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au版ニッカン★バトル

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大相撲裏話

不祥事ラッシュの相撲界も…今後は是々非々で堂々と


 相撲担当で1年。知人によく言われる。「オマエ、持っとるな~」。半笑いの問い掛けに、イラッとさせられ「相撲を取材してるんは山ほどおるがな」と思ったりする。しかし、この1年…いや半年は確かに異常な不祥事ラッシュやった。

 横綱の暴行事件が昨年11月の九州場所中に発覚し、1月には関取が無免許運転で捕まり、泥酔行司が後輩にキスして辞職に追い込まれ、3月春場所では、日本相撲協会を告発した親方の弟子が付け人をどついた。

 「相撲って話題豊富やね」と周りに言われ、何べんため息ついたことか。春場所も終わって、さすがに「もう打ち止めやろ」と思ったら、巡業の土俵で男性市長が倒れ、救命措置を行った女性に「土俵から下りてください」という場違いアナウンス。暴力、道交法違反、セクハラ、暴力の次は、土俵の女人禁制に絡む問題かい。貧すれば鈍すというか、地獄モードの負の連鎖というか。ここまで来たら、こっちもげんなりして、笑うしかない。

 そんなこんなの日本相撲協会。テレビのワイドショーのコメンテーター、MCに鬼の首をとったような態度でボロクソ言われ、その扱いたるや、ひどいもんです。曲がりなりにも現場で力士、親方らを取材している立場からすれば「どんだけお偉い方か知りませんが、そこまで言いいますか?」と思ったりもする。

 確かにカラオケのデンモクで人を殴ったらあかん、無免許運転はあかん、人命最優先ちゅう判断ができんのもあかん。当然や。だから、ペナルティーを受け入れ、反省して、同じミスを犯さん努力はせなあかん。それも当たり前です。

 しかし、そもそも相撲界って、力士がまげを結って、浴衣着て、東洋の神秘好きの外国人が「オーッ! スモウレスラー!」と喜ぶ世界ですがな。江戸時代を思わせる外見、慣習の特殊性が魅力なわけで、そこが伝統であり、もっと俗っぽく言えば売りなんでしょ?

 一般社会の物差しを当てはめて、ならしていったら、最終的にただの太った力持ちの集団になってまうんちゃうかな。そんなことも思ったりするわけです。

 ダメなことは続きました。この勢いやとまだ、何かあるかもしれん(ヒーッ)。でも、大事なんは今後ですわ。ええことはええ、悪いことは悪い。決して協会の肩持つわけやないけど、是々非々で、堂々といきましょうや。【加藤裕一】

原功「BOX!」

ヘビー級王座統一戦は来春か 簡単には決まらない事情も


 ヘビー級のWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を持つアンソニー・ジョシュア(28=英)と、WBC王者のデオンタイ・ワイルダー(32=米)の4団体王座統一戦が期待されているが、そんななか両陣営が早くも交渉の駆け引きを始めている。21戦全勝(20KO)のジョシュア、40戦全勝(39KO)のワイルダー。最重量級の英米決戦は来春が濃厚とみられている。

 この3月、統一戦に向けて両者は難関とみられた第一関門を突破した。3日、ワイルダーは元WBA暫定王者のルイス・オルティス(38=キューバ/米)と対戦し、ダウン寸前のピンチを乗り切って10回TKO勝ちを収めた。これで7度目の防衛戦すべてKO(TKO)で片づけたことになる。戴冠試合が判定勝ちだったためデビューからの連続KO勝ちは32で止まったが、世界戦で再び倒しまくっている。身長201センチ、オルティス戦での体重は約97キロと細身の体格だが、パンチにはスピードがあって破壊力もある。以前は耐久力やスタミナに疑問を投げかける関係者やファンもいたが、オルティス戦では両方とも問題ないことを証明した。

 ワイルダーが知名度と評価を上げたのに対し、31日にWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)との統一戦に臨んだジョシュアは、勝ったもののアピールに欠ける内容だった。プレッシャーをかけ続けながら危なげなくポイントを稼いだ末の大差の判定勝ちで、豪快なKOを期待したファンは肩透かしをくらったかたちとなった。それでも抜群の安定感をみせており、評価を落とすことはなかった。デビュー戦からの連続KO勝ちは20で止まったが、「ボクシングだから、こういうこともある。大事なのは私が3団体の統一チャンピオンになったことだ。ワイルダー、私と戦おう」とリング上からライバル王者に対戦を呼びかけた。

 両陣営は4団体王座の統一戦に向け下交渉を開始している。現時点で主導権を握っているのは、人気に加え3本のベルトを持つジョシュアだ。すでに報酬に関してはジョシュアが6、ワイルダーが4という比率で分配されることに両陣営が合意しているという。こうしたなか3団体王者陣営は先制打としてWBC王者に1250万ドル(約13億3700万円)の報酬を提示した。これに対しワイルダー陣営は「私たちの見積もりでは5000万ドル(約53億円)の報酬が見込まれているのに、その金額は解せない。私たちを軽視するのならばワイルダーは別の相手と戦うことになる」として、2年7カ月ぶりに復帰する元3団体王者のタイソン・フューリー(29=英)の名前を出してライバル陣営を牽制している。ジョシュア陣営も「提示した条件がのめないのならばジョシュアは別の相手と防衛戦を行う」と、こちらも譲るつもりはなさそうだ。

 ただし、これは両陣営の軽いジャブの交換とみられており、本格的な交渉はこれからということになる。英米対決だけに開催地や放送するテレビ局の問題もあり、そう簡単にスーパーファイトが決まるとは思えない。8月か9月に両者が1試合ずつを挟み、来年3月か4月に頂上決戦が実現、という可能性が最も高そうだ。

リングにかける男たち

宮原健斗を支えるプロレス愛 ホーガン参考に高みへ

宮原健斗(2018年3月25日撮影)


 プロレスの世界でトップに立つ選手には、独特の雰囲気がある。畏敬の念を抱かせるようなオーラと、観客の期待を一身に集めるような存在。そんな選手が、全日本プロレスにも出てきた。3冠ヘビー級王者宮原健斗(29)だ。1番気に入っているのは、宮原がコーナーのロープに足をかけ、観客席に向かって手を耳にあて、歓声をあおるポーズつくる姿だ。

 それが、ある選手のポーズとダブって見えることがある。宮原が最も尊敬し、目標にもしてきた米国のスーパースター、ハルク・ホーガンだ。体格は一回りほど違うが、かつて世界を熱狂させたホーガンのように、宮原も全日本の観客を熱狂させている。

 「子どものころから、ビデオを借りて何回も見てきた。ただのあこがれだったんですが、今、チャンピオンになってホーガンの動きがとても参考になることが分かった。お客さんのじらし方であるとか、お客さんの求めるものに120%応えようとするパフォーマンスとか」。

 福岡の市立福翔高校を卒業して、健介オフィス入り。08年にデビューして今年が10年目となる。14年1月に入団した全日本では、16年2月に26歳11カ月で、史上最年少の若さで3冠ヘビー級のベルトを巻いた。そこから歴代2位の連続8回防衛を達成し、一気に団体のトップを背負う存在になった。

 「全日本の3冠王者は誰でも背負えるものじゃない。オレは、全日本を神様に託された、選ばれた存在だと思っています」と宮原は言い切る。その思いに負けないくらいの練習。練習と食事、寝るとき以外は、ほとんど昔のプロレスのビデオを見るというプロレス愛が、宮原を支えている。

 「全日本をさらなる高みに持って行きますよ。全日本はこんなもんじゃない」。趣味はないと言っていた宮原が、最近は歌手の安室奈美恵に注目しているという。「安室さんのコンサートで、アンコールへの持って行き方とか、マイクパフォーマンスとか参考になりますね」。やっぱり、プロレスのことしか考えていない。【桝田朗】

大相撲裏話

「相撲協会=悪」? 襟を正すのは報道機関も同じ


 「お相撲さんは口べた」。世間の多くの人が抱いているイメージだろう。現役時代は「不器用だけど頑張っている」などと、ほほえましく見られ、好意的に受け取られることが多いと思う。ところが引退して親方になると、その延長線上にあるとは思われなくなる。無言や説明不足の親方は、世間から大きな批判を浴びることが多い。昨年11月に発覚した、元横綱日馬富士関による暴力問題から続く一連の不祥事も、言葉足らずな親方衆の言動から波紋が広がったように思う。

 「日本相撲協会=悪」。歴代の理事に、こわもてが多いことも手伝い、このイメージも根強いと思う。そのイメージが強く出たのが「女性は土俵から下りてください」と複数回アナウンスされた問題だ。今月4日に京都・舞鶴市で行われた巡業で、多々見良三市長が土俵であいさつ中に倒れ、救命処置を施していた女性に土俵から下りるよう場内放送で促された。もちろん人命にかかわる緊急事態であり、この場内放送は非常識で批判されて当然だ。ただ「日本相撲協会=悪」のイメージが強すぎるからか、世の中も冷静さを欠いていると感じていることがある。

 この問題が起きた時、巡業部長の春日野親方(元関脇栃乃和歌)は当初、トイレに行っていたと説明した。その後、インターネット上に、騒然となる土俵の後方に立つ同親方の画像が出回った。同親方は後日、トイレを含めて、次の巡業先への移動準備など、その後に控える幕内の取組を見るために会場裏におり、後から市長が倒れているところを目撃したと言った。当初の説明を補足した格好。その場で取材した新聞、通信社計5社、民放テレビ局1社は、いずれも「ウソをついていた」とは報じていない。当初のコメントからの「補足」という報道だったが、イメージ先行で「ウソ」と変換されていった。

 不思議なことに、その場に来ておらず、1次情報を持たないテレビ局に限って、こぞって「ウソをついていた」と“断言”するようになっていた。情報番組ではウソをついていたことを前提に、出演者が「バカ」とまで発言している。相撲界に起きた暴力については声高に批判しているが、これも言葉の暴力ではないのかと思った。立場が弱まっている人には何を言ってもいいのだろうか-。

 事情を知らない視聴者は、まさか「ウソをついていた」という報道が「ウソ」とは思わないだろう。一連の不祥事で相撲協会は、随所でほめられたものではない対応を取っている。「口べた」では済まされない言動は目に余る。ただ、だからといって間違った情報を使って、特定の団体や個人をおとしめることが許されるわけもない。そういったことの積み重ねが少なからず影響しているのか、ついには相撲協会執行部や関係者への殺害予告まで出た。襟を正さなくてはならないのは、相撲協会だけではなく、我々、報道機関も同じだと思わずにはいられない。【高田文太】

原功「BOX!」

暫定王座の増加はボクシングの将来を危うくする


 王者が負傷や病気のために戦線離脱した場合に設けられることが多い「暫定王座」は、一時期は減少傾向にあったが、今年に入って再び増加している。善用すれば問題はないシステムだが、ビジネスを優先して利用した場合は大きなマイナス効果を生むリスクもあるだけに懸念する声は多い。

 英語で「INTERIM CHAMPION(インテリム・チャンピオン)」と表記される暫定王者の制度は、負傷した世界王者の留守を預かる存在として1980年代に設けられた。日本では90年代前半に網膜裂孔、網膜剥離に罹患したWBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎(大阪帝拳)や、対戦相手が決定戦を経たうえでその肩書を得てファンの間に認知されるようになった。

 この制度は負傷やトラブルなどに遭遇した王者に時間的な猶予を与えて救済するだけでなく、イベントも保護するという点で有効なシステムだが、一方でビジネスを優先するあまり悪用されるケースも目立った。特にWBAでは一時期、17階級のうち常時10階級以上で暫定王者が存在するという事態に陥ったほどだ。これに加えて「スーパー王者」や「休養王者」なども存在するため、収拾がつかない状況に陥りつつあった。WBAは「暫定王者は世界ランク最上位者という扱い」と弁明したが、ベルトが授与されたうえ防衛戦も認められるとあっては説得力に乏しいといわざるを得ない。

 こうしたなか数年前、日本は「WBAの暫定王座については世界王座と認めない」という方針を打ち出して自主規制に乗り出した。こうした圧力が効いたのかWBAは2年前に「世界王者は1階級にひとり」という当たり前の方針を打ち出し、団体内の統一戦を推し進めた。そのためか現在のWBAの暫定王者は4人まで激減している。

 しかし、この3月にはバンタム級で新たな、そして不可解な暫定王者が誕生、波紋を投げかけている。WBAのバンタム級にはスーパー王者としてライアン・バーネット(25=英)がおり、3月31日に指名挑戦者を相手に初防衛を果たしたばかりだ。また、いわゆるレギュラー王座には6度防衛中のジェイミー・マクドネル(32=英)が君臨している。マクドネルは5月25日に井上尚弥(25=大橋)の挑戦を受けることになっている。こうしたなかで暫定王座を設ける必然性はどこにも見当たらない。

 似たようなことはWBC、IBF、WBOでも起こっている。現在、主要4団体で合計10人以上の暫定王者が存在しており、この先もWBOのフェザー級やWBCのウェルター級とミドル級などで暫定王座決定戦が予定されている。増加傾向に拍車がかかっている感がある。

 ヘビー級やクルーザー級などで王座統一が進む一方で、無意味な暫定王座を頻発するという矛盾。この状況に歯止めをかけないと、ボクシングの将来そのものが危うくなってしまうのではないかと危惧している。

リングにかける男たち

武尊3階級制覇 第3期K1はこの男にかかっている

3階級制覇を達成した武尊(2018年3月21日撮影)


 久しぶりにK-1を取材した。14年に新生K-1となって、3月21日にさいたまスーパーアリーナのメインで初開催。魔裟斗がいた00年代以来の取材だった。ふたを開ければ、約10時間で24試合が実施された長丁場に、1万5000人が詰めかけていた。

 最初の93年K-1ワールドGPも取材した。無差別級トーナメントがメインで、日本勢は空手から格闘家になった佐竹雅昭がトップだった。ピーター・アーツ、アーネスト・ホーストらがいたが優勝は伏兵ブランコ・シカティックも、代々木第1体育館に1万人が集まった。

 K-1とはうまく考えたなと思ったものだ。空手、キックボクシング、カンフー、拳法などの立ち技系格闘技で、キングも意味するKにNO・1の1がつけられたという。今やお笑いでM-1やR-1もある。F1が出発点だろうが、K-1が定着した効果といえるだろう。

 当初の5回から現在は3回制で、キックもあることで早期決着、KOの多さが魅力。今大会も中盤判定が続いたが、結局は半分の12試合がKO。メインの8選手のスーパー・フェザー級トーナメントも7試合中4試合がKOで盛り上がった。

 今は第3期K-1といえる。創成期はサイズとパワーの迫力があった。かかと落としのアンディ・フグが96年優勝などで人気となったが、白血病で帰らぬ人となった。00年代はワールドMAXでミドル級が中心となり、魔裟斗が女性も含めて人気を集めた。さらに元横綱曙、ボブ・サップらも参戦した総合格闘技イベントに発展した。

 魔裟斗の引退、経営陣の交代などから下火になり、新生K-1へと移行した。日本人中心のイベントだけに、創成期からは徐々にサイズダウンしてきた。世界大会という部分でも、物足りなさは否めない。選手たちもいろいろキャラをつくって、ここぞとアピールしていた。

 その中で武尊が初の3階級制覇を達成した。1回戦は判定も、準決勝、決勝はKOで決めた。ストイックな姿勢を貫くイケメン。しゃべりは控えめでリングに徹する。名前でもあるリングネームは、ヤマトタケルノミコトから命名されたという。第3期K-1はこのエースにかかっている。【河合香】

大相撲裏話

女人禁制問題に塩問題…角界の盲点見直す機会に

塩かごとタン壺


 またぞろ出てきた。われわれスポーツ紙やテレビのワイドショーにとって格好のネタが…。暴力やセクハラ、無免許運転といった類と、今回は趣が異なる。ただ今回の件でも、一部に相撲界が誤解されていると思われるものがあった。

 4月4日に京都・舞鶴で行われた大相撲の春巡業。地元・舞鶴市の多々見良三市長(67)が土俵上であいさつしている際に突然、倒れた。その後、救命処置を施している女性に対し、若手の行司が土俵から下りるよう、場内放送でアナウンスした問題が波紋を広げた。それに対する論調は他に譲る。

 指摘したいのは、女人禁制何するものぞ…という世論の声に乗じるかのように、同列で論じられた「塩問題」だ。女性が土俵に上がったことでその後、大量の塩が土俵にまかれたという一部報道があった。それには首をひねるしかない。

 本場所にしても巡業にしても、また各部屋の稽古場にせよ、塩をまくには意味がある。これから始まる戦いの場を清めるためにまく塩。また、力士が稽古や取組でケガをしたり、血が飛び散ったりした際にも一度、塩をまいて呼び出しさんや若い衆がはいて、清める。同じようなことが起きませんように-。神聖な土俵を鎮める、そんな思いが込められている。

 問題が起きた翌5日、日本相撲協会の尾車事業部長(元大関琴風)も「人命より大事なものは、この世に存在しません。女性が土俵に上がってはいけない、という話とは次元が違います」と報道対応で話した。その上で、この「塩報道」については「女性蔑視のようなこと(考え)は日本相撲協会には全くない。本場所でも稽古場でもケガして運ばれたり、血しぶきが飛んだり、首を痛めてひっくり返ったり(そんな)アクシデントの連鎖を防ぐために塩をまくのがボクらの世界。女性が上がったから土俵を清めるために大量の塩をまいた、というのは(報道は)残念。全くない」と肩を落とした。

 「単なるスポーツではない」といわれる相撲界。なかなか分かりにくい世界ではある。だからだろうか。同じメディアでも専門業界の外で、誤解されるような報道も昨年末から多々あった。もちろん角界も、考え直さなければならない問題を抱えている。今は、不本意なものもあろうが、メディアに取り上げられることで盲点だった角界の常識を見直す良い機会、ととらえればいいのではないか。それも懐の深さ。もちろん、今回の「塩問題」は論をまたないと思うが。

原功「BOX!」

ヘビー級4団体王座統一も、壁を越えた王者同士の対決次々と


 昨年の夏あたりから同じ階級の世界王者同士が統一戦で対戦したり、クラスの異なる世界王者同士が拳を交えたりといったケースが目立つ。WBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)の主要4団体が17階級で世界王者を認定している現在、単純計算で68人もの「世界一」が存在するわけだが、そんななか王者同士の対戦は歓迎すべき状況といえる。誰が一番強いのか、どちらが強いのか、そんな声に応える試合は今後も増加していきそうだ。

 昨年12月には米国ニューヨークで五輪連覇の実績を持つ世界王者同士の対戦が実現し、WBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)が、2階級下のWBAスーパーバンタム級王者、ギジェルモ・リゴンドー(37=キューバ/米)に6回終了TKO勝ちを収めた。

 大晦日には東京でライトフライ級の王座統一戦が行われ、WBA王者の田口良一(31=ワタナベ)がIBF王者のミラン・メリンド(30=比)を終盤に引き離して判定勝ち、2団体王者になった。

 今年に入り、王者同士の対決は一気に増加した。ヘビー級の次に重いクルーザー級では大規模の賞金トーナメントが行われていることもあり、1月末にWBC王者対WBO王者、2月初めにWBA王者対IBF王者という2カードが続けて行われた。勝者同士の決勝戦、つまりWBC&WBO王者のオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)対WBA&IBF王者、ムラト・ガシエフ(24=露)の4団体王座統一戦は5月に予定されている。

 3月にはWBCライト級王者のミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)が、1階級上のIBFスーパーライト級王者、セルゲイ・リピネッツ(29=カザフスタン/露)に挑み、ダウンを奪って判定勝ちを収めた。この勝利でガルシアは4階級制覇を達成した。

 そして31日(日本時間4月1日)にはヘビー級でも王者同士の対決が実現した。WBAスーパー王座とIBF王座を持つアンソニー・ジョシュア(28=英)がWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)を12回判定で下して3団体の王座をまとめた。21戦全勝(20KO)ジョシュアは今秋か来春には40戦全勝(39KO)のWBC王者、デオンタイ・ワイルダー(32=米)との頂上決戦を計画している。ヘビー級の4団体王座が統一されれば、1988年にWBOが新設されてから30年で初のこととなる。

 このほか、今週末4月7日(日本時間8日)にはスーパーウエルター級でもWBAスーパー王者のエリスランディ・ララ(34=キューバ/米)対IBF王者、ジャレット・ハード(27=米)の統一戦が組まれており、1カ月後の5月12日にはWBCライト級王者、ホルヘ・リナレス(32=帝拳)がWBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)の挑戦を受けることになっている。

 統括団体が増えたことで世界王座の価値が目減りしてきたなか、関係者は様々な工夫を凝らして対応していく必要に迫られている。その最善策のひとつが団体や階級の壁を越えたスター選手同士の試合の実現であることは間違いない。この流れが続くことを願うばかりだ。

リングにかける男たち

棚橋ら新日本勢、裏レッスルマニアでファン強奪!?

左から棚橋弘至、鈴木みのる、石井智宏、飯伏幸太


 8日(日本時間9日)にWWE最大の祭典レッスルマニア34大会が開催される米ルイジアナ州ニューオーリンズ。レッスルマニアウイークと称される今週、新日本プロレスのレスラーたちが同地で多くの試合を控えている。

 裏レッスルマニアとも言われるプロレス大型イベント「レッスルコン」(5~8日)では、5日にスーパーショーと呼ばれる大会が予定。ここに飯伏幸太、ケニー・オメガのユニット「ゴールデン☆ラヴァーズ」が参戦し、バレッタ、チャッキーT組(ベストフレンズ)とのタッグマッチに臨む。翌6日には英団体RPWによるニューオーリンズ大会が開催され、棚橋弘至、ジュース・ロビンソンがタッグマッチに出場。石井智宏がRPW英国ヘビー級王者ザック・セイバーJr.に挑戦する。また鈴木みのる、飯伏、IWGPジュニア王者ウィル・オスプレイも参戦予定だ。

 レッスルマニア前日7日には米団体ROH主催のニューオーリンズ大会が開かれ、棚橋、ジェイ・リーサル組がROHタッグ王者ブリスコ・ブラザーズに挑戦する。またオメガ-Codyのバレットクラブ頂上決戦、飯伏-ハングマン・ペイジのシングル戦も組まれる。本隊、CHAOS、バレットクラブ、鈴木軍の各ユニットの実力者たちがニューオーリンズで戦う。

 レッスルマニアウイークには世界中からプロレスファンが開催地に集まる。今年のレッスルマニア34大会も約7万人以上の来場が予想される。動画配信が発達しているとはいえ、生観戦に勝るものはない。新日本プロレスのスタイルをアピールするには絶好の機会だ。近年、米国内のプロレスのメディアから新日本プロレスのレスラーたちが、そして試合内容が、WWEのそれよりも高く評価される傾向にある。例えば棚橋の華、鈴木の醸し出す怖さ、石井のゴツゴツぶり、飯伏の異次元な飛び技は米プロレスでは見られない、独特のスタイルだ。

 レッスルマニア34大会では、元新日本プロレスの2人によるWWE王座戦が控えている。王者AJスタイルズ-挑戦者中邑真輔のカードはメイン候補の1つで注目度も高い。一方で、新日本プロレスのレスラーたちが持ち前の「キラー・インスティンクト」を発揮すればファンの心を根こそぎわしづかみすることも可能だ。レッスルマニアウイークが終わったら、どのカードが世界のファンから高く評価されているのだろうか? 楽しみでならない。【藤中栄二】

大相撲裏話

意外かもしれませんが…貴乃花親方は人間味ある親方

厳しい表情で会見する貴乃花親方(撮影・岡本肇)


 「一兵卒として出直して精進します」と言った、貴乃花親方(元横綱)。弟子の十両貴公俊が春場所8日目の3月18日に、支度部屋で付け人へ暴行。元横綱日馬富士関の傷害事件の対応を巡って相撲協会と対立していた貴乃花親方は窮地に立たされる形となった。心をあらためたのか、初日から無断欠勤や早退が続いていたが、暴行が発覚してからは毎日まじめに“出勤”するようになった。そして13日目の23日、内閣府に提出していた告発状を取り下げる意向を明かした時に言った言葉が、冒頭の言葉だ。

 「一兵卒」という言葉は、私たちの普段の生活ではあまりなじみのない言葉のような気がする。疑問に思った報道陣から「あの言葉はどこから」と問われると「一兵卒という言葉が頭にあって。親父からも育てられてますので」と明かした。師匠でもあった父の元大関貴ノ花(故人)の教えだったという。だから何だ、と言われたらそうだが、何となく「へー」と思った。このやりとりは、千秋楽の25日の朝稽古後のことだった。

 実は朝稽古では、報道陣とざっくばらんに話すことが多かった。テレビや新聞で取り上げられるのは、どうしても協会との対立姿勢に関する言動ばかりになってしまう。ただ、その裏ではこんなやりとりもある。

 雨が降った日だった。貴乃花部屋の稽古場は、京都・宇治市の龍神総宮社の敷地内にあるのだが、雨宿りする所がない。とは言いながらも、稽古場の横に長ベンチが置かれた屋根付きのスペースがあるにはあるが、敷地内での写真撮影や力士への取材が規制されていたので、何となく記者の間では近寄りがたい雰囲気があった。傘をさして遠目から見ていると、貴乃花親方が話しかけてきた。「こちらへどうぞ」。優しく記者らに話しかけてきて、そのスペースに誘導してくれた。たまたま1番後ろにいた記者は、右手でそっと背中を押された。「平成の大横綱」のパワーを感じた、と言うのは大げさかもしれないが、「こんな一面があるのか」と思った。

 またある日は、報道陣に対して「朝早くから大変ですね」と気遣う時があった。「どこから来たんですか?」と、逆取材するほどだ。会場のある大阪市内の宿に泊まっている各社の記者は、6時過ぎには稽古場に着くように、大阪から始発の5時の電車に乗って通っていた。なぜなら、7時ごろには朝稽古が終わってしまうからだ。それを逐一真面目に説明すると「そうなんですか」「へー」「大変ですね」と驚きの表情で返してくる。生意気言わせてもらいますが、本当に大変でした。

 千秋楽の朝稽古後、いつもなら報道陣に対応する時間になっても、稽古場の周りをうろうろしていた。弟子が全員宿舎に戻り、稽古場の明かりが消えても1人でずっとうろうろ。1時間弱がたち、ようやく報道陣の前に来ると「落ち葉拾いです。若い衆は若い衆できれいにしていたけど、目が届かないところもあるので」と、稽古場周りをうろうろしていた理由を説明した。

 メディアで取り上げられるのは、無表情だったり、無言だったり、淡々と話したり…。人間味をあまり感じない、という読者もいたのではないだろうか。だが、決してそんなことはないというのが、朝稽古の取材で感じ取ることができた。記者は貴乃花親方を批判するつもりでも、擁護するつもりでもこのコラムを書いた訳ではない。ただ、1人でも多く「へー」と思ってくれる読者がいればいい、と思い執筆しただけです。【佐々木隆史】

原功「BOX!」

ジョシュアVSパーカー ヘビー級決戦生き残るのはどっちだ


 ヘビー級のWBAスーパー王座とIBF王座を保持するアンソニー・ジョシュア(28=英)と、WBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)が3団体の王座統一をかけて3月31日(日本時間4月1日)、英国カーディフで対戦する。右ストレートに一撃KOの破壊力がある20戦全KO勝ちのジョシュア、スピードを身上とする24戦全勝(18KO)のパーカー。3つのベルトを手にするのは?

 現在、主要4団体のヘビー級王座の持ち主は以下のようになっている。

◆WBAスーパー王者:ジョシュア

◆WBAレギュラー王者:マヌエル・チャー(33=レバノン/シリア)

◆WBC王者:デオンタイ・ワイルダー(32=米)

◆IBF王者:ジョシュア

◆WBO王者:パーカー

 上記4選手以外ではルイス・オルティス(38=キューバ/米)が王者と同等の力量を持っているとみられていた。そのため別路線を行くチャーを除くジョシュア、ワイルダー、パーカー、オルティスが「ヘビー級4強」という括りになっていた。そんななか3月3日にワイルダーがオルティスを10回TKOで撃退し、最終決戦に向け準決勝に相当する試合を勝ち抜いた。

 今回はもう一方のブロックでジョシュアとパーカーが互いの王座をかけて拳を交えるわけだ。もちろんワイルダーはリングサイドで観戦することになっている。

 12年ロンドン五輪スーパーヘビー級金メダリストのジョシュアはプロでも2年半で世界王座に駆け上がり、元王者のウラジミール・クリチコ(ウクライナ)を下すなど4度の防衛を果たしている。身長198センチ、リーチ208センチ、体重115キロという恵まれた体から繰り出す正確な左ジャブ、破壊力抜群の右ストレートが主武器の正統派の強打者だ。最近は接近戦で効果的なアッパーを繰り出すなど攻撃の幅を広げている。

 一方のパーカーは身長193センチ、リーチ193センチ、体重は110キロ前後で、体格ではジョシュアに及ばない。その代わり足をつかって距離やタイミングを計るボクシングができ、機動力という点ではライバル王者の上を行く。フルラウンドを戦いきった経験のないジョシュアに対し、パーカーは4度も12ラウンドを戦いきっており、スタミナにも自信を持っている。「ジョシュアは正面にいる相手には強いが、左右に動かれると対応が遅れる」と相手の弱点を指摘している。

 分かりやすくいえばジョシュアのパワーが勝るのか、それともパーカーのスピードが試合を支配するのかという構図だが、実際はそんな単純な戦いにはならないだろう。ジョシュアは相手の速さに対応するため前戦よりも6キロほど体重を絞って試合に臨むとしており、このところ3戦連続で判定勝負になっているパーカーにも右ストレートという決め手があるからだ。

 ともに左ジャブで探りを入れるスタートになりそうだが、徐々にジョシュアが圧力をかけ、パーカーが動きながら迎撃する展開が予想される。13対2というオッズが出ているようにパワーに加え地の利もあるジョシュアが有利だが、総合力には数字ほどの差はない。パーカーが接戦に持ち込んで終盤に抜け出す可能性もある。

リングにかける男たち

ベストパンチは?「神の左」山中慎介が答えたKO劇


 選手が現役生活を引退する時にしか聞けない質問がある。

 「ベスト○○はなんですか?」

 試合や大会が主だが、終わりを迎えていない段階では更新中で総括は適さない。だから引退会見という場では、必ず聞かれることになる。

 26日に都内のホテルで会見を開いたプロボクシングの元WBC世界バンタム級王者山中慎介さん(35)の場合は、「ベストパンチ」だった。世界戦で31回のダウンを生み出してきた通称「神の左」。そのストレートで、日本歴代2位の世界戦連続防衛12回を成し遂げた男の答えは…。

 「迷いなくV2のロハス戦ですね。あの最後の1発。あれがあるからこそ、常にこれくらいのKOしてやろうという思いで調整してこれましたし、あのKOは本当に自分にとっても後援会にもファンにも記憶に残っている試合だと思ってます」

WBC世界バンタム級タイトルマッチ 7回、左ストレートでトマス・ロハス(右)をKOした山中慎介(2012年11月3日撮影)

 2012年11月3日、ゼビオアリーナ仙台、元世界王者トマス・ロハス(メキシコ)を迎えた2度目の防衛戦。左ストレート2発などで7回36秒TKO勝利。ロハスは失神し、そのまま病院に送られた衝撃の試合だった。

 翌4日付の弊紙には「左コークスクリューで失神病院送り」「ホセ・メンドーサだ」「劇画的KO」の文字が躍る。試合を決めた1発は、パンチが当たる瞬間に手首を内側にひねり込む「コークスクリューパンチ」。漫画「あしたのジョー」で矢吹ジョーと対戦した最強王者ホセ・メンドーサも武器にした必殺パンチで、ロハスはその場で失神し、前のめりに頭から崩れ落ちた。

WBC世界バンタム級タイトルマッチ 7回、トマス・ロハス(右)を前のめりに倒し、KO勝ちを飾った山中慎介(2012年11月3日撮影)

 この日、山中が登場する前、会場内には防衛戦の映像などが映し出されたが、集まった報道陣、関係者約150人以上から「おおー」と感嘆の声が上がったのはやはりロハス戦。衝撃シーンはいま見ても、何回見ても鮮烈だ。それは放った本人も同様だった。

 「あれくらいのKOしてやろう」。とてつもなく高いハードルを自分に課すことになったが、次戦から4連続KO勝利、さらに試合内容でも「劇画的」なダウンシーンを量産した。

 会見の最後、その左拳にかける言葉を聞かれると、こう言った。

 「強かったよ、と。まあまあ強かったんじゃないですか(笑)」

 謙遜するところがらしさだが、「まあまあ」なんてとんでもない。間違いなく漫画的とも言えるくらい、とてつもなく強かった。【阿部健吾】

引退会見を行った山中慎介さんは神の左と呼ばれた手をじっと見つめる(撮影・松本俊)

大相撲裏話

貴乃花親方「弟子と一緒に育っていく」貴源治と稽古

祝勝会の途中で報道陣の質問に答える貴乃花親方(撮影・鈴木正人)


 珍しい光景だった。千秋楽の朝、稽古場にいた貴源治が大柄の男と四つに組み合っていた。稽古場に記者は入れないため、外から窓越しに様子をうかがう。目を凝らして見ると、大柄の男は貴乃花親方だった。

 この日、7番相撲で勝ち越しを決めた貴源治にとっても驚きだった。「手取り足取りこうした方がいいと初めて言ってもらった」。効果てきめんだった。

 貴源治の双子の兄・貴公俊が付け人に暴行したことを、貴乃花親方は自分の責任だとした。元横綱日馬富士関の傷害事件の対応を巡り、日本相撲協会と対立。ピリピリとした雰囲気が、弟子に悪い影響を与えたと後悔した。だからこそ「少しでも気分転換になれば」と場所後半からは、これまでよりも近い距離で身ぶり手ぶりでの指導が増えた。

 「何が何でも師匠は師匠。親方が代わったら相撲を続けられない。2度と同じことが起きないように、部屋全体でなくそうとやっていきたい」と貴源治。貴乃花親方は「弟子と一緒に(自分も)育っていくべきだと思う」と決意した。師匠と弟子、一心同体で苦難を乗り越えようとしている。【佐々木隆史】

大相撲裏話

関取最軽量94キロの課題、10敗の炎鵬に重さの壁

炎鵬(2018年3月6日撮影)


 現役関取最軽量94キロで新十両の西14枚目炎鵬(23=宮城野)が180キロの徳勝龍に押し倒された。左への変化は見きられた。突き押しで体を起こされ、潜れなかった。「(考えたことが)空振りでした」。負け越しは決定済みで幕下陥落は確実の中での10敗目。今場所の十両の平均体重は156・3キロ。重さの壁を痛感している。

 炎鵬の兄弟子、平幕の石浦が言う。「友哉(炎鵬の本名)にはいろんなアドバイスがあると思う。『今のままでいい』とか『もっと太れ』とか。僕は太る努力をして欲しい。きっと違う世界が見えるので」。自分も小兵。13年初場所の初土俵時は96キロで、116キロの今も幕内最軽量だ。かつて無理に120キロにし、前に落ちる負けが続いた。やって初めて分かること。そこを知ってほしいという。

 炎鵬は十両を肌で知り、思うことがある。あと何キロ必要か。「10キロ。110キロあればそれに越したことはない。でも(せめて)105キロあれば、もっと相撲になる」。100キロ未満力士の新十両は01年初場所の小緑(99キロ)以来だったが、きっと身も心も大きくなって、十両に戻ってくる。【加藤裕一】

大相撲裏話

関取と付け人は互いに高めあうもの

貴公俊(左)と貴乃花親方(2018年1月18日撮影)


 貴公俊が付け人を殴って問題になった。「付き人」でなく「付け人」。親方が部屋の若い衆(幕下以下の力士)を関取に付けるから「付け人」と言われる。一般的に十両以上は関取1人に対し、2、3人が付く。仕事は多い。支度部屋で着替えを手伝ったり、準備運動で対戦相手の代わりになったり、風呂場で背中を流したり、タクシーを手配したり。定期的に付け人を入れ代える部屋もあれば、10年以上にわたって代わらないこともある。師匠の考えが、そこに反映されるのだ。

 関取未経験の若い力士にとって、付け人を務めることは貴重な経験になる。十両や幕内のピリピリした雰囲気を肌で感じ、関取衆がいかにして取組に向けて集中力を高め、準備していくかを目の当たりにできる。

 関取にとっては、付け人の実力を心身ともに引き上げることも大事な仕事だ。相撲のいろはを教え、関取の立ち居振る舞いも学ばせる。横綱稀勢の里、大関高安らも、かつては若の里(現西岩親方)の付け人を経験して、関取として巣立っていった。

 付け人が関取の「戦力」になることもある。番付は下位でも、観察眼に優れ、作戦を練る上で付け人が頼りになる場合も多い。近年では、安美錦と扇富士(引退)、豊ノ島と豊光(引退)、北太樹(現小野川親方)と太田などはその典型だろう。名参謀として、関取の頭脳にもなっていた。

 実は今場所、役員選挙の感情のもつれがきっかけで、ある幕内上位力士の付け人が交代したと聞いた。これまで、ある部屋から借りていた付け人を、あえて借りなくなったという。生々しい人間らしさこそ大相撲の魅力の1つだが、そこはやはり力士が力を出せる環境作りを望みたい。

 関取が取組で勝った時、支度部屋に残ってモニターを見つめていた付け人が「よっしゃ!」と自分のことのように喜ぶ光景は、いつみても和む。旭天鵬(現友綱親方)が優勝した時、花道の奥で付け人たちが涙を流して迎えたシーンも有名だ。互いにいい関係でありたい。【佐々木一郎】

大相撲裏話

46番目の相撲部屋、西岩親方が語る将来

西岩親方(後列中央)と西岩部屋の力士(西岩親方提供)


 今場所から46番目の相撲部屋として、西岩部屋が始動した。師匠は元関脇若の里の西岩親方(41)。稀勢の里、高安らの兄弟子で、田子ノ浦部屋の部屋付き親方から独立した。弟子は序二段2人と、前相撲で初土俵を踏んだ3人。今場所は大阪市の田子ノ浦部屋の近く、東京では浅草に部屋を構えている。

 部屋付き親方もマネジャーら裏方も不在で、既存の部屋を継承したわけでもない。まったくのゼロからスタート。1年前に入門した19歳の若佐竹が最年長で、5人全員が未成年。西岩親方は「相撲の取り方も、ちゃんこの作り方も知らない。だから朝は一緒にまわしを着けて稽古し、ちゃんこも作る。夜も毎日、一緒にちゃんこを食べる。新弟子生活に戻ってます」と笑う。

 独立すれば後援者との付き合いも必要だが「皆さん部屋に来てもらって、一緒にちゃんこを食べます。弟子は本当の子どものようなもの。それを置いて自分だけ外で食べることなんてできない」。まっすぐな姿勢を理解してもらっている。

 今は稽古で胸を出しても「全員1ミリも押せない」という。だが「将来、自分が羽目板にぶつけられる日が来たら、こんなうれしいことはない。現役時代は屈辱的だったのにね」。部屋について語る時は終始、目が輝いていた。【高田文太】

大相撲裏話

3場所連続ゲットの離れ業、不戦勝に愛された力士

勝ち名乗りを受ける魁聖(撮影・渦原淳)


 東前頭6枚目魁聖(31=友綱)が労せず勝った。この日の対戦相手、貴景勝が休場。朝稽古中に“朗報”を受けた。相手を思えば手放しで喜べないが、心の中で「ばんざ~い! 休みだ~!」と叫んだ。思わぬ10勝目。疲れのたまる終盤戦で、しかも怪物・逸ノ城に初黒星を喫した翌日の不戦勝に「昨日で全部パワー使って筋肉痛だったんで」と笑った。

 不戦勝・不戦敗制度が始まった1928年3月以降、魁聖ほど不戦勝に愛された力士はいない。16年名古屋場所で史上21例目の「1場所2個」(初日=大砂嵐戦、7日目=琴奨菊戦)を経験し、今回は17年九州場所3日目の碧山戦、初場所6日目に安美錦戦に続き、3場所連続ゲットの“離れ業”となった。

 通算獲得数10個は出羽錦の11個に次ぎ、栃乃洋、魁皇に並ぶ史上2位。他の3人は全部幕内で手にし、幕内在位数は出羽錦77場所、栃乃洋81場所、魁皇107場所だが、魁聖は最初の1個を手にした十両の6場所を含めても、まだ46場所。驚異の“ごっちゃん率”なのだ。

 「みんな、オレの時に休んでくれて優しいね」と冗談が口を突く。鶴竜とは残り4日でまだ1差。強運が最高のフィナーレを呼ぶかもしれない。【加藤裕一】

大相撲裏話

白鵬の「すっきりしたか?」に豪風が出した答え

碧山を突き落としで破る豪風(左)(撮影・岡本肇)


 西十両1枚目の大ベテラン豪風(38=尾車)が10日目で勝ち越しを決め、再入幕に大きく前進した。相手は、幕内のV戦線に残る碧山。土俵は中入り後の幕内。当たり勝ち、突き落とした。「勝ち越しまで長期戦になるなと思っていたんですが…」と振り返った。

 決意の春だ。東前頭13枚目の初場所で5勝10敗、十両に落ちた。05年夏場所から77場所、12年半守った幕内から陥落した。「糸が切れた。引退ってこういうものか、と」。それでも悩んだ。約2週間、稽古場に下りず自問自答した。2月10日のNHK福祉大相撲で、白鵬に声を掛けられた。「すっきりしたか?」-。「僕がすっきりした顔をしていたのか…」。出ていた答えを、教えてもらった。

 心機一転の今場所は、すべてを変えた。マウスピース、テーピングバッグ、部屋の照明…。02年秋場所の新十両記念に尾車親方(元大関琴風)から贈られたまわしを引っ張り出し、締めて臨んだ。「十両の土俵も立派。でも、十何年も幕内で相撲を取った人間が、1つ下で…。その土俵に上がれたのは、今は誇りですね」。夏場所初日の5月13日には「38歳10カ月」。再入幕となれば、昨年九州場所で安美錦が記録した「39歳」に次ぐ、2番目の年長記録(昭和以降)になる。【加藤裕一】

原功「BOX!」

いまや一大勢力、旧ソ連勢が世界的に注目される理由


 今月10日、米国テキサス州サンアントニオで行われたWBAスーパーライト級王座決定戦でキリル・レリク(28=ベラルーシ)が勝利を収め、同国出身者としては史上2人目の世界王者になった。このほか、全階級を通じて最も高い総合評価を得ているWBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)、ミドル級王座を19度防衛中のゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)ら、旧ソビエト連邦(ソ連)から独立した国出身の現役世界王者は9人もいる。いまや世界的にみても一大勢力といえる。今後、その数と勢いはさらに伸びそうだ。

 旧社会主義体制下のソ連ではプロスポーツは原則として禁止されていたが、1991年に国が崩壊して独立国家が相次いでから様相は一変した。90年代にはロシア出身のユーリ・アルバチャコフやコンスタンチン・チュー、キルギス出身のオルズベック・ナザロフらが世界王座を獲得してパイオニアとなった。これにウクライナ出身のビタリ&ウラジミールのクリチコ兄弟がヘビー級王座を獲得して続いた。ただし、ユーリとナザロフが日本、チューがオーストラリア、クリチコ兄弟がドイツを活動拠点としていたこともあり、まだ世界的な勢力と呼ぶには早い印象があった。

 そんななかゴロフキンが12年に米国進出を果たし、また「クラッシャー(破壊者)」という分かりやすいニックネームのライトヘビー級王者、セルゲイ・コバレフ(露/米)の試合も米国の大手ケーブル・ネットワークで放送されるようになった。前後してドイツのマーケットが規模縮小したこともあり、旧ソ連勢の米国進出に拍車がかかったといえる。

 ショーマンシップという点で物足りなさが残ったのは事実だが、彼らは実力でそんな声を封じていった。ゴロフキンは連続KO勝ちで世界的な注目を集め、コバレフも3団体の王座を統一してアンチの口を封じたのだ。

 プロモーターもトップアマたちとの契約に動いた。そんななかで期待どおりの活躍をみせているのがロマチェンコだ。いまやボクシング界の顔ともいえる存在になっている。

 旧ソ連出身の世界王者の数を同じ3月期で5年おきに見てみると、1998年=2人、2003年=3人、2008年=6人、2013年=7人、2018年=9人(暫定王者を除く)と確実に増加している。ゴロフキンやロマチェンコ、コバレフ、アルツール・ベテルビエフ(露)のように米国やカナダを活動拠点にする人気者がいる一方、ムラト・ガシエフ(露)のように自国に留まっている王者がいるのも近年の特徴だ。また、ベラルーシ、キルギスに加え、今年2月にはアゼルバイジャン国籍の世界王者が誕生するなど出身国の幅も広がっている。

 こうした傾向は今後も続きそうだ。2年前のリオデジャネイロ五輪でウズベキスタンが金メダル3個、銀メダル2個、銅メダル2個を獲得し、カザフスタンも金1、銀2、銅1という実績を残している。すでにそのなかの数人はプロで活動しており、近い将来、トップ戦線に浮上してくるとみられているからだ。

 世界を席巻する旧ソ連勢。さらなるスターの誕生に期待したい。

リングにかける男たち

鈴木みのる どこまで行っても本物感がある“強さ”

鈴木みのる


 プロレスの話を書こうと思うのだが、その前に別ジャンルの話を少々。

 ボクシングのWBOアジア太平洋フライ級王者・坂本真宏(27=六島)を取材した。彼は“私が落ちた”大阪市立大の現役大学院生で、4月1日に防衛戦を行う。つまりとても勉強ができる。それなのに“殴り合い”に足を踏み入れた。

 「う~ん…非日常ですかね。普通に生活してたら、あり得ない空間でしょ?」

 大相撲春場所の前相撲で土俵を踏んだ新弟子の神谷元気(15=陸奥)を取材した。彼は宮崎・川南町で生まれ育ち、地元の極真空手の道場で中学日本一になった。それなのに、全く別の格闘技を選んだ。

 「高校で別のスポーツをやろうかと思ってたんです。そんな時、昨年の秋、宮崎で陸奥部屋の合宿があって、参加させてもらったら、もう全然何もできなくて…。それで“おもしろいなあ”と思ったから」

 違うジャンルの話だが、2人が求めたものは“自分ができないこと”や、単純な素手の戦闘能力における“強さ”なのでは、と思う。乱暴に言えば、男なら誰もが強者への憧れがある。そこじゃないか、と思う。

 で、プロレスの話。子どもの頃、単純に「誰が1番強いのか?」と思っていたらアントニオ猪木が「IWGP構想」をぶち上げた。スタン・ハンセンがいて、ローラン・ボックなんかもいて、スティーブ・ウイリアムスとかも強烈やった。やがてUWFが生まれて、前田日明がいて、佐山聡がいて、藤原喜明がいて…で、リングス、パンクラス、UWFインターナショナル、藤原組とかに派生して…。今、プロレス界で強烈に“強さ”を発信してるんは、鈴木みのるじゃないか、と思っている。

 船木誠勝と腕を磨き、パンクラスを立ち上げ、キック・ボクシングの世界王者モーリス・スミスと異種格闘技戦をやって、ボロボロになった。そんなこんなのバックボーンを持って、ザ・プロレスラーとしてリングに立つ。だから「本気出したら、マジでヤバいんちゃうの?」と思わせる。

 新日本プロレスで言えば、オカダ・カズチカも、棚橋弘至も、内藤哲也も個性がある。キャラも濃い。魅力的なレスラーだ。でも、誰が1番怖そうか、ヤバいことやりそうか、と考えたら、やっぱり鈴木みのる、なのだ。狂気じみた表情、超傲慢(ごうまん)なたたずまい。イメージ作りの部分もあるやろうが、どこまで行っても本物感がある。試合後の取材も、ちょっとビビるしね。彼がいるから、オカダも棚橋も内藤も、より輝く。今のプロレスがあるのは、鈴木みのるのおかげやないか。何となくやけど、そう思う今日この頃である。【加藤裕一】

大相撲裏話

背中で語る勘太夫 緑のこだわり

式守勘太夫の後ろ姿を採用した春場所のポスター(C)日本相撲協会


 今場所のポスターは、行司の後ろ姿の写真を使ったデザインだ。春を思わせる緑色の装束が話題となっているが、この後ろ姿は三役格行司の式守勘太夫(58=高田川)。立行司の式守伊之助がセクハラ行為で謹慎中で、初場所から結びの一番を合わせている。勘太夫は「背中で伝わるものがあったと、いいように解釈しています」と、少し恥ずかしそうに笑顔を見せた。

 一方で緑色へのこだわりが、今回のポスターにつながったことには喜ぶ。写真は昨年夏場所の装束だといい「緑や青は、力士のように大きな体を締まって見せる効果がある」と分析。緑色の装束を多く所有しているのは「幼少からミドリガメを飼うのが大好きだった影響。本能的に緑を好むようになった」という。

 ミドリガメ好きは物心ついたころから、現在まで続いている。生息していそうな池などへ出向いたり購入したり、地方場所にも連れて行く。今はちょうど不在だが、昨年9月までは継続的に飼っていた。「ミドリガメや緑色を見ると、子どものころの景色を思い出してリラックスできる」。判断力が求められる行司だからこそ、こだわりのをまとい、一瞬にかける。【高田文太】

大相撲裏話

木崎と木崎海、兄弟関取へ切磋琢磨

兄の木崎(左)と弟の木崎海(撮影・加藤裕一)


 三段目付け出し100枚目格の木崎海(22=木瀬)が加美豊を押し出し、4連勝を飾った。強豪・鳥取城北高を経て、名門・日大で昨年の全日本選手権3位。今場所の新弟子43人中1人だけ、前相撲を取らずにデビュー。ただ中身は…。この日は土俵を下りる場所を勘違いし、支度部屋への道も間違えかけた。「ずっと東の支度部屋で、西が初めてだったんで…」と初々しい。

 木崎海には2歳上の兄がいる。東幕下7枚目木崎。アマチュアのルートは同じで、ポーランド開催の10年世界ジュニアで重量級優勝。この日は負けて2勝2敗となった。

 兄弟関取の歴史は江戸時代に始まる。初関取場所が1770年11月の釈迦ケ獄と1774年10月の稲妻が第1号。兄弟横綱になった若貴兄弟は10組目、今場所「初の双子関取」となった貴源治、貴公俊が19組目。現在、20組目に最も近いのがいずれも幕下の若隆景、若元春、若隆元3兄弟だ。

 木崎は「弟に負けられないって思いです」と言いつつ、15日間の過ごし方などの助言を送る。今場所の目標を「7戦全勝」という木崎海は「2年で関取に」。兄弟でいてライバル。切磋琢磨(せっさたくま)するには、間違いなく最高の存在だ。【加藤裕一】

大相撲裏話

3度目の再出場 琴勇輝の相撲道

琴勇輝(17年8月3日撮影)


 平幕の琴勇輝が、相撲愛全開で土俵に戻ってきた。4日目に「右踵腓靱帯(しょうひじんたい)損傷により、1週間の休業・療養が必要である」との診断書を提出して途中休場したが、この日に再出場。再出場は今回が3度目で、幕内で3度の再出場は平成以降では最多となった。

 途中休場するとそのまま休場する力士が多い中、なぜ琴勇輝は再出場するのか。この日は鋭い出足で攻めたが、千代の国に押し出されてたまり席にまで転がり落ちた。支度部屋で、右足首に巻いてあるテーピングを外しながら言った。「どんな形でも相撲を取りたい。勝ち負けは関係なくて、土俵に上がりたい」。相撲を取りたい純粋な気持ちが、琴勇輝の背中を押す。

 今場所はいまだ白星がなく、さらに黒星が増えると来場所は十両陥落の危機だ。しかし、心強いデータがある。再出場した過去2場所(15年春、17年夏)は偶然、今場所と同じ西前頭12枚目で、再出場後も白星を重ねて翌場所は幕内にとどまっている。「知らなかった。いいですね、それ。そのジンクスに応えられるように頑張ります」。最後まで諦めなければ、土俵の神様がきっとほほ笑んでくれる。【佐々木隆史】

大相撲裏話

序の口Vへ、納谷が朝青龍おい豊昇龍撃破

豊昇龍(左)と激しい取組をする納谷(撮影・鈴木正人)


 元横綱大鵬の孫、東序ノ口18枚目納谷(18=大嶽)が元横綱朝青龍のおい、西同19枚目豊昇龍(18=立浪)を寄り倒しで破った。同学年のライバル対決で、高校、前相撲に続き3戦全勝。立ち合いから左を差し、前に出ながら、左四つで両まわしをつかみ、最後は170キロの体を預けた。泰然自若の取り口で、豊昇龍の激しさをのみ込んだ。

 「負けたくない相手です。絶対に勝つという気持ちでした」。それでも点数は「50点」-。「僕のベースは突き押し相撲。突き放していけなかったので」。2戦2勝同士の一番を制して3戦全勝。57年初場所で祖父が逃した序ノ口優勝が見えてきた。

 優勝なら、角界人生に弾みがつく。だが、横綱への道に序ノ口Vが必須かといえば、そうでもない。前相撲成績優秀者がその場所で本割に入る「新序」がなくなり「前相撲→翌場所序ノ口デビュー」の定着した56年初場所以降、同順序を経た横綱は北の湖(74年9月場所昇進)以降18人。その中で序ノ口優勝経験者は5人。要は“その先”が大事なのだ。納谷は今後の抱負を聞かれ「しっかり前に出る相撲を取っていきます」。角界の頂点へ、ブレずに進んでいく。【加藤裕一】

大相撲裏話

デビュー以来休まず 臥牙丸が連続出場900回

臥牙丸(17年5月撮影)


<大相撲春場所>◇4日目◇14日◇エディオンアリーナ大阪

 巨体を揺すり、東十両5枚目臥牙丸(31=木瀬)が剣翔を寄り切った。5場所ぶりの幕内復帰へ。3勝1敗とした白星は、通算連続出場900回の節目で奪った。現役6位の記録だ。

 公称体重198キロは武器だが、足腰の負担もすごい。なのに06年初場所の序ノ口デビュー以来休んでない。「動けるデブ」と笑った後で「休んでいい位置にいたことがないからね」。新十両の09年九州場所から50場所。12年春場所の小結をピークにずっと関取だ。同郷ジョージアの盟友で、先場所初優勝した栃ノ心は13年名古屋場所で右膝靱帯(じんたい)を断裂、4場所連続休場で幕下陥落も経験した。「彼は強いから。僕は1度落ちたら、戻る自信がない」と話した。

 秘訣(ひけつ)はある。「お相撲さんは太った方がいい。僕は元々でかいし、そのタイプ。自分のタイプを守るのが大事」。公称198キロなので非公式? だが、昨年9月から20キロ増量し、現在210キロ。「最高は218キロ。今がちょうどいいね。減量して動けても、圧力なくなったら意味ないからね」-。ちなみに幕内の連続出場最長記録は1231回。最重量時200キロ超だった高見山。超大型は“無事これ名馬”に通じるのかもしれない。【加藤裕一】

大相撲裏話

暴行事件の余波か…春日龍がぶっつけ本番の弓取り式

弓取り式をする春日龍。行司は式守勘太夫(撮影・鈴木正人)


 西三段目48枚目の春日龍(33=中川)が、今場所から結びの一番の後に行われる弓取り式を務めることになった。当初は前任で東序二段25枚目の聡ノ富士(40=伊勢ケ浜)が、今場所まで務める予定だったが、今月に入ってから急きょ前倒しで交代することが決まった。弓取り式は横綱の付け人が務めるのが慣例。関係者によると、聡ノ富士が付け人を務めた元横綱日馬富士関が引退したことも、少なからず影響したという。暴行事件の余波は多方面に及び、白鵬の付け人が後任を務めることになった。

 春日龍はこれまで部屋のある神奈川・川崎市で行われた巡業で2度、弓取り式を務めたことがある。だがそれ以外の経験はなく、ぶっつけ本番に近い状態。初日を終えた後には「頭が真っ白だった」と、極度の緊張状態に陥った。さらに2日目には、結びの一番の直前にトイレに行きたくなった。行くか我慢するか迷ったが、慣れない化粧まわしを着けていることもあって世話人に我慢するよう諭された。まだ日々のリズムをつかめず初々しさを残す。

 3日目を終えた後は「課題はせり上がり。でもいろんな人がアドバイスをくれるので、ありがたいこと」と笑顔も見せた。慣れない中にも向上心にあふれていた。【高田文太】

原功「BOX!」

この春注目 風雲急を告げるバンタム級トップ戦線


 ルイス・ネリ(23=メキシコ)の計量失格とWBC王座剥奪、そして資格停止処分、山中慎介(35=帝拳)の2回TKO負けと引退表明。その5日後には井上尚弥(24=大橋)が3階級制覇を狙って転向-と、このところ53・5キロを体重上限とするバンタム級に関する話題が目立つ。これらは日本関連のニュースだが、世界をみてもこの階級は風雲急を告げる状況になっている。

 主要4団体のうちWBCはネリの王座剥奪にともなって空位になり、IBF王座も3月5日発表のランキングで空位になった。これはWBAスーパー王者でもあるライアン・バーネット(25=英)がIBF王座を返上したためだ。この2団体の王座決定戦は現時点では決まっていない。バーネットは3月31日、元WBA暫定王者のヨンフレス・パレホ(31=ベネズエラ)を相手に自国でWBAスーパー王座の防衛戦を行うことになっている。パレホ(24戦21勝10KO2敗1分)は軽量級の層が厚い中南米で活躍している実力者だが、18戦全勝(9KO)と勢いのあるバーネットに相手国で勝つのは難しいとみられている。

 WBAのレギュラー王座にはジェイミー・マクドネル(31=英)が君臨している。14年5月の戴冠から4年近い在位を誇り、この間に6度の防衛を果たしている安定王者だ。バンタム級では珍しい178センチの長身ボクサーで、WBO王者だった亀田和毅(26=現協栄)にも2度競り勝っている。戦績は33戦29勝(13KO)2敗1分。このマクドネルに5月25日、東京・大田区総合体育館で挑むことになったのが井上だ。プロ6戦目でライトフライ級、8戦目でスーパーフライ級王座を獲得した「モンスター」は、15戦全勝(13KO)と飛ぶ鳥を落とす勢いにある。長身王者の懐に潜り込んで左ボディブロー一閃、鮮やかなKO勝ちで3階級制覇、という映像が目に浮かぶようだ。オッズも7対1で井上有利と出ている。

 こうしたなかWBAは4位のステファン・ヤング(29=米 20戦17勝7KO3分)と、5位のレイマルト・ガバリョ(21=比 18戦全勝16KO)に挑戦者決定戦を命じている。試合は今月23日、米国フロリダ州ハリウッドで行われると予定だ。

 WBO王座にはゾラニ・テテ(30=南ア)が君臨している。この長身サウスポーは昨年11月の初防衛戦で11秒KOという世界戦史上最短KO勝ちを収めた強打者だ。バンタム級では井上の最大のライバル的存在といっていいだろう。4月21日に英国で元2階級制覇王者のオマール・ナルバレス(42=亜)を相手にV2戦に臨む。技巧派サウスポーのナルバエスは14年12月、井上に4度のダウンを奪われて2回KO負けを喫したが、以後は5連勝(2KO)を収めている。この試合で間接的に井上とテテの力関係を計ることができそうだ。テテは29戦26勝(21KO)3敗、勝てば3階級制覇となるナルバエスは52戦48勝(25KO)2敗2分。

 3月23日=ヤング対ガバリョ、3月31日=バーネット対パレホ、4月21日=テテ対ナルバエス、そして5月25日=マクドネル対井上。この春はバンタム級トップ戦線から目が離せない。

大相撲裏話

出身地だけじゃない「ジョージア」懸賞の理由

ジョージアコーヒーの懸賞が懸かった栃ノ心の取組(撮影・岡本肇)


 ジョージア出身の栃ノ心が、「ジョージア」から応援を受けている。毎場所、さまざまな企業が新規で懸賞を出している中、今場所は日本コカ・コーラの缶コーヒー「ジョージア」の懸賞が、栃ノ心指定で1日1本付くことになった。

 出身名と同じだからという単純な理由ではない。実は、栃ノ心が来日してから愛飲していたのが缶コーヒー「ジョージア」だった。15年に日本の呼称が「グルジア」から「ジョージア」に変更。当時「ジョージアから懸賞つかないかなぁ」とアピールしていたのを伝え聞いた同社が、初場所での初優勝を機に懸賞を出すことを決めた。

 同社の広報担当者は「会社でも盛り上がっていました。あらためて優勝おめでとうございますと、これからも応援しています、という意味を込めて」とエールを送る。懸賞旗は栃ノ心が好きな「エメラルドマウンテン ブレンド」のデザインとなっている。

 初日こそ懸賞を受け取ったが、この日は初黒星を喫し、取り逃した。「せっかく付けてもらったから頑張りたいです」と栃ノ心。本場所も懐事情も熱くしたい。【佐々木隆史】

リングにかける男たち

天才武藤敬司最後のムーンサルト、心に焼き付けたい


 「破壊王」故橋本真也さんの長男で大日本プロレスの橋本大地(25)が最近、決め技によく使うのがシャイニングウィザードという技だ。助走をつけての飛びヒザ蹴りで、武藤敬司(55)のオリジナル技だ。

 助走して片ヒザをついたその足を踏み台にジャンプして、相手の頭部にヒザをぶつける。技名の和訳「閃光(せんこう)魔術」も、いかにも天才武藤にふさわしい。それを同じ闘魂三銃士として活躍した故橋本さんの長男が使っている。父親譲りのハイキックや袈裟切りチョップよりも様になっていると思う。

橋本大地(左)と武藤敬司のシャイニングウィザード

 プロレス界の中でも、武藤は多くの後輩に影響を与えている。新日本プロレスの棚橋弘至や内藤哲也、その他多くのレスラーが、武藤の技や動きを研究し、自分の技に取り入れている。そんな武藤の代名詞の1つがムーンサルトプレス。コーナーのロープ最上段にリングを背にして立ち、バック転をして相手の体をプレスする大技だ。

 そのムーンサルトプレスを武藤は、3月14日のW-1後楽園大会を最後に封印する。3月末に両ヒザに人工関節を入れる手術をする。普段の生活で歩くことさえ困難なヒザの状況を改善するためだ。術後はまたプロレスができると医者には言われたが、その際ムーンサルトプレスは禁止された。それだけ、ヒザへの負担が大きいということだ。

武藤敬司のムーンサルトプレス

 武藤は「オレもヒザへの影響を考えて本当はやりたくなかったが、リングに上がればファンの期待を感じるから、ついやってしまうんだ」と話していた。最近では、空港などでは車いすで移動し、試合前の花道を歩く姿も痛々しかった。手術を決断した武藤は「3月14日の試合が最後のムーンサルトプレスになる」と宣言した。

 3月14日、後楽園ホールの第7試合の8人タッグマッチ。武藤のムーンサルトプレスの最後の餌食になるのは誰か? 今後、武藤以上のムーンサルトプレスの使い手が現れるとしたら誰か? そんなことを考えながら、武藤の必殺技を心に焼き付けたい。【プロレス担当=桝田朗】

大相撲裏話

郷土とつながり強い相撲、被災地出身力士の3・11

東日本大震災の黙とうをする八角理事長ら三役力士たち(撮影・岡本肇)


 東日本大震災が起きた3月11日が初日と重なり、初日恒例の八角理事長(元横綱北勝海)の協会あいさつ前に1分間、黙とうの時間が設けられた。八角理事長は代表して「この場をお借りし、被災された方々には心よりお見舞いを申し上げ、追悼の意を表します」とあいさつした。関係各所にも震災が起きた午後2時46分を目安に、同様に黙とうするよう通達されていた。

 それに先立ち、被害の大きかった福島・相馬市出身で序二段の森(25)、同県南相馬市出身で序ノ口の東山(23)という玉ノ井部屋の2人が土俵に立った。東山は敗れたが、今場所で東政馬から改名した森は、白星発進。もろ差しを許しながら左四つに巻き替え、最後は寄り切り「心機一転、改名初戦で勝ててホッとしたし、特別な日なのでうれしい」と笑顔を見せた。

 ともに震災当時は入門しており、家族と1週間以上連絡がつかず、不安な日を過ごした。だからこそ東山は「自分の相撲で地元が少しでも元気になれば」と、負けたもののこの日に懸けていた。取組前に出身地がアナウンスされるなど、相撲は他のスポーツ以上に郷土とのつながりが強い。八角理事長は「(震災を)忘れていないということ」。6年ぶりに3月11日が初日となった協会あいさつに込めた思いを振り返った。【高田文太】