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au版ニッカン★バトル

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リングにかける男たち

今や蚊帳の外の井岡一翔、せめて自分の口で現状を

井岡一翔(左)と谷村奈南


 井岡一翔(28=井岡)は何をしてるんやろう。11月9日付でWBA世界フライ級王座を返上した。本来なら「日本ジム所属選手初の世界4階級制覇」を目指すとか、ポジティブな理由があってしかるべきやと思うけど、返上会見に井岡本人は出席せず、父親の同ジム・井岡一法会長が「予定していた大みそかのリングに調整が間に合わない」と説明。その上「モチベーションが上がらんのなら、引退せな仕方ない」てなことまで言うたから、驚いた。

 理由はケガでもない。「プライベートに時間を割かれたことによる練習不足」。歌手谷村奈南と5月に結婚した。新婚と言えば、そうやけど…。世界王者、しかも脂の乗った3階級覇者の“休業理由”としては、異例でしょう。まして、口癖が「唯一無二のチャンピオンになりたい」やった男としては。

 井岡のプロデビュー後最長ブランクは、15年12月31日、WBAフライ級王座の2度目の防衛戦(レベコ相手に成功)からララ相手に3度目の防衛を飾った16年7月20日までの「202日」やった。このコラムは12月4日に書いてるわけやが、直近の試合が4月23日、ノクノイとの5度目の防衛戦やから「225日」。気づけば記録? を更新してました。

 日本ボクシング界は動いてる。ロンドン五輪金メダリストの村田諒太はWBA世界ミドル級王者になって、日本人が中量級のベルトを奪う快挙を成し遂げた。WBO世界スーパーフライ級王者の“怪物”井上尚弥は12月30日に7度目の防衛戦を行う。

 井岡と同じフライ級では、木村翔が北京&ロンドン五輪金メダリストの中国の英雄・鄒市明からWBOのベルトを奪った。WBC王者で具志堅用高の秘蔵っ子、比嘉大吾はデビュー14連続KO勝ちの離れ業を演じて初防衛に成功した。さらに、将来的な“5階級制覇”を掲げる田中恒成がこのほどWBOライトフライ級王座を返上、おそらくは3階級制覇に動く。

 ところが、井岡は…。昨年まで6年連続でやってきた、恒例の大みそかファイトが途切れる。少し前まで間違いなく、日本の王者の中で特別な存在やったけど、今では蚊帳の外。ワン・オブ・ゼムに成り下がってきたんやないやろか。

 妻の谷村奈南は王座返上返上2日後の11月11日、ツイッターに「必ず本人が、ファンの皆さんへ真実をお伝えします」と書き込んだけど、井岡は依然沈黙を守ってる。まあ他の王者の試合が集中する年末に、水を差すわけにはいかんやろうけど、せめて年が明けたら、公の場で自分の口から現状を語ってほしい。それこそがファン、世間への王者の責任やないでしょうか。【加藤裕一】

原功「BOX!」

井岡ら米国で日本選手の試合続々 旋風巻き起こすか


 去る7月28日に米国フロリダ州キシミーでWBO世界スーパーフェザー級王座を獲得した伊藤雅雪(27=伴流)に続けとばかり、8月から9月にかけて元世界3階級制覇王者の井岡一翔(29=SANKYO)ら、日本のトップ選手が相次いで米国のリングに上がる。旋風を巻き起こすことができるのか、注目と期待を集めている。

 先陣を切るのはWBAスーパーウエルター級14位の亀海喜寛(35=帝拳 33戦27勝24KO4敗2分)だ。8月17日(日本時間18日)、カリフォルニア州インディオで22戦19勝(12KO)2敗1分のグレグ・ベンデティ(28=米国)と対戦する。亀海は昨年8月に世界的なビッグネーム、ミゲール・コット(プエルトリコ)とのWBO王座決定戦で12回判定負けを喫しており、これが1年ぶりの再起戦となる。過去に9度も米国のリングに上がっており経験は十分。豪快なKO勝ちが期待される。

 25日(日本時間26日)にはアリゾナ州グレンデールでWBOスーパーバンタム級6位の大竹秀典(37=金子 36戦31勝14KO2敗3分)が、同級王者アイザック・ドグボエ(23=ガーナ)に挑む。大竹は14年11月に英国でWBA王座に挑んで12回判定負けを喫したが、以後は9連勝(5KO)と復調している。ただ、王者のドグボエは12年ロンドンオリンピック(五輪)出場の経験を持つうえ、プロでも19戦全勝(13KO)と勢いがあるだけに、大竹にとっては厳しい戦いが予想される。

 9月8日(日本時間9日)には井岡(23戦22勝13KO1敗)がカリフォルニア州イングルウッドのリングに上がる。相手はスーパーフライ級でWBCとWBOで3位にランクされるマクウィリアムス・アローヨ(32=プエルトリコ)。昨年4月のWBAフライ級王座5度目の防衛戦で勝利を収めたのを最後に引退していた井岡にとっては、これが1年5カ月ぶりの実戦となる。父親のジムを離れ、米国のプロモーターと契約を交わすなど環境を一新、4階級制覇を目指して復帰戦に臨む。相手のアローヨは2度の世界挑戦には失敗しているものの20戦17勝(14KO)3敗の戦績を残している実力者。楽観視できない相手といえる。

 9月14日、カリフォルニア州フレズノで行われるWBCスーパーライト級タイトルマッチ、ホセ・カルロス・ラミレス(25=米国)対アントニオ・オロスコ(30=米国/メキシコ)の前座には、同級WBA4位、WBC9位、IBF5位、WBO3位にランクされる岡田博喜(28=角海老宝石)が出場する。岡田は先ごろ、WBAミドル級王者の村田諒太(32=帝拳)も提携している米国のトップランク社とプロモート契約を締結。これが本場のリング初登場となる。35戦27勝(11KO)6敗2分のクリスチャン・ラファエル・コリア(35=アルゼンチン)を相手に、自慢の強打を披露することができるか。存在感を示せば世界挑戦が具体化する可能性もあるだけに、内容も問われることになりそうだ。

 日本勢の活躍に期待したい。

リングにかける男たち

棚橋弘至、苦境語らずとも想起させる絶妙な言語感覚


G1を制し祝福のテープを浴びる棚橋(2018年8月12日撮影)

 「今まで、苦しんだ分……」。

 棚橋弘至、G1クライマックス28を3年ぶり3度目の制覇で飾った直後。バックステージでの2問目だった。「今のお気持ちは?」。定番の質問に、ゆっくりと息を整え、気持ちを吐き出し続ける…、かに思えたが、すぐに訂正した。

 「苦しんでない! 苦しんでない!」。

 そう、それが棚橋弘至。「楽しんで、喜んでやってきたけど、結果が出なかった分、今日はいつもより、倍うれしいです」。思わず出た本音に照れ笑いなのか、勝利の喜びなのか、止めどなく噴き出る汗をぬぐう顔には笑顔が広がっていた。

 「疲れない、落ち込まない、あきらめない。それが逸材三原則ですから」。100年に1人の逸材は、この2年あまり、IWGPヘビー級のベルト戦線から離れ、故障の連鎖に苦しむ中でも、そのスタンスを崩さなかった。苦労話を探る報道陣との“攻防戦”は度々だっただろう。記者もその1人だ。スポーツに付き物の逆境をはねのける物語を求め、数々の質問を浴びてきたはずだ。ただ、逸材はぶれなかった。G1優勝後のバックステージでもそうだった。「苦しんでないと言われましたが、気持ち的には追い込まれたりは?」の問いかけにも、「はい……、ないです! ないです!」と切り返した。

 苦境に雄弁である必要はない。この日のバックステージの棚橋を見て思った。苦しかったかと聞かれ、思わず透けてしまう本音、それを必至に打ち消すまでの間。その絶妙な言語感覚で十分だ。苦境はあった。ただ「逸材三原則」はぶれない。だから、少し、ほんのわずかのぞいたその本音をきっかけに、想像力を働かせれば十分。そしてその想像を喚起させるところが、棚橋の類いまれな魅力ではないか。

 優勝で来年1月4日の東京ドーム大会メイン、IWGPヘビー級選手権の挑戦権利証を手にした。18年の下半期は、その言語感覚を発揮してくれる場が多々あるだろう。耳を傾けたい。【阿部健吾】

G1を制し優勝旗を手にポーズを決める棚橋(2018年8月12日撮影)

大相撲裏話

新たな活力 地方巡業で復活した民泊にほっこり

長野・下諏訪町で行われた巡業は、テントを張った屋外で行われた。手前はファンに気さくにサインに応じる安美錦


 今月6日に長野県下諏訪町で行われた夏巡業に際し、前日5日に鶴竜、白鵬の2横綱をはじめ、多くの力士が「民泊」を行った。長野県の諏訪湖周辺の一般家庭に、基本的には関取と付け人の2人1組ずつ、鶴竜は総勢8人、白鵬は4人で同じ家に泊まった。親方衆や巡業に参加している力士の多くは、ホテルでの宿泊だったが、約20軒にもわたる家庭に一斉に力士が宿泊。一風変わった日となった。

 民泊はかつて、地方巡業で多くあったというが、近年はまったく行われていなかった。7月の名古屋場所では、長野県出身力士として初優勝した関脇御嶽海の活躍で、近年、相撲熱の高まっていた地域ということもあり、快く迎えられたという。民泊初体験の前頭大栄翔は「泊まった家の子どもたちと、夜はババ抜きとか、トランプをして一緒に遊びました。楽しい思い出になりました」と、うれしそうに話した。きっと、交流を持った家庭、特に一緒にトランプをした子どもたちは、ずっと大栄翔を応援するだろう。他のプロスポーツにはない、相撲ならでは交流は、ファンの裾野を広げることにもつながる。

 鶴竜は、一般家庭ではないが、約160年前から残っている、古い屋敷に宿泊した。8人という最も大所帯で宿泊したこともあって「ものすごい食べると思われていたみたいで、食べきれない量の食事が用意されてビックリした」(鶴竜)。コイなど、普段は目にすることもなかった食材もあり、印象に残ったという。食後は、ご飯を用意してくれた地域の人たちと、諏訪湖で毎日上がる花火4万発を、一緒に見て楽しんだ。「庭に250年前の松の木があって歴史を感じた。いい経験になった」と、民泊初体験を振り返っていた。

 下諏訪町での巡業は、これも現在では少なくなっている屋外で行われた。当日は気温37度ほどまで上がる猛暑。もともと避暑地で、多くの家庭にはクーラーがなく、鶴竜の宿泊先にもなかった。前頭魁聖は「自分だけ、その家で唯一、クーラーがある部屋に泊まらせてもらった。ありがたいですね」と、家主の心遣いに感謝した。

 今回の民泊を受け入れた各家庭も、準備に余念がなかった。ボリューム満点の夕食や朝食、さらにはトイレの便座を補強する家庭が多かったという。一般家庭の便座は、200キロ超の魁聖をはじめ、150キロ超が当たり前の力士が座ることを想定してつくられたものではない。重さに耐えられず、便座が割れてしまうのだ。この日のためだけに便座を取り換えるなど、数々のおもてなしに、民泊した力士はこぞって感謝の思いを口にする。前頭勢は「地方のおじいちゃん、おばあちゃんとか、普段お相撲さんを目にすることのない方は、こっちが歩いているだけで拝んでありがたがってくれる。こんな職業ないですよ。ありがたがってくださる方々のためにも、僕らも頑張らないといけない」と話す。地方巡業、さらには民泊という相撲ならではの交流は、ファンのためだけではなく、力士にとっても新たな活力を生む場となっている。【高田文太】

原功「BOX!」

前WBA王者マティセ引退、7月パッキャオにTKO負け


 先月15日にマレーシアの首都クアラルンプールで元6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(39=比)に7回TKO負け、WBA世界ウエルター級王座を失ったルーカス・マティセ(35=亜)が現役引退を表明した。80パーセントのKO率を誇り、2010年代の中量級を湧かせた南米の豪腕は「グローブを壁に吊るし、次のステップを踏むときがきた」とコメントしている。

 マティセは世界的な強豪が集まるスーパー・ライト級(暫定王座)、ウエルター級の2階級で世界王者になったが、必ずしも主役というわけではなかった。同じ時代にパッキャオやフロイド・メイウェザー(米)、ダニー・ガルシア(30=米)といったビッグネームがいたからだ。もともとアルゼンチンのローカル・ファイターだったマティセは10年ごろからアメリカに呼ばれるようになり、元王者たちとのテストマッチを5試合も組まれた。そのうちの3試合でKO(TKO)勝ちを収め、地元判定の声が多かった2試合でもダウンを奪って存在感を示した。

 12年9月、30歳になる直前にWBCスーパー・ライト級暫定王者になったが、そのときの戦績は35戦32勝(30KO)2敗1無効試合というものだった。KO率は約86パーセントだった。ノンタイトル戦では同じ階級のIBF王者を3度倒して3回TKOで下した。このころ(13年5月)が全盛期だったようだ。じわじわと圧力をかけながら前に出て距離を潰し、射程が合うとハンマーのような硬質感のある左右のフック、ストレートなどを繰り出して相手をキャンバスに沈めてしまう。ニックネームは「マキナ(機械)」。精密機械ではなく、前にあるものを押しのけてしまう重機を思わせる戦いぶりだった。

 ただ、強豪との連戦で疲労とダメージが蓄積したのか、3年前にはWBA世界スーパー・ライト級王座決定戦で10回KO負けを喫してしまう。目を傷めたこともあり、いったんはリングから遠ざかった。昨年5月、ウエルター級に上げて再起を果たし、今年1月にはWBO世界ウエルター級王座を獲得、2階級制覇を成し遂げた。先月のパッキャオ戦は主役の座を射止めるチャンスだったが、6階級制覇の実績を持つサウスポーのスピードについていけず、3度のダウンを喫して7回で力尽きた。14年のプロキャリアで残した戦績は45戦39勝(36KO)5敗1無効試合。常にエキサイトティングな試合を提供して多くのファンを持っていたマティセは、引退に際し「自分の人生を変えてくれたボクシングに感謝している。私は夢を達成することができた。10年間もトップで戦い続けることができたことを誇りに思う」と綴っている。

 アルゼンチンはときどき怪物的な強さを持った世界的な選手を輩出するが、近い将来、「第2のマティセ」が登場してくることを期待したい。

リングにかける男たち

武骨さ貫く石井智宏、42歳王者の勇姿がぜひ見たい


 佳境を迎えた新日本のG1クライマックス。シングルのリーグ戦はやはり楽しくて、通常のタイトルマッチにない番狂わせがしばしば起こる。8月4日の大阪大会でもあった。輝いたのは石井智宏だ。

新日本プロレスG1クライマックス出場者記者会見 入場時、ポーズをする石井智宏=2018年7月13日

 日本人男性の平均身長とほぼ同じ170センチで、体重100キロ。短めの手足で、スタイルはお世辞にも「いい」とは言えない。その体の上に丸刈り頭、無精(?)ひげのごつめの顔がのっている。見た目は明らかにオカダ・カズチカ、棚橋弘至、内藤哲也ら華やかな一群とは違う。典型的なバイプレーヤータイプだ。

オメガ(左)にラリアートを決める石井(撮影・垰建太)(2018年8月4日)

 しかし、強い。その日はBブロック公式戦で、相手はIWGPヘビー級王者ケニー・オメガ。王者の躍動感あふれる、多種多様な技を、体全体で受け止め、跳ね返した。要所で見せる頭突き(あえてヘッドバットとは言わんでおきましょう)や、パワー系の技で試合にアクセントを加え、垂直落下式ブレーンバスターでとどめを刺した。

右が石井智宏、左は長州力、中央はニコラス・ペタス(2005年9月7日)

 天龍源一郎、長州力の薫陶を受けてきたことが手に取るようにわかる、ゴツゴツしたファイトスタイル。見ていて、とても痛い。かつて山崎一夫や藤田和之が絶賛したのが、よくわかる。鈴木みのるとは少し違うけど「説得力」という点では、多士済々の新日本でも出色だと思う。

 ファンが彼の力を百も承知なことは、オメガ戦での歓声、拍手で手に取るようにわかった。「番狂わせ」と言うには失礼で、IWGPヘビー級王者の全勝街道に立ちふさがったレスラーが「石井でよかった」という空気感が、場内には確かにあった。

 「あいつ、今が一番楽しいだろうな。すべて思い通りで。でもな、世の中そんなに甘くねえんだよ。山あり谷ありで、必ず障害があるんだよ。おめえ(オメガ)にとっては、それが俺だ。今だけじゃねえぞ。これからもだ」。オメガ戦後、それだけを言い残して、インタビューエリアを後にした。俺にもっと仕事をさせろ、と言わんばかりに。

 42歳。今のパフォーマンスをどれだけ維持できるのか。だから、早いとこもうひと花咲かせてほしい。近いうちに、IWGPへの挑戦はないかな。10年10月から11年2月まで、第55代王者として君臨した小島聡以来となる40代王者の勇姿がぜひ見たい。【加藤裕一】

大相撲裏話

未成年の同行不可となった巡業は本来修行の格好の場

柏巡業の土俵下で準備運動する栃ノ心


 酷暑の中、大相撲の夏巡業が行われている。相撲人気復活を示すように、今巡業は7月29日の岐阜・大垣市を皮切りに、8月26日の東京・KITTE場所まで29日間で26カ所を巡行するハードスケジュールだ。

 中部、近畿から北信越、関東をへて東北、北海道、再び関東に戻り秋場所番付発表(8月27日)まで続く全国行脚。力士も大変だが、30年近く前に担当だったころも、空前の相撲ブームに沸き、今以上の過密日程だった。当時、現役だった親方衆に聞いても「我々の頃の方が、きつかったよ」と振り返る。

 その巡業は、若い衆にとっても絶好の修行の場となる。関取衆の付け人であるのは、通常の部屋にいる時と同じ。だが、巡業となると負荷のかかり具合が違ってくる。日々、巡業地を転々とするため、あの数十キロはある関取衆の明け荷を担ぎ運ばねばならない。今はまだ、大型トラックに運び込むだけでいいが、昔は鈍行列車での移動はざら。腰を折り曲げながら、延々と歩きながら担ぐ姿は痛々しいほどだった。

 また、巡業に出なければ、わずかでも持てる自分の時間なども、移動や関取衆が就寝するまでの雑用で一切ない。若い衆の仕事、といってしまえばそれまでだが、見ている側からすると、気の毒にさえ思える。

 ただ一方で、あれこそが約700人いる力士の中から選ばれし70人の関取になるための、これ以上ない発奮材料になるとも思う。「早く、こんな苦しい生活から抜け出したいと、何度思ったことか。巡業から帰るたびに、何とか脱出したい、苦しい思いをするのは稽古だけでいいとね」。以前に担当していた時、晴れて関取になった、ある親方の回想だ。時代遅れの言葉かもしれないが、若い衆にとって巡業は、ハングリー精神を養う場でもあった。

 今、行われている夏巡業から、力士や裏方ら未成年の協会員の同行が見送られることになった。ある関係者はその理由を「未成年者は未熟で飲酒や喫煙に手を出しかねない。でも巡業では親方衆の目が行き届かないことも多いので、部屋で責任を持って指導するのが好ましいということ」と説明している。昨冬の九州巡業では力士の夜の動向を、相撲取材以外の媒体が宿舎で“潜入チェック”するなど、格好のえじきになりかねない。リスク管理という側面から今回の決定に至ったのだろう。

 だがそれは、本来の巡業の意義を否定するものだ。繰り返すが、若い衆には修行の格好の場でもある。少子化の時代に、力士数の減少は致し方なく、物理的に付け人不足にもなる。また近い将来的にも、10代の関取が誕生することもある。角界にとっては喜ばしいことだが、それでも「10代不参加」となるのだろうか。今回の決定が、暫定的なものであってほしいと願う。常識的な行動をとっていさえすれば、年齢制限など不要なのだから。【渡辺佳彦】

原功「BOX!」

何が起こったのか 11人→6人に減少した日本の世界王者


 先週はフィリピン勢の躍進について書いたが、それと反比例するかのように日本からの世界王座流出が目立つ。2018年がスタートしたときには日本のジム所属選手として11人の世界王者がいたが、7月30日の時点で6人にまで減少してしまったのだ。この7カ月の間に何が起こったのか。

 昨年12月30日、31日に日本人選手の出場する世界戦が合計5試合行われ、WBAライトフライ級王者の田口良一がIBF王者との統一戦に12回判定勝ちを収めるなど、5人の王者が揃って防衛を果たした。そのため日本のボクシング界は、以下のように11人の世界王者を擁して新年を迎えた。

◆ミニマム級 IBF王者=京口紘人(ワタナベ) WBO王者=山中竜也(真正)

◆ライトフライ級 WBA&IBF王者=田口良一(ワタナベ) WBC王者=拳四朗(BMB)

◆フライ級 WBC王者=比嘉大吾(白井・具志堅) WBO=木村翔(青木)

◆スーパーフライ級 WBO王者=井上尚弥(大橋)

◆スーパーバンタム級 IBF王者=岩佐亮佑(セレス)

◆スーパーフェザー級 IBF王者=尾川堅一(帝拳)

◆ライト級 WBA王者=ホルヘ・リナレス(帝拳)

◆ミドル級 WBA王者=村田諒太(帝拳)

 このうち、尾川は昨年12月の戴冠試合前のドーピング検査で陽性反応を示したとして2月に王座獲得自体を取り消され、比嘉は4月のV3戦を前に規定体重をつくれず失格。この時点で王座を剥奪され、コンディションが整わないまま臨んだ試合では9回TKO負けを喫した。ふたりともリングの外で世界王座を失ったわけで、ドーピング違反、計量で失格という日本初の事例となってしまった。

 リナレス、田口、山中の3人はいずれも防衛戦で敗れて王座を手放した。3階級制覇王者のリナレスは5月12日、アメリカでワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と激闘を展開したが、ボディブローを浴びて10回TKO負けを喫した。その8日後、田口は元ミニマム級王者のヘッキー・ブドラー(南ア)に敗れ、3年以上君臨したトップの座から陥落。そして山中は7月にフィリピン選手に完敗を喫した。

 また、井上は3月にWBOスーパーフライ級王座を返上して上のクラスに転向。5月にはWBAバンタム級王座を獲得して3階級制覇を成し遂げた。無冠の時期は2カ月半と短かった。同じく京口はライトフライ級への転向のため7月に王座を返上している。

 こうしたなか拳四朗、木村、村田は防衛戦で勝利を収めて王座をキープ。井上と、8月16日に2度目の防衛戦を控えている岩佐、さらに7月28日に米国でWBOスーパーフェザー級王座を獲得したばかりの伊藤雅雪(27=伴流)を加えた6人が、現在の日本のジム所属の世界王者ということになる。

 今後、この数字が再び増えていくのか、それとも減るのか。まずは16日の岩佐のV2戦に注目したい。

リングにかける男たち

陰で新日支えたマサ斎藤さん、みんなに愛されていた

リングの形をしているマサ斎藤さんの祭壇


 巌流島の戦いで有名な元プロレスラーのマサ斎藤さん(享年75)が亡くなった。米国で活躍し、新日本プロレスでは、巌流島でアントニオ猪木と名勝負を演じ、引退後は渉外担当として、ドーム興行などビッグマッチを陰で支えた。東京・青山の梅窓院で営まれた葬儀は、故人の人柄もあり多くの参列者も集まったすばらしい式だった。

 ドン荒川さんが昨年亡くなったときに取材した、新日本の元執行役員、上井文彦氏の言葉を思い出した。「プロレスラーは静かに死んじゃいけないんです」。白い花でリングをあしらった祭壇に、倫子夫人が選んだ遺影。それを囲むように、赤い花は、巌流島のかがり火を再現したとか。闘志あふれる遺影に、斎藤さんの代名詞「GO FOR BROKE(当たってくだけろ)」の文字版。その祭壇の中で、斎藤さんが今も戦っているような雰囲気があった。

 会場となった梅窓院は、倫子夫人が選んだ。青山通りを1本入ったところにある、静かで品のある寺院。斎藤さんが生前「青山通りは昔、戦車が走ったことがるんだ」と話したことを覚えていた倫子さんが、通りからたまたま見かけた梅窓院を選んだと話してくれた。もともと親族だけでという通夜、告別式だったが、訃報を聞き付け、かつての仲間や世話になった人たちが数多く足を運んだ。

 かつてリング上で、長州力の顔面を蹴って、新日本を解雇された前田日明氏と、長州の2人が、そろって出棺の際に棺を抱えていた。前田氏は「試合のあとマサさんにちょっとあやまったら、『あやまることないよ。元気があるのはいいことだよ』と言われた」と思い出を語った。長州は「この年までやってきて、あそこまでにはなれないね」と故人の偉大さをたたえた。

 米国時代のマサさんの思い出を弔辞で切々と語ったザ・グレート・カブキの米良さん。マサさんにビジネスのイロハを教わったという蝶野正洋。明大時代にレスリング部と柔道部で切磋琢磨(せっさたくま)したという新日本の坂口征二相談役は「同じ体育会で仲が良くて、おとこ気のあるやつだった。オレが社長で、マサが渉外部長で一緒に頑張ったんだよ」と寂しそうに話していた。

 マサさんはみんなに愛されていた。パーキンソン病で早すぎた死であったが、参列した人々の言葉と、倫子夫人の姿を見て、マサ斎藤さんの人生はとてもすばらしいものだったと教えられた。【バトル担当=桝田朗】

大相撲裏話

貴公俊が再出発の1歩 謹慎中は部屋全体が後押し

土俵の上で体を動かす貴公俊(2018年6月25日撮影)


 名古屋場所の新番付発表が行われた6月25日。これまで三重・桑名市に構えていた宿舎を今年から愛知・瀬戸市に移転した先の稽古場で、貴公俊(21=貴乃花)は黙々と四股を踏んでいた。稽古の最後には十両貴ノ岩と一緒に、体幹を鍛えるトレーニングで汗を流して終了。稽古見学者が連れてきた犬と屈託のない笑顔で触れ合い、帰り際に3カ月間の葛藤を吐露した。

 「たった1場所の休みでしたけど、半年ぐらい休んだ感覚でした。自分がやってしまったことなので何とも言えませんが、歯がゆいというかやり切れない気持ちでした」。新十両で臨んだ3月の春場所。不慣れな付け人の不注意により起こったミスに怒り、支度部屋で暴行。途中休場を余儀なくされ、5月の夏場所出場停止処分を科された。

 春場所では十両だった番付も、名古屋場所では西幕下49枚目まで落とした。3月は156キロあった体重も一時は「食欲がなくなって6キロ落ちました」。ただ、稽古は欠かさなかった。春場所後も出場停止となった夏場所中も、1日も休まずに稽古に励んだ。そして夏場所中は、毎日相撲中継に見入った。「部屋の関取の取組は当然。幕内上位も見てましたし、十両の取組も見てました。でも見すぎると…」。自分が土俵の上に立っていない現実に、気持ちが押しつぶされそうになったが「力士である以上、土俵に立つのが当たり前だけど、土俵に立てるありがたみが分かりました」と前向きにとらえた。

 それでも気持ちを奮い立たせるのは、容易ではなかった。夏場所に出場できないのに続く、連日の猛稽古。「正直、意味あるのかなって思った時もありました」と見失いかけた時もあったという。そんな時、師匠の貴乃花親方(元横綱)から「時間があるようでないから体をしっかり鍛えとけ」と、ハッパを掛けられた。

 さらに弟の十両貴源治が夏場所で10勝の好成績を残し「弟が結構勝ってて『くそっ』と思った」と発奮材料にした。と同時に「もう1度一緒に土俵入りがしたいなと思いました」と希望が湧いた。師匠や弟、貴乃花部屋全体が背中を押してくれた。

 そして迎えた7月の名古屋場所。場所前に「名古屋は入門して1回も負け越していないので験がいい場所です。優勝はノルマ。応援してくださった人たちのために結果を出したい」と意気込んでいた通り、謹慎明けの場所で白星を積み重ねていった。気が付けば幕下の全勝は白鷹山との2人だけに。幕下優勝をかけた13日目、十両返り咲きに花を添えたい白鷹山との意地のぶつかり合いの末、復活優勝を果たすことはできなかった。

 取組後は無言を貫き、貴ノ岩の付け人として仕事を全うした。自分の取組後の数時間後。貴ノ岩の取組が終わり、宿舎に戻るために迎えの車に乗り込もうとした際に、ようやく言葉を発した。「今は考えられないです。頭がボーっとしてしまって」と完全燃焼。それでもすぐに切り替えられたのか「来場所に向けてこの気持ちは忘れないようにしたいです」と語気を強めた。過ちを犯した春場所8日目の3月18日から、124日経過した名古屋場所13日目の7月20日。貴公俊はようやく再出発の1歩を踏み出した。【佐々木隆史】

原功「BOX!」

木村翔、フィリピン月間4人目世界王者誕生に待ったかけるか


 WBO世界フライ級王者の木村翔(29=青木)が27日、中国山東省の青島で同級3位のフローイラン・サルダール(29=比)を相手に2度目の防衛戦に臨む。日本側からみれば「木村の海外防衛なるか」という視点が中心になるが、フィリピン側からみれば「月間4人目の世界王者誕生」という期待がかかった試合となる。

 木村は昨年7月に中国の上海で五輪連覇の実績を持つ中国のヒーロー、ゾウ・シミンを11回TKOで破って現在の王座を獲得した。今回、再び中国で勝てば、戴冠も防衛も海外という日本では珍しい記録となる。過去には亀田和毅(現協栄)がフィリピンで王座を獲得し、米国で2度の防衛を記録した事例があるだけだ。

 一方、フィリピン側からみると、すでに今月だけで3人の世界王者が誕生しており、サルダールが勝てば「4人目」ということになる。先陣を切ったのはサルダールの1歳半下の弟、ビック・サルダール(27)だ。13日、神戸で山中竜也(23=真正)の持つWBO世界ミニマム級王座に挑み、ダウンを奪って12回判定勝ちを収めた。

 その2日後の15日、マレーシアの首都クアラルンプールでは一気にふたりのフィリピン人世界王者が誕生した。まずはセミファイナルに出場したジャック・テポラ(25)がエディバルド・オルテガ(28=メキシコ)に9回TKO勝ちを収め、WBA世界フェザー級暫定王座を獲得。1時間後、メインとして6階級制覇の実績を持つ世界的なスター選手、マニー・パッキャオ(39)が登場した。フィリピンの上院議員でもあるパッキャオはWBA世界ウェルター級王者のルーカス・マティセ(35=亜)に挑戦し、3度のダウンを奪って7回TKO勝ちを収めた。39歳のサウスポーはウェルター級だけで4度目の戴冠を果たしたことになる。

 この結果、IBF世界スーパーフライ級王者のジェルウィン・アンカハス(26)、WBA世界バンタム級暫定王者のレイマート・ガバロ(21)を加え、これでフィリピンは5人の世界王者を擁することになった。27日にサルダール兄が木村を破るようなことがあると、フィリピンのボクシング界は7月中旬以降の2週間で4人の新王者誕生ということになる。世界王者の数も6人となり、日本(木村が敗れると5人)を抜く。この先、9月にはフィリピン人同士のWBO世界スーパーフライ級王座決定戦が決まっており、王座返上や剥奪といったハプニングがなければ6人あるいは7人王者時代が到来することになる。

 フィリピン勢の躍進はまだまだ続くのか、それとも木村が待ったをかけるのか。27日、中国山東省の青島で行われるWBO世界フライ級タイトルマッチに要注目だ。

リングにかける男たち

昨年新人王の森武蔵ストイックな昔ながらのボクサー

スーパーフェザー級新人王に輝いた森武蔵。右は薬師寺保栄会長(2017年12月23日撮影)


 昨年1度取材しただけだが、ちょっと気になる若手ボクサーがいる。スーパーフェザー級で全日本新人王となり、敢闘賞も獲得した薬師寺ジムの森武蔵。まだ18歳。15日にジムの地元愛知の刈谷市で、プロ7戦目に臨んだ。

 相手のバレスピンはフィリピン同級王者で、東洋太平洋でも6位につける難敵だった。接戦となったが2-0の判定勝ち。森を勝者としたジャッジはいずれも1ポイント差と際どい白星も、これで7戦全勝(5KO)となった。

 取材したのは新人王の時だが、計量にただ一人スーツ姿で現れた。プロ3戦目の新人王西軍代表決定戦からスーツで計量がお決まり。「海外のスターはビシッと決めている。身だしなみはきちんとしたい」と話す。元世界王者の薬師寺会長にも「スーツで着てください」とお願いしたほどだ。

 小さいころからは空手をやっていた。キックボクシングも考えていたが、小3で「世界王者になる」と決意し、地元熊本・菊池にあるボクシングジムに通い始めた。決意のほどは食事に表れていた。おやつは甘い菓子ではなく、いりこや骨せんべい。中学までは鶏肉しか食べなかったという。

 その成果は11、14年のU15全国大会で優勝で示した。15年3月の中学卒業翌日には単身で名古屋に向かい、知人に紹介された薬師寺ジムに入門した。いくつか見学した中で「世界王者になるにはここだと思った」という。

 中2の時に危機があった。ロードワーク中に交通事故に遭ってヒザを痛めた。選手生命にも影響しかねない重傷だったが、森らしい自慢の逸話がある。事故は後ろからひき逃げされたものだった。森は痛みにも車のナンバーを見逃さず、逮捕につながったという。動体視力に根性もある?

 最近は高校や大学でアマの実績を作り、プロ入りするボクサーが多くなってきた。森もアマ経験者ではあるが、中卒で一獲千金を狙う昔のボクサーに通じるたたき上げと言える。

 プロ入り後に牛肉を食べて「こんなうまいものがある」と思ったそうだ。一方で不摂生を理由にラーメンを食べるのはやめた。まだ10代でこんな禁欲生活で、ストイックなボクサーはあまり聞かない。将来は「地元熊本で世界戦」という夢を持っている。【河合香】

大相撲裏話

ワースト陥落も前向く希善龍

希善龍(2017年1月16日撮影)


 東十両13枚目の希善龍(33=木瀬)が、屈辱的な記録樹立が濃厚な状況にも、前を見続けている。今場所は元十両の須磨ノ富士の8度を抜き、史上最多9度目の十両昇進で迎えた。過去8度の十両では1度も勝ち越しがなく、初の勝ち越しを目指して臨んだが、10日目に早々と負け越し。12日目には9敗目を喫し、来場所は史上単独1位となる9度目の幕下陥落が濃厚だ。だが「(39歳の)安美錦関を見ていて、まだまだやれるという気持ちはあるし、幕内という目標は持ち続ける」と、力強く話した。

 十両と幕下の間には、待遇に大きな違いがある。十両以上には給料が発生し、部屋では個室が与えられ、付け人が同行。一人前として扱われる。稽古でも、幕下以下は黒まわし、十両以上は白まわしを着ける。希善龍は「(十両以上が本場所や巡業で着ける)締め込みや、白まわしの方がパリッと気持ちも引き締まる」と、誇りを持っていた。

 だからといって、陥落を屈辱とは思っていない。「大部屋だろうが個室だろうが気にしない。今場所は9敗してから変な硬さがなくなって連勝。そう考えると、まだ成長の余地がある。9回落ちることより、それでも諦めない気力が持ち味だと考えたい」と笑顔。10度目の十両昇進は遠くはなさそうだ。【高田文太】

大相撲裏話

新十両美ノ海「締め込み」に四苦八苦

名古屋場所2日目、翔猿(右)を押し出しで破る美ノ海(撮影・鈴木正人)


 幕下以下の力士が関取になるには壁がある。新十両美ノ海(25=木瀬)も今場所、それを味わった。11日目で決まった負け越し。3日目からの6連敗が響いた。パワー、スピード、技術…。いろんな敗因はあるが、思わぬ悩み? もあった。「締め込みにやっと慣れてきました。最初は息ができないほど苦しくて…。ガチッと締まりすぎて動きにくいんです」-。

 幕下までは本場所も、素材が木綿で価格1万5000円前後の「稽古まわし」を使う。関取が締めるのが「締め込み」だ。相場は100万円前後。一般的には後援者らが業者を通じて、関取に贈る。問題は素材だ。絹100%。フィット感がアバウトな綿素材と違い、体に張り付き、締まる。

 西幕下2枚目炎鵬(23=宮城野)も新十両だった春場所、締め込みに大苦戦した。「僕は15日間、締め方が決まらなかった。腰が入りづらく、動きがすごく制限される。特に小兵力士はみんな、苦労するんじゃないですか?」。十両復帰が有力な来場所では、巻く回数を4周から3周にすることを考えている。

 勲章が“難敵”になることもある。関取になるのは大変だ。【加藤裕一】

大相撲裏話

英乃海、翔猿、海猿…えっ3兄弟!?

英乃海


 某インターネット大相撲中継チャンネルが初日の8日、十両英乃海は「実の弟に十両の翔猿と序二段の海猿がいる」と紹介した。ん? 翔猿は確かに弟だが、海猿は…。早速、海猿に話を聞くと「今日で10回以上は言われてますよ」と苦笑いした。続けて「正也(翔猿)さんが詳しく知っています」。

 取組後、翔猿に事情を聴くと笑顔で明かしてくれた。海猿は16年初場所で、「海渡」のしこ名で初土俵を踏んだ。涼しげで切れ長の目が、自分と似ているということもありかわいがった。時にはツーショット写真を撮って、自身のインスタグラムなどに「弟です」などと投稿。伏線は張られていた。

 そして、春場所後の春巡業で翔猿が、芸人のゆんぼだんぷ藤原らに海渡を三男だと冗談で紹介。タイミング良く? 春場所で海渡は「海猿」に改名。「英乃海の海と翔猿の猿を取って海猿にしたんです」と、作り話をした。それをゆんぼだんぷ藤原が、ツイッターで拡散して冗談話が独り歩きしてしまい世に広まった。

 間違いではあるが、翔猿は全く気にする様子はなく「今度は3人で写真撮ります」と今後も“3兄弟”をアピールするという。皆さん、間違わないようお気を付け下さい。【佐々木隆史】

翔猿
新弟子検査時の海猿(2016年1月6日撮影)

原功「BOX!」

第1回WBSSクルーザー級王者はガシエフかウシクか


 WBA世界バンタム級王者、井上尚弥(25=大橋)が第2回大会に参戦することで日本でも注目を集め始めている高額賞金トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」。その第1回大会のクルーザー級決勝戦が21日(日本時間22日)、ロシアの首都モスクワで行われる。WBA王座とIBF王座を持つムラト・ガシエフ(24=露)と、WBC&WBO王者のオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)が対戦するもので、勝者は4団体の統一王者になるとともに優勝賞金1000万ドル(約11億2000万円)を手にする。

 WBSSの第1回大会はスーパーミドル級とクルーザー級の2階級に各8選手、合計16選手が参加して昨年9月に開幕した。クルーザー級は主要4団体の4王者がエントリーし、いずれも初戦を突破。そのため準決勝2試合は王者同士の対決となり、ガシエフとウシクが激闘を制して決勝に駒を進めた。

 「アイアン(鉄人)」というニックネームを持つガシエフは27戦26勝(19KO)1無効試合という戦績を残している192センチの長身強打者で、WBSS初戦を3回KO、準決勝を12回TKOで勝ち上がってきた。特に22戦全勝(21KO)のWBA王者、ユニエル・ドルティコス(32=キューバ/米)を最終回で仕留めた試合はドラマチックで、自身の評価をアップさせるとともにロシアのファンの期待も大きく跳ね上げた。

 これに対し12年ロンドン・オリンピック(五輪)ヘビー級金メダリストのウシクはサウスポーの技巧派で、プロでは14戦全勝(11KO)の戦績を残している。WBSS初戦は元世界王者に10回TKO勝ち、準決勝では23戦全勝(18KO)のWBC王者、マイリス・ブリエディス(33=ラトビア)の地元に乗り込んで12回判定勝ちを収めている。大会開始時から本命とみられており、決勝まで順当に駒を進めてきたといえる。

 もともと決勝戦は5月にサウジアラビアで予定されていたが、ウシクが左腕を痛めたため延期され、開催地もロシア(モスクワ)に変更された経緯がある。そのためか、当初は7対3でウシク有利と出ていたオッズは徐々に接近。7月に入ってからはウシク有利の数字が5対4まで縮まっている。ちなみに自力で4団体王座の統一を果たした選手は、ミドル級のバーナード・ホプキンス(米)とスーパーライト級のテレンス・クロフォード(米)だけで、ガシエフ対ウシクの勝者が史上3人目となる。

 攻撃型のガシエフが前に出ながら圧力をかけ、技巧派サウスポーのウシクが迎撃する展開が予想される。総合力は接近しており、接戦になりそうだ。ただし、200ポンド(約90・7キロ)を体重リミットとするクルーザー級はヘビー級の次に重い階級だけに、一発でKOという可能性もある。

 ガシエフにはミドル級V20王者、ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)が師事するアベル・サンチェス・トレーナーがついており、一方のウシクには3階級制覇の天才、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)の父親、アナトリー・ロマチェンコ・トレーナーがついている。選手個々の力量だけでなく、参謀の戦術、チーム力にも注目したい。

 なお、井上が参戦する第2回大会のエントリー選手と組み合わせ発表は、このガシエフ対ウシクの試合の前日、20日(日本時間21日)にモスクワで行われることになっている。

リングにかける男たち

松葉づえ姿で「できることをやる」中邑のプロの流儀


 胸にスッと入ってくるコメントだった。「今、自分ができることをやるしかないってことですね」。6月29、30日のWWE日本公演で一時帰国した中邑真輔のメリハリの効いた言葉は心地よく感じた。

WWE日本公演であいさつする中邑真輔(C)2018 WWE,Inc.All Rights Reserved

 日本公演の直前となる6月25日のスマックダウン大会の前、警察犬にかまれて左足を負傷した。全治は2週間。「自分としては2年ぶりの東京。パフォーマンス、トレーニングと最善と尽くしてきた。まったく本当に想定していないことが起こった」と振り返り「もう悪夢としか思いようがないですよね。いろんな人に『何、笑い話を作ってるんだ』って言われましたよ。(自分は)シャレにならねえよと」。一瞬、くすぶる怒りを抑えているようにも見えたが、最終的には現状を受け入れ、消化している姿勢に中邑のプロフェッショナルを感じた。

 日本に同行していたWWEのトレーナー、ドクター、プロデューサーと協議し「その中で自分ができること」と、両日ともに松葉づえ姿でリングに上がった。第1日は自らの口で「悔しいワン」とジョーク交じりに欠場報告。サモア・ジョーの襲撃も受け、コキーナクラッチで絞められた。第2日にはサモア・ジョー、ダニエル・ブライアンを挑戦者に迎えたWWEヘビー級王者AJスタイルズのトリプルスレット形式の王座戦に乱入。前日に襲われたサモア・ジョーに対し、お返しの急所攻撃を見舞った。メインイベント後にはマイクを握り、WWEヘビー級王者なって帰国することを約束して大会を締めくくった。

WWE日本公演でのあいさつで笑顔もみせた中邑真輔 (C)2018 WWE,Inc.All Rights Reserved

 試合はしなくても、2日ともに中邑の試合を楽しみにしていた観客たちを喜ばせた。「少し無理した部分もありますけど」と苦笑しつつ「リングに立って足が痛いです。かわいそうでしょっていうのは中邑真輔ではない。いかに制約された中で、中邑真輔を落とし込めるかっていうのが、日々、日ごろやってきたことですから。それをみせるってこと」。言行一致した2日間をみせたと言っていい。

 好きなことばかりを仕事にできるわけではない。好きなことだけやってお金をもらえる時代でもない。取り巻く環境や世界、そして関係する人間に責任を転嫁し、不平不満を態度に示す人が意外に多いこの世の中。与えられた環境に不満を募らせ、あからさまに態度や行動で表す人も少なくない。最終的にすべてを受け入れ、現時点の最大限、フルパワーで目の前の仕事に取り組むことは容易ではないからなのだろう。「今、自分ができることをやるしかないってことですね」。簡単に聞こえるが、実に難しい行動なのだと思える。

15日のPPV大会でUS王座を獲得した中邑真輔(C)2018 WWE,Inc.All Rights Reserved

 松葉づえ姿でもスーパースターとしての仕事をまっとうした中邑のプロの流儀。負傷の癒えた2週間後の7月15日のPPV大会エクストリーム・ルールズ(米ピッツバーグ)で、中邑は日本人3人目のUS王座(02年以降、WWEとなってからは日本人初)を獲得した。老若男女関係なく、彼の言葉に見習うことが多い。【藤中栄二】

大相撲裏話

ファンの声に「いいよ」二所ノ関親方の写真

10日、名古屋場所の会場に姿を見せた二所ノ関親方


 昨年10月に頭部を手術した二所ノ関親方(61=元大関若嶋津)が、3日目に取材に対応した。一時は意識不明の重体で、安否を気遣うファンの声は多数。名古屋場所の会場内を、つえなどを使わず自力で歩く中、そんなファンの声を伝えると、二所ノ関親方は「そうか、いいよ」と、写真撮影に快く応じた。手術後、初めての取材対応だった。

 実は3月の春場所前の時点で、会話もできるほど回復していた。だが、それが知れ渡ると、見舞客が後を絶たなくなる可能性があった。当時、ある部屋関係者に「話せるとはいっても、まだ流ちょうではないし、体力を使うので、その情報を出すのは控えてほしい。親方は気を使う人。見舞いに来てくれた方には、一生懸命応対してしまうから」と言われた。見舞客の応対で体調を悪化させては本末転倒。記者失格かもしれないが静観することにした。

 今回、二所ノ関親方が取材に応じたと複数の部屋関係者に伝えると、いずれも「ぜひ報じてください」と返答された。自転車で転倒した際に左脳を強く打ち、右半身はやや反応がにぶいという。だが補助付きではない普通のはしも使いこなし、家族との散歩が日課で稽古にも顔を出すという。部屋関係者の明るい対応に、今後のさらなる回復を確信した。【高田文太】

大相撲裏話

千代の国で4人目「横綱戦不戦勝」×2

鶴竜が休場で不戦勝となった千代の国(撮影・前岡正明)


 運も実力のうちと言うべきなのか。千代の国が今場所2度目の横綱戦不戦勝となった。4日目の白鵬に続き、鶴竜が休場。相撲を取らずに勝ち名乗りを受けて、涼しい顔で支度部屋へと戻ってきた。

 昭和以降、1場所で2度も横綱戦で不戦勝した力士は4人目となった。絶対的存在として立ちはだかる横綱。平幕上位力士にとっては、金星獲得の好機でもある。そんな相手に相撲を取らずして2勝は、単に勝ち越しのことだけを考えれば最高の白星だ(不戦勝は金星にならない)。

 過去の3人は、その場所で勝ち越している。中でも元関脇栃乃洋の竹縄親方は、2度目の不戦勝で勝ち越しを決めた。同親方は「それで勝ち越しましたから。疲れで言えば楽は楽。でも流れが変わらないように体は動かしてました」と、当時を振り返った。

 横綱戦で2度も不戦勝となり、千代の国はさぞかし喜んでいるだろうと思ったが違った。「結びの一番でやりたいというのはありました。喜んでばかりはいられない」とポツリ。まずは今場所勝ち越して、横綱と対戦できる地位を守る。そして、来場所こそ真っ向勝負を挑む。【佐々木隆史】

昭和以降、1場所で横綱に2度不戦勝した力士

大相撲裏話

岡山出身の西大司、西日本豪雨の地元へ勇気を

記者の質問に答える西大司


 岡山市東区出身の西幕下60枚目西大司(24=入間川)が、西日本豪雨で被災した地元をおもんぱかった。桜児竜を寄り切り2番目にして初日を出したが、もどかしい気持ちは抜けきれなかった。

 「自分が育った場所のすぐそこなので本当に大変だなと」

 豪雨の影響で県内の死亡者は11日(午前11時)時点で56人に上る。実家は無事だが、近所の河川は氾濫。中心部が濁流にのまれた倉敷市真備町の中学校では、相撲部のまわしが豪雨で流された。自身の母校ではないが「心配です」と遠くを見据えた。

 地元出身の力士として勇気を与えたい。岡山県出身の力士で最後の関取は、09年7月名古屋場所で在位した元十両琴国が最後。自己最高位は先場所の幕下42枚目で簡単な道ではないが「目指してやっていく」と目線はぶれない。

 母校の岡山理大付高は野球部を中心に運動部が盛ん。同学年の野球部員と食事などで交流することも多く、1学年上でOBのロッテ藤岡裕やDeNA柴田がプロの舞台で活躍する姿を見て、刺激を受けている。面識はないが「同じ岡山県出身として盛り上げていければ」と活躍を誓った。【佐藤礼征】

原功「BOX!」

パッキャオ1年ぶりのタイトル戦はKOはらむ白熱した戦い期待


 6階級制覇の実績を持つスーパースター、マニー・パッキャオ(39=比)が15日、マレーシアの首都クアラルンプールでルーカス・マティセ(35=亜)の持つWBA世界ウエルター級王座に挑戦する。かつて米国でセンセーションを巻き起こしたサウスポーも12月には40歳になる。近年は衰えを隠せず、昨年7月には伏兵にWBO世界ウエルター級王座を奪われており、これが1年ぶりの再起戦でもある。相手のマティセは82パーセントのKO率を誇る強打者。パッキャオがKO負けを喫するようなことがあれば、引退の危機に瀕する可能性もある。

 パッキャオは19歳で約50.8キロ以下のフライ級王座を獲得したのをはじめ、約69.8キロ以下のスーパーウエルター級まで6階級で世界一の座についた。この間の体重差は実に19キロ。もうひとりの6階級制覇王者、オスカー・デラ・ホーヤ(米)が乗り超えた体重の壁が13キロだったことを考えると、いかにパッキャオの記録が偉大であるかが分かるだろう。

 パッキャオの身長は166センチ、リーチは170センチで、これは現WBA世界バンタム級王者の井上尚弥(25=大橋)とほぼ同じ数字だ。その小さな体で、ひと回り、ときにはふた回りも大きな相手に真っ向勝負を挑んでいったのだから人気が出ないはずがない。6階級目となるスーパーウエルター級王座決定戦で拳を交えたアントニオ・マルガリート(メキシコ)は身長180センチ、リーチ185センチだった。

 しかし、歴戦の疲労が蓄積したのか、単に年齢からくる衰えなのか、12年以降の9戦は5勝4敗とスランプ気味だ。相手がフロイド・メイウェザー(米)ら世界王者経験者がほとんどとはいえ、9年間、13試合もKO勝ちから遠ざかっているとあっては、かつてのような注目度を維持するのは難しいといえる。

 そうした中、今回の試合はパッキャオ自身が相手を指名し、自身でプロモートするかたちで実現した。17年間も指導を仰いだフレディ・ローチ・トレーナーとのコンビを解消し、新チームで臨む試合でもある。ちなみにマレーシアで世界的な注目ファイトが行われるのは、1975年7月のモハメド・アリ(米)対ジョー・バグナー(英)の世界ヘビー級タイトルマッチ以来43年ぶりとなる。

 相手のマティセは44戦39勝(36KO)4敗1無効試合という攻撃型の強打者で、今年1月に現王座を獲得した。ニックネームは「ラ・マキナ(機械)」。強くて正確な左右のパンチで数々の強豪をキャンバスに沈めてきた。知名度ではパッキャオに及ばないが、パワーでは6階級制覇王者の上を行く。「パッキャオが偉大な選手であることは認めるが、全盛期の力はない。私がKOで勝つだろう。この試合で引導を渡す」と強気のコメントを発している。

 オッズは9対5でパッキャオ有利と出ている。スピードを生かして左右に揺さぶりをかけながら機をみて飛び込み、左ストレートで鮮やかなKO勝ち-そんなシーンをパッキャオのファンは期待している。

 一方でリスクの高い試合であることも事実だ。パッキャオは23年半のプロキャリアで22度の世界戦(16勝8KO4敗2分)を含め68戦59勝(38KO)7敗2分のレコードを残しているが、マティセはパッキャオが世界戦で拳を交えたのべ22人の誰よりも高いKO率を残しているのである。

ひとつのミスも許されないのはパッキャオもマティセも同じこと。序盤からKOのスリルをはらんだ白熱した攻防が展開されそうだ。

大相撲裏話

貴公俊、処分明け初白星「親方、ファンに恩返しを」

貴公俊の取組を見守る貴乃花親方(撮影・岡本肇)


 西幕下49枚目貴公俊(21=貴乃花)は、自然と笑みをこぼした。春場所中の付け人への暴力行為により下った、夏場所出場停止処分。その処分明け最初の取組で、東幕下49枚目琴欣旺を寄り切りで破って白星を挙げた。「久しぶりに緊張した。(休場は)1場所だけど懐かしい感じがしました」と本土俵に立った喜びをかみしめた。

 立ち合いで鋭く踏み込み、一気に寄り切った。圧勝にも見えたが実は取組直前、土俵に上がろうとした時に右膝が外れるアクシデントに見舞われていた。しかし、その場で自分ではめ直して土俵に上がった。「気合が張りすぎました」と、気持ちが空回りするほどに力が入っていた。

 しかし謹慎中、気持ちは落ちに落ちていた。そんな時、スマートフォンでインターネットを見ていると、10年に起こった大相撲の野球賭博問題の記事が目に入った。記事を読んでいるうちに、謹慎処分を受けながらも今なお、幕内上位で活躍する先輩力士の存在を知った。「僕と同じように謹慎を受けても、上位で活躍しているのに励みを受けました」と発奮材料にした。

 当然、これでゴールではない。「結果を残して残念な気持ちにさせた親方、ファンの方に恩返しがしたい。心も体も強い力士になりたい」。まずはみそぎの場所を全うする。【佐々木隆史】

リングにかける男たち

笑いと驚き大好き新日メイ社長はタグチジャパン系?

大阪城ホール大会の試合前にリング上で握手を交わす新日本プロレスのハロルド・メイ社長(左)と菅林直樹会長(2018年6月9日撮影)


 つかみはばっちりだったのではないか。新日本プロレスの新社長に就任したハロルド・メイ氏だ。

 6月9日の大阪城ホール、第1試合前に流された3分超の“大作”あおりVTR。作り込まれたそれは、メイ社長自らが出演し、シャワーシーンのサービスショット? まで盛り込まれた、紹介映像だった。外資系企業で数々の実績を重ねた「プロ経営者」が、なぜ新日本プロレスを新天地に選んだのか。

 東京の木谷オーナーから携帯電話に連絡が入り、それをニューヨークで受ける設定。木谷オーナーは打診の理由を述べる。

 「新日本プロレスはこれから何が大事かというと、もっと世間に対してメジャーにする、いわゆるマーケティングやブランディングの強化。そんな時に誰が適任なのかと思ったら、もうこの人しかいないんじゃないかなと。すごい経営者だと思いますよ」。

 その言葉を背景に、映像では飛行機が日本に降り立ち、サングラス姿の名社長が来日した姿が描かれる。日本に住んでいた8歳の時にテレビでプロレスを見て魅了され、10年前に再び新日本にのめり込んでいったことなどが語られる。英語のせりふとともに、なんとも「出来る男」ぶりが描かれるのだが、ここからの転調に目を見張った。

 大阪城ホールに向かう車内に映像は移るのだが、ここで登場するのは、なんとたこ焼きだ。大阪の名物であるが、なんともコテコテ感が満載。それまでのすご腕のイメージとはギャップが大きいような感覚。箸を使って、舟皿からなんともおいしそうにほお張るが、どこかおかしみがある…。

 その後、なぜ「たこ焼き」だったのかが、少し分かった気がした。メイ社長、実は人一倍サービス精神旺盛で、人を笑わせ、驚かせることが大好き。大阪城ホールから数日後にインタビューした際に、「自分が分類されるならタグチジャパン」と定義していた。タグチジャパンと言えば、田口隆祐が監督を務める、どこか間の抜けたような楽しさを提供するユニット。戦いの中にも笑いを忘れない、そんなメンバーに自身を位置付けていた。確かに前職のタカラトミー社長時代には、率先してハロウィーンの仮装に凝ったり…。

 「お披露目は1回しかないから」と気合が入っていた大阪城ホールでの登場にも、そんな精神に満ちていたのだろう。あえてシャワーシーンで格好良く決めてからの、たこ焼きシーンの落差は確実に「狙い」にきていたと思う。そして、その人柄こそが、このオランダ人新社長の魅力の1つだ。

 6カ国語を操り、流ちょうに日本語を話す姿は、「外資系」というどこか冷たさのある響きとは無縁。インタビュー中も、陽気に明るく、楽しい話を聞かせてもらった。これからどんな「サプライズ」を提供してくれるだろうか。【阿部健吾】

大相撲裏話

稽古で完敗に不安の栃ノ心、本場所入ればV絡む実績

新大関栃ノ心(右)(2018年6月26日撮影)


 新大関で臨む名古屋場所(8日初日、ドルフィンズアリーナ)を目前にして、栃ノ心(30=春日野)が、かなりへこんでいる。

 「苦しいよ。昨日も豪栄道関に全然勝てなかったし、きょうは栃煌山関に…。苦しいよね。勝てないと、悲しいね」

 4日は境川部屋での出稽古で、先輩大関に0勝11敗。私は生で見ていないが、居合わせた関係者によると「全部完敗」だったらしい。で、5日は部屋で通常の朝稽古。いつもは栃煌山、碧山と関取3人でゴリゴリやり合うのだが、この日は左足かかとが痛む碧山が見合わせたので、栃煌山と三番稽古。16番とって、7勝9敗だった。

 しかも、十八番の「右四つ」にもっていけたのは1番だけ。序盤に2番、思い切って左をさして、押し込む“いい相撲”はあったものの、その他は勝っても引いて落とすなど、内容的にはダメ。つまり豪栄道、栃煌山と2日間通算27番で、気持ち良く勝ったのは1番しかなく…って、そらまあ落ち込むか。

 「当たりがちょっと弱いのかな? (立ち合いの体勢が)高いのかな?」

 豪栄道も栃煌山も、低く力強い立ち合いが持ち味。もともとやや腰高の栃ノ心には、やりづらい相手の上、ともに自身の取り口を熟知してるから、簡単にまわしを許してくれない。

 「(自分と)やりやすいんじゃない? もう思い切ってぶつかっていくしかないよ」。気持ちを奮い立たせようと、必死に自分に言い聞かせていた。

 それでも、春場所、夏場所前のことを思えば、名古屋場所は「問題ないやろ」と思うんです。もちろん素人なりになんですが。

 春場所前は、初場所の初優勝で勢いに乗り、大阪入り後絶好調。初日6日前にして「もういつ初日でもいい。明日でもOK」と豪語してた。ところが翌日、豪栄道との稽古で左足外側付け根をブチッとやった。「…調子よかったのにな…」とこの世の終わりのような顔で迎えた場所だったが、10勝5敗で乗り切った。

 夏場所前はどうだったか。この日と同じく初日3日前に栃煌山と10番とって4勝6敗。同じように右四つにほとんど持ち込めなかった。現在、夏場所で痛めた右手首に不安を抱えているが、当時は春場所で痛めた右肩に、今より大きな不安を抱えていた。場所に入ると、朝稽古で相撲を一切取らず、若い衆への胸出しだけで調子を整えた。そんな中で12連勝(1不戦勝含む)して13勝2敗。横綱白鵬にも初めて勝って、大関昇進を決めた。

 …そんな風に思うので、こう聞いてみた。

 大関、春場所と夏場所と比べたら、相撲とれるだけええんちゃいますの?

 「う~ん、ダメだ、ダメだと思ってたら、気持ちがダメになるからね。気持ちが大事。一日一番、気合入れてやりますよ」。

 場所中の朝稽古は、夏場所のように若い衆に胸を出すだけになるかもしれないらしい。そこは「状態を見ながらね」という。

 場所に入れば「何じゃ、あの怪力」と驚く相撲を普通に見せる、優勝戦線に絡む-。普通にそう思う。なんべんも言いますが、素人考えですけど。【加藤裕一】

原功「BOX!」

ディアス、プエルトリコ49人目の世界王者に輝くか


 米国の自治連邦区、カリブのプエルトリコは17連続KO防衛のウィルフレド・ゴメスや4階級制覇のミゲール・コットら数多くのスター選手を輩出してきたボクシング強国のひとつだが、1年半前には世界王者ゼロという低迷期を迎えた。しかし、その後は勢いを取り戻し、現在は世界王者4人(暫定王者含む)を抱えている。現役「5人目」の期待を背負っているのが、7月28日(日本時間29日)に伊藤雅雪(27=伴流)と拳を交えるWBOスーパーフェザー級1位のクリストファー・ディアス(23)だ。米国フロリダ州マイアミで行われるこの試合でディアスが戴冠を果たすと、プエルトリコ史上49人目の世界王者となる。

 プエルトリコに初の世界王座をもたらしたのはバンタム級のシクスト・エスコバルで、1934年の戴冠は日本初の白井義男氏(1957年にフライ級王座獲得)より23年も早い。以後、来日して圧倒的な強さを見せつけたカルロス・オルティス、17歳5カ月の最年少戴冠記録を持つウィルフレド・ベニテス、「バズーカ」の異名を持っていたゴメス、90年代から2000年代初頭にかけて活躍したフェリックス・トリニダードといった世界的なスター選手を輩出してきた。プエルトリコ初の4階級制覇を成し遂げたコットの試合ともなると、人々がテレビにくぎ付けになるため街の大通りがガラガラになったと伝えられたほどだ。世界戦のたびに50パーセント以上の視聴率を記録したファイティング原田の昭和30年代、40年代とオーバーラップするものが感じられる。

 しかし、1年半前には世界王者がゼロになるという危機的状況に陥った。そのピンチはWBOスーパーウエルター級王座を獲得したコットが救ったが、昨年12月の試合で敗れたのを最後に引退した。

 このベテランの奮起に触発されたのか、昨秋からフェザー級のヘスス・ロハス(31)、スーパーフェザー級のアルベルト・マチャド(27)、ライトフライ級のアンヘル・アコスタ(27)、そしてバンタム級のエマヌエル・ロドリゲス(25)が相次いで世界王座を獲得した。特に18戦全勝(12KO)のロドリゲスは次期スター候補と目される逸材で、井上尚弥(25=大橋)との統一戦が期待されている。

 こうしたなか、プエルトリコ史上49人目の世界王者の期待を背負っているのがディアスだ。8歳のときにボクシングを始め、アマチュアで137戦を経験後にプロデビュー。5年間で23連勝(15KO)をマークしているディアスは、伊藤との試合を前に「家族のためにも絶対に負けられない試合。世界王者になり、スーパーフェザー級王座を統一したい」と意気込んでいる。

 ディアスがプエルトリコ49人目の世界王者になるのか、それとも伊藤が日本のジム所属選手として90人目の世界王者になるのか。ボクシング強国の威信をかけた試合まで3週間あまりとなった。

リングにかける男たち

ベイダー追悼…規格外だった懐かしの外国人レスラー


甲冑をまとって入場するビッグ・バン・ベイダー

 あのビッグバン・ベイダーが他界した。87年12月、新日本プロレスの両国大会に「たけしプロレス軍団」(TPG…タマゴかけご飯=TKGみたい)の刺客という触れ込みで、猪木をあっさりフォールした。当時学生の私はテレビで見て憤ったもんな…TPGも、「皇帝戦士」いうキャッチもようわからんかった。何より唐突過ぎて「何じゃこれ?」てな感じで。場内のファンは「なめとんのか?」と騒いで暴動になった。プロレスの“うさんくささ”は毒にも薬にもなるけど、まあ猛毒でしたなあ…。

スタン・ハンセン(左)にドロップキックを放つビッグ・バン・ベイダー

 ただ力はすごかった。パワー殺法はもちろん、190センチ、170キロで宙を舞う軽やかさまであったりしましたからね。

 当時はスーパーヘビー級レスラーが山ほどおった。新日本では、ベイダーの約1年前に初来日したスティーブ・ウイリアムス。岡八郎さんもビックリの奥目でいかつい顔は、キャッチの「殺人医師」にぴったり。強烈でえげつない投げ。「岩」みたいな体つき。プロレスが上手な印象はなかったけど、逆にそれがすごみを感じさせて“最強説”を唱える向きも多かったと思います。

 クラッシャー・バンバン・ビガロもすごかった。初来日が87年1月。つるつる頭に彫り物をして191センチ、170キロの体でムーンサルト・プレスを決めたりしてた。体形はマッチョやなく、明らかなデブやのに。当時実況の古舘アナがつけたキャッチは確か「空飛ぶ入れ墨獣」。うまいよな。

 90年に初来日したトニー・ホームもいかつかった。元はフィンランドのヘビー級ボクサー。橋本真也をパンチで圧倒してた。「腕っ節が強い」という言葉が彼ほど似合うレスラーはおらんのやないでしょうか。

 全日本に来てた外国人では、テリー・ゴディもすごかった。キャッチは「人間魚雷」。パワーボムの元祖って言われてるけど、引っこ抜くようなバックドロップもえげつなかった。195センチ、135キロの体つきはビルドアップしたというよりバランス良く鍛えた感じで、ナチュラルな強さが印象的でした。

左からスティーブ・ウィリアムス、クラッシャー・バンバン・ビガロ、テリー・ゴディ

 …てな感じが、53歳のオヤジによる30年ほど前の“独断的スーパーヘビー級列伝”です。ベイダーの死で思い出すまま書きました。大変驚くことに彼らは全員、すでに他界しております。中にはステロイド服用の影響があった人もおるんでしょうが、実に悲しい。規格外のパワーに圧倒され、もん絶する日本人レスラーとの攻防。…見てて力入ったもんなあ。

左からケニー・オメガ、クリス・ジェリコ、ジェイ・ホワイト

 最近はどうか。フィールドを新日本に絞って見ると、IWGPヘビー級王者ケニー・オメガは183センチ、92キロ。IWGPインターコンチネンタルヘビー級王者クリス・ジェリコは182センチ、103キロ。IWGP USヘビー級王者ジェイ・ホワイトは186センチ、100キロ。みんな、うまい、速い、技もすごい。見てて、楽しい。素直にそう思う。でもちょっと物足らん。文句なしのド迫力っちゅうプラスアルファがないもんか…。まあ、いにしえのプロレスを愛するオヤジのたわごとですけど。【加藤裕一】

大相撲裏話

鶴竜W杯に熱視線 同世代の本田、ロナウドに注目

鶴竜(2018年5月28日撮影)


 サッカーワールドカップ(W杯)で、日本代表が決勝トーナメント進出を決めた。名古屋場所(7月8日初日、ドルフィンズアリーナ)が近づく中、相撲界で、誰よりも日本代表の戦いぶりに熱視線を送っているのが横綱鶴竜(32=井筒)だ。8歳の時に94年W杯米国大会をテレビで見て、優勝したブラジル代表に魅了されて以来という、筋金入りのサッカーファン。今大会の開幕前も、日本代表はこう戦うべきと持論を展開し、本紙でも大きく掲載した。

 思い返すと、鶴竜の持論は随所で的中していた。4バックと2ボランチで、個人の能力に秀でた相手FWを挟んで封じる策は、そのまま用いられ、実際に相手エースに仕事をさせなかった。無駄にクロスを上げるなという提言は、鶴竜の言葉を耳に入れて戦ったのではないかと思うほど、従来よりも本数は減った。パスとドリブルで崩したことで、攻撃のリズムが生まれていた。何よりも本田のトップ下起用を大会前から強く推す、数少ない“専門家”だった。本田の活躍はご存じの通り、初戦コロンビア戦で大迫の決勝点をアシスト、2戦目セネガル戦では自ら同点ゴール。1次リーグで日本が得た勝ち点4に大きく貢献した。

 また、今大会で最も注目しているのは、ポルトガル代表FWクリティアーノ・ロナウドだという。同じ1985年生まれというのが、最大の理由だ。日本の制度に当てはめれば、鶴竜は8月生まれでロナウドは2月生まれとあって学年は違う。ロナウドが1学年上に当たるだけに「競技は違うけど、同世代の選手のことは気になりますよね。ロナウド選手は、マンチェスター・ユナイテッドで活躍し始めたころから注目しているけど、ずっと一流のプレーを見せ続けている。本当は肉体的には、20代のころよりも落ちている部分もあると思うけど、それをまったく見せない。本当にすごい」と、余計に尊敬の念を抱く。

 鶴竜は父が大学教授とあって、その血が騒ぐのか、ロナウドの活躍の源が精神的な部分に由来するのか、経験や蓄積に由来するものなのか、それを知りたいという。競技は違えど、横綱と国際サッカー連盟最優秀選手賞受賞という、その道の頂点に立ったアスリートとして、興味は尽きないようだ。

 鶴竜昨年、6場所中5場所で休場し、一時は進退問題にまで発展した。「ただ休んでいたわけではなくて、出場していない時こそ稽古していた」と、今だからこそ言える。だが内心では、稽古が成果として出るかどうか、肉体的な衰えが出てしまうのではないか、不安を抱えていたと思う。それでも今は、そんな不安な日々も糧になったと考えられるようになった。

 同じく同世代で、1学年下の本田の活躍を予想していたことも、きっと自身と重ねて、期待を込めていた部分も大きかったのではないかと思う。そこから、もう1歩先へ。ロナウドのように突き抜けた存在になることを、本田に期待もしているだろうし、自身も相撲界でそういう存在になりたいと願っているのだろう。サッカーについて話す熱い言葉の端々から、そう感じずにはいられなかった。【高田文太】

原功「BOX!」

圧倒的不利予想の呂斌、史上最速プロ2戦目での戴冠なるか


 WBA世界ライトフライ級12位にランクされる呂斌(ルー・ビン 23=中国)が7月15日、マレーシアの首都クアラルンプールで同級王者のカルロス・カニサレス(25=ベネズエラ)に挑む。16年リオデジャネイロ五輪に出場した経験を持つ呂は昨年9月のデビュー戦で3回TKO勝ちを収めており、これがプロ2戦目となる。勝てば現WBA世界ライト級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)らが持つ「3戦目」を更新する史上最速の戴冠記録となる。この日のメインカードは、6階級制覇の実績を持つマニー・パッキャオ(39=比)がルーカス・マティセ(35=亜)に挑むWBA世界ウェルター級タイトルマッチだが、記録のかかる前座試合も注目を集めそうだ。

 呂はアマチュア時代に12年ユース世界選手権で優勝し、13年アジア選手権では銅メダルを獲得。21歳のときにはリオデジャネイロ五輪にも出場した(ライトフライ級2回戦で敗退)。昨年9月に北京でプロデビュー戦を行い、3回TKO勝ちを収めた。相手は17戦8勝(6KO)9敗という戦績のタイの選手だったが、この試合で呂は空位のWBCアジア・ライトフライ級シルバー王座を獲得。世界戦の計画が浮上した今年になって、取ってつけたようにランキング入りを果たした。中国系ファンの動員を狙ったマッチメークといわれてもいる。

 サウスポーの呂は細かく動きながら出入りしてワンツーを繰り出すボクサーファイター型で、今回の挑戦が決まってからフィリピンに遠征。パッキャオと一緒にトレーニングしてアドバイスをもらい、モチベーションを上げている。

 そんな呂の挑戦を受けるカニサレスは4年のプロキャリアで21戦20勝(16KO)1分のレコードを残している強打者だ。16KOのうち12度は3ラウンド以内でけりをつけており、速攻型ともいえる。16年12月に来日して当時のWBA王者、田口良一(31=ワタナベ)に挑戦したが、このときは前半でリードしたものの中盤から田口の追い上げにあい引き分けに終わった。その後、IBF王座も獲得した田口がスーパー王者に格上げされたことにともない今年3月にWBA王座決定戦が行われ、カニサレスは小西伶弥(24=真正)に判定勝ちを収め戴冠を果たしている。呂との試合が初防衛戦となる。

 130年超の近代ボクシングの歴史上、最も少ない試合数で世界王座を獲得したのはセンサク・ムアンスリン(タイ=1975年にWBCスーパーライト級王座獲得)とロマチェンコ(2015年にWBOフェザー級王座獲得)の「3戦目」だが、呂が勝てばこれを更新することになる。しかし、ムエタイ(キックボクシング)で豊富な経験があったうえプロでも世界ランカーを連破したセンサクと、アマチュア時代に五輪連覇を果たし、プロデビュー戦で世界ランカーを一蹴したロマチェンコと比べると、呂の実績は心許ないものといえる。

 また、呂が戴冠を果たせば熊朝忠(シオン・チャオ・チョン=2012年にWBCミニマム級王座獲得)、雛市明(ゾウ・シミン=2016年にWBOフライ級王座獲得)に次いで中国3人目の世界王者となる。

 圧倒的不利の予想を覆し、呂は新たな歴史を刻むことができるか。

リングにかける男たち

世界一性格悪い鈴木みのるは仲間、ファンのため闘う


 プロレスラー鈴木みのる(50)のキャッチフレーズは「世界一性格の悪い男」だ。その鈴木が、頸椎(けいつい)完全損傷で首から下が動かなくなった高山善広(51)を支援するTAKAYAMANIA実行委員会で、高山のために働いている。

3冠ヘビー選手権 敗れた鈴木みのるは防衛に成功した高山善広の右腕を持ち上げ健闘をたたえる(2009年5月30日撮影)

 8月31日には、後楽園ホールで高山支援大会「TAKAYAMANIA ENPIRE」を開催するという。鈴木はメインの6人タッグに出場する。「相変わらず口は達者なので、今回の大会であいつをどんどん悔しがらせてやろうと思う。いつか、あいつには、トップロープをまたいでリングに入ってもらいますよ。自分でけじめをつけてもらいます」と、口は悪いが愛情あふれるコメントをした。

 自分の30周年記念大会を横浜赤レンガ倉庫の広場で無料開催した。「一番最初に出した条件が、無料で青空の下でやることだった」と、新日本プロレスIWGPヘビー級前王者オカダ・カズチカとのビッグマッチを無料で実施した。生まれ育った横浜のプロレスを知らない人や、子どもたちに見せるためだ。

横浜赤レンガ倉庫での30周年記念大会でオカダ・カズチカ(左)と対戦した鈴木みのる(2018年6月23日撮影)

 今やプロレス界で独り勝ちの新日本で、フリーながら異彩を放つ鈴木。プロレスラーとして、近寄りがたいオーラをまとっている。そんな鈴木が中心になって開催する2つのイベントから、鈴木の人間らしさが垣間見えた。

 50歳になっても、リング上では、オカダや内藤、棚橋らとひけを取らない動きで、会場を盛り上げる。「プロレス界で1番練習しているから」と、自信満々で胸を張る。「世界一性格の悪い男」は、今日も、闘病中の仲間や、ファンのため、プロレスのために戦い続ける。【バトル担当=桝田朗】

大相撲裏話

けがの苦しみ知る阿夢露スポーツトレーナーで再出発

断髪式で師匠の阿武松親方から止めばさみを入れられる元前頭の阿夢露(2018年6月16日撮影)


 ロシア出身で夏場所前に引退した元幕内力士の阿夢露(あむうる、34=阿武松)が16年にわたる力士生活に別れを告げた。さる16日、部屋近くの千葉・幕張本郷にあるホテルで関係者約150人が出席して断髪式が行われ、最後に師匠の阿武松親方(元関脇益荒雄)が止めばさみを入れた。

 手塩にかけて育てた弟子の、第2の人生の船出に、師匠は16年前に思いをはせた。「場所前に『力士になりたい』と訪ねてきましたが、ちゅうちょしました。細い体を見て『モデルさん?』って。『ロシアに帰って考え直したら』と言ったんです」。2人きりで対面した焼き肉店でのことだった。

 一時帰国した阿夢露だったが、すぐに再来日し「やりたいです」と直訴。その熱意にほだされて入門を許可。以後、師匠いわく「宝くじに当たったような真面目な力士として、部屋の手本だった。ケガに次ぐケガにもあきらめず、へこたれずにやってきました」と目を潤ませる。10年かけて12年初場所で新十両に。外国出身力士では史上2位のスロー昇進だった。

 だが、晴れのその場所で右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂。序二段まで番付を下げたが、約2年をかけて関取に復帰。「トレーナー、治療の先生、病院の先生が『チーム・アムール』として、ロシアの真面目な青年を幕内に引っ張り上げようと応援してくれた」(阿武松親方)のが実を結び、4場所後には待望の新入幕、その1年後には最高位の東前頭5枚目まで番付を上げた。こちらの方は、外国出身力士で1位のスロー出世だった。

 192センチ、125キロの細身の体で、相撲は「左前みつしか武器がない」(同親方)という性格そのままに、愚直に前に出る相撲で活躍した。やはり三役からケガで幕下まで陥落しながら大関の座を射止めた、同じ東欧(ジョージア)出身の栃ノ心(春日野)も多忙なスケジュールを縫って、断髪式後のパーティーに駆けつけた。言葉や文化の壁、重傷を乗り越えるなど、同じような境遇で歯を食いしばってきた“戦友”に、部屋も一門の壁もない。

 ケガに悩まされてきた相撲人生。第2の人生は、経験を生かしスポーツトレーナーを目指すという。「ケガも多かったけど、いろいろな先生にみてもらった。自分もスポーツ選手を支えたい」。資格を取るために、まずは4月から日本語学校に通っている。「簡単な漢字は書けるけど、もっと勉強しないといけないから」。日本での永住権も持っているそうで「国籍を変えることはないけど、日本に残ります」と言う。焦らず腐らず土俵生活を送ってきた苦労人は、第2の人生も地道にコツコツと積み上げて行く。それが成功への道であることは、身に染みて分かっている。

原功「BOX!」

この秋、ミドル級とヘビー級でスーパーファイト実現


 この秋、ミドル級とヘビー級でスーパーファイトが実現することになった。ミドル級はWBAスーパー王座とWBC王座を持つゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)対元2階級制覇王者、サウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)の再戦で、試合は9月15日、米国内で行われる。ヘビー級はWBAスーパー、IBF、WBOの3団体王者、アンソニー・ジョシュア(28=英)対WBC王者、デオンタイ・ワイルダー(32=米)の4団体統一戦。こちらは10月か11月、英国開催で両陣営が合意している。4選手とも4000万ドル(約44億円)以上の報酬が見込まれている。

 昨年9月の初対戦では12回引き分けに終わったゴロフキン対アルバレスの再戦は、当初5月5日に行われる予定だった。しかし、アルバレスのドーピング違反が発覚したことで一時は空中分解した。その後も両陣営は辛抱強く交渉を続け、やっと条件合意に達したという。もめていた報酬の分配については21度目の防衛を目指すゴロフキンが42・5%なのに対し、集客能力と人気で上回るアルバレスが57・5%という比率に落ち着いた。それでもゴロフキンは4000万ドルを手にするとみられている。アルバレスの代役を相手に2回KO勝ちを収めた5月のV20戦の保証報酬が100万ドル(約1億1000万円)だったことを考えると、文字通り桁違いの金額ということになる。アルバレスの方は約60億円の報酬になる見込みだ。

 開催地は確定していないが、米国ネバダ州アスレチック・コミッションによるアルバレスの資格停止が8月に解除になることから、初戦と同じ同州ラスベガスのT-モバイル・アリーナが最有力視されている。戦績はゴロフキンが39戦38勝(34KO)1分、アルバレスが52戦49勝(34KO)1敗2分。現時点でのオッズは7対4でゴロフキン有利と出ている。

 21戦全勝(20KO)のジョシュアと、40戦全勝(39KO)のワイルダーのヘビー級4団体王座統一戦は、最重量級の英米対決という付加価値もあり、ゴロフキン対アルバレスの再戦を上回る規模になりそうだ。両陣営は開催地を含めて今春から本格的な交渉を続けてきたが、やはり一時は先送りになる可能性もあった。しかし、ワイルダーに5000万ドル(約55億円)の報酬が約束され、さらに初戦は英国、再戦を行う場合は米国開催という付帯条件がついたことで実現することになった。当初は9月開催を予定していたが、先にゴロフキン対アルバレスが決定したため「10月か11月を考えている」(ジョシュア側のプロモーター、エディ・ハーン氏)という。

 驚異的なKO率(ジョシュア=95%、ワイルダー=97・5%)を誇る全勝のハードパンチャー対決だけにジャッジ不要の試合になることは確実といえる。こちらもオッズは7対4でジョシュア有利という数字が出ている。

 この秋、ボクシング界は大きな盛り上がりをみせそうだ。