ヘビー級統一王者と前王者再戦 再び番狂わせあるか
ヘビー級の3団体統一王者のアンディ・ルイス(29=米)と、前王者アンソニー・ジョシュア(29=英)のダイレクト・リマッチが12月7日、サウジアラビアの首都リヤド近郊のディリヤで行われることになった。両者は今年6月1日に米国ニューヨークで対戦し、圧倒的不利とみられたルイスが最初のダウンから立ち上がって4度倒し返し、7回TKO勝ちで戴冠を果たしている。ジョシュアが雪辱を果たすのか、それともルイスが返り討ちにするのか。この注目の試合には「CLASH ON THE DUNES(砂丘の激突)」というイベント・コピーがつけられている。
今年6月の初戦は、ジョシュアに挑戦するはずだった選手がドーピング違反で出場不可能となり、代役としてルイスに白羽の矢が立った経緯があった。試合まで1カ月を切った時点でのことだった。ルイスは33戦32勝(21KO)1敗という好戦績を残していたが、22戦全勝(21KO)の3団体王者には歯が立たないと見られていた。戦前のオッズは16対1でジョシュア有利というものだった。
はたして3回、ジョシュアの左フックでルイスがダウン。ダメージは深刻ではなかったが、関係者やファンの多く、そしてジョシュア自身もそのまま王者のペースで試合が進むと思ったはずだ。ところがジョシュアが仕留めにかかったことで両者の距離が縮まり、これを機に戦況が一変。寸胴体型のルイスの回転の速い連打が筋骨隆々の王者を捉え、たちまちジョシュアから2度のダウンを奪う。7回、さらにルイスはジョシュアから2度のダウンを奪いTKO勝ちを収めた。
再戦の舞台としてはニューヨークや英国など複数の会場が候補に挙がっていたが、サウルアラビアの投資家グループが1億ドル(約106億円)を提示してイベントを誘致したと伝えられる。
ところで、ヘビー級では過去にも何度か大番狂わせが起こってきた。1978年には10対1で有利とみられたモハメド・アリ(米)がレオン・スピンクス(米)に敗れ、1990年には東京ドームでマイク・タイソン(米)がジェームス・ダグラス(米)に10回KO負けを喫したこともあった。このときのオッズは42対1だった。2001年には9度の防衛を重ねていた絶対王者、レノックス・ルイス(英)が20対1で有利とみられていたにも拘らずハシム・ラクマン(米)に5回KOで敗れる大波乱もあった。アンディ・ルイスの殊勲はレノックス・ルイス対ラクマン以来の衝撃だったといえる。
ただ、興味深いデータもある。アリは7カ月後の再戦でスピンクスに雪辱を果たして王座を奪回。再戦ではないが、タイソンに勝ったダグラスは8カ月後の初防衛戦でイベンダー・ホリフィールド(米)にあっさり3回KO負けを喫してしまう。レノックス・ルイスは7カ月後、ラクマンとの再戦で4回KO勝ちを収め王座を取り戻しているのだ。ちなみにアリ対スピンクス再戦、レノックス・ルイス対ラクマン再戦のオッズはいずれも5対2
で前王者有利。ダグラス対ホリフィールドは9対5で挑戦者有利と出ていた。そして実際の試合もそのとおりの結果に落ち着いている。
アンディ・ルイス対ジョシュア再戦のオッズは11対4でジョシュア有利と出ている。「初戦はあくまでもジョシュアのポカ、今度こそ実力どおりの結果になるだろう」という予想が大勢を占めているのだ。再び番狂わせが起こるのか、それともジョシュアが主役の座に返り咲くのか。年末が待ち遠しい。