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新着

大相撲裏話

自身の取組ナニで見る!?アプリ、アベマ、テレビ?

納谷(2019年3月20日撮影)

日本相撲協会公式アプリ「大相撲」の“進化”が、ネット上で話題を呼んでいる。今場所から幕下上位5番と十両の取組ムービーを視聴できるようになったからだ。対象は有料会員だが、これまで視聴できる取組は幕内に限定されていた。日本相撲協会の広報部は「お客さんにより良いサービスを届けられれば」と説明。NHKがネットで幕内の取組を配信する中、特色を出す形となった。

しかし、協会公式アプリの動画拡大はまだあまり知られていない様子。今場所幕下上位5番以内の取組に入ることが多い元横綱大鵬の孫、東幕下7枚目納谷は、自身の取組が協会公式アプリに上がっていることに話題が及ぶと「そうなんですか?」と目を丸くした。

力士が自身の取組を振り返る手段はさまざま。十両若元春は「母親から送られた動画を見てます」という。最近はスマホが主流だが、NHKの大相撲中継を録画し、部屋宿舎に戻ってから見返す関取もまだまだ多い。十両水戸龍は「アベマの録画機能で見てます」と、ネット中継を駆使。ただ「帰りの車で見ると頭の中が一日中相撲になるので、帰ってから見ます。気が張り詰めちゃうので」。関取の戦いは15日間。帰路くらいは少し、気を休めたい。【佐藤礼征】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

鳴戸親方に戻った「いいひざ」遠くない関取1号誕生

へそ付近から脂肪細胞を採取される鳴戸親方

11月13日は「いいひざの日」。力士は一般的に膝に負担がかかるため、持病を抱えていることが多い。元大関琴欧洲の鳴戸親方もその1人。両膝とも靱帯を痛め、特に右膝蓋(しつがい)骨脱臼は、引退の一因になった。引退後も階段の昇降も苦労するほど膝に痛みが残り、さまざまな治療に取り組んできた。それでも痛みはおさまらず、引退から約5年半たった今年9月、最先端の再生医療「幹細胞治療」に踏み切った。

関係者に東京・千代田区の「お茶の水セルクリニック」を紹介され、治療を始めた。まずは、へそ付近の皮膚を5ミリ切開し、少量の脂肪細胞を採取。約1カ月かけて治療の必要な数まで幹細胞を培養した。その後、増やした幹細胞を膝の関節に注入してもらった。鳴戸親方は「以前より痛みがだいぶやわらいだ。おかげで弟子たちの稽古も順調。今場所もまわしを締めて土俵に上がっています。順調に回復すれば、現役復帰もできそうなくらい」と手応えを口にしている。幹細胞治療は、幹細胞独特の動きにより、人間が持っている正常の機能に再生させるよう促す治療法。自身の体内から取り出した幹細胞を使用するため、リスクも少ないという。

鳴戸親方は17年4月に独立して鳴戸部屋を興して以来、自ら胸を出して弟子を育ててきた。稽古をつける時に膝を亜脱臼することが多かったが、今はその苦しみから脱出しつつある。部屋頭の三段目元林は、九州場所5日目を終えた時点で3勝0敗。序ノ口デビューから17連勝中でもある。近大出身の逸材は、スピード出世の真っただ中だ。

師匠が「いいひざ」を取り戻せば、さらに効果的に稽古をつけることができる。関取1号が誕生するのも、そう遠くはないかもしれない。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

群雄割拠のミドル級 年末村田戦までの動きに注目

WBA世界ミドル級王者の村田諒太(33=帝拳)は12月23日、同級9位のスティーブン・バトラー(24=カナダ)を相手に横浜アリーナで初防衛戦を行うことになっているが、そのミドル級の周辺状況が大きく変化しつつある。

村田は2年前に初めてWBA王座を獲得したころから近未来の対戦希望相手として、世界的なスター選手のサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)とゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)の名前を挙げていた。しかし、アルバレスはミドル級王座を持ったまま昨年12月にスーパーミドル級のWBA王座を獲得し、さらに今月2日にはWBO世界ライト・ヘビー級王座に挑戦。体格差に悩まされはしたもののセルゲイ・コバレフ(36=露)を11回KOで破り戴冠を果たした。これによりアルバレスは160ポンド(約72・5キロ)、168ポンド(約76・2キロ)、175ポンド(約79・3キロ)の3階級の王座を同時に保持することになった。常識的に考えてアルバレスがミドル級に戻ってくる可能性は極めて低くなったといえる。

一方、昨年9月にアルバレスに惜敗して無冠になっていたゴロフキンは10月にIBF王座決定戦で辛勝、返り咲きを果たしている。今後、将来的な村田の標的はゴロフキンに絞られるものと思われる。

こうしたなか12月7日(日本時間8日)、米国ニューヨークでWBA暫定王座決定戦が行われることになった。元暫定王者で現1位のクリス・ユーバンク・ジュニア(30=英)と3位のマット・コロボフ(36=露/米)が団体内三つ目のベルトを争うのだ。スーパー王者にアルバレス、正規王者に村田が君臨しているにもかかわらず、もうひとり王者を増やそうというWBAのやり方には首を傾げたくなる。ただ、この先にWBAが正規王者と暫定王者に統一戦を命じる可能性があるだけに注視していく必要はあるだろう。

ユーバンク対コロボフのイベントでは、メインでWBCタイトルマッチが組まれている。

王者のジャモール・チャーロ(29=米)が5位のデニス・ホーガン(34=アイルランド)を迎え撃つものだが、チャーロの3度目の防衛が濃厚とみられている。

また元WBA、IBF王者で現WBA2位のダニエル・ジェイコブス(32=米)の動きにも注目したい。アルバレス、ゴロフキンと戦っていずれも12回判定で惜敗しているジェイコブスは12月20日(日本時間21日)、米国アリゾナ州フェニックスで元WBC王者のフリオ・セサール・チャベス・ジュニア(33=メキシコ)とスーパーミドル級12回戦を行うことが決まった。これを機に上の階級に転向するのか、あるいはミドル級に留まるのか気になるところだ。

村田対バトラーの一戦もミドル級トップ戦線の動きのひとつといえる。ロブ・ブラント(29=米)との再戦で豪快な2回TKO勝ちを収め王座返り咲きを果たした村田と、30戦28勝(24KO)1敗1分のバトラー。強打者同士の対決がいまから楽しみだ。

大相撲裏話

木崎海 首里城が焼けて悲しむ故郷のために

九州場所2日目、若元春(左)を押し出しで破る木崎海

変わり果てた故郷の象徴的存在に、ひたすら驚いた。首里城の火災から10日以上がたった。沖縄・うるま市出身で沖縄勢唯一の関取、西十両10枚目木崎海(24=木瀬)は、10月31日に首里城が燃えたことを知人から教えてもらい「びっくりして言葉も出なかった」とあぜん。それでも「地元を元気づけるためにも、今場所は頑張らないといけない」と、すぐに前を向いた。

大学時代、故郷に戻って首里城に足を運んだことが1度あった。「小学校の頃も歴史で首里城について勉強した。懐かしかったですね」。沖縄の数ある観光地でも「1番はやっぱり首里城」。存在が当たり前すぎるため、そのときは写真も撮り忘れてしまった。「できたらもう1度つくってほしいです」。

場所後の12月14、15日には地元うるま市で冬巡業が行われる。7月後の名古屋場所後には沖縄に戻り、PRイベントに参加した。自己最高位で迎えた今場所は連勝で発進。首里城の焼失に悲しむ人たちのためにも「何かで役に立てれば」。新入幕を目指して、沖縄を活気づける覚悟だ。(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

リングにかける男たち

中邑真輔をさらに魅せる日本のプロレス知り尽くす男

名コンビぶりを発揮するインターコンチネンタル王者中邑(左)とゼイン(C)2019 WWE, Inc. All Rights Reserved

プロレス界にはリングに立つマネジャー、代理人、スポークスマンがいる。その呼称はいろいろあるものの、選手の存在感を際立たせるために欠かせない人材だ。そして今夏以降、WWEインターコンチネンタル(IC)王者中邑真輔(39)には、サミ・ゼイン(35)という存在がいる。

さかのぼること8月の米スーフォールズ大会。スマックダウンの人気コーナーで、ザ・ミズがホストを務める「ミズTV」にゲストとして出演したゼインが「オレの助けを必要としている男がいるんだ」と、中邑は呼びこまれた。

ミズから「IC王者なのに、なぜサミ・ゼインとつるんでいるんだ?」と疑問を投げかけられる中邑だが無言のまま。代わりにゼインは「シンスケは日本人でアーティストだが、心の中のメッセージを完全に伝えられないことに苦痛を感じているんだ。オレにはその気持ちがよくわかる。シンスケと話したければ、オレを通せ」と切り出した。

ゼインの一方的な説明に疑問を感じたミズに念押しで「本当にゼインに代弁させるつもりか?」と説得された中邑は無言のまま、ミズを制し、ゼインとの連係でKOしてしまった。以後、中邑はインタビューの質問には、わざと日本語を使用し、残りはゼインが「代弁」。WWEデビュー戦の対戦相手との連係で、試合時にはセコンドにも招いてIC王者ロードを突き進む。

リング上でゼイン(右)とともにアピールするインターコンチネンタル王者中邑(C)2019 WWE, Inc. All Rights Reserved

ゼインはWWE加入以前のROH時代には丸藤正道、飯伏幸太らと対戦し、ドラゴンゲートやDDTで来日済み。日本のプロレスを知り、プロレス技術も抜群。かつコメディアンとしても活動する一面も併せ持つ。日本人を知り、日本のプロレスを知る冗舌なヒゲ男のアシストは中邑の雰囲気にさらなるエッジを効かせている。

今、WWEヘビー級王者ブロック・レスナーにはポール・ヘイマンが代理人を務める。WWE加入したレスナーのライバルで元UFCヘビー級王者のケイン・ヴェラスケスには、レイ・ミステリオJr.がセコンド役を務める。過去にはジ・アンダーテイカーやケインにはポール・ベアラーがマネジャーとして登場。国内ではストロングマシンに悪役マネジャーの将軍KYワカマツが付き、最近ではオカダ・カズチカにスポークスマンとして外道がついたことは記憶に新しい。いつもブレークする選手には「冗舌な助っ人」が不可欠なのだ。

英語が流ちょうな中邑にとって、自身の言葉で表現できないもどかしさも時にあるだろう。一方で、中邑には他のレスラーにはマネできない独特のパフォーマンス力を持っている。入場からファンを盛り上げ、リングでも「魅せる」ことができる。17~18年にあと1歩届かなかったWWEヘビー級王座への道。IC王者としての地位を確立しつつあるゼインとの絶妙コンビが、中邑にとって今後の起爆剤になるのではないかと想像している。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

セコンドにゼイン(左)を入れ、インターコンチネンタル王座の防衛に成功する同王者中邑(C)2019 WWE, Inc. All Rights Reserved

プロレスの月曜日

“スターダムのアイコン”岩谷麻優「世界中で有名に」

プロレス界の輝く女性たちを紹介するコーナー5回目はスターダムの岩谷麻優(26)。団体は10月17日に新日本の親会社ブシロードの傘下入り。11年旗揚げからの生え抜きで「スターダムのアイコン」こと岩谷に団体の歴史と今後の展望、新たな目標を語ってもらった。【取材・構成=高場泉穂】

スターダムのこれからを語った岩谷麻優

「日本にいながら世界中で有名な選手になりたい」。岩谷が数年前から持ち続ける夢だ。スターダムは国内最大手の女子プロレス団体。それでも知名度は高いとはいえない。エースである岩谷でさえ、街を歩いて声をかけられることは全くないという。今回、新日本プロレスのV字回復を支えたブシロード傘下に入ったことで海外進出、露出の場は格段に増える見込み。それによって「夢がかなうんじゃないかと思った」。提携発表後、SNSのフォロワー数は300人増えた。夢にまた1歩近づいた。

スターダムからは世界最大の団体WWEに移籍し活躍する宝城カイリ(現カイリ・セイン)、紫雷イオらがいるが「同じ流れをたどっても面白くない」。2人をリスペクトしつつ、「違う道で2人よりも知ってもらえる存在になりたい」と違うやり方で世界に名を売っていくつもりだ。

これまでの歩みは「崖」の連続だった。11年のデビュー後についたニックネームは「ウルトラマン」。スタミナがなく、3分間動くと息があがった。初勝利まで1年もかかった。だが、そこから団体の各ベルトを巻くまで成長。カイリ、イオとともにトップ選手として団体を引っ張ってきた。

15年2月に起こった世4虎対安川悪斗戦の事件を機に選手が大量離脱した時は「このまま終わってしまうんじゃないかと思った」。岩谷ら残された数人の選手が1日数試合をこなし、リング設営も自分たちで行った。「精神的にも体力的にもきつかったけど、充実感がありました。みんなで『まじつらい』とか言って、励まし合いながら。雰囲気が良かった」。厳しい時期を乗り越えてからのここ数年は右肩上がり。個性豊かな選手が集まり、年間収入は約2億円にまでのぼる。

スターダム、さらに女子プロレス人気を上げるため、今後は新規ファン獲得に力を入れたいと岩谷は言う。「若い方や女性の方に見ていただければより広まると思います。今は一部のプロレスファンの40、50代の男性にしか届けられていない。今まで8年間(広める努力が)出来てこなかったから現状がある。自分たちができなかった分を(ブシロードに)補っていただけたらと思います」とPRでのサポートに期待する。

「見てもらえればはまると思う」と内容にも自信を持つ。「選手1人1人にドラマがある。ドラマを見にきてください。あわよくば私を見てほしいです!」。最近はアクション教室にも通い始めた。常に自分を磨いて、リングで待つ。

◆岩谷麻優(いわたに・まゆ)1993年(平5)2月19日、山口県美祢市生まれ。11年1月旗揚げ戦の星輝ありさ戦でデビュー。14年に初のシングルタイトルとなるワンダー・オブ・スターダム王座を獲得。19年2月、米団体ROHのWOH王座を獲得。得意技ドラゴンスープレックスホールド。163センチ、53キロ。

大相撲裏話

東京五輪まで4場所、地獄見た照ノ富士が描く復活道

時津風部屋での出稽古で言葉を交わす鶴竜(右)と照ノ富士

強引とも思える荒っぽさと、屈辱と引き換えに得た慎重さを兼ね備えて、あの男が関取復帰まで、あと1歩のところまで戻ってきた。大相撲九州場所(11月10日初日、福岡国際センター)を、西幕下10枚目で迎える大関経験者の照ノ富士(27=伊勢ケ浜)だ。

相撲を取る稽古を見たのは、もう1年以上も前のことだった。初日を4日後に控えた6日の時津風部屋。部屋の宝富士、照強の関取衆とともに照ノ富士は出稽古にやってきた。この日も基礎運動や若い衆相手の稽古に終始するだろう、という読みはアッサリ外れた。開放感あふれる、柔らかな日差しが差し込む屋外の稽古場。熱気に誘われるように、照ノ富士は関取衆による申し合いの輪に加わった。

豊山、錦木、正代と前頭9~14枚目に名を連ねる幕内力士を相手に外四つ、もろ差し、肩越しに上手を取っての寄りと力強く攻めたてる。4番目には正代をつり寄りで土俵を割らせ、再び相まみえた押し相撲の豊山を逆に押し出した。さすがに息が切れたのか6連勝のまま、いったん休憩。数番置いて再び土俵に上がると豊山、正代、十両の東龍、最後に豊山と大型力士を次々とねじ伏せ、10連勝で締めくくった。

「逆に今日のオレ、どんな感じだった?」。稽古や本場所の相撲内容を振り返ってもらおうとする報道陣の問いかけに、こう返すのはいつものことだ。「(関取が稽古で締める)白まわしを(照ノ富士が)締めていなかったのが不思議な感じだったよ」。それほど、番付に開きがある幕下と関取衆の稽古とは思えないほどだった。そう返すと、ニコッと笑って「やることは、やってきたから。これが場所の結果として出たらいいかな」と言った。

この日の稽古内容は「上半身だけなら(関取衆に)負ける要素はないから、つかまえられればね」と振り返った。それは想定内として、この日、確かめたのは「当たって、そこからの足の出方とか。前に比べて、すり足もちょっとずつ出来るようになってきたんだ」と、両半身のバランスをチェック事項に挙げた。上半身のパワー任せの相撲では、手術までした両膝に負担がかかるだけ。下半身も「鍛えるだけ鍛えている」という。この日の関取衆との10戦全勝も、力の入れ具合など「もちろん、本場所とは違う。みんな調整している(段階)」と額面通りには受け取らない。両膝のケガ、内臓疾患で大関陥落から2年。4場所連続全休などで番付を序二段まで落とした。この間に味わった、引退の2文字さえ頭をよぎった暗闇の日々の中から、勢いに任せない慎重さも備わってきたように思える。

土俵復帰から7戦全勝、3場所連続6勝1敗で、関取復帰が見えてきた。今場所後の関取復帰には7戦全勝が求められる。大関経験があるとはいえ、そう簡単に幕下上位は勝たせてくれない。それでも照ノ富士なりに復活ロードの青写真を描いている。「来年の名古屋場所で幕内にいられればいいかなと思ってる。4場所で、きっちり戻れればということを意識して、それに向けて頑張ってるんだ」。

それ以上は言葉を続けなかったが、名古屋に何か思い入れでもあるのか、気になって帰り際に聞いてみた。「(東京)オリンピック前に幕内に上がりたいんだ」。大相撲がどう、東京五輪とかかわるのかは現段階では分からない。98年長野冬季五輪の開会式で横綱土俵入りなど幕内力士が参加した映像が、照ノ富士の頭にあるのか…。それも1つの夢、モチベーションとして持つのも悪くはない。今場所を含めた4場所で再十両、そして再入幕へ-。ハードルは低くないが、自分をそう鼓舞できるだけの精神的な強さを支えに“元大関”が復活ロードを歩む。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

申し合い稽古で豊山(背中)を、もろ差しに組み止める照ノ富士
リングにかける男たち

女子プロレス人気復活へ、同性ファン求める意見が鍵

10月17日、新体制発表会見を行ったスターダム。前列左からスターダムのロッシー小川社長、ブシロード木谷高明取締役、キックロード原田克彦社長。後列はスターダムの選手ら

女子プロレス界に新たな光が射した。10月17日、ロッシー小川社長率いる国内トップ団体スターダムが、新日本プロレスの親会社ブシロード傘下になったことが発表され、同日都内で会見が開かれた。12年に新日本プロレスを買収し、そこからV字復活を成功させたブシロード木谷高明取締役は「3年で5倍の10億を目指す」と成長を約束。来年4月29日に大田区総合体育館で約7年ぶりのビッグマッチを開催するほか、BS日テレ、TOKYO MXでのレギュラー番組も決定。積極的にPRを進めていく予定だ。

日本では過去にビューティ・ペア、クラッシュギャルズ、全女など女子プロレスのブームが存在した。しかし、70年代から長年全女中継を行ってきたフジテレビが02年に「格闘女神ATHENA(アテナ)」を終了し、中継から撤退。さらに全女が05年に解散。それ以来、女子プロ人気は瞬く間にしぼみ、マイナージャンルと化した。今回の件をきっかけに女子プロ人気は復活するのか。ブシロードの支援を背にスターダムがどう変化していくか、そして他の団体がどう動いていくか注目していきたい。

会見中、最も刺さったのがブシロード木谷氏の言葉だ。質疑応答で、スターダムの伸びしろについて問われると、こう答えた。「まずもったいない部分は、お客さんの年齢が高い。ほぼ男性しかいない。(過去に)女子プロレスが流行(はや)った時、やはり支えていたのは女子だった。女子が見やすい会場、大会にしたい」。女性や、若いファン層を取り込むことが今後の成長のカギになると語った。

女性ファンの少なさは昨年プロレス取材を始めて以来気になっていた部分だった。故井田真木子氏が記し、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した「プロレス少女伝説」(90年)には、スター長与千種を熱狂的に追いかける少女たちの姿が描かれている。しかし、いま会場を埋めるのはほぼ男性だ。確かにビジュアル面で優れた選手も多く、試合前の歌のパフォーマンスと合いの手、売店でのやり取りの様子などを見ると男性ファンが多い理由は理解できる。ただ、その光景は異様だ。

そうした状況の中、会場で見かけるわずかな女性ファンはどんなことを思いながら観戦しているのだろうか。あらためて浮かんだ疑問を解決するべく10月28日、ツイッター上で女子プロ好きの女性に話を聞きたいと呼びかけた。すると、約20人の方が私に返信やダイレクトメールを送ってくださった。直接会って座談会をしたかったが、地方の方も多かったため断念し、LINEオープンチャットを開設。約40人の方が集まり、熱い意見を投稿してくださった。

「最初は男性だらけの中に入っていくのが嫌で帰ろうと思いました」など観戦時の苦い経験を明かしてくれた方もいたが、大半は男性だらけの環境でも気にせず試合を楽しんでいる様子だった。女子プロの魅力についての質問には「感情移入しやすい」「自分ができないからこその憧れ」「心身の痛み、努力が報われた時の喜びは男性レスラーより伝わってくる」など、同性だからこそ感じる部分を挙げる方が多かった。

そして、みなさんが特に熱望していたのがテレビ放送と女性限定興行だった。限定興行に関しては「女性ファンがこんなにいるんだよ、とアピールすることが大事」「会場にいくハードルを下げること」など。同性の仲間がいる安心感があれば、その後も会場に足を運ぶ可能性は確かにある。ブシロード木谷氏も会見の中で、従来の男性ファンを大事にした上で、女性限定興行をする価値があると熱弁していた。簡単ではないと思うが、スターダムに限らずぜひ多くの団体に実現してほしい。

肝心の試合の内容も充実しつつある。女子プロレス界の横綱ことセンダイガールズプロレスリングの里村明衣子は「女子のレベルは10年前に比べたらすごく上がっている。そして、世界的に女子レスラーが増えている」と話す。現在WWEやAEWなど米大手団体が女子の試合を提供していることもあり、世界的に女子選手への注目は高まっている。里村らトップ選手は海外の興行に引っ張りだこの状態だ。歴史ある日本の女子プロレス文化が再び花開く下地は、十分そろっている。【高場泉穂】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

原功「BOX!」

個性派揃いのバンタム級トップ戦線から目が離せない

いよいよ明日7日、さいたまスーパーアリーナで階級最強を決めるトーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級決勝戦、WBA&IBF王者、井上尚弥(26=大橋)対WBAスーパー王者、ノニト・ドネア(36=比)が行われる。ダブルメインとしてWBC内の同級王座統一戦、正規王者のノルディーヌ・ウバーリ(33=仏)対暫定王者、井上拓真(23=大橋)も挙行される。この2試合を含め、11月には主要4団体の世界王者が全員リングに上がる予定だ。WBSS決勝で最強が決まるものの、それは一時的なものといえる。バンタム級ウォーズはこれからが佳境といえそうだ。

現在の主要4団体の王座保持者は以下のとおりだ。

WBAスーパー王座 : ノニト・ドネア(36=比)

WBA王座     : 井上尚弥(26=大橋)

WBC王座     : ノルディーヌ・ウバーリ(33=仏)

WBC暫定王座   : 井上拓真(23=大橋)

IBF王座     : 井上尚弥(26=大橋)

WBO王座     : ゾラニ・テテ(31=南ア)

WBO暫定王座   : ジョンリエル・カシメロ(30=比)

スーパー王者や暫定王者を含め6人がベルトを持っている混戦状態といえる。実績では5階級制覇を果たしているドネア(45戦40勝26KO5敗)がトップだが、最も高い評価を受けているのは井上尚弥(18戦全勝16KO)だ。したがってこの両者の対決で勝った方がバンタム級最強といっていいだろう。16戦全勝(12KO)のウバーリと13戦全勝(3KO)の井上拓真のWBC内統一戦も注目カードだ。

この2試合のあともバンタム級ウォーズは続く。23日(日本時間24日)には米国ネバダ州ラスベガスでWBCの挑戦者決定戦が組まれている。元WBC王者で現1位のルイス・ネリ(24=メキシコ)と前IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(27=プエルトリコ)が拳を交えるのだ。ネリは17年8月に山中慎介(帝拳)のV13を阻止して戴冠を果たしたが、試合後にドーピング違反が発覚。翌年3月の再戦では大幅な体重オーバーで失格、王座を剥奪されたうえ出場停止処分を科されたことがある。しかしサウスポーから繰り出す強打と実力は折り紙つきで、ここまで30戦全勝(24KO)をマークしている。

一方のロドリゲスは今年5月、WBSS準決勝で井上に2回KO負けを喫してIBF王座を失った前王者で、これが再起戦でもある。20戦19勝(12KO)1敗。こちらも総合的に高い戦闘能力を備えている。勝者がウバーリ対井上拓真の勝者に対する指名挑戦権を手に入れることになるだけに日本のファンも気になる試合といえる。

その1週間後、30日(日本時間12月1日)には英国バーミンガムでWBO内の王座統一戦、正規王者のテテ対暫定王者のカシメロというカードが組まれている。テテはサウスポーの長身強打者で、11秒KOの世界戦最短記録保持者としても知られる。本来なら今年4月にWBSS準決勝でドネアと対戦するはずだったが、右肩を痛めて離脱。これが13カ月ぶりの戦線復帰戦となる。戦績は31戦28勝(21KO)3敗。

テテのWBSS参戦にともなって設けられた暫定王座を獲得し、ライト・フライ級、フライ級に続く3階級制覇を果たしたのがカシメロだ。8月の初防衛戦を含めて4連続KO勝ちと勢いを増している。32戦28勝(19KO)4敗。サウスポー同士の一戦は体格で勝るテテ有利といえるが、打たれ脆い面があるだけにカシメロにも十分にチャンスがある。

井上兄弟をはじめ力のある個性派が揃ったバンタム級トップ戦線。

しばらくは目が離せない状況が続きそうだ。

プロレスの月曜日

拳王ノア改革 反体制ユニット「金剛」結成で活性化

プロレスリングノアの年間最大のビッグマッチが11月2日、両国国技館で開催される。メインのGHCヘビー級選手権で王者清宮海斗(23)に挑戦するのは元タッグパートナーの拳王(34)。反体制ユニット「金剛」を率いて、ノアの改革を目指す拳王に今回のタイトル戦への思いや今後の野望を聞いた。【取材・構成=高場泉穂】

11・2ノア両国大会でGHCヘビー級王座に挑戦する拳王

両国国技館を超満員にし、そこを「金剛」(ダイヤモンド)の輝きにする-。拳王の1つの夢がそこまで近づいている。今年5月に清宮とのタッグを解消し、マサ北宮、稲村愛輝らと反体制ユニット「金剛」を結成。リーダーとしてノアを活性化させるとともに、親会社「リデットエンターテインメント」と清宮の批判を繰り返してきた。すべてはノアを業界NO・1に引き上げるためだ。

「ずっとリング上で言っているんですけど(選手らが)会社に洗脳されているような感じになっている。ぼくが目指しているのは業界の2位ではない。一番人気のある団体のまねをしていてもだめ。もっとオリジナリティーを出して、自分たちはやっていきたい」。

若き王者清宮と決別したのも「会社のいいなり」で自分の意思を感じられなかったから。だが、ここに来て変化を感じつつあるという。「あいつはプロレスの教科書通りにやっていくだけのおもしろくない、響かないプロレスラー。でもようやく、言い続けたかいがあって、少し本音がでてきているかな。まぁ、それでも響かないけど」。両国のタイトル戦に求めるのはすべてをぶつけ合う戦い。「むこうが本気できたら、こっちもさらに熱い気持ちでぶつかっていける」と本音を引き出す挑発を仕掛けていくつもりだ。

敵は清宮だけではない。拳王はノアを長らく引っ張ってきた丸藤正道、杉浦貴打倒も目標に掲げる。「ノア=丸藤、杉浦の時代がいまも続いていると僕は思う。両国のカードを見ても悔しかった」。両国で丸藤はレジェンド、グレート・ムタと対戦。杉浦は新ベルト「ナショナル王座」をかけ、マイケル・エルガンと戦う。「どうにかして超えていきたい」と彼らの豪華カードに負けない戦いをすることを自身に課す。

8月4日、ノア旗揚げ19周年記念大会で岡田(下)を攻める拳王

17年にGHCヘビー級王座を初戴冠。ノアの新時代を目指したが、杉浦に奪われ約4カ月で陥落。革命は志半ばで終わった。「おれがもう1回(王者に)なって、もう1度丸藤、杉浦を倒して超えたというのを世間に知らしめたい」。さらにその先に見つめるのは、20年の日本武道館進出。会社からの圧力をも力に変えて、ノアの新たな時代を切り開く。

◆拳王(けんおう)1985年(昭60)1月1日、徳島市生まれ。幼少期から続ける日本拳法で03年に全日本選手権で優勝するなど結果を残した後、08年みちのくプロレスでデビュー。15年にノア入団。16年末にジュニアからヘビー級に転向。17年12月にGHCヘビー級王座初戴冠。174センチ、95キロ。得意技ダイビング・フットスタンプ。

原功「BOX!」

史上2人目アルバレス世界王座3階級同時制覇なるか

11月2日(日本時間3日)、米国ネバダ州ラスベガスで行われるWBO世界ライト・ヘビー級タイトルマッチが注目を集めている。「クラッシャー(破壊者)」の異名を持つ王者、セルゲイ・コバレフ(36=露)に、世界的な人気を誇るサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)が挑む一戦だ。アルバレスが勝てば4階級制覇となるうえ、ミドル級、スーパー・ミドル級とともに3階級の世界王座を同時に保持することになる。

アルバレスは05年に15歳でプロデビューし、以後の14年間にスーパー・ウェルター級、ミドル級、スーパー・ミドル級の3階級で世界王座を獲得した。戦績は55戦52勝(35KO)1敗2分。唯一の敗北は6年前、あのフロイド・メイウェザー(米国)との試合を判定で落としたものだが、その後は11戦10勝(5KO)1分と無敗をキープしている。

現在はミドル級のWBAスーパー王者とWBC“フランチャイズ(特権)王者“の肩書を持ち、さらにスーパー・ミドル級のWBA王座に君臨中だ。ルール上は複数階級の王座を同時に保持することは禁じられているが、各統括団体が寛容的な対応をみせている。なにしろアルバレスは昨年、DAZNと3年間に11試合で約400億円という超大型契約を結んだほどのスーパースターなのである。今回の試合に際してもWBAとWBCが王座剥奪に動くことはなく、このまま試合が行われてアルバレスが勝った場合は3階級の王座を同時に保持することになる。まさに特権を享受しているかたちだ。

3階級の世界王座を同時に保持といえば、1930年代後半~40年代前半にフェザー級、ライト級、ウェルター級王座に君臨したヘンリー・アームストロング(米国)の例がある。4団体×17階級時代の現在とは異なり、統括団体はひとつ、8階級しか存在しなかった時代に達成した偉業だ。価値の高低はともかく、アルバレスが3階級同時制覇を成し遂げれば史上2例目となる。

ただし、立ち塞がるコバレフの壁は厚い。アマチュア時代からライト・ヘビー級で戦ってきたコバレフは、プロで3度の戴冠を果たしている実力者だ。この3年間こそ7戦4勝(3KO)3敗と苦しんでいるが、通算戦績は38戦34勝(29KO)3敗1分で、KO率は76パーセントを超える。パンチは左右とも破壊力があり、特に左ジャブ、右ストレートは強いうえに正確だ。身長183センチ/リーチ184センチと体格はライト・ヘビー級の平均サイズだが、それでもアルバレスの173センチ/179センチを大きく上回っている。

その一方、最近はアゴとボディの打たれ脆さを突かれてKO負け、あるいは苦戦するケースが目立つ。すでに峠を過ぎたというのが衆目の一致した見方だ。アルバレスがミドル級よりも約7キロ、スーパー・ミドル級よりも約3キロ重いライト・ヘビー級で冒険をする気になったのは、コバレフの耐久力不足を考慮してのことと思われる。

体格で勝るコバレフがプレッシャーをかけ、スキルとスピードで勝る挑戦者がカウンター・アタックを狙う展開になりそうだ。アルバレスもパンチ力はあるが、正面から打ち合う選択はしないだろう。サイドに動きながらコバレフを引き付け、そのうえでタイムリーな右ストレート、左ボディブローで迎え撃つものと思われる。両者ともにミスの許されない試合になりそうだ。

コバレフの打たれ脆さが響いてかオッズは4対1でアルバレス有利と出ているが、その数字がひっくり返る可能性も十分にある。

リングにかける男たち

武藤敬司に見るトップレスラーの必要条件はコメント力

新日本プロレスとUWFインターの対抗戦。メインイベントで高田延彦(右)にドラゴンスクリューを決める武藤敬司

武藤敬司(56)に35周年のインタビューをしたときに、プロレスラーのコメント力の話になった。近年のプロレス界において、そのコメント力は、トップレスラーになるための必要条件となっている。アニトニオ猪木を始め、一時代を築いたレスラーの名言は多い。

そんな中でも、武藤のコメントは異彩を放っている。

「プロレスは芸術だ」

「プロレスはゴールのないマラソンである」

武藤は「今でも言うやつはいるけど、プロレスが芸術だと最初に言ったのはオレ。今は、長いセリフを事前に考えてしゃべるやつもいるけど、昔は自然に言葉が出てきたんだ。それがお客さんから評価され、逆に応援してくれるお客さんに力をもらった」と話す。プロレスを人生にたとえ、選手の頑張りを自らの生き方に重ねて共感するファンは多い。

記者が好きな言葉は「思い出とケンカしたって勝てっこない」という言葉だ。武藤が所属した新日本には、アントニオ猪木を始め、偉大な先輩が数多くいた。長州力など、主力選手の大量離脱で、団体を支える役目は武藤ら、闘魂三銃士と呼ばれた新たな世代に回ってきた。大きなプレッシャーと戦い、苦闘するなかで発した言葉だという。

その言葉は、内館牧子氏の書いた小説「終わった人」の中に引用されている。「内舘先生が、コメントでオレの言葉が気に入ったと言ってくれてうれしかったよ」と武藤は喜んでいた。プロレスは、リング上の戦いと同時に、過去との戦いもある。有名になればなるほど、過去の名レスラーと比べられる。そこに、武藤の言葉は今を生きる大切さを訴えた。

その言葉は、その後WWEに行った中邑真輔が「過去と戦って何が悪い」と引用するなど、ときどきプロレスのシーンで顔を出す。武藤の後輩たちも、過去と戦い続けているということだ。56歳になった武藤は、いまだ現役でプロレス界に君臨する。これからも、天才と呼ばれるプロレスと、異彩を放つ名言を期待したい。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

「プロレスは芸術だ」。35年たった今も変わらぬプロレスLOVEを語る武藤敬司(撮影・中島郁夫)
大相撲裏話

炎鵬、新入幕負け越し後に気づいたベスト体重98キロ

炎鵬(右)は琴勇輝を寄り切りで下す(撮影・小沢裕)

炎鵬が25歳になった。誕生日の10月18日、京都巡業で話を聞くと、感慨深そうだった。

「自分にとって、こんなに濃い1年は経験がない。成長できたかな、と思いますね」

金沢学院東高3年で世界ジュニア軽量級に優勝。金沢学院大では世界選手権軽量級を2連覇。一般企業への就職を考えていた時、白鵬に誘われ、角界入りし、17年春場所で初土俵を踏んだ。そこからわずか2年半。体重100キロに満たない男は今や幕内に欠かせない人気力士になり、幕内上位との対戦もうかがえる番付まで上り詰めた。

覚醒の24歳だったかもしれない。新入幕だった5月の夏場所を7勝8敗と負け越した。その後、ある出来事があった。

6月中旬の滋賀・長浜合宿に体重102キロで入った。生涯で最も重い。細めの食に悩み、必死で食べ、少しでも体重を増やそうと苦労を重ねてきた。増えるほど、喜んだ。スーパーヘビー級の力士に力負けしないために-。それだけに期待感があった。ところが、裏目に出た。

「実際に動くと、めちゃめちゃ体にキレがなかった」。合宿4日目には右脚付け根の筋を違え、もん絶した。体重を落とした。それが現在の98キロ。すると体が動く、動く。「あの時“なんだ、そこじゃないのか”と思ったんです。体重を落としたら、すぐ動きが良くなった。そのへんからですね、こだわりがなくなったのは」。体重が勝手に増えるなら、それもよし。ただ、無理に増やそうと思わなくなった。

軽量力士の大先輩、元小結の舞の海秀平氏は31歳で土俵を去った。

炎鵬に聞いた。

何歳までやれると思う?

「う~ん…正直、長くはできないと思います」。舞の海氏の引退年齢を告げると、納得したようにうなずいた。

体重へのこだわりを捨てた後、7月の名古屋場所を9勝6敗で初三賞の技能賞を獲得。秋場所も9勝6敗だった。小よく大を制すを地で行く取り口で館内をヒートアップさせる。それを少しでも長く続けるなら、体に無駄な負担を強いるべきではない。100キロ未満こそ現状のベストという判断が炎鵬をさらに輝かせることになるなら、とてもおもしろい。【加藤裕一】

25歳の誕生日に、今後の抱負を語る炎鵬(撮影・加藤裕一)
プロレスの月曜日

勝みなみ 飯伏幸太選手と互いに刺激し合ってます

<私とプロレス>

女子ゴルフ界で、黄金世代の代表格として活躍する勝みなみ(21=明治安田生命)は、大のプロレスファンだ。今年1月、新日本プロレスの東京ドーム大会を観戦し、その魅力に取りつかれた。同じアスリートとして、プロレスに元気をもらっているという勝に、その魅力を聞いた。

飯伏幸太から贈られたサインを手に笑顔を見せる勝みなみ(撮影・前岡正明)

勝は今季2勝を挙げた期待の若手。1998年(平10)生まれで、AIG全英女子オープン優勝の渋野日向子や、先日の日本女子オープンを制した畑岡奈紗らと並ぶ黄金世代の代表選手だ。その勝が、初めてプロレスを見たのが、今年1月4日に開催された新日本プロレスの東京ドーム大会だった。

「2つ下のいとこと母が大好きで、私はまったく興味がなかったんです。最初は、あんなに人のことをたたいたりして、怖い印象しかなかった。観戦も乗り気じゃなかったんです。でも、実際に見てみると、この競技はすごいなと思いました。体の大きな人たちが全身を使って戦う激しさと、そのパフォーマンス。入場シーンの衣装や、その選手に合ったBGMに引き込まれて。いっぺんにファンになりました」

その後、今季の開幕戦となったダイキンオーキッド・レディース(沖縄)の前に、たまたま沖縄で開催された新日本の沖縄大会を観戦。さらにその魅力に取りつかれた。

「こけしと呼ばれる本間朋晃さんの、復帰戦だったんです。首のケガで危険な状態だったのに、リングに戻ってきたということで、お客さんの歓声とかすごかったんです。私はゴルフしかやったことがないですけど、ギャラリーになったら、こんな気持ちなんだと実感しました。プロレス会場では、応援するというより、選手のことを見守っている感じで」

プロレスを見ているうちに、それぞれの選手にドラマがあって、ファンが応援しながら選手から勇気や元気をもらっていることを感じるようになったという。

8月、G1クライマックスで優勝した飯伏幸太

「ゴルフをやっていて、練習しても自分の思うようにいかない時期もある。それでも、あきらめずにやったからこそ、上にいけるということを、G1クライマックスで優勝した飯伏幸太選手に教えられました。私もあきらめずに頑張ろうと思いました」

飯伏とは同じ鹿児島出身で大ファンになった。その飯伏からツイッターやインスタグラムをフォローされ、互いに刺激し合っているという。

「プロレスをまだ見にいっていない人は、最初は私みたいに、怖かったり、興味がなかったりかもしれないけど、全身でぶつかり合うことを通して、いろんなことを選手たちが伝えてくれるので、ぜひ1回見にいってほしいです」【取材・構成=桝田朗】

◆勝(かつ)みなみ 1998年(平10)7月1日、鹿児島県生まれ。8歳でゴルフを始め、17年7月にプロテスト合格。14年4月のKKT杯バンテリン・レディースで15歳293日の史上最年少のアマチュア優勝を達成。プロ本格参戦の18年大王製紙エリエール・レディースでプロ初優勝を飾るなど通算3勝。157センチ。

原功「BOX!」

3階級決勝が王座統一戦 WBSS成功見えた

階級最強を決める賞金トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のシーズン2が佳境を迎えている。

実施された3階級のうちバンタム級の決勝戦、井上尚弥(26=大橋)対ノニト・ドネア(36=比)が11月7日にさいたまスーパーアリーナで予定されているが、その前に10月26日(日本時間27日)には英国ロンドンでスーパー・ライト級の決勝戦が行われる。WBC王者のレジス・プログレイス(30=米国)とIBF王者のジョシュ・テイラー(28=英国)が統一戦で拳を交えるもの。全勝対決を制してWBSS優勝を飾るのは?

世界王者を含む8人のトップ選手が参戦したスーパー・ライト級では、最初からプログレイスが本命視されていた。その声に応えるようにプログレイスは初戦となる準々決勝で元世界王者のテリー・フラナガン(30=英国)を大差の判定で下し、今年4月の準決勝ではキリル・レリク(29=ベラルーシ)に6回TKO勝ち。この試合で決勝進出を決めると同時にWBA王座を獲得した。ところが、夏になっても決勝の日程と開催地が決まらないことに不信感を抱いた陣営は、主催者であるWBSSに対しトーナメントからの離脱を示唆。

これに危機感を持ったのかWBSSが慌ててロンドン開催を決定した経緯がある。

一方のテイラーはトーナメント初戦で22戦全勝(12KO)のライアン・マーティン(26=米国)を7回TKOで一蹴。今年5月の準決勝ではIBF王者のイバン・バランチク(26=ロシア/ベラルーシ)から2度のダウンを奪って12回判定勝ちを収めた。このバランチクも19戦全勝(12KO)だったので、プログレイス戦を含めテイラーは3試合続けて全勝の相手との対戦ということになる。

24戦全勝(20KO)のプログレイス、15戦全勝(12KO)のテイラーとも攻撃型のサウスポーで、KO率はふたりとも80パーセントを超える。3対2のオッズが示すように経験値を含めた総合力で勝るプログレイスが有利とみられているが、体格で上回り地の利もあるテイラーを推す声も少なくない。中長距離をキープして戦いたいテイラーをプログレイスが追う展開が予想されるが、接戦になりそうだ。

この試合の11日後、WBSSバンタム級決勝戦、WBA&IBF王者の井上対WBAスーパー王者のドネアが行われる。さらにクルーザー級の決勝戦、IBF王者のユニエル・ドルティコス(33=キューバ)対WBO王者のマイリス・ブリエディス(34=ラトビア)が計画されている。3階級とも決勝が世界王座の統一戦になったことを考えると、収支面はともかくとしてWBSSシーズン2も成功が見えてきたといえそうだ。

リングにかける男たち

ボクシング転向し最初で最後の挑戦、藤本の夢に期待

約1年ぶりの試合で勝利したWBOアジア・パシフィック・ヘビー級王者藤本京太郎

お騒がせ男はじっとしていられないのだろう。昨年に日本ボクシング連盟会長を辞任した山根明氏がプロボクシングのWYBC(ワールド・ヤマネ・ボクシング・チャンピオンシップ)を旗揚げ。「フリーランスの若い世代にチャンスを与えるのが夢」とのことだ。

世界ヘビー級選手権で、3分3回で延長1回、2ノックダウン制だった。タイ発祥WSCS(ワールド・ストリート・チャンピオン・シップ)世界王者高橋が、ブラジルのWNFC(ワールド・ナックル・チャンピオン・シップ)世界王者ハットに2-0判定勝ちした。500人が集まったそうだが…。

本家の日本プロボクシング協会と日本ボクシングコミッション(JBC)は、先ごろ非ボクシング・イベントの不当性を共同声明で宣言した。最近はRIZINの元5階級制覇王者メイウェザー対キックの那須川天心、AbemaTVによる元3階級王者亀田興毅の天心や未経験者とスペシャルマッチが注目されたことがある。

ボクシングは古代に始まり、公平性、安全性を求めて築いてきた。近年は安全面が重要視される中、素人の殴り合いなど看過できない。何かあれば、影響も危惧され、ファンも奪われかねない事情もある。「もどき」と一緒にされ、比較されては困ると言うことだ。

格闘技はK-1、PRIDEなど栄枯盛衰を繰り返してきた。現在はRIZIN、新生K-1が人気も、依然として国内統一の統括組織がなく、権威と人気の維持が難しいことに変わりはない。

一方でボクシング界は他競技との二刀流で参戦容認の方針を打ち出した。閉鎖的業界から門戸開放への口火と言えるが、これもヘビー級と女子に限ったところにポイントがある。いずれも選手層の薄さというネックがあるからだ。

ヘビー級は09年に日本ランキングを再設置し、13年に藤本が56年ぶりで王座に就いた。ただし、実質活動しているのは1人と言ってもいい。以前にプロレスラーから転向選手もいたが早々に引退した。女子と同様に選手層の薄さから苦肉の策とも言える。

世界的には群雄割拠で盛り上がってきたヘビー級だが、国内に限れば存続も風前のともしびのようにも思える。そんなスキをつくような山根新団体設立だった。継続性にははなはだ疑問が残り、本家への影響があるとは思えない。

その第一人者である藤本は日本と東洋太平洋王座を返上した。K-1から転向時の「日本人として初のヘビー級で世界挑戦」の目標に変わりはないという。実際に挑戦して勝てるかと言えば、厳しい現実がある。しかし、挑戦となれば、日本人として最初で最後かもしれない。なんかモヤモヤする動きに、京太郎の夢を実現させてあげたいと強く思うようになった。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

元稀勢の里結い続けた床鳴、口数少ない2人に見た絆

9月29日、父・荻原貞彦氏にはさみを入れられ涙を拭く元横綱稀勢の里の荒磯親方(撮影・鈴木正人)

元横綱稀勢の里の荒磯親方(33=田子ノ浦)が、9月29日に東京・両国国技館で断髪式を行った。東幕下筆頭だった17歳の04年3月春場所4日目、初の十両土俵に際し、初めて結った大銀杏(おおいちょう)。その時も、約15年半後の断髪式も、結ったのは入門当時の鳴戸部屋時代から同部屋の兄弟子、床鳴(44)だった。

2人は断髪式当日、開場2時間前の午前9時ごろに対面。荒磯親方からの「お世話になりました」というあいさつで始まった。互いにこみ上げる思いを封印し、そこから最後の大銀杏(おおいちょう)を結い始めた。

最後の大銀杏を結い終えて間もなく、床鳴は「さびしさとホッとした気持ちの両方。どちらが大きいのか分かりません」と、今にも泣きそうな目でほほ笑んだ。大銀杏は基本的には関取衆が結うが、それ以前の02年春場所の初土俵のころから17年半。ざんばらのころから、髪を整えてきた。触れ続けてきたからこそ「髪にもコンディションがあるので」と、断髪式当日が、決してベストな髪質ではなかったことをほのめかしながらも「納得の仕上がりです」と、まとめ上げた。

床鳴は最後の大銀杏を結う前夜、寝付けなかったという。午後11時ごろにふとんに入っても眠れず、酒を飲んで無理やり眠りについた。それでも午前5時には目が覚め、気持ちを落ち着かせようと、早朝から身支度を整えたり、部屋を掃除したり。普段通りの行動を心がけたが、時間を持て余した。「先代(元鳴戸親方=元横綱隆の里)からの教えもあって、身だしなみには厳しい方でしたから」と、最高の大銀杏に仕上げるために、はやる気持ちを抑えた。断髪式後の整髪は、静岡県三島市の美容師・小針圭一氏(52)にバトンを託した。「向こうもプロですから、特にこちらが口出しやアドバイスすることなんてありません。大銀杏を結った段階で踏ん切りはつけていますから」。

断髪式後の荒磯親方は、まげについて「力士の象徴。今日で力士卒業です」と、さみしそうに話した。床鳴も「昔は髪の量が今の2倍ほどあった。激しい稽古ですり切れて、量も少なくなって、髪質も細くなった」と、さみしそうだった。

荒磯親方にとって床鳴は、入門してからほとんど毎日、接してきた兄弟子だ。初めて勝った日も負けた日も、関取に昇進した時も、初優勝の時も、引退を決めた最後の一番も-。あらゆる時に、しかも感情が高ぶる取組の前後で接してきた。最後の大銀杏を結う前、荒磯親方から「お世話になりました」とあいさつされた床鳴が返した。「勉強させていただきました」。

口数が多いとはいえない2人だが、口に出さなくても分かり合えている信頼関係がある。家族のような絆を感じられる瞬間も、大相撲の魅力だと再認識した1日だった。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

18年9月、稀勢の里(手前)と床鳴
プロレスの月曜日

デビュー35周年 蝶野正洋に聞く「ヒール」の美学

プロレス界のレジェンド、蝶野正洋(56)が10月でデビュー35周年を迎えた。「黒のカリスマ」と呼ばれ、ヒール(悪役)のイメージを大きく変えた功労者でもある。悪の軍団「nWo」を率い日米を股に掛け、新日本プロレスで空前のブームを作り上げた蝶野に「ヒール」の美学を聞いた。

カメラに向かって吠える蝶野正洋(撮影・滝沢徹郎) 

プロレスの戦いの基本は、ヒーロー(ベビーフェース)対ヒール(悪役)という構図だ。最近は、それに軍団(ユニット)ごとの抗争がミックスされて複雑化している。昭和の時代まではヒールといえば、外国人レスラーや他団体からの侵略者。しかし、蝶野はその構図を一変させた。

デビューから10年の94年、G1クライマックスで3度目の優勝を達成した直後、蝶野は突然「武闘派宣言」してヒールに転向した。「29歳でそこそこのポジションを築いていたが、プロレスをやれるのもせいぜいあと10年。新日本で本当のトップになるために、あえて正規軍のワクからはみ出してみようと決断した」という。会社や、創始者のアントニオ猪木に相談しても断られ、見切り発車での決断だった。

蝶野は会社の体制を批判し、天山広吉、ヒロ斎藤とともにヒールユニット「狼軍団」を結成した。この動きを参考に、米国WCWのエリック・ビショフ副社長が当時大人気のヒーロー、ハルク・ホーガンをヒールに転向させ、nWoを結成。一気にブレークした。

「米国も日本と同じように、組織内での勢力争いはなかった。外国人や人種との対決が軸だったけど、エリックがオレらの動きをみて、組織内での対立という構図をWCWの中でやったら、お客がどっと入るようになった。それでオレらも米国に呼ばれて、その人気を目の当たりにした」

笑顔でインタビューに応じる蝶野正洋(撮影・滝沢徹郎) 

nWoでは、ホーガンらの軍団に蝶野が加わり、nWoジャパン結成という流れになるが、実際は蝶野の行動がその始まりだった。蝶野はファッションやプロレススタイルにもこだわった。「オレらの時代はパンツも赤やオレンジ、黄色、ブルーとカラフルになっていた。そんな中で、あえて黒にこだわった。入場時のガウンもバスローブ型じゃなく、カッコいい黒のロングコート。学ランとか長ランのイメージでつくった」

そのファッションも米国WCWに取り入れられた。蝶野が率いるnWoは、そのカッコ良さと強さで爆発的な人気を博した。現在も新日本プロレスはブームといわれるが、その爆発力では蝶野のnWo旋風がはるかに上だった。

「ヒールというのは組織中にいるレスラーの本音の部分。タテ社会の結束の中では吐いてはいけない言葉とか、たまったものを吐き出している。だから一般の人の共感を呼んだ」と蝶野は回想する。蝶野が作り出した新しいヒール像は、今やプロレス界のヒールの主流となっている。【桝田朗】

◆蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)1963年(昭38)9月17日生まれ、東京都出身。84年4月に新日本プロレスに入団し、同年10月5日の武藤敬司戦でデビュー。91年、初開催のG1クライマックスで優勝。同大会は最多の5度優勝。96年のnWo旋風でプロレス大賞MVP受賞。98年にはIWGPヘビー級王座獲得。10年に新日本を退団し、14年4月の試合を最後に事実上の引退。現在は一般社団法人NWHスポーツ救命協会代表理事で社会貢献活動に取り組み、タレントとしても活躍中。

原功「BOX!」

旧ソ連勢の統一戦グウォジクVSベテルビエフはKO決着濃厚

17戦全勝(14KO)のWBC世界ライト・ヘビー級王者オレクサンダー・グウォジク(32=ウクライナ)と、14戦全KO勝ちのIBF同級王者アルツール・ベテルビエフ(34=露)が18日(日本時間19日)、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアで拳を交える。主要4団体の王者同士の統一戦は近年になって増加傾向にあるが、旧ソ連勢のカードは珍しい。総合力は互角だが、ともに強打が売りだけにKO決着が濃厚だ。

WBA、WBC、IBF、WBOの4団体の王者同士による統一戦は今年、9月末日時点で5例を数える。バンタム級の井上尚弥(大橋)対エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)、スーパー・バンタム級のダニエル・ローマン(米国)対TJドヘニー(アイルランド/豪)、スーパー・ライト級のホセ・ラミレス(米国)対モーリス・フッカー(米国)、ウェルター級のエロール・スペンス(米国)対ショーン・ポーター(米国)、ミドル級のサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対ダニエル・ジェイコブス(米国)で、いずれも前者が勝利を収めている。このほか団体内の統一戦や階級の異なる王者同士の対戦も3試合ある。

高い次元で技量が接近しているためか凡戦もあるが、井上対ロドリゲスのようにスリルに富んだ好勝負が多い。今回のグウォジク対ベテルビエフもKO決着が間違いないとみられている。

WBC王者のグウォジクは12年ロンドン五輪ライト・ヘビー級で銅メダルを獲得後、14年2月にプロ転向。米国西海岸をホームに定めて着実に実力を伸ばし、昨年3月にWBC暫定王座を獲得した。12月に団体内統一戦で勝利を収めて正王者に昇格。今回の統一戦が3度目の防衛戦でもある。左ジャブで切り込んで右ストレートに繋げる正統派の強打者だが、耐久面が不安視されている。

IBF王者のベテルビエフもアマチュア出身者で、メダル獲得は逃したが08年北京大会、12年ロンドン大会と2度の五輪出場を果たしている。13年6月にカナダでプロデビューし、ハンマーのような左右の強打でKOの山を築いてきた。2年前に戴冠を果たしたが、故障やビジネス上の摩擦もあって17年と18年は防衛戦を1度ずつ行っただけで試合枯れ状態にあった。今年になって大手のトップランク社と契約を交わし、さっそく大きな試合に恵まれた。攻撃偏重のファイター型だが、攻め急ぐあまり被弾してダウンを喫したこともある。

ベテルビエフのディフェンスの甘さがマイナス要因とみられているためか、オッズは6対5の小差ながらグウォジク有利と出ている。強打者同士のチャンピオン対決だけに初回からスリリングな試合が期待される。短期決着ならばベテルビエフ、長引けばグウォジクといったところだが、展開予想の難しいカードだ。

リングにかける男たち

“氷の皇帝”が日本帰還 何歳でも戦ってほしい男

12月29日のベラトール日本大会での対戦が決まったエメリヤーエンコ・ヒョードル(左)とクイントン・“ランペイジ”・ジャクソン

何歳になってもファイトが見たい。そんな総合格闘家と言っていい。何度か米メディアで報じられてきた「氷の皇帝」の日本“帰還”が、ついに発表された。

19年12月29日、米総合格闘技ベラトールの日本大会初開催(さいたまスーパーアリーナ)に合わせ、元PRIDEヘビー級王者エメリヤーエンコ・ヒョードル(43=ロシア)が15年大みそかのRIZIN旗揚げ大会以来、4年ぶりに日本で試合に臨むことが決まった。対戦相手もPRIDEで活躍してきたクイントン“ランペイジ”ジャクソン(41=米国)に決定した。9日には都内のホテルで記者会見に臨んだ。

ヒョードルは「年末に日本でファイトすることは大事なこと。ロシアでは、年末にヒョードルが日本で戦っていることが『伝統』として認知されている。素晴らしい年明けを迎えられるように、29日に向けて準備していきます」との意気込みを示した。

1度引退している。12年6月、母国での興行でベドロ・ヒーゾ(ブラジル)との対戦(KO勝ち)後に現役引退を会見で口にした。引退後は母国のスポーツ省特別補佐官などを務めていたが、RIZINの設立などに合わせ、15年の年末に現役復帰。18年からはベラトール世界ヘビー級GPに参戦し、元UFC同級王者フランク・ミアやUFCで人気を誇ったチェール・ソネン(ともに米国)を下してGP決勝まで進出した。PRIDE時代を思い出させる快進撃だった。

今年1月のGP決勝ではUFCヘビー級で活躍したライアン・ベイダー(米国)の左フックに散った。衝撃的な35秒KO負け。秒殺されていたこともあり、ヒョードルは2度目の引退時期についても言及。「そろそろ引退する時期かもしれない。(ベラトール代表)スコット・コーカーから最後のツアーをやるとの話が来て、年齢とともに(引退が)明確に見えてくるのではないか」と口にした。

「引退ツアー」としてヒョードルと3試合契約を結んだコーカー代表は「スタッフは来年1月のロサンゼルス大会にこのカードをやるべきだと言っていたが、私が日本で組むと主張した」と説明。ヒョードルの日本ラストマッチになることを強調した。ベラトール日本大会に全面協力するRIZINの榊原信行実行委員長は「往年のファンのプレゼント。タイムスリップしたような時間を感じてもらう機会になればいい」。ベラトールはケージ(金網)での試合が主流だが、今回はPRIDEをほうふつさせるリングでの試合もプランにあるという。

ヒョードルは「私にとって日本という国、日本のファンのみなさんは非常に大切な存在。いつもサポートしてくれてありがとうございます」と感謝の言葉を口にした。PRIDE勢の主力選手の中で、ただ1人、UFCに参戦しなかったファイター。ロシア人でありながら、日本の選手にように感情移入し、ロマンを感じてしまうところだ。

体力のピークはとっくに去っている。00年の日本デビューから約19年。ファンが見たいのは「氷の皇帝」「60億分の1の男」たる生きざまだと思う。1度引退した立場にあり、すぐに2度目の引退をすぐに決める必要はないと考える。おそらく日本ラストマッチになるに違いない。しかし世界のファンが求める限りは、何歳になっても戦ってほしい。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)