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沼田義明「右アッパー」ロハス撃沈/大橋会長の一撃

WBC世界ジュニアライト級選手権 沼田義明(5回KO)-同級7位ラウル・ロハス 防戦一方の沼田(左)だったが、5R右アッパーカットがものの見事にアゴに決まり、ロハス(右)はスローモーションのように崩れ落ちる。沼田は初防衛(1970年9月27日撮影)

<ボクシング、忘れられない一撃~4>

一発のパンチですべてが変わるボクシング。選手、関係者が「あの選手の、あの試合の、あの一撃」をセレクトし、語ります。元WBC、WBA世界ミニマム級王者で、5人の世界王者を育てた大橋秀行氏(55=大橋ジム会長)は、沼田義明氏がロハス戦で放った「伝説の右アッパー」を挙げました。(取材・構成=奥山将志)

 ◇    ◇   

▼試合VTR 正確なボクシング技術から「精密機械」と称されたWBC世界スーパーフェザー級王者沼田義明が、1970年9月27日、初防衛戦に臨んだ。相手は西城正三にフェザー級の王座を奪われ、2階級制覇を狙うラウル・ロハス(米国)。試合は、序盤から強打のロハスがペースをにぎった。4回にロハスの強烈な右ボディーを受け、沼田がダウン。その後もコーナーに詰められるシーンが続いたが、5回にドラマが待っていた。沼田はKOを狙って出てくるロハスの打ち疲れた隙を狙い、リング中央で、逆転を狙った右アッパーを一閃(いっせん)。あごにまともに入ると、ロハスはそのまま、顔面から前のめりに崩れ落ちた。衝撃的なKOで王座を守った一戦は、国内の年間最高試合にも選ばれた。

 ◇    ◇   

試合当時、私は5歳で、当然リアルタイムの記憶はありません。初めて試合の映像を見たのは、私が現役を引退してからでした。沼田さんとテレビの解説でご一緒させていただいた縁もあり、「精密機械」と言われていた現役時代に興味を持ち、映像を見ると、本当にすごいパンチでした。

技術的には、左手のガードを下げた、やや変則的なスタイルですが、天性の運動神経と、感覚の鋭さを感じました。ヨネクラジムの松本清司トレーナーが、沼田さんのことを「あの人が本物の天才だ」と語っていたこともうなずけました。

ある日、沼田さんから「現役時代にサンドバッグなんて打ったことがない」という話を聞き、驚いたことも記憶に残っています。偉大な先輩には、常識は通用しないのでしょう。ロハス戦の右アッパーも、最近のボクシングのように小さく振り抜くのではなく、下から突き上げるような大振りなパンチ。アッパーは、打つ方もカウンターを受ける危険を伴いますが、そんな迷いは一切感じませんでした。

私が現役を引退し、指導者になったタイミングでこのパンチに出会ったことも、脳裏に焼き付いている要因の1つだと思います。技術の追求は大切ですが、ボクシングは、どれだけ劣勢であっても、一発で逆転が可能なスポーツだということ。そして、何があっても最後まで諦めてはいけないということ。私にとっては、そういう教えが詰まった一撃だったと思っています。

◆大橋秀行(おおはし・ひでゆき)1965年(昭40)3月8日、横浜生まれ。横浜高でインターハイ優勝。専大中退でヨネクラジム入りし、85年プロデビュー。86年に7戦目で世界挑戦はKO負け。90年に3度目の挑戦でWBC世界ミニマム級王座獲得。日本人の世界挑戦連敗を21で止める。92年にWBA世界同級王座獲得。94年大橋ジムを開設。日本プロボクシング協会会長なども歴任。

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田中教仁が判定負け 王者ノックアウト12度目防衛

田中教仁

<プロボクシング:WBA世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦>◇3日◇タイ・ナコンサワン

ボクシングのWBA世界ミニマム級タイトルマッチが3日、タイ・ナコンサワンの屋外特設リングで行われ、挑戦者の同級10位田中教仁(35=三迫)は、同級スーパー王者ノックアウト・CPフレッシュマート(29=タイ)に0-3の判定で敗れた。

2回から王者にペースをつかまれ、3回に左フックを顎に受けてダウン。得意の右の強打で打開を試みたが、最後まで無敗の王者を崩せず、初挑戦での王座奪取はならなかった。日本ボクシングコミッション(JBC)公認のタイでの世界戦で、日本勢は25敗1分けとなった。ノックアウトは12度目の防衛に成功した。

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スーパー王者から奪取狙う田中教仁、家族応援を固辞

前日計量をクリアした挑戦者の田中(右)と王者ノックアウト

ボクシングのWBA世界ミニマム級タイトルマッチ(3日、タイ・ナコンサワン)の前日計量が2日、バンコク市内で行われ、11度防衛中のスーパー王者ノックアウト・CPフレッシュマート(29=タイ)、挑戦者の同級10位田中教仁(35=三迫)ともにリミットの47・6キロでクリアした。

田中は世界初挑戦で、日本ボクシングコミッション(JBC)公認の世界戦で日本人が24敗1分けと勝利がないタイでのベルト奪取を狙う。新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し、家族などの応援を固辞。「ネガティブな歴史に自分が終止符を打つ」と勝負のリングに立つ。

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井上尚弥 昭和の王者を超え世界的ヒーローの可能性

18年5月、3階級制覇を果たしベルトを掲げる井上尚弥

<平成とは・バトル編(3)>

5月18日(日本時間19日)、英国のグラスゴーでWBA世界バンタム級王者の井上尚弥(26=大橋)が、IBF同級王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)との統一戦に臨む。4人の現役世界王者らが参戦するバンタム級最強を決めるトーナメントの準決勝。無敗の王者対決は今、世界の注目を浴びている。

所属ジム会長で元WBC、WBA世界ミニマム級王者の大橋秀行(54)は「新しい時代にふさわしい試合になる。今は国内だけで防衛戦を重ねていく時代ではない。だから世界に出て勝負をかけた」と、90年2月に平成初の世界王者になった自身の頃と比較しながら、今回の試合の意義を力説する。

90年代まで世界王者になれば、国民的ヒーローになれた。ファイティング原田、具志堅用高、辰吉丈一郎……街を歩けば人が群がった。「世界王座を奪取した翌日に首相官邸に招待されて、海部俊樹首相にネクタイピンをいただきました」と大橋も現役時代を振り返る。しかし、近年は街で囲まれる世界王者は少ない。

「自分の頃はJリーグもなかったし、大リーガーもいなかった。プロスポーツの世界王者はボクシングだけ。今はテニスをはじめあらゆる競技のプロ選手が海外で活躍するようになった。その分、国内で興行を続けてきたボクシングへの注目度が薄れた。自分も責任を感じていた」。日本プロボクシング協会の会長も務めた大橋は自戒も込めて分析する。平成に入ってスポーツ界は海外への門戸が大きく開かれた。イチローや松井秀喜、錦織圭や大坂なおみの活躍で、選手に世界的な評価が求められる時代になった。

現在、日本の男子の世界王者は7人。昨年は一時11人もいた。13年に日本ボクシングコミッション(JBC)がWBAとWBCに加えて、IBFとWBOの王座も承認し、ベルトも倍増した。元WBC世界スーパーライト級王者の浜田剛史(58)は「昔は世界王者が最終目標だった。今は王者になってから何を残すかが問われる時代になった」と話す。

一方で日本選手の技術レベルは飛躍的に伸びた。08年に日本プロボクシング協会がU-15(15歳以下)全国大会をスタート。小中学生から全国規模で活躍できる場ができた。井上尚弥、拓真兄弟、田中恒成らの現役世界王者はこの大会の優勝者。「技術は始めた年齢に比例する。世界のリングでボディーで倒されていた日本選手が、今はボディーで倒すようになった。技術は世界でもずぬけている」と、同大会を協会会長として主導した大橋は言う。11年7月にはWBC世界スーパーバンタム級王者の西岡利晃(帝拳)が、日本人で初めて米国の本場ラスベガスで防衛に成功するなど、世界でも日本選手の評価は高まっている。

井上はプロわずか16戦で世界3階級制覇を達成。卓越したボクシングセンスと強打は、海外でも注目され、日本人ボクサーで初めて米ボクシング誌「リングマガジン」の表紙にもなった。あの昭和の王者を超える、世界的なヒーローになる可能性を秘めている。「日本から世界へ。そのレールを井上が敷く」と大橋は力を込める。

世界ヘビー級王者マイク・タイソンの東京ドーム防衛戦(90年)という「ビッグバン」で始まった平成がまもなく終わる。昭和の時代に26人だった世界王者は、平成の約30年間をへて91人まで増えた。今や日本は世界屈指のボクシング大国に躍進した。

令和の時代の幕開けを前に、大橋がこんな予言をした。

「平成はタイソンで盛り上がり、あのミドル級で村田諒太が世界王者になった。そして井上が世界で勝負をかける。日本ボクシング界は大きく変わった。あとはヘビー級。令和の時代に日本人の世界ヘビー級王者が誕生するかもしれない。そうしたら再びビッグバンが起きる」。【首藤正徳】(敬称略)

90年2月、WBC世界ストロー級王座に就いた大橋秀行

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異質な飯田覚士 TV企画、部活の延長から世界王者

平成のボクシング界について語る飯田覚士さん

<平成とは・バトル編(2)>

平成が幕を開けて間もなく、日本ボクシング界に異質なボクサーが現れた。後にWBA世界スーパーフライ級王者になる飯田覚士である。90年(平2)、日本テレビのバラエティー番組「天才たけしの元気が出るテレビ!!」の“ボクシング予備校”という企画に、プロテストを目指す練習生の1人に選ばれた。

当時、飯田は岐阜経済大3年。「ボクシング部でしたが、ツアーコンダクターになりたかったので、プロになるつもりはなかった。練習に物足りなさを感じていたのと、テレビに出れば思い出になると思って応募した」。どこにでもいる普通の大学生で、ボクサーらしからぬ甘いマスクにきゃしゃな体形。そのギャップがボクシングと無縁の若い女性のハートに響いた。

日曜の夜に放送される平均視聴率15%の人気番組で、定期的に成長ぶりが紹介されると、飯田の人気は沸騰した。90年9月の大阪城公園での公開スパーリングには1万人を超えるファンが殺到した。テレビ局の意向に応じて番組内で「チャンピオンになる」と公言していたため「引くに引けなくなった」と飯田。翌91年3月にプロデビュー。翌年の全日本新人王決勝戦には8000人の大観衆が詰めかけた。

昭和の時代、ボクシングには怖い、痛い、危ないというイメージが根強くあった。その象徴が昭和40年代に大ヒットした漫画「あしたのジョー」。貧しい不良少年が拳ひとつでのし上がっていくストーリーで、実際に漫画を地でいくボクサーも多かった。飯田はそんな近寄りがたかったボクシングを、部活の延長のような身近な存在に変えた。飯田自身「パンチパーマなどのいかつい格好で相手を威嚇するのは嫌だった」という。

この頃から飽食の時代に敬遠されつつあったボクシングジムに「僕も挑戦してみよう」と若者が足を向け始めた。飯田が全日本新人王になった翌年度には、100人台だった新人王のエントリーが265人と急増。マイク・タイソンの2度(88、90年)の東京ドーム防衛戦など複合的な要素も重なり、89年に1200人だったプロボクサーは年々増加し、06年には3200人にまで膨れあがった。

もうひとつの要因が89年から現在まで続く「少年マガジン」(講談社)の人気漫画「はじめの一歩」(森川ジョージ著)。いじめられっ子の主人公がボクサーに救われ、自らボクサーとして成長していくストーリーが、平成の若者に圧倒的な支持を受けた。元WBA、IBF世界ライトフライ級王者の田口良一をはじめ、この漫画に刺激を受けてボクシングに興味を持った世界王者も多い。

彼らは根性論が主流だったジムの練習にも新風を吹き込んだ。「根性で勝つんじゃないと自分に言い聞かせてサプリメントをとったり、インナーマッスルや動体視力も鍛えた」と飯田は回想する。元WBC、WBA世界ミニマム級王者で大橋ボクシングジム会長の大橋秀行は「今は昭和の時代と練習方法も食事も180度違う。八重樫東(世界3階級制覇王者)は科学的な筋トレを取り入れて、脂を抜いた食事を心がけている」と明かす。

飯田は世界挑戦2度失敗後の97年12月、ヨックタイ・シスオー(タイ)を判定で下してついに世界王座を奪取。2度の防衛にも成功した。普通の大学生が世界王者にたどりついて気付いたことがある。「根性論が嫌いで、科学的なトレーニングを存分にやった。でも結局、ボクシングは最後はど突き合いなんです。流血しようが構わず打ち合う。行き着いた先は、ストイックで己の身を削らないと勝てない過酷なスポーツでした」。時代は移ってもボクシングの本質、世界の頂点への厳しい道のりに変わりはない。【首藤正徳】

(敬称略)

97年12月、ヨックタイ・シスオーにパンチを放つ飯田(左)

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王者田口挑戦のブドラー来日「ロマチェンコ参考」

20日にWBA・IBF世界ライトフライ級王者田口に挑戦するために来日したブドラー

 ロマチェンコ流で勝つ!? 20日に東京・大田区総合体育館でWBA・IBF世界ライトフライ級王者田口良一(31=ワタナベ)に挑戦するIBF同級6位ヘッキー・ブドラー(29=南アフリカ)が13日、来日した。

 5度の防衛に成功した元WBA世界ミニマム級スーパー王者は長距離移動でリナレス-ロマチェンコ戦をチェックできなかったことを残念がり「ロマチェンコが好き。彼の頭の動かし方などはベストで参考にしている。後で試合動画を見たい」と研究熱心な姿勢をみせた。

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挑戦者ブドラー「ロマチェンコ流」で2階級制覇狙う

20日にWBA・IBF世界ライトフライ級王者田口に挑戦するために来日したブドラー

 プロボクシングのIBF世界ライトフライ級6位、WBA世界同級7位ヘッキー・ブドラー(29=南アフリカ)が「ロマチェンコ流」で世界2階級制覇を狙う。

 20日に東京・大田区総合体育館で、WBA・IBF世界同級統一王者田口良一(31=ワタナベ)に挑戦するブドラーは13日、母国からドバイ経由で来日。「飛行機での移動で疲れはあるけれど、良い試合ができると思うよ」とリラックスした表情をみせた。

 5度の防衛に成功した元WBA世界ミニマム級スーパー王者は「田口はこの階級でベストな選手。これまでで1番厳しい試合になるだろう。田口よりもハードに戦いたい」と気合十分。長距離移動の影響で、米国時間12日に開催されたWBA世界ライト級タイトルマッチ(リナレス-ロマチェンコ戦)は動画でチェックできていないものの「ロマチェンコが好きで頭の動かし方などは今のボクサーの中でベストなので参考にしている。あとで試合もユーチューブでチェックしたい」と待ち切れない様子だ。

 昨年9月、当時のIBF世界同級王者ミラン・メリンド(フィリピン)に微妙な判定で敗れ、今回はIBF指令で指名挑戦者となったブドラー。同年12月にメリンドに勝った田口が2団体統一王者になったことで、2つのベルトに同時挑戦できるチャンスを得た。「これにチェレンジできることは光栄なことだ」とテンションを高く保っていた。

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王者田口良一が試合前最長の10Rスパーリング

東洋太平洋ミニマム級王者小浦翼(右)とのスパーリングを消化したWBA・IBF世界ライトフライ級統一王者田口

 ボクシングWBA・IBF世界ライトフライ級統一王者田口良一(31=ワタナベ)が、5月20日の防衛戦(東京・大田区総合体育館)に備え、試合前最長の10回のスパーリングを敢行した。

 2日、都内の所属ジムで東洋太平洋ミニマム級王者小浦翼(E&Jカシアス)らと計10回を消化し「ここ最近のスパーリングの中では1番、内容が良かった」と手応えを口にした。

 IBF世界同級6位の元WBA世界ミニマム級スーパー王者ヘッキー・ブドラー(29=南アフリカ)との防衛戦(WBA8度目、IBF初防衛戦)まで残り2週間強となり、ロングスパーリングは調整の折り返し地点。実力者と拳を交え左ジャブで主導権を握った展開に納得の様子。「今までの積み重ねが出てきていると思う」と、長いラウンドで思い通りに戦うことができている。日本人初となる2団体統一王座の防衛戦。順調な調整で田口がラストスパートをかける。

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田口良一「史上初のうれしさある」統一王座防衛戦

防衛戦を発表したWBA・IBF世界ライトフライ級統一王者田口(左)とIBF世界ミニマム級王者京口(撮影・中島郁夫)

 プロボクシングWBA・IBF世界ライトフライ級統一王者田口良一(31=ワタナベ)が日本人初となる2団体統一王座の防衛戦に臨む。5月20日に東京・大田区総合体育館でIBF世界同級6位の元WBA世界ミニマム級スーパー王者ヘッキー・ブドラー(29=南アフリカ)との防衛戦(WBA8度目、IBF初防衛戦)を行うと4日、発表された。都内で会見した田口は「(日本人)史上初のうれしさがある」と気持ちを高揚させた。

 IBFからの指名試合として2階級制覇を狙う元世界王者を迎え撃つ。田口は「リスクはあるが、評価も上がる。統一王者として今まで以上に注目されると思うので、何としても8度目の防衛を成功させたい」と意気込んだ。

 また同興行でIBF世界ミニマム級王者京口紘人(24=ワタナベ)も2度目の防衛戦に臨む。挑戦者は後日発表される。

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田口良一、井上に敗れてさらに成長/大橋秀行の目

田口は2団体統一王者となり笑顔を見せる(撮影・足立雅史)

<プロボクシング:WBA、IBF世界ライトフライ級王座統一戦12回戦>◇12月31日◇東京・大田区総合体育館

 WBA王者田口良一(31=ワタナベ)がIBF王者ミラン・メリンド(29=フィリピン)との世界王者対決を3-0判定で制し、2団体王座の統一に成功した。

◇ ◇

 田口は作戦通りの戦い方を見事に実践した。メリンドは八重樫を初回KOして正規王者になったように前半はすごく強い。だが後半になるとガクンとペースが落ちる傾向がある。今回、田口は序盤に強引な打ち合いを避け、左ジャブを多用して後半に勝負をかけた。それが功を奏した。その作戦を成功させたのが左ジャブ。ノーモーションから繰り出されるジャブが実に効果的で、メリンドの前進を止め、ポイントにつなげた。

 彼には個人的な思い出がある。日本ランカーだった頃、私のジムの当時高校生だった井上尚弥にスパーリングで倒された。しかし、後に日本王者になった田口は、鳴り物入りでプロ入りした井上の挑戦を受けてくれた。判定で王座を失ったが、最後まで倒れずに打ち合った。あの試合から彼のボクシングは変わった。自信がみなぎるようになった。その後、私のジムに出稽古にきて井上とスパーリングを積んだ。その強いハートと向上心が彼を別人に成長させたのだと思う。さらに長期政権を築くだろう。

 木村と五十嵐の一戦は魂のぶつかり合い。木村はサウスポーをよく研究しており、フルスイングしてもスタミナが切れなかった。リスク承知で打ち合った五十嵐もすべてを出し切った。こんな試合をすればボクシング界も盛り上がると思う。(元WBC、WBA世界ミニマム級王者)

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多田悦子が判定勝ち 王者江畑佳代子との対戦熱望

<ボクシング:WBO女子アジアパシフィック・ミニフライ級王座決定8回戦>◇10日◇東京・後楽園ホール

 日本人女子の元世界王者対決は、元WBA世界ミニマム級王者多田悦子(36=真正)が制した。

 12年にも対戦した元IBF世界ライトフライ級王者柴田直子(36=ワールド)を相手に3-0で判定勝ちした。

 初回から練習したというカウンターの左ストレートに、ボディーがよく決まった。中盤に右ストレートをもらってのけ反るなど反撃を受けたが、終盤に上下に打ち分けなどで攻勢だった。5年前は王者時代でV8成功に続いて連勝となった。多田は「久しぶりの後楽園ホールで、お客さんの顔がよく見えて、ええでんな」とおどけた。これでWBO世界ランク入りとなり、王者江畑佳代子(41=ワタナベ)に挑戦を熱望。「大先輩と対戦が決まれば、きちんと仕上げていきますので」と、視察した江畑に向かってリングから頭を下げた。

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元WBA王者宮崎亮逮捕「免停中」公務執行妨害容疑

宮崎亮容疑者

 プロボクシング元WBA世界ミニマム級王者でスポーツインストラクターの宮崎亮容疑者(29)が公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されていたことが2日、分かった。

 大阪府警布施署によると、同容疑者は1日午後6時40分ごろ、東大阪市内の通行禁止時間帯だった路上で乗用車を運転中、警官に止められた。1度停車した後に急発進し、警官の自転車に接触。車を乗り捨て逃走し、約300メートル先で取り押さえられた。警官にけがはなかった。「免停中だったので罪が重くなると思った」と供述している。アルコールなどは検出されなかった。同容疑者は12年12月に世界王座を獲得し、2度防衛後に返上。ライセンスを更新せず、引退状態だった。

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師弟で世界王者は過去に7例/ボクシングめも

比嘉(右)は、ベルトを肩にかけて具志堅会長と記念撮影(撮影・浅見桂子)

<プロボクシング:WBC世界フライ級タイトル戦12回戦>◇20日◇東京・有明コロシアム

 WBC世界フライ級1位比嘉大吾(21=白井・具志堅スポーツ)が日本初の13戦全勝全KOで世界王座を初奪取した。減量失敗で王座を剥奪された前同級王者ファン・エルナンデス(30=メキシコ)から6度のダウンを奪い、6回2分58秒、TKO勝ち。92年の平仲明信以来、25年ぶりとなる沖縄出身の世界王者が誕生した。日本記録の13回防衛を誇る元WBA世界ライトフライ級王者の師匠・具志堅用高会長(61)に世界ベルトで恩返しした。これで比嘉の通算戦績は13勝(13KO)無敗となった。

 ◆師弟で世界王者 過去、国内では4つのジムで計7例ある。00年12月、元WBA世界フライ級王者の花形進氏が会長を務める花形ジムの星野敬太郎が、WBA世界ミニマム級王座に就いたのが初めて。以後、元WBA、WBC世界ミニマム級王者の大橋秀行会長の大橋ジムが川嶋勝重、八重樫東、井上尚弥の3王者を輩出。元世界2階級制覇王者の井岡弘樹会長が井岡一翔と宮崎亮、元WBC世界スーパーバンタム級王者畑中清詞会長が田中恒成を育成した。

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過去には亀田大毅の相手、ソリスら/減量失敗メモ

亀田興(右)、亀田大(同2人目)が見守る中、計量に失敗するソリス

 はかりの上で王座を失った。ボクシングWBC世界フライ級タイトル戦(20日、有明コロシアム)の前日計量が19日、都内で行われ、同級王者ファン・エルナンデス(30=メキシコ)がリミットを200グラム上回る51キロで減量に失敗し、王者剥奪となった。1回目の計量の後は2時間の猶予を与えられるが、2時間を待たずに計量を放棄した。

 20日の同級王座奪取に挑む比嘉大吾(21=白井・具志堅)との試合は行われ、比嘉が勝てば新王者で、比嘉が敗れた場合は空位となる。

 日本人挑戦者の世界戦で王者が減量に失敗した主な例は以下の通り。

 ◆74年10月、WBA世界フライ級チャチャイ・チオノイ(タイ)-花形進(横浜協栄)戦

 ◆98年9月、WBA世界フェザー級フレディ・ノーウッド(米国)-松本好二(ヨネクラ)戦

 ◆04年7月、WBA世界ミニマム級ノエル・アランブレット(ベネズエラ)-新井田豊(横浜光)戦

 ◆13年1月、WBA、IBF世界スーパーフライ級王座統一戦リボリオ・ソリス(ベネズエラ)-亀田大毅(亀田)戦

 ◆17年4月、WBO世界バンタム級マーロン・タパレス(フィリピン)-大森将平(ウェズ)戦

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田中恒成最速&最年少2階級制覇、日本人統一戦視野

3回、フエンテス(右)に左フックを見舞う田中(撮影・前岡正明)

<ボクシング:WBO世界ライトフライ級王座決定戦12回戦>◇12月31日◇岐阜メモリアルセンター

 前WBO世界ミニマム級王者田中恒成(21=畑中)が完勝で2階級制覇した。同ライトフライ級1位モイセス・フエンテス(メキシコ)と王座決定戦で対戦。5回に右ストレートを起点に連打を繰り出し、5回1分52秒TKO勝利。井上尚弥と並び日本人最速となる8戦目、さらに井上の21歳8カ月を抜き21歳6カ月の国内最年少で2階級制覇を達成した。17年は同じ階級のIBF王者八重樫東、WBA王者田口良一との夢の統一戦実現を目指す。

 誰が見ても力の差は歴然だった。田中が5回に右ストレートでロープまで詰め寄ると、一気に連打。フットワーク、スピード、パワーの全てで圧倒。「(相手の)心を折ろうかなと思った。自分の意思で倒れるようにした」とフエンテスをリングに沈めた。国内最速、最年少の2階級制覇をつかんだ。

 序盤から田中のスピードにフエンテスがついてこられなかった。パンチは確実に顔に当たった。しかし、なかなか倒れない。4回終了時に「顔をどんだけ打っても倒れんです」と口にした。畑中会長は「サイドに回って腹を打て」とアドバイス。足を使い、回り込んで攻撃を繰り出し、5回のTKO劇につなげた。

 1年で培った自信が爆発した。階級を1つ上げた昨年5月の試合で右拳を痛めた。約4カ月間、練習を控えるしかなかった。しかし、ケガは決してムダではなかった。「病院の先生に教わることも多かった。例えば拳のケア。一番打撲とかが多い箇所なのに、今までケアはあんまりしていなかった」。完治後は東京、大阪に武者修行に出た。

 日本ランカーとのスパーリングは2カ月間で100回を数えた。大阪には後輩の運転で片道約2時間半の日帰り遠征。名古屋に戻ったのは日付が変わるころだった。最大の敵だった減量も初防衛戦の反省を生かした。カロリー計算し、体脂肪率を極限まで落とした。昨年3月末から1人暮らしを開始。減量食の差し入れなど周囲のサポートで過去最高の仕上がりだった。

 畑中会長は「まずはWBOの防衛。近い将来にビッグマッチを狙っています。挑みます」と、次戦は早ければ4月に防衛戦を行う予定。

 さらには日本人王者の八重樫らとの夢の統一戦を描いている。田中は「2017年に実現しなかったとしてもチャレンジすることはしたい。楽しみにしておいてほしい」と宣言。日本人初の5階級制覇を掲げる「中京の怪物」の快進撃は、まだ止まらない。【宮崎えり子】

 田中の父でトレーナーの斉さんのコメント 1回の入り方に注目したが、硬かった。技術的には40点だが、自分が有利と分かったときの攻めは80点ぐらいだ。

 飯田覚士氏(元WBA世界スーパーフライ級王者)のコメント 圧倒的なうまさと強さを見せての勝ち方だった。パワーが予想以上だった。3階級制覇、さらに上の可能性を感じさせた。

 星野敬太郎氏(元WBA世界ミニマム級王者)のコメント 田中はスピードがあった。右ストレートや右フックを警戒できており、対策が練られていた。この強さなら5階級制覇も夢ではない。

 ◆田中恒成(たなか・こうせい)1995年(平7)6月15日、岐阜・多治見市生まれ。中京高(岐阜)では国体2連覇など4冠。13年プロデビュー。15年5月に5戦目でWBO世界ミニマム級王座獲得、日本人最速で世界王者に。中京大経済学部在学中。164センチの右ボクサーファイター。

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王者で引退長谷川穂積、今後は実業家や指導者模索

引退会見で3本のチャンピオンベルトを前に、すっきりとした表情を見せる長谷川(撮影・清水貴仁)

 ボクシングのWBC世界スーパーバンタム級王者長谷川穂積(35=真正)が9日、神戸市内で現役引退を表明した。世界王者のまま引退するのは国内では初めて。9月に5年5カ月ぶりに世界王座に返り咲き、現役を続ける考えもあったが、希望していた王者のままリングを去ることを決断した。今後は実業家や指導者への道を模索する。勇敢な打ち合いで魅了したレジェンドが、プロ17年間の現役生活に終止符を打った。

 多くの修羅場を乗り越えてきた長谷川の顔は、晴れやかだった。

 「私、長谷川穂積は9月16日の試合を最後に引退することを決めました。自分自身に対して、もうこれ以上証明するものがなくなったのが1つ。もう1つは、前回以上に気持ちを作るのが非常に難しくなった」。引退を決断した理由も、詰まることなく滑らかに口にした。

 迷い、悩んだ末に、望んでいた結論に達した。9月の世界戦で5年5カ月ぶりに王座に返り咲いた。試合45日前に左手親指を脱臼骨折していたが、その拳で打ち合いを制した。真骨頂の勇敢な姿で健在ぶりを見せ、現役を続ける気持ちも芽生えていた。「やろうかな、もういいかなとずっと考えていた」。だが、11月になって対戦を夢見ていた5階級王者ドネアが敗北。体を心配する関係者から強い説得も受け、同中旬にグローブを置く決意を固めた。

 美学を貫いた。5度防衛後に死去した大場政夫、王座返上の約1年後に引退届を出した徳山昌守らはいるが、王者のまま引退するのは国内では初めて。「ボロボロになってやめるのも1つだけど、多少の余力を残してやめるのも1つのやめ方。今が一番美しい。前回で自分が強いか、強くないかの結論が出た。ご飯と一緒でおなかいっぱいだとおいしさが分からない。腹八分目くらいがちょうどいい」。最高の引き際に笑みも浮かべた。

 2度の王座陥落、10年10月には最愛の母裕美子さんの死去もあった。挫折や悲しみを、不屈の魂で克服。抜群のスピードと攻防一体のスタイルで日本中を沸かせてきたサウスポーは、かけがえのない経験をもとに新たな道を歩み出す。神戸市内でタイ料理店の経営に携わるなど現在も実業家としての一面を持つが、指導者としても期待がかかる。

 「ボクシングは人生のすべて。これからも何かできることをしていきたい。長谷川穂積はいつまでも長谷川穂積なので。また、新しいステージでチャンピオンになれるように頑張りたい」。第2の人生へ、始まりのゴングを聞いた長谷川は目を輝かせた。【木村有三】

 ◆世界3階級制覇 日本人では亀田興毅、井岡一翔、八重樫東、長谷川穂積の4人。国内ジム所属としてはベネズエラ人のホルへ・リナレス(帝拳)も含め5人。

 ◆世界王者のまま引退 国内ジム所属では長谷川が初。世界戦勝利を最後にリングを去ったのは、WBA世界フライ級王座を5度防衛中だった73年1月に交通事故で死去した大場政夫(享年23)、06年2月の防衛戦勝利後にWBC世界スーパーフライ級王座を返上、07年に引退した徳山昌守がいる。新井田豊は01年8月のWBA世界ミニマム級王座獲得後に引退表明も、02年12月に現役復帰。同王座を再び獲得したが、08年ローマン・ゴンサレスに敗れ引退。

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鬼門タイで世界戦の小野心、パクチー食って王者食う

気合の表情を見せる小野

 パクチーで苦い思い出を!? WBA世界ミニマム級タイトル戦(14日、タイ)に挑む同級14位小野心(33=ワタナベ)が7日、都内のジムで練習を公開した。世界戦で日本人が通算20敗1分けの鬼門タイ。「リトル・パッキャオ」と称される王者ノックアウト・CPフレッシュマート(26)の地元戦の対策を聞かれ、「苦手だったパクチーを食べてます。タイ人に勝つという、ちょっとジョークが入ってますが…」と照れ気味に口を開いた。

 香りが独特なタイ料理の基本食材。4月の現地での試合時には、辛いもの、パクチー抜きをリクエストしたほどだった。ただ、その苦手の克服が、精神的なタイ対策になると思った。冗談半分でも、人生をかけた大一番にできることは何でもやる。「もう普通に食べられます」。ビタミン豊富な香草は、体にも好影響を与えるはずだ。

 14年5月にIBF世界ミニマム級王者高山勝成に挑み、0-3の判定負けした。2度目の世界戦。技巧派サウスポーは「まだ言えませんが」と秘策も練る。16年の「今年の一皿」にも選ばれたパクチー料理。ブームの流れにあやかり、試合も勝ち馬に乗り、相手に「苦」杯をなめさせてみせる。【阿部健吾】

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小野心12月タイで“リトル・パッキャオ”と世界戦

2度目の世界戦への意気込みを語った小野

 ボクシングのワタナベジムは12日、元東洋太平洋ライトフライ級王者小野心(33)が12月14日にタイでWBA世界ミニマム級王座戦に挑戦すると発表した。

 王者ノックアウト・CPフレッシュマート(26)は13戦13勝(6KO)の成績を誇り、風貌から「リトル・パッキャオ」と称される。相手の地元タイでの一戦に、「リングが滑ったり、まともじゃないと聞いている」と覚悟。高山勝成に敗れた14年5月のIBF同級王座戦以来の世界戦を前に、「タイで勝つのは難しいが、やってみたい」と意欲をみせた。12月13日に後楽園ホールで行う、WBA女子ライトミニマム級王者古川夢乃歌(22)の初防衛戦と、宮尾綾香(33)がWBO女子アトム級王者に挑戦するダブル世界戦も発表された。

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田口良一の8月V4戦相手は宮崎亮が決定的

 ボクシングのWBA世界ライトフライ級王者田口良一(29=ワタナベ)が8月末に予定される4度目の防衛戦で、同級1位で元WBA世界ミニマム級王者の宮崎亮(27=井岡)と対戦することが決定的となった。

 WBAが対戦を指令したことを受け9日、渡辺均会長が「ほぼ合意している。近日中には発表できる」と話した。試合は同門のWBA世界スーパーフライ級王者河野公平(35)のV4戦と合わせたダブル世界戦になる見込み。

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河野公平「望むところ」暫定王者との対戦指令に意欲

ジムワークを再開したWBA世界スーパーフライ級王者河野(左)と同ライトフライ級王者田口(撮影・奥山将志)

 4月27日にそれぞれ3度目の防衛に成功したWBA世界スーパーフライ級王者河野公平(35)、同ライトフライ級王者田口良一(29=ともにワタナベ)が20日、都内の所属ジムで本格的な練習を再開した。

 河野は、この日、WBAから同級暫定王者ルイス・コンセプシオン(パナマ)との王座統一戦に向けた交渉を行うよう指令を受けた。V3戦の2日後からロードワークを再開するなど、すでに気持ちは次戦に向いており、「試合を見たことがあるが、力強く一発があるタイプ。かみ合うと思うし、指名は望むところ。出入りのボクシングを強化していきたい」と闘志を燃やした。

 田口は、約3週間の休養中に大阪で食べ歩きをするなど気分転換。約1時間半の練習では、ミットやサンドバッグ打ちなどで軽快な動きを披露した。同じ階級には、元WBA世界ミニマム級王者宮崎亮、元WBO世界ミニマム級王者田中恒成らが世界ランクに名を連ね、挑戦のチャンスを待っている。V4戦については「日本人との対戦になれば盛り上がるし、誰と戦っても勝つ自信はある。田口の試合だから見に行こうと思ってもらえる試合をしていきたい。パワーアップをテーマに練習していきたい」と話した。

 陣営の渡辺均会長は「2人とも次戦は8月末ごろを計画している」とダブル世界戦となる意向を示した。

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