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「しんどいけど楽しみ」「休んでほしい」稀勢の里

 ファンも親方も力士も、負傷を負いながらも土俵に立った新横綱稀勢の里を、さまざまな思いを胸に見届けた。

 相撲ファン歴30年で稀勢の里の場所入りを見届けた50代男性は「これで優勝したら貴乃花の再来や。しんどいと思うけど楽しみやわ」と期待した。一方で30代女性は「休んでほしい。だけど見られるのはうれしい。でも来場所休場になったら寂しい」と複雑な思いだった。

 土俵下に落ちた稀勢の里の至近距離にいた片男波審判員(元関脇玉春日)は「昨日はかなり痛そうにしていた」とその時の状況を話した。だからこそ出場について「覚悟があるから土俵の上に立つんじゃないですかね」と横綱として責任を果たす姿勢に感心した。

 この日胸を合わせた鶴竜は、横綱同士だからこそ分かる葛藤を明かした。「まぁ同じ立場だったら、出るかもしれない。諦められないよね。優勝の可能性があるからね。悪くなるかもしれないけど」と自分のことのように話した。

 本来の力とはほど遠い相撲で2敗目を喫した稀勢の里。読者のみなさんは、どのように感じただろうか。【佐々木隆史】

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横審、稀勢の里Vに感動 白鵬には「衰えた」の声も

稀勢の里

 大相撲の横綱審議委員会が27日、東京・両国国技館で開かれ、春場所で優勝した横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)に称賛の声が上がった。北村正任委員長は「大変ドラマチックな結果だった。委員の中で批判はなかった。私もそう思う。普段相撲を見ない人も感激していた」と左肩付近を負傷してでも土俵に立ち、逆転優勝した姿に感嘆した。都倉俊一委員も「鶴竜に負けたけど出てきた。終始右でいったところに彼の覚悟を感じました。(横綱に)推薦して本当によかった」と話し「肩を治してもらって、あと4年ぐらいは大いに暴れてもらわないと困る」と、さらなる活躍に期待した。

 優勝同点だった大関照ノ富士(25=伊勢ケ浜)についても言及。北村委員長は「最後まで優勝争いをしたのは照ノ富士だけ。膝が悪い中で頑張った。ケガをきちっと治して欲しい」と話した。夏場所(5月14日初日、東京・両国国技館)での綱とりについて都倉委員は「年間勝率も考えるべきだという話も出た。今場所が起点。前は4勝だったからね」と安定した成績を求める声が上がったことを話した。

 17年ぶりの4横綱時代を迎えた春場場所で唯一、休場した横綱白鵬(32=宮城野)に北村委員長は「若干衰えたんじゃないか、と言う人もいる。まだまだきちっと体調整えて出てくれば、成績をあげられる横綱だと思うので頑張って欲しい」と話した。

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オカダ・カズチカ「甘くない」前哨戦で柴田にチクリ

NJC優勝の柴田と前哨戦を戦ったIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ

<新日本:後楽園大会>◇26日◇後楽園ホール◇観衆 1743人(超満員札止め)

 IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカが、ニュージャパン・カップ優勝で王座挑戦を表明した柴田勝頼との前哨戦を戦った。

 4月9日の両国国技館大会での防衛戦を前に、この日から前哨戦がスタート。メインのタッグマッチに登場すると、いきなり2人が先発で激突した。最初は緊迫の探り合いに終始したが、場外乱闘では一気にヒートアップ。オカダが柴田を鉄柵に投げつけ、場内の通路の壁にたたきつけた。リング上では、柴田からコブラツイストを掛けられ、裸絞めでもん絶した。最後はオカダの相棒・YOSHIHASHIが柴田につかまり敗戦。柴田から挑発されると「柴田さん、根性だけでこのベルトが取れるほど甘くないよ」と、王者の余裕で言い放った。

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高安、兄弟子Vに感動号泣 大関昇進で恩返しだ

オープンカーに高安(左)と乗り、ファンに手を振りパレードする稀勢の里(撮影・外山鉄司)

<大相撲春場所>◇千秋楽◇26日◇エディオンアリーナ大阪

 関脇高安(27=田子ノ浦)が、大関取りへの強力な足固めになる12勝目を挙げた。関脇玉鷲を寄り切り、3度目の殊勲賞を獲得。初場所の11勝を加えると、大関昇進の目安となる「三役で直近3場所33勝」へ、あと10勝。夏場所(5月14日初日、東京・両国国技館)での悲願成就に近づいた。

 涙が止まらなかった。取組を終え、西の支度部屋で高安がむせび泣いた。目の前のテレビに映っていたのは、痛みに耐え奇跡の逆転優勝を遂げた兄弟子の姿。誰よりも近くで、その苦闘を見てきた。「すごいのひと言です。報われて良かった…」。目を真っ赤にしてこぼした。初場所に続いて稀勢の里の優勝を目の当たりにして「本当に感動しました。もう1回、いい景色を見させてもらった。ありがたいです」。声を震わせ、言葉を絞り出した。

 本割を前にした兄弟子へ、勇気を与える白星だった。稀勢の里が土俵下で見守る中、前に前に攻めて玉鷲を撃破した。「勝って終われて良かった」。来場所後に大関の座をつかむためには、この日の結果が重要になることも十分に分かっていた。

 初日から10連勝も11日目から3連敗。だが、終盤の連勝で白星を上積みした。昨年秋場所では10勝しながら最後に3連敗し、翌九州での昇進失敗につながった。「今場所もズルズルいったら今までと変わらないから、絶対に止めたい気持ちがあった」。強い覚悟で盛り返し、精神的な成長を示した。大きな感動をもらった兄弟子へ、夏場所では高安が大関昇進で恩返しする。【木村有三】

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稀勢の里感謝の号泣「見えない力感じた」/一問一答

優勝した稀勢の里は、君が代斉唱の時に涙ぐむ(撮影・鈴木正人)

<大相撲春場所>◇千秋楽◇26日◇エディオンアリーナ大阪

 13日目のけが後は、言葉数が少なくなった新横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)。弱みを見せたくないためだった。逆転での2連覇が決まった後で見せた涙に、苦しさは表れた。苦しみから解放された新横綱の言葉には、これまでと違う苦労と、感謝の思いがにじんだ。

 -今の気持ちは

 「この応援のおかげと、支えてくれた人のおかげ」

 -先場所と喜びの違い

 「苦しかった分、うれしいですね」

 -賜杯の重みは

 「先場所と違う感じでした。違うものというか」

 -昨日は満足に取れず、今日はどんな気持ちで

 「気持ちだけぶつけようと思って…やりました」

 -最初の立ち合いは

 「同じことはできないから、違うことをしようと思った。後は気持ちだった」

 -決定戦は

 「自分の力以上のものが最後は出ました。本当にあきらめないで、最後まで力を出して良かった」

 -最後の小手投げ

 「やったことがなかった。いろんな人に来てもらった。治療もそう。昨日以上に動けるようになったし、いろんな人のおかげ。やっぱりこれは自分1人ではないと思います」

 -君が代で涙を流した

 「すみません。今回は泣かないと決めたんですけど…。見苦しい姿をお見せして申し訳ない」

 -けがの状態は

 「しっかり治して、また5月場所に元気な姿を皆さんに見せられるように、明日からしっかり治療に専念してやっていきたい」

 -出るからには勝たないと、という思いだったか

 「こうならないのが一番いいが、ケガしたのは自分だから」

 -先代師匠の元横綱隆の里と同じ新横綱優勝

 「新横綱で全勝となると、ものすごいことだと思った。(新横綱優勝に)なってみたらなってみたで、すばらしい」

 -勝因は

 「支えです」

 -新横綱の15日間は

 「今までの相撲人生15年間とはまったく違うような場所だった。横綱土俵入りも初めてやって、今は疲れたというか…。疲れたというのが、一番ですけど、何か見えない力を感じた15日間でした」

 -痛みは

 「想像に任せる(笑い)」

内閣総理大臣杯を受け取る時、顔をゆがめる稀勢の里(撮影・鈴木正人)

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稀勢の里、春巡業の出場熱望「出るのも僕の使命」

逆転優勝を報じる日刊スポーツを手にする稀勢の里(撮影・岡本肇)

 大相撲春場所で左上腕の負傷を乗り越え逆転優勝を果たした横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が千秋楽の激闘から一夜明けた27日、大阪市内の宿舎で会見した。

 4月2日の三重・伊勢市から始まる春巡業については、けがの状態次第で出場する意向を示した。「痛みがないから多分大丈夫だと思うけど。なるべくなら巡業に出るのも僕の使命だと思う。行けるなら出る方向で、だめならしっかり休む」と話した。負傷箇所については近日中に検査を受ける。

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白鵬「新横綱が引っ張ってくれた」稀勢逆転Vに感激

白鵬

 大相撲春場所を右脚などの負傷のため途中休場した横綱白鵬は26日、大阪市内で行われた宮城野部屋の千秋楽パーティー後に取材に応じ、新横綱稀勢の里の逆転優勝をたたえ「感動しました。4横綱になって新横綱が引っ張ってくれた。いいものを見せてもらって気合が入った」と話した。

 稀勢の里がけがを押して出場したことについては「ここまで来たんだから(出る)というのがあったんだろう。無理はしたと思う」と心中を察した。

 白鵬自身のけがについては「なかなか痛みが取れない」と述べた。

 4月の春巡業の前半は休場する意向で、回復を優先させる方針を示した。

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鶴竜「横綱の意地を見せた」稀勢の里逆転Vに刺激

<大相撲春場所>◇千秋楽◇26日◇エディオンアリーナ大阪

 横綱鶴竜(31=井筒)は取組後、支度部屋の風呂から上がると、優勝決定戦をテレビで観戦した。

 稀勢の里の歴史的な逆転優勝を目の当たりにして「横綱の意地を見せたと思う。刺激になった」と鼓舞された様子だった。

 千秋楽は日馬富士を寄り切り、前日の稀勢の里戦に続いて横綱同士の対戦を制した。

 それでも10勝5敗と不完全燃焼の場所となった。「(白星を)取りこぼしたところが良くなかった」と肩を落とした。

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稀勢の里、横綱の責任感 休場危機も迷わず出場決断

祝勝会で、満面の笑みで鯛を持ち上げる稀勢の里(撮影・岡本肇)

<大相撲春場所>◇千秋楽◇26日◇エディオンアリーナ大阪

 19年ぶりに誕生した日本出身の新横綱が、歴史に残る奇跡の優勝を成し遂げた。稀勢の里が本割、優勝決定戦で大関照ノ富士に2連勝。2日前に負った左肩付近のけがで休場危機に陥りながら逆転した背景には、驚異的な回復力と土俵に向き合う真剣な姿勢があった。

 春場所13日目の24日。初黒星の一番で負傷し、激痛に苦しみながら救急車で病院へ運ばれた。東京など遠方からかかりつけの整体師らを呼び寄せ、24日夜には迷うことなく出場を決断。関係者によると、付け人たちに「出るから。準備を頼む」と告げたという。治療を施した柔道整復師は「普通の力士なら休場でしょう。でも横綱の選択肢には全くなかった。責任感と気持ちの大きさだと思う」と声を震わせる。

 稀勢の里の頑丈な肉体を支えるのは回復力だ。2014年秋場所10日目の宝富士戦。左四つとなった土俵中央で左肩を脱臼し、動けなくなった。長い相撲の末に敗れ「立っているのがやっとだった。土俵上で脂汗が止まらなかった」と吐露する。翌日は珍しく患部にテーピングを施して、完敗。しかし取組後に東京都内の治療院へ直行すると、肩は元通りになった。

 15歳で力士になり、先代師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里)に限界を超えた朝稽古で連日鍛えられた。血がにじむ傷口は夜にふさがってかさぶたとなり、当時の兄弟子は「天才的な細胞だ」とうなった逸話も残るほどだ。

 愚直に歩み続ける根性も見逃せない。たった1日の休場となった14年初場所千秋楽を今も悔やみ、「決めたことをやり続ける。簡単なようで、実はこれが難しい」と言う。幼稚園から中学卒業まで一度も欠席がなかったという男にとって、休むことは屈辱だった。新横綱場所で訪れた大きな試練を打破。土俵人生にまた1つ、大きな勲章が加わった。

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稀勢の里、逆転V2に男泣き!左腕は全治3カ月か

稀勢の里(右)は優勝決定戦で小手投げを決め照ノ富士を下した(撮影・外山鉄司)

<大相撲春場所>◇千秋楽◇26日◇エディオンアリーナ大阪

 歴史に残る逆転優勝が生まれた。13日目の取組で左肩付近を痛めていた新横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が95年初場所の貴乃花以来22年ぶり、史上8人目の新横綱優勝を飾った。1差で直接対決となった大関照ノ富士を本割で突き落として13勝2敗で並び、決定戦でも逆転の小手投げ。初優勝から2場所連続の優勝は史上7人目の快挙で、君が代斉唱の場面では観客総出の大合唱に男泣きした。

 激しく乱れた息など気にしなかった。肩はいからせたまま。大歓声を背に支度部屋に戻った稀勢の里は、血走った目でテレビを見つめた。それは1分前の決定戦の映像だった。逆転の小手投げが決まり、勝った。その瞬間に「ヨッシャー!!」と声を張り上げた。形相はまるで鬼だった。16年前の01年夏場所の貴乃花のように。「苦しかった分、うれしい」。激しい呼吸音の中で、言葉にならない喜びの声。目が潤んでいった。

 試練の土俵だった。13日目に負ったけが。関係者によれば、上腕二頭筋の筋肉の損傷だった。幸い断裂はしていないが、見立ては全治3カ月。その夜、静岡から治療の先生を呼び寄せた。休む選択は最初からなかった。だが、弱音を吐かずに出場した14日目は完敗。そこで覚悟を決めた。「気持ちだけぶつける」。

 上腕の内出血をテーピングで隠した左手は使えない。だが、何が何でも勝つと挑んだ。最初の本割。1度目の立ち合いで右に動いた。変化だった。不成立で作戦は露呈したが「違うことをしよう」と、次は左に動いた。不器用な変化は決まらない。それでも懸命にもがき、動いた。回り込み、右手で突き落とした瞬間、館内が大きく揺れた。

 迎えた20分後の決定戦。今度はもろ手で立ったが、もろ差しを許した。絶体絶命の体勢。後ろに下がる。それでも、あきらめなかった。左ははなから捨てていた。体を開いて狙ったのは、得意とは反対の右小手投げ。「やったことなかったけどね」。左腕から土俵下に落ちようが構わなかった。奇跡の逆転優勝に館内はまた沸いた。22年ぶりの新横綱優勝。神風が吹いた。

 あの日もそうだった。1月27日。第72代横綱として推挙式に臨んだ東京・明治神宮。青空の下、推挙状を受け取る際、普段とは反対の本殿の方角から風が吹いた。人が振り向くほどの温風が舞った。横綱土俵入りの際も2度、同じ風が吹いた。宮司は「50年に1度吹く風です。神風ですね」と言ったという。土俵の神が与えた試練に、鬼の気迫で応えた稀勢の里。その姿だから、神風はまた吹いた。

 大合唱の君が代斉唱。多くの観客が泣いていた。稀勢の里の目も涙であふれた。「今までの相撲人生15年間とは全く違う場所。見えない力を感じた15日間でした。あきらめないで、最後まで力を出して良かった」。稀勢の里の時代が確かに幕を開けた。【今村健人】

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