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大相撲裏話

珍名力士そろう式秀部屋に新たな珍名誕生「阪神ファンかと間違えられる」と本人苦笑いのしこ名は

二本松時代の爆虎神千将(2022年11月撮影)

ユニークなしこ名の力士が多く所属する式秀部屋に、今場所から新たな珍名が加わった。

西序二段90枚目の爆虎神千将(23、ばくこしん・せんすけ)。17年春場所で初土俵を踏み、「佐藤桜」→「二本松」としこ名を変えてきた。今回について「阪神ファンなのかと間違えられるんですが…」と苦笑いしつつ、中国の春秋戦国時代を舞台とした人気漫画「キングダム」に登場する好きなキャラクターが由来と説明した。

この作品が好きだという爆虎神は「先陣を切って敵軍に攻め入る姿がかっこよかった」と武将の縛虎申(ばくこしん)の生きざまに感化された。先場所中に師匠の式秀親方(元前頭北桜)に相談し、改名の了承を得た。「やるか、やられるかの戦いは、土俵の上でも同じ。自分から前に出て果敢に攻め込んで、白星をつかみたい」。その効果か、2連敗後に2連勝で星を五分に戻してきた。

同部屋にはほかに、爆羅騎(ばらき)、大当利(おおあたり)、宇瑠寅(うるとら)、我妻桜(あがづまざくら)などの珍名力士がいる。式秀親方は「しこ名は力士にとっての看板。本人たちの意欲や頑張る起爆剤につながったら」と期待した。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

照ノ富士と親交深いAK-69絶賛「共演直後に優勝。"持ってる"」“ガナ”として歌詞にも登場

横綱照ノ富士(左)とヒップホップ歌手のAK-69(写真提供・Flying B Entertainment)

<大相撲夏場所>◇14日目◇27日◇東京・両国国技館

ヒップホップ歌手のAK-69(44)の約1年ぶりの新曲「Ride Wit Us」が、今場所からABEMAの番組「大相撲LIVE」の公式テーマソングとして採用されている。目標に向かって挑戦を続ける人たちの心を震わせる楽曲に仕上げた。親交の深い横綱照ノ富士が愛称である“ガナ”として歌詞に登場したり、ミュージックビデオにも出演している。

「7回転びゃ8回起きるぞ ガナならマイメン♪」という歌詞には、大関から序二段まで落ちながら復活し、横綱に上り詰めた男の生きざまを感じさせる。ミュージックビデオには露払いの錦富士と太刀持ちの翠富士を従えて、堂々と横綱土俵入りを披露する姿も収録した。

作曲に当たってAK-69は実際に伊勢ケ浜部屋を訪れ、稽古の様子を見学した。間近で感じ取った力士たちの気迫、稽古場の空気感を体感した上で制作に臨んだという。

千秋楽を待たずに8度目の優勝を飾った友へ。AK-69は「横綱ということで、皆から優勝して当たり前と思われる立場だと思います。その中で度重なるケガをおしてでも出場して、横綱としての責務を全うするという不屈の精神力が、今場所は表情にも出ていたし、本当に気合ほとばしる場所だったなと感じましたね。楽曲やMVでの共演直後に優勝という結果をもたらすっていうのは”持ってる”とともに、本当にものすごい努力が生んだ結果なんだろうなって、近くで見てても思わせて貰えた良い場所だったんじゃないかなと思います。本当におめでとうございます」とたたえた。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(左)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
霧馬山(下)を寄り切りで破り優勝を決めた照ノ富士(撮影・中島郁夫)
照ノ富士は霧馬山(左)を寄り切りで破り幕内優勝を決める(撮影・小沢裕)
拍手を浴びながら花道を引き揚げる照ノ富士(撮影・中島郁夫)
幕内優勝を決めた横綱照ノ富士は支度部屋の囲み取材で顔の汗をぬぐう
原功「BOX!」

イギリスでフェザー級世界戦が同日2試合 メキシコ人王者がイギリス出身者を迎え撃つ構図

27日(日本時間28日)、イギリスでフェザー級の世界タイトルマッチが2試合行われる。マンチェスターではマウリシオ・ララ(25=メキシコ)対リー・ウッド(34=イギリス)のWBAタイトルマッチが組まれており、北アイルランドのベルファストではルイス・アルベルト・ロペス(29=メキシコ)対マイケル・コンラン(31=イギリス/アイルランド)のIBFタイトルマッチが挙行される。2試合ともメキシコ人王者がイギリス出身者を迎え撃つ構図だ。

ララとウッドは今年2月にノッティンガム(イギリス)で拳を交え、6回までは58対56、58対56、59対55とジャッジ三者ともウッド優勢と採点していた。そんななか7回にララが相打ちの左フックでダウンを奪い、カウント途中でウッド陣営が棄権のタオルを投入したため試合終了となった経緯がある。ダウンから立ち上がって戦闘意欲を見せていたウッドはもちろんのこと、観客も消化不良だったはずだ。

リマッチは初戦から100日足らずで実現するわけだが、今回もララは相手国に乗り込むことになった。それでも初戦で奪った鮮やかなダウンがファンの目に焼き付いているのか、オッズは5対2でララ有利と出ている。中近距離で持ち味を発揮する攻撃型のララ、左で牽制しておいて右に繋げる正統派のウッド。今回も序盤から熾烈な主導権争いが展開されそうだが、パワーで勝るララが打たれ脆い前王者を返り討ちにする可能性が高そうだ。戦績はララが29戦26勝(19KO)2敗1分、ウッドが29戦26勝(16KO)3敗。

ララ対ウッド戦が行われるマンチェスターから北西に300キロほど離れた北アイルランドのベルファストでは、ロペス対コンランのIBF世界フェザー級タイトルマッチが組まれている。昨年12月、イギリスのリーズで地元のジョシュ・ウォーリントン(イギリス)に競り勝って王座を獲得したロペスにとっては初防衛戦となる。こちらも2試合続けてイギリスのリングに上がるわけだ。戦績は29戦27勝(15KO)2敗。

挑戦者のコンランは2012年ロンドン五輪で銅メダルを獲得するなど輝かしいアマチュア実績を誇り、プロでも19戦18勝(9KO)1敗の戦績を残している。唯一の敗北は昨年3月、WBA王者だったウッドに逆転の12回TKO負けを喫したもの。このときは初回にダウンを奪ったものの終盤にガス欠に陥り、最終回にリング外に叩き出されるダウンを喫して敗れている。以後は古豪相手に2連勝を収めている。左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターで、攻撃的なスタイルだけでなく迎え撃つ戦法もとれるのが強みだ。

ロペスは変則的な動きから振りの大きな左右フックで迫るものと思われるが、これに対しコンランが打撃戦を挑むのか、それとも迎撃スタイルを採るのか注目される。地の利があるコンランが試合10日前の時点のオッズでは20対19の微差で有利と出ている。

ふたりのメキシコ人王者が今回も逞しさを見せつけるのか、それともイギリス出身者が地元のファンの前でベルトを獲得するのか。特にIBFでは阿部麗也(KG大和)が指名挑戦者として控えているだけに気になるところだ。

大相撲裏話

やくみつるさん書き下ろし絵馬が相撲博物館で限定授与中 相撲みくじと並ぶ上々の人気ぶり

やくみつるさんの書き下ろした絵馬(撮影・平山連)

好角家で漫画家のやくみつるさん(64)の書き下ろした絵馬(各1000円)が、夏場所開催期間中に相撲博物館で限定200枚授与されている。

相撲の神様「野見宿禰(のみのすくね)」を祭る野見宿禰神社とのコラボ企画。雲竜型の綱を締めた横綱が神社に向けて土俵入りを披露する様子が描かれており、「絵馬を通じて、地元にある神社へのありがたみを感じてもらえるきっかけになれば」と願っている。

やくさんは過去に絵馬の絵図を手がけた経験を生かしながら、使用されている木材に自分の指定した色がくっきり出るようこだわった。下書き、ペン入れなどを繰り返し3種類のデザイン案を入稿。専門会社が担当した出来栄えはまるで版画のように思い描いた色合いになっていたと仕上がりにも満足。「相撲の歴史を感じられる古風なグッズの制作に携われたことはうれしい。国技館に来たお客さんが記念にと手に取ってくれたら」と期待する。

気になる反応は、というと、相撲協会の担当者は「限定品ですので、千秋楽まで残るように調整しています」と上々の人気ぶり。今年の初場所から始まった相撲みくじ(1回400円)と並んで注目されているという。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

漫画家のやくみつるさんの書き下ろした絵馬などが並ぶ相撲博物館内にある野見宿禰神社の授与所(撮影・平山連)
愛くるしい相撲みくじも授与されている(撮影・平山連)
相撲みくじを引いてみると、「平幕」だった(撮影・平山連)
リングにかける

「立て、立つんだ!」世界前哨戦目前でアキレス腱断裂…逆境人生の矢吹正道にこそ送りたいセリフ

矢吹正道(2023年1月28日撮影)

短い言葉に無念の思いが染みた。

ボクシングの元WBC世界ライトフライ級王者矢吹正道(30=緑)が、左アキレス腱(けん)断裂の重傷を負った。5月18日のスパーリング中に負傷し、翌19日に所属ジムが発表した。

「大丈夫なのか!? とにかくゆっくりけがを治してください」と送ったメールの返信が、「手術です、、、ありがとうございます」。いつもは雄弁に語ってくるメールの文面から、失意の感情がにじんでいた。

矢吹は1月にIBF世界ライトフライ級次期挑戦者決定戦に勝利し、同団体の2位までランキングを上げた。次戦は8月に同級の元WBAスーパー王者・京口紘人とも対戦した世界ランカーのエステバン・ベルムデス(メキシコ)戦が決まっていた。この試合をへて、一気に世界再挑戦への展望が開ける、はずだった。

23日に試合の発表会見を行う予定だった。その矢先の不運。25日に手術を行う予定で、試合を行うまでの回復には4~5カ月を要する見込みという。7月9日に31歳の誕生日を迎える。ボクサーとして、限られた時間を知るからこそ、けがのダメージは大きい。

今の心境は推し量るべくもない。ただ、気持ちは折れてほしくない。元WBC世界スーパーバンタム級王者の西岡利晃氏は、キャリアの絶頂期に左アキレス腱を断裂。その後、7年をかけて世界王座を獲得した。

ボクサーにとって、拳とともに足は命。同時に長期休養によって、コツコツと上げてきた世界ランクも失う。体だけでなく、精神的ダメージも大きい。

これまでも逆境に立ち向かってきた人生だ。昨年3月に寺地拳四朗とのダイレクトリマッチに敗れ、ベルトを失った時も「もう辞めようと思った」。しかし、家族の支えもあり、闘うことをやめなかった。

反骨心。やんちゃを極めた少年時代から、矢吹の人生を象徴する。「立て、立つんだジョー!」。主人公からリングネームをもらった不滅のボクシングマンガ「あしたのジョー」の名セリフがふさわしい。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

床山から華麗なる転身「ちょんまげも結える美容師」目指し勉強中 角界7年在籍した志賀龍さん

床山の床玉として、かつて日本相撲協会に所属した志賀龍さん。現在は美容師を目指している(撮影・平山連)

20年9月まで日本相撲協会に所属した床山の床玉こと志賀龍さん(25)が、新天地で奮闘している。同じ髪を扱う仕事でも、今度はちょんまげも結える美容師を目指して一念発起。通信制の専門学校に通いながら、千葉県内の美容院でアシスタントを務める。将来は「床山と美容師という自分にしかない2つの経験を生かして、海外で活躍したい」と夢を膨らませている。

祖父は元関脇の初代栃東で、おじは元大関栃東の玉ノ井親方。物心がつく頃から相撲は身近な存在だったが、力士になるには体が小さかった。図工や美術が得意で手先が器用だったため、中学卒業と同時に床山を目指して玉ノ井部屋に入門。その後、床山の空きがでて15年10月に協会に採用された。稽古や本場所の取組後にまげを整えたり、巡業に帯同して大銀杏(おおいちょう)を結う機会にも恵まれた。角界には約7年在籍。力士たちの髪を結う自分が夢に出てくるほど色濃い日々だった。

現在はスタイリストと協力しながら、時間内にお客さんの要望に合わせて繊細な髪を手入れする。床山としての経験が「(新天地に)生かされています」と胸を張った。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

2020年9月まで床山の床玉として日本相撲協会に所属した志賀龍さん。現在は美容師を目指している(撮影・平山連)
2020年9月まで床山の床玉として日本相撲協会に所属した志賀龍さん(中央)。現在は美容師を目指している(志賀さん提供)
2020年9月まで床山の床玉として日本相撲協会に所属した志賀龍さん(中央)。現在は美容師を目指している(志賀さん提供)
2020年9月まで床山の床玉として日本相撲協会に所属した志賀龍さん(中央)。現在は美容師を目指している(志賀さん提供)
大相撲裏話

安治川親方、独立から「ずっと走り続けています」多忙極めるも表情は充実感でいっぱい

「人と人との縁を大切にしてきたい」と語る元関脇安美錦の安治川親方(撮影・平山連)

部屋の運営、仮住まい先から移転作業、新弟子のスカウト、弟子たちの指導、巡業の先発親方、場所中の勝負審判…。昨年12月に伊勢ケ浜部屋から独立した安治川親方(元関脇安美錦)の仕事を挙げると、一体いつ寝ているのか心配になるほど多忙だ。「独立してから、ずっと走り続けています。明日のことは考えられないですよ」と笑う表情は充実感でいっぱいだ。

新弟子獲得のために4月には沖縄や北海道に行ったり、6月中旬に東京・江東区石島に創設する安治川部屋での部屋開きに向けて準備する。部屋付き親方やマネジャーはいないため、おかみの力を借りながら一手に請け負う。明るい雰囲気にしようと稽古場の壁の色にこだわるなど細部まで突き詰めることは大変だが、一から作り上げるやりがいが勝る。

早大大学院スポーツ科学研究科時代を通じて得た俯瞰(ふかん)的な視座を今後生かしていく考えだが、「相撲部屋は力士が主役。私たちはサポート」というスタンスは変わらない。「弟子たちが相撲に集中できる環境を整えながら、お祭りなど地元行事に積極的に参加して地域の活性化につなげたい」と意気込んだ。【平山連】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

世界中が注目する技巧派対決ヘイニー対ロマチェンコ 新時代到来か元世界3階級制覇王者の返り咲きか

4団体統一世界ライト級王者、デビン・ヘイニー(24=アメリカ)対元世界3階級制覇王者、ワシル・ロマチェンコ(35=ウクライナ)のタイトルマッチが20日(日本時間21日)、アメリカのネバダ州ラスベガスで行われる。若くて勢いのあるヘイニーが新時代到来を印象づけるのか、それとも「ハイテク」のニックネームを持つロマチェンコが返り咲きを果たすのか、世界中が注目する技巧派対決だ。

ヘイニーは2019年9月に弱冠20歳でWBC暫定世界ライト級王座を獲得したが、そのときの正王者がロマチェンコだった。1カ月後、ロマチェンコがWBCから「フランチャイズ(特権)王者」に指名されたのにともない、ヘイニーが正王者に昇格した経緯がある。ヘイニーは「あのときロマチェンコは私との対戦を拒否した」と主張するが、飛ぶ鳥を落とす勢いだったロマチェンコにとって実績と知名度に欠ける当時のヘイニーは戦う意味と価値のない相手だったともいえる。

あれから約4年。ヘイニーは4団体の王座を保持する統一王者としてライト級のトップに君臨し、戦績を29戦全勝(15KO)に伸ばしている。足をつかいながら遠い位置から速く長い左ジャブを飛ばして相手をコントロールし、危険を察知するとサッと射程外に逃れる。戴冠試合を除く6度の世界戦が判定勝ちであることからも分かるようにやや迫力を欠く傾向があるが、身体能力は抜群だ。昨年6月と10月に対戦相手国のオーストラリアのリングで圧勝しており、経験値もアップしている。

ロマチェンコはオリンピックと世界選手権で各2度の優勝を飾るなどアマチュアで397戦396勝1敗という驚異的な戦績を収め、10年前にプロ転向を果たした。3戦目にフェザー級、7戦目にスーパーフェザー級、12戦目にライト級で世界王座を獲得し、一時は全階級を通じて最も高い評価を受けていた。2020年10月、若くて獰猛なテオフィモ・ロペス(アメリカ)に判定負けを喫して無冠になったが、その後は3連勝を収めている。

身長170センチ/リーチ166センチのロマチェンコはライト級では小柄で、173センチ/180センチのヘイニーと比較しても体格面のハンディキャップは否めない。特に14センチのリーチ差は無視できない。加えて年齢からくる微妙な衰えも指摘されるようになった。「いまの目標は4団体の統一王者になること」と意欲的だが、直近の試合で精彩を欠いていた点が気になる。この4年間でヘイニーが順調に成長を遂げたとは対照的に、ロマチェンコは緩やかな下降曲線を描いている印象だ。戦績は19戦17勝(11KO)2敗。

ともに技巧派だが、ヘイニーがロングレンジでの戦いを得意としているのに対し、サウスポーのロマチェンコは中間距離から近距離の戦いで持ち味を発揮することが多い。ヘイニーの左ジャブが十分に機能して距離を保つことができれば4団体王者のペースといえる。逆にロマチェンコが相手の左ジャブをかいくぐり、懐にもぐってボディから顔面にパンチを打ち分けることができれば王座奪取が見えてくる。究極の技巧派対決のオッズは9対4でヘイニー有利と出ている。

リングにかける

中谷潤人、田中恒成、井岡一翔…日本勢のスーパーフライ級戦線が一気に過熱、日本人対決可能性も

WBOスーパーフライ級王座決定戦発表会見でファイティングポーズする中谷潤人(2023年3月25日撮影)

プロボクシングのスーパーフライ級世界戦線が一気にヒートアップしそうだ。まずは元WBO世界フライ級王者中谷潤人(25=M・T)、元世界3階級制覇王者の田中恒成(27=畑中)の2人が登場。現WBO世界スーパーフライ級1位の中谷は20日(日本時間21日)、米ネバダ州ラスベガスのMGMグランド・ガーデンアリーナで同級2位のアンドルー・モロニー(32=オーストラリア)と同級王座決定戦に臨む。

既に3月下旬から渡米している中谷は米ロサンゼルスで最終調整し、そのままラスベガス入り。同興行のメインイベントは現4団体統一ライト級王者デビン・ヘイニー(24=米国)-元3団体統一同級王者ワシル・ロマチェンコ(35=ウクライナ)戦が組まれている。中谷は世界注目のイベントで、日本ジム所属17人目の世界2階級制覇に挑む。

田中恒成(2021年11月4日撮影)

同じ21日には、田中が名古屋・パロマ瑞穂アリーナでWBC世界同級13位パブロ・カリージョ(34=コロンビア)との“世界前哨戦”を控える。現在、スーパーフライ級ではIBFとWBOで3位、WBA、WBCで4位にランク。この世界ランカー対決を制することができれば、WBOでは中谷-モロニー戦の勝者に続く、1~2位のランキングに入るだろう。中谷-田中戦という日本人対決の世界戦の可能性も出てくる。

井岡一翔(2023年4月24日撮影)

6月24日には元世界4階級制覇王者の井岡一翔(34=志成)がWBA世界同級王者ジョシュア・フランコ(27=米国)に挑戦する。昨年大みそかに続くダイレクトリマッチ。この決着戦の勝利で弾みをつけ、ターゲットに絞るWBC世界同級王者フアン・フランシスコ・エストラーダ(33=メキシコ)との王座統一戦につなげたい意向。井岡-フランコの勝者に対し、田中が挑戦する可能性もある。20年大みそかに井岡との日本人対決で敗れている“因縁”が思い出される。

また中谷は世界2階級制覇後のプランとして「統一戦はやりたいという気持ちはある」と、他団体王者との統一戦を希望している。21日に迫る中谷-モロニー戦、田中-カリージョ戦、6月24日の井岡-フランコ戦の結果次第で、また新たな展開も出てくるはずだ。日本勢の実力者たちがそろった2023年のスーパーフライ級が、注目の階級になっていることは間違いない。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

「これで成績悪ければ何を言われるか分からない」元兄弟子からの暴力といじめ告発した安西の決意

1月14日、取組に臨む安西

陸奥部屋で元兄弟子(4月に引退)からの暴力を受けたと告発した西三段目90枚目の安西(やすにし、21)が、新屋敷を寄り倒して白星発進した。

「一番緊張しました。とりあえず勝ってホッとしました」と喜び、心機一転して土俵に向かう決意を見せた。

初土俵を踏んだ2020年7月場所の数場所たった頃から元兄弟子の暴力や暴言に悩まされた。限界が来て、今年1月に師匠の陸奥親方(元大関霧島)に報告。相撲協会にも事態を訴えた。ただ、いつまで待っても事実が公にされなかった対応に疑問が湧き、週刊誌を通じて告発した。実名で語ったのは「なぜ隠すのか疑問に思った」から。憧れて入った大相撲の世界。2度と同じようなことが起きてほしくない一心だった。騒動を受け、師匠からも「俺は処分が決まったら受け入れる」と言われた。

母子家庭の1人息子として育ち、福岡県内に暮らす母からは気遣う言葉もあった。心配をかけまいと、母の日から1日遅れで白星をプレゼント。「これで成績が悪ければ、何を言われるか分からない。勝ち越しは当たり前。1日一番しっかり頑張る」。現役を続行する21歳は決意を語った。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

ジェイソン・マロニー「三度目の正直」で戴冠なるか 対するアストロラビオ6連勝と絶好調

井上尚弥(30=大橋)が返上して空位になったWBO世界バンタム級王座の決定戦が13日(日本時間14日)、アメリカのカリフォルニア州ストックトンで行われる。対戦カードは1位のジェイソン・マロニー(32=オーストラリア)対2位のビンセント・アストロラビオ(26=フィリピン)。3年前に井上に7回KOで敗れているマロニーにとっては3度目の世界挑戦となる。アストロラビオは6連勝と調子を上げているだけに好勝負が期待される。

井上はスーパーバンタム級へ転向するため1月に4団体の王座を返上。それを受け4月にはWBA王座決定戦が行われ、尚弥の弟・井上拓真(27=大橋)がリボリオ・ソリス(41=ベネズエラ)に12回判定勝ちを収めて後継王者になっている。マロニー対アストロラビオは、それに続く王座決定戦第2弾となる。

マロニーは当初、WBCからノニト・ドネア(40=フィリピン)との王座決定戦の指示を受けたが、これを拒否。同じく1位にランクされていたWBO王座に照準を定め、今回のアストロラビオ戦を迎えることになった。

マロニーは双子の弟・アンドリューとともに活動を続け、プロ27戦(25勝19KO2敗)のうち20試合は兄弟で同じイベントに登場してきた。今回は1週間後にアンドリューが中谷潤人(MT)とのWBO世界スーパーフライ級王座決定戦に臨むことになっており、先に勝って弟に繋げたいところだ。

2020年10月の井上戦では6回、左ジャブに左フックを合わされてダウン。7回には右ショートのカウンターを浴びてフィニッシュされた。このシーンが目に焼き付いているファンは少なくないだろうが、その後、世界ランカーを相手に4連勝を収めている。マロニーが世界トップクラスの実力者であることは間違いない。適度に足をつかいながら左ジャブから右ストレートに繋げる正統派のボクサーで、耐久力にも優れている。

アストロラビオはフィリピンのジェネラルサントスシティの出身で、同郷のマニー・パッキャオ(元世界6階級制覇王者)がプロモートしている。2015年のプロデビューから3年間(15戦)で3敗したが、2019年にWBOオリエンタル王座を獲得して覚醒したのか以後は6連勝(5KO)と絶好調だ。特に直近の2戦では元世界2階級制覇王者のギジェルモ・リゴンドー(キューバ)からダウンを奪って判定勝ち、昨年12月のIBF1位決定戦ではニコライ・ポタポフ(ロシア)に豪快な6回KO勝ちと、顕著な実績を残している。じりじりとプレッシャーをかけながら接近を図り、距離が合うと思い切りのいい左右フック、アッパーを叩きつけるワイルドな好戦型で、鋼鉄や勇気を意味する「ASERO」というニックネームを持っている。戦績は21戦18勝(13KO)3敗。

同じ右構えだが、マロニーが中長距離での戦いをベースにするのに対し、アストロラビオは中近距離の打撃戦を好む。得意とする距離が異なるだけに、まずは前半の主導権争いに注目したい。マロニーがスピードと左ジャブでコントロールするようならば、その後も着々と加点していきそうだ。アストロラビオは積極的に仕掛け、早い時点で打撃戦に引きずり込んでしまいたいところ。

総合力のマロニーか、パワーのアストロラビオか。オッズはマロニー有利と出ているが11対8と接近している。

リングにかける

BreakingDownに「面白い」「本物ではない」の賛否 この熱を格闘技界のプラスに

ブレイキングダウン8オーディション オーディションで審査を行う溝口勇児(右)と朝倉未来と白川陸斗

BreakingDown(BD)の熱は冷めるどころか、さらに増している。

人気格闘家・朝倉未来(30=トライフォース赤坂)が代表取締役を務めるBDはシリーズの8が21日に、東京ドームシティ内プリズムホールで開催が決定。朝倉のYouTubeでは、連日のように「BreakingDown8のオーディション」が公開されている。「飯田さん」飯田将成、元アウトローのカリスマこと、瓜田純士らレギュラー陣も参戦。そこに、新たなスター候補が、さまざまな角度から出番を狙っている。

Gグループでは、BD史上、初めて高校生が参加。福岡から金がなく、ヒッチハイクでやって来たという「ひかぴー」は、黒髪でどこか真面目な印象。ただ、スタートから、いきり立っている様子で「俺イケメンが嫌いなんですよ。俺より、高身長でイケメンで」と日本、ドイツ、イギリスのクオーターのグッドイヤー奏エリオットに、けんかを売った。もみ合いになりながら、ひかぴーが「殺すぞ!」と声を荒らげたが、会場は凍り付くどころか、ひな壇からは笑い声が起こった。

それに対して、ひかぴーは「何笑ってんだよ! 」とレギュラーの面々に対抗。これに、また笑い声のボリュームが大きくなった。「前座」を「座前で」と言い間違えたり、ひな壇からは「ぬりぼうより、面白い」という声も上がった。朝倉未来も「いいキャラクターしている」と高評価を与えた。高校生は計8人が参加。この中から1試合が組まれるという。

BDのCOO(最高執行責任者)を務める起業家の溝口勇児氏にかみついた“強者”も登場した。オーディションの「vol.2」で登場した“けんか無敗の空手全日本チャンピオン”土屋悠太が「有名な方と付き合ってましたよね? すぐ別れちゃいましたよね、俺、女大事にできないやつ嫌いなんですよ」と“挑発”。すると、溝口氏は「俺戦いたくないんだけど、どうすればいい? マジで忙しいから戦う暇なくて。それにたぶん相手にならないって思ってて」と、やんわりと断ったが、朝倉未来から「ここに立つ人は闘ってないと説得力がない」とツッコミを受けた。立ち上がった溝口氏は、仕方なさそうに土屋の前に立つと、いきなりタックル。リーチの差を生かし、組合で組み合いで力の差を見せつけた。

このやりとりを見ていた朝倉は終始、満面の笑み。「試合決定ですね。おめでとう」と、土屋と握手。溝口氏に「さすがにこの流れは…。完全に決まりました」と、試合決定を告げた。溝口氏は「俺、戦いたくないから今やったんだけどさ。全部カットする権利あるからね」と最後まで、抵抗したが、朝倉に「ないです、ないです。それはない」と言われ、たじたじの様子。本戦に初出場する可能性が出てきた。

8日時点でオーディションの動画は3本アップされ、全てが440万回再生以上を記録するなど、ファンの注目も止まらない様子。今大会では、新たな取り組みとして韓国との対抗戦も実施される。一方で、前RIZINバンタム級王者の堀口恭司(32=アメリカン・トップチーム)は9日に行われた自身の新格闘技団体のネーミング発表記者会見で「個人的に」と前置きし「(BDは)興業としてはいいかもしれないけど、格闘技のイメージとしては良くないほうに進んでいると思った。いい意味で刺激されたなと思います」とBDの存在が、立ち上げに影響しているという。

エンタメで見ている人は「面白い」のかもしれないし、格闘技目線の人は「本物ではない」のかもしれない。賛否両論あっていい。この熱が、格闘技というジャンルの中で、良い方向に波及すればいいと思う。【栗田尚樹】

ブレイキングダウン8オーディション オーディションの参加者と一戦交え疲れた様子の溝口勇児(手前)と見つめる朝倉未来(中央)
原功「BOX!」

国内外で親子や兄弟の世界王者が続々誕生 今後も話題が途切れることはなさそう

「史上7例目の親子の世界王者誕生」「兄弟同日同階級世界王座奪取」「史上初の親子同階級日本王者誕生」-この春、ボクシング界は国内外で親子や兄弟の話題が紙面やネットを賑わした。親子ボクサーや兄弟ボクサーは珍しいことではないが、これほど一定期間にトップ選手の注目の試合が集中したのは珍しい。こうした現象に関連性や連続性などあるはずもないが、始まりは3月12日にオーストラリアのシドニーで行われたWBO世界スーパーウェルター級暫定王座決定戦だ。ティム・チュー(オーストラリア)がトニー・ハリソン(アメリカ)に9回TKO勝ちを収め、父親のコンスタンチン・チューに続いて世界王者になった。親子世界王者は史上7例目となる。ちなみに敗れたハリソンの祖父と父親もボクサーという家系だ。

3月25日にはWBC暫定世界スーパーミドル級王者のデビッド・ベナビデス(アメリカ)が登場。元王者のケイレブ・プラント(アメリカ)を12回判定で退けて防衛を果たした。ベナビデスの兄は元WBA暫定世界スーパーライト級王者で、かつてデビッドは「ホセの弟」として知られていたが、いまや知名度や人気でも兄越えを果たしたといえる。

4月8日、東京・有明アリーナではWBA、WBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗(BMB)が激闘のすえアンソニー・オラスクアガ(アメリカ)に9回TKO勝ちを収めて2団体王座の防衛に成功した。寺地の父親で元日本、東洋太平洋王者の永(ひさし)氏は「命の削り合いのような試合だった」とハラハラドキドキだったようだ。

寺地の前の試合ではWBA世界バンタム級王座決定戦が行われ、井上拓真(大橋)がリボリオ・ソリス(ベネズエラ)に12回判定勝ち、3年ぶりの返り咲きを果たした。いうまでもないが拓真の兄は井上尚弥である。拓真は兄が返上した王座のひとつを引き継いだかたちになった。

4月16日、東京・代々木第二体育館では重岡兄弟(ワタナベ)が揃ってミニマム級の暫定王座を獲得した。先に登場した弟・銀次朗がレネ・マーク・クアルト(フィリピン)に9回KO勝ちを収めてIBF暫定王者になると、メインに出場した兄の優大はウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)に7回KO勝ち、WBC暫定王座を手に入れた。同じ日に兄弟で世界王座獲得という例は世界で2例目、日本では初めてのことだった。

その2日後の4月18日、東京・後楽園ホールでは日本フェザー級王座決定戦が行われ、松本圭佑(大橋)が元王者の佐川遼(三迫)に10回判定勝ちを収めて戴冠を果たした。圭佑の父親・好二氏は3度の世界挑戦を経験した元日本フェザー級王者(3度獲得)で、ベルトが父親の手を離れてから27年後に息子が取り戻したことになる。また、この日の前座には元世界スーパーウェルター級王者、輪島功一氏の孫、磯谷大心(輪島)が出場したが、4回判定負けという結果に終わった。

4月22日(日本時間23日)、アメリカのネバダ州ラスベガスではWBA世界スーパーミドル級タイトルマッチ、デビッド・モレル(キューバ)対ヤマグチ・ファルカン(ブラジル)が行われた。2012年ロンドン五輪ライトヘビー級銅メダリストのファルカンは、同五輪ミドル級決勝で村田諒太に惜敗したエスキーバ・ファルカンの兄で、プロ転向後は兄弟で世界一を目指している。この日は残念ながら王座獲得とはならなかったが、巻き返しを期待したい。

5月6日(日本時間7日)には世界スーパーミドル級4団体統一王者のサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)が同級WBO暫定王者のジョン・ライダー(イギリス)と拳を交える。このアルバレスも兄弟ボクサーで、兄のリゴベルトは元WBA暫定世界スーパーウェルター級王者でもある。

このほか試合から遠ざかってはいるが、現役の世界王者としては双子のジャモール・チャーロ(アメリカ=WBCミドル級王者)、ジャーメル・チャーロ(アメリカ=4団体統一世界スーパーウェルター級王者)がいる。

今後も「親子」「兄弟」関連の話題が途切れることはなさそうだ。

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寺地拳四朗、1週間の「断食」による減量を乗り越えた先に広がる可能性「まだまだ強くなれる」

防衛戦を果たした一夜明け会見で笑顔を見せる寺地(2023年4月9日撮影)

ボクシングのWBAスーパー、WBC世界ライトフライ級王者寺地拳四朗(31=BMB)が「ゆくべき道」に迷っている。

「この階級で最強を極めたい」とライトフライ級での4団体統一を掲げた。しかし、4月8日に当初予定されたWBOとの3団体統一戦は、王者ジョナサン・ゴンザレス(31=プエルトリコ)がマイコプラズマ肺炎で来日不可能となり、消滅した。父の寺地永会長は「もともとやりたくなかったと聞いている。このまま逃げ切られるかもしれない」と裏事情を明かす。

バンタム級で“モンスター”井上尚弥(29=大橋)がベルト統一の快挙を遂げたが、その実力だけでなく、時の運もなければなしえない。31歳の寺地は「時間がかかるようなら考えないといけない」と話す。現実に次戦はWBCの指名挑戦者、同級1位ヘッキー・ブドラー(34=南アフリカ)との防衛戦が避けられない状況。WBAの動向も含め思い描くプラン通りには進めない。

年齢を重ねることで、懸念されるのが「体重調整」。その点について、寺地は「減量うまくなってるんです」と言った。ライトフライ級のリミットは48・9キロで、1階級上のフライ級は50・8キロ。この約2キロ差が天国と地獄だが、寺地は克服している。

ボクサーにとって「宿命」といえる減量は、各自の工夫が興味深い。寺地が先日明かした減量法は、1週間の断食という。父の永会長の知り合いでもある専門家の指導を受けた。約1週間、酵素ドリンクだけで固形物はいっさい摂取しない荒療治。寺地は「一般の人にはお勧めしない」と笑って言った。

激しい練習をしながらの「断食」。寺地は「立ちくらみはありますね。最も怖いのが宅配便。寝ている時にピンポンが鳴って、出ていく途中に気を失いそうになったこともあります」。一方で、内臓の動きがより活発になるメリットもあったといい、「便秘気味だったのが治った」。試行錯誤、さまざまな経験を乗り越えてきたからこそ、たどり着いた成功がある。

そんな過酷な減量に今後も立ち向かう意欲はある。「まだまだ強くなれると感じている」。減量との戦いの先に可能性は広がっている。【実藤健一】

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6・24井岡一翔から武尊のPPVはしご!? RIZIN43大会も開催し「バトルPPV祭り」

WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ緊急発表会見でファイティングポーズを決める井岡一翔(2023年4月24日撮影)

6月24日は「バトル祭り」となった。先に発表されたのはK-1の元3階級制覇王者となる武尊(31)の再起戦。フランス・パリで行われる興行Impact in Paris(インパクト・イン・パリ)で、ベイリー・サグデンとのISKA61キロ級タイトル戦3分5回(K-1ルール)で対戦することが決まった。昨年6月のTHE MATCH(東京ドーム)で那須川天心と対戦後、休養を宣言。約1年後のカムバック戦となる。

武尊が代表取締役を務めるSTR社とABEMAが契約を結び、武尊が出場する試合、興行を独占配信する権利を得た。これにより、武尊の再起戦はABEMAでライブPPV(ペイ・パー・ビュー)配信されることも決定した。

続いて発表されたのはプロボクシング元世界4階級制覇王者井岡一翔(34=志成)の「決着戦」だった。同日に東京・大田区総合体育館で、同級王者ジョシュア・フランコ(27=米国)に挑戦することが発表された。昨年大みそかのWBA、WBO世界同級王座統一戦で拳を交えて引き分けて以来、約6カ月ぶりのダイレクトリマッチとなる。これまでTBS系で全国中継されていた井岡の国内世界戦だが、今回はABEMAのPPVライブ配信となる。ABEMAにとっても単体でボクシング世界戦をPPV配信するのは初めての試みとなる。

日本とフランスの時差はサマータイムで7時間となるが、同日に格闘技とボクシングのABEMAのPPV配信が重ねるのは珍しい。ABEMA格闘チャンネルの北野雄司エグゼクティブプロデューサーは井岡のゴング時間を踏まえながら「うまく重ならないように調整しないといけないですね」とうれしい悲鳴。さらに格闘技ファンのため、井岡世界戦と武尊カムバック戦の“PPVセット売り”の可能性も示唆した。

同じ6月24日には北海道・札幌の真駒内セキスイハイムアリーナでRIZIN43大会の開催が発表されている。RIZINフェザー級王者クレベル・コイケ(33=ブラジル)がRIZIN5連勝中の鈴木千裕(23)との防衛戦が決まっている。総合格闘技、キックボクシング、プロボクシングの注目イベントがめじろ押しとなる1日。会場に行かないファンにとっては「PPVはしご」が必要になりそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

復帰戦が決定した武尊(2023年3月29日撮影)
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4団体王者アルバレス、12年ぶりメキシコで凱旋試合 ビボル雪辱へ敗北は許されない

4階級制覇の実績を持つ4団体統一世界スーパーミドル級王者、サウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)が5月6日(日本時間7日)、メキシコのハリスコ州サパポンでWBO同級暫定王者のジョン・ライダー(34=イギリス)と対戦する。サパポンはアルバレスが生まれ育った同州グアダラハラの隣町で、4団体王者にとっては12年ぶりの凱旋試合となる。

アルバレスは2005年に15歳でプロデビュー。しばらくはメキシコで活動したが、頭角を現した20歳のころから主戦場をアメリカに移した。2011年3月にWBC世界スーパーウェルター級王座を獲得し、その初防衛戦(同年6月)とV3戦(同年11月)をメキシコ国内で行ったのが自国での最終試合となっていた。ミドル級、スーパーミドル級、ライトヘビー級と制覇していくのと比例して知名度と注目度が高まり、世界的なスター選手に成長したため大きな収益が見込めるラスベガスなどアメリカ国内での試合が増えたためだ。

今回、12年ぶりに故郷での試合が実現したのは、負傷からの復帰戦であるためリスクを小さく抑えた相手を選ぶ必要があったからだ。

アルバレスは2021年11月のケイレブ・プラント(アメリカ)戦でスーパーミドル級の4団体王座統一を果たしたが、この試合で左手首を負傷。完治しないまま昨年5月にWBAライトヘビー級王者のドミトリー・ビボル(キルギス/ロシア)に挑戦したが、12回判定負けを喫した。4カ月後、過去1勝1分だったゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との決着戦に臨み、12回判定勝ちを収めて再起を果たした。しかし、試合で負傷が悪化したため秋に手術を行ったという経緯がある。ビボルへの雪辱を狙っているアルバレスは7月に33歳になることもあり、これ以上の敗北は許されない状況にある。そのため今回は試合日程と開催地が先に決まり、あとから対戦相手が選ばれるという順になった。

待望の凱旋試合を前にアルバレスは「手術したあと5月にリングに戻ってくることができて嬉しい。ハリスコ州で戦えることに満足している。ライダーは勇敢な選手だと思う」と話している。いつものような敵愾心むき出しのコメントは見られない。

アルバレス陣営から安全パイと見られているライダーは「ゴリラ」のニックネームを持つサウスポーで、タフで執拗な攻撃型の選手だ。

2019年にWBA暫定王座を獲得したが、半年後の団体内統一戦で惜敗して失冠。現在のWBO暫定王座は昨年11月に獲得した。

しかし、アルバレスが圧勝したビリー・ジョー・サンダース、ロッキー・フィールディング、カラム・スミス(いずれもイギリス)の3選手にライダーは敗れており、格の違いは明らかといえる。アルバレス陣営がくみしやすしと判断したとしても不思議はない。

ライダーが自国を離れて戦うのは4度目のことだが、メキシコは初めてとなる。「私の耳には悲観的な予想ばかりが入ってくるが、そんな見方が間違っているということを証明してみせる。プレッシャー? 私にはないが、彼の方にプレッシャーがあるのではないだろうか。負けたあとの第2戦、手術後の初試合、そして故郷での試合だからね」と自分は敵地での試合を気にした様子はない。

戦績はアルバレスが62戦58勝(39KO)2敗2分、ライダーが37戦32勝(18KO)5敗。オッズは14対1でアルバレスの圧倒的有利と出ている。

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WBA最短3戦で世界王座獲得デビッド・モレル 5度目防衛戦でアルバレスに存在感示す

3年前、プロ3戦目でWBA世界スーパーミドル級暫定王座を獲得したデビッド・モレル(25=キューバ)が22日(日本時間23日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでWBA6位のヤマグチ・ファルカン(35=ブラジル)を相手に5度目の防衛戦に臨む。まだ8戦(全勝7KO)のキャリアしかないモレルだが、そのうち5試合が世界戦で、4戦目から5連続KO中と勢いがある。この階級には4団体の王座を統一したサウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)という世界的なスーパースターがいるが、遠くない将来、モレルが対戦候補としてクローズアップされる日がくるかもしれない。

9歳でボクシングを始めたモレルは19歳以下が参加する世界ユース選手権で優勝するなど、アマチュアで137戦135勝2敗(他説あり)という戦績を残した。2019年8月にプロ転向を果たし、初陣の6回戦で1回KO勝ち、8回戦で2回KO勝ちを収めた。この2選手は世界的な実績はゼロだったが、先物買いしたWBAはモレルを上位にランク。そして3戦目に暫定王座決定戦への出場を承認し、期待に応えてモレルは大差の12回判定勝ちを収めて戴冠を果たした。WBAの行き過ぎた露骨な庇護があったとはいえプロ3戦目での世界王座獲得はセンサク・ムアンスリン(タイ)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と並ぶ最短記録だ。

さらに初防衛戦でモレルは体重オーバーの失敗をやらかしたが、なんとWBAは暫定王座を剥奪するどころかノンタイトル戦への変更を承認し、3回KO勝ちを収めたモレルを試合後に正王者に昇格させたのだ。ここまで来ると呆れるしかないが、ともかくWBAが特別扱いしてくれたことでモレルはベルトを保持し続けることになった。

その後、初防衛戦で1回KO勝ちするとV2戦、V3戦をいずれも4回TKOで飾り、昨年11月の4度目の防衛戦では12回KO勝ちを収めている。身長185センチ、リーチ199センチと体格に恵まれたサウスポーで、遠い距離から踏み込んで左ストレートを打ち込み、チャンス時には回転の速い左右フック、アッパーの連打を浴びせる。

ただ、まだ世界的な著名選手との対戦は少なく、安全路線を歩んできたのも事実だ。今回、モレルはWBA9位のセナ・アグベコ(ガーナ)と戦う予定だったが、試合を運営・管理するネバダ州アスレチック・コミッションからアグベコに試合許可のライセンスが発行されなかったため相手がファルカンに変更された経緯がある。そのファルカンは2012年ロンドン五輪銅メダリストで、プロでは27戦24勝(10KO)1敗1分1無効試合という戦績を残しているサウスポーだ。こちらも世界的強豪との対戦は少ないが、このところ8連勝(3KO)と調子を上げているだけに侮れない。

25歳のモレルは世界王者になった現在も成長途上にある。当然のことながら4階級制覇を果たしているアルバレスには実績も実力も知名度も及ばないが、7歳若いモレルにはたっぷりと時間がある。数年後、両者の人生がリング上で交差する可能性も十分にあり得るのだ。そのためにもモレルは存在感を示す戦いをしてベルトをキープし続ける必要がある。

モレル対ファルカンは、WBA世界ライト級王者、ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)対ライアン・ガルシア(アメリカ)の試合のセミファイナル扱いとなっているが、大舞台で隠れた天才サウスポーがどんなパフォーマンスを見せるのか注目したい。

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「プロレスラーのプライドをかけてやりたい」そこにいたのはいつものフワちゃんではなかった

3日、スターダムの4・23横浜アリーナ大会でプロレス2戦目を迎え、記者会見に臨んだフワちゃん、左はロッシー小川

「フワちゃん」。彼女の名前を聞くと、何をイメージするか-。多くの人は「明るい」「自撮り棒」「年上にもタメ口」…。そんな印象を持っているのではないだろうか。私も、その1人。完全に“陽”だ。

ただ、プロレスの現場では違った。今月3日にスターダムの記者会見があった。同23日の横浜アリーナ大会に向けたもの。そこに登場したフワちゃんは、いつもの彼女ではなかった。

「芸能人のプロレス参戦は話題になっているけど、呼ばれてプロレスやっているんじゃなく、プロレスラーのプライドをかけてやりたい」

その言葉を発する、目が違った。普段、バラエティー番組などで見る表情ではなく真剣そのもの。伝わってくるものがあった。今回の同大会で、プロレス2戦目を迎える。日本テレビ系列「行列のできる相談所」の企画第2弾での挑戦。“呼ばれた”かもしれないが、自身の強い意志、覚悟、責任がにじみ出ていた。

フワちゃんは、昨年10月23日のスターダムで、プロレスデビュー。葉月と組んだタッグマッチは、惜しくも敗れた。ただ、そこで終われなかった。熱は増した。「試合の後に、友達の子どもが『プロレスラーになりたい』って言っていた。こんな感じで、プロレスで夢、人生動かしていきたい」と新たな“役目”も感じている。忙しいスケジュールの中、厳しいトレーニングに励んでいるという。

「芸能生活を始めて、芸能人になってから、マジで一番反響があった。みんなに『すごい』って言ってもらえた」

バラエティー番組は、タレントとして全力。リング上も、プロレスラーとして妥協を許さない。その日、アスリートとしての顔を見た気がした。いずれにせよ、変わらないものがあった。フワちゃんは「陽」だ、と。それだけではなかった。新たなイメージ像も出来た。周囲に希望、元気、光をともす人なんだ、と。【栗田尚樹】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

3日、スターダムの4・23横浜アリーナ大会でプロレス2戦目を迎えるフワちゃん(左)と、対戦相手の林下詩美(中央)&天咲光由
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重岡兄弟の王座獲得でミニマム級世界王者7人に 暫定王座を設置せざるを得ない事情も

兄弟同時にチャンピオンになり、ベルトを肩に笑顔を見せる重岡優大(左)と弟の重岡銀次朗(2023年4月16日撮影)

プロボクシングの重岡兄弟が国内初となる同日の兄弟世界王者となった。兄の優大(26)がWBC世界ミニマム級暫定王座、そして弟銀次朗(23=ともにワタナベ)がIBF世界同級暫定王座を獲得。「暫定」とはいえ、世界王座と同じ価値。日本ボクシング界に1つの記録を刻んだが、暫定王者2人の誕生で、ミニマム級の世界王者は計7人となった。今回は暫定王座を設置せざるを得ない事情があった。

WBC、IBFともに正規王者が負傷、コンディション不足という背景があった。IBF同級王者ダニエル・バラダレス(メキシコ)は1月6日、弟銀次朗との防衛戦での偶然のバッティングで試合続行不可能となって無効試合となった。母国へ戻った後も鼓膜が破れてコンディションが整わず、診断書をIBFに提出。正規王者が防衛戦ができないということでIBFも暫定王座の設置を決めた。

またWBC同級王者パンヤ・プラダブスリ(タイ)は当初、兄優大との防衛戦が発表されていたものの、試合2週間前にインフルエンザ感染で試合中止を申し出たため、興行成立のために急きょWBCが暫定王座決定戦を許可した。いずれも正規王者側の事情での暫定王者誕生だった。

2010年ごろからWBAは興行開催の側面から暫定王座を多く承認していた。11年初めには全17階級中、10階級で暫定王者がいたことを日本ボクシングコミッションは問題視。故障など正当な理由で正規王者が長期間活動できない場合を除き、暫定王座を世界王座として認めない方針を固めた。以後、国内ではWBA暫定王者に限り、世界王者として認定されず、13年に江藤光喜がタイで勝利して獲得したWBAフライ級暫定王座は国内で認められなかった。

WBAでは01年から5度以上の防衛などを条件にスーパー王者昇格という制度もあり、王座の乱立が問題視されていた。ただWBAも21年に暫定王座を廃止する方針を示し、暫定王者をランキング1位とし、スーパー王者と正規王者の統一戦を推進。ルール上は暫定王者が防衛戦することは可能だが、WBC、IBF、WBOともに正規王者の負傷回復次第、統一戦を指令している。国内では暫定王者が正規王者とすぐに団体内王座統一戦に臨むケースが主流となっている。重岡兄弟も8月11日、エディオンアリーナ大阪で正規王者との統一戦実現を願っている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

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デービス対ガルシア ノンタイトルもKO決着間違いなし、全勝強打者同士の注目ファイト

スター選手が集結するライト級の主役のひとり、WBA王者のジャーボンテイ・デービス(28=アメリカ)と、西海岸を中心に抜群の人気を誇る元WBC暫定王者のライアン・ガルシア(24=アメリカ)が22日(日本時間23日)、アメリカのネバダ州ラスベガスで対戦する。試合はライト級1ポンド超過の136ポンド(約61.6キロ)契約12回戦として行われる。28戦全勝(26KO)のデービス、23戦全勝(19KO)のガルシア。世界王座はかからないが、KO決着間違いなしの注目ファイトだ。

61.2キロが体重上限のライト級では8日(日本時間9日)にシャクール・スティーブンソン(25=アメリカ)対吉野修一郎(31=三迫)のWBC挑戦者決定戦が行われたばかりで、来月20日(日本時間21日)には4団体統一王者のデビン・ヘイニー(24=アメリカ)と元世界3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(35=ウクライナ)が対戦する。強豪が集結しており、まさに風雲急を告げる状況となってきた。

そんななかで今回のデービス対ガルシアが行われる。かねてから対戦が期待され、両者もことあるごとに自己アピールしてきただけに対抗意識は強いものがある。試合が決まったあとのPRツアーでは顔をつけて罵り合い、乱闘寸前の場面もあったほどだ。

サウスポーのデービスは身長166センチ、リーチ171センチとライト級では小柄だが、鋭く相手の懐に潜り込み、速くて強烈なパンチを顔面とボディに打ち分ける。特に左右フックと左アッパーは破壊力抜群で、何度も痛烈なKOシーンを生み出してきた。スーパーフェザー級、ライト級、スーパーライト級の3階級で世界王座を獲得しており、世界戦(自身が体重超過した試合を含む)だけで12戦全勝(11KO)をマークしている。

リングの中ではルールに従っているデービスだが、リング外ではアウトローとしても知られ、暴行などで何度も警察の世話になってきた。いまも交通事故関連で起訴されており、試合後に判決が出ることになっている。

一方、身長、リーチとも178センチのガルシアは甘いマスクと強打で女性を含めた幅広い層に支持されている。2年前にWBC暫定世界ライト級王座を獲得したが、メンタルヘルスの問題を理由に防衛戦を行うことなくベルトを返上した。1年3カ月の休養後、昨年4月に12回判定勝ちで戦線復帰を果たし、次戦では元世界王者に6回KOで快勝している。

遠い距離から打ち込む右ストレート、カウンターのタイミングで打ち込む左フックが主武器で、ダウンシーン、KOシーンは芸術的ですらある。

この先、デービス対ガルシアの勝者はヘイニー対ロマチェンコの勝者と対戦する可能性が高くなるだけに、勝負の行方が注目される。

全勝の強打者対決のオッズは9対4でデービス有利と出ている。