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井上尚弥の第2章、真の頂へ「勝ち続けるしかない」

2019年11月7日、ボクシングWBSS世界バンタム級トーナメント 決勝 井上尚弥対ノニト・ドネア ノニト・ドネアに勝利しアリ・トロフィーを掲げる井上尚弥

ボクシングのWBA、IBF世界バンタム級統一王者井上尚弥(26=大橋)が5日、日刊スポーツの電話インタビューに応じた。

新型コロナウイルスの感染拡大により、25日(日本時間26日)に米ラスベガスで予定されていたWBO同級王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)との3団体統一戦が延期となり、本格的な米国進出は仕切り直しとなった。6日で、14年の世界奪取から丸6年。世界が注目する「モンスター」が、これまでの歩み、「第2章」と位置づける今後についての思いを語った。【取材・構成=奥山将志】

   ◇   ◇   ◇

新型コロナウイルスの影響で、3月17日に日本人初の3団体統一戦の延期が正式発表された。

井上 世界的な状況をみて、何となく無理なのかなと思っていたので、延期が決まった時も「これは仕方ないな」って感じでした。減量に入るギリギリのタイミングでもあったので、キャリアが浅い時期だったら、精神的に動揺したかもしれませんが、そこは20歳から世界戦を14回戦ってきた経験なのかなと思います。

現在は横浜の所属ジムにも行かず、サンドバッグなどをつるした自宅前の練習スペースを中心に調整を続けているという。

井上 試合がいつになるか分からない状況ですが、切り替えはスムーズにできています。それよりも、自分にも子どもが2人いますし、近所には90歳を超えたひいおばあちゃんも住んでいる。今はボクシングのことを過剰に考えるよりも、不要な外出を控えたり、当たり前のことをやることが大切だと思っています。

昨年末に米プロモート大手トップランク社と複数年契約を結び、今後は主戦場を米国に移す。延期となったが、その1戦目となるカシメロ戦では、軽量級では異例となる、本場ラスベガスのメインイベントを任された。キャリアの「第2章」のスタートと位置づけた重要な一戦に向け、これまで以上に高いモチベーションを保ってきた。

井上 今までは日本国内で、「世界王者」としてやってきた選手だったが、トップランクと契約し、求められてラスベガスでメインを張る。ここまできたという思いももちろんありますが、満足はしていない。ここが、自分が本当の意味で成功するか、失敗するかの分かれ目だと思っています。米国のファンを満足させる内容も求められますし、気持ちの面でもこれまでの試合とは大きく違います。日本人が立ったことがない舞台ですし、新たなステージの始まりだと思っています。

14年4月6日に初めて世界王者となり、6年がたった。「強い相手としか戦わない」と宣言して飛び込んだプロの世界。6戦目での国内最速(当時)の世界王座奪取に始まり、8戦目で名王者ナルバエスを破り2階級制覇を達成。ここまで完璧なキャリアを歩んできたように思えるが、井上自身が思い描いていたものとは違ったという。

井上 ライトフライ級で初めて世界王者になった時は、想像していたものと現実のギャップに悩んだこともありました。辰吉(丈一郎)さんとか、幼い頃に見ていた畑山(隆則)さんの時代の華やかさとは違い、世間の反応もそんなに大きくなかった。街を歩いても自分のことを知っている人の方が少なかった。実際に、1つの階級に4人も世界王者がいて、誰が強いのかも分かりにくい。ゴールだったはずが、ここではないとすぐに思いを新たにしました。

それでも、存在をアピールするための話題づくりなどには走らず、「リング上がすべて」と信念を貫き続けた。試合内容で、「世間」と闘い続けた6年間。まっすぐ進んできた先に、現在の確固たる立場がある。

井上 振り返ってみれば、ここまでくるのに時間がかかったなという印象はあります。スーパーフライ級で2階級制覇をしても、防衛戦では、名前のある相手との試合は決まらなかった。ただ、冷静にみれば、当時の自分も世界的には名前がなかったですし、「食ってもうまみがない選手」だったということ。時代とか、環境は関係なくて、ただ自分がそこまでの存在ではなかったということです。

18年にバンタム級に階級を上げたことで、流れは一変した。強豪がひしめく伝統の階級で、その名は瞬く間に世界にとどろいた。転級初戦でWBA王者マクドネルを1回TKOで破り、3階級制覇を達成。続くパヤノ戦、IBF王者ロドリゲス戦と、階級のトップ選手3人を計わずか441秒で撃破。衝撃的な試合を連発し、昨年11月には、バンタム級最強を決めるトーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」決勝で、5階級制覇王者ドネアを破り、頂点に立った。会場のさいたまスーパーアリーナは2万2000枚のチケットが完売した。

井上 バンタム級に上げたことで、理想と現実がかみ合い、求めてきた戦いができるようになったと思っています。減量でパフォーマンスが落ちることもないですし、今は誰もが納得する相手と戦えることが楽しいですし、うれしいです。

ドネア戦は、全米ボクシング記者協会の年間最高試合に選ばれ、世界にその名をとどろかせた。米国で最も権威ある専門誌「ザ・リング」認定のパウンド・フォー・パウンド(PFP=階級を超越した最強ランキング)で最高3位に入るなど、世界の中心選手の仲間入りを果たした。

井上 PFPの存在は大きいですね。そのランクに入っていることで、同じ階級の選手だけでなくロマチェンコ、クロフォードといったPFPの前後の選手とも比較される。だからこそ、変な試合はできない。もっと上を目指さないといけないと思いますし、自分の意識を変えることにもつながっています。

階段を駆け上がり続けても、「強くなりたい」という思いは揺るがない。

井上 バンタム級に上げてから、これまで以上に海外の選手の映像を見るようになりました。以前から父に「見ろ」と言われていたのですが、やっとその意味が分かってきました。

圧倒的なパフォーマンスの裏には他選手からのヒントも影響しているという。

井上 映像を見て、無理にまねをするのではなく、イメージを整理してストックしておくことが大切なんです。たとえば、メイウェザーの防御はこういう特徴があって、ロマチェンコのサイドへのステップはこうとか。そうやってインプットしておくことで、ミットの練習をしている時とかに急に動きのイメージが頭におりてくるんです。このタイミングなら、あの選手のあの動きが使えそうだとか。ただ、パッキャオの2段階の踏み込みだけはいまだにできない(笑い)。あれが自分のものにできれば、もっと強くなれると思うんですけどね。

刺激を求める先は、リング以外にも向かうようになってきた。バスケットボール日本代表の富樫勇樹(26)、ラグビー日本代表の松島幸太朗(27)ら、他競技のアスリートとも交流を深めるようになった。

井上 以前はほかのスポーツにあまり興味がなかったんですが、最近は少し変わってきました。富樫と幸太朗は気が合う友人というのが大前提なのですが、他のスポーツを見に行けば、そこの会場の空気で感じることもある。世界王者になって、周囲からちやほやされる部分もありますし、「慣れ」が、知らない間に心の隙につながると思っています。居心地がよくない新しい感覚にさらされることで、自分が今やらなければいけないこと、進むべき道が整理できるんです。

世界のライバルが「INOUE」「MONSTER」の名を挙げ、挑発し、対戦を熱望している。だが、「強い相手としか戦わない」というデビュー当時の思いは今も変わっていない。

井上 周りからいろいろ言われてなんぼの世界ですし、そこは望むところ。1度負けたら今まで積み上げてきたものがすべて崩れるという恐怖心もありますが、負けを恐れていたらボクシングをやる意味がない。結局、勝ち続けるしかないんです。ただ、弱い相手に勝っても意味がない。どちらが勝つか分からない本物同士のドキドキ感を自分は求めていますし、ファンの方もそれを望んでくれていると思うんです。

35歳での引退を公言し、今月10日には27歳になる。見据える先はどこまでも高い。

井上 自分がどこまでいけるかは、ここからの2~3試合の内容にかかっていると思っています。パッキャオのようにアジアから世界の頂点に上り詰めたいですし、ファイトマネーという意味でもそう。何のためにボクシングをしているかと言えば、当たり前ですが、1つは稼ぐためです。残り8年と考えれば、やれても20~30試合。そう多くはないと思っています。その中で、自分がどんな試合を残せるか。「ボクシングって面白い」「井上の試合は面白い」と思ってもらえる戦いを、これからも見せていきたいですね。

◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。元アマ選手の父真吾さんの影響で小学1年から競技を開始。相模原青陵高時に史上初のアマ7冠。12年7月にプロ転向。当時の国内最速6戦目で世界王座(WBC世界ライトフライ級)奪取。14年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、史上最速(当時)の8戦目で2階級制覇。18年5月にWBA世界バンタム級王座を奪取し、3階級制覇。家族は咲弥夫人と1男1女。165センチの右ボクサーファイター。

2018年10月7日、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズバンダム級トーナメント WBAバンタム級タイトルマッチ 1回戦・1回KO勝ちで、フアンカルロス・パヤノ(手前)を倒し、ガッツポーズする井上尚弥
2014年4月6日、WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ 井上尚弥対アドリアン・エルナンデス KO勝利して新王者となった井上尚弥(中央)は、家族と記念撮影。左から姉晴香さん、弟拓真、1人おいて父真吾トレーナー、母美穂さん

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井上尚弥の最強3傑入りを「ザ・リング」編集長示唆

5回、ドネア(手前)を激しく攻める井上尚(撮影・横山健太)

<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級決勝>◇7日◇さいたまスーパーアリーナ

WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)がWBA世界同級スーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)を下し、日本人初となるパウンド・フォー・パウンド(PFP)トップ3入りする可能性が高まった。1922年創刊の米老舗ボクシング誌「ザ・リング」のダグラス・フィッシャー編集長(49)が7日までに日刊スポーツの取材に応じ、現在PFP4位井上尚のさらなるランクアップを示唆した。

   ◇   ◇   ◇

ザ・リングは世界最古のボクシング専門誌として編集委員会に各国記者らを加えたメンバーで毎月独自に各階級、PFPの世界10位までのランキングを決めている。ESPNなど独自のPFPランクを発表しているが、最初に始めたのはザ・リング。世界のファンからもっとも信頼されているランキングだ。

その責任者となるフィッシャー編集長は、まず井上尚が高く評価されていることを力説した。「多くのメディア関係者、ランキング委員会メンバーは、既にPFPランキング上位に井上尚の名があることに対して異論がない」。現在のPFPは1位にアルバレス、2位にロマチェンコ、3位にはクロフォードというビッグネームが並んでいる。「ドネア戦での試合の勝ち方によります」と前置きした上で「トップとの対戦がここ数年ないクロフォードよりも井上尚が上位にランクされる可能性は十分にあると思います」と解説した。

今年に入ってザ・リングは2度も井上尚を表紙に選択した。単独表紙は日本人ボクサーとして初めての名誉だった。同編集長は「ボクシングマニアからの反応は井上尚が飾ったどちらの表紙も絶大な反応を受けて好評でした。SNSなどの反応はお祭り騒ぎのようで何週間も続いた」と反響の大きさに驚いたという。

5月のWBSS準決勝にはザ・リング認定ベルトが懸けられ、井上尚が勝利してつかんだ。実力と人気を兼ね備えたモンスターに、同編集長は「少なくとも25~30年さかのぼっても、井上尚は日本から出てきたもっとも才能があり、有望な選手。一番重要であるリング内で戦う上での頭の良さも持ち合わせている」と分析。来年から米本格進出を果たす井上尚に向け「世界レベルとの対戦を続けてほしい。今後、米国の一般スポーツファンの間でも名の知られる初の日本人ボクサーになれるでしょう。階級を上げていけば(6階級制覇王者)パッキャオのような存在になれる逸材」と大きな期待を寄せていた。

◆ザ・リング 米国で1922年の創刊当初からボクシングのみを基本線に扱う月刊専門誌。毎月、ボクサーのランキングを独自の基準で選定するなど、ボクシング界では最も歴史と権威ある雑誌とされ「ボクシングの聖書」とも呼ばれる。同誌編集委員会に各国記者らを加えたメンバーで毎月独自に各階級、パウンド・フォー・パウンドで世界10位までランキングを発表。設立当初から独自に認定した王者にチャンピオンベルトも授与。02年より本格的に各階級ごとのベルト授与も開始。また年間最優秀選手など表彰も行う。

◆パウンド・フォー・パウンド 異なる階級の選手を体重差がなかったとして比較した場合の最強王者を示す称号。過去にはマイク・タイソン、ロイ・ジョーンズ、近年ではマニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーがPFPの評価を受けた。「ザ・リング」でトップ10入りした日本人は井上以外では元WBCバンタム級王者の山中慎介、元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志がいる。

井上尚はWBSS優勝を果たしアリ・トロフィーをファンに披露する(撮影・足立雅史)

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オーラ漂うドネア 井上尚弥に「何も感じなかった」

前日計量を終えポーズを取るドネア(撮影・鈴木みどり)

ボクシング5階級制覇王者でWBA世界バンタム級スーパー王者のノニト・ドネア(36=フィリピン)が静かに闘志を燃やした。

7日、さいたまスーパーアリーナで控える3階級制覇王者のWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)とのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝に向けた前日計量が6日都内で開かれ、ドネアは200グラム少ない53・3キロで1発パス。井上尚とはフェイスオフの写真撮影で20秒ほど目を合わせた。

「特に何も感じなかった。向かい合って目を合わせただけ。明日のリングで何かを感じたい」。

計量後、まず水分補給し、サラダとフルーツを口にしたフィリピーノ・フラッシュ(フィリピンの閃光)にはオーラが漂った。WBSS準決勝となる4月のステファン・ヤング戦の6回KO勝ちで区切りのプロ40勝を飾った。IBF世界フライ級を皮切りにWBA世界フェザー級スーパー王座まで実に5階級を制覇。バンタム級、スーパーバンタム級では2団体統一王者にも君臨した。WBCにもバンタム級、スーパーバンタム級でダイヤモンド王座を獲得してきた風格は、より大きな存在感として伝わってくる。

井上尚を倒すための秘策を問われ「秘策はない。自分の経験による引き出しが今までにある。それを使うことが作戦になる」とだけ言った。通常体重は58・9キロで、減量は5キロほどだった。試合当日にはリミット53・3キロから5キロ程度の増量でリングに上がるという。

海外オッズでは、ドネアが不利になっているものの「オッズとか、どちらが勝つとかは予想は関係ない。他人が決めたこと。自分には自分が信じる力がある。気にしていない。今まで同じ状況でも勝ってきたから」と不敵な笑みを浮かべた。勝てば新たに階級最強の証明となるアリ・トロフィーが手に入る。「あのトロフィーをリングで持つことを楽しみしている」と最後まで平常心を崩すことはなかった。

過去には元WBC世界バンタム級王者長谷川穂積を下したWBC・WBO世界同級王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)や元WBC世界スーパーバンタム級名誉王者西岡利晃も下すなど、日本のリングでも強さを証明してきたボクサーたちを次々と下してきた軽量級のレジェンド。今度は無敗の若きモンスター井上尚の大きな「壁」なる覚悟ができている。

前日計量をクリアし、ドネア(右)とにらみ合う井上尚(左手前)(撮影・鈴木みどり)
前日計量をクリアしたドネア(中央)。左下は真吾トレーナー(撮影・鈴木みどり)

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ドネアはクール&オーラ「リラックス状態が『素』」

試合への意気込みを笑顔で語るドネア(撮影・横山健太)

ボクシング5階級制覇王者のWBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)がクールな姿勢で、3階級制覇王者のWBA・IBF世界同級王者井上尚弥(26=大橋)との決戦に備えた。11月7日、さいたまスーパーアリーナでのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝に備えた4日、都内のホテルで井上尚とともに予備検診に臨んだ。ドクターチェックでは両者ともに異常はなかった。

数々のビッグマッチを戦ってきたオーラを漂わせたドネアは「このスポーツを長きにわたりやってきて、闘争心をむき出しにするのはリングだけ。このリラックス状態が『素』の自分自身です」と余裕の表情。身長で5・7センチ、リーチで3・0センチも井上尚よりも上回っているものの「そういった体格、フィジカル面のことはいつも気にしていない。昨日のカネロ(アルバレス)-コバレフ(のWBO世界ライトヘビー級タイトルマッチ)を見たが、身長や体格が関係ないことを表している」と自身のアドバンテージとは考えていないようだ。

日本での試合は初めてだが、何度も来日しているドネア。アウェーの感覚もなく「今はエキサイティングな気持ち」と、井上尚とのバンタム級頂上決戦を楽しみに待っていた。

予備検診を終えポーズを決める井上尚(左)とドネア(撮影・横山健太)

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ドネア「ワクワクしている」井上戦世代交代は阻止

公開練習でミット打ちをするドネア(撮影・鈴木みどり)

ボクシング5階級制覇のWBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)が、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)制覇へ自信を見せた。

11月7日にさいたまスーパーアリーナで、WBA、IBF世界同級王者井上尚弥(26=大橋)との決勝で激突する。31日は都内のジムで練習を公開。10分足らずの練習だったが、仕上がりの良さを示し、会見でも世代交代阻止を宣言した。

前夜に来日したばかりだが時には笑みを見せ、落ち着いた表情で報道陣に対応した。01年のプロデビューから45戦をこなしてきた。「ワクワクしている。最も重要な試合でモチベーションも上がっている。日本のファンの前で日本最強の井上と戦う。試練だが気持ちも高ぶっている」と決戦への意気込みを口にした。

井上に対して「信じられないほどすばらしいファイター。才能、パワーとスピードがある危険な選手。最大限の注意を払っていく」と評価した。試合展開は「KOの可能性が大いにある。2人ともワンパンチKOのパンチ力があるから」と予測した。

10歳下と一回り近い年の差があり、井上は3日前の公開練習で「世代交代する」と宣言している。ドネアは「どの世代も最強を証明へ乗り越えようとするが、我々の世代が壁になる。壁を強固に作り上げてきた」と譲るつもりはない。

今回は米ラスベガスでのキャンプに続いて、母国フィリピン・マニラでも、約2週間スパーリングを積んできた。「暑い気候の中でスパーで締めてきた。メンタルも含めて追い込んで、より精度は高くなった。練習してきた自信はある」と言い切った。

さらに「20代の時と同じ練習をしている。スピードに若さを保ち、そこへ経験が積み上がっている」と、衰えは認めない。進退を問われると「ノー」と即答。「ボクシングを愛し、まだトップの力がある。戦える限り戦う」と言った。

これまでフライ級からフェザー級まで5階級で、10本のベルトを獲得した。「この階級が自分の階級で、満足している。最強になることを目指して戦ってきた。いろいろな称号を手にしたが、今ほしいのはWBSSの最強の称号」と、優勝を確信している。

練習はシャドーとミット打ちを1回ずつ披露しただけ。それでも得意の左フックなどで力強さを見せつけ、仕上がりの良さをアピールした。5日までは夜にジムを借り切っての練習を予定。決戦へ向けて抜かりのない準備で最後の仕上げに入る。

練習を公開し、妻でトレーナーのレイチェル夫人(左)、父のドネア・シニア・トレーナー(右)と写真に納まるノニト・ドネア(撮影・鈴木みどり)

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井上尚弥の父真吾氏がドネア警戒「パンチ重そう」

公開練習でミット打ちをするドネア(撮影・鈴木みどり)

ボクシングWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)の父真吾トレーナー(48)が31日、東京・新宿区の帝拳ジムで開かれた5階級制覇王者のWBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)の公開練習を視察した。

11月7日、さいたまスーパーアリーナで控える井上とのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ決勝に向け、ドネアがトレーナーの父ノニト・シニア氏と臨んだミット打ちをチェック。真吾氏は「全力ではやっていないと思いますが、やはりパンチは重たそうですね。左フックも右も強そう。すべてのパンチを警戒しないといけないです。オールでまとまっている」と、細心の注意を払って最後の対策を練る意向だ。

5階級制覇王者ドネアVS3階級制覇王者井上のバンタム級頂上対決。あらためてドネアのスピード、パワーなどを確認した真吾氏は「(今までの対戦相手と比べ)格の違いがある。レジェンドです」とオーラを感じ取った上で「表情が穏やかで良いトレーニングをしてきたのだと思う。お互いが認め合い、戦っている者同士でしか分からない良い戦いになるのではないか」とも分析していた。

練習を公開し、妻でトレーナーのレイチェル夫人(左)、父のドネア・シニア・トレーナー(右)と写真に納まるノニト・ドネア(撮影・鈴木みどり)

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井上尚弥と決戦臨むドネアが援軍と来日「ワクワク」

セコンド陣、家族と一緒に来日したWBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(右から2番目)

ボクシング5階級制覇王者のWBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)が10人の「援軍」と一緒に来日した。11月7日、さいたまスーパーアリーナで控えるWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)とのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ決勝に向けて30日夜に来日。レイチェル夫人、息子2人に加え、トレーナー、セコンド陣と日本に到着した。今月18日から母国フィリピンのマニラで時差調整してきたというドネアは「ベスト・オブ・ベスト、最強同士の戦いだ。今はクリスマスプレゼントを開ける時のようなワクワク感がある」と高揚感を漂わせた。

WBSS決勝に備えて来日したドネア

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井上尚弥、ドネアとの判定決着も想定し走り込み合宿

弟拓真(左)と並んでダッシュする井上尚弥

ボクシングのWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が判定決着を想定した走り込み合宿に突入した。11月7日、さいたまスーパーアリーナで5階級制覇王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)とのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝を控え、17日には長野・軽井沢でキャンプをスタート。午前練習では15キロを走り、過酷なダッシュメニューを消化した。

今回の合宿テーマについて井上は「ちょっと長いラウンドに備えて長距離のランニングメニューになる。長丁場を想定している」と12回のフルラウンドを意識して走り込むことを明かした。通常の合宿で組み込まれている階段ダッシュなどをしない代わりに「平面を走って心肺機能も上げていきたい」という。

昨年5月、WBA世界バンタム級王座を獲得したマクドネル(英国)戦で1回TKO勝ちを収めたことを皮切りに同級では3試合で計4回(441秒)しか戦っていない。フィジカル面を担当する高村淳也トレーナーは「今回はスタミナ強化になる」と説明。20日までの3日間で1日30キロ、計90キロを走るプランを組んでいるという。

井上は「練習メニューについては話し合って決めています。暑いとトレーニングに集中できないので、こっち(軽井沢)はトレーニングに最高ですね」と過酷な合宿を乗り切る意欲を示していた。

軽井沢合宿を開始したWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(左端)、日本スーパーライト級王者井上浩樹(中央)、WBC世界バンタム級暫定王者井上拓真

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ドネア、井上尚弥と対戦に「サムライの斬り合い」

WBSSバンタム級トーナメント決勝会見でポーズを決める井上尚(左)と対戦者のドネア(撮影・たえ見朱実)

ボクシング5階級制覇のWBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)が、サムライ精神で決戦に臨む。

ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級決勝の会見が26日に都内であり、ドネアも米ラスベガスの自宅から早朝に来日して出席した。会見前にWBA、IBF世界同級王者井上尚弥(26=大橋)へまず握手を求め、友好的に決戦の口火が切られた。

何度も来日して多くの選手を指導し、各ジムで練習するなどしてきた。大の親日家として知られるが、日本での試合は初めて。「日本のサムライ精神、武士道にすごく影響されている。そういった文化を自分の中に培ってくれた日本で、井上と対戦できることをうれしい。私が持つすべてをさらけ出す」と意欲を示した。

子供のころから日本の漫画やアニメに夢中になり、映画「七人の侍」や「宮本武蔵」も見て育った。主役だった三船敏郎の名を上げて「サムライから忠誠心や尊厳を学んだ」という。試合展開を問われても「2人のサムライの斬り合い」と表現した。

フライ級からフェザー級まで制覇したが、WBSS参戦のために7年ぶりでバンタム級に戻り、1回戦、準決勝とも連続KO勝ちしてきた。「バンタム級が最強だと思って戻ってきた」。5年前には井上に指南したが「この階級最強の恐るべき相手に成長したモンスター」と絶賛した。

試合のカギには「お互いスピードもパワーもあり、先にミスした方が負ける」と予測した。一方で「お互い頭脳派でもある。チェスのように長い試合になるかもしれない」とも話した。

下馬評では不利と見られている。10歳年上の36歳に「年齢から力を疑いの声もあるが、それが間違いであるということを見せたい。自分の限界を超えるトレーニングで追い込みたい。力強いサポートもある」。同行してきたマネジャーでもあるレイチェル夫人の手を握りながら話した。

大橋会長は「生きた伝説の2人の対決」と表した一大決戦。ドネアは「自分のためでなく、日本のため、世界のボクシングファンのために、すべてを出して戦う」と約束した。

WBSSバンタム級トーナメント決勝会見でポーズを決める井上尚弥(左)と対戦者のノニト・ドネア(撮影・たえ見朱実)

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井上尚弥が世界団体5本ベルト披露「歴史感じる」

自ら5本のベルトをリングロープに掛け、指をさして写真に納まる井上(撮影・河田真司)

ボクシングWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が25日、横浜市内の所属ジムでプロ18戦で獲得した世界主要団体など計5本のベルトをお披露目した。WBA、WBC、IBF、WBOの4団体に加え、1922年創刊で歴史と権威のある米老舗ボクシング誌ザ・リング認定のバンタム級ベルトが先週届き、コンプリートした世界的な全ベルトを並べた。

井上は「自分もこうやってベルトを並べたのは初めて。重圧というか、やってきた歴史を感じました。最初にWBCのタイトルを取ってWBO、WBA、IBFと取りましたが、それぞれ思い出があります。これに満足しないで頑張りたいです」と決意を新たにした。

主要4団体のベルト制覇は過去に36戦目で高山勝成が成し遂げたが、5本のベルトの獲得は日本人初となった。所属ジムの大橋秀行会長は「ベルトをみてやり遂げたなと思う。しかし、またあらためてここからがスタートです」と強調した。

井上は14年4月、当時の日本最速となるプロ6戦目で初世界王座となるWBCライトフライ級ベルトを獲得。8戦目となる同年12月にはWBO世界スーパーフライ級王座を奪取し、2階級を制覇。16戦目の18年5月にWBA世界バンタム級ベルトを奪った。昨年10月から階級最強を決めるトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)に参戦。今年5月のWBSS準決勝では、ザ・リング認定ベルトも懸けられ、IBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2回TKOで下し、一気に全ベルトを手中にしていた。

年内に予定されるWBAスーパー王者ノニト・ドネア(フィリピン)とのWBSS決勝に向け、大橋会長は「日時、会場はまもなく決まると思います。このベルト5本とはまた違ったベルトも狙っていきたい」とサポートを約束していた。

★世界主要ベルト★

◆WBA(世界ボクシング協会)1921年発足。本部はパナマ。52年に日本ボクシングコミッション(JBC)認定。全米ボクシング協会が母体。62年に現名改称。ヒルベルト・メンドーサ会長。

◆WBC(世界ボクシング評議会)1963年発足。本部はメキシコ。70年にJBC認定。加盟国がもっとも多い世界最大王座認定団体として知られる。マウリシオ・スライマン会長。

◆IBF(国際ボクシング連盟)1988年発足。本部は米国。13年にJBC認定。ニュージャージー州に本部がある米唯一の団体。ダリル・ピープルズ会長。

◆WBO(世界ボクシング機構)1988年発足。13年にJBC認定。元6階級制覇王者オスカー・デラホーヤ(米国)が最初に獲得した王座として有名に。フランシスコ・バルカルセル会長。

◆ザ・リング 1922年創刊の米老舗ボクシング誌。創刊から独自に各階級ランキングや王者を選出、認定する。階級を超越したパウンド・フォー・パウンドも決めている。ダグ・フィッシャー編集長。

5本のベルトを披露する井上尚 2019/06/25
質問に笑顔で答える井上(撮影・河田真司)

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井上尚弥が日本人初快挙 世界団体5本ベルト披露

自ら5本のベルトをリングロープに掛け、指をさして写真に納まる井上(撮影・河田真司)

ボクシングWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が25日、横浜市内の所属ジムでプロ18戦で獲得した世界主要団体など計5本のベルトをお披露目した。WBA、WBC、IBF、WBOの4団体に加え、1922年創刊で歴史と権威のある米老舗ボクシング誌ザ・リング認定のバンタム級ベルトが先週届いたこと受け、コンプリートした世界的な全ベルトを並べた。主要4団体のベルト制覇は過去に36戦目で高山勝成が成し遂げたが、5本のベルトの獲得は日本人初となった。

井上は14年4月、当時の日本最速となるプロ6戦目で初世界王座となるWBCライトフライ級ベルトを獲得。8戦目となる同年12月にはWBO世界スーパーフライ級王座を奪取し、2階級を制覇。16戦目の18年5月にWBA世界バンタム級ベルトを奪った。昨年10月から階級最強を決めるトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)に参戦。今年5月のWBSS準決勝では、ザ・リング認定ベルトも懸けられ、IBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2回TKOで下し、一気に全ベルトを手中にしていた。

★世界主要ベルト★

◆WBA(世界ボクシング協会)1921年発足。本部はパナマ。52年に日本ボクシングコミッション(JBC)認定。全米ボクシング協会が母体。62年に現名改称。ヒルベルト・メンドーサ会長。

◆WBC(世界ボクシング評議会)1963年発足。本部はメキシコ。70年にJBC認定。加盟国がもっとも多い世界最大王座認定団体として知られる。マウリシオ・スライマン会長。

◆IBF(国際ボクシング連盟)1988年発足。本部は米国。13年にJBC認定。ニュージャージー州に本部がある米唯一の団体。ダリル・ピープルズ会長。

◆WBO(世界ボクシング機構)1988年発足。13年にJBC認定。元6階級制覇王者オスカー・デラホーヤ(米国)が最初に獲得した王座として有名に。フランシスコ・バルカルセル会長。

◆ザ・リング 1922年創刊の米老舗ボクシング誌。創刊から独自に各階級ランキングや王者を選出、認定する。階級を超越したパウンド・フォー・パウンドも決めている。ダグ・フィッシャー編集長。

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村田諒太に名伯楽アダムス氏が難敵王者の攻略法伝授

公開練習で、参謀役のケニー・アダムストレーナー(左)と笑顔で記念撮影する村田(撮影・浅見桂子)

ボクシング前WBA世界ミドル級王者村田諒太(33=帝拳)が「名伯楽」に難敵王者の攻略法を伝授された。7月12日、エディオンアリーナ大阪で、昨年10月に判定負けを喫した現王者ロブ・ブラント(28=米国)との再戦を控え、13日に都内の所属ジムで練習を公開。84年ロサンゼルス、88年ソウル両五輪で米国代表を指導し、計29人の世界王者を育てた名トレーナー、ケニー・アダムス氏(78)に戦術面の助言を受けた。

   ◇   ◇   ◇

78歳の名指導者の「頭脳」が援軍となった。村田が「刺激として考え方、見方が違うのでいい」と見つめた先には米国人トレーナー、アダムス氏がいた。9日に来日、10日から約1週間の日程で、ジムワークの視察を受けている。約30年間、米軍に所属し、厳しい規律訓練スタイル。2度スパーリングも見てもらい、村田は「軍隊のような感じ」と細かい助言を受けた。

現在も5階級制覇王者のWBA世界バンタム級スーパー王者ドネア(フィリピン)を指導する同氏は、帝拳ジムの本田会長と旧知の関係にあり、今回の招請が実現した。昨年10月の村田-ブラント戦を動画チェックしたという同氏は「相手を待ちすぎた。村田の持ち味の右ストレートが打てていなかった。ブラントはトリッキーに動くので、プレッシャーをかけて1、2、3と連打していかなければ」と指摘した。

さらに「私は元軍人。相手攻撃を消す動きをして、自らが打つことを軍で覚えた。ブラントに攻撃させない動きがある」とボディー攻撃でブラントの体力を削るプランを公開。詳細は明かさなかったが「最初に自分から攻撃し、最後も自分が攻撃しなければいけない」と作戦の一端を示した。本田会長は「1つの意見として聞いている。先入観なく見てもらえている」と戦略面の充実ぶりを口にした。再戦まで残り約1カ月。村田は「今はボクシングの感じがいい」との手応えを胸にブラント攻略法を仕上げていく。【藤中栄二】

◆ケニー・アダムス 1940年9月25日生まれ、米ミズーリ州スプリングフィールド出身。6歳の時にボクシングを始め、12歳でアマチュアの試合に出場し、200戦以上の試合を経験。トレーナー転身後は米国のアマボクシングに初めて筋力トレを導入。84年ロサンゼルス五輪で米国代表コーチを務め、金9個、銀1個、銅1個の獲得に貢献。88年ソウル五輪では監督に就任し、ロイ・ジョーンズJr.(元4階級制覇王者)らを擁して金3個、銀2個、銅2個を獲得。ベトナムを含めて約30年間、米陸軍に所属していた。

公開練習で、汗を飛ばしながらミット打ちする村田(撮影・浅見桂子)
公開練習で、リングに縄を張り、真剣な表情でリズム練習する村田(撮影・浅見桂子)

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東京五輪メダル獲得へ、男女イチ押しボクサーを紹介

3月、ボクシング16年世界ユース王者堤駿斗(右)は井上尚弥とスパーリングに臨んだことも

国際オリンピック委員会(IOC)が22日、スイスのローザンヌで理事会を開催した。20年東京オリンピック(五輪)の実施競技から除外も含めて検討してきたボクシングを存続させる方針を決めた。

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紆余(うよ)曲折と長い時間を要して、ようやくアマチュアボクシングの東京五輪での実施が決定した。

国際協会(AIBA)の会長の素性や、ガバナンス(統治能力)の欠如、リオデジャネイロ五輪での不正審判疑惑など、種々さまざまな問題がクリアになるかが焦点だったが、選手が犠牲になるような最悪の事態は回避された。

では、母国開催の五輪でメダルを狙える有力選手はいるのか。世界における日本の現在の戦力を考え、イチ押し選手を紹介する。

なお100年以上五輪で実施されてきた同競技でメダル獲得した日本人は5人。60年ローマ五輪フライ級銅メダルの田辺清、64年東京五輪のバンタム級金メダルの桜井孝雄、68年メキシコシティー大会同級銅メダルの森岡栄治、12年ロンドン五輪同級銅メダルの清水聡、同五輪ミドル級金メダルの村田諒太となる。

【男子】モンスターが認める逸材がいる。

堤駿斗(19=東洋大)。習志野高2年だった16年に日本人史上初のユース五輪で金メダルを獲得し、一躍東京五輪でのメダル獲得候補として注目された。

昨年はけがなどが重なり、思うような結果は残せなかったが、今年に入り復調傾向にある。今月上旬にロシアで行われた国際大会でも金メダル、さらに大会最優秀選手を獲得した。

その実力は、先週末にスコットランド・グラスゴーで行われた世界戦で2回衝撃のTKO勝ちを収めたWBA世界バンタム級王者井上尚弥も認める。IBFの対抗王者エマヌエル・ロドリゲス戦へ向けたスパーリングで堤と複数回手を合わせ、「緊張感がありましたね。反応が早いので、どちらに集中力があるか、ミスしないのかの勝負でした」と話している。

いわば「アマチュア界のモンスター」候補として、期待が高まる。

【女子】ロンドン五輪から採用された女子にあっては、いまだ五輪出場者はいない。ロンドン時にはお笑いコンビ南海キャンディーズのしずちゃんこと山崎静代の挑戦で話題になったが、五輪の壁は高かったのが現実だった。だが、東京五輪を来年に見据え、関係者が男子よりメダル獲得の好機があると見通すほど、人材はそろっている。

昨年の世界選手権では男子がメダルなしに終わる中、2人の獲得者を輩出した。

1人目は和田まどか(24=福井県職)。極真空手で日本一となり、神奈川・田奈高2年でボクシングに転向。14年も含め、世界選手権2度の銅メダルを手にし、現在は日本の「顔」と言える。転向した理由は08年北京五輪で柔道、レスリングの格闘技で女子選手が躍動する姿を見たから。五輪のためだけに拳を振ってきて、その最高の舞台が母国で待つ。

2人目は並木月海(20=自衛隊)。同じく昨年の世界選手権銅メダリストは、五輪階級のフライ級で表彰台を射とめた新鋭で、競技歴は8年。3歳で始めた空手は、初出場した千葉県の幼年大会決勝の相手がキックボクシング界の神童、那須川天心だった。「思い切り蹴られた記憶が。衝撃ですよね!」と明るく振り返り、以降も親交は厚く、「負けてられない」と燃える。低身長を補う踏み込みの速さと強打は日本人離れし、「海外の選手とやっても通用する」と自信はある。男子の堤が優勝した今月のロシアでの国際大会でも頂点に立っているなど、一発の強さを武器に地位を築きつつある。

リオ五輪までは3階級で、しかも各12人しか出場できない激戦に苦しんだ。東京五輪は5階級に増える計画で、今度こそオリンピアン1号、そしてメダル1号の機運が高まる。【阿部健吾】

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井上尚弥、圧勝期待からスランプも初心と覚悟で脱出

井上対ロドリゲス 2回、ロドリゲス(奥)にボディーへのワンツーを見舞い2度目のダウンを奪って拳を突き上げる井上(撮影・滝沢徹郎)

<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)・バンタム級準決勝>◇18日◇英国・グラスゴー・SSEハイドロ

挑戦者でWBA正規王者の井上尚弥(26=大橋)が「259秒殺」で無敗のIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を仕留めた。計3度のダウンを奪い、レフェリーストップによる2回1分19秒、TKO勝ち。IBF王座、米国で最も権威ある専門誌「ザ・リング」認定ベルトを獲得し、WBA王座の2度目防衛に成功。一時期の大スランプを脱出し、主要4団体で世界王者となった。通算戦績は井上が18勝(16KO)、ロドリゲスは19勝(12KO)1敗。

WBSS司会者からの質問に井上は苦笑するしかなかった。試合後の会見で「KOまで2回かかったが」と問われると「そういう見方になっちゃいますか」とおどけた顔を見せた。英グラスゴーの期待は高かった。入場から大歓声を浴び、ロドリゲスには大ブーイングが起こった。ボクシング発祥の地で「ホーム」を味わいながらの2回TKO劇。英ボクシングファンを味方につけて日本人初の欧州世界戦勝利につなげた。

「プレッシャーから解放されたような、重圧がちょっと砕けたようなシーンだった。期待に応えられた」

1回は力んだ。前に出てきたロドリゲスの圧力で、井上はロープ際に追い込まれた。「試合は長引く」と頭によぎったものの「気持ちの余裕はありました」。父真吾トレーナーに「リラックスして柔らかく」と助言を受け、力みも消えた。2回には重心を低くし「勢いづかせないため」に少し前かがみで体を出した。「自分の重心を抑え、(ロドリゲスを)抑える」。危険な接近戦になると、カウンターの左フックでダウンを奪取。狙っていたボディーで2度立ち上がった無敗王者の肉体と心まで折った。

2月中旬、絶不調に陥った。倒す気持ちが前に出過ぎ、高度な防御が消えて真正面から打ち合った。1回戦(パヤノ戦)で見せた70秒KO勝ちのインパクトを期待され「自分のスタイルに影響した」。大橋会長まで心労で1週間も入院。異例の1カ月のスパーリング中断を決めた。真吾氏とのミット打ち回数を増やし、心身を「初心に戻る」作業に徹した。腹筋を殴ってもらう練習を多く入れてパンチ被弾の「覚悟」も磨き、スランプを脱出した。

IBF王座、ザ・リング認定ベルトを獲得し、プロ18戦目で世界に名だたる5本のベルトを日本人で初めて制覇した。「特にベルトについては。誰とやるかが重要」。ドネアとの最強決定戦に向けて気持ちを高ぶらせていた。【藤中栄二】

◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。元アマ選手の父真吾さんの影響で小学1年から競技を開始。相模原青陵高時代に史上初のアマ7冠。12年7月にプロ転向。当時の国内最速6戦目で世界王座(WBC世界ライトフライ級)奪取。14年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、史上最速(当時)の8戦目で2階級制覇。18年5月にはWBA世界バンタム級王座を奪取し、国内最速(当時)の16戦目で3階級制覇。家族は咲弥夫人と1歳の長男明波くん。165センチの右ボクサーファイター。

井上対ロドリゲス 2回、ロドリゲス(右)をパンチでのけ反らせる井上(撮影・滝沢徹郎)

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衝撃KO井上尚弥をリング誌絶賛「止められるのか」

井上対ロドリゲス 2回、ロドリゲスに勝利し雄たけびを上げる井上(撮影・滝沢徹郎)

<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)・バンタム級準決勝>◇18日◇英国・グラスゴー・SSEハイドロ

WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が2回1分19秒TKOでIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を下し、WBSS決勝進出を決めた。

無敗王者対決を2回TKOで制した井上の衝撃度は世界のボクシング界に拡散された。認定ベルトも懸けた「ザ・リング」誌は公式ツイッターで「イノウエが2回にロドリゲスを倒した。脅威だ」と投稿。試合記事では「一体誰がこの男を止められるのか」と絶賛した。ライバルとして肩を故障中のWBO王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)、体重超過の処分が解けた元WBC王者ルイス・ネリ(メキシコ)が手強い相手として残ることも付け加えた。

試合後、決勝で戦うドネア(右)と記念撮影する井上(撮影・滝沢徹郎)

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井上尚弥-ドネアはアジアの盟主を継承する戦いに

決勝で対戦するドネア(右)と向かい合う井上(撮影・滝沢徹郎)

<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)・バンタム級準決勝>◇18日◇英国・グラスゴー・SSEハイドロ

井上-ロドリゲス戦をリングサイドで視察した5階級制覇王者のWBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)は、WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)との決勝を待っていた。

リングだけでなく、会見場にも姿をみせて井上と健闘を誓い合った。「お互いに同じことを思っていた。誰が決勝へ行くかという話になれば彼は必ずボクの名前を挙げ、自分も彼が決勝に勝ちあがると。最高の戦いをみせたい」。経験豊富な王者は風格を漂わせた。

11年2月、長谷川穂積をKOしたWBC・WBO世界バンタム級王者モンティエル(メキシコ)を左フックで失神KOさせ、アジア初の4団体制覇を達成。「フィリピンの閃光(せんこう)」の名が一気に世界中に広がった。その後、メイウェザーと並ぶ5階級制覇まで成し遂げた。36歳のベテランでもあるため「多くの人がボクが終わったと思うが、自分は負けない。真の戦士だ」と自信を示した。

日本通で知られ、何度も来日している。決勝の開催地にも「それは関係ない。大事なのはすべてを出し尽くすこと」と拠点を置く米国以外でも前向きな姿勢。6階級制覇王者パッキャオの後継者とも言われたドネア。決勝は世界が誇るアジアの盟主を継承する戦いにもなりそうだ。

決勝で対戦するドネア(右)と記念撮影する井上(撮影・滝沢徹郎)

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ロドリゲス、井上に完敗認める「言い訳の余地ない」

井上対ロドリゲス 2回、ロドリゲス(奥)から2度目のダウンを奪い拳を突き上げる井上(撮影・滝沢徹郎)

<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)・バンタム級準決勝>◇18日◇英国・グラスゴー・SSEハイドロ

WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)に2回TKO負けを喫したIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)は完敗を認めた。

プエルトリコ紙プリメイラ・オラ電子版によると「わが同胞へ、勝利をもたらすことはできなかった。言い訳の余地はない。これまでにないトレーニングを積んできたのだから。準備は最高だった」と初黒星を悔しがった。

新たに着任したクルス・トレーナーのもと納得した練習を積んだ自信をにじませながら「敗北は誰にとっても痛いものだ。しかし、我々は止まらない。これが終わりでないのだから」と再起を誓った。

WBSSバンタム級準決勝 井上対ロドリゲス ロドリゲス(奥右)に勝利し父の真吾トレーナー(手前)と抱き合う井上(撮影・滝沢徹郎)

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日本単独1位12KO/井上尚弥の世界戦アラカルト

2回、ロドリゲス(奥)からダウンを奪い拳を突き上げる井上(撮影・滝沢徹郎)

<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)・バンタム級準決勝>◇18日◇英国・グラスゴー・SSEハイドロ

WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が2回1分19秒TKOでIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を下し、WBSS決勝進出を決めた。

<井上尚弥の世界戦記録アラカルト>

◆8戦連続KO 自らの日本記録をさらに更新し単独1位。2位は元WBA世界ライトフライ級王者具志堅用高

◆通算KO12回 自らの日本記録をさらに更新し単独1位。2位は元WBA世界スーパーフェザー級王者内山高志

◆世界戦勝利13回 長谷川穂積、山中慎介の元WBC世界バンタム級王者コンビに並んで3位。1位は14回の具志堅、元WBA世界フライ級王者井岡一翔

◆5本ベルト制覇 WBA、WBC、IBF、WBOの4団体制覇は高山勝成に続いて日本人2人目。18戦目の制覇は日本最速。ザ・リング認定ベルトを含めた5本ベルト制覇は日本人初。

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井上、今後相手いるのか…最強のPFPに/川島郭志

2回、井上(手前)は2度目のダウンを奪った直後、ロドリゲスをロープ際へ押し込んでパンチを放つ(撮影・滝沢徹郎)

<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)・バンタム級準決勝>◇18日◇英国・グラスゴー・SSEハイドロ

WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が2回1分19秒TKOでIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を下し、WBSS決勝進出を決めた。本誌評論家でWBC世界スーパーフライ級王者の川島郭志氏は井上の強さについて語った。

  ◇    ◇    ◇

井上の左フック一発でもう勝負はついた。パワーもスピードも差は歴然。ボクシングは拳だけで戦う。その拳にパワーという武器があるのは大きい。いつも通りに文句のつけようがない。プエルトリコ人に海外で勝つなんて考えられなかった。またびっくりだ。

ロドリゲスはプレッシャーをかけてきた。今までの相手は下がり、これでは井上に勝てない。時間の問題。勝つにはこれしかない作戦だが、出てきたことでタイミングはあっていた。空振りもあったが、距離が詰まれば決まると思った。

2回にはすぐにパンチが当たり出した。ロドリゲスも返してきたが、パンチを出すと右ガードがオープン気味になって真ん中が開く。そこへいい角度で左が入った。あとはボディーで決めたが、タイソンのようなコンビネーションもすごかった。

ドネアも勝つにはプレッシャーをかけ、パンチを当てるしかない。同じ左フックはパワーがあって、そこだけは気をつけたいが、全盛時に比べれば鈍っている。問題なく井上が勝ち、その後に相手がいるのか心配。もう階級を上げざるを得なくなるかもしれない。間違いなく階級を超えた最強のパウンド・フォー・パウンドになる。(元WBC世界スーパーフライ級王者)

2回、ロドリゲス(奥)にTKO勝ちした井上(手前)(撮影・滝沢徹郎)

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井上尚弥の強さに長谷川穂積氏「強い、以上です」

WBSSバンタム級準決勝 井上対ロドリゲス 2回、ロドリゲスに勝利し雄たけびを上げる井上(撮影・滝沢徹郎)

<プロボクシング:ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)・バンタム級準決勝>◇18日◇英国・グラスゴー・SSEハイドロ

無敗同士の王者対決を制したWBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)に強さに、現地視察した元WBC世界バンタム級王者長谷川穂積氏も脱帽していた。

開口一番に「強い、以上です。強いですね。それしかでない。攻略しようが分からないです」と圧倒された。1回に攻勢に出てきたIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)のカウンター技術やスピードに「思ったよりも強くて、長引くと思ったら…あの強さ。試合が短すぎて」とうなっていた。

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