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大相撲裏話

巨体支える力士に乾燥は大敵「水分量多めに」奮闘支える土俵の“荒木田土”

大相撲九州場所 6日目の幕内土俵入り(2021年11月19日撮影)

2本足で巨体を支える力士にとって「乾燥」は大敵になる。

肌ではなく、土俵の話。名古屋場所など地方場所の土俵が「滑りやすい」との指摘が力士から挙がり、17年九州場所から本場所で使用する土が統一された。全6場所で「荒木田土」を納入する初野建材工業(埼玉・川越市)特販部の内田英明さん(53)は「福岡は名古屋よりも運ぶのに1日ほどかかるので、水分量を多めにします」と話す。

川越市内で採取する同社の荒木田土はプロ野球のマウンドや春季キャンプなどで重宝されるなど、他競技からも信頼が厚い。角界でも近年は、本場所の環境に近づけたい部屋持ちの親方衆から発注が増えているという。元横綱稀勢の里が興した荒磯部屋も、九州場所宿舎の土俵で使用。需要は強まっている。

2年ぶりの九州場所の土俵。大関正代は「(季節的に)乾燥はしているけど、滑るような感じはそこまでしない」と感触を語る。「一番(大事なこと)は水分量。四つ相撲の方は特にそうですけど、力士の方は土が足につく方がいいと聞いているので、非常に気を使っています」と内田さん。力士の奮闘を支えている。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

大番狂わせロペス王座から陥落 ライト級トップ戦線、誰が残って誰が脱落するのか

11月27日(日本時間28日)にアメリカのニューヨークで行われた世界ライト級タイトルマッチは、4本のベルトを持つテオフィモ・ロペス(24=アメリカ)がIBF1位の挑戦者、ジョージ・カンボソス(28=オーストラリア)に意外にも12回判定負け、王座から陥落した。8対1のオッズがひっくり返る大番狂わせだった。このあとも4日(日本時間5日)、5日(同6日)、さらに11日(同12日)とアメリカでライト級の注目ファイトが行われるが、再び番狂わせは起こるのだろうか。

4日にラスベガスで開催されるデビン・ヘイニー(23=アメリカ)対ジョセフ・ディアス(28=アメリカ)のWBCタイトルマッチについては前回に触れたとおり、オッズは9対2でヘイニー有利と出ている。

その翌日5日にはロサンゼルスでWBAレギュラー王者のジャーボンテイ・デービス(27=アメリカ)にWBA8位、IBF2位、WBO9位のイサック・クルス(23=メキシコ)が挑戦する。3階級制覇を成し遂げているデービスはこの階級にしては身長166センチ/リーチ171センチと小柄だが、クルスは163センチ/160センチとさらに小さい。サウスポーのデービス、オーソドックスのクルスと構えは異なるが、ともに距離を詰めて打ちまくるファイター型だけにスリリングな打撃戦が見られそうだ。25戦全勝(24KO)のデービスのKO勝ちが濃厚だが、ひとつ歯車が違うと番狂わせも考えられる。24戦22勝(15KO)1敗1分のクルスもパンチ力があるだけに、いずれにしても早期決着は必至だ。

1週間後の11日、ニューヨークでは前WBA(スーパー王座)、WBC(フランチャイズ王座)、WBO王者のワシル・ロマチェンコ(33=ウクライナ)対前IBF王者、リチャード・コミー(34=ガーナ)が行われる。世界王座はかからないが、勝者がトップ戦線に残り、敗者が大きく後退するという過酷なサバイバルマッチだ。オッズは6対1でロマチェンコ有利と出ているが、コミーは伸びと破壊力のある右ストレートを持っているだけに、この試合も序盤から目の離せない展開になるものと思われる。前後左右に自在に動いて相手を翻弄し、思いもよらない角度とタイミングでパンチを繰り出す「ハイテク」ロマチェンコが持ち味を発揮しそうだが、予断は禁物だ。

ライト級には元WBA、WBC王者のホルヘ・リナレス(36=帝拳)をはじめ、6月にロマチェンコに敗れた中谷正義(32=帝拳)、アジア3冠王者の吉野修一郎(30=三迫)、その吉野と12月29日に対戦する元WBO世界スーパー・フェザー級王者の伊藤雅雪(30=横浜光)と力のある日本勢も控えている。

誰が残って誰が脱落するのか。ライト級トップ戦線が熱い。

リングにかける

ボビー・オロゴン「戦いたくない」14年ぶりMMA参戦は「みそぎのため」

ボビー・オロゴン(2021年11月19日撮影)

今後は「得意分野、“指相撲”の世界」に戻るのだという。タレントのボビー・オロゴン(55=ぼびバラチーム)は、沖縄アリーナのバックステージで、晴れ晴れとした表情でそう語った。

11月20日、沖縄で行われた総合格闘技(MMA)のRIZIN32大会で14年ぶりにMMA参戦。元プロレスラーでボディービルダーの北村克哉(35=チーム北村/武蔵村山さいとうクリニック)と対戦し、リアネイキッドチョーク(裸絞め)を決めて一本勝ちを収めた直後だった。

もちろん、指相撲の世界というのは冗談だが、「(MMAは)理由がなければやらない。戦いたくない」というのは、本心からの言葉だろう。参戦を決意した理由は「みそぎのため」に他ならなかった。昨年、妻の顔をたたいたとして暴行容疑で現行犯逮捕され、在宅起訴。失ったファンからの信頼を取り戻したかった。「人に指をさされないように頑張ります」とリングに上がり、勝利後は「期待を裏切らなくて良かった」と涙を流した。

芯があるから愛される。試合前会見では「白黄色はっきりさせよう」とおどけてみたり、「今回のテーマは“水着”」「世間にご迷惑をおかけした以上は、日本の文化にのっとって“三十路(みそじ)”する」等々、肝心なはずの「みそぎ」をわざと言い間違えて笑いを誘ってみたり…普段はおとぼけで注目を集めるが、ただそれだけの男ではない。

対戦相手の北村が「彼の体を見れば真面目にトレーニングしているのが分かる」と語ったように、分厚い胸板、きれいに割れたシックスパックと、鍛え抜かれた肉体は、参加選手の中でも際立っていた。今年で55歳。強靱(きょうじん)な肉体の裏には、人一倍の努力が詰まっていた。

今年10月、ランニング中に、川にいた女性を助け出した。今月12日に、埼玉県警越谷署から感謝状を送られた際は、事務所を通じ「困っている人がいれば助けるのは当たり前」と、おとこ気あふれるコメントを発表。本人は隠していたつもりらしく「なんで知ってんだよ! 恥ずかしいじゃんかよ」と、照れ笑いを浮かべた。

過去の過ちは消せないが、進むことはできる。今後、MMAのリングに上がるかどうかの明言は避けたが、人々を笑顔にするため、YouTubeやタレント活動を精力的に行っていくという。「もす(押忍)!」。そう大声で叫ぶと、胸を張って会場を後に。ボビー・オロゴンが、「みそぎの旅」への大きな1歩を踏み出した。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

北村克哉(左)を攻めるボビー・オロゴン(2021年11月20日撮影)
北村克哉に勝利し、トロフィーを手に記念撮影するボビー・オロゴン(2021年11月20日撮影)
大相撲裏話

九州場所13日目の26日から外食解禁 思い思いの初日の夜

負けたら街で酒を飲んで験直し。勝ったら気分よく酒を飲む。そんな力士は多く、年に1回の地方場所なら味も気分も格別だ。だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、力士らは1年半以上、本場所中の外食が禁止となっていた。しかし、世間の感染者数が低位置で推移しているのを受け、日本相撲協会は大相撲九州場所13日目の26日から、午後10時までに宿に戻るなどの制限付きで外食を許可。力士らは早速、思い思いに解禁日の夜を過ごした。

千代翔馬は、宿舎近くの焼き鳥屋に付け人と一緒に行った。その後、ラーメン屋にはしご。「いつもよりおいしかった」と久しぶりの本場所中の外食を堪能した。また、自身のリフレッシュはもちろんだが「やっぱり付け人を連れていってあげたかった。いつもお世話になっているので」と感謝を込めた外食でもあった。天空海は、九州は宮崎名物の「辛麺」に舌鼓を打った。「久々の現場はいいですね。我慢してたので。気分転換になりますね」と声を弾ませた。

一方、志摩ノ海は後援会関係者と食事をしたが「ずっと同じ生活リズムだったので体がびっくりした」という。寄り道や外食をしない生活に慣れ「それはそれで体調管理ができていた。自分と向き合う時間が作れていたので」とコロナ禍での生活が自身に合っていたことを実感。また、本場所中は何度か外食に行く程度だった琴ノ若は「この生活に慣れてあまり考えなくなった」と外食への欲が出なくなったといい、今場所の外食の予定はないとか。力士らは、外食解禁日にさまざまな思いを持った。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

「相撲をエンターテインメントに」元大関小錦、来日40年へ鼻息荒く

元大関小錦のタレントのKONISHIKI

新時代に突入した角界を注視する人物がいる。ハワイ出身で元大関小錦のタレントのKONISHIKI(57)は「(一人横綱となった)照ノ富士はたいしたもんだよ。でも他と(実力)差がありすぎる。早くニュースターが出てこないかな」と、若手の台頭を期待した。

求めるのが出稽古などの外出制限緩和だ。「俺たちの時代と比べられないけど、もっと稽古しないとね。部屋にこもっててもしょうがないよ」。気軽に外食できない状況も、力士にとって精神的な負担になっているという。「外から見ていると厳しすぎる。刑務所だよ。お相撲さんはよく我慢している」と同情していた。

自身は来年6月で来日から丸40年となり、両国国技館などの大規模な会場での記念イベントの開催に意欲を示している。「40周年だから非常に大事な1年だよ。アメリカでもやってみたいね」と鼻息は荒い。九州場所後の12月5日には大相撲を話題にしたトークメインのイベント「抱きしめてツナイト六本木場所」(ビルボードライブ東京)に出演。「相撲をもっと分かりやすいエンターテインメントにしたいんだ」と生き生きと語った。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

4人の世界王者が続々登場 今月末からアメリカでライト級ウォーズ勃発

11月27日(日本時間28日)から12月11日(日本時間12日)にかけて、アメリカで世界戦を含めライト級の注目ファイトが4試合行われる。4本のベルトを持つテオフィモ・ロペス(24=アメリカ)を軸に、3階級制覇のWBAレギュラー王者、ジャーボンテイ・デービス(27=アメリカ)、そして捲土重来を期す「ハイテク」ワシル・ロマチェンコ(33=ウクライナ)らが絡むライト級ウォーズ。このあと、どう動いていくのだろうか。

 まずは現在の主要4団体のライト級王者を確認しておきたい。

WBAスーパー王者   :テオフィモ・ロペス(アメリカ)

WBA王者       :ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)

WBCフランチャイズ王者:テオフィモ・ロペス(アメリカ)

WBC王者       :デビン・ヘイニー(アメリカ)

WBC暫定王者     :ジョセフ・ディアス(アメリカ)

IBF王者       :テオフィモ・ロペス(アメリカ)

WBO王者       :テオフィモ・ロペス(アメリカ)

暫定王者を含め4人の世界王者が存在するが、24歳のロペスが16戦全勝(12KO)、27歳のデービスが25戦全勝(24KO)、23歳のヘイニーが26戦全勝(15KO)と3人とも若くて挫折知らずだ。28歳のディアスも34戦32勝(15KO)1敗1分の好戦績を残している。最終的にはロペス対デービスの大一番が期待されるところだが、今回はその前景気を煽る試合という位置づけになりそうだ。

ロペスは両親の出身国ホンジュラスの代表として2016年リオデジャネイロ五輪に出場後にプロ転向を果たし、2019年12月に前評判の高かったリチャード・コミー(34=ガーナ)に2回TKO勝ちを収めてIBF王座を獲得。昨年10月、3団体王者のロマチェンコに12回判定勝ちを収めて4本のベルトを手に入れた。本来ならばIBF1位のジョージ・カンボソス(28=オーストラリア)を相手に6月に初防衛戦を行う計画だったが、再三延期されたすえ試合は27日にニューヨークで開催されることになった。カンボソスも19戦全勝(10KO)と負け知らずだが、順当に行けばロペスの終盤KO勝ちか判定勝ちに落ち着きそうだ。オッズは8対1で王者有利と出ている。

その1週間後、12月4日にはラスベガスでWBCレギュラー王者のヘイニーが暫定王者のディアスと団体内の統一戦を行う。スピードとスキル、巧みな試合運びに定評のあるヘイニーに対し、2012年ロンドン五輪出場の実績を持つディアスは好戦的なサウスポーで、両者の戦闘スタイルは対照的だ。ディアスは乱戦に引きずり込んで中盤以降の勝負に持ち込みたいところだが、ここは9対2のオッズで有利と見られているヘイニーが冷静に戦況を見極めながらテクニックで捌きそうだ。

ヘイニー対ディアスの翌日にはロサンゼルスでデービスの2度目の防衛戦が行われる。

<次週に続く>

大相撲裏話

まげつかむ反則でも取組続行「後に物言いを」きっかけは12年“誤審騒動”

九州場所8日目 貴景勝(右)のまげをつかみ反則負けになる逸ノ城(2021年11月21日撮影)

見慣れない光景だった。8日目の貴景勝と逸ノ城との一番。

逸ノ城が序盤の攻防で貴景勝のまげをつかむ反則があったものの、勝敗を決定づける場面ではなく取組は2分以上続行。貴景勝を土俵下に吹っ飛ばした逸ノ城に軍配が上がった直後、二子山親方(元大関雅山)は素早く手を挙げた。「(勝負の)後に物言いをつけるように指導されている。確認事項で物言いをつけました」。

同じく土俵下で審判を務めていた友綱親方(元関脇旭天鵬)によると、5人の審判のうち3人が逸ノ城の「まげつかみ」に気付いていたという。「基本は流れとしては止めちゃいけない。(協議では)みんなで話し合って、最後はビデオでも確認してもらった。あんなにがっちりつかんでいたから、確認するまでもなかったんだけどね(笑い)」。冗談を飛ばしつつ、入念に確認を行った。

SNSでは「反則があった時点で勝負を止めればいいのに」という意見も広がったが、審判部では、勝負がついたか自信がないときは取組後に物言いの手を挙げるよう指導されている。きっかけは12年九州場所9日目、日馬富士と豪栄道の一番。日馬富士の足が出たとして、湊川審判委員(元小結大徹)が取組を止めさせたものの、勝負はついておらず異例の「やり直し」に。日馬富士の左かかとが俵に残っている写真が報道されるなど“誤審騒動”になった経緯があった。

翌日には当時審判部長の鏡山親方(元関脇多賀竜)が、確信がないときは取組後に物言いの手を挙げるように周知させた。「(当時現役だったため)俺はまだ審判部にはいなかったけど、審判になった(配属された)ときはしっかり言われましたね」と友綱親方。審判部の親方衆が定期的に入れ替わる中で、指導は引き継がれているという。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

九州場所8日目 貴景勝と逸ノ城の一番で物言いが付き協議する審判団(2021年11月21日撮影)
リングにかける

強豪王者ゴロフキンに村田諒太の劣勢否めないが…持っているか勝利の“運”

村田はゴロフキンとの対戦に向け意気込む(撮影・足立雅史)

長年ボクシングを担当してきて、予想を裏切られたことは何度もある。一発で流れが変わり、時には終わるだけに、100%はない。まさかの負けが多い気がするが、負ける時は試合前から何かムード、雰囲気が違う。やはり番狂わせはびっくりさせられる。

思い返すと、一番の番狂わせは95年のことだった。竹原慎二がWBAミドル級で世界初挑戦した時だ。東洋太平洋王者時代はずっと取材していた。前哨戦となったV6戦では、珍しいダブルノックダウンの末に防衛していた。

世界となると、何しろ同級での日本人の挑戦すら初めて。王者カストロ(アルゼンチン)は100戦を超えるキャリアに圧倒的不利だった。期待薄を示すようにテレビ中継はなく、東京ローカルで深夜に録画放送だった。試合の時にはデスクで会社にいた。会議で予想を聞かれ「無理」と断言した。

ところが、現場からボディーでダウンをとったの電話が入った。試合は3-0で判定勝ちし、日本初のミドル級世界王者が誕生した。アジアからでも46年ぶり2人目だった。翌日の会議で「勉強し直してきますので、現場に戻してください」と言った。そうはいかなかったが…。

あれから22年後に、村田諒太が同級で日本人2人目の世界王者となった。この2年間は試合ができなかったが、ついに念願のビッグマッチにこぎ着けた。12月29日にIBF王者ゲンナジー・ゴロフキン(39=カザフスタン)との統一戦。20億円以上とも言われる国内最大のビッグイベントだ。

村田が初挑戦したとき、後輩記者が元世界王者の予想を取材していた。竹原氏もその一人。いろいろポイントを挙げたが「あとは運」と言ったそうだ。記者は「これって予想と言えますか?」と首をかしげていたが、スポーツでは運も大事な要素だと思っている。今で言う「持っているか」ということだ。

ボクシングの試合は独特なマッチメークというものがある。挑戦したくても王者が受け入れなければ、まずチャンスすらなかなか回ってこない。強い王者が君臨している時代もある。運があると、そろそろ潮時、負けごろの王者に挑戦できることがある。

相撲も長く取材したが、こちらも運は大事だ。大関が何人もいると、好成績でも昇進できない。横綱昇進も同様。番付運と言われる。優勝も大鵬、白鵬、千代の富士ら大横綱の全盛時は、他の力士には厚い壁となっていた。

コロナ禍でテレビを見る時間が多くなった。9月に亡くなった漫画家さいとう・たかを氏の追悼番組。その中でゴルゴ13のせりふが今も頭に残っている。「10%の才能と20%の努力、そして、30%の臆病さ、残る40%は運だろう……な」。

村田は世界初挑戦では不可解な判定で敗れた。運がなかったか。しかし、2度目の挑戦では再戦で見事に奪取で雪辱した。王座陥落も再び再戦で奪回した。何しろ日本人初の五輪金メダリストで、日本人として初めてプロとアマで世界の頂点に立った。

ゴロフキンは前王者時代には19度防衛など、誰もが認める強豪王者だ。村田が劣勢は否めないが、本当に運があるか、ゴロフキン戦が楽しみだ。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

新十両昇進目指す塚原 力士として床山として兄弟奮闘中

塚原

新十両昇進を、そろって待ち遠しくしている兄弟がいる。中学横綱に輝いた東幕下17枚目塚原(22=春日野)は、17年九州場所で初土俵を踏んで以来、ここ最近は幕下上位で奮闘中。この日は日体大で学生横綱に輝き、幕下15枚目格付け出しデビューした欧勝馬を強烈な突き押しで圧倒した。新十両昇進に向けて、毎場所力が入っている。

その兄の背中を追うようにして、9月の秋場所後に弟の床栃(18)が床山として春日野部屋に入門した。小学校時代はともに地元・埼玉の相撲クラブで汗を流した仲だが、床栃は中学進学以降は野球に打ち込んだ。しかし、兄が奮闘している姿を見て「兄(塚原)の大銀杏(おおいちょう)を結いたい」と、高校を中退して角界入りを決意。五等床山として日々、兄弟子らのまげを結って鍛錬中だ。

弟の熱い思いに当然、兄も刺激を受けている。現在は毎日、弟の床栃にまげを結ってもらっているという。入門したばかりの床栃にはまだ、大銀杏を結う技術がないというが「まずは自分が十両に上がらないと始まらない。1日でも早く上がれるように、しっかり頑張ります」と兄。弟のため、兄のため、ともに夢に向かって精進する。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

引退相撲にもコロナ禍 元大関豪栄道「やっと動けるようになった」

元大関豪栄道の武隈親方(2020年1月29日撮影)

新型コロナウイルス感染症予防で大相撲の力士、引退した親方も苦戦が続く。元大関豪栄道の武隈親方(35)が開催中の大相撲九州場所4日目(福岡国際センター)の17日、来年1月29日に東京・両国国技館で引退相撲を行うと発表した。

武隈親方は「10月から動きだせるようになった」と明かし、「引退しても来てよかったと思ってもらえるように頑張るだけです」。引退した力士は少なくないがコロナ禍で引退相撲ができない状況が続いていた。

それだけに本人の意欲も強い。「やっと動けるようになった。頑張っていきたい」。引退相撲=まげを切る儀式でもあるが長年、土俵を盛り上げてきた力士にとっての節目となる。それが、コロナ禍で阻まれてきたのが現状だ。

今後は親方として、強い力士を育てていく。「自分ができなかったことを成し遂げてほしい。必死に頑張りたい」。自身は横綱への夢を果たせなかった。その夢を託す力士を育てることが最大の夢。最初のスタートが、引退相撲の大舞台となる。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

3階級制覇王者クロフォード スペンスとの統一戦視野に5度目の防衛戦

3階級制覇を成し遂げているWBO世界ウェルター級王者、テレンス・クロフォード(34=アメリカ)の5度目の防衛戦が20日(日本時間21日)、元WBC、IBF同級王者で現WBO2位のショーン・ポーター(34=アメリカ)を相手にアメリカのネバダ州ラスベガスで行われる。クロフォードはサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)や井上尚弥(28=大橋)らと階級を超越した「パウンド・フォー・パウンド」最強の座を争う実力者。今回も6対1のオッズで有利とみられている。

クロフォードは2014年にWBO世界ライト級王者になり、2度防衛後に王座を返上。スーパー・ライト級転向初戦でWBO王座を獲得すると、2度の統一戦を経てWBC、WBA、IBFと3本のベルトを加え4団体王座を統一した。2018年には階級をウェルター級に上げ、ここでも戴冠を果たした。15度の世界戦(15勝12KO)を含む戦績は37戦全勝(28KO)で、KO率は75パーセントを超える。

173センチの身長に対しリーチが188センチと長いクロフォードは、構えを左右にスイッチして戦うことができる器用な選手だ。スピードとテクニックに加えパンチ力もあり、このところ8連続KOと手がつけられない強さを見せつけている。

挑戦者のポーターもウェルター級で2度の戴冠を果たしている実力者で、こちらは荒々しい攻撃が持ち味のファイターだ。7度の世界戦(4勝1KO3敗)を含めた戦績は35戦31勝(17KO)3敗1分。KO率は50パーセントに満たない。

圧倒的有利が予想されているクロフォードだが、不安材料がないわけではない。ここ2試合では相手との距離感やタイミングをつかむのに時間を要し、序盤に手を焼く展開が続いているのだ。終わってみれば9回TKO、4回TKOで強さを印象づけてはいるが、相手に付け入る隙を与えていることは否めない。今回、突貫ファイターのポーターに序盤で主導権を渡すような展開になれば無敵状態のクロフォードといえども苦戦は免れないだろう。

ウェルター級にはWBC王座とIBF王座を持つ27戦全勝(21KO)のエロール・スペンス(31=アメリカ)がいる。すでに5度の防衛を果たしており、2年前にはポーターからダウンを奪って12回判定勝ちを収めている。

クロフォードとスペンスの実力は互角とみられており、ふたりの統一戦は数年前から期待されている。しかし、ビジネス面で両陣営の歩み寄りがみられず実現には至っていない。今回、クロフォードがポーターを相手にどんな試合をしてどんな結果を残すのか、ファンや関係者は興味深く見守っている。

大相撲裏話

引退から1年…元琴奨菊の恩返し「このご時世で何を伝えられるか考えたい」

現役時代の琴奨菊(2020年9月27日撮影)

元大関とはいえ、さすがに現役の関取には敵わないという。

引退して15日でちょうど1年。稽古場でまわしを締めて力士を指導する秀ノ山親方(元大関琴奨菊)は、気分次第で相撲を取ることもある。「この前は(弟弟子で十両の)琴勝峰と三番(稽古)をやったけど、1発で持っていかれましたね。さすがにもう厳しいかなあ」と苦笑い。1年前の引退会見では「できるならまだ相撲を取りたいのが本音」と語っていたが、徐々に力士としての踏ん切りはついてきた。

東京開催だった昨年11月場所中に現役引退を発表した。2年ぶりの九州開催。福岡県柳川市出身で、ご当所場所では大歓声を浴びた。7月の名古屋場所後に取り外された16年初場所の優勝額は、今場所後に地元柳川市の文化体育館に寄贈する予定。「今振り返ってみても九州の方々の応援は本当に力になった。地元に何かしら還元したい」。形にして“恩返し”する。

コロナ禍で先は見通せない状況だが、断髪式は来年の開催を目指している。「自分にできるのは相撲普及しかない。このご時世で何を伝えられるかじっくり考えたい」。19年の力士生活を支えてくれたファンや関係者に思いを伝える。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

大相撲見据えた日体大2年花田秀虎 学生の段階で「大関」レベル意識

7大会ぶりに相撲の学生王者となった日体大

11月6、7日と大阪・堺市大浜公園相撲場で行われた全国学生相撲選手権を取材した。文字通り、学生相撲の頂点を争う。この大会から大相撲の世界へとつながった力士は少なくない。「金の卵」を発掘する意味でも楽しみな大会だ。

初日、個人戦の決勝は日大4年の川副圭太と日体大2年の花田秀虎が対戦した。身長165センチと小柄な川副が、鋭い立ち合いから懐に潜り込み、休まず攻めたて最後は寄り倒した。「ずっとけがしてたんで、試合に出ることもできず、この大会にすべてをかけていた」。今年5月ごろに右アキレス腱(けん)を部分断裂し、10月になってようやく相撲がとれるようになった。最終学年、最後の学生選手権にすべてをかけた意地は見事だった。

一方、負けた花田は大相撲まで見据えた「金の卵」か。昨年度の全日本選手権で1年生でアマ横綱となった。184センチ、138キロ。体格的にも伸びしろは多い。アマ横綱を獲得したことで、大相撲にいけば幕下15枚目格付け出しの資格を得られる。今回、学生横綱も獲得していれば、10枚目格の超エリートコースだが、資格期限は2年。いろいろな制限をかけられているが、花田は将来を見据えて学生の期間を有効にすべく考えている。

日体大は団体で7年ぶりの優勝を飾った。大将を務めた花田の試合後の言葉が印象的だった。「学生の間に(大相撲の)大関クラスの力をつけたい。その力を持って(大相撲に)行きたいです」。学生の段階で、すでに「大関」レベルを意識する。その思いの深さに感心するしかなかった。

花田は卒業してから大相撲に行く方針。アマ横綱の“特典”は期限外となるがこの先、タイトルを積み重ねる自信もあるのだろう。大相撲ファンが望むひとつが「日本人横綱」。まだ先になるかもしれないが、花田には楽しみな可能性が詰まっている。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

4団体王座統一戦へ井上尚弥を軸に「バンタム級ウォーズ」が佳境迎える

この12月、井上尚弥(28=大橋)を軸にしたバンタム級トップ戦線が大きく動く-。WBAスーパー王座とIBF王座を持つ井上が12月14日に東京で防衛戦を行うほか、11日(日本時間12日)には2年前に井上と激闘を展開した現WBC王者のノニト・ドネア(38=フィリピン)と、WBO王者のジョンリエル・カシメロ(32=フィリピン)がそれぞれ指名挑戦者を迎えて防衛戦に臨むのだ。

この「バンタム級ウォーズ」を勝ち抜いた先には4団体王座の統一戦が待っている。

井上は12月14日、東京・両国国技館でアラン・ディパエン(30=タイ)を相手に通算6度目の防衛戦に臨む。WBA8位、IBF6位にランクされるディパエンは3年足らずのキャリアで14戦12勝(11KO)2敗の戦績を残している強打者だが、世界的な強豪との対戦は皆無で、力不足の印象は拭えない。16度の世界戦を含め21戦全勝(18KO)の井上に死角は見当たらない。王者の前半KO勝ちが濃厚だ。

2019年11月の階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の決勝で井上に敗れたドネアは今年5月、ノルディーヌ・ウバーリ(35=フランス)に4回KO勝ちを収めてWBC王座を獲得した。11月16日に39歳の誕生日を迎えるが、まだまだ闘志は衰えていない。12月11日にはアメリカのカリフォルニア州カーソンで暫定王者レイマート・ガバリョ(25=フィリピン)との団体内統一戦に臨む。47戦41勝(27KO)6敗の5階級制覇王者ドネアに対しガバリョは24戦全勝(20KO)と高いKO率を誇るが、経験値を含め総合力で勝るドネアに分があるカードだ。

同じ12月11日、WBO王者のカシメロは元IBF王者で現WBO1位の指名挑戦者ポール・バトラー(32=英国)を相手に5度目の防衛戦を予定している。10月上旬に興行権入札が行われたが、落札額は10万5000ドル(約1200万円)と低額だった。このうち75パーセントに相当する7万8750ドル(約900万円)がカシメロ、25パーセント(2万6250ドル≒300万円)がバトラーの報酬となる。英国のほか中東アラブ首長国連邦のドバイが開催地候補として挙がっている。バトラーは35戦33勝(15KO)2敗のベテランだが、勢いのあるカシメロ(35戦31勝21KO4敗)の攻撃を止めることは難しいだろう。カシメロがKOで防衛しそうだ。

このほか12月か来年1月にはリー・マクレガー(24=英国)対ジェイソン・マロニー(30=オーストラリア)のIBF挑戦者決定戦が計画されている。IBF3位のマクレガーは11戦全勝(9KO)の強打者で、172センチの長身から繰り出す右や左ボディブローが光る。IBF5位にランクされるマロニーは昨年10月、井上に7回KOで敗れたが、今年8月に再起している。24戦22勝(18KO)2敗。この試合も10月に興行権入札が行われたが、カシメロ対バトラーの2倍近い20万1100ドル(約2520万円)で落札された。規定によって60パーセント(約1512万円)がマクレガー、40パーセント(約1008万円)がマロニーの取り分となる。

さらにWBA2位、IBF9位にランクされるゲイリー・アントニオ・ラッセル(28=アメリカ 19戦18勝12KO1無効試合)も11月27日、アメリカのネバダ州ラスベガスで、世界挑戦の経験を持つWBC5位、アレクサンドロ・サンティアゴ(25=メキシコ 31戦24勝13KO2敗5分)と対戦する。

今回のようにトップ選手たちが同じような時期に試合をすると、数カ月後に勝者同士の対戦が組みやすくなる利点がある。はたして誰が勝ち残り、誰が脱落するのか。4団体の王座統一に向けた「バンタム級ウォーズ」が佳境を迎える。

リングにかける

健康美ボディーで人気のタイ・コンティ14日にAEW女子王座挑戦

赤の水着姿を公式SNSで披露したAEW女子王座次期挑戦者タイ・コンティ(コンティの公式インスタグラムより)

11月4日(日本時間5日)に米プロレスWWEが再び18人もの選手の解雇に踏み切った。ロウやスマックダウンに所属していながら契約が解除され、元王者クラスもメンバーに含まれていた。今年に入って経営合理化などを理由に次々とWWEから選手が離れているが、現在はオール・エリート・レスリング(AEW)というWWEのライバル団体が躍動。新たなムーブメントが起こっている。

WWEで活躍ができずに解雇されながらも、移籍先のAEWで脚光を浴びているのがブラジル人女子レスラーのタイ・コンティ(26)だろう。13日(同14日)にはAEWのPPVフル・ギア大会(米ミネアポリス)でAEW女子王者ブリット・ベイカー(30)に挑戦する。4月に当時の同王者志田光に挑戦し、敗れて以来2度目の同王座挑戦の好機だ。7日には自らの公式インスタグラムを更新し「あと6日。(王座を)獲得したい。私のキャリア最大のチャンス。準備はできている」などと投稿した。

16年からWWEと契約を結びながら、20年4月に退団となったコンティは同年8月にAEW移籍後、公式インスタグラムのフォロワー数を伸ばしてきた。現在は53万人を超えている。プロレスラーとしての姿だけでなく、健康美あふれる水着姿を数多く更新。米プロレスファンの注目度も高くなっている。今年に入って英メディアもコンティの人気インスタグラムに反応。「彼女はフォロワーたちを非常に喜ばせている」と紹介したほどだ。

ブラジル・リオデジャネイロ生まれのコンティは柔術と加え、柔道でも黒帯を持ち、16年リオ五輪も目指していた格闘家でもあった。強くてかわいい、ブラジル版のツヨカワ系プロレスラーと言っていい。WWEから解雇されたとしても、新たな団体AEWで大きく輝き、王座奪取を狙う存在にまで成長。「解雇」と言われると背筋が寒くなるような言葉だが、米社会では新たに輝くチャンスになっているのかもしれない。

コンティは、その好例だろう。今年に入ってWWEの大量解雇が続いているのは暗いニュースとして残念に感じるものの、くすぶっていた才能あふれる選手たちが躍動する“逆転劇”がある。今の米プロレス業界が活性化している証明でもあるだろう。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

◆タイ・コンティ(本名タイナラ・メロ・デ・カルヴァリョ) 1995年6月9日、ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。バスコダガマで体操競技をはじめ、すぐに柔術、柔道に転向。柔道では地域王者、州王者に輝く。16年10月にWWEと契約し、17年4月にプロレスデビュー。同年に女子登竜門トーナメント「メイ・ヤング・クラシック」に出場し初戦敗退。18年レッスルマニア34大会の女子バトルロイヤルに参戦。18年もメイ・ヤング・クラシック参戦も2回戦敗退。20年4月にWWEに解雇され、同年8月にAEWと契約。21年1月にNWA女子王座に挑戦も敗退。同年4月にはAEW女子王座挑戦も敗れた。168センチ、57キロ。

自らの健康美ボディーを公式SNSで次々と公開するAEW女子王座次期挑戦者タイ・コンティ(コンティの公式SNSより)
大相撲裏話

待ちわびた2年ぶり九州場所「喜久家」軍配モチーフのイヤリングが反響

大相撲九州場所の売店「喜久家」で販売される予定の軍配をモチーフとしたイヤリング(喜久家提供)

2年ぶりの福岡開催を控えて、グッズ販売もにぎわっていきそうだ。

大相撲九州場所(14日初日、福岡国際センター)まで2週間を切った11月3日、九州場所のグッズなどを扱う「大相撲売店喜久家」(福岡市)(@sumokikuya)がツイッターに投稿したオリジナルイヤリングの画像が話題になった。行司の軍配がモチーフとなっており、土俵上のつり屋根の4色の房も表現されている。同市のアクセサリーブランド「Jemy」とのコラボ商品。5日時点で400以上の「いいね」が付くなど反響を呼んでおり、喜久家担当者の清水沙恵さん(28)は「びっくりしております」と、想像以上の反響に驚いたという。

イヤリングの他にピアスや、マスクの耳などに引っかけて使う「マスクチャーム」を会場内の売店で販売する。「マスクチャームはお相撲さんの形や、呼び出しさんを意識した扇子、他にもダルマなど縁起のいいものをそろえる予定です。これからSNSでも画像をアップしていきます」。ツイッターだけでなく、インスタグラムでも精力的に情報を発信している。

「喜久家」が大相撲と携わるようになったのは1974年(昭49)で、50年近い歴史があるという。沙恵さんの母のり恵さん(55)が3代目社長。九州出身の“ご当地力士”をプッシュしながら、さまざまなグッズを取り扱っている。

昨年の新型コロナウイルス感染拡大の影響で11月場所は東京で開催され、同時期の福岡国際センターは閑散としていた。19年以来2年ぶりの九州場所は、有観客で開催を迎える見通し。沙恵さんは「無事に15日間が終わればいいなと思っています」と願うように話した。

5日に取材に応じた熊本県出身の大関正代(30=時津風)は「見に来る人も楽しみにされていると思う。成績の面でこだわっていきたい」と奮起を誓った。土俵に上がる力士も、開催に携わる地元関係者も、さまざまな思いを胸に、待ちわびた2年ぶりの九州場所に臨む。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

リングにかける

世界戦級の注目度 1年ぶり再起の田中恒成VS「3度目のチャンス」石田匠

再起戦の相手、石田の写真を手に気合の田中(畑中ジム提供)

スポーツ界を苦しめてきた新型コロナウイルス感染症も、現状は落ち着きを見せてきた。同時に待ちに待ったイベント、興行も活性化の兆し。ボクシングでいえば12月は”モンスター”WBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥、そしてWBA世界ミドル級王者・村田諒太の防衛戦が発表された。

これらビッグイベントに負けない、世界戦レベルの楽しみな試合も行われる。元世界3階級制覇王者でWBO世界スーパーフライ級9位・田中恒成(26=畑中)の再起戦が12月11日に名古屋国際会議場で行われる。対戦相手は世界挑戦経験もあるIBF同級5位の石田匠(29=井岡)。試合は契約体重52・5キロの10回戦で行われる。

田中は昨年大みそか、4階級制覇をかけてWBO同級王者の井岡一翔に挑み、8回TKOで初黒星を喫した。試合後に「完敗です。こんなに差があったのかとびっくりした」と語り、精神的にも深くダメージを負った。時間をかけて上がる再起のリング。ジムの畑中会長は「新しい田中恒成が見られると思います」と力説した。

田中も「再起戦」とはとらえていない。「次の試合で終わってもいいと思えるぐらい、この試合にかけたいと思います」と熱く語り、「勝ち続けてきた時とは違って、初めての1年。ボクシングをより深く分かったこともある。相手の動きや変化が見えるようになった。感覚的に磨かれていると思う」と敗戦から学んだことを強調した。

対戦する石田も「自分にとっては3度目のチャンス。世界挑戦、世界挑戦者決定戦、そして今回。ベルトはかけられていませんが、世界戦に匹敵するような試合を用意していただき感謝しています。三度目の正直、ラストチャンスだと思っています。人生かけて1ラウンドからKOを狙う気持ちで思い切りいきます」と熱くコメントしている。

世界戦級に注目したいノンタイトル10回戦。その先にある「世界」に向けた両者の激しいバトルが期待できる。【実藤健一】

原功「BOX!」

アルバレス4団体統一へ圧倒的有利 挫折知らないプラント大番狂わせなるか

11月6日(日本時間7日)、スーパー・ミドル級の主要4団体の王座統一戦が行われる。WBAスーパー王座、WBC王座、WBO王座に君臨するサウル・カネロ・アルバレス(31=メキシコ)とIBF王者のケイレブ・プラント(29=アメリカ)が雌雄を決するものだが、総合力や実績で勝るアルバレスが圧倒的有利とみられている。予想どおりの結果になるのか、それとも大番狂わせが起こるのか、注目の一戦だ。

プラントは7年半のプロキャリアで21戦全勝(12KO)の戦績を収めており、2019年1月に獲得したIBF王座は危なげなく3度防衛している。身長185センチ、リーチ188センチと体格に恵まれ、スピードやテクニック、パワーを備えた潜在能力の高い好選手だ。まだ挫折を知らないだけに、「私の方が強いということを証明する。多くの人は無理だと思っているようだが、私はやってみせる。プロで21戦してきたが、その多くはレベルの高い相手だった。その経験が私の力になるだろう」と自信満々だ。

しかし、客観的に見た場合、アルバレスに勝てる可能性は極めて低いといわざるを得ない。4階級制覇を成し遂げているアルバレスは井上尚弥(大橋)らを抑え、全階級を通じた最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド」でナンバー1の評価を受けている実力者で、現在は死角らしいものが見当たらないのだ。身長173センチ、リーチ179センチと体格では劣るが、最近の3年間でアルバレスはプラントと似た体格の選手3人を圧倒しており、大柄な相手に対する苦手意識は感じられない。プレッシャーをかけて巧みに距離を縮め、ボディと顔面にパワフルで多彩なパンチを叩き込む術を会得している印象が強い。さらに2005年に15歳でプロデビューしたアルバレスはプラントの3倍近い59戦(56勝38KO1敗2分)をこなしており、世界戦だけで19戦(17勝10KO1敗1分)を経験しているのも強味だ。フロイド・メイウェザー(アメリカ)やゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、ミゲール・コット(プエルトリコ)といった猛者とも手合わせしてきており、その点でもプラントのはるか上を行っている。

世界王者同士の統一戦にもかかわらずオッズは10対1と大差がついている。もちろんアルバレス有利である。前半はプラントのスピードと動きを警戒して慎重になるかもしれないが、中盤あたりからアルバレスがプレッシャーを強めていくものと思われる。プラントが足をつかって防御に専念した場合は勝負が長引く可能性があるが、それでもアルバレスの勝利は不動といえそうだ。アルバレスに4000万ドル(約45億6000万円)、プラントにも1000万ドル(約14億4000万円)が最低保証された大一番だけに、その金額にふさわしい熱戦を期待したい。

リングにかける

ここで終わりたくない…冷静な表情の斎藤裕が逆襲の日見据える

24日 2回、流血した斎藤はドクターの治療を受ける

普段は感情を表に出さない男が、リング上で泣き崩れた。総合格闘技のRIZIN31大会が10月24日に神奈川・ぴあアリーナMMで行われ、フェザー級タイトルマッチで王者斎藤裕(34=パラエストラ小岩)がDEEPフェザー級王者で挑戦者の牛久絢太郎(26=K-Clann)に敗れ、初防衛に失敗した。2回4分26秒、重心を低くしたその一瞬に飛び膝蹴りを受け、右目上部を出血。ドクターストップによるTKO負けだった。

「いつでもどんな相手でも王者として受けて立つ」。9月30日の会見で、内に秘める熱い思いをぶつけた。対戦相手や日程が転々とする中で「誰が相手でもタイトルマッチにしてください」と榊原CEOに直談判。おとこ気あふれる要求で、今大会のメインイベンターを託された。

それだけに、大会にかける思いとプレッシャーは一際強かった。朝倉未来・海兄弟や、堀口恭司、那須川天心がいない中で、大会の盛り上がりを不安視する声もあった。試合前の会見では「最近、悪夢ばっかり見る」と吐露。「相手との戦いではあるが、お客さんや世間との試合だと思っている。メインにふさわしい1番の試合にしたい」と、自分に言い聞かせるように話していた。

リング上で流した涙は、ベルトを奪われた喪失感。そして、応援してくれたファンに不本意な試合を見せてしまった無念だった。試合から一夜明けた25日、自身のYouTubeチャンネルを更新。「会場、PPV、たくさんの方が見てくださったと聞いています。本当にありがとうございました」と感謝を口にした。さらに、目の傷は眼球近くに及んでいたことを明かし、「(ドクターストップは)ルール上は仕方なかった」と振り返った。それでも「個人的には眼球が傷つくぐらいならできる。あと5分、なんとでも堪えることはできた」と悔しさをにじませた。

王座は失ったが、目の中の光までは失っていない。治療に専念し、早期の復帰を目指す。「ここで終わりたくない。もうひとふんばり…ふたふんばりしたいと思います」。そう、力強く動画を締めくくった。牛久にリベンジし、止まった時間を動かす-。いつもの冷静な表情の斎藤が、逆襲の日を見据えていた。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

65歳まで細く長くやれれば、ギラン・バレー症候群克服した式守勘太夫

トンボ柄の装束を着た式守勘太夫

ギラン・バレー症候群を克服して土俵に上がっている行司がいる。

幕内格行司の式守勘太夫(52=宮城野)は、2017年12月の冬巡業中にギラン・バレー症候群を発症し、18年初場所から5場所連続休場。同年九州場所で本場所復帰を果たし、今年の九州で丸3年になる。土俵での所作を見る限り、特に問題はない。近況を聞くと「まだ100%ではないんです。だいたい8割くらいで、あとの2割くらいは不自由なところがあるんですよね」と明かしてくれた。

突然、症状が出たのは、17年12月8日。式守与之吉を名乗っていた当時の宮崎市巡業の朝。腕に力が入らなくなり、顔が洗えなくなった。緊急帰京したが、羽田空港に着くころには自力で歩けなくなった。原因は不明。四肢に力が入らなくなる病気、ギラン・バレー症候群だった。緊急入院し、5日間点滴を受け続け、リハビリ開始。当初は首しか動かせず、歩けるようになったのは18年4月から。復帰をあきらめた時期もあったが、懸命の治療の末、同年九州場所から土俵に戻った。

あれから3年。いまだ、完全回復の途上にある。

「一番は、握力が戻らないんですよ。一時は40何キロくらい両方あったんですけど、今は片方で15~20キロで。思い切りぐーっとつかむのが難しいところなんですよね。あとは、小刻みに手が震えます」

握力をカバーするため、右手に持つ軍配は軽いものに代えた。毎日1時間、硬めのゴムを指に引っかけ、指で引っ張るリハビリを続けている。通院は2カ月に1回。経過を報告し、今後のリハビリについて医師から助言を受ける。もともと76キロあった体重は一時、10キロ以上も減ってしまったが、今は70キロまで戻ったという。

飲み薬も服用している。効き始めると、3、4時間だけは手の震えが止まる。本場所中は自分の出番がくる1時間前に、2種類の錠剤を1錠ずつ飲む。仕事をまっとうしようとする強い気持ちで取組を裁き、復帰後もミスはほとんどない。1度だけ、力士とぶつかって転倒したくらいだ。

行司を務められる喜びに加え、励みとなる後押しもあった。

かねて支援してくれた後援者、エド川薬局が復帰を祝って装束を贈ってくれた。デザインは、勘太夫が自ら担当した。1年半かけて仕立て、今年の夏場所で初披露した。

上半身などに5色のトンボがあしらわれている。前にしか飛ばない「勝ち虫」として相撲界では特に縁起がいいとされ、浴衣地のデザインに組み込む関取衆も多い。勘太夫は左右の羽の大きさに工夫を凝らし、横綱土俵入りの「雲竜型」と「不知火型」を表現したというこだわりの装束だ。

日ごろは東京・荒川沿いを自転車で往復するなど、下半身強化に努めており、100%の体調回復まで少しずつ歩みを進めている。リハビリ期間とコロナ禍が重なったため、常に用心してきた。

今年7月には、米食品医薬品局が、米ジョンソン・エンド・ジョンソン製の新型コロナウイルス感染症のワクチン接種により、ギラン・バレー症候群の発症リスクが高まる可能性があると発表した。ギラン・バレー症候群は大半の人は完全に回復する。米国の例ではあったが、当事者としてはワクチン接種に慎重にならざるを得ない。熟考の末、ワクチン接種に踏み切り、発熱などの副反応もなし。前向きに、九州場所へ向けて体調を整えている。

病気を経験し、仕事へ向き合う気持ちには少し変化も表れた。「やる気がないわけじゃないんです」と前置きし、勘太夫はこう続ける。

「偉くなりたいとかそういう気持ちは一切なく、65歳まで細く長くやれればいいという気持ちですね。(定年まで)まっとうすることが夢ですね。欲は頭の別のどっかにいっちゃっています。寝たきりで首しか動かなかったので、こうやって歩いてご飯を食べられるのが不思議ですよ」

行司の世界は、基本的には年功序列。定年は65歳。行司なら誰でも、最後は立行司になることを夢見る。式守伊之助をへて、木村庄之助を襲名することが、何よりの名誉だ。

12代式守勘太夫-。端整な顔立ちに、張りのある声、そして背筋が伸びる美しい所作。行司としての華がある。

勘太夫は今、出世に目を向けるより、目の前を生きている。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

◆式守勘太夫(しきもり・かんだゆう)本名・菊池浩。1968年(昭43)11月15日、東京生まれ。1984年春場所初土俵。これまで式守国浩、式守錦之助、式守与太夫、式守与之吉を名乗り、19年夏場所から12代式守勘太夫を襲名。現在は幕内格行司。