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ヘビー級王座統一戦は来春か 簡単には決まらない事情も


 ヘビー級のWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を持つアンソニー・ジョシュア(28=英)と、WBC王者のデオンタイ・ワイルダー(32=米)の4団体王座統一戦が期待されているが、そんななか両陣営が早くも交渉の駆け引きを始めている。21戦全勝(20KO)のジョシュア、40戦全勝(39KO)のワイルダー。最重量級の英米決戦は来春が濃厚とみられている。

 この3月、統一戦に向けて両者は難関とみられた第一関門を突破した。3日、ワイルダーは元WBA暫定王者のルイス・オルティス(38=キューバ/米)と対戦し、ダウン寸前のピンチを乗り切って10回TKO勝ちを収めた。これで7度目の防衛戦すべてKO(TKO)で片づけたことになる。戴冠試合が判定勝ちだったためデビューからの連続KO勝ちは32で止まったが、世界戦で再び倒しまくっている。身長201センチ、オルティス戦での体重は約97キロと細身の体格だが、パンチにはスピードがあって破壊力もある。以前は耐久力やスタミナに疑問を投げかける関係者やファンもいたが、オルティス戦では両方とも問題ないことを証明した。

 ワイルダーが知名度と評価を上げたのに対し、31日にWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)との統一戦に臨んだジョシュアは、勝ったもののアピールに欠ける内容だった。プレッシャーをかけ続けながら危なげなくポイントを稼いだ末の大差の判定勝ちで、豪快なKOを期待したファンは肩透かしをくらったかたちとなった。それでも抜群の安定感をみせており、評価を落とすことはなかった。デビュー戦からの連続KO勝ちは20で止まったが、「ボクシングだから、こういうこともある。大事なのは私が3団体の統一チャンピオンになったことだ。ワイルダー、私と戦おう」とリング上からライバル王者に対戦を呼びかけた。

 両陣営は4団体王座の統一戦に向け下交渉を開始している。現時点で主導権を握っているのは、人気に加え3本のベルトを持つジョシュアだ。すでに報酬に関してはジョシュアが6、ワイルダーが4という比率で分配されることに両陣営が合意しているという。こうしたなか3団体王者陣営は先制打としてWBC王者に1250万ドル(約13億3700万円)の報酬を提示した。これに対しワイルダー陣営は「私たちの見積もりでは5000万ドル(約53億円)の報酬が見込まれているのに、その金額は解せない。私たちを軽視するのならばワイルダーは別の相手と戦うことになる」として、2年7カ月ぶりに復帰する元3団体王者のタイソン・フューリー(29=英)の名前を出してライバル陣営を牽制している。ジョシュア陣営も「提示した条件がのめないのならばジョシュアは別の相手と防衛戦を行う」と、こちらも譲るつもりはなさそうだ。

 ただし、これは両陣営の軽いジャブの交換とみられており、本格的な交渉はこれからということになる。英米対決だけに開催地や放送するテレビ局の問題もあり、そう簡単にスーパーファイトが決まるとは思えない。8月か9月に両者が1試合ずつを挟み、来年3月か4月に頂上決戦が実現、という可能性が最も高そうだ。

宮原健斗を支えるプロレス愛 ホーガン参考に高みへ

宮原健斗(2018年3月25日撮影)


 プロレスの世界でトップに立つ選手には、独特の雰囲気がある。畏敬の念を抱かせるようなオーラと、観客の期待を一身に集めるような存在。そんな選手が、全日本プロレスにも出てきた。3冠ヘビー級王者宮原健斗(29)だ。1番気に入っているのは、宮原がコーナーのロープに足をかけ、観客席に向かって手を耳にあて、歓声をあおるポーズつくる姿だ。

 それが、ある選手のポーズとダブって見えることがある。宮原が最も尊敬し、目標にもしてきた米国のスーパースター、ハルク・ホーガンだ。体格は一回りほど違うが、かつて世界を熱狂させたホーガンのように、宮原も全日本の観客を熱狂させている。

 「子どものころから、ビデオを借りて何回も見てきた。ただのあこがれだったんですが、今、チャンピオンになってホーガンの動きがとても参考になることが分かった。お客さんのじらし方であるとか、お客さんの求めるものに120%応えようとするパフォーマンスとか」。

 福岡の市立福翔高校を卒業して、健介オフィス入り。08年にデビューして今年が10年目となる。14年1月に入団した全日本では、16年2月に26歳11カ月で、史上最年少の若さで3冠ヘビー級のベルトを巻いた。そこから歴代2位の連続8回防衛を達成し、一気に団体のトップを背負う存在になった。

 「全日本の3冠王者は誰でも背負えるものじゃない。オレは、全日本を神様に託された、選ばれた存在だと思っています」と宮原は言い切る。その思いに負けないくらいの練習。練習と食事、寝るとき以外は、ほとんど昔のプロレスのビデオを見るというプロレス愛が、宮原を支えている。

 「全日本をさらなる高みに持って行きますよ。全日本はこんなもんじゃない」。趣味はないと言っていた宮原が、最近は歌手の安室奈美恵に注目しているという。「安室さんのコンサートで、アンコールへの持って行き方とか、マイクパフォーマンスとか参考になりますね」。やっぱり、プロレスのことしか考えていない。【桝田朗】

尾川堅一に6カ月資格停止処分、昨冬世界戦無効試合

会見を終え深々と頭を下げる、手前から帝拳ジム浜田代表、尾川(撮影・足立雅史)


 昨年12月に米ラスベガスで行われたボクシングのIBF世界スーパーフェザー級タイトルマッチで新王者となった尾川堅一(30=帝拳)が、米ネバダ州コミッションから6カ月間の資格停止処分を受けることになった。19日に帝拳ジムが記者会見を開き、発表した。

 尾川は今年1月、試合前の薬物検査で2種類の合成テストステロンに陽性反応を示していたこと判明した。ラスベガス滞在中の12月5日に行われた検査で陽性反応を示していた。テビン・ファーマー(米国)に2-1の判定勝ちを収めた王座決定戦(12月9日)の試合後の検査では陰性だったが、処分が下された。 試合結果は無効となり、タイトル獲得の事実も消える。同州コミッションは試合日から出場停止期間を6カ月としたため、処分は6月9日に解除される。本来は1年の停止だが、調査に全面協力したことなどが考慮されたという。また、ファイトマネーの20%となる罰金1万4000ドル(約150万円)も科せられ、同州で再び試合を行うには追加の薬物検査が求められた。

 会見で尾川は「このたびは自分のプロとしての自覚のなさでご迷惑をおかけしました。重く受け止め、今後このようなことがないようにします。すみませんでした」と深く頭を下げた。陽性発覚後の聞き取り調査などでも故意に摂取したものではないと主張してきたが、最終的には禁止薬物の摂取経路を明確に示すことができなかった。当初はアトピー性皮膚炎を抑える塗り薬が該当薬ではないかと考えてきたが、証明することができなかったという。

 IBFからの通知はこれからで、JBC(日本ボクシングコミッション)も今後処分が下る見込み。尾川は現役続行を望み、「リングに戻りたい。しっかり反省して、2度と起こさないようにしなければ」と険しい表情で決意を述べた。

 IBFは既に暫定王座決定戦として、尾川に敗れたファーマーと同級4位ビリー・ディブ(32=オーストラリア)に対戦交渉を指令していたが、今回の処分を受けて正規王座決定戦になる見込みだ。

厳しい表情で会見に臨む尾川(後方)。手前は帝拳ジム浜田代表(撮影・足立雅史)
記者からの質問に答える帝拳ジム浜田代表(手前)の横で厳しい表情を見せる尾川(撮影・足立雅史)

女帝アスカがSD移籍、襲撃受けたシャーロット救出

前スマックダウン女子王者シャーロット(右)を救出したアスカ (C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved


 WWEロウの女帝アスカ(36)が17日(日本時間18日)、米プロビデンス開催のスマックダウン(SD)「シェイクアップ」(選手入れ替え)に登場し、SD移籍が決まった。

 前SD女子王者シャーロット・フレアーが試合視察していた現王者カーメラらの襲撃を受けると、突然アスカが入場。シャーロットを救出した。(デーブ・レイブル通信員)

ヘビー級4団体王座統一も、壁を越えた王者同士の対決次々と


 昨年の夏あたりから同じ階級の世界王者同士が統一戦で対戦したり、クラスの異なる世界王者同士が拳を交えたりといったケースが目立つ。WBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)の主要4団体が17階級で世界王者を認定している現在、単純計算で68人もの「世界一」が存在するわけだが、そんななか王者同士の対戦は歓迎すべき状況といえる。誰が一番強いのか、どちらが強いのか、そんな声に応える試合は今後も増加していきそうだ。

 昨年12月には米国ニューヨークで五輪連覇の実績を持つ世界王者同士の対戦が実現し、WBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)が、2階級下のWBAスーパーバンタム級王者、ギジェルモ・リゴンドー(37=キューバ/米)に6回終了TKO勝ちを収めた。

 大晦日には東京でライトフライ級の王座統一戦が行われ、WBA王者の田口良一(31=ワタナベ)がIBF王者のミラン・メリンド(30=比)を終盤に引き離して判定勝ち、2団体王者になった。

 今年に入り、王者同士の対決は一気に増加した。ヘビー級の次に重いクルーザー級では大規模の賞金トーナメントが行われていることもあり、1月末にWBC王者対WBO王者、2月初めにWBA王者対IBF王者という2カードが続けて行われた。勝者同士の決勝戦、つまりWBC&WBO王者のオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)対WBA&IBF王者、ムラト・ガシエフ(24=露)の4団体王座統一戦は5月に予定されている。

 3月にはWBCライト級王者のミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)が、1階級上のIBFスーパーライト級王者、セルゲイ・リピネッツ(29=カザフスタン/露)に挑み、ダウンを奪って判定勝ちを収めた。この勝利でガルシアは4階級制覇を達成した。

 そして31日(日本時間4月1日)にはヘビー級でも王者同士の対決が実現した。WBAスーパー王座とIBF王座を持つアンソニー・ジョシュア(28=英)がWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)を12回判定で下して3団体の王座をまとめた。21戦全勝(20KO)ジョシュアは今秋か来春には40戦全勝(39KO)のWBC王者、デオンタイ・ワイルダー(32=米)との頂上決戦を計画している。ヘビー級の4団体王座が統一されれば、1988年にWBOが新設されてから30年で初のこととなる。

 このほか、今週末4月7日(日本時間8日)にはスーパーウエルター級でもWBAスーパー王者のエリスランディ・ララ(34=キューバ/米)対IBF王者、ジャレット・ハード(27=米)の統一戦が組まれており、1カ月後の5月12日にはWBCライト級王者、ホルヘ・リナレス(32=帝拳)がWBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)の挑戦を受けることになっている。

 統括団体が増えたことで世界王座の価値が目減りしてきたなか、関係者は様々な工夫を凝らして対応していく必要に迫られている。その最善策のひとつが団体や階級の壁を越えたスター選手同士の試合の実現であることは間違いない。この流れが続くことを願うばかりだ。

仙台女子岩田美香、赤金コスチュームで「絶対勝つ」

新コスチュームを披露する仙女・岩田(撮影・高橋洋平)


 仙台女子プロレスの岩田美香(21)が今日19日、新コスチュームで時間無制限で行われる木村花(20=レッスル1)戦(後楽園ホール)に挑む。前回の3月11日新宿大会では20分で決着がつかず「もう崖っぷち。ここで勝たないと。勝ちたいじゃなくて、絶対勝つ」と意気込む。

 現状を打破するため、2月にリングネーム「白姫美叶」を返上し、本名に戻した。美しい外見の一方で、実際は私服が黒一色で性格は男そのもの。好物の「にんにくチューブ」をそのまま吸う豪快な一面もあり、「正直、今まで名前に踊らされていた。今は素の自分を出せる。女らしさで売り出しているけど、あえて男臭さ、泥臭さを見せたい」と開き直る。

 さらにコスチュームは白を基調としたものから、大胆に赤と金を使用したデザインに変更した。「気持ちを高めるためにもゴージャス感を出したかった。あとは勝つだけ」。大一番用に「三角蹴り」を新たにマスター。木村の顔面に得意のキックをたたき込み、己の殻を破る。【高橋洋平】

帝拳期待の星・末吉大が強烈KOで12連勝

KO勝ちした末吉

<プロボクシング:スーパーフェザー級10回戦>◇18日◇東京・後楽園ホール◇観衆871人

 6月に世界ランク入りしたばかりのWBO世界スーパーフェザー級13位末吉大(26=帝拳)が強烈な左ボディーブロー一発で、初のメインイベントの大役を果たした。

 フィリピン同級6位ネルソン・ティナンパイ(24)に序盤から優勢に進めると、3回だった。「練習でもやっていましたが、狙っていたわけでない。無意識に出た」と、左拳を相手の右腹部にめり込ませた。ティナンパイはゆっくりと崩れ落ち、キャンバスでもん絶。そのまま10カウントを聞かせて2分32秒でKO勝ちを決めた。

 これで12連勝とした名門帝拳ジムの期待の星は、「リングに上がったら、特に気にすることなくやりました」と堂々とした試合ぶり。村田諒太を指導する田中繊大トレーナーは、そのパンチの特徴を「痛い」と表現する。「ただ拳が硬いのではなくて、インパクト、スナップの効かせ方などで選手のパンチは変わってくる。センスがある」と説明する。これまでは精神的な弱さ、コントールの課題を指摘される場面もあったが、本人も「徐々に抑えられるようになってきている」と自信を重ねる。

 日本タイトルは同門の尾川堅一が保持しており、挑戦は難しい状況。東洋太平洋タイトルは唯一の黒星を喫した伊藤雅雪が持つ。今後の他選手の動向次第になるが、「タイトルはほしいです」と素直に口にした。

バックランド17年ぶり来日、藤波も驚きの倒立披露

倒立してのストレッチをみせるバックランドに驚く藤波(撮影・阿部健吾)


 プロレスラー藤波辰爾(64)主宰の「ドラディション」(20日後楽園、21日大阪)に参戦する元WWF(現WWE)世界ヘビー級王者「ニューヨークの帝王」ボブ・バックランド(68)が18日に来日し、都内での会見で驚異の倒立エクササイズを披露した。

 約17年ぶりの日本に「この日が来ることを夢見ていた」と感謝し、現在も午前6時半起床で欠かさない日課を実演。倒立したまま脚を屈伸させ、「高校3年、大学1年とスパーリングをやっている。衰えていない」と誇った。70年代後半から5年以上WWFベルトを保持した伝説の男の健在ぶりに、藤波は「背筋がすごい。いい気合の入れられ方をした」と燃えた。後楽園ではタッグを組み、大阪ではタッグ戦で敵となる。

会見で肩を組むバックランドと藤波(撮影・阿部健吾)

鈴木みのる どこまで行っても本物感がある“強さ”

鈴木みのる


 プロレスの話を書こうと思うのだが、その前に別ジャンルの話を少々。

 ボクシングのWBOアジア太平洋フライ級王者・坂本真宏(27=六島)を取材した。彼は“私が落ちた”大阪市立大の現役大学院生で、4月1日に防衛戦を行う。つまりとても勉強ができる。それなのに“殴り合い”に足を踏み入れた。

 「う~ん…非日常ですかね。普通に生活してたら、あり得ない空間でしょ?」

 大相撲春場所の前相撲で土俵を踏んだ新弟子の神谷元気(15=陸奥)を取材した。彼は宮崎・川南町で生まれ育ち、地元の極真空手の道場で中学日本一になった。それなのに、全く別の格闘技を選んだ。

 「高校で別のスポーツをやろうかと思ってたんです。そんな時、昨年の秋、宮崎で陸奥部屋の合宿があって、参加させてもらったら、もう全然何もできなくて…。それで“おもしろいなあ”と思ったから」

 違うジャンルの話だが、2人が求めたものは“自分ができないこと”や、単純な素手の戦闘能力における“強さ”なのでは、と思う。乱暴に言えば、男なら誰もが強者への憧れがある。そこじゃないか、と思う。

 で、プロレスの話。子どもの頃、単純に「誰が1番強いのか?」と思っていたらアントニオ猪木が「IWGP構想」をぶち上げた。スタン・ハンセンがいて、ローラン・ボックなんかもいて、スティーブ・ウイリアムスとかも強烈やった。やがてUWFが生まれて、前田日明がいて、佐山聡がいて、藤原喜明がいて…で、リングス、パンクラス、UWFインターナショナル、藤原組とかに派生して…。今、プロレス界で強烈に“強さ”を発信してるんは、鈴木みのるじゃないか、と思っている。

 船木誠勝と腕を磨き、パンクラスを立ち上げ、キック・ボクシングの世界王者モーリス・スミスと異種格闘技戦をやって、ボロボロになった。そんなこんなのバックボーンを持って、ザ・プロレスラーとしてリングに立つ。だから「本気出したら、マジでヤバいんちゃうの?」と思わせる。

 新日本プロレスで言えば、オカダ・カズチカも、棚橋弘至も、内藤哲也も個性がある。キャラも濃い。魅力的なレスラーだ。でも、誰が1番怖そうか、ヤバいことやりそうか、と考えたら、やっぱり鈴木みのる、なのだ。狂気じみた表情、超傲慢(ごうまん)なたたずまい。イメージ作りの部分もあるやろうが、どこまで行っても本物感がある。試合後の取材も、ちょっとビビるしね。彼がいるから、オカダも棚橋も内藤も、より輝く。今のプロレスがあるのは、鈴木みのるのおかげやないか。何となくやけど、そう思う今日この頃である。【加藤裕一】

暫定王座の増加はボクシングの将来を危うくする


 王者が負傷や病気のために戦線離脱した場合に設けられることが多い「暫定王座」は、一時期は減少傾向にあったが、今年に入って再び増加している。善用すれば問題はないシステムだが、ビジネスを優先して利用した場合は大きなマイナス効果を生むリスクもあるだけに懸念する声は多い。

 英語で「INTERIM CHAMPION(インテリム・チャンピオン)」と表記される暫定王者の制度は、負傷した世界王者の留守を預かる存在として1980年代に設けられた。日本では90年代前半に網膜裂孔、網膜剥離に罹患したWBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎(大阪帝拳)や、対戦相手が決定戦を経たうえでその肩書を得てファンの間に認知されるようになった。

 この制度は負傷やトラブルなどに遭遇した王者に時間的な猶予を与えて救済するだけでなく、イベントも保護するという点で有効なシステムだが、一方でビジネスを優先するあまり悪用されるケースも目立った。特にWBAでは一時期、17階級のうち常時10階級以上で暫定王者が存在するという事態に陥ったほどだ。これに加えて「スーパー王者」や「休養王者」なども存在するため、収拾がつかない状況に陥りつつあった。WBAは「暫定王者は世界ランク最上位者という扱い」と弁明したが、ベルトが授与されたうえ防衛戦も認められるとあっては説得力に乏しいといわざるを得ない。

 こうしたなか数年前、日本は「WBAの暫定王座については世界王座と認めない」という方針を打ち出して自主規制に乗り出した。こうした圧力が効いたのかWBAは2年前に「世界王者は1階級にひとり」という当たり前の方針を打ち出し、団体内の統一戦を推し進めた。そのためか現在のWBAの暫定王者は4人まで激減している。

 しかし、この3月にはバンタム級で新たな、そして不可解な暫定王者が誕生、波紋を投げかけている。WBAのバンタム級にはスーパー王者としてライアン・バーネット(25=英)がおり、3月31日に指名挑戦者を相手に初防衛を果たしたばかりだ。また、いわゆるレギュラー王座には6度防衛中のジェイミー・マクドネル(32=英)が君臨している。マクドネルは5月25日に井上尚弥(25=大橋)の挑戦を受けることになっている。こうしたなかで暫定王座を設ける必然性はどこにも見当たらない。

 似たようなことはWBC、IBF、WBOでも起こっている。現在、主要4団体で合計10人以上の暫定王者が存在しており、この先もWBOのフェザー級やWBCのウェルター級とミドル級などで暫定王座決定戦が予定されている。増加傾向に拍車がかかっている感がある。

 ヘビー級やクルーザー級などで王座統一が進む一方で、無意味な暫定王座を頻発するという矛盾。この状況に歯止めをかけないと、ボクシングの将来そのものが危うくなってしまうのではないかと危惧している。