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原功「BOX!」

世界王者同士の対戦増加 主因はメディアの場外戦

2019年も7カ月が過ぎたが、今年は団体内の統一戦を含め世界王者同士の対戦が目立って多い。5月にWBA世界バンタム級王者の井上尚弥(26=大橋)がIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を衝撃的な2回TKOで屠ったが、あの試合も統一戦だった。それを含めすでに今年は7試合も世界王者同士のカードが行われた。下半期も多くの統一戦が組まれている。その主因として世界のトップ選手たちが試合を放映するメディアによって大きく3つのグループに分かれていることが挙げられる。

今年4月にはスーパーバンタム級のWBA王者ダニエル・ローマン(29=米国)対IBF王者TJドヘニー(32=アイルランド/豪)、5月にはミドル級のサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)対ダニエル・ジェイコブス(32=米国)のWBA(スーパー王座)、WBC、IBF3団体統一戦が行われ、いずれも前者が判定勝ちを収めている。

7月には、13日にレイ・バルガス(28=メキシコ)対亀田和毅(28=協栄)のWBC団体内の世界スーパーバンタム級王座統一戦が行われ、正王者バルガスが暫定王者の亀田を12回判定で下した。その1週間後の20日にはマニー・パッキャオ(40=比)対キース・サーマン(30=米国)のWBA団体内世界ウエルター級王座統一戦が挙行され、パッキャオが判定で勝利を収め、スーパー王者のサーマンに初黒星をつけた。さらに1週間後の27日、スーパーライト級の世界王座統一戦が行われ、WBC王者ホセ・カルロス・ラミレス(26=米国)がWBO王者モーリス・フッカー(29=米国)に6回TKO勝ちを収めた。無敗の世界王者同士の一戦とあって見応えのある攻防だった。

同じ階級の統一戦ではないが、3月にはIBF世界ウエルター級王者エロール・スペンス(29=米国)対WBC世界ライト級王者マイキー・ガルシア(31=米国)というスター対決も実現した(スペンスが12回判定勝ち)。

こうした傾向が顕著になっている主因として、近年になって参入してきたストリーミング配信サービスのDAZNと、以前から存在するプレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)、そしてトップランク社と提携するESPNによるトップボクサーの囲い込み競争の激化を挙げることができる。たとえばアルバレスとジェイコブス、ローマンとドヘニー、フッカーはDAZN、パッキャオとサーマンはPBC、ラミレスはESPNの契約選手なのだ。よりインパクトの強いカードを提供してファン(加入者、視聴者)を増やそうと躍起になっているのだ。ラミレスがフッカーと対戦したように条件次第では提携するケースもあるが、そんな例はいまのところ稀だ。

下半期も数多くの世界王者同士の好カードが決定、あるいは内定している。「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級決勝、WBA&IBF王者の井上対WBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=比)をはじめ、WBSSのクルーザー級とスーパーライト級の決勝も王者同士の統一戦となる。9月28日にはウエルター級のIBF王者スペンスとWBC王者ショーン・ポーター(31=米国)も決まっている。

リング内の戦いはもちろんだが、スター選手を巡るリング外のビジネスの動きにも注目していきたい。

原功「BOX!」

ヘビー級直接再戦経て頂上決戦へ 最後に笑うのは?

7日(日本時間8日)、サウジアラビアの首都リヤド近郊ディルイーヤでWBA、IBF、WBO3団体統一世界ヘビー級タイトルマッチ、王者アンディ・ルイス(30=米国)対前王者アンソニー・ジョシュア(30=英国)の12回戦が行われる。両者は今年6月、今回とは逆の立場で対戦し、16対1のオッズをひっくり返してルイスが7回TKO勝ち、戴冠を果たした。半年のスパンで行われる直接再戦には「Clash On The Dunes(砂丘の激突)」というイベントコピーがつけられている。

ルイスが返り討ちにするのか、それともジョシュアがリベンジして3団体の王座を取り戻すのか、注目の一戦だ。

今年6月1日、ジョシュアは別の相手と通算7度目の防衛戦を行うはずだったが、その選手がドーピング違反が発覚したため挑戦を取り消され、41日前に試合をしたばかりのルイスがピンチヒッターに起用された経緯があった。そんなこともあり初戦はジョシュアの圧勝が予想されていた。

はたして試合が始まっても序盤は王者が優勢だった。身長で10センチ、リーチで20センチ勝るジョシュアが3回、左フックをヒットして先制のダウンを奪ったときは結末が近いと思われたものだ。ところが勝負を急いで距離が詰まったことでルイスの反撃に遭うことになった。ルイスは左右フックを浴びせて同じラウンド内に2度のダウンを奪い返した。ダメージはジョシュアの方が深く、一時は持ち直したものの7回に再び捕まり、2度のダウンを追加されて万事休した。

初戦の契約に沿って短期間で即再戦が行われることになったわけだが、ボクシングでは珍しいサウジアラビアで試合が挙行されることになったのは、同国の投資家グループの誘致があったからだ。提示金額は1億ドル(約109億円)と伝えられる。

両者合わせて5度のダウンシーンがあったカードのパート2とあって、世界的な注目度は高い。オッズは9対4、今回もジョシュア有利と出ている。初戦ではミスを犯して敗れたが、再戦では左ジャブを突いて距離をとる慎重なボクシングに徹するだろうとみられている。そのうえで好機とみれば破壊力のある右ストレートの長距離砲を繰り出すのではないかという見方が多い。

これに対し身長、リーチとも188センチで体重約120キロのルイスは、ガードを上げた構えで接近を図るタイプで、中近距離で回転の速い左右フックを得意としている。踏み込みもパンチも寸胴体型からは想像できないスピードがあるため、そのギャップに相手は戸惑い対応に苦慮することが多い。初戦ではジョシュアの気持ちをも折っており、返り討ちに自信満々だ。

戦績はルイスが34戦33勝(22KO)1敗、12年ロンドンオリンピック(五輪)金メダリストでもあるジョシュアが23戦22勝(21KO)1敗。

同じヘビー級では11月23日にWBC王者のデオンテイ・ワイルダー(34=米国)が右の一撃でルイス・オルティス(40=キューバ)に7回KO勝ち、V10を果たしたばかりだ。そのワイルダーは来年2月22日、18年12月に引き分けた元3団体統一王者のタイソン・フューリー(31=英国)と再び拳を交えることが決まった。

ルイス対ジョシュア、そしてワイルダー対フューリー。当然、この2試合の勝者同士による頂上決戦が期待されるところだ。熾烈を極めるヘビー級トップ戦線。最後に笑うのは?

大相撲裏話

インスタ炎上も人気抜群、阿炎に求む個の盛り上げ

11月15日、九州場所9日目に大栄翔(手前)に張り手を見舞う阿炎

九州場所で十数年ぶりに相撲担当に復帰し、フル参戦した。休場力士が相次ぎ、横綱白鵬が楽々と43回目の優勝で今年の締めくくり。どの世界でも、活性化に必要なのは世代交代であり、新たなキラ星の台頭といえる。白鵬盤石の牙城を崩すのはだれか。2020年に期待を抱かせる存在は、少なくとも確認した。

夏場所で初優勝を飾り、新小結の九州場所でも11勝をあげた朝乃山は、その筆頭株だろう。個人的に期待したいのは、同年代の小結阿炎だ。九州場所は序盤の出遅れが響いて、9勝にとどまった。しかし、そのスケール感から常に2桁、優勝争いに加われる素材と感じている。

他の担当記者に聞くと、これまでは勝ちにこだわった引き技、立ち合い変化が目立ったという。しかし、九州場所ではとにかく「前」にこだわった。負けた相撲でも「攻める相撲が取れている。負けたからってへこむ内容じゃない」と前向きに捉えることができた。基本は突き、押し。上の番付を意識して、引きたくても我慢して前に出る相撲の意識付けを徹底してきた。

187センチの長身で手足も長い。四つ相撲でも十分に出世しそうだが、現役時代に高速回転の突っ張りで場内を沸かせた元関脇寺尾の錣山親方が、前に出る、攻める相撲を徹底させているのだろう。

九州場所前にインスタグラムへの不適切な投稿で炎上し、八角理事長(元横綱北勝海)に謝罪する“事件”もあった。役力士として自覚の欠如だが、反省して2度繰り返さなければいい。九州場所でも連日、満員御礼で相撲人気を実感した。ただ、かつての空前の若貴ブームも、上りきってから下降線の時代をへてきた。「お客さん」を引きつけるのは、何より力士の「個」。阿炎には魅力的なお相撲さんに育ってほしい。(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

11月11日、九州場所2日目で懸賞金の束を手に土俵を引き揚げる阿炎
リングにかける男たち

天国の2人の師匠のため堀口恭司は常に限界に挑む

2019年10月12日、大みそかに王者堀口(左)との対戦が決定して笑顔を見せる朝倉(撮影・上田博志)

日本を代表する総合格闘家堀口恭司(28)が11月14日、けがとそれに伴う大みそかRIZIN20の欠場を発表した。けがの内容は右膝前十字靱帯(じんたい)断裂と半月板損傷。既に手術を受け、全治には10カ月を要するという。8月のRIZIN18大会で敗れた朝倉海(26)との注目の再戦は流れることとなった。

格闘技ファン、関係者の落胆はもちろんだが、1番心を痛めているのは堀口に違いない。会見前にA4用紙で配られたコメントには「申し訳ない」の言葉が6度。悔しさが行間に強くにじんでいた。そのコメントによれば、春過ぎから体の各所に痛みや違和感を感じていたという。だが、「まー、大丈夫でしょ。気合で何とかなるでしょ!」とそのまま6月の米ニューヨークでのベラトール222に出場し、同団体世界バンタム級王座を獲得。続く8月のRIZIN18では朝倉にまさかの1回68秒KO負け。ダメージが取れた10月後半から本格的な練習を再開したが、「ギリギリ首の皮一枚つながっていた靱帯(じんたい)が悲鳴をあげました」。気付かぬふりをしていたが、体は正直だった。

なぜ、そこまで自分を追い込んだのか。8月にインタビューした際の堀口の言葉が浮かぶ。普段米フロリダにある名門「アメリカン・トップチーム」で練習する堀口は、元UFCフェザー級王者マイク・ブラウンコーチら優秀なスタッフに支えられている。だが、彼らとは別に、今も“目”を感じる2人がいる。昨年7月に他界した空手の師匠二瓶弘宇さんと、同9月に亡くなった総合格闘技の師匠山本“KID”徳郁さんだ。

2人がこの世を去り1年がたつが、「アメリカにいたので、亡くなったという感じがしない。いい意味で悲しくない。会いたいなとも思いますけど、どっかにいるんじゃないかな」。2人の存在がより近くに感じられるようになったと話していた。「これをしたら怒られる、練習しなかったら怒られるとか、いつも思います」。常に口にする「格闘技界を盛り上げる」ため、「強くなる」ため。そして、師匠に対して恥じない姿であるため。必死に修業に励み、故障してしまった堀口を責めることはできない。

夢がまだある。「もっと格闘技を人気にして、少しでも多くのこどもたちに見せたい。格闘技を通じて、人の痛みをわかる大人になってほしい」。目指すのは、自分が少年時代にK-1、PRIDEを見て体感した格闘技ブームの再来だ。

試合ができる状態までどれだけ時間がかかるのか、現段階では分からない。「新たに、強くなった堀口恭司をお見せできるように」。その言葉を信じ、あの笑顔がリングに戻ってくるのを待つ。【高場泉穂】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

プロレスの月曜日

「不沈艦」スタン・ハンセンの日本プロレスへの思い

昭和の日本プロレス界で活躍した「不沈艦」ことスタン・ハンセン氏(70)がこのほど来日し、日刊スポーツのインタビューに応じた。引退後もプロレスへの熱い思いは変わらず。日本のファンや、プロレスを見たことのない人たちへメッセージを送った。【取材・構成=高場泉穂】

スタン・ハンセンお得意の「ウィ〜!」のパフォーマンス

70歳になったハンセンさんが日本にやって来た。昭和プロレスのファンはもちろん、プロレスに詳しくない人でも“ダーン、ダダダーン”で始まる入場曲「サンライズ」は1度は耳にしたことがあるのではないだろうか。

11月15日に大田区総合体育館で行われたザ・デストロイヤーさん追悼興行のセレモニーに出席。会場に「サンライズ」が流れ、黒いテンガロンハットのハンセンさんが登場すると会場は大盛り上がり。リング上では親指、中指、薬指をつまむようにして天を指すお決まりのポーズも披露して大歓声を浴びた。01年の引退から18年がたった今も、その人気が衰えることはない。

ハンセンさんが活躍した70、80年代の日本はプロレスが大ブームを迎え、テレビではゴールデンタイムで中継されていた。今はプロレス人気が復活しているとはいえ、野球やサッカーなど他のメジャースポーツと比べると、選手や試合に対する世間の認知度は低い。そんな状況も踏まえて、長年日本のプロレスを見続けてきたハンセンさんに、あらためて日本のプロレスの魅力について尋ねた。

「日本のプロレスは他の国より、スピード感も、フィジカル的にも発展してきているんだ。世界の中でいつでも特別。選手たちのトレーニングの質は高いし、試合もタフ。アメリカ人レスラーの大半は、パワーがあっても日本でやっているようなスタミナがないから、日本で戦うのが難しい。これまでの長いプロレスの歴史の中で、外国から日本にきて成功したレスラーは15人ぐらいしかいないんじゃないか。それだけタフな場所なんだ」。

ザ・デストロイヤー氏の追悼セレモニーを終え、マスク姿の観客と握手をするスタン・ハンセン氏(撮影・加藤諒)

日本のプロレスのレベルの高さを熱弁するとともに、そのリングで27年間、外国人レスラーとしてトップを張り続けた誇りを言葉にじませた。

ジャイアント馬場、アントニオ猪木、ジャンボ鶴田、アンドレ・ザ・ジャイアント、天龍源一郎…。日本のプロレス史に名前を刻むトップレスラーと死闘を繰り広げてきた。

「鶴田はジャンピングニー。馬場はビッグフット…どの選手にも強い技、強いポイントがあった。それぞれ気をつけていたよ」と懐かしそうに振り返った。最後に日本のファンへのエールを求めると「みんな自分のスタイル、自分の強いところを見つけて、そこに注力すればいい」。ラリアットをひたすら磨き、その道を究めたハンセンさんだからこそ、その言葉は深く響く。

◆スタン・ハンセン 1949年8月29日、米テキサス州ノックスシティ生まれ。プロフットボール選手、教職を経て、73年にプロレスデビュー。75年に全日本プロレスで日本マット初登場。76年にWWWF(現WWE)のブルーノ・サンマルチノ戦で名をあげ、77年からは新日本参戦。81年に全日本に移籍し、01年に引退するまで27年間日本マットで活躍した。得意技ウエスタン・ラリアット。

大相撲裏話

競馬厩務員が第2の土俵 細身にむち打った淡路海

最後の取組を終え、花束を手に笑顔を見せる淡路海

最高位は西三段目7枚目の淡路海(26=田子ノ浦)が九州場所で引退し、今後は兵庫・園田競馬場で厩務員として競走馬の世話をすることになった。

今年の春場所から初めて、田子ノ浦部屋が同競馬場を部屋宿舎として利用したことが縁。中学卒業後に角界入りし、馬の世話については、全くの素人ながら新たな世界に飛び込むことになった。

「地方競馬だと資格や経験などはいらないということだったので。本当は競馬は好きじゃなかったけど、馬は好きなので決めました」。第2の人生では“巨漢”と呼ばれた200キロ超の力士よりも、さらに2、3倍ほど大きな相手と向き合うことになる。

現在も100キロに満たない細身だが、10年前の入門からしばらくは80キロにも満たなかった。そんな体で、若の里や稀勢の里ら、当時の関取衆に胸を借りた。押しても押しても、相手は動かない。元鳴戸親方(元横綱隆の里=故人)のゲキが飛ぶ。当時の鳴戸部屋は猛稽古で知られ、相撲担当になって間もなかった10年近く前の私は、あの体で大丈夫か、すぐに辞めてしまうのではと思っていた。若の里や稀勢の里の大きさ以上に、淡路海(当時のしこ名は坂辺)の小ささ、細さの方が印象に残っていた。

だが淡路海は強かった。たしかに番付では幕下にも届いていない。それでも「何度も辞めようと思いました。逃げ出したい気持ちになりました。先代(元鳴戸親方)は本当に怖い人でしたから(笑い)。でも地元で応援してくれている人の顔を思い出したら『逃げ出しちゃいけない』と踏みとどまることができました」と、気持ちの強さがあった。「15歳の時に先代がスカウトしてくれて、今の自分がある。相撲界で貴重な経験をさせてもらえたのは、先代がいたからこそ。先代には感謝しかないです」。10年余りの土俵人生は誇りにあふれている。

若の里、稀勢の里、高安の付け人を務め、それぞれから絶大な信頼を得ていた。それは、共に厳しい稽古を乗り越えてきたからこそ生まれた、絆のようなものに由来するのかもしれない。特に横綱の付け人を務めたことには「綱打ちや綱締め、弓取り式。普通の付け人ではできないことを、やらせてもらいました」と振り返る。弓取り式は一般的に横綱の付け人が務め、淡路海は本場所での経験はないが、巡業では何度も務めている。9月の稀勢の里の引退相撲でも弓取り式に指名され、当初の5月夏場所後の予定よりも半年間、自身の引退を遅らせた。両国国技館では初の弓取り式を終えた直後には「最初で最後の、国技館での弓取り式。いい思い出になりました」と、しんみりと話していた。

九州場所で最後の取組を終えると、引き揚げた花道に、元横綱稀勢の里の荒磯親方が待っていた。「お疲れさま」。荒磯親方からねぎらわれ、花束を渡された。「ありがとうございました」と返し、握手を交わすと涙が止まらなくなった。「泣かないつもりだったんですけどね。(荒磯)親方を見たら、どうしても泣いてしまいました」。さまざまな思い出がよみがえっていた。

その九州場所は、7番相撲で勝てば三段目の優勝決定戦に進むというほど絶好調だった。最後に敗れたが6勝1敗という堂々の成績。「まだやれたのでは」。そんな質問にも「悔いなく終われました」と返し、すがすがしい表情を見せた。

すでに九州場所の千秋楽パーティーで断髪式も済ませた。新たな人生は「やりがいがありそうで楽しみです。朝が早いことや、力が必要なのは慣れているつもり。馬の後ろに立つと蹴られるらしいので、そこは注意しないと」と、前向きにとらえ、笑った。多くのファンに愛された横綱を支えた淡路海が、今度は地方競馬でファンに愛される馬を支えていく。再び始まる新弟子生活にも、目を輝かせていた。

【高田文太】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

ナバレッテが4度目の防衛戦 井上尚弥のライバルになる存在

WBO世界スーパーバンタム級王者、エマヌエル・ナバレッテ(24=メキシコ)が12月7日(日本時間8日)、メキシコのプエブラで同級13位のフランシスコ・オルタ(26=メキシコ)を相手に4度目の防衛戦を行う。

まだナバレッテの知名度は高くはないが、遠くない将来に井上尚弥(26=大橋)のライバルになる可能性を秘めた強打者だ。ボクシングファンはいまからナバレッテをチェックしておいて損はしないはずだ。

ナバレッテは12年2月、17歳になってすぐにプロデビューし、ここまで30戦して29勝(25KO)1敗という戦績を残している。唯一の敗北はプロ6戦目に4回判定負けを喫したもので、以後は24連勝(20KO)をマークしている。昨年12月、ロンドン五輪にも出場した経験を持つアイザック・ドグボエ(ガーナ/英国)に米国ニューヨークで挑戦し、番狂わせの12回判定勝ちで現在の王座を獲得した。地域王座にすら挑戦したことがなかったナバレッテにとってはメキシコ国外で初の試合でもあった。

このときは「ドグボエの調子が悪かったのだろう」という声もあったが、今年5月の再戦で新王者は12回TKOで前王者を返り討ちにした。一方的に打ちまくっての圧勝とあって、今度は多くのファンや関係者がナバレッテの実力を認めることになった。ボクシング界最大手ともいえるトップランク社がナバレッテとプロモート契約を結んだのは、単に力量だけではなく積極的でエキサイティングなファイト・スタイルを評価してのことと思われる。同社が井上と契約したのと理由は同じといってもいいだろう。

若くて怖いもの知らずのナバレッテは8月にセットされた2度の防衛戦を3回KOでクリアすると、その28日後にV3戦を行い4回TKOで挑戦者を一蹴してみせた。そして今度は3カ月足らずの短いスパンで4度目の防衛戦に臨むわけだ。

公表されているナバレッテのサイズは身長170センチ、リーチ183センチだが、リング上ではもっと大きく感じられる。躍動的なスタイルがそうした印象を与えるのかもしれない。パンチは左右とも強く、中近距離でそれらをテンポよく打ち込んでくる。スタミナもあり、一戦ごとに経験値も高めている。

今回の挑戦者、オルタは24戦20勝(10KO)3敗1分の戦績を残しているが、地域王座への挑戦もなくメキシコ国外での試合経験もない。25対1で王者有利というオッズも当然といえよう。戴冠前のナバレッテ自身がそうだったように、上を目指す者のモチベーションを甘くみるのは危険だが、現時点での両者間の力量差は大きい。ナバレッテのKO防衛が濃厚だ。

いまのところ井上はバンタム級の4団体王座統一を狙っているが、目的を果たしたあとはスーパーバンタム級に転向する計画と伝えられる。ナバレッテは井上と同じトップランク社傘下ということもあり、マッチメークの障壁は少ない。このままふたりが勝ち進めば1年半後、あるいは2年後に井上対ナバレッテが実現するかもしれない。

まずはナバレッテが今回のV4戦でどんな結果を残すのか注目したい。

リングにかける男たち

不在の関西世界王者…スター性漂う辰吉の次男に期待

7月26日、判定で勝利した辰吉寿以輝(撮影・上田博志)

現在のボクシング界の勢力図は、完全な東高西低の構図が描かれる。関西のジム所属の世界王者はWBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗(27=BMB)1人だが、関東での興行が主で「関西の王者」というイメージは抱きにくい。

言うまでもなく、関西はこれまで多くの名王者を輩出している。自分がかつて、担当していた中でも辰吉丈一郎、長谷川穂積、徳山昌守、そして大阪在住時の亀田3兄弟、井岡一翔ら。実力も個性もあった世界王者が存在し、関西での世界戦興行も常だった。

その当時に比べ、今は4団体が日本ボクシングコミッション(JBC)に認定され王者乱立と、見ている側、ファンにとってはその価値観を正しくすべき時代といえる。その中でも原点に戻るが、関西に世界王者不在はあまりに寂しい。救世主登場を願う上で、大きな期待を寄せているのが辰吉の次男、寿以輝(23=大阪帝拳)だ。

ここまで12戦全勝(8KO)と順調にキャリアを重ねるも、ケガが多く8戦目で世界をとったおやじに比べてステップアップに時間がかかっている。それでもスター性は自然に漂う。裏事情として日本、東洋太平洋のランカーに対戦を打診しても、相手にとってはまるで“うまみ”がなく、避けられてきた経緯がある。その中で次戦は、注目の一戦が組まれた。

12月17日にエディオンアリーナ大阪第2競技場で日本バンタム級5位の中村誠康(27=TEAM10COUNT)とスーパーバンタム級(リミット55・3キロ)の契約ウエートで8回戦を行う。初の日本ランカーとの対戦で勝てば日本、東洋太平洋の上位ランク入りは確実。ジムの吉井寛会長も「来年に向けて節目の試合になる」と明言した。

寿以輝は「決まってうれしい。(相手がランク)上でいいです。気持ちで負けない。自分の方がパンチあると思う。必ず倒して勝ちます」と宣言した。「カリスマ辰吉」の信奉者はいまだに多い。その期待を必然にかけられる。「重い」と思うが、関西ボクシング界の起爆剤としても次戦をステップに、来年は一気に駆け上がってほしい。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

7月26日、勝利した辰吉寿以輝(左)と引き揚げる父の辰吉丈一郎(撮影・上田博志)
大相撲裏話

「土俵の高さがあるから土俵際をうまくつかえる」

九州場所の土俵と土俵下

九州場所は、多くの休場者が出てしまった。幕内では取組中のケガもあった。特に友風と若隆景は土俵から落ちた時に負傷し、休場を強いられた。

土俵の高さは、埋め込まれた俵の上部まで60センチになるように造られている。俵を除けば、土俵の土の部分から下までは約55センチだ。ならば、土俵を低くすればいいのか? 親方衆に聞いてみた。

九州場所の土俵下は全6場所のうちでもっとも柔らかい素材が敷かれており、国技館よりも幅が広い。二子山親方(元大関雅山)は「いろんな意見がある。でも、条件は昔から変わっていない。東京より幅が広いから、むしろ着地しやすい。今場所はたまたまかなとも思う。まったくケガがない場所もありますから」と指摘する。浅香山親方(元大関魁皇)は「あの高さは、ケガをしない高さで造られている。受け身が取りやすい高さでもある。ケガをするのは何かが足りないからでしょう。体の鍛え方…、基礎運動をしっかりせずに体を大きくするとケガをする」と証言した。

立浪親方(元小結旭豊)は「高さがない方がケガはしないんじゃない? 今回の友風も若隆景も高さがなければ、ケガはしてないでしょう」と話し、「ケガのことだけ考えるなら、土俵の外をもっと広くしてもいいかもしれない」とユニークなアイデアを口にした。

一方、あの土俵の高さにはいくつものメリットがある。

土俵際に技を仕掛けて行司泣かせだった安治川親方(元関脇安美錦)は「土俵の高さがあるから、土俵際をうまくつかえる」と話す。高さがあれば片足を残し、もう片方の足を宙に浮かせて粘ることができる。業師らしい考えだ。「平らだと審判から見えないところもある。お客さんは見やすい。でも、落ちてケガすることもあるから、どっちがいいとは言いにくいかな」。

玉ノ井親方(元大関栃東)は「高いから、怖いといえば怖い。でも、真っ平らよりは見やすさもあるし、ずっとこれでやってきたわけだから。攻めていけばケガをする可能性は低くなるね」。ケガは見たくないが、あの高さがあるからこそ、迫力ある攻防が見られる。力士のすごさを実感できる舞台でもあるのだ。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

九州場所4日目、取組後に痛そうな表情を見せる若隆景
プロレスの月曜日

「チーム200キロ」の“Wぎゅん”を描いてみた!

元画学生の記者高場がプロレスラーを描き、その魅力を探る企画第3弾のモデルは人気急上昇のタッグ“チーム200キロ”こと橋本千紘(27=センダイガールズ)と優宇(28=EVE)。描き応えのある2人の体とキュートさに魅了され、取材後にもう1枚じっくり描いてしまいました。【取材・構成・絵=高場泉穂】

デッサンを終えた高場記者(中央)は「チーム200キロ」の橋本千紘(左)、優宇と「ぎゅん」のポーズで記念撮影(撮影・鈴木みどり)

今回のモデルは女子プロレス界で話題の「チーム200キロ」。優宇いわく「1人暮らし用冷蔵庫みたいな、世界的にも珍しい体形」。見ているだけでなぜか幸せな気持ちになる2人の姿を描いてみたいとオファーすると快諾。11月某日某所でデッサン会を開いた。

★アイドル風(5分)

試合のコスチュームに着替えた2人に「なかなか普段しないポーズを」と注文。台の上に背中合わせで座り、正面を向くアイドル風? のポーズに決まった。いざ鉛筆を紙に走らせると、体のラインの丸みを追うのが面白い。開始前は「このポーズは楽」と笑っていた2人が次第に「背中が熱い…」「汗が…」ともじもじし始めた。私は必死に手を動かす。2人分の体を大まかに捉えるだけであっという間に時間切れとなった。

高場記者が描いた「チーム200キロ」橋本千紘と優宇のWぎゅん

★Wぎゅん(5分)

今度は橋本のトレードマーク「ぎゅん」のポーズを並んでやってもらうことにした。「せーのー『ぎゅん』」でスタート。すぐに「ぐっ、きつい…。トレーニングですね」(橋本)と2人の腕がぷるぷるし始めた。私の目に入ってくるのは立派な足と、上を向くことで見えてくる顎から首にかけてのなだらかな形。全身を2人分なので時間が足りない。面白い姿なので、おかわりで5分描かせてもらうことにした。

「チーム200キロ」の橋本千紘(左)、優宇(中央)をデッサンする高場記者(撮影・鈴木みどり)

★Wぎゅん2回目(5分)

ポーズが始まると優宇は天井のまだら模様をみながら「数えようかな…」。それほど同じ体勢を5分キープするのはきついようだ。申し訳ないと思いながら必死にかき進めると、次第に形が取れてきた。腕が段々下がってくると、「こま犬みたいになってないですか?」と優宇。笑いをこらえながら残り数分集中し、全体を何とかかききった。

鍛えた筋肉の上についた肉は2人とも柔らかそうで、肌の表面も美しい。さらにきちんとなぞってみたいと思い、帰宅してからもう1枚じっくり描いてみた。なぜかわいいと感じるのか。それは2人の顔にも理由があると気付いた。一般社会ではなかなかお目にかかれない丸みと、くしゃくしゃした笑顔。それが地方のゆるキャラ的な不思議な魅力を醸し出す。

◆橋本千紘(はしもと・ちひろ)1992年(平4)7月1日、福井県坂井市生まれ。東京・安部学院高3年でアジアジュニア選手権67キロ優勝、全日本選手権3位。日大卒業後、センダイガールズ入団。15年10月デビュー。得意技オブライト。158センチ、88キロ。

◆優宇(ゆう)1991年(平3)7月19日、千葉県船橋市生まれ。小学校から柔道を始め、高校2年時には関東大会2位。15年に東京女子の練習生となり、16年1月デビュー。18年12月に退団し、19年4月から英国団体プロレスリングEVE所属。得意技ラストライド。156センチ、90キロ。

大相撲裏話

暴力はいけないこと、託された次郎の呼び上げ

呼び出しの次郎(撮影・小沢裕)

今場所から三役呼び出しの次郎(59)が、結びの一番を含む最後の2番を呼び上げている。立呼び出しの拓郎(63)が不祥事をきっかけに退職したためだ。次郎は「まれに結びが不戦になると、最後の一番を呼び上げることはこれまでもありました。結びの一番は、気分的にいつもと違う感じがあります。まさかこういうことになるとは、思ってもいませんでした」と話した。

呼び出しのトップだった拓郎は10月の秋巡業中、客席で食事をしていた序二段呼び出しに「こんなところで食事をするな」と注意し、頭部を拳で1回殴った。さらに近くにいた幕下呼び出しに「兄弟子なんだから、ちゃんと見てやらんかい」と、背中を1回たたいた。2人にけがはなかった。幕下呼び出しが協会職員に暴力を報告して発覚した。

日本相撲協会が科した処分は、2場所出場停止。しかし、拓郎は退職の意思を固め、慰留を振り切って角界を去った。

退職が決まる前、拓郎から次郎に連絡があった。「九州は行けなくなるから、頼むな」。それきり、電話はない。退職届が受理されたことは、巡業部長の春日野親方(元関脇栃乃和歌)から聞いた。

拓郎に代わって呼び出しをまとめる立場になった次郎は九州場所前の土俵築の時、福岡国際センターの支度部屋に呼び出し全員を集めた。暴力はいけないことを再確認した。「今の時代、協会を挙げて暴力を追放しようと取り組んでいる。感情の高ぶりがなかったにせよ、こういうことはなしにしようと、確認し合いました」。

拓郎には世話になった。拓郎と同じ三保ケ関部屋に、3年遅れて1978年3月に入門。三保ケ関部屋の消滅にともない、2013年にともに春日野部屋に転籍した。40年以上の付き合いがある。「相撲界に入ってからの力士との生活、呼び出しの生活など、全部教えてくれました。すべて一緒でしたから」。そんな兄弟子が突然いなくなった。

拓郎の指導ははたして暴力なのか? 相撲ファンの間でも意見は分かれている。次郎が複雑な思いを口にすれば、暴力肯定と誤解されかねないため、多くは語らない。思いは胸にとどめ、土俵に上がっている。「(拓郎とは)これからまた話す時が来ると思いますよ」。そんな思いを知りつつ次郎の呼び上げに耳を傾けると、いつもと違って聞こえてくる。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

1年で大関陥落4度…新旧交代の予感、新大関誕生か

高安(2019年11月10日撮影)

大関陣が慌ただしい1年となった。高安が大関から陥落することが決定。現行のかど番制度となった69年名古屋場所以降、大関からの陥落は24度目になる。74年には当時大関だった清国と大麒麟が引退、大受が2場所連続の負け越しで関脇に陥落し、一気に3大関がいなくなったことはあるが、この1年も貴景勝(1場所で返り咲き)や2度陥落した栃ノ心を含めると4度も陥落があった。

大関からの陥落者が多い年は、新大関が誕生するケースも多い。琴奨菊、照ノ富士が陥落した17年は大関高安が誕生し、今年も貴景勝が大関昇進を果たした。3大関がいなくなった前述の74年は、北の湖が関脇から横綱まで昇進した。

今場所中、世代交代の波について問われた横綱白鵬は「時代が動いているね」と指摘した。貴ノ浪らが大関から陥落した00年に、入れ替わるように昇進した元大関雅山の二子山親方も「今は上位の実力が拮抗(きっこう)している。来年あたりには新旧交代となるんじゃないか」と予想した。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

右の長距離砲VS「キングコング」再戦WBCヘビー

42戦41勝(40KO)1分けという驚異的なレコードを誇るWBC世界ヘビー級王者、デオンタイ・ワイルダー(34=米国)が23日(日本時間24日)、米国ネバダ州ラスベガスで元WBA暫定王者で現WBC3位のルイス・オルティス(40=キューバ)を相手に10度目の防衛戦を行う。ワイルダーは昨年3月、7度目の防衛戦でオルティスと対戦し、ダウン寸前の窮地を脱して10回TKO勝ちを収めている。今回も最重量級らしい迫力のある攻防が見られそうだ。

ワイルダーは身長201センチ、リーチ211センチと大柄だが、体重は97キロ~104キロとヘビー級にしては常に軽めだ。ワイルダーとの初戦時、オルティスは約109キロ、V8の相手だったタイソン・フューリー(31=英国)は約116キロ、V9戦の相手は約115キロもあった。08年11月にプロデビューしてから11年、ワイルダーが相手よりも重い体重でリングに上がったことはわずか7回しかない。

それでも1度も負けていないだけでなく、95パーセント超のKO率を残しているのだから驚きだ。恵まれたリーチを生かしたスピーディーな左ジャブで距離を測り、相手のガードの間を割って右ストレート一閃(いっせん)。この攻撃パターンで多くの猛者をキャンバスに叩きつけてきた。粘る相手には強引ともいえる左右の連打を叩き込んで戦闘不能状態に追いやってきた。

そんなワイルダーだが、プロになって2度、敗北寸前まで追い込まれたことがある。最終回にダウンを奪って辛うじて引き分けに持ち込んだフューリー戦と、20カ月前のオルティス戦だ。特にオルティスとの初戦は厳しい戦いだった。ワイルダーは5回に軽いダウンを奪って優位に立ったものの7回に猛反撃に遭い、あわやレフェリー・ストップかというほどのダメージを負っている。態勢を立て直し10回に2度のダウンを追加してけりをつけたが、危ない試合だった。

その後、ワイルダーが2戦1勝1分けなのに対しオルティスは世界ランカーらを相手に3連勝(2KO)を収めている。

オルティスはアマチュアで368戦349勝19敗の戦績を残したあと30歳でプロに転向した遅咲きの選手で、15年から16年にかけてWBAの暫定王座に君臨したこともある。

プロ戦績は34戦31勝(26KO)1敗2無効試合。ワイルダーにはおよばないがKO率は76パーセントと高い。スピードとスキル、強打を併せ持ったサウスポーで、「キングコング」というニックネームがある。勝利のあと自らの胸を叩くパフォーマンスは有名だ。

実際に拳を交え10回まで戦ったことで、ともに相手の長所と弱点は分かっているはず。

現有戦力に加え初戦の反省と研究が今回の再戦のカギになりそうだ。それでも、オッズが初戦の11対4から9対2に広がっているようにワイルダー有利は揺るがない。右の長距離砲が序盤で火を噴く可能性もありそうだ。

なお、ワイルダー対オルティスの2週間後には、サウジアラビアのリヤド近郊ディリヤでWBA、IBF、WBO3団体統一世界ヘビー級タイトルマッチ、アンディ・ルイス(30=米国)対アンソニー・ジョシュア(30=英国)が行われることになっている。この2試合で最重量級の勢力図に変化が起こるのか、それとも安定化に向かうのか。まずは日本時間24日にラスベガスで行われるWBCタイトルマッチに要注目したい。

リングにかける男たち

井上尚弥PFP3位に 努力の天才は世界一も近い?

ドネアを破りWBSS優勝を果たした井上尚弥はアリ・トロフィーを掲げる(2019年11月7日撮影)

世界で3番目だ。2団体統一王者の肩書なんて、もうどうでもいい!? 今や階級は17あり、主要でも4団体あり、暫定、スーパー、ダイヤモンドにフランチャイズという訳わからない王座まである。その中で全階級通じての最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で、井上尚弥がトップ3入りした。

1922年創刊の米ザ・リング誌が選定した。そもそもPFPは50年代にザ・リング誌の初代編集長フライシャーによる造語。最も信頼されるPFPで、世界で3本の指に入った。

5階級制覇王者ドネアとのワールド・ボクシング・スーパー・シリーズを制した。判定は3度目で、12回では3年ぶり2度目も文句のない勝ち。1位アルバレス、2位ロマチェンコに続く。電撃KOとはいかなかったが、衰えどころかさすがのすごさを見せたドネアと好勝負、名勝負。評価を上げるには十二分だった。

フジテレビでは井上戦中継で最高視聴率15・2%を記録した。裏番組は「ドクターX」と人気女優には負けた!? なんとNHKBSでも生中継され、WOWOWでも後日に本人出演で放送。「にわかファン」といかずとも、世間への認知も一気に広まったはずだ。

想定外がいくつもあった。セミで弟拓真が王座統一に失敗した。一家で初黒星に心穏やかではなかった。さらにカットしたのも、鼻血も初めて。あれだけ打たれたのも。のけ反り、ゆがむ顔は初めてで、クリンチにいく姿も。パンチが空を切って大きくどよめく。まれに見る技術戦を制した。

11回、ノニト・ドネアからダウンを奪い勝利かと思われたが相手が立ち上がりあぜんとする井上尚弥(2019年11月7日撮影)

決定打は11回の左ボディー。ドネアが背を向けると、主審がなぜか井上を制した。ドネアはコーナーへ行って手をついた。残り1分49秒。カウント9で立ったが残り1分35秒。14秒がすぎていた。明らかなロングカウントでKO勝ちのはず。アクシデントはまだあり、それが激戦を生んだとも言えた。

この大会はド派手な演出がある。2人はお立ち台に上り、リング周囲からライトアップされた。その装置設備で記者席はリングサイドではなく、アリーナ席最後列。正直よく見えず、しばしば天井の大型モニターを見上げた。ボクシング記者の醍醐味を奪われた。

2回を終え、右目を流血しながら父・井上真吾トレーナー(右)と話をする井上尚弥(2019年11月7日撮影)

あとで傷はザックリ、流血もあれほどだったと分かり、びっくりだった。2回にもらった必殺の左フック。右眼窩(か)底と鼻の2カ所を骨折していた。「ドネアが二重に見えた」絶体絶命のピンチも、タフさ、ポイント狙いに切り替える対応や戦術の能力も証明した。

トップ3入りは世界のスーパースターの仲間入りとも言える。そこに影のヒーローもいた。傷を応急処置した佐久間史朗トレーナー。カットマンとして傷にガーゼを当て、ワセリンで止血処理した。鼻血には綿棒。5針縫う傷だったが3回はピタリと血は止まった。8回に再び流血も9回も止まっていた。

ボクサーは相手の血を見ると燃えるそうだ。傷口を狙うのも作戦で、ドクターストップの可能性もある。その大ピンチを救った。選手は似ている「ガリガリ君」と呼ぶ佐久間トレーナー。「生きて帰れないんじゃないかと思った」とあとで言ったが、見事な腕だった。

試合後にはNHKの「プロフェッショナル」でも放送された。親子で「天才ではない。努力している」と強調していた。あの努力は確かで並大抵ではないが、天才が努力していると思うのだが。あの激闘勝利の余韻はまだまだ続くが、世界一になる日が待ち遠しい。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

互いの健闘を称え合う井上尚弥(右)とノニト・ドネア(2019年11月7日撮影)

大相撲裏話

夢道鵬が祖父・大鵬の化粧まわしで新序出世披露

新序出世に臨む、大鵬の孫で幕下納谷の弟の夢道鵬(撮影・河田真司)

元横綱大鵬の孫で、元関脇貴闘力の四男の夢道鵬(むどうほう、18=大嶽)が、偉大な祖父の化粧まわしを締めて、新序出世披露に臨んだ。大鵬の地元・北海道で有名な、すずらんがあしらわれた化粧まわしは、兄で幕下の納谷も昨年初場所の新序出世披露で締めたもの。2人目の「大鵬の孫」として角界入りした夢道鵬は「気持ちが引き締まる。これから頑張らないといけないと、あらためて思った」と、初々しく話した。

夢道鵬について、恩師で多くの幕内力士を輩出する埼玉栄高の山田監督は「プロの体になれば化ける可能性がある」と、将来性を高く評価する。183センチ、135キロの体を一回り成長させ、十両、幕内へと番付を上げることを期待した。

ところが今場所の前相撲で、夢道鵬は1勝2敗だった。再出世力士に勝っただけで、今場所初土俵の他2人に負けた。モンゴル出身の出羽ノ龍(出羽海)が3勝、埼玉栄で夢道鵬の1学年上の二本柳(阿武松)が2勝1敗。半年間の研修などを経た出羽ノ龍は「やっと前相撲を取れた」と笑った。二本柳は昨夏に負った右膝の大けがからの再起だけに「化粧まわしの重みを感じた」。逸材ぞろいの3人。数年後「伝説の新序出世披露」となる日が来るかもしれない。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

プロレスの月曜日

Jリーガー福森、憧れ内藤ポーズで懸け橋になりたい

北海道コンサドーレ札幌DF福森晃斗(26)のパフォーマンスがプロレスファンで話題を呼んでいる。国内3大タイトルの1つ、ルヴァン杯決勝(10月26日)でゴールを決めると新日本プロレス内藤哲也(37)のおなじみのポーズを繰り出した。国内屈指のレフティーと制御不能な男の交流は、サポーターをきっかけに始まった。

帽子&パーカ&Tシャツのグッズを着て内藤のポーズを決める福森(撮影・西塚祐司)

左手で目を見開き右拳を天高く突き上げた。川崎フロンターレとのルヴァン杯決勝。福森は延長前半で弾丸FKを決めた。観客4万8119人のどよめきの中、大ファンである内藤のおなじみのポーズを披露した。試合はPK戦で敗れたが「大舞台で絶対やりたいと思っていたのでうれしい」。注目の一戦でのパフォーマンスは話題となった。

以前はプロレスに興味はなかった。だが昨年、内藤が出演したNHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」をきっかけに一気にハマった。今では新日本プロレスをネット視聴、特に内藤の試合はすべてチェック。7月の札幌大会で初めて生初観戦した。「もしお会いできたら何をしゃべっていいか分からない」と言うほどの憧れ。来年1月4、5日の東京ドーム大会のチケットは入手しておりオフの楽しみにしている。

内藤の決めポーズ

Jリーガーから見る内藤の魅力とは何か。「すごいとしか言えない。技もそうだけど、むちゃやっちゃう部分とかも」。内藤と身長はほぼ同じだが、体重は約30キロも下回る。「大きくてあんな動きができるんだと。俊敏性、ジャンプ力…すべてでパーフェクト」。さらに挑発や反則などで何が起こるかわからないワクワク感もある。「次も見たい! と思う。観客を楽しませる部分はサッカーも同じなのでプロ意識を学んでいる。こちらは試合中に挑発したらイエローカードになりますけど」と話す。

思わぬ形で交流を持った。札幌のサポーターが内藤に『福森さんが内藤さんのファン』という手紙を送った。これがきっかけでツイッターを通じて直接連絡を取り合う間柄になった。パフォーマンスを相談すると快諾を頂き、8月の清水戦で初披露した。「本当に感謝。これからも得点を決めたら何回もやりたい」と意気込む。

札幌DF福森

内藤は年明けに史上初の2冠に挑む。常に注目を集める存在は刺激だ。「プロレス界の内藤さんのように、サッカー界で知らない人がいない選手になりたい。自分があのポーズをしてサッカーとプロレス、お互いのファンが興味を持ってどちらも活性化できたらうれしい」。懸け橋になるべく、ゴールを狙い続ける。【西塚祐司】

◆福森晃斗(ふくもり・あきと)1992年(平4)12月16日、神奈川県生まれ。藤沢市・村岡中、桐光学園高を経て11年に川崎F入り。同年7月23日新潟戦でJリーグ初出場。15年から札幌に期限付き移籍、17年から完全移籍。183センチ、75キロ。利き足は左。血液型はAB。

大相撲裏話

自身の取組ナニで見る!?アプリ、アベマ、テレビ?

納谷(2019年3月20日撮影)

日本相撲協会公式アプリ「大相撲」の“進化”が、ネット上で話題を呼んでいる。今場所から幕下上位5番と十両の取組ムービーを視聴できるようになったからだ。対象は有料会員だが、これまで視聴できる取組は幕内に限定されていた。日本相撲協会の広報部は「お客さんにより良いサービスを届けられれば」と説明。NHKがネットで幕内の取組を配信する中、特色を出す形となった。

しかし、協会公式アプリの動画拡大はまだあまり知られていない様子。今場所幕下上位5番以内の取組に入ることが多い元横綱大鵬の孫、東幕下7枚目納谷は、自身の取組が協会公式アプリに上がっていることに話題が及ぶと「そうなんですか?」と目を丸くした。

力士が自身の取組を振り返る手段はさまざま。十両若元春は「母親から送られた動画を見てます」という。最近はスマホが主流だが、NHKの大相撲中継を録画し、部屋宿舎に戻ってから見返す関取もまだまだ多い。十両水戸龍は「アベマの録画機能で見てます」と、ネット中継を駆使。ただ「帰りの車で見ると頭の中が一日中相撲になるので、帰ってから見ます。気が張り詰めちゃうので」。関取の戦いは15日間。帰路くらいは少し、気を休めたい。【佐藤礼征】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

鳴戸親方に戻った「いいひざ」遠くない関取1号誕生

へそ付近から脂肪細胞を採取される鳴戸親方

11月13日は「いいひざの日」。力士は一般的に膝に負担がかかるため、持病を抱えていることが多い。元大関琴欧洲の鳴戸親方もその1人。両膝とも靱帯を痛め、特に右膝蓋(しつがい)骨脱臼は、引退の一因になった。引退後も階段の昇降も苦労するほど膝に痛みが残り、さまざまな治療に取り組んできた。それでも痛みはおさまらず、引退から約5年半たった今年9月、最先端の再生医療「幹細胞治療」に踏み切った。

関係者に東京・千代田区の「お茶の水セルクリニック」を紹介され、治療を始めた。まずは、へそ付近の皮膚を5ミリ切開し、少量の脂肪細胞を採取。約1カ月かけて治療の必要な数まで幹細胞を培養した。その後、増やした幹細胞を膝の関節に注入してもらった。鳴戸親方は「以前より痛みがだいぶやわらいだ。おかげで弟子たちの稽古も順調。今場所もまわしを締めて土俵に上がっています。順調に回復すれば、現役復帰もできそうなくらい」と手応えを口にしている。幹細胞治療は、幹細胞独特の動きにより、人間が持っている正常の機能に再生させるよう促す治療法。自身の体内から取り出した幹細胞を使用するため、リスクも少ないという。

鳴戸親方は17年4月に独立して鳴戸部屋を興して以来、自ら胸を出して弟子を育ててきた。稽古をつける時に膝を亜脱臼することが多かったが、今はその苦しみから脱出しつつある。部屋頭の三段目元林は、九州場所5日目を終えた時点で3勝0敗。序ノ口デビューから17連勝中でもある。近大出身の逸材は、スピード出世の真っただ中だ。

師匠が「いいひざ」を取り戻せば、さらに効果的に稽古をつけることができる。関取1号が誕生するのも、そう遠くはないかもしれない。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

群雄割拠のミドル級 年末村田戦までの動きに注目

WBA世界ミドル級王者の村田諒太(33=帝拳)は12月23日、同級9位のスティーブン・バトラー(24=カナダ)を相手に横浜アリーナで初防衛戦を行うことになっているが、そのミドル級の周辺状況が大きく変化しつつある。

村田は2年前に初めてWBA王座を獲得したころから近未来の対戦希望相手として、世界的なスター選手のサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)とゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)の名前を挙げていた。しかし、アルバレスはミドル級王座を持ったまま昨年12月にスーパーミドル級のWBA王座を獲得し、さらに今月2日にはWBO世界ライト・ヘビー級王座に挑戦。体格差に悩まされはしたもののセルゲイ・コバレフ(36=露)を11回KOで破り戴冠を果たした。これによりアルバレスは160ポンド(約72・5キロ)、168ポンド(約76・2キロ)、175ポンド(約79・3キロ)の3階級の王座を同時に保持することになった。常識的に考えてアルバレスがミドル級に戻ってくる可能性は極めて低くなったといえる。

一方、昨年9月にアルバレスに惜敗して無冠になっていたゴロフキンは10月にIBF王座決定戦で辛勝、返り咲きを果たしている。今後、将来的な村田の標的はゴロフキンに絞られるものと思われる。

こうしたなか12月7日(日本時間8日)、米国ニューヨークでWBA暫定王座決定戦が行われることになった。元暫定王者で現1位のクリス・ユーバンク・ジュニア(30=英)と3位のマット・コロボフ(36=露/米)が団体内三つ目のベルトを争うのだ。スーパー王者にアルバレス、正規王者に村田が君臨しているにもかかわらず、もうひとり王者を増やそうというWBAのやり方には首を傾げたくなる。ただ、この先にWBAが正規王者と暫定王者に統一戦を命じる可能性があるだけに注視していく必要はあるだろう。

ユーバンク対コロボフのイベントでは、メインでWBCタイトルマッチが組まれている。

王者のジャモール・チャーロ(29=米)が5位のデニス・ホーガン(34=アイルランド)を迎え撃つものだが、チャーロの3度目の防衛が濃厚とみられている。

また元WBA、IBF王者で現WBA2位のダニエル・ジェイコブス(32=米)の動きにも注目したい。アルバレス、ゴロフキンと戦っていずれも12回判定で惜敗しているジェイコブスは12月20日(日本時間21日)、米国アリゾナ州フェニックスで元WBC王者のフリオ・セサール・チャベス・ジュニア(33=メキシコ)とスーパーミドル級12回戦を行うことが決まった。これを機に上の階級に転向するのか、あるいはミドル級に留まるのか気になるところだ。

村田対バトラーの一戦もミドル級トップ戦線の動きのひとつといえる。ロブ・ブラント(29=米)との再戦で豪快な2回TKO勝ちを収め王座返り咲きを果たした村田と、30戦28勝(24KO)1敗1分のバトラー。強打者同士の対決がいまから楽しみだ。

大相撲裏話

木崎海 首里城が焼けて悲しむ故郷のために

九州場所2日目、若元春(左)を押し出しで破る木崎海

変わり果てた故郷の象徴的存在に、ひたすら驚いた。首里城の火災から10日以上がたった。沖縄・うるま市出身で沖縄勢唯一の関取、西十両10枚目木崎海(24=木瀬)は、10月31日に首里城が燃えたことを知人から教えてもらい「びっくりして言葉も出なかった」とあぜん。それでも「地元を元気づけるためにも、今場所は頑張らないといけない」と、すぐに前を向いた。

大学時代、故郷に戻って首里城に足を運んだことが1度あった。「小学校の頃も歴史で首里城について勉強した。懐かしかったですね」。沖縄の数ある観光地でも「1番はやっぱり首里城」。存在が当たり前すぎるため、そのときは写真も撮り忘れてしまった。「できたらもう1度つくってほしいです」。

場所後の12月14、15日には地元うるま市で冬巡業が行われる。7月後の名古屋場所後には沖縄に戻り、PRイベントに参加した。自己最高位で迎えた今場所は連勝で発進。首里城の焼失に悲しむ人たちのためにも「何かで役に立てれば」。新入幕を目指して、沖縄を活気づける覚悟だ。(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

リングにかける男たち

中邑真輔をさらに魅せる日本のプロレス知り尽くす男

名コンビぶりを発揮するインターコンチネンタル王者中邑(左)とゼイン(C)2019 WWE, Inc. All Rights Reserved

プロレス界にはリングに立つマネジャー、代理人、スポークスマンがいる。その呼称はいろいろあるものの、選手の存在感を際立たせるために欠かせない人材だ。そして今夏以降、WWEインターコンチネンタル(IC)王者中邑真輔(39)には、サミ・ゼイン(35)という存在がいる。

さかのぼること8月の米スーフォールズ大会。スマックダウンの人気コーナーで、ザ・ミズがホストを務める「ミズTV」にゲストとして出演したゼインが「オレの助けを必要としている男がいるんだ」と、中邑は呼びこまれた。

ミズから「IC王者なのに、なぜサミ・ゼインとつるんでいるんだ?」と疑問を投げかけられる中邑だが無言のまま。代わりにゼインは「シンスケは日本人でアーティストだが、心の中のメッセージを完全に伝えられないことに苦痛を感じているんだ。オレにはその気持ちがよくわかる。シンスケと話したければ、オレを通せ」と切り出した。

ゼインの一方的な説明に疑問を感じたミズに念押しで「本当にゼインに代弁させるつもりか?」と説得された中邑は無言のまま、ミズを制し、ゼインとの連係でKOしてしまった。以後、中邑はインタビューの質問には、わざと日本語を使用し、残りはゼインが「代弁」。WWEデビュー戦の対戦相手との連係で、試合時にはセコンドにも招いてIC王者ロードを突き進む。

リング上でゼイン(右)とともにアピールするインターコンチネンタル王者中邑(C)2019 WWE, Inc. All Rights Reserved

ゼインはWWE加入以前のROH時代には丸藤正道、飯伏幸太らと対戦し、ドラゴンゲートやDDTで来日済み。日本のプロレスを知り、プロレス技術も抜群。かつコメディアンとしても活動する一面も併せ持つ。日本人を知り、日本のプロレスを知る冗舌なヒゲ男のアシストは中邑の雰囲気にさらなるエッジを効かせている。

今、WWEヘビー級王者ブロック・レスナーにはポール・ヘイマンが代理人を務める。WWE加入したレスナーのライバルで元UFCヘビー級王者のケイン・ヴェラスケスには、レイ・ミステリオJr.がセコンド役を務める。過去にはジ・アンダーテイカーやケインにはポール・ベアラーがマネジャーとして登場。国内ではストロングマシンに悪役マネジャーの将軍KYワカマツが付き、最近ではオカダ・カズチカにスポークスマンとして外道がついたことは記憶に新しい。いつもブレークする選手には「冗舌な助っ人」が不可欠なのだ。

英語が流ちょうな中邑にとって、自身の言葉で表現できないもどかしさも時にあるだろう。一方で、中邑には他のレスラーにはマネできない独特のパフォーマンス力を持っている。入場からファンを盛り上げ、リングでも「魅せる」ことができる。17~18年にあと1歩届かなかったWWEヘビー級王座への道。IC王者としての地位を確立しつつあるゼインとの絶妙コンビが、中邑にとって今後の起爆剤になるのではないかと想像している。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

セコンドにゼイン(左)を入れ、インターコンチネンタル王座の防衛に成功する同王者中邑(C)2019 WWE, Inc. All Rights Reserved