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大相撲裏話

霧馬山、憧れ横綱が突然兄弟子に 手本身近に成長を

霧馬山

ブレークの予感が漂う若手の十両力士が、思わぬ形で“横綱の弟弟子”になった。西十両4枚目霧馬山(23=陸奥)は目を丸くする。

「最初聞いたときは『え?』って思った。本当に急だったから」

先月16日に元関脇逆鉾の井筒親方が死去したことにより、横綱鶴竜(34)ら井筒部屋の力士3人と床山が陸奥部屋へ移籍。同じ時津風一門で連合稽古、巡業などで声をかけてもらったことはあったが、あまりの“急接近”に「今でもあんまり信じられませんね」と笑った。

23歳の霧馬山は、鶴竜と同じモンゴル出身。まだモンゴルに住んでいた小学生の頃、テレビで放送される大相撲中継で当時前頭だった鶴竜が相撲を取っていたことを覚えている。

「(幕内で)戦ってみたかったけど、教えてもらって強くなれる方がいいかな」

184センチ、129キロと細身ながら四つ身で力を発揮し、春場所の新十両昇進から着実に番付を上げて幕内を射程圏にしていた。そんなホープの上に、若手力士への指導に定評のある鶴竜が兄弟子として君臨する。

鶴竜も言葉に熱を込めた。

「(陸奥)親方に厳しく指導しろと言われているんでね。(霧馬山は)まだ体重で十両の上の方に負けているところはあるけど、いいものは持っていると思う」

7日に富山・砺波市で行われた秋巡業、朝稽古で霧馬山はおもりを持ったスクワットをするように指示された。「最初は軽いと思ったんですけど」と楽々とこなしていくが、回数をこなしていくうちに太ももが悲鳴。「もうめちゃくちゃきつかった。横綱にちゃんとした(スクワットの)やり方を指示されて、すごく効くんです」。

常に体を動かすことが性分だ。場所中も朝は20~30番相撲を取る。その日の取組が終わっても、動き足りない。部屋に戻っても40~50分、四股やすり足などの基礎運動で汗を流す。

「動いていた方が、体が軽く感じるというか、体のクスリになる」

稽古熱心な23歳は、最高のお手本が近くにいる今後を見据えて言った。

「横綱に教えられたことは他の人に言いたくないな。みんな強くなったら困るから」

強くなることを確信するように、期待に胸を躍らせて、霧馬山はちゃめっ気たっぷりに笑った。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

168センチ令和初の「高校横綱」颯富士に注目

19日、新序出世披露に臨む一番出世の颯富士

師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が「筋トレが好きで稽古も真面目。相撲が好きなんだろうね」と、期待を含んだ笑みを浮かべた。8日目の19日に新序出世披露に臨んだ、新弟子の颯富士(本名・大桑元揮、18=伊勢ケ浜)のことだ。突き押しを武器に静岡・飛龍高で昨年の高校総体を制し、令和最初の高校横綱に輝いた逸材は「なるべく早く関取になりたい」と目を輝かせる。

身長168センチ、体重134キロ。両親がともに身長160センチに満たず「遺伝的に小さいのかもしれない」。大きくはないが、伊勢ケ浜親方は意に介さない。「横幅ががっちりしているのがいいよね」。兄弟子には幕内に定着している照強ら小兵がいる。師匠は「小さくて頑張ってるのはたくさんいる」と強調した。

幕下の狼雅、北の若ら近年、角界に進んだ元高校横綱は順調に番付を上げている。「高校横綱」の肩書で注目を集める立場にあるが、師匠は「いいじゃん、いいじゃん。それを励みにすればいい。それを自信にしている感じがするよ」と頼もしそう。3人の関取を抱える部屋に、新たな息吹がもたらされるか。【佐藤礼征】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

新王者ロペス ロマチェンコとの4団体統一戦匂わす

昨年12月14日、米国ニューヨークで行われたIBF世界ライト級タイトルマッチで22歳の新王者が誕生した。衝撃的な2回TKO勝ちで戴冠を果たした男の名はテオフィモ・ロペス(米国)。16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)に出場後にプロ転向を果たしたロペスは、15戦全勝(12KO)と破竹の快進撃を続けている。早くも同じライト級の3団体王者、ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)との頂上対決も噂されている。今回は2020年にさらなる飛躍が期待されるロペスを紹介しよう。

ロペスは1997年7月30日、米国ニューヨークで生まれた。両親はカリブ海に面したホンジュラスの出身で、ロペスは姉ふたりに続く第3子だった。アマチュアで約170戦をこなし「だいたい150回は勝ったと思う」とロペスは話している。15年の全米大会や五輪予選を勝ち抜いたが、すでにポイント制でリオデジャネイロ五輪出場を決めている米国選手がいたため、ロペスは両親の故国、ホンジュラス代表として本戦に出場した。五輪ではライト級初戦で敗退、19歳でプロに転向することを決意した。

村田諒太(帝拳)や井上尚弥(大橋)も所属しているトップランク社と契約を交わして16年11月にプロデビュー。持ち前のパワーを前面に押し出した攻撃的なボクシングでKO勝ちを重ね、18年7月以降は元世界ランカーや現役の世界ランカーら5人を下してランキング1位に躍進。そのなかには東洋太平洋王座を11度防衛した中谷正義(井岡)に12回判定勝ちを収めた試合も含まれている。

IBFの指名挑戦者として挑んだ12月の試合では、前評判の高かった王者、リチャード・コミー(ガーナ)から右のカウンター一発でダウンを奪い、再開後に連打を叩きつけてレフェリー・ストップに持ち込んだ。期待を上回る鮮やかな戴冠劇だった。試合後、ロペスは「俺が次に誰と戦うか、みんな知っているよね」と、リングサイドで観戦していたロマチェンコとの対決を匂わせた。

そのロマチェンコは同じライト級のWBAスーパー王座、WBCフランチャイズ(特権)王座、WBO王座を保持しており、両者の試合が実現すれば4団体統一戦となる。ロマチェンコとも契約を交わしているトップランク社は、この注目カードを5月にも実現させる方向で動いていると伝えられる。五輪連覇、プロ3戦目で世界王座獲得、7戦目で2階級制覇、12戦目で3階級制覇を成し遂げている技巧派サウスポーのロマチェンコ(15戦14勝10KO1敗)と、左右のパンチに破壊的なパワーを秘めた強打者のロペス-4対1のオッズが出ているように先輩王者に分があることは間違いないが、22歳の昇竜が番狂わせを起こすことも十分に考えられるカードだ。

IBF世界ライト級王者、テオフィモ・ロペス、22歳。この名前を覚えておいて損はないはずだ。

大相撲裏話

大鵬の命日…重圧闘う孫納谷は多く語らずも胸に遺志

納谷(2019年11月12日撮影)

初場所8日目、1月19日は横綱大鵬の命日だった。亡くなってから7年。優勝32回を誇る大横綱。その名前はあまりに偉大ゆえに、遺志を継ぐ者たちは必死の思いで天国に朗報を届けようともがいている。

大鵬の孫の1人、納谷(19=大嶽)は、東幕下5枚目。入門から2年で、十両昇進まであと1歩。十分すぎるスピード出世だが、師匠の大嶽親方(元十両大竜)は、その宿命を思いやる。「ものすごいプレッシャーが本人にはあるでしょう。勝って当たり前だと思われ、負けても騒がれる。私もつい、ネットでエゴサーチしてしまう。勝てば『大鵬の孫はすごい』と言われ、負ければ『あんな部屋に預けるからだ』と書き込みがある」。

納谷は同じ一門の大関貴景勝の付け人を務め、勉強の日々を送る。この日は、元十両の白鷹山に寄り切られて2勝2敗。命日について聞かれても「あんまり、そういうのは気にしてないです」とポツリ。負けてしまえば、多くを語れない。

正月は大嶽部屋全員で墓参りをし、納谷は書き初めで「三役」と書いた。大鵬死去の日、中1だった少年は大志を胸に祖父の背中を追っている。【佐々木一郎】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

応援タオル、本格相撲字で一新 1番人気は朝乃山

「タオルの字、大きくなりましたよね」。13日の朝稽古後、人気力士の炎鵬がつぶやいた。先場所までは横綱、大関ら人気力士約10人しか取り扱っていなかった「力士応援タオル」が、今場所から幕内全42人分が販売されている(550円)。旧作より余白の少ない、大きな相撲字が印象的だ。

炎鵬の応援タオルを掲げるファン(撮影・柴田隆二)

相撲グッズを取り扱う「国技館サービス」によると、タオルを仕入れていた業者が廃業したため、自社で製作した。旧作のしこ名はパソコン内の「相撲字フォント」で入力されていたが、新作は幕内格行司の木村元基(51=湊)がしたためた本格的な相撲字になっている。元基は「他にも行司さんがいる中で光栄なこと」と謙虚に話した。発注されたのは昨年9月の秋場所前。本来の業務に当たる他の行司に気をつかい、行司部屋ではなく相撲教習所を借りて場所中の2日で書き上げた。「ちょっと大きく書きすぎたかな。種類が多いのは魅力的」と柔和に笑った。

国技館サービスによるとタオルの売れ行きは好調で、1番人気は新関脇の朝乃山。1日1000枚以上売れる日もあり、25歳の大関候補への期待値がうかがい知れた。【佐藤礼征】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

プロレスの月曜日

ビッグダディ三女の林下詩美 主要ベルト初奪取だ

スターダムの林下詩美(21)が、19日の9周年記念日大会(午前11時30分開始、後楽園ホール)でワンダー・オブ・スターダム王者星輝ありさ(24)に挑戦する。デビューした18年は大活躍も昨年は2度の指のけがで、それぞれ2カ月欠場ともどかしい日々を過ごした。団体主要ベルトの初奪取で3年目の再ブレークを狙う。【取材・構成=高場泉穂】

クールにポーズを決める林下(撮影・山崎安昭)

デビュー2年目の19年は林下にとって苦難の1年だった。ビッグダディ三女で柔道で鍛えたパワーを持つビッグ新人として18年は大活躍。勢いを継続していた4月に左手親指の付け根にあたる左母指基節骨を骨折し、2カ月欠場。復帰直後の9月、今度は右手小指を骨折。再び2カ月の欠場に追い込まれた。

2度とも手術で患部に針金を埋め込んだ。汗をかくと菌が発生する可能性があるため、医師からは術後しばらく運動を禁止された。「みんなの練習を見ているか、試合に行ってセコンドにつくだけ。1度目の時はリセットの時期と前向きに捉えられましたが、2度目は地獄でした」。もどかしい日々が続いた。

団体の大きな変化にも焦りを募らせた。スターダムは昨年10月17日、新日本プロレスの親会社株式会社ブシロードの運営下に入った。オーナーであるブシロードの支援により、露出が増え、今年1月4日の新日本東京ドーム大会にも提供試合で進出。他の選手がメディアに露出し、注目を浴びるのを林下は見ているしかなかった。「スターダムが大きくなって、人気が上がっているのを実感できた。その分、自分が中心にいられないことが悔しかったです」。

そんなたまったうっぷんを次のタイトル戦にぶつける。相手は18年に6年半ぶりに現役復帰し、トップスターへ駆け上がった星輝。団体の主要ベルトの1つ、ワンダー・オブ・スターダムを19年5月に初戴冠。キックを武器に8度防衛している絶対女王だが、林下は昨年8月の初シングル戦で勝利している。「星輝は意識がとぶような鋭い蹴りをもっているが、パワーは自分の方が上回っている。何回やっても結果は変わらないはず」と自信をみせる。

昨年12月から本気のダイエットも開始した。欠場の合間に体重は65キロから68キロに増量。66キロまで落としたが、さらに絞るため大好きなお菓子を禁止。さらに白米を抜くなど糖質オフも始めた。「チョコレートが大好きなんですが食べるのをやめて、最低砂糖3つは入れていた紅茶、コーヒーも無糖にして頑張ってます」。目指すのは、ベルト奪取にとどまらず団体のトップ。「20年は私の年にできたら」と言葉に力を込めた。

クールな表情を見せる林下(撮影・山崎安昭)

◆林下詩美(はやしした・うたみ)1998年(平10)9月14日、鹿児島県奄美市生まれ。18年7月にスターダム入団。同8月12日にジャングル叫女とのシングル戦でデビューし、引き分け。同11月にタッグタイトルのゴッデス・オブ・スターダム初戴冠。18年度プロレス大賞新人賞受賞。得意技はアルゼンチン式背骨折り。166センチ、66キロ。

大相撲裏話

将豊竜が会心の弓取り初白星 関取不在の秋田の星だ

弓取り式に臨む将豊竜(撮影・小沢裕)

反響は想像以上だった。前日3日目、結びの一番の後に行われる弓取り式を初めて務めた横綱鶴竜の付け人、東幕下23枚目将豊竜(23=時津風)のLINEに「おめでとう」「かっこいい」など100件超のメッセージが届いた。「『泣いた』って言葉もありました。照れくさいですね」と頭をかいた。

当初は初日から弓取り式を務める予定だったが、連絡ミスにより2日目までの印刷物が前任の三段目春日龍のままになっていた。それでも「特に意識しなかった」と落ち着き払っていた。昨年の4月から春巡業で少しずつ弓取り式を任され、経験を積んできた。前任の春日龍も「度胸はある。あとは慣れだけ」と太鼓判を押した。

相撲でも注目を浴びたい。初土俵は14年秋場所で大関貴景勝と同期。「去年は3回最高位を更新した。今年も更新しまくりたい」。秋田県出身で、同県は元関脇豪風(現押尾川親方)が引退して関取が不在。同県出身の元小結巴富士もかつて弓取り式を務めており「いいですね。僕も関取を狙っていきたい」と、ゲンの良さも力にするつもりだ。【佐藤礼征】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

日本ジム所属選手のホンモノ志向 海外世界戦楽しみ

日本のボクシング界は井上尚弥(26=大橋)や村田諒太(34=帝拳)をはじめ7人の世界王者(男子)を擁して2020年を迎えた。7王者の試合がすべて10月以降に集中していたこともあり次戦の具体的な日程は発表されていないが、今年はトップ選手の国外での試合が増えそうな気配だ。

以下のデータでも分かるように2010年以降、日本のジム所属選手の海外での世界戦は増加傾向にある。

<年  海外世界戦/世界戦総数 割合>

2010年     2/22  9%

2011年     5/26  19%

2012年     4/26  15%

2013年     11/34  32%

2014年     5/25  20%

2015年     9/28  32%

2016年     5/28  18%

2017年     14/40  35%

2018年     8/29  28%

2019年     10/27  37%

従来のWBA、WBCに加え13年4月からIBFとWBOに加盟したため日本のボクシング界は4団体時代に突入したが、世界戦総数は横ばい状態といえる。これは関係者が自制しているというよりも、年々、国内でのイベント開催が難しくなっているためと解釈した方がよさそうだ。19年に国内での世界戦は17試合あるが、そのうち11試合はダブル(2試合)、あるいはトリプル(3試合)での開催だった。単独(1試合)開催は6度に留まっている。

遡ること20年、畑山隆則(横浜光)対坂本博之(角海老宝石)のWBA世界ライト級タイトルマッチが行われた2000年を例に出すと、この年の日本のジム所属選手が出場した世界戦は14試合、そのうち海外での世界戦は1試合だけだった。しかも国内で行われた13度の世界戦はいずれも単独でのイベント開催だった。こうしたデータからも、日本のジム所属選手の海外での世界戦と、国内では同日複数開催が増加していることが分かる。この傾向は今後も変わらないだろう。

トップ選手たちの意識も大きく変化した。その典型が井上と村田だろう。ふたりともアマチュア時代から海外での試合を数多く経験しており、プロでも国外試合をこなしている。そんななかで自然と芽生えたのが“ホンモノ”志向だ。井上に至ってはプロ転向時から常に「強い相手と戦っていきたい」と口にしているほどだ。階級最強を決めるトーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」への参戦は、そんな井上の願望を満足させるものだったことだろう。

村田も格上とされるサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)やゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)らとの頂上決戦を見据えている。その流れのなかに海外進出が組み込まれているといっていい。

4階級制覇の井岡一翔(30=Reason大貴)、3階級制覇の田中恒成(24=畑中)、7度の防衛を果たしている寺地拳四朗(28=BMB)、2階級制覇の京口紘人(26=ワタナベ)、昨秋に2度目の戴冠を果たした岩佐亮佑(30=セレス)も上昇志向が強く、環境が整えば海外での世界戦に臨むことになりそうだ。遅ればせながら日本のボクシング界にも本格的なボーダーレス(越境)の時代がやってきたといえる。

2020年、日本のジム所属選手の出場する世界戦がどこで何度行われるのか、どんなドラマが生まれるのか楽しみだ。

大相撲裏話

幕下巨東がMLBプイグとぶつかり稽古で得たもの

初場所の一番相撲で黒星を喫し花道を引き揚げる巨東(撮影・小沢裕)

現役メジャーリーガーの稽古風景が話題を呼んだ。昨年12月、通算132本塁打のヤシエル・プイグ外野手(29=インディアンスFA)が自身のインスタグラムに1本の動画を投稿。まわしを締めず上半身裸でぶつかり稽古を行う動画の再生回数は、13日までに24万を超えた。舞台は玉ノ井部屋。当時プイグが来日中で、部屋関係者の紹介で「体験入門」に至った。

プイグに胸を出したのが西幕下43枚目巨東(29=玉ノ井)だった。野球少年だった巨東。福島・富岡一中時代は野球部で一塁手としてプレーした。生粋の巨人ファンで「テレビが延長中継しなかったらラジオにつないで意地でも聴いた」。プイグの存在ももちろん知っている。「ニュースで見た。(当時)髪が赤くて印象に残っていた」。稽古後は興奮のあまり、記念として色紙にサインをもらった。

ぶつかり稽古では周囲に「(俵で)残してあげて」と言われたが、プイグの圧力に耐えられず一気に押し出されてしまった。「僕より身長は小さいけど体の芯がぶれない。前屈でも体は柔らかくて、あれだけの力を生み出すには柔軟性も大事なんだと感じた」。今場所の1番相撲は黒星を喫したが、トップアスリートと肌を合わせた経験を糧に、巻き返しを期す。【佐藤礼征】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

19年12月に来日したプイグ(撮影・中島郁夫)
リングにかける男たち

ボクシング界に寂しさ、願う井上尚弥の4団体統一

アリトロフィーを掲げる井上尚弥(2019年11月7日撮影

ボクシングで昨年の日本人男子世界戦は、海外含めて27試合あった。日本人対決2試合入れて通算14勝15敗。勝ったのは田中が3勝、井上、京口、寺地、村田、井岡が2勝、岩佐が1勝。王座獲得は井岡、村田、岩佐の3人で、いずれも返り咲き。外国人相手に限ると12人が挑戦に失敗した。新王者誕生はなく、ちょっと寂しい。

田中の3勝は光るが井上に尽きるだろう。ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)を制するとにわかファンが増えた。NHKの紅白歌合戦で審査員など、年末年始のテレビ出演も多かった。女子中高生にも声を掛けられるようになったそうだ。

ボクシングは昭和の時代からある、数少ないプロ競技の一つ。十分認知されているが、人気沸騰した時代は昔のこと。白井、原田、具志堅…。近年でいえば辰吉でもう20年前。当時は全国のジムで練習生が増えた。

今は競技が激増し、きついものは敬遠されがち。ボクシングは個人競技で試合も少なくブームになりづらい。昨年はラグビーの年で、2大会連続の大番狂わせも初の8強入りで力は本物を証明。にわかファンを沸騰させたがこちらも競技人口は減少傾向で、人気というより認知されたと言えるだろう。

日本では重量級でプロアマ制覇の村田と両輪と言える。村田もビッグマッチ実現の期待があるが、井上にはどこまで強さを高めていくかの期待が大きい。全階級を通じてランキング、パウンド・フォー・パウンドという用語が世間一般に通じるようになるかだ。

今年初戦は4月にラスベガスに進出となり、WBO王者カシメロ(フィリピン)との統一戦が有力だ。WBC王者ウバーリ(フランス)も標的。WBA、IBFと王座を統一した井上。ぜひとも今年は2試合を実現して勝利し、4団体完全制圧をしてほしい。

4団体で最新のWBOは88年に設立された。この22年間で4団体統一王者は4人だけ。ミドル級のホプキンス(米国)が最初。テイラー(米国)はホプキンスに勝ってのもの。スーパーライト級クロフォード(米国)とクルーザー級ウシク(ウクライナ)は、2団体統一後に2冠対決を制したものだった。

4本のベルトを1本ずつ獲得していったのは、いまだにホプキンスしかいない。チャンスすら、そうあるものではない。WBSS制覇でトップランク社と契約したのも、こうしたマッチメーク、ビッグマッチ実現のため。今年一番の願いである。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

ドネアに勝利しアリ・トロフィーを掲げる井上尚弥(2019年11月7日撮影)
プロレスの月曜日

ビッグマッチ次々開催 プロレス各団体20年上半期

新年最初の「プロレスの月曜日」では、20年上半期の各団体の主な興行を特集する。新日本プロレス1強ともいえる時代の中、他団体も負けじとビッグマッチを次々開催する。19年に続き、20年もプロレス界が活発に動きそうだ。

ウエーブを起こす新日本の東京ドーム大会の観客(撮影・河田真司)

【新日本プロレス】

1・4、5と史上初の東京ドーム2連戦を成功させ、その勢いは止まらない。昨年11月にロサンゼルスに米国法人を新たに設立。1月24日から2月にかけ米ツアーを行うなど、20年は米国興行に力を入れる予定。毎年恒例の3月旗揚げビッグマッチに加え、同31日の両国国技館も決定している。

4日の新日本の東京ドーム大会で、タイガーマスク(右下)とザ・グレート・サスケ(左下)に担がれファンの声援に手を振り応える獣神サンダー・ライガー。左端は藤波辰爾(撮影・中島郁夫)

【ノア】

昨年2月に親会社がリデットエンターテインメントに変更して以来、攻勢を続ける。故三沢光晴さんの魂を受け継ぎつつ、ロゴとマットを一新。外部から次々に選手を呼び、SNS発信に力を入れるなど、さまざまな変革をはかり、11月には約7年ぶりの両国国技館大会を成功させた。年明け1・4、5は新日本のドーム大会に後楽園2連戦をぶつけた。2、3、5月に団体20周年記念のビッグマッチでさらに勝負をかける。

【全日本】

年明け早々、元WWEのヨシタツが正式入団。さらに昨年までDeNAボールパーク部長でエンタメ部門を手がけていた五十嵐聡氏が副社長に就任と新しい動きがあった。興行では20年上半期は例年通りのスケジュール。「後楽園でお客さまを着実に増やしていく」(秋山GM)「武道館は時期がきたら」(福田社長)と話す通り、後楽園ホールをベースに足固めに努める。

2020年上半期の主なビッグマッチ

【DDT】

DDTは6月7日に、17年以来3年ぶりに、さいたまスーパーアリーナに進出する。17年にサイバーエージェントのグループ傘下に入り、組織は安定。19年7月には大田区総合体育館で前代未聞の無料ビッグマッチを成功させるなど、独自路線で成長を続ける。高木社長は、さいたまを超満員にすると宣言。親会社の藤田晋社長も実行委員長に就任し、バックアップする。

【その他】

団体25周年を迎える大日本は、3月に旗揚げ記念の横浜文化体育館大会を開催。昨年11月に新日本の親会社ブシロード傘下に入った女子プロレス団体スターダムは、4月29日に大田区大会を開催。さらに5月9、10日には東京ビッグサイトで行われる「大ヴァンガ祭2020、ブシロード祭2020」で試合を行い、2万人超の人が集まるビッグイベントの中で新規ファン獲得を狙う。

原功「BOX!」

井上尚弥4団体統一か 20年日本ボクシング界占う

現在の日本ボクシング界はバンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座を持つ井上尚弥(26=大橋)、WBAミドル王座を奪回した村田諒太(33=帝拳)、4階級制覇を成し遂げた井岡一翔(30=Reason大貴)らを中心に回っているといっていいだろう。その活躍は国内にとどまらず、いまや世界的な注目を集めるまでになっている。そんな彼らを軸に2020年の日本ボクシング界を占ってみよう。

井上は4月25日に米国ネバダ州ラスベガスで次戦が計画されており、相手候補にはWBO王者のジョンリエル・カシメロ(30=比国)とWBC王者のノルディーヌ・ウバーリ(33=仏)の名前が挙がっている。ふたりとも井上が契約したトップランク社系の選手であることから、順番に対戦することも考えられる。井上の実力を考えれば、その2試合を勝ち抜いて年内に4団体統一王者という夢が達成される可能性は十分にある。

村田は、4階級制覇を成し遂げているサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)か、20度の防衛実績を持つゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)との対戦実現を目指している。世界的なスター選手である相手側が選択権を持っているような状態のため村田は待つ立場といえるが、日本開催となった場合は大きなイベントになるはずだ。

井岡は他団体王者との統一戦や海外防衛戦を視野に入れている。ターゲットはWBA王者のカリド・ヤファイ(30=英国)、WBC王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(29=メキシコ)、IBF王者のジェルウィン・アンカハス(28=比国)だ。このほか4階級制覇の実績を持つローマン・ゴンサレス(32=ニカラグア)も対戦候補のひとりといえる。

このほか3階級制覇のWBOフライ級王者、田中恒成(24=畑中)、V7中のWBCライトフライ級王者、寺地拳四朗(27=BMB)、同じライトフライ級のWBAスーパー王者、京口紘人(26=ワタナベ)、IBFスーパーバンタム級暫定王者の岩佐亮佑(30=セレス)らも、前年以上の活躍が期待される。

2月には元世界王者たちの試合が続く。2日に中国で伊藤雅雪(28=横浜光)が再起第2戦、13日には比嘉大吾(24=白井・具志堅)が1年10カ月ぶりの復帰戦を行う。14日にはホルヘ・リナレス(34=帝拳)が米国で再起第2戦を予定している。内容と結果しだいでは遠からず返り咲きのチャンスが巡ってくるものと思われる。

小国以載(31=角海老宝石)、亀田和毅(28)、井上拓真(24=大橋)ら元世界王者も再戴冠の機会を狙っている。また、意図せざるドーピング違反で“幻の世界王者”となったスーパーフェザー級の尾川堅一(31=帝拳)も世界挑戦のチャンスを待つ身だ。

若手では、20戦全勝(15KO)のフライ級新鋭、中谷潤人(22=MT)の世界挑戦と戴冠が期待される。このほか飛躍が期待されるホープとしては、トップランク社とプロモート契約を交わした平岡アンディ(23=大橋)、日本を含むアジア圏の3冠王者、吉野修一郎(28=三迫)、元世界王者の薬師寺保栄氏の秘蔵っ子で11戦全勝(6KO)の森武蔵(20=薬師寺)らがいる。すでに3人とも世界15位内に入っているが、どこまでランクを上げることができるか注目だ。

2020年も日本のボクシング界が充実した実り多い年になることを願いたい。

リングにかける男たち

史上初2冠の内藤、昨年11月末に右目手術していた

1月5日、2本のベルトを手中に収めいつものポーズを決める内藤哲也

5日の新日本プロレス東京ドーム大会でIWGPヘビー、IWGPインターコンチネンタル(IC)の2冠王者となった内藤哲也(37)は、昨年11月末に極秘で右目の手術をしていた。

異変に気付いたのは昨年5月ごろ。試合の最中に、ものが二重に見えるようになった。「ロープが6本にみえるし、2階席と3階席が重なってみえる。それでずっとやっていた」。もともと病院嫌いだが、このままでは試合に集中できないと意を決し、眼科、脳外科、耳鼻科とさまざまな病院をまわった。それでも原因は分からない。「このまま引退になっちゃうのかな…」と不安を抱えたまま夏のG1に臨み、優勝決定戦進出はならず。18年5月に戴冠したIC王座から同9月に陥落。結果も出ず、焦りの日々が続いた。

やっと原因が判明したのは10月。大学病院で、目の筋肉がまひしていると診断された。11月27日の浜松大会まで試合に出場し、翌28日に帰京。同29日に都内の病院で手術を受けた。まひしてゆるんでいた目の周囲の筋肉を縫合したことで、視界のピントが元に戻った。

3週間のオフを経て、12月19日の後楽園大会で復活。「久々に見えた。上を向くと、ぼやけちゃうけど、正面や下はちゃんと見えている。見える範囲が広がった」と試合をして初めて回復を実感。長く抱えていた心身の不安を解消できたことが、史上初の2冠の偉業につながっていた。【高場泉穂】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

1月5日、オカダ・カズチカ(右)にデスティーノを決める内藤哲也
プロレスの月曜日

山下実優 アイドル夢見た少女はリングでプリンセス

<プロレスの女>

プロレス界の輝く女性を紹介するコーナー第7回は、東京女子プロレスのエース山下実優(24)。充実の1年で培った経験を生かし、1月4日後楽園大会でプリンセス・オブ・プリンセス王座返り咲きを狙う。【取材・構成=高場泉穂】

1月4日にタイトル戦を控える東京女子プロレスの山下実優

輝く場所はステージではなく、リングと決まっていたのかもしれない。東京女子プロレスのエース山下の夢は、アイドルになることだった。モーニング娘。の後藤真希や矢口真里に憧れ、中学卒業後はアルバイトをしながら、アイドルや芸能事務所のオーディションに挑戦。約2年受け続けたが、ことごとく失敗した。そんな時に知人に紹介されたのがDDT高木三四郎社長。プロレスに誘われ、「楽しそうかも」と軽い気持ちで福岡から上京した。

「あわよくば、でしたね」。上京当初はまだアイドル志望の気持ちが残っていたが、プロレスを続けていくうち、夢はいつのまにか団体の発展へと変わった。13年の旗揚げ時から関わるだけに「悔しい思いをいっぱいしました」。客は入らず、プロレス専門誌にさえ取材してもらえなかった。だが鎖国体制を貫き、個性的な選手をそろえる東女ブランドは徐々に浸透。19年は選手が米国、メキシコのリングに上がるなど海外にも広がりをみせた。「空手の時はずっと数字上の1位を目指していたけど、オンリーワンのほうが難しい。自分たちは自信があるし、海外からも注目されてきている」と成長に胸を張る。

19年は山下個人にとって変化の年だった。大きな出来事は、11月DDT両国大会での男女混合タッグ。創作話を語る珍奇な技で知られるアントーニオ本多とタッグを組み、里歩、AEWのケニー・オメガ組と対戦。プロレスの幅が広がった。「今まではキックなど想像しやすい技での強さしか表現できなかったけど、アントンさんと組んで、お客さんを楽しませる強さを知った。これもできるんだと気付けた」。11月のDDT後楽園大会では再びアントンと組み、試合内でさだまさし「関白宣言」の替え歌を美声で披露。観客の心をぐっとつかんだ。

 

1月4日の後楽園大会ではひと皮向けた姿でプリプリ王者坂崎ユカに挑む。今年、米団体AEWデビューした坂崎が相手とあり、世界へのアピールにもなる一戦。手の内を知る同期だけに「お互い尽きて、限界を超えて何かが見えるのでは」と激闘を覚悟する。

9月にはモーニング娘。のライブを見るため、わざわざ富山まで足を運んだ。「彼女らは信念のかたまり。自分、まだまだだなと思いました」。大好きなアイドルたちに負けぬ熱さで、返り咲きを狙う。

◆山下実優(やました・みゆ)1995年(平7)3月17日、福岡県生まれ。小学生から空手を始め、17歳で上京し、東京女子プロレスに入門。13年8月にデビュー。16年1月4日に中島翔子を下し、プリンセス・オブ・プリンセス王座初代王者となる。得意技はクラッシュ・ラビットヒート、アティテュード・アジャストメント。165センチ。

大相撲裏話

「大関がだらしなかよ」の声封じる力士登場に期待感

朝乃山(2019年11月24日撮影)

年が明けた。今年のスポーツの中心は何といっても東京オリンピック(五輪)・パラリンピックだが、角界にも新たな波が起きるのではと期待している。

九州場所でも連日満員御礼で相撲人気の活況ぶりを実証した。しかし、気になる材料もある。横綱白鵬が盤石の強さで優勝を決めた場所だが、長年の相撲ファンからは「それにしても大関がだらしなかよ」とぼやきを聞かされた。

何とか優勝争いに踏みとどまったのは貴景勝だけ。豪栄道、2桁勝利で大関復帰を目指した栃ノ心は早々と休場。かど番の高安も腰の負傷で途中休場し、初場所は関脇に陥落となった。貴景勝に御嶽海、朝乃山ら新たな力が頭角を現してきた一方で、大関が優勝に絡めていない。17年初場所の稀勢の里以来、17場所も“空白”が続く。

かつて、日刊スポーツ評論家だった大横綱の大鵬親方にお話を聞かせてもらえる機会があった。その言葉が印象に残っている。「俺は大関に上がった時もあまり喜べなかった。大関という地位には、まだ上がある。上があるからには、目指さないといけない。横綱までいけばその先はない。辞めるしかないんだ」。

角界の看板を背負う力士の覚悟がうかがえた。もちろん、横綱を目指さない大関はいない。不運なケガなどが重なっての結果だが、やはり横綱を脅かし、その地位を目指せる存在が出てきてこそ、より土俵は活気づくと思っている。

今年はそんな力士の登場を期待したい。初場所で新関脇に昇進した朝乃山は、九州場所の優勝一夜明け会見で白鵬が名指しで期待感を口にした。安定してきた右四つの相撲がより確立されれば、その存在になれる1人かもしれない。そして「自分も」と後に続く力士が出てくる。綱とりを狙える。今年はそんな大きな期待をかけてみたい。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

村田諒太、井上尚弥の相手は?今年の見どころ大公開

2020年のスタートということで、今回は実現が望まれる世界的な注目カードや活躍が期待されるトップ選手を軸に話を進めてみよう。もちろん2019年を湧かせた「モンスター」、井上尚弥(26=大橋)も入っている。

重いクラスから順に話を進めていこう。まずはヘビー級だ。主役は、WBC王座を10度防衛中のデオンタイ・ワイルダー(34=米国)、WBA、IBF、WBO3団体王座に君臨するアンソニー・ジョシュア(30=英国)、2月22日(日本時間23日)にワイルダーに挑戦する元3団体王者のタイソン・フューリー(31=英国)の3人。ワイルダー対フューリーの勝者が4団体統一戦でジョシュアと対戦するという構図が理想だが、その前にジョシュアがIBF1位のクブラト・プーレフ(38=ブルガリア)、さらにWBO1位のオレクサンデル・ウシク(32=ウクライナ)との指名防衛戦を課されており、最終決戦がどんなカードになるか不透明なところがある。

村田諒太(33=帝拳)がWBA王座に君臨するミドル級も風雲急を告げる状態だ。WBCフランチャイズ(特権)王座を持つ世界的なスター選手、サウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)がこの階級の核となる存在だが、村田との対戦が実現するかどうかが日本のファンにとっては最大の注目といえよう。IBF王者のゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)と村田の強打者対決も興味深い。帝拳ジムの本田明彦会長は「村田対カネロが実現するとしたら5月、村田対ゴロフキン戦が実現するとしたら6月」と、それぞれのカードの実現可能性の時期を明かしている。

ウェルター級では、41歳になった「戦う伝説」、WBAスーパー王者のマニー・パッキャオ(比)と、WBC&IBF王者のエロール・スペンス(29=米国)、そしてWBO王者のテレンス・クロフォード(32=米国)の3強の対決が期待される。それぞれが上半期に別々の相手と試合することが確定的なことから、注目ファイトは実現するとしても早くて下半期ということになりそうだ。

スーパーライト級では、16戦全勝(12KO)のWBA&IBF王者、ジョシュ・テイラー(28=英国)と、25戦全勝(17KO)のWBC&WBO王者、ホセ・ラミレス(27=米国)の英米全勝王者対決の実現が待たれる。

その前にラミレスは2月2日、元WBC王者のビクトル・ポストル(35=ウクライナ)戦をクリアしなければならない。4団体統一戦の実現可能性は30パーセントぐらいか。

ライト級では、WBAスーパー王者、WBCフランチャイズ王者、WBO王者のワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)と、WBO王座を獲得したばかりのテオフィモ・ロペス(22=米国)の4団体王座統一戦が実現しそうだ。すでに両陣営は4月に対戦することで基本合意していると伝えられる。スピードとスキルに長けた「ハイテク(高性能)」ロマチェンコと、15戦全勝(12KO)の強打者、ロペスというタイプの異なる王者同士の対決だけに試合前から大いに盛り上がりそうだ。

そして、バンタム級の井上尚弥である。井上と米国での興行権契約を交わしたトップランク社のボブ・アラム・プロモーターは、WBAスーパー王座とIBF王座を持つ「モンスター」の次戦を4月25日(日本時間26日)に米国ネバダ州ラスベガスで開催する方向で調整に入っていることを明かしている。対戦相手候補としてWBO王者のジョンリエル・カシメロ(30=比)とWBC王者のノルディーヌ・ウバーリ(33=仏)の名前が挙がっている。実現すれば3団体の王座統一戦となる。爆発的な強打を持つカシメロ、尚弥の弟・拓真に勝った技巧派サウスポーのウバーリ。井上との対戦が実現すれば、どちらも興味を引くカードといえる。

このほか、15戦全KO勝ちのWBC&IBF世界ライトヘビー級王者、アルツール・ベテルビエフ(34=露)、19年に4度のKO防衛を果たしたWBO世界スーパーバンタム級王者、エマヌエル・ナバレッテ(24=メキシコ)の活躍も期待される。特に、井上尚弥の近未来の対戦候補として名前の挙がっているナバレッテには今年も要注目だ。

プロレスの月曜日

大日本・伊東竜二が自伝出版「レスラーは本を読め」

大日本プロレスの伊東竜二(43)が、デビュー20年記念の自伝「デスマッチ・ドラゴンは死なない」(ワニブックス)を21日に出版した。出版に合わせ伊東がインタビューに応じ、この本に込めたメッセージや、読書家として本の大切さを語った。【取材・構成=高場泉穂】

自伝「デスマッチ・ドラゴンは死なない」を出した大日本プロレスの伊東竜二

口絵の写真を見れば、伊東がどんな人生を送ってきたかが一目で分かる。額、腕、胸、背それぞれに刻まれた大量の傷痕。すべてデスマッチの際に蛍光灯、画びょうなどの凶器でできたものだ。99年にデビューし、その4年後の03年にデスマッチに挑戦。以来約16年間、デスマッチ戦線の最前線で活躍。今年デビュー20周年を迎えたのを機に、これまでの歩みを自伝にまとめた。伊東の普段の話しぶりと同様、冷静で淡々とした筆致でこの20年間の大日本、さらにデスマッチの歴史が描かれており、日本デスマッチ界の貴重な記録ともなっている。

伊東は「劇的な人生ではないのですが…」と謙遜するが、デスマッチレスラーを職業に選んだ時点で劇的だ。まず、プロレスラーを目指すきっかけも面白い。高校卒業後に茨城大工学部に進学。だが、3カ月通っただけでそこから3年間の引きこもり生活に突入。留年も就職も思い描けない窮地で浮かんだのが、「プロレスラーになる」というとっぴなアイデアだった。

自伝「デスマッチ・ドラゴンは死なない」を出した大日本プロレスの伊東竜二

03年からデスマッチを始めたのも団体のピンチを救うため。偶然が重なり、過酷なデスマッチの世界に入ったが「やめたいと思ったことはない。合っていたのだと思います」。続けた理由は「簡単にいえば他にやることがないから」とあっさり。「サラリーマンと比べ、プロレスラーってだいぶ不規則だったりして、変化がありますからね。毎日、その変化を楽しんでいます」と話す。

伊東は東野圭吾氏の小説を愛する読書家である。だからこそ「あることを書くだけでもこんなに大変なんだ」と今回の執筆を通じ、小説家のすごさを再確認したという。学生時代から無意識に続けてきた本の乱読は、伊東のプロレスに大いに役立った。「デスマッチって頭を使う。それにメインになることが多く、マイクをもつことが多い。言葉を知らないと、話せない。結果論ですけど(読書を)やっていたことによって、自然とできるようになった」。さらに「プロレスラーは本を読むべき。とっさに対応するには、引き出しがいっぱいないといけない」と若い選手に有意義な読書を求めた。

この本には、メッセージも込められている。「20代の頃はダメ人間でしたけど、43になり、まだまだ元気にやっていける。ダメな20代の子をもつ親の方々に安心してください、と言いたい。また、同じようにダメな状況の20代のひとにも1歩踏み出して、20年続けてみな、と。そうすると、それなりに形になるよと言いたいですね」。伊東の目標は現在77歳で現役のグレート小鹿会長を超えるまでリングに立つこと。「もっともっと上に上がっていく夢をみながら、続けていきたい。ベルトももちろん欲しいですよ」。20年はまだほんの区切り。“デスマッチ・ドラゴン”はまだまだ生き続ける。

◆伊東竜二(いとう・りゅうじ)1976年(昭51)4月8日、岩手県滝沢市生まれ。茨城大工学部を中退し、98年に大日本プロレス入団。99年4月に対葛西純戦でデビュー。03年ごろからデスマッチ戦線で活躍するようになり、愛称はデスマッチドラゴン。デスマッチヘビー級王座は過去6度戴冠。09年には、葛西純とのカミソリ十字架ボード+αデスマッチでプロレス大賞ベストバウトを受賞。

大相撲裏話

朝乃山は横綱になっている?5年後の三役以上を予想

貴景勝(左)を激しく攻める朝乃山(2019年11月11日)

今回で、このコラムに私が出稿するのは基本的に最後となる。社内の担当替えで相撲担当から離れることになった。そこで最後に、5年後の番付を予想してみることにした。答え合わせが楽しみになるように、あえて2024年11月の九州場所、三役以上の番付と限定してみる。

横綱:朝乃山、狼雅

大関:貴景勝、北の若、琴勝峰、豊昇龍

関脇:琴ノ若、納谷

小結:明生、霧馬山

関係各所から反論が出そうだが…。まず5年後ということで、すでに30代の白鵬、鶴竜、豪栄道、さらに29歳の高安と、現在の上位陣の多くが引退している想定。そして、そのころには30歳でベテランとなっている朝乃山は、20代中盤の狼雅、北の若、琴勝峰、納谷らに苦しめられながらも、右四つになれば強さは健在といったところか。

現在23歳の貴景勝は、来年以降も何度か優勝すると予想する。ただ、一般的に四つ相撲よりも安定感に欠く押し相撲だけに、2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績をなかなかクリアできず、綱取り場所で途中休場というケースも。30歳で悲願の横綱昇進と、本当の円熟期は7年後ぐらいとみる。むしろ、早くに横綱に昇進した場合、持ち前の真面目な性格と責任感から、強行出場を繰り返し、現役生活を短くしかねない。現在までは出世が早いが、オーバーワークで太く短い力士生命とならないよう、あわてず横綱を目指してほしいと個人的に思っている。

このころの特徴としては、モンゴル第3世代の台頭が挙げられるだろう。旭天鵬、旭鷲山らの最初の世代、その活躍を見て、言葉も分からないが夢を抱いて来日した朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜らの第2世代。さらには、逸ノ城や元貴ノ岩らも当てはまるかもしれないが、主に日本の高校を卒業し、相撲の経験を十分に積み、生活にもなじんでから初土俵を踏んだ狼雅、豊昇龍らが第3世代といえる。闘争心を前面に出して向かってくるスタイルは、第1、2世代と変わらず、日本人力士と良い意味でのライバル関係が築かれるはずだ。

幕下の狼雅の場合、来場所から出身地を母の故郷で幼少期から過ごしたロシアと変更したが、すでに関取として活躍する霧馬山、豊昇龍以上の潜在能力を秘めている。日本人では元琴桜の孫の琴ノ若、元大鵬の孫の納谷ら横綱の遺伝子を次ぐ力士が順調に成長すれば、相撲人気の起爆剤となる。若貴人気が絶大だったころの曙、武蔵丸らハワイ勢とのようなライバル関係が生まれれば、非常に盛り上がると予想する。

もちろん、すべて予想が的中するとは思っていない。名前を挙げた力士が、大ケガを負って大きく番付を下げる可能性もある。だが、その苦しい日々から、はい上がってくる姿に感情移入することも含めて、大相撲の魅力なのだろう。元横綱稀勢の里が、引退前に最後に稽古に指名した相手が貴景勝で、今度はその稀勢の里の弟子が、横綱貴景勝に挑んで負かすかもしれない。そんな壮大で、魅力的なストーリーが生まれることを期待したい。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

19年ボクシング界のMVPは4階級制覇アルバレス

階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」シーズン2で、井上尚弥(26=大橋)がバンタム級優勝を飾るなど日本人選手の活躍も目立った2019年の世界のボクシング界。この1年を「賞」形式で振り返ってみよう。

MVPは4階級制覇を果たしたサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)で文句ないだろう。直近の4試合すべて相手が現役の世界王者である点や、11月にWBO世界ライト・ヘビー級王座を獲得したことなどを高く評価したい。王座統一を果たしたバンタム級の井上、ウエルター級のエロール・スペンス(29=米国)、スーパー・ライト級のジョシュ・テイラー(28=英国)、41歳にして世界王座に君臨しているウエルター級のマニー・パッキャオ(比国)らが続く。

殊勲賞は22戦全勝(21KO)だったアンソニー・ジョシュア(30=英国)を7回TKOで破って3団体統一世界ヘビー級王者になったアンディ・ルイス(30=米国)で決まりだ。この試合は16対1というオッズだった。再戦では本来の力量差が出てジョシュアが大差の判定勝ち、王座を奪回している。

敢闘賞は年間4度のKO防衛を果たしたWBO世界スーパー・バンタム級王者のエマヌエル・ナバレッテ(24=メキシコ)でいいだろう。そう遠くない将来、井上のライバルになる可能性を秘めた強打者だけに今後も注目していきたい。日本人初の4階級制覇を成し遂げた井岡一翔(30=Reason大貴)、井上との対決を熱望しているWBO世界バンタム級王者の3階級制覇者、ジョンリエル・カシメロ(30=比国)、中国3人目の世界王者になったWBAフェザー級のシュー・チャン(25)などの奮闘も目立った。

技能賞はふたり。ライト級の3団体王者、ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)とWBO世界ウエルター級王者のテレンス・クロフォード(32=米国)だ。「ハイテク」のニックネームどおりのスキルを発揮し続けるロマチェンコ、世界戦で7連続KO勝ち中の「ハンター」、クロフォード。甲乙つけがたいところだ。

KO賞はWBC世界ヘビー級王者のデオンタイ・ワイルダー(34=米国)で異論なしだろう。5月のV9戦は1回、11月のV10戦は7回、ともに右ストレート一発で仕留めた。これぞヘビー級という迫力だった。

年間最高試合はルイス対ジョシュア初戦を推したい。最重量級、ダウン応酬、歴史的番狂わせ、KO決着、と多くの要素を含んだ試合だった。バンタム級の井上対ノニト・ドネア(37=比国)、ウエルター級のスペンス対ショーン・ポーター(32=米国)とパッキャオ対キース・サーマン(31=米国)、スーパー・ライト級のテイラー対レジス・プログレイス(30=米国)、ライト・ヘビー級のアルツール・ベテルビエフ(34=露)対オレクサンデル・グウォジク(32=ウクライナ)の王座統一戦(団体内含む)も激闘だった。

新鋭賞にはテオフィモ・ロペス(22=米国)がふさわしいだろう。12月15日に右一発で2回TKO勝ち、デビューから15連勝(12KO)でIBF世界ライト級王座を獲得した。来年はロマチェンコとの統一戦など多くの話題を提供しそうだ。

2020年にはどんな選手が活躍し、どんなドラマが生まれるのだろうか。

リングにかける男たち

拳法極めた前田稔輝が“間合い”克服し世界を狙う

2019年12月22日 フェザー級新人王決勝戦 3回、亀田(左)に左フックを見舞う前田(撮影・山崎安昭)

12月22日はボクシングの全日本新人王決勝戦が、東京・後楽園ホールで行われた。日本ボクシング界の未来を担う逸材発掘の場で、最大の注目を集めたのがフェザー級。亀田3兄弟のいとこ、亀田京之介(21=花形)が、その主役だったが結果は判定1-2で敗戦。勝ち名乗りを受けたのは、グリーンツダジムの前田稔輝(じんき、23)だった。

互いに探り合うスタート。前田も「今日は0点。いつもの自分じゃなかった」と振り返った。手数もなく、ラウンドだけを重ねていく。最終4回、前田が仕掛けた打ち合いでようやく試合が動く。その差が勝敗に響いたか。微妙な判定結果を前田がものにした。

ジムの本石昌也会長は「彼の実力はまだこんなもんじゃない。キャリアさえ積めば」と話す。前田は小学校1年から日本拳法をはじめ、大商大2年時には日本一に輝いた。段位は師範クラスの4段。そこから将来を見据え、ボクシングに転向。ジムに入門したのは昨年11月で、デビューは今年4月。キャリアの浅さが、最大の弱点だった。

ボクシングの聖地、後楽園ホールの独特の空気に「のみこまれた」という。その中で勝利を手にしたのが最大の収穫。「やばいと思ったが、大阪からもたくさん応援に来てくれて、何とか勝つことができた」。

父の忠孝さん(44)も日本拳法3段の腕前だが、息子のプロボクシングデビューを機にトレーナーライセンスを取得した。「息子と同じ、最初から始めるつもりです」。将来的に本石会長も「ついてもらいたい」と父子鷹に期待する。

強打のサウスポーだが、試合のスタイルは日本拳法が抜けていない。前田も「距離感がつかめなかった」と“間合い”の違いを打ち明ける。裏返せば、克服した先に伸びしろがある。新人王を制して、日本ランク入りは確実となり「世界に早く近づけるようになりたい」。拳法で頂点を極めた強打が、世界を狙う。

【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

2019年12月22日 フェザー級新人王となった前田(撮影・山崎安昭)
プロレスの月曜日

力道山を泣かせた男アンドレ・アドレーの人物像とは

力道山のルーツはハリウッドにあった-。日本のプロレスの父、力道山が亡くなって12月15日で没56年。この機にあわせ元週刊プロレス、週刊ゴング外国人レスラー番のスポーツライター、トシ倉森さん(65)が秘蔵写真とともにプロレスラー力道山誕生の秘話を語った。2週目はカギを握るアドレーの強さと力道山のリベンジについて迫ります。【取材・構成=高場泉穂】

82年、力道山との思い出を振り返るアンドレ・アドレー(トシ倉森氏提供)

1951年(昭26)、初めてリングにあがった力道山に裸絞めを決め、泣かせ、プロレスの世界へと導いたアンドレ・アドレーとはどのような人物だったのか。生前のアドレーと親交があった倉森氏は“プロレスの神様”カール・ゴッチの言葉を借りて、説明した。「ゴッチは、『彼こそが、リアルレスラーだ』と話していました」。

アドレーは多彩な才能を持った男だった。1906年、フランスで生まれ、4歳の時に米国へ移住。高校卒業後にヘビー級のプロボクサーとなり、20歳でプロレスラーとしてもデビュー。188センチ、99キロと恵まれた体でいずれも活躍したが、次第にプロレスに情熱を傾けていった。「30年代の米国ではプロレスを見ることが一種のステータス。ハリウッドの常設会場では映画俳優がリングサイドを陣取っていたそうです。その中の常連の1人がチャーリー・チャプリンで、アドレーのファンでした」。

1936年、チャーリー・チャプリンの専属スタジオでチャプリン専属カメラマンが撮影したアンドレ・アドレー。アドレーはチャプリンお気に入りの選手だった(トシ倉森氏提供)

チャプリンと親しくなったアドレーは、映画「街の灯」の演技指導を任される。放浪者役のチャプリンがボクシングをする名シーンは、アドレーあって生まれたものだった。その後、映画俳優、スタントマンとしても活躍。映画界の格闘指導のパイオニアともなった。確かな技術と経験を持ったアドレーに、“新入り”の力道山が敗れたのも当然だった。

屈辱の涙から約12年後の1963年(昭38)1月、力道山にリベンジのチャンスが訪れる。2度目の来日を果たしたアドレーと愛知・豊橋で行われた興行の6人タッグマッチで対戦した。力道山はマスクマンとして参戦した57歳のアドレーに空手チョップを連打した。「控室に戻ると激痛が走り、調べると鎖骨が折れていたらしいです。アドレーは『力道山は私にリベンジしたんだ』と笑いながら話していました。『東洋の偉大なレスラーに成長した彼にレスリングの手ほどきをしたことに誇りを感じたし、成長が実にうれしかった』と」。

この年の12月8日、力道山は赤坂のナイトクラブで刺され、同15日にこの世を去った。「まるでリベンジするのを待っていたかのよう」と倉森氏。ハリウッドをルーツに持つ力道山のプロレスラー人生は、映画のように幕を閉じた。

トシ倉森氏

◆トシ倉森 1954年(昭29)12月2日生まれ、長崎市出身。京都産業大学外国語学部英米語学科卒業後、79年に渡米し週刊ファイトの特派員として全米マット界を取材。81年にカリフラワー・アレイ・クラブの正会員となる。83年に帰国後、ベースボール・マガジン社に入社し、「週刊プロレス」の創刊号から主に外国人レスラーを担当。「相撲」編集部を経て、日本スポーツ出版社に入社し、「週刊ゴング」編集部勤務。退社後、SWSの設立メンバーとして広報担当。現在はスポーツライター。著書「これがプロレスのルーツだ!カリフラワー・レスラーの誇り」(電子書籍)、上田馬之助自伝「金狼の遺言」(共著)。