新たなスター誕生へ、第2章が始まる。21日に行われる総合格闘技のRIZIN27大会(愛知・日本ガイシホール)に向け、榊原信行最高経営責任者(CEO、57)が日刊スポーツの取材に応じ、思いを語った。
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今大会は、実力を兼ね備える朝倉兄弟や那須川天心、堀口恭司ら看板選手が出場しない。榊原氏は「あえてそのようなカードを組んだ」と真意を明かした。
榊原氏 昨年の大みそかの大会からすると見劣りするかもしれないが、だからこそ見てもらいたい。彼らが出ると注目を持って行かれてしまう。打倒・朝倉兄弟や天心、堀口に届く注目選手がたくさんいる。これから大化けするかもしれない。
今大会は女子のスーパーアトム級タイトルマッチ(浜崎-浅倉)がメイン。以前から女子の格闘技を強化してきた榊原氏が、熱いメッセージを込めたカードだ。最軽量が52キロという米団体のUFCにはない49キロ級を立ち上げた。「世界一」を名乗り、日本から世界へ向けた選手を作り上げる思いがある。
榊原氏 女子選手が男子をおさえてメインが張れる。2人(浜崎と浅倉)だったら男子選手をしのぐくらい、ドラマチックな試合を見せてくれると思う。この試合を見て女子選手たちにはもっと奮起してもらいたい。
榊原氏は15年のスタートから20年までを「第1章」とし、昨年大みそかの大会を集大成と位置付けた。97年に立ち上げたPRIDEは世界から注目を集めて広まったが、団体も増えてきた中で、業界そのものの選手層も厚くなり、RIZINは「すぐには興味を持たれなかった」という。
海外の団体に声を掛け、世界で通用する規模の舞台にしようと、ヒョードルを好条件で現役復帰させた。それでも反響は得られず、ファンは振り向かなかった。
2度の興行で「費用対効果が全く合わなかった」と痛感。海外の選手はファイトマネーも高く、つり合わないと考えた榊原氏は、日本のファンを獲得することに軌道修正。圧倒的な求心力を手に入れるため、国内のマーケットを大きくしようとかじを切った。
16年に那須川に声を掛け、17年には堀口を海外から呼んだ。選手の生き様やドラマに興味を示す日本特有のファンの心に向けて発信している。
徐々に知名度も上がり、ファンに評価され、人気も出てきた。海外選手も呼べるようになり、YouTubeなどで世界に発信。視野を広げ、米国のマーケットが少しずつ見えてきた。
榊原氏 体が小さくてもスピードはあるし、魅力ある試合ができる。選手の生き様にスポットを当てるPRIDEと同じような形で、ドラマチックな戦いに酔いしれるコンテンツにできてきた。
5年で軌道に乗せ、納得の形で第1章を終えた。「現状どれだけのものが見せられるかが、RIZINの底力。ようやくそういうチャレンジができるところまで来た。ハングリーな選手たちの生き残りをかけた戦いが見せられるので、このラインアップで世間と勝負してみたい」と力を込めた。
新たなスターが生まれることを願い、第2章の挑戦が始まる。(続く)
【松熊洋介】