上へ戻る

au版ニッカン★バトル

ランキング

鶴竜、背水の陣だった初場所 師匠が語るV逸の原因

鶴竜(2018年1月26日撮影)


 12年夏場所の旭天鵬以来となる、栃ノ心の平幕優勝で幕を閉じた初場所。自慢の怪力を武器に初日から千秋楽まで好調を維持して、14勝1敗と大勝。安定感のある相撲に記者は連日、「もしかしたら」の思いが強まっていった。しかし1敗を喫した7日目。「もしかしたら」の対象は、栃ノ心に土を付けた横綱鶴竜(32=井筒)に変わった。

 4場所連続休場中の鶴竜は、初日から10日目まで白星を並べて単独首位に立っていた。横綱白鵬、稀勢の里が途中休場して、“1人横綱”で臨んでいた分、力も入っていた。そして何より、師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)が次に出場する場所で進退を懸けることを明言していたからこそ、さらにやる気に満ちあふれていた。しかし、11日目に初黒星を喫すると、ずるずると4連敗…。支度部屋でもネガティブな発言が目立った。

 敗因はどこにあったのか。2連敗を喫した翌日の13日目に、いつもは多くを語らない井筒親方が、こう分析した。

 「序盤はスピードもあったし反応も早かった。疲れのピークじゃないですかね。引いてね。下がった時はダメ。攻めてる時はいいんだけど。ちょっと疲れたり、負けたりすると悪いクセが出る。10連勝したことで余計なことを『もしかしたら』と考えたかもしれない。とりあえず2桁勝てて、背水の陣の場所でどこかで安心したかもしれない。安心感と優勝したい気持ちが矛盾したと思う。勝ち急いだと思う」。

 そしてぽつりと

「私自身も安心しましたね」。

 弟子の背水の陣の場所に、師匠も大きなプレッシャーを背負っていた。

 油断して負けた、気持ちが切れて負けたと言えばそうかもしれないが、実は左足首が限界を感じていた。昨年の1月ごろから疲労がたまると軟骨同士がぶつかって痛みが出ていたといい、毎場所後半は衝撃緩和のためにヒアルロン酸を打って土俵に上がっていたという。初場所も中盤からやはり痛みが出ていて、朝稽古を休み整体で治療を行うなどして、昨年春場所以来に15日間を完走した。

 そして場所後には、左足首の遊離軟骨を除去するために内視鏡手術を受けた。春場所(3月11日初日、エディオンアリーナ大阪)は出場できるのか、と思ったが「(春場所に)間に合わせるために早めにやった」と前向きだった。次こそは、賜杯を抱けるだろうか。

大関→十両、照ノ富士へ経験者・元大関雅山が助言

照ノ富士(17年9月14日撮影)


 3日目から休場した元大関で東前頭10枚目の照ノ富士(26=伊勢ケ浜)に、かつての自身を重ねてエールを送る人がいる。元大関雅山の二子山親方(40)だ。照ノ富士は先場所までの3場所は左膝痛などが影響して休場し、今場所は「2型糖尿病で約1週間程度の療養を要す」との診断書を提出。再出場しなければ来場所の十両転落は確実な状況だ。二子山親方は「照ノ富士は若いのだから、もう1度はい上がってほしい。力はある。燃え尽きたら終わる」と気力の重要性を訴え、再浮上に期待した。

 22歳で大関となった二子山親方は在位8場所、24歳の時に陥落した。照ノ富士も23歳で昇進した大関を14場所務めたが、25歳の昨年11月九州場所で関脇、今場所から平幕へと番付を落とした。昭和以降、元大関で十両まで番付を落としたのは大受、雅山、把瑠都の3人しかいない。把瑠都は引退前は休場続きで、番付では十両に名を連ねたが、実際には出場していない。十両の土俵に立った最後の元大関は雅山となっている。

 二子山親方は大関陥落から約9年後、幕内に返り咲いた。その後も小結まで番付を戻すなど、大関陥落後に関脇以下を史上最長の68場所務めた。35歳で引退した13年春場所は十両として取り切り3勝12敗。千秋楽に3勝目を挙げるなど、最後まで目の前の一番に全力だった。「まだ燃え尽きていなかった。絶対にチャンスがくると信じていた。最終的には(幕内に)上がれなかったけど腐らず稽古を続けることが大事」。当時を振り返り、復活を期待していた。【高田文太】

力士直撃禍 なぜか多い陣幕親方「あきらめてます」

13日、土俵下に落ちる貴景勝(右)。左は陣幕親方(撮影・鈴木正人)


 休場者が多い今場所。ケガが怖いのは力士だけでない。土俵下に座る審判の親方衆も危険と背中合わせだ。

 陣幕親方(元幕内富士乃真)は、特に多くの力士が落ちてくることで知られる。今場所は4日目に貴景勝が飛んできた。受難の連続だが「これはもう、あきらめてます。たまに、磁石のように引き寄せてるんじゃないかと思うことがありますね」と苦笑いする。

 現役時代の89年秋場所12日目、控えに座っていると三杉里が落ちてきて左足首の関節を骨折。土俵に上がれず、不戦敗になった。このケガがきっかけで番付を落とし、1年後に引退した。親方になった後の01年夏場所7日目には須佐の湖が落ちてきて右スネを骨折した。10年初場所10日目には、三段目の力士に左足首を踏まれて休場した。

 「これは運に任せるしかないんです。現役中はあのケガに苦しみましたが、ある時点から運命だと思うようになりました。それでも、勝負はしっかり見ようと思っています。そういえば、錦戸親方のところも何回も落ちてきますね」。今では酒席での笑い話として、ネタにしているという。残り6日間、土俵の無事を祈りたい。【佐々木一郎】

決勝進出は誰?WBSSスーパーミドル級準決勝に要注目


 前回、賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のクルーザー級の準決勝について触れたが、今週末17日(日本時間18日)と来週末24日(同25日)には、英国とドイツでスーパーミドル級の準決勝を迎える。初戦を勝ち上がった4人ともヨーロッパの選手で、そのうち3人が英国の人気者ということもあって大きな注目を集めている。

 17日に英国マンチェスターでは、WBAスーパーミドル級スーパー王者ジョージ・グローブス(29)対元WBA世界ミドル級暫定王者クリス・ユーバンク・ジュニア(28)という英国人対決が行われる。

 グローブスは14年、当時のWBA、IBF王者カール・フロッチ(英)に再挑戦した際にはロンドンのウェンブリー・スタジアムに7万人の大観衆を集めたこともある人気選手で、昨年5月に4度目の挑戦で念願の世界王座を獲得。10月のWBSS初戦では24戦全勝だった相手を4回にボディブローでKO、準決勝に駒を進めるとともに初防衛を果たしている。戦績は30戦27勝(20KO)3敗。

 対するユーバンク・ジュニアは元世界2階級制覇王者の息子としても知られる。話題先行型ではなく、技量も高く評価されている実力派で、15年には史上6例目の親子世界王者になっている。この3年間は8戦全勝(7KO)と倒しまくっている。WBSS準々決勝では初回に右アッパーでダウンを奪い、3回には左フックで戦慄的なKO勝ちを収めて評価を上げた。戦績は27戦26勝(20KO)1敗。勝てば2階級制覇となる。

 グローブスは「彼は自分が勝つ運命にあると信じているようだが、それは間違いだ。彼の時代なんか来やしないよ」とライバルを挑発しているが、オッズは3対2でユーバンク・ジュニア有利と出ている。

 その1週間後の24日、ドイツのニュルンベルクではWBC1位、WBO2位のカルム・スミス(27=英)と、元WBA、WBOライトヘビー級王者ユルゲン・ブレーマー(39=独)が対戦する。こちらはスミスの評価が高く、6対1のオッズで有利とみられている。

 スミスは英国では有名な「スミス4兄弟」の末弟で、3男(リアム・スミス)に続く兄弟世界王者の期待を背負っている。191センチの長身から繰り出す鋭い右ストレートが主武器で、5年のキャリアで23戦全勝(17KO)をマークしている。無冠ながらスーパーミドル級最強の声もあるほどだ。

 自国開催のアドバンテージを持つブレーマーは、ライトヘビー級から階級を落としてトーナメントに参戦。初戦では22戦全勝のホープを下して準決勝に上がってきた。18年以上のキャリアで52戦49勝(35KO)3敗の戦績を残している連打型のサウスポーだ。

 この4人のうち誰と誰が決勝に進出するのか。ユーバンク・ジュニアとスミスの下馬評が高いが、強靭なハートを持つグローブス、経験豊富なブレーマーが予想を覆す可能性もある。17日と24日、ヨーロッパで行われる2試合に要注目だ。

初めて地方に両国の土


 九州場所の土が、今場所から変わった。地方場所ではそれぞれの地域で取れる土を使用しているのだが、これまで数多くの力士から滑るという指摘が多くあった。それを受けて日本相撲協会が動き、東京・両国国技館の土俵の盛り土に使用している「荒木田」が地方場所で初めて使われることになった。

 「荒木田」は粘りがあり、速乾性もあることから盛り土に適し、現在は埼玉県内で取れるものを使用。場所前にはトラック5台で約60トンが運ばれて、土俵が作られた。

 では、力士らの反応はいかに。38歳ベテランの平幕の豪風は「明らかに違う。踏んだ瞬間に分かりましたよ。今までより確実に良い」と好感触。一方、足を滑らせるような内容が目立つ新小結阿武咲は「変わらないです」と言うも、他の力士の取組を見て「滑るねぇ」とつぶやいた。

 誰も土を言い訳にしたくない。しかし、力士は足の指で「土俵の砂をかむ」といわれるほど、土とは切っても切り離せない関係にあるが、稀勢の里は「弱い人が言ってるだけ」と一刀両断。土に惑わされずにいつもと変わらない、白熱した取組に期待したい。【佐々木隆史】

「なんかかわいい」千代丸のCM出演

千代丸(17年8月9日撮影)


 2日目の11日から放送されている東洋水産のカップ麺「QTTA(クッタ)」のCMに、九重部屋の力士が出演している。芸人松本人志が差し入れに訪れ、力士がむしゃぶりつく。その中心にいるのが幕内千代丸。松本に「なんかかわいいな、あいつ」と言われる。

 部屋総出で出演するが、1番の狙いは千代丸だった。「自分に連絡がきたんです。スポーツ編を撮りたくて、相撲なら自分だと。最初で最後のCMっすね」。

 美声で知られる幕内勢も、ウェブ限定でパナソニックのCMに出演。その中でオリジナルの歌「二人で生きよう」を披露している。

 広告代理店関係者は「今まで白鵬関への依頼が多かったですが、最近はいろいろな力士に話が来ます。面白い力士が増えていることもあるでしょう」と言う。白鵬や遠藤、照ノ富士らが出演中で、最近では宇良にも白羽の矢が立っている。

 かつては大鵬、そして高見山や千代の富士が隆盛を極めたCMも、85年7月の理事会で1度は“禁止”された。それが95年から徐々に解禁されて今に至る。3横綱1大関が不在で三役以上の全勝も皆無とまるで底冷えする秋場所の相撲人気を、広く伝わるようになった多くの力士の“個性”で支えている。【今村健人】

琴奨菊、殊勲白星でもインタビュー断る理由

秋場所3日目、日馬富士を破った琴奨菊(右)(17年9月12日撮影)


 横綱や大関に勝った下位の力士は、NHKのインタビュールームに呼ばれる。ほとんどの力士はこれに応じるが、断る場合もある。

 元大関の琴奨菊は初日から1横綱2大関を破ったが、1度もインタビューを受けなかった。なぜか?

 「その方がいいかなと思った。今後においても、今においても…」。今年初場所まで大関を務めていた自負もあるだろう。日馬富士に勝って初金星を挙げたが「ああいう内容だったからね」と、テレビで喜びを語ることは控えた。

 元大関の初金星は、雅山(現二子山親方)以来10年半ぶりだった。雅山は、大関から陥落して33場所目に横綱朝青龍に勝ち、インタビューを受けた。二子山親方は「僕は強い横綱に勝ってうれしかったので行きました。でも、大関戦に勝っても一切行きませんでした」と振り返る。大関に勝つたび、断り続けた。「現役中は元大関と言われるのが嫌でした。大関に戻るつもりでいましたから」。

 勝ってテレビカメラの前に立つかどうかは、本人次第。放送時間の関係もあるが、殊勲の白星の後にインタビューがなかった場合、そこには力士の生きざまが反映されている。【佐々木一郎】

安美錦“とっくり”でご機嫌「一杯やりたいね」


<大相撲秋場所>◇6日目◇15日◇両国国技館

 初土俵から21年目の初体験。東十両2枚目安美錦(38=伊勢ケ浜)が琴勇輝にとっくり投げを見舞った。通算43手目の決まり手だ。

 「技のデパート」と称された元小結舞の海は33手。多彩な取り口で知られた元小結旭鷲山は46手。前人未到の優勝39回の横綱白鵬は41手。そんな名手たちも未経験の珍技だ。相手の首、頭をとっくりに見立て、両手で挟み左右にひねって倒す。01年初場所で新設された12の決まり手の1つで、いまだ幕内では1度も出ていない。安美錦は「当たって右を張って。差そうと思ったら(相手が)前に出てきたからこう…」。ジェスチャー付きで、いかにも説明しづらそうに解説した。

 今場所3日目、新十両の大成道も照強に決めた。十両で約2年ぶりの珍事がわずか3日後に飛び出した。くしくも大成道は同郷の青森出身。「そうなんだ。巡業中にとっくりで一杯やりたいね」。星も4勝2敗。再入幕を目指す大ベテランはご機嫌だった。【加藤裕一】

休場明け碧山いきなり横綱戦 56年ぶり

結びの一番、日馬富士の攻めを懸命にこらえる碧山(右)(撮影・丹羽敏通)


 左膝骨挫傷で初日から休場していた平幕の碧山が、中日の17日から出場した。休場明けとはいえ、土俵の上に立つ以上は弱音は吐けない。いきなり結びの一番で横綱戦が組まれた。

 休場明け最初の取組が横綱戦となったのは、61年名古屋場所の東前頭5枚目北の洋以来56年ぶり。昭和以降では、今回が8例目となる。いきなり横綱を倒すのは至難の業だが、過去に1度だけある。51年秋場所で5日目から休場していた西張出小結の備州山が、再出場の8日目に張出横綱の千代の山を破った。今回を除く6例は、全て平幕力士によるものだったが金星は1度もなかった。

 昭和以降初の休場明け金星へ臨んだ碧山だったが、達成はならなかった。横綱戦と知った前夜は「びっくりでした。普通はないですよね」と驚いたという。ただ「番付見たらね。横綱、大関休みですからね」と覚悟はあった。さらに「家で見てたら悔しかった。僕も(相撲を)取りたかった。今日は出られてうれしかった」と土俵に上がれる幸せをかみしめていた。【佐々木隆史】

下から刺激 木瀬部屋願う「関取10人」


 93年春場所、二子山部屋勢が10人も幕内に名を連ねた。優勝は小結若花田、準優勝は大関貴ノ花。史上最多の「同一部屋幕内10人」は翌夏場所まで続いた。

 その伝説には及ばないが、木瀬部屋が「関取10人」を視野に入れている。力士数37人は、佐渡ケ嶽部屋の41人に次ぎ2番目。関取数は幕内に宇良、徳勝龍の2人、十両に英乃海ら4人と現在6人。幕下には関取予備軍の上位15枚目までの5人を含め、15人もいる。

 元十両の28歳、西幕下5枚目志摩ノ海は「ウチは下からガンガン来るから厳しい。宇良の時のように、もう下に抜かれるのはごめんです」。すでに4勝2敗と勝ち越した。自己最高位西幕下3枚目の24歳、木崎は「部屋内の競争は感じます。僕は次勝って、来場所が(十両昇進の)勝負です」。3勝3敗。残る一番は絶対落とせない。

 元小結の29歳、東幕下9枚目常幸龍は、この日敗れて3勝3敗となった。小結の時「木瀬部屋がかつての二子山部屋のように…」と口にした男は「十両も大事ですが、やはり幕内で相撲をとってなんぼですよ」。お互いが刺激し合って、部屋全体がレベルアップすることを願っている。【加藤裕一】