ブリッジャー級初代王者オスカル・リバス、網膜剥離で引退の危機 階級新設も世界戦1試合だけ
WBCが2020年11月に新設した18階級目のクラス、ブリッジャー級の初代王者、オスカル・リバス(35=コロンビア)が昨秋に網膜剥離を患い引退の危機にある。WBCは「休養王者」の扱いをしてリバスの状態をみながら去就の意思確認をしていくとしているが、王座が宙に浮いたかたちとなっているのは事実だ。ブリッジャー級新設から2年以上が経ったが、開催された世界戦は決定戦の1試合だけ。リバスの選手生命だけでなく階級の存在そのものが危うくなっている。
ブリッジャー級はWBCが「重量級の体格差を少なくして選手の健康・安全性を担保する」ことを理由にクルーザー級とヘビー級の間につくった階級で、体重の幅は200ポンド(約90.7キロ)以上、224ポンド(約101.6キロ)以下とされる。ただし、「ヘビー級の体重で戦うことも可」とするなど曖昧な部分もある。階級名は、犬に襲われた妹を救うために闘った6歳の男児の名前から付けられた。
ライト(軽量)、ミドル級(中間)、フェザー(羽)、フライ(蠅)など重量に関係のある階級名とかけ離れた名称だけに、それだけで違和感を抱くファンは少なくないだろう。
WBCは毎月、各階級の世界ランキングを40位まで発表しており、2020年12月からブリッジャー級も加わった。6カ月間は猶予期間としてヘビー級やクルーザー級からの転向者を募ったが、2年以上経っても40位まで埋まることはなかった。2022年をみると4月には26位まで選手がリストアップされていたが、5月=25位、6月=21位、7月=20位、8月=20位、9月=18位、10月=21位、11月=20位、今年1月に発表された最新ランキングでも20位までしか埋まっていない。
主要4団体の残り3団体-WBA、IBF、WBOは静観の構えをとっていたが、いまのところ追従する動きは見られない。賢明な判断といえよう。
新階級の苦戦は、この2年の間に開催された世界戦が1度だけだという点にも表れている。ヘビー級で活躍していたリバスと、クルーザー級のライアン・ロジッキ(カナダ)の王座決定戦が行われたのは2021年10月のこと。新設から約1年後のことである。その後、初代王者となったリバスは2022年8月にルーカス・ロザンスキー(ポーランド)と初防衛戦を計画したが、イベントそのものが中止に。今年1月、リバスはヘビー級ランカーと対戦する予定だったが、そのタイミングで網膜剥離が判明している。防衛戦を行わないまま休養状態に入ってしまったわけだ。
こうした事態を受けWBCはリバスを“休養王者”にスライドさせ、1位のアレン・バビッチ(クロアチア)と3位のロザンスキーで王座決定戦を行い、2位のライド・メルヒー(コートジボワール/ベルギー)と4位のケビン・レリーナ(南アフリカ共和国)で次期挑戦者決定戦を行う計画を立てている。ちなみにレリーナは昨年12月、ヘビー級のWBA王座に挑んで3回TKO負けを喫しているが、このときの体重は約104キロだった。
船出から2年2カ月。ブリッジャー級はどこに向かうのだろうか。