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au版ニッカン★バトル

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原功「BOX!」

暫定王座の増加はボクシングの将来を危うくする

 王者が負傷や病気のために戦線離脱した場合に設けられることが多い「暫定王座」は、一時期は減少傾向にあったが、今年に入って再び増加している。善用すれば問題はないシステムだが、ビジネスを優先して利用した場合は大きなマイナス効果を生むリスクもあるだけに懸念する声は多い。

 英語で「INTERIM CHAMPION(インテリム・チャンピオン)」と表記される暫定王者の制度は、負傷した世界王者の留守を預かる存在として1980年代に設けられた。日本では90年代前半に網膜裂孔、網膜剥離に罹患したWBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎(大阪帝拳)や、対戦相手が決定戦を経たうえでその肩書を得てファンの間に認知されるようになった。

 この制度は負傷やトラブルなどに遭遇した王者に時間的な猶予を与えて救済するだけでなく、イベントも保護するという点で有効なシステムだが、一方でビジネスを優先するあまり悪用されるケースも目立った。特にWBAでは一時期、17階級のうち常時10階級以上で暫定王者が存在するという事態に陥ったほどだ。これに加えて「スーパー王者」や「休養王者」なども存在するため、収拾がつかない状況に陥りつつあった。WBAは「暫定王者は世界ランク最上位者という扱い」と弁明したが、ベルトが授与されたうえ防衛戦も認められるとあっては説得力に乏しいといわざるを得ない。

 こうしたなか数年前、日本は「WBAの暫定王座については世界王座と認めない」という方針を打ち出して自主規制に乗り出した。こうした圧力が効いたのかWBAは2年前に「世界王者は1階級にひとり」という当たり前の方針を打ち出し、団体内の統一戦を推し進めた。そのためか現在のWBAの暫定王者は4人まで激減している。

 しかし、この3月にはバンタム級で新たな、そして不可解な暫定王者が誕生、波紋を投げかけている。WBAのバンタム級にはスーパー王者としてライアン・バーネット(25=英)がおり、3月31日に指名挑戦者を相手に初防衛を果たしたばかりだ。また、いわゆるレギュラー王座には6度防衛中のジェイミー・マクドネル(32=英)が君臨している。マクドネルは5月25日に井上尚弥(25=大橋)の挑戦を受けることになっている。こうしたなかで暫定王座を設ける必然性はどこにも見当たらない。

 似たようなことはWBC、IBF、WBOでも起こっている。現在、主要4団体で合計10人以上の暫定王者が存在しており、この先もWBOのフェザー級やWBCのウェルター級とミドル級などで暫定王座決定戦が予定されている。増加傾向に拍車がかかっている感がある。

 ヘビー級やクルーザー級などで王座統一が進む一方で、無意味な暫定王座を頻発するという矛盾。この状況に歯止めをかけないと、ボクシングの将来そのものが危うくなってしまうのではないかと危惧している。

大相撲裏話

御嶽海の今年の1字「魅」を物語った九州場所千秋楽

九州場所の千秋楽で高安を下した御嶽海(右)(2018年11月25日撮影)

今年の漢字が「災」に決まった。関脇御嶽海(25=出羽海)に「今年の1字」を聞くと、10秒近く熟慮して「『魅』ですかね」と答えた。「今年は自分の魅力を存分に出せた年だったと思う。優勝も経験できたし、何も言うことないんじゃない。最後の一番とかもそうだしね」。

確かに、九州場所での千秋楽は「魅」を象徴していた。すでに負け越しが決まっている中、小結貴景勝(22=千賀ノ浦)を1差で追う大関高安(28=田子ノ浦)をすくい投げで破った。貴景勝の優勝が決まるか、優勝決定戦にもつれるか、そんな一番で1分近いせめぎ合いを制した。「最後の最後に、来年につながる相撲を取れて良かった」。満員の福岡国際センターを魅了させ、表情を和らげた。

今年は世間の厳しい目にさらされ、神経質になる部分があったかもしれない。名古屋場所では初日から11連勝と快進撃を続け、13勝で初優勝。周囲からは否応なく、秋場所での大関とりの期待が高まった。「(大関とり)は気にしていない」と繰り返したが、朝稽古では取材に応じず、付け人を通して記者にコメントを伝えることもあった。

取組では「御嶽海」と書かれたタオルが会場を埋め尽くす人気者。7月の七夕の短冊には「イケメンになりたい」と書くなど、土俵外でもファンを喜ばせる。九州場所の千秋楽を終え、支度部屋で見せた表情は気負いとは無縁だった。九州場所を制した貴景勝とは、初場所の番付で東西の関脇として肩を並べそうだ。18年の最後は話題をさらわれたが、19年はどちらが若手の筆頭と呼ばれるのだろうか。はたまた新鋭が出てくるのか。いずれにせよ、土俵外の暗い話題を拭い去る活躍に期待したい。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

3階級制覇か大番狂わせか NYのリングに熱視線

今年9月、39戦無敗だったWBA、WBC世界ミドル級王者のゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)を僅差判定で破って戴冠を果たしたサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)が15日(日本時間16日)、米国ニューヨークで1階級上のWBA世界スーパーミドル級王者、ロッキー・フィールディング(31=英国)に挑む。11年と16年にスーパーウエルター級王者になっているアルバレスにとっては3階級制覇を狙っての挑戦となる。大方の予想は「アルバレスのKO勝ち」だが、体格で大きく勝るフィールディングは「スーパーミドル級は私の階級だ」と強気だ。

アルバレスは身長173センチ、リーチ179センチで、72・5キロが体重リミットのミドル級でも小柄な部類に入る。その分、胸板は厚く耐久力もあるが、身長183センチ、リーチ184センチの前WBA王者、村田諒太(32=帝拳)らと比較しても体格面での不利は否めない。以前は70キロ弱のスーパーウエルター級が主戦場だったほどだ。それでも最近の3戦は74・3キロ、72・5キロ、72・3キロと72キロを超す体重で戦い、馴染んできた印象が強い。

こうしたなか9月にはゴロフキンに競り勝ち、ミドル級で2度目の戴冠を果たした。1年前の初戦ではゴロフキンの馬力に押され気味だったが、再戦では体力負けすることなく戦い抜き、自信を深めた様子だ。戴冠後、アルバレスはDAZN(ダゾーン)と「5年間に11試合、合計3億6500万ドル(約412億円)」という“驚額”の契約を結んだ。いま最も稼ぐプロボクサーといってもいいだろう。その初戦として今回のフィールディング戦が組まれたことになる。

今回の試合は、ゴロフキンにも勝ち戦績を53戦50勝(34KO)1敗2分に伸ばしたアルバレスが圧倒的有利とみられているが、これはフィールディングが世界王者でありながら知名度が低いためともいえる。身長185センチ、リーチ190センチと大柄なフィールディングは今年7月にドイツで戴冠を果たしたが、それまでは英国外で戦ったことがなかった。もちろん今回が初の米国のリングとなる。戦績は28戦27勝(15KO)1敗と高い勝率を誇るが、唯一の敗北が3度のダウンを喫して1回TKO負けで、耐久力に課題を抱えている。それでもアルバレス戦の打診を受けた際は迷わず「イエス」の返事をしたという。相手は世界的なスター選手だが、フィールディングは「彼が優れたボクサーであることは認めるが、ミドル級よりも4キロ重いスーパーミドル級では私の方が強い」と自信をみせる。長い左ジャブで突き放しておき、それをかいくぐって相手が懐に入ってきたところを得意の左右アッパーで迎え撃つつもりだ。

だが、オッズは14対1で挑戦者のミドル級王者有利と出ている。アルバレスが左右に動きながら揺さぶりをかけて飛び込み、ボディと顔面に強打を打ち分けて攻め落としてしまうとみられているのだ。

アルバレスが超大型契約の初戦を華々しく飾るのか、それともフィールディングが大番狂わせを起こすのか。15日(日本時間16日)、ニューヨークのリングに要注目だ。

リングにかける男たち

那須川、メイウェザー戦はボクシング転向への試金石?

メイウェザー(左)と那須川天心(2018年11月5日撮影)

今年も年末は格闘技イベントが花盛りだ。15年に始まったRIZINは総合格闘技が主体だが、キックボクシングも女子もある。今年は異色のカードが組まれた。当初は平成最後の異種格闘技戦と銘打たれたが、異種格闘技者の対戦へと変わった。神童といわれるキックボクサー那須川天心が、世界が認める5階級制覇ボクサーのフロイド・メイウェザーに挑む。

注目はルールだったが、基本はボクシング・ルールで体重差のある3回制となった。非公式試合。実質エキシビションになった。ガッカリしたファンも多いが、端から予想していたファンも多い。来年にはマニー・パッキャオと再戦も浮上している中、メイウェザーには小遣い稼ぎか!?

一方の那須川は世界に名を売るチャンスと意欲満々だ。将来ボクシングに転向するプランがある。すでに「世界王者になれる」という評価もあるが、その技量を図るには願ってもない試合にもなる。

5歳で極真空手を始め、小6でキックボクシングに転向し、15歳で14年にプロデビューした。父弘幸さんとの二人三脚だが、中3からはボクシングの帝拳ジムにも通っていた。「パンチを教えてほしい」と、知人を通じて葛西トレーナーに依頼があったのがきっかけだった。

15年にWBC世界ライトフライ級王者になった木村と、世界戦前にスパーリングしたことがあった。2階級上の体格、木村の減量や疲労はあったが、高校生だった那須川が互角以上だったという。「パンチ力があり、距離感もよく、急所への当て勘がいい。頭も柔軟でのみ込みが早い。目がいいから防御も抜群」と絶賛する。

葛西トレーナーは1年前から、東京・用賀にフィットネスボクシングジム「GLOVES」を開いた。プロ育成ではなく、一般会員に「楽しみながら、食べながら、締まった体作り」を教えている。その合間を縫って、那須川にも月に数度指導を続けている。

那須川には「ポテンシャルは負けていないが、ボクシングルールであり、階級も全然違う。それも相手は黒人選手。なめたらだめ」と話しているそうだ。現役時代に経験した、想像以上だった黒人特有のバネなどの身体能力を警戒する。作戦を聞くと「打たせないことが第一で終盤勝負」と言った。

異種格闘技戦と言えば、猪木とアリが代名詞といえる。ただし、試合内容は茶番と酷評された。状況はだいぶ違うが、今度はどんなファイトになるのか。何しろ、あのメイウェザーが日本でリングに上がるだけでも、見ものには違いない。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

非日常が日常にある相撲界「そんな簡単にはなあ…」

車で部屋に戻った貴ノ岩(2018年12月6日撮影)

1年前と違う平和な九州場所が終わったと思ったら、貴ノ岩が付け人を殴った。1年前に殴られた人が、殴った。たまげた。でも、驚きは結構早く冷めて「まあそんな簡単にはなあ…」と思った。

先日、大阪市立大大学院生ボクサー坂本真宏(27=六島)の世界戦発表会見を取材した。「陽極酸化チタン中空シートの水熱法によるチッ素ドープ」という、三十数年前、くしくも大阪市立大に落ちた(工学部でなく文学部でしたが…)私なんぞでは理解できん修士論文を手がける“理系男子”だ。そんな彼に半年ほど前、聞いたことがある。

「キミみたいな子が、何でボクシングなん?」

「う~ん…」としばらく考えて「非日常にひかれたって言うたらいいんですかね。人と人が殴り合うって、普通ないでしょ?」

原始的な欲求やなあ、と思った。同時にやっぱりそうか、とも思った。荒っぽく言えば、ケンカが強いか、弱いか。“雄の本能”と言うてもええでしょう。

さて、相撲の稽古を見たことあります? 四股、すり足、てっぽうにはじまり、相撲をとる申し合いをばんばんやって、締めが相手の胸にバシンと当たって、押し込むぶつかり稽古。部屋によって多少の違いはあるけど、まあえげつない、厳しい。序ノ口、序二段、三段目、幕下と番付を上げて、給料がもらえる十両、幕内の関取になるには、強くなるには耐え抜かんといかん。相手を力ずくで負かす力をつけんといかん。力で成り上がってなんぼの世界は、まさに非日常です。

一般社会ですら、暴力反対、体罰禁止の意識が定着するのには、長い時間を要しました。私が中学生やった40年程前なんか、まだ全盛期。野球部ではケツバットやビンタは日常の風景やった。担任の先生には、クラスの人数分、40枚以上を丸めた“ざらばん紙”で横っ面を張り飛ばされたこともある。ただ、格好つける訳やないですが「悪いことしてんから…」と思える時は納得してた。当たり前と思ってました。

相撲界なら、なおさらでしょう。肉体的痛み、苦痛に慣れきった人の集まりです。非日常が日常にある世界です。「手を出すまでのハードル」が世間より低いのは、ある意味で当然のように思います。誤解を恐れずに言えば、それが体罰であるなら「まああかんねんけど…」程度の行為やったはずです。

暴力、体罰って何なのか? 自分がされたら嫌なことを他人にしない。人の尊厳を傷つけない。協会も、力士も、とにかく1人1人がそこを心底理解して、心掛けんと、事件はきっとまた起こる。相撲界が暴力と決別する日が来ることを願いながらも、心底難しい問題やなあとも思う、今日この頃です。【加藤裕一】

原功「BOX!」

ペドラサと決戦「ハイテク」ロマチェンコに死角は?

現在のプロボクシング界で17階級を通じて最も高い評価を受けているボクサー、WBA世界ライト級王者、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)が8日(日本時間9日)、米国ニューヨークでWBO同級王者のホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ)と王座統一戦を行う。今年5月、ホルヘ・リナレス(33=帝拳)にダウンを喫しながら10回に倒し返してTKO勝ち、3階級制覇を成し遂げた天才サウスポーと、「スナイパー(狙撃手)」のニックネームを持つ2階級制覇王者のペドラサ。圧倒的にロマチェンコ有利とみられているカードだが、はたして予想どおりの展開と結果になるのだろうか。

ロマチェンコは08年北京オリンピック(五輪)と12年ロンドン五輪を連覇したほか世界選手権でも2度優勝するなど、アマチュアで397戦396勝1敗という信じがたい戦績を残している。「デビュー戦で世界戦を組んでほしい」とプロモーターに懇願してプロに転向を果たしたのは13年10月のことだった。ロマチェンコの願いは2戦目で実現したが、そのときは体重超過の相手を警戒しすぎて前半をセーブしたのが響き小差の12回判定で敗れた。3戦目でWBO世界フェザー級王座を獲得すると、以後は手がつけられないほどの強さ、巧さを見せつけている。16年に獲得したWBOスーパーフェザー級王座は4度防衛。興味深いのは4人全員が途中でギブアップしている点だ。「ハイテク(高性能)」と呼ばれるロマチェンコの俊敏な動きとハンドスピード、スキルに翻弄され、戦闘意欲を喪失してしまったのである。こうしたことからスペイン語の「ノー・マス(もうイヤだ)」をもじって「ノー・マスチェンコ」などと呼ばれてもいる。

パンチ力がないのかといえばそうではない。5月のリナレス戦では10回にタイミングのいい左ボディブロー一撃で試合を終わらせているし、過去には豪快に倒した試合もある。戦績は12戦11勝(9KO)1敗で、目下8連続KO中だ。

これに対しペドラサもアマチュア時代には08年北京五輪に出場したことがあり(ライト級2回戦敗退)、09年の世界選手権では準優勝を収めている。プロ転向後4年目の15年にはIBF世界スーパーフェザー級王座を獲得し、2度の防衛もこなしている。V3戦で敗れたあとはビジネス・パートナーを変え、階級もアップ。減量苦から解放され、今年8月に12回判定勝ちで現王座を獲得した。ペドラサは戦いながら構えを左右にチェンジするスイッチ・ヒッターで、長距離でも中間距離でも戦え、さらに必要に迫られれば接近戦もこなせる器用なタイプだ。26戦25勝(12KO)1敗とKO率は5割に満たないが、4カ月前の戴冠試合では勝負どころの11回に絶妙な左アッパーでダウンを奪っている。数字以上にパンチ力があるとみた方がよさそうだ。

世界王者同士の統一戦だが、12対1でロマチェンコ有利という一方的なオッズが出ている。高いレベルの相手と戦いながら最上の結果を出し続けているロマチェンコに対する評価は、いまや揺るぎないものといっていいだろう。今回も素早く動いて相手のサイドにまわりこみながら多彩なコンビネーションで翻弄、中盤あたりでストップするだろうという見方が大勢を占めている。

ただ、不安もある。5月のリナレス戦で右肩を痛め、手術してから臨む初の試合でもあるからだ。これが肉体的、あるいは心理面で影響を及ぼすようならば番狂わせも考えられる。また、ロマチェンコはリナレス戦でアマ、プロを通じて初のダウンを喫しており、ライト級での体格、耐久力という点で壁にぶつかる可能性もある。

「ハイテク」が異次元の強さを見せつけるのか、それとも「スナイパー」が意外な一撃で撃ち落とすのか。興味深いカードだ。

リングにかける男たち

資金潤沢17億人視聴可能なONEはまさに黒船団体

8月23日、都内のホテルで開催されたONEチャンピオンシップの公式会見

2018年も残り1カ月弱。日本の格闘技界では、大みそかのRIZIN14大会(さいたまスーパーアリーナ)で50戦全勝のボクシング元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(米国)と33連勝中のキックボクシング界の「神童」那須川天心(TARGET/Cygames)によるエキシビションマッチが大きな話題となっている。

那須川に加え、元UFCファイターでRIZINバンタム級GP覇者堀口恭司(アメリカン・トップチーム)の強さも認知度を増し日本の総合格闘技(MMA)が再び盛り上がりをみせつつある。そして年が明けると、日本にはアジアの「黒船」が“襲来”する。その名もONEチャンピオンシップだ。

今年8月、都内のホテルでONEチャンピオンシップのチャトリ・シットヨートンCEOらが会見。来年から日本でイベント開催することを発表した。3月31日、10月11日、いずれも午後7時から東京・両国国技館。初上陸の2019年に、いきなり2大会が開かれる。同CEOは「日本には豊かな総合格闘技の文化と歴史があります。ONEチャンピオンシップは、その真の総合格闘技の体験をアジアの心の奥深くまでファンのみなさまにお届けしたいです。われわれの使命は志が高いです。総合格闘技界のスーパーヒーローを、情熱と希望にあふれたワールドクラスのアスリートを世界に解き放ちたいのです」と宣言した。

同団体にはDREAMの元ライト級王者青木真也、元バンタム級王者ビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)が参戦し、ONEベルトを獲得。今年は11回というUFC最長防衛記録を保持する元UFCフライ級王者デミトリアス・ジョンソンや元UFCライト級王者エディ・アルバレス(ともに米国)と契約。先月にはDREAM、UFCで活躍した43歳の秋山成勲の参戦も発表された。

アジア経済の中心といわれるシンガポールが拠点なのもONEチャンピオンシップの強み。2年前、同国政府系投資会社から1000億円規模の資金が投入されたとの報道があった。既にFOXスポーツ・アジアで中継され、国内ではAbema TVと20大会以上の中継契約を結んだ。チャトリCEOによれば、世界136カ国で約17億人が視聴可能という状況にある。資金調達、大会中継ネットワークという「インフラ」もそろえつつ、日本に乗り込んでくる。

10月6日、タイで開催したONEチャンピオンシップ興行では総合格闘技、キックボクシング、そしてボクシング世界戦となるWBC世界スーパーフライ級王者シーサケット(タイ)の防衛戦を一緒に組み込んだ異色のイベントも実現させた。日本のプロボクシング関係者もアジア視察した際、総合格闘技の隆盛ぶりに驚いたという。日本格闘技界の関係者には脅威になるかもしれないが、ファンには刺激的なアジアの「黒船」。平成最後にやってくるONEチャンピオンシップの動きに注目している。

【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

ONEチャンピオンシップのチャトリCEO(右)とのツーショット写真をインスタに掲載した秋山成勲
ONEチャンピオンシップのロゴ
大相撲裏話

偉ぶらずまじめでユニーク 19年波乱の男だ松鳳山

大相撲九州場所6日目 琴奨菊を上手ひねりで破る松鳳山

今、最も観客を沸かせる力士は、松鳳山(34=二所ノ関)だろう。11月の九州場所は西前頭7枚目で10勝5敗の好成績。中でも、個人的に最も印象に残ったのが6日目、東前頭9枚目の琴奨菊との一番だ。ともに福岡県出身のご当所。さらには、ともにあと2カ月ほどで35歳となる同級生で、初対決は19年前の高校1年時という関係だけに、気合が入るのも当然だ。立ち合いから攻勢に出たのは松鳳山だった。一気に土俵際まで押し込んだが、琴奨菊に粘られ、押し戻された。ならばと再び土俵際まで寄るが、まだまだ決着はつかず。逆に琴奨菊の反撃にあったが、今度は松鳳山がこらえる。休むことなく1分半近くも攻防が続いた熱戦を、最後は松鳳山が上手ひねりを決めて決着をつけた。

松鳳山にとって、九州場所での琴奨菊戦は5度目で初白星となった。通算では7勝14敗となった。幕内前半戦の最後の取組とあって、水をつけて支度部屋に戻るまでに時間は空いていた。それでも肩で息をしていた。風呂から出てきても、まだ呼吸は整わない。それほど力の入った一番。「本当にきつかった。3番ぐらい相撲を取ったような感じ。終わった後に座りたかった。でも、よく我慢して相撲を取れたと思う。負けてたら地獄の苦しみだった」と笑って振り返った。ベテランが無我夢中で取る姿はすがすがしい。観衆が拍手喝采、大盛り上がりだったのは言うまでもなかった。

ある相撲協会幹部は、この一番を振り返り「全盛期だったら、松鳳山が立ち合いから一気に持っていっていたかもしれない。それは琴奨菊にも言えること。全盛期だったら、残した後に寄り切るだけの力があったと思う。互いに1番よかった時よりも、力が少しずつ落ちていることで、結果的には名勝負が生まれた。相撲というのは分からんもんだね」と話していた。パワーだけに頼りがちな20代とは違い、技術や駆け引き、心理戦-。あらゆるものを駆使して、白星への道筋を探っていく。一方で、松鳳山は「余計なことを考えなかったのがよかった」と、琴奨菊戦の勝因を挙げてもいる。いざとなったら後先考えず、前に進み続ける相撲っぷりの良さも、観客を引きつけてやまない。

そんな相撲内容の良さに審判部も期待を込めて、千秋楽は結び前で大関栃ノ心戦を組まれた。その期待に応え、九州場所の優勝を左右する高安-御嶽海戦の直前に、またまた会場を沸かせた。怪力大関を相手に素早い動きで2度も背後を取って、まず歓声。それでも、強引に押しつぶされて敗れたかに見えたが、立ち合い直後に審判から「待った」がかかっていた。命拾いした格好で再び歓声。次は行司が「待った」をかけ、3度目の立ち合いの時には、大きく肩で息をしていた。その3度目も寄り切られたかに見えたが、物言いの末、その前に栃ノ心の右足が土俵を割っていた。2度も命拾いした格好の松鳳山を、最後は大歓声が包み込んだ。

現役力士では屈指のこわもてで、一見すると親しみやすさとはほど遠い。だが取組後の支度部屋では、勝っても負けても常に、松鳳山は多くの報道陣に囲まれる。ユニークな人柄は、多くの人を引きつける。何よりも、部屋では午前6時台には稽古を始め、巡業では申し合いのスタイルで稽古していた夏巡業までは必ず、錦木とともに幕内力士の中で最初に土俵に立つ、まじめな姿勢を貫いている。その錦木とは7歳も違い、自身は大卒、錦木は中卒で角界入りしたが「同期」と呼ぶ。常に偉ぶるようなこともない。来年1月の初場所では再び、上位総当たりとなる地位まで番付を上げると予想される。その中でも松鳳山が観衆を沸かせるようなことになれば-。ベテランが2019年最初の場所で、波乱を演出する可能性は十分だ。

【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲九州場所6日目  栃ノ心対松鳳山は取り直しとなる
原功「BOX!」

注目米英対決!強打ワイルダーか技巧派フューリーか

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ、王者デオンタイ・ワイルダー(33=米)対挑戦者で元WBA、IBF、WBO3団体統一王者タイソン・フューリー(30=英)の12回戦が12月1日(日本時間2日)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われる。7連続KO防衛を含む40戦全勝(39KO)のワイルダー、身長206センチ、体重117キロのフューリー。注目の米英対決を制するのは-。

27戦全勝(19KO)のフューリーは前回で紹介ように構えを左右にチェンジしながら戦うスイッチ・ヒッターで、のらりくらりと相手の打ち気を逸らす頭脳派でもある。

これに対し身長201センチ、体重97キロ~103キロと細身のワイルダーは戦績が示すとおりのスラッガーで、特に狙い撃つ右ストレートの破壊力はすさまじいものがある。

このワイルダーはもともと高校時代にはバスケットボールやフットボールの選手だったが、恋人との間に生まれた難病の娘の治療費を稼ぐためにボクシングに転向した経緯がある。19歳のときのことだ。競技を始めて3年で08年北京オリンピック(五輪)に出場し、91キロ以下のヘビー級で3位に食い込んだ。35戦30勝5敗のアマチュア戦績と五輪の銅メダルを手土産にプロに転向した。

陣営が慎重なマッチメークを施したこともありワイルダーは次から次に対戦相手をキャンバスに沈め、その数は6年間に32人を数えた。しかも、すべて4ラウンド以内だった。

世界ランキングも上昇したが、「スタミナや打たれ強さは試されていない」という声が多かったのも事実だ。

15年1月、ワイルダーは初の世界挑戦でバーマイン・スティバーン(ハイチ)を12回判定で下してWBC王座を獲得。連続KOは32で止まったが、それ以上のものを手に入れた。当時、ヘビー級で米国勢は8年間に世界戦20連敗中だったこともあり、ワイルダーに対する期待は大きいものがあった。その後は再び倒しまくり、目下7連続KO防衛と自信を増している。戴冠前と異なるのは8ラウンド以上を戦って仕留めた試合が5度もある点だ。特に今年3月のルイス・オルティス(39=キューバ)戦では苦境を乗り切って10回TKO勝ちを収めており、スタミナも耐久力も十分にあることを証明している。

今回のフューリー戦をクリアすれば、いよいよWBA、IBF、WBO3団体統一王者のアンソニー・ジョシュア(29=英)との頂上決戦が現実味を帯びてくる。そのためにも勝利はもちろんのこと、次に繋がる内容も求められることになる。

オッズは3対2でワイルダー有利と出ているが、9度目となる世界戦のなかでは最も接近した数字だ。ワイルダーの強打が元王者を射抜くと予想する識者やファンがいる一方、狡猾なフューリーがスキルを生かしてワイルダーの持ち味を封じてしまうのでは、という見方もある。王者陣営も十分に警戒の色を見せているが、対策も十分に練っている様子だ。

ワイルダーと長年のコンビを組んでいるジェイ・ディーズ・トレーナーは「フューリーはルービックキューブみたいな多面性のあるボクシング・スタイルで、攻略するのは簡単ではない。でも、ルービックキューブは解けるからね」と愛弟子の勝利を確信している。

KO率98パーセントのワイルダーの強打が挑戦者の急所を打ち抜くのか、それとも超大型の変則技巧派、フューリーがスキルで翻弄するのか。全勝同士のヘビー級米英対決に注目したい。

リングにかける男たち

元王者石本さん、弟子のやる気引き出すトレーナーに

石本さん(中)は勝利を飾った愛弟子を祝う。山田(左)と小林

1月の現役引退から10カ月、久々にかいだ後楽園ホールの匂いに、緊張感と責任感が自然と芽生えたという。元日本スーパーバンタム級王者石本康隆さん(36)が11月22日、ボクシングの「聖地」に戻ってきた。手に持っていたのは、グローブではなくタオル。この日がトレーナーとしての「デビュー戦」だった。

リングの下から、初めての教え子たちの奮闘を見守った。「ナイスジャブ!」。その指示の声は大きすぎて、関係者にたしなめられる場面もあったが、指導半年の2人の弟子たち、デビュー戦だった小林柾貴(19)と、プロ5戦目だった山田大(28)は両者ともフルマークの判定勝ちを飾った。

春先、名門帝拳ジムで魂こもるファイトを続け、世界戦まであと1歩に迫った努力の男は、新たなステージに身を移した。「やっぱり、ボクシングに携わる仕事がしたくて」と知人を介して紹介された元東洋太平洋フェザー級王者今岡武雄さんが会長を務めるイマオカジムでトレーナーとなった。

プロ2選手を教えながら、一般会員の練習も担当。昼の12時から夜の12時まで、腕にはめたミットに何百発というパンチを受けながら、少しでも向上してほしいと試行錯誤。「言われたこと、教わったことの良い部分は伝えて、自分ではうまくいかなかったことはさせない」。

帝拳ジムでは、数多くの世界王者を担当してきた田中繊大トレーナーが長くパートナーだった。「いまだからですね、よく『選手をやる気にさせるのがトレーナーの仕事』と言っていたことが分かる」という。

技術伝授よりも、まずは練習に試合に向き合う気持ちをどう作るか。例えば、練習後にメールを送る。そんなまめな作業も大事にする。かっとなりがちで声が聞こえなくなる小林には「頼むから俺の言うことを聞いてくれ」と懇願しながら、それが押しつけがましくなく、小林自身も師匠を横にニヤッとするのは、石本さんの性格のなせる技だろう。「メールの内容ですか? 『俺の言うことを聞いてくれ』です」と披露すると、2人で苦笑した。

プロでの成績は、31勝(9KO)9敗だった。13年に元世界王者ウィルフレド・バスケス・ジュニアを破り、世界ランクを駆け上がると、14年5月にはIBFスーパーバンタム級挑戦者決定戦へ。敗れはしたがその闘志は消えず、15年に同級日本王座をつかんだ。

ベテランの立場となっても衰えぬ練習量と真摯(しんし)な姿勢に、後輩たちの人望も厚かった。苦労をしたからこそ、教え子が苦境に直面した時も、さしのべる手はあるだろう。

「2人には、ここにまた連れてきてくれて感謝したい。僕を信じてくれて」

殊勝な言葉がまた、その性格を表していた。【阿部健吾】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

現役時代の石本康隆さん(2016年10月1日撮影)
大相撲裏話

幟(のぼり)は関取の勲章

福岡国際センター前に林立する幟(撮影・加藤裕一)

福岡国際センター周辺には「○○関江」などと書かれた多くの幟(のぼり)がはためく。安全面等を考慮、会場周辺に立てられるのは1人(1部屋)1本限りで、関取には“勲章”だ。

作るのは日本相撲協会が承認した業者で、その1つ、慶応2年(1866年)創業の太田旗店(本社・大分市)によると「相撲幟」は後援会、企業や個人から各部屋、関取、行司、床山、呼出らへの贈答品だ。担当者は「昔から決まった型があり、そこに注文を受けた名前を入れます」。幅90センチ×縦540センチの布地に、熟練の職人が約3週間、刷毛染(はけぞめ)という手作業で仕上げる。縁起物だから、1場所ごとに新品に替わる。

関取3場所目で連日場内を沸かせる十両炎鵬(24=宮城野)にも今場所、部屋の後援会による幟が立った。「そうなんですか? どなたからです? 初めてじゃないかな」と喜んだ。

お値段は-。実は意外とお手頃で、相場が1枚数万円らしい。しかも「個人で楽しむ分には、ひいきの関取名でお作りできると思います」(同社担当者)。熱心なファンならレプリカ感覚で…と思ったが、過去に“個人注文”はないとか。何せ5メートル以上だ。いかに酔狂な人でも、そこまではしないか。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

「最重量力士」となった250キロ謙豊は愛嬌抜群

新最重量力士の序二段謙豊

角界で最も重い力士は? 歴代最重量は292・6キロの元大露羅のミハハノフ・アナトーリ・ワレリリエチェ氏(35)だが、引退して勢力図が変わった。新たに「最重量力士」の称号を手にしたのは、歴代4位の250キロ、西序二段60枚目謙豊(29=時津風)だ。「ついに1位になりましたか。わははっ。ちょっとうれしい」。その効果なのか、今場所は1番相撲から無傷の6連勝と絶好調だ。

ワレリリエチェ氏とはすれ違えば談笑する仲だった。同じようなシルエットに親近感がわいたのか、引退前には浴衣を譲ってくれた。「今まで同じサイズの人がいなかったので、お下がりは人生初でした」とうれしそうに話した。

今の体形は「不自由しかない」と爆笑する。移動は全てタクシー。好物のうどんは1日多くて3玉と、他の力士と比べて多いわけじゃない。太るコツは「動かないこと」だという。

7年前に210キロで入門。1年足らずで幕下まで昇進したが、重さに耐えかねたのか左膝前十字靱帯(じんたい)が切れた。その後は5場所に1回休場するペース。今年の7月は蜂窩(ほうか)織炎で3カ月入院し「死ぬ手前だったらしいです」と豪快に笑い飛ばした。綱渡りの力士人生を歩むが、口調はどこまでも明るかった。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

18日、琴真鍋(左)を激しく攻める謙豊
大相撲裏話

振分親方、予約忘れず無事に高砂一門会

振分親方(2018年11月15日撮影)

八角理事長(元横綱北勝海)らが所属する、高砂一門の一門会が9日目の打ち出し後、福岡市内で2年ぶりに開催された。振分親方(42=元小結高見盛)の謝罪で始まった会だったが、参加者は終始笑顔で、和やかに行われた。謝罪の理由は、2年ぶりの開催となったため。毎年の恒例行事だが、昨年は幹事の振分親方が店の予約を忘れていた。

一夜明けた20日、振分親方は「去年のことをわびましたよ。みんな笑ってました。私の不注意です。今後、2度とないようにしたい。本当に気を付けます」と頭をかいた。昨年は元横綱日馬富士による暴力事件発覚から1週間足らずで、世間を騒がせていた時期。さらに2年ごとの役員候補選挙も控え、一門の親方衆が集まる貴重な会合の場の予約を忘れるという、イメージ通りのおっちょこちょいぶりで消滅させていた。

それでも昨年も今年も、笑って許されてしまうのは振分親方ならではだ。九州場所9日目という日程も店も、ずっと変わっていないため、今年の予約は早々と9月には取っていた。それを説明すると、また爆笑。どちらに転んでも周囲を笑顔にする。その才能に関しては、横綱級であることは間違いない。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

帰ってきたフューリー 王者ワイルダーと注目の一戦

12月1日(日本時間2日)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われるWBC世界ヘビー級タイトルマッチが注目を集めている。ここまで7連続KO防衛を果たしている王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)が40戦全勝(39KO)、挑戦者の元WBA、IBF、WBO3団体統一王者、タイソン・フューリー(30=英)は27戦全勝(19KO)。敗北を知らない者同士の米英対決だ。しかもワイルダーが身長201センチ/リーチ211センチ、フューリーは206センチ/216センチという超大型同士のカードなのである。

ヘビー級は3年前までウラジミール・クリチコ(ウクライナ)の独占状態だった。WBA、IBF、WBO3団体王座に君臨し、9年間に18度の防衛を果たしていた。その政権に終止符を打ったのが、当時27歳のフューリーだった。15年11月、クリチコに判定勝ちを収めて3団体王座を引き継いだのだ。

ところがフューリーは戴冠直後にIBF王座を放棄。クリチコとの再戦が決まったあとは延期を繰り返し、あげくはドーピング違反やアルコール依存のため引退してしまった。

こうしたなか15年1月にWBC王者になっていたワイルダーは着々と防衛回数を伸ばし、IBFではアンソニー・ジョシュア(29=英)が王座を獲得(16年4月)。さらにジョシュアはWBAスーパー王座とWBO王座も手に入れた。18年になると、このふたりの頂上決戦が期待される状況になり、一時は年内に実現かと噂されたが、先送りになっている。

そこに割り込もうと再浮上してきたのがフューリーだ。2年半のブランク後、トレーナー、マネージャー、プロモーターを一新して今年6月に4回終了TKO勝ちでカムバック。8月には元世界ランカーに10回判定勝ちを収め、世界戦線に戻ってきた。そして、ジョシュア対ワイルダーがビジネス上の駆け引きで先延ばしになっているなか、WBC王座への挑戦にこぎ着けた経緯がある。

このフューリー、いまでこそ体重は117キロ(8月の試合時)あるが、生まれたときは450グラムだった。予定日よりも2カ月半早い出産だったのだという。マイク・タイソン(米)が世界ヘビー級王者として活躍しているころだったため、強く元気に育ってほしいという願いを込めて父親のジョン・フューリーが「タイソン」と命名したというエピソードがある。

アマチュアを経て08年12月にプロ転向を果たしたフューリーは、英国王座や英連邦王座、欧州王座などを獲得後、3年前にクリチコを下して世界のトップにまで上り詰めた。

大きな体に似合わず足をつかいながら距離と角度を変えて戦ううえ、構えを左右にスイッチする器用さを備えている。パワーは平均の域を出ないが、戦い方は頭脳的だ。今回、米国のリングが2度目となるフューリーは、ベストのコンディションに仕上げるため8週間前から米国西部でトレーニングを続けてきた。

「ワイルダーにパワーがあるのは分かっている。でもパンチが当たらなければ役に立たないだろ。動いて空振りさせるよ」。王座返り咲きに向けフューリーは揺るぎない自信をみせている。

大相撲裏話

尾上親方の長男・浜洲、病乗り越え親子2代関取へ

新序出世披露した浜洲(撮影・鈴木正人)

りりしい眉と柔和な笑顔が、現役時代の父と重なる。180センチに満たない体で観客を沸かせた尾上親方(元小結浜ノ嶋)の長男、浜洲(本名・浜洲泉啓、17=尾上)が今場所の新弟子検査に合格。18日の新序出世披露を経て、来場所は番付にしこ名が載る。

目標は「父超え」だ。元関取を父に持つ現役力士は、新弟子の浜洲と元幕内常の山の息子、下村(18=境川)が加わり9人。2代で関取になった親子は現役では平幕の佐田の海のみ。歴代でも9組と険しい道だ。

病気に悩まされた高校時代だった。埼玉栄高で相撲を始めたが、1年生の時に髄膜炎を発症。頭痛や首の硬直に伴う歩行困難で、3年間で稽古はまともにできなかった。公式戦出場は1回のみ。それでも「かっこいい父にあこがれているから」と、角界入りへ決意は固まっていた。

幼い頃から、部屋付き親方として若い衆を指導する父を見てきた。「間近で厳しい世界を見てきたはず」と尾上親方。だからこそ、角界入りを決意した息子に覚悟を感じた。「いつか『浜ノ嶋』を襲名したい」と語る浜洲に対して「厳しく指導して大きく育てたい」と父。

親子の挑戦が始まった。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

リングにかける男たち

メイウェザー側に“本気”ないなら無理にやっても…

フロイド・メイウェザー(左)と那須川天心(2018年11月5日撮影)

大みそかにRIZIN14大会(さいたまスーパーアリーナ)で行われるボクシング世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(41=米国)とキックボクシングの“神童”那須川天心(20)の試合が気になる。というか、とても不安です。状況を直接取材していないから、あくまで感覚的なものですが。

11月5日に対戦が発表されて「ほんまか?」と驚いた。ワクワクした。ところが、8日にメイウェザーが話が違う、と中止をにおわせた瞬間に「おいおい…」と首をかしげ、渡米して再交渉に当たった榊原伸行実行委員長の説明を聞いて「あれ~?」と暗い気分になりました。

榊原氏の説明は「最初からノン・オフィシャルバウト(非公式戦)として話をして…(中略)…決してスパーリングではない…(中略)…限りなくボクシングに近い打撃のみのスタンディングバウト…(中略)…KO決着あり」-。

一方でメイウェザーの説明は「エキシビション。キックなし。(那須川と)9分間(3分×3ラウンド)動き回る」-。

話がかみ合ってない。誤解を恐れず言うならば、一方は「真剣勝負」と言って、一方は「ショーみたいなもん」と言ってるようなもんです。

最近あまり使わん言葉やけど、この試合は異種格闘技戦みたいなもんですよね。異ジャンル同士のぶつかり合い。互いが「何でもあり」のルールを認めてやるなら、スッキリしたもんになる。でも、そうなるともはやそれはUFCのような総合格闘技。拳による打撃のみのボクシング、拳とキックのキックボクシングといった、技術をある部分に特化したジャンルのトップ同士が戦う時、両者が“すり合わせて”ちょうどええ具合のルールなんて、まずできません。それは、あの猪木VSアリ戦以降の歴史を見たら明らかでしょう。

回転胴まわし蹴りを堀口恭司(左)にヒットさせる那須川天心(2018年9月30日撮影)

やるなら、一方が腹を決めて、もう一方の土俵に上がる覚悟があって初めて、見応えのある試合が成立すると思います。9月30日、RIZIN13で実現した那須川VS堀口恭司戦がそうでした。総合格闘家の堀口が投げ、締め、グラウンドなどの技術を放棄した。そのスッキリ感に加え、キックボクシングという那須川の土俵に乗り込んで、互角に渡り合った。すごいな、総合格闘家が立ち技だけで、ここまでやれるんや-。世間がそう思ったからこそ、名勝負になったんちゃいますかね?

今回はルールの点で言えば、那須川がメイウェザーの土俵に身を投じる訳で、そこはスッキリするけれど、メイウェザーに1番肝心な“本気”がないなら、きっとグダグダ感だけが目立ってしまう。ビッグネーム同士の戦いは魅力的ですけど、イコール名勝負が約束される訳じゃないですからね。一時は冷え込んだ格闘技熱がせっかく盛り上がってきただけに、冷や水をぶっかける結末になりはしまいかと心配で、心配で…。もう無理にやらんでええんちゃうの? そう思う、今日この頃です。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

羽田空港で会見するRIZIN榊原信行実行委員長(2018年11月17日撮影)

大相撲裏話

元貴乃花親方最後の弟子貴正樹「貴の字変えません」

貴正樹(18年10月3日撮影)

「この子は強くなります。信念がただ者ではない子です」。先月1日、日本相撲協会退職が決まった元貴乃花親方(元横綱)が、自身の応援会サイト内のブログを更新。最後の弟子となる東序ノ口16枚目貴正樹(19=千賀ノ浦)を褒めた。

ブログを見た貴正樹は、困惑しながらも「うれしかった」と回顧する。師匠の言葉で印象に残っているのは「よく食べてよく寝ること」と、部屋頭の小結貴景勝と同じ回答。規則正しい生活が、成長への最大の近道だと教わってきた。

千賀ノ浦部屋での初稽古で、初めて三番稽古(同じ相手と続けて相撲を取る)を行った。3月に初土俵を踏んでから、旧貴乃花部屋での稽古は四股やすり足など基礎運動だけ。新師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は「相撲を取らずに場所に出ていたのか」と仰天した。体ができるまでは相撲を取らせないという前師匠の方針だったという。中学時代はソフトテニス部で昨年まで体重は約70キロ。師匠の教えを守り、白米をかき込んだ。数日前、体重計に乗るとメーターは120キロ近くまで揺れていた。

今場所は2勝1敗と白星が先行する。出世を続けても「貴の字は変えません」。「平成の大横綱」23人目の教え子は、力強く言い切った。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

琴奨菊、ソフトバンク内川から「日本一のバトン」

琴奨菊の勝利を喜ぶソフトバンク内川(2018年11月12日撮影)

福岡出身で地元場所の琴奨菊(34=佐渡ケ嶽)が、日本一になったプロ野球ソフトバンク内川聖一内野手(36)から刺激を受けた。2日目の12日。観戦に訪れた内川と、会場を去る前にがっちり握手を交わした。琴奨菊は「力をもらった」と感謝。内川から「日本一のバトンを渡したと思っている」と2度目の優勝を求められたという。

不定期ながら連絡を取り合う間柄だ。日本シリーズ開幕前日の10月26日。広島市内で平幕嘉風、ソフトバンク上林を交えて食事した。内川の「短期決戦は勝率5割以上が求められるけど、打率は3割で十分」という話にヒントをもらった。相撲は番付上昇に最低限勝ち越しが必要だが、野球はどんな好打者でも失敗が成功を上回る。そこから星勘定に頓着しすぎないことを学んだ。

さらに「会場の盛り上がりや演出は相撲も見習うところがある」とも言う。ヤフオクドームで行われた同月31日の日本シリーズ第4戦を一塁側で観戦し、スタメン発表の演出やイニングごとのMCは、取組ごとに間合いが空く大相撲でも参考になるという。「これからも長く付き合いたい仲だよね」。互いに刺激し合って、角界と球界を盛り上げていく。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

スペンス対ガルシア PFP10傑同士の戦い実現へ

全17階級を通じたトップボクサーの総合評価ともいえる「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で、現役10傑に名を連ねる猛者同士、IBF世界ウエルター級王者のエロール・スペンス(28=米)と、4階級制覇を成し遂げているWBC世界ライト級王者のミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)が来年2月か3月に対戦する方向で交渉が進んでいる。すでに具体的な日程や開催候補地も挙がっており、遠からず決定するものとみられている。

PFPは、選者がボクサーの実績や試合内容を評価して順位づけするため、主観性の強い比較的遊び要素の多いランキングといえる。それでも「誰が本当に強いのか」が分かりやすいため、近年、欧米のメディアが独自にトップ10を選ぶなどしてファンに幅広く浸透しつつある。米国の老舗専門誌「リング」では1位がWBAライト級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)、2位がWBOウエルター級王者のテレンス・クロフォード(31=米)、3位がミドル級のWBAスーパー王者&WBC王者、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)となっており、スペンスは9位、ガルシアは7位に名を連ねている。ちなみに「リング」では井上尚弥(大橋)が6位に入っている。

このほかESPNではスペンスが5位、ガルシアが6位、専門サイトBoxingsceneではスペンスが9位、ガルシアは3位と極めて高い評価を受けている。

9月に行われたゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)対アルバレスがそうだったように、PFP10傑同士が戦う場合、大きなイベントになることが多い。もちろんスペンス対ガルシアも注目ファイトになることは間違いない。

12年ロンドン・オリンピック(五輪)に出場したこともあるスペンスは馬力のあるサウスポーの強打者で、24戦全勝(21KO)の戦績を誇る。目下2度防衛中で、それらを含め11連続KO勝ちと勢いがある。

これに対しフェザー級、スーパーフェザー級、ライト級、スーパーライト級の4階級で戴冠を果たしているガルシアも39戦全勝(30KO)のレコードを残している。こちらは左ジャブで相手を牽制しておいて鋭い右ストレートを打ち込む正統派の強打者だ。10月までライト級のWBC王座とIBF王座を保持していたが、指名防衛戦を迫られたためIBF王座は返上している。

スペンス対ガルシアは来春に行われる可能性が高い。ふたりとも業界で大きな影響力を持つアドバイザーのアル・ヘイモン氏と契約を交わしており、交渉の壁は高くないはずだ。すでに2月16日と23日が候補に挙がっているほか、3月16日ならばテキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで開催という具体的な日程と開催地も出ている。スペンスはテキサス州に住んでおり、またメキシコ系のガルシアもテキサス州で過去に3度の世界戦を行っており、同地での開催となればイベントの成功は間違いないところといえる。

スペンスが身長177センチ/リーチ183センチ、ガルシアが168センチ/173センチと体格面で差があることもあってか、現時点でのオッズは10対3でスペンス有利と出ている。

ウエルター級にはWBO王者のクロフォードのほかWBA王座にはマニー・パッキャオ(39=比)が君臨している。さらなるビッグファイトも望めるだけに、その第一弾としてスペンス対ガルシアの実現を期待したい。

大相撲裏話

関取でも付け人 友風の思い

志摩ノ海(左)にはたき込みで勝利した友風(撮影・栗木一考)

連勝スタートを切った新十両の西十両14枚目友風(23=尾車)が、今場所も平幕の嘉風(36=尾車)の付け人を務めている。

関取昇進で付け人を卒業するケースがほとんど。4年前、新十両だった旭大星が同部屋の幕内力士の付け人を務めたが、当時の友綱部屋は関取5人を抱え若い衆が少ない事情もあった。

付け人継続は嘉風からの希望だった。友風が幕下で関取昇進を目前としている時から、十両昇進後も「できたら一緒にいてほしい」と打診されていた。日体大の先輩後輩の間柄。嘉風からは「(特別な意識は)今に始まったことじゃない」とかわいがられている。

憧れの兄弟子の誘いに友風は二つ返事で快諾した。付け人を長く務める中で、嘉風の立ち居振る舞いを間近で見て、尊敬の念は強まった。「人間的にも力士としても全てがかっこいい」と言う。今場所から嘉風と同じ薄い紫色の締め込みで、勝ち越しを目指している。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

リングにかける男たち

人生ヒップアタック越中詩郎、いまだ侍魂は衰えず

来年1月30日に後楽園ホールでデビュー40周年記念大会を開催する越中詩郎(2018年11月6日撮影)

越中詩郎(60)が元気だ。最近、レジェンドプロレス、マスターズ、さらにはさざまな団体でよく見かけるなと思っていたら、デビュー40周年記念大会を、来年1月30日に後楽園ホールで開催するという。還暦を迎えても、越中の人気は衰えを知らない。「SAMURAI」の入場曲が流れると、観客は熱狂し、ヒップアタックに沸く。何よりも、若い世代のレスラーと対戦してもひけをとらない動きに驚かされる。

越中のプロレス人生は「ヒップアタック」とともにある。その起源は、入門から約7年を過ごした全日本プロレス時代にあった。「全日本でジュニアのトーナメントがあって、1回戦で優勝候補大本命のチャボ・ゲレロと当たったんだ。こいつを驚かせてやろうと、当時ゲレロが使っていたヒップアタックをやってみたのが始まり。その試合はボコボコにやられたけどね」。

それからヒップアタックを使うようになった、得意技ではなかった。本格的に使うようになったのは、85年に移籍した新日本プロレス時代だ。「長州力や高田延彦と試合をやるようになって、やつらに『ヒップアタックなんか効かない』ってばかにされたんだ。じゃあ、10発でも20発でもやってやるって」。越中は、相手に効くまで反発もヒップアタックを繰り出すようになった。ヒップバット、ダイビングヒップアタック、ミサイルヒップアタック。あらゆる場面を考え、バリエーションを増やしたことで、相手にダメージを与える効果的な技になった。

「まさか、自分の代名詞になるとは夢にも思っていなかった」と越中は振り返る。デビュー40年で、ヘビー級のシングル王座は1つも取ったことがないが、多くの王者と熱戦を演じた名脇役として、越中の存在は大きい。おしりで相手を攻撃するという、コミカルな技も、相手の攻撃を真っ向から受け止め、やられてもやられても立ち向かっていく越中が使うことで、説得力を持つようになった。ファンはヒップアタックに越中のプロレス人生をダブらせ、大きな声援を送る。

越中は現在も毎日ランニングを欠かさない。「走るときは1日10キロは走るね。『おい、走るぞ』って猪木さんについて、道場(世田谷区上野毛)から府中まで走ったこともある。若い頃の厳しい練習のおかげで、今の自分がある」と話す。94年に反選手会同盟の流れで立ち上げた平成維震軍が、ヒップアタックとともに、越中の代名詞だ。維震軍の「震」は「プロレス界を震撼(しんかん)させる」の意味だそうだ。来年は、元号が平成から変わるが、越中は「年号が変わろうが何しようが、平成維震軍は変わらない。来年は新しいメンバーを加えて、またプロレス界を震撼(しんかん)させていきたい」と決意を語った。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

永田裕志にヒップアタックを決める越中詩郎(2007年05月02日)