<プロボクシング:WBO世界スーパーフライ級王座決定戦12回戦>◇20日(日本時間21日)◇米ネバダ州ラスベガス・MGMグランド・ガーデンアリーナ◇観衆1万4436人
WBO世界スーパーフライ級1位の中谷潤人(25=M・T)が、米ラスベガスで鮮烈なKO劇をみせ、世界2階級制覇に成功した。同級2位アンドルー・モロニー(32=オーストラリア)との王座決定戦に臨み、12回2分42秒にKOで仕留めた。2回、11回、12回と3度ダウンを奪取し、最後は強烈な左フックで相手を失神寸前に追い込んだ。WBOフライ級王座に続く王座獲得で、日本ジム所属17人目の2階級制覇となった。日本人初となる「聖地」で世界王座を獲得し、将来的に王座統一戦を熱望した。
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「聖地」のボクシングファンに強烈なインパクトを残した。2回にアッパー連打、11回にも左ストレートでダウンを奪った中谷が最終12回、印象的なKOシーンを演出した。「ずっと練習してきたパンチでスムーズに出た」という一瞬かがみ、低い体勢からカウンター気味に出した左フックで3度目のダウンを奪取。モロニーを失神寸前でキャンバスに沈めるトドメの一撃となった。
会場の画面にフィニッシュシーンが流れる度にどよめきが起こった。2回に右まぶたなどを切ったモロニーに対し、中谷も偶然のバッティングで左みけん付近をカット。「流血戦」となったが、常に試合を掌握した。「8、9回ぐらいから相手が疲労して覇気がなかった。良い舞台で倒せたので高い点数をあげてもいいかな」と満足げだ。
ラスベガスで日本人選手が防衛した世界戦勝利はあるが、世界王座奪取は初めて。中学卒業後、単身で米修行してきた中谷にとってあこがれの舞台でもある。「良い緊張感で楽しめました。良いパンチを当てると歓声もすごくて気持ち良かった」と達成感いっぱいの表情を浮かべた。
減量苦のため、昨年11月にスーパーフライ級に転向した。WBOから当時の王者井岡一翔(志成)との対戦指令が出されたが、井岡が昨年大みそかにドロー決着となったWBA王者ジョシュア・フランコ(米国)との即再戦を優先させて王座返上。再びWBOから対戦指令を受けた元WBA王者モロニーに中谷は圧勝し、同階級への手応えをつかんだ。
米国では前4団体統一バンタム級王者井上尚弥(大橋)に続く“ネクスト・モンスター”と表現される。「統一戦をやりたい気持ちが強い。世界王者なら誰でも。また強い中谷潤人をみせていきたい」と中谷。同階級には世界的知名度のある選手が多いだけに、フライ級時代に実現できなかった王座統一の野望を掲げた。【藤中栄二】
◆日本人のラスベガス世界戦勝利 WBC世界スーパーバンタム級王者西岡利晃が11年10月、ラファエル・マルケス(メキシコ)に判定勝利したのが初めて。WBO世界バンタム級王者亀田和毅が14年7月、プンルアン・ソーシンユー(タイ)に7回KO勝ち。WBAスーパー、IBF世界同級王者井上尚弥は20年10月にジェーソン・モロニー(オーストラリア)を7回KO、21年6月にマイケル・ダスマリナス(フィリピン)を3回KO撃破し、聖地で2連勝。中谷は4人目で、世界王座獲得は初めて。

- 世界2階級制覇に成功した中谷潤人(AP)

- 世界2階級制覇に成功した中谷潤人(左)(AP)

- 世界2階級制覇に成功した中谷潤人(AP)