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【若乃花の目】貴景勝の当たりを受け止めた照ノ富士 鬼気迫る表情の横綱がいてこそ土俵が締まる

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

照ノ富士は前日に優勝を決め、一方の貴景勝もかど番脱出を既に決めていました。昨年名古屋場所以来となる、千秋楽結びの横綱-大関対決でしたが、1人横綱と1人大関を背負ってきた2人の、それなりに意味のある一番でした。やるだけのことはやった、というのが貴景勝です。突っ張りではなく、もろ差し狙い。意表を突いて横綱を少し慌てさせました。かど番を脱出して相手が横綱だからこそ出来たのだと思います。あえてもろ差し狙いの相撲で向かった、こういう相撲を取り入れていけば今後、余裕が出てきます。精神的に土俵際まで追い詰められて学ぶことがあります。今場所の貴景勝はまさにそうで、最後のもろ差し狙いの相撲にそれが表れていました。

貴景勝の当たりを受け止めた照ノ富士の横綱としての生きざまは、優勝インタビューに表れていました。若い力士と戦うのは楽しい、というニュアンスのことを話していましたね。そんな言葉には横綱としての責任感が込められています。自分のレベルまで後輩を引き上げないと引退できない、自分を倒して追い出す力士が出ないことには辞められない-。大相撲の歴史に脈々と受け継がれてきたことで、それが本来の姿なんです。鬼気迫る表情の横綱がいてこそ土俵が締まる。今場所の照ノ富士が体現してくれました。看板力士がいてこそ大相撲ということを2人が身をもって示してくれた場所でした。(日刊スポーツ評論家)

照ノ富士(左)は押し出しで貴景勝を下す(撮影・足立雅史)
照ノ富士(手前)の横綱土俵入りを見つめる所ジョージ(中央)(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
照ノ富士(左)に押し出しで敗れた貴景勝(撮影・足立雅史)
優勝インタビューで笑顔を見せる照ノ富士(撮影・足立雅史)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
幕内優勝を果たし八角理事長(手前)から賜杯を受け取る照ノ富士(撮影・小沢裕)
優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)
優勝パレードへと向かう照ノ富士(右)。旗手翠富士(撮影・足立雅史)

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【若乃花の目】照ノ富士は技術的なうまさがあるからこそ横綱 1人横綱を脅かす2大関に期待

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

数字上は当確でも、前半戦の相撲内容を消極的と指摘された霧馬山としては、不評を払拭(ふっしょく)するためにも「横綱に勝って大関文句なし」の相撲を見せたかったでしょう。

引っ張り込んで前に出たかった照ノ富士に、そうはさせまいと浅い左差しで食い付きました。よく考えて取ったと思います。ただ、相手はやっぱり横綱です。落ち着きはらっていました。引っ張り込むことが無理とみるや、腰をドッシリ落として対処しました。大きな体であれだけ低く構えられ、最後は胸が合ってしまっては、霧馬山も太刀打ちできません。勝負を決める前に、霧馬山の右上手を切ったことも見逃せません。体の大きさが有利なのはもちろんですが、ただ引っ張り込んできめたり、強引な小手投げを打つだけではない、技術的なうまさがあるからこそ横綱なんです。

私の経験からしても、4場所休場明けというのは、精神的にきつかったはずです。今場所の照ノ富士も初日は心配でしたが、3日目ぐらいから流れをつかんだのでは、と思います。強引さもあり、うまさもありの相撲で、現状では頭1つ2つ抜きんでています。来場所は2大関が確実で、関脇陣も複数人が大関挑戦になります。1人横綱を脅かす力士が出て、さらなる白熱した土俵に期待します。(日刊スポーツ評論家)

霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で汗をぬぐう
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材を受ける
照ノ富士(右)は霧馬山を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】照ノ富士追う霧馬山に勝機あり、長期戦になれば逆転も 朝乃山は攻め半テンポ遅い

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇13日目◇26日◇東京・両国国技館

大関時代に照ノ富士に5戦全敗していた時の朝乃山の取り口は、攻めきったと思われた土俵際で、上半身が伸びてしまう印象がありました。下半身で相撲を取っていなかったということです。

2年たったこの日の対戦で改善点があったことは評価に値します。立ち合いも頭から強く当たって、左からのおっつけで横綱を後退させました。その左を差した体勢でも上体は伸びきっていない。ただ、残念ながらここからの攻めが半テンポ遅かった。差した左もかいなを返すわけでもなく、これでは横綱に抱えられるだけです。前に出るにしても、もっと腰を相手にぶつけるようにしないと圧力が伝わりません。これでは横綱の思うつぼ。劣勢に見えて照ノ富士には状況判断する余裕がありました。幕内上位と当たる体力が、まだついていないうちの幕内復帰で、今場所の朝乃山は気力で乗り切っていると思います。残る2日も大事な土俵になります。

優勝争いは、14日目に照ノ富士が直接対決で霧馬山に勝てば優勝決定です。ただ霧馬山にも勝機は十分あります。この日の北青鵬戦で見せたように、上手を取って頭をつけ半身の体勢で横に食い付いたり、足技で横綱を崩したり、いろいろ作戦はあります。長い相撲にでもなれば、より霧馬山が有利かなと思います。勝って優勝を決めたい照ノ富士は右を差して霧馬山を起こし、早めに勝負を決めたいところでしょう。(日刊スポーツ評論家)

朝乃山(左)を小手投げで破る照ノ富士(撮影・中島郁夫)
朝乃山を小手投げで破った照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(右)は外がけで北青鵬を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)
霧馬山は外がけで北青鵬(右)を破る。左奥は土俵下控えの照ノ富士(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】若元春の相撲に見た役力士の意地と計算された取り口 攻め手あればもっと強く

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇11日目◇24日◇東京・両国国技館

役力士の意地と計算された取り口を、若元春の相撲に見ました。左を差せば、かなりの自信を持って取れる若元春が、あそこまで深く差しながら北青鵬に右の上手を引かれたことで、長い相撲になることは予想したでしょう。左膝を使いながらの切り返しとか攻め手はあったでしょうが、何せ相手は2メートルを超す北青鵬です。ここは無理な攻めは我慢しました。ガップリ胸を合わせながら、北青鵬の腰の高さを察知して、勝負を決めるのは右上手からの攻めか、うっちゃりという選択肢が頭にあったと思います。北青鵬が寄り立てるところで、最後は腰が高い相手を腹に乗せて見事なうっちゃり。何があっても左が入れば勝てるという自信と、激しい攻防の中でも計算できる冷静さで役力士の面目を保ちました。

今場所の若元春は、自分に気合を入れながら、落ち着いて自分を見失わない相撲で、横綱の次に内容のいい相撲を取っていると思います。今場所、逆転優勝でもすれば大関昇進もあるかもしれないし、2ケタ勝てば間違いなく来場所は大関とりです。右を引っ張り込んでばかりだと相手も慣れてしまうので、もう1つ2つの攻め手があれば、もっと強くなるでしょう。あとは、気迫をもっと前面に出していいかな、と思います。(日刊スポーツ評論家)

北青鵬(右)をうっちゃりで破る若元春(撮影・野上伸悟)
北青鵬(右)をうっちゃりで破る若元春(撮影・野上伸悟)
北青鵬(奥)をうっちゃりで破る若元春(撮影・野上伸悟)
北青鵬(奥)をうっちゃりで破る若元春(撮影・野上伸悟)
北青鵬(右)をうっちゃりで破る若元春(撮影・鈴木正人)
北青鵬(右)をうっちゃりで破る若元春(撮影・鈴木正人)
北青鵬(上)をうっちゃりで破る若元春(撮影・鈴木正人)
北青鵬(後方)をうっちゃりで破る若元春(撮影・鈴木正人)
北青鵬(左)をうっちゃりで破った若元春(撮影・鈴木正人)

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【若乃花の目】後半戦は割を崩しても朝乃山を三役以上と ファンの期待応え上位倒してV争いに

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇9日目◇22日◇東京・両国国技館

8連勝こそ逃した朝乃山ですが最小限の1敗で勝ち越しを決めました。ここまで平幕下位が相手でしたが、先場所は上位だった竜電には立ち合いを止められ相手に相撲を取られてしまった印象です。右を差しても二の矢の攻めを防がれ苦戦しましたが、竜電に次の攻めがないことに救われました。左を巻き替え慎重に圧力をかけて勝負を決めました。10日目はまた少し番付が上がり平戸海ですが、スピードはあるけど体力差は明らか。土俵際で詰めの甘さが出なければ、1敗のまま残り5日の後半戦に入ると思います。

その後半戦は割を崩しても、朝乃山を優勝争いの三役以上と当てて、ファンの期待に応えてほしいと思います。心の面できつい思いをした2年間だったでしょう。ただ体の面ではケガもなく、技術面で衰えるわけもなく、何より次期横綱候補と期待された大関経験者です。2年前の「強かった朝乃山」をファンに再び見せるためにも、番付下位でなく上位を倒しての優勝争いに加わってほしいと思います。

結びの一番では明生が、理想の攻めで全勝の横綱に土をつけました。膝を曲げてすり足で相撲を取りたい照ノ富士を、左右に動かし足を伸ばさせた攻めは光りました。これで再び3人が1敗で並び、1差で4人が追う白熱の展開です。その中に朝乃山がいます。だからこそ、朝乃山の上位戦に期待します。(日刊スポーツ評論家)

朝乃山は竜電(左)を寄り倒しで破る(撮影・横山健太)
朝乃山は竜電(右)を寄り倒しで破る(撮影・横山健太)
朝乃山は竜電(右)を寄り倒しで破る(撮影・横山健太)
朝乃山は竜電(右)を寄り倒しで破る(撮影・横山健太)

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【若乃花の目】7連勝の明生、動きいいが気になる「いなし」後半戦も熱い優勝争い見せてほしい

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇7日目◇20日◇東京・両国国技館

立ち合いの鋭い出足と当たりの強さに定評のある明生ですが、今場所はさらにいいですね。この1発目の当たりで、二の矢の攻めをカバーしています。その二の矢として放ったのが横からの攻めで、右からいなしました。ちょっとどうかな…と思ったけど、引くまでではないから良しとしましょう。体はよく動いているし反応もいいので、このままの相撲を取り続ければ、もともと三役経験もある実力者なので優勝争いに加わるでしょう。

ただ、注意しなければいけないのは、対戦経験のある相手にとって明生のいなしは「次の攻めで出してくる」と想定内であることです。そう考えさせるスキを与えないためにも、いなしは前に出て攻めている時に出すことです。攻められている時のいなしは、引きと同じように呼び込んでしまうし明生の場合、胸で攻めを受けてしまいがちです。あとは防戦となり、土俵際で捨て身の小手投げを打つ場面が明生にはありますが、1回打って打開できなくてもあきらめず、何度でも打つことでしょう。

全勝力士が複数人いて中日を迎えるのも、最近では少ないことです。幕内下位との対戦が多い朝乃山が単純に考えれば優勝に最も近いけど、横綱の復活優勝も現実味があるし、関脇陣も充実しています。場所は折り返しますが、後半戦もファンをくぎ付けにするような相撲に期待しています。(日刊スポーツ評論家)

明生は佐田の海(手前)を突き落としで破る(撮影・小沢裕)
初日から7連勝を飾り勝ち名乗りを受ける明生(撮影・小沢裕)
取組後の土俵下控えであごを押さえる明生(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】霧馬山、大関意識しすぎ消極的な相撲 単なる数字合わせでなく問われる本当の強さ

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇5日目◇18日◇東京・両国国技館

霧馬山は前半戦を4勝1敗で乗り切れば大関昇進の10勝に届くと、場所前に展望しました。

その数字は確かにクリアしています。ただ、相撲内容は消極的で立ち合いの変化や、引いたり回り込むような相撲ばかりで、この日の琴ノ若戦もうまくかわせただけ。いつもの霧馬山ではありません。2ケタという数字を意識しすぎていると思います。

気持ちは分かりますが、横綱や大関になろうという人は単に勝てばいい、ではいけません。関脇との間には大きな壁があり、強さを植え付けなければいけない地位です。最近の大関が、すぐに陥落する現状もあって、単なる数字合わせでなく昇進しても本当に強いのかが問われます。

そういう厳しい目で見ることも必要で、それが大関という選ばれた者しか就けない地位を傷つけず守ることにもなります。このままではイメージがよくありません。ファンにも納得してもらい、その声で一押ししてもらうためにも一生懸命に、最後まで前に出て攻めきる相撲で白星を重ねてほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)

琴ノ若(左)と攻め合う霧馬山(撮影・鈴木正人)
琴ノ若(手前)をすくい投げで破る霧馬山(撮影・鈴木正人)
琴ノ若(手前)をすくい投げで破る霧馬山(撮影・鈴木正人)
琴ノ若(手前)をすくい投げで破る霧馬山(撮影・鈴木正人)
霧馬山は琴ノ若(右)をすくい投げで破る(撮影・小沢裕)
霧馬山は琴ノ若(右)をすくい投げで破る(撮影・小沢裕)
霧馬山は琴ノ若(右)をすくい投げで破る(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】貴景勝の「心」が全面に 先場所綱とり失敗 土俵で負った傷は土俵でしか治せない

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇3日目◇16日◇東京・両国国技館

貴景勝の「心」が前面に出た相撲でした。

何をするか分からない小兵の翠富士に対して、相手を見て突っ張るのではなく頭から当たっての突っ張りでした。負けても仕方ない、怖がらずに攻めるんだという心が終始、相撲に出ていました。先場所、ケガで途中休場し綱とりの夢も消え、体と心に傷を負いました。ただ、本場所の土俵で負った傷は本場所の土俵でしかなおせません。もちろん稽古は大切ですが、なおすのも傷口を広げるのも本場所次第。癒やす薬は土俵の中にあるものなんです。

綱とりから一転してかど番を迎える苦しさは、私も25年以上前ですが経験しました。その場所、何とか13日目に勝ち越して師匠に報告した時「良かったな。負け越していたら引退だったぞ」と言われました。私も大関から陥落なら引退を覚悟して臨んだ場所でした。綱とりの夢を見ていたらどん底に落とされる。この苦しみは経験した者しか分かりません。だから貴景勝の気持ちもよく分かります。ケガは100%には治らないから、苦しい土俵は続くでしょう。またケガをしないだろうかという恐怖心との闘いもあります。そんな時でも、この日見せた、攻撃は最大の防御-を体現した相撲を忘れずに取りきることです。(日刊スポーツ評論家)

翠富士を押し出しで破り、懸賞金の束を手にする貴景勝(撮影・河田真司)
激しくぶつかり合う貴景勝(左)と翠富士(撮影・河田真司)
照ノ富士(左)は遠藤を押し出しで下す。後方中央は貴景勝(撮影・河田真司)
照ノ富士(左)は遠藤を押し出しで下す。後方中央は貴景勝(撮影・河田真司)

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【若乃花の目】照ノ富士まずは10番を目指し、その数字をクリアしたら欲を 心配なのはスタミナ

「若乃花の目」

<大相撲夏場所>◇初日◇14日◇東京・両国国技館

正代に攻め込まれ、一見するとヒヤリと見える照ノ富士の復帰土俵でしたが、危うさは感じない相撲でした。

正代も残られたら相撲にならないと計算して、一気におっつけて持って行こうとしました。残念なのはおっつけだけで、まわしに手が届かなかったこと。少しアワ食いましたが、体の大きさに恵まれている照ノ富士からすれば、膝が悪いとはいえ余力を持って残せました。

去年の秋場所からなかった横綱土俵入りも復活しました。やはり土俵が締まるし、お客さんの歓声も明らかに違いました。照ノ富士にとっても足の裏で土俵の感覚が分かるし、短い時間でも少しでもブランクを取り戻せたと思います。土俵入りの所作を見ても落ち着いていて相撲にも好影響を与えたことでしょう。

2日目以降ですが、中盤までは慎重に取っていった方がいいでしょう。まずは10番を目指し、その数字をクリアしたら欲を出せばいい。やはり4場所も出ていないのでスタミナが心配です。前半は恵まれた体でカバーできますが、後半に入ると心の疲労が出てきます。うまくペース配分しながら千秋楽まで、ただ1人の横綱として土俵を務めてほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)

すくい投げで正代(手前)を破る照ノ富士(撮影・宮地輝)
正代(奥)をすくい投げで破る照ノ富士(撮影・野上伸悟)
懸賞金を受け取る照ノ富士(撮影・宮地輝)

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【若乃花の目】照ノ富士の復帰でいくつも相乗効果 朝乃山は少し衰えあり?自分の心との闘いに

「若乃花の目」

<大相撲夏場所:展望>

今回から場所の展望や見どころ、本場所中では評論できない私なりに感じたことを語りたいと思います。よろしくお願いします。

やはり注目は照ノ富士の土俵復帰です。先場所は貴景勝も途中休場して、7日目以降は関脇が結びの一番を取るという、異様な土俵でした。やはり横綱が最後に登場すれば土俵が締まります。1人大関で結びを取り続けていた貴景勝も少し肩の荷が下りるでしょう。金星を挙げたいという平幕力士のモチベーションも上がるし、お客さんも土俵入りを見られる。横綱がいることで相乗効果はいくつもあります。4場所ぶりの復帰で、誰しもが緊張する初日の土俵です。ただ、正代は真っ向から当たってくる相手なので、落ち着いて無難にスタートできれば、恵まれた体を生かしての四つ相撲ですから、優勝候補と言えるでしょう。

大関を目指す2人の土俵からも目が離せません。霧馬山は2ケタ勝利で手が届きますが、序盤5日間は最低でも4勝1敗で乗り切りたいところで、3勝2敗なら苦しむと思います。初日の相手・翠富士は相撲が遅い霧馬山には、やりにくい嫌なタイプですが「最初に当たっておく方がいい」ぐらいに考えればいいと思います。初場所が平幕だった大栄翔は昇進には2ケタ勝利は当然、少なくても13日目ぐらいまでは優勝争いに絡む必要があるでしょう。2ケタも12勝以上とかハードルは上がります。

朝乃山は、それなりに取れると思います。ただ最近「幕内は立ち合いが違う」とコメントしていますが、年齢的に少し衰えを感じているのかなと思います。2年で幕内の顔ぶれも変わっているし、どうしても緊張もあるでしょう。ただ、経験値は十分。自分の心との闘いになると思います。

最後に土俵以外で感じたことがあります。十両で落合、幕下で大の里というスター候補の土俵も今場所の注目です。他にもたくさんいます。彼らが本格的に幕内上位で活躍する前に協会には、古くからのファンをつなぎ留めるための、さらに新規ファン開拓のための準備期間にしてほしいと思います。具体的に思うことは館内のさらなるファンサービスです。国技館2階の廊下でも相撲観戦できるモニターを設置して、スタンドバーを置くのもいいでしょう。空気が吸える外の回廊にもグッズショップを構えても面白いと思います。土俵の充実も当然ですが、国技館って長い時間楽しめるな、また来たいなと思わせるエンターテインメント化は、もっと出来ると思います。コロナ禍で苦しい中、親方衆が奮闘しているのはよく分かりますが、来場者に優越感を味わってもらえるようなファンサービスがあってもいいのかな、と期待しています。(日刊スポーツ評論家)

照ノ富士(2022年9月17日撮影)
朝乃山(2023年3月20日撮影)

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【若乃花の目】最後の最後にもったいないことをした大栄翔 霧馬山は持って生まれた体の柔らかさ

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇千秋楽◇26日◇エディオンアリーナ大阪

本割、優勝決定戦ともに大栄翔の当たり、突き押しの威力が半減してしまいました。

本割は霧馬山が何をやってくるか気をつけるように、相手を見ながらもろ手で立ちました。頭から当たるしかなかった決定戦は、頭より先に手で行ってしまいました。こうなると腰も引けて2番とも威力半減です。やはり押し相撲は立ち合いの当たりが弱いと、二の矢の攻めもなくなり土俵際の落とし穴ははまります。今場所は腰をぶつけるようにして足を運んでいた大栄翔だけに、最後の最後になってもったいないことをしたなと思います。

1差で追う立場で臨んだ霧馬山は、精神的には大栄翔より楽だったでしょう。押し込まれはしましたが、土俵際で弓なりになって粘ったことで、突きにくくさせました。四つに組んだら勝ち目はない、と大栄翔に思わせる強さも、先場所から光ります。初優勝にも浮かれず「相撲自体は良くなかった」とインタビューで話していた言葉は、まだまだ自分を向上させようという自覚の表れでしょう。来場所は大関とりです。体の柔らかさは持って生まれたものとして、力強さをアピールしてほしい。当たり負けしない強さ、重さを全部の相撲には求めませんが、プラスアルファしてほしいと思います。霧馬山に引っ張られるように豊昇龍は10勝、若元春も11勝で足がかりをつかみ、大栄翔も次期大関に名乗りを上げた今場所。終わったばかりなのに、もう来場所が楽しみです。照ノ富士と貴景勝が復帰した上で、上位陣による「実力者による混戦」に期待します。(日刊スポーツ評論家)

優勝決定戦で霧馬山(右)に突き落とされる大栄翔(撮影・和賀正仁)
霧馬山(右)は突き落としで大栄翔を破り初優勝を決める(撮影・和賀正仁)
優勝インタビューを受ける霧馬山(撮影・和賀正仁)
八角理事長から賜杯を贈られる霧馬山(撮影・和賀正仁)
霧馬山(右)は突き落としで大栄翔を破(撮影・和賀正仁)
幕内初優勝を決め優勝旗を手にする霧馬山(撮影・小沢裕)
霧馬山(左)は祝勝会会場のホテル前で陸奥親方から水付けを受ける(撮影・小沢裕)
大相撲春場所で初優勝し、オープンカーに乗り万歳する霧馬山(右)(代表撮影)
支度部屋で力士らと万歳三唱する霧馬山陣営と霧馬山(中央)(代表撮影)
支度部屋で力士らと万歳三唱する霧馬山陣営と霧馬山(中央)(代表撮影)

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【若乃花の目】V争い千秋楽結びの一番、大栄翔突っ張って行けるか 決定戦持ち込めば霧馬山有利

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇14日目◇25日◇エディオンアリーナ大阪

優勝争いには加われなかった豊昇龍ですが、あらためて近い将来、大関になる素材だと感じさせる若元春戦でした。

左四つの若元春とはけんか四つですが、それを承知で右の上手狙いで立ちました。先に上手を取れば相手の四つでも勝つ確率は高いと踏んでました。ポイントは相手に浅く差させた下手の位置です。深く差して腰を構えると若元春は残り腰が強いんです。相手得意の左だけど浅く差させて、自分は十分な上手。そして動きが止まった後、若元春が右上手を探ろうとしたタイミングを見計らったかのように、柔道のような巻き込みながらの上手投げです。このスピードと強弱の使い分けも豊昇龍の真骨頂です。

精神的なずぶとさも次期大関を感じさせます。最後の仕切りは、待ったをしそうなスローな腰の下ろし方で館内もざわめきました。そんな空気も何のその、何を言われようが自分のタイミングで立つという強い気持ちが見えました。逆に若元春はちゅうちょしながら立ってしまった、という微妙な間合いでした。自分のペースで相手を引き込む、そんな豊昇龍の意志の強さのようなものを感じました。順番はどうであれ、霧馬山と豊昇龍が大関に一番、近いことは間違いありません。優勝を争う千秋楽の結びの一番は、大栄翔が先手を取って突っ張って行けるか、霧馬山が四つに組めるかがポイントで、決定戦に持ち込めば霧馬山が有利かな、とみています。(日刊スポーツ評論家)

大栄翔は翠富士(下)を突き倒しで破る(撮影・小沢裕)
大栄翔(左)は突き倒しで翠富士を破る(撮影・和賀正仁)
懸賞金を手にする大栄翔(撮影・小沢裕)
若元春(奥)を上手投げで破る豊昇龍(撮影・和賀正仁)
若元春(奥)を上手投げで破る豊昇龍(撮影・和賀正仁)
若元春(奥)を上手投げで破る豊昇龍(撮影・和賀正仁)
若元春(右)は豊昇龍に上手投げで敗れる(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】大栄翔は残り2日も崩れる気配を感じません 3連敗の翠富士は開き直れるか

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇13日目◇24日◇エディオンアリーナ大阪

大栄翔は相手がよく見えています。相手の明生は立ってからのスピードがありますが、よく見て的確に繰り出す突きが強いから、明生の動きを止めています。その上、腰も下りていて突っ張りの回転も速く、相手と常に正対している。さらに相手を冷静に見ているなと思ったのは、左からいなすような動きをした場面です。あれは引きでも、いなしでもありません。押しにくいと瞬時に判断し、相手との間を置くために離れた動きです。その後、押し込まれた明生が、いなそうとして体勢を崩したのとは好対照でした。

闘志を全面に出した激しい突き押しと、一方で相手をよく見る落ち着きを兼ね備えています。絶対に引かない、という気持ちも相撲に表れていて、残り2日も崩れる気配を感じません。優勝経験があるのも大きなプラス材料でしょう。14日目の翠富士戦も、相手をよく見て攻めるだけです。逆に守りに入り懐に入られ、まわしを取られたら勝ち目はありません。逆に3連敗で心が沈んだ状態の翠富士は「何をやっても絶対に勝つんだ」と開き直れるか。勝って星が並べば逆に「あとは千秋楽だけ」と、10日目までの乗っていた気持ちに戻り形勢は変わります。三役陣の頑張りで最後まで土俵から目が離せません。(日刊スポーツ評論家)

大栄翔(左)は突き出しで明生を敗る(撮影・石井愛子)
翠富士(下)は豊昇龍に下手投げで敗れる(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】大栄翔に押し相撲貫く不安なし 翠富士は若元春の術中にはまり三役との差感じた

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇11日目◇22日◇エディオンアリーナ大阪

かち上げから高安に押し込まれても、大栄翔は腰の構えが良かった。

今場所は初日からずっと腰の位置が安定しています。高安の腰高もありますが、低いから下から防げます。あとは押し相撲に特有の気持ちでしょう。白星が続くと気持ちが乗ります。乗ってくるとあきらめない気持ちも生まれて残れる。立ち合いをずらされたり、少しでも立ち遅れたら相撲にならないという難しさ、つらさが押し相撲にはあります。ただ、今の大栄翔にはそんな不安が見えません。

翠富士は肩透かしにいったのが敗因です。あの体勢では右の上手を取って我慢しなければいけません。逆に若元春は、かち上げから左を差しながら前に出て、肩透かしを誘っています。若元春の術中にはまったと言えるでしょう。優勝争いで星の差1つリードしている翠富士ですが、この日から三役陣との対戦が始まっています。やはり三役との差はあるな、と感じた若元春戦です。一方の大栄翔は優勝経験があります。残り4日で今のリズムが崩れなければ有利なのでは、と予想しています。(日刊スポーツ評論家)

大栄翔(左)は高安を押し出しで破る(撮影・小沢裕)
懸賞金を手にする大栄翔(撮影・小沢裕)
大栄翔(右)は押し倒しで高安を破る(撮影・石井愛子)
大栄翔(左)は押し倒しで高安を破る(撮影・石井愛子)
翠富士(左)は押し倒しで若元春に破れる(撮影・石井愛子)
若元春(左)は翠富士を押し倒しで破る(撮影・小沢裕)

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【若乃花の目】霧馬山が大関狙うなら気になった2点 少し相撲雑だった「勝ち越しは10勝」

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇9日目◇20日◇エディオンアリーナ大阪

大関昇進への足固めの場所になる霧馬山が、理にかなった安全な攻め方で6勝目を挙げました。

当たって左四つ、右上手も引き常に竜電より重心を低くして、まわしも1つ下の位置で取りました。相手の上手、さらに腰を振りながら下手も切って、両まわしを引きつけての寄りと終始、霧馬山のペースでした。

ただ、大関を目指す上で少し相撲が雑だったかな、と思う2点が気になりました。

1つは、まわしを切るのが遅いこと。だから1分を超す相撲になってしまいました。竜電も相撲が遅いから救われましたが、もう少し早く切らないと、攻めの速い相手には持って行かれます。相撲には性格が出ます。安全に、慎重にという気持ちは分かりますが1場所で2、3番は長い相撲がある霧馬山には、速い相撲が求められます。

2つ目は、相手のまわしを切った後、土俵際で出した左からの外掛けです。土俵際で出す外掛けは自分の体勢を腰高にすることになり、相手の内掛けで形勢逆転されるリスクがあります。今は返し技を出来る力士が少ない時代ですが、うまい相手なら返されていた可能性があります。次代の角界を背負う力士の1人であることには間違いありません。大関を狙うなら「勝ち越しは10勝」と思って残る土俵を務めてほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)

霧馬山(左)は寄り切りで竜電を破る(撮影・石井愛子)
霧馬山(左)は寄り切りで竜電を破る(撮影・石井愛子)

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【若乃花の目】翠富士、自分のペースに相手を引き込んで7連勝 経験を無駄にせず持ち味発揮

高安(左)を突き落としで破る翠富士(撮影・鈴木正人)

<大相撲春場所>◇7日目◇18日◇エディオンアリーナ大阪

高安の強烈な、かち上げからの突き押しにも翠富士の下半身は盤石でした。余裕をもって右からタイミングよく突き落としました。高安は当たっているようで当たっていない。的が小さいから当たりにくかったのでしょうが、それでも1発で持って行かれない強さが翠富士はありました。

翠富士の今場所の相撲には、前場所までの経験を無駄にしなかったことを感じさせます。持ち味は、あの右からの肩透かし。ただ、右を深く差すと小兵だけに腕を引っ張り込まれて、きめられてしまう苦い経験もしてきました。それを踏まえ、右は差しきるまではしないで、一方で左をうまく使って警戒をそらしています。それも単なるフェイントではなく、左からも攻めることを覚えました。相手の脇の下に手を入れたり、持ち上げたり引いたりと、自由自在に操っているから相手は「肩透かしに来るんじゃないのか?」と迷うし怖さもある。自分のペースに相手を引き込んでの7連勝です。

横綱、大関が不在で、さすがに「重さ」を感じることが難しい土俵です。あらためて貴景勝1人がいるだけで土俵が締まるんだと思い知らされた上に、その貴景勝もいなくなり、この状況に慣れなければいけないのは正直、寂しいです。翠富士には、そんな感情を吹き飛ばすような活躍に期待します。(日刊スポーツ評論家)

高安(手前)を突き落としで破る翠富士(撮影・和賀正仁)
高安(左)を突き落としで破った翠富士(撮影・鈴木正人)
高安(右)を突き落としで破る翠富士(撮影・和賀正仁)
高安(手前)を突き落としで破る翠富士(撮影・和賀正仁)

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【若乃花の目】高安の5連勝は内容も伴う 優勝を待つファンのためにも壁を打ち破ってほしい

「若乃花の目」

これまでの経験や力量から、高安の5連勝という数字は当然と言えば当然ですが、内容も伴っています。

左を差すような相撲だと宇良に懐に入られる、と考えて最後まで突き切ったのが勝因でしょう。あの低い宇良を突き切るのは難しいけど徹底しました。その宇良が耐え切ってやっと差せると出たところで、頭を押さえての突き落とし。突っ張りの回転も速いし、相手をよく見て、どこを攻めればいいのかも分かった落ち着いた攻めでした。序盤5日間の相撲を貫いてほしい高安ですが、問題は10日目を過ぎたあたりからの体力と精神力でしょう。迷いも出てくるかもしれませんが、最後まで激しい突っ張りと、ぶちかましで思い切り取ればいいと思います。

昨年は3場所も優勝争いに絡み、ちょうど1年前はあと1歩、いや半歩のところで優勝を逃しました。全勝の4人の中で経験値は一番、その中には悔しい経験も数知れずしています。これを乗り越えるのは本人次第で、誰も助けてはくれません。優勝経験があるか、ないかで引退した後の第2の人生の、心の持ちようも大きく違ってきます。賜杯を抱く姿を、首を長くして待っている高安ファンのためにも、何とか壁を打ち破ってほしいところです。(日刊スポーツ評論家)

宇良(左)を攻める高安(撮影・鈴木正人)
宇良(左)を突き落としで破る高安(撮影・鈴木正人)
宇良(左)を突き落としで破る高安(撮影・鈴木正人)
宇良(右)を突き落としで破る高安(撮影・和賀正仁)
宇良(右)を突き落としで破る高安(撮影・和賀正仁)
宇良(右)を突き落としで破る高安(撮影・和賀正仁)

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【若乃花の目】204センチ北青鵬が評判通りの3連勝 低い腰の立ち合いから膝使った相撲に驚き

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇3日目◇14日◇エディオンアリーナ大阪

今場所の楽しみの1つだった北青鵬が、評判通りの力で3連勝です。

同じように期待していた金峰山が、まるでスーッと吸い込まれるように右四つに組まされました。金峰山に持ち味である突き押しをさせなかった要因は、204センチの長身を感じさせない北青鵬の、立ち合いの腰の低さにあります。師匠の宮城野親方に徹底されているのでしょうね。左上手の引きつけも強いし幕内下位では怖いものなしです。もっと驚かされるのは、あれだけの身長がありながら膝を使った相撲を取れることです。立ち合いで腰が下ろせて膝もうまく使い、腰高の相撲を取らない北青鵬ですから、今のところ相撲を変える必要はないでしょう。磨く必要があるとすれば単に太ることではない体重増で、筋力をアップして体幹を鍛えることではないかと思います。

金峰山、武将山も新入幕コンビとして将来が楽しみで、さらに十両も有望株がめじろ押しです。火を付けたのが落合で、つい数場所前まで騒がれていた熱海富士がかすむほどです。彼らが来年の大阪では幕内で活躍する姿が想像できるし、今の三役陣も早く大関に上がらないとアッという間に先を越される、と感じるほど勢いがあります。今場所の十両から幕内下位を見ていると、世代交代もあと1年後にはと期待できます。(日刊スポーツ評論家)

金峰山(手前)を攻める北青鵬(撮影・鈴木正人)

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【若乃花の目】貴景勝、連敗中の翔猿に苦手意識か 気持ちだけ先走り上半身だけで取った相撲

「若乃花の目」

<大相撲春場所>◇初日◇12日◇エディオンアリーナ大阪

初日の相手が翔猿に決まった時、勝てば貴景勝はたった1つの白星でもすごく気持ちが楽になって乗っていけるだろう、と思った一方で、2連敗中で嫌な相手だからガチガチになるかもしれない、という予測もありました。

相撲内容は後者の方でした。連敗中の意識がそうさせたのでしょう。前には出ていたけれど、それは気持ちだけで、上半身だけで相撲を取っていました。早く勝負を決めたいという焦りが相撲に表れたように思います。緊張でガチガチになっていたのは、突っ張りや張り合いがなかったことで察しました。それが出ていれば体が動いている、つまり緊張でガチガチになっていない証拠になりますが、その動きがなかったのは、やはり緊張と連敗中という苦手意識があったと思います。

ただ、気持ちだけが先走って上半身だけで取ってしまったという敗因は、本人もハッキリ分かっているはず。ここは自分の相撲をいま一度、思い返すことです。初日に悪い部分が出たとポジティブに考えればいいんです。綱とりに問われるのは心技体。一つ負けても、それを引きずらない精神的な強さも求められます。立て直しに期待します。(日刊スポーツ評論家)

翔猿(右)は土俵際、貴景勝を叩き込みで破る(撮影・和賀正仁)
翔猿に敗れうつむいて引き揚げる貴景勝(撮影・和賀正仁)
翔猿(右)にはたき込みで敗れる貴景勝(撮影・鈴木正人)
翔猿(右)は土俵際、貴景勝を叩き込みで破る(撮影・和賀正仁)
翔猿にはたき込みで敗れた貴景勝(撮影・鈴木正人)
翔猿(後方)にはたき込みで敗れた貴景勝(撮影・鈴木正人)
翔猿にはたき込みで敗れ土俵を引き揚げる貴景勝(撮影・鈴木正人)
翔猿(右)は土俵際、貴景勝を叩き込みで破る(撮影・和賀正仁)
翔猿(右)は土俵際、貴景勝を叩き込みで破る(撮影・和賀正仁)
翔猿(右)は土俵際、貴景勝を叩き込みで破る(撮影・和賀正仁)
翔猿(手前)にはたき込みで敗れる貴景勝(撮影・鈴木正人)

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【若乃花の目】一枚も二枚も上手だった貴景勝、深く差せたのが勝因 綱とりへ悔いなき戦いを

「若乃花の目」

<大相撲初場所>◇千秋楽◇22日◇東京・両国国技館

番付には大きな開きがありますが結びの一番は、ともに真っ向から当たり合ったということでは優勝を決めるにふさわしい、いい相撲でした。貴景勝があれほどすぐに差すのは見たことがなく驚きでした。狙ったわけではないでしょう。ただ圧力がしっかり伝わり力強かったし、中途半端でなく深く差せたのが勝因でしょう。琴勝峰からすれば踏み込んで右四つになりたかったところで、苦し紛れの投げも首投げでもなく小手投げでもなく、中途半端でした。高校の後輩に相撲を取らせなかった貴景勝が、一枚も二枚も上手でした。

横綱休場の1人大関というプレッシャーもあったと思いますが、それ以上に優勝決定ともえ戦で負けた先場所の悔しさが何よりもの原動力になったでしょう。連日、口の中を切り出血する相撲を取って、痛みで満足に口を開けないのに、いろいろな人に感謝の気持ちを一生懸命に伝える姿勢も立派で好感が持てます。

いよいよ綱とりです。本場所中はもうフラフラ状態になります。それでも挑戦権を得られるのは、長い大相撲の歴史を見てもほんの一握りの人だけです。苦しいけど、そう考えて挑戦してほしい。来場所は照ノ富士も出ると思います。霧馬山も大関昇進の足固めになるし、若隆景らも黙ってはいないでしょう。兵庫生まれだから、ほぼ地元の大阪での場所。舞台は整いました。「昭和の男」を感じさせる貴景勝には、悔いなく戦ってほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)

琴勝峰(右)をすくい投げで破り、優勝を決める貴景勝(撮影・狩俣裕三)
琴勝峰(後方)をすくい投げで破り優勝を決めた貴景勝(撮影・足立雅史)
琴勝峰(右)をすくい投げで破り、優勝を決める貴景勝(撮影・狩俣裕三)
琴勝峰(左)をすくい投げで破り優勝を決めた貴景勝(撮影・足立雅史)
琴勝峰をすくい投げで破り優勝を決めた貴景勝は大量の懸賞を手にする(撮影・足立雅史)
優勝し賜杯を手にする貴景勝(撮影・足立雅史)
優勝し、鈴木俊一財務大臣(右)から内角総理大臣杯を受け取る貴景勝(撮影・狩俣裕三)
優勝インタビューに答える貴景勝(撮影・狩俣裕三)
【イラスト】現役力士の優勝回数

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