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au版ニッカン★バトル

新着

大相撲裏話

皆が復活願う稀勢の里の危機に慣例よりも一致団結を

横綱稀勢の里(2018年2月4日撮影)


 横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)の夏場所休場が決まった。横綱の途中出場は考えられず、初の2場所連続全休が確実。何よりも1958年(昭33)の年6場所制以降の横綱では、貴乃花と並ぶ最長の7場所連続休場という不名誉な記録となった。休場を発表した師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)は「次は大事な場所になる」と、涙ながらに語った。次に出場する本場所では、少なからず進退を問う声が出てくる見通しだ。

 これ以上の休場も難しい雰囲気が漂い始めた。次の名古屋場所に照準を定めるとなると、7月8日の初日までは、すでに2カ月を切っている。夏場所後から始動したのでは、名古屋場所に向けて稽古が本格化する新番付発表まで、すでに1カ月を切った状態。夏場所休場の際の診断書には、左大胸筋痛で「約1カ月激しい運動を制限する」と記載されていた。だからといって、1カ月間何もしなければ、確実に名古屋場所も間に合わないだろう。その間、本場所の緊張感の中で、心身ともに研ぎ澄まされていくライバルとの差を縮めるには、今すぐにでも「激しい運動」こそ避けつつ、衰えた筋力の回復に努めるなど、できることから始めなければ、同じことを繰り返す。

 稀勢の里ほど大相撲ファンはもちろん、現役力士からも親方衆からも、復活を期待されている力士はいないだろう。猛稽古で知られた先代の故鳴戸親方(元横綱隆の里)に指導を受けていたころは「朝稽古」といいつつ、そのまま午後まで突入することもあった。ちゃんこ番では、麺類は麺を作るところから始まる。私生活も厳しく指導され、新聞に冗談として、ふざけているように受け取られるコメントが掲載されると、師匠の前で何時間も正座させられた。本人の口からそういうことを知らされることはなく、部屋の別の力士から聞き、申し訳ないことをしてしまったと猛省した記憶がある。中学卒業後すぐに入門し、どんなに厳しい環境でも不平不満を一切口にせず、耐えて忍んで謙虚に振る舞う。それでいて気は優しくて力持ち。そんな誰からも愛される要素を持つ稀勢の里が窮地に立たされ、力を貸したいと思っている関係者は多いはずだ。

 もはや後がなくなったのだから、慣例などにとらわれず、あらゆることを試してもいいと思う。例えば夏場所中であっても白鵬に胸を借りたり、同じ7場所連続休場の貴乃花親方に当時の心境など助言を求めたり、他競技のアスリートと合同トレーニングをしたり。稀勢の里の頼みなら、誰も迷惑がらず歓迎するだろう。それだけ努力の実績は認知されているのだから。横綱同士だから、場所中だから、一門が違うから、前例がないからと、これまでのしきたりに従えば、一歩を踏み出せない理由はいくらでもある。それでも今、何かをやり始めなければ、復活できないまま引退に追い込まれ、後悔するような気がしてならない。人一倍苦労してきただけに、そんな思いを抱えたまま現役生活を終えてほしくない。

 親方衆も、一門の枠を超えて助言してもいいと思う。もちろん、さまざまな意見は混乱を招きかねないが、横綱まで上り詰めたのだから、取捨選択しながら、自分に合うものを取り入れればいい。ただ、やみくもにこれまでと同じ稽古をするよりも、助言などによって新たな選択肢や刺激が加わるだけでも、浮上のきっかけになるかもしれない。現在の大相撲の大看板が危機に直面している今こそ、風通し良く、一致団結して手を差し伸べればいいと思う。普段は敵でも、巡業などでは一緒に過ごす時間も長く、大家族のようなところが大相撲の強み。その強みを最大限に生かすべき時が来たように思う。【高田文太】

リングにかける男たち

全日四天王・川田利明、現役時に寡黙キャラ貫いた訳

丸藤とトークバトルを行った川田利明(2018年4月26日撮影)


 大相撲では、現役時代に取り組み後のインタビューでひと言もしゃべらず記者泣かせの横綱、大関がいた。

 しかし、引退すると、急に笑顔で話し掛けられ驚いたことがあった。そんな話を思い出したのは、川田利明(54)のトークショーを見たからだ。

 全日本プロレス時代は、四天王と呼ばれ、故三沢光晴さん、小橋建太氏、田上明氏とともに黄金時代を築いた伝説のレスラーだ。まだ、引退はしていないが、10年を最後にプロレスはしていない。そんな川田が、再びプロレス界に戻ってきた。自身がプロデュースする大会を4月26日に、新木場1st Ringで開催したのだ。

 もちろん、プロレスはやらなかった。その代わりに、全日本の後輩、丸藤正道(38=ノア)とリングでトークショーを行った。現役時代は常に何かに怒っているような表情で、近づきがたかった。コメントもぶっきらぼうだった。しかし、三沢さんとの激闘は、プロレス史に残る名勝負だった。リング上に登場した川田は、プロレスをやる前のように屈伸運動をした。そして「控室で30分1本勝負でしゃべるなら、試合やった方が、楽じゃない? って言われたけど、オレがイヤだと断った」と笑いを誘った。

 トークショーで川田が話したのは、しゃべらないキャラクターづくりによって、川田自身がプロレスラーとして確立されたということだった。タイガーマスク(三沢)が登場して人気を博していた時代、川田は師匠の故ジャイアント馬場さんから「タイガーマスクよりすごい技をやるな」と言われたという。「何もやらなくなったときに、自分がプロレスラーとして確立できた」と話す。しゃべらないことも、その一環だった。

 「マスコミに対して話さないのは、マスコミが川田がどう(考え、行動する)だろうと考えてくれるから」と当時のダンマリを解説した。それにしても、試合後の川田は怖かった。「近づくな」オーラを出して、記者もびびっていた。そんな川田の考えが、30分1本勝負のトークショーから伝わってきた。

 全日本時代、三沢さんの付け人だった丸藤も、川田から口を聞いてもらえない1人だった。その丸藤が、川田の得意技、ステップキックの伝承を川田にお願いした。「最近、丸藤が気を使ってオレに似たようなことやってくれるんだけど、もうちょっと勉強してからにして」。川田の顔は本当にうれしそうだった。【プロレス担当 桝田朗】

大相撲裏話

ネット情報発信量が多いから「鳴戸部屋」


 鳴戸親方(元大関琴欧洲)が新序出世披露にほくそ笑んだ。鳴戸部屋には今場所、3人の新弟子が入ったが、そのうち1人が狙い通りの入り方だったからだ。相撲未経験で角界の門をたたいた欧樹は「ネットで調べたら一番情報量が多かったから」と鳴戸部屋を選んだ理由を話した。ツイッターやユーチューブで相撲界のことを調べると、鳴戸部屋が浮上。そこから関連して部屋の公式HPにつながり、新弟子募集欄から稽古見学のメールを送ったという。すると返信メールで、1日入門体験を勧められ、そこで「これならやれる」と角界入りを決意した。

 鳴戸親方いわく、昨年4月に創設した鳴戸部屋は「地元がない」状態だという。だから「うちの部屋はこんな感じ、というのを知らせている。今はネット社会だから。そこから縁がつながればいい」ともくろむ。部屋のHPの他に、部屋のツイッターと親方の個人ブログがあり、ほぼ毎日更新されている。そのかいあってか「ネットがきっかけで入門したのは初めて」と新たな道筋をつけた。さらなる部屋の拡大に向けて、今日もネットの更新にいそしむ。【佐々木隆史】

大相撲裏話

豊響 生命の危機乗り越え関取復帰目指す

豊響


 元幕内で東幕下20枚目の豊響(33=境川)が生命の危機を乗り越え、関取復帰を目指している。現在3戦全勝と、3場所ぶり勝ち越しに王手。3勝目を挙げた5日目は「久しぶりに自分らしい相撲を取れた」と立ち合いでぶちかまし、前に出る快勝に笑顔を見せた。

 1月4日の稽古中、急に発病した。師匠の境川親方(元小結両国)は「少しのことでは痛がらないのに、うずくまって動けなくなったので、ただごとではないと思った」と、すぐに救急車を呼んだ。「心室頻拍、心房細動」いわゆる不整脈だった。1週間後に退院し、一命は取り留めたが、医師から心臓にペースメーカーを埋め込むことを勧められた。それを受け入れれば引退-。1月初場所を全休して様子を見ると快方に向かい、3月春場所はぶっつけ本番で臨んで2勝5敗。稽古再開は4月中旬だった。

 実は倒れた5日後に第1子の長男太綱(たづな)くんが誕生した。里由貴夫人が帰省中の2月上旬まで、再発を懸念して部屋で集団生活。下積み時代を思い出すと同時に「名前に『太』という字があるのにガリガリってわけにはいかない」と、愛息を不自由なく食べさせる決意が芽生えた。同じく関取復帰を目指して幕下で3連勝中の豊ノ島とは「全勝同士で対決」と約束を交わした。周囲の支えに感謝し「もう1度幕内で」と誓った。【高田文太】

大相撲裏話

角界変化…エレベーターも開放

これまで国賓級の要人のみ使用されていたエレベーターを、一般にも開放したことをPRする芝田山総合企画部長(左)


 国技館の正面入り口を入り、広いエントランスを抜けたすぐ右にエレベーターが1台設置してある。これまで一般開放はされていなかった。天覧相撲時の天皇、皇后両陛下や、過去には86年に初来日した際に本場所を観覧したチャールズ皇太子ダイアナ妃夫妻らが館内を移動する時に使われてきた。協会職員によれば「国賓級の方が使える」というエレベーターが、今場所から一般開放された。

 館内には1階と2階を結ぶ階段が数カ所あるが、エスカレーターは正面入り口から入った所に上り用と下り用が1台ずつあるだけ。そのエスカレーターの幅は大人1人分と狭く、動くスピードも速いためベビーカーを押す人や年配者などから、改善を求める声が寄せられていたという。

 そこで芝田山総合企画部長(元横綱大乃国)が「時代も変わってきた。なによりも安全性が大切」と、エレベーターの一般開放に踏み切った。ただし原則的には、ベビーカーを押す人や車いすに乗っている人など補助が必要な人に限って使用が認められる。時代の流れとともに、角界も少しずつ変化しようとしている。【佐々木隆史】

原功「BOX!」

また世界戦で計量失格 今年5人目、全て世界王者経験者


 3月と4月に日本で開催された世界戦で計量失格者が出て問題になったが、5月5日に英国で行われたIBF世界バンタム級王座決定戦でもポール・バトラー(29=英)が体重超過のため戦う前に戴冠資格を失い、試合でも大敗を喫した。これで今年に入ってから世界戦での失格者は5人となった。しかも違反者全員が世界王者経験者だ。それが事態の深刻さを物語っている。

 近年、計量における体重オーバーでの失格は、日本だけではなく世界的に憂慮すべき問題となっている。それにもかかわらず相変わらず違反者があとを絶たない。今年に入ってからだけでも下記のとおり世界戦で5件発生している。

◆1月20日@米国 IBFライト級タイトル戦で挑戦者のハビエル・フォルトゥナ(28=ドミニカ共和国)が約680グラム超過 ※12回判定負け

◆3月1日@日本 WBCバンタム級タイトル戦で王者のルイス・ネリ(23=メキシコ)が約1360グラム超過 ※2回TKO勝ち

◆3月10日@米国 WBOフェザー級タイトル戦で挑戦者のスコット・クイッグ(29=英)が約1130グラム超過 ※12回判定負け

◆4月15日@日本 WBCフライ級タイトル戦で王者の比嘉大吾(22=白井・具志堅)が約900グラム超過 ※9回TKO負け

◆5月5日@英国 IBFバンタム級王座決定戦で4位のポール・バトラー(29=英)が約1360グラム超過 ※12回判定負け

 注目すべきは、計量で失格した5人すべてが世界王者経験者であることだ。つまり初めての大舞台というわけではなく、全員がそれなりに高い経験値の持ち主なのである。フォルトゥナ、クイッグに至っては下の階級から上げてきた選手なのに規定体重をつくれなかった。さらに加えるならばフォルトゥナは世界戦で2度目、ネリも昨年3月の挑戦者決定戦に続き重要な試合で2度目の失敗だった。このふたりは悪い意味でのリピーターなのである。

 日本ボクシングコミッション(JBC)は、悪質だったネリに日本での永久的な活動停止処分を科し、比嘉にも報酬の20パーセント相当額の制裁金の支払いと無期限停止処分を言い渡したが、これらの効力は日本国内に留まる。そのためネリは6月9日に米国カリフォルニア州サンディエゴ近郊のアルパインで次戦を行う予定だと伝えられる。選手の生活権の問題もあるため難しい判断を迫られるところだが、ボクシングという体重制の格闘競技を保護するためにも違反者には地域限定ではなく世界共通の重い罰則を設ける必要があるだろう。

 いまは早急にルールが作成されることと、「6人目」が出ないことを祈るばかりだ。

大相撲裏話

貴乃花親方も振分親方も 豪華すぎる審判部

序の口、序二段の審判をする貴乃花親方(撮影・鈴木正人)

<大相撲夏場所>◇2日目◇14日◇東京・両国国技館


 今場所から阿武松審判部長(元関脇益荒雄)をはじめ、新たに8人の親方衆が審判部として、土俵下から取組に目を光らせている。年寄へと計5階級降格し、自らを「一兵卒」と呼ぶ注目の貴乃花親方(元横綱)のほか、副部長の錦戸(元関脇水戸泉)、玉ノ井(元大関栃東)、友綱(元関脇旭天鵬)の各親方といった優勝経験者、さらに二子山(元大関雅山)、西岩(元関脇若の里)、振分(元小結高見盛)という人気者の各親方が新たな顔ぶれだ。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「審判部はもとから出島、千代大海、魁皇がいて、栃東、雅山も入った。元大関が多くて、どこの審判でも『オーッ』となる。お客さんを喜ばせることができる。そこに貴乃花がいる。今回(の人事)はだいぶ、そういうのも気を使った。充実している」とメンバー構成に自信を持つ。

 夏場所2日目の14日、最も早い午前8時半から序ノ口、序二段を土俵下で見た貴乃花親方は「新鮮ですよ。将来ある子が多くて気持ちいい」と入門当時を思い出して笑顔。代役で昨年春場所で1場所務めて以来、初の審判部配属となった振分親方は「期待に応えられるよう頑張りたい。マイクも…。苦手ですが頑張ります」とファンを意識。親方衆も歓声を意気に感じる相乗効果が生まれている。【高田文太】

リングにかける男たち

「なんか起きる」予想は当たった亀田興毅の試合

10カウントの途中でゴングを止める亀田興毅


 何かやるかもしれない。そんな思いで後楽園ホールに向かった。

 東京ドームでは安室奈美恵のコンサートがあったが、開演時間が近く人通りは少なかった。ところが後楽園ホールのあるビルにたどり着くと、5階の会場から1階入り口の外まで長蛇の列。やっぱりなんか起きるなと会場入りした。

 亀田興毅の一夜限りの現役復帰での引退試合で、亀田一家が久々表舞台に登場した。数々の騒動や物議を醸したが、一時は日本中が注目したボクサーだったのは間違いない。最近は1000人を切る興行も珍しくなく、リングサイド席は1万円以下が多い。倍の2万円だったが、1803人の観客が詰めかけた。

 客席にネット中継のひな壇が設けられた。MC陣内智則、アシスタント神田愛花、ゲストは板野友美、市原隼人、K-1の武尊ら、解説は元世界王者の竹原慎二、内山高志の両氏に、客席に浜崎あゆみ、佐々木主浩氏、御嶽海、照ノ富士ら。あのASKAもいた。亀田家の血が騒がないわけはなかった。

 ポンサクレックには8年前に判定で初黒星を喫して王座陥落し、父史郎氏が暴言などで大騒動の因縁があった。引退試合とぶち上げてしぶとく粘ったが、結局は単なるスパーリングになった。国内規定でポンサクレックのライセンスが認められず。8オンスのグローブで10回戦の希望が、10オンスでの6回戦でヘッドギアなしのスパーになり、ジャッジはいなかった。

 それでも入場ではライセンスを剥奪された史郎氏を先頭にした亀田トレインも復活させた。3兄弟にメキシコでプロデビュー勝利した妹姫月、前座でプロ初勝利のいとこ京之介も連なった。

 31歳の興毅は2年半、40歳のポンサクレックは直前にタイで突然復帰戦も実に5年ぶりリング。差は歴然でポンサクレックが不憫に思えた。亀田は2回に右ストレートでぶっ倒すと「どんなもんじゃい!」と叫んだ。

 さて、10カウントゴングの引退式となったところで事件は起きた。5つ目のゴングが鳴ると、マイクを手にして「ちょっと待った」。あのロマゴンことゴンサレスと「もう1試合やりたい」と言いだした。ゴング前に足元へマイクを置くよう促していたという。あとで「迷いに迷った」とは言ったが…。

 会場は華やかさがあったが、いつもと違う雰囲気だった。見慣れたボクシングファンより、見慣れぬ一般ファンが多かった。「現役復帰プラス1」に喜ぶ観客もいたが、何人もが「うそつき!!」と叫び、場内騒然となった。

 亀田は当初から「戦いたいボクサーが2人いる」と言い、ロマゴンがその1人とみられていた。一時期は世界最強と言われた現役バリバリのボクサーで王座奪回を狙っている。実現性は極めて低い。

 内山氏は京之介を指導した縁で駆けつけた。指導効果発揮でKO勝ちを見届けると「所用」を理由に会場を後にした。「亀田劇場」は見ていない。ボクシング関係者の姿もほとんどなく、亀田復帰への業界の見方、思いを示す。

 昨年7度目の引退をしたプロレスラー大仁田厚を思い出した。【河合香】

原功「BOX!」

天才vs天才、凱歌はリナレスとロマチェンコどちらに?


 WBA世界ライト級王者、ホルヘ・リナレス(32=帝拳)の4度目の防衛戦が12日(日本時間13日)、米国ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで行われる。今回の相手は1階級下のスーパーフェザー級でWBO王座に君臨するワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)だ。無類のスピードとテクニック、右ストレートを武器に3階級制覇を成し遂げているリナレスと、ごりんオリンピック連覇後にプロに転向して3戦目で戴冠、7戦目で2階級制覇を達成したサウスポーのロマチェンコ。天才と天才の対決はどちらに凱歌があがるのか。

 ベネズエラから日本にやってきて17歳でプロデビューしたリナレスは、フェザー級、スーパーフェザー級、そしてライト級の3階級で世界王者になった実績を持つ。キャリア16年、47戦44勝(27KO)3敗の戦績のうち13試合(11勝7KO2敗)は世界戦だ。09年から12年にかけて3度のTKO負けを喫しているように耐久力に課題を抱えているが、最近は13連勝(7KO)と勢いを取り戻している。スピードのある左ジャブを突破口にして右ストレートで仕留めるパターンが多く、フックやアッパーなど左も多彩でタイミングも抜群だ。ただ、今回の試合は以前から師事してきたキューバ出身のイスマエル・サラス・トレーナーではなく、王者の実弟カルロス・リナレスがセコンドにつくことになっている。兄弟の組み合わせが吉と出るか凶と出るか、蓋を開けてみないと分からない部分もある。

 ロマチェンコは08年北京五輪、12年ロンドン五輪で連覇を達成し、世界選手権でも2度の優勝を収めている。アマチュア戦績は397戦396勝1敗というから驚きだ。13年10月にプロに転向し、4カ月半後、2戦目で世界王座に挑んだ。そのときは体重オーバーの相手を警戒し過ぎ、前半の失点が響いて小差の判定負けだった。しかし、続く3戦目の王座決定戦では能力を存分に発揮、12回判定勝ちでWBO世界フェザー級王座についた。3戦目での戴冠は史上最速タイ記録でもある。また、7戦目にはWBOスーパーフェザー級王座を獲得しているが、これは井上尚弥(25=大橋)の8戦を更新する史上最速の2階級制覇記録だ。

 正統派のリナレスとは対照的にロマチェンコはサウスポーの技巧派で、特に瞬間移動ともいえる足の動きに定評がある。前後左右に動きながら多彩で角度のある回転の速い左右のパンチを打ち込む連打型の選手だ。目下7連続KO勝ちで、直近の4試合はすべて途中で相手をギブアップさせている。相手が打とうとしたときには目の前にロマチェンコはおらず、反撃の糸口がつかめないまま心を折られてしまうケースが続いている。「ロマチェンコ勝ち」という表現まであるほどだ。

 ロマチェンコは、ミドル級の3団体統一王者、ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)らとともに、ボクサーの強さ指数ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」のトップ3に数えられるだけに、今回のリナレス戦も6対1というオッズが出ている。その数字が示すように、多くのファンや関係者は「ハイテク(高性能)」というニックネームを持つロマチェンコが細かく動いてリナレスを翻弄してしまうとみている。その一方、プロでの経験値や体格、パンチ力で勝るリナレスが右ストレートを打ち抜いてKO防衛を果たす確率も決して低くはないとみる。天才対天才というカードだけに、凡人の想像もつかないような展開になる可能性もある。

 ともにスピードがあるだけに、瞬き厳禁の試合といえる。

リングにかける男たち

オカダ・カズチカ、米基準の王座保持期間でも金字塔


 新日本プロレスのIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(30)が、4日の福岡大会で歴代最多となる12度目の防衛に成功した。初代王者アントニオ猪木が88年に4度、89年には藤波辰爾が7度、95年に橋本真也が9度、03年に永田裕志が10度、そして12年に棚橋弘至が11度まで伸ばした防衛記録を「レインメーカー」が超えた。ケニー・オメガ(34)とのV13戦は6月9日の大阪城ホール大会。この間に王座返上しない限り、保持期間は720日に伸びる。こちらも史上最長記録を更新中だ。

IWGPヘビー級選手権12度目の防衛に成功したオカダ・カズチカ(2018年5月4日撮影)

 今、米国ではWWEヘビー級王座と並ぶ2大王座の1つ、ユニバーサル王座を保持する王者ブロック・レスナー(40)のベルト保持期間が話題になっている。昨年4月2日のレッスルマニア33大会での同王座奪取後、米国時間5月7日で区切りの400日となる。米メディアはCMパンクが持つ434日を超えることは確実だろうと報じる。6月17日のPPV大会では、ユニバーサル王座の防衛戦が組まれるとみられており、レスナーは441日まで保持期間を伸ばすことになるだろう。

ブロック・レスナー

 WWEではハウスショー(動画中継なしの興行)でもWWEヘビー級王座、ユニバーサル王座の防衛戦がマッチメークされる。頻繁にビッグタイトルが組まれるため、日本のように防衛回数よりも王座保持期間が注目される「文化」がある。WWE前身のWWWFまでさかのぼれば、最高峰ヘビー級王座の最多保持期間は先月他界したブルーノ・サンマルチノの2803日が歴代1位。先月、藤波辰爾による招へいで来日したボブ・バックランドの2135日が2位。3位にはハルク・ホーガンの持つ1474日が続く。前身団体を含めればCMパンクの434日は歴代6位ではあるものの、02年5月にWWEとなって以降では歴代1位。レスナーの「新記録」更新が注目を集めている。

 興行形態、マッチメーク方式、ベルトそのものの違いはあるが、CMパンクやレスナーの保持記録よりも長いオカダの720日は誇っていい記録だ。弊社の新日本プロレス担当阿部健吾記者が「金字塔」と表現したオカダのV12記録。米国で重視される王座保持期間という側面からも胸を張って「金字塔」と表現していいはずだ。

IWGPヘビー級選手権試合ケニー・オメガ(左)をレインメーカーで仕留めるオカダ・カズチカ(2017年1月4日撮影)

 オカダの記録はどこまで伸びるのか。まずは、オメガとの約1年ぶりとなるIWGP対決を楽しみに待ちたい。【藤中栄二】

大相撲裏話

白鵬の人間力注目、父の死乗り越え夏場所母へ元気を

白鵬


 数々の記録を樹立してきた大横綱にとって、出場を目指す大相撲夏場所(13日初日、東京・両国国技館)は、その「人間力」が問われる場所になりそうだ。

 すでに前人未到の40度の優勝を打ち立てた横綱白鵬(32=宮城野)に“逆風”が吹いたのは、昨年11月の九州場所後。節目の40度目Vを決めたが、かち上げや張り手といった立ち合いの乱れや、土俵態度を横綱審議委員会から苦言を呈され、改善を余儀なくされた。すぐに直せるものではない。試行錯誤の翌初場所は、やはりリズムを乱したのか3日目からの連敗で5日目から休場。ケガの影響で春場所は初日から休んだ。

 土俵上での立ち居振る舞いは、土俵で直し、名誉挽回すればいい。だが、どうにもならない失意にこの4月、見舞われた。故郷のモンゴルでは英雄的存在だった父ジジド・ムンフバトさんの死だ。葬儀のためモンゴルに帰国する先月11日、それを済ませ再来日した15日と、いずれも成田空港で白鵬を取材したが、さすがに憔悴(しょうすい)の色は隠せなかった。

 さらに再合流した19日の千葉・柏巡業の支度部屋で話を聞いた際も、本場所で見せる勝ち気な姿は影もなく、生気は失われていた。父のことに思いをはせ、酒を2人で酌み交わしたことを思い出して、ぽつぽつと語ったものだった。「酒って、いいもんだよね。優勝した時に飲む酒とは、また違うもんだったな。(なき父が)『もう、このへんで(飲むのを)やめよう』と言った時、初めて『ああ(父に)勝ったな』と思ったね。5、6年前だったかな。若かったら、もっと飲んでいたんだろうけどね」。さらに形見について聞いた時にも、しんみりした口調で「う~ん…。いっぱいあるけど、いただいた、この自分の体だよ。この体を大事にして、横綱としていちばん長生きしたいね」。モンゴルにいる母親のタミルさん(70)にも思いをはせ「みんなで支え合って、自分も心配させないようにしないとね」と言って、視線を足元に落とした。

 肉親を亡くした心中は、いかばかりか。天国で見守る父を安心させ、故郷で暮らす母を元気づける活躍は、夏場所で見せるしかない。

 データの後押しはある。夏場所優勝8回は、年6場所の中で九州場所と並ぶ最多。そのうち全勝5回も最多だ。史上最多の通算1066勝のうち、夏場所の195勝も6場所で最多、勝率8割4分4厘は秋場所(9割2分)に次ぐ。新入幕の04年、新大関の06年、3回目の優勝を初の全勝で飾り横綱昇進を決めた07年と、いずれも夏場所の思い出だ。そして6場所で唯一、休場がないのも夏場所。そんな相性の良い場所で、再浮上のきっかけをつかめるか。失意からはい上がる、白鵬の「人間力」にも注目してみたい。【渡辺佳彦】

原功「BOX!」

ゴロフキンKOで陰り払拭、V20に花を添えるか


 ミドル級のトップ戦線は風雲急を告げる状況ではあるものの、その主役がWBAスーパー王座とWBC王座、IBF王座を持つ3団体統一王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)であることは誰もが認めるところだ。そのゴロフキンが5日(日本時間6日)、米国カリフォルニア州カーソンで1階級下のWBC世界スーパーウエルター級1位、バーネス・マーティロスヤン(32=アルメニア/米)の挑戦を受ける。ゴロフキンが勝てば通算20度目の防衛となる。

 04年アテネ五輪ミドル級で銀メダルを獲得しているゴロフキンは、プロでは38戦37勝(33KO)1分の戦績を残している。8年前にWBAの暫定王座を獲得し、その後、正王者からスーパー王者に昇格した。この間にWBC王座とIBF王座も手に入れている。

 17連続KO防衛を含む通算19度の防衛を果たしているが、直近の2試合は勝負が判定まで持ち込まれており、少なからず陰りが見え始めている。WBAのレギュラー王者で近い将来の対戦を希望している村田諒太(32=帝拳)の言葉を借りるならば「魔法が解けた状態」といえる。

 本来ならば、ゴロフキンは昨年9月に分のいい引き分けという結果に終わったサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)との再戦に臨むはずだった。しかし、ドーピング違反が発覚したアルバレスが試合1カ月前になって対戦を辞退したため、マーティロスヤンと対戦することになった経緯がある。試合地もネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナからカリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センターに変更されている。

 アルバレスの代役を務めることになったマーティロスヤンは、アマチュア時代にゴロフキンと同じアテネ五輪にウエルター級米国代表として出場したことがある。18歳でプロデビューし、13年間に40戦36勝(21KO)3敗1分の戦績を残している。スーパーウエルター級で2度の世界挑戦を経験しているが、まだ目標を達成してはいない。相手によって戦法や戦術を変えることのできる穴のない選手で、スピード、パワー、テクニック、タフネスなど世界レベルでみて平均以上の戦力を備えた選手といえる。

 しかし、16年5月の世界戦で判定負けしたあとは活動休止状態が続いており、今回が2年ぶりのリングとなる。「いつ試合が決まってもいいように常にベストのコンディションを保っていた」とマーティロスヤンは言うが、2年のブランクはプラス材料とはいえない。また、身長(182センチ)では王者を上回っているものの体のフレームでは劣っており、25対1という厳しいオッズは仕方ないところといえる。

 ゴロフキンは「バーネスのことはアテネ五輪のときから知っている。彼は紳士で強い選手なので厳しい試合になることを覚悟している」と警戒している様子だが、序盤から積極的にプレッシャーをかける展開に持ち込むものと思われる。そのうえで距離を潰して中盤あたりで仕留めてしまうのではないだろうか。

 KOでV20に花を添える可能性が高いが、もしもゴロフキンがマーティロスヤンに敗れるようなことがあれば、ミドル級トップ戦線は大混戦状態に陥りそうだ。

リングにかける男たち

ボブ・バックランドに「とげぬき地蔵」は似合わない

倒立してのストレッチをみせるバックランドに驚く藤波(2018年4月18日撮影)


 その68歳は太い幹だった。

 4月20日、後楽園ホールでドラディションの「バック・トゥー・ザ・ニューヨーク・ツアー」を取材した。

 主宰の藤波辰爾(64)の依頼を快諾し、目玉として来日したのは元WWF(現WWE)世界ヘビー級王者ボブ・バックランド(68)。驚かされたのは18日に都内で行われた来日記者会見だった。

 巣鴨に移転したばかりのプロレスを中心とした格闘技グッズ専門「闘道館」の2階に姿を現した「ニューヨークの帝王」は、とてもとげぬき地蔵が似合うような存在ではなかった。

 赤いサスペンダーがピンと張って、ワイシャツ越しからも明らかな筋肉の隆起を感じさせる。肉厚すぎる肉体は、いまだに現役だった。刈り上げられた頭髪は白髪交じりだったが、もし顔を隠して年齢当てクイズでもすれば、正解率は著しく低いだろう。

 「いまも午前6時半に起床して毎日エクササイズをしているからね」。肉体維持の秘訣(ひけつ)を聞かれると、得意げに言った。そして、そこからの行動がさらに驚くものだった。

 「ここでお見せしましょう」とおもむろに立ち上がると、両手を地面に着き。さらに頭頂部も床につける。そのまま脚がきれいに上がっていく。68歳の倒立。そして、さらにその脚を前後に動かして見せた。

 ワイシャツの胸ポケットからコインが落ちて、「これは妻からのお駄賃だね」とアメリカンジョークを飛ばす姿に、会見場のどよめきは止まらなかった。「今でも高校3年生、大学1年生とスパーリングをやっている」という言葉にも説得力があった。

 バックランドが70年代後半から5年以上ベルトを保持していた最中に生まれた記者には、正直言ってなじみが薄い「伝説」の男だった。名前を聞いてぴんと来るのはもう少し上の世代だろう。

 映像や画像で現役時代の姿は予習してから取材に行ったが、衰えた選手の姿のどこかにノスタルジーを探して発見に喜びを見いだすような機会、試合なんだろうと思っていた。ところが、当人を目の前にし、その「エクササイズ」を見せつけられ、レスラーのすごさをまざまざと感じさせられる時間となった。

 「さっき、一度やっただろう」。会見の最後、写真撮影の時間に、そうつぶやきながらももう1度倒立を披露するサービス精神まで見せつけた。

 最近聞いたプロレス好きの識者の言葉に「プロレスラーは異世界の住人です」という指摘があった。20日の後楽園大会、21日の大阪大会と試合でも年齢からかけ離れた動きと肉体とをファンに見続けた「帝王」。

 誰もが予期しないことをできるからこそ、異世界の中心人物として本場マットに君臨し続けたのだと、たった20分ほどの会見で十分に納得させられた。【阿部健吾】

KAZMA SAKAMOTO(左)をチキンウイングフェースロックで仕留めたボブ・バックランド(2018年4月20日撮影)

大相撲裏話

人気者の朝乃山 豊山とのライバル物語に注目

朝乃山


 5月13日に初日を迎える夏場所まで、1カ月を切っている。4月1日から始まった春巡業も、きょう27日で終了。4月30日には夏場所の新番付発表も行われ、いよいよ本場所へのムードも高まってくる。だが、今巡業中も「女性は土俵から下りて下さい」問題や、力士が子どもに稽古をつけるちびっ子相撲に「女の子上げない」問題など、またも土俵外での話題で角界が揺れた。昨年11月に元横綱日馬富士関による傷害事件が発覚以降、止まらない不祥事ラッシュ。以降、このネットコラムでも各相撲担当記者がその時々の“不祥事ネタ”を扱ってきた。ただ、そろそろ純粋に本土俵に集中したい、楽しみたいと思う今日この頃。今回は不祥事ネタを回避しようと思う。

 巡業中の支度部屋でぼやいていたのは、平幕の朝乃山(24=高砂)だった。近畿大出身のいわゆる学生出身力士で、16年春場所に三段目最下位格付け出しデビューした。あれよあれよと、9場所連続勝ち越しで昨年秋場所で新入幕に昇進。実力に加えて、かわいらしい顔ということもあり人気もある。ファンと密接になる巡業では、ひとたび外に出れば大勢のファンから写真撮影やサインをねだられる。この日も、昼食を会場外の売店に買いに行き、支度部屋に戻ってくるまでに多くのファンと触れ合った。喜ばしいようにも思えるが、浮かない顔でため息をついて言った。

 「また豊山に間違えられました」

 朝乃山にとって豊山は、同期の中でも特別な存在だ。豊山も東農大出身の学生出身力士で、同じく三段目最下位格付け出しで16年春場所でデビューした。富山出身の朝乃山と新潟出身の豊山は、高校時代も一緒に稽古をしたことがある仲。そんな2人が同期で、しかも同じ場所で同じ番付でデビューした。そして記念すべきデビュー戦が、朝乃山-豊山だったのだ。軍配が上がった豊山は、デビュー場所で全勝優勝。翌夏場所も幕下全勝優勝して、朝乃山よりも2場所早く、昨年夏場所で新入幕に昇進した。

 たかが一番、されど一番。朝乃山の豊山への嫉妬心というか、執着心というか、ライバル意識はかなり高い。一方、豊山はさらっとしている。その2人の“すれ違い”が、またも朝乃山の闘志を燃やす。2人の取組が分かると、朝乃山は「絶対に負けられない」などと意気込めば、豊山は「向こうが意識してるだけですから~」と1歩引いた、どこか余裕が感じられるような言い回しでいなす。「今日どうでしたか?」「懸賞何本ですか?」と相手の勝敗、懸賞を気にするのはいつも朝乃山。そしてなぜか、それだけ意識している同期にファンから間違われることが多いという。

 という訳で、豊山に間違われるのはショックというか、歯がゆいというか。ただ、2人の仲は決して悪くない。本場所中でも支度部屋で一緒になれば、取組後に2人で話す場面をよく見るし、巡業中も談笑する場面もよく見る。まさに良きライバル、と言ったところか。

 春場所を西前頭13枚目で8勝した朝乃山と、西前頭11枚目で10勝した豊山。夏場所の番付では、それなりの開きが出てくると思われる。それがまた朝乃山の闘志に火をつける。間違われたことに肩を落としたのもつかのま、「絶対に抜いてやりますよ」と、近くにいる豊山に聞こえるか聞こえないかぐらいの声の大きさで、ニヤリとしながら言った。若手の台頭が目立つ昨今。こんな2人のライバル物語に目が離せない。【佐々木隆史】

豊山

原功「BOX!」

目が離せないミドル級トップ戦線左右する注目ファイト


 15日に村田諒太(32=帝拳)がエマヌエーレ・ブランダムラ(38=イタリア)を8回TKOで下してWBA世界ミドル級王座の初防衛戦を果たしたが、その試合を含め4月から5月にかけてミドル級トップ戦線を左右する注目ファイトが続いている。5月5日(日本時間6日)には頂点に君臨するゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)の通算20度目の防衛戦が控えており、目が離せない状況になってきた。

 村田の初防衛戦を含め、以下のように4週連続でミドル級のトップ選手たちのサバイバル戦が組まれている。(試合日はいずれも日本時間)

★4/15@日本:WBAタイトルマッチ

〇村田諒太(帝拳) 8回TKO ●ブランダムラ(イタリア)

★4/21@米国:WBC暫定王座決定戦

〇ジャモール・チャーロ(27=米) 2回KO ●ウーゴ・センテノ(27=米)

★4/28@米国:WBA挑戦者決定戦 ダニエル・ジェイコブス(31=米)vsマシエイ・スレッキ(28=ポーランド)

★5/5@米国:WBAスーパー、WBC、IBFタイトルマッチ ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)vsバーネス・マーティロスヤン(31=アルメニア/米)

 21日に行われたWBC暫定王座決定戦は、ゴロフキンがサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)とのスーパーファイトに臨むことになっていた(ドーピング違反のアルバレスが挑戦を辞退)ため、待たされるランカーたちのために設けられたもので、大方の予想どおりチャーロが戴冠を果たした。チャーロは元IBF世界スーパーウエルター級王者でもあり、これで2階級制覇を成し遂げたことになる。戦績は27戦全勝(21KO)。村田と同じ183センチの長身で、スピードと強打を併せ持った実力者だ。ゴロフキン、アルバレス、村田、WBO王者のビリー・ジョー・サンダース(28=英)らを差し置いて、一部の関係者やファンの間では「隠れた最強選手」との声もある。

 28日に米国ニューヨークで行われるジェイコブス対スレッキのWBA挑戦者決定戦にも注目が集まっている。特に元王者のジェイコブスは35戦33勝(29KO)2敗の戦績を誇る強打者で、骨肉腫を克服してリングに復帰、世界王座に上り詰めた「ミラクルマン(奇跡の男)」としても知られる。26戦全勝(10KO)のスレッキは侮れない相手だが、パンチ力と経験値で勝るジェイコブスが指名挑戦権を獲得するとみられている。ジェイコブスは昨年3月、ゴロフキンに惜敗しており、再戦の権利を主張することになりそうだ。その一方、ゴロフキンとの対戦を待たされるような状況になった場合、標的を村田に変える可能性もあるだけに動向に注目していきたい。

 そして、5月5日にはミドル級トップ戦線の主役でもあるゴロフキンが登場する。<次回につづく>

リングにかける男たち

比嘉大吾の“明日のために”長谷川穂積氏が贈る言葉


 プロボクサー比嘉大吾(22=白井・具志堅スポーツ)が減量に失敗し、WBC世界フライ級王座を失った。前王者としてリングに上がり、9回途中TKO負けを喫した翌日の16日、元世界3階級王者長谷川穂積氏(37)に話が聞けた。「もうこれ以上ええでしょ? 彼をたたくんは、もう今日までにしましょう。まだほんまに若いし、先があるボクサーやから」。少し悲しそうだが、優しかった。

WBC世界フライ級タイトルマッチ ロサレスに破れ、一礼する比嘉大吾(2018年4月15日撮影)

 自らも苦しんだ。死ぬ思いで体重を落とした。「あかんと思ったこと、ありますよ。バンタムの時は毎回。最後は必死で練習して(落ちるのは)50グラム。50グラムってたまご1個分。“こんなんやったら、練習せん方がええ”と思ったりしてね」。最初に世界王者になったバンタム級で11度目の防衛に失敗するとフェザー級に転向。一気に2階級上げた。結果「国内ジム所属選手初の飛び級2階級制覇」を成したが、裏返せば、スーパーバンタム級でも苦しかったのだ。

WBC世界フェザー級王座決定戦でブルゴス(左)を破り2階級制覇を達成した長谷川穂積氏(2010年11月26日撮影)

 比嘉の罪は重い。具志堅会長、トレーナーら周囲の責任もあるが、最終的には本人の問題。だから、問うべき責任を問うことが、逆に比嘉のためだ。比嘉と同じ沖縄出身で元WBC世界スーパーライト級王者浜田剛史氏は「減量は何キロ落としても自慢ではなく当たり前。沖縄ファイターが出て盛り上がっていたが、大きく裏切った。技術、根性すべてが飛んだ」と言った。比嘉を思えばこそ、強烈な叱責(しっせき)が口を突いた。

1回目の計量で900グラムオーバーとなりうなだれる比嘉大吾(左)は具志堅用高会長から声をかけられる(2018年4月14日撮影)

 浜田氏が責め、長谷川氏がかばうのは、すべて“比嘉の明日”を守るためなのではないだろうか。

 長谷川氏は引退後も「ボクサー」であり続けている。体重63キロは現役時のナチュラルウエートと変わらない。基本的に毎朝7キロ~12キロ走る。ミット打ちを最低6回はこなし、サンドバッグもたたく。「やってないの、ダッシュぐらいですかね」。仕事や用事がなければ、ほぼ毎日、現役時と同じ練習をする。

ミット打ちを披露する長谷川穂積氏(2018年4月16日撮影)

 引退したのに、なぜ?

 「ボクシングをやってたら、僕はすべてに自信を持てる。自分に負けない自分でいられる。(プロで)17年間やって、そうなった。練習も、その日の自分に勝ちたいと思ってやる。達成感はやった者にしかわからんと思いますよ」

 10年後か、15年後か。比嘉がグローブを置いた時、同じ言葉を口にしてほしい。【加藤裕一】

大相撲裏話

不祥事ラッシュの相撲界も…今後は是々非々で堂々と


 相撲担当で1年。知人によく言われる。「オマエ、持っとるな~」。半笑いの問い掛けに、イラッとさせられ「相撲を取材してるんは山ほどおるがな」と思ったりする。しかし、この1年…いや半年は確かに異常な不祥事ラッシュやった。

 横綱の暴行事件が昨年11月の九州場所中に発覚し、1月には関取が無免許運転で捕まり、泥酔行司が後輩にキスして辞職に追い込まれ、3月春場所では、日本相撲協会を告発した親方の弟子が付け人をどついた。

 「相撲って話題豊富やね」と周りに言われ、何べんため息ついたことか。春場所も終わって、さすがに「もう打ち止めやろ」と思ったら、巡業の土俵で男性市長が倒れ、救命措置を行った女性に「土俵から下りてください」という場違いアナウンス。暴力、道交法違反、セクハラ、暴力の次は、土俵の女人禁制に絡む問題かい。貧すれば鈍すというか、地獄モードの負の連鎖というか。ここまで来たら、こっちもげんなりして、笑うしかない。

 そんなこんなの日本相撲協会。テレビのワイドショーのコメンテーター、MCに鬼の首をとったような態度でボロクソ言われ、その扱いたるや、ひどいもんです。曲がりなりにも現場で力士、親方らを取材している立場からすれば「どんだけお偉い方か知りませんが、そこまで言いますか?」と思ったりもする。

 確かにカラオケのデンモクで人を殴ったらあかん、無免許運転はあかん、人命最優先ちゅう判断ができんのもあかん。当然や。だから、ペナルティーを受け入れ、反省して、同じミスを犯さん努力はせなあかん。それも当たり前です。

 しかし、そもそも相撲界って、力士がまげを結って、浴衣着て、東洋の神秘好きの外国人が「オーッ! スモウレスラー!」と喜ぶ世界ですがな。江戸時代を思わせる外見、慣習の特殊性が魅力なわけで、そこが伝統であり、もっと俗っぽく言えば売りなんでしょ?

 一般社会の物差しを当てはめて、ならしていったら、最終的にただの太った力持ちの集団になってまうんちゃうかな。そんなことも思ったりするわけです。

 ダメなことは続きました。この勢いやとまだ、何かあるかもしれん(ヒーッ)。でも、大事なんは今後ですわ。ええことはええ、悪いことは悪い。決して協会の肩持つわけやないけど、是々非々で、堂々といきましょうや。【加藤裕一】

原功「BOX!」

ヘビー級王座統一戦は来春か 簡単には決まらない事情も


 ヘビー級のWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を持つアンソニー・ジョシュア(28=英)と、WBC王者のデオンタイ・ワイルダー(32=米)の4団体王座統一戦が期待されているが、そんななか両陣営が早くも交渉の駆け引きを始めている。21戦全勝(20KO)のジョシュア、40戦全勝(39KO)のワイルダー。最重量級の英米決戦は来春が濃厚とみられている。

 この3月、統一戦に向けて両者は難関とみられた第一関門を突破した。3日、ワイルダーは元WBA暫定王者のルイス・オルティス(38=キューバ/米)と対戦し、ダウン寸前のピンチを乗り切って10回TKO勝ちを収めた。これで7度目の防衛戦すべてKO(TKO)で片づけたことになる。戴冠試合が判定勝ちだったためデビューからの連続KO勝ちは32で止まったが、世界戦で再び倒しまくっている。身長201センチ、オルティス戦での体重は約97キロと細身の体格だが、パンチにはスピードがあって破壊力もある。以前は耐久力やスタミナに疑問を投げかける関係者やファンもいたが、オルティス戦では両方とも問題ないことを証明した。

 ワイルダーが知名度と評価を上げたのに対し、31日にWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)との統一戦に臨んだジョシュアは、勝ったもののアピールに欠ける内容だった。プレッシャーをかけ続けながら危なげなくポイントを稼いだ末の大差の判定勝ちで、豪快なKOを期待したファンは肩透かしをくらったかたちとなった。それでも抜群の安定感をみせており、評価を落とすことはなかった。デビュー戦からの連続KO勝ちは20で止まったが、「ボクシングだから、こういうこともある。大事なのは私が3団体の統一チャンピオンになったことだ。ワイルダー、私と戦おう」とリング上からライバル王者に対戦を呼びかけた。

 両陣営は4団体王座の統一戦に向け下交渉を開始している。現時点で主導権を握っているのは、人気に加え3本のベルトを持つジョシュアだ。すでに報酬に関してはジョシュアが6、ワイルダーが4という比率で分配されることに両陣営が合意しているという。こうしたなか3団体王者陣営は先制打としてWBC王者に1250万ドル(約13億3700万円)の報酬を提示した。これに対しワイルダー陣営は「私たちの見積もりでは5000万ドル(約53億円)の報酬が見込まれているのに、その金額は解せない。私たちを軽視するのならばワイルダーは別の相手と戦うことになる」として、2年7カ月ぶりに復帰する元3団体王者のタイソン・フューリー(29=英)の名前を出してライバル陣営を牽制している。ジョシュア陣営も「提示した条件がのめないのならばジョシュアは別の相手と防衛戦を行う」と、こちらも譲るつもりはなさそうだ。

 ただし、これは両陣営の軽いジャブの交換とみられており、本格的な交渉はこれからということになる。英米対決だけに開催地や放送するテレビ局の問題もあり、そう簡単にスーパーファイトが決まるとは思えない。8月か9月に両者が1試合ずつを挟み、来年3月か4月に頂上決戦が実現、という可能性が最も高そうだ。

リングにかける男たち

宮原健斗を支えるプロレス愛 ホーガン参考に高みへ

宮原健斗(2018年3月25日撮影)


 プロレスの世界でトップに立つ選手には、独特の雰囲気がある。畏敬の念を抱かせるようなオーラと、観客の期待を一身に集めるような存在。そんな選手が、全日本プロレスにも出てきた。3冠ヘビー級王者宮原健斗(29)だ。1番気に入っているのは、宮原がコーナーのロープに足をかけ、観客席に向かって手を耳にあて、歓声をあおるポーズつくる姿だ。

 それが、ある選手のポーズとダブって見えることがある。宮原が最も尊敬し、目標にもしてきた米国のスーパースター、ハルク・ホーガンだ。体格は一回りほど違うが、かつて世界を熱狂させたホーガンのように、宮原も全日本の観客を熱狂させている。

 「子どものころから、ビデオを借りて何回も見てきた。ただのあこがれだったんですが、今、チャンピオンになってホーガンの動きがとても参考になることが分かった。お客さんのじらし方であるとか、お客さんの求めるものに120%応えようとするパフォーマンスとか」。

 福岡の市立福翔高校を卒業して、健介オフィス入り。08年にデビューして今年が10年目となる。14年1月に入団した全日本では、16年2月に26歳11カ月で、史上最年少の若さで3冠ヘビー級のベルトを巻いた。そこから歴代2位の連続8回防衛を達成し、一気に団体のトップを背負う存在になった。

 「全日本の3冠王者は誰でも背負えるものじゃない。オレは、全日本を神様に託された、選ばれた存在だと思っています」と宮原は言い切る。その思いに負けないくらいの練習。練習と食事、寝るとき以外は、ほとんど昔のプロレスのビデオを見るというプロレス愛が、宮原を支えている。

 「全日本をさらなる高みに持って行きますよ。全日本はこんなもんじゃない」。趣味はないと言っていた宮原が、最近は歌手の安室奈美恵に注目しているという。「安室さんのコンサートで、アンコールへの持って行き方とか、マイクパフォーマンスとか参考になりますね」。やっぱり、プロレスのことしか考えていない。【桝田朗】

大相撲裏話

「相撲協会=悪」? 襟を正すのは報道機関も同じ


 「お相撲さんは口べた」。世間の多くの人が抱いているイメージだろう。現役時代は「不器用だけど頑張っている」などと、ほほえましく見られ、好意的に受け取られることが多いと思う。ところが引退して親方になると、その延長線上にあるとは思われなくなる。無言や説明不足の親方は、世間から大きな批判を浴びることが多い。昨年11月に発覚した、元横綱日馬富士関による暴力問題から続く一連の不祥事も、言葉足らずな親方衆の言動から波紋が広がったように思う。

 「日本相撲協会=悪」。歴代の理事に、こわもてが多いことも手伝い、このイメージも根強いと思う。そのイメージが強く出たのが「女性は土俵から下りてください」と複数回アナウンスされた問題だ。今月4日に京都・舞鶴市で行われた巡業で、多々見良三市長が土俵であいさつ中に倒れ、救命処置を施していた女性に土俵から下りるよう場内放送で促された。もちろん人命にかかわる緊急事態であり、この場内放送は非常識で批判されて当然だ。ただ「日本相撲協会=悪」のイメージが強すぎるからか、世の中も冷静さを欠いていると感じていることがある。

 この問題が起きた時、巡業部長の春日野親方(元関脇栃乃和歌)は当初、トイレに行っていたと説明した。その後、インターネット上に、騒然となる土俵の後方に立つ同親方の画像が出回った。同親方は後日、トイレを含めて、次の巡業先への移動準備など、その後に控える幕内の取組を見るために会場裏におり、後から市長が倒れているところを目撃したと言った。当初の説明を補足した格好。その場で取材した新聞、通信社計5社、民放テレビ局1社は、いずれも「ウソをついていた」とは報じていない。当初のコメントからの「補足」という報道だったが、イメージ先行で「ウソ」と変換されていった。

 不思議なことに、その場に来ておらず、1次情報を持たないテレビ局に限って、こぞって「ウソをついていた」と“断言”するようになっていた。情報番組ではウソをついていたことを前提に、出演者が「バカ」とまで発言している。相撲界に起きた暴力については声高に批判しているが、これも言葉の暴力ではないのかと思った。立場が弱まっている人には何を言ってもいいのだろうか-。

 事情を知らない視聴者は、まさか「ウソをついていた」という報道が「ウソ」とは思わないだろう。一連の不祥事で相撲協会は、随所でほめられたものではない対応を取っている。「口べた」では済まされない言動は目に余る。ただ、だからといって間違った情報を使って、特定の団体や個人をおとしめることが許されるわけもない。そういったことの積み重ねが少なからず影響しているのか、ついには相撲協会執行部や関係者への殺害予告まで出た。襟を正さなくてはならないのは、相撲協会だけではなく、我々、報道機関も同じだと思わずにはいられない。【高田文太】

原功「BOX!」

暫定王座の増加はボクシングの将来を危うくする


 王者が負傷や病気のために戦線離脱した場合に設けられることが多い「暫定王座」は、一時期は減少傾向にあったが、今年に入って再び増加している。善用すれば問題はないシステムだが、ビジネスを優先して利用した場合は大きなマイナス効果を生むリスクもあるだけに懸念する声は多い。

 英語で「INTERIM CHAMPION(インテリム・チャンピオン)」と表記される暫定王者の制度は、負傷した世界王者の留守を預かる存在として1980年代に設けられた。日本では90年代前半に網膜裂孔、網膜剥離に罹患したWBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎(大阪帝拳)や、対戦相手が決定戦を経たうえでその肩書を得てファンの間に認知されるようになった。

 この制度は負傷やトラブルなどに遭遇した王者に時間的な猶予を与えて救済するだけでなく、イベントも保護するという点で有効なシステムだが、一方でビジネスを優先するあまり悪用されるケースも目立った。特にWBAでは一時期、17階級のうち常時10階級以上で暫定王者が存在するという事態に陥ったほどだ。これに加えて「スーパー王者」や「休養王者」なども存在するため、収拾がつかない状況に陥りつつあった。WBAは「暫定王者は世界ランク最上位者という扱い」と弁明したが、ベルトが授与されたうえ防衛戦も認められるとあっては説得力に乏しいといわざるを得ない。

 こうしたなか数年前、日本は「WBAの暫定王座については世界王座と認めない」という方針を打ち出して自主規制に乗り出した。こうした圧力が効いたのかWBAは2年前に「世界王者は1階級にひとり」という当たり前の方針を打ち出し、団体内の統一戦を推し進めた。そのためか現在のWBAの暫定王者は4人まで激減している。

 しかし、この3月にはバンタム級で新たな、そして不可解な暫定王者が誕生、波紋を投げかけている。WBAのバンタム級にはスーパー王者としてライアン・バーネット(25=英)がおり、3月31日に指名挑戦者を相手に初防衛を果たしたばかりだ。また、いわゆるレギュラー王座には6度防衛中のジェイミー・マクドネル(32=英)が君臨している。マクドネルは5月25日に井上尚弥(25=大橋)の挑戦を受けることになっている。こうしたなかで暫定王座を設ける必然性はどこにも見当たらない。

 似たようなことはWBC、IBF、WBOでも起こっている。現在、主要4団体で合計10人以上の暫定王者が存在しており、この先もWBOのフェザー級やWBCのウェルター級とミドル級などで暫定王座決定戦が予定されている。増加傾向に拍車がかかっている感がある。

 ヘビー級やクルーザー級などで王座統一が進む一方で、無意味な暫定王座を頻発するという矛盾。この状況に歯止めをかけないと、ボクシングの将来そのものが危うくなってしまうのではないかと危惧している。

リングにかける男たち

武尊3階級制覇 第3期K1はこの男にかかっている

3階級制覇を達成した武尊(2018年3月21日撮影)


 久しぶりにK-1を取材した。14年に新生K-1となって、3月21日にさいたまスーパーアリーナのメインで初開催。魔裟斗がいた00年代以来の取材だった。ふたを開ければ、約10時間で24試合が実施された長丁場に、1万5000人が詰めかけていた。

 最初の93年K-1ワールドGPも取材した。無差別級トーナメントがメインで、日本勢は空手から格闘家になった佐竹雅昭がトップだった。ピーター・アーツ、アーネスト・ホーストらがいたが優勝は伏兵ブランコ・シカティックも、代々木第1体育館に1万人が集まった。

 K-1とはうまく考えたなと思ったものだ。空手、キックボクシング、カンフー、拳法などの立ち技系格闘技で、キングも意味するKにNO・1の1がつけられたという。今やお笑いでM-1やR-1もある。F1が出発点だろうが、K-1が定着した効果といえるだろう。

 当初の5回から現在は3回制で、キックもあることで早期決着、KOの多さが魅力。今大会も中盤判定が続いたが、結局は半分の12試合がKO。メインの8選手のスーパー・フェザー級トーナメントも7試合中4試合がKOで盛り上がった。

 今は第3期K-1といえる。創成期はサイズとパワーの迫力があった。かかと落としのアンディ・フグが96年優勝などで人気となったが、白血病で帰らぬ人となった。00年代はワールドMAXでミドル級が中心となり、魔裟斗が女性も含めて人気を集めた。さらに元横綱曙、ボブ・サップらも参戦した総合格闘技イベントに発展した。

 魔裟斗の引退、経営陣の交代などから下火になり、新生K-1へと移行した。日本人中心のイベントだけに、創成期からは徐々にサイズダウンしてきた。世界大会という部分でも、物足りなさは否めない。選手たちもいろいろキャラをつくって、ここぞとアピールしていた。

 その中で武尊が初の3階級制覇を達成した。1回戦は判定も、準決勝、決勝はKOで決めた。ストイックな姿勢を貫くイケメン。しゃべりは控えめでリングに徹する。名前でもあるリングネームは、ヤマトタケルノミコトから命名されたという。第3期K-1はこのエースにかかっている。【河合香】

大相撲裏話

女人禁制問題に塩問題…角界の盲点見直す機会に

塩かごとタン壺


 またぞろ出てきた。われわれスポーツ紙やテレビのワイドショーにとって格好のネタが…。暴力やセクハラ、無免許運転といった類と、今回は趣が異なる。ただ今回の件でも、一部に相撲界が誤解されていると思われるものがあった。

 4月4日に京都・舞鶴で行われた大相撲の春巡業。地元・舞鶴市の多々見良三市長(67)が土俵上であいさつしている際に突然、倒れた。その後、救命処置を施している女性に対し、若手の行司が土俵から下りるよう、場内放送でアナウンスした問題が波紋を広げた。それに対する論調は他に譲る。

 指摘したいのは、女人禁制何するものぞ…という世論の声に乗じるかのように、同列で論じられた「塩問題」だ。女性が土俵に上がったことでその後、大量の塩が土俵にまかれたという一部報道があった。それには首をひねるしかない。

 本場所にしても巡業にしても、また各部屋の稽古場にせよ、塩をまくには意味がある。これから始まる戦いの場を清めるためにまく塩。また、力士が稽古や取組でケガをしたり、血が飛び散ったりした際にも一度、塩をまいて呼び出しさんや若い衆がはいて、清める。同じようなことが起きませんように-。神聖な土俵を鎮める、そんな思いが込められている。

 問題が起きた翌5日、日本相撲協会の尾車事業部長(元大関琴風)も「人命より大事なものは、この世に存在しません。女性が土俵に上がってはいけない、という話とは次元が違います」と報道対応で話した。その上で、この「塩報道」については「女性蔑視のようなこと(考え)は日本相撲協会には全くない。本場所でも稽古場でもケガして運ばれたり、血しぶきが飛んだり、首を痛めてひっくり返ったり(そんな)アクシデントの連鎖を防ぐために塩をまくのがボクらの世界。女性が上がったから土俵を清めるために大量の塩をまいた、というのは(報道は)残念。全くない」と肩を落とした。

 「単なるスポーツではない」といわれる相撲界。なかなか分かりにくい世界ではある。だからだろうか。同じメディアでも専門業界の外で、誤解されるような報道も昨年末から多々あった。もちろん角界も、考え直さなければならない問題を抱えている。今は、不本意なものもあろうが、メディアに取り上げられることで盲点だった角界の常識を見直す良い機会、ととらえればいいのではないか。それも懐の深さ。もちろん、今回の「塩問題」は論をまたないと思うが。

原功「BOX!」

ヘビー級4団体王座統一も、壁を越えた王者同士の対決次々と


 昨年の夏あたりから同じ階級の世界王者同士が統一戦で対戦したり、クラスの異なる世界王者同士が拳を交えたりといったケースが目立つ。WBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)の主要4団体が17階級で世界王者を認定している現在、単純計算で68人もの「世界一」が存在するわけだが、そんななか王者同士の対戦は歓迎すべき状況といえる。誰が一番強いのか、どちらが強いのか、そんな声に応える試合は今後も増加していきそうだ。

 昨年12月には米国ニューヨークで五輪連覇の実績を持つ世界王者同士の対戦が実現し、WBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)が、2階級下のWBAスーパーバンタム級王者、ギジェルモ・リゴンドー(37=キューバ/米)に6回終了TKO勝ちを収めた。

 大晦日には東京でライトフライ級の王座統一戦が行われ、WBA王者の田口良一(31=ワタナベ)がIBF王者のミラン・メリンド(30=比)を終盤に引き離して判定勝ち、2団体王者になった。

 今年に入り、王者同士の対決は一気に増加した。ヘビー級の次に重いクルーザー級では大規模の賞金トーナメントが行われていることもあり、1月末にWBC王者対WBO王者、2月初めにWBA王者対IBF王者という2カードが続けて行われた。勝者同士の決勝戦、つまりWBC&WBO王者のオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)対WBA&IBF王者、ムラト・ガシエフ(24=露)の4団体王座統一戦は5月に予定されている。

 3月にはWBCライト級王者のミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)が、1階級上のIBFスーパーライト級王者、セルゲイ・リピネッツ(29=カザフスタン/露)に挑み、ダウンを奪って判定勝ちを収めた。この勝利でガルシアは4階級制覇を達成した。

 そして31日(日本時間4月1日)にはヘビー級でも王者同士の対決が実現した。WBAスーパー王座とIBF王座を持つアンソニー・ジョシュア(28=英)がWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)を12回判定で下して3団体の王座をまとめた。21戦全勝(20KO)ジョシュアは今秋か来春には40戦全勝(39KO)のWBC王者、デオンタイ・ワイルダー(32=米)との頂上決戦を計画している。ヘビー級の4団体王座が統一されれば、1988年にWBOが新設されてから30年で初のこととなる。

 このほか、今週末4月7日(日本時間8日)にはスーパーウエルター級でもWBAスーパー王者のエリスランディ・ララ(34=キューバ/米)対IBF王者、ジャレット・ハード(27=米)の統一戦が組まれており、1カ月後の5月12日にはWBCライト級王者、ホルヘ・リナレス(32=帝拳)がWBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)の挑戦を受けることになっている。

 統括団体が増えたことで世界王座の価値が目減りしてきたなか、関係者は様々な工夫を凝らして対応していく必要に迫られている。その最善策のひとつが団体や階級の壁を越えたスター選手同士の試合の実現であることは間違いない。この流れが続くことを願うばかりだ。

リングにかける男たち

棚橋ら新日本勢、裏レッスルマニアでファン強奪!?

左から棚橋弘至、鈴木みのる、石井智宏、飯伏幸太


 8日(日本時間9日)にWWE最大の祭典レッスルマニア34大会が開催される米ルイジアナ州ニューオーリンズ。レッスルマニアウイークと称される今週、新日本プロレスのレスラーたちが同地で多くの試合を控えている。

 裏レッスルマニアとも言われるプロレス大型イベント「レッスルコン」(5~8日)では、5日にスーパーショーと呼ばれる大会が予定。ここに飯伏幸太、ケニー・オメガのユニット「ゴールデン☆ラヴァーズ」が参戦し、バレッタ、チャッキーT組(ベストフレンズ)とのタッグマッチに臨む。翌6日には英団体RPWによるニューオーリンズ大会が開催され、棚橋弘至、ジュース・ロビンソンがタッグマッチに出場。石井智宏がRPW英国ヘビー級王者ザック・セイバーJr.に挑戦する。また鈴木みのる、飯伏、IWGPジュニア王者ウィル・オスプレイも参戦予定だ。

 レッスルマニア前日7日には米団体ROH主催のニューオーリンズ大会が開かれ、棚橋、ジェイ・リーサル組がROHタッグ王者ブリスコ・ブラザーズに挑戦する。またオメガ-Codyのバレットクラブ頂上決戦、飯伏-ハングマン・ペイジのシングル戦も組まれる。本隊、CHAOS、バレットクラブ、鈴木軍の各ユニットの実力者たちがニューオーリンズで戦う。

 レッスルマニアウイークには世界中からプロレスファンが開催地に集まる。今年のレッスルマニア34大会も約7万人以上の来場が予想される。動画配信が発達しているとはいえ、生観戦に勝るものはない。新日本プロレスのスタイルをアピールするには絶好の機会だ。近年、米国内のプロレスのメディアから新日本プロレスのレスラーたちが、そして試合内容が、WWEのそれよりも高く評価される傾向にある。例えば棚橋の華、鈴木の醸し出す怖さ、石井のゴツゴツぶり、飯伏の異次元な飛び技は米プロレスでは見られない、独特のスタイルだ。

 レッスルマニア34大会では、元新日本プロレスの2人によるWWE王座戦が控えている。王者AJスタイルズ-挑戦者中邑真輔のカードはメイン候補の1つで注目度も高い。一方で、新日本プロレスのレスラーたちが持ち前の「キラー・インスティンクト」を発揮すればファンの心を根こそぎわしづかみすることも可能だ。レッスルマニアウイークが終わったら、どのカードが世界のファンから高く評価されているのだろうか? 楽しみでならない。【藤中栄二】

大相撲裏話

意外かもしれませんが…貴乃花親方は人間味ある親方

厳しい表情で会見する貴乃花親方(撮影・岡本肇)


 「一兵卒として出直して精進します」と言った、貴乃花親方(元横綱)。弟子の十両貴公俊が春場所8日目の3月18日に、支度部屋で付け人へ暴行。元横綱日馬富士関の傷害事件の対応を巡って相撲協会と対立していた貴乃花親方は窮地に立たされる形となった。心をあらためたのか、初日から無断欠勤や早退が続いていたが、暴行が発覚してからは毎日まじめに“出勤”するようになった。そして13日目の23日、内閣府に提出していた告発状を取り下げる意向を明かした時に言った言葉が、冒頭の言葉だ。

 「一兵卒」という言葉は、私たちの普段の生活ではあまりなじみのない言葉のような気がする。疑問に思った報道陣から「あの言葉はどこから」と問われると「一兵卒という言葉が頭にあって。親父からも育てられてますので」と明かした。師匠でもあった父の元大関貴ノ花(故人)の教えだったという。だから何だ、と言われたらそうだが、何となく「へー」と思った。このやりとりは、千秋楽の25日の朝稽古後のことだった。

 実は朝稽古では、報道陣とざっくばらんに話すことが多かった。テレビや新聞で取り上げられるのは、どうしても協会との対立姿勢に関する言動ばかりになってしまう。ただ、その裏ではこんなやりとりもある。

 雨が降った日だった。貴乃花部屋の稽古場は、京都・宇治市の龍神総宮社の敷地内にあるのだが、雨宿りする所がない。とは言いながらも、稽古場の横に長ベンチが置かれた屋根付きのスペースがあるにはあるが、敷地内での写真撮影や力士への取材が規制されていたので、何となく記者の間では近寄りがたい雰囲気があった。傘をさして遠目から見ていると、貴乃花親方が話しかけてきた。「こちらへどうぞ」。優しく記者らに話しかけてきて、そのスペースに誘導してくれた。たまたま1番後ろにいた記者は、右手でそっと背中を押された。「平成の大横綱」のパワーを感じた、と言うのは大げさかもしれないが、「こんな一面があるのか」と思った。

 またある日は、報道陣に対して「朝早くから大変ですね」と気遣う時があった。「どこから来たんですか?」と、逆取材するほどだ。会場のある大阪市内の宿に泊まっている各社の記者は、6時過ぎには稽古場に着くように、大阪から始発の5時の電車に乗って通っていた。なぜなら、7時ごろには朝稽古が終わってしまうからだ。それを逐一真面目に説明すると「そうなんですか」「へー」「大変ですね」と驚きの表情で返してくる。生意気言わせてもらいますが、本当に大変でした。

 千秋楽の朝稽古後、いつもなら報道陣に対応する時間になっても、稽古場の周りをうろうろしていた。弟子が全員宿舎に戻り、稽古場の明かりが消えても1人でずっとうろうろ。1時間弱がたち、ようやく報道陣の前に来ると「落ち葉拾いです。若い衆は若い衆できれいにしていたけど、目が届かないところもあるので」と、稽古場周りをうろうろしていた理由を説明した。

 メディアで取り上げられるのは、無表情だったり、無言だったり、淡々と話したり…。人間味をあまり感じない、という読者もいたのではないだろうか。だが、決してそんなことはないというのが、朝稽古の取材で感じ取ることができた。記者は貴乃花親方を批判するつもりでも、擁護するつもりでもこのコラムを書いた訳ではない。ただ、1人でも多く「へー」と思ってくれる読者がいればいい、と思い執筆しただけです。【佐々木隆史】

原功「BOX!」

ジョシュアVSパーカー ヘビー級決戦生き残るのはどっちだ


 ヘビー級のWBAスーパー王座とIBF王座を保持するアンソニー・ジョシュア(28=英)と、WBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)が3団体の王座統一をかけて3月31日(日本時間4月1日)、英国カーディフで対戦する。右ストレートに一撃KOの破壊力がある20戦全KO勝ちのジョシュア、スピードを身上とする24戦全勝(18KO)のパーカー。3つのベルトを手にするのは?

 現在、主要4団体のヘビー級王座の持ち主は以下のようになっている。

◆WBAスーパー王者:ジョシュア

◆WBAレギュラー王者:マヌエル・チャー(33=レバノン/シリア)

◆WBC王者:デオンタイ・ワイルダー(32=米)

◆IBF王者:ジョシュア

◆WBO王者:パーカー

 上記4選手以外ではルイス・オルティス(38=キューバ/米)が王者と同等の力量を持っているとみられていた。そのため別路線を行くチャーを除くジョシュア、ワイルダー、パーカー、オルティスが「ヘビー級4強」という括りになっていた。そんななか3月3日にワイルダーがオルティスを10回TKOで撃退し、最終決戦に向け準決勝に相当する試合を勝ち抜いた。

 今回はもう一方のブロックでジョシュアとパーカーが互いの王座をかけて拳を交えるわけだ。もちろんワイルダーはリングサイドで観戦することになっている。

 12年ロンドン五輪スーパーヘビー級金メダリストのジョシュアはプロでも2年半で世界王座に駆け上がり、元王者のウラジミール・クリチコ(ウクライナ)を下すなど4度の防衛を果たしている。身長198センチ、リーチ208センチ、体重115キロという恵まれた体から繰り出す正確な左ジャブ、破壊力抜群の右ストレートが主武器の正統派の強打者だ。最近は接近戦で効果的なアッパーを繰り出すなど攻撃の幅を広げている。

 一方のパーカーは身長193センチ、リーチ193センチ、体重は110キロ前後で、体格ではジョシュアに及ばない。その代わり足をつかって距離やタイミングを計るボクシングができ、機動力という点ではライバル王者の上を行く。フルラウンドを戦いきった経験のないジョシュアに対し、パーカーは4度も12ラウンドを戦いきっており、スタミナにも自信を持っている。「ジョシュアは正面にいる相手には強いが、左右に動かれると対応が遅れる」と相手の弱点を指摘している。

 分かりやすくいえばジョシュアのパワーが勝るのか、それともパーカーのスピードが試合を支配するのかという構図だが、実際はそんな単純な戦いにはならないだろう。ジョシュアは相手の速さに対応するため前戦よりも6キロほど体重を絞って試合に臨むとしており、このところ3戦連続で判定勝負になっているパーカーにも右ストレートという決め手があるからだ。

 ともに左ジャブで探りを入れるスタートになりそうだが、徐々にジョシュアが圧力をかけ、パーカーが動きながら迎撃する展開が予想される。13対2というオッズが出ているようにパワーに加え地の利もあるジョシュアが有利だが、総合力には数字ほどの差はない。パーカーが接戦に持ち込んで終盤に抜け出す可能性もある。

リングにかける男たち

ベストパンチは?「神の左」山中慎介が答えたKO劇


 選手が現役生活を引退する時にしか聞けない質問がある。

 「ベスト○○はなんですか?」

 試合や大会が主だが、終わりを迎えていない段階では更新中で総括は適さない。だから引退会見という場では、必ず聞かれることになる。

 26日に都内のホテルで会見を開いたプロボクシングの元WBC世界バンタム級王者山中慎介さん(35)の場合は、「ベストパンチ」だった。世界戦で31回のダウンを生み出してきた通称「神の左」。そのストレートで、日本歴代2位の世界戦連続防衛12回を成し遂げた男の答えは…。

 「迷いなくV2のロハス戦ですね。あの最後の1発。あれがあるからこそ、常にこれくらいのKOしてやろうという思いで調整してこれましたし、あのKOは本当に自分にとっても後援会にもファンにも記憶に残っている試合だと思ってます」

WBC世界バンタム級タイトルマッチ 7回、左ストレートでトマス・ロハス(右)をKOした山中慎介(2012年11月3日撮影)

 2012年11月3日、ゼビオアリーナ仙台、元世界王者トマス・ロハス(メキシコ)を迎えた2度目の防衛戦。左ストレート2発などで7回36秒TKO勝利。ロハスは失神し、そのまま病院に送られた衝撃の試合だった。

 翌4日付の弊紙には「左コークスクリューで失神病院送り」「ホセ・メンドーサだ」「劇画的KO」の文字が躍る。試合を決めた1発は、パンチが当たる瞬間に手首を内側にひねり込む「コークスクリューパンチ」。漫画「あしたのジョー」で矢吹ジョーと対戦した最強王者ホセ・メンドーサも武器にした必殺パンチで、ロハスはその場で失神し、前のめりに頭から崩れ落ちた。

WBC世界バンタム級タイトルマッチ 7回、トマス・ロハス(右)を前のめりに倒し、KO勝ちを飾った山中慎介(2012年11月3日撮影)

 この日、山中が登場する前、会場内には防衛戦の映像などが映し出されたが、集まった報道陣、関係者約150人以上から「おおー」と感嘆の声が上がったのはやはりロハス戦。衝撃シーンはいま見ても、何回見ても鮮烈だ。それは放った本人も同様だった。

 「あれくらいのKOしてやろう」。とてつもなく高いハードルを自分に課すことになったが、次戦から4連続KO勝利、さらに試合内容でも「劇画的」なダウンシーンを量産した。

 会見の最後、その左拳にかける言葉を聞かれると、こう言った。

 「強かったよ、と。まあまあ強かったんじゃないですか(笑)」

 謙遜するところがらしさだが、「まあまあ」なんてとんでもない。間違いなく漫画的とも言えるくらい、とてつもなく強かった。【阿部健吾】

引退会見を行った山中慎介さんは神の左と呼ばれた手をじっと見つめる(撮影・松本俊)

大相撲裏話

貴乃花親方「弟子と一緒に育っていく」貴源治と稽古

祝勝会の途中で報道陣の質問に答える貴乃花親方(撮影・鈴木正人)


 珍しい光景だった。千秋楽の朝、稽古場にいた貴源治が大柄の男と四つに組み合っていた。稽古場に記者は入れないため、外から窓越しに様子をうかがう。目を凝らして見ると、大柄の男は貴乃花親方だった。

 この日、7番相撲で勝ち越しを決めた貴源治にとっても驚きだった。「手取り足取りこうした方がいいと初めて言ってもらった」。効果てきめんだった。

 貴源治の双子の兄・貴公俊が付け人に暴行したことを、貴乃花親方は自分の責任だとした。元横綱日馬富士関の傷害事件の対応を巡り、日本相撲協会と対立。ピリピリとした雰囲気が、弟子に悪い影響を与えたと後悔した。だからこそ「少しでも気分転換になれば」と場所後半からは、これまでよりも近い距離で身ぶり手ぶりでの指導が増えた。

 「何が何でも師匠は師匠。親方が代わったら相撲を続けられない。2度と同じことが起きないように、部屋全体でなくそうとやっていきたい」と貴源治。貴乃花親方は「弟子と一緒に(自分も)育っていくべきだと思う」と決意した。師匠と弟子、一心同体で苦難を乗り越えようとしている。【佐々木隆史】

大相撲裏話

関取最軽量94キロの課題、10敗の炎鵬に重さの壁

炎鵬(2018年3月6日撮影)


 現役関取最軽量94キロで新十両の西14枚目炎鵬(23=宮城野)が180キロの徳勝龍に押し倒された。左への変化は見きられた。突き押しで体を起こされ、潜れなかった。「(考えたことが)空振りでした」。負け越しは決定済みで幕下陥落は確実の中での10敗目。今場所の十両の平均体重は156・3キロ。重さの壁を痛感している。

 炎鵬の兄弟子、平幕の石浦が言う。「友哉(炎鵬の本名)にはいろんなアドバイスがあると思う。『今のままでいい』とか『もっと太れ』とか。僕は太る努力をして欲しい。きっと違う世界が見えるので」。自分も小兵。13年初場所の初土俵時は96キロで、116キロの今も幕内最軽量だ。かつて無理に120キロにし、前に落ちる負けが続いた。やって初めて分かること。そこを知ってほしいという。

 炎鵬は十両を肌で知り、思うことがある。あと何キロ必要か。「10キロ。110キロあればそれに越したことはない。でも(せめて)105キロあれば、もっと相撲になる」。100キロ未満力士の新十両は01年初場所の小緑(99キロ)以来だったが、きっと身も心も大きくなって、十両に戻ってくる。【加藤裕一】