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外国出身力士の人数制限、門戸拡大にかじ切っても…

日本記者クラブで会見した栃ノ心(2018年2月14日撮影)


 初場所で初優勝を平幕で飾り祝福ムードに包まれる栃ノ心(30=春日野)。2月は巡業がないだけに、各種イベントに引っ張りだこ。もちろん稽古も欠かさないから忙しいこと、この上ない。それも優勝力士しか味わえない“特権”。嫌な顔一つ見せず取材やインタビューに応じている。

 そんな栃ノ心が少しばかり、もどかしそうに話したことがある。それはある意味、角界の懸案事項ともいえることだと感じた。

 2月14日、日本記者クラブで開かれた記者会見。スポーツ界に限らず、旬の人を招き広くメディアを通じて、人となりを発信していく場だ。その質疑応答で、開催中の平昌(ピョンチャン)五輪での選手の活躍について聞かれた時だ。自分が小さい時からサンボや柔道で汗を流したことに触れ、オリンピアンには「国のためにも自分のためにも頑張ってほしい」と話し、さらに続けた。

 栃ノ心 私の国には、相撲ではないけど柔道、サンボで体の大きい人はいっぱいいる。その中には、相撲界に入りたいという人もいるけど、協会の決まりで1部屋に外国人は1人しか入れない。今の状態は、ほとんどの部屋に(外国人力士が)入っている。だから(今の状態では入りたくても)入れないのかな。

 栃ノ心によれば3年ほど前に、母国ジョージアから角界入りを志願し2人が来日し、2カ月ほど滞在したが夢かなわず、やむなく帰国したという。

 栃ノ心 今も相撲界に入りたいという人がいる。でも、なかなか入れない。入っていない(=外国人が在籍していない)部屋があれば入れてあげたいけどね。

 現在、力士総数約650人のうち約5%を占める外国出身力士。初場所番付でみれば、関取衆は約27%の19人を占める。1934年に平賀(日系米国人)が角界初の外国人力士として初土俵を踏み、以来、曙と武蔵丸の両横綱らを輩出したハワイ出身の米国勢、前人未到の40度優勝の白鵬らモンゴル勢、さらに大関に君臨した琴欧洲、把瑠都ら欧州勢も角界隆盛の一翼を担ってきた。

 1部屋の人数制限は、92年から2人まで(全体で40人以内)、02年からは1人だけに限られた(10年からは日本国籍を取得した者も「外国出身力士」として1部屋1人までに制限)。その規約も、そろそろ門戸拡大にかじを切ってもいいのではないか。拙速ではない、緩やかな改革の1つとして。

 角界に“外国人アレルギー”があっても不思議ではない。取材を通じて、日本の美徳とは離れた立ち居振る舞いを感じることもあった。それは入門の際、相撲とはかくあるべきもの…と徹底的に教え込み、機を見て各師匠が言い聞かせればいいのではないか。前述した「日本の美徳とは離れた立ち居振る舞い」は一部の力士に感じたことで、むしろ高見山から始まり、栃ノ心にも感じる“日本人らしい外国人”の方が多かったような気もする。国際化せよ、などとはいわない。日本の伝統文化を発信する懐の深さも公益財団法人として、あってもいいのではないだろうか。【渡辺佳彦】

鶴竜、背水の陣だった初場所 師匠が語るV逸の原因

鶴竜(2018年1月26日撮影)


 12年夏場所の旭天鵬以来となる、栃ノ心の平幕優勝で幕を閉じた初場所。自慢の怪力を武器に初日から千秋楽まで好調を維持して、14勝1敗と大勝。安定感のある相撲に記者は連日、「もしかしたら」の思いが強まっていった。しかし1敗を喫した7日目。「もしかしたら」の対象は、栃ノ心に土を付けた横綱鶴竜(32=井筒)に変わった。

 4場所連続休場中の鶴竜は、初日から10日目まで白星を並べて単独首位に立っていた。横綱白鵬、稀勢の里が途中休場して、“1人横綱”で臨んでいた分、力も入っていた。そして何より、師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)が次に出場する場所で進退を懸けることを明言していたからこそ、さらにやる気に満ちあふれていた。しかし、11日目に初黒星を喫すると、ずるずると4連敗…。支度部屋でもネガティブな発言が目立った。

 敗因はどこにあったのか。2連敗を喫した翌日の13日目に、いつもは多くを語らない井筒親方が、こう分析した。

 「序盤はスピードもあったし反応も早かった。疲れのピークじゃないですかね。引いてね。下がった時はダメ。攻めてる時はいいんだけど。ちょっと疲れたり、負けたりすると悪いクセが出る。10連勝したことで余計なことを『もしかしたら』と考えたかもしれない。とりあえず2桁勝てて、背水の陣の場所でどこかで安心したかもしれない。安心感と優勝したい気持ちが矛盾したと思う。勝ち急いだと思う」。

 そしてぽつりと

「私自身も安心しましたね」。

 弟子の背水の陣の場所に、師匠も大きなプレッシャーを背負っていた。

 油断して負けた、気持ちが切れて負けたと言えばそうかもしれないが、実は左足首が限界を感じていた。昨年の1月ごろから疲労がたまると軟骨同士がぶつかって痛みが出ていたといい、毎場所後半は衝撃緩和のためにヒアルロン酸を打って土俵に上がっていたという。初場所も中盤からやはり痛みが出ていて、朝稽古を休み整体で治療を行うなどして、昨年春場所以来に15日間を完走した。

 そして場所後には、左足首の遊離軟骨を除去するために内視鏡手術を受けた。春場所(3月11日初日、エディオンアリーナ大阪)は出場できるのか、と思ったが「(春場所に)間に合わせるために早めにやった」と前向きだった。次こそは、賜杯を抱けるだろうか。【佐々木隆史】

K1が「ミスターストイック」小比類巻を刑事告訴へ

小比類巻貴之(07年6月28日撮影)


 K-1ジムを運営するM-1スポーツメディアは23日深夜、K-1 WORLD MAX日本代表決定トーナメント3度の優勝を誇る小比類巻貴之氏(40)に対し、業務上横領罪等での刑事告訴を進めていることを発表した。

 小比類巻氏には代表としてK-1ジム恵比寿とK-1ジム福岡店の運営を委託していたが、同氏と同氏が代表取締役を務める株式会社フォルザジャパンは、ジムの売上金を横領するなどの重大なコンプライアンス違反をしていたという。内部告発により発覚し、外部弁護士を交えた事実関係の調査をした上で、今年1月24日付で、小比類巻氏らとの業務委託契約を解除。また所属選手からも、同氏との金銭トラブルに関する苦情も寄せられているとしている。

 これまで被害金額の精査や捜査当局との協議のため、公表を控えていたそうで、小比類巻氏も大筋で事実関係を認めているという。同氏は現役時代に「ミスターストイック」と呼ばれ、魔裟斗(38)らとK-1 MAXをけん引した日本勢の看板選手だった。

王者岩佐亮祐に挑むサウロン来日、寒さ対策も万全

初来日で世界挑戦するエルネスト・サウロン


 ボクシングでIBF世界スーパーバンタム級王者岩佐亮祐(28=セレス)に挑戦する、同級13位エルネスト・サウロン(28=フィリピン)が24日に来日した。3月1日の東京・両国国技館での世界初挑戦まで5日前の来日。「地元でしっかり練習を積んで準備をしてきた。何の問題もない。体重もあと1キロあまり」と話した。

 部屋にエアコンをつけて練習するなどの寒さ対策にも取り組んだという。「タフな王者で動きがいい。動きを意識して練習してきた。ガンガン攻めていきたい。全力を尽くしてベルトをとりたい」と話した。

中井りんが完全復活、1年2カ月ぶりの一戦でTKO

KO勝利しマイクパフォーマンスする中井(撮影・鈴木正人)

<DEEP:有明大会>◇24日◇ディファ有明


 総合格闘技界のエロカワ女王中井りん(31)が、初参戦のDEEPで、キム・ヨンギ(24=韓国)にTKO勝ちした。

 中井は、16年12月31日のRIZIN大会以来、1年2カ月ぶりの試合。1回からキムに、左右の的確なパンチを浴びせペースを握った。終盤になるにつれ、中井はキムに圧力をかけ攻め転じる。キムの足を取って倒すと、パウンドの連打を顔面に浴びせ、レフェリーが止めに入り、1回4分37秒、TKO勝ちした。勝利後恒例のバック宙を2度も披露するなど、DEEP初参戦初勝利を自ら祝った。

 パンクラスやUFC、RIZINで活躍し女子総合格闘技界でトップクラスの実力を持つ中井は、DEEPの舞台で見事に復活。中井は「今回はファンのみなさんに支えられた1年だった。DEEPを盛り上げるように頑張ります」と笑顔で話していた。

 この試合を観戦に訪れたRIZINの榊原信行実行委員長は「中井は世界に通用する選手。早ければ、5月の福岡大会に出場してほしい。年間を通してRIZINに出場してほしい」と再度の参戦を熱望した。

第1R、キム(左)にパンチを決める中井(撮影・鈴木正人)
第1R、キム(下)にパンチを決める中井(撮影・鈴木正人)

スティーブンス「圧倒してやる」ランカー対決へ闘志


 米総合格闘技UFC on FOX28大会は24日(日本時間25日)、米フロリダ州オーランドのアムウェイ・センターで開催される。23日(同24日)には同地で前日計量が行われ、メインのフェザー級5分5回に出場する同級4位ジョシュ・エメット(32=米国)、同級8位ジェレミー・スティーブンス(31=米国)は、ともに146ポンド(約66・2キロ)でクリアした。

 ランカー対決に臨むスティーブンスは前回のドゥホ戦から6週間後での試合となるものの「オレはもう、合宿はやらないんだ。試合のない時でも、常にしっかりと走り込んでいるし、長い距離を泳いでいる。ライフスタイルそのものをアクティブに保っているんだ。プロのファイターである以上、急なオファーにも常に備えておかないといけないからね」と通算40戦を誇るファイターらしく自信満々。迷うことなく、今回のオファーを受けたという。遅咲き苦労人となるエメットに対しても「とてもタフで、激しい試合をする選手だが、オレはレベルが違う野獣なんだ。嵐のように襲いかかり、圧倒してやる」と闘志を燃やしていた。

 またライトヘビー級5分3回を控える同級5位オヴィンス・サン・プルー(34=米国)、イリル・ラティフィ(34=スウェーデン)は、ともに206ポンド(約93・4キロ)で計量パスしている。

阿炎そこまで言ってええんかい、美徳と対極の語録

阿炎(2018年1月28日撮影)


 沈黙が尊ばれるのが角界です。北勝富士、千代大龍、松鳳山とか、よくしゃべる力士はおるけど、基本的に言葉数は少なく、声かて小さい。担当になりたての頃「でっかい体やねんし、もっと大きい声でしゃべれんか?」と、自分が“男のおしゃべり”を地で行くだけに、かなりイライラしたもんです。そんな美徳の対極にいるんが、阿炎(あび、23=錣山)です。

 初場所が新入幕やったちゅうのに、おもろい。言いたい放題ぶりは「…おいおい、そこまで言ってええんか?」と心配になるほど。その“語録”を少し並べてみましょか。

 「絶対勝ってたな~」「負けるたびに三賞の夢が遠のいていく」(初日、大栄翔に敗れて黒星発進)

 「3連勝したら、次はだいたい負ける。(十両の)先場所もそうだったし…」(5日目に3連勝)

 「よく“変わって負けたら悔いが残る”なんて言いますが、僕はないです。変わったのは勘を信じたから。悔いは残りません」「親方に怒られるかな…。でも、いい。怒られても、勝ちゃあ何でもいい」(中日、立ち合いで左に飛んで、巨漢の大奄美を押し出す)

 「体重は間食で増やしました。カップ麺いいですね。中でもシーフードが一番好き。毎日食べてます」(9日目)

 「20代前半の全員に負けたくない」(10日目、1学年上の豊山に負けて)

 …とまあ、しゃべること、しゃべること。

 何でそこまでしゃべるのか? 勝てば敢闘賞だった千秋楽を白星で終え、10勝5敗。見事に三賞を手にして、阿炎自身がビッグマウスのわけを明かした。

 「番付発表の時に“三賞独占”なんて言ったし、その後も三賞、三賞と言ってましたけど、正直勝ち越しで十分でした。盛ってました。盛り盛り。怖いぐらいの結果です。大きいことを言わないと燃えない。すぐ落ち込むタイプで、無理にでも気持ちを上げていかないとダメ。だから、でかいことを言う」

 自分で言って、自分をその気にさせる。

 「言霊ッスね」

 その言い方がまたチャラくて、どこまでも「ほんまかいな?」と思ってしまうけど、きっとそうなんでしょう。

 男は黙って勝負ってな武骨なタイプもええ。ただ、阿炎のような存在が、相撲をよりおもしろくするんやないか、なんて思う今日この頃です。【加藤裕一】

大関→十両、照ノ富士へ経験者・元大関雅山が助言

照ノ富士(17年9月14日撮影)


 3日目から休場した元大関で東前頭10枚目の照ノ富士(26=伊勢ケ浜)に、かつての自身を重ねてエールを送る人がいる。元大関雅山の二子山親方(40)だ。照ノ富士は先場所までの3場所は左膝痛などが影響して休場し、今場所は「2型糖尿病で約1週間程度の療養を要す」との診断書を提出。再出場しなければ来場所の十両転落は確実な状況だ。二子山親方は「照ノ富士は若いのだから、もう1度はい上がってほしい。力はある。燃え尽きたら終わる」と気力の重要性を訴え、再浮上に期待した。

 22歳で大関となった二子山親方は在位8場所、24歳の時に陥落した。照ノ富士も23歳で昇進した大関を14場所務めたが、25歳の昨年11月九州場所で関脇、今場所から平幕へと番付を落とした。昭和以降、元大関で十両まで番付を落としたのは大受、雅山、把瑠都の3人しかいない。把瑠都は引退前は休場続きで、番付では十両に名を連ねたが、実際には出場していない。十両の土俵に立った最後の元大関は雅山となっている。

 二子山親方は大関陥落から約9年後、幕内に返り咲いた。その後も小結まで番付を戻すなど、大関陥落後に関脇以下を史上最長の68場所務めた。35歳で引退した13年春場所は十両として取り切り3勝12敗。千秋楽に3勝目を挙げるなど、最後まで目の前の一番に全力だった。「まだ燃え尽きていなかった。絶対にチャンスがくると信じていた。最終的には(幕内に)上がれなかったけど腐らず稽古を続けることが大事」。当時を振り返り、復活を期待していた。【高田文太】

服部桜“双葉山超え”70連敗も「逃げるのが負け」

松岡に敗れ、70連敗を喫した服部桜(撮影・狩俣裕三)


 元横綱朝青龍のおいが出た、番付外の前相撲が終わった後、初場所6日目の最初の取組で“記録”が生まれた。西序ノ口24枚目服部桜(19=式秀)が負けた。両上手を引き粘ったが、寄り切られた。70連敗。「数字は頭にはありました。勝ちたくて、左上手を取りにいったけど…」。双葉山の不滅の69連勝を、序ノ口の連敗で超えてしまった。

 15年九州場所の序ノ口デビューから16年夏場所6日目に初白星を挙げたが、通算成績1勝92敗1休。引き技で負けたのは16年秋場所3日目の引き落とし1度だけ。ほぼ全部、体力負けだ。身長180センチだが、入門時の体重は65キロ。75キロだった昨年秋場所後、師匠の式秀親方(元前頭北桜)に「10キロ太れ!」と言われ、3度の食事、コンビニおにぎりの間食で現在83キロ。だが、まだまだだ。

 神奈川・茅ケ崎市立梅田中卒業後、7歳から憧れた角界へ。同親方は、親に黙ってやってきた少年を1度追い返し、母親連れの2度目の志願で折れた。「情熱を感じました。今は『2年前の自分より強くなってるぞ』と言い聞かせてね。逃げるのが一番の負けですから」。くしくも部屋には、先代式秀親方(元小結大潮)の師匠双葉山の写真が飾られてある。“最強の人”に見守られ、服部桜は2勝目を目指す。【加藤裕一】

相撲技術の進歩を止めないか?張り手封印で思うこと

白鵬(2018年1月17日撮影)


 横綱白鵬(32=宮城野)の立ち合いの張り手、かち上げが話題となって久しいが、実は世間の多くの声と相撲界の認識は違うように感じる。昨年12月に横綱審議委員会(横審)の北村委員長が「美しくない」「見たくない」といった投書が多く届いているとして、白鵬の立ち合いの張り手、かち上げに注文を付けた。「横綱のものとは到底、言えないだろう」などと厳しかった。これを合図に、白鵬にとって立ち合いの張り手、かち上げは禁じ手のようになり、初場所では1度も出さなかったが、3日目から連敗して5日目以降は休場した。

 休場の直接的な要因は、両足親指のけがだった。それでも多くの現役力士や親方衆の目には、張り手、かち上げを出せずにリズムを崩しているように映ったようで、同情の声も多く聞こえた。中でも熱弁を振るっていたのは幕内の千代大龍だった。「まるで張り手、かち上げが、ものすごく悪いことのように言われているけど、土俵で戦う相手としては、あれだけ隙だらけの立ち合いをしてくれたら本当はラッキー。それでも勝ってしまう、その次の攻めへの速さ、引き出しの多さが横綱(白鵬)の強さ」と語った。同様に「張り手、かち上げ=チャンス」と、対戦相手ならとらえるという声は次々と聞こえてきた。

 いわゆる「横綱相撲」の理想は、史上最長69連勝の記録が今も破られていない、双葉山の「後の先」という声はよく耳にする。立ち合いで相手を真正面から受け止めつつ、先手を奪っているといった取り口こそ「横綱相撲」だとする好角家は多い。

 私が約6年間相撲担当を離れる以前の10、11年ごろ、白鵬も双葉山とその代名詞の「後の先」を目標に掲げていた。当時、1人横綱だった白鵬の強さは頭ひとつ抜けており、双葉山に迫る63連勝も記録。当時も時折、立ち合いで圧力のある相手には、張り手(張り差し)を見せる場面もあった。だが数少ない黒星は、立ち合いで張り手を出し、がら空きとなった脇を差されるケースがほとんど。白鵬自身も周囲も悪癖ととらえ、改善を誓っていたように記憶している。

 それが6年ぶりに担当に戻り、すっかり立ち合いの定番になっていた。少なからず当時よりも、立ち合いでパワーとパワーの真っ向勝負に応じては、分が悪いと感じる相手が増えたのかもしれない。相手の圧力を抑え、脇ががら空きとなるリスク覚悟の張り手、かち上げに活路を見いだし、頼らざるを得なくなったのかもしれない。

 プロレスのエルボースマッシュに近いかち上げは、下手をすれば対戦した力士生命を脅かす危険性があり、封印や改善の必要があると思う。一方で張り手は、そういった危険性は少ない上、繰り出す方には相応のリスクがあり、対戦相手にとってもチャンスとなる。純粋に観戦する側としては、両者の駆け引きや、張り手に動じずぶちかます相手力士の姿など、心を震わされる場面に遭遇する可能性が高まる。張り手まで封印すると、そんな観戦の楽しみが1つ減るような気がしてならない。

 大相撲に限らず、プロ野球などを含めてプロスポーツには、これまで数多くの「名勝負」と呼ばれる人気の対戦があった。張り手を繰り出すかどうか、駆け引きを含めて楽しむことができれば、新たな名勝負になるかもしれない。千代大龍は、こうも付け加えていた。「結局、あの張り手で勢いを止められている自分たちが弱い。もっと強くならないと」。あらゆるスポーツは、技術の進歩の連続。1つの技が生まれたら、その技を打ち破るための技を編み出すことで、競技の発展につながった。白鵬の張り手を打ち破る、革新的な技術、勇気と実力のある力士は生まれるのか。そんな未来を見てみたい気もする。【高田文太】