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au版ニッカン★バトル

新着

原功「BOX!」

ローマン・ゴンサレスはじめコロナ禍による注目ファイトの延期相次ぐ

10月16日に計画されていた世界スーパー・フライ級タイトルマッチ、WBAスーパー王者、WBCフランチャイズ(特権)王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(31=メキシコ)対前WBA同級スーパー王者ローマン・ゴンサレス(34=ニカラグア)の試合が、ゴンサレスの新型コロナウィルス感染にともない延期されることが決まった。この試合を含め7月下旬以降、コロナ禍による注目ファイトの延期が相次いでいる。

コロナ禍のなか昨年3月から5月にかけて世界中でボクシングのイベントが開催できない状態が続いたが、その後、アメリカをはじめ世界各地で無観客状態のイベントが再開された。最近はアメリカではフルに観客を入れて開催するなど以前の活況が戻りつつある。

しかし、コロナとの戦いは依然として続いている。この2カ月だけを見ても以下のように世界王者を含むトップ選手の感染が確認され、下記のように注目ファイトが相次いで延期されているのだ。

★7月24日@アメリカ タイソン・フューリー(イギリス)対デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)=WBC世界ヘビー級タイトル戦 ※フューリーが感染 ⇒ 10月9日に延期

★8月28日@アメリカ デビッド・ベナビデス(アメリカ)対ホセ・ウスカテギ(ベネズエラ)=WBC世界スーパー・ミドル級挑戦者決定戦 ※ベナビデスが感染 ⇒ 11月13日に延期

★9月10日@日本 寺地拳四朗(BMB)対矢吹正道(緑)=WBC世界ライト・フライ級タイトル戦 ※寺地が感染 ⇒ 9月22日に延期

★9月11日@アメリカ オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)対ビトー・ベウフォート(ブラジル)=ライト・ヘビー級8回戦 ※デラ・ホーヤが感染 ⇒ 代替えカードでイベント開催

★9月18日@アメリカ ブランドン・フィゲロア(アメリカ)対スティーブン・フルトン(アメリカ)=WBC、WBO世界スーパー・バンタム級王座統一戦 ※フィゲロアが感染 ⇒ 延期(日時未定)

★10月16日@アメリカ ファン・フランシスコ・エストラーダ対ローマン・ゴンサレス ※ゴンサレスが感染 ⇒ 延期(日時未定)

検査で陽性反応を示した選手たちの多くが無症状か比較的軽い症状で済んでいることは幸いといえる。また、試合そのものが消滅ではなく延期という点も救いだ。

間接的にコロナの影響があるのかどうかは不明だが、トップ選手の負傷による試合中止や延期も目立つ。

8月20日に尾川堅一(帝拳)とIBF世界スーパ・フェザー級王座決定戦を行う予定だったシャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン/ロシア)が練習中に肋骨を負傷して試合をキャンセル。尾川は別の相手と王座決定戦を行うことになった(日時は未定)。翌8月21日にマニー・パッキャオ(フィリピン)と戦うことになっていたWBC、IBF世界ウェルター級王者のエロール・スペンス(アメリカ)は左目の網膜裂孔であることが判明。こちらはスペンスに代わってWBAスーパー王者のヨルデニス・ウガス(キューバ)が出場、パッキャオに12回判定勝ちを収めている。さらにIBF世界フライ級王者のサニー・エドワーズ(イギリス)は足首を痛めたため9月11日に予定されていたジェイソン・ママ(フィリピン)との初防衛戦を延期している。

コロナが一日も早く収束し、少しでも不安の少ないなかで試合が行われることを祈るばかりだ。

リングにかける

判定勝利に物足りない選手も KOが全てではない「やりきった」表情を

試合に勝利するも悔しげな表情でマイクパフォーマンスする朝倉海(2021年9月19日撮影)

秋の祭典“格闘技ウイーク”が終わった。19日にRIZIN30大会、20日にK-1横浜大会、23日にはRISE横浜大会が行われ、3日間で約50試合の迫力ある熱いバトルが繰り広げられた。

東京オリンピック(五輪)・パラリンピックも終わり、燃え上がったスポーツの火を絶やさないよう、ファイターたちがリングの上で躍動し、大いに盛り上がった。その中で、勝利しても物足りない表情をする選手が多かったのが印象的だった。RIZINのメインで勝利した朝倉海が、判定勝利に「メインを任せてもらったのに…」と語るシーンがあった。RISEでは、ベイノアがねぎ魔神に勝利しながら納得の試合ができなかったことに「ねぎの試合だった」と肩を落とした。

格闘技の魅力の1つとして、ファンが自分たちにはできないものを見せてくれることがある。人を殴ったり、蹴り倒す姿を見ることで、スカッとしたり、ストレス発散になるのだと思う。その象徴的な形がKO。ファイターたちは戦う以上、KO(または1本勝ち)で相手を倒すことを狙う。

今回のKO決着は、

RIZIN…10試合中2試合

K-1…23試合中13試合

RISE…17試合中2試合

対照的な結果となったが、もちろん、KOがすべてではない。それでもRIZINやRISEを見たファンは「少なかったかな」と思った人もいたと思う。K-1中村プロデューサーは「K1はKOを狙って戦う競技。KOを狙う姿勢、倒しに行く攻撃を評価していく」と常々話しており、その通りの結果となった。

一方でRIZIN榊原CEOは、今大会を「リスクがあるが、1本やKOを目指して負けても評価は下げない。倒しに行ってほしい試合もあった」と振り返った。

RISE伊藤代表も「納得していない試合もあった。組まれている意味を分かっているのかな。ここでいい試合をしなければ、次はないという気持ちでやってくれないと」とあえて厳しい言葉を投げかけた。

RISEで那須川と対戦した鈴木は手数が少なく、有効打があまり奪えずに敗れた。「もっと強引に入っていけば良かったが、カウンターを意識し過ぎた」と話した。判定決着となったが、それこそが那須川の強さを物語った試合だった。那須川は「勝たないといけないことだけを考えていた。判定についても人それぞれあるだろうし、賛否あっていい」。リング上で相対する選手同士にしか分からない駆け引きもある。

レベルの拮抗(きっこう)している選手同士が戦うため、接戦になることは必至だ。数カ月の練習、過酷な減量をした上で、勝つ内容も求められる格闘家の世界は改めて厳しいものだと感じた。ファンもその思いを理解した上で見るからこそ、熱い声援を送る。だからこそ選手たちには、KOでも判定でも、勝っても負けても「やりきった」という表情でリングを降りてほしいと思う。【松熊洋介】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

ベイノア対ねぎ魔神 ねぎ魔神(左)に3回判定勝ちしたベイノア(2021年9月23日撮影)
大相撲裏話

編集に悪戦苦闘…立田川親方は“ユーチューバー”兼業

立田川親方

美しい所作と誠実な土俵態度で人気を博した立田川親方(元小結豊真将)が“ユーチューバー”を兼業している。今場所までに、日本相撲協会公式YouTubeチャンネルを通じて自身が撮影、編集した動画を2本投稿した。1本目は稽古まわしの作り方、2本目は国技館カレーのアレンジレシピ。計7万回以上も再生視聴されるなど注目されている。

「ユーチューバーの苦労が分かりますよ。撮影も編集もして…なかなか難しい。でも、これが意外と面白いんです」と楽しそうに話す。協会が公式YouTubeでさまざまな動画を発信していることに刺激を受け、今年1月ごろに挑戦してみようと決心した。「お相撲さんも動画に映れば喜ぶし、ファンの方にうちの部屋のことを知ってもらえる機会にもなる」。所属する錣山部屋の力士に協力してもらい、自身のスマホで動画を撮影。1万円ほどの動画編集ソフトを購入し、編集に慣れない1本目は完成まで2週間かかったが、2本目は1週間ほどで形になった。

普段の親方業務もある中で「コロナ禍で外に出られない時間を有意義に使えた」。秋場所後には、3本目の動画を撮影するプランを練っている。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

大関対決なし珍ケース発生か 白鵬休場で番付重み重視し、終盤まで割崩せず

貴景勝

大関戦の有無に注目が集まっている。慣例通り出場最高位の照ノ富士が14日目に貴景勝、千秋楽に正代と両大関との対戦が続けば、両大関同士の一番が組まれないことになる。2人以上の大関が千秋楽まで出場しながら大関戦が組まれなければ、19年夏場所以来2年ぶり。1場所15日制が定着した49年(昭24)夏場所以降では2例目と珍しいケースになる(大関陣が同部屋の場合や「一門別総当たり制」だった64年以前を除く)。

2年前の夏場所は、平幕の朝乃山が西前頭8枚目の地位で平幕優勝した場所。高安と豪栄道の両大関が9勝止まりで賜杯争いに絡むことができず、割を崩す大きな要因となった。

横綱と大関の人数に違いはあるが、昭和後期や平成初期では、8~10日目に大関戦を組むケースは頻繁に見られた。白鵬の休場により今場所は1横綱2大関の陣容。番付の重みを重視するためか、今場所は終盤まで割を崩せなかった。取組編成を担う審判部の伊勢ケ浜部長(元横綱旭富士)は「(大関戦が組まれない)可能性はある」と示唆。優勝争いの展開次第で、状況は変わっていきそうだ。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

リングにかける

兄矢吹と弟力石「あしたのジョー」に魅入られた「ワルの兄弟」ドラマに期待

9回、寺地(左)に強烈な右ストレートを見舞う矢吹(撮影・上山淳一)

見ていて久々に鳥肌が立つ激闘だった。22日に京都市体育館で行われたWBC世界ライトフライ級タイトルマッチ。世界初挑戦の矢吹正道(29=緑)が、王者寺地拳四朗(29=BMB)との壮絶な殴り合いを制し、10回TKO勝ちで新王者となった。周囲で今年の年間最高試合の声もあがるが、全く異論はない。

試合後にこのまま、引退の可能性も示唆した矢吹だが、23日の一夜明け会見でも「昨日言った通りですね」と曲げなかった。その一方で「兄弟でチャンピオンが自分の目標。自分はかなえたんで、弟をチャンピオンにしてやりたい」と言った。

世界戦でセコンドについた弟は力石政法(27=緑)。9勝(5KO)1敗で日本ライト級6位にランクする。17年12月、兄と一緒に緑ジムに入門した。本名は佐藤だが、兄が矢吹で弟は力石。不滅のボクシングマンガ「あしたのジョー」に魅入られた兄弟だ。

兄は少年時代、補導歴50回以上と荒れていた。その兄いわく、弟は「それ以上」という。それだけに2人の絆は深い。緑ジムの松尾敏郎会長が「兄弟、本当に仲いいですよ」と話す。荒れていたからこそ、支え合う。セコンドとして兄の世界王座奪取を支えた弟が、今度は主役の座を狙う。

松尾会長いわく「素質は高いですよ。世界チャンピオンクラス。兄ちゃんよりもあるんじゃないですかね」。強いから対戦相手がなかなか見つからない。力石は「ファイトマネーはいらないから、試合を組んでほしい」と松尾会長に頼んだこともあるという。

引退も示唆した兄のこともあり、今後は不透明だが兄弟、同じリングでタイトル戦のシナリオも見えてきた。兄は世界、弟はまず日本。警察の手を焼かせてきた「ワルの兄弟」が、多くの人を感動させる華やかな舞台へ。「あしたのジョー」兄弟に、そんなドラマを期待したくなった。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

大成道→大成龍 恩師からもらった「雅」…力士が改名に込めた思い

大成龍(2017年7月17日撮影)

力士は皆、改名に思いを込める。東幕下57枚目の大成道改め大成龍(28=木瀬)は「何かを変えたかった。勝ち越してほっとした」と安堵(あんど)した。

19年春場所以来の再十両を目指すも遠く、名古屋場所後に師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)から改名の提案を受けた。「即答でした。『龍』は師匠が弟子によくつける字。昇り龍などの意味もありますから」。笹ノ山→大成道と改名し、大成道の時には下の名前を3度変えた。それも木瀬親方の提案だったが「成績が伸びなくて申し訳なかった。今回は『道』を『龍』に変えて勝ち越せた」。勝ち越しを決めて「大成龍~」の勝ち名乗りを受けた時に誇らしい気持ちだった。

元プロ野球巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏の遠縁にあたる序二段4枚目の松井改め豊雅将(18=時津風)は「お世話になっている方」の文字を使って改名した。「雅」は高校時代の恩師の新田雅史氏、「将」は小中学時代の恩師の粂田将和氏からもらった。それに時津風部屋伝統の「豊」をつけて「名前に恥じないように気合を入れたい」と意気込み、3場所連続の勝ち越し。共に恩師らに吉報を届けた。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

ヘビー級注目の一戦ジョシュア対ウシク ロンドン五輪金メダリスト対決

ヘビー級のWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を保持しているアンソニー・ジョシュア(31=英国)が25日(日本時間26日)、英国ロンドンで元世界クルーザー級4団体統一王者で現在はヘビー級でWBA4位、IBF3位、WBO1位にランクされるオレクサンダー・ウシク(34=ウクライナ)の挑戦を受ける。88パーセントのKO率を誇るジョシュアが最重量級覇者の矜持を見せるのか、それとも技巧派サウスポーのウシクが2階級制覇を果たすのか。世界的に注目度の高い試合だ。

ふたりはともに2012年ロンドン五輪に出場し、ジョシュアが91キロ超のスーパー・ヘビー級、ウシクが91キロ以下のヘビー級で金メダルを獲得している。アマチュア戦績はジョシュアが43戦40勝3敗、ウシクは348戦333勝15敗と伝えられる。

ジョシュアはロンドン五輪から1年2カ月後2013年10月にプロデビューし、2016年4月にIBF王座を獲得したのを皮切りに1年後にWBAスーパー王座、さらに2018年3月にはWBO王座も手に入れた。通算6度の防衛を果たしたが、2019年6月に伏兵アンディ・ルイス(アメリカ)に7回TKOで不覚をとり、三本のベルトを同時に失った。半年後の再戦で王座を奪回し、昨年12月の初防衛戦ではIBF1位の選手に9回TKOで圧勝している。プロ戦績は25戦24勝(22KO)1敗。身長198センチ、リーチ208センチ、体重110キロ前後の恵まれた体から正確な左ジャブで距離とタイミングを計り、破壊力のある右ストレートを狙い撃つ正統派だ。

対するウシクは2013年11月にプロに転じ、2016年9月にWBO世界クルーザー級王座を獲得した。その後、階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」に参戦して優勝。同時にWBAスーパー王座、WBC王座、IBF王座も手に入れ4団体統一を果たした。通算6度の防衛を果たしたあとヘビー級にクラスを上げ、すでに2度のテストマッチをクリアしている。身長191センチ、リーチ198センチ、体重98キロ(直近の試合)とジョシュアと比べると体格面で見劣りするが、その分、重量級ばなれしたフットワークとハンドスピードを備えている。最大の特徴はサウスポーの技巧派であるという点であろう。戦績は18戦全勝(13KO)。

7対3のオッズが示すようにジョシュア有利は不動といえる。体格を生かして圧力をかけ、パワフルな右で仕留めるシーンが見られるかもしれない。その一方、気になるデータもある。ジョシュアがプロでサウスポーと戦ったのは初戴冠時の試合だけで、以来5年半、10試合ぶりとなるのだ。ウシクが左構えの利を生かして素早く動いてジョシュアに的を絞らせず、コツコツとパンチを当ててポイントを重ねていく可能性もありそうだ。

このあとヘビー級は10月9日(日本時間10日)にタイソン・フューリー(英国)対デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)のWBCタイトルマッチが控えている。期待される4団体の王座統一戦に向け、ジョシュアがパワーを生かして三本のベルトを守るのか、それとも技巧派のウシクが割って入るのか。2012年ロンドン五輪金メダリスト対決に要注目だ。

リングにかける

コロナに負けず「亀田3兄弟」の新たな形態、会長興毅氏が描く復活への道筋

亀田興毅会長(2021年5月22日撮影)

新型コロナウイルスの影響は、スポーツ界にも多大な影響を及ぼしている。ただ、立ち止まっているわけにもいかない。

元世界3階級制覇王者・亀田興毅氏(34)の3150ファイトクラブは、9月25日に大阪で計画した初の有料興行を延期した。その際に興毅会長は言った。「会長としては2つ続けて死です」。5月の初興行を無観客で行ったが、約750万円の赤字を抱えた。その経験を踏まえ、今回は延期を選択した。会長として新たな興行の形態を模索し、さまざまな試みをぶつけたいが、その思惑をコロナが阻む現状にいらだちを隠せない。

苦しめるコロナ禍だが、その中で進んでいることもある。元2階級世界制覇王者の弟・大毅(32)が、本格的にトレーナーとして始動した。興毅会長は「あいつはほんま、教えるのがうまい」と太鼓判を押す。その手に託されたのが、元WBA世界ミニマム級王者の宮崎亮(34)だ。不祥事などもあり1度は引退を決めたが、興毅会長の下で約5年ぶりの再起を決めた。その興行が延期となったが、大毅トレーナーと復活への道筋を描いている。

3150ファイトクラブは長男の興毅が会長、次男の大毅がトレーナーで、3男の和毅が現役で世界王者を目指す。一時期世間の注目を浴びた「亀田3兄弟」の新たな形態が、具体的に活動している。「必ず天下をとる。和毅は絶対に世界王者に戻す。ボクシングはおもろい。見といてください」と興毅会長は熱弁をふるう。

大毅トレーナーは現役時代、世間の多くの批判を浴びた。だからこその強みがある。興毅会長は「大毅は人に優しい。人の痛みが分かるねん。だから教え方もうまいんやと思う。なかなかそんな人間、おらんからな」と話す。大毅トレーナーが手がける元世界王者の宮崎。まもなく第2の幕が上がる。

大毅トレーナー本格始動の模様は、YouTube番組「会長。亀田興毅~亀の恩返し~」(YouTubeチャンネル=OROCHI TV)で詳細に伝えている。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

全ては力士になるため…イスラエル人のヤルデンさんはチャンス到来を待つ

角界入りを願って母国でトレーニングに励むイスラエル出身のヤルデン・ヤトコヴィスキーさん(本人提供)

力士になることを熱望するイスラエル人がいる。

秋場所8日目の19日に新序出世力士が発表された一方で、ヤルデン・ヤトコヴィスキーさん(23)はなかなか角界入りにこぎつけられない。「自分がどれだけ相撲が好きか(親方衆に)知ってほしい」。母国でトレーニングに励みながら機会を待つ。

イスラエルの小さな町「クファル・シルキン」で生まれ育った。祖父がスポーツ観戦を趣味にしており、テレビで相撲観戦にも興じていたためヤルデンさんも4歳の時に「相撲に恋をした」。近隣に相撲の指導者がいなかったため、相撲に近い柔術を始めると11年間の競技人生で国内大会の優勝も経験。さらに15歳で家族とともに引っ越した際に、知人の紹介でハンドボールを始めた。

「最初はハンドボールにそんなに興味がなかったのですが、柔術のコーチが退職したこともあり、柔術のトレーニングを少しの間休むことにし、ハンドボールをやってみることにしました。しばらくして、ハンドボールでいい成績がでるようになり、だんだん楽しめるようになってきました」。

イスラエルでは高校卒業のタイミングで兵役を義務づけられている中で、ヤルデンさんは同時にハンドボールのプロ選手になった。兵役義務と並行しながらの活動となるが、イスラエルではアスリートや音楽アーティストなどの分野で活躍する若者には一定の理解が示される。「ハンドボールは、軍隊の任務をいいコンディションでこなせるような体力を作ってくれました。軍隊の任務自体も、忙しく体を動かし続けることになりましたので、相撲に取り組むための準備になりました」。全ては力士になるための体づくりだった。

兵役義務を終えて資金の準備も整った昨年3月に、角界入りを目指して来日する予定だったが、コロナ禍による渡航制限で断念した。当時21歳。身動きが取れない状況の中で、入門への道を模索する。各相撲部屋のホームページなど「公開されている電話番号やメールフォームがあるすべての部屋に」連絡をした。自身がトレーニングに励んでいる動画も送って、勤勉さも印象づけた。返信があったのは5つの相撲部屋。「私が送ったメールや電話よりもはるかに少ない数だった」と肩を落とす。返信があった相撲部屋からは断られたか、返事を保留されているという。

状況が改善しないまま、今年の6月で23歳になった。25歳未満でも相撲や柔道、レスリングなどの格闘技で一定の成績を残した上で、入門部屋の師匠が提出した「年齢制限緩和」の申請が日本相撲協会の理事会で承認されれば、新弟子検査を受けられることは知っていた(協会員規則によると、各競技経験者は高等学校以上の全国大会への出場を原則とし、中学生以下の実績を除く)。

学生時代に柔術の大会で優勝したことはあったが「その実績だけでは不十分だと気がつきました」と、コロナ禍以降で柔道を始めたという。92年バルセロナ五輪の男子71キロ級で銅メダルを獲得した同国のオレン・スマジャの指導も受けて、「イスラエル柔道協会チャンピオンシップ」で準優勝、「イスラエル柔道協会カップ」で優勝を果たしたという。「これらの実績は、相撲協会の指す実績に該当すると思われますが、その意味で重要な実績であり、必要な実績を得ることができた」とアピールする。

ネットの動画を参考に四股、すり足、テッポウなどの相撲の基本運動も行っているという。力士の食生活を参考に、1日2食に変更して昼は自作のちゃんこ鍋を食べる。1日1万キロカロリーを目安に、この1年間で体重は30キロ増加して140キロ。「コーシャ」という宗教上の理由で豚肉などを食べられないルールもあったが、日本の食事に合わせるためにコーシャもやめた。週に1回の家庭教師も雇って日本語の勉強にも着手。ケガのリスクを避けるため、今年1月にハンドボールのプロ契約も終えた。

ヤルデンさんは受け入れ先の相撲部屋が現れることを期待するが、現時点で見通しは立っていない。返信があった5つの部屋のうち、木瀬部屋、鳴戸部屋の2部屋はすでに外国人力士を入門させている。電話取材に応じたある親方は「(ヤルデンさんから)連絡はあったけど、その前にモンゴル人で話をしている子がいた。砂浜で友達と相撲を取っている動画も送ってくれたけど、先約がいる以上は断らざるをえない」と申し訳なさそうに語った。

ヤルデンさんは「私が相撲と日本がどれだけ好きかを知ってもらいたい。相撲のために何でもする準備ができていることも知ってもらいたい」と力説した。SNSでも協力を呼びかけており、チャンスの到来を待っている。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

角界入りを願って母国でトレーニングに励むイスラエル出身のヤルデン・ヤトコヴィスキーさん(右)(本人提供)
角界入りを願って母国でトレーニングに励むイスラエル出身のヤルデン・ヤトコヴィスキーさん。砂浜で相撲を取っている(本人提供)
大相撲裏話

口癖は「若いのに負けられない」26年間休場なし45歳「鉄人」翔傑

口癖のように「若いのにまだまだ負けられませんから」と語る表情は、充実感に満ちあふれている。西三段目40枚目翔傑(芝田山)は、場所前の9月5日に45歳の誕生日を迎えた。年6場所制が定着した58年以降、45歳以上の力士が本場所で相撲を取るのは4人目となる。特筆すべきは、4人の中で唯一初土俵から休場がない点。高齢力士といえば51歳で現役の序二段華吹(立浪)が話題を呼ぶが、翔傑の“鉄人”ぶりも際立っている。

12日、初日の取組で香富士(左)を攻める翔傑

元大関魁傑が師匠の放駒部屋に入門して、18歳の95年春場所に初土俵を踏んだ。4年後の99年に部屋付きの芝田山親方(元横綱大乃国)が部屋を興し、翔傑は13年に放駒親方が定年に伴い部屋を閉鎖したことをきっかけに転籍。同親方は「どこの部屋に出しても恥ずかしくない。稽古はしっかりやるし、後輩もしっかり叱る」と評価。部屋の最年長として全幅の信頼を寄せている。

最高位は西幕下4枚目で、ここ2年は三段目で奮闘。翔傑は「回復力はさすがに若手にかなわない」と加齢の影響を実感するが「諦めがつけば力は抜けるけど、それがまだないから」とニヤリ。モチベーションが落ちない理由。「相撲が好きなんで」という言葉に詰まっている。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

44歳聡ノ富士 2人の弟弟子の横綱が現役の時に弓取り式「最後まで」

結びの一番を終えた後、懐かしい光景が飛び込んできた。大きな弓を巧みに操り、堂々と四股を踏む。弓取り式を行うのは、東序二段45枚目の聡ノ富士(44=伊勢ケ浜)だ。初日に弓取り式を行った西幕下22枚目将豊竜が初日の取組で肩を負傷。代役が回ってきた。「年も年なので見せられる体ではないけど、何とかやっています」と笑った。

弓取り式を行う聡ノ富士(撮影・河野匠)

18年初場所以来3年8カ月ぶりの弓取り式。自身の持つ弓取り力士の最高齢記録(戦後)を更新した。この日、自身の取組が終わったのは午前10時半過ぎごろ。コロナ禍の感染対策により自由な外出ができないため、弓取り式が行われる午後6時までは「支度部屋でぼーっとしてるだけ。それもつらいですよ」と苦笑。また、感染対策で歓声がなく「やっぱり『よいしょ』がないとね。拍手だけだと物足りないかな」と率直な胸の内を明かした。

とはいえ、今場所は弟弟子の照ノ富士の新横綱場所。「うれしいですね。近くで頑張っているのを見ていましたから」と感慨にふけった。かつては日馬富士の横綱時代にも行っていた。2人の弟弟子の横綱が現役の時に弓取り式を行うことになり「またできるとは思わなかった。代役でも任された限りは最後までやる」と言葉に力を込めた。【佐々木隆史】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

新生・荒磯部屋3人が白星「場所中一喜一憂しない」引き継がれる親方の意志

播州灘(左)を攻める西原(撮影・鈴木正人)

<大相撲秋場所>◇2日目◇13日◇東京・両国国技館

新生・荒磯部屋が第1歩を踏み出した。

13日の秋場所2日目。8月1日付で田子ノ浦部屋から独立した荒磯親方(元横綱稀勢の里)が創設した、荒磯部屋の全力士4人がそろって本場所デビューした。結果は3人が白星。国技館内で取組を見守った荒磯親方は「『荒磯部屋』って放送があった時はちょっとね。まぁ、いろいろ思うことがありますから」と感慨にふけった。

新部屋は出身の茨城・牛久市に近い、阿見町に建設中で、現在は仮住まいとして同県の筑波大内の稽古場を使用している。場所前には白まわしを締めて弟子らに胸を出した荒磯親方。白星を飾った西序二段36枚目西原(18)は、三番稽古をつけてもらったという。「教えは『場所中に一喜一憂しない』。師匠の現役時代の座右の銘だそうです」と元横綱稀勢の里の意志が引き継がれている。

荒磯親方の現役時代に付け人を務めていた、ベテランの東序二段38枚目足立(36)は「部屋のことは任されている。人数が少ない分、みんなで協力していきたい」と今はまとめ役を務める。弟子4人で出発した荒磯部屋。荒磯親方は「愛されるような強い力士を育てるのが目標。稽古場からしっかり教えていきたい」と抱負を語った。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

播州灘(左)を引き落としで破る西原(撮影・鈴木正人)
荒磯親方(2019年9月29日撮影)
リングにかける

元K1王者武居由樹が感じた井上尚弥の“殺気”「対峙して本当に怖かった」

第80回フェニックスバトル 竹田梓(左)にパンチを放つ武居由樹(2021年9月9日撮影)

6月上旬のことだった。元K-1スーパーバンタム級王者武居由樹(25=大橋)はリングで同門の先輩、WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28)とマスボクシング(軽めのスパーリング)で拳を交えた。ラウンドは世界戦と同じ12回。武居にとっては濃密な36分間だったという。

6月20日、当時のIBF同級1位マイケル・ダスマリナス(フィリピン)との防衛戦を控えていた井上のため、ダスマリナスと同じサウスポーの武居がマスボクシングの相手を務めた。パンチを当てず、試合の動きを再確認するための軽めの実戦トレーニングだが、武居は井上と向き合った感想を素直に口にしていた。

「初めて尚弥さんとマスをしましたが、マスであっても少し気を抜いたらやられるというか、『殺される』という感覚が分かりましたね。本当に『これが世界一なんだ』という経験でした」。

K-1時代の武居はK-1の3階級制覇王者武尊(30)に続く看板スター選手だった。17年から始まったK-1年間表彰式「K-1アワード」では、武尊を抑えて初代の年間MVPも受賞した。ムエタイなど海外選手らとも次々と対戦してきた自負もある。そんな武居が「いろいろな選手とやりましたが、1番対峙(たいじ)して本当に怖かったです。良い経験で、これ以上の経験は他では味わえないです」とも振り返っていた。井上の持つピリピリした“殺気”の経験は、武居の「血」となり「肉」になったという。

9月11日のボクシング転向2戦目で、武居は戦績5戦(5KO)無敗の竹田梓(高崎)を右ジャブ、左ボディーストレートの後、最後に右フックでダウンを奪い、1回2分57秒、TKO勝ち。冷静なメンタルで的確なパンチを打ち込み、涼しい顔で勝ち名乗りを受けた。3月のボクシングデビュー戦に続き、2戦連続の1回TKO勝利だった。

ボクサー武居のキラー・インスティンクト(殺し屋の本能)ぶりに大橋秀行会長(56)は「相手はカウンターがうまく、スピード、パンチ力もあり、対策も万全にしてきた動きだったのに倒した。びっくりした。これは普通の1試合じゃない。10試合分ぐらいの価値がある」と評価した。

リングの場数はK-1で数多く経験している武居ながらボクサーの経験値は2試合のみ。それでもボクシングに転向した武居の成長曲線は、大橋会長の予想を上回るほど急激に上へと伸びている。このB級(6回戦)での2連勝でA級(8回戦以上)ボクサーに昇格した。

「大橋ジムのスパーリングは見て勉強になります。尚弥さん、(元WBC世界バンタム級王者井上)拓真さん、(東洋太平洋、WBOアジア・パシフィック統一フェザー級王者)清水(聡)さんをはじめ、すごい先輩たちばかりなので吸収することが多いです」。

同門ボクサーの技術に触れ、感じつつ、吸収しようと試みるの貪欲さは武居の才能。井上から感じた世界に通じる「殺気」も、武居には大きな成長エネルギーとなっていたのだろう。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

WBSS世界バンタム級トーナメント決勝 ドネアにパンチを放つ井上尚弥(2019年11月7日撮影)

大相撲裏話

花田虎上氏「相撲の神様に恩返し」評論家就任、横綱昇進時のエピ告白に衝撃

大相撲秋場所から本紙評論家に就任する元横綱若乃花の花田虎上氏。現役時代の得意技「押し」を披露してくれた(2021年9月1日)

12日に初日を迎える大相撲秋場所(両国国技館)から、日刊スポーツの相撲評論家として第66代横綱若乃花の花田虎上氏(50)がデビューする。日本相撲協会を退職した、前任の先代錦島親方(元大関朝潮)からのバトンタッチだ。

くしくも伯父の初代横綱若乃花の花田勝治さん(故人)も、日刊スポーツの評論家を30年ほど前まで務めていた。そんなこともあり「これも何かの縁と思い引き受けさせていただきます」の快諾してもらった。ただ「土俵の鬼」と恐れられた初代とは、小兵という体形は似ていても、相撲解説となると趣を異にすると思われる。「決して“横綱目線”でなく、評論する力士の地位に応じて、自分がその番付にいた時の目線で解説したいと思います」と花田氏は言う。上から目線は避け、かしこまることなく“お兄ちゃん”らしいソフトタッチの解説になるのでは、と予想している。

紙面で掲載されるコラムのカットには、相撲担当記者内でも頭を悩ませた。個人的には、あの代名詞を入れるのが、一番ふさわしいのでは…と思った。そう、やっぱり「お兄ちゃん」-。あの柔和な笑顔でテレビやSNSでもおなじみだ。弟貴乃花と二人三脚で頂点まで上り詰めた姿に、その後の紆余(うよ)曲折はあっても、往年の相撲ファンには、いつまでも「お兄ちゃん」のイメージが残っているのではないか。だから、たとえば「お兄ちゃんの技あり解説」とか「お兄ちゃんの熱視線」とか。ただ、そんな軽々な発想から抱いていた候補の代名詞は、花田氏本人の「もう『お兄ちゃん』って、そんな年でもないし」と、笑いながらの言葉で、やんわりご破算になった。

今年1月に50歳になった花田氏。そりゃあそうだろうな、いまさら「お兄ちゃん」も気恥ずかしいだろう…と思いつつ、私の中では「お兄ちゃん」のままで記憶が止まっている。あの若貴フィーバーの渦中を取材していた中、当時若ノ花で三役最後の場所となった93年名古屋場所が、私の最後の相撲担当だった。その場所、13勝2敗の優勝同点で大関昇進を決めたため、大関以降の花田氏は見ていない。だから、いつまでも「お兄ちゃん」のままだ。

とはいえ評論家就任にあたり、この約30年をいつまでも空白のままであってはいけない。そう思い、何度か花田氏と電話で話し込み、あの自分も若かった頃には、つゆほども感じられなかった苦悩ぶりなどを聞いた。そんな中でも「そこまで追い詰められていたのか」とショッキングに耳に入ったのが、横綱昇進時のエピソードだった。ちょうど秋場所展望で新横綱照ノ富士の心境を、花田氏自身の経験と照らし合わそうと話を振った時に返ってきた答えだった。

「横綱になったら引退していいよって、師匠も言ってくれていたから」。横綱昇進が正式決定すると、日本相撲協会から伝達の使者が部屋にやってくる。「謹んでお受けいたします」で始まる、あの晴れの、一世一代の口上。まさか、と思い記事検索したところ、花田氏は使者が来る前日、父であり師匠の二子山親方(元大関貴ノ花)に「謹んでお断りします」と言ってもいいか、と問い掛けたという記事があった。昭和の大横綱・大鵬が横綱に上がった瞬間、いつ引退してもいい覚悟を持ったという話は生前に直接、ご本人から聞いたことがある。ただ、花田氏のこの告白は、それ以上の衝撃だった。

横綱に上がる前から体はボロボロで、小柄な体で巨漢力士全盛の時代に戦った代償は、今も変形し続け生涯、治らないという背骨にもあるという。「若い衆のころは、さすがに畳一畳分ぐらいしか自分のスペースがないから出来なかったけど、関取になってからは毎日だった」という本場所で対戦する相手力士のビデオは連日連夜、擦り切れるほどテープを回し研究したともいう。

自分の長所を伸ばしようにも、体の伸びしろは満身創痍(そうい)では限度がある。だから、それを補うべく相手の研究は「徹底的にやった」とビデオの映像を頭にたたきこんだ。「天性の相撲勘」ともよく称されたが、持って生まれたものに、たゆまぬ頭脳戦を重ねたことで、横綱の座をつかんだと思う。テレビでよく見る技術解説に定評があるのも、積み重ねのたまものだろう。評論家就任にあたり、その理由をこう語った。

「自分を育てていただいた相撲の神様に恩返しの気持ちで」

多角的な技術解説はもちろん、行間にそんな思いがにじむような評論を、読者の皆さまにもお届けできたら幸いだ。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

身長2m、体はすでに“横綱級”の北青鵬に期待していたが…またコロナか

北青鵬(2021年7月撮影)

またコロナかとため息をつきたくなる。大相撲秋場所は12日に東京・両国国技館で初日を迎える。しかし、力士の新型コロナウイルスの感染で、横綱白鵬をはじめ、宮城野部屋の力士全員が休場となった。

新横綱照ノ富士とともに場所をけん引するはずだった横綱白鵬はもちろん、土俵を盛り上げる有望力士を多く抱えるだけに残念でならない。中でも個人的に注目していたのが新十両の西十両12枚目・北青鵬(19)。自身がコロナに感染した。十分に対策を施してきた上でのことだけに、無念さは計り知れない。

とにかくスケールの大きさを感じる。序ノ口、序二段、三段目、幕下と各段を制して、関取の座に上がってきた。身長2メートル。ただでかいだけでなく、手足の長さを存分に生かした四つ相撲は、十両でも十分に通用するはず。さらに立ち合いの厳しさ、四つに組む流れで突き放すことも覚えていけば、トントンと番付の階段を駆け上がっていくと期待している。

モンゴル生まれだが、5歳で移った札幌で育った。しこ名も白鵬からもらい、将来を大きく期待されている。名古屋場所後の新十両会見では「やっとスタート地点にこられました。ここからなので」と話し、「夢は横綱。1年で関取(昇進)を果たせたんで、次は新入幕。横綱になれるよう、もっともっと稽古に励みたい」とあくまで通過点を強調した、意識の高さが印象的だった。

目指す相撲像も「横綱白鵬関のような左前まわしで前に出る相撲です。横綱からは『おめでとう。ここからだからね』と励ましていただきました」と具体的に掲げていた。体はすでに“横綱級”なだけに、身近なお手本にならっていけば、どこまで強くなれるか。

と、思っていただけに今場所の休場は残念でしかない。これも与えられた試練。場所に出られない時間をどう有効に使うかが、大器の行く末も左右しそうだ。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

WBAから暫定王者消滅 王座乱造で失ったベルトの価値と信頼取り戻せるか

かねてWBA(世界ボクシング協会)のヒルベルト・ヘスス・メンドサ会長(50=ベネズエラ)が公言していたとおり、8月31日付で発表されたWBAランキングから暫定王者が消えた。前月まで10人いた暫定王者はすべて「オフィシャル・チャレンジャー」としてランキング最上位(1位)に位置づけられた。このまま団体内の整理が進むことを願うばかりだ。

もともと暫定王者は、正王者が負傷や病気で防衛戦義務を果たせない場合に、その留守を預かる仮の王者として存在するものだった。

負傷によって活動休止になった王者にとっても、また挑戦の機会を待っているランカーたちにとっても、さらにはイベント(世界戦開催)を保護するためにも、このシステムは正しく利用すれば万能の救済策といえた。正王者が戦線復帰した際には真っ先に暫定王者と団体内の統一戦義務を負うため、やがて王座は一本化される仕組みになっていた。

ところが近年、WBAは無意味な暫定王座を乱発し、団体内の統一戦も数えるほどしか行われていなかった。メンドサ会長は「暫定王者は正王者への最優先の挑戦権を持つという位置づけ」と苦しい弁明をしていたが、暫定王者にはベルトも贈呈され防衛戦も承認されていたのだから王者として認知されるはずだ。これではファンや関係者の信頼を失うのも当然で、日本は10年前から「必然性のないWBAの暫定王座は世界王座とは認めない」という方針を打ち出していたほどだ。

こうした流れのなか数年前、WBAは暫定王座を減らす方針を打ち出したものの実現には至らなかった。だから今回もファンや関係者の多くは半信半疑だったことだろう。

今回の暫定王者の消滅の動きは歓迎すべきだが、統括団体の方針転換によって突然ベルトを剥奪されたかたちの選手には同情したくもなる。今後、訴訟問題が発生したとしても不思議ではない。

ところで8月31日時点でWBAは17階級のうち15階級でスーパー王者を承認しているが、こちらは据え置きとなっている。暫定王者の一掃にともないスーパー王者、正王者、オフィシャル・チャレンジャー(8月までの暫定王者)たちに対戦の義務を伝えている階級もあるが、すんなりと団体内統一戦が行われるかどうかは不透明だ。王座乱造によって失ったベルトの価値と信頼を取り戻すことができるかどうか。これはWBAに限った話ではなく、ボクシング界全体の問題といえる。

リングにかける

初代タイガーのように…ジュニアの魅力伝えるため戦う高橋ヒロム

IWGPジュニアヘビー級選手権、高橋ヒロム(左)はイーグルスのロン・ミラー・スペシャルに苦もんの表情(2021年9月5日撮影)

珍しく悔しさをあらわにした。新日本プロレスの高橋ヒロム(31)は、5日の新日本メットライフドーム大会で、IWGPジュニアヘビー級王者のロビー・イーグルスに敗戦。ロン・ミラー・スペシャルでつかまり、必死にもがいたが、絡まった足は全く動かず。「クソ~」と言いながら、リングをたたき、無念のギブアップとなった。

試合後のツイッターでは「悔しい」を33回も並べた。プロレス担当になってまだ短いが、あんなに悔しがる高橋を見たのは初めてだ。大会前には「勝つしかない。それだけ」と闘志をみなぎらせていた。

高橋ヒロムのツイッターより

危機感を抱いていた。「最近はヘビー級にあこがれる選手が多いのかな。悔しいですよ。このままではジュニアが終わってしまう」。普段の試合では、笑顔を振りまき、さまざまなパフォーマンスで観客を魅了する。明るい性格の原点は、幼いころからのポジティブな精神。2月に右大胸筋断裂のケガを負ったが「やってしまったことは仕方ない」と前向きだった。そんな高橋も今回の敗戦は「まあ、いっか」で終わらせることはできなかった。「ジュニアのすごさを見せた上で勝つ」と意気込んだ試合で敗れてしまった。

高橋 昔はジュニアの方がすごい時代もあった。初代タイガーマスクや小林邦昭さんは、ヘビー級のインパクトを超えていたと思う。俺自身も圧倒的スターにならないといけない。

記者からジュニアの魅力を聞かれた高橋は考え込んだ。「自信を持ってやっているが、聞かれた時にはパッと答えられない自分がいる。魅力を持たせられない俺自身も悪いのかな…」。責任を感じ、ジュニアのための入門テストを会社に提言。「小さい人間でも才能や根性を持った選手もいる。5年、10年先を見据えて、育てていかないと。深刻な問題だと思う」と語気を強めた。

高校時代、周囲から「お前みたいな小さいやつが(プロレスを)やれるわけない」と言われた高橋。171センチの体で、ジュニアらしい軽快な動きと、ヘビー級に負けないパワーで新日本を引っ張ってきた。これからも魅力を追求し、価値を高めながら、自らも王者返り咲きを目指す。【松熊洋介】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

IWGPジュニアヘビー級選手権、イーグルスにTIME BOMBを浴びせる高橋ヒロム(2021年9月5日撮影)

大相撲裏話

照ノ富士が「I LOVE YOU」歌ってみた 力士の魅力発信に協会工夫

「現役力士が歌ってみた」企画に臨む新横綱の照ノ富士(日本相撲協会提供)

力士の歌声を久々に聞いたというファンも、多かったのではないだろうか。

日本相撲協会は8月11日から4日間、公式ユーチューブチャンネルに「現役力士が歌ってみた」と題した企画の動画を投稿。新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)らが伸びやかな歌声を披露していた。場所は都内のスタジオで、撮影日は4月。編集作業などの調整で約4カ月温めることになったが、照ノ富士の横綱昇進と重なって好タイミングでの配信となった。

協会でユーチューブなどの企画を担当する職員によると、普段は視聴していない年齢層からも高い関心を集めたという。「いつもはそこまで多くはないけど、10代、20代の方に多く見ていただきました。60代の男性が多いのが特徴的だったんですが、この動画(歌企画)だと女性の方も多く見てもらっていますね」。歌った力士は照ノ富士のほかに美声で知られる平幕の阿武咲や、人気小兵力士の翔猿、十両炎鵬の4人。人選は、協会ファンクラブを担当する三保ケ関親方(元前頭栃栄)や、広報部の高崎親方(元前頭金開山)らと職員が相談して決めた。

動画の反響は大きく、3日時点で4人の「歌ってみた」動画は計28万回以上も再生されている。テレビでも取り上げられたが、力士=歌がうまいという認識は、全ての世代に浸透していないかもしれない。同職員は「テレビで若いアナウンサーの方が『力士って歌がうまいんですね』と、知らなかったという反応もあった。やっぱり年配の方だと昔の歌番組でやっていたのでご存じだと思うんですけど、なかなかそういう機会がない中で、誰でも見られる媒体で出せたのは良かったなと思います」と意義を口にする。

角界では19年11月から力士のSNS使用を禁止している。その直後、ある関取に聞くと「(SNSで)ファンとコミュニケーションを取ることで、励みになる部分があったので個人的にはショックです」と話していたことが印象に残っている。さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ファンと力士と触れ合う機会がめっきり減った。さまざまなリスクを抑えながらファンとの距離感を縮めるためにも、協会公式ユーチューブの重要性はますます大きくなりそうだ。

場所中は15日間毎日、親方衆が取組を解説したりフリートークをする「親方ちゃんねる」が配信され、個々人でも高崎親方が得意の料理を生かした企画を持ち込むなど、動画配信に対して協会内でも士気が高まっているという。土俵の充実はもちろん、コロナ禍でいかに土俵外の力士の魅力を発信するか協会側も工夫を凝らしている。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

バルデスvs.コンセイサン、全勝のオリンピアン対決に注目

9月10日(日本時間11日)、アメリカのアリゾナ州ツーソンでダブル世界戦が行われる。ひとつは中谷潤人(23=M.T.)対アンヘル・アコスタ(30=プエルトリコ)のWBO世界フライ級タイトルマッチで、もうひとつはオスカル・バルデス(30=メキシコ)対ロブソン・コンセイサン(32=ブラジル)のWBC世界スーパー・フェザー級タイトルマッチだ。

日本では中谷の初防衛戦が気になるところだが、メイン格のバルデス対コンセイサンは全勝のオリンピアン対決として注目を集めている。特に2016年リオデジャネイロオリンピック(五輪)ライト級金メダリストのコンセイサンにとっては重要な試合だ。

コンセイサンがボクシングを始めたのは13歳のときで、おじに勧められたのがきっかけだった。19歳のときに2008年北京五輪に出場したが、フェザー級で1回戦敗退。4年後のロンドン大会にはライト級で出場したが、またも初戦で敗れた。しかし、2013年の世界選手権で準優勝、2015年の世界選手権では3位に食い込むなど実力を蓄え、自国開催の2016年リオデジャネイロ五輪では4試合を勝ち抜いてライト級で金メダルを獲得した。アマチュア戦績は420戦405勝15敗。勝率は96パーセントを超える。ちなみにバルデスとは2009年のパンナム大会フェザー級決勝で対戦したことがあり、そのときはコンセイサンが6対5の1ポイント差で勝って優勝している。

アマチュアでの活動が長かったためプロ転向は28歳と遅かったが、村田諒太(帝拳)や井上尚弥(大橋)らも提携するトップランク社の後押しもあって順調に白星を重ねてきた。ここまでの戦績は16戦全勝(8KO)で、WBC14位にランクされている。

一方のバルデスはアマチュア時代に北京五輪(1回戦敗退)とロンドン五輪(ベスト8)に出場したが、ともにバンタム級だった。プロでは2016年7月にWBO世界フェザー級王座を獲得して6度防衛。今年2月、4年の在位を誇ったミゲール・ベルチェルト(メキシコ)を痛烈な10回KOで破って2階級制覇を果たした。戦績は29戦全勝(23KO)、KO率は79パーセントを超える。

強打に加え7カ月前の戴冠試合でスキルの面でも優れたものを披露したバルデスが圧倒的有利であることは間違いない。まだ強豪との対戦が少ない挑戦者は厳しい戦いを覚悟しなければなるまい。コンセイサンは相手を13センチ上回る長身(179センチ)と恵まれたリーチを生かして前半から飛ばし、バルデスが入ってくるところに右ストレート、右アッパーを狙い撃ちたいところだ。

もしもコンセイサンが勝てば、リオデジャネイロ五輪金メダリストとしては初のプロ世界王者誕生となる。また、コンセイサンが世界王者になると、ブラジルではエデル・ジョフレ(バンタム級、フェザー級)、ミゲール・デ・オリベイラ(スーパー・ウェルター級)、アセリノ・フレイタス(スーパー・フェザー級、ライト級)、バルデミール・ペレイラ(フェザー級)、現役のパトリック・テイシェイラ(スーパー・ウェルター級)に続いて6人目の世界王者誕生となる。

5年前、ブラジル国民を歓喜させたコンセイサンは再び旋風を巻き起こせるか。

リングにかける

コロナ禍で海外進出、世界への道切り開く横浜光ジム 自ら乗り込みアピール

横浜光ジム石井一太郎会長(2017年4月19日撮影)

ボクシングは大体2、3カ月前に試合が決まり、年間3、4試合こなす。昨年からそれもままならない。特に世界戦は大半が外国人相手だけに、渡航制限などもあってなかなか決まらない。それでも9月に日本人3人が防衛戦予定も、コロナ禍の影響を受けた。

WBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔は緊急事態宣言延長で、有観客から国内の世界戦で初の無観客に変更となった。WBC世界ライトフライ級王者寺地拳四朗は感染して延期。日本人では昨年11月のWBA世界ライトフライ級スーパーフライ級王者京口紘人以来2人目のことだった。

興行、試合も減り、マッチメークも普段以上に難しい状況が続く。そんな中で果敢に勝負に出たジムがあった。「メキシコに打って出る」と、横浜光ジムの2人が海外進出した。

3度防衛中の日本スーパーウエルター級王者松永宏信と、日本ウエルター級6位坂井祥紀。中量級は海外の層が厚く、日本人になかなかチャンスが回ってこない。そこでこちらから乗り込んで、アピールしていく戦略だ。

8月20日にプエブラで、松永は左ストレート一発で初回TKO勝ちした。坂井はメキシコで10年にデビューし、昨年里帰りして日本王座にも挑戦した。この日はメインで3度ダウンを奪って3回TKO勝ち。松永の相手は3日前に変更、坂井の相手は前日計量で体重超過し、当日にパスした。メキシコらしいアクシデントもあったが、進出第1戦をクリアした。

石井一太郎会長は名刀政宗とも言われた関光徳会長の下で東洋太平洋王者となり、海外修行の経験も豊富だった。関会長の死去後は実業家の宮川会長の下でトレーナーに。宮川会長が急死して会長代行となり、12年から正式に会長となった。

「指導者になるつもりはなかった。しかも会長なんて」と振り返るが、今や若手の敏腕プロモーターと言える。16年からプロモーション事業としてA-SIGHを設立。早くからユーチューブ・チャンネル、投げ銭などのクラウドファンディングなどに取り組み、今回の海外進出は新たな戦略だ。

興行は現地プロモーターとの共催だった。招待ではないため、経費なども自前となる。ユーチューブのメンバーシップを導入し、有料会員限定配信でリアルタイムの情報や裏話などを配信。収益のすべてはこの海外活動のための資金とするという。

海外進出では過去にも実績を持つ。赤穂亮はマニラ、高橋竜平はバンコクで地域タイトルを獲得し、世界挑戦へとつなげた。高橋は米ニューヨークにある格闘技の殿堂マジソン・スクエア・ガーデンで、日本人初の世界戦という歴史も刻んでいる。

メキシコはボクシング王国で選手も興行も多い。米国のプロモーターたちも注目している。そこで勝ち、アピールしていくことで、世界への道を切り開いていく。コロナ禍でも積極的なチャレンジが実を結ぶことを期待しよう。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

日本スーパーウエルター級王者松永宏信(2019年11月2日撮影)