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大相撲裏話

積極的な動き 印象的だった旧貴乃花部屋の力士

千賀ノ浦親方(右)と握手を交わす貴景勝

元横綱日馬富士の傷害事件を巡って訴訟を起こした被害者の貴ノ岩が、訴訟を取り下げた10月30日は、千賀ノ浦部屋の稽古始めでもあった。10月1日付で元貴乃花親方(元横綱)の日本相撲協会の退職が決まり、旧貴乃花部屋の消滅と所属力士らの千賀ノ浦部屋への所属先変更も承認された。小結貴景勝は秋巡業参加のため、都内で行われた引っ越し作業には参加せず。千賀ノ浦部屋に合流したのは、秋巡業が終わり福岡入りした10月28日。九州場所(11月11日初日、福岡国際センター)の新番付発表が行われた10月29日は稽古は休みで、30日にようやく初めて、旧貴乃花部屋の力士と千賀ノ浦部屋の力士が全員そろっての稽古が行われた。

印象的だったのは、旧貴乃花部屋の力士らが、積極的にコミュニケーションを取っていたことだ。四股やストレッチで体を温め、すり足が始まった。さまざまな種類のすり足に、旧貴乃花部屋の力士らは、千賀ノ浦部屋の力士の動きを見よう見まねで行った。最初こそぎこちなかったが、慣れてくると余裕がでてきたのか、会話する場面が増え、笑顔が見えた。ぶつかり稽古、申し合い稽古が始まると、自然とアドバイスをする姿に千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)も安堵(あんど)の表情。新弟子に対して、身ぶり手ぶりで四股の踏み方を指導する姿も、すっかり千賀ノ浦部屋にとけ込んでいる印象だった。

“新”千賀ノ浦部屋の稽古始めは、約2時間で終わった。師匠の千賀ノ浦親方は、「これまでは関取が1人しかいなかったから助かります。活気も違う」と、旧貴乃花部屋の3人の関取が若い衆に指導する姿を喜んだ。小結貴景勝も「いい雰囲気で活気がある」と言えば、平幕の隆の勝は「これまで出稽古でやっていたことが毎日部屋でできるのでうれしい」と、こちらも笑顔。旧貴乃花部屋の力士が、千賀ノ浦部屋に所属先変更して1カ月たったが、部屋としては順調な滑り出しのように見えた。【佐々木隆史】

大相撲裏話

逸ノ城の常識覆る縦の動き226キロ“押しつぶし”

大相撲春場所 14日目 ははたき込みで貴景勝を破り1敗を死守した逸ノ城(2019年3月23日撮影)

相撲の常識が覆るかもしれない。来場所で三役返り咲きが確実視される前頭逸ノ城(26=湊)が、14勝を挙げて優勝次点となった3月の春場所で、異次元ともいえる取り口を何度も見せた。従来、相撲で勝つには、前に出ての寄り切りや押し出し、後ろに下がっての引き落としやはたき込みが決まり手の大部分を占めている。いずれも「横」の動きだ。だが春場所の逸ノ城は「縦」の動きで、白星を量産した。

193センチの長身で、しかも関取衆最重量226キロの逸ノ城が、どっしりと構えて受けて立つ。中途半端な力で押し込めないことは一目瞭然。上体が伸び上がっては、びくともしないだけに、相手は低い姿勢で下から押し込もうとする。だが懐の深い逸ノ城は、これを組み止め、下に潜り込ませず上からズドン。春場所の14勝のうち、はたき込みで6勝、突き落としで3勝と、このパターンで勝ったのが大部分だ。

はたき込みは引き技、突き落としは土俵際などでの逆転技の印象が強いが、春場所の逸ノ城は違った。余裕を持って、狙い通りに仕留めていた。他に適当なものがないため、決まり手は、はたき込みや突き落としになっているが、実際のところは「押しつぶし」ともいえる内容だ。従来の決まり手では表現しきれない、枠に収まらない「縦」の動き。何より相撲界にはまだ、突然上から降ってくる200キロ超の重さを、背中で受け止めることを想定した稽古が確立しているとはいえない。対策のしようがないのかもしれない。

実は逸ノ城自身が、この取り口の異次元ぶりに気付いていないようだ。はたき込みは、内容が良くないとされ、現在行われている巡業中も「もっと前に押し出す、寄り切るような相撲を出していきたい」と、反省気味に語っていた。目標とする大関昇進のためには、相撲内容も求められており、はたき込みが多いことを課題として挙げていた。だが報道陣から、新しい取り口だと指摘されると「本当ですか!?」と、少しは自信を持った様子をのぞかせていた。

ただ、相撲の長い歴史の中で、ずっと追い求められている、前に出る姿勢は今後も理想型として必要不可欠だろう。その基本が強いからこそ、上から下への押しも効いてくる。「横」でも「縦」でも、自在に力を発揮できるようになれば、大関昇進も初優勝も遠くない。私生活では「まだ、しばらくは部屋に住む予定。地方場所とかで、みんな(若い衆)が先に移動していていない時とか、洗濯物とか洗い物とかがあって大変。自分でもできるけど、こんなに違うんだと感じるから」と、独り立ちは遠そうだ。だが土俵では、14年秋場所の新入幕から優勝争いに絡んで「怪物」の異名を取った逸材。相撲の常識さえも変える、本物の怪物になる日も遠くはないかもしれない。

【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大大相撲春場所 13日目 ははたき込みで御嶽海を破る逸ノ城(2019年3月22日撮影)
原功「BOX!」

5連続KOの勢いか銀メダリストか 米英スター対決

3階級制覇の実績を持つWBO世界ウエルター級王者、テレンス・クロフォード(31=米)が20日(日本時間21日)、スーパーライト級の元王者、アミール・カーン(32=英)を相手に米国ニューヨークで2度目の防衛戦を行う。このところ世界戦で5連続KO勝ちを収めるなど飛ぶ鳥を落とす勢いのクロフォードと、17歳のときに04年アテネ五輪で銀メダルを獲得したカーン。スピードを売りにする米英のスター対決に要注目だ。

クロフォードはプロデビューした08年に頭部に銃弾を浴びるという事件に遇したが、軽傷で済んだためボクシング活動に大きな影響を及ぼすことはなかった。その6年後の14年3月にWBO世界ライト級王座を獲得すると、2度防衛後にスーパーライト級も制覇。この階級では主要4団体の王座を統一するなど通算6度の防衛を果たした。昨年6月にウエルター級に転向し、現在の王座を手に入れた。

ライト級時代は磨き抜かれた攻防のテクニックが目立ったクロフォードだが、最近はスピードを生かした攻撃に重点を置いて戦っている印象が強い。人気、注目度という点を意識しているのかもしれない。そのためか最近の5試合はジャッジの手を煩わせることなく終わらせている。通算戦績は34戦全勝(25KO)で、そのうち12試合は世界戦(12勝9KO)だ。

いまが旬のクロフォードとは対照的に、カーンは全盛を過ぎた印象が強い。スーパーライト級でWBA王座とIBF王座に君臨したのは09年~12年のことで、5年前にウエルター級に転向してからは5勝しているもののKOは1つだけだ。この間、16年5月には2階級上のミドル級王座に挑戦するという冒険マッチに臨んだが、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)の右一発で6回KO負けを喫している。戦績は37戦33勝(20KO)4敗で、右ストレートの切れに定評がある。

近況に大きな差があるためオッズは8対1の大差で王者有利と出ている。左右どちらの構えでも戦えるクロフォードが俊敏な動きで直線的なカーンを翻弄してしまうという見方が多い。それでもカーンは「クロフォードが向かってきても離れても対応できる。私は大きくて速い。彼に勝つために必要なものを持っている」と強気だ。

この日は前座カードも充実している。セミファイナルでは12戦全勝(10KO)のライト級ホープ、テオフィモ・ロペス(21=米)がエディス・タトリ(31=コソボ/フィンランド)との世界ランカー対決に臨む。このところ衝撃的なKO勝ちを続けて評価と期待値が急上昇中の16年リオデジャネイロ五輪戦士のロペスに要注目だ。

さらにリオデジャネイロ五輪バンタム級銀メダリストのシャクール・スティーブンソン(21=米)も出場。昨年7月に伊藤雅雪(28=伴流)とWBO世界スーパーフェザー級王座を争ったクリストファー・ディアス(24=プエルトリコ)とフェザー級10回戦で拳を交える。10戦全勝(6KO)のスティーブンソン、25戦24勝(16KO)1敗のディアス。こちらも楽しみなカードだ。

このほか12年ロンドン五輪8強のフェリックス・ベルデホ(25=プエルトリコ)対元WBA世界スーパーフェザー級暫定王者のブライアン・バスケス(31=コスタリカ)というライト級10回戦も組まれている。12年12月に来日して内山高志(ワタナベ)と対戦して8回TKO負けを喫したバスケスだが、注目度の高いベルデホとどんな戦いをするのか、なかなか興味深い組み合わせだ。

リングにかける男たち

YOSHI-HASHI視点変え学んだ客への見せ方

石井(左)にエルボーをぶち込むYOSHI-HASHI(2019年3月16日撮影)

4月6日、新日本プロレス初の米ニューヨーク・マディソンスクエアガーデン大会が大成功し、1週間後の13日から茨城・つくば市で新シリーズが始まった。さまざまな新しい動きがみられる中、第6試合6人タッグ戦でのYOSHI-HASHI(36)の勝利に注目した方も多かったのではないだろうか。

昨年9月の神戸大会で、何かをしようとリングに向かって花道をダッシュし、リングの手前でまさかの転倒。そのアクシデントで左肩を負傷し、長期欠場を余儀なくされた。約3カ月半の休養を経て、今年1月5日の後楽園大会で復帰。しばらく目立った動きはなかったが、春最強戦士を決めるニュージャパン杯で自身初の8強に進出。同じユニットCHAOS石井智宏との準々決勝では敗れたものの、感情をむき出しにして激闘を繰り広げた。復帰後からどんどん高まる期待に、YOSHI-HASHIは熱いファイトで応え続けている。

そんなYOSHI-HASHIが持つ棒についての記事を先週ウェブ上に公開したところ、予想以上のアクセス数があった。少々変わった要求に真剣に応えてくれる、彼の人柄の良さがあらためて伝えられたのではと思う。その取材では、棒の他に、欠場から復帰までの期間をどう過ごしていたかについても聞いた。

実は、08年にデビューして以来大きなケガはなく、こんなに長く欠場するのは初めてだったという。「動けなくて、ほんとに戻れるのかなと思ったりもしました」。不安を抱えながらリハビリをしている中、親交のある元サッカー選手の岩本輝雄氏から「せっかくだから、いろんなものを見にいったほうがいい」とアドバイスを受けた。

まず足を運んだのは音楽のライブだった。ケツメイシ、ミスターチルドレンなど数々の人気バンドを見に行った中で、最も印象に残ったのが、サンボマスターのライブだった。ボーカルの山口が懸命に歌う姿に、心が動かされた。「お客さんに訴えかけるものがすごい。老若男女問わず、引き込む力がすごいなと思いました。自分も人に訴えかけられるような戦いができたらな、ってその時すごく感じました」。

視点も変えてみた。デビュー以来初めて、後楽園ホールの客席に座ってプロレスを観戦した。「帽子をかぶって、マスクもして、変装してばれないように行ったんです。もちろん下の券売機でチケットを買って。そういう行為も含めて、お客さんの中に座るというのが意味があると思いました」。身銭をきってプロレスを見ることで、見る側の視点、ファンの思いを想像することが出来た。

「欠場には何かの意味がある。ピンチをただ乗り切るんじゃなくて、新たに何か得たい、という思いが強かった」。その思いを貫き、試合から離れた時間は意味あるものとなった。新たな視点と熱い思いを持ったYOSHI-HASHIがどう変化していくか、今後も注目していきたい。【高場泉穂】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

如意棒を手に入場するYOSHI-HASHI(2019年3月16日撮影)

大相撲裏話

「令和」最初の場所、土俵は新たなチカラビトを待つ

【左の写真】1984年1月22日の初場所千秋楽で、三賞受賞でライバルの健闘をたたえ合う殊勲賞大ノ国(左=のち62代横綱大乃国)と敢闘賞保志(右=のち61代横綱北勝海)【右の写真】2018年10月1日、会見する八角理事長(右=元横綱北勝海)と芝田山親方(元横綱大乃国)

「横綱、天皇陛下が亡くなられた。初日は1日遅れて月曜日になった」。文言の一言一句は正確ではないかもしれない。何せ30年と3カ月前の話だ。ただ、天皇陛下が亡くなられたこと、喪に服す意味で翌日の予定だった初場所初日が1日遅れることが伝えられたのはハッキリと覚えている。場所直前で朝稽古も早めに終わったこともあり、熱気は冷気に変わっていた。底冷えする上がり座敷で、私は時代が変わる節目の一報を耳にした。

昭和64年1月7日の土曜日。初場所初日の前日にあたるはずだったこの日、前年12月から相撲担当になった私は、横綱大乃国が所属する放駒部屋(東京・杉並区)の朝稽古に足を運んだ。結果的に昭和最後の一番となった同63年11月の九州場所千秋楽結びの一番で、横綱千代の富士(先代九重)の連勝を「53」で止めた大乃国を取材するためだ。取材に来ていたのは、私1人だったと記憶している。稽古が終わり、横綱と話をしていた時、師匠だった放駒親方(元大関魁傑)が横綱に発した前述の言葉が耳に飛び込んできた。すぐには事実をのみ込めず、事の重大さが分かった時には横綱に切り出す言葉も見つからず、取材はそれで打ち切られた。

それから5年間、相撲担当を務め、その後は他のスポーツ担当を転々とした。そして4年前の1月に約22年ぶりに復帰。この間、老若男女が熱狂した若貴フィーバーが幕を下ろし、モンゴル勢による新たな時代が始まり、白鵬1強時代、そしてさまざまな不祥事による冬の時代を経て、再び人気安定の時を迎えている。

浦島太郎状態で20年ぶりに戻った相撲の現場は、その間、全く顔を合わせたことのなかった親方衆や裏方さんに「久しぶりだね」と声をかけられることも多く、義理人情の厚さに懐かしさを感じたものだ。SNSによる情報発信、データ提供の広報体制など二十数年前と比べるべくもなく、時の流れで当然とはいえ「時代も変わったもんだ」と思わされもした。

昨今のパワハラ問題が影を落としているのか、力士風情には「昔はもっと上下関係が厳しかったのでは」と思うこともある。平成の初期は、昭和の名残があったが、今は様変わりしたと感じる。指導するにも何かと制約がかかり、肩身の狭い思いをしている関係者も多いのでは。型破りで個性的な力士や親方衆が、そこかしこにいた昔のバンカラな時代に、今を重ねようとしても無理な話だろう。

そうはいっても、大相撲は大衆の支持を受け、生き続けてきた。場所が中止になる問題があろうと内紛劇が起ころうと、紆余(うよ)曲折を経ながらも興行は続いている。今の両国国技館建設の際、借金なしで建設した上に、当時の春日野理事長(元横綱栃錦)とともに「相撲取りの仕事は相手を負かすもの。中卒の我々が(大手建設会社の)大学出のエリートを負かしたんだ」と建設費を十数億円も負けさせた自慢話も、今は亡き初代横綱若乃花の花田勝治さんから酒を酌み交わしながら聞いた。裸一貫で相撲道を歩いてきた気骨のようなものは、脈々と受け継がれているはずだ。

担当になった平成最初の場所で、3場所連続休場明けから復活優勝した横綱北勝海は、八角理事長として角界をけん引。「休場明けでとにかく必死だったよ。(節目の場所と)考える余裕はなかった。30年? 早いね」と述懐する。昭和最後の日の取材相手だった大乃国は、芝田山広報部長として情報発信している。千代の富士は鬼籍に入り、貴乃花はよもやの協会退職。30年もあれば、いろいろなことが起きて当然だ。それでも大相撲の火は、一時的に風前のともしびにはなっても消えることはなかった。

そんな平成も終わり、間もなく「令和」が始まる。昭和から平成になって相撲取材を始めた約30年前のあのころ、3横綱が4横綱になり、それも長くは続かず「千代の富士時代」は終わりを告げ、若貴を中心とした新たな息吹があった。平成3年名古屋場所から平成5年夏場所までの丸2年間の12場所で、何と横綱の優勝はなく、平幕優勝4人という摩訶(まか)不思議な時代もあった(うち4場所は番付上に横綱不在ということもあるが)。そんな新旧交代、群雄割拠の時を経て「曙貴時代」を迎えた。元号が変わる今、単なる偶然の一致だろうが、あのころと時代背景が重なる。貴景勝という新大関を迎える「令和最初」の夏場所。新星の台頭は雨後のたけのこのごとく、何人いてもいい。それが間違いなく活性化につながる。土俵は新たなチカラビトを待っている。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

天才ロマチェンコに努力のクロラ番狂わせ起こせるか

アマチュア時代に五輪連覇、プロ転向後は3戦目で世界王座を獲得し12戦目で3階級制覇達成。現役ボクサーのなかで最も高い総合評価を受けているWBA、WBO世界ライト級統一王者のワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)が12日(日本時間13日)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのステープルズ・センターで防衛戦に臨む。挑戦者は2代前のWBA王者、アンソニー・クロラ(32=英)。辛抱強く好機を待つ根性型の選手だ。ロマチェンコが圧倒的に有利とみられているカードだが、「天才」に死角はないのか。

ロマチェンコは五輪連覇のほか世界選手権でも2度優勝するなどアマチュアで397戦396勝1敗という驚異的な戦績を残した。ロンドン五輪翌年の13年、世界ランカーを4回KOで下してプロデビュー。2戦目の世界挑戦は12回判定負けに終わったが、次戦でWBOフェザー級王座を獲得した。2年後の16年にスーパーフェザー級に上げてWBO王座を獲得すると、さらに手のつけられない巧さ、強さを発揮することになった。目まぐるしく立ち位置を変えながら距離とタイミングを計り、相手の意表を突く多彩なパンチを顔面とボディにヒット。対戦者はダメージとストレスを溜め込んで戦意を喪失し、ついにギブアップ-こうした展開と結果が4試合も続いたため、スペイン語の「ノー・マス(もうやめた)」をもじり、敬意をもって「ノー・マス・チェンコ」と称されたこともある。

昨年5月にはライト級に上げ、WBA王者のホルヘ・リナレス(33=帝拳)を10回TKOで破り3階級制覇を達成。12月にはWBO王者のホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ)から2度のダウンを奪って圧勝、2団体の王座統一を果たすとともにプロ戦績を13戦12勝(9KO)1敗に伸ばした。

対照的に挑戦者のクロラは世界王座を獲得するまで9年、37戦を要した遅咲きだ。15年11月に獲得した、そのWBA世界ライト級王座も2度目の防衛戦でリナレスに明け渡し、再戦ではダウンを奪われて完敗を喫した。

しかし、そこから強豪相手に3連勝を収めて今回の指名挑戦権をつかんだ。かつて隣家に押し入った強盗を捕まえようとして格闘、レンガで頭部を殴られ足首も負傷するという大けが負ったこともある。こうした正義感の強さもあってかクロラは英国マンチェスターでは絶大な人気を誇る。戦績は43戦34勝(13KO)6敗3分。

天才型と努力型のカードだが、オッズはミスマッチを意味する41対1と出ている。もちろんロマチェンコ有利の数字である。これはボクシング史に残る大番狂わせ、1990年2月に東京ドームで行われたマイク・タイソン(米)対ジェームス・ダグラス(米)の世界ヘビー級タイトルマッチのオッズ(42対1)に匹敵する。サウスポーのロマチェンコが俊敏な動きで元王者を翻弄、中盤あたりで仕留めるかギブアップさせるというのが大方の予想だ。

では、「ハイテク(高性能=ロマチェンコのニックネーム)」に死角はないのだろうか。ロマチェンコは昨年5月のリナレス戦でアマ、プロを通じて初といわれるダウンを喫している。また、その試合中に右肩を負傷し、試合後に手術を受けている。復帰戦となったペドラサ戦ではポイントで大差をつけたものの仕留めることはできなかった。身長170センチのロマチェンコは大きな相手と戦うことで自身の性能が十分に発揮できていないことを実感しているのか、近い将来、スーパーフェザー級に階級を戻す考えがあると話している。絶対王者に死角があるとすれば、こうした体格面のハンデということになろうか。

12年半前のプロデビュー時からライト級で戦ってきたクロラは、174センチの身長と体力を生かして近距離で強引に押し込み、王者のセンサー(感応装置)を破壊したうえで後半勝負に持ち込みたいところだ。

予想どおりロマチェンコが天才ぶりを見せつけるのか、それともクロラが世紀の大番狂わせを起こすのか。ステープルズ・センターのリングに注目したい。

リングにかける男たち

木村翔が再起戦快勝、王者田中と激戦必至の再戦期待

WBO世界フライ級王者・田中恒成の会見場を訪れ握手を交わす木村翔(2019年3月16日撮影)

前WBO世界フライ級王者木村翔(30=青木)が3月30日、中国・上海で再起戦を行い、3回TKO勝ちを飾った。17年6月、中国に乗り込んで五輪金メダリスト・鄒市明から同級王座を奪い、中国で人気が爆発した男は、リング上から「また世界チャンピオンになりたい。中国で」とやって、大歓声を浴びたらしい。

かっこええがな。

私は大阪が拠点なんで、木村に話を聞いたんは1度しかない。3月16日、岐阜メモリアルセンターで愛ドーム。昨年9月に木村からベルトを奪った現王者田中恒成の初防衛後です。

テレビ中継のゲストやった木村は丁寧に報道陣の質問に答えてくれた。

「前半は田口選手が頑張ったけど、後半は田中選手がスピードを生かして、けっこうな差があったと思う。田中選手は僕との試合から本当に強くなってましたね。パンチが重い。ジャブ1つとっても音が違う。田口選手はゾンビのように頑張ったと思いますよ」

田中と、挑戦者の元WBA&IBF統一ライトフライ級王者田口良一の間にあったと感じた力の差。田口を「ゾンビのように」と表現したのは、間違いなく畏敬の念を込めて、です。「ゾンビ」のくだりはちょっと感動したし、そんな言葉のチョイスこそが、木村の真っすぐな人柄を表している気がしたもんです。

誰かが聞いた。田中ともう1度、戦いたくないか?

「それはもちろん。チャンスがいただけるなら、どこででも。僕の中で、決着はついてませんから」

田中戦は0-2判定負け。ジャッジ3人の採点は、112-116、113-115、114-114。1人が4ポイント差、1人が2ポイント差。そして1人がドローの僅差でした。

さて、ここからは私の勝手な願望です。

世界3階級王者の田中は年内、防衛路線(できて2試合?)を敷いて、来年、スーパーフライに階級を上げて4階級制覇を目指す-。これが田中陣営の基本プラン。「重要なのは誰と戦うか」「ボクシングを通じて、かっこよくなりたい」。これが田中のポリシー。4階級挑戦はいろんな選択肢が見込まれます。田中が魅力を感じている元3階級覇者でスーパーフライ級の世界王座を狙う井岡一翔がこのほど国内ライセンス再取得に動いた。夢が膨らむけど、まあ先の話やし、ちょっと置いときましょう。

問題は年内の防衛路線です。木村、田口と戦った田中は、もうフライ級に戦いたい相手が「正直いない」と言い「できるなら、他団体王者との統一戦」と希望しています。しかし、統一戦は資金面、交渉の難度からしてハードルがとても高い。それなら、木村ともう1度っちゅうんは、どうでしょう?

2018年の最優秀試合に選ばれた激戦のリマッチをクリアすれば、田中も堂々と「フライ級は卒業です」と胸を張れるんちゃいますか? 木村の胸に残る“未決着”のもやもやもスッキリするやろうし。

両陣営のみなさん、好き勝手言うてすんません。あの素晴らしいファイトをまた見られるなら、と思ったもんで。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

WBO世界フライ級タイトルマッチで激しく打ち合う田中恒成(右)と木村翔(2018年9月24日撮影)

大相撲裏話

後輩貴景勝からもいじられる“愛されキャラ”大栄翔

大栄翔(左)と談笑する貴景勝

平成最後の場所となった春場所で22歳の新大関が誕生し、世代交代の波が一気に押し寄せた。その気鋭な若手の波に、25歳の大栄翔(追手風)も乗っている。

自己最高位の東前頭2枚目で迎えた春場所では、幕内上位で7勝8敗と奮闘。高安、豪栄道の2大関を撃破し、白鵬、鶴竜の2横綱にも善戦した。しかし、勝ち越しを懸けた14日目、千秋楽で連敗。勝てば新三役が有力だっただけに「すごいチャンスを生かせなかった。15日間続けての集中力を維持できていない。本当にもったいなかった」と、飛躍の中でも悔しさをにじませた。

高校相撲の名門校、埼玉栄高を経て角界に飛び込んだ。春場所は前頭2枚目以上に埼玉栄高のOBが5人。大栄翔も「(OBが)たくさんいるので刺激を受けた」と、発奮材料にした。持ち味は突き、押し。「(春場所は)前に出られた分、相手に圧力が伝わった」。時間を見つけて母校の相撲部へ足を運び、専任トレーナーの指導を仰いでフィジカルの向上に努め、タイヤを引くトレーニングなどで出足を強化した。

“愛されキャラ”としても存在感を放っている。3学年下の後輩、貴景勝とは高校在籍こそかぶっていないものの、兄のように慕われている。プロ入り後も母校に顔を出していたため面識があり、貴景勝(当時のしこ名は佐藤)が新十両を果たした16年夏場所あたりから仲が深まってきたという。先輩後輩の間柄だが、貴景勝にいじられることもしばしば。上下関係なく接するようになったのは「気づいたら、そうなっていました」。春場所前半には毎日のように、これまた高校の1学年後輩、平幕矢後(24=尾車)と宿舎近くの銭湯に通い詰めた。追手風部屋と尾車部屋の宿舎がともに大阪・堺市内で、自転車で約10分圏内ということもあり、仲のいい後輩と湯船につかって心身の疲労を癒やした。しかし、その矢後にいじられることも増えてきたという。大栄翔は「矢後は、幕内に上がってから調子に乗っているんですよ!」と、愛嬌(あいきょう)たっぷりの笑顔を見せながら訴えていた。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

笑顔の大栄翔(右)と貴景勝(2018年12月3日撮影)
原功「BOX!」

「戦うチャンピオン」ムンギア、11カ月で5試合目の世界戦

WBO世界スーパーウエルター級王者のハイメ・ムンギア(22=メキシコ)が4月13日、メキシコのモンテレーで同級1位の指名挑戦者、デニス・ホーガン(34=アイルランド:30戦28勝7KO1敗1分)を相手に4度目の防衛戦を行う。今年1月、井上岳志(29=ワールドスポーツ)を退けて3度目の防衛を果たしたムンギアは、わずか2カ月半の短いスパンで次戦に臨むことになる。昨年5月の戴冠から数えると、なんと11カ月で5試合目の世界戦というハイペースだ。

昨年4月、3団体統一世界ミドル級王者(当時)のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)への挑戦を予定していたサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)が、ドーピング違反のため戦線離脱が決まった際、ムンギアはいち早く代役としてゴロフキンへの挑戦に名乗りをあげた。しかし、このときは「ミドル級での試合経験がなく、まだ21歳と若くキャリア不足」という理由でラスベガスの試合を管理するネバダ州アスレチック委員会から却下されてしまった。このエピソードからも当時のムンギアが世界的に無名だったことが分かる。

ところが、直後に思わぬ幸運が舞い込む。今度はWBOスーパーウエルター級王座に挑むはずだった元王者のリアム・スミス(30=英)が皮膚病にかかり、5月12日に予定していたサダム・アリ(30=米)への挑戦を辞退したのだ。ムンギアは再び代理挑戦者として名乗りをあげ、ニューヨークでアリにチャレンジ。戦前の予想は不利だったが、初回に2度のダウンを奪って勢いづき、3回と4回にもダウンを追加。合計4度のダウンを奪ったすえ4回TKOの圧勝で王座獲得を果たしてみせた。

この戴冠試合と次のホーガン戦を含むムンギアの世界戦日程は以下のとおりだ。

18年5月:サダム・アリ 4回TKO

18年7月:リアム・スミス 12回判定

18年9月:ブランドン・クック 3回TKO

19年1月:井上岳志 12回判定

19年4月:デニス・ホーガン ?

このままムンギアが負傷せずに勝ち続ければ、今年は4試合~5試合が十分可能なペースだ。メキシコでは「アルバレスの次のスーパースター候補」として大きな期待を集めており、その成長が注目されている。

スーパーウエルター級は、WBAスーパー王座とIBF王座に23戦全勝(16KO)のジャレット・ハード(27=米)が君臨。WBC王座は30戦28勝(21KO)2敗のトニー・ハリソン(28=米)が持っている。WBAレギュラー王座は16戦15勝(11KO)1分のブライアン・カスターニョ(29=亜)が保持している。いずれ劣らぬ実力者である。

統一戦を熱望しているムンギアは32戦全勝(26KO)と4人の王者のなかで最も若く最も高いKO率を誇るが、だからといって簡単に勝ち抜けるという予想は立てられない。

それでも22歳の昇竜は「スーパーウエルター級を成敗したあとミドル級に上げて2階級制覇を狙う」と宣言している。そのためにも、まずはホーガンとの指名防衛戦をクリアしなければならない。「戦うチャンピオン」、ハイメ・ムンギアの今後に要注目だ。

リングにかける男たち

中村之洋さん、憧れと兄がつないだマスク職人の道

初代タイガーマスクのマスクをつくっている中村之洋さん

初代タイガーマスクのマスクは、大会ごとに用意されて佐山サトルのもとに届く。つくっているのは、マスク職人の中村之洋さん(タイガーアーツ)だ。中村は、中学時代に見たタイガーマスクにあこがれ、高校時代には、一日中タイガーマスクのことを考えるほど、熱中したという。

好きが高じて、プロレスラーになるべく、体を鍛え始めたという。そんな中村さんのトレーニングのモチベーションになったのが、マスクの存在だった。「タイガーの分身であるマスクが手元にあったら、トレーニングにもっと励める」と、マスクの製作会社から通販で手に入れたのがきっかけだった。

そのマスクをながめているうちに、自分でつくりたくなった。裁縫などの経験は一切なかった。18歳の時には、近所の服装直しのおばさんに下絵を描いて、ミシンで縫ってもらった。会社勤めをしながら、27歳の時にためたお金10万円でミシンを購入。そこから、研究を重ねマスクを販売できるまでになった。

タイガーマスクとの出会いは、兄の中村頼永さんが、佐山が興したシューティングの一番弟子だったことで実現した。そのジムから4代目タイガーマスクをプロレスデビューさせるという話が進み、兄が「弟がマスクをつくれる」と売り込んでくれた。

4代目のマスクを見た佐山が、03年、初代タイガーマスク復活の際に「ボクのマスクをつくって」と要請。そこから16年、中村さんはマスクを作り続けている。一般に販売するマスクでも、3、4万円はするというが、初代タイガーマスクがつける特製のマスクは10万から30万円と高価なものだ。最初は「ボクのマスクで大丈夫?」と自信もなかったが、今では「つけている気がしない」という最高の褒め言葉を佐山からもらうほどになった。かっこよさと機能性、かぶり心地とすべてを満足させて、中村さんの仕事は完成する。「世界中にファンのいるマスクですから、タイガーマスクのイメージも守り、ファンの期待もダブルで背負っていかないといけない。やりがいのある仕事です」と中村さんは、今日もマスクと向き合い続ける。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

北勝富士の話術は横綱級?つい引き込まれるトーク力

トークショーで歓声に手を振って応える大相撲の北勝富士(2019年3月1日撮影)

無口が美徳とされる角界だから、相撲中継のインタビューなどは正直おもしろくない。だが、普段の会話は別で、いろんな意味でトークがさえる力士はいる。

白鵬、鶴竜の両横綱は、さすがだ。白鵬の探求心は半端じゃない。初場所の朝稽古取材ではチベット仏教の「チャクラ」などに話題が及んだ。「人類の起源に興味があるんだよね」と、話がどんどんオカルト=神秘主義に偏ったりする。42回も優勝しとったら、常識、既成概念では満足できんのかもしれん。

鶴竜は日本語が抜群にうまい。発音、滑舌、リズム、豊富な語彙(ごい)。話題もサッカー、NBA、NFL、UFC…ととどまるところがなく「何でそんなに知ってんの?」と驚く。「日本人以上に日本語のうまい力士」と思う。

時の人の貴景勝、平幕の阿炎らのオフレコトークは切れ味抜群(オフレコなんが痛いけど)やし、御嶽海は間の取り方が上手やし…。そうこう書いている内に思ったけど、相撲のうまい人は話もうまいかもしれませんな。

最近のイチオシは、北勝富士だ。基本的にしゃべり好きなんやろうが、話し出したら止まらん。その内容も感心させたり、笑いを誘ったりと多種多様なのだ。

新三役での春場所初日、白鵬戦でもあり、朝稽古を取材した。全体の稽古を終え、座敷でストレッチポールの上で背筋を伸ばしながら、いきなり切り出した。

「…う、う~ん…俺“劇団四季力士”でいこうと思うんですけど」

は?

「舞台なんか全然興味なかったんだけど、知り合いに“チケットあるから行かない?”って誘われて渋々行ったら…。やっぱり生ってすごいんですよ。もうめっちゃ感動しちゃって」

ライオンキングを2回見た。リトルマーメイド、アラジン、ノートルダムの鐘も見た。

「大阪でも場所前に行きたかったんですよ。でも、チケット取れなくて」

生のすごさに引かれて、ジャンルは全然違うが、吉本新喜劇も2度、見に行ったらしい。

…と、まあ、こんな感じで唐突にネタを切り出してくる。その話しぶり、リズム、内容がとにかく楽しくて、ついつい聞き入ってしまうのだ。

土俵外の話題だけでなく、北勝富士は土俵の話も楽しい。8敗で負け越しが決まった翌日の春場所12日目。錦木に勝った。鮮やかな踏み込み、押し込みで腰の重さに定評のある男を押し出した。

直後の支度部屋。また自分から切り出した。

「遅いんですよね~。いっつもそうなんだよな~俺。結局、気持ちが楽になったら、こういう相撲が取れる。おこちゃまッス。今朝は5時半から6時の間に腹痛くなって、起きなかったもん。初日から毎日起きてたのに」

確かに取材が楽、というのもある。ほとんど勝手に話して、ネタを提供してくれるのだから。だが、しかし、こういうお相撲さんが強くなると、楽しい。新たなキャラクターやないですか。横綱、大関との上位戦や、話題の力士の印象を語るとか。土俵の話題が増えるでしょ?

だから、もっと頑張れ北勝富士です。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

春場所12日目に錦木(左)を押し出しで下す北勝富士(2019年3月21日撮影)

原功「BOX!」

増加傾向にある日本トップボクサーの海外遠征

IBF世界ウエルター級5位の小原佳太(32=三迫)が30日(日本時間31日)、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアでIBF王座の挑戦者決定戦に臨む。勝てば世界王座への挑戦切符が手に入る大事な一戦だ。同じ30日には前WBO世界フライ級王者の木村翔(30=青木)が中国の上海のリングに上がる。昨年9月、田中恒成(23=畑中)に判定負けを喫して王座を失った木村にとっては再起戦となる。小原や木村だけでなく、今後は日本のトップ選手が海外で戦うケースが多くなりそうだ。

小原は4位のクドラティーリョ・アブドカクロフ(25=ウズベキスタン)と対戦する予定で、勝てば世界的な評価が高い王者、エロール・スペンス(29=米)への挑戦権を手にすることになる。スーパーライト級時代に日本王座と東洋太平洋王座、ウエルター級に上げてからWBOアジアパシフィック王座を獲得した実績を持つ小原は24戦20勝(18KO)3敗1分と高いKO率を誇る強打者で、

16年には世界挑戦も経験している。しかし、その世界戦を含めた3敗はいずれもKO(TKO)によるもので、耐久力に課題を抱えている。15戦全勝(9KO)のアブドカクロフが相手だけに厳しい戦いが予想される。小原にとってはリスキーな試合だが、勝った場合のリターンも大きなものが望める。

木村は、2度の世界挑戦経験を持つウィチャー・プライカオ(37=タイ)と対戦する。

オリンピック連覇の実績を持つゾウ・シミン(中国)を倒して世界王者になり、防衛戦でも中国・青島のリングに上がった木村は同国での知名度が高く、今回も中国で再起戦に臨むことになった。こちらは勝利を前提にして、内容が問われる試合といえる。

小原や木村だけでなく、このところ日本のトップ選手の海外遠征は増加傾向にある。昨年10月に村田諒太(33=帝拳)が米国ネバダ州ラスベガスでWBA世界ミドル級王座の防衛戦を行った(12回判定負け)のは記憶に新しいところであろう。昨年末には日本人ボクサー3人が中国特別行政区マカオでトリプル世界戦に臨み、京口紘人(25=ワタナベ)がWBAライトフライ級王座を獲得、2階級制覇を成し遂げている。

今年に入っても1月にスーパーバンタム級の高橋竜平(29=横浜光)とスーパーウエルター級の井上岳志(29=ワールドスポーツ)が米国で世界王座に挑戦(高橋は11回TKO負け、井上は12回判定負け)。世界戦ではないが、2月に前IBF世界スーパーバンタム級王者の岩佐亮佑(29=セレス)が米国で挑戦者決定戦に臨み10回負傷判定勝ち。同じく2月にスーパーライト級の世界ランカー、岡田博喜(29=角海老宝石)は米国で元世界王者と対戦、打撃戦を展開したものの9回TKOで敗れた。

このあと5月には4日(日本時間5日)に米国で船井龍一(33=ワタナベ)がIBF世界スーパーフライ級王座に挑む。2週間後の18日(日本時間19日)にはWBA世界バンタム級王者の井上尚弥(25=大橋)が英国でIBF王者との統一戦に臨むことになっている。さらに、その1週間後の25日(日本時間26日)にはWBO世界スーパー・フェザー級王者の伊藤雅雪(28=伴流)が米国でV2戦を予定している。

今年に限ってみれば、国内で開催された世界戦は2試合、5月に予定されている1試合を含めても計3試合に留まっている。それに対し国外での世界戦は現時点で2試合、5月の3試合を加えて5試合となる計算だ。

より大きな夢を求め、日本のトップボクサーたちの海外試合は今後も増えていきそうだ。

リングにかける男たち

継続は力なり…元世界王者・花形氏が日本のトップに

東日本ボクシング協会の新会長となる花形進会長(左)と渡辺均現会長

継続は力なり。これほどこの人を表すのにふさわしい言葉はないだろう。4月から東日本ボクシング協会会長に就任する花形ジム花形進会長。WBAフライ級で日本人13人目の世界王者となった。兼任の日本プロボクシング協会会長はくしくも13代目で、日本のトップに立つことになった。モットーも「明るく、クリーンに、粘り強く」を「花形イズム3カ条」とする。

協栄河合ジムに入門し、1歳さばを読んで16歳でプロになった。デビューは判定勝ち後連敗したが2カ月で3試合した。4回戦は8勝5敗3分け。10回戦は32戦目で、そこまで15勝8敗8分けだった。

初の10回戦で初のKO勝ち。努力がようやく実を結びだし、大場政夫にも判定勝ち、1年後に日本王座を獲得した。米国でWBC王者トーレスをノンタイトル戦も判定で破り、一気に期待の星になったが、69年のトーレスに敵地メキシコでの世界初挑戦は完敗した。

71年にフィリピンでWBC王者サラバリアに再挑戦は判定負け。72年にはWBA王者大場と再戦で3度目の挑戦。風邪をひき、計量も最初はオーバーから大接戦を演じたが及ばず。73年にタイでWBA王者チャチャイに4度目の挑戦も判定負けした。

74年に日本にチャイチャイを呼んで5度目の挑戦。王者が体重超過で王座剥奪となり、左ジャブで主導権を握って6回TKO勝ち。11年目、59戦目でついに世界王座を獲得した。東京のジム以外から初の王者へ、長い長い道のりだった。

初防衛戦はサラバリアに1-2の判定負けで会場は警官も出動する大騒動になった。75年には再戦は判定負け。76年にはメキシコでカントに7度目の挑戦も失敗でついに引退した。

その後も道は長かった。ジム経営は頭にあったが資金がなく、焼き鳥店やスナックで働いた。テレビ解説の仕事で再会した元ジムメイトの援助を受け、85年に念願のジムを開いた。引退から9年がたっていた。00年には星野敬太郎が世界王座を獲得。日本では初の師弟で世界王者となった。

機動力にスタミナを生かし、打って離れてのヒット&ラン戦法。KO負けは1回だけ。41勝(7KO)16敗8分と通算65戦も、現役時のダメージはまったく感じさせない。72歳の今もミットを持ち、自らもサンドバッグを打つ。「何よりあきらめずに続けること。あとはスタミナ」と、いまだ継続する。

神奈川のジムが集まる拳志会の会長を長年務め、毎月集まりがある。明るい性格で人望もあり、拳志会の後押しに応えての就任となった。「何事も理事のみんなで話し合って決めていく。少しでも会員を増やせるように3年頑張るよ」。

世界王者、ジム、世界王者育成と目標を実現してきた。長男晋一氏は現在はマネジャー。親子王者はかなわなかったが、ラスベガスで世界戦の夢も持つ。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

WBA世界フライ級タイトルマッチ チャチャイ・チオノイを下し喜ぶ花形進(1974年10月18日撮影)

大相撲裏話

最年長40歳の安美錦900勝と勝ち越しかけ千秋楽

安美錦

<大相撲春場所>◇14日目◇23日◇エディオンアリーナ大阪

関取衆最年長の40歳、西十両11枚目安美錦(伊勢ケ浜)が、史上8人目の通算900勝に王手をかけて千秋楽に臨む。

この日は徳勝龍に押し出されて7勝7敗となったが「あと1日。勝ってきたような相撲で集中できれば」と、落ち着いて話した。4場所ぶりの勝ち越しがかかる節目の900勝には「来場所に持ち越しかな」と冗談っぽく話しつつ、まだ現役生活を続けたい心の内をかいま見せた。

今場所の安美錦は特に、取組後に大勢の報道陣に囲まれる。横綱貴乃花の最後の対戦相手で、自身も兄弟で幕内を務め、師匠で元横綱旭富士の伊勢ケ浜親方は父のいとこ。今場所6勝未満なら幕下陥落が濃厚、引退も-。そんな中で初日から4連敗したが、5連勝と立て直し「前半を考えれば引退発表していてもおかしくない」と笑っていた。

一方で東日本大震災から8年の2日目には「みんな一生懸命頑張っている。星があがらないぐらいで落ち込んでいる場合じゃない」と、故郷青森と同じ東北地方の仲間を思った。十両残留が濃厚な6勝目を挙げた11日目には「40歳にもなって、まだ緊張する」と、胸中を明かした。力士という特殊な環境にいながら、一般に近い感覚を持つ。40歳でなお、存在感は増している。【高田文太】

大相撲裏話

母校勝山高は実質部員ゼロ、若佐竹奮闘

記者の質問に答える若佐竹(撮影・河田真司)

<大相撲春場所>◇12日目◇21日◇エディオンアリーナ大阪

大関とりに挑む貴景勝の千賀ノ浦部屋が場所前稽古を行った勝山高。その相撲部OBでただ1人の大相撲力士が、大阪市平野区出身、東序二段16枚目若佐竹(20=西岩)だ。この日は敗れ1勝5敗となったが「学校も応援してくれているし、期待に応えたいです」。表情は明るかった。

高校相撲は埼玉栄、鳥取城北などが有名だが、競技人口は少ない。全国で相撲部がある高校は154校で総部員数は917人。ちなみに男子サッカー部は4058校、16万5351人(いずれも日本高体連HPから、昨年8月現在)。同相撲専門部の川村久夫事務局長は「小中学生らが相撲をとる各地域の道場などが頑張ってくれて、この10年間ほどは横ばい」という。大阪の公立高で唯一相撲部がある勝山高は今春、部員2人が卒業してマネジャー1人となり、実質0に。大谷登部長らが毎週土曜日、地域の子どもたちに土俵を開放して競技普及に励む。

若佐竹は高卒以上の新弟子入門基準ギリギリの身長167センチで角界入り。「これといってやりたいことがなく、でも相撲なら“やりきれるかな”と思って」。大きなことは言わないが、昨年2月にできた若い西岩部屋で、部屋頭として黙々と頑張る。その姿が母校に入部希望者を呼び込むかもしれない。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

母校、実質部員ゼロ若佐竹が奮闘 入部者呼び込む 

記者の質問に答える若佐竹(撮影・河田真司)

大関とりに挑む貴景勝の千賀ノ浦部屋が場所前稽古を行った勝山高。その相撲部OBでただ1人の大相撲力士が、大阪市平野区出身、東序二段16枚目若佐竹(20=西岩)だ。この日は敗れ1勝5敗となったが「学校も応援してくれているし、期待に応えたいです」。表情は明るかった。

高校相撲は埼玉栄、鳥取城北などが有名だが、競技人口は少ない。全国で相撲部がある高校は154校で総部員数は917人。ちなみに男子サッカー部は4058校、16万5351人(いずれも日本高体連HPから、昨年8月現在)。同相撲専門部の川村久夫事務局長は「小中学生らが相撲をとる各地域の道場などが頑張ってくれて、この10年間ほどは横ばい」という。大阪の公立高で唯一相撲部がある勝山高は今春、部員2人が卒業してマネジャー1人となり、実質0に。大谷登部長らが毎週土曜日、地域の子どもたちに土俵を開放して競技普及に励む。

若佐竹は高卒以上の新弟子入門基準ギリギリの身長167センチで角界入り。「これといってやりたいことがなく、でも相撲なら“やりきれるかな”と思って」。大きなことは言わないが、昨年2月にできた若い西岩部屋で、一番弟子として黙々と頑張る。その姿が母校に入部希望者を呼び込むかもしれない。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

土俵に上がり四股を踏む若佐竹(撮影・河田真司)
大相撲裏話

貴景勝人気うなぎ上りグッズ売り上げも懸賞もトップ

貴景勝タオルを掲げて応援するファン(2019年3月10日撮影)

土俵に上がると、会場内は「貴景勝」の名前が書かれた薄いブルーのタオルで染まる。準ご当地場所で大関とりの貴景勝。実力はもちろんのこと、人気もうなぎ上りだ。エディオンアリーナ大阪では相撲グッズの売店が全部で7店。しこ名が書かれたタオル、ボールペン、キーホルダーなど…全ての売店で貴景勝関連のグッズが売れ行き1位だ。

特にタオルは応援グッズの中でも花形になる。最も規模の大きい2階の売店では、1日200枚以上を入荷して、そのうち半数以上が貴景勝のタオルだという。女性販売員は「新しく届いたなと思ったらすぐになくなる。圧倒的1番人気です」と明かした。

広告塔としても台頭しつつある。力士を指定する懸賞も初場所前の58本から約4倍の約250本で全体トップ。「甲子園記念館」で貴景勝に懸賞を出した阪神電鉄では、大相撲に懸賞を出すのは初めての試みという。同社広報部は「プロモーションの一環として出しました。貴景勝関は阪神地域に位置する芦屋市出身。甲子園と大相撲は長い歴史という意味でもつながりがあるので」と説明した。ちなみに春のセンバツ甲子園は春場所14日目の13日に開幕する。球春到来が先か、昇進当確が先か。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

ファンにサインする貴景勝(撮影・清水貴仁)
原功「BOX!」

ゴロフキンがDAZNと契約 アルバレス戦に現実味

世界ミドル級王座を約8年間に20度防衛した実績を持つゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)が、このほど動画配信サービスのDAZN(ダゾーン)と「3年間に6試合」という契約を交わした。これにより過去1敗1分の宿敵、現WBAスーパー王座とWBC王座に君臨するサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)との第3戦が早ければ9月にも実現しそうな気配になってきた。

現在の主要4団体のミドル級王者は、WBAスーパー:アルバレス(54戦51勝35KO1敗2分)、WBA:ロブ・ブラント(28=米 26戦25勝17KO1敗)、WBC:アルバレス、WBC暫定:ジャモール・チャーロ(28=米 28戦全勝21KO)、IBF:ダニエル・ジェイコブス(32=米 37戦35勝29KO2敗)、WBO:デメトリアス・アンドレイド(31=米 27戦全勝17KO)となっている。アルバレスは3階級制覇を果たしたメキシコのヒーローで、ブラントは村田諒太(33=帝拳)から王座を奪った技巧派として知られる。チャーロは爆発的な強打を持つパンチャーで、ジェイコブスは骨肉腫を克服した「ミラクルマン(奇跡の男)」として米国東海岸で人気がある。アンドレイドは2階級制覇を成し遂げている長身の技巧派だ。

いずれ劣らぬ実力者だけに彼らが順を追って直接対決-というのが理想だが、そこはスポーツ・ビジネスの世界、なかなかうまくいかないのが現実だ。最も大きな壁が彼らと放送メディアとの関係である。上記5王者のうちアルバレス、ジェイコブス、アンドレイドの3人はDAZN、ブラントは米国のESPN、チャーロはフォックス系のPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)と契約を交わしており、それが大きな障壁となっているのだ。

こうしたなか昨年でボクシング中継を打ち切った米国HBOテレビと契約を交わしていたゴロフキンが、どこと組むのかが注目されていた。そして、このほどDAZNと契約したというわけだ。正式な金額は発表されていないが、6月に計画される初戦で1000万ドル(約11億1000万円)が最低保証され、アルバレスとの第3戦が実現すれば3000万ドル(約33億3000万円)以上の報酬を約束する内容だと伝えられる。ちなみにアルバレスは5カ月前、DAZNと「5年間に11試合、総額3億6500万ドル(約400億円)」という巨額の契約を交わしている。

ゴロフキンがESPNでもPBCでもなくDAZNを選んだのは、アルバレスとの決着戦を熱望しているからといわれ、すでに両者の第3戦は具体的な動きを見せ始めているようだ。気の早いメディアは9月14日という日程もあげて煽っている。

ただし、その前にアルバレスは5月4日にIBF王者のジェイコブスと統一戦を行うことになっており、これを無傷でクリアしなければならない。ゴロフキンも6月8日か15日に計画される試合で圧勝することがノルマとなる。対戦候補にはWBA2位で19戦全勝(4KO)のカミル・ツェメルタ(29=ポーランド)の名前が挙がっている。

仮にジェイコブスがアルバレスに勝つようなことがあれば、そのときはジェイコブスがゴロフキン戦に大きく前進するはずだ。ゴロフキンとジェイコブスは17年3月に対戦し、ダウンを奪ったゴロフキンが小差の判定で勝利を収めており、こちらも因縁の再戦となる。

アルバレス対ゴロフキンの第3戦は早期実現するのか、それとも5月、6月に波瀾が起こるのか。ブラント、チャーロ、アンドレイドがどう動くのか、そして再起を宣言している村田は? 今後のミドル級トップ戦線の行方に注目したい。

リングにかける男たち

最強を追い求めた若松佑弥、超大物食いの好機到来

31日のONEチャンピオンシップ日本大会で元UFC王者デメトリアス・ジョンソンと対決する若松佑弥

超大物を食う。高い闘争本能を持ち、リトル・ピラニアが愛称だ。31日に東京・両国国技館でシンガポールを拠点とする格闘技興行ONEチャンピオンシップの「ONE:A NEW ERA-新時代」が日本初開催。その大舞台で、総合格闘家の若松佑弥(24)は番狂わせを狙い、己の牙を研いでいる。試合当日、ケージではUFC史上最多の11回防衛を誇る元フライ級王者デメトリアス・ジョンソン(32=米国)と相対する。同階級で史上最強と呼ばれる相手とONEチャンピオンシップのフライ級トーナメント1回戦で拳を交える。

「オレは奇跡を起こします」

明るい未来を想像し、神経を研ぎ澄ませる。

地元の鹿児島・薩摩川内市では、やんちゃな少年時代を過ごした。格闘漫画グラップラー刃牙の世界観にあこがれ、ストリートファイトを通じて常に最強を求めた。典型的な不良。「子供のころは問題をたくさん起こして周囲に迷惑ばかりかけていた」。中学時代にボクシングジム、卒業後の16歳には柔術道場にも通った。それでも抑えきれない闘争本能。わき上がる戦いへの渇望。とび職をしながら自己流で鍛えた。拳を鍛えるために電柱やブロック塀を殴り続けた。

「ワンパンチで倒す強さが欲しかった」

地元になかった総合格闘技ジムに通うため、18歳で仕事を辞め、上京。頭に浮かんだのはPRIDEリングでピラニアと呼ばれたファイター、長南亮(現所属ジム会長)の戦う姿だった。「ボクの格闘技の原点は『ケンカの最強』というイメージ。そのファイトスピリットがあるのは長南さんだと思った」。上京後、1年間は己の肉体の基礎を作り、練馬区にある長南会長のジムの門をたたいた。

ケンカで鍛えた持ち前の闘争本能と総合格闘技テクニックが融合し、若松は急成長を遂げた。プロデビュー戦こそ黒星を喫したが、その後は9連勝(8KO)をマーク。パンクラスのフライ級ネオブラット・トーナメントも制覇した。今や若手成長株の1人として注目されているが、まだ王座獲得歴はない。昨年9月のONEデビュー戦も負けていた。

「次は弱いヤツとやるのかな」。

その不安は杞憂(きゆう)に終わった。フライ級世界最強の相手に指名された。「(オファーは)電車の中で聞いて、最初は頭が真っ白になったけれど、すぐにやりたいと思った。こんなチャンス、人生で1回あるかないか。やるしかないでしょ」。即決だった。過去、若松のような打撃を得意とする選手が、ジョンソンのタックル→テークダウン、グラウンド(寝技)に食われてきた。下馬評は高くない。若松も承知の上だ。

やるか、やられるか-。もちろん、やられるつもりはない。「ジョンソンを『殺すつもり』で。31日はボクの日だと思っています」。最強の男を食い、食い散らかす-。その大物食いを達成した時、若松がリアル・ピラニアになる。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

◆若松佑弥(わかまつ・ゆうや)1995年(平7)2月9日、鹿児島・薩摩川内市生まれ。TRIBE TOKYO MMA所属。川内育英小1年から6年間、サッカークラブに在籍。川内北中時代には地元ボクシングジムに通って打撃を鍛える。とび職に就き、地元の柔術道場にも通うが、格闘家になるために18歳で上京。2年後の15年6月にプロデビューし、通算戦績は10勝2敗。趣味は買い物。家族は両親と姉、妹、弟。168センチ、65キロ(通常)。血液型はB。

◆ONEチャンピオンシップ 11年7月、シンガポールで設立された高い競技性を追求するアジアで人気の格闘技団体。ムエタイ、キックボクシング、空手、カンフー、シラット、散打(サンダ)、ラウェイ、総合格闘技(MMA)、テコンドー、グラップリングほか、すべての格闘技スタイルを組み込む大会を運営。11年9月、シンガポール・インドア・スタジアムで第1回大会を開催。同年10月から王座を創設し、16年5月から女子王座も創設。北米流にPRIDE流も融合させた独自ルールを採用。試合は5分3回、王座戦は5分5回。円形のケージを使用。世界138カ国、17億人以上の視聴者に映像を配信。設立者の1人、チャトリ・シットヨートンがCEO(最高経営責任者)を務める。

電柱やブロック塀を殴って鍛えた若松の右拳は大きく盛り上がる(撮影・藤中栄二)
3月14日にONEジャパンの秦社長(左端)、パンクラスの酒井代表(右端)とともに会見に臨んだ若松(撮影・藤中栄二)
大相撲裏話

元貴公俊の貴ノ富士、同じ過ちはしない精神面が成長

春場所8日目、水戸龍を寄り倒しで破る貴ノ富士(撮影・上田博志)

「付け人とのコミュニケーションで、去年と同じ間違いはしたくなかった」。今場所の初日を出した3日目の支度部屋。西十両13枚目貴ノ富士(21=千賀ノ浦)は、間を置きながら、淡々と決意を語った。付け人は、もともと千賀ノ浦部屋に在籍していた幕下舛東欧、1年前に入門した序二段貴正樹らがつき、サポートに徹している。貴ノ富士は「初めてついてくれたけど、ちゃんとついてくれている」と感謝した。

あれから1年がたった。昨年初場所で新十両を決めながら、この日と同じ春場所8日目の同年3月18日に付け人を暴行。謹慎処分を受け、幕下に陥落した。貴公俊(たかよしとし)から改名した1月の初場所で再十両を決めた。1年ぶりとなる十両の舞台は、ここまで3勝5敗。「全ての力を使ってもいいくらい、相撲だけに集中したい」と意気込んでいる。

場所前の2月23日には双子の弟、十両貴源治との「貴源治・貴ノ富士双子後援会」の発起会が行われるなど、背負うものが増えた。「自分のことよりも、応援してくれるいろんな人の思いも背負っている」。21歳。1年前より、精神面の成長を実感している。【佐藤礼征】

双子の弟・貴源治(左)と貴公俊時代の貴ノ富士(2017年4月30日撮影)
大相撲裏話

全中V吉井と準V大辻、中卒たたき上げで横綱目指す

新序一番出世として土俵に上がった中学横綱の吉井(2019年3月14日撮影)

5日目の14日、春場所の新序一番出世16人が披露された。合格者40人は直近5年で最も少ないが、バラエティー豊かな人材が集まった。全国中学校大会決勝で戦った15歳2人は“中卒たたき上げ”での出世を目指す。

中学横綱の吉井虹(15=中川)は、新序一番出世で師匠の中川親方(元前頭旭里)の化粧まわしをつけ「いろんな意味で重い」と感慨深そうに話した。その日が47歳の誕生日だった父昌人さんは、会場で息子の晴れ姿を見守り「最高の誕生日プレゼントです」と笑顔。吉井も「親孝行して、いつかは横綱になりたい」と力を込めた。

その吉井に決勝で敗れた大辻理紀(15)は猛稽古で知られる高田川部屋への入門を選んだ。「厳しい環境で成長して、3年以内に関取になりたい」。師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)と、母真理子さんの共通の知人に紹介されたことがきっかけ。兵庫・加古川市出身で2月中旬には加古川市役所を訪問し、岡田康裕市長から「横綱になって」と激励された。昭和以降の同市出身力士では元関脇闘竜が最高位。179センチ、130キロの大器は「地元の人のためにも活躍したい」と意気込んだ。【佐藤礼征】 (ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

新序一番出世披露を終え、握手を交わす昨年の中学横綱の吉井(左)と全中準優勝の大辻(2019年3月14日撮影)