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逸ノ城の常識覆る縦の動き226キロ“押しつぶし”

大相撲春場所 14日目 ははたき込みで貴景勝を破り1敗を死守した逸ノ城(2019年3月23日撮影)

相撲の常識が覆るかもしれない。来場所で三役返り咲きが確実視される前頭逸ノ城(26=湊)が、14勝を挙げて優勝次点となった3月の春場所で、異次元ともいえる取り口を何度も見せた。従来、相撲で勝つには、前に出ての寄り切りや押し出し、後ろに下がっての引き落としやはたき込みが決まり手の大部分を占めている。いずれも「横」の動きだ。だが春場所の逸ノ城は「縦」の動きで、白星を量産した。

193センチの長身で、しかも関取衆最重量226キロの逸ノ城が、どっしりと構えて受けて立つ。中途半端な力で押し込めないことは一目瞭然。上体が伸び上がっては、びくともしないだけに、相手は低い姿勢で下から押し込もうとする。だが懐の深い逸ノ城は、これを組み止め、下に潜り込ませず上からズドン。春場所の14勝のうち、はたき込みで6勝、突き落としで3勝と、このパターンで勝ったのが大部分だ。

はたき込みは引き技、突き落としは土俵際などでの逆転技の印象が強いが、春場所の逸ノ城は違った。余裕を持って、狙い通りに仕留めていた。他に適当なものがないため、決まり手は、はたき込みや突き落としになっているが、実際のところは「押しつぶし」ともいえる内容だ。従来の決まり手では表現しきれない、枠に収まらない「縦」の動き。何より相撲界にはまだ、突然上から降ってくる200キロ超の重さを、背中で受け止めることを想定した稽古が確立しているとはいえない。対策のしようがないのかもしれない。

実は逸ノ城自身が、この取り口の異次元ぶりに気付いていないようだ。はたき込みは、内容が良くないとされ、現在行われている巡業中も「もっと前に押し出す、寄り切るような相撲を出していきたい」と、反省気味に語っていた。目標とする大関昇進のためには、相撲内容も求められており、はたき込みが多いことを課題として挙げていた。だが報道陣から、新しい取り口だと指摘されると「本当ですか!?」と、少しは自信を持った様子をのぞかせていた。

ただ、相撲の長い歴史の中で、ずっと追い求められている、前に出る姿勢は今後も理想型として必要不可欠だろう。その基本が強いからこそ、上から下への押しも効いてくる。「横」でも「縦」でも、自在に力を発揮できるようになれば、大関昇進も初優勝も遠くない。私生活では「まだ、しばらくは部屋に住む予定。地方場所とかで、みんな(若い衆)が先に移動していていない時とか、洗濯物とか洗い物とかがあって大変。自分でもできるけど、こんなに違うんだと感じるから」と、独り立ちは遠そうだ。だが土俵では、14年秋場所の新入幕から優勝争いに絡んで「怪物」の異名を取った逸材。相撲の常識さえも変える、本物の怪物になる日も遠くはないかもしれない。

【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大大相撲春場所 13日目 ははたき込みで御嶽海を破る逸ノ城(2019年3月22日撮影)

5連続KOの勢いか銀メダリストか 米英スター対決

3階級制覇の実績を持つWBO世界ウエルター級王者、テレンス・クロフォード(31=米)が20日(日本時間21日)、スーパーライト級の元王者、アミール・カーン(32=英)を相手に米国ニューヨークで2度目の防衛戦を行う。このところ世界戦で5連続KO勝ちを収めるなど飛ぶ鳥を落とす勢いのクロフォードと、17歳のときに04年アテネ五輪で銀メダルを獲得したカーン。スピードを売りにする米英のスター対決に要注目だ。

クロフォードはプロデビューした08年に頭部に銃弾を浴びるという事件に遇したが、軽傷で済んだためボクシング活動に大きな影響を及ぼすことはなかった。その6年後の14年3月にWBO世界ライト級王座を獲得すると、2度防衛後にスーパーライト級も制覇。この階級では主要4団体の王座を統一するなど通算6度の防衛を果たした。昨年6月にウエルター級に転向し、現在の王座を手に入れた。

ライト級時代は磨き抜かれた攻防のテクニックが目立ったクロフォードだが、最近はスピードを生かした攻撃に重点を置いて戦っている印象が強い。人気、注目度という点を意識しているのかもしれない。そのためか最近の5試合はジャッジの手を煩わせることなく終わらせている。通算戦績は34戦全勝(25KO)で、そのうち12試合は世界戦(12勝9KO)だ。

いまが旬のクロフォードとは対照的に、カーンは全盛を過ぎた印象が強い。スーパーライト級でWBA王座とIBF王座に君臨したのは09年~12年のことで、5年前にウエルター級に転向してからは5勝しているもののKOは1つだけだ。この間、16年5月には2階級上のミドル級王座に挑戦するという冒険マッチに臨んだが、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)の右一発で6回KO負けを喫している。戦績は37戦33勝(20KO)4敗で、右ストレートの切れに定評がある。

近況に大きな差があるためオッズは8対1の大差で王者有利と出ている。左右どちらの構えでも戦えるクロフォードが俊敏な動きで直線的なカーンを翻弄してしまうという見方が多い。それでもカーンは「クロフォードが向かってきても離れても対応できる。私は大きくて速い。彼に勝つために必要なものを持っている」と強気だ。

この日は前座カードも充実している。セミファイナルでは12戦全勝(10KO)のライト級ホープ、テオフィモ・ロペス(21=米)がエディス・タトリ(31=コソボ/フィンランド)との世界ランカー対決に臨む。このところ衝撃的なKO勝ちを続けて評価と期待値が急上昇中の16年リオデジャネイロ五輪戦士のロペスに要注目だ。

さらにリオデジャネイロ五輪バンタム級銀メダリストのシャクール・スティーブンソン(21=米)も出場。昨年7月に伊藤雅雪(28=伴流)とWBO世界スーパーフェザー級王座を争ったクリストファー・ディアス(24=プエルトリコ)とフェザー級10回戦で拳を交える。10戦全勝(6KO)のスティーブンソン、25戦24勝(16KO)1敗のディアス。こちらも楽しみなカードだ。

このほか12年ロンドン五輪8強のフェリックス・ベルデホ(25=プエルトリコ)対元WBA世界スーパーフェザー級暫定王者のブライアン・バスケス(31=コスタリカ)というライト級10回戦も組まれている。12年12月に来日して内山高志(ワタナベ)と対戦して8回TKO負けを喫したバスケスだが、注目度の高いベルデホとどんな戦いをするのか、なかなか興味深い組み合わせだ。

元貴公俊の貴ノ富士、同じ過ちはしない精神面が成長

春場所8日目、水戸龍を寄り倒しで破る貴ノ富士(撮影・上田博志)

「付け人とのコミュニケーションで、去年と同じ間違いはしたくなかった」。今場所の初日を出した3日目の支度部屋。西十両13枚目貴ノ富士(21=千賀ノ浦)は、間を置きながら、淡々と決意を語った。付け人は、もともと千賀ノ浦部屋に在籍していた幕下舛東欧、1年前に入門した序二段貴正樹らがつき、サポートに徹している。貴ノ富士は「初めてついてくれたけど、ちゃんとついてくれている」と感謝した。

あれから1年がたった。昨年初場所で新十両を決めながら、この日と同じ春場所8日目の同年3月18日に付け人を暴行。謹慎処分を受け、幕下に陥落した。貴公俊(たかよしとし)から改名した1月の初場所で再十両を決めた。1年ぶりとなる十両の舞台は、ここまで3勝5敗。「全ての力を使ってもいいくらい、相撲だけに集中したい」と意気込んでいる。

場所前の2月23日には双子の弟、十両貴源治との「貴源治・貴ノ富士双子後援会」の発起会が行われるなど、背負うものが増えた。「自分のことよりも、応援してくれるいろんな人の思いも背負っている」。21歳。1年前より、精神面の成長を実感している。【佐藤礼征】

双子の弟・貴源治(左)と貴公俊時代の貴ノ富士(2017年4月30日撮影)

北勝富士の話術は横綱級?つい引き込まれるトーク力

トークショーで歓声に手を振って応える大相撲の北勝富士(2019年3月1日撮影)

無口が美徳とされる角界だから、相撲中継のインタビューなどは正直おもしろくない。だが、普段の会話は別で、いろんな意味でトークがさえる力士はいる。

白鵬、鶴竜の両横綱は、さすがだ。白鵬の探求心は半端じゃない。初場所の朝稽古取材ではチベット仏教の「チャクラ」などに話題が及んだ。「人類の起源に興味があるんだよね」と、話がどんどんオカルト=神秘主義に偏ったりする。42回も優勝しとったら、常識、既成概念では満足できんのかもしれん。

鶴竜は日本語が抜群にうまい。発音、滑舌、リズム、豊富な語彙(ごい)。話題もサッカー、NBA、NFL、UFC…ととどまるところがなく「何でそんなに知ってんの?」と驚く。「日本人以上に日本語のうまい力士」と思う。

時の人の貴景勝、平幕の阿炎らのオフレコトークは切れ味抜群(オフレコなんが痛いけど)やし、御嶽海は間の取り方が上手やし…。そうこう書いている内に思ったけど、相撲のうまい人は話もうまいかもしれませんな。

最近のイチオシは、北勝富士だ。基本的にしゃべり好きなんやろうが、話し出したら止まらん。その内容も感心させたり、笑いを誘ったりと多種多様なのだ。

新三役での春場所初日、白鵬戦でもあり、朝稽古を取材した。全体の稽古を終え、座敷でストレッチポールの上で背筋を伸ばしながら、いきなり切り出した。

「…う、う~ん…俺“劇団四季力士”でいこうと思うんですけど」

は?

「舞台なんか全然興味なかったんだけど、知り合いに“チケットあるから行かない?”って誘われて渋々行ったら…。やっぱり生ってすごいんですよ。もうめっちゃ感動しちゃって」

ライオンキングを2回見た。リトルマーメイド、アラジン、ノートルダムの鐘も見た。

「大阪でも場所前に行きたかったんですよ。でも、チケット取れなくて」

生のすごさに引かれて、ジャンルは全然違うが、吉本新喜劇も2度、見に行ったらしい。

…と、まあ、こんな感じで唐突にネタを切り出してくる。その話しぶり、リズム、内容がとにかく楽しくて、ついつい聞き入ってしまうのだ。

土俵外の話題だけでなく、北勝富士は土俵の話も楽しい。8敗で負け越しが決まった翌日の春場所12日目。錦木に勝った。鮮やかな踏み込み、押し込みで腰の重さに定評のある男を押し出した。

直後の支度部屋。また自分から切り出した。

「遅いんですよね~。いっつもそうなんだよな~俺。結局、気持ちが楽になったら、こういう相撲が取れる。おこちゃまッス。今朝は5時半から6時の間に腹痛くなって、起きなかったもん。初日から毎日起きてたのに」

確かに取材が楽、というのもある。ほとんど勝手に話して、ネタを提供してくれるのだから。だが、しかし、こういうお相撲さんが強くなると、楽しい。新たなキャラクターやないですか。横綱、大関との上位戦や、話題の力士の印象を語るとか。土俵の話題が増えるでしょ?

だから、もっと頑張れ北勝富士です。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

春場所12日目に錦木(左)を押し出しで下す北勝富士(2019年3月21日撮影)

後輩貴景勝からもいじられる“愛されキャラ”大栄翔

大栄翔(左)と談笑する貴景勝

平成最後の場所となった春場所で22歳の新大関が誕生し、世代交代の波が一気に押し寄せた。その気鋭な若手の波に、25歳の大栄翔(追手風)も乗っている。

自己最高位の東前頭2枚目で迎えた春場所では、幕内上位で7勝8敗と奮闘。高安、豪栄道の2大関を撃破し、白鵬、鶴竜の2横綱にも善戦した。しかし、勝ち越しを懸けた14日目、千秋楽で連敗。勝てば新三役が有力だっただけに「すごいチャンスを生かせなかった。15日間続けての集中力を維持できていない。本当にもったいなかった」と、飛躍の中でも悔しさをにじませた。

高校相撲の名門校、埼玉栄高を経て角界に飛び込んだ。春場所は前頭2枚目以上に埼玉栄高のOBが5人。大栄翔も「(OBが)たくさんいるので刺激を受けた」と、発奮材料にした。持ち味は突き、押し。「(春場所は)前に出られた分、相手に圧力が伝わった」。時間を見つけて母校の相撲部へ足を運び、専任トレーナーの指導を仰いでフィジカルの向上に努め、タイヤを引くトレーニングなどで出足を強化した。

“愛されキャラ”としても存在感を放っている。3学年下の後輩、貴景勝とは高校在籍こそかぶっていないものの、兄のように慕われている。プロ入り後も母校に顔を出していたため面識があり、貴景勝(当時のしこ名は佐藤)が新十両を果たした16年夏場所あたりから仲が深まってきたという。先輩後輩の間柄だが、貴景勝にいじられることもしばしば。上下関係なく接するようになったのは「気づいたら、そうなっていました」。春場所前半には毎日のように、これまた高校の1学年後輩、平幕矢後(24=尾車)と宿舎近くの銭湯に通い詰めた。追手風部屋と尾車部屋の宿舎がともに大阪・堺市内で、自転車で約10分圏内ということもあり、仲のいい後輩と湯船につかって心身の疲労を癒やした。しかし、その矢後にいじられることも増えてきたという。大栄翔は「矢後は、幕内に上がってから調子に乗っているんですよ!」と、愛嬌(あいきょう)たっぷりの笑顔を見せながら訴えていた。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

笑顔の大栄翔(右)と貴景勝(2018年12月3日撮影)

最年長40歳の安美錦900勝と勝ち越しかけ千秋楽

安美錦

<大相撲春場所>◇14日目◇23日◇エディオンアリーナ大阪

関取衆最年長の40歳、西十両11枚目安美錦(伊勢ケ浜)が、史上8人目の通算900勝に王手をかけて千秋楽に臨む。

この日は徳勝龍に押し出されて7勝7敗となったが「あと1日。勝ってきたような相撲で集中できれば」と、落ち着いて話した。4場所ぶりの勝ち越しがかかる節目の900勝には「来場所に持ち越しかな」と冗談っぽく話しつつ、まだ現役生活を続けたい心の内をかいま見せた。

今場所の安美錦は特に、取組後に大勢の報道陣に囲まれる。横綱貴乃花の最後の対戦相手で、自身も兄弟で幕内を務め、師匠で元横綱旭富士の伊勢ケ浜親方は父のいとこ。今場所6勝未満なら幕下陥落が濃厚、引退も-。そんな中で初日から4連敗したが、5連勝と立て直し「前半を考えれば引退発表していてもおかしくない」と笑っていた。

一方で東日本大震災から8年の2日目には「みんな一生懸命頑張っている。星があがらないぐらいで落ち込んでいる場合じゃない」と、故郷青森と同じ東北地方の仲間を思った。十両残留が濃厚な6勝目を挙げた11日目には「40歳にもなって、まだ緊張する」と、胸中を明かした。力士という特殊な環境にいながら、一般に近い感覚を持つ。40歳でなお、存在感は増している。【高田文太】

パッキャオ認めた那須川 宣言通り強さと面白さ表現

試合後の会見で笑顔を見せる那須川(撮影・河田真司)

<RIZIN15>◇21日◇横浜アリーナ

キックボクシング界の「神童」那須川天心(20)が、ボクシング界のスーパースターに力を見せつけた。59キロ契約のキックボクシングルールで、ボクシング6階級制覇王者で現WBA世界ウエルター級王者マニー・パッキャオ(40)が推薦したフリッツ・ビアグタン(23=フィリピン)と対戦。パッキャオが見守る中、3回KOで19年RIZIN初戦を制した。

那須川が目の前で見ているパッキャオに「強い」と言わしめた。パッキャオ推薦のビエグタンは何度パンチを当てても倒れない。初めて戦うフィリピン人ファイターのタフさに苦戦したが、最終3回に左ストレートがさく裂。パンチのラッシュと膝蹴りでコーナーに追いつめ、勝負をつけた。憧れのパッキャオの前で「硬くなっちゃって」と反省も、「KOできてよかった。最大限一生懸命やれた」と晴れやかな表情をみせ、リングに上がったパッキャオと握手した。

実はパッキャオの影響を受けていた。空手からキックボクシングへ転向したころ、ボクシングのトレーナーにパッキャオの動画を見るよう薦められ、そのステップを学んだ。昨年大みそかに特別ボクシングルールでメイウェザーと対戦し、KO負け。パッキャオからは「そのファイティングスピリットに敬意を表する」とたたえられていたが、見てほしいのは強い姿。「パッキャオさんに、キックボクシング面白いなと思わせたい」。その宣言通り、強さと面白さを表現した。

これでキックボクシング戦績は30戦無敗。それでもさらなる進化を求める。約1カ月前から肉体改造に着手した。これまでやってこなかった筋肉トレーニングに加え、アスリート用の弁当を取り入れた。体脂肪が自然と落ち、体のキレが増した。「外国人とは骨格が違う。格闘家は楽に勝ちたい。体を作って、自分自身を高めていけば圧倒的な差を作れる」。ボクシングジムでのトレーニングも欠かさず、無敵の強さを求め続けている。

那須川は「RIZINってすごい舞台だと思うんですよ。僕にキックや総合、ボクシングをやらせてくれる」と感謝し、「強い相手と戦って、世界最強を目指したい」とあらためて宣言した。誰も見たことのない異次元の格闘家を目指す。【高場泉穂】

RIZINのリングに上がりあいさつするパッキャオ(撮影・河田真司)
2回、フリッツ・ビアグタン(右)をTKOに沈め、かめはめ波のパフォーマンスをする那須川(撮影・河田真司)

照ノ富士が一緒にゲームなどした天風と序二段で対戦

序二段の取組で土俵に上がった照ノ富士(撮影・鈴木正人)

<大相撲春場所>◇4日目◇13日◇エディオンアリーナ大阪

最高位が大関の照ノ富士(伊勢ケ浜)と前頭13枚目の天風(ともに27=尾車)が、序二段で対戦した。昭和以降、幕内経験者同士が序二段で対戦するのは初。幕内から序二段以下に番付を落とした力士は9人いるが、これまで対戦はなかった。結果は照ノ富士に軍配。左四つから右を抱えた照ノ富士が、最後は小手投げで2連勝とした。

観衆もまばらな午前10時半ごろの取組だったが、取組前から大きな拍手と歓声が起きた。西序二段48枚目の照ノ富士は両膝の手術や内臓疾患で5場所連続、同50枚目の天風は右膝の手術で4場所連続で休場していた。4度目の対戦で1勝3敗とされた天風は「パワーがある」と完敗を認めた。

実は2人は15歳から知り合いだった。鳥取城北高入学前の照ノ富士が、モンゴルから初来日した際に1週間、相撲部屋体験として尾車部屋で寝泊まりし、一緒にゲームなどもした間柄。照ノ富士は「相撲部屋はこういうものと教えてくれた友だち。そういうのを当たるたびに思い出す」と、しみじみ語った。天風も「楽しかった。思い出の一番になった」と笑顔だった。

2人を超える序ノ口まで番付を落とした元幕内の舛乃山は今場所、幕下まで戻っている。「お互いケガなく、一緒に上がっていきたい」。照ノ富士は、土俵下まで落ちた天風に手を差し伸べていた。【高田文太】

天風(手前)を小手投げで破る照ノ富士(撮影・鈴木正人)

石田匠バンタム級に苦戦も「目標は世界、ブレなし」

初のサウスポーとの対戦を辛勝の判定勝ちで終えた元日本スーパーフライ級王者石田匠(撮影・加藤裕一)

<プロボクシング:バンタム級8回戦>◇21日◇エディオンアリーナ大阪第2競技場

世界再挑戦を目指す元日本スーパーフライ級王者石田匠(27=井岡)が初めてバンタム級で試合を行い、初のサウスポー相手に苦戦した。

3-0判定勝ちだったが、日本バンタム級6位定常育郎(21=T&T)のアグレッシブなファイトに受けに回った。低い体勢で一気に距離を詰める相手に手を焼き、ボディーを食う場面が何度もあった。

スーパーフライ級で相手が見つからず、1つ上の階級で試合を組んだ。リング上のインタビューで「今日は全然ダメです。若くて勢いがあっていい選手でした」と言い、控室でも「すべてがはまらず、どうしていいかわからんかった」。サウスポー相手に練習をしてきたが、本番は勝手が違う。バンタム級のパワーにも押された。「サウスポーに苦手意識はなかったけど、やって見ると違った。僕に引き出しがなかった」とこぼした。

石田はスーパーフライ級でWBO4位、IBF5位、WBA6位、WBC11位と主要4団体で世界に挑める位置をキープ。本人は「(バンタムは)やっぱりパンチも重たい」と今の階級にとどまる意向だ。井岡一法会長も同じ考えで「団体を選べる立場じゃない。挑戦を受けてくれるならどこでも」と話した。

石田は「時間はかかるかもしれませんが、目標が世界チャンピオンであることにブレはない。絶対です」。17年10月、英国でWBA王者カリド・ヤファイに敗れてから1年半。夢をあきらめずに追いかけていく。

石田の戦績は28勝(15KO)1敗。

元日本スーパーフライ級王者石田匠(撮影・加藤裕一)

春場所前相撲デビュー大辻、視力低下の母に勇姿を

大辻理紀(2019年2月11日)

春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)が近づくにつれ、アマチュア相撲で実績を残した有望力士が続々と大相撲入りを表明している。

高校横綱の齋藤大輔が八角部屋、中学横綱の吉井虹が中川部屋…。その吉井に全国中学校体育大会(全中)の決勝で敗れ、準優勝だった大辻理紀(15)は高田川部屋に入門する。

177センチ、130キロの堂々とした体格は、中学生の中でも目を見張る。2月11日に東京・両国国技館で行われた白鵬杯。中学生の部で準決勝で敗れた大辻は「今回は悔しかったけど、今度はプロで頑張ります」と前向きに話した。

報徳学園中で大辻を指導した小寺貴之監督(34)は「教えたことをすぐ自分のものにできる。相撲のセンスがある」と話す。関脇貴景勝(22=千賀ノ浦)の母校で、同校相撲部の稽古では伝統的に「押せ」ではなく「起こせ」と指導するという。小寺監督は「最初に指導してから、すぐに起こすような押しができていた。プロでも活躍してほしい」。吸収力の高さに太鼓判を押し、大相撲での活躍へエールを送った。

母の真理子さんは病気で視力が低下しており、大辻も「早く家族に活躍を見せたい」と意気込む。新弟子検査は3月2日で、春場所で前相撲デビューする。「将来的には横綱を目指したい」と、早々に出世して、家族に勇姿を届ける。【佐藤礼征】 (ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)