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3階級制覇か大番狂わせか NYのリングに熱視線

今年9月、39戦無敗だったWBA、WBC世界ミドル級王者のゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)を僅差判定で破って戴冠を果たしたサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)が15日(日本時間16日)、米国ニューヨークで1階級上のWBA世界スーパーミドル級王者、ロッキー・フィールディング(31=英国)に挑む。11年と16年にスーパーウエルター級王者になっているアルバレスにとっては3階級制覇を狙っての挑戦となる。大方の予想は「アルバレスのKO勝ち」だが、体格で大きく勝るフィールディングは「スーパーミドル級は私の階級だ」と強気だ。

アルバレスは身長173センチ、リーチ179センチで、72・5キロが体重リミットのミドル級でも小柄な部類に入る。その分、胸板は厚く耐久力もあるが、身長183センチ、リーチ184センチの前WBA王者、村田諒太(32=帝拳)らと比較しても体格面での不利は否めない。以前は70キロ弱のスーパーウエルター級が主戦場だったほどだ。それでも最近の3戦は74・3キロ、72・5キロ、72・3キロと72キロを超す体重で戦い、馴染んできた印象が強い。

こうしたなか9月にはゴロフキンに競り勝ち、ミドル級で2度目の戴冠を果たした。1年前の初戦ではゴロフキンの馬力に押され気味だったが、再戦では体力負けすることなく戦い抜き、自信を深めた様子だ。戴冠後、アルバレスはDAZN(ダゾーン)と「5年間に11試合、合計3億6500万ドル(約412億円)」という“驚額”の契約を結んだ。いま最も稼ぐプロボクサーといってもいいだろう。その初戦として今回のフィールディング戦が組まれたことになる。

今回の試合は、ゴロフキンにも勝ち戦績を53戦50勝(34KO)1敗2分に伸ばしたアルバレスが圧倒的有利とみられているが、これはフィールディングが世界王者でありながら知名度が低いためともいえる。身長185センチ、リーチ190センチと大柄なフィールディングは今年7月にドイツで戴冠を果たしたが、それまでは英国外で戦ったことがなかった。もちろん今回が初の米国のリングとなる。戦績は28戦27勝(15KO)1敗と高い勝率を誇るが、唯一の敗北が3度のダウンを喫して1回TKO負けで、耐久力に課題を抱えている。それでもアルバレス戦の打診を受けた際は迷わず「イエス」の返事をしたという。相手は世界的なスター選手だが、フィールディングは「彼が優れたボクサーであることは認めるが、ミドル級よりも4キロ重いスーパーミドル級では私の方が強い」と自信をみせる。長い左ジャブで突き放しておき、それをかいくぐって相手が懐に入ってきたところを得意の左右アッパーで迎え撃つつもりだ。

だが、オッズは14対1で挑戦者のミドル級王者有利と出ている。アルバレスが左右に動きながら揺さぶりをかけて飛び込み、ボディと顔面に強打を打ち分けて攻め落としてしまうとみられているのだ。

アルバレスが超大型契約の初戦を華々しく飾るのか、それともフィールディングが大番狂わせを起こすのか。15日(日本時間16日)、ニューヨークのリングに要注目だ。

御嶽海の今年の1字「魅」を物語った九州場所千秋楽

九州場所の千秋楽で高安を下した御嶽海(右)(2018年11月25日撮影)

今年の漢字が「災」に決まった。関脇御嶽海(25=出羽海)に「今年の1字」を聞くと、10秒近く熟慮して「『魅』ですかね」と答えた。「今年は自分の魅力を存分に出せた年だったと思う。優勝も経験できたし、何も言うことないんじゃない。最後の一番とかもそうだしね」。

確かに、九州場所での千秋楽は「魅」を象徴していた。すでに負け越しが決まっている中、小結貴景勝(22=千賀ノ浦)を1差で追う大関高安(28=田子ノ浦)をすくい投げで破った。貴景勝の優勝が決まるか、優勝決定戦にもつれるか、そんな一番で1分近いせめぎ合いを制した。「最後の最後に、来年につながる相撲を取れて良かった」。満員の福岡国際センターを魅了させ、表情を和らげた。

今年は世間の厳しい目にさらされ、神経質になる部分があったかもしれない。名古屋場所では初日から11連勝と快進撃を続け、13勝で初優勝。周囲からは否応なく、秋場所での大関とりの期待が高まった。「(大関とり)は気にしていない」と繰り返したが、朝稽古では取材に応じず、付け人を通して記者にコメントを伝えることもあった。

取組では「御嶽海」と書かれたタオルが会場を埋め尽くす人気者。7月の七夕の短冊には「イケメンになりたい」と書くなど、土俵外でもファンを喜ばせる。九州場所の千秋楽を終え、支度部屋で見せた表情は気負いとは無縁だった。九州場所を制した貴景勝とは、初場所の番付で東西の関脇として肩を並べそうだ。18年の最後は話題をさらわれたが、19年はどちらが若手の筆頭と呼ばれるのだろうか。はたまた新鋭が出てくるのか。いずれにせよ、土俵外の暗い話題を拭い去る活躍に期待したい。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

棚橋弘至MVP「元号またいで」2年連続受賞宣言

MVPを受賞しポーズする棚橋(撮影・鈴木正人)

東京スポーツ新聞社制定18年度プロレス大賞の選考が12日に都内で行われ、新日本の棚橋弘至(42)が4年ぶり4度目のMVPに選ばれた。

リング内外でプロレス界を盛り上げた功績が評価され「今までの中で一番うれしい」と感慨ひとしお。平成最後の勲章と受賞回数歴代2位タイに満足せず、「元号をまたいで1発目もとる」と自身初の2年連続受賞を宣言した。

棚橋が記念すべき平成最後のMVPに輝いた。8月のG1クライマックスで3年ぶり3度目の優勝を果たし、完全復活をアピール。9月には映画「パパはわるものチャンピオン」で主演。NHK「クローズアップ現代+」、TBS「情熱大陸」など人気番組への出演で自身の知名度を上げるのみならず、プロレスの魅力を広く社会に伝えた。充実の1年を評価されての4度目の受賞に「今までの中で1番うれしいです」としみじみと喜んだ。

「クソ有名になります」。06年以降、リング上で言い続けてきた願いが「成就した年だった」。棚橋が思い描くのは、昭和のプロレス黄金期の風景だ。お茶の間で試合がテレビ中継され、老若男女がプロレスラーの名前を知り、近くに興行に来れば喜々として試合を見に行く-。そんな風景を再びつくるため、「自分が有名になればいいんじゃん」とずっと自らを鼓舞してきた。「道半ばですけど」と謙遜しながらも、その努力が開花した1年を満足そうに振り返った。

4度目の受賞は天龍源一郎、武藤敬司と並ぶ歴代2位タイ。「すごいとこ、入ってきましたね」と笑いながらさらなる野望も口にした。オカダ、内藤ら過去5人が達成している2年連続受賞はまだなし。「元号をまたいで、新しい元号の1発目をとれれば2年連続もできる。19年はのっけからとりに行きます」。“100年に1人の逸材”の名にふさわしく、史上初の元号またぎの連続受賞を狙うつもりだ。

来年1月4日のメインでIWGP王者オメガに挑む。「(ベルトを)巻いたら、新しい扉が開かれるような気がする」。年明け1発目の勝利で太陽がまた昇る。【高場泉穂】

以下、各賞

▽最優秀選手賞(MVP) 棚橋弘至(新日本プロレス)

▽年間最高試合(ベストバウト) ケニー・オメガ対オカダ・カズチカ(6月9日、新日本プロレス大阪城ホール大会、IWGPヘビー級3本勝負)

▽最優秀タッグチーム賞 諏訪魔(全日本プロレス)、石川修司(フリー)

▽殊勲賞 丸藤正道(プロレスリング・ノア)

▽技能賞 内藤哲也(新日本プロレス)

▽新人賞 林下詩美(スターダム)

▽女子プロレス大賞 藤本つかさ(アイスリボン)

▽レスリング特別表彰 ブダペスト世界選手権金メダリスト須崎優衣、奥野春菜、向田真優、川井梨紗子、乙黒拓斗

輪島功一氏、袴田さん支援する会で怒り「この野郎」

会見に出席した輪島功一氏(撮影・村上幸将)

1966年に静岡県で発生した強盗殺人事件で死刑確定後、14年の静岡地裁の再審開始決定で釈放も、6月に東京高裁から再審開始を認めない決定を受けた、元プロボクサー袴田巌さん(82)を支援する会の会見が12日、都内で行われた。

検察側が再収監を認めるよう最高裁に強く求める中、元WBAスーパーウエルター級王者の輪島功一氏は「検察も死ぬまで判断を待っているのか、この野郎!!」と怒りをあらわにした。

「袴田さん再収監を許さない」集会に参加した輪島功一氏(右)(撮影・村上幸将)

「最重量力士」となった250キロ謙豊は愛嬌抜群

新最重量力士の序二段謙豊

角界で最も重い力士は? 歴代最重量は292・6キロの元大露羅のミハハノフ・アナトーリ・ワレリリエチェ氏(35)だが、引退して勢力図が変わった。新たに「最重量力士」の称号を手にしたのは、歴代4位の250キロ、西序二段60枚目謙豊(29=時津風)だ。「ついに1位になりましたか。わははっ。ちょっとうれしい」。その効果なのか、今場所は1番相撲から無傷の6連勝と絶好調だ。

ワレリリエチェ氏とはすれ違えば談笑する仲だった。同じようなシルエットに親近感がわいたのか、引退前には浴衣を譲ってくれた。「今まで同じサイズの人がいなかったので、お下がりは人生初でした」とうれしそうに話した。

今の体形は「不自由しかない」と爆笑する。移動は全てタクシー。好物のうどんは1日多くて3玉と、他の力士と比べて多いわけじゃない。太るコツは「動かないこと」だという。

7年前に210キロで入門。1年足らずで幕下まで昇進したが、重さに耐えかねたのか左膝前十字靱帯(じんたい)が切れた。その後は5場所に1回休場するペース。今年の7月は蜂窩(ほうか)織炎で3カ月入院し「死ぬ手前だったらしいです」と豪快に笑い飛ばした。綱渡りの力士人生を歩むが、口調はどこまでも明るかった。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

18日、琴真鍋(左)を激しく攻める謙豊

WBSSバンタムは好カード目白押し 井上の相手は誰だ

階級最強を決める賞金トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級初戦は、第2シードのWBA王者、井上尚弥(25=大橋)が元王者のファン・カルロス・パヤノ(34=ドミニカ共和国)に70秒でKO勝ち、順当に準決勝に駒を進めた。試合時間は短かったが、そのなかでスキルとパワーを見せつけた衝撃のKO劇だった。このあと13日、20日、11月3日に準々決勝に臨むライバル6選手に与えたプレッシャーは大きいものがあったはずだ。

13日にはロシアのエカテリンブルクでWBO王者のゾラニ・テテ(30=南ア)対6位のミーシャ・アロイアン(30=アルメニア/露)が行われる。スーパー・フライ級に続いて17年4月に戴冠を果たしたテテは175センチのサウスポーの技巧派強打者で、初防衛戦では右フック一発で世界戦史上最短記録となる11秒KO勝ちを収めている。今年4月のV2戦では、フライ級で16度、スーパー・フライ級で11度の防衛実績を持つオマール・ナルバエス(43=アルゼンチン)に大差の12回判定勝ち、長丁場にも強いところを証明した。30戦27勝(21KO)3敗。

挑戦者のアロイアンはプロでは4戦すべて判定勝ちとキャリアは浅いが、アマチュア時代には12年ロンドンオリンピック(五輪)フライ級で銅メダルを獲得。11年と13年の世界選手権では優勝している。16年リオデジャネイロ五輪にも出場して準優勝したが、のちにドーピング違反が発覚して銀メダルを剥奪された。体格、技術、パンチ力で勝る第3シードのテテが勝ち上がりそうだ。

20日、米国フロリダ州オーランドでは18戦全勝(12KO)のIBF王者、エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)対17戦全勝(14KO)のジェイソン・モロニー(27=豪)のタイトルマッチが行われる。勝者が準決勝で井上と拳を交えることになっており、ファンの注目度も高いカードだ。KO率の高い全勝同士の組み合わせだが、12対1のオッズが出ているようにロドリゲス有利は不動と見られている。アマチュアで182戦171勝11敗の戦績を残しているロドリゲスはスピード、テクニック、パワーを備えており、WBA王者自身が「井上が危ないのではないか、と思われている相手」と認める実力者だ。どちらが勝ち上がるにしても井上との試合は興味深いものになりそうだ。

11月3日には井上を差し置いて第1シードに推されたWBAスーパー王者のライアン・バーネット(26=英)が登場する。英国グラスゴーのリングに迎えるのは、5階級制覇の実績を持つスター選手、ノニト・ドネア(35=比)だ。6対1で有利と見られているバーネットは昨年6月にIBF王座につき、4カ月後にはWBAスーパー王座も獲得。ロドリゲスとの指名戦を強制されたためIBFは返上したが、今年3月にはWBAスーパー王座の初防衛を果たしている。戦績は19戦全勝(9KO)だが、相手の質が上がっていることもあってか、このところ8試合続けてKOを逃している。

フライ級からフェザー級までの5階級で世界一になった実績を持つ43戦38勝(24KO)5敗のドネアは左フックや右ストレートに一撃KOの威力を秘めている強打者だが、近年はパワー偏重の雑な戦いぶりが目立つ。年齢に加え7年ぶりのバンタム級ということで減量など不安は少なくないが、万全のコンディションをつくることができればバーネット撃破だけでなく、トーナメントの台風の目になる可能性がある。決勝で井上と戦うことになれば盛り上がることは間違いない。

大本命が井上、対抗がロドリゲスとバーネット、それを追うテテという構図だが、13日、20日、11月3日の3試合で変化があるかもしれない。WBSSバンタム級トーナメント戦、今後の動きに注目していきたい。

栃ノ心かど番脱出を後押しした師匠春日野親方の叱責

秋場所14日目、栃ノ心(左)は下手投げで阿炎を下す

稀勢の里に沸き、白鵬が全勝優勝で締め、大団円と思ったら、貴乃花親方の年寄引退騒動…。いい悪いはさておき、これだけ話題が続く業界も珍しい。そんな中、ひっそり窮地を脱した男がいる。

大関栃ノ心である。

夏場所に昇進を決め、新大関場所の名古屋も5連勝。こりゃ優勝か? 今度は綱取りか? てな空気が漂い始めた6日目、玉鷲戦で右足親指付け根の靱帯(じんたい)を損傷し、急転、休場に追い込まれた。で、いきなりかど番で秋場所を迎えることになった。

天国から地獄ですな。相撲は取れても完治はしていない患部、療養優先による稽古不足の影響で思うように動けない。星が伸びず、気持ちがへこむ。場所中に「どうしても“負けたら、落ちちゃう”と考えちゃうね」とボソボソしゃべる姿は、優勝後の春場所で「負けるイメージが全然ないんだよ」と、ごく普通に話していた人間と同一人物とはとても思えんかった。

怪力自慢の大男がしょぼくれてると、おせっかいとわかっていても声を掛けたくなる。5勝3敗で稀勢の里戦を迎える9日目の朝。失礼を承知で聞いてみた。

万が一でっせ、今場所がダメで関脇に落ちても“ふん、来場所10勝したる”ぐらいに考えるとか…。できませんか?

「今場所8勝できないヤツが、来場所10勝できるわけないでしょ」

ま、まあ、そらそうかもしれませんが、気持ちの持ち方っちゅうかね…。

「今場所8勝の方が近いでしょ。簡単でしょ」

あかん、逆効果や…。

栃ノ心は最終的に14日目の阿炎戦で8勝目を挙げ、かど番脱出を決めた。そこは本人の踏ん張りが1番だったことは間違いない。ただ、最後に背中を押したものがあったとすれば、何だったのか?

13日目は正代に負けて、7勝6敗。あと2番で1勝すればいい状況にもかかわらず「もうダメですね」と禁句を口走った。心は折れる寸前だった。

14日目の朝稽古。土俵の栃ノ心に、師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)が怒鳴った。

「なにをデレ~っとやってんだ! 落ちたら(大関を)クビなんだぞ! わかってんのか?」

「はい」「はい」と答えた栃ノ心の表情がピリッとしたように見えたのは、気のせいか。知る限り、秋場所中の朝稽古で、親方が激しく叱責(しっせき)したのは、この1度だけ。

師弟や。恐れ入りました。

【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

井上尚弥弟の拓真、世界初挑戦は王者の緑コーデで

4回のスパーリングを消化したWBC世界バンタム級5位井上拓真(左)(撮影・藤中栄二)

ボクシングWBA世界バンタム級王者井上尚弥(25)の弟で、WBC世界同級5位拓真(22=ともに大橋)が同団体ベルトを意識した緑でコスチュームを統一する。30日に東京・大田区総合体育館で同級2位ペッチ・CPフレッシュマート(25=タイ)との同暫定王座決定戦を備え、8日は横浜市の所属ジムで4回のスパーリングを消化。トランクス、ガウンともにWBCのグリーンとホワイトを選択したことを明かした。

兄尚弥に続く世界王者を目指す30日の世界初挑戦に備え、井上拓はトランクス、ガウンともにグリーン、ホワイトを選択したことを明かした。「もちろんWBCベルトが緑なので。それが理由です」と声を弾ませた。9月のWBC指名挑戦者決定戦では緑色のラインを入れたヘアで臨み「今回はどうしようかと。緑も考えています」。既にWBCベルトを巻くイメージが出来上がっている。

この日は尚弥が動画撮影を担当する中で、4回のスパーリングに取り組んだ。テーマは「気持ちに余裕を持って冷静にいくこと」(井上拓)。ペッチと同じ長身サウスポーの練習パートナーに対し、自身の距離を保ちながら、強烈な右、左右の連打を打ち込んだ。「ペッチとはかみ合うスタイル。いい調整ができています」と自信にあふれた表情を浮かべた。

マッチメークが6カ月近く難航していた同級1位ウバリ(フランス)と同級3位ウォーレン(米国)による正規王座決定戦は今月22日に米ニューヨークで開催されることが決まった。井上拓が暫定王座をつかめば、いずれ正規王者との統一戦が待ち構える。「その先の戦いがあるだけ。目の前の試合に勝ちます」とクールな井上拓は今月に入って本格的な減量も開始し「飢えた感じになってきています」。心身とも充実した状態で、緑のWBCベルトに照準を合わせている。【藤中栄二】

弟拓真(右手前)のスパーリングを動画撮影しながらアドバイスを送るWBA世界バンタム級王者井上尚弥

固定観念とらわれない元貴乃花親方の今後の動向注目

都内の部屋の前で報道陣の取材に対応する貴乃花親方(2018年9月27日撮影)

相撲界のネタで、テレビの情報番組も話題に事欠かない。昨年11月から続いた元横綱日馬富士関の傷害事件に端を発した一連の内紛劇は、半年でようやくピリオドを打った、ようやく…。と思いきや貴乃花親方の突然の退職劇、直後には水面下で進んでいた元日馬富士関への訴訟問題が表面化し、そして元横綱輪島さんの訃報。何だかんだ言っても、さまざまな人間模様を映し出す相撲への世間の関心、興味は高いのだなと、あらためて感じさせる。

その話題の1つに、元貴乃花親方の政界進出話がある。正式退職が決まってから3日後のさる4日、馳浩元文部科学相の東京都千代田区にある事務所を訪問したことで、にわかに来夏の参院選出馬の可能性が取りざたされることになった。

訪問の目的を、日ごろから世話になっている同元文相への退職のあいさつとした元親方は「次、何をしようとするかとか、その余裕はなくしております」と打診の話はなかったことを明言した。政界進出を本当に考えているなら、水面下で人知れず動くのが普通だ。わざわざ報道陣監視の元で永田町を闊歩(かっぽ)する姿から、その信ぴょう性は薄いのでは、とみる向きは多い。

人様の第2の人生に口を挟むのは、余計なおせっかいだろうが個人的にも、そう思う。脇目も振らず一心不乱に、こうと思えば一直線…という性格からすれば、多方面に目配りし、器用に立ち居振る舞うことが求められる異分野への転身は考えにくい。

確かに、裸一貫で生き抜く角界にあって現役時代から退職するまで、相撲界を離れた世相への関心は高く文化人、財界人から知見を吸収しようとする姿勢はかいま見えた。今、ブログなどを見ても、元親方がつづる文章は角界人からすれば難解で分かりづらい文言が多い。悲しいかな、そんな一面も他の親方衆から、一線を画す垣根を作られる要因になったと思う。懐に飛び込めればフランクな性格が分かるが、そうでなければバリアーを張られているような。

つづってきた文章には、哲学的なものを想起させるが、政治は分かりやすさとのバランスが求められるだろう。その器用さは、持ち合わせていないと思う。相撲一筋で生きてきたのだから、それは当然だ。人気に当て込むのは選挙の常かもしれないが、公示板にポスターが貼られる姿は想像しにくい。

ただ一方で、これも個人的な淡い願望として「政治家・花田光司」も見てみたい気がする。数年前、元親方とお茶をしながら世間話をしていると突然、こんな話を切り出してきた。「織田信長って本能寺で死んだことになっているけど、俺はそうは思わないよ」と。家臣だった明智光秀の謀反にあい、49歳の生涯を本能寺で閉じた織田信長。歴史の面白さは、その史実を読み解くとともに、仮説を立てて脈略をつなぐことにもあると思う。確かに、本能寺では遺体がみつからなかった、他の場所で自害した、生き延びて後世を見守った…など識者による諸説はさまざまある。

元親方はその後も、お市の方やねねなど、深くかかわった人物の名前を挙げた上で、信長は生き続け、陰で人をうまく動かし、戦国の世が平静になるのを見届けたのでは…という自分なりの“仮説”を語っていた。そう思うに至ったのは、識者の仮説を見聞きしたり、書物を読んだのが発端かもしれない。いつのころからか日本史に興味を示し、弟子のしこ名に戦国武将の名前を入れたぐらいだ。それはどうであれ既成事実、固定観念にとらわれず物事を見ようという考えが根底にあるのだろう。それを「改革」ととられてしまったのは不本意だったのかもしれないが…。

相撲協会での人生は、本能寺の変の織田信長のように、風雲急を告げるように急転直下、幕を閉じた。ただ、この先もどんな形であれ相撲との縁は切れないはず。育てた弟子の出世も見届けなければならない。「大相撲は不滅です」と公式サイトにつづったように、その繁栄にどう携わるのか注目してみたい。【渡辺佳彦】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

稽古が楽しそう 秋巡業に見た稀勢の里の余裕

稀勢の里(2018年10月5日撮影)

9月の秋場所を10勝5敗で9場所ぶりに皆勤した、横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が、現在行われている秋巡業で精力的に稽古を重ねている。

秋巡業は10月3日に開始。栃木・足利市で行われた5日に、前頭隆の勝にぶつかり稽古で胸を出し、秋巡業で初めて稽古土俵に上がった。甲府市で行われた10日には、前頭佐田の海を相手に三番稽古を行い、相撲を取る稽古も再開。佐田の海には10番取って全勝だったが、付け入る隙を与えない完勝ばかりだった。

佐田の海とは、秋場所前の夏巡業中にも何日も胸を合わせ、勝敗では常に圧倒していた。だが内容では、必ずといっていいほど、何番かは一方的に敗れることもあった。勝敗で圧倒していたのも、稀勢の里の方が34キロ重い体格差を生かした「体力勝ち」の部分が大きかった。だが甲府市では、低く鋭い立ち合いから左を差し、腰が高くなる悪癖ものぞかせず、相手に何もさせずに寄り切る相撲が目立った。

横綱相撲の理想とも言われる、相手を受け止めつつ先手を奪っている「後の先」の域に達するまでには至っていないかもしれない。それでも、私が以前担当していた7、8年前、主に三役として大関を目指していたころのように、ガムシャラに強さを求めていたころと同じように映った。相撲好きの少年がそのまま大人になったような、若々しさ、いきいきとした雰囲気が全身から出ていた。

8場所連続休場から進退を懸けて臨んだ秋場所、さらにその前の夏巡業では、明らかにピリピリと張り詰めた空気をかもし出していた。それが今回の巡業では、自ら明るい雰囲気をつくって報道陣と談笑することまである。足利市での巡業では、隆の勝に約8分間もぶつかり稽古で胸を出した後に「新聞だと『軽めの調整』って書かれちゃうのかな。よく『軽めの調整』『軽めの稽古』って書かれるけど、四股やすり足だけでも軽くないんだから。1度やってみる? そうしたら軽くないんだなって分かるでしょ」と、笑って話していた。何度も隆の勝にぶつかられ、胸を真っ赤に腫らしながらも冗談っぽく話せるほど、心身ともに余裕が出てきた。

秋場所千秋楽後に行われたパーティーでは、後援者らに向けて「優勝争いはかなわなかったですが、また来場所、もっともっと強くなって優勝争いに絡み、また、いい報告をできるように一生懸命頑張ります」と宣言した。懸念された相撲勘が戻りきらない中で、秋場所は2ケタ勝った。そこに上積みする形で、秋巡業ではその後、関脇御嶽海らとも稽古を重ねている。何より、稽古が楽しそうだ。同じ相手と立て続けに何番も取る、本来は体力的にきつい三番稽古でさえ“軽めの調整”に見えてしまうほどの余裕が見える。表情にも明らかに自信が戻ってきた。稀勢の里が、再び優勝争いの中心に戻ってくる日は、遠くないかもしれない。

【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)