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原功「BOX!」

ディアス、プエルトリコ49人目の世界王者に輝くか


 米国の自治連邦区、カリブのプエルトリコは17連続KO防衛のウィルフレド・ゴメスや4階級制覇のミゲール・コットら数多くのスター選手を輩出してきたボクシング強国のひとつだが、1年半前には世界王者ゼロという低迷期を迎えた。しかし、その後は勢いを取り戻し、現在は世界王者4人(暫定王者含む)を抱えている。現役「5人目」の期待を背負っているのが、7月28日(日本時間29日)に伊藤雅雪(27=伴流)と拳を交えるWBOスーパーフェザー級1位のクリストファー・ディアス(23)だ。米国フロリダ州マイアミで行われるこの試合でディアスが戴冠を果たすと、プエルトリコ史上49人目の世界王者となる。

 プエルトリコに初の世界王座をもたらしたのはバンタム級のシクスト・エスコバルで、1934年の戴冠は日本初の白井義男氏(1957年にフライ級王座獲得)より23年も早い。以後、来日して圧倒的な強さを見せつけたカルロス・オルティス、17歳5カ月の最年少戴冠記録を持つウィルフレド・ベニテス、「バズーカ」の異名を持っていたゴメス、90年代から2000年代初頭にかけて活躍したフェリックス・トリニダードといった世界的なスター選手を輩出してきた。プエルトリコ初の4階級制覇を成し遂げたコットの試合ともなると、人々がテレビにくぎ付けになるため街の大通りがガラガラになったと伝えられたほどだ。世界戦のたびに50パーセント以上の視聴率を記録したファイティング原田の昭和30年代、40年代とオーバーラップするものが感じられる。

 しかし、1年半前には世界王者がゼロになるという危機的状況に陥った。そのピンチはWBOスーパーウエルター級王座を獲得したコットが救ったが、昨年12月の試合で敗れたのを最後に引退した。

 このベテランの奮起に触発されたのか、昨秋からフェザー級のヘスス・ロハス(31)、スーパーフェザー級のアルベルト・マチャド(27)、ライトフライ級のアンヘル・アコスタ(27)、そしてバンタム級のエマヌエル・ロドリゲス(25)が相次いで世界王座を獲得した。特に18戦全勝(12KO)のロドリゲスは次期スター候補と目される逸材で、井上尚弥(25=大橋)との統一戦が期待されている。

 こうしたなか、プエルトリコ史上49人目の世界王者の期待を背負っているのがディアスだ。8歳のときにボクシングを始め、アマチュアで137戦を経験後にプロデビュー。5年間で23連勝(15KO)をマークしているディアスは、伊藤との試合を前に「家族のためにも絶対に負けられない試合。世界王者になり、スーパーフェザー級王座を統一したい」と意気込んでいる。

 ディアスがプエルトリコ49人目の世界王者になるのか、それとも伊藤が日本のジム所属選手として90人目の世界王者になるのか。ボクシング強国の威信をかけた試合まで3週間あまりとなった。

大相撲裏話

新十両美ノ海「締め込み」に四苦八苦

名古屋場所2日目、翔猿(右)を押し出しで破る美ノ海(撮影・鈴木正人)


 幕下以下の力士が関取になるには壁がある。新十両美ノ海(25=木瀬)も今場所、それを味わった。11日目で決まった負け越し。3日目からの6連敗が響いた。パワー、スピード、技術…。いろんな敗因はあるが、思わぬ悩み? もあった。「締め込みにやっと慣れてきました。最初は息ができないほど苦しくて…。ガチッと締まりすぎて動きにくいんです」-。

 幕下までは本場所も、素材が木綿で価格1万5000円前後の「稽古まわし」を使う。関取が締めるのが「締め込み」だ。相場は100万円前後。一般的には後援者らが業者を通じて、関取に贈る。問題は素材だ。絹100%。フィット感がアバウトな綿素材と違い、体に張り付き、締まる。

 西幕下2枚目炎鵬(23=宮城野)も新十両だった春場所、締め込みに大苦戦した。「僕は15日間、締め方が決まらなかった。腰が入りづらく、動きがすごく制限される。特に小兵力士はみんな、苦労するんじゃないですか?」。十両復帰が有力な来場所では、巻く回数を4周から3周にすることを考えている。

 勲章が“難敵”になることもある。関取になるのは大変だ。【加藤裕一】

大相撲裏話

英乃海、翔猿、海猿…えっ3兄弟!?

英乃海


 某インターネット大相撲中継チャンネルが初日の8日、十両英乃海は「実の弟に十両の翔猿と序二段の海猿がいる」と紹介した。ん? 翔猿は確かに弟だが、海猿は…。早速、海猿に話を聞くと「今日で10回以上は言われてますよ」と苦笑いした。続けて「正也(翔猿)さんが詳しく知っています」。

 取組後、翔猿に事情を聴くと笑顔で明かしてくれた。海猿は16年初場所で、「海渡」のしこ名で初土俵を踏んだ。涼しげで切れ長の目が、自分と似ているということもありかわいがった。時にはツーショット写真を撮って、自身のインスタグラムなどに「弟です」などと投稿。伏線は張られていた。

 そして、春場所後の春巡業で翔猿が、芸人のゆんぼだんぷ藤原らに海渡を三男だと冗談で紹介。タイミング良く? 春場所で海渡は「海猿」に改名。「英乃海の海と翔猿の猿を取って海猿にしたんです」と、作り話をした。それをゆんぼだんぷ藤原が、ツイッターで拡散して冗談話が独り歩きしてしまい世に広まった。

 間違いではあるが、翔猿は全く気にする様子はなく「今度は3人で写真撮ります」と今後も“3兄弟”をアピールするという。皆さん、間違わないようお気を付け下さい。【佐々木隆史】

翔猿
新弟子検査時の海猿(2016年1月6日撮影)

原功「BOX!」

第1回WBSSクルーザー級王者はガシエフかウシクか


 WBA世界バンタム級王者、井上尚弥(25=大橋)が第2回大会に参戦することで日本でも注目を集め始めている高額賞金トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」。その第1回大会のクルーザー級決勝戦が21日(日本時間22日)、ロシアの首都モスクワで行われる。WBA王座とIBF王座を持つムラト・ガシエフ(24=露)と、WBC&WBO王者のオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)が対戦するもので、勝者は4団体の統一王者になるとともに優勝賞金1000万ドル(約11億2000万円)を手にする。

 WBSSの第1回大会はスーパーミドル級とクルーザー級の2階級に各8選手、合計16選手が参加して昨年9月に開幕した。クルーザー級は主要4団体の4王者がエントリーし、いずれも初戦を突破。そのため準決勝2試合は王者同士の対決となり、ガシエフとウシクが激闘を制して決勝に駒を進めた。

 「アイアン(鉄人)」というニックネームを持つガシエフは27戦26勝(19KO)1無効試合という戦績を残している192センチの長身強打者で、WBSS初戦を3回KO、準決勝を12回TKOで勝ち上がってきた。特に22戦全勝(21KO)のWBA王者、ユニエル・ドルティコス(32=キューバ/米)を最終回で仕留めた試合はドラマチックで、自身の評価をアップさせるとともにロシアのファンの期待も大きく跳ね上げた。

 これに対し12年ロンドン・オリンピック(五輪)ヘビー級金メダリストのウシクはサウスポーの技巧派で、プロでは14戦全勝(11KO)の戦績を残している。WBSS初戦は元世界王者に10回TKO勝ち、準決勝では23戦全勝(18KO)のWBC王者、マイリス・ブリエディス(33=ラトビア)の地元に乗り込んで12回判定勝ちを収めている。大会開始時から本命とみられており、決勝まで順当に駒を進めてきたといえる。

 もともと決勝戦は5月にサウジアラビアで予定されていたが、ウシクが左腕を痛めたため延期され、開催地もロシア(モスクワ)に変更された経緯がある。そのためか、当初は7対3でウシク有利と出ていたオッズは徐々に接近。7月に入ってからはウシク有利の数字が5対4まで縮まっている。ちなみに自力で4団体王座の統一を果たした選手は、ミドル級のバーナード・ホプキンス(米)とスーパーライト級のテレンス・クロフォード(米)だけで、ガシエフ対ウシクの勝者が史上3人目となる。

 攻撃型のガシエフが前に出ながら圧力をかけ、技巧派サウスポーのウシクが迎撃する展開が予想される。総合力は接近しており、接戦になりそうだ。ただし、200ポンド(約90・7キロ)を体重リミットとするクルーザー級はヘビー級の次に重い階級だけに、一発でKOという可能性もある。

 ガシエフにはミドル級V20王者、ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)が師事するアベル・サンチェス・トレーナーがついており、一方のウシクには3階級制覇の天才、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)の父親、アナトリー・ロマチェンコ・トレーナーがついている。選手個々の力量だけでなく、参謀の戦術、チーム力にも注目したい。

 なお、井上が参戦する第2回大会のエントリー選手と組み合わせ発表は、このガシエフ対ウシクの試合の前日、20日(日本時間21日)にモスクワで行われることになっている。

リングにかける男たち

松葉づえ姿で「できることをやる」中邑のプロの流儀


 胸にスッと入ってくるコメントだった。「今、自分ができることをやるしかないってことですね」。6月29、30日のWWE日本公演で一時帰国した中邑真輔のメリハリの効いた言葉は心地よく感じた。

WWE日本公演であいさつする中邑真輔(C)2018 WWE,Inc.All Rights Reserved

 日本公演の直前となる6月25日のスマックダウン大会の前、警察犬にかまれて左足を負傷した。全治は2週間。「自分としては2年ぶりの東京。パフォーマンス、トレーニングと最善と尽くしてきた。まったく本当に想定していないことが起こった」と振り返り「もう悪夢としか思いようがないですよね。いろんな人に『何、笑い話を作ってるんだ』って言われましたよ。(自分は)シャレにならねえよと」。一瞬、くすぶる怒りを抑えているようにも見えたが、最終的には現状を受け入れ、消化している姿勢に中邑のプロフェッショナルを感じた。

 日本に同行していたWWEのトレーナー、ドクター、プロデューサーと協議し「その中で自分ができること」と、両日ともに松葉づえ姿でリングに上がった。第1日は自らの口で「悔しいワン」とジョーク交じりに欠場報告。サモア・ジョーの襲撃も受け、コキーナクラッチで絞められた。第2日にはサモア・ジョー、ダニエル・ブライアンを挑戦者に迎えたWWEヘビー級王者AJスタイルズのトリプルスレット形式の王座戦に乱入。前日に襲われたサモア・ジョーに対し、お返しの急所攻撃を見舞った。メインイベント後にはマイクを握り、WWEヘビー級王者なって帰国することを約束して大会を締めくくった。

WWE日本公演でのあいさつで笑顔もみせた中邑真輔 (C)2018 WWE,Inc.All Rights Reserved

 試合はしなくても、2日ともに中邑の試合を楽しみにしていた観客たちを喜ばせた。「少し無理した部分もありますけど」と苦笑しつつ「リングに立って足が痛いです。かわいそうでしょっていうのは中邑真輔ではない。いかに制約された中で、中邑真輔を落とし込めるかっていうのが、日々、日ごろやってきたことですから。それをみせるってこと」。言行一致した2日間をみせたと言っていい。

 好きなことばかりを仕事にできるわけではない。好きなことだけやってお金をもらえる時代でもない。取り巻く環境や世界、そして関係する人間に責任を転嫁し、不平不満を態度に示す人が意外に多いこの世の中。与えられた環境に不満を募らせ、あからさまに態度や行動で表す人も少なくない。最終的にすべてを受け入れ、現時点の最大限、フルパワーで目の前の仕事に取り組むことは容易ではないからなのだろう。「今、自分ができることをやるしかないってことですね」。簡単に聞こえるが、実に難しい行動なのだと思える。

15日のPPV大会でUS王座を獲得した中邑真輔(C)2018 WWE,Inc.All Rights Reserved

 松葉づえ姿でもスーパースターとしての仕事をまっとうした中邑のプロの流儀。負傷の癒えた2週間後の7月15日のPPV大会エクストリーム・ルールズ(米ピッツバーグ)で、中邑は日本人3人目のUS王座(02年以降、WWEとなってからは日本人初)を獲得した。老若男女関係なく、彼の言葉に見習うことが多い。【藤中栄二】

大相撲裏話

ファンの声に「いいよ」二所ノ関親方の写真

10日、名古屋場所の会場に姿を見せた二所ノ関親方


 昨年10月に頭部を手術した二所ノ関親方(61=元大関若嶋津)が、3日目に取材に対応した。一時は意識不明の重体で、安否を気遣うファンの声は多数。名古屋場所の会場内を、つえなどを使わず自力で歩く中、そんなファンの声を伝えると、二所ノ関親方は「そうか、いいよ」と、写真撮影に快く応じた。手術後、初めての取材対応だった。

 実は3月の春場所前の時点で、会話もできるほど回復していた。だが、それが知れ渡ると、見舞客が後を絶たなくなる可能性があった。当時、ある部屋関係者に「話せるとはいっても、まだ流ちょうではないし、体力を使うので、その情報を出すのは控えてほしい。親方は気を使う人。見舞いに来てくれた方には、一生懸命応対してしまうから」と言われた。見舞客の応対で体調を悪化させては本末転倒。記者失格かもしれないが静観することにした。

 今回、二所ノ関親方が取材に応じたと複数の部屋関係者に伝えると、いずれも「ぜひ報じてください」と返答された。自転車で転倒した際に左脳を強く打ち、右半身はやや反応がにぶいという。だが補助付きではない普通のはしも使いこなし、家族との散歩が日課で稽古にも顔を出すという。部屋関係者の明るい対応に、今後のさらなる回復を確信した。【高田文太】

大相撲裏話

千代の国で4人目「横綱戦不戦勝」×2

鶴竜が休場で不戦勝となった千代の国(撮影・前岡正明)


 運も実力のうちと言うべきなのか。千代の国が今場所2度目の横綱戦不戦勝となった。4日目の白鵬に続き、鶴竜が休場。相撲を取らずに勝ち名乗りを受けて、涼しい顔で支度部屋へと戻ってきた。

 昭和以降、1場所で2度も横綱戦で不戦勝した力士は4人目となった。絶対的存在として立ちはだかる横綱。平幕上位力士にとっては、金星獲得の好機でもある。そんな相手に相撲を取らずして2勝は、単に勝ち越しのことだけを考えれば最高の白星だ(不戦勝は金星にならない)。

 過去の3人は、その場所で勝ち越している。中でも元関脇栃乃洋の竹縄親方は、2度目の不戦勝で勝ち越しを決めた。同親方は「それで勝ち越しましたから。疲れで言えば楽は楽。でも流れが変わらないように体は動かしてました」と、当時を振り返った。

 横綱戦で2度も不戦勝となり、千代の国はさぞかし喜んでいるだろうと思ったが違った。「結びの一番でやりたいというのはありました。喜んでばかりはいられない」とポツリ。まずは今場所勝ち越して、横綱と対戦できる地位を守る。そして、来場所こそ真っ向勝負を挑む。【佐々木隆史】

昭和以降、1場所で横綱に2度不戦勝した力士

大相撲裏話

岡山出身の西大司、西日本豪雨の地元へ勇気を

記者の質問に答える西大司


 岡山市東区出身の西幕下60枚目西大司(24=入間川)が、西日本豪雨で被災した地元をおもんぱかった。桜児竜を寄り切り2番目にして初日を出したが、もどかしい気持ちは抜けきれなかった。

 「自分が育った場所のすぐそこなので本当に大変だなと」

 豪雨の影響で県内の死亡者は11日(午前11時)時点で56人に上る。実家は無事だが、近所の河川は氾濫。中心部が濁流にのまれた倉敷市真備町の中学校では、相撲部のまわしが豪雨で流された。自身の母校ではないが「心配です」と遠くを見据えた。

 地元出身の力士として勇気を与えたい。岡山県出身の力士で最後の関取は、09年7月名古屋場所で在位した元十両琴国が最後。自己最高位は先場所の幕下42枚目で簡単な道ではないが「目指してやっていく」と目線はぶれない。

 母校の岡山理大付高は野球部を中心に運動部が盛ん。同学年の野球部員と食事などで交流することも多く、1学年上でOBのロッテ藤岡裕やDeNA柴田がプロの舞台で活躍する姿を見て、刺激を受けている。面識はないが「同じ岡山県出身として盛り上げていければ」と活躍を誓った。【佐藤礼征】

原功「BOX!」

パッキャオ1年ぶりのタイトル戦はKOはらむ白熱した戦い期待


 6階級制覇の実績を持つスーパースター、マニー・パッキャオ(39=比)が15日、マレーシアの首都クアラルンプールでルーカス・マティセ(35=亜)の持つWBA世界ウエルター級王座に挑戦する。かつて米国でセンセーションを巻き起こしたサウスポーも12月には40歳になる。近年は衰えを隠せず、昨年7月には伏兵にWBO世界ウエルター級王座を奪われており、これが1年ぶりの再起戦でもある。相手のマティセは82パーセントのKO率を誇る強打者。パッキャオがKO負けを喫するようなことがあれば、引退の危機に瀕する可能性もある。

 パッキャオは19歳で約50.8キロ以下のフライ級王座を獲得したのをはじめ、約69.8キロ以下のスーパーウエルター級まで6階級で世界一の座についた。この間の体重差は実に19キロ。もうひとりの6階級制覇王者、オスカー・デラ・ホーヤ(米)が乗り超えた体重の壁が13キロだったことを考えると、いかにパッキャオの記録が偉大であるかが分かるだろう。

 パッキャオの身長は166センチ、リーチは170センチで、これは現WBA世界バンタム級王者の井上尚弥(25=大橋)とほぼ同じ数字だ。その小さな体で、ひと回り、ときにはふた回りも大きな相手に真っ向勝負を挑んでいったのだから人気が出ないはずがない。6階級目となるスーパーウエルター級王座決定戦で拳を交えたアントニオ・マルガリート(メキシコ)は身長180センチ、リーチ185センチだった。

 しかし、歴戦の疲労が蓄積したのか、単に年齢からくる衰えなのか、12年以降の9戦は5勝4敗とスランプ気味だ。相手がフロイド・メイウェザー(米)ら世界王者経験者がほとんどとはいえ、9年間、13試合もKO勝ちから遠ざかっているとあっては、かつてのような注目度を維持するのは難しいといえる。

 そうした中、今回の試合はパッキャオ自身が相手を指名し、自身でプロモートするかたちで実現した。17年間も指導を仰いだフレディ・ローチ・トレーナーとのコンビを解消し、新チームで臨む試合でもある。ちなみにマレーシアで世界的な注目ファイトが行われるのは、1975年7月のモハメド・アリ(米)対ジョー・バグナー(英)の世界ヘビー級タイトルマッチ以来43年ぶりとなる。

 相手のマティセは44戦39勝(36KO)4敗1無効試合という攻撃型の強打者で、今年1月に現王座を獲得した。ニックネームは「ラ・マキナ(機械)」。強くて正確な左右のパンチで数々の強豪をキャンバスに沈めてきた。知名度ではパッキャオに及ばないが、パワーでは6階級制覇王者の上を行く。「パッキャオが偉大な選手であることは認めるが、全盛期の力はない。私がKOで勝つだろう。この試合で引導を渡す」と強気のコメントを発している。

 オッズは9対5でパッキャオ有利と出ている。スピードを生かして左右に揺さぶりをかけながら機をみて飛び込み、左ストレートで鮮やかなKO勝ち-そんなシーンをパッキャオのファンは期待している。

 一方でリスクの高い試合であることも事実だ。パッキャオは23年半のプロキャリアで22度の世界戦(16勝8KO4敗2分)を含め68戦59勝(38KO)7敗2分のレコードを残しているが、マティセはパッキャオが世界戦で拳を交えたのべ22人の誰よりも高いKO率を残しているのである。

ひとつのミスも許されないのはパッキャオもマティセも同じこと。序盤からKOのスリルをはらんだ白熱した攻防が展開されそうだ。

大相撲裏話

貴公俊、処分明け初白星「親方、ファンに恩返しを」

貴公俊の取組を見守る貴乃花親方(撮影・岡本肇)


 西幕下49枚目貴公俊(21=貴乃花)は、自然と笑みをこぼした。春場所中の付け人への暴力行為により下った、夏場所出場停止処分。その処分明け最初の取組で、東幕下49枚目琴欣旺を寄り切りで破って白星を挙げた。「久しぶりに緊張した。(休場は)1場所だけど懐かしい感じがしました」と本土俵に立った喜びをかみしめた。

 立ち合いで鋭く踏み込み、一気に寄り切った。圧勝にも見えたが実は取組直前、土俵に上がろうとした時に右膝が外れるアクシデントに見舞われていた。しかし、その場で自分ではめ直して土俵に上がった。「気合が張りすぎました」と、気持ちが空回りするほどに力が入っていた。

 しかし謹慎中、気持ちは落ちに落ちていた。そんな時、スマートフォンでインターネットを見ていると、10年に起こった大相撲の野球賭博問題の記事が目に入った。記事を読んでいるうちに、謹慎処分を受けながらも今なお、幕内上位で活躍する先輩力士の存在を知った。「僕と同じように謹慎を受けても、上位で活躍しているのに励みを受けました」と発奮材料にした。

 当然、これでゴールではない。「結果を残して残念な気持ちにさせた親方、ファンの方に恩返しがしたい。心も体も強い力士になりたい」。まずはみそぎの場所を全うする。【佐々木隆史】

リングにかける男たち

笑いと驚き大好き新日メイ社長はタグチジャパン系?

大阪城ホール大会の試合前にリング上で握手を交わす新日本プロレスのハロルド・メイ社長(左)と菅林直樹会長(2018年6月9日撮影)


 つかみはばっちりだったのではないか。新日本プロレスの新社長に就任したハロルド・メイ氏だ。

 6月9日の大阪城ホール、第1試合前に流された3分超の“大作”あおりVTR。作り込まれたそれは、メイ社長自らが出演し、シャワーシーンのサービスショット? まで盛り込まれた、紹介映像だった。外資系企業で数々の実績を重ねた「プロ経営者」が、なぜ新日本プロレスを新天地に選んだのか。

 東京の木谷オーナーから携帯電話に連絡が入り、それをニューヨークで受ける設定。木谷オーナーは打診の理由を述べる。

 「新日本プロレスはこれから何が大事かというと、もっと世間に対してメジャーにする、いわゆるマーケティングやブランディングの強化。そんな時に誰が適任なのかと思ったら、もうこの人しかいないんじゃないかなと。すごい経営者だと思いますよ」。

 その言葉を背景に、映像では飛行機が日本に降り立ち、サングラス姿の名社長が来日した姿が描かれる。日本に住んでいた8歳の時にテレビでプロレスを見て魅了され、10年前に再び新日本にのめり込んでいったことなどが語られる。英語のせりふとともに、なんとも「出来る男」ぶりが描かれるのだが、ここからの転調に目を見張った。

 大阪城ホールに向かう車内に映像は移るのだが、ここで登場するのは、なんとたこ焼きだ。大阪の名物であるが、なんともコテコテ感が満載。それまでのすご腕のイメージとはギャップが大きいような感覚。箸を使って、舟皿からなんともおいしそうにほお張るが、どこかおかしみがある…。

 その後、なぜ「たこ焼き」だったのかが、少し分かった気がした。メイ社長、実は人一倍サービス精神旺盛で、人を笑わせ、驚かせることが大好き。大阪城ホールから数日後にインタビューした際に、「自分が分類されるならタグチジャパン」と定義していた。タグチジャパンと言えば、田口隆祐が監督を務める、どこか間の抜けたような楽しさを提供するユニット。戦いの中にも笑いを忘れない、そんなメンバーに自身を位置付けていた。確かに前職のタカラトミー社長時代には、率先してハロウィーンの仮装に凝ったり…。

 「お披露目は1回しかないから」と気合が入っていた大阪城ホールでの登場にも、そんな精神に満ちていたのだろう。あえてシャワーシーンで格好良く決めてからの、たこ焼きシーンの落差は確実に「狙い」にきていたと思う。そして、その人柄こそが、このオランダ人新社長の魅力の1つだ。

 6カ国語を操り、流ちょうに日本語を話す姿は、「外資系」というどこか冷たさのある響きとは無縁。インタビュー中も、陽気に明るく、楽しい話を聞かせてもらった。これからどんな「サプライズ」を提供してくれるだろうか。【阿部健吾】

大相撲裏話

稽古で完敗に不安の栃ノ心、本場所入ればV絡む実績

新大関栃ノ心(右)(2018年6月26日撮影)


 新大関で臨む名古屋場所(8日初日、ドルフィンズアリーナ)を目前にして、栃ノ心(30=春日野)が、かなりへこんでいる。

 「苦しいよ。昨日も豪栄道関に全然勝てなかったし、きょうは栃煌山関に…。苦しいよね。勝てないと、悲しいね」

 4日は境川部屋での出稽古で、先輩大関に0勝11敗。私は生で見ていないが、居合わせた関係者によると「全部完敗」だったらしい。で、5日は部屋で通常の朝稽古。いつもは栃煌山、碧山と関取3人でゴリゴリやり合うのだが、この日は左足かかとが痛む碧山が見合わせたので、栃煌山と三番稽古。16番とって、7勝9敗だった。

 しかも、十八番の「右四つ」にもっていけたのは1番だけ。序盤に2番、思い切って左をさして、押し込む“いい相撲”はあったものの、その他は勝っても引いて落とすなど、内容的にはダメ。つまり豪栄道、栃煌山と2日間通算27番で、気持ち良く勝ったのは1番しかなく…って、そらまあ落ち込むか。

 「当たりがちょっと弱いのかな? (立ち合いの体勢が)高いのかな?」

 豪栄道も栃煌山も、低く力強い立ち合いが持ち味。もともとやや腰高の栃ノ心には、やりづらい相手の上、ともに自身の取り口を熟知してるから、簡単にまわしを許してくれない。

 「(自分と)やりやすいんじゃない? もう思い切ってぶつかっていくしかないよ」。気持ちを奮い立たせようと、必死に自分に言い聞かせていた。

 それでも、春場所、夏場所前のことを思えば、名古屋場所は「問題ないやろ」と思うんです。もちろん素人なりになんですが。

 春場所前は、初場所の初優勝で勢いに乗り、大阪入り後絶好調。初日6日前にして「もういつ初日でもいい。明日でもOK」と豪語してた。ところが翌日、豪栄道との稽古で左足外側付け根をブチッとやった。「…調子よかったのにな…」とこの世の終わりのような顔で迎えた場所だったが、10勝5敗で乗り切った。

 夏場所前はどうだったか。この日と同じく初日3日前に栃煌山と10番とって4勝6敗。同じように右四つにほとんど持ち込めなかった。現在、夏場所で痛めた右手首に不安を抱えているが、当時は春場所で痛めた右肩に、今より大きな不安を抱えていた。場所に入ると、朝稽古で相撲を一切取らず、若い衆への胸出しだけで調子を整えた。そんな中で12連勝(1不戦勝含む)して13勝2敗。横綱白鵬にも初めて勝って、大関昇進を決めた。

 …そんな風に思うので、こう聞いてみた。

 大関、春場所と夏場所と比べたら、相撲とれるだけええんちゃいますの?

 「う~ん、ダメだ、ダメだと思ってたら、気持ちがダメになるからね。気持ちが大事。一日一番、気合入れてやりますよ」。

 場所中の朝稽古は、夏場所のように若い衆に胸を出すだけになるかもしれないらしい。そこは「状態を見ながらね」という。

 場所に入れば「何じゃ、あの怪力」と驚く相撲を普通に見せる、優勝戦線に絡む-。普通にそう思う。なんべんも言いますが、素人考えですけど。【加藤裕一】

リングにかける男たち

ベイダー追悼…規格外だった懐かしの外国人レスラー


甲冑をまとって入場するビッグ・バン・ベイダー

 あのビッグバン・ベイダーが他界した。87年12月、新日本プロレスの両国大会に「たけしプロレス軍団」(TPG…タマゴかけご飯=TKGみたい)の刺客という触れ込みで、猪木をあっさりフォールした。当時学生の私はテレビで見て憤ったもんな…TPGも、「皇帝戦士」いうキャッチもようわからんかった。何より唐突過ぎて「何じゃこれ?」てな感じで。場内のファンは「なめとんのか?」と騒いで暴動になった。プロレスの“うさんくささ”は毒にも薬にもなるけど、まあ猛毒でしたなあ…。

スタン・ハンセン(左)にドロップキックを放つビッグ・バン・ベイダー

 ただ力はすごかった。パワー殺法はもちろん、190センチ、170キロで宙を舞う軽やかさまであったりしましたからね。

 当時はスーパーヘビー級レスラーが山ほどおった。新日本では、ベイダーの約1年前に初来日したスティーブ・ウイリアムス。岡八郎さんもビックリの奥目でいかつい顔は、キャッチの「殺人医師」にぴったり。強烈でえげつない投げ。「岩」みたいな体つき。プロレスが上手な印象はなかったけど、逆にそれがすごみを感じさせて“最強説”を唱える向きも多かったと思います。

 クラッシャー・バンバン・ビガロもすごかった。初来日が87年1月。つるつる頭に彫り物をして191センチ、170キロの体でムーンサルト・プレスを決めたりしてた。体形はマッチョやなく、明らかなデブやのに。当時実況の古舘アナがつけたキャッチは確か「空飛ぶ入れ墨獣」。うまいよな。

 90年に初来日したトニー・ホームもいかつかった。元はフィンランドのヘビー級ボクサー。橋本真也をパンチで圧倒してた。「腕っ節が強い」という言葉が彼ほど似合うレスラーはおらんのやないでしょうか。

 全日本に来てた外国人では、テリー・ゴディもすごかった。キャッチは「人間魚雷」。パワーボムの元祖って言われてるけど、引っこ抜くようなバックドロップもえげつなかった。195センチ、135キロの体つきはビルドアップしたというよりバランス良く鍛えた感じで、ナチュラルな強さが印象的でした。

左からスティーブ・ウィリアムス、クラッシャー・バンバン・ビガロ、テリー・ゴディ

 …てな感じが、53歳のオヤジによる30年ほど前の“独断的スーパーヘビー級列伝”です。ベイダーの死で思い出すまま書きました。大変驚くことに彼らは全員、すでに他界しております。中にはステロイド服用の影響があった人もおるんでしょうが、実に悲しい。規格外のパワーに圧倒され、もん絶する日本人レスラーとの攻防。…見てて力入ったもんなあ。

左からケニー・オメガ、クリス・ジェリコ、ジェイ・ホワイト

 最近はどうか。フィールドを新日本に絞って見ると、IWGPヘビー級王者ケニー・オメガは183センチ、92キロ。IWGPインターコンチネンタルヘビー級王者クリス・ジェリコは182センチ、103キロ。IWGP USヘビー級王者ジェイ・ホワイトは186センチ、100キロ。みんな、うまい、速い、技もすごい。見てて、楽しい。素直にそう思う。でもちょっと物足らん。文句なしのド迫力っちゅうプラスアルファがないもんか…。まあ、いにしえのプロレスを愛するオヤジのたわごとですけど。【加藤裕一】

大相撲裏話

鶴竜W杯に熱視線 同世代の本田、ロナウドに注目

鶴竜(2018年5月28日撮影)


 サッカーワールドカップ(W杯)で、日本代表が決勝トーナメント進出を決めた。名古屋場所(7月8日初日、ドルフィンズアリーナ)が近づく中、相撲界で、誰よりも日本代表の戦いぶりに熱視線を送っているのが横綱鶴竜(32=井筒)だ。8歳の時に94年W杯米国大会をテレビで見て、優勝したブラジル代表に魅了されて以来という、筋金入りのサッカーファン。今大会の開幕前も、日本代表はこう戦うべきと持論を展開し、本紙でも大きく掲載した。

 思い返すと、鶴竜の持論は随所で的中していた。4バックと2ボランチで、個人の能力に秀でた相手FWを挟んで封じる策は、そのまま用いられ、実際に相手エースに仕事をさせなかった。無駄にクロスを上げるなという提言は、鶴竜の言葉を耳に入れて戦ったのではないかと思うほど、従来よりも本数は減った。パスとドリブルで崩したことで、攻撃のリズムが生まれていた。何よりも本田のトップ下起用を大会前から強く推す、数少ない“専門家”だった。本田の活躍はご存じの通り、初戦コロンビア戦で大迫の決勝点をアシスト、2戦目セネガル戦では自ら同点ゴール。1次リーグで日本が得た勝ち点4に大きく貢献した。

 また、今大会で最も注目しているのは、ポルトガル代表FWクリティアーノ・ロナウドだという。同じ1985年生まれというのが、最大の理由だ。日本の制度に当てはめれば、鶴竜は8月生まれでロナウドは2月生まれとあって学年は違う。ロナウドが1学年上に当たるだけに「競技は違うけど、同世代の選手のことは気になりますよね。ロナウド選手は、マンチェスター・ユナイテッドで活躍し始めたころから注目しているけど、ずっと一流のプレーを見せ続けている。本当は肉体的には、20代のころよりも落ちている部分もあると思うけど、それをまったく見せない。本当にすごい」と、余計に尊敬の念を抱く。

 鶴竜は父が大学教授とあって、その血が騒ぐのか、ロナウドの活躍の源が精神的な部分に由来するのか、経験や蓄積に由来するものなのか、それを知りたいという。競技は違えど、横綱と国際サッカー連盟最優秀選手賞受賞という、その道の頂点に立ったアスリートとして、興味は尽きないようだ。

 鶴竜昨年、6場所中5場所で休場し、一時は進退問題にまで発展した。「ただ休んでいたわけではなくて、出場していない時こそ稽古していた」と、今だからこそ言える。だが内心では、稽古が成果として出るかどうか、肉体的な衰えが出てしまうのではないか、不安を抱えていたと思う。それでも今は、そんな不安な日々も糧になったと考えられるようになった。

 同じく同世代で、1学年下の本田の活躍を予想していたことも、きっと自身と重ねて、期待を込めていた部分も大きかったのではないかと思う。そこから、もう1歩先へ。ロナウドのように突き抜けた存在になることを、本田に期待もしているだろうし、自身も相撲界でそういう存在になりたいと願っているのだろう。サッカーについて話す熱い言葉の端々から、そう感じずにはいられなかった。【高田文太】

原功「BOX!」

圧倒的不利予想の呂斌、史上最速プロ2戦目での戴冠なるか


 WBA世界ライトフライ級12位にランクされる呂斌(ルー・ビン 23=中国)が7月15日、マレーシアの首都クアラルンプールで同級王者のカルロス・カニサレス(25=ベネズエラ)に挑む。16年リオデジャネイロ五輪に出場した経験を持つ呂は昨年9月のデビュー戦で3回TKO勝ちを収めており、これがプロ2戦目となる。勝てば現WBA世界ライト級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)らが持つ「3戦目」を更新する史上最速の戴冠記録となる。この日のメインカードは、6階級制覇の実績を持つマニー・パッキャオ(39=比)がルーカス・マティセ(35=亜)に挑むWBA世界ウェルター級タイトルマッチだが、記録のかかる前座試合も注目を集めそうだ。

 呂はアマチュア時代に12年ユース世界選手権で優勝し、13年アジア選手権では銅メダルを獲得。21歳のときにはリオデジャネイロ五輪にも出場した(ライトフライ級2回戦で敗退)。昨年9月に北京でプロデビュー戦を行い、3回TKO勝ちを収めた。相手は17戦8勝(6KO)9敗という戦績のタイの選手だったが、この試合で呂は空位のWBCアジア・ライトフライ級シルバー王座を獲得。世界戦の計画が浮上した今年になって、取ってつけたようにランキング入りを果たした。中国系ファンの動員を狙ったマッチメークといわれてもいる。

 サウスポーの呂は細かく動きながら出入りしてワンツーを繰り出すボクサーファイター型で、今回の挑戦が決まってからフィリピンに遠征。パッキャオと一緒にトレーニングしてアドバイスをもらい、モチベーションを上げている。

 そんな呂の挑戦を受けるカニサレスは4年のプロキャリアで21戦20勝(16KO)1分のレコードを残している強打者だ。16KOのうち12度は3ラウンド以内でけりをつけており、速攻型ともいえる。16年12月に来日して当時のWBA王者、田口良一(31=ワタナベ)に挑戦したが、このときは前半でリードしたものの中盤から田口の追い上げにあい引き分けに終わった。その後、IBF王座も獲得した田口がスーパー王者に格上げされたことにともない今年3月にWBA王座決定戦が行われ、カニサレスは小西伶弥(24=真正)に判定勝ちを収め戴冠を果たしている。呂との試合が初防衛戦となる。

 130年超の近代ボクシングの歴史上、最も少ない試合数で世界王座を獲得したのはセンサク・ムアンスリン(タイ=1975年にWBCスーパーライト級王座獲得)とロマチェンコ(2015年にWBOフェザー級王座獲得)の「3戦目」だが、呂が勝てばこれを更新することになる。しかし、ムエタイ(キックボクシング)で豊富な経験があったうえプロでも世界ランカーを連破したセンサクと、アマチュア時代に五輪連覇を果たし、プロデビュー戦で世界ランカーを一蹴したロマチェンコと比べると、呂の実績は心許ないものといえる。

 また、呂が戴冠を果たせば熊朝忠(シオン・チャオ・チョン=2012年にWBCミニマム級王座獲得)、雛市明(ゾウ・シミン=2016年にWBOフライ級王座獲得)に次いで中国3人目の世界王者となる。

 圧倒的不利の予想を覆し、呂は新たな歴史を刻むことができるか。

リングにかける男たち

世界一性格悪い鈴木みのるは仲間、ファンのため闘う


 プロレスラー鈴木みのる(50)のキャッチフレーズは「世界一性格の悪い男」だ。その鈴木が、頸椎(けいつい)完全損傷で首から下が動かなくなった高山善広(51)を支援するTAKAYAMANIA実行委員会で、高山のために働いている。

3冠ヘビー選手権 敗れた鈴木みのるは防衛に成功した高山善広の右腕を持ち上げ健闘をたたえる(2009年5月30日撮影)

 8月31日には、後楽園ホールで高山支援大会「TAKAYAMANIA ENPIRE」を開催するという。鈴木はメインの6人タッグに出場する。「相変わらず口は達者なので、今回の大会であいつをどんどん悔しがらせてやろうと思う。いつか、あいつには、トップロープをまたいでリングに入ってもらいますよ。自分でけじめをつけてもらいます」と、口は悪いが愛情あふれるコメントをした。

 自分の30周年記念大会を横浜赤レンガ倉庫の広場で無料開催した。「一番最初に出した条件が、無料で青空の下でやることだった」と、新日本プロレスIWGPヘビー級前王者オカダ・カズチカとのビッグマッチを無料で実施した。生まれ育った横浜のプロレスを知らない人や、子どもたちに見せるためだ。

横浜赤レンガ倉庫での30周年記念大会でオカダ・カズチカ(左)と対戦した鈴木みのる(2018年6月23日撮影)

 今やプロレス界で独り勝ちの新日本で、フリーながら異彩を放つ鈴木。プロレスラーとして、近寄りがたいオーラをまとっている。そんな鈴木が中心になって開催する2つのイベントから、鈴木の人間らしさが垣間見えた。

 50歳になっても、リング上では、オカダや内藤、棚橋らとひけを取らない動きで、会場を盛り上げる。「プロレス界で1番練習しているから」と、自信満々で胸を張る。「世界一性格の悪い男」は、今日も、闘病中の仲間や、ファンのため、プロレスのために戦い続ける。【バトル担当=桝田朗】

大相撲裏話

けがの苦しみ知る阿夢露スポーツトレーナーで再出発

断髪式で師匠の阿武松親方から止めばさみを入れられる元前頭の阿夢露(2018年6月16日撮影)


 ロシア出身で夏場所前に引退した元幕内力士の阿夢露(あむうる、34=阿武松)が16年にわたる力士生活に別れを告げた。さる16日、部屋近くの千葉・幕張本郷にあるホテルで関係者約150人が出席して断髪式が行われ、最後に師匠の阿武松親方(元関脇益荒雄)が止めばさみを入れた。

 手塩にかけて育てた弟子の、第2の人生の船出に、師匠は16年前に思いをはせた。「場所前に『力士になりたい』と訪ねてきましたが、ちゅうちょしました。細い体を見て『モデルさん?』って。『ロシアに帰って考え直したら』と言ったんです」。2人きりで対面した焼き肉店でのことだった。

 一時帰国した阿夢露だったが、すぐに再来日し「やりたいです」と直訴。その熱意にほだされて入門を許可。以後、師匠いわく「宝くじに当たったような真面目な力士として、部屋の手本だった。ケガに次ぐケガにもあきらめず、へこたれずにやってきました」と目を潤ませる。10年かけて12年初場所で新十両に。外国出身力士では史上2位のスロー昇進だった。

 だが、晴れのその場所で右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂。序二段まで番付を下げたが、約2年をかけて関取に復帰。「トレーナー、治療の先生、病院の先生が『チーム・アムール』として、ロシアの真面目な青年を幕内に引っ張り上げようと応援してくれた」(阿武松親方)のが実を結び、4場所後には待望の新入幕、その1年後には最高位の東前頭5枚目まで番付を上げた。こちらの方は、外国出身力士で1位のスロー出世だった。

 192センチ、125キロの細身の体で、相撲は「左前みつしか武器がない」(同親方)という性格そのままに、愚直に前に出る相撲で活躍した。やはり三役からケガで幕下まで陥落しながら大関の座を射止めた、同じ東欧(ジョージア)出身の栃ノ心(春日野)も多忙なスケジュールを縫って、断髪式後のパーティーに駆けつけた。言葉や文化の壁、重傷を乗り越えるなど、同じような境遇で歯を食いしばってきた“戦友”に、部屋も一門の壁もない。

 ケガに悩まされてきた相撲人生。第2の人生は、経験を生かしスポーツトレーナーを目指すという。「ケガも多かったけど、いろいろな先生にみてもらった。自分もスポーツ選手を支えたい」。資格を取るために、まずは4月から日本語学校に通っている。「簡単な漢字は書けるけど、もっと勉強しないといけないから」。日本での永住権も持っているそうで「国籍を変えることはないけど、日本に残ります」と言う。焦らず腐らず土俵生活を送ってきた苦労人は、第2の人生も地道にコツコツと積み上げて行く。それが成功への道であることは、身に染みて分かっている。

原功「BOX!」

この秋、ミドル級とヘビー級でスーパーファイト実現


 この秋、ミドル級とヘビー級でスーパーファイトが実現することになった。ミドル級はWBAスーパー王座とWBC王座を持つゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)対元2階級制覇王者、サウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)の再戦で、試合は9月15日、米国内で行われる。ヘビー級はWBAスーパー、IBF、WBOの3団体王者、アンソニー・ジョシュア(28=英)対WBC王者、デオンタイ・ワイルダー(32=米)の4団体統一戦。こちらは10月か11月、英国開催で両陣営が合意している。4選手とも4000万ドル(約44億円)以上の報酬が見込まれている。

 昨年9月の初対戦では12回引き分けに終わったゴロフキン対アルバレスの再戦は、当初5月5日に行われる予定だった。しかし、アルバレスのドーピング違反が発覚したことで一時は空中分解した。その後も両陣営は辛抱強く交渉を続け、やっと条件合意に達したという。もめていた報酬の分配については21度目の防衛を目指すゴロフキンが42・5%なのに対し、集客能力と人気で上回るアルバレスが57・5%という比率に落ち着いた。それでもゴロフキンは4000万ドルを手にするとみられている。アルバレスの代役を相手に2回KO勝ちを収めた5月のV20戦の保証報酬が100万ドル(約1億1000万円)だったことを考えると、文字通り桁違いの金額ということになる。アルバレスの方は約60億円の報酬になる見込みだ。

 開催地は確定していないが、米国ネバダ州アスレチック・コミッションによるアルバレスの資格停止が8月に解除になることから、初戦と同じ同州ラスベガスのT-モバイル・アリーナが最有力視されている。戦績はゴロフキンが39戦38勝(34KO)1分、アルバレスが52戦49勝(34KO)1敗2分。現時点でのオッズは7対4でゴロフキン有利と出ている。

 21戦全勝(20KO)のジョシュアと、40戦全勝(39KO)のワイルダーのヘビー級4団体王座統一戦は、最重量級の英米対決という付加価値もあり、ゴロフキン対アルバレスの再戦を上回る規模になりそうだ。両陣営は開催地を含めて今春から本格的な交渉を続けてきたが、やはり一時は先送りになる可能性もあった。しかし、ワイルダーに5000万ドル(約55億円)の報酬が約束され、さらに初戦は英国、再戦を行う場合は米国開催という付帯条件がついたことで実現することになった。当初は9月開催を予定していたが、先にゴロフキン対アルバレスが決定したため「10月か11月を考えている」(ジョシュア側のプロモーター、エディ・ハーン氏)という。

 驚異的なKO率(ジョシュア=95%、ワイルダー=97・5%)を誇る全勝のハードパンチャー対決だけにジャッジ不要の試合になることは確実といえる。こちらもオッズは7対4でジョシュア有利という数字が出ている。

 この秋、ボクシング界は大きな盛り上がりをみせそうだ。

大相撲裏話

休場中も稽古場「ずっと努力」親方認める白鵬の強さ

白鵬


 3月。春場所真っただ中のエディオンアリーナ大阪1階。観客に混じって会場内に設置してあるテレビで、十両の取組を何げなく立ち見していた。会場隣のコンビニで買ったおにぎりを手にしながらだが、決してサボっていたわけではない。

 「今のいい相撲だったね」

 背後から男性の声が聞こえた。声の主は、木戸(正面入り口でチケットのもぎりを行う仕事)前の宮城野親方(元前頭竹葉山)だった。その後も数番、一緒に取組を見ながら、今のはああでもないこうでもないと話した。その話の流れの中で、弟子の横綱白鵬の体調を伺った。場所前に両足親指の負傷により休場を余儀なくされていたからだ。

 「今日も昼すぎに稽古場来てたよ」

 休場中なのに稽古場? と疑問に思ったが、聞けばリハビリや負傷した箇所に負荷がかからないトレーニングで汗を流していたという。ただ親方にとっては、珍しい光景ではなくいつものことだという。「あんなに努力している力士は他にいない。横綱になってもずっと努力しているし、今もいろいろ悩みながらやっている。だから強いんだよね」。それだけ言って、木戸の仕事へと向かって行った。

 5月。初場所、春場所と2場所連続休場明けから、夏場所出場に踏み切った白鵬。2場所連続休場は自身初。横綱とは言え、土俵勘に不安がないとは言い切れないはず。ただ「現役力士で1番稽古しているのは自分だと思っている」という自負が、白鵬の背中を押した。自他共に認める努力家。しかし復活優勝は逃し、千秋楽で「2場所(連続休場)というのがね。いい勉強になりました」と振り返った。まだまだ進化は止まらない。【佐々木隆史】

原功「BOX!」

ゴロフキンvs村田も?注目のミドル級トップ戦線


 主要4団体すべての王座収集を目指していたWBAスーパー、WBC、IBF世界ミドル級王者、ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米 39戦38勝34KO1分)が6日、指名防衛戦の意思がないとみなされIBF王座を剥奪された。一方で9月に計画していたサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ 52戦49勝34KO1敗2分)との再戦も交渉が決裂しており、ゴロフキンは目標と軌道の修正を迫られる状況になった。

 もともとゴロフキンは5月5日、昨年9月のV19戦で引き分けたアルバレスとの再戦に臨むはずだった。しかし、ドーピング違反が発覚したアルバレスが対戦を辞退したためゴロフキンは代役と拳を交えることになり、自慢の強打で2回KO勝ちを収めた。

 それから1カ月。IBFは王者が次戦で1位のセルゲイ・デレビャンチェンコ(32=露/ウクライナ 12戦全勝10KO)の挑戦を受けることを条件に王座保持を認めたものの、その後もゴロフキンが対戦の意思を示さないため王座を剥奪した。空位になったIBFの王座決定戦にデレビャンチェンコが出場することは決まっているが、相手は未定だ。

 こうしたなかゴロフキンはアルバレスと9月15日に対戦する交渉を続けてきたが、報酬の配分を巡って妥協点を見つけられなかった。50-50の比率で分配を要求したゴロフキン陣営に対しアルバレス側が首を縦に振らなかったためだ。王者側はゴロフキン45-アルバレス55まで譲歩したが、それでも快い返事はなかったという。王座を持っているのはゴロフキンだが、メキシコを中心に人気と知名度、商品価値で上回るアルバレスを軸にビジネスが展開していることが分かる。このねじれ減少がスーパーファイトの大きな壁になっているといえる。

 自分を中心にビジネス展開できるアルバレスはゴロフキンを振り、9月に元WBA王者のダニエル・ジェイコブス(31=米 36戦34勝29KO2敗)と対戦する方向で詰めに入っている模様だ。ゴロフキンと分の悪い引き分けに終わっているアルバレスと、ゴロフキンに善戦したものの僅少差の判定負けを喫しているジェイコブス。敗者復活戦の印象がないわけではないが、興味深いカードには違いない。

 次戦が宙に浮いたかたちのゴロフキンだが、WBCから暫定王者のジャモール・チャーロ(28=アメリカ 27戦全勝21KO)と対戦するよう指令を受けている。スピードと強打に定評のあるチャーロは以前からゴロフキンやアルバレスとの対戦を望んでおり、条件さえ合えばすんなりと団体内の統一戦が実現するかもしれない。しかし、一部で「隠れたミドル級最強」ともいわれるチャーロはゴロフキンやアルバレスにとって極めて危険度の高い相手だが、それはチャーロにとっても同じこと。したがってIBFで4位にランクされるチャーロがリスクを回避し、デレビャンチェンコとの王座決定戦に鞍替えする可能性もある。リング外の動向(交渉)が気になるところだ。

 サウスポーのWBO王者、ビリー・ジョー・サンダース(28=英 28戦全勝12KO)はこれまで門外漢の印象が強かったが、今月23日に予定されていたV4戦をキャンセルしたことで思わぬ注目を集めることになった。大腿部を痛めたことが理由とされているが、「ゴロフキン戦を前提にしたキャンセルでは?」と深読みする関係者もいるのだ。サンダースは昨年初夏にカザフスタンでゴロフキンと対戦する計画があっただけに、両陣営間が水面下で動いたとしても驚くことではない。またゴロフキンにとってWBO王座は以前から手に入れたいものでもあった。ゴロフキン対サンダースも実現の可能性があるカードとして挙げておく必要がありそうだ。

 現状ではミドル級の主役は持ち味の異なるゴロフキンとアルバレスのふたりで、ジェイコブス、チャーロ、デレビャンチェンコ、サンダース、さらに元世界スーパーウエルター級王者のデメトリアス・アンドレイド(30=米 25戦全勝16KO)といった力のある個性派が脇を固める構図となっている。そして、忘れてはならないのがWBA王者の村田諒太(32=帝拳 15戦14勝11KO1敗)だ。現時点では村田も脇を固める立場に甘んじているが、9月か10月に米国で予定される次戦で存在感を示せば、本人の希望するゴロフキン戦が現実的なものになってくるはずだ。

 今後は村田を含むトップ8選手のサバイバル戦に突入するミドル級トップ戦線。しばらく目が離せない状況が続きそうだ。

リングにかける男たち

WWEで夢をつかめ!世界中からスター候補を募集


 WWEの「虎の穴」に門戸開放の動きがあった。

 今夏に5周年を迎えるプロレスラー育成施設WWEパフォーマンスセンターがトライアウト参加用の専用サイトをこのほど開設。世界から希望者を募る新たな試みをスタートさせた。

 WWEのリクルート用ウェブサイトURL=https://www.wweperformancecenter.com/#!/

WWEパフォーマンスセンターには計7つのリングが設置されている(C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved.

 同パフォーマンスセンターは東京ドーム面積の半個分近くとなる2万6000平方メートルもの大きさで、7個のリングが設置されている大型施設だ。5年前の開設以来、WWE傘下となるNXTのウィリアム・リーガルGMのもと、元新日本プロレスで活躍したマット・ブルーム(ジャイアント・バーナード)がヘッドコーチを務めている。リーガルGMは現在、全日本プロレスを中心に活躍する元WWEのTAJIRIとの関係が深い。また中邑真輔やアスカ(華名)がWWE入団時にはトレーニングを積みながらNXTに参加。現在でもカイリ・セイン(宝城カイリ)ら70選手以上がトレーニングするなど、日本と縁がある施設とも言えるだろう。

中邑真輔もWWE加入初期はパフォーマンスセンターでトレーニングを積んだ(C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved.

 この5年間で、ロウで活躍する巨獣ブラウン・ストローマンをはじめ、前ロウ女子王者アレクサ・ブリス、前スマックダウン女子王者シャーロット・フレアーらがトップレスラーが育ってきた。公式サイトには「スーパースターの旅はここから始まる。WWEスーパースターになる夢がある」とつづられている。WWEレスラーになることはプロとしての知名度や人気だけでなく、高額な収入も得られる。

 このほど米経済誌フォーブスが17年度の長者番付が発表した。WWE所属選手の年収ランキングでは、過去16度の王座戴冠を誇るジョン・シナが1位。年収は1000万ドル(約11億円)だった。2位には現ユニバーサル王者ブロック・レスナーで650万ドル(約7億1500万円)、3位はローマン・レインズで430万ドル(約4億7300万円)と続いた。中邑との抗争が続くWWEヘビー級王者AJスタイルズは350万ドル(約3億8500万円)で4位にランクイン。10位のケビン・オーエンズであっても、200万ドル(約2億2000万円)を稼いでいる。フォーブスによるとWWE所属選手の平均年収は50万ドル(約5500万円)。来年あたりは中邑も10位以内にランキングされるかもしれない。

フォーブス発表の18年WWE収入ランキング1位のジョン・シナ(C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved.

 今回のWWEパフォーマンスセンターのトライアウトにはプロレス経験者だけでなく、他競技のアスリートの参加も広く募っている。世界から集結している強者との競争は決して簡単ではないだろうが、WWE版「虎の穴」にはアメリカンドリームが詰まっていることは間違いない。日本人アスリートたちがWWEパフォーマンスセンターから夢をつかむ。そんなビッグなストーリーを実現する日本人プロレスラーが今後登場することを、取材する記者の1人として楽しみにしている。【藤中栄二】

原功「BOX!」

“ハンター”クロフォード“スズメバチ”下し3階級制覇なるか


 全階級を通じたボクサーの強さ指数ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」ランキング上位常連のテレンス・クロフォード(30=米)が9日(日本時間10日)、米国ネバダ州ラスベガスでジェフ・ホーン(30=豪)の持つWBO世界ウェルター級王座に挑む。これまでライト級とスーパーライト級で世界王座を獲得したクロフォードにとっては3階級制覇のかかった重要な試合になる。昨夏、マニー・パッキャオ(39=比)に競り勝って戴冠を果たしたホーンを攻略することができるのか。

 世界王座を持っているのはホーンだが、今回の試合の主役がクロフォードであることは誰もが認めるところであろう。クロフォードは14年にWBO世界ライト級王座を獲得すると、2度防衛後に返上してスーパーライト級に転向。その初戦でWBO王座についた。2年前にWBC王者に勝って2団体統一を果たし、昨年8月には同じく2団体王者だったジュリアス・インドンゴ(35=ナミビア)に3回KO勝ちを収めて主要4団体すべての王座を手に入れた。10度の世界戦(全勝7KO)を含む戦績は32戦全勝(23KO)と完璧だ。

 5月27日付の米国「リング・マガジン」電子版で、クロフォードは「パウンド・フォー・パウンド」の3位という高い評価を受けている。ちなみに1位はミドル級3団体王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)で、2位がWBA世界ライト級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)、4位にミドル級のサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)、5位がWBC世界ライト級王者のマイキー・ガルシア(30=米)、そして6位にはWBA世界バンタム級王者の井上尚弥(25=大橋)がランクされている。

 「ハンター」というニックネームを持つクロフォードは左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターで、スピードとテクニックが最大の持ち味といえる。強打者というイメージは薄いが、世界戦10試合で計14度のダウンを奪っており、攻防とも高い次元の選手といえる。

 そんな実力者の挑戦を受けるホーンは12年ロンドン五輪に出場後、プロ転向した。数々の地域王座を獲得したあと昨年7月、パッキャオを破って戴冠を果たした。名前の韻を踏んだ「HORNET(スズメバチ)」というニックネームを持つが、パンチの鋭さや破壊力よりも馬力、体力を持ち味としている。パッキャオ戦でも分厚く頑丈な体で粘り強く戦って接戦をものにしている。こちらも19戦18勝(12KO)1分と無敗だが、対戦相手の質という点ではクロフォードに劣る。ホーンは今回の試合に向け、アマチュア時代にクロフォードに勝ったことがある元世界ランカーのレイ・ロビンソン(32=米)をスパーリング・パートナーに迎えるなどして対策を講じてきた。その成果が出るかどうか。

 6対1というオッズが出ているように、「ハンター」が「スズメバチ」を退治するという見方が大勢を占めている。挑戦者がスピードとテクニックを生かして戦い、前半からポイントを重ねる展開が予想される。クロフォードに不確定な要素があるとすれば、4月に予定された試合を拳の負傷で2カ月延期したことぐらいだろう。10カ月ぶりの試合となるため実戦の勘という点で若干の不安は残る。それに乗じてホーンが序盤から攻勢をかけて体力勝負の乱戦に持ち込めば番狂わせの可能性も出てくる。

リングにかける男たち

ジュニア最強の高橋ヒロム、予知できない言動が魅力


 「ヒロムワールド」が面白い。4日の新日本プロレス、ジュニアヘビー級の最強決定戦「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」優勝決定戦を制した高橋ヒロム(28)の予知できない言動が加速し、そして魅力的に映る。

ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア優勝決定戦で石森(左)に勢いを付けてからドロップキックを浴びせる髙橋(撮影・小沢裕)

 突然の話題転換、突拍子もない言動はお手の物なのだが、石森太二との死闘を制した初優勝直後のバックステージでも全くいつもの高橋だった。

 「おーい! 聞こえるか! 2019年の高橋ヒロム。お前も知っていると思うけど、2018年のスーパージュニアはめちゃくちゃ、史上最高に盛り上がったぞ。なあ、2019年の高橋ヒロム! 必ず、越えてみろ!」

 まずは未来の自分へ語りかけてみた。

 「後楽園ホールさん、いつも、いつも、ありがとうね。いつもありがとうね~。分かってる、分かってるよ、ありがとうね」

 次はいきなり会場の柱を触って語りかけた。ベルトにも語りかけるレスラーなので、なにやら生物外の声も聞こえるらしい。

 「最後に1つだけ。知ってるぞ。この会場で、あなたが、あなたが見ていたこと、知っているぞ、イニシャル“K”」

 そして、去り際に残していったのは謎かけ。K…。報道陣はどこかあっけにとられたまま、これが高橋ヒロムだよなとうなずくように見送っていた。

ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア優勝決定戦を制しトロフィーを手に笑顔を見せる髙橋(撮影・小沢裕)

 いままでもそうだった。その予想不可能さにはまる人が続出していると感じる。試合では舌を出し、不気味に笑い、緩慢なようで、時に怒り前面のフルファイト。マイクでも同じ単語の永遠の連呼など異彩を放つが、それは試合外でも同じ。

 今大会の開幕前日の会見では出場16人がそろった都内の明治記念館で、突然「おい! がんばれヒロム!」と叫び始め、必殺技D(変形三角絞め)が開発したいきさつを一人芝居で、脈絡なく説明して他選手とは異なる空気感を発揮。3月のIWGPタッグ王者調印式では自作ポエムを書いたノートを読み上げ、ヒロム色を全開にさせた。今大会も昨年に続き自作の「攻略本」を試合ごとに持参。スケッチブックに手書きの似顔絵や文字は、誰にもまねできない技以外の武器だった。「ジュニアが最高」と公言するが、独自のパフォーマンスは、その愛するジュニア戦線への注目度を集める一助となっている。

 そんな変幻自在の自己プロデュース能力の高さは、予想外の出来事も呼び込むらしい。スーパージュニアを制したリングには「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」のメンバーが参集したが、内藤が優勝トロフィーを壊してしまう事態が発生。羽の部分が折れていることに気付いた高橋はがくぜんとして、トロフィーに土下座することになった。「内藤、帰ったのか、あの野郎! 聞いてよ、あの内藤哲也という男は、俺のトロフィーを奪い、そして壊れたことに気付き、俺の耳元で『ごめん、ちょっと壊れた』と俺に渡した。俺はパニックになった。どしたらいいんだと。だったらちょっと笑いに走るしかねえだろ」とバックステージの第一声では猛クレームした。

ベスト・オブ・ザ・スーパージュニアを制した髙橋だったが贈呈されたばかりのトロフィーが壊れ、ぼうぜんとする(撮影・小沢裕)

 冒頭に列挙したコメントはそんな不運に見舞われた後に発した言葉になる。しっかりとアクシデントに言及しながら、自身の世界観はしっかりと表現する。そんな動じない精神性も感じられた出来事だった。

 次は6月9日、大阪大会でIWGPジュニアヘビー級王者ウィル・オスプレイに挑戦表明した。ジュニアを誰よりも愛すると公言する男が、どんな言動をみせてくれるのか注目だ。【阿部健吾】

大相撲裏話

栃ノ心を採寸 右太もも91cm、尻回りにビビった

栃ノ心(左)との一番で待ったを掛ける白鵬(2018年5月24日撮影)


 20年以上前のことだが、師と仰ぐ先輩に言われたことがある。

 「ええか、記事で大事なんは事実の積み重ねや。下手な形容詞、副詞を極力使うな。オマエがいくら『すごい、すごい』って書いても、読者には何も伝わらん。そんなもん使う前に、数字とか具体的なもんを取材して書け」。そういうもんか、と思って、教えを守ってきたつもりです。

 慣れてくれると、気になることが増える。ゴルフ担当やった時、とても気になったんは、女子プロのスカートの丈。まあ男ですし、弊紙読者も男性が多いし、みんな知りたいところでしょう。例えば、イ・ボミちゃんや、キム・ハヌルちゃん。「膝上何センチやろ?」。知りたい。しかし、よう聞かん。測りたい。けど、もちろん無理。泣く泣く「推定膝上10センチ」とかでごまかしたもんです。

 さてここから、相撲の話。実は初場所から猛烈に気になることがありました。

 栃ノ心の太もも。

 何じゃ、あの太さ。よくたくましい太ももを「女性のウエスト並」てな言葉で表現しますけど、そんな生やさしいもんやないことは、一目瞭然。これはもう実際に測るしかない。女子プロゴルファーの膝上はあかんけど、そこは男同士。夏場所中、ドン・キホーテでメジャーを400円で買って、朝稽古の後にお願いした。

 関取、太もも測ってええですか?

 「いいよ」

 では、まず右。メジャーをくるりと回すと…91センチ! 女性のウエストどころか、バスト、それも巨乳並やないか。

 「あれ? 前測った時、85センチだったけどな。太くなったかな?」

 左…87センチ!

 (ちなみに身長168センチ、小太り、53歳の私は左右とも55センチでした)

 ものは次いで、首回り、上腕回りといろいろ測らせてもらいました。もう1つ驚いたというか、ちょっと焦ったのは尻回りを測った時のこと。144センチもあって、その時初めて、買ったメジャーの長さが150センチと自覚した。残り6センチ。あわや計測不能になるとこでした。

 「これだけ測ったんだから、服作ってくれるんでしょ?」

 無理です。私、テーラーやないし、メジャーで人の体測ったのは初めて、きっとそんな正確やないんで。何より、こんなでかいサイズの服をオーダーメードで作ったら、ナンボするか…。それはタニマチさんにお願いしてください。

 うっとうしいお願いを聞いてくださった栃ノ心関、ありがとうございました。これでアナタの原稿を書く時、もうちょっとマシなもんを書けると思います…多分。【加藤裕一】

原功「BOX!」

山中倒すも体重超過で無期限出場停止のネリ、復帰戦の行方は…


 昨年8月と今年3月、WBC世界バンタム級王座をめぐり山中慎介(帝拳)と2度対戦し、連勝しながらドーピング違反、体重オーバーという失態を犯したルイス・ネリ(23=メキシコ)が6月9日(日本時間10日)、出身地でもあるメキシコのティファナで“復帰戦”を行う予定だったが、試合の12日前になって中止が決定した。ネリは世界挑戦の経験を持つジェトロ・パブスタン(28=比)とバンタム級10回戦を行うことになっていたが、WBCから警告があったため出場を見送ることになったという。ネリは山中との再戦を前に大幅な体重超過のため失格、日本ボクシングコミッション(JBC)から永久追放されたうえWBCからも無期限の出場資格停止を言い渡されている。

 ネリは4回TKO勝ちを収めて戴冠を果たした山中との初戦(京都)後、ドーピング違反が発覚したが、「汚染された肉を食べたのが原因だと思う」と言い訳。WBCが調査に乗り出したが、確かな証拠がつかめず「意図的に(禁止物質を)摂取したとは断定できない」という灰色判定を下し、王座の保持を認めたうえで山中との再戦を命じた。

 ダイレクト・リマッチは今年3月1日にセットされた(東京)が、ネリは試合前日の計量で大幅な体重超過を犯して失格、その時点で王座を剥奪された。しかし、試合では山中から合計4度のダウンを奪って2回TKO勝ちを収めた。

 こうしたなかJBCは、ネリの計量失敗が極めて悪質なものとして無期限の出場停止処分を科し、日本のリングから締め出した。ただし、これは日本での試合出場が不可能というだけで、ほかの地域でネリがリングに上がることを規制する効力はない。WBCも同様の罰を科しているが、これも同団体の認可試合への出場を制限するものでしかない。

 当初、ネリは6月9日に米国カリフォルニア州サンディエゴ近郊アルパインで試合を行う計画だった。しかし、ニューヨーク州やネバダ州などとともに選手の健康管理や出場資格に厳しいことで知られるカリフォルニア州もネリに無期限のサスペンドを科しており、この地での試合を断念。そこで出身地でもあるメキシコのティファナに会場を移した経緯があった。ネリは「多くの批判を受けたが、自分がバンタム級最強であることは証明済みだし、いまでも世界王者だと思っている。俺はナチュラルなバンタム級なので、早くベルトを取り戻したい」と話していた。

 今回、自らそのティファナでの試合出場を断念したのは、WBCの警告に従う選択をしたからだ。ネリは山中戦後のWBCの聴聞の際、起こした問題に向き合い行動を正していくことを誓っており、もう少しで約束を反故にするところだった。ギリギリのところで踏みとどまったわけだ。

 バンタム級では、世界のトップ選手8人が高額賞金を狙ってトーナメント戦を行う「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」が9月から開催されることになっている。すでにWBA新王者になった井上尚弥(25=大橋)をはじめWBAスーパー王者のライアン・バーネット(26=英国)、IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(25=プエルトリコ)、WBO王者のゾラニ・テテ(30=南ア)らが参戦を表明している。ネリも参加の意思があると伝えられるが、日本やカリフォルニア州、さらにWBC管理下で試合ができない状況とあって、仮に挙手しても受け入れられるかどうか微妙なところといえる。

リングにかける男たち

知名度アップへ「拳四朗&会長」セット売りいかが?


 気がつけば、安定王者である。WBC世界ライトフライ級王者拳四朗(26=BMB)。25日、東京・大田区総合体育館で3度目の防衛戦を行い、昨年5月にベルトを奪った前王者ガニガン・ロペスに2回1分58秒、KO勝ち。右ボディーストレートでもん絶させた。

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ 2回、ボディでダウンを奪う拳四朗(右)(2018年5月25日撮影)

 お見事。圧巻。瞬殺。拳四朗と、父の寺地永会長(54)が「想定外!」と口をそろえる鮮やかさ。当然2人とも「今度は目立ったやろ」と思ったはずが、メインで“モンスター”井上尚弥がバンタム転向初戦にして、さらに早い1回1分52秒KO勝ちで3階級制覇を達成…。井上の勝利はもちろん喜ばしいけど、また目立ち損ねてしまったと言えなくもない。

 拳四朗は昨年5月から計4度、世界戦を行ったものの、1度も自分だけの“シングル世界戦”がない。最初の2試合はWBA世界ミドル級王者村田諒太、最近2試合は井上と同日、同会場で行った。帝拳ジムがプロモーションする興行に“入れてもらって”のダブル、トリプル世界戦。つまり、村田、井上のスケジュールに合わせて、試合が決まる立場にいる。

左からWBC世界ライトフライ級王者拳四朗、井上尚弥、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル、ガニガン・ロペス(2018年5月23日撮影)

 寺地会長は「ウチは帝拳さんにお世話になってますから。それで全然問題ないし、ええと思ってますよ」という。拳四朗は拳四朗で、誰とやりたいとか、最強を目指したいとか、プロボクサーが持っていて当然の“ギラギラ感”が皆無のタイプで「う~ん、相手は誰でもいいですからね。僕は決まった相手に勝つだけと思ってます」という。

 しかし、計4度の世界戦を取材したこちらにすれば、もうちょいグイグイいってもええんちゃうの、と思う。今回の防衛戦でロペス陣営が持っていたオプション(対戦相手等を選ぶ権利)は消化され、指名試合(WBC同級1位選手の挑戦を、1年以内に受ける義務試合)を除けば、次戦から相手を好きに選べる立場になった。さらに、村田、井上の両王者が次戦は米国で行う予定。いろんな意味で“縛り”はない。じゃあ、次は初の地元関西での防衛戦開催チャンスでは…と思ったりしたのだが…。「いや~、まだ無理でしょ。関西で、1人で世界戦やっても、お客さんは集められませんよ」と寺地会長に、あっさり可能性を否定されてしまった。

 ダブル、トリプル世界戦が別に悪いと思いません。ただ、そればっかりやなくて、もうちょい有名に、ビッグになってほしいだけな訳です。

 「有名になりたい」が口癖の拳四朗はバラエティー番組からオファーが来たら、喜んで出演してるし、寺地会長も「ぜひぜひ」と後押ししてる。防衛を重ねることで、自然と知名度、存在感は高まってくるものですが、それだけではつまらんし、時間もかかる。そこで、考えた。「拳四朗&会長のパック売り」はどうでしょう?

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチで防衛に成功した拳四朗(右から2人目)と父の寺地永会長(左から2人目)(2018年5月25日撮影)

 親子そろって天然キャラで、人に好かれることはあっても、嫌われることはまずないタイプ。父は元日本ミドル級&東洋太平洋ライトヘビー級王者で、身長189センチ。対して拳四朗は164センチ。その差25センチのデコボコ具合には、漫才コンビ「オール阪神・巨人」を思わせる、見た目のおもしろさがある。いらうのが上手なMCの番組なら、人気出ると思うんですけど。拳四朗の世界戦がメインになる日が来るために。テレビ局のみなさん、どないですか?【加藤裕一】

大相撲裏話

結び5番前に「菊川茶」懸賞旗


 相撲人気に比例して懸賞の本数が増加している。永谷園などのおなじみがあれば、その場所ごとに新規で出す企業もある。今場所、新規で懸賞を出した企業は7社。静岡・菊川市役所と菊川市茶業協会は合同で、初めて出した。

 緑色ベースの旗に白文字で「深蒸し 菊川茶」と書かれた懸賞旗が、結びから数えて5番前の取組に毎日1本懸かっている。指定力士に懸けたり、結びの一番に懸ける企業がほとんどの中、なぜなのか。同市役所の担当者は「その時が一番視聴率もいいと思うし、結びとかだと懸賞が多くて埋もれてしまうので。売り上げはまだこれからだけど、問い合わせは相当増えました。狙い通りです」と、PR効果は抜群だった。

 新茶の季節であり、懸賞を出すのは夏場所だけ。来年も予定している。「本当は静岡出身の力士に懸けたいんですけどね」と本音もポツリ。13年春場所の磋牙司(現幕下)を最後に、同県出身の幕内力士はいない。「来年はそれも楽しみです」と声を弾ませた。【佐々木隆史】

大相撲裏話

「捨てたもんじゃない」現場の熱伝える手作り懸賞

感謝状を手に記念撮影に臨む森永製菓株式会社の森永剛太代表取締役会長(左)と八角理事長


 日本相撲協会が24日、「森永賞」を続ける森永製菓に感謝状を授与した。森永賞は初、夏、秋の東京場所限定の“ファン投票懸賞”で、その日1番の好取組に選ばれたものに懸けられる。1951年(昭26)初場所で始まり、67年にも及ぶ最古の懸賞でもある。

 投票方法は気持ちいいほどアナログだ。投票用紙がない。チョコ、キャラメルなどの森永製品の空箱に「今日1番」と思う取組と住所、氏名を書いて、午後3時半までに国技館内の投票箱へ。普段は100~200票、多くて約500票を担当者が紙袋で2、3度に分けて回収、記者クラブ内のテーブルで集計を行う。

 用紙のバラバラさが、また手作り感を醸す。ふぞろいな“ファンの声”を、この道12年の男性担当者は「私が言うのも何ですが、捨てたもんじゃないと思いますよ」という。人気力士の取組が多いかと思えば、そうでもない。遠藤絡みの取組は新三役の今場所こそ5度あるが、今まではほぼ圏外だった。場所の行方を左右する一番に票が集まる。白鵬全盛時は白鵬絡みの取組ばかりでマンネリともいえたが、それこそが“清き1票”だ。この日の森永賞は文句なしで「白鵬-栃ノ心」。SNS全盛の時代に、現場の熱を伝える懸賞が輝いている。【加藤裕一】

大相撲裏話

白鵬の強さは外国人も感じ取れる

アンケートで白鵬を選んだノルウェー人のマーレンさん(右)と遠藤を選んだスイス人のデリアさん


 連日、満員御礼の両国国技館には、多くの外国人観光客が訪れている。欧米やアジアなど、さまざまな地域から、大相撲に詳しい人も、そうでない人も観戦。そこで日刊スポーツでは、初日から休場した横綱稀勢の里、大関高安を除く三役以上の7人(鶴竜、白鵬、豪栄道、栃ノ心、逸ノ城、御嶽海、遠藤)を対象に、夏場所を観戦した外国人女性50人にアンケート。顔が分かる写真を見て、好みの力士を回答してもらった。

 1位は18票を獲得した白鵬だった。ノルウェー人のマーレンさんは「チャンピオンっぽくてカッコイイ」と、見た目だけでなく実績を加味して選んだ。他に白鵬を選んだ理由は「真剣な目つきがいい」(オーストラリア人のエミリーさん)や「初めての日本で全然分からないけど、ディス イズ スモーって感じ」(ブラジル人のキャロラインさん)などと、いずれも直感的に強さを感じていた。

 これには白鵬も「海外の人は分かってるね。NHKは海外でも放送しているからかな」と、うれしそうに話した。白鵬に続くのが遠藤(11票)御嶽海(7票)鶴竜&栃ノ心(ともに5票)豪栄道(3票)逸ノ城(1票)。「かわいい」という意見が多かった。女性ファンの増加は、国内だけではなく外国人も同じだったと判明した。【高田文太】

原功「BOX!」

93年ぶりにフィリピン選手同士の世界戦が実現


 IBF世界スーパーフライ級王者のジェルウィン・アンカハス(26=比)は26日(日本時間27日)、米国カリフォルニア州フレズノで同級1位の指名挑戦者、ジョナス・スルタン(26=比)を相手に5度目の防衛戦に臨む。フィリピンの選手同士が世界戦で拳を交えるのは93年ぶり2度目のことになる。

 日本では白井義男氏が1952年に初めて世界王者になったが、フィリピンはそれよりも29年早い1923年にパンチョ・ビラが米国で世界王座を獲得している。そういった面でもビラはマニー・パッキャオらの大先輩といえる。ちなみに世界王者の輩出数では日本が追い抜き、現在は89人(日本ボクシングコミッション認定下)を数える。対してフィリピンは39人となっている。興味深いのはフィリピンの歴代世界王者のうち半数近くがサウスポーであるという点だ。日本は約25パーセント、メキシコは15パーセント前後だから、いかにフィリピンのサウスポー比率が高いかが分かるだろう。

 さて、フィリピンの初代世界王者となったビラは1925年5月2日、フィリピンのマニラで4度目の防衛戦に臨んだが、そのときの相手が同国人のクレバー・センシオだった。試合では23歳のビラが20歳のセンシオに15回判定勝ちを収めている(当時の世界戦は15回戦制)。これも余談になるが、ビラは2カ月後のV5戦で敗れて王座を失い、その10日後に化膿した歯の毒が原因で亡くなった。センシオも11カ月後、10回判定負けを喫した試合の翌朝に脳出血で死亡している。

 これで同胞対決が忌み嫌われたわけではないのだろうが、以後93年間もフィリピン人同士の世界戦が組まれることはなかった。6階級制覇のパッキャオ、5階級制覇のノニト・ドネア、60年代に活躍したフラッシュ・エロルデなど知名度も実力もある選手たちも世界戦で同胞と戦うことはなかった。

 こうしたなか今回のアンカハス対スルタンはIBFの指名試合として行われる。イベントの宣伝デザインには、両選手の写真とともにモノクロのビラのポーズ写真も配されている。イベントのコピーは「Meet & Greet」。邂逅と歓迎とでも訳せばいいのだろうか。

 サウスポーのアンカハスは31戦29勝(20KO)1敗1分の戦績を誇る強打者で、最近の6年間は16戦全勝(15KO)という手のつけられない強さを発揮している。目下4連続KO防衛中だ。挑戦者のスルタンは15年11月の初来日試合で10回判定負けを喫しているが、以後は5連勝(4KO)と勢いを取り戻している。通算戦績は17戦14勝(9KO)3敗。

 下馬評では、パッキャオのMPプロモーションズ、そのパッキャオや村田諒太(帝拳)が契約を交わしている米国のトップランク社と提携しているアンカハスが圧倒的有利とみられている。しかし、戦闘スタイルや感情面など同国人対決は意外に戦いにくい一面もあるだけに、内容と結果が気になるところだ。

 なお、8月18日にはフィリピン人同士の3度目の世界戦となるドニー・ニエテス(36)対アストン・パリクテ(27)のWBOスーパーフライ級王座決定戦がセブ市で行われることが決まっている。

 ビジネス面の成否にもよるが、これを機に今後は軽量級を中心にフィリピン人同士の世界戦が増えそうな気配だ。