霧馬山は琴ノ若(右)をすくい投げで破る(撮影・小沢裕)
霧馬山は琴ノ若(右)をすくい投げで破る(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】貴景勝の「心」が全面に 先場所綱とり失敗 土俵で負った傷は土俵でしか治せない

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇3日目◇16日◇東京・両国国技館

貴景勝の「心」が前面に出た相撲でした。

何をするか分からない小兵の翠富士に対して、相手を見て突っ張るのではなく頭から当たっての突っ張りでした。負けても仕方ない、怖がらずに攻めるんだという心が終始、相撲に出ていました。先場所、ケガで途中休場し綱とりの夢も消え、体と心に傷を負いました。ただ、本場所の土俵で負った傷は本場所の土俵でしかなおせません。もちろん稽古は大切ですが、なおすのも傷口を広げるのも本場所次第。癒やす薬は土俵の中にあるものなんです。

綱とりから一転してかど番を迎える苦しさは、私も25年以上前ですが経験しました。その場所、何とか13日目に勝ち越して師匠に報告した時「良かったな。負け越していたら引退だったぞ」と言われました。私も大関から陥落なら引退を覚悟して臨んだ場所でした。綱とりの夢を見ていたらどん底に落とされる。この苦しみは経験した者しか分かりません。だから貴景勝の気持ちもよく分かります。ケガは100%には治らないから、苦しい土俵は続くでしょう。またケガをしないだろうかという恐怖心との闘いもあります。そんな時でも、この日見せた、攻撃は最大の防御-を体現した相撲を忘れずに取りきることです。(日刊スポーツ評論家)

翠富士を押し出しで破り、懸賞金の束を手にする貴景勝(撮影・河田真司)
激しくぶつかり合う貴景勝(左)と翠富士(撮影・河田真司)
照ノ富士(左)は遠藤を押し出しで下す。後方中央は貴景勝(撮影・河田真司)
照ノ富士(左)は遠藤を押し出しで下す。後方中央は貴景勝(撮影・河田真司)

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【若乃花の目】照ノ富士まずは10番を目指し、その数字をクリアしたら欲を 心配なのはスタミナ

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇初日◇14日◇東京・両国国技館

正代に攻め込まれ、一見するとヒヤリと見える照ノ富士の復帰土俵でしたが、危うさは感じない相撲でした。

正代も残られたら相撲にならないと計算して、一気におっつけて持って行こうとしました。残念なのはおっつけだけで、まわしに手が届かなかったこと。少しアワ食いましたが、体の大きさに恵まれている照ノ富士からすれば、膝が悪いとはいえ余力を持って残せました。

去年の秋場所からなかった横綱土俵入りも復活しました。やはり土俵が締まるし、お客さんの歓声も明らかに違いました。照ノ富士にとっても足の裏で土俵の感覚が分かるし、短い時間でも少しでもブランクを取り戻せたと思います。土俵入りの所作を見ても落ち着いていて相撲にも好影響を与えたことでしょう。

2日目以降ですが、中盤までは慎重に取っていった方がいいでしょう。まずは10番を目指し、その数字をクリアしたら欲を出せばいい。やはり4場所も出ていないのでスタミナが心配です。前半は恵まれた体でカバーできますが、後半に入ると心の疲労が出てきます。うまくペース配分しながら千秋楽まで、ただ1人の横綱として土俵を務めてほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)

すくい投げで正代(手前)を破る照ノ富士(撮影・宮地輝)
正代(奥)をすくい投げで破る照ノ富士(撮影・野上伸悟)
懸賞金を受け取る照ノ富士(撮影・宮地輝)

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【若乃花の目】照ノ富士の復帰でいくつも相乗効果 朝乃山は少し衰えあり?自分の心との闘いに

「若乃花の目」

<大相撲夏場所:展望>

今回から場所の展望や見どころ、本場所中では評論できない私なりに感じたことを語りたいと思います。よろしくお願いします。

やはり注目は照ノ富士の土俵復帰です。先場所は貴景勝も途中休場して、7日目以降は関脇が結びの一番を取るという、異様な土俵でした。やはり横綱が最後に登場すれば土俵が締まります。1人大関で結びを取り続けていた貴景勝も少し肩の荷が下りるでしょう。金星を挙げたいという平幕力士のモチベーションも上がるし、お客さんも土俵入りを見られる。横綱がいることで相乗効果はいくつもあります。4場所ぶりの復帰で、誰しもが緊張する初日の土俵です。ただ、正代は真っ向から当たってくる相手なので、落ち着いて無難にスタートできれば、恵まれた体を生かしての四つ相撲ですから、優勝候補と言えるでしょう。

大関を目指す2人の土俵からも目が離せません。霧馬山は2ケタ勝利で手が届きますが、序盤5日間は最低でも4勝1敗で乗り切りたいところで、3勝2敗なら苦しむと思います。初日の相手・翠富士は相撲が遅い霧馬山には、やりにくい嫌なタイプですが「最初に当たっておく方がいい」ぐらいに考えればいいと思います。初場所が平幕だった大栄翔は昇進には2ケタ勝利は当然、少なくても13日目ぐらいまでは優勝争いに絡む必要があるでしょう。2ケタも12勝以上とかハードルは上がります。

朝乃山は、それなりに取れると思います。ただ最近「幕内は立ち合いが違う」とコメントしていますが、年齢的に少し衰えを感じているのかなと思います。2年で幕内の顔ぶれも変わっているし、どうしても緊張もあるでしょう。ただ、経験値は十分。自分の心との闘いになると思います。

最後に土俵以外で感じたことがあります。十両で落合、幕下で大の里というスター候補の土俵も今場所の注目です。他にもたくさんいます。彼らが本格的に幕内上位で活躍する前に協会には、古くからのファンをつなぎ留めるための、さらに新規ファン開拓のための準備期間にしてほしいと思います。具体的に思うことは館内のさらなるファンサービスです。国技館2階の廊下でも相撲観戦できるモニターを設置して、スタンドバーを置くのもいいでしょう。空気が吸える外の回廊にもグッズショップを構えても面白いと思います。土俵の充実も当然ですが、国技館って長い時間楽しめるな、また来たいなと思わせるエンターテインメント化は、もっと出来ると思います。コロナ禍で苦しい中、親方衆が奮闘しているのはよく分かりますが、来場者に優越感を味わってもらえるようなファンサービスがあってもいいのかな、と期待しています。(日刊スポーツ評論家)

照ノ富士(2022年9月17日撮影)
朝乃山(2023年3月20日撮影)

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朝乃山2年ぶり再入幕へ「土俵に上がれる喜びと感謝忘れず」再び頂点目指す 優勝争いも見据え

【イラスト】朝乃山の番付変遷。9場所ぶりに幕内復帰

大相撲で大関経験者の朝乃山(29=高砂)が、2年ぶりに幕内土俵に戻ってくる。日本相撲協会は1日、夏場所(14日初日、東京・両国国技館)の新番付を発表。先場所は東十両筆頭で13勝2敗だった朝乃山は、東前頭14枚目で再入幕を果たした。新型コロナウイルスのガイドライン違反で6場所の出場停止、大関から三段目まで番付は急降下。それでも復帰6場所目で、番付上は9場所ぶりに幕内力士として名を連ねた。

     ◇     ◇     ◇

昨年7月の名古屋場所で三段目から復帰した朝乃山が、6場所目で幕内まで番付を戻した。復帰後の5場所は合計46勝5敗。先場所は2場所連続の十両優勝こそ逃したが、再入幕は確実だった。この日は「やっと幕内に戻ってくることができた。ここからが本当の勝負。今年中に三役を目指しているので、早くそこに近づきたい。5月場所は最低でも2ケタは勝ちたいし、できれば、その上を目指して、1つでも多く白星を積み重ねていきたい」と力説し、優勝争いも見据える。

最後に幕内に名を連ねた21年11月の九州場所以来、9場所ぶりの再入幕だが、当時は出場停止中だった。幕内力士として土俵に立てば、不祥事発覚で自主的に途中休場した21年夏場所以来、2年ぶりとなる。「土俵に上がれる喜びと感謝を忘れず、また一から頑張っていきたい」。2年前に横綱候補と呼ばれた逸材が、再び頂点を目指していく。

○…若元春が新関脇に昇進し、弟で先場所まで7場所連続で関脇だった小結若隆景とともに、史上4組目の「兄弟関脇」となった。これまで兄弟で関脇以上となったのは、初代若乃花&貴ノ花、逆鉾&寺尾、3代目若乃花&貴乃花と、いずれも人気者。「少ない枠に2人で入ることができたのは光栄。歴代の方と、遜色ないように頑張りたい」と力を込めた。若隆景は先場所中に右膝を大けがしたが、若元春は「絶対に戻ってくる」と、再び兄弟で幕内後半戦を盛り上げる決意だ。

【イラスト】23年夏場所新番付(幕内・十両)
朝乃山(2023年3月20日撮影)

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若元春が新関脇昇進、4組目の兄弟関脇が誕生「歴代の方と肩を並べても遜色なく思われるように」

大相撲夏場所の番付発表会見で自らの名前を指し笑顔を見せる若元春。右は師匠の荒汐親方(撮影・小沢裕)

大相撲夏場所(14日初日、東京・両国国技館)の新番付が1日、発表され、新関脇に昇進した若元春(29=荒汐)が、東京・両国国技館で会見した。

弟で昨年春場所に昇進以降、先場所まで7場所連続で関脇を守っていた小結若隆景に続き、史上4組目の兄弟関脇が誕生した。これまで兄弟で関脇以上となったのは元横綱の初代若乃花と大関貴ノ花、ともに元関脇の逆鉾と寺尾、ともに元横綱の3代目若乃花と貴乃花(新関脇当時は貴花田)。若元春は「少ない枠の中に2人で入ることができたのは光栄。歴代の方と肩を並べても、遜色なく思われるように頑張りたい」と、表情を引き締めた。

今年の初場所で新三役に昇進し、小結で2場所連続で勝ち越してきた。特に先場所は11勝を挙げ、大関とりの起点をつくった。会見では開口一番「まだ、あまり実感がわいていないです。小結の実感も、最近できてきたばかりなので」と、とまどいの表情を見せた。さらに、報道陣から「小結と関脇の違いは?」と問われると「これはクイズですか?」と話し、持ち前の明るさで会見場を笑わせた。

11年11月の九州場所で初土俵を踏んでから、新入幕まで11年余りを要した。そこから1年余りで関脇まで昇進した理由について「結婚して、子どもができたことで、内面的に成長できたと思う」と、ちょうど1年前に生まれた長女の存在の大きさを語った。

また、新関脇場所で初優勝するなど、常に先を歩んできた弟の若隆景は、先場所で大けがを負い、今場所は全休の見込み。会見に同席した師匠の荒汐親方(元前頭蒼国来)によると、若隆景は「手術が終わってリハビリをしている。完璧に(状態が)戻ってから(本場所に)戻したい」という状態だ。7月の名古屋場所も休場する可能性もあり、その場合は、大きく番付を落とすことになる。それでも若元春は「弟はストイックで努力型の性格。絶対に戻ってくる。背中を見ていただけではなく、必死で追いかけてきたので」と信じて疑わず、再び兄弟で幕内後半戦を盛り上げる決意だ。

「武器は左四つ。(今は自分を)そんなに弱いとは思わなくなった」と、自信がついてきた。一方で「(大関への昇進は)自分自身が一番意識していない。目標は三賞を取ること」とも語る。新関脇場所も、気負わずマイペースで臨むつもりだ。

大相撲夏場所の番付発表会見で自らのしこ名の位置を確認しながら指さす若元春。右は師匠の荒汐親方(撮影・小沢裕)
大相撲夏場所の番付発表会見に臨む若元春(撮影・小沢裕)
若元春(左)の大相撲夏場所番付発表会見に臨む師匠の荒汐親方(撮影・小沢裕)
大相撲夏場所の番付発表会見に臨む若元春(撮影・小沢裕)

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「大相撲は続いていかない」新弟子の減少に歯止めかからず 30年前の若貴ブーム時代の4分の1

【イラスト】1973年以降の新弟子検査受検者数

大相撲の新弟子の減少傾向が続いている。学校の卒業時期と重なる春場所は「就職場所」とも呼ばれ年6場所で最も入門者が多いとされるが、今回受検したのは34人。義務教育修了が受検資格に定着した1973年以降では2012年と並び最少だった。3代目若乃花、貴乃花による「若貴ブーム」で最多の160人を記録した92年から約30年。最盛期の4分の1以下にまで落ち込む事態に関係者たちも頭を悩ませている。

入門者減に歯止めがかからない。新弟子検査の受検者は今年1月の初場所8人、学校の卒業時期と重なり「就職場所」ともいわれる春場所は2012年と並び過去最少の34人、夏場所は5人と、現段階で計47人。義務教育修了が受検資格に定着した1973年以降で過去最少ペースとなっている。

深刻な事態に小結大栄翔は「新弟子たちが入らなければ大相撲は続いていかない」と危機感を募らせた。平幕の琴恵光も「最近はコロナの影響で力士と触れ合う機会がなくなっている。それもつながっているのかな」と私見を述べた。

1973年以降では、年間100人を超える新弟子検査の受検者が当たり前だった。社会現象とも称された「若貴ブーム」はその最盛期に当たり、92年は223人(春場所は160人)、93年は221人(同156人)と2年連続で200人を超え。

ただ、2000年代に突入すると少子化と子供の相撲離れもあり、状況は一変した。02年には91人(同50人)と100人を割り、06年以降は17年連続で100人割れ。近年は新型コロナウイルスの影響を受けてスカウト活動に制限がかかり、22年(61人)、23年(66人)と2年連続で60人台を記録している。

徐々にコロナ前の生活に戻りつつある中、次世代の才能を発掘するために必要なことは地道なスカウト活動を行うことしかない。日体大相撲部時代にアマチュア横綱に輝いた花田秀虎が米NFL挑戦を目指してアメフトに転向したように、若い有望株が他競技に転向するケースを何としても避けたいところだ。

日大大学院で「相撲文化継承への提言」と題した論文を書いた大栄翔も、その思いが強い。自身の論文でも主張したように、「力士たちが地域に入って、子どもたちが相撲と触れ合う機会を増やさないといけない」と訴える。高砂親方(元関脇朝赤龍)は、今後さらに有望株のスカウトに力を入れる考えで「若い人たちに相撲の魅力を伝えたい」と話した。【平山連】

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【若乃花の目】最後の最後にもったいないことをした大栄翔 霧馬山は持って生まれた体の柔らかさ

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇千秋楽◇26日◇エディオンアリーナ大阪

本割、優勝決定戦ともに大栄翔の当たり、突き押しの威力が半減してしまいました。

本割は霧馬山が何をやってくるか気をつけるように、相手を見ながらもろ手で立ちました。頭から当たるしかなかった決定戦は、頭より先に手で行ってしまいました。こうなると腰も引けて2番とも威力半減です。やはり押し相撲は立ち合いの当たりが弱いと、二の矢の攻めもなくなり土俵際の落とし穴ははまります。今場所は腰をぶつけるようにして足を運んでいた大栄翔だけに、最後の最後になってもったいないことをしたなと思います。

1差で追う立場で臨んだ霧馬山は、精神的には大栄翔より楽だったでしょう。押し込まれはしましたが、土俵際で弓なりになって粘ったことで、突きにくくさせました。四つに組んだら勝ち目はない、と大栄翔に思わせる強さも、先場所から光ります。初優勝にも浮かれず「相撲自体は良くなかった」とインタビューで話していた言葉は、まだまだ自分を向上させようという自覚の表れでしょう。来場所は大関とりです。体の柔らかさは持って生まれたものとして、力強さをアピールしてほしい。当たり負けしない強さ、重さを全部の相撲には求めませんが、プラスアルファしてほしいと思います。霧馬山に引っ張られるように豊昇龍は10勝、若元春も11勝で足がかりをつかみ、大栄翔も次期大関に名乗りを上げた今場所。終わったばかりなのに、もう来場所が楽しみです。照ノ富士と貴景勝が復帰した上で、上位陣による「実力者による混戦」に期待します。(日刊スポーツ評論家)

優勝決定戦で霧馬山(右)に突き落とされる大栄翔(撮影・和賀正仁)
霧馬山(右)は突き落としで大栄翔を破り初優勝を決める(撮影・和賀正仁)
優勝インタビューを受ける霧馬山(撮影・和賀正仁)
八角理事長から賜杯を贈られる霧馬山(撮影・和賀正仁)
霧馬山(右)は突き落としで大栄翔を破(撮影・和賀正仁)
幕内初優勝を決め優勝旗を手にする霧馬山(撮影・小沢裕)
霧馬山(左)は祝勝会会場のホテル前で陸奥親方から水付けを受ける(撮影・小沢裕)
大相撲春場所で初優勝し、オープンカーに乗り万歳する霧馬山(右)(代表撮影)
支度部屋で力士らと万歳三唱する霧馬山陣営と霧馬山(中央)(代表撮影)
支度部屋で力士らと万歳三唱する霧馬山陣営と霧馬山(中央)(代表撮影)

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【若乃花の目】V争い千秋楽結びの一番、大栄翔突っ張って行けるか 決定戦持ち込めば霧馬山有利

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇14日目◇25日◇エディオンアリーナ大阪

優勝争いには加われなかった豊昇龍ですが、あらためて近い将来、大関になる素材だと感じさせる若元春戦でした。

左四つの若元春とはけんか四つですが、それを承知で右の上手狙いで立ちました。先に上手を取れば相手の四つでも勝つ確率は高いと踏んでました。ポイントは相手に浅く差させた下手の位置です。深く差して腰を構えると若元春は残り腰が強いんです。相手得意の左だけど浅く差させて、自分は十分な上手。そして動きが止まった後、若元春が右上手を探ろうとしたタイミングを見計らったかのように、柔道のような巻き込みながらの上手投げです。このスピードと強弱の使い分けも豊昇龍の真骨頂です。

精神的なずぶとさも次期大関を感じさせます。最後の仕切りは、待ったをしそうなスローな腰の下ろし方で館内もざわめきました。そんな空気も何のその、何を言われようが自分のタイミングで立つという強い気持ちが見えました。逆に若元春はちゅうちょしながら立ってしまった、という微妙な間合いでした。自分のペースで相手を引き込む、そんな豊昇龍の意志の強さのようなものを感じました。順番はどうであれ、霧馬山と豊昇龍が大関に一番、近いことは間違いありません。優勝を争う千秋楽の結びの一番は、大栄翔が先手を取って突っ張って行けるか、霧馬山が四つに組めるかがポイントで、決定戦に持ち込めば霧馬山が有利かな、とみています。(日刊スポーツ評論家)

大栄翔は翠富士(下)を突き倒しで破る(撮影・小沢裕)
大栄翔(左)は突き倒しで翠富士を破る(撮影・和賀正仁)
懸賞金を手にする大栄翔(撮影・小沢裕)
若元春(奥)を上手投げで破る豊昇龍(撮影・和賀正仁)
若元春(奥)を上手投げで破る豊昇龍(撮影・和賀正仁)
若元春(奥)を上手投げで破る豊昇龍(撮影・和賀正仁)
若元春(右)は豊昇龍に上手投げで敗れる(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】大栄翔は残り2日も崩れる気配を感じません 3連敗の翠富士は開き直れるか

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇13日目◇24日◇エディオンアリーナ大阪

大栄翔は相手がよく見えています。相手の明生は立ってからのスピードがありますが、よく見て的確に繰り出す突きが強いから、明生の動きを止めています。その上、腰も下りていて突っ張りの回転も速く、相手と常に正対している。さらに相手を冷静に見ているなと思ったのは、左からいなすような動きをした場面です。あれは引きでも、いなしでもありません。押しにくいと瞬時に判断し、相手との間を置くために離れた動きです。その後、押し込まれた明生が、いなそうとして体勢を崩したのとは好対照でした。

闘志を全面に出した激しい突き押しと、一方で相手をよく見る落ち着きを兼ね備えています。絶対に引かない、という気持ちも相撲に表れていて、残り2日も崩れる気配を感じません。優勝経験があるのも大きなプラス材料でしょう。14日目の翠富士戦も、相手をよく見て攻めるだけです。逆に守りに入り懐に入られ、まわしを取られたら勝ち目はありません。逆に3連敗で心が沈んだ状態の翠富士は「何をやっても絶対に勝つんだ」と開き直れるか。勝って星が並べば逆に「あとは千秋楽だけ」と、10日目までの乗っていた気持ちに戻り形勢は変わります。三役陣の頑張りで最後まで土俵から目が離せません。(日刊スポーツ評論家)

大栄翔(左)は突き出しで明生を敗る(撮影・石井愛子)
翠富士(下)は豊昇龍に下手投げで敗れる(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】大栄翔に押し相撲貫く不安なし 翠富士は若元春の術中にはまり三役との差感じた

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇11日目◇22日◇エディオンアリーナ大阪

かち上げから高安に押し込まれても、大栄翔は腰の構えが良かった。

今場所は初日からずっと腰の位置が安定しています。高安の腰高もありますが、低いから下から防げます。あとは押し相撲に特有の気持ちでしょう。白星が続くと気持ちが乗ります。乗ってくるとあきらめない気持ちも生まれて残れる。立ち合いをずらされたり、少しでも立ち遅れたら相撲にならないという難しさ、つらさが押し相撲にはあります。ただ、今の大栄翔にはそんな不安が見えません。

翠富士は肩透かしにいったのが敗因です。あの体勢では右の上手を取って我慢しなければいけません。逆に若元春は、かち上げから左を差しながら前に出て、肩透かしを誘っています。若元春の術中にはまったと言えるでしょう。優勝争いで星の差1つリードしている翠富士ですが、この日から三役陣との対戦が始まっています。やはり三役との差はあるな、と感じた若元春戦です。一方の大栄翔は優勝経験があります。残り4日で今のリズムが崩れなければ有利なのでは、と予想しています。(日刊スポーツ評論家)

大栄翔(左)は高安を押し出しで破る(撮影・小沢裕)
懸賞金を手にする大栄翔(撮影・小沢裕)
大栄翔(右)は押し倒しで高安を破る(撮影・石井愛子)
大栄翔(左)は押し倒しで高安を破る(撮影・石井愛子)
翠富士(左)は押し倒しで若元春に破れる(撮影・石井愛子)
若元春(左)は翠富士を押し倒しで破る(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】霧馬山が大関狙うなら気になった2点 少し相撲雑だった「勝ち越しは10勝」

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇9日目◇20日◇エディオンアリーナ大阪

大関昇進への足固めの場所になる霧馬山が、理にかなった安全な攻め方で6勝目を挙げました。

当たって左四つ、右上手も引き常に竜電より重心を低くして、まわしも1つ下の位置で取りました。相手の上手、さらに腰を振りながら下手も切って、両まわしを引きつけての寄りと終始、霧馬山のペースでした。

ただ、大関を目指す上で少し相撲が雑だったかな、と思う2点が気になりました。

1つは、まわしを切るのが遅いこと。だから1分を超す相撲になってしまいました。竜電も相撲が遅いから救われましたが、もう少し早く切らないと、攻めの速い相手には持って行かれます。相撲には性格が出ます。安全に、慎重にという気持ちは分かりますが1場所で2、3番は長い相撲がある霧馬山には、速い相撲が求められます。

2つ目は、相手のまわしを切った後、土俵際で出した左からの外掛けです。土俵際で出す外掛けは自分の体勢を腰高にすることになり、相手の内掛けで形勢逆転されるリスクがあります。今は返し技を出来る力士が少ない時代ですが、うまい相手なら返されていた可能性があります。次代の角界を背負う力士の1人であることには間違いありません。大関を狙うなら「勝ち越しは10勝」と思って残る土俵を務めてほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)

霧馬山(左)は寄り切りで竜電を破る(撮影・石井愛子)
霧馬山(左)は寄り切りで竜電を破る(撮影・石井愛子)

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