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ランキング

富山県出身の朝乃山と横綱太刀山…どちらも温厚

優勝を決め関係者に拍手され鯛を持つ朝乃山、前列右は高砂親方(撮影・鈴木正人)

103年前、富山県出身力士で最後に優勝を果たした第22代横綱の太刀山(1941年、63歳没)は明治初期から大正初めまで「無敵の名をほしいままにしてきた」と、相撲博物館の資料に残されている。立ち合いから2発以内に土俵外へ持っていく猛烈な突っ張りは「四十五日」(1突き半=1月半)と表された。

圧倒的な実力を誇る一方で朝乃山と同様、温厚な性格だった。趣味は富士山を描くこと。好きなお酒は大正時代につくられていた「サクラビール」で、桜が日本の国花として武士道精神を表していると聞き、たしなむようになったという。

朝乃山にとっても縁のある名横綱だ。小4から2年間、太刀山の寄付で建てられた太刀山道場に通った。朝乃山の母校、呉羽小には廊下に、呉羽中では体育館内に優勝額が飾られるなど、地元の英雄的存在。初優勝を果たした25歳のニューヒーローは「優勝して飾ることになったらわくわくする」と、まんざらでもなさそうに話した。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

横綱DNA持つ琴鎌谷、重圧から逃げず新十両に前進

支度部屋へ引き揚げる琴鎌谷(撮影・河田真司)

横綱のDNAを持つ逸材が、新十両へ前進した。東幕下2枚目琴鎌谷(21=佐渡ケ嶽)が7番相撲で勝ち越しを決めて4勝3敗。3連勝から3連敗したが「師匠に『十両とか考えずラクにいけ』と言われて吹っ切れた」。父は師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)で、母方の祖父は元横綱琴桜。3代にわたって関取の座をつかむ勢いだ。

「先代は雲の上の存在だと思っている」と、偉大な祖父に敬意を払う。5歳から相撲を始めたが、小4で祖父が亡くなると、意識が一変。師匠は「先代が亡くなった直後に『埼玉栄中にいきたい』って言い出したんだよな」と明かす。親元を離れて、高校相撲の名門、埼玉栄高の付属中学への進学を決意。小5から自発的に地元のサッカークラブに入り、将来の角界入りに向けて下半身を強化した。

血筋を重圧に感じることもあった。中学、高校、入門当時と常に注目を浴びる日々。「勝つたびに周囲から言われて気にすることもあった。今は、他の人にはできない経験だと思えている。自分の実力で、自分を押し上げたい」。将来的な目標は、師匠と先代の番付に追いつくこと。道半ばだが、1歩前進した。【佐藤礼征】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

琴鎌谷(左)は押し出しで美ノ海を下す(撮影・小沢裕)

木村翔がホーム中国で2階級制覇ならず/世界戦詳細

<プロボクシング:WBA世界ライトフライ級級王座戦12回戦>◇26日◇中国江西省撫州市

ボクシングWBA世界ライトフライ級2位木村翔(30=青木)が中国・撫州市で同級王者カニサレス(ベネズエラ)に挑戦し判定負けを喫した。

◆WBA世界ライトフライ級王座戦12回戦

カニサレス3ー0
判 定
木村翔

木村翔「情けない試合をしてしまった。もっと(相手の)懐に入れると思ったが、入らせてくれないうまさがあった。追い込めたと思ったがカニサレスが止まらなかった。(階級を下げたが)体調はよかったと思うし言い訳にならない。力不足。」

【12回】運命の最終ラウンド。木村が積極的に手を出す。カニサレスが負けじと連打。カニサレスは足を使い的を絞らせない。木村はひたすら距離を詰めて手を出していく。木村のラッシュ。お互い決死の打ち合い。カニサレスは両手を挙げアピール

【11回】木村の強烈な左。カニサレスも右で応酬。お互いの頭が激突。試合再開。木村が連打。木村の右。お互い打ち合う。カニサレスが木村をコーナーに追い詰める

【10回】仕留めたい木村と試合巧者のカニサレス。木村は接近戦に変わらず接近戦に持ち込む。木村のラッシュ。木村が右目あたりから出血。木村の右ボディー。お互い激しく打ち合う

【9回】木村のスタミナは相変わらず落ちる気配なし。カニサレスの強烈な右。負けじと木村も左を返す。お互い激しいパンチの交換。木村がワン、ツー。木村の手数は落ちない

【8回】序盤からお互い激しく打ち合う。木村の右ボディー。お互い一歩も引かない展開に。カニサレスの連打。負けじと木村の左ボディー。お互いの手数は減らず

【7回】足を使うカニサレスに木村は接近戦を徹底。木村が左。木村が連打でカニサレスをコーナーに追い詰める。木村が持ち前の粘りを発揮

【6回】木村は変わらず接近戦。木村のワン、ツー。木村のスタミナは衰えない。カニサレスも負けじと返していく。木村がローブロー。審判が試合を止める。試合再開。木村が距離を詰めラッシュ。お互い激しく打ち合う

【5回】木村の手数が序盤よりも増えてきた。カニサレスは足でいなしきれず。木村の右アッパー。木村は接近戦に持ち込み上下に打ち分ける。カニサレスの右

【4回】カニサレスは足を使う。木村は詰めて逃がさない。カニサレス連打。木村の右。お互い激しいパンチの交換。木村は接近戦に持ち込む

【3回】木村が距離を詰めワン、ツー、スリー。木村は的確にパンチを当てていく。カニサレスも返していくが木村の守備が堅い。木村がコーナーに追い詰める。お互い激しく打ち合う

【2回】木村が前へ出る。お互い細かいパンチの交換。木村がワン、ツー。木村は積極的に左ボディーを狙っていく。木村は王者の連打にもひるまず

【1回】木村は積極的に距離を詰めていく。木村の左。カニサレスも負けじと返していく。カニサレスの連打に木村は上手く対応。木村の右ボディー。カニサレスは足を使い的を絞らせない

トランプ大統領の千秋楽観戦備え気をもむ角界関係者

満員御礼となった両国国技館

千秋楽にトランプ米大統領が観戦に訪れるため、角界関係者が気をもんでいる。

相撲愛好会の1つ、溜会(たまりかい)は夏場所中日に会議を開き、「千秋楽は臨時で誰かに座らせることは遠慮しよう」と決めた。溜会は、升席よりも土俵に近い溜まり席を保持する維持員の集まり。日本相撲協会に維持費(東京の場合6年に1度、390万円以上)を払い、理事会の審査で認められないと資格を得られない。住所、氏名などを登録済みのため協会からの信頼も厚く、木村本治会長は千秋楽の観戦について「溜まりはOKと言われました」と話した。今回は混乱を避けるため、代理観戦NGを申し合わせた。

大統領の座席を確保するため、日本相撲協会は千秋楽の正面升席をすべて確保し、トランプ側の警備体制決定を待っている。向正面の升席を購入した、ある好角家は「1カ月くらい前かな、書類を渡されて、住所、氏名、生年月日を記入するように言われた。詳しい事情は教えてくれない。向正面なのに…」と明かす。ある協会関係者は「すでに協会が独自に判断できるレベルを超えている」と声をひそめ、備えている。(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

ビデオ判定導入50年 きっかけとなった一番とは

69年3月10日、45連勝中の横綱大鵬は戸田に敗れて連勝が止まった。しかし戸田の足が先に出ていたのがビデオで確認されて、勝負判定にビデオを参考にするきっかけとなった

大相撲にビデオ判定が導入されてから、夏場所で50年になる。

導入のきっかけとなった一番は、1969年(昭44)春場所2日目の大鵬-戸田戦。戸田が大鵬を押し出したが、その直前に戸田の右足が土俵外に出ていた。行司は大鵬の勝ちとしたが、物言いが付き、行司軍配差し違えで戸田の勝ちとなった。横綱大鵬の連勝は「45」で止まった。

しかし、ニュース番組の映像や新聞の写真がきっかけで誤審が判明。日本相撲協会に抗議電話が殺到する騒動になった。すでに協会はビデオ判定の準備を進めていた模様で、5月の夏場所から正式導入された。

あの取組後、大鵬は不満を言わず「ああいう相撲を取ったのが悪かったよ。別に審判部に抗議しようなんて気持ちはない。いつまでもクヨクヨしたってしょうがない」と証言している。

大鵬部屋で育った大嶽親方(元十両大竜)は言う。「なかなか言えることじゃない。大鵬親方らしい。格好いいですよね」。勝負判定は正確であって欲しい。一方で、大相撲の力士は、勝つことだけが仕事ではない。その生きざまを、好角家は見ている。【佐々木一郎】

199場所目の「昭和の男」華吹、現役を続けるワケ

松ケ島(手前)を上手投げで破る華吹(撮影・河田真司)

現役唯一の昭和入門、史上最多199場所目を迎えた西序ノ口4枚目華吹(はなかぜ、48=立浪)が、3つ目の元号となる令和の土俵に上がった。年齢が3分の1の16歳松ケ島に、土俵際まで押し込まれたが上手投げで逆転。先場所は7戦全敗で2場所ぶりの白星を挙げた。それでも取組後は表情を変えず、新元号を迎えた心境も「何もありません」。どんなに質問されても「すみません。しゃべらないようにしているので」と、昭和の力士らしく口数は少なかった。

中学を卒業する86年(昭61)3月春場所で初土俵を踏んだ。同期の巌雄は前頭筆頭まで出世して19年前に引退後、現在は山響親方として日本相撲協会の理事を務める。一方の華吹は最高位三段目で、通算641勝719敗13休。序ノ口で取るのは88年(昭63)7月の名古屋場所以来、31年ぶりだった。33年以上相撲を取っているが、場所ごとの手当以外、プロとしての正規の収入はゼロだ。

それでも現役を続ける理由は何か? 華吹より1年遅れて入門、現在は師匠となった立浪親方(元小結旭豊)は「文化や伝統を継承してほしい思いも記録へのこだわりもあるのかもしれない。この年齢まで、すごいこと」と代弁。2月に亡くなった双羽黒が横綱昇進前に入門した生き字引は、令和でも勝ち越しを目指している。【高田文太】

通算在位10傑

幕内初の「送り掛け」決まり手係も必要なプロの判断

大相撲夏場所9日目 照強は送り掛けで千代丸を下す(2019年5月20日撮影)

快挙の裏で、動揺も走っていた。9日目に照強が決めた「送り掛け」。01年初場所で決まり手として導入されて以降、十両以上では初めて飛び出した。

場内アナウンスを担当する行司は取組直後、「後ろに回り込んだから『送りなんとか』なのは間違いないんだけど…」と決まり手を決めかねていた。その時、幕内の決まり手係を務めていた甲山親方(元前頭大碇)から内線がかかってきた。「送り倒しでよろしく」。しかし、2番後に「送り掛け」と訂正。同親方はスロー映像を確認して、思い直した。「僕の完全な勘違いでした。その後、柔軟に対応できたのは良かったですけどね」。決まり手は、力士が勝ち名乗りを受け、土俵を下りた時に発表する。瞬時の判断が求められる。

甲山親方は決まり手係を務めて12年。幕内担当に就いて丸8年となる。約1時間30分、審判部内のビデオ室に1人で閉じこもり、4つの角度から映し出したスクリーンを凝視。協会が定める82手の決まり手が集約された本を、目の前に置いているが「全て頭に入っている」。1度は間違えたものの、プロフェッショナルを垣間見た。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲夏場所9日目、照強(左)は送り掛けで千代丸を下す(2019年5月20日撮影)

胸痛む黒ネクタイ取材…故人の人柄にじむ数々の言葉

4月30日に亡くなった大相撲の元特等床山、床寿の日向端隆寿さんの祭壇(2019年5月5日撮影)

黒ネクタイ着用の取材が続いた。4月中旬から先日まで、鬼籍に入られた4人の通夜、葬儀の取材は23日間で8日にも及んだ。元十両彩豪さんに始まり、シドニーオリンピック(五輪)時に取材した陸上指導者の小出義雄さん、黒姫山さん、先日は特等床山だった床寿さん。2月には元前頭の時津洋さんの葬儀にも足を運んだ。

当然、気は重い。ただ語弊があるのは承知の上で言えば、ゆかりのある人の話を聞いたり、以前に関係者を通じて見聞きしたその人を振り返ることで、あらためて故人の人柄をしのぶ機会だとも思った。

直近の床寿さんで言えば、5日の通夜で焼香に訪れた元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏の言葉だ。大銀杏(おおいちょう)を結われている時のことだろう。「『横綱には、この顔の上に5つの角がある』と言われました。自分もずいぶんヤンチャだった。『その角が、あと2本しか残ってない』と言うんです。『そろそろ引退が来るぞ』と」。闘牛の2本の角が、気性の激しい朝青龍には一人横綱を張って近寄り難い雰囲気の時には、さらに3本加わって5本はあったということだろう。それが人間、よわいを重ねると性格も角が取れ、丸みを帯び、弱ってくると角も取れ、普通の闘牛のように2本しか残らなくなったと床寿さんはたとえた。昔の人は、含蓄のある言葉を使ったものだ。あの朝青龍を手のひらで、うまく転がしたことだろう。

黒姫山さんで思い出すのは本人でなく、元大関貴ノ花の当時藤島親方(故人)の言葉だ。若貴はじめ気性の激しい、そうそうたる関取を輩出していた90年代前半に聞いた言葉だ。その藤島親方が雑談の中で、ふと現役時代を思い出して話してくれた。「昔ね、取組を終えて花道を引き揚げる時に、お客さんから『何だ、貴ノ花でもあんな相撲を取るのか』と投げかけられた言葉が忘れなくてね。それ以来、私は立ち合いで変化するまい、と誓ったんです。黒姫山さんとの一番でした」。猪突(ちょとつ)猛進のぶちかましの立ち合いで、花形蒸気機関車(SL)の「D51」から「デゴイチ」の異名を取った黒姫山さん。百数キロの細身の体で、どんな相手でも真っ向勝負が身上だった貴ノ花の後悔の念は、黒姫山さんのすごみを裏付ける言葉でもあった。

4月6日に43歳の若さで死去した彩豪さんの通夜には「えっ、何でこんな人たちが」と驚くほど、一門の枠を越えたそうそうたる親方衆が焼香に訪れた。協会を離れても相撲の普及に汗を流していた彩豪さんは、全国の小学校や相撲クラブにある土俵の改修を含め、100個の土俵を作るプロジェクトを今年に入って着手。2月の第1号に続き、さあ2番目の土俵を、と希望に胸ふくらませていた矢先の訃報だったことは、涙にくれる後継者の方から聞いた。本来はお祝い唄だからと一度は拒んだ、ある呼び出しさんは、遺族や関係者の熱意にほだされて、終生の功績をたたえる「彩豪一代」の相撲甚句を作った。きっと天国で聞いているはずだ。

「花の咲かない寒い日は 下へ下へと根を伸ばせ やがて大きな花が咲く」。苦しい時、女子マラソンの高橋尚子さんが座右の銘としていた言葉は、小出さんが大好きだった七五調の韻律だったと記憶している。関取の座を目指しつつ、なかなか芽が出ない若い衆にも胸に刻んでもらいたい言葉だ。時津洋さんは協会を離れ都内や海外に、ちゃんこ店を開いたが、店の経営や仕入れ方法などのノウハウを、後に現役を引退し店を開いた「商売敵」の後輩力士に胸襟を開いて教えていたという。これは参列者から聞いた話だ。

黒ネクタイ着用の取材は、なるべくなら避けたい。ただ、忍び寄る老いや運命は、誰も避けられない。還暦を2年後に控えた自分にも、見送られる側になる日が確実に近づいているのも現実。ふと故人を思い返し「あんな人だったな」としのぶことが、何よりの供養だと勝手に思っている。【渡辺佳彦】

関係者によって出棺される墨谷さんの棺

久保隼2年ぶり世界挑戦はTKO負け/世界戦詳細

<プロボクシング:WBA世界フェザー級王座戦12回戦>◇26日◇中国江西省撫州市

ボクシングWBA世界フェザー級10位久保隼(29=真正)が中国・撫州市で同級王者徐燦(中国)に挑戦し6回TKO負けを喫した。

◆WBA世界フェザー級王座戦12回戦

徐燦6 回
TKO
久保隼

久保隼「思ったよりパンチはなかったが、今までで一番のダメージ。やっぱりフェザー級だなと思った。自分のパンチでは止まらない。(手術した)目のことは関係ない。今回の試合に向けた期間が濃かったので、また自分が同じように頑張れるのか今すぐ答えられない。」

【6回】徐燦がパンチをまとめ久保を仕留めにいく。久保は何とか足を使う。徐燦の左。徐燦がラッシュ。久保がふらつく。審判が止めに入る。久保が無念の6回TKO負け

【5回】このラウンドも徐燦が距離を詰め久保隼を逃がさない。徐燦が強烈ワン、ツー。久保も負けじと返していく。激しいパンチの交換。徐燦が試合を決めにくる。久保隼は防戦一方。徐燦の左で久保隼がダウン。久保は試合続行の意志。徐燦が強烈なラッシュ。久保隼はふらつく

【4回】お互いラウンド序盤から打ち合う。徐燦がワン、ツー。徐燦の右ストレート。徐燦は距離を詰めパンチをまとめる。徐燦の左ボディー。徐燦が試合を優位に進める

【3回】足を使う久保隼に徐燦は距離を詰めていく。久保隼の左。徐燦が負けじと連打。お互い激しいパンチの交換。久保隼は徐燦の左ボディーを上手くケア

【2回】久保が積極的に手を出していく。距離を詰め徐燦に足を使わせない。徐燦の左ボディー。久保は足を使う。お互い打ち合う。徐燦の右ボディー

【1回】久保は積極的に距離を詰めていく。久保が細かいパンチで組み立てを図る。久保の左。徐燦は足を使う。徐燦の右。久保の左ボディー。徐燦も負けじとパンチを返していく

北勝富士の話術は横綱級?つい引き込まれるトーク力

トークショーで歓声に手を振って応える大相撲の北勝富士(2019年3月1日撮影)

無口が美徳とされる角界だから、相撲中継のインタビューなどは正直おもしろくない。だが、普段の会話は別で、いろんな意味でトークがさえる力士はいる。

白鵬、鶴竜の両横綱は、さすがだ。白鵬の探求心は半端じゃない。初場所の朝稽古取材ではチベット仏教の「チャクラ」などに話題が及んだ。「人類の起源に興味があるんだよね」と、話がどんどんオカルト=神秘主義に偏ったりする。42回も優勝しとったら、常識、既成概念では満足できんのかもしれん。

鶴竜は日本語が抜群にうまい。発音、滑舌、リズム、豊富な語彙(ごい)。話題もサッカー、NBA、NFL、UFC…ととどまるところがなく「何でそんなに知ってんの?」と驚く。「日本人以上に日本語のうまい力士」と思う。

時の人の貴景勝、平幕の阿炎らのオフレコトークは切れ味抜群(オフレコなんが痛いけど)やし、御嶽海は間の取り方が上手やし…。そうこう書いている内に思ったけど、相撲のうまい人は話もうまいかもしれませんな。

最近のイチオシは、北勝富士だ。基本的にしゃべり好きなんやろうが、話し出したら止まらん。その内容も感心させたり、笑いを誘ったりと多種多様なのだ。

新三役での春場所初日、白鵬戦でもあり、朝稽古を取材した。全体の稽古を終え、座敷でストレッチポールの上で背筋を伸ばしながら、いきなり切り出した。

「…う、う~ん…俺“劇団四季力士”でいこうと思うんですけど」

は?

「舞台なんか全然興味なかったんだけど、知り合いに“チケットあるから行かない?”って誘われて渋々行ったら…。やっぱり生ってすごいんですよ。もうめっちゃ感動しちゃって」

ライオンキングを2回見た。リトルマーメイド、アラジン、ノートルダムの鐘も見た。

「大阪でも場所前に行きたかったんですよ。でも、チケット取れなくて」

生のすごさに引かれて、ジャンルは全然違うが、吉本新喜劇も2度、見に行ったらしい。

…と、まあ、こんな感じで唐突にネタを切り出してくる。その話しぶり、リズム、内容がとにかく楽しくて、ついつい聞き入ってしまうのだ。

土俵外の話題だけでなく、北勝富士は土俵の話も楽しい。8敗で負け越しが決まった翌日の春場所12日目。錦木に勝った。鮮やかな踏み込み、押し込みで腰の重さに定評のある男を押し出した。

直後の支度部屋。また自分から切り出した。

「遅いんですよね~。いっつもそうなんだよな~俺。結局、気持ちが楽になったら、こういう相撲が取れる。おこちゃまッス。今朝は5時半から6時の間に腹痛くなって、起きなかったもん。初日から毎日起きてたのに」

確かに取材が楽、というのもある。ほとんど勝手に話して、ネタを提供してくれるのだから。だが、しかし、こういうお相撲さんが強くなると、楽しい。新たなキャラクターやないですか。横綱、大関との上位戦や、話題の力士の印象を語るとか。土俵の話題が増えるでしょ?

だから、もっと頑張れ北勝富士です。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

春場所12日目に錦木(左)を押し出しで下す北勝富士(2019年3月21日撮影)