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au版ニッカン★バトル

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リングにかける男たち

新日本も山あり谷あり…リング内外で感じた新たな風

棚橋弘至(2018年12月12日撮影)

スポーツ新聞は、オールドメディアと言われることもある。それでも、この媒体がやっぱり面白いと、まだ何かやれることがあると思えるから仕事を続けているのだと思う。12月末、4人のプロレスラーにインタビューし、思わず自分の仕事をプロレスに重ねた。

棚橋弘至、オカダ・カズチカ、内藤哲也、飯伏幸太。今をときめく4人全員が、客が入らない、またはブーイングを浴びる不遇の時代を経験してきた。その中でもプロレスの面白さを変わらず信じ続け、今は新たなプロレスブームをけん引している。「地上波のゴールデンタイムでプロレスを」(飯伏)。「大人が楽しむ文化の一ジャンルにしたい」(棚橋)。いまだに尽きない夢やアイデアに、刺激を受けた。先が行き詰まったようにみえても、続けていたら何か新しいことが見えてくるかもしれないと思えた。プロレス担当となって1カ月。リング内外で熱気と新たな風を感じながら仕事をしている。

この4人へのインタビューのお題は「俺の平成ベスト1・4」。新日本の1月4日東京ドーム大会に向けた連載のためで、92年から続く同大会の中から心に残る試合を選んで語ってもらった。資料として持参したのが、1・4を報じた27年分すべての日刊スポーツの紙面。全員が真剣にそのプリントすべてに目を落とし、うれしそうに思い出を語ってくれた。特に、ファンクラブ会員だったことで知られる内藤選手は「あぁ…」「うーん」などと声を漏らしながら、約5分間熟読。同席した新日本の担当者の方が「インタビューの時間、終わっちゃいますよ」とつっこむほど夢中になって読んでくれた。

手前みそだが、この27年分の紙面は今見ても面白い。その時代の空気感が伝わってくる。例えば1995年(平7)の1面は「高田 武藤を逆十字」。メインでUWFインターナショナルの高田が新日本の武藤に勝利。その他にもアントニオ猪木、長州力、馳浩とそうそうたるメンバーの試合が2、3、裏面と4枚展開で報じられている。また「新春4日ドーム恒久開催決定」の見出しも。そこから数年は大展開が続くが、2000年中盤から一変。観客数の減少と合わせるように、紙面のスペースも減っていく。

08年は、白黒1ページだった。そこには「観客数は2万7000人の過去最低」「2年連続で2階と外野スタンドを開放しない『身の丈サイズに合った興行』(菅林社長)」とある。ぎゅっと情報を押し込めたその1枚にはマイナー感が漂う。その後、12年ごろからフロントの改革と現場の努力によって、新日本プロレスの売り上げはV字回復をとげた。それに沿うように、13年ごろから再びカラーで派手に紙面展開するようになる。そして昨年1月4日の翌日。1面は、メインで内藤に勝利したオカダ。1・4が1面となるのは「小川 健介戦放棄」(小川直也が佐々木健介戦を途中放棄)の02年以来、16年ぶりのことだった。

プロレス担当となった昨年12月。棚橋選手にあいさつすると、「Kさんは元気ですか?」と聞かれた。08年の不遇の時代に担当をしていた記者の名前が真っ先にあがった。これまでと同様、今年も我々は1・4をしっかり報じる予定だ。「1月5日の1、2、3面を空けてますから」と棚橋選手に言うと、「おぉ!」と、大変喜んでいた。

1月2日時点で、チケットの売り上げは昨年の動員数3万4995人を超えているという。時代と寝て、空気を伝えるのがスポーツ新聞の役目。19年1月4日の東京ドームの熱気を、できるだけ伝えられるよう努めたい。【高場泉穂】

大相撲裏話

あと1回… 床鳴「稀勢の里の大銀杏」思う

18年9月、稀勢の里(手前)と床鳴

年寄荒磯を襲名した元横綱稀勢の里の引退に、入門以来、まげを結ってきた床山の床鳴(43=田子ノ浦)は、人一倍さみしそうにしていた。引退から数日後の朝稽古後のこと。「横綱の大銀杏(おおいちょう)を結うのも、あと1回か…」とつぶやいた。原則として、9月29日の断髪式が今後唯一の大銀杏になる。こみ上げるものがあった。

荒磯親方が初めて大銀杏を結った日のことは、今も鮮明に覚えているという。「まだ幕下でしたが、巡業で初めて十両の土俵に上がる時でした。当時から、すごく大銀杏の似合う人でした」。当時から風格が漂っていたという。当時は17歳、四股名は本名の「萩原」だった。

同親方が入門したころは「剛毛というか、髪の量が今の2倍ほどあった」と振り返る。だが「激しい稽古ですり切れて、量も少なくなって、髪質も細くなる。でも、それが出世にはつきものですから」。2度の優勝時も、引退を決断した今場所3日目も、稀勢の里は常に物静かな床鳴にまげを結ってもらい、取組後の興奮を抑えてきた。荒磯親方になった今も、名残惜しそうに毎日、まげを整えに部屋に現れている。【高田文太】

原功「BOX!」

井上岳志が絶対王者候補ムンギア挑戦「勝つイメージできている」

WBO世界スーパー・ウェルター級3位の井上岳志(29=ワールドスポーツ)が26日(日本時間27日)、米国テキサス州ヒューストンで同級王者のハイメ・ムンギア(22=メキシコ)に挑戦する。近い将来のスーパースター候補と目されているムンギアが相手だけに、井上にとって厳しい戦いが予想されている。しかし、井上は「超接近戦を仕掛けてタイトルを持ち帰る。勝つイメージはできている」と自信をみせている。

154ポンド(約69.8キロ)を体重上限とするスーパー・ウェルター級は世界的な選手層が厚いことで知られる。80年代以降、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、オスカー・デラ・ホーヤ、フロイド・メイウェザー(いずれも米国)、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)といった歴史に残るような名王者たちもベルトを保持していた階級だ。また、マニー・パッキャオ(40=フィリピン)が6階級目の王座獲得を果たしたクラスでもある。

現在、そんな階級でムンギアはWBO王座に君臨しているわけだが、この22歳は世界王者でありながら成長途上にあるとみられている。このまま伸びていけば2~3年後には手のつけられない絶対王者になる可能性があると期待されているのだ。

ムンギアは11歳でボクシングを始め、アマチュアで120戦111勝9敗を記録。13年7月に16歳でプロデビュー後は5年半に31戦して全勝(26KO)をマークしている。約84パーセントのKO率が示すとおりの強打者で、183センチの長身から繰り出す右ストレートに加え左フックの上下打ちなど攻撃は多彩だ。昨年5月の戴冠試合では4回TKO勝ちを収めるまでに4度のダウンを奪い、元王者を相手にしての初防衛戦は判定勝ちに留まったが、6回にはダウンを奪っている。V2戦では3回TKO勝ちを収めている。右を顔面に決めて倒したあと左フックをボディにめり込ませてダウンを追加するという圧勝だった。

対する井上はアマチュアで55戦(39勝21KO16敗)したあと14年8月にプロに転向。日本王座、東洋太平洋王座とWBOアジアパシフィック王座を獲得した試合を含め、4年半で14戦13勝(7KO)1分の戦績を収めている。身長は174センチで、その体を低く構えて接近、ボディから顔面にパンチを打ち分けるスタイルを持つ。

井上は「ムンギアは体にバネがあってパンチは群を抜いて強い。中間距離の戦いでは相手の方が上なので、体をつけた超接近戦に持ち込みたい」と話す。ワールドスポーツジムの齊田竜也会長は「相手が左を打ってくるところに右を合わせる。そして接近戦でボディを攻めたい」と策の一端を明かす。陣営は「ヒット&ジョロウ蜘蛛作戦」と名付けた近距離での戦いに活路を見出すつもりだ。

16対1というオッズが出ているように、飛ぶ鳥を落とす勢いのムンギア有利は動かしがたいが、若い王者は攻防ともにまだ粗削りでもある。そこに井上が付け入るスキがありそうだ。

日本人ボクサーとしては昨年7月、伊藤雅雪(28=伴流)が37年ぶりに米国(フロリダ州キシミー)で世界王座(WBOスーパー・フェザー級)を獲得したが、1カ月後にはアリゾナ州グレンデールでWBOスーパー・バンタム級王座に挑んだ大竹秀典(37=金子)が1回TKO負け。10月には村田諒太(33=帝拳)がネバダ州ラスベガスでWBA世界ミドル級王座を失い、今年1月19日には高橋竜平(29=横浜光)がニューヨークでIBFスーパー・バンタム級王座に挑んで11回TKO負けと、日本勢は伊藤以降、米国のリングで結果を残せていない。井上はその流れをも止め、世界王座を持ち帰ることができるか。井上が勝てば日本では輪島功一(三迫)、工藤政志(熊谷)、三原正(三迫)、石田順裕(金沢)に次いで5人目のスーパー・ウェルター級世界王者となる。

リングにかける男たち

佐山サトルはタイガーマスクになることを断っていた

初代タイガーマスクの佐山サトル(2015年6月5日撮影)

昭和の終わりに空前のプロレスブームを巻き起こしたのが、初代タイガーマスク(佐山サトル=61)だった。戦後の力道山に始まるプロレスの隆盛は、ジャイアント馬場、アントニオ猪木の両雄時代を経て、タイガーマスク人気で極まったといえる。テレビ視聴率が毎回25%を超え、会場はどこも超満員。アニメ「タイガーマスク」から抜け出したヒーローは、アニメを超え、社会現象となった。

タイガーマスク時代の話を佐山に聞くと「実は、タイガーになることに抵抗があって、断っていたんですよ」と意外な言葉が返ってきた。75年7月に新日本プロレスに入門した佐山は、メキシコ修業を経て、英国でサミー・リーとして活躍。英国でも大人気で、ベルト挑戦を目前にしていた。

そんな佐山に、新日本から「もう1試合を決めたから。それを外すと、猪木の顔をつぶすことになる」と最後通告を受け帰国。81年4月23日に、蔵前国技館でダイナマイト・キッドとタイガーマスクの試合が行われた。4次元プロレス、4次元殺法と呼ばれたタイガーのプロレスは観客の度肝を抜き、これまでとは違う新しいスタイルとして、空前のブームを起こした。

試合会場や宿泊先のホテル、合宿所などタイガーの行き先はファンであふれた。新日本は素顔がばれないよう徹底ガードした。そんな騒動の中、佐山は「人気はすごかったですけど、素顔ではなくマスクをかぶっているので、それほど実感はなかったんですよ」と話す。実際、師匠アントニオ猪木の付け人を務めていたこともあり、猪木と同行する際は素顔でガード役を務め、誰からも気付かれることがなかったという。

アントニオ猪木にあこがれて、新日本に入った佐山は、猪木が進める格闘技路線に傾倒していた。道場では先輩の藤原喜明と総合格闘技まがいの練習を続けていた。実際猪木からは「お前は、格闘技路線の第1号にする」と約束されていた。しかし、メキシコ修業、英国遠征と、プロレスでの才能が評価され、思いとは違うところで、ヒーローになってしまった。「実際、26歳ぐらいでプロレスをやめて、20~30年かけて新しい格闘技をつくっていこうという思いがあった。ボクの中には(プロレスの)職人芸と格闘技の2つの自分がいたんです」。

見ただけで、ワザを自分のものとして使うことができる天性の運動能力。メキシコのホテルで、マットレスをはがして床に置き、サイドテーブルから練習して習得したサマーソルト。「猪木さんのすごいところが、ワザや動きがなくても勝負でお客さんを引きつけられるところ。それにワザが加わったのがタイガーマスク」と佐山は説明した。

タイガーマスクの活躍は、83年8月に、新日本に契約解除を通告し、引退を表明して突然、終わりを告げた。アニメの原作者梶原一騎の逮捕による改名問題浮上と、会社経営陣との対立が原因だった。タイガーマスク時代の2年4カ月。通算成績は155勝1敗9分け。

【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

「与之吉さんは大丈夫ですか?」両陛下が驚きの質問

大相撲初場所8日目をご観戦に訪れ取組後に拍手をされる天皇、皇后両陛下。後方は八角理事長(撮影・小沢裕)

この日は平成では23回目にして最後の天覧相撲。ロイヤルシートに着席された天皇陛下は、説明役の八角理事長(元横綱北勝海)に「今日はありがとう」と切り出され、皇后陛下は「お元気でしたか」と声をかけられた。この言葉に同理事長は「頭の中が真っ白になりました」。昨年は不祥事もありご招待を取り下げ。2年の空白を皇后陛下の温かなお言葉が埋めてくれた。さらに両陛下の、関心の高さをうかがわせる質問に驚いた。「与之吉さんは大丈夫ですか?」。神経疾患のギラン・バレー症候群で5場所連続休場し、昨年11月の九州場所で復帰した幕内格行司の式守与之吉の病状さえも把握されていた。

御嶽海や鶴竜ら休場中の力士のケガを案じ、外国人力士の出身地も熟知され、一番一番に拍手を送られた両陛下。元横綱稀勢の里の荒磯親方についても「今後はどうするのですか」「お元気ですか」と興味を示され同理事長から「今年中に断髪式をして(将来的に)部屋を興すと思います」と説明された。結びのふれで立行司の式守伊之助が敬語を使う意味で「この相撲一番にて本日の結びにござります」と発した。藤島審判長(元大関武双山)は「感激しながらやらせていただいた」と感無量の様子。江戸時代に徳川将軍が観戦した上覧相撲が始まりとされ、昭和天皇は51回のご観覧があった天覧相撲。新元号になっても国技大相撲には、切っても切り離せない行事として存続するだろう。

式守与之吉 えっ! 陛下が気にしてくださったんですか? ありがたいです。びっくりですね。光栄で…、今日は眠れないですよ。

八角理事長(元横綱北勝海) (両陛下は)ひじょうに楽しまれていた感じを受けました。力士のケガ、健康面を心配してくださるのは本当にありがたい。来ていただいて本当に感謝しています。力士は緊張からか熱戦よりアッサリした相撲が多かった。

式守与之吉
大相撲裏話

震災の日に生まれた照強が希望 今年も被災地照らす

初場所6日目、照強は引き落としで徳勝龍(左)を下し、胸を張る(撮影・小沢裕)

東十両筆頭照強(24=伊勢ケ浜)が24歳の誕生日から一夜明け、ご機嫌だ。「昨日は鶴太郎さんにちょっと会いました」。俳優や芸術家としてマルチな活躍をする片岡鶴太郎(64)。6年前には、同じ伊勢ケ浜一門の横綱白鵬に化粧まわしを贈呈したことがある。そんな縁もある鶴太郎から、前夜はお酒をプレゼントされた。「『期待しているよ』と。やっぱり励みになりますね」。

阪神・淡路大震災の95年1月17日、震源に近い兵庫・洲本市の病院で生まれた。17日の朝は神棚の前で手を合わせ、本場所の土俵に臨み、関取としては初のバースデー白星を挙げた。場所前には震災で親族を亡くした人たちから、今も激励の手紙が届くという。「それで震災のことを実感できる。淡路島の多くの人が喜んでくれれば」。6日目を終え5勝1敗。勝ち越せば新入幕が大きく近づく。「あんまり意識していない。それこそ一番一番ですよ」。もう24歳だから、あれから24年がたつ。身長169センチの希望が、今年も淡路を、被災地を明るく照らす。【佐藤礼征】

大相撲裏話

売店も大忙し「稀勢の里弁当」は連日売り切れ

16日、引退会見で涙を拭う稀勢の里

稀勢の里の引退で国技館の売店も多忙を極めている。大関以上の力士の名前が冠してある弁当が置かれているが、中でも「稀勢の里弁当」は連日の売り切れ。引退が発表された16日は、普段より1時間ほど早い午前10時半には完売した。

2階席東方の女性店員(53)によると「稀勢関のお弁当を買い求めようと、今日はお客さんがバーって走ってきたので驚きました。他の売店も売り切れているみたいで『売れ残っていませんか?』とたくさん電話がかかってきます」と証言。5日目以降、一部売店では稀勢の里弁当の発注がなくなるという。この日が最後かもしれない。

その一方で、相撲錦絵師の木下大門氏が描いた錦絵は来場所以降も残るという。「今場所は錦木関、松鳳山関、新入幕の矢後関の錦絵も追加されました。ぜひお買い求め下さい」。稀勢の里ファンは一安心か。【佐藤礼征】

大相撲裏話

新成人の幕下2枚目竜虎、勝ち越して新十両の祝杯を

貴ノ富士(左)を攻める竜虎(撮影・河田真司)

「成人の日」の14日、角界の新成人は土俵の上で黙々と戦っていた。

新成人で番付最高位の西幕下2枚目竜虎(20=尾上)は「自分が最初に関取になりたい」と、同学年の関取一番乗りへ意欲を見せる。おじは師匠の尾上親方(元小結浜ノ嶋)。親戚だけに「(稽古では)みんなより厳しく指導してもらっている」と苦笑いを浮かべる。「上では四つ相撲は通じない」と、四股などの下半身強化で前に出る力を磨いている。

お酒はめったに口にしないが、今場所勝ち越せば「すごく酒が強い」という師匠と乾杯する予定。新十両の祝杯となれば、味わい深い一口となりそうだ。

序ノ口の服部桜(20=式秀)も大人の仲間入りを果たした。昨年の名古屋場所で、自身の連敗を89でストップ。昨年7月の20歳の誕生日に、師匠の式秀親方(元前頭北桜)からビールを勧められ「大人になったんだな」と実感した。

酒の強さは「まあまあ普通のはず」という。力士生活も4年目に突入し、日課は腕立て伏せ100回。「年間で2、3勝できれば」と19年の抱負を語った。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

40歳の鉄人か、問題を起こす男か 興味深い世界戦

6階級制覇の実績を持つスーパースター、WBA世界ウエルター級王者のマニー・パッキャオ(40=比)が19日(日本時間20日)、米国ネバダ州ラスベガスで元4階級制覇王者のエイドリアン・ブローナー(29=米)の挑戦を受ける。40歳になってもなお世界の頂点に君臨するサウスポーの鉄人が節目となるプロ70試合目を勝利で飾るのか、それとも「ザ・プロブレム(問題を起こす男)」と呼ばれるブローナーがパッキャオを混乱に陥れるのか。興味深いカードだ。

昨年12月17日、パッキャオは40歳の誕生日を迎えた。これによりパッキャオは19歳11カ月で初戴冠を果たしたのに始まり20代、30代、そして40代でも世界王座に君臨することになった。130年を超す近代ボクシングの歴史で初のことだ。誕生日に際しパッキャオは「アスリートとして、(フィリピンの)上院議員として、父親として成し遂げたいことはいっぱいある。人生は40歳から始まるんだ」と意欲的なコメントを残している。

今回の試合に向けパッキャオは1年前に訣別したフレディ・ローチ・トレーナーとのコンビを復活させた。階級とタイプの異なる相手とスパーリングを重ね、さらに自信を増したようだ。「40歳になったが気持ちと肉体は25歳のような感じ。でも若い時よりも経験から得た知恵が加わっている」と話している。

現王座を獲得した昨年7月の試合で14試合ぶりのKO勝ちを収めたこともあり、「久しぶりに倒してKOの感触を思い出した。今回も(KO勝ちを)狙って攻める」と珍しくKO宣言をしているほどだ。95年1月に16歳でプロデビューしてから24年、これが節目の70戦目となる(69戦60勝39KO7敗2分)。

一方のブローナーはアマチュアで319戦(300勝19敗)を経験後、08年5月にプロデビューした11年選手で、これまでにスーパーフェザー級、ライト級、スーパーライト級、ウエルター級の4階級で世界王座を獲得している。その実力と戦闘スタイルから一時は「フロイド・メイウェザー(米)の後継者」と期待されたが、直近の10戦は6勝(2KO)3敗1分と頭打ち状態になっている。リングの内外でトラブルが多いことでも知られ、世界戦では2度の体重オーバーを犯して王座を剥奪されている。私生活でもしばしば警察の厄介になっており、昨年12月にも短期間とはいえ身柄を拘束された。今回の試合に向けた調整を不安視する関係者もいるほどだ。戦績は38戦33勝(24KO)3敗1分1無効試合。

充実のパッキャオ、相変わらず問題の多いブローナー。こうした近況が反映されてかオッズは5対2で王者有利と出ている。サウスポーのパッキャオが鋭く踏み込んで左ストレートを直撃すれば、前戦に続く鮮やかなKO防衛も考えられる。その一方、柔軟な攻防スタイルを持つブローナーが的を絞らせずにベテラン王者を迷路に誘い込み、カウンターで王者を倒す可能性もある。序盤から目の離せない試合になりそうだ。

なお、前座ではラウシー・ウォーレン(31=米)対ノルディン・ウーバーリ(32=仏)のWBC世界バンタム級王座決定戦が組まれている。この試合の勝者は、昨年12月30日にひと足早く暫定王座を獲得している井上拓真(23=大橋)との団体内統一戦を行うことになる。五輪出場3度のウォーレン(19戦16勝4KO2敗1無効試合)、2度のウーバーリ(14戦全勝11KO)。このサウスポー対決にも要注目だ。

リングにかける男たち

那須川のボクシング転向期待 人気&動員力は魅力

メイウェザー対那須川 試合後、那須川(左)の手を上げ称えるメイウェザー(撮影・滝沢徹郎)

大みそかのRIZIN14大会はメディアの雰囲気が違った。普段はネットや専門誌が大半でスポーツ紙もいつも3紙程度だが、見慣れぬ一般紙や海外メディアの記者も詰めかけ、インタビュールームに座りきれなかった。

お目当てというか、仕方なく? 取材したのは、メイウェザーという存在にほかならない。現在は引退「状態」であり、本人もパフォーマンスと言ったエキシビションという「花相撲」にもかかわらず。国内の知名度は低いかもしれないが、世界のスーパースターの動向は見逃せないということだろう。

格闘技ファンの那須川への期待感は大きく、会場の熱気や盛り上がりに、見慣れぬ記者は驚いていた。観客数は2万9105人。午前に開催した別の大会も7498人を集めた。格闘技ブームは去ったが、逆にビッグイベントが減ったことでの希少価値や、初詣ツアーのファンも多いらしい。

那須川を初回KOした姿に、帰りの車中で「メイウェザーってすごいんだね」なんて声が聞こえてきた。いまだ話題になっていて、今回は海外からも続報が止まらない。ボクシング界はアンチも多く冷ややかだが、体重やルールのアンフェア、スターのわがままぶりからマッチメークを批判。那須川をかばう声も多かった。

取材した記者としては十分に楽しめた。ちょうど黒塗り自動車が十数台連なり、取り巻きと会場入りするところをを見かけた。那須川にバンテージを巻き直させたり、マスクをして入場し、トランクスには自分の顔と札束がプリントされていたり。

試合自体はさばいてお茶を濁すかと思ったら、あっという間にけりをつけて踊りだした。試合後は成田空港へ直行のはずが、年を越しながら演説して消えた。発表会見と2回取材し、何より日本のリングに上がった姿を見ることができた。注目を集めたのは間違いなく、RIZINも世界へアピールには成功したと言える。

前日にはボクシングのトリプル世界戦があったが、観衆は約3800人とケタが違った。総合格闘技などは3回など試合時間が短く、何よりKO決着が多い。ボクシングは最長12回で、かみ合わずに渋い試合もままある。技術戦の玄人好みとも言われるが。そんな競技の違いがファン動員の差の一因なのだろう。

那須川にはボクサーへの試金石とも言えたが、このハンディ戦は荷が重かったか。中学時代からボクサーでも世界王者になると素質やセンスの評価は高く、今回も同じ階級ならという声も根強い。逆にそう甘くないよと言う声もある。

キックボクシング出身ボクサーは多いが、なかなか大成しない。現役では藤本京太郎がヘビー級で世界ランク入りと異彩も、あとは日本王座獲得がやっとだ。ここはこの「世紀の一戦」をステップに、那須川にいち早く転向を決断して、チャレンジしてもらいたい。

あの人気、動員力は魅力たっぷり。世界王者は誕生しても盛り上がらない、今のボクシング界の願いだろう。【河合香】

大相撲裏話

モンゴル相撲協会25周年、次は音楽でも文化交流を

元旭鷲山のダワーギーン・バトバヤル氏

昨年12月、モンゴル相撲協会は創設から25周年を迎えた。会長を務めるのは、史上初のモンゴル出身力士、元小結旭鷲山のダバー・バトバヤル氏(45)。モンゴルでは英雄的な扱いを受けているという。

モンゴル相撲協会顧問でフリージャーナリストの宮田修氏は「日本とモンゴルの文化関係は相撲抜きには考えられない」と声を大にする。19年初場所時点でモンゴル出身の力士は24人。そのうち幕内力士は横綱白鵬(33=宮城野)、鶴竜(33=井筒)ら6人が在籍している。「彼らが日本で成功を収め、元旭鷲山関や元日馬富士関のように実業家として活躍する。モンゴルのこども達も大きな夢を見ることができる」と宮田氏。そんなモンゴル相撲協会が、相撲に続き日本に発信したい文化として音楽を挙げている。

モンゴル人歌手のオトゴンフー・ソロンゴさん(37)は、1人で2種類の音を発声する「ホーミー」というモンゴル独特の歌唱方法を扱う。「私の歌でモンゴル人の力士を勇気づけたいんです」。実際、ソロンゴさんは12歳だった93年8月、東京で開催された「世界こども音楽祭」にモンゴル代表として出場してグランプリを獲得。NHK「みんなのうた」に出演した経験もある。

97年には当時幕内だった元旭鷲山と応援歌「旭鷲山に捧げる歌」を共同製作。その後、日本人の外交官と結婚し、海外を転々とする時期が続いたが3年前に日本に帰ってきた。それを機に昨年12月、「風の贈りもの」と題するアルバムCDを発売。宮田氏は「相撲を通してモンゴルの音楽も知っていただければ」と話した。

元旭鷲山など6人のモンゴル出身の少年が初土俵を踏んだのは、92年の春場所。平成4年の出来事になる。平成も間もなく終わる中、日本とモンゴルの関係はどのように変化していくのか。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

どうなる? 19年世界を狙う日本のホープたち

2018年の日本のボクシング界は、WBA世界バンタム級王者、井上尚弥(25=大橋)の衝撃の連続1ラウンドKO勝ちと弟・拓真(23=大橋)の戴冠、田中恒成(23=畑中)の3階級制覇、37年ぶりに米国で世界王座を獲得した伊藤雅雪(27=伴流)の活躍、さらに拳四朗(27=BMB)がV5を達成するなど華やかな話題が多かった。一方で村田諒太(32=帝拳)が世界ミドル級王座から陥落するという喜べないニュースもあった。

さて、7人の世界王者を擁してスタートした2019年の日本ボクシング界はどうなるのだろうか。現時点では無冠だが、今年、世界戦線に絡みそうな選手たちをピックアップしてみよう。

1月26日(日本時間27日)、先陣をきるかたちでWBOスーパーウエルター級3位の井上岳志(29=ワールドスポーツ)が米国テキサス州ヒューストンで同級王座に挑む。

王者のハイメ・ムンギア(22=メキシコ)は31戦全勝(26KO)の戦績を誇る強打者で、これが3度目の防衛戦となる。地域王座を獲得して上位に進出してきた井上も14戦13勝(7KO)1分と無敗だが、厳しい戦いになりそうだ。

IBFフライ級王座への優先的な挑戦権を持つ黒田雅之(32=川崎新田)は、同級王者のモルティ・ムザラネ(36=南ア)へのチャンレンジを狙う。交渉しだいでは夏までに挑戦が実現するかもしれない。

IBFスーパーフライ級1位の船井龍一(33=ワタナベ)も指名挑戦の機会を待っている。V6王者のジェルウィン・アンカハス(27=比)は米国でも評価と知名度を上げているサウスポー。この高い壁を破れるか。

12年ロンドンオリンピックバンタム級銅メダリストで、プロ転向後は8戦全KO勝ちを収めている長身サウスポーの清水聡(32=大橋)は、フェザー級で挑戦を狙う。スター選手が揃う階級だけに対戦交渉が難しそうだが、挑戦が実現すれば大きな話題になるはずだ。

スーパーライト級の岡田博喜(29=角海老宝石)は2月10日(日本時間11日)に米国カリフォルニア州フレズノで次戦が計画されている。相手は元WBOライト級王者のレイムンド・ベルトラン(37=メキシコ)が有力だが、これをクリアすれば大舞台が用意されるものと思われる。

このほかミニマム級の小浦翼(24=E&Jカシアス)、谷口将隆(24=ワタナベ)も遠からず挑戦の機会を得そうだ。さらにフライ級で17戦全勝(12KO)の戦績を残している中谷潤人(21=MT)、2度目の挑戦を狙うスーパーバンタム級の和氣慎吾(31=FLARE山上)も控えている。

村田をはじめ返り咲きを狙う元世界王者も多い。すでに3階級制覇を成し遂げているホルヘ・リナレス(33=帝拳)と八重樫東(35=大橋)、井岡一翔(29)は4階級制覇に照準を合わせている。田中恒成への挑戦を狙う田口良一(32=ワタナベ)、昨年9月に田中に王座を明け渡した木村翔(30=青木)も捲土重来を期している。

スーパーフェザー級の元王者、小国以載(30=角海老宝石)、岩佐亮佑(29=セレス)も王座奪回に意欲的だ。さらにミニマム級の福原辰弥(29=本田フィットネス)、フェザー級に転向した久保隼(28=真正)もいる。

計量で体重超過のためWBCフライ級王座を剥奪された比嘉大吾(23=白井・具志堅)、ドーピング検査で陽性反応を示したためIBFスーパーフェザー級の戴冠を取り消された尾川堅一(30=帝拳)も名誉回復と王座奪回に動き出す予定だ。

今年も国内外のボクシングに要注目だ。

リングにかける男たち

正統派、ヒール「魔性のスリーパー」は職人だった

佐々木健介を魔性のスリーパーで締め上げる飯塚高史

新日本プロレスの飯塚高史(52)が2月21日の後楽園大会をもって引退すると7日、発表された。日刊スポーツでは裸絞めとして表記されるスリーパーホールドが得意技の1つで「魔性のスリーパー」が代名詞。86年11月のデビューから約32年というレスラー人生に区切りをつける。

若手時代に東欧でサンボ修業。関節技のテクニックを身につけており、90年代後半から若手のコーチを務めていた。集客面などで団体運営が苦しくなりつつあった05、06年には選手会長も務めた。ドーム大会が1年に1回、1月4日のみになった頃。苦しい時期に現場のまとめ役を任されたのも選手からの信頼が厚かったからだろうと当時、想像していた。

00年1月の東京ドーム大会では橋本真也のパートナーとしてUFO軍の小川直也、村上和也組と対戦。ここで村上を裸絞めで失神KOに追い込み、以降は「魔性のスリーパー」と呼ばれるようになった。

同7月にはIWGPヘビー級王座(当時王者は佐々木健介)に挑戦し、G1クライマックスにも初出場。この年にはプロレス大賞の技能賞も獲得したが、01年6月の試合中に顔面強打で首などを負傷。その後遺症でめまいと視覚障害に陥って1年半もの欠場を余儀なくされた。このケガがなければ、もう少しシングル戦線でも活躍できたに違いない。

08年のヒール転向後、すぐに髪をそり上げ、反則連発でリング内外で暴れた。CHAOS時代の11年には矢野通と組み、小橋建太、武藤敬司組に敗れたALL TOGETHER(東日本大震災復興支援興行)でのタッグ戦が年間最高試合に選ばれた。時に観客席を徘徊(はいかい)し、時に試合中継するテレビ朝日の野上慎平アナウンサーまで襲撃し、存在感を示した。もう会場を狂乱させる姿が見られないと思うと残念でならない。

正統派時代の89年に長州力、96年には山崎一夫とIWGPタッグを獲得。ヒール転向後も矢野通とのコンビで同王座を再び戴冠した。新日本のタッグリーグにはSGタッグに4回、G1タッグに5回、ワールドタッグに4回と計13回も出場。ノア参戦時にはグローバルタッグリーグにも出場するなどタッグの名手でもあった。

約22年は正統派、最後の約10年はヒール。どちらもタッグ戦線を中心にファイトして王座を奪取し、プロレス大賞の部門賞にも輝いた。そして、発言の少なさも共通。どちらの立ち位置でも愚直にミッションをやり遂げる職人だった。

最後に在籍したユニットがデビュー戦の相手も務めた鈴木みのる(50)率いる鈴木軍だったのも運命的だろう。2月21日の引退興行はヒールで登場するのだろうか。いや正統派、ヒールに関係なく、最後はニュートラルな飯塚高史の姿を見てみたい。

【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

大関もっと頑張れ…土俵の話題に専念する1年に

連合稽古で栃ノ心(左)相手に6戦全勝と圧倒した豪栄道

年が明け、間もなく初場所が始まる。横綱稀勢の里は進退がかかり、関脇貴景勝は“場合によっては”大関とりになる。土俵外のトラブルもとりあえず落ち着いた。土俵の話題に専念する1年になってほしいと、心底思います。

昨年は土俵外の話題がてんこもりやったが、土俵も何かと荒れた。初場所の栃ノ心、名古屋場所の御嶽海、九州場所の貴景勝と初優勝力士が3人も飛び出した。年6場所制が定着した1958年(昭33)以降で見れば、00年(平12、初場所=関脇武双山、春場所=東前頭14枚目貴闘力、夏場所=小結魁皇)以来18年ぶり7度目のこと。

白鵬が3場所、鶴竜が2場所、稀勢の里に至っては5場所と、3横綱がこんだけ休場したら、そら新しい力も台頭しますわな。しかし、それではおもろない。下からの突き上げは土俵の活性化に不可欠やろうけど、それも「強い上位陣」を食ってこそと違いますか?

最高位の横綱はもちろんですが、個人的には、大関にもっと頑張ってほしい。大関27場所目を迎える豪栄道は昨年の九州場所前の巡業で言うてました。「ここ数場所はいい感じになってる。これを続けたい」。大関では最年長の32歳。体のあちこちが悲鳴を上げる中、場所前は毎度仕上がりの良さを見せながら、昨年は2桁白星が2場所だけではさみしいでしょ? 

同10場所目で、まだ優勝のない高安は昨年の巡業中に「優勝できると思ってます」と、自分に言い聞かせるように話してました。昨年は3場所で優勝次点なんやから、そらそうでしょう。九州場所なんか、勝てば優勝決定戦やった本割で御嶽海に負けた。そろそろ詰めの甘さを克服してくれんと…。

同4場所目の栃ノ心は昨年初場所の平幕優勝から、一気に駆け上がったけど、大関昇進した名古屋場所6日目の玉鷲戦で右足親指の付け根を痛めて、急ブレーキがかかった。秋、九州場所はかど番などの重圧と、本調子まで戻らん体調に苦しんで、勝ち越しで精いっぱいやった。初場所後は「負ける気がしないね」とうそぶいてたのに、秋場所以降は「勝ってたら、15日間は早いけど…長いね」いう嘆きを何度耳にしたか。

低く、鋭い立ち合いから前みつをとって、一気に押し出す豪栄道。豪快なかち上げに加え、四つになっても腰の重さを見せる高安。右四つでまわしをとれば、怪力無双の寄りを見せる栃ノ心。全員、キャラクターは立ってます。

横綱を脅かし、下からの突き上げには仁王立ちで立ちふさがる-。平成最後の年が盛り上がるかどうかは、ひとえに3大関が強い大関でいてくれるかどうかにかかってる、と思ってます。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

19年はどんなドラマが…注目階級&期待のホープは

新年最初の今回は、2019年に実現が期待される海外のカードや注目のトップ選手、さらに躍進が見込まれるホープなどを挙げてみたい。

19年で注目すべき階級を三つ挙げるとすれば、最重量級のヘビー級、人気者サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)を軸にしたミドル級、そしてスター選手が揃ったウエルター級ということになる。ヘビー級はWBA、IBF、WBO3団体の統一王者、アンソニー・ジョシュア(29=英)とWBC王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)の頂上対決の実現が期待されている。他団体王者との統一戦を含めて6度の防衛を重ねている22戦全勝(21KO)のジョシュアと、41戦40勝(39KO)1分のV8王者ワイルダー。ジョシュアの次戦が4月13日に英国で行われる予定だが、現時点ではここに頂上決戦が組み込まれる可能性は低い。ワイルダーは昨年12月に元3団体王者のタイソン・フューリー(30=英)と引き分けており、その再戦が優先されそうだからだ。フューリーも28戦27勝(19KO)1分の無敗戦士で、2強に割って入るかたちとなっている。この1年で大きな動きが出そうだ。

ミドル級はアルバレスがトップを走っているが、前3団体王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)、WBC暫定王者のジャモール・チャーロ(28=米)、IBF王者のダニエル・ジェイコブス(31=米)、WBO王者のデメトリアス・アンドレイド(30=米)らがピッタリとついている。さらに村田諒太(32=帝拳)からWBA王座を奪ったロブ・ブラント(28=米)、捲土重来を期す村田を含め、トップ戦線の行方から目が離せない状況だ。

ウエルター級もおもしろい。実績では6階級制覇のWBA王者、マニー・パッキャオ(40=比)が飛び抜けているが、現時点の総合力ではWBO王者のテレンス・クロフォード(31=米)やIBF王者のエロール・スペンス(28=米)の方が高い評価を受けている。

ファイター型のWBC王者、ショーン・ポーター(31=米)、ケガからの復帰が決まったWBAスーパー王者のキース・サーマン(30=米)を加えた5人の王者たちの統一戦が実現するか要注目だ。

このほか、軽中量級の核となっているWBA、WBO世界ライト級王者、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)の快進撃がどこまで続くのか、さらに井上尚弥(25=大橋)が参戦している「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のバンタム級戦線にも注目したい。

また、スーパーウエルター級のハイメ・ムンギア(22=メキシコ)、スーパー・フェザー級のジャーボンタ・デービス(24=米)、スーパー・ライト級のホセ・ラミレス(26=米)、ライト・ヘビー級のドミトリー・ビボル(28=キルギス/露)、スーパー・ミドル級のカラム・スミス(28=英)といった比較的若くて無敗の世界王者たちの活躍も楽しみだ。

19年に戴冠が期待されるホープとしては、17戦全勝(14KO)のスーパー・フェザー級、ライアン・ガルシア(20=米)、14戦全勝(12KO)のスーパー・ライト級、ジョシュ・テイラー(27=英)らがいる。さらに16年リオデジャネイロ五輪出場組も成長してきており、世界のリングを賑やかなものにしてくれそうだ。

2019年のボクシング界には、どんなドラマが生まれるのだろうか。

大相撲裏話

25年ぶり行橋巡業で貴ノ岩暴力事件が感動に水差す

行橋巡業で勧進元との記念撮影に納まる、左から栃ノ心、白鵬、1人おいて高安(2018年12月5日撮影)

元前頭貴ノ岩(28)が、付け人に暴力を振るって引退した。12月4日夜、翌朝から行われる福岡・行橋市に前泊した際の出来事だ。相撲ファンはもちろん、行橋市の人々も悲しませる出来事となった。

行橋。記者も含め、福岡県外出身だと、読み方さえ分からなかった人も多いかもしれないが、読み方は「ゆくはし」だ。博多から特急で約1時間。人口7万2283人(今年11月末現在)の、のどかな田園風景が広がる小さな町だ。

そんな町に大相撲の巡業がやってきたのは25年ぶり。前頭松鳳山の地元・築上町にほど近く、松鳳山も「行橋は自転車でよく来ていた」と懐かしみ、巡業当日は、ファンからサインを求められれば気さくに応じていた。

そんな中、朝稽古でひときわ大歓声を受けていたのが、地元の松鳳山ではなく、初場所で関脇に返り咲く玉鷲だった。玉鷲が土俵に上がると、2階席に陣取った地元の幼稚園児から「頑張れ~」の大合唱が起きた。玉鷲はモンゴル出身。何の縁もゆかりもないと思っていたが、稽古後の玉鷲に話を聞くと、実は「もう何年も前から、ここには来ているからね」と得意満面だった。

勧進元を務めた、一般社団法人行橋未来塾代表理事の江本満氏が、7年ほど前から片男波親方(元関脇玉春日)と交流があった縁で、その弟子の玉鷲も5年ほど前から毎年、行橋市の幼稚園などを訪れていた。江本氏は、25年前の巡業で力士らと交流した経験を、うれしそうに話す地元住民の話を聞くたびに「いつかまた、行橋で巡業を開きたい」と思い続けていた。

今年の開催に向けて、数年前から準備し、玉鷲らを招いて巡業招致への機運を高めた。そして、満を持して相撲協会に巡業を申し込んだ。今年の冬巡業は、同じ福岡県内だけでも直方市、久留米市、北九州市と3カ所も開催された。大企業や地方自治体が母体となって開催する多くのパターンとは異なり、地元企業や団体が中心。日本相撲協会の巡業部からは、集客などを心配されたが、江本氏は「家を売ってでも実現します」と成功を約束。当日は実際に満席で、札止めの大盛況だった。

近隣の市町から20軒を超える出店が並び、250人を超える親方衆や力士、行司、呼び出しら巡業参加者全員に、それぞれ500円分の食事券が配られた。江本氏は「食事券があることで、お相撲さんが出店に買いに来てくれたら、それだけ市民と触れ合う機会が増える。触れ合えば『またお相撲さんに会いたい』と思う子どもたちも増える。それが、次にまた行橋に巡業が来てほしいという思いにつながれば。自腹ですが、そのためなら食事券ぐらい安いものですよ」と笑った。

勧進元あいさつでも、江本氏は夢を実現させて、声を震わせていた。その姿を見て、多くのスタッフは涙を流して喜んだ。担当した先発の立田川親方(元小結豊真将)は「最初は『大丈夫かな』『お客さんは入るのかな』と思っていました。でも、思いの強さをひしひしと感じ、自分も引き込まれました。そして成功した。これこそが巡業のあるべき姿だと思いました。強い思いがあれば、多くの人が力になりたいと助けてくれる。感動しました」と話し、江本氏やスタッフらとがっちりと握手を交わしていた。玉鷲も「お客さんもいっぱい入って、みんな盛り上がってくれて本当によかった」と喜んだ。

そんな感動もつかの間、行橋市での巡業終了から約2時間30分後、貴ノ岩の暴力が相撲協会から発表された。さまざまな人に、後味の悪さを残すことになった。それを知るだけに、貴ノ岩が起こした問題は、一段と重いもののように感じている。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

今年の海外ボクシング界を「賞」形式で振り返る

今年も残すところ6日。世界戦は30日に東京で3試合、31日にマカオでも3試合が予定されている。6試合すべて日本人選手が出場する予定だ。一方、すでに欧米ではクリスマス前に注目ファイトは終了している。そこで恒例ともいえる「賞」の形式で今年の海外ボクシング界を振り返ってみよう。

2018年のボクシング界の特徴のひとつとして、中量級と重量級を中心に注目ファイトが数多く行われたことが挙げられる。7万8000人を集めたアンソニー・ジョシュア(29=英)対ジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド)のWBA(スーパー王座)、IBF、WBO世界ヘビー級王座統一戦(3月)、再戦となったゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)対サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)のWBA(スーパー王座)、WBC世界ミドル級タイトルマッチ(9月)などが代表格といえる。また、テレンス・クロフォード(31=米)、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)、前出のアルバレスの3階級制覇、マイキー・ガルシア(30=米)の4階級制覇も光る。

こうしたなか、個人的なMVPとしてはクルーザー級で4団体の王座を統一したオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)を挙げたい。このサウスポーの12年ロンドン五輪金メダリストはWBO王者として2018年を迎え、まず1月に賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の準決勝でWBC王者に12回判定勝ち。7月にはWBA王座とIBF王座を持つムラト・ガシエフ(25=露)にも12回判定勝ちを収めて優勝、同時に4本のベルト収集を成し遂げた。さらに11月、元王者のトニー・ベリュー(36=英)を8回TKOで退けている。3試合とも相手の地元に乗り込んで戦っており、世界王者の称号に相応しい活躍だった。16戦全勝(12KO)のウシクは2019年にはヘビー級進出を計画している。

殊勲賞は21歳でWBO世界スーパーウエルター級王者になったハイメ・ムンギア(22=メキシコ)だ。5月の戴冠試合、7月と9月の防衛戦を含め今年は5勝(4KO)している。来年1月26日(日本時間27日)には井上岳志(29=ワールドスポーツ)とのV3戦が決まっている。31戦全勝(26KO)のレコードをどこまで伸ばすが注目したい。

敢闘賞にはクロフォード、ガルシア、アルバレス、ジョシュア、WBC世界ヘビー級王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)、さらに39歳でWBA世界ウエルター級王座を獲得したマニー・パッキャオ(40=比)の6人を推したい。

技能賞はロマチェンコだ。5月にホルヘ・リナレス(33=帝拳)に10回TKO勝ちを収めてWBA世界ライト級王座を獲得して3階級制覇を成し遂げ、12月には同級WBO王者にも勝っている。

KO賞にはIBF世界ウエルター級王者のエロール・スペンス(28=米)を推したい。サウスポーのスペンスは自慢の強打で1月に元王者を7回終了時点でギブアップさせ、6月には最上位者を1回3分で仕留めている。

24戦全勝(21KO)のスペンスは来年3月、39戦全勝(30KO)のマイキー・ガルシアとのV3戦が決まっており、試合が近づけば大きな注目を集めることになりそうだ。

年間最高試合はワイルダー対ルイス・オルティス(39=キューバ)のWBC世界ヘビー級タイトルマッチ(3月)だ。10回TKOでワイルダーがV7を果たした試合だが、ヘビー級らしい迫力、二転三転した試合展開、衝撃の結末と、ボクシングの醍醐味が詰まった激闘だった。リナレス対ロマチェンコ、ゴロフキン対アルバレス、引き分けに終わったワイルダー対タイソン・フューリー(30=英)なども記憶に残る名勝負だった。

新鋭賞にはスーパーフェザー級のライアン・ガルシア(20=米)を選んだ。アマチュアで230戦215勝15敗の戦績を残したあと17歳でプロに転向したガルシアは、2年半で17戦全勝(14KO)をマーク。今年は北米王座を獲得するなど4勝(2KO)している。178センチの長身から繰り出す右ストレート、左フックに破壊力を秘めた強打者で、すでにWBA5位、WBC8位、WBO3位にランクされている。WBO王座を保持する伊藤雅雪(27=伴流)をはじめ王者たちを脅かす存在になっている。

こうした選手たちを軸に2019年も熱い戦いが繰り広げられそうだ。

リングにかける男たち

ダイナマイト・キッドさん あんな体にならんでも…

84年1月、新日本プロレス一関大会で攻めるダイナマイト・キッド

往年の名レスラーが次々に他界する中、ダイナマイト・キッドさんの訃報が一番ショックでした。12月5日、60歳の誕生日やったそうです。

37年前。キッドさんが相手を務めた81年4月23日、初代タイガーマスクのデビュー戦は見てません。高校2年の私はまだ、プロレスを“つまらんショー”と思ってました。同年9月23日の田園コロシアム、ハンセン-アンドレ戦を見たのがプロレスにのめり込むきっかけですが、それを加速させたんが彼でした。

テレ朝「ワールドプロレスリング」の実況・古舘さんが「戦う貴公子」「鋭利な刃物」そして、リングネームそのままの「爆弾小僧」と熱弁した男のファイト。倒れた相手をメチャクチャ踏みつけるストンピング。滞空時間の異様に長い、コーナーポスト最上段からのダイビング・ヘッド。ざんばらの金髪。彼のイラつき、エキセントリックさにハマりました。好きなレスラーは今でも「ハンセンとキッド」です。たたずまいが醸し出す風情。どんなジャンルでも、それがあってこそのプロと教えてもらった気がします。

早すぎる不幸の予兆は、すでに当時からあったんやないでしょうか? 82年の年明けやったか、再来日した姿を見て、絶句しました。金髪をバッサリ切った丸坊主頭も衝撃でしたが、何より体つき。古舘さんが「肉体の表面張力」と表現した極限のマッチョ化。たった数カ月でしなやかな細マッチョの体が消えた。学校のプロレス談議で「おい、キッド見たか?」「おお、何じゃあの体?」「トレーニングだけちゃうやろ?」「なあ、絶対やっとるで」「でも、あれやったら、体にめちゃ悪いんやろ?」-。今でこそキッドさんが筋肉増強剤ステロイドを服用していたのは有名ですが、当時からプロレス少年には不安があったんです。

その後、キッドさんは顔つきがそっくりないとこ、デイビーボーイ・スミスと合体。ほどなくして主戦場を新日本から全日本へと移し、海外では当時世界の最大手マーケットになりつつあったWWFに進出。「ブリティッシュ・ブルドッグス」として暴れることになるんですが、素人目にも息の上がるんが早くなったように見えました。

身長173センチの体で、スーパーヘビーレスラーと渡り合うための決断やったんでしょうか? あんな体にならんでも、ソリッドでキレッキレのファイトのままでも十二分に魅力的やったのに…。ほんまに悲しく、残念です。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

84年7月、ザ・コブラ(下)のマスクをはぐダイナマイト・キッド

大相撲裏話

「日刊大相撲大賞」を今年も選出 受賞した力士は?

年の瀬も迫ってきました。今年も年末恒例企画、日刊スポーツの大相撲取材班が、さまざまなデータから独断と偏見? で選ぶ紙面企画「日刊大相撲大賞」が、間もなく始まります。野球のように、個人の公式記録が幾多も出るスポーツはありますが、相撲の場合は関取なら1場所15番の勝敗が出るぐらい。いかに多角的に、数字で力士の一面を紹介できるかは日々のデータの蓄積なくして出来ません! 今年1年、相撲担当記者が地道に調べたデータから、あの力士、この力士の横顔を5回にわたりお伝えする紙面企画を、どうぞお楽しみに。ここでは、十数種の候補から漏れた一部を紹介します。なお紙面企画同様、対象者は今年1年、全て幕内に在位した力士となります。

【皆勤МVP】

御嶽海(2018年9月12日撮影)

今年の年間最多勝は平幕から大関に駆け上がった栃ノ心(春日野)が獲得しましたが、休場もありました。ここでは90日間、休まず場所に来ての最多勝を「皆勤MVP」としました(つまり不戦勝も入れるということ)。本来なら横綱、大関が取ってほしいところですが、何せ休場者が続出。該当者17人の中でNO・1に輝いたのは、53勝の関脇御嶽海(出羽海)でした。続くのは49勝の逸ノ城(湊)なので、ただ一人の50勝台到達。ただし1場所平均で9勝に届かなかった。来年はぜひ、平均10勝ぐらいは挙げて年間最多勝争い、そして大関とりを期待したいものです。

【シルバーコレクター賞】

正代(2018年11月20日撮影)

平幕が横綱に勝ことを「金星」といいます。ここでは大関に勝った力士を“銀星”と勝手に名づけ、シルバーコレクター賞とします。対象は三役以下と幅を広げました。1位は5個で御嶽海、貴景勝(千賀ノ浦)、正代(時津風)が並びました。この1年、全て平幕だった正代には大関候補として名乗りを上げてほしいものです。3人に続くのが4個の逸ノ城と玉鷲(片男波)。遠藤(追手風)も3勝を挙げました。横綱の金星同様、大関も配給したくない“銀星”です。

【館内を沸かせたで賞】

遠藤(2018年7月12日撮影)

これは本場所の各日、日本相撲協会が十両と幕内で各上位3位まで、敢闘精神あふれる相撲を取った力士を発表するものです。来場者やネットによる投票で決まるもので、日刊スポーツでは本場所中、相撲面の端に縦長で掲載しています。本来は受けて立つ上位陣は避けられがちですが、それでも悲壮感あふれる相撲で稀勢の里(田子ノ浦)が連日、1位に登場することもしばしば。さあNO・1は…。人気力士の遠藤で14回、1位を獲得しました。2位は優勝した九州場所でポイントを稼いだ貴景勝の13回。3位は9回の御嶽海で、8回獲得で稀勢の里の名前も。栃ノ心、阿炎(錣山)も同数で並びました。

【小波賞】

逸ノ城(2018年11月23日撮影)

番付の昇降幅が激しかった「ビッグウエーブ賞」は紙面で紹介します。ここでは、そんな“大波”とは対照的に、番付がこの1年、安定していた力士を「小波賞」として紹介します。「まあ常に三役にいた、あの力士だろう」と、勘のいい方ならお分かりでしょう。この1年で番付の昇降幅が2枚しかなかった、御嶽海と逸ノ城がトップ。御嶽海は夏場所だけが小結で残り5場所は関脇。逸ノ城は前頭筆頭から始まり小結、そして残り4場所は連続関脇なので“右肩小幅上がり”の2枚と当然の結果です。ただ2人とも、九州場所で負け越し、来年初場所の関脇陥落は必至の状況。来年は三役キープ、いや大関を目指せ!

【相撲が大好きで賞】

稀勢の里(2018年9月22日撮影)

相撲が大好きだから、いつまでも土俵に立っていたいんです…。なんて本人は思っていなくても、1番当たりの取組時間が長いと、そう思ってしまいます。というわけで、取組時間の長い力士NO・1は…。最高位にありながら連続休場で苦しみ、もがき続けた1年を象徴するように、横綱稀勢の里でした。不戦敗は除き今年、土俵に上がったのは24番(11勝13敗)。総タイムは440・3秒で、1番平均18・3秒もかかりました。2位は竜電(高田川)の14・6秒。以下、逸ノ城、高安(田子ノ浦)、白鵬(宮城野)と四つ相撲の力士が続きます。では効率よく短時間で白星を稼いだNO・1は…。それは紙面掲載をお楽しみください。来年も相撲ファンの皆様にとって、良い一年でありますように。【大相撲取材班】

原功「BOX!」

無敗の双子世界王者チャーロ兄弟が7度目の“共演”

22日(日本時間23日)、米国ニューヨークでWBC世界ミドル級暫定王者のジャモール・チャーロ(28=米)と、双子の弟でWBC世界スーパーウエルター級王者のジャーメル・チャーロ(28=米)が揃って防衛戦に臨む。兄のジャモールは27戦全勝(21KO)、弟のジャーメルは31戦全勝(15KO)と、ふたりとも無敗をキープしている。弟がセミ、兄がメインで戦う予定だが、揃って王座を守ることができるか。

130年を超す近代ボクシングの歴史上、兄弟で世界王者になった例は過去に30以上あるが、双子の世界王者となるとカオサイ&カオコーのカオサイ兄弟(タイ)、チャナ&ソンクラームのポーパオイン兄弟(タイ)、ラウル&ラモンのガルシア兄弟(メキシコ)、そしてチャーロ兄弟の4組しかいない。そのなかで、このチャーロ兄弟は16年5月から17年2月にかけて「双子で同時期に同階級(スーパーウエルター級)で世界王座に君臨」という珍しい記録を打ち立てている。

米国テキサス州ヒューストン出身のチャーロ兄弟は、ふたりともアマチュアの経験があり、兄が71戦65勝6敗、弟が64戦56勝8敗の戦績を収めている。プロデビューは弟が07年12月で、兄は9カ月遅れで初陣に臨んだ。体格は兄ジャモールが身長183センチ/リーチ187センチなのに対し、弟ジャーメルは180センチ/185センチで、わずかに兄が大きい。

戦闘スタイルも異なる。78パーセントのKO率を誇る兄のジャモールがパンチの破壊力を売りにする強打者なのに対し、弟のジャーメルはスピードを生かした技巧派として知られる。それでも最近の5試合で4KOをマークしており、兄に似たパンチャー型に変貌しつつあるといえるかもしれない。

ふたりはこれまで同じイベントに6度出場しており、ともに6勝(3KO)という戦績を残している。16年5月21日にはセミに出場した弟がWBC世界スーパーウエルター級王座を獲得し、メインでは兄がIBF世界スーパーウエルター級王座を防衛して前出の記録をつくっている。

7度目の“共演”となる今回はコイントスによって出場順が決められ、兄がメインを務めることになった。WBA世界ミドル級暫定王者のジャモールはウィリー・モンロー(32=米)を迎え撃つはずだったが、相手のドーピング違反が発覚。そのため5日前になって、前座に出場予定だったマット・コロボフ(35=露/米)に相手が変更された。アマチュア時代に世界選手権連覇、08年北京五輪出場の実績を持つコロボフ(29戦28勝14KO1敗)を派手に倒すようだと、混戦のミドル級戦線でチャーロの存在感はさらに増すはずだ。

弟のジャーメルは、29戦27勝(21KO)2敗のトニー・ハリソン(28=米)を相手にV4戦に臨む。この難敵を下せばWBA、IBF王者のジャレット・ハード(28=米)との3団体王座統一戦が具体化しそうだ。そのためにもKOか大差判定での勝利がノルマといえる。

米国で開催される2018年最後の世界戦で、双子のチャーロ兄弟がどんな戦いをみせるのか注目したい。