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オカダ・カズチカ「クールですね」SANADA挑発

オカダ・カズチカ(右)はSANADAにチャンピオンベルトを見せつける(撮影・柴田隆二)

<新日本:後楽園大会>◇23日◇東京・後楽園ホール

IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(31)が、SANADA(31)との5月4日の初防衛戦に向けた前哨戦で、初めてロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン勢を下した。

メインのスペシャルタッグでYOHと組み、SANADA、BUSHI組と対戦。一進一退の攻防の中、YOHとの連係もあり、コブラホールドからレインメーカーにつなげて、BUSHIを沈めた。

リングでマイクを持ったオカダはSANADAに向かって、「やっと熱を帯びてきたというのに、相変わらずクールですね」と挑発。「でも、まだまだ時間があるので、必ず熱くさせてやる」と言い放った。IWGPジュニアタッグ王者で26日広島大会での防衛戦を控えるYOHは「後楽園にいい風吹きましたー」と絶叫。「広島で防衛します!」とファンに約束した。

オカダ・カズチカ(右)はSANADAにエルボーを決める(撮影・柴田隆二)

王者リンチ戦闘不能、襲撃のエバンス満足げ WWE

5月19日のPPV大会でのロウ女子王座の防衛戦が決まった王者リンチ(左)と挑戦者エバンス(C)2019WWE,Inc.AllRightsReserved

<WWE:ロウ大会>◇22日(日本時間23日)◇アイオワ州デモイン・ウェルズ・ファーゴ・アリーナ

2冠(ロウ女子、スマックダウン女子)王者ベッキー・リンチが5月19日のPPV大会マネー・イン・ザ・バンク(コネティカット州ハートフォード・XLセンター)で挑戦を受けるレイシー・エバンスに襲撃された。 

アリシア・フォックスとのシングル戦に臨む前に姿をみせたエバンスから「マネー・イン・ザ・バンクではレディーへのリスペクトを教えてあげるわ」と挑発を受けた。試合でフォックスを必殺のディスアーマーで絞め、ギブアップ勝利を挙げると、背後から次期挑戦者に不意打ちを食らった。強烈なウィメンズ・ライト2発を顔面にたたき込まれて戦闘不能になり、満足した様子で赤いハットをかぶり直してエレガントにリングを後にしたエバンスを追いかけることはできなかった。

エバンス(右端)に殴られた2冠王者ベッキーリンチ(中央)(C)2019WWE,Inc.AllRightsReserved

初代タイガーが期待 藤田和之リアルジャパン初参戦

藤田和之(2018年3月25日撮影)

リアルジャパンプロレスが23日、都内で会見を行い、初代タイガーマスク佐山サトル(61)プロデュースによる「ストロングスタイルvol.2」(6月20日、東京・後楽園ホール)のメインカードを発表した。

リアルジャパン初参戦の藤田和之がケンドー・カシンと組みスーパー・タイガー、船木誠勝組と対戦する。

佐山は初参戦の藤田について「タックルを生かしたプロレスで地味ですが、その速さにはびっくりすると思う。そこを見てほしい」と説明した。

暴走するような内容になるのでは、と質問を受けた佐山は「ガチガチの試合がストロングと思われていますが、そうではない。男と男が戦って何ができるか、というハラハラドキドキの展開がストロングスタイル。リミッターを超えるところに期待をしています」と想定外の展開を求めた。

また、この日4月23日は38年前に1981年(昭56)にタイガーマスクが対ダイナマイト・キッド戦でデビューした記念日。佐山は今でも新旧のファンがその試合を覚えてくれていることに感謝し、「新間(寿)さんが作った虚像であり、実像。責任を感じます。ありがたい人生です」と話した。

初代タイガーマスクの佐山サトル(2018年9月20日撮影)

新日本ジュニア祭典「BOSJ」に初出場鷹木信悟ら

鷹木信悟

新日本は23日、5月13日に開幕するジュニアヘビー級最強決定戦「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」の出場選手を発表した。

田口隆祐(14年連続16度目、12年優勝)、タイガーマスク(18年連続18度目、04、05年優勝)、ロッキー・ロメロ(3年ぶり7度目)、SHO(2年連続2度目)、YOH(2年連続3度目)、ウィル・オスプレイ(4年連続4度目、16年優勝)、石森太二(2年連続3度目)、エル・デスペラード(3年連続4度目)、TAKAみちのく(2年ぶり7度目)、金丸義信(3年連続3度目)、BUSHI(4年連続7度目)、フリップ・ゴードン(2年連続2度目)、ティタン(6年ぶり2度目)、マーティー・スカル(3年連続3度目)、ドラゴン・リー(3年連続3度目)、ロビー・イーグルス(初)、ジョナサン・グレシャム(初)、バンディード(初)、鷹木信悟(初)、「X」の計20人。Xの正体は不明。会場で流された動画ではシルエットのみが映され、近日発表するとした。

2ブロックに分かれてリーグ戦を行い、各ブロック1位が6月5日に両国国技館で決勝を行う。

逸ノ城の常識覆る縦の動き226キロ“押しつぶし”

大相撲春場所 14日目 ははたき込みで貴景勝を破り1敗を死守した逸ノ城(2019年3月23日撮影)

相撲の常識が覆るかもしれない。来場所で三役返り咲きが確実視される前頭逸ノ城(26=湊)が、14勝を挙げて優勝次点となった3月の春場所で、異次元ともいえる取り口を何度も見せた。従来、相撲で勝つには、前に出ての寄り切りや押し出し、後ろに下がっての引き落としやはたき込みが決まり手の大部分を占めている。いずれも「横」の動きだ。だが春場所の逸ノ城は「縦」の動きで、白星を量産した。

193センチの長身で、しかも関取衆最重量226キロの逸ノ城が、どっしりと構えて受けて立つ。中途半端な力で押し込めないことは一目瞭然。上体が伸び上がっては、びくともしないだけに、相手は低い姿勢で下から押し込もうとする。だが懐の深い逸ノ城は、これを組み止め、下に潜り込ませず上からズドン。春場所の14勝のうち、はたき込みで6勝、突き落としで3勝と、このパターンで勝ったのが大部分だ。

はたき込みは引き技、突き落としは土俵際などでの逆転技の印象が強いが、春場所の逸ノ城は違った。余裕を持って、狙い通りに仕留めていた。他に適当なものがないため、決まり手は、はたき込みや突き落としになっているが、実際のところは「押しつぶし」ともいえる内容だ。従来の決まり手では表現しきれない、枠に収まらない「縦」の動き。何より相撲界にはまだ、突然上から降ってくる200キロ超の重さを、背中で受け止めることを想定した稽古が確立しているとはいえない。対策のしようがないのかもしれない。

実は逸ノ城自身が、この取り口の異次元ぶりに気付いていないようだ。はたき込みは、内容が良くないとされ、現在行われている巡業中も「もっと前に押し出す、寄り切るような相撲を出していきたい」と、反省気味に語っていた。目標とする大関昇進のためには、相撲内容も求められており、はたき込みが多いことを課題として挙げていた。だが報道陣から、新しい取り口だと指摘されると「本当ですか!?」と、少しは自信を持った様子をのぞかせていた。

ただ、相撲の長い歴史の中で、ずっと追い求められている、前に出る姿勢は今後も理想型として必要不可欠だろう。その基本が強いからこそ、上から下への押しも効いてくる。「横」でも「縦」でも、自在に力を発揮できるようになれば、大関昇進も初優勝も遠くない。私生活では「まだ、しばらくは部屋に住む予定。地方場所とかで、みんな(若い衆)が先に移動していていない時とか、洗濯物とか洗い物とかがあって大変。自分でもできるけど、こんなに違うんだと感じるから」と、独り立ちは遠そうだ。だが土俵では、14年秋場所の新入幕から優勝争いに絡んで「怪物」の異名を取った逸材。相撲の常識さえも変える、本物の怪物になる日も遠くはないかもしれない。

【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大大相撲春場所 13日目 ははたき込みで御嶽海を破る逸ノ城(2019年3月22日撮影)

佐山秘蔵っ子・舞海魅星、震災乗り越えデビューへ

握手をかわす初代タイガーマスクと東京女子プロレスからデビューする舞海魅星(みらい)

リアルジャパンプロレスが23日、都内で会見を開き、初代タイガーマスク、佐山サトル(61)の秘蔵っ子、舞海魅星(まいうみ・みらい=19)が5月3日の東京女子プロレス後楽園大会でデビューすると発表した。

岩手・宮古市生まれの舞海は、12年5月にリアルジャパンが行った巌流島大会に東日本大震災の被災者の1人として招待された。本州最東端の宮古市重茂地区、海のすぐ側にある実家は津波で流されなかったが、うに、あわび漁を営む父の船を失った。

「震災の悲しみはありましたが、試合を見る時だけは楽しくいられました」

佐山や新間寿氏とも交流を続けながら、いつしかプロレスラーになる夢を持つようになった。

「今度は自分が東北を始めとする方々に元気を届けたいです」

佐山は「プロレスをやりたい、と聞いたときはびっくりした。必ずチャンピオンになって、岩手の希望になってほしい」とエールを送り、「将来、指導してみたい」と直接指導を含め、舞海への支援を続けると誓った。

パッキャオにメイウェザー妄想かき立てるRIZIN

RIZINのリングに上がりあいさつするマニー・パッキャオ(2019年4月21日撮影)

横浜アリーナに、WOWOWのボクシング中継「エキサイトマッチ」のテーマ曲のファイティング・ブラッド(つのだひろ作曲)が流れていた。21日に開催された格闘技興行RIZIN15大会のセミファイナル前。花道に登場したのはスーツ姿のボクシング5階級制覇王者マニー・パッキャオ(フィリピン)だった。自分がボクシング担当だからなのだろう。何かを「持っていかれた」という感覚があった。

格闘技興行の観戦は初めて、というパッキャオはRIZINとの交渉を経て推薦したというフリッツ・ビアグタン(フィリピン)とキックボクシング界の「神童」那須川天心(20)のキックボクシングルールを視察。3回KOで下した那須川を「強い」と感想を述べた。試合後の会見で報道陣から那須川に質問が飛んだ。「将来的にパッキャオとの対戦は?」。那須川は「そこはノーコメントで」。競技は違うのに、この質疑応答が成立してしまう。それは昨年の大みそかのRIZIN14大会のメインイベント、ボクシング5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(米国)とのエキシビション戦があったからだろう。

国内でのボクシング公式戦は、日本ボクシングコミッションが管轄している。パッキャオやメイウェザーがRIZINのリングでボクシング公式戦はできない。昨年大みそかも、打撃はパンチのみという限りなくボクシングルールに近いエキシビション戦だった。キックボクシング、総合格闘技、ボクシングは異なるジャンルにもかかわらず、ボクシング界のスーパースター登場がRIZINで話題になり、来場だけで演出の1つになった。RIZINのプロモーション能力の高さだろう。

エキサイトマッチのテーマ曲が会場に流れた時の、胸騒ぎのような「持っていかれた」感は何だろうと考えた。先日来日したメイウェザーの関係者が前WBA世界ミドル級王者村田諒太(帝拳)との対戦プランを明かした。階級も近い両者の対戦は「ドリームマッチ」として想像できた。ワクワクした。いつかボクシング界で組まれるかもしれない夢カードの妄想は胸をかき立てる楽しみだ。

もしかしたら対戦するかもしれないという期待感-。実現するか否かは別にしても、ボクシング界で考えられるべき、メイウェザーやパッキャオの夢カードを想像する楽しみを、RIZINに「持っていかれた」のかもしれない。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

那須川天心戦で笑顔を見せるフロイド・メイウェザー(2018年12月31日撮影)

AJスタイルズが王者ロリンズ挑戦権ゲット WWE

5月19日のPPV大会でユニバーサル王者ロリンズ(左)に挑戦することが決まったAJスタイルズ(C)2019WWE,Inc.AllRightsReserved

<WWE:ロウ大会>◇22日(日本時間23日)◇アイオワ州デモイン・ウェルズ・ファーゴ・アリーナ

スマックダウンからロウに移籍したばかりの元WWEヘビー級王者AJスタイルズがユニバーサル王座挑戦権をゲットした。5月19日のPPV大会マネー・イン・ザ・バンク(コネティカット州ハートフォード・XLセンター)で同王者セス・ロリンズに挑戦する。

同王座を狙う6選手が2組に分かれて3WAY形式で対戦し、AJスタイルズはレイ・ミステリオJr.、現US王者サモア・ジョーと激突。ジョーのコキーナ・クラッチ、ミステリオJr.の619など必殺技の攻防が繰り広げられた。最後はAJスタイルズがマットに倒れ込んだジョーにめがけ、ミステリオJr.をスタイルズ・クラッシュでたたきつけて2人まとめて始末。ジョーから3カウントを奪ってみせた。

もう1組の3WAY戦でザ・ミズ、ドリュー・マッキンタイアを下したバロン・コービンと挑戦権を懸けてメインイベントで対決。AJスタイルズがスタイルズ・クラッシュやカーフ・クラッシャーと立て続けに狙い、回避され続けたが、何とかフェノメナール・フォアアームで倒し切った。勝利後、リングに出現した王者ロリンズと対峙(たいじ)したAJスタイルズは自信たっぷりの握手を交わしていた。

コービン(手前)にフェノメナル・フォアアームをたたき込んだAJスタイルズ(C)2019WWE,Inc.AllRightsReserved

後輩貴景勝からもいじられる“愛されキャラ”大栄翔

大栄翔(左)と談笑する貴景勝

平成最後の場所となった春場所で22歳の新大関が誕生し、世代交代の波が一気に押し寄せた。その気鋭な若手の波に、25歳の大栄翔(追手風)も乗っている。

自己最高位の東前頭2枚目で迎えた春場所では、幕内上位で7勝8敗と奮闘。高安、豪栄道の2大関を撃破し、白鵬、鶴竜の2横綱にも善戦した。しかし、勝ち越しを懸けた14日目、千秋楽で連敗。勝てば新三役が有力だっただけに「すごいチャンスを生かせなかった。15日間続けての集中力を維持できていない。本当にもったいなかった」と、飛躍の中でも悔しさをにじませた。

高校相撲の名門校、埼玉栄高を経て角界に飛び込んだ。春場所は前頭2枚目以上に埼玉栄高のOBが5人。大栄翔も「(OBが)たくさんいるので刺激を受けた」と、発奮材料にした。持ち味は突き、押し。「(春場所は)前に出られた分、相手に圧力が伝わった」。時間を見つけて母校の相撲部へ足を運び、専任トレーナーの指導を仰いでフィジカルの向上に努め、タイヤを引くトレーニングなどで出足を強化した。

“愛されキャラ”としても存在感を放っている。3学年下の後輩、貴景勝とは高校在籍こそかぶっていないものの、兄のように慕われている。プロ入り後も母校に顔を出していたため面識があり、貴景勝(当時のしこ名は佐藤)が新十両を果たした16年夏場所あたりから仲が深まってきたという。先輩後輩の間柄だが、貴景勝にいじられることもしばしば。上下関係なく接するようになったのは「気づいたら、そうなっていました」。春場所前半には毎日のように、これまた高校の1学年後輩、平幕矢後(24=尾車)と宿舎近くの銭湯に通い詰めた。追手風部屋と尾車部屋の宿舎がともに大阪・堺市内で、自転車で約10分圏内ということもあり、仲のいい後輩と湯船につかって心身の疲労を癒やした。しかし、その矢後にいじられることも増えてきたという。大栄翔は「矢後は、幕内に上がってから調子に乗っているんですよ!」と、愛嬌(あいきょう)たっぷりの笑顔を見せながら訴えていた。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

笑顔の大栄翔(右)と貴景勝(2018年12月3日撮影)

社会現象に…大相撲を世にしらしめた「若貴ブーム」

92年1月27日付日刊スポーツ東京最終版

<平成とは・大相撲編(1)>

平成は「若貴時代」とともに始まった。大横綱千代の富士が君臨していた大相撲界に、新時代を担う宿命を背負った兄弟力士が登場した。若花田(のちの若乃花)と貴花田(のちの貴乃花)。父は元大関貴ノ花で、期待にたがわず番付を駆け上がり、日本中を熱狂させた。「平成とは」大相撲編(3回)の第1回は、社会現象となった「若貴ブーム」を振り返る。

   ◇   ◇   ◇  

平成4年(1992年)1月26日午後5時。固唾(かたず)をのんで土俵に注目していた日本中が、その瞬間に沸き上がった。

大相撲初場所千秋楽。東前頭2枚目の貴花田は三杉里を寄り切り、14勝1敗で初優勝を飾った。19歳5カ月、史上最年少の幕内優勝。この場所、日刊スポーツ(東京版)は15日間、1面をすべて相撲で貫いた。歴史的快挙は号外で報じた。日刊スポーツの号外発行は78年11月21日、江川卓の「空白の1日」以来だった。

若貴兄弟は88年春場所、初土俵を踏んだ。「プリンス」と呼ばれ、人気だった元大関貴ノ花の2人息子。入門した時点で人気と角界の未来を担う宿命だった。ともに順調に番付を駆け上がる。特に貴花田は89年九州場所で17歳2カ月の新十両、90年夏場所で17歳8カ月の新入幕と次々最年少記録を更新。甘く精悍(せいかん)な見た目で強い。人気は必然だった。

時代が求めていた。大横綱千代の富士が長らく頂点に君臨する角界は、人気が停滞していた。そこに登場したのが父貴ノ花、おじに元横綱初代若乃花を持つ期待の兄弟。加えて「弟を守るために入門した」という若花田との兄弟愛。名門一家の物語は性別、世代を超えて人の心を引きつけた。91年春場所の貴花田対小錦の瞬間最高視聴率は驚異の52・2%(ビデオリサーチ調べ)。主婦層がターゲットのワイドショーも連日、兄弟を追いかけた。

社会現象ともいえるフィーバーは貴花田の初優勝後、さらに過熱した。92年春場所前。大阪入りする際は羽田空港でタクシーを機体に横付けし、到着した大阪空港ではVIP出口から脱出した。東大阪市の宿舎はひと目見ようと連日、ファンが取り巻く。狭い道路脇に最高500人。巻き込まれた高齢女性が転倒し、骨折する事故も起きた。そんな周囲を冷静に見つめた若花田は「昨年(の春場所で)、光司が11連勝してからパニックが始まったんだよな。俺も表に出られないかな」とつぶやいたという。

不器用で表現が下手な弟と器用で明るい兄の構図も、分かりやすかった。フィーバーの最中、しゃべりが苦手な弟を守るべく若花田は「俺が全部対応する」とマスコミの前に立った。ただ、貴花田は自身の人気に無頓着だった。当時を取材していた記者が述懐する。

「買い物に付き合ったこともあったが、ワーワーされてもまるで気にしない。こっちがひやひやするぐらいだった。プライベートでは付け人をつけなかった。『自分の召し使いじゃない』と。(関取になった)当時は17、18歳だったけど、芯はしっかりしていた」

順調な出世はただ、天分に恵まれただけではなかった。貴花田の新十両昇進時、「今までで一番後悔していること」の質問に「(明大中野)中学時代、クラスのいじめられっ子を助けられなかったこと」と返した。そんな卓越した精神面に、見る人が「殺し合いかと思うぐらい」の猛稽古。裏側には血へどを吐くほどの壮絶な努力があった。

新弟子検査に史上最多160人が殺到したのも92年春場所。貴花田は同年11月に女優宮沢りえとの婚約、そして年明けに破局。常に話題の、時代の中心にいた。そんな立場に置かれた状況を横綱になった貴乃花に聞いたことがある。

「孤独なもんです」

89年九州場所11日目から始まった史上最長の大入り満員は97年夏場所2日目、666日でストップした。「兄弟絶縁」や「洗脳騒動」。土俵外に注目は移り、貴乃花は孤立感を深めていった。親方としても。

平成最後の年、兄弟2人とも日本相撲協会を去っている。賭博、暴力問題に大揺れした国技も今、人気は隆盛を誇る。ただ「若貴」のような強烈な個は現れていない。平成の世に一時代を築いた。「大相撲」を幅広く知らしめたのは、何よりの功績。その土台があって、大相撲は令和の新時代を迎える。(敬称略)【実藤健一】

91年6月、消防訓練後に兄・若花田(右)とポーズをとる貴花田