上へ戻る

au版ニッカン★バトル

新着

リングにかける

73歳フレアー引退試合で見せた「男の意地」 11年ぶりリングへ猛練習1日500回スクワット

ジ・アンダーテーカー(上左)やブレット・ハート(下左端)、ミック・フォーリー(同2番目)と話すリック・フレアー(フレアーのインスタグラムより)

日米のマットで人気を博した米国人レジェンドレスラー、リック・フレアー(73)はラストマッチで「男の意地」を示していた。7月31日(日本時間8月1日)、米テネシー州ナッシュビルで開催されたプロレスイベント、スターキャスト5大会のメインイベントで「リック・フレアー・ラストマッチ」として引退試合に出場。公式マッチは11年9月以来、約11年ぶり。義理の息子となるアンドラデ・エル・イドロ(32)と組み、WWE殿堂入り者ジェフ・ジャレット(55)、ジェイ・リーサル(37)組と対戦。26分40秒、ジャレットを右ナックルパートと足4の字固めでKOし、3カウントを奪った。

何発も逆水平チョップを放ち、決めぜりふ「Wooo(ウー)!」と叫んだ。試合途中の場外乱闘で額から流血し、顔は血まみれになった。50年近くのキャリアを勝利で締めくくると、フラフラになりながらもリングサイドで試合を見届けた「地獄の墓掘人」ジ・アンダーテイカー、ブレット・ハート、ミック・フォーリーらと抱擁を交わすと涙を流した。

集結したファンから「フレアー、感謝します」コールを受けると、「ナッシュビルのファンを愛している。(ナッシュビル出身のアーティスト)キッド・ロックと一緒にお祝いする」とあいさつ。その後、アンドラデのサポートを受けつつ、自ら花道を歩いてバックステージに戻った。健康状態を懸念するファンの声が上がっていたが、試合後のロッカールームで医師2人に健康チェックを受け、流血以外の問題は特になかったという。フレアーは「空腹でご飯を食べにいきたい。ナッシュビルの夜を楽しみたい」と元気な姿のまま会場を立ち去った。

WWEでは08年のレッスルマニア24大会でショーン・マイケルズ戦が最後のリング。11年9月、米団体インパクト・レスリングでのスティング戦以来のファイトだった。その後、WWEなどでスーツを着用し、娘のシャーロット・フレアーのセコンドに入ったり、他選手と抗争したりとリングに絡んでいたが、試合はしていなかった。

フレアーは「リングに入り気取って『Wooo!』と言うだけの男だと思われているのは分かっていた。私がしなければならないのは自らを満足させ、みんなに『なんてこった』と言わせること」と往年のファイトを見せることを予告。トレーニング中では、1日500回のスクワットやエアロバイクなどのフィジカルから鍛えなおしていた。あまりのハードメニューで急激に心拍数が上がったり、胸の痛みに襲われて肺炎のような症状になったとも振り返っていた。足底筋膜炎も患ったそうだ。しかし「試合延期することは決してない。これを実現するために多くの人々が時間と労力を費やしてきた。今の状態を100%維持したかっただけだ」とプロ意識を貫いた。さらに「お酒を飲まないとうまくいかない」と引退試合まで毎晩、飲酒していた事実も口にしていた。

全日本プロレスでは天龍源一郎、ジャンボ鶴田、長州力、2代目タイガーマスク(三沢光晴)、輪島大士、新日本プロレスでも藤波辰爾、アントニオ猪木と対戦。米WCWでは武藤敬司の化身グレート・ムタと抗争を繰り広げた。米国では16度の世界王座(NWA、WCW、WWEを戴冠した実績を誇る。昭和、平成初期のプロレス界で歴史を築いてきたフレアーが、令和になった現在も大観衆の前で「まだやれる」というファイトをみせた姿は男らしくみえた。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

原功「BOX!」

元世界王者同士オルティス対ルイスなど8、9月はヘビー級注目ファイトが続々

今年に入りヘビー級トップ戦線は4月にWBC王者のタイソン・フューリー(33=英国)が初防衛に成功した以外に大きな動きがなかったが、その静寂を破るかのように8月と9月に複数の注目ファイトが予定されている。最たるものは8月20日(日本時間21日)にアラブ首長国連邦(UAE)で行われるオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)対アンソニー・ジョシュア(32=英国)のWBAスーパー、IBF、WBO3団体統一タイトルマッチだ。この11カ月ぶりの再戦の展望は次回にまわすとして、今回はそれ以外のランカー対決を紹介しよう。

ウシク対ジョシュアの前座では張志磊(ツァン・チレイ 39=中国)対フィリップ・フルゴビッチ(30=クロアチア)のIBF挑戦者決定戦が組まれている。2008年北京五輪スーパー・ヘビー級銀メダリストの張はプロでは25戦24勝(19KO)1分の戦績を残しており、現在はIBF15位にランクされている。IBF3位のフルゴビッチは2016年リオデジャネイロ五輪同級銅メダリストで、プロ戦績は14戦全勝(12KO)。大柄なサウスポー、張の体力は無視できないが、パンチ力とスキルで勝るフルゴビッチが8対1で有利と見られている。

9月4日にはアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスでルイス・オルティス(43=キューバ)対アンディ・ルイス(32=アメリカ)の元世界王者同士のサバイバルマッチが行われる。元WBA暫定王者のオルティスはサウスポーの技巧派強打者で、43歳のいまもWBC8位、IBF2位、WBO5位にランクされている。一方、3年前にジョシュアを7回TKOで破ってWBAスーパー、IBF、WBO王座を獲得した実績を持つルイスは現在、WBA12位、WBC5位に名を連ねている。戦績はオルティスが37戦33勝(28KO)2敗2無効試合、ルイスが36戦34勝(22KO)2敗。オルティスが直近の試合で2度のダウンを喫していることが響いてかオッズは10対3でルイス有利と出ている。

9月24日には英国マンチェスターでWBOの挑戦者決定戦が組まれている。1位のジョー・ジョイス(36=英国)と2位で元WBO王者のジョセフ・パーカー(30=ニュージーランド)が拳を交えるのだ。

2016年リオデジャネイロ五輪スーパー・ヘビー級銀メダリストのジョイスは身長198センチ、体重120キロの巨体を生かした攻撃型で、プロ転向後は14戦全勝(13KO)をマークしている。対するパーカーはスピードが持ち味の選手で32戦30勝(21KO)2敗の戦績を残している。壁のように迫るジョイスをパーカーはさばけるのか。オッズは地の利もあるジョイス有利と出ているが3対2と接近している。

そして、最大の注目カードは8月20日にサウジアラビアのジッダで行われるWBAスーパー、IBF、WBO3団体統一王者のウシク対前王者、ジョシュアの一戦だ。両者は昨年9月に英国で対戦し、技巧派サウスポーのウシクがジョシュアの強打を封じて12回判定勝ち、3本のベルトを奪い取っている。ともに1試合も挟まずに臨むダイレクト・リマッチ。ウシクの再びテクニックが冴えるのか、それとも今度こそジョシュアの強打が炸裂するのか。

<次回につづく>

原功「BOX!」

アルバレス対ゴロフキン、ウシク対ジョシュア…この夏から秋にかけて注目カードが目白押し

サウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)やアンソニー・ジョシュア(32=英国)ら、直近の世界戦で敗北を喫したトップ選手たちが8月から10月にかけて相次いで再起戦やリベンジマッチを予定している。彼らにとっては背水の陣で臨む戦いだが、決して楽観視できないカードが並んでいる。

先陣を切るのはライト級の元4団体統一王者、テオフィモ・ロペス(24=アメリカ)だ。今月13日(日本時間14日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでWBO世界スーパー・ライト級11位のペドロ・カンパ(30=メキシコ)と対戦する。ロペスは2020年10月にワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)を破って王座統一(WBCはフランチャイズ王座)を果たしたが、昨年11月にジョージ・カンボソス(29=オーストラリア)に不覚の判定負けを喫して4本のベルトを失った。無冠に戻ったのを機に1階級上のスーパー・ライト級に転向することになり、今回は新階級でのテストマッチでもある。戦績はロペスが17戦16勝(12KO)1敗、カンパが36戦34勝(23KO)1敗1分。

8月20日(日本時間21日)、サウジアラビアのジッダではオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)対ジョシュアのWBAスーパー、IBF、WBO世界ヘビー級タイトルマッチが行われる。両者は昨年9月、今回とは逆の立場で対戦し、技巧派サウスポーのウシクが12回判定勝ちで3団体王座を奪った。中盤から後手にまわったジョシュアは最終回にはスタミナも切れてダウン寸前に追い込まれるほどの完敗だった。その印象が強いためか再戦のオッズは8対5でウシク有利と出ている。戦績はウシクが19戦全勝(13KO)、ジョシュアが26戦24勝(22KO)2敗。

9月17日(日本時間18日)にはアルバレスがラスベガスでゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)との第3戦に臨む。両者は2017年と2018年にミドル級で2度拳を交え、初戦は引き分け、再戦はアルバレスが判定勝ちを収めた。しかし、「2試合ともゴロフキンが勝っていた」という意見も多く、長いこと決着戦が待たれていた。現在、アルバレスはスーパー・ミドル級の4団体統一王者だが、5月に1階級上のライト・ヘビー級で判定負けを喫しており、これが再起戦となる。一方、4月に村田諒太(36=帝拳)に9回TKO勝ちを収めたゴロフキンはミドル級のWBAスーパー王座とIBF王座を持ったままアルバレスの持つスーパー・ミドル級王座に挑むことになる。戦績はアルバレスが61戦57勝(39KO)2敗2分、ゴロフキンが44戦42勝(37KO)1敗1分。オッズは4対1でアルバレス有利に傾いている。

今年2月、フェルナンド・マルチネス(31=アルゼンチン)に判定負けを喫し、5年5カ月の長期政権に終止符を打つことになった前IBF世界スーパー・フライ級王者のジェルウィン・アンカハス(30=フィリピン)は、マルチネスとの直接再戦に臨むことになった。試合は10月8日(日本時間9日)、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで予定されている。戦績はアンカハスが37戦33勝(22KO)2敗2分、マルチネスが14戦全勝(8KO)。

ロペスの項で名前が出てきたカンボソスは6月、WBC王者のデビン・ヘイニー(23=アメリカ)に12回判定負けを喫し、WBCフランチャイズ王座を含め4本のベルトを失った。その試合契約に再戦条項があったため、10月16日にヘイニーとダイレクトリマッチに臨む。初戦ではヘイニーのスピードと技巧の前に闘志を空転させられて完敗を喫しているだけに、カンボソスにとっては厳しい戦いが予想される。戦績はヘイニーが28戦全勝(15KO)、カンボソスが21戦20勝(10KO)1敗。試合は初戦と同じくオーストラリアのメルボルンで行われる。

ロペス対カンパ、ウシク対ジョシュア、アルバレス対ゴロフキン、マルチネス対アンカハス、ヘイニー対カンボソス-これら夏から秋にかけて組まれているカードに要注目だ。

WWEの世界

デビュー20周年「神秘の王」レイ・ミステリオJr. 50歳現役の目標へ息子と亡き親友が力に

WWEデビュー20周年を迎えた「神秘の王」レイ・ミステリオJr.(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第34回WWEの世界>

「神秘の王」レイ・ミステリオJr.(47)が02年7月25日の初登場以来、WWEデビュー20周年を迎えた。身長168センチ、体重78キロの軽量級ながら08年以降はヘビー級にも参戦し、WWE王座も獲得。現在は息子ドミニク・ミステリオ(25)とタッグ戦線で活動中。次の目標は「50歳まで現役」を掲げるマスクマンはまだまだ健在だ。

◇  ◇  ◇

ロープを使った得意技の変形ブーメランキック「619」を武器にキャリア30年以上を誇る。47歳となった今も、ミステリオJr.はWWEトップレスラーとして躍動している。30日(日本時間31日)の真夏の祭典サマースラム大会(米ナッシュビル)ではドミニクと組み、フィン・ベイラー、ダミアン・プリースト組とのノーDQ形式(反則裁定なし)タッグ戦に臨む。人気選手としてのキャリアを歩みつづけているが、軽量級レスラーとしての体格差の影響で数多くの負傷も重ねてきた。

04年以降はヘビー級レスラーとも積極的に戦い、WWEヘビー級王座1度、WWE世界ヘビー級王座2度の計3度の最高位シングル王座を獲得してきた。インターコンチネンタル王座、USヘビー級王座、WWEタッグ王座も獲得し、WWEグランドスラムも達成してきたが、その「代償」も大きかった。

英BTスポーツのインタビューでは左ひざ前十字靱帯(じんたい)損傷で何度も手術を受けてきたことを明かした。「右(ひざ)は無傷だが、左(ひざ)は12回以上の手術を受けた。さらに上腕二頭筋を断裂し2度手術も受けている。この体のサイズで大柄な男たちに殴られているのだから」と告白している。

体重100キロを超えるレスラーたちと対等に戦うことへの肉体的負担は大きいに違いない。それでも「私のキャリアの中で最大の問題だったのはひざだけ」とも。「神は私を世話し、守ってくれた。背中や首は大丈夫なんだ」とWWEデビュー20周年を迎えられたことに安堵(あんど)した。現在も「引退の計画を立てたことは1度もない。ただ続けることが大切。50代が近づいてきた今、息子がプロレスをしている姿を見て、あと3年はやりたいと自分に言い聞かせる」と次なる目標として50歳現役を掲げた。

同じメキシコ系米国人としてWWEの人気スター選手だった親友の故エディ・ゲレロさんが05年11月、動脈硬化性疾患のために38歳で死去している。7月25日、米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催されたロウ大会でセッティングされたWWEデビュー20周年を祝うスピーチの際、ミステリオJr.は「エディ、あなたがいなければ、私はここにいなかっただろう。毎日、エディが恋しい。あなたがいつも見守ってくれていることは分かっている。ありがとう、エディ」と言葉を詰まらせた。

WWEでは当時7歳だったドミニクの親権を巡ってゲレロさんと抗争を繰り広げ、ラダーマッチで戦ったこともある。そのドミニクと組み、21年5月にはスマックダウン・タッグ王座を獲得し、WWE史上初の親子タッグ王者となった。亡き親友の分までミステリオJr.は現役を続けるに違いない。「50歳は超えたくない。でも気分が良かったら『もう1年いけるかな』とか、どうするか考えることになるだろう。今のところ、私の引退は常に50歳は超えないようになっているが」。何年たっても、神秘の王は輝き続ける。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆レイ・ミステリオJr. 本名オスカー・グティエレス・ルビオ。1974年12月11日、米カリフォルニア州チュラビスタ出身。メキシコ系米国人。叔父のレイ・ミステリオ・シニアからマスクとリングネームを引き継ぐ。89年4月にプロレスデビューし、AAA、WCWなどを経て、02年にWWEと契約。03年にWWEクルーザー級王座を獲得。04年にはロブ・ヴァンダムと組み、ケンゾー・スズキ、レネ・デュプリ組を下しWWEタッグ王座獲得。06年に男子ロイヤル・ランブル戦優勝し、WWE世界ヘビー級王座も獲得。09年にインターコンチネンタル王座初奪取。15年にWWE退団後、メキシコAAA復帰。18年には新日本プロレスにも参戦。同年10月にWWE復帰し、19年にはUSヘビー級王座を初奪取し、WWEグランドスラムを達成した。得意技は619。168センチ、78キロ。

息子ドミニク・ミステリオ(右)と組み、サマースラム大会でノーDQ形式タッグ戦に臨むレイ・ミステリオJr.(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
マスク、コスチュームも多彩な「神秘の王」レイ・ミステリオJr.(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
原功「BOX!」

WBC王者ジェシー・ロドリゲス 22歳の若武者がスーパー・フライ級トップ戦線に参入

日本初にして唯一の世界4階級制覇王者、井岡一翔(33=志成)が13日、同じく4階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(40=フィリピン)を退けてWBO世界スーパー・フライ級王座の5度目の防衛に成功した。このクラスには井岡のほかにWBAスーパー王座とWBCフランチャイズ(特権)王座を持つファン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)や元4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(35=ニカラグア)ら知名度の高い実力者が揃っているが、ここに来てさらに新しいタレントが登場した。WBC王者のジェシー・ロドリゲス(22=アメリカ)だ。この急成長中のサウスポーはスーパー・フライ級の勢力図を変える可能性を秘めている。

「ジェシー・ジェームス・ロドリゲス・フランコ」というフルネームを持つロドリゲスは、同じ階級のWBA王者、ジョシュア・フランコの4歳半下の弟としても知られている。世界ジュニア選手権準優勝、全米ジュニア選手権優勝などアマチュア時代から才能の一部を開花させていたロドリゲスは、2017年3月にミニマム級でプロデビュー。その後はライト・フライ級、フライ級、スーパー・フライ級、さらにはフェザー級と体重の幅をもって戦ってきた。

大きなチャンスが巡ってきたのは今年2月のことだ。WBC世界スーパー・フライ級王座決定戦に出場するはずだった元王者のシーサケット・ソールンビサイ(タイ)が体調不良のため棄権、代役のオファーが入ったのだ。もともと前座に出場予定だったロドリゲスは転がり込んだ好機に「イエス」と返事。本番では経験値の高い元王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)を軽快な動きとスキルで寄せ付けず、大差の判定勝ちを収めて戴冠を果たした。3回にはサイドに瞬間移動、相手の死角から右アッパーを突き上げてダウンを奪うなど高等技術も披露した。

WBCの指令に従い6月にはシーサケットを相手に初防衛戦に臨み、またもテクニックで元王者の強打を封じた。8回TKOの完勝だった。

この2勝を含めた戦績は16戦全勝(11KO)。身長163センチ、リーチ170センチと決して大柄ではないが攻防のバランスがよく、ボクシングIQも高い。22歳と若いうえ勝負度胸もある。世界王者にして成長途上の逸材といっていいだろう。

指名防衛戦をクリアしたあとロドリゲスは適正階級と思われるフライ級への転向を示唆したが、それに反して9月17日にラスベガスでV2戦が決まった。サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の大一番の前座でイスラエル・ゴンサレス(メキシコ)と対戦するのだ。33戦28勝(11KO)4敗1分のゴンサレスは過去に3度の世界挑戦経験を持っているが、王者を脅かすほどの力はないと思われる。ロドリゲスにとっては注目ファイトの前座で勝ち方が問われる試合といえそうだ。

この数年、スーパー・フライ級はエストラーダ、ゴンサレス、井岡、シーサケット、クアドラスといったビッグネームが支配してきたが、いずれも30歳を超えた。こうしたなか近い将来、WBO世界フライ級王者の中谷潤人(M.T)がスーパー・フライ級への転向を計画中と伝えられる。はたして井岡対ロドリゲス、あるいは中谷対ロドリゲスは実現するのか。

22歳の若武者が参入したことでスーパー・フライ級トップ戦線がさらに熱くなってきた。

リングにかける

新日本G1、半数占める海外勢「ぜひ生で見てほしい」社長が明かすユニークな魅力と素顔

大張高己氏(2019年10月21日撮影)

新日本プロレスの真夏の祭典「G1クライマックス32」が、16日に北海道・北海きたえーるで開幕した。団体創設50周年を迎えた今年のG1は、史上最多となる28人が出場。半数の14人が外国人レスラーで、そのうち5人が初参戦となった。新日本の大張高己社長(47)に、外国人G1戦士の素顔を聞いた。

◇   ◇   ◇

海外勢が熱い。今春のニュージャパンカップ覇者ザック・セイバーJr(35)やIWGP世界ヘビー級王者ジェイ・ホワイト(29)、USヘビー級王者ウィル・オスプレイ(29)ら、おなじみの外国人選手に加え、米国の新日本で活躍してきたジョナ(33)、デビッド・フィンレー(29)らが海を渡った。

中でも、大張社長が「ぜひ生で見てほしい」とイチオシなのが、オカダ・カズチカらと同じAブロックにエントリーしたトム・ローラー(39)だ。米総合格闘技UFCでも活躍した経験を生かし、初代NJPW STRONG無差別級王者を獲得した経験を持つ。満を持しての初参戦となった。

「MMAから上がってきた選手で、独特のプロレススタイルを持っている。力も十分だし、雰囲気もおもしろい」と大張社長。「なんせ、見た感じが野人。あの骨格の太さは見たことがない。普通のマッチョマンとは違う」。だからこそ、間近で見てほしいと呼びかける。初戦は26日、東京・後楽園ホールで、米AEWで活躍するランス・アーチャー(45)と激突する。

そのアーチャーは、3年ぶりにやってきた身長203センチ、体重120キロの怪物。「そうとう大きい。僕は怖くて話ができていないんです。威圧感がすごくて近づけない」。社長ですらも、本人を目の前にすると萎縮してしまうという迫力の持ち主だ。

2年連続5回目の出場、Bブロックに入ったタマ・トンガ(39)は、決意の夏を迎えている。今年3月に長年在籍してきたヒール集団「バレットクラブ(BC)」から離脱し、本隊と合流した。大張社長は、会場の中ですれ違った際に「今まで散々、悪い事をしてごめんね」と謝られたという。「人間が変わったということを言いたかったんでしょうけど、軽いなと。そんな程度で許されるのかと…」と苦笑。「でも、みんな許してくれているんでしょうね。邪道さんもそうだし、本隊と仲良くやっているんでしょう」と、生まれ変わった姿に期待する。

正義の道に進む者がいれば、悪に身を染めた者もいる。2年ぶり5回目の出場となったジュース・ロビンソン(33)は、今年5月に本隊からBCに寝返った。「普段は本当に陽気な人だった」と大張社長。「BCに入る前はアメリカの大会に行くと、ホテルのロビーで酒盛りを始めて、ピザやワインを買ってきて、抜け出せなくなるくらい一緒にお酒を飲んでいましたね」と懐かしんだ。

「何があったんだろうか…」と、大張社長の頭を悩ませているロビンソン。王座剥奪になったにもかかわらずUSヘビーのベルトを持ち歩き、Dブロック公式戦では元IWGP世界ヘビー級王者鷹木を下すなど、猛威を振るっている。

個性豊かなメンバーが勢ぞろいしたG1クライマックス。8月の東京・日本武道館大会では、史上初めてとなるユニット別応援シートも設置される。まだまだ夏は、始まったばかり。リング上の熱い戦いはもちろん、各選手の裏側にあるストーリーにも注目だ。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

31年ぶり2度目の茨城・古河夏巡業 2000席が即日完売 感染対策徹底してファンもてなす

この時を待ちわびていた相撲ファンも多いのではないだろうか。名古屋場所を終えて一息つくと、いよいよ夏巡業が始まる。コロナ禍前の19年12月の冬巡業以来、約2年8カ月ぶりの開催。各実行委員会では、チケットの販促や会場設営など来る日に備えて準備を進めている。

今回の開催地は首都圏の5カ所(8月5日=東京・立川、6日=千葉・船橋、7日=さいたま市、11日=茨城・古河、14日=埼玉・春日部)。このうち31年ぶり2度目の開催となる茨城・古河会場では、既に約2000席のチケットが完売した。担当者は「先行販売が始まったその日に売り切れになりました」と人気の高さに驚く。コロナ禍でも同会場では、ファンをもてなす心遣いを忘れない。禁じ手をユーモアを交えて紹介する「初切(しょっきり)」、相撲甚句、公開稽古、幕内取組などの恒例の催しに加え、力士たちとの記念撮影会も行う予定だ。なお初日の東京・立川会場のチケットは少し残っているという。

名古屋場所14日目までに戦後最多21人が休場に追い込まれるなど、コロナの感染拡大は止まらない。それでも、巡業は地域の活性化、普及面などで重要な役割を持つ。関係者はコロナ対策のさらなる徹底を図り、ファンに満足してもらえるよう努力している。【平山連】

大相撲裏話

コロナ続出の名古屋場所 力士像にマスク、全館消毒や大声声援禁止…場所完遂へ1人1人の努力

会場内にある力士像にもマスクが(撮影・平山連)

力士ら部屋関係者の新型コロナウイルス感染が相次ぎ、途中休場者が続出する今場所。感染症対策を徹底し、いかに大相撲を楽しんでもらうか。運営側は開催を継続するべく腐心している。

大声での声援の禁止を促したり、手洗い30秒を呼びかける掲示物を会場内に貼ったり。等身大ほどの大きさがある木製の力士像には口元にマスクを着用させ、来場客に注意喚起をしている。コロナ感染の急拡大で、10日目の19日から会場のドルフィンズアリーナでは座席での飲食を禁止した。熱中症対策として水分補給は認めるが、アルコール飲料は禁止。飲食の際は同アリーナ内外の専用スペースを利用するよう呼びかけている。

その日の全取組が終わると、清掃作業が行われる。出入り口、トイレ、客席の座布団1枚1枚に至るまで、スタッフが丁寧に消毒作業をする姿があった。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「とにかく千秋楽までなんとか開催していくため、できるかぎりのことをしている」と話した。地道な1人1人の努力が、本場所成功につながる。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

その日の全取組終了後に翌日に向けて清掃作業が行われる会場(撮影・平山連)
大相撲裏話

「ロレックスデイトナほし~い」3年ぶりの七夕企画 短冊に書いた願い事について聞いてみた

七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた千代大龍の短冊(撮影・鈴木正人)

関取衆の書いた七夕の短冊が中日まで会場内に飾られ、来場客を楽しませた。約3年ぶりの企画に参加した力士に願い事について聞いてみた。

「男気のある男になれますように」と書いたのは幕内の翠富士(25=伊勢ケ浜)。理由を尋ねると「おとこ気ある人の方がかっこよくないですか?」と同意を求められた。どんな人物が該当するのかと問うと「期待してもらったら、しっかり勝てるような人になりたいです」と力強く言った。

幕内の千代大龍(33=九重)は「(腕時計の)ロレックスデイトナほし~い」と願望たっぷり。数年前から手に入りづらくなったといい「正規店で300万で買ったとしても、質屋に入ると600万円ぐらいで売られるんですよ」と解説した。十両の天空海(31=立浪)は「甘い物をたらふく食べたいハート」と愛嬌(あいきょう)ある言葉を添えた。今場所は7日目から4連勝で好物の洋菓子カヌレやマスカットをご褒美に、白星を積み上げたい。

上位陣も「角番脱出」(大関正代)、「もっと上に行けますように」(関脇大栄翔)、「自分の相撲を極めたいです」(小結阿炎)など思い思い願いを書きつづった。新型コロナウイルスの影響が深刻さを増す中で「無事に15日間終わりますように」(横綱照ノ富士)と切に願うばかりだ。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた翠富士の短冊(撮影・鈴木正人)
七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた短冊(撮影・鈴木正人)
七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた一山本の短冊(撮影・鈴木正人)
原功「BOX!」

ドニー・ニエテス、井岡一翔から王座奪取ならず フィリピン世界王者5カ月で5→0

去る13日、4階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(40=フィリピン)が、東京・大田区総合体育館でWBO世界スーパー・フライ級王者の井岡一翔(33=志成)に挑んだが12回判定で完敗した。勝てばフィリピンの世界王者不在を4日で止めるところだったが、かなわなかった。フィリピンのボクシング界は今年2月の時点では5人の世界王者を擁していたが、一転して半年後の現在はゼロの状態が続いている。

今年1月22日、マーク・マグサヨ(27)がゲイリー・ラッセル(アメリカ)に判定勝ちを収めてWBC世界フェザー級王座を獲得したことで、フィリピンは5人の世界王者を抱えることになった。バンタム級WBC王者のノニト・ドネア(39)と同級WBO王者のジョンリエル・カシメロ(33)、IBFスーパー・フライ級王者のジェルウィン・アンカハス(30)、IBFミニマム級王者のレネ・マーク・クアトロ(25)、そしてマグサヨである。ベテランと若手のバランスがとれていて、なかなかのメンバーといえた。

ところが、その後、雪崩現象に突入した。4年半に9度の防衛を果たしていたアンカハスが2月26日に伏兵に敗れると、5月3日にはカシメロが王座を剥奪された。英国で予定していた防衛戦を前に減量目的でサウナを使用したことが規定違反にあたるというのが直接の原因だが、それ以前から試合をドタキャンするなどマイナス点の累積ともいえた。

6月7日、ドネアが3団体王座統一戦で井上尚弥(大橋)に2回TKOで敗れ無冠になったことは日本のファンも周知のとおりだ。7月1日、クアトロがメキシコ遠征で僅少差の判定で王座を失い、8日後にはアメリカで初防衛戦に臨んだマグサヨも小差の判定負けを喫して失冠。こうして2月中旬まで5本あったベルトが4カ月半でゼロになってしまったのだ。この間、ジョナス・スルタン(31)がカシメロの後継王者決定戦に出場したが判定負け。ニエテスも井岡に大差の判定で敗れて空白を埋めることはできなかった。

フィリピンは21世紀に入るタイミングでマニー・パッキャオというスーパースターが現れたことで世界的な注目を集めることになったが、もともとボクシング強国として知られている。歴代の男子世界王者は45人(ボクサーのレコード専門サイトboxrec.com)と多く、日本(94人)、タイ(50人)とともに軽い階級の選手層が厚い。現在もニエテスを除き5人のフィリピン選手が軽量級で各団体の最上位(1位)にランクされている。

いつ、誰が世界王者不在にピリオドを打つのか。日本とも深い繋がりのあるフィリピンのボクシング界の今後に注目していきたい。

リングにかける

44歳の国内現役最年長ボクサー野中悠樹が3度目防衛戦へ「燃え尽きるまで」現役にこだわる思い

国内現役最年長記録を更新する44歳、WBOアジアパシフィック・ミドル級王者野中悠樹(渥美)の3度目防衛戦が、24日に大阪・堺市産業振興センターで行われる。相手は18歳下の26歳、日本ウエルター級7位の能嶋宏弥(薬師寺)。ベルトを失えば現役も失う野中は「相手は死に物狂いでくると思うが、自分も同じ」。その思いに迫った。

19年2月、国内最年長記録の41歳で東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座を獲得した野中悠樹

試合2週間前にジムを訪れると、野中は大学生3人を相手に10ラウンドのスパーリングをこなしていた。汗だくになり、息も切れる。「さすがに体力的には厳しくなりましたよね。疲れもとれにくくなった」。それでも現役にこだわる理由を「とにかく世界に挑戦だけはしたい。トップレベルの世界を肌で感じたいんです」と熱をこめた。

かつてはサッカー少年だった。兵庫・尼崎市の小田南中で、2学年上に38歳で亡くなった元日本代表MF奥大介さんがいた。一応、FWでプレーしたが、有望だった兄には及ばず、サッカーは断念。手に職をつけようと浪速工高(現・星翔高)に進学、ギターを手にする高校生活だった。

転機は19歳。バイク事故を起こした。「別にやんちゃとかないですよ」と言うが、時速160キロで吹っ飛び、左鎖骨を骨折した。幸い命に別条はなかったが約2週間、自宅で安静療養となった。その間に考えた。「健康のありがたみを痛感した。ダラダラ過ごしていてはダメだと」。健康のためにたどり着いたのがボクシング。「一からやってみよう」と地元の尼崎ジムに入門。プロデビューは21歳と遅咲きだった。

ここまで4ジムを渡り歩き、その間にピンチは何度もあった。14年には左アキレス腱(けん)断裂に、左拳を骨折。それでも気持ちは折れなかった。「やめなあかんでやめたくない。世界戦をしたいという思いだけでした」と振り返る。

ただ、世界のミドル級の壁は分厚い。巨額なファイトマネーも動く。現在、WBO世界同級15位。ランキングを上げるため、今回の試合後は海外の強豪ランカーとの試合を模索する。そのための資金をクラウドファンディングで目標額300万円で募った。

ただ、負ければすべてのプランが崩れ落ちる。「もう少しで世界に手が届く。燃え尽きるまでやりたい」という生きざまを24日の一戦にぶつける。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

日本スーパーウエルター級タイトルマッチ10回戦 判定勝利した野中悠樹(2016年7月20日)

大相撲裏話

全員白星先行の武隈部屋 力士支える滞在先「くつろぎ天然温泉湯楽」心づくしの効果てきめん

男風呂と女風呂の入り口前に設けられた武隈部屋をPRするのれん(撮影・平山連)

<大相撲名古屋場所>◇8日目◇17日◇ドルフィンズアリーナ

武隈親方(元大関豪栄道)が独立し新設した武隈部屋が、名古屋場所中に滞在している「くつろぎ天然温泉湯楽」(愛知・津島市)。心の行き届いたおもてなしで力士たちを支えている。

隣接する土俵で稽古に励む力士たちに、栄養バランスを考えた食事や自慢の温泉やサウナを提供。効果はてきめんで、十両デビュー場所の豪ノ山(24)を筆頭に4人全員が中日を終えて白星先行とした。

同店の村雲稔樹店長によると、親会社の社長と知り合いだった武隈親方からの、滞在先として使いたいという要望がきっかけ。親方や豪ノ山など計5人を受け入れた。食事スペースには仕切りを設け、お風呂の利用は一般客と接触を避けるため、開店前と閉店後のみに限定。新型コロナ対策を徹底しつつ、快適に過ごせるよう腐心した。

店内には親方や豪ノ山を紹介する特製ボードが置かれ、男風呂と女風呂の入り口前には「武隈部屋」と書かれた大きなのれんが。朝稽古見学後に店に寄ってくれるファンもいるといい「滋賀や岐阜といった県外から来たという方もいて、店も活気づいてます」と同店長。好調を維持する力士たちの活躍を何よりの楽しみにしながら、残りの期間も最大限バックアップしていく。【平山連】

「くつろぎ天然温泉湯楽」の店内に置かれた武隈部屋をPRするボード(撮影・平山連)
「くつろぎ天然温泉湯楽」の店内に置かれた武隈部屋を紹介する特製ボード(撮影・平山連)
武隈部屋の滞在先となっている「くつろぎ天然温泉湯楽」(撮影・平山連)
「くつろぎ天然温泉湯楽」で実施中の武隈部屋の応援イベント(撮影・平山連)
WWEの世界

ロングヘア、規格外の両腕の太さ…ロウ女子王者ビアンカ・ブレアとは

ロウ女子王座ベルトを掲げる王者ビアンカ・ブレア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved

<第33回WWEの世界>

長く束ねたロングヘア、規格外ともいえる両腕の太さ。WWEのビアンカ・ブレア(33)は昨年4月にスマックダウン女子王座を獲得し、今年4月にロウ女子王座を奪取。女子最高位となる両シングル王座を手にし「EST(最上級)」の愛称通りの活躍をみせている。

陸上競技と重量挙げで鍛えたパワフルな技を駆使し、WWE女子のトップ戦線の先頭を突っ走るブレアの近況に迫る。

   ◇   ◇   ◇

自ら「EST」を名乗るロウ女子王者ブレアは全身のシルエットだけでもインパクトがある。長いロングヘアを束ね、両腕の太さを筆頭に筋肉質な肉体の持ち主。まるで格闘ゲームのキャラクターのような存在感がある。注目されたのは21年1月の女子ロイヤルランブル戦(30人出場の時差式バトルロイヤル)だった。最後の1人に残って初優勝。最高位王座挑戦権を得たとともに、ザ・ロック(ハリウッド俳優ドゥエイン・ジョンソン)に次ぎ、2番目となるロイヤルランブル戦を制覇したアフリカ系アメリカ人レスラーとなった。

必殺技KOD(キス・オブ・デス)はパワフルそのもの。アルゼンチン式背骨折りのように相手を担ぎ、顔面からたたきつける開脚式フェイスバスターとなる。レスラーを軽々と持ち上げるパワーは陸上競技の障害走選手として活躍した下半身のバネ、そしてWWE入り直前、負傷するまで続けていた重量挙げで鍛えた両腕の力がバックボーンにある。ベンチプレスの記録もWWE女子トップ。17年のメイ・ヤング・クラシックでは2回戦でカイリ・セイン(現KAIRI)に敗れたものの、着実にプロレスへの順応性をみせ、WWE女子トップまで駆け上がってきた。

昨年4月のレッスルマニア37大会ではスマックダウン女子王者サーシャ・バンクス、今年4月の同38大会ではロウ女子王者ベッキー・リンチと年間最大の祭典で2度も王座奪取する爆破力を持っている。ブレアの次のターゲットとしてリング復帰間近といわれる女子最高位王座12度戴冠を誇るシャーロット・フレアーを指名。過去3度対決しているが、1度も勝利できていない。「女王様」に向けて「誰が(王座に)必要なものを持っているのか、誰が本当にもっともタフなのか実際に示したい」とやる気満々だ。

またフレアーとの対戦する舞台も「サウジアラビアより良い場所はありますか」と今年11月5日、リヤドで開催される予定のWWEクラウン・ジュエル大会での中東決戦を指定するなど女子王者としての貫禄がついてきた。デビュー当初から自ら「EST」を自称し、約7年間の時を経てWWE女子で最上級の存在になろうとしている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆ビアンカ・ブレア 1989年4月9日、米テネシー州ノックスビル生まれのアフリカ系米国人。テネシー大時代は陸上競技の障害走に没頭。その後、重量挙げ選手としても活躍したが、肋骨(ろっこつ)軟骨炎などの負傷が原因で引退。元重量挙げ選手で五輪出場の経験もあるWWEレジェンド、マーク・ヘンリーに誘われ、WWEのトライアウトに参加。16年に契約し、WWE傘下のNXTで活動。20年4月からスマックダウン昇格。21年1月に女子ロイヤルランブルを制覇。同4月のレッスルマニア37大会でスマックダウン女子王座獲得。今年4月のレッスルマニア38大会でロウ女子王座を獲得。18年にWWEのタッグ戦線で活動するモンテス・フォードと結婚。フォードの前妻との間に誕生した子供2人と家族4人で生活。170センチ、75キロ。

長く束ねたヘアと両腕の太さがトレードマークのロウ女子王者ビアンカ・ブレア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved
EST(最上級)が愛称のロウ女子王者ビアンカ・ブレア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved
大相撲裏話

日本で合宿、相撲ウクライナ代表が米国で開催中の国際総合大会「ワールドゲームズ」で快進撃

ワールドゲームズで9個のメダルを獲得した相撲のウクライナ選手団(ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所提供)

ロシアの軍事侵攻で練習拠点を失い日本国内で事前合宿した相撲のウクライナ代表が、米国で開催中の国際総合大会「ワールドゲームズ」で快進撃を見せた。男女計8階級で金3個を含む計9個のメダル獲得。大会に出場した17カ国中、日本に次ぐ2位の成績を収めた。事前合宿の支援に当たったウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表の松江ヴィオレッタさんは「これ以上ない素晴らしい結果」と興奮が冷めない様子だ。

選手団は5月末に来日後、6月から大分・宇佐市と愛媛・西予市で実施。大会では合宿に参加した6人全員がメダリストになった。「『日本で練習できていなかったら、この結果にはならなかった』『このメダルの半分は君たちのおかげだ』と言ってくれて、活動をやって良かったと思いました」と心が打たれた。

選手たちの頑張りが、自身にとっても大きな刺激になった。「どんな状況でも生き生きと相撲に打ち込む姿に元気をもらいました」となつかしむ。「今度は戦争の理由じゃなくて、日本に来たい」と言ってくれた言葉が忘れられない。「ウクライナの相撲文化を知ってもらうという最初の目標は達成した」と大会に向けた支援は終えたが、引き続きサポートを惜しまない。「これからどういう広がりを見せられる。それが一番大事」と両国の架け橋となる。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大会前に日本で事前合宿を行った相撲のウクライナ選手団と支援者たち(ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所提供)
リングにかける

井岡一翔、オンリーワンのプライド 「賛否もあるし好き嫌いもある」井上尚弥とのスタイルの違い

5度目の防衛に成功し、一夜明け会見に臨んだWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔

ボクシングWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(33=志成)は「オンリーワン」としてのプロ意識を口にする。1階級上で3団体を統一しているWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)とのボクシングスタイルの違いについて問われても、そこにブレはなかった。

約18年間負けなし、自らも18年大みそかに敗れている元世界4階級制覇王者ドニー・ニエテス(40=フィリピン)との5度目防衛戦が13日に行われ、3-0の判定勝利でリベンジに成功。試合直後の記者会見で、井上とのスタイルの違いについて問われた。井岡は、こう言った。

「それはスタイルがありますから。僕には僕にしかできないスタイルがある。良くも悪くも自分しかできないボクシングがある。それには賛否もあるし、好き嫌いもある」。

先月7日に1階級上の井上尚弥(29=大橋)が現役王者で世界5階級制覇王者のノニト・ドネア(39=フィリピン)との3団体王座統一戦に臨み、2回TKO勝利を飾っていた。階級の違いはあれど、同じリマッチでもあり、状況は似ていた。同じ日本人世界王者でもあり、比較されるは当然だろう。それをすべて胸に受け止めた上での発言だったと思われる。

1度、井岡は現役引退している。世界王者であり続けること、プロボクサーの苦悩から解放された時期を経て、ボクシングへの捉え方や価値観が間違いなく変わったように見える。前述の発言にもあるように「ナンバーワン」から「オンリーワン」への変化と言える。同階級の最終ターゲットは2団体(WBAスーパー、WBCフランチャイズ)統一王者フアン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)と設定したものの、14日の一夜明け会見では「(王座統一の)タイトルというよりも、世界的に評価が高いエストラーダとやりたい」との言い方だった。

引退期間中だった18年2月、同階級の強豪が集うSuperfly2(米イングルウッド)を視察した際、WBC世界同級タイトル戦に臨むエストラーダの姿を目に焼きつけたことも現役復帰へのきっかけだった。その時に胸に芽生えた「世界的に評価のある選手と試合したい。米国リングで戦いたい」という原点の気持ちにはブレがない。

時に笑顔を交えながら井岡は報道陣に向け「みなさんも一緒に取材しても、違う記事を書くから紙面として違って(読者が)買われるわけじゃないですか。好みがあるじゃないですか。多分、プライドとしてこっちの記事がいいでしょと。それと一緒です。僕にしかできないことをみせて、僕が見せたい景色、一緒に景色をみたいと言っている人に対して、期待に応えたい」と率直な気持ちを口にした。自ら信念を貫くこと。ブレないこと。覚悟を決めて厳しい世界を生き残る術を伝えられたようだった。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

9回、井岡(右)はニエテスを攻める(撮影・足立雅史)
試合後、井岡(手前)を祝福するラウンドガールの、左から波田妃奈、ぽぽちゃん、倭早希(22年7月13日撮影)
大相撲裏話

大栄翔の日大大学院修士論文は「相撲文化継承への提言」 大関とりの足固めへ指導教授もエール

名古屋場所4日目 隆の勝(右)を激しく攻める大栄翔(撮影・鈴木正人)

関脇大栄翔(28=追手風)は今春まで日大大学院の総合社会情報研究科に通い、相撲部屋制度に通じる同族経営、ファミリービジネスについて修士論文を書き上げた。

以前その内容を問うと、次世代に相撲文化を継承するための提言を40ページにわたって論じたことを教えてくれた。

指導に当たった加藤孝治教授によると、論文では国内スポーツ界における大相撲を位置づけた上で、相撲部屋の経営手法や協会の制度的な課題を分析。大相撲の文化が活性化するために必要なことを提言した。「特徴的なのは、自分が相撲と出合った時の経験を交えて論じたこと。若い人たちが相撲と触れ合う機会をどうやって作っていくかという問題意識が高かった。たしか量的に5万字くらい書いていた」と懐かしむ。

「20代後半という現役バリバリで活躍している時に大学院へ通った経験は大きな意義」と話す加藤教授は、今も大栄翔と連絡を取り合うなど交流が続く。殊勲賞を獲得した先場所後に連絡を入れると、お礼の言葉が返ってきた。前半戦で出遅れたが、巻き返しを図る今場所。大関とりの足固めを目指す教え子へ「文武両道の『文』が修了したので、今度は『武』で頑張ってほしい」とエールを送った。【平山連

21年4月21日「日本大学校友会大阪支部」による化粧まわし贈呈式に出席した大栄翔(左端)
原功「BOX!」

4団体統一王者ジョシュ・テイラー、試合せずWBAスーパー王座とWBC王座手放す

昨年5月にWBAスーパー、WBC、IBF、WBOの主要4団体の世界スーパー・ライト級王座統一を果たしたジョシュ・テイラー(31=英国)が、ここに来て試合をすることなくWBAスーパー王座とWBC王座を手放した。各団体が指名する防衛戦の相手が異なり、それぞれの義務を果たすことが難しいためだ。井上尚弥(29=大橋)も目指しているように近年は4団体王座統一がトップ選手たちのトレンドになっているが、王座とモチベーションをキープし続けることは簡単ではないようだ。

テイラーは2019年5月にIBF王座を獲得し、5カ月後にWBAスーパー王者に勝って2本目のベルト収集に成功した。2021年5月、WBCとWBOの王座を持つホセ・カルロス・ラミレス(アメリカ)と頂上決戦を行い、2度のダウンを奪ったすえ12回判定勝ちで4団体王座の統一を果たした。このときの戦績は18戦全勝(13KO)だった。各メディアが発表するボクサーの格付けランキング、「パウンド・フォー・パウンド」でトップ10入りするなど高い評価を受けた。

4王座の初防衛戦は今年2月のこと。同国人でWBO1位のジャック・カテロールにダウンを喫するなど大苦戦したが、12回判定勝ちを収め辛うじてベルトを守った。

しかし、この試合後、WBO以外の3団体が自団体の1位選手との防衛戦を課してきたため、テイラーは身動きできない状態に陥った。

さすがに短期間内に3選手との防衛戦は不可能だ。そのためテイラーは5月にWBAスーパー王座を放棄し、7月初旬にはWBC王座も返上した。IBFはテイラーの今後の判断待ちといった状態だが、1位と2位で暫定王座決定戦を行う方向で調整に入っていると伝えられる。テイラーがIBF王座を返上した場合は暫定王者が正王者に昇格することになる。

テイラー自身はウェルター級転向も視野に入れているようだが、そのウェルター級では3団体王者のエロール・スペンス(アメリカ)とWBO王者のテレンス・クロフォード(アメリカ)が今秋にも4団体王座統一戦を行う計画が浮上しており、すぐに割り込める状況とはいえない。そこで2月に対戦したカテロールとの再戦が浮上しているという。僅少差の判定勝負だっただけに決着戦としての意味はあるが、そもそも格の違いがあるだけにテイラーにとってモチベーションの上がるカードとはいえないのが辛いところだ。

ところで、1988年にWBOが新設されてから34年。4団体のベルトを同時に保持した世界王者は下記のとおり9人いる。

(1)バーナード・ホプキンス(アメリカ=ミドル級)(2)ジャーメイン・テイラー(アメリカ=ミドル級)(3)テレンス・クロフォード(アメリカ=スーパー・ライト級)(4)オレクサンデル・ウシク(ウクライナ=クルーザー級)(5)テオフィモ・ロペス(アメリカ=ライト級)(6)ジョシュ・テイラー(英国=スーパー・ライト級)(7)サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ=スーパー・ミドル級)(8)ジョージ・カンボソス(オーストラリア=ライト級)(9)デビン・ヘイニー(アメリカ=ライト級) ※WBCのフランチャイズ王座を含む

このうちジョシュ・テイラー、アルバレス、カンボソス、ヘイニーの4人は昨年以降の達成者である。いかに4団体王座統一が近年のトレンドになっているかが分かるだろう。そして、現時点で4本のベルトを最も長い期間キープしたのは、次戦が1年1カ月後だったロペスだ。こちらは4冠保持の難しさが伝わってくるデータといえる。昨年11月に統一を果たしたアルバレス、今年6月に4冠王になったヘイニーに記録更新の期待がかかる。

井上は年内にもバンタム級4団体王座統一を目指しており、目標が達成されたあとはスーパー・バンタム級への転向が既定路線となっている。モチベーションをキープし続けるためにはベターな選択になりそうだ。

大相撲裏話

朝乃山復帰に思い寄せる故郷呉羽町「中学時代から散髪に来るヒロ君」理容店・川上さん思い出語る

地元富山市呉羽町から朝乃山を応援する理容店「ネッスル」の川上さん(撮影・平山連)

<大相撲名古屋場所>◇2日目◇11日◇ドルフィンズアリーナ

朝乃山にひときわ特別な思いを寄せているのが、故郷・富山市呉羽(くれは)町の住民たちだ。同町内の理容店「ネッスル」の川上奈々子さん(51)もそんな1人。「拡大鏡を使って番付表の中からしこ名を見つけた時には、本当にうれしかった」と心を躍らせた。

朝乃山は中学時代から髪を切りに来る常連客。散髪中はたわいのない話で盛り上がり、角界入り後も帰省した際には、ひげをそりに店に寄ってくれるなど義理堅い。「私にとっては中学時代から散髪に来るヒロ君(=本名・石橋広暉から)。昔から優しくて真面目で、うちの小さい子どもたちをかわいがってくれて面倒見が良いの」。思い出話に、笑みが絶えない。

場所中は、なじみの客たちとテレビを食い入るように見るのが恒例だった。「千秋楽に欠かさず店に来て、髪を切りながら観戦するお客さんもいた。勝ったらまるで自分のことのように喜び、負けたら通ぶって取組を分析する。そんなに詳しくないのにね(笑い)」と懐かしむ。

復帰後初の白星は、ただの1勝ではない。再び地元を相撲で盛り上げるための、価値ある1歩目になったはず。川上さんは「場所後に、また店に立ち寄っていろいろ話すのが楽しみ」と、再会する日を心待ちにしている。【平山連】

地元富山市呉羽町から朝乃山を応援する理容店「ネッスル」の川上さん(左)と店主の高見さん(撮影・平山連)
朝乃山の故郷富山市呉羽町の理容店「ネッスル」に飾ってある直筆サインや手形(撮影・平山連)
剛士丸(左)と立ち合う朝乃山(撮影・鈴木正人)
原功「BOX!」

4階級制覇「マイキー」ミゲール・ガルシア引退を表明 戦慄のKOシーンが忘れられない

フェザー級からスーパー・ライト級までの4階級で世界王座を獲得した実績を持つミゲール・ガルシア(34=アメリカ)が6月下旬、引退を表明した。「マイキー」の愛称で知られた正統派強打者のガルシアは16年のプロ生活で42戦40勝(30KO)2敗というレコードを残した。

父親エデュアルドがトレーナー、12歳上の兄ロベルトが元世界王者というボクシング一家に育ったガルシアは、アマチュアを経て2006年に18歳でプロデビューした。

2013年1月、オルランド・サリド(メキシコ)から4度のダウンを奪ったすえ8回負傷判定勝ちを収め、25歳でWBO世界フェザー級王座を獲得。初防衛戦を前に体調を崩して規定体重をつくれずに王座を剥奪されたが、5カ月後に1階級上のスーパー・フェザー級でWBO王座に挑むチャンスをつかみ、ローマン・マルチネス(プエルトリコ)に8回KO勝ちを収め2階級制覇を達成。このころが最初のピークだった。当時は父親に加え兄ロベルトの指導を受けていたが、ジムメートにはノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)もいた。

その後、プロモーターと摩擦が生じたためガルシアは2年半のブランクをつくることになってしまった。26歳~28歳という成長期を棒に振ったのは惜しまれるが、プロモーターを変えて戦線復帰後の2017年1月、22戦全勝のデジャン・ズラチカニン(モンテネグロ)を3回KOで下してWBC世界ライト級王座を獲得した。さらに2018年3月にはセルゲイ・リピネッツ(カザフスタン)を12回判定で破って4階級目となるIBF世界スーパー・ライト級王座を奪取。4カ月後にはIBF王者に勝って2団体統一も果たした。このころが2度目のピークといえた。

身長168センチ、リーチ173センチとライト級、スーパー・ライト級では小柄な部類に入る体格だったが、巧みな位置どりと正確な左ジャブ、そして伸びと破壊力のある右ストレートに定評があった。

スーパー・ライト級で王座統一を果たしたころは階級を超越したボクサーの格付けランキング「パウンド・フォー・パウンド」のトップ10の常連だった。

2019年3月には史上8人目の5階級制覇を狙ってエロール・スペンス(アメリカ)に挑んだが、身長で9センチ、リーチで10センチのハンデを克服することはできず大差の12回判定負け。これがプロ13年、40戦目での初黒星だった。翌年に再起を果たしたが、昨年10月、伏兵サンドル・マーティン(スペイン)に10回判定で敗れた。これがラストファイトとなった。

右アッパーから右フックをフォローしてズラチカニンを失神させた戦慄のKOシーンが忘れられない。

リングにかける

無期限休養宣言の武尊、リングを降りると“優しいお兄さん” 魅力と才能あふれる唯一無二の存在

6月27日、会見で心境を話す武尊

6月末、キックボクシングK-1の3階級制覇王者武尊(30)が、保持していたスーパーフェザー級王座を返上し、無期限休養を宣言した。同月19日に行われた「THE MATCH 2022」。RISE世界フェザー級王者那須川天心(23)との58キロ契約体重3分3回(延長1回)で、0-5の判定負けを喫した。1回に左カウンターでダウンを喫するなどし、失意の中で“世紀の一戦”を終えていた。

約10年間、最前線を突き進み続けた代償は、肉体や精神に表れていた。特に精神面ではパニック障害、うつ病と診断されるなど大きな支障をきたしていた。それでも「今日から海外で少しの間療養してきます。久しぶりに何も考えずにゆっくり時間を過ごしてまた元気な姿で帰ってきます!」と、将来のリング復帰を見据え、心身の回復に努める意向を示した。

リング上では「ナチュラル・ボーン・クラッシャー(生まれながらの壊し屋)」と呼ばれても、ひとたび降りると“優しいお兄さん”だ。18年に3階級制覇を達成し、唯一無二のキックボクサーになってからも、若手の時から態度は全く変わらなかった。所属するK-1ジム相模大野KREST渡辺雅和代表からは「困っている人がいたら助けてあげるタイプ」と評される。誰に対しても分け隔てない振る舞いは、記者間でも話題になるほどだった。

特に、子供に対してはひとかたならぬ関心を寄せる。保育士になろうと、高校は保育が学べる学校を選んだほど。格闘技も「子供たちに見てほしい」という思いは強く、「THE MATCH」の地上波での放送がなくなると、同じく子供好きの那須川とともに、都内の子供たち200人を自腹で招待した。

芸能界にも広い交友関係を持ち、信頼関係も厚い。ONE OK ROCKのボーカルTakaは「兄」と慕う存在で、SNSに度々登場。自身も中学時代にバンドを組んでいた経験があり、今でもギターやピアノなどの楽器演奏をたしなむ。歌唱力にも定評があり、過去にはテレビ番組「THEカラオケ★バトル」の「芸能界隠れ歌うま王決定戦」にも出演。アグレッシブな試合からは想像もつかない優しい歌声は、武尊のユーチューブチャンネルでも聞くことができる。

格闘家としての強さだけではなく、人間としてもさまざまな魅力と才能にあふれる武尊。地元鳥取の、穏やかな海岸線が続く弓ケ浜の白砂や、明峰・大山(だいせん)の緑のように、こらからもファンに夢を与える唯一無二の存在であり続ける。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

THE MATCH 2022 判定勝ちした那須川天(右)は雄たけびを上げる。左は武尊(2022年6月19日撮影)
THE MATCH 2022 判定勝ちの那須川(右)は武尊に深々と頭を下げる(2022年6月19日撮影)