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リングにかける男たち

新日本プロレスらしい戦いが米国で支持された意味

後藤洋央紀にスリング・ブレイドを見舞う棚橋弘至(左)(2016年7月31日撮影)


 新日本プロレスの「バレットクラブ」ファンならば待望の対戦カードだっただろう。海の向こう、米国で元ボス対決が実現した。10月22日(日本時間23日)、WWEのロウブランドによるPPV大会「TLC」(米ミネソタ州)で急きょ組まれた。初代ボスで、この日はデーモンバージョンのフィン・ベイラー(プリンス・デヴィット)は当初、ブレイ・ワイアットとの対戦が決まっていた。ところがワイアットが体調不良のために欠場。代役として白羽の矢が立ったのが、同じWWEのスマックダウンを主戦場とする2代目ボスのAJスタイルズだった。

 WWEではあるものの、2人の対決は新日本マットのムードが漂っていた。ヘッドロックとグラウンドの攻防でスタート。ベイラーが回し蹴り、延髄斬り、ロメロスペシャルを繰り出せば、AJも負けじと逆水平チョップ、フライングフォーアームで応戦した。場外戦もスリリングな内容で、会場から悲鳴も上がった。いつものWWEとは違う雰囲気に包まれると、途中にはベイラーが棚橋弘至の必殺技スリングブレイド、AJも後藤洋央紀の必殺技となる牛殺しで反撃した。

 終盤もエルボーの打ち合い、ベイラーがリバースのブラディサンデーに成功。AJの雪崩式フランケンシュタイナーを耐え抜くと最後はクー・デ・クラ(ダイビングフットスタンプ)で18分15秒、3カウントを奪った。熱気に包まれた会場。リングの中心で両者は向き合い、ウルフパックを決めた手をくっつけた。以前、新日本マットで繰り返されてきたバレットクラブの決めポーズ「TOO SWEET」。観客の盛り上がりが最高潮に達した瞬間だった。

 ベイラーは13年5月、新日本プロレスで自らバレットクラブを結成した。約1年後となる14年4月に退団。そのベイラーと入れ替わるようにAJスタイルズが新日本マットに登場し、バレットクラブの加入を表明した。そのため、2人が日本で一緒にユニットを組むことはなかった。急きょ組まれたカードだったが、同PPV大会のベストマッチと米国内で評価されていた。WWE上層部がどのように見ていたかは分からないが「バレットクラブ魂」が詰まった新日本プロレスらしい両者の戦いが米国で支持された意味は大きいだろう。【藤中栄二】

原功「BOX!」

英雄パッキャオが牽引、更に勢い増すフィリピン旋風


 フィリピンのボクサーというと、ほとんどの人は6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(39)を真っ先に思い浮かべるだろう。その英雄に引っ張られ、このところ同国出身の軽量級選手たちの奮闘が目立つ。24日(日本時間25日)には3階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(35)と、元2階級制覇王者のブライアン・ビロリア(37)が米国カリフォルニア州イングルウッドで揃って世界戦のリングに上がる。ニエテスはIBF世界フライ級王座の初防衛戦、ビロリアはWBA世界フライ級王座決定戦に臨む。さらに3月1日には岩佐亮佑(28=セレス)の持つIBF世界スーパーバンタム級王座に同級13位のエルネスト・サウロン(28)が挑戦することになっている。さらなるフィリピン旋風が巻き起こるか。

 21世紀に入ってから、フィリピンのボクシング界は米国で大成功を収めたパッキャオに牽引されてきたといっていいだろう。パッキャオは無名の状態で渡米し、並み居る強豪をバッタバッタと倒してスーパースターの座に上り詰め、3年前のフロイド・メイウェザー(米)戦では約140億円を稼いだほどだ。

 これに続いたのがノニト・ドネア(35)だ。貧しい環境で育ち少年時代に家族で米国に移住していたドネアは、フライ級からフェザー級までの5階級で世界王座を獲得。「フィリピンの閃光」として一時代を築いた。

 24日の試合に出場するニエテス(45戦40勝22KO1敗4分)はミニマム級とライトフライ級で王座についたあと、昨年4月にフライ級王座も獲得。パッキャオ、ドネアに続いてフィリピン人として3人目の3階級制覇を成し遂げた。今回の初防衛戦では元ライトフライ級、フライ級王者のファン・カルロス・レベコ(34=亜 42戦39勝19KO3敗)の挑戦を受ける。レベコは3度の来日経験があり、井岡一翔(井岡)には2敗しているものの世界戦だけで17戦14勝(8KO)3敗という戦績を残している強豪だ。接戦が予想されるなか、ニエテスは王座を守ることができるか。

 ビロリア(45戦38勝23KO5敗2無効試合)は井岡が返上して空位になったWBA世界フライ級王座をアルテム・ダラキアン(30=アゼルバイジャン/ウクライナ 15戦全勝11KO)と争う。ビロリアはハワイ生まれだが、両親がフィリピン人で自身も生後9カ月から5歳までフィリピンで過ごしたことがある。ライトフライ級とフライ級で世界一になった実績を持ち、勝てば5年ぶりの返り咲きとなる。

 フライ級では今月4日に15連続KO勝ちを収めたばかりの比嘉大吾(22=白井・具志堅)がWBC王座に君臨している。統一戦を熱望している比嘉は24日に行われるライバルたちの試合を観戦することになっており、結果と交渉しだいではニエテス、あるいはビロリアとの対戦が現実味を帯びてきそうだ。

 その4日後にはサウロン(24戦21勝8KO2敗1分)が岩佐に挑む。スピードとテクニックを併せ持つ王者にどこまで迫ることができるか。予想は岩佐有利だが、サウロンの攻撃力は侮れない。

 前後するが、今月3日にはIBF世界スーパーフライ級王者のジェルウィン・アンカハス(26)が米国で4度目の防衛戦を行い、10回TKO勝ちを収めたばかりだ。さらに4月にはパッキャオが米国、ドネアが英国のリングに上がる予定になっている。フィリピン勢の活躍は、しばらく続きそうな気配だ。

リングにかける男たち

比嘉大吾が目指す羽生、小平の「すばらしい」強さ


 19日に都内ホテルで行われたボクシングの世界戦発表会見で、WBC世界フライ級王者比嘉大吾(22=白井・具志堅スポーツ)を鍛え上げる名物トレーナー、野木丈司氏(57)に話を聞いた。

防衛戦が決まりポーズをとるWBC世界フライ級王者の比嘉大吾(2018年2月19日撮影)

 「羽生さん、小平さん、ああいうすばらしさに近づきたいですよね」。

 4月15日に横浜アリーナで愛弟子が挑む同級2位クリストファー・ロサレス(23=ニカラグア)との防衛戦に向けた調整について質問を向けると、いの一番にそんな感嘆が返ってきた。

 前日18日に平昌五輪スピードスケート女子500メートルで小平奈緒が金メダルを獲得したばかり。17日にはフィギュアスケート男子で羽生結弦が66年ぶりの2連覇を成し遂げた。

 同氏は元プロボクサーながら千葉・佐倉高時代は陸上部に在籍。シドニー金メダリストの女子マラソン高橋尚子らを育てた小出義雄監督の薫陶を受けた。五輪を観戦しているのは五輪競技(ボクシングはアマチュアが参加)出身の出自もあるだろうが、すごく視野が広く、比嘉の強さの源を感じた。

野木丈司トレーナー(左)と二人三脚でフィジカルトレに臨む比嘉大吾

 というのは、その「すばらしさ」についてこう続けたから。「全体的な強さがある。だからああいう状態でも勝てるんですよね」。それは右足首の負傷で試合は4カ月ぶりのぶっつけだった羽生を指した言葉で、「それがあるから自信もあるし、動きも美しくなると思うんです」と25連勝とした小平のスケーティング技術にも対象を向けた。そして、「大吾も最近の発言をみるとね…」。

 比嘉は2月4日に37年ぶりとなる故郷沖縄での世界戦で、1回KOで日本記録に並ぶ15連続KO勝ちで防衛に成功した。その時を振り返り、「『調子悪くても自分の方が少し上』と言っていたでしょう。いいですねえ、あれは」とニッコリした。「勝負の舞台では100%の力を出せないものですよね。ただ絶対的な力量差があれば、それでも相手を封じ込めることはできる。本人も(普段から)猛練習している意味を理解しているのかな」。猛烈な練習の意図を自然と体得していそうな教え子の発言だった。

15連続KO勝ちで防衛に成功した比嘉大吾(左)は具志堅用高会長と笑顔を見せる(2018年2月4日撮影)

 次戦は日本新記録の16連続KO記録がかかる。試合間隔2カ月にも、比嘉は「何の問題もない。1回から12回のどこかで必ず倒す」と意に介さない。「すばらしい」強さでの快勝を期待したい。【阿部健吾】

大相撲裏話

鶴竜、背水の陣だった初場所 師匠が語るV逸の原因

鶴竜(2018年1月26日撮影)


 12年夏場所の旭天鵬以来となる、栃ノ心の平幕優勝で幕を閉じた初場所。自慢の怪力を武器に初日から千秋楽まで好調を維持して、14勝1敗と大勝。安定感のある相撲に記者は連日、「もしかしたら」の思いが強まっていった。しかし1敗を喫した7日目。「もしかしたら」の対象は、栃ノ心に土を付けた横綱鶴竜(32=井筒)に変わった。

 4場所連続休場中の鶴竜は、初日から10日目まで白星を並べて単独首位に立っていた。横綱白鵬、稀勢の里が途中休場して、“1人横綱”で臨んでいた分、力も入っていた。そして何より、師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)が次に出場する場所で進退を懸けることを明言していたからこそ、さらにやる気に満ちあふれていた。しかし、11日目に初黒星を喫すると、ずるずると4連敗…。支度部屋でもネガティブな発言が目立った。

 敗因はどこにあったのか。2連敗を喫した翌日の13日目に、いつもは多くを語らない井筒親方が、こう分析した。

 「序盤はスピードもあったし反応も早かった。疲れのピークじゃないですかね。引いてね。下がった時はダメ。攻めてる時はいいんだけど。ちょっと疲れたり、負けたりすると悪いクセが出る。10連勝したことで余計なことを『もしかしたら』と考えたかもしれない。とりあえず2桁勝てて、背水の陣の場所でどこかで安心したかもしれない。安心感と優勝したい気持ちが矛盾したと思う。勝ち急いだと思う」。

 そしてぽつりと

「私自身も安心しましたね」。

 弟子の背水の陣の場所に、師匠も大きなプレッシャーを背負っていた。

 油断して負けた、気持ちが切れて負けたと言えばそうかもしれないが、実は左足首が限界を感じていた。昨年の1月ごろから疲労がたまると軟骨同士がぶつかって痛みが出ていたといい、毎場所後半は衝撃緩和のためにヒアルロン酸を打って土俵に上がっていたという。初場所も中盤からやはり痛みが出ていて、朝稽古を休み整体で治療を行うなどして、昨年春場所以来に15日間を完走した。

 そして場所後には、左足首の遊離軟骨を除去するために内視鏡手術を受けた。春場所(3月11日初日、エディオンアリーナ大阪)は出場できるのか、と思ったが「(春場所に)間に合わせるために早めにやった」と前向きだった。次こそは、賜杯を抱けるだろうか。

原功「BOX!」

決勝進出は誰?WBSSスーパーミドル級準決勝に要注目


 前回、賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のクルーザー級の準決勝について触れたが、今週末17日(日本時間18日)と来週末24日(同25日)には、英国とドイツでスーパーミドル級の準決勝を迎える。初戦を勝ち上がった4人ともヨーロッパの選手で、そのうち3人が英国の人気者ということもあって大きな注目を集めている。

 17日に英国マンチェスターでは、WBAスーパーミドル級スーパー王者ジョージ・グローブス(29)対元WBA世界ミドル級暫定王者クリス・ユーバンク・ジュニア(28)という英国人対決が行われる。

 グローブスは14年、当時のWBA、IBF王者カール・フロッチ(英)に再挑戦した際にはロンドンのウェンブリー・スタジアムに7万人の大観衆を集めたこともある人気選手で、昨年5月に4度目の挑戦で念願の世界王座を獲得。10月のWBSS初戦では24戦全勝だった相手を4回にボディブローでKO、準決勝に駒を進めるとともに初防衛を果たしている。戦績は30戦27勝(20KO)3敗。

 対するユーバンク・ジュニアは元世界2階級制覇王者の息子としても知られる。話題先行型ではなく、技量も高く評価されている実力派で、15年には史上6例目の親子世界王者になっている。この3年間は8戦全勝(7KO)と倒しまくっている。WBSS準々決勝では初回に右アッパーでダウンを奪い、3回には左フックで戦慄的なKO勝ちを収めて評価を上げた。戦績は27戦26勝(20KO)1敗。勝てば2階級制覇となる。

 グローブスは「彼は自分が勝つ運命にあると信じているようだが、それは間違いだ。彼の時代なんか来やしないよ」とライバルを挑発しているが、オッズは3対2でユーバンク・ジュニア有利と出ている。

 その1週間後の24日、ドイツのニュルンベルクではWBC1位、WBO2位のカルム・スミス(27=英)と、元WBA、WBOライトヘビー級王者ユルゲン・ブレーマー(39=独)が対戦する。こちらはスミスの評価が高く、6対1のオッズで有利とみられている。

 スミスは英国では有名な「スミス4兄弟」の末弟で、3男(リアム・スミス)に続く兄弟世界王者の期待を背負っている。191センチの長身から繰り出す鋭い右ストレートが主武器で、5年のキャリアで23戦全勝(17KO)をマークしている。無冠ながらスーパーミドル級最強の声もあるほどだ。

 自国開催のアドバンテージを持つブレーマーは、ライトヘビー級から階級を落としてトーナメントに参戦。初戦では22戦全勝のホープを下して準決勝に上がってきた。18年以上のキャリアで52戦49勝(35KO)3敗の戦績を残している連打型のサウスポーだ。

 この4人のうち誰と誰が決勝に進出するのか。ユーバンク・ジュニアとスミスの下馬評が高いが、強靭なハートを持つグローブス、経験豊富なブレーマーが予想を覆す可能性もある。17日と24日、ヨーロッパで行われる2試合に要注目だ。

リングにかける男たち

新日本プロレスに熱狂するファン、53歳もときめき


 プロレスはすごい。厳密に言えば、新日本プロレスやけど。プロレスの本担当でないので、えらそうなことは言えんのですが、2月10日にエディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館のこと)の大会(THE NEW BEGINNING in OSAKA)を取材して、あらためて痛感した。

SANADAの顔面にキックを決めるオカダ(撮影・和賀正仁)

 プロレス少年でした。高1で、テレビで田園コロシアム大会のハンセンVSアンドレを見て「なんじゃこりゃ?」とシビれてハマッた。金曜午後8時は「ワールドプロレスリング」。部活から帰宅してチャンネル権(死語)を独占し、翌日は学校でプロレス談議を楽しんだ。高2の6月には大阪城ホールに藤波VS前田戦を見に行ったりもした。

 レンタルレコード店(死語)で、プロレスの入場曲を集めたLP(死語)を借り、カセットテープ(死語)に録音した。長州の「パワーホール」とハンセンの「サンライズ」が好きやった。藤波の「ドラゴン・スープレックス」や山崎一夫の「UWFのテーマ」もええし、前田日明の「キャプチュード」はシングルレコード(死語)を買った。

 恥ずかしながら、就活で「週刊ファイト」(廃刊)編集部に電話したら「新卒は採用しません」と断られた。30年以上前ですが。

10度目の防衛を果たし金色のテープが舞う中、両手を広げるオカダ(撮影・和賀正仁)

 10日の大阪大会は観衆5481人の札止め満員でした。この集客力はすごい。リングまでの花道には特設入場ゲートが設置され、特大ビジョンであおりの映像を流す。エンターテインメントとしては、昔から段違いに進化しているとはいえ、もう“金曜午後8時”はないのに…。お客さんの半分ぐらいは内藤哲也率いる「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」や、鈴木みのるの「鈴木軍」のシャツを着てるし、内藤の「スターダスト」や鈴木の「風になれ」(両方ともダウンロードして、スマホで聞いてます)が流れるとギャンギャン騒いで盛り上がる。

 たとえば大相撲は満員御礼続きやけど、他の多くのスポーツは集客に苦労してる。プロゴルフなんか、客足はさびしいもんです。同じバトル系で言うなら、プロボクシングもそう。ダブル、トリプルで世界戦を組んでも満員は約束されん。

 ゴルフのティーグラウンドで入場曲流したら、大変やし、プロボクサーがマイクでやり合ったら、これも大問題。それでも、新日本プロレスの会場にはきっと、学ぶべきものがある。もう53歳のおっさんでも、まだときめくものがあるんですからね。【加藤裕一】

大相撲裏話

阿炎そこまで言ってええんかい、美徳と対極の語録

阿炎(2018年1月28日撮影)


 沈黙が尊ばれるのが角界です。北勝富士、千代大龍、松鳳山とか、よくしゃべる力士はおるけど、基本的に言葉数は少なく、声かて小さい。担当になりたての頃「でっかい体やねんし、もっと大きい声でしゃべれんか?」と、自分が“男のおしゃべり”を地で行くだけに、かなりイライラしたもんです。そんな美徳の対極にいるんが、阿炎(あび、23=錣山)です。

 初場所が新入幕やったちゅうのに、おもろい。言いたい放題ぶりは「…おいおい、そこまで言ってええんか?」と心配になるほど。その“語録”を少し並べてみましょか。

 「絶対勝ってたな~」「負けるたびに三賞の夢が遠のいていく」(初日、大栄翔に敗れて黒星発進)

 「3連勝したら、次はだいたい負ける。(十両の)先場所もそうだったし…」(5日目に3連勝)

 「よく“変わって負けたら悔いが残る”なんて言いますが、僕はないです。変わったのは勘を信じたから。悔いは残りません」「親方に怒られるかな…。でも、いい。怒られても、勝ちゃあ何でもいい」(中日、立ち合いで左に飛んで、巨漢の大奄美を押し出す)

 「体重は間食で増やしました。カップ麺いいですね。中でもシーフードが一番好き。毎日食べてます」(9日目)

 「20代前半の全員に負けたくない」(10日目、1学年上の豊山に負けて)

 …とまあ、しゃべること、しゃべること。

 何でそこまでしゃべるのか? 勝てば敢闘賞だった千秋楽を白星で終え、10勝5敗。見事に三賞を手にして、阿炎自身がビッグマウスのわけを明かした。

 「番付発表の時に“三賞独占”なんて言ったし、その後も三賞、三賞と言ってましたけど、正直勝ち越しで十分でした。盛ってました。盛り盛り。怖いぐらいの結果です。大きいことを言わないと燃えない。すぐ落ち込むタイプで、無理にでも気持ちを上げていかないとダメ。だから、でかいことを言う」

 自分で言って、自分をその気にさせる。

 「言霊ッスね」

 その言い方がまたチャラくて、どこまでも「ほんまかいな?」と思ってしまうけど、きっとそうなんでしょう。

 男は黙って勝負ってな武骨なタイプもええ。ただ、阿炎のような存在が、相撲をよりおもしろくするんやないか、なんて思う今日この頃です。【加藤裕一】

原功「BOX!」

WBSSで盛り上がるクルーザー級とスーパーミドル級


 3日(日本時間4日)、ロシアのソチ近郊アドレルで行われたクルーザー級世界王座統一戦で、IBF王者のムラト・ガシエフ(24=露)がWBA王者ジュニエル・ドルティコス(31=キューバ/米)に12回TKO勝ちを収め、2団体統一王者になった。この試合は重量級の賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の準決勝でもあったため、勝ったガシエフは5月にWBC、WBO王者のオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)と決勝で対戦することになった。ヘビー級の次に重いクルーザー級は比較的スポットが当たることの少ないクラスだが、このトーナメントが実施されたことで盛り上がりをみせている。

 WBSSはヨーロッパと米国のプロモーターが共同で企画、プロデュースして昨年9月にスタートした。実施階級はクルーザー級とスーパーミドル級の2クラスに限定されている。各階級に8人のトップ選手がエントリーし、準々決勝、準決勝、決勝を行って覇権を争うという勝ち抜き戦だ。2階級の賞金総額が5000ドル(約55億円)と高額であるためクルーザー級は主要4団体の王者たちが揃って参加。初戦となる準々決勝では4王者全員が防衛を果たすかたちで勝ち上がり、1月27日にはWBOのウシクがWBC王者のマイリス・ブリエディス(33=ラトビア)に判定勝ちを収めて決勝に駒を進めている。ガシエフはもう一方のブロックを勝ち上がったわけだ。

 12年ロンドン五輪ヘビー級金メダリストでもあるサウスポーのウシクは14戦全勝(11KO)の技巧派強打者で、すでに4度の防衛を果たしている。対するガシエフも27戦26勝(19KO)1無効試合と無敗をキープしている。この両者による決勝は5月11日、サウジアラビアのジェッダで行われる。どちらが優勝賞金1000万ドル(約11億円)と「モハメド・アリ・トロフィー」を手にするのか。

 一方、スーパーミドル級の方も佳境に入ってきた。準々決勝を勝ち上がったWBAスーパー王者のジョージ・グローブス(29=英)と、元WBA世界ミドル級暫定王者のクリス・ユーバンク・ジュニア(28=英)が今月17日に英国マンチェスターで対戦する。その1週間後の24日にはWBC1位、WBO2位のカルム・スミス(27=英)が、元WBA&WBO世界ライトヘビー級王者のユルゲン・ブレーマー(39=独)とドイツのニュルンベルクで拳を交える。戦績はグローブス=30戦27勝(20KO)3敗 ユーバンク・ジュニア=27戦26勝(20KO)1敗 スミス=23戦全勝(17KO) ブレーマー=52戦49勝(35KO)3敗。

 世界挑戦を先延ばしにして参戦したスミスとユーバンク・ジュニアの下馬評が高いが、はたして両者は順当に決勝に駒を進めることができるのか。こちらも要注目だ。

リングにかける男たち

前田日明による若者更生の場、そこにある日本の縮図

THE OUTSIDER10周年記念イベントであいさつする前田日明氏


 元プロレスラーの前田日明氏(59)が08年1月に不良の更生を目的に始めたのが、アマチュア総合格闘技大会の「THE OUTSIDER」だ。その10周年記念イベントが1月24日に東京・渋谷のLOFT9で行われた。

 会場で最初に上映された映画「タイトロープ」は、その大会に出場する若者たちの日常と、インタビュー、大会の様子などを追ったドキュメンタリー映画だった。「THE OUTOSIDER」に出場するのは、ほとんどが元暴走族や、犯罪を犯し更生施設や刑務所から戻った若者たち。彼らが総合格闘技に出合い、新たに目標を見つけそれに打ち込む様が、克明に描かれていた。

 前田氏は、海外で格闘技が若者の更生のために利用されていることを知り、日本でもやってみようと始めたという。「最初は、日本で真っ先に始めるとか、多少の山っ気もあって始めた。でも、試合に出てくる選手たちを見ていると、昔の自分を思い出す。そうすると、おせっかいを焼きたくなってね。何かできないかと」と、前田氏自身も、大会を続けながら参加する若者たちの成長に、継続することの大切さを教えられたという。

 「立ち上げた当時は、暴力団のしのぎに利用されているような地下格闘技と同じような目で見られた」というように、暴力団とのトラブルもあった。タイトロープの試写会が13年11月5日に六本木で行われたときは、暴力団から前田氏の殺害予告があり、会場は警察官の警備で、客がゼロということもあった。

 厳しい状況を乗り越えて「THE OUTSIDER」は10周年を迎えた。若者たちを取り巻く環境も、時代によって変わってきた。前田氏は「最初は、OUTSIDERに出る若者も何を不満にチャラチャラぐれているのかと思ったが、自分たちの世代とは違う悲しさ、例えばネグレクト。親がいても面倒を見てもらえないとか、世間や親子関係の希薄さの中で傷つき、行き詰まったそんな子がたくさんいる」と、現状を説明する。

 親から暴力を受けたり、育児放棄で愛情を得られなかった若者が、非行に走り他人を傷つける。一度は道を踏み外した若者が、OUTSIDERと出会い変わる。前田氏は「不良の更生を目標に始めたけど、今は参加者の中で不良は半分以下。いじめられっ子がいたり家庭内暴力をやっている子だったり。今の日本の縮図だね。OUTSIDERでは、それぞれ自分のペースで再生してくれれば」と参加者に温かい目を向ける。前田氏の取り組みを見て、スポーツの果たす役割の大切さをあらためて考えさせられた。【バトル担当=桝田朗】

大相撲裏話

相撲技術の進歩を止めないか?張り手封印で思うこと

白鵬(2018年1月17日撮影)


 横綱白鵬(32=宮城野)の立ち合いの張り手、かち上げが話題となって久しいが、実は世間の多くの声と相撲界の認識は違うように感じる。昨年12月に横綱審議委員会(横審)の北村委員長が「美しくない」「見たくない」といった投書が多く届いているとして、白鵬の立ち合いの張り手、かち上げに注文を付けた。「横綱のものとは到底、言えないだろう」などと厳しかった。これを合図に、白鵬にとって立ち合いの張り手、かち上げは禁じ手のようになり、初場所では1度も出さなかったが、3日目から連敗して5日目以降は休場した。

 休場の直接的な要因は、両足親指のけがだった。それでも多くの現役力士や親方衆の目には、張り手、かち上げを出せずにリズムを崩しているように映ったようで、同情の声も多く聞こえた。中でも熱弁を振るっていたのは幕内の千代大龍だった。「まるで張り手、かち上げが、ものすごく悪いことのように言われているけど、土俵で戦う相手としては、あれだけ隙だらけの立ち合いをしてくれたら本当はラッキー。それでも勝ってしまう、その次の攻めへの速さ、引き出しの多さが横綱(白鵬)の強さ」と語った。同様に「張り手、かち上げ=チャンス」と、対戦相手ならとらえるという声は次々と聞こえてきた。

 いわゆる「横綱相撲」の理想は、史上最長69連勝の記録が今も破られていない、双葉山の「後の先」という声はよく耳にする。立ち合いで相手を真正面から受け止めつつ、先手を奪っているといった取り口こそ「横綱相撲」だとする好角家は多い。

 私が約6年間相撲担当を離れる以前の10、11年ごろ、白鵬も双葉山とその代名詞の「後の先」を目標に掲げていた。当時、1人横綱だった白鵬の強さは頭ひとつ抜けており、双葉山に迫る63連勝も記録。当時も時折、立ち合いで圧力のある相手には、張り手(張り差し)を見せる場面もあった。だが数少ない黒星は、立ち合いで張り手を出し、がら空きとなった脇を差されるケースがほとんど。白鵬自身も周囲も悪癖ととらえ、改善を誓っていたように記憶している。

 それが6年ぶりに担当に戻り、すっかり立ち合いの定番になっていた。少なからず当時よりも、立ち合いでパワーとパワーの真っ向勝負に応じては、分が悪いと感じる相手が増えたのかもしれない。相手の圧力を抑え、脇ががら空きとなるリスク覚悟の張り手、かち上げに活路を見いだし、頼らざるを得なくなったのかもしれない。

 プロレスのエルボースマッシュに近いかち上げは、下手をすれば対戦した力士生命を脅かす危険性があり、封印や改善の必要があると思う。一方で張り手は、そういった危険性は少ない上、繰り出す方には相応のリスクがあり、対戦相手にとってもチャンスとなる。純粋に観戦する側としては、両者の駆け引きや、張り手に動じずぶちかます相手力士の姿など、心を震わされる場面に遭遇する可能性が高まる。張り手まで封印すると、そんな観戦の楽しみが1つ減るような気がしてならない。

 大相撲に限らず、プロ野球などを含めてプロスポーツには、これまで数多くの「名勝負」と呼ばれる人気の対戦があった。張り手を繰り出すかどうか、駆け引きを含めて楽しむことができれば、新たな名勝負になるかもしれない。千代大龍は、こうも付け加えていた。「結局、あの張り手で勢いを止められている自分たちが弱い。もっと強くならないと」。あらゆるスポーツは、技術の進歩の連続。1つの技が生まれたら、その技を打ち破るための技を編み出すことで、競技の発展につながった。白鵬の張り手を打ち破る、革新的な技術、勇気と実力のある力士は生まれるのか。そんな未来を見てみたい気もする。【高田文太】

原功「BOX!」

アンカハスは「パッキャオ2世」の域に辿り着けるか


 WBO世界スーパーフライ級王者、井上尚弥(24=大橋)の対抗王者でもあるIBF同級王者、ジェルウィン・アンカハス(26=比)が2月3日、9位のイスラエル・ゴンサレス(メキシコ)を相手に米国テキサス州コーパスクリスティで4度目の防衛戦に臨む。井上との統一戦プランが浮上したこともあったアンカハスは、元6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(39=比)がプロモートするサウスポーの強打者で、昨秋にはそのパッキャオも契約している米国の大手プロモート会社、トップランク社と提携。今回の試合を機に本場で「パッキャオ2世」として売り出すことになった。

 アンカハスは09年に17歳でプロデビューしてから9年、30戦28勝(19KO)1敗1分の好戦績を残している。この間、16年9月にはIBF世界スーパーフライ級王座を獲得。昨年は自国を離れマカオ(中国特別行政区)、ブリスベン(オーストラリア)、ベルファスト(英国北アイルランド)で防衛戦を行い、7回終了TKO、7回TKO、6回TKOで3試合とも圧勝した。日本のファンには、7月のV2戦で帝里木下(千里馬神戸)を圧倒したすえ、ボディブローをヒットして7回TKOで退けた試合が記憶に新しいはずだ。このときはパッキャオの防衛戦の前座だった。

 アンカハスはパッキャオと同じサウスポーで、ボディと顔面の打ち分けを得意としている。本家ほどの荒々しさはないが、試合はなかなかエキサイティングだ。KO率は63パーセントと際立って高いわけではないが、直近の15戦(全勝)では14KOと倒しまくっている。

 こうした活躍と好戦的な戦闘スタイルが評価され、パッキャオが契約しているトップランク社と提携することになった。ボブ・アラム・プロモーターは「すでにアンカハスは十分な力を持っているが、まだまだ伸びる可能性がある。米国で実績を積み上げれば軽量級のパッキャオになるだろう」と大きな期待を寄せている。こうした一方、一時は2月下旬に統一戦を行うプランが浮上していた井上にとっては、歯噛みしたくなる思いが残ったはずだ。

 アンカハスの米国進出初戦の相手、ゴンサレスは22戦21勝(8KO)1敗の戦績を残しているが、強豪との対戦は少ない。王者にとっては圧勝がノルマの試合といえそうだ。

 名実ともに「パッキャオ2世」の域に辿り着けるのかどうか。アンカハスの今後に注目していきたい。

リングにかける男たち

大場政夫に挑んだチャチャイ氏のリング史を飾る死闘

WBA世界フライ級タイトルマッチ 大場政夫対チャチャイ・チオノイ コーナーにもたれかかってダウンしたチャチャイ・チオノイ(後方)の手前で苦しい表情を見せる大場政夫(1973年1月2日撮影)


 ここ数年は年末集中開催で、新年は静かなボクシング界となっている。そんなところへ海外から訃報が伝えられた。元世界フライ級王者チャチャイ・チオノイ氏が、21日にタイ・バンコクの病院で亡くなった。75歳だった。ここ数年パーキンソン病で闘病生活を送っていた。

 キックボクシングのムエタイから、14歳で国際式でプロデビュー。19歳の61年から日本のリングに何度も上がった。定評のある記録サイトではプロ戦績は61勝(36KO)18敗3分。通算82戦というのもすごいが、20試合が日本人相手だった。

 関光徳、海老原博幸らに敗れたが「稲妻小僧」と呼ばれた。68年にビラカンポ(フィリピン)からWBC王座を獲得した。初防衛には失敗も、70年には王座返り咲き。この時も初防衛に失敗した。

 3年後に日本で歴史に残る一戦を演じた。73年1月、3度目の王座を狙ってWBA王者大場政夫に挑んだ。初回に右のロングフックでダウンを奪った。大場はふらつき、足がガクガクしていた。実は右足首を捻挫していた。

 大場はピンチを脱出すると、インターバルで足を冷やしながらの戦い。足を引きずりながらも強気の攻めに、中盤からはチャチャイが劣勢に。12回にダウンを奪い返され、1度は立ち上がるも連打にまたダウン。再度立ち上がったがコーナーに吹っ飛ばされ、12回KOで逆転負けとなった。

 当時のプロスポーツと言えば野球、あとは相撲、ゴルフにボクシング程度だった。世界戦は時々テレビで見た。中でもこの大場とチャチャイの試合は、高校生だったが強く記憶に残る。違うスポーツをやっていたが、あれから世界戦は必ず見るようになった。ボクシング記者になるきっかけだったのかもしれない。

 日本のリング史を飾る死闘の1つ。大場の切れよくスピードある連打は今はあまり見られない。記者となって詳細を知り、伝説的試合と分かった。それはV5を果たした大場が、3週間後に交通事故で亡くなったことがある。永遠のチャンプと呼ばれる。

 チャチャイは次の試合で空位の王座を獲得し、2度目の王座返り咲きを果たした。3度目の防衛戦は花形進と対戦も体重オーバーで王座剥奪となった。試合も6回TKO負け。逆に花形は日本最多の5度目の挑戦で世界王座奪取となった。チャチャイはこの2戦後に敗れて引退した。昭和の日本ボクシングを盛り上げた1人だった。【河合香】

大相撲裏話

相撲協会、春場所で「赤ちゃん抱っこ撮影チケ」検討


 日本相撲協会による今年初の試みをいくつか紹介する。両国国技館には、2つの新しいスペースができた。1つは授乳室だ。これまでは相撲診療所に設けられたが、より観客席に近い場所にできた。入り口には女性スタッフが在駐している。もう1つは、無料写真撮影場所。相撲にちなんだフレーム付きの写真を撮ることができ、それを2次元コードで読み取れば携帯電話に保存できる。協会関係者は「家族や外国人、シニアの方など幅広い層の人が来てくれます。ほほ笑ましいです」と、ほおを緩める。

 3月の春場所でも、新しい試みをいくつか検討中だという。その1つが、赤ちゃん抱っこ撮影付きチケットの販売。東京やその他地方場所では、おなじみの大人気チケット。ただし春場所は、スペースが確保できずに断念してきた。しかし「大阪場所担当の親方衆とも話して、多くの子どもや家族の思い出に残って欲しいという話が出た」と、会場近くの建物を借りるなどして実施するという。

 昨年末から角界は、相次ぐ不祥事に揺れている。それでも本場所に足を運んでくれる観客のために、相撲協会なりの恩返しだ。【佐々木隆史】

大相撲裏話

朝赤龍「思い出残る引退相撲に」 長男と土俵入り

元関脇朝赤龍の錦島親方(2017年5月15日撮影)


 新たな船出の日-。そう思えば胸が躍る。ただ、同時にそれは長年の“相棒”との別れでもある。そうなると思いは複雑だ。「約18年か。寂しくなるんじゃないかな…。切った後、どんな髪形になるのかな?」。2月4日に引退相撲(両国国技館)を控える元関脇朝赤龍の錦島親方(36)は、断髪式ではさみを入れられるマゲに手を伸ばしながら静かに話した。

 引退相撲では十両、幕内取組のほか綱締め実演や初っ切り、髪結い、相撲甚句など通常の余興が行われるほか、取っておきの「ご披露」を用意している。同親方の最後の土俵入りだ。部屋の十両格行司・木村朝之助先導のもと、4歳になる長男と2人で務める。「来てくださる皆さんの思い出に残る引退相撲にしたい」と同親方。物心両面で支援してくれた関係者、ファン、何かと気にかけていた病気に苦しむ子供も観戦に来てくれる。さらに新たな思いも。「初めて相撲を見に来た人が『また相撲を見に行こう』『今度は本場所を見たい』と思ってくれたらうれしい」。真面目で実直な人柄そのままに、最後の土俵も立派に務める。【渡辺佳彦】

大相撲裏話

限定150部 時を忘れる相撲の歴史


 「大相撲錦絵 日本相撲協会 相撲博物館コレクション」が昨年末、徳間書店から発売された。相撲博物館所蔵の錦絵(カラーの浮世絵木版画)3000点超を劣化防止のためデジタル化、同館学芸員が選んだ249点をまとめた。

 雷電為右衛門ら江戸時代の伝説的力士、興行、巡業の模様などを東洲斎写楽、喜多川歌麿ら名だたる浮世絵師が描いた逸品が並ぶ。見ていて時間を忘れそうだ。化粧箱入りのオールカラー画集(324ページ、A3判、48ページのB5判解説書と別刷り錦絵2点付き)。シリアルナンバー入り、150部限定の豪華版。ただ当然、高い。税別18万5000円。売れるのか?

 それが、売れた。発売1カ月弱。「数部」(同担当者)というから、1部ではない。「文化的意義優先で、150部売り切って、収支はとんとんです。とはいえ…ドキドキしてました」と同担当者は喜んだ。

 好角家が買ったのか? 歴女なスー女か? 芝田山親方(元横綱大乃国)は発売イベントで愛用のステッキを手に、こう話していた。「これは2万5000円だけど、私は5万円でも買う。価値観の問題。相撲好きには、値打ちがあると思います」-。好きな人は、きっと一生楽しめる。唯一の取扱店、銀座 蔦屋書店で見本を手にとって見ることができる。【加藤裕一】

原功「BOX!」

リナレス近未来の大舞台へ、勝利&内容問われるV3戦


 WBA世界ライト級王者、ホルヘ・リナレス(32=帝拳)の3度目の防衛戦が27日(日本時間28日)、同級15位のメルシト・ヘスタ(30=比/米)を相手に米国カリフォルニア州イングルウッドで行われる。すでに3階級制覇を成し遂げているリナレスにとっては通過点と位置づけられる試合だが、ビッグマッチのプランも浮上しているだけに取りこぼしは許されない。スピードとテクニックでサウスポーの挑戦者を圧倒することができるか。

 リナレスは14年12月にWBC世界ライト級王座を獲得し、フェザー級、スーパーフェザー級に続き3階級制覇を達成。2年前、そのWBC王座のV3戦を前に拳を負傷したため“休養王者”に格下げされたが、復帰戦ではWBA王座を獲得して鬱憤(うっぷん)をはらした。昨年3月には前王者を返り討ちにし、9月には12年ロンドン五輪金メダリストを退けた。いずれも12回判定勝ちだったが、2試合ともダウンを奪って貫録を示している。02年12月に日本でプロデビューを果たしてから15年、故国ベネズエラのほかメキシコ、アルゼンチン、米国、英国、パナマなど世界各地のリングに上がり46戦43勝(27KO)3敗のレコードを残している。

 そのリナレスには現WBC世界ライト級王者のミゲール・マイキー・ガルシア(30=米 37戦全勝30KO)、WBO世界スーパーフェザー級王者、ワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ/米 11戦10勝8KO1敗)らとの対戦プランが持ち上がっている。ともに世界的な知名度が高いスター選手で、彼らに勝てばリナレス自身がもう一段上のステージに上がることができる。

 そういった意味でも今回の防衛戦は、勝利はもちろんのこと内容も問われる試合といえる。挑戦者のヘスタはキャリア14年、34戦31勝(17KO)1敗2分の戦績を残しているサウスポーで、世界挑戦は2度目となる。12年12月のIBF王座挑戦は12回判定負けに終わったが、以後は6戦5勝(3KO)1分と復調している。リナレスとはスパーリングをしたことがあり「彼の戦い方は頭に入っている。難しい試合になることは覚悟しているが、何が起こるか分からないのがボクシング。勝って世界王者になる」と意気込んでいる。

 体格に加え経験値、さらにスピードやテクニックなど個々の戦力でもリナレスが上回っており防衛が濃厚とみられているが、打たれ脆い面があるだけに油断はできない。存在感を示したうえで近未来の大舞台に繋げることができるか。リナレスのV3戦に要注目だ。

大相撲裏話

化粧まわしは兄弟子の借り物 豊昇龍「感謝」

新序出世披露で土俵に上がる豊昇龍(撮影・鈴木正人)


 元横綱朝青龍のおい、豊昇龍(18=立浪)も新序出世披露に臨んだ。三段目取組の合間、春場所から番付にしこ名が載る新弟子として、土俵で紹介された。「豊昇龍~!」と声も掛かった。「気持ちよかったです」と笑みを浮かべた。

 破格の扱い? だった。化粧まわしは兄弟子の新十両天空海(あくあ)に借りたが、実は新品。持ち主がこの日の十両土俵入りで初披露する前に、使わせてもらった。「びっくり。天空海関に本当に感謝です。うれしかった」と話した。

 不思議な縁もあった。色は元朝青龍が使ったこともある金。「叔父さんと一緒です。太陽の色。僕も関取になって化粧まわしを着ける時は金色にしたい。きっと天空海関を思い出します」。デザインはコイの滝登り。故事では昇って竜になる。しこ名と同じ“昇龍”だ。報道陣にそう説明されると「すごい!」と目をむいて驚いた。この日は兄バンザラクチさん、21歳の誕生日でもあった。

 関取へ、横綱へ。あらためて強くなった決意を、叔父にメールで伝えるつもりだ。「本当のお相撲さんになりました、と書きます」。金の化粧まわし姿の写真を添付して。【加藤裕一】

リングにかける男たち

内藤マスク作った神谷氏…1・4アナザーストーリー

仮面を付けて入場する内藤哲也(2018年1月4日撮影)


 達成感。歓喜。感動。その、どれでもない感情が胸に芽生えたという。新日本プロレスの1・4東京ドーム大会のメインを初めて「飾った」気持ちは、独特な緊張感だった。

 他仕事の納品のため、1月4日夜は新幹線で移動中。プロレスマスク職人の神谷淳氏(46)は座席に座るとスマートフォンで動画配信サービス・新日本プロレスワールドのアプリボタンを押した。IWGPヘビー級王座に挑戦した内藤哲也の入場をチェック。自ら制作したオーバーマスクを装着した内藤の映像を見つめながら「ドキドキしてしまいましたね」と照れ笑いを浮かべた。

 新日本プロレスの制御不能ユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」に所属するBUSHIのマスクを担当する1人だ。昨年10月、そのBUSHIを通じて内藤のドーム大会用オーバーマスクの制作依頼が舞い込んだ。立体的なマスク制作は1度もなかった。まったく初めての挑戦になるが「イッテンヨンのメインで使うマスクをつくることなんて、なかなかあることではない」。悩むことなく、快諾した。

 テーマは、ガイコツと18年のえと「いぬ年」。使用する素材、着色、軽量化など、神谷氏の頭には「どう表現するか」のイメージが膨らんだ。すぐに試作品も完成したが、3度もボツが出た。内藤とのイメージをシンクロさせることが急務。一から考え直し、数点のデザイン画で再提案した。ガイコツと犬の境目を強調するため縫い痕を入れ、耳にイヤリングを装着した最終形ができあがった。マスク完成は12月中旬。完成まで約2カ月をかけた力作となった。「間違いなく、技術レベルはアップしました。やってよかったです」。

 神谷氏は言う。「ファンの方の反応がどうなるのかというプレッシャーはありました。それ以上に今まで内藤選手のオーバーマスクをご担当されてきた前任の方が築き上げたイメージを崩してはいけないという重圧が一番ありました。何もないところから内藤選手とマスクをつくったご苦労は計り知れないです。職人のバトンタッチというのはリスペクトがないといけないと思っています。その功績を傷つけてはいけない」。

 新幹線の車内で、神谷氏が抱いた独特な緊張感は、前任者に向けたリスペクトの大きさだった。プロレス職人の矜恃-。内藤の「犬とガイコツ」オーバーマスクにまつわる1・4メインのアナザーストーリーは、クリエイター魂があふれている。【藤中栄二】

 ◆神谷淳(かみや・じゅん)1971年(昭46)4月6日、静岡・浜松市生まれ。小学4年の時、初代タイガーマスクのデビュー戦で強い衝撃を受け、手縫いやミシンを駆使し、趣味でマスク作りを開始。初代タイガーのマスクを担当する豊島裕司氏に師事する。中央学院大を卒業後、浜松市の企業に就職し企画部に所属。30歳で一時上京し、外資系人材会社に入社して法人・個人の営業を担当。40歳で退社後、地元に戻って起業塾に通い、ビジネス大賞を受賞。現在は同市でPUKUPUKU工房を経営し、後進を指導。静岡大教育学部でプロレスマスクに関する講師も務める。家族は夫人と1男1女。

プロレスマスク職人の神谷淳氏
新日本プロレスの1・4東京ドーム大会で内藤哲也が装着した犬とガイコツをイメージした神谷淳氏製作のマスク

大相撲裏話

服部桜“双葉山超え”70連敗も「逃げるのが負け」

松岡に敗れ、70連敗を喫した服部桜(撮影・狩俣裕三)


 元横綱朝青龍のおいが出た、番付外の前相撲が終わった後、初場所6日目の最初の取組で“記録”が生まれた。西序ノ口24枚目服部桜(19=式秀)が負けた。両上手を引き粘ったが、寄り切られた。70連敗。「数字は頭にはありました。勝ちたくて、左上手を取りにいったけど…」。双葉山の不滅の69連勝を、序ノ口の連敗で超えてしまった。

 15年九州場所の序ノ口デビューから16年夏場所6日目に初白星を挙げたが、通算成績1勝92敗1休。引き技で負けたのは16年秋場所3日目の引き落とし1度だけ。ほぼ全部、体力負けだ。身長180センチだが、入門時の体重は65キロ。75キロだった昨年秋場所後、師匠の式秀親方(元前頭北桜)に「10キロ太れ!」と言われ、3度の食事、コンビニおにぎりの間食で現在83キロ。だが、まだまだだ。

 神奈川・茅ケ崎市立梅田中卒業後、7歳から憧れた角界へ。同親方は、親に黙ってやってきた少年を1度追い返し、母親連れの2度目の志願で折れた。「情熱を感じました。今は『2年前の自分より強くなってるぞ』と言い聞かせてね。逃げるのが一番の負けですから」。くしくも部屋には、先代式秀親方(元小結大潮)の師匠双葉山の写真が飾られてある。“最強の人”に見守られ、服部桜は2勝目を目指す。【加藤裕一】

大相撲裏話

大関→十両、照ノ富士へ経験者・元大関雅山が助言

照ノ富士(17年9月14日撮影)


 3日目から休場した元大関で東前頭10枚目の照ノ富士(26=伊勢ケ浜)に、かつての自身を重ねてエールを送る人がいる。元大関雅山の二子山親方(40)だ。照ノ富士は先場所までの3場所は左膝痛などが影響して休場し、今場所は「2型糖尿病で約1週間程度の療養を要す」との診断書を提出。再出場しなければ来場所の十両転落は確実な状況だ。二子山親方は「照ノ富士は若いのだから、もう1度はい上がってほしい。力はある。燃え尽きたら終わる」と気力の重要性を訴え、再浮上に期待した。

 22歳で大関となった二子山親方は在位8場所、24歳の時に陥落した。照ノ富士も23歳で昇進した大関を14場所務めたが、25歳の昨年11月九州場所で関脇、今場所から平幕へと番付を落とした。昭和以降、元大関で十両まで番付を落としたのは大受、雅山、把瑠都の3人しかいない。把瑠都は引退前は休場続きで、番付では十両に名を連ねたが、実際には出場していない。十両の土俵に立った最後の元大関は雅山となっている。

 二子山親方は大関陥落から約9年後、幕内に返り咲いた。その後も小結まで番付を戻すなど、大関陥落後に関脇以下を史上最長の68場所務めた。35歳で引退した13年春場所は十両として取り切り3勝12敗。千秋楽に3勝目を挙げるなど、最後まで目の前の一番に全力だった。「まだ燃え尽きていなかった。絶対にチャンスがくると信じていた。最終的には(幕内に)上がれなかったけど腐らず稽古を続けることが大事」。当時を振り返り、復活を期待していた。【高田文太】

原功「BOX!」

初防衛戦スペンスはウエルター級サバイバルウォーズの核になれるか


 実力のあるスター選手が集結し、激しいサバイバルウォーズが展開されそうなウエルター級で核になる可能性が高いと目されているIBF王者、エロール・スペンス(28=米)が20日(日本時間21日)、米国ニューヨークで元2階級制覇王者のレイモント・ピーターソン(33=米)を相手に初防衛戦を行う。12年ロンドン五輪出場後にプロデビューし、22戦全勝(19KO)と破竹の快進撃を続けているサウスポーは、経験値の高いベテランをも撃破してしまいそうだ。

 ロンドン五輪ではウエルター級ベスト8に甘んじたスペンスだが、12年11月にプロに転向後は圧倒的な強さを見せつけている。身長177センチ、リーチ183センチとバランスのとれた体からスピードに乗ったパワフルなコンビネーションを繰り出して相手を粉砕し、見る者を魅了してしまう。ファイターが相手でも打ち負けることはなく、テクニシャンが相手でもスキルで引けをとることはない。どの距離でも戦える万能型といっていい。現在の王座は昨年5月、相手の地元でもある英国で11回KO勝ちを収めて奪い取ったもので、スタミナも度胸もある。現状に満足することなく努力を続ければスーパースターの座も夢ではない逸材だ。

 初防衛戦の相手、ピーターソンはスーパーライト級時代にWBAとIBFの2冠王者になり、ウエルター級転向後の昨年2月にはWBA王座を獲得した実績を持つ実力者で、39戦35勝(17KO)3敗1分の戦績を誇る。スペンスほどのパワーはないが、こちらも距離をとっても接近しても戦えるタイプだ。世界戦を8度経験しており、その点では王者を上回っている。

 16対1というオッズが示すように圧倒的にスペンス有利とみられているが、多くのファンや関係者の関心は、実はその先にあるといってもいいだろう。このクラスにはWBAスーパー王座とWBC王座を持つキース・サーマン(29=米)という高度安定王者がおり、下の階級からはオールマイティなテレンス・クロフォード(30=米)が上がってきて、スペンスを含めて3強時代を形成しつつある。さらにクロフォードの挑戦を受ける予定のWBO王者、ジェフ・ホーン(29=豪)、そのホーンの前の王者で6階級制覇の実績を持つマニー・パッキャオ(39=比)、元IBF王者のショーン・ポーター(30=米)、元2階級制覇王者のダニー・ガルシア(29=米)と個性的なタレントが揃っているのだ。先ごろプライベートで来日したサーマンは「すごく面白い階級だと思う。私とスペンス、クロフォードが勝ち進んで、統一戦をやればすごいことになるだろう」とライバルの台頭を歓迎している様子だった。

 年内にも実現が期待されるサーマンとの統一戦に向け、スペンスはどんな内容、どんな結果で存在感を示すのか。

大相撲裏話

引退の北太樹「子どもの記憶に」父として残る悔い

17年4月、東京・町田市巡業 長男英慶君を抱いて土俵入りをする北太樹


 20年の現役生活に幕を閉じ、親方として新しい道を歩む。今場所前に現役引退した元前頭北太樹の小野川親方(35=山響)が、両国国技館で引退会見を行った。「振り返ると短く感じる」とやり切った表情を浮かべたが、心残りはあった。

 昨年4月、春巡業が地元の東京・町田市で行われた。当時十両の北太樹は、1歳半だった長男英慶(えいけい)君を抱いて土俵入り。自分が締めた化粧まわしと同じデザインのミニ化粧まわしを締めさせた。途中で泣かれながらも「記憶に残ってくれたかな」と笑みを浮かべた。

 「子どもの記憶の残る3、4歳まではやりたい」と希望していた。度重なるケガで「体力の限界を感じた」と引退を決意。力士としての相撲人生に悔いはない。それでも「もう1年ぐらいは相撲を取って(息子に)土俵での記憶が残るぐらいは。残念です」と父親としての悔いは残った。

 次は親方として土俵に上がる力士を育てる。「自分が教わった大切なことを伝えたい」。第2の人生で息子の記憶に残る力士を育てる。【佐々木隆史】

リングにかける男たち

中3の夢叶えた内藤哲也、プロレスラーとして次の夢

内藤(上)はオカダにデスティーノを見舞う(2018年1月4日)


 中学生の時の夢を果たした男の今後はー。

 新日本プロレスの毎年恒例「イッテンヨン」、1月4日の東京ドーム大会は昨年を大きく上回る3万4995人の観客を集め、数々の激闘が繰り広げられた。その中で人一倍思い入れを持ってリングに上がったのは、IWGPヘビー級王座に挑戦した内藤哲也(35)だっただろう。

 中学3年の時、初めて自分でチケットを買って友人たちと見に行ったのが新日本プロレスの興行。「97年の6月5日、日本武道館の2階の後ろから2列目ですね」と明確に思い出せるほど、いまでも心に残る。そこで花道を入場する武藤敬司に衝撃を受けた。サッカー少年は、1人の存在に大観衆の視線が注ぐその舞台に感銘を受けた。そしてその最高峰の会場こそが東京ドームだった。99年に初生観戦。「どの会場よりも花道が長いですよね。あそこを歩いたら気持ちいいんだろうなと思って」。自然に将来の目標は定まった。

 <1>新日本プロレスに入ること

 <2>武藤敬司と同じように20代でIWGPヘビー級のベルトを巻くこと

 <3>東京ドーム大会のメインに出ること

 それから20年あまり。<1>はかない、<2>は30代に少し足を踏み入れたがベルトを巻くことができた。残っていたのが<3>だった。それがかなったのが今年の1月4日。なにしろその花道への思い入れは格別だった。若手時代も1月4日の直前の会場での練習でも、あえて花道をさけてリングに向かった。それだけ大切な場所だった。

 いよいよその時はきた。王者オカダ・カズチカに対峙(たいじ)するリングへ向けて舞台装置から登場すると、ゆっくりと歩を進めた。白い仮面の中からのぞく目で、人生の最良の時間を確かめるように、一歩ずつ一歩ずつ進んだ。中3の時の自分があこがれた存在になった瞬間だった。

 試合には激闘の末に敗れたが、試合後の表情には少なからず達成感も感じさせた。そして新たな野望に胸躍らせるように、ニヤリとしてみせた。

 「非常に悔しいですよ。オカダにも、そしてお客様にもかつて笑われましたよ。『東京ドームのメインが夢か』って。でもさ、これは俺が中学3年生の時に立てた目標だから。これ、俺は大事にしてきたから。誰に笑われようと、大事にしてきた夢だから。まあ、今日、俺は何か1つ、ゴールを迎えたっすかね。まあ、でもそれは、中学3年生の時に立てた目標のゴールであり、今日、ゴールを迎えた時点でまた新しい夢が見えてきましたよ。レスラー内藤哲也としての夢が、出てきましたよ」

 その不敵さは今後の楽しみに昇華した。さっそく翌5日の後楽園ホールの試合後には、世界的なスーパースターで前日のIWGPUSヘビー級選手権で敗れたクリス・ジェリコの襲撃を受け、ここでも不敵に、大胆な態度を崩さずに「トランキーロ」と泰然としてみせた。自らを「おれはベルトを越えているから」と話す無冠の年男は、いったいどんな「次」を見せてくれるのか。【阿部健吾】

大相撲裏話

「小岩小相撲道場」で区と田子ノ浦が合体し理想の姿

小岩小相撲道場での初稽古ですり足をする稀勢の里(2018年1月7日撮影)


 大相撲初場所(両国国技館)の初日を1週間後に控えた今月7日。地域に根ざす相撲部屋の、理想となるありようを垣間見た一日になった。

 再起をかける横綱稀勢の里(31)の調整を取材しようと足を運んだ東京・小岩の田子ノ浦部屋。だが、稽古は徒歩で10分ほどの小岩小学校で行っていると聞き方向転換。校庭に即席の土俵でも作り、小学生に教える交流会でもやっているのか…などと頭を巡らしながら学校に到着。ほどなくして敷地の隅にある建物の外に、黒まわしが置かれているのを発見。中では力士たちの稽古が行われ稀勢の里も、大関高安も汗を流していた。

 そばにいた江戸川区役所の腕章を巻いた関係者に話を聞くと、昨年12月24日に完成し、お披露目式が行われた「小岩小相撲道場」だった。この日は、そのこけら落としとして、田子ノ浦部屋の力士を招いた初稽古。連休を利用し出稽古に来ていた静岡・飛龍高校の相撲部員もプロの力士にぶつかり、活気にみちあふれていた。

 話は昨年1月28日にさかのぼる。直前の初場所で初優勝した稀勢の里の「初優勝 横綱昇進報告会」が、この小岩小で開催され約4500人の地元ファンが祝福した。その際、控室となった校長室で江戸川区の多田正見区長、稀勢の里らが集った席で、田子ノ浦親方から切り出されたという。「部屋の近くに土俵があるといいですね。倉庫でもいいんです。そうすれば子供に相撲を教えることで地元に貢献できますから。喜んでお役に立ちたい」。その言葉で区が動く。小学校と同じ敷地内にあった小岩第一幼稚園の園庭が、ちょうど空いていた。早速、夏には着工。更衣室、トイレ、シャワールームも完備した広さ約180平方メートルの道場が完成した。

 土の稽古場だけでも150平米近くはあろうかという広さはもちろん、天井も高く自然光も入るため、開放感もたっぷり。もちろん、相撲部屋の稽古場にある神棚、大鏡、しこ名がしるされた木札などはないが、プロの相撲部屋と見まがうばかりの作りだった。

 地域密着を図りたい部屋の要望と、それに呼応した自治体の全面協力で実現した相撲道場。「わんぱく相撲をやる子が、江戸川区だけで700人もいるそうです。これはもったいない。(小岩出身の第44代横綱)栃錦関の銅像も(JR小岩駅に)あるし、両国にも近いですから」と同親方。将来的には「稽古を見せるなどして相撲クラブが作られるようになれば」と地域貢献、相撲の普及を見据える。今後の活用法は未定ながら、多田区長も「ここを中心にわんぱく相撲など、いろいろな形で相撲を教えていただければ。相撲を通して人間教育の場になればいいですね」と熱望する。人間教育-。揺れる角界だが、国技に期待するそんな声があることを忘れてはならない。【渡辺佳彦】

原功「BOX!」

シールズ初防衛戦を全米中継へ、女子ボクシング人気復活なるか


 五輪連覇後にプロ転向し、昨年8月に4戦目でWBCとIBFの女子世界スーパーミドル級王座を獲得したクラレッサ・シールズ(22=米)が12日(日本時間13日)、米国ニューヨーク州ベローナで両王座の初防衛戦に臨む。挑戦者は20戦17勝(2KO)3分の戦績を誇る元WBC女子ミドル級王者のトリ・ネルソン(41=米)。無敗対決を前にシールズは「12日から始まる今年の旅が楽しみ」と、試合が待ちきれない様子だ。

 シールズは父親の影響で11歳のときにボクシングを始め、ジュニアの大会に出場して経験を積んだ。12年の世界選手権では2回戦でポイント負けを喫したが、これがアマチュア、プロを通じて唯一の敗北だ。その年のロンドン五輪に17歳で出場すると、3試合を勝ち抜いて75キロ以下の女子ミドル級で金メダルを獲得した。

 14年の世界選手権、16年の世界選手権を制すると、16年リオデジャネイロ五輪でもミドル級で優勝、ロンドン大会に続く連覇を果たした。アマチュア戦績は78戦77勝(18KO)1敗(75戦74勝1敗説もある)。女王の名に相応しい実績といえる。

 16年11月にプロ転向を果たすと2戦目にNABF北米王座、3戦目にWBCシルバー王座を獲得。そして昨年8月には4戦目(全勝2KO)で2団体の世界王座についた。実力はもちろんのことイベントのメインに据えられ、テレビがシールズの試合を生中継するなど米国での人気と注目度は高い。

 挑戦者のネルソンは、シールズがジュニアの大会に出ていたころ(10年)に34歳でプロデビューし、7年半も無敗を保っている。この間、WBC女子ミドル級王座やマイナー団体のミドル級、ウエルター級、スーパーウエルター級、スーパーミドル級王座を獲得しており、侮れない相手といえそうだ。

 米国ではレイラ・アリ(米)やクリスティ・マーティン(米)らの活躍で女子ボクシングは90年代に一時的に米国で人気を集めたが、彼女らの引退を機に下火になっていた。現在、シールズの台頭によって再び注目されるようになりつつある。その点はシールズも十分に理解しており「私の最終目標は女子ボクシングの人気を高めること。そのためにも頑張る」と話している。今回も大手ケーブル・ネットワーク、ショータイムで試合が全米に放送される予定だ。22歳の女王の奮闘に注目したい。

リングにかける男たち

井岡一翔さん、再び「井岡一翔」に戻ると思えて…

引退を発表する井岡一翔(撮影・横山健太)


 井岡一翔…いや、もう井岡一翔さんになるんか。昨年12月31日午後11時過ぎから引退会見を開いたミニマム、ライトフライ、フライの元世界3階級王者。その日は、東京・大田区総合体育館でトリプル世界戦があり、2つめの世界戦後の午後9時過ぎに現場を離れ、会見場の新横浜プリンスホテルに向かった。

 「何でこのタイミング?」と多くの関係者は思ったと思う。「5度目の防衛戦の前に(引退を)決めていた」というが、その試合は半年以上前の4月23日やったのに。会見の模様は、TBSが生中継した。本人は「6年間戦ってきた大みそかという特別な日に、自分の思いと感謝をみなさんに伝えたかった」と言うたけど、これまで大みそかに中継してきたTBSの視聴率に貢献できれば…てな思いからちゃう? などと、どうしても考えてしまう。

 まあ、それはええか。問題は、完全に引退するんかということです。

 勝手な推測ながら、復帰すると思う。なぜか? まず、あれだけ「唯一無二のチャンピオンになりたい」と言い続けた人間の幕引きにしては、あまりにあっけないから。「3階級制覇達成」を理由に挙げて「おじさん(元世界2階級王者・井岡弘樹氏)の時から井岡家が目指していたもの。それ以上のものは現段階で感じられなかった」と言うけど…。いまひとつ説得力に欠けるんちゃいます?

 ちなみに、4月23日の5度目の防衛戦後は、こんなことを言うてました。

 「まだまだ強くなれると、シンプルに感じている。唯一無二になれるよう、周りに“ああいうボクサーはいないな”と言ってもらえるように頑張りたい」

 「僕が王者でいるなら、世界戦が続く。今はそれを1つ1つ、理解と覚悟と感謝の気持ちで戦っていくだけです。その世界戦が統一戦になれば、気持ちが“倍”になるという感じ」

 引退決めてる人のセリフと思えます?

 復帰すると思う根拠をもう1つ。引退後について「次のステージに進むビジョンはできています。応援していただいた皆さんの期待を裏切ることなく、さらに期待を持ってもらえると確信しています」と話してた。ビジョンは具体的には明かさんかったけど、ボクシングとの関係を「それは今は言えない」と否定せんかった。「未練はない」と言いながら、復帰の可能性を「何事もゼロはない」という理由から「ゼロとは言えないです」とも言うた。

 揚げ足取りと指摘されたら、その通りです。でも「井岡さん」が再び「井岡一翔」に戻ると思えて、仕方がないんです。【加藤裕一】

大相撲裏話

プライバシーの境界線は?暴行事件取材で感じたこと

貴乃花理事の処分について話す池坊議長(左)と小西評議員(2018年1月4日撮影)


 1月4日に、元横綱日馬富士関の暴行事件の被害者で十両貴ノ岩の師匠の貴乃花親方(元横綱)が、理事解任の処分を受けることが正式決定した。

 ようやく事件の当事者、関係者の処分は終結。17年11月14日の九州場所3日目に、一部報道で元横綱日馬富士関の暴行問題が発覚してから51日。この間、連日のように各メディアが事件関連の報道をし、事件の当事者、関係者は1日も気が休まることはなかっただろう。各メディアの報道に登場するのは、当然事件の関係者。しかしその裏では、事件とは関係のない力士らも気が休むことがなかった。

 暴行問題の全容、解決がまだ不透明だった17年12月3日、長崎・大村市を皮切りに冬巡業がスタートした。冬巡業は基本的に、前日夜には開催地へ移動する。そのため2日夜には、冬巡業に参加する親方衆、力士らは大村市入りした。問題はその日の夜に起きた。

 巡業は普段、本場所に足を運べないファンのために親方衆や力士らが各地方をまわり、朝稽古や初っ切り、相撲甚句などを披露して、相撲の良さを目や耳で感じ取ってもらう狙いがある。地元ファンにとっては年に1度の楽しみ。それは力士とて同じ。巡業会場でのファンとの触れ合いもそうだが前日入りした夜に、各地方の絶品料理やお酒に舌鼓を打つのも楽しみのうちの1つだ。

 当然、大村市入りした2日夜も、飲み屋街に力士らの姿があった。こぢんまりとした飲み屋街だが、その割には力士の姿は少ないように見えた。後日、力士らに話を聞くと「自粛しています」という声が多くあった。暴行問題が巡業中の酒席で起こっただけあって、事件には関係ない親方衆や力士らも敏感になっていた。

 飲み屋街に力士が少ないのが問題、という訳ではない。問題は過熱する取材のあり方だった。巡業の夜は早々と仕事を終わらせて各土地の料理に舌鼓を打つ記者は、2日夜も飲み屋街に繰り出した。携帯電話を握りしめて店を探している時だった。

 ある店の前に、ダウンコートを着た女性が1人で立っていた。誰かを待っているのか-。少しそわそわしたように感じたった。何げなくふと目を下にそらすと、手に光るものがあった。ダウンコートの袖で少し隠すように、ハンディカメラが忍ばせてあったのだ。

 決めつけるわけではない。腕章もパスもぶら下げていない。何も関係のない一般人かもしれない。しかし、その店の中には力士の姿が見えた。おそらくテレビ局か週刊誌か…。時計の針は午後9時を回っていた。「こんな時間までご苦労さんですなぁ」と仕事熱心ぶりに脱帽しつつ、事件とは関係のない力士らを少しふびんに思った。

 2日夜は玄界灘でとれた魚を堪能し、翌日の大村巡業を終えて3日夜には、長崎・五島市に入った。もちろん仕事を早々と済ませ、ある一軒の地元の居酒屋に入った。そこでも地元の魚や肉を堪能している時だった。突然、店の入り口から大きな声が聞こえてきた。

 「すみませーん。○○(某テレビ局)ですけど、誰か力士の方とかって店に来てませんかねぇ?」

 店のおかみさんが対応したとみられ、声の主は店の中には入って来なかった。その後、おかみさんに話を聞くと怒りの表情を浮かべながら話してくれた。

 「突然、テレビ局の人が来て『力士いませんか』って。名刺も何も見せないで、でっかいカメラ持っていきなり押しかけてくるんだから。非常識でしょ」

 おかみさんによれば、他のいくつかの店にも押しかけて手当たり次第に力士を探していたという。

 暴行問題が巡業中の酒席で起きただけに、力士が夜の街にいるところを撮りたい気持ちは、同じマスコミで働く身として痛いほど分かる。当然、上の立場の人から言われれば拒否することもできず、言われるがままにやらざるを得ないのも重々承知している。しかし、取材される側の気持ちを考えることも必要だと思う。暴行事件とは関係のない協会関係者は、自分が宿泊しているホテルの入り口前や、関取衆の付け人が洗濯するコインランドリーに、ハンディカメラを持った報道陣がいたことに対して激怒していた。

 「報道なら何やってもいいのか。俺たちのプライバシー侵しすぎでしょ。何の権利があってここまでやってるんだよ」

 報道の自由という言葉がある通り、各メディアが連日報道している。もちろん弊社もそうだ。しかし報道するためには取材が必要不可欠で、その取材が今回のように過熱し過ぎて、取材対象者に迷惑をかけるのはいかがなものかとは思う。カメラやマイク、名刺を出してノートを広げれば取材はできる。ただ勘違いしてはいけないのは、こちらはあくまで「取材をさせていただいている」ということだと思う。

 カメラ、マイク、名刺、ノートには取材を強制する権利は何もない。この事なら、この人なら話すか、という相手側の思いがあって初めて取材はできると思う。それを無視して一方的に押しかけては、不快感だけを与えて聞ける話も聞けないのではないだろうか。

 記者2年目の新米記者ながら、元横綱日馬富士関の暴行事件の一連の取材でそう感じた。【佐々木隆史】

原功「BOX!」

2018年、実現が期待されるスーパー・ファイト


 年の初めということで、今回は2018年中に実現が期待されるスーパー・ファイト、さらに注目選手などを挙げてみたい。

 最注目カードは、ヘビー級の王者対決であろう。主要4団体のうちWBAのスーパー王座とIBF王座を保持しているアンソニー・ジョシュア(28=英)と、WBC王者デオンタイ・ワイルダー(32=米)の英米対決だ。12年ロンドン五輪スーパーヘビー級金メダリストでもあるジョシュアは、プロ転向後20戦全KO勝ちの正統派強打者で、17年4月には通算23度の防衛を誇った元王者ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)を11回TKOで下して引退に追いやっている。

 対するワイルダーは08年北京五輪のヘビー級銅メダリストで、プロ転向後は39戦全勝(38KO)という戦績を残している。現在の王座はジョシュアよりも早い15年1月に獲得し、以来、3年間に6連続KO防衛を果たしている。身長201センチ、体重102キロ前後の細身の体だが、戦いぶりはダイナミックでスリリングだ。統一戦に向け両陣営は下交渉を開始しているが、まだ駆け引きの段階といえる。ともに春に防衛戦を計画しており、それをクリアすることが前提となるが、その後、一気に対戦話が進展する可能性もあるだけに要注目だ。

 昨年のベスト・ファイトのひとつに挙げられるWBA、WBC、IBF3団体統一世界ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)対サウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)の再戦は、5月5日に実現しそうな気配だ。戴冠試合を含めて世界戦で20戦19勝(18KO)1分のゴロフキンと、スーパーウエルター級とミドル級を制覇している52戦49勝(34KO)1敗2分のアルバレス。初戦はゴロフキンが攻め、アルバレスが下がりながら効率的に迎撃する展開に終始したが、再戦では派手な打撃戦を期待したい。

 上記4人以外で注目選手をリストアップするならば、まずWBO世界スーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ/米)を挙げたい。この五輪連覇のサウスポーはプロ7戦で世界2階級制覇を成し遂げ、昨年は3試合連続で相手をギブアップさせるなど乗りに乗っている。今年はライト級への進出が予想される。

 ウエルター級のIBF王者エロール・スペンス(27=米)も、さらなる飛躍が期待される。この9連続KO中のサウスポー王者は1月20日に元2階級制覇王者レイモント・ピーターソン(33=米)と初防衛戦を行う予定だ。WBA、WBC王者のキース・サーマン(29=米)や3階級制覇を狙うテレンス・クロフォード(30=米)らとの対決が期待される。

 このほか12戦全KO勝ちでIBF世界ライトヘビー級王座についたアルツール・ベテルビエフ(32=露/カナダ)、2月に4階級制覇を狙ってIBF世界スーパーライト級王座に挑むミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)、WBC世界スーパーウエルター級王者ジャメール・チャーロ(27=米)と、双子の兄でミドル級制覇を狙うジェモール・チャーロ(27=米)にも注目したい。

 また、今年はWBA世界ミドル級王者の村田諒太(31=帝拳)をはじめとする日本のトップ選手たちの海外進出も増えそうだ。

 実りの多い年になることを祈りたい。

リングにかける男たち

三沢光晴を知らない王者拳王、ノア新時代を引っ張る

エドワーズに勝利し新チャンピオンになった拳王(2017年12月22日撮影)


 プロレスリング・ノアの第30代GHCヘビー級王者に拳王(32)が就いた。

 12月22日の後楽園大会メインで、エディ・エドワーズを激戦の末破った。

 試合後、リング上でマイクを握った拳王は「三沢光晴さんに関わりのないオレが、初めてGHCヘビー級のベルトを巻いた。ノアの新しい時代は、オレが引っ張る」と高らかに宣言した。

 拳王の勝利インタビューの後、ノアの内田雅之会長は「ノア・ザ・リボーンを最終戦で成し遂げた。その象徴が拳王。ジュニアの原田大輔と、団体を任せられる選手が出てきた。新しい世代が出てきたタイミングで、私はしばらく表舞台かた引き下がり、見守っていきたい」と話した。16年11月の事業譲渡に始まった団体の混乱期を、前面に出て引っ張ってきた内田会長も、団体の柱となる若手の台頭にようやく一安心といった表情だった。

 ノアは、団体を創設した故三沢光晴さんの死後、主力選手の度重なる離脱などで経営が低迷。16年11月の事業譲渡に加え、17年2月には前運営会社が破産手続きに入るなど、厳しい状態に陥った。内田会長は、それまで選手の貸し出しなどで支援を受けていた新日本プロレスとの関係を清算。自前の選手だけでの立て直しを図った。そんな中、1月にジュニアからヘビー級に転向した拳王の急成長に目をつけた。

 「拳王はもともと買っていた。日本拳法というしっかりしたバックボーンもあるし、姿勢が一貫していてぶれない。最初は杉浦(貴)と組んでやっていたが、杉浦がケガで長期離脱している間にしっかり独り立ちした」と内田会長は言う。7月にはゼロワンの火祭りに乗り込み、優勝こそ逃したが、優勝した世界ヘビー級王者田中将斗との激闘など、結果を残した。「火祭りあたりから勢いが止まらなくなった。そして、今回のベルト奪取は有言実行で取った」と内田会長は実績を評価した。

 「ノア・ザ・リボーン」という目標を掲げ、日本武道館大会開催の実現を訴えた内田会長。これに呼応するかのように拳王も「オレが日本武道館に連れて行く」とことあるごとに口にするようになった。「今後は、拳王のように三沢光晴を知らない世代と、三沢さんの遺志を受け継ぐ、丸藤や杉浦、さらに三沢さんは知らないが、そのDNAを受け継ぎたいと思う若手たちのイデオロギー闘争が生まれてくると思う」と、団体のさらなる活性化を期待する。

 三沢光晴さんが生きた時代の日本武道館大会は、プロレス界の黄金時代の象徴でもある。その日本武道館大会開催に向け「すぐにはできないが、横浜文化体育館、両国国技館と大きなハコでの開催をやっていきながら、20年東京五輪の頃には実現したい」と内田会長は計画を口にした。1月6日の後楽園大会で、拳王は清宮海斗と初防衛戦を行う。ノア新時代の幕開けだ。【プロレス担当=桝田朗】

大相撲裏話

竜電次は三役!狙うは角界史上最大のカムバックだ

序ノ口デビュー12年目で待望の新入幕を決めた竜電。左は師匠の高田川親方(2017年12月26日撮影)


 竜電(27=高田川)が06年夏場所の序ノ口デビューから12年目で念願の新入幕を果たした。初場所(1月14日初日、東京・両国国技館)の番付は東前頭16枚目。「番付表を見て知りました。(九州場所の白星が)8番だったんで…。(負けた14日目、千秋楽に)9、10番勝っとけば確定の勢いだったんですが。心の弱い面が出た。稽古でもっと強くしないと」。26日の番付発表で、苦笑いまじりに喜びを語った。

 嫌な音を3度も聞いた。待望の新十両で迎えた12年九州場所8日目に右股関節を骨折した。「折れた瞬間“ボコン”と音がした」。その後、同じ音を2度。場所が場所だ。「的確な治療法がない。骨がくっつくのを待つしかない」と師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)が説明する“大けが”だった。2年間は相撲が取れず、治っても最初はおっかなびっくりだった。竜電は「周りの方の支えのおかげです。励ましの言葉を心に刻んで。それと、このままじゃ終われないという思いだけです」と話した。

 周囲の支えはなくてはならないものだったろうが、それに匹敵するほど大きかったのは、師匠の“厳しい優しさ”ではなかったか。高田川親方は言う。「私が言い続けたのは『弱いからケガをするんだ』ということ。ケガをしたことは相撲の神様の『もっと鍛えなさい』というメッセージなんだ。それを克服したら、本当の力士になれるんだ、ということです」-。

 関取経験者が序ノ口まで陥落し、その後に新入幕したのは92年九州場所の琴別府以来2人目。琴別府の新入幕も竜電と同じ27歳で、序ノ口デビューから12年目のことだ。琴別府の最高位は95年春場所の東前頭筆頭で、三役にあと1歩届かなかった。

 高田川親方の厳しい優しさは、続く。「今からが竜電の本当の相撲人生。苦労した分、来年の早いうちに、一気に三役に上がってほしい。三役じゃないと、名前を覚えてもらえない。それだけのものはあるんだから」-。序ノ口からはい上がった関取経験者の新三役。角界史上最大のカムバックが実現すれば、それは角界の語り草になる。【加藤裕一】

原功「BOX!」

MVPはロマチェンコ/2017世界ボクシング界


 2017年も残り5日となったところで、今年の世界のボクシング界を大まかに振り返ってみたい。分かりやすくMVP、殊勲、敢闘、技能、新鋭といった賞に分けて活躍した選手たちを挙げてみよう。

 MVPはWBO世界スーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ/米)で問題ないだろう。WBA&IBF世界ヘビー級王者のアンソニー・ジョシュア(28=英)、スーパーライト級の4団体統一を果たしたテレンス・クロフォード(30=米)と秋までは肩を並べていたが、ロマチェンコが12月にギジェルモ・リゴンドー(37=キューバ/米)との五輪連覇対決を制して完全に抜け出した。まだプロで11戦(10勝8KO1敗)しか経験していないサウスポーのロマチェンコだが、細かく動きながら正確にパンチを当てる独特のスタイルでどこまで強く、巧くなるのか興味は尽きない。準MVPとしてジョシュアを推したい。

 殊勲賞は、全階級を通じて最も評価の高かったローマン・ゴンサレス(30=ニカラグア)を連破したWBC世界スーパーフライ級王者のシーサケット・ソールンビサイ(30=タイ)だ。3月の初戦は論議を呼ぶ判定勝ちだったが、9月の再戦では右フックでゴンサレスをキャンバスに沈めた。次点で、6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(39=比)を破ってWBO世界ウェルター級王座を獲得したジェフ・ホーン(29=豪)が続く。

 敢闘賞には、自国を離れて年間3度の防衛を果たしたジェルウィン・アンカハス(25=比)を推したい。このほかWBO世界クルーザー級王者のオレクサンデル・ウシク(30=ウクライナ)、3階級制覇を成し遂げたWBC世界ライト級王者ミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)、さらにハイレベルの相手から2度の王座防衛を果たした3団体統一世界ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)、敵地でIBF世界ウェルター級王座を獲得したエロール・スペンス(27=米)もいる。

 技能賞は、MVP候補の項で名前の出たクロフォード、7度の防衛を果たしているWBA世界スーパーウエルター級王者のエリスランディ・ララ(34=キューバ/米)、WBA世界ライト級王者ホルヘ・リナレス(32=帝拳)、そして12月にWBO世界ミドル級王座のV3を果たしたビリー・ジョー・サンダース(28=英)の4人だ。

 新鋭賞は、すでにWBC世界スーパーミドル級王座獲得を成し遂げてはいるものの21歳と若いデビッド・ベナビデス(米)と、もうひとり前IBF世界スーパーフェザー級王者のジャーボンタ・デイビス(23=米)を挙げたい。ベナビデスが19戦全勝(17KO)、デイビスが19戦全勝(18KO)と高いKO率を誇る。来年の活躍が楽しみだ。

 KO賞は、4月と10月に指名挑戦者を相手に痛烈なKO防衛を果たしたWBC世界スーパーウエルター級王者、ジャメール・チャーロ(27=米)が入った。チャーロは30戦全勝(15KO)と驚くほどKO率が高いわけではないが、このところ4連続KO勝ちとパンチが切れまくっている。

 年間最高試合は、4月に9万人を集めて行われたジョシュア対ウラジミール・クリチコ(41=ウクライナ)のWBA&IBF世界ヘビー級タイトルマッチで異論はないだろう。

 5回にダウンを奪ったジョシュアが逆に6回にはキャンバスを這い、さらに展開が変わるなか11回に再逆転となる2度のダウンを奪ってレフェリー・ストップに持ち込むというドラマチックな試合だった。引き分けに終わったゴロフキン対サウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)の3団体統一世界ミドル級タイトルマッチ、シーサケット対ゴンサレスの再戦もスリリングな試合だった。

 また今年は特別に、11月に世界戦史上最短となる11秒KO勝ちを収めたWBOバンタム級王者、ゾラニ・テテ(29=南アフリカ共和国)に「記録賞」を贈りたい。

 ロマチェンコのさらなる活躍、ヘビー級王座統一戦など、世界のボクシング界は2018年も賑やかな年になりそうだ。