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au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

井上尚弥の転向で風雲急を告げるスーパーバンタム級トップ戦線 ネリ対ホバニシャンに注目

井上尚弥(29=大橋)がバンタム級の4団体王座をすべて返上、4階級制覇を狙ってスーパーバンタム級に転向することになった。

それを待っていたかのようにスーパーバンタム級トップ戦線の動きが慌ただしくなってきた。先陣を切るかたちで18日(日本時間19日)にはアメリカのカリフォルニア州ポモナでルイス・ネリ(28=メキシコ)対アザト・ホバニシャン(34=アルメニア)のWBC王座への挑戦者決定戦が行われる。

ネリはトラブルメーカーとして知られている。2017年8月に来日して山中慎介(帝拳)を4回TKOで破ってWBC世界バンタム級王座を獲得したが、のちにドーピング違反が発覚。WBCは王座剥奪をしない代わりに山中との再戦を命じたが、翌年3月のリマッチでは計量で意図的とも思える大幅な体重オーバーで失格、王座を失った(試合では2回TKO勝ち)。そもそも遡って山中との初戦を前にしたWBCバンタム級挑戦者決定戦でもネリは体重超過をしており、山中戦へと続く一連のトラブルは統括団体の対応の甘さが招いた結果ともいえる。

これだけではない。ネリは2019年11月にはWBCバンタム級挑戦者決定戦でまたも体重オーバー。このときは相手に報酬の上乗せを提案したが断られ、試合はキャンセルとなっている。

それを機にスーパーバンタム級に転向し、いきなりWBC王座決定戦に出場して12回判定勝ち、2階級制覇を成し遂げた(2020年9月)。ここにもWBCの行き過ぎた庇護が感じられる。しかし、次戦ではWBA王者のブランドン・フィゲロア(アメリカ)のボディブローを浴びて7回KO負けを喫している。はからずもお灸をすえられたかたちだ。昨年2月に僅差の判定勝ちで再起し、10月には3回TKO勝ちを収めている。戦績は34戦33勝(25KO)1敗。転級後は4戦3勝(1KO)1敗で、かつての勢いは感じられない。

ホバニシャンは世界選手権でベスト8入りするなどアマチュアで活躍後、22歳でプロデビュー。初陣で判定負け、8戦目にも判定負けを喫するなど順風満帆の船出ではなかった。地域王座を獲得し、強豪を破ったあと2018年にはレイ・バルガス(メキシコ)の持つWBC世界スーパーバンタム級王座に挑戦したが、強打を封じられ12回判定負けを喫した。その後は7連勝(6KO)と好調だ。戦績は24戦21勝(17KO)3敗。井上とは昨年9月にロサンゼルスでスパーリングをしたという接点がある。

サウスポーのネリとオーソドックスのホバニシャンと構えに違いはあるが、攻撃型であるという点は同じだ。ネリは弧を描くような軌道で繰り出す左ストレートや右フックを得意とし、ホバニシャンは飛び込むようにして打ち込む左フックと振りの大きな右フックが主武器といえる。身長では168センチのホバニシャンがネリよりも3センチ大きいが、リーチはふたりとも165センチで体格差はないと見ていい。

中近距離での打撃戦を好む選手同士の組み合わせだけに、初回から目の離せない試合になりそうだ。4度の世界戦を経験している元2階級制覇王者のネリが総合力でわずかに上回りそうだが、フィゲロア戦でボディの弱さを露呈しており、ホバニシャンはそこを突いてくるものと思われる。

現在、WBCのスーパーバンタム級王座はWBO王座とともにスティーブン・フルトン(アメリカ)が保持しており、5月にも井上の挑戦を受ける可能性が高いと伝えられる。ネリ対ホバニシャンの勝者はフルトン対井上の勝者への優先挑戦権を握ることになるわけだ。

井上の参入で風雲急を告げるスーパーバンタム級トップ戦線。まずはネリ対ホバニシャンに注目したい。

相次ぐスーパーフェザー級の世界王座決定戦 2週連続でメキシコから3階級制覇王者が誕生するか

3日(日本時間4日)と11日(日本時間12日)に相次いでスーパーフェザー級の世界王座決定戦がアメリカで行われる。3日のWBO王座決定戦はエマヌエル・ナバレッテ(28=メキシコ)対リアム・ウィルソン(26=オーストラリア)というカードで、アリゾナ州グレンデールで挙行される。11日はレイ・バルガス(32=メキシコ)とオシャキー・フォスター(29=アメリカ)がWBC王座を争う。こちらはテキサス州サンアントニオで行われる。ナバレッテはフェザー級のWBO王座、バルガスはフェザー級のWBC王座を保持したまま1階級上の決定戦に出場することになり、ふたりとも3階級制覇のかかった試合となる。

スーパーフェザー級のWBC王座とWBO王座はシャクール・スティーブンソン(アメリカ)が持っていたが、昨年9月の防衛戦を前に計量で体重超過のため失格、2本のベルトを失った。これを受けWBOは階級アップを計画していたナバレッテと、元WBC王者のオスカル・バルデス(メキシコ)で王座決定戦を行うと発表。しかし、バルデスが負傷して出場を辞退したため3位のウィルソンが代役としてナバレッテと対戦することになった。

ナバレッテはスーパーバンタム級時代にWBO王座を5連続KO防衛した実績を持ち、一時は井上尚弥(大橋)が階級を上げた場合の対戦候補として名前が挙がったこともある。2020年にフェザー級のWBO王座を獲得し、3度防衛中だ。旺盛なスタミナと回転の速い連打が持ち味の攻撃型で、37戦36勝(30KO)1敗の戦績を残している。

相手のウィルソンは12戦11勝(7KO)1敗のスイッチヒッターで、右構えのときは176センチの長身から右ストレートを狙い撃つことが多い。好選手だがホープの域を出ておらず、初のアメリカのリングということもあり多くを期待するのは酷かもしれない。12対1というオッズが出ているように、ナバレッテがKOで3階級制覇を成し遂げる可能性が高い。

対照的にWBC王座決定戦は接戦になりそうだ。バルガスは6年前にWBCスーパーバンタム級王座を獲得。それまで28戦全勝(22KO)と高いKO率を誇ったが、以後は戴冠試合を含め8試合すべて判定勝ちに留まっている。リスクを小さく抑えるためアウトボクシングに磨きをかけたというべきかもしれない。昨年7月、ダウンを跳ね返してフェザー級のWBC王座を獲得し、2階級制覇を果たしたばかりだ。戦績は36戦全勝(22KO)。実に6年半もKO勝ちから遠ざかっている。

身長174センチ/リーチ183センチのフォスターは、それぞれ2センチ/4センチ、バルガスを上回っている。左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターで、スピードとパンチの切れが売りだ。状況に応じて足をつかったボクシングができるのも強みといえる。以前は馬力で押されることがあったが、最近は体力とパワーが増した印象だ。戦績は21戦19勝(11KO)2敗。

経験値で勝るバルガスが2対1で有利と見られているが、最近のフォスターの充実ぶりは目を見張るものがあり、番狂わせの可能性もある。序盤から激しい主導権争いが見られそうだ。

2週連続でメキシコから3階級制覇王者が誕生するのか、それとも波乱が起こるのか。

ブリッジャー級初代王者オスカル・リバス、網膜剥離で引退の危機 階級新設も世界戦1試合だけ

WBCが2020年11月に新設した18階級目のクラス、ブリッジャー級の初代王者、オスカル・リバス(35=コロンビア)が昨秋に網膜剥離を患い引退の危機にある。WBCは「休養王者」の扱いをしてリバスの状態をみながら去就の意思確認をしていくとしているが、王座が宙に浮いたかたちとなっているのは事実だ。ブリッジャー級新設から2年以上が経ったが、開催された世界戦は決定戦の1試合だけ。リバスの選手生命だけでなく階級の存在そのものが危うくなっている。

ブリッジャー級はWBCが「重量級の体格差を少なくして選手の健康・安全性を担保する」ことを理由にクルーザー級とヘビー級の間につくった階級で、体重の幅は200ポンド(約90.7キロ)以上、224ポンド(約101.6キロ)以下とされる。ただし、「ヘビー級の体重で戦うことも可」とするなど曖昧な部分もある。階級名は、犬に襲われた妹を救うために闘った6歳の男児の名前から付けられた。

ライト(軽量)、ミドル級(中間)、フェザー(羽)、フライ(蠅)など重量に関係のある階級名とかけ離れた名称だけに、それだけで違和感を抱くファンは少なくないだろう。

WBCは毎月、各階級の世界ランキングを40位まで発表しており、2020年12月からブリッジャー級も加わった。6カ月間は猶予期間としてヘビー級やクルーザー級からの転向者を募ったが、2年以上経っても40位まで埋まることはなかった。2022年をみると4月には26位まで選手がリストアップされていたが、5月=25位、6月=21位、7月=20位、8月=20位、9月=18位、10月=21位、11月=20位、今年1月に発表された最新ランキングでも20位までしか埋まっていない。

主要4団体の残り3団体-WBA、IBF、WBOは静観の構えをとっていたが、いまのところ追従する動きは見られない。賢明な判断といえよう。

新階級の苦戦は、この2年の間に開催された世界戦が1度だけだという点にも表れている。ヘビー級で活躍していたリバスと、クルーザー級のライアン・ロジッキ(カナダ)の王座決定戦が行われたのは2021年10月のこと。新設から約1年後のことである。その後、初代王者となったリバスは2022年8月にルーカス・ロザンスキー(ポーランド)と初防衛戦を計画したが、イベントそのものが中止に。今年1月、リバスはヘビー級ランカーと対戦する予定だったが、そのタイミングで網膜剥離が判明している。防衛戦を行わないまま休養状態に入ってしまったわけだ。

こうした事態を受けWBCはリバスを“休養王者”にスライドさせ、1位のアレン・バビッチ(クロアチア)と3位のロザンスキーで王座決定戦を行い、2位のライド・メルヒー(コートジボワール/ベルギー)と4位のケビン・レリーナ(南アフリカ共和国)で次期挑戦者決定戦を行う計画を立てている。ちなみにレリーナは昨年12月、ヘビー級のWBA王座に挑んで3回TKO負けを喫しているが、このときの体重は約104キロだった。

船出から2年2カ月。ブリッジャー級はどこに向かうのだろうか。

18戦全KO勝ちの3団体王者ベテルビエフ対「野獣」ヤード KO決着必至の強打者対決

18戦全KO勝ちのWBC、IBF、WBO3団体統一世界ライトヘビー王者のアルツール・ベテルビエフ(試合時38歳=ロシア/カナダ)に、KO率88パーセントの「野獣」、アンソニー・ヤード(31=イギリス)が挑む注目のタイトルマッチが28日(日本時間29日)、英国ロンドンで行われる。KO決着必至の強打者対決、軍配はどちらに挙がるのか。

ベテルビエフは2013年6月にプロデビューしたが、10年間に18試合と活動はスローペースといえる。自身の故障やプロモーターとの摩擦、さらに新型コロナウィルスの蔓延などが理由だが、直近の2年に関しては比較的コンスタントに試合を行っている。今回は、2回TKO勝ちしたWBO王者との統一戦から7カ月のスパンでリングに上がることになる。2017年11月に獲得したIBF王座は7度目、2019年10月に吸収したWBC王座は4度目、WBO王座は初防衛戦となる。

ベテルビエフは戦績が示すとおりのスラッガーで、パンチは左右とも一撃でKOする破壊力がある。かといってパワーだけの雑なファイターというわけではない。プレッシャーをかけながら正確で強い左ジャブを打ち込んで相手を追い込むなど戦術にも長けているのだ。2008年北京大会、2012年ロンドン大会と2度の五輪出場のほか、優勝と準優勝を含め3度の世界選手権出場など豊富なアマチュア経験がベースになっていることは間違いない。

挑戦者のヤードもパンチ力では負けていない。19歳でボクシングを始めたためアマチュア経験は12戦(11KO勝ち、1敗)と少ないが、24歳でプロに転向してからは16連続KO勝ちをマークするなどして注目を集めた。その勢いのまま2019年8月にはセルゲイ・コバレフ(ロシア)の持つWBO王座に挑戦。一時は王者をKO寸前まで追い込む見せ場をつくったが、反撃にあって11回TKOで敗れた。翌年、世界ランカー対決で僅少差の判定負けを喫したこともあったが、再戦では4回KOで雪辱。その試合を含め3連続KO勝ちと以前の勢いを取り戻した印象だ。

ヤードは上体を小さく振りながら相手に迫り、右ストレートから左フックに繋げる攻撃パターンを持っている。接近戦の際に突き上げるアッパーも強烈だ。

18戦全KO勝ちの3団体王者と、25戦23勝(22KO)2敗の挑戦者が拳を交えるのだからジャッジの出番はないといっていいだろう。

まずは先手争いに注目したいが、ここでベテルビエフが左ジャブで易々と主導権を握るようだと挑戦者は厳しくなってくる。逆にヤードがプレッシャーをかけて王者を後退させるような展開に持ち込めれば勝負の行方は分からなくなりそうだ。13対2のオッズが出ているようにベテルビエフに分があることは間違いないが、ヤードの強打が波瀾を起こす可能性も十分にある。

2月で48歳セルヒオ・マルチネス、史上最年長世界王者なるか ターゲットはゴロフキン

今年、もしかしたら48歳の世界王者が誕生するかもしれない。その可能性を秘めているのが元世界2階級制覇王者のセルヒオ・マルチネス(47=アルゼンチン)だ。一度は9年前に引退したマルチネスだが、2020年に戦線復帰を果たし5連勝(3KO)をマーク。現在はWBA世界ミドル級2位にランクされている。ターゲットはWBAスーパー王座とIBF王座を持つゲンナディ・ゴロフキン(40=カザフスタン)だという。2月21日に48歳の誕生日を迎えるサウスポーに要注目だ。

少年時代にサッカーと自転車競技に親しんだマルチネスは20歳でボクシングを始めた。アマチュアで41戦(39勝2敗)を経験後、22歳でプロに転向。2008年にスーパーウェルター級のWBC暫定王座を獲得(のちに正王者に昇格)し、2年後にはWBC、WBO世界ミドル級王者になった。このときすでに35歳になっていたが、その後の4年間で6度の防衛を果たすなど一時代を築いた。キャリア晩年は故障が目立ち、10回終了TKO負けで王座を失ったミゲール・コット(プエルトリコ)戦では痛めていた右膝の踏ん張りが利かず計4度のダウンを喫したほどだった。この試合を最後に39歳でグローブを壁に吊るした。

引退後は現役時代から携わっていたマネージャー業や試合のプロモートにエネルギーを注いでいたが、古傷が癒えたこともあって2020年に45歳でカムバック。6年ぶりの実戦で7回KO勝ちを収めると、居住地のスペインでコンスタントにリングに上がり続けた。当時のWBA王者、村田諒太(帝拳)の名前を出して挑戦をアピールしたこともあった。昨年12月には復帰後初めてアメリカで戦い、はるか格下の相手に2回KO勝ちを収めている。カムバック後の5勝を加えた戦績は61戦56勝(31KO)3敗2分とみごとなものだ。

すでにWBAはミドル級で世界2位にランクしているが、さすがにこれはサービスし過ぎの印象が強い。直近の試合を見ると47歳とは思えないほど引き締まった体をしているマルチネスは攻めたり間合いをとったりしつつ、ときにはノーガードで相手を誘うなど余裕も感じさせた。最後は左ボディブローを決めて10カウントを聞かせる圧勝だったが、相手が6勝6敗2分の選手であることを差し引いて考えなければなるまい。

それでもマルチネスは確かな手応えを感じ取っているようだ。「誰と戦いたいかと問われれば私はゴロフキンと答える。殺されてしまうという意見があることも知っているが、逆に私が彼にレッスンをしてやるつもりだ」と強気のコメントを発している。もしも今年4月以降にゴロフキン、あるいは他の団体の王者への挑戦が実現し、そしてマルチネスが勝ったとしたらバーナード・ホプキンス(アメリカ)の持つ48歳1カ月を更新する史上最年長戴冠記録となる。それが容易ではないことはマルチネス自身がいちばん分かっているはずだが、可能性がないわけではない。

「マラビジャ(驚異の男)」と呼ばれる万能型のサウスポーの夢にもう少し付き合ってみたい。

2023年実現が期待されるスーパーファイト ヘビー級4団体王座統一戦フューリー対ウシクに注目

井上尚弥(29=大橋)や寺地拳四朗(30=BM)に代表されるように2022年の世界のボクシング界は複数団体の王座統一が目立った。

これは近年の傾向でもある。その流れは今年も続きそうで、すでにいくつもの注目ファイトが交渉段階にあると伝えられる。今回は2023年に実現が期待されるスーパー・ファイトを選んでみた。

実現すれば最もスケールが大きなイベントになるのがタイソン・フューリー(34=英国)対オレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)の世界ヘビー級4団体王座統一戦だ。WBC王者のフューリーが34戦33勝(24KO)1分、WBA、IBF、WBO王者のウシクが20戦全勝(13KO)と無敗同士の頂上決戦となる。両王者の合計報酬は100億円を超えるものと予想される。ともに技巧派だが、スイッチヒッターのフューリーが身長206センチ、体重120キロの超大型なのに対しサウスポーのウシクは身長191センチ、体重100キロと体格の差があり、2対1でフューリー有利というオッズが出ている。

ウェルター級のエロール・スペンス(32=米国)対テレンス・クロフォード(35=米国)も4団体の王座統一戦となる。このカードは昨年から交渉が続いており、早ければ今年上半期に実現する可能性がある。28戦全勝(22KO)のスペンス、39戦全勝(30KO)のクロフォード。オッズは5対4でクロフォード有利と出ている。

ライトヘビー級も全勝同士の4団体王座統一戦が期待される。18戦全KO勝ちのWBC、IBF、WBO王者、アルツール・ベテルビエフ(37=ロシア/カナダ)と21戦全勝(11KO)のWBA王者、ドミトリー・ビボル(32=キルギス/ロシア)の対決だ。典型的なファイター対技巧派のカードだが、まだ交渉のテーブルについているというニュースは伝わってこない。まずは今月28日(日本時間29日)に予定されるベテルビエフの7度目の防衛戦に注目したい。

すでにライト級の4団体王座統一を果たしているデビン・ヘイニー(24=アメリカ)は今年、元王者のワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)との対決に臨むことになりそうだ。両者間にはビジネス面の障壁が少なく、早ければ上半期の実現があるかもしれない。

下半期にはヘイニー対ロマチェンコの勝者とWBA王者のジャーボンテイ・デービス(28=米国)の対戦が期待される。

軽量級では注目が井上尚弥に集中しそうだ。すでにスーパーバンタム級への転向を明言しており、次戦で誰と対戦するのか熱い視線が注がれている。ターゲットはふたり、WBCとWBO王座を持つ21戦全勝(8KO)の技巧派、スティーブン・フルトン(28=米国)、そして11戦全勝(8KO)の強打者、サウスポーのムロジョン・アフマダリエフ(28=ウズベキスタン)だ。井上が「これからが本当の挑戦」と話すように、ふたりとも井上よりも若くて体も大きい全勝の選手だけに冒険のしがいがあるというものだ。ただ、両王者とも統括団体から次戦に関して指令を受けていることもあり先は不透明な状況といえる。

このほか世界的なスーパースター、スーパーミドル級の4団体統一王者、サウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)対26戦全勝(23KO)のWBC暫定王者、デビッド・ベナビデス(26=米国)、ヘビー級の元王者同士のサバイバル戦、デオンテイ・ワイルダー(37=米国)対アンソニー・ジョシュア(33=英国)なども実現が待たれる興味深いカードといえる。

今年も数多くの注目ファイトが実現してほしいものだ。

2022年優秀ボクサーを振り返る ドミトリー・ビボルと井上尚弥が顕著な活躍

2022年も残り数日。コロナ禍のなかでもスポーツイベントはまずまずの活況を呈しているといっていいだろう。ボクシングでもトップ選手たちの試合が年間1~2試合に留まっている現状はあるが、徐々に大規模なイベントが復活してきたのは喜ばしい状況といえる。そんななか今回は2022年に活躍した優秀ボクサーを選ぶ形式で振り返ってみよう。

2022年に最も顕著な活躍をしたボクサーを挙げるならば、WBAライトヘビー級スーパー王者のドミトリー・ビボル(32=キルギス/ロシア)と、バンタム級の4団体王座を統一した井上尚弥(29=大橋)のふたりに絞られるだろう。ビボルは5月に4階級制覇王者のサウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)の挑戦を退けて王座を防衛、世界を驚かせた。4対1という不利の予想を覆しての完勝だっただけに殊勲賞も同時受賞だ。また、11月には44戦全勝のヒルベルト・ラミレス(31=メキシコ)にも完勝(12回判定勝ち)して力のあるところを証明した。21戦全勝(11KO)の戦績が示すようにビボル自身は強烈な光を放つ存在ではないが、来年は同じ階級の3団体王者、アルツール・ベテルビエフ(37=ロシア/カナダ)との頂上決戦が期待される。

井上の活躍については詳しく説明するまでもないだろう。6月にノニト・ドネア(40=フィリピン/アメリカ)を2回で屠ってWBC王座を吸収。12月には逃げまくるポール・バトラー(34=英国)を11回KOで仕留めて4本のベルト収集を終えた。2試合とも相手を圧倒したうえで異なるパターンのKO勝ちを収めている点にも注目したい。よってKO賞もダブル受賞だ。来年のいまごろは4階級制覇王者になっているのではないだろうか。

敢闘賞にはスーパーウェルター級王座を統一したジャーメル・チャーロ(32=アメリカ)と、WBC世界ヘビー級王座を2度防衛したタイソン・フューリー(34=英国)を推したい。チャーロは前年に引き分けたWBO王者のブライアン・カスターニョ(33=アルゼンチン)を10回KOで破り4団体王座を統一。フューリーは自ら引退騒動を引き起こしたが活動を継続し、圧倒的有利の予想のなか2試合とも歴然とした力量差を見せつけた。

技能賞はライト級4団体王者のデビン・ヘイニー(24=アメリカ)と、ヘビー級3団体王者のオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)のふたりだ。ヘイニーはパンチ力に欠けるが、危機回避能力とスキルに長けており、まだ伸びしろが残っている。来年はワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)やジャーボンテイ・デービス(28=アメリカ)との対戦が期待される。ウシクは8月に前王者のアンソニー・ジョシュア(33=英国)を2対1の判定で返り討ちにして初防衛を果たした。フューリーとの4団体王座統一戦が待たれる。

年間最高試合にはチャーロ対カスターニョの再戦を推したい。初戦同様、スタートからスリルに富んだ試合になったが、10回にチャーロが左フックでダウンを奪い、再開後、左ストレートから左ボディブローでタフで勇敢なカスターニョをキャンバスに沈めた。エロール・スペンス(32=アメリカ)対ヨルデニス・ウガス(36=キューバ)のウェルター級3団体王座統一戦、デービス対ローランド・ロメロ(27=アメリカ)のWBAライト級タイトルマッチもエキサイティングな試合だった。ドラマチックな最終回の逆転KO劇、リー・ウッド(34=英国)対マイケル・コンラン(31=英国/アイルランド)も忘れられない。

新鋭賞には先物買いを承知でヘビー級のバホディル・ジャロロフ(28=ウズベキスタン)を挙げておきたい。2018年にプロデビューして8連勝後、2021年の東京オリンピックに出場。スーパーヘビー級で金メダルを獲得後にプロに戻り4勝を上乗せし、現在は12戦全KO勝ちだ。身長201センチ、リーチ206センチ、体重112キロのサウスポーはスピードには欠けるが、破格のサイズとパワーは「これぞヘビー級!」という魅力に溢れている。

この数年、王座統一戦が増えてきているが、その傾向は2023年も続きそうだ。特にウェルター級、ヘビー級、ライトヘビー級、スーパーフライ級などは一本化に期待がかかる。

井上尚弥、世界バンタム級4団体王座統一 スーパーバンタム級進出で4階級制覇に注目

13日に東京・有明アリーナで行われた世界バンタム級4団体王座統一戦、井上尚弥(29=大橋)対ポール・バトラー(34=英国)は井上が11回KO勝ちを収めて4本のベルト収集を成し遂げた。オンラインカジノで25対1という一方的なオッズが出ていたとおり両者間の力量差は大きなものがあり、順当な結果が出たといえる。試合後、すでに井上は1階級上のスーパーバンタム級への転向を宣言しており、今後は4階級制覇に注目が集まりそうだ。今回はスーパーバンタム級王座に挑んだバンタム級王者たちの歴史を紐解いてみよう。

体重が118ポンド(約53.52キロ)以下のバンタム級と126ポンド(約57.15キロ)以下のフェザー級の間にWBCがスーパーバンタム級を新設したのは1976年のことで、翌1977年にWBAが続いた。100年超の歴史を持つヘビー級やライト級、ミドル級などと比べるとスーパーバンタム級は創設から46年と歴史は比較的浅い。

スーパーバンタム級の体重リミットは122ポンド(約55.33キロ)で、バンタム級よりも1.81キロ重く、フェザー級よりも1.82キロ軽い。創設当時は「ジュニアフェザー級」と呼ばれていて、いまもIBFとWBOはその呼称を使用している。一方、WBAとWBCは1998年に「スーパーバンタム級」と呼び方を変えており、日本もそれに倣っている。

46年の歴史を振り返ってみると、バンタム級の現役王者や元王者が世界王座に挑んできた例が数多くみられる。なかでも伝説化しているのが1978年10月28日にプエルトリコのサンファンで行われたウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ)対カルロス・サラテ(メキシコ)戦だ。WBCスーパーバンタム級王座を5連続KO防衛中のゴメスが22戦21勝(21KO)1分、挑戦者でWBCバンタム級王座を8連続KO防衛中のサラテが52戦全勝(51KO)。怪物同士の世紀の一戦だったが、十分な体調をつくれなかったサラテはゴメスの強打を浴びて3度ダウン、5回TKO負けを喫し2階級制覇を阻まれた。このあとゴメスは1982年にはバンタム級から上げてきたルペ・ピントール(メキシコ)も14回TKOで退け、17連続KO防衛を成し遂げている。

日本人関係では元バンタム級王者の辰吉丈一郎(大阪帝拳)が2階級制覇を狙って1996年と1997年の2度、WBCスーパーバンタム級王者のダニエル・サラゴサ(メキシコ)に挑んだが、11回TKO負け、12回判定負けに終わっている。ちなみにサラゴサは辰吉との再戦の3カ月前には同じくバンタム級元王者のウェイン・マッカラー(英国)の挑戦も退けている。

逆に2009年には西岡利晃(帝拳)がメキシコで元バンタム級王者のジョニー・ゴンサレス(メキシコ)を3回TKOで撃退、WBCスーパーバンタム級王座を防衛した例もある。

バンタム級の王者経験者がスーパーバンタム級王座を獲得した例は、ホン・スーハン(韓国)、ウィルフレド・バスケス(プエルトリコ)、ジュニア・ジョーンズ(アメリカ)、ジェフ・フェネック(オーストラリア)、ラウル・ペレス(メキシコ)、ラファエル・マルケス(メキシコ)、アブネル・マレス(メキシコ)、レオ・サンタ・クルス(メキシコ)、ノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)と数多くある。勝敗に関しては選手間の力量や相性の問題が大きいため確かなことはいえないが、データ上は失敗例よりも成功例の方が多いといえる。

スーパーバンタム級進出を明言している井上尚弥は今後、どんな歴史をつくるのだろうか。

チャーロvsチュー戦が決定 4団体王者がベルトを守るか、史上7組目の親子世界王者誕生か

4団体統一王者がベルトを守るのか、それとも史上7組目の親子世界王者が誕生するのか-そんな注目度の高いカードが来年1月28日(日本時間29日)、アメリカのネバダ州ラスベガスで行われることが正式決定した。双子の兄弟世界王者でもあるスーパーウェルター級王者のジャーメル・チャーロ(32=アメリカ)にティム・チュー(28=オーストラリア)が挑むもので、なにかと話題の多い試合だ。

チャーロは双子の兄ジャモールに続いて2016年にWBC世界スーパーウェルター級王者になり、3度防衛後に一度は王座を手放したが1年で奪回。2020年にWBA王座とIBF王座を吸収し、今年5月にはWBO王者に10回KO勝ちを収めて4団体王座の統一を果たした。37戦35勝(19KO)1敗1分と数字上ではKO率は約51パーセントに留まっているが、最近はパンチの切れが増してきている。直近の試合ではポイントでリードを奪った展開のなか、10回に左のショートフックをヒットしてダウンを奪い、再開後には左ボディブローでダウンを追加、19戦無敗のWBO王者を仕留めてみせた。これで2016年以降の10戦(9戦が世界戦)に限ってみれば8勝(7KO)1敗1分とKOのコツをつかんだかのようだ。アメリカの「リングマガジン」のパウンド・フォー・パウンド・ランキングでも9位に入っている。

挑戦者のチューは、1990年代から2000年代にかけて活躍した元WBA、WBC、IBF世界スーパーライト王者、コンスタンチン・チュー(ロシア/オーストラリア)の息子として知られている。6歳でボクシングを始め、アマチュアを経て2016年にプロに転向。以後、6年間で21戦全勝(15KO)の快進撃を続けている。21勝のなかには元世界王者のジェフ・ホーン(オーストラリア)戦、世界挑戦経験者の井上岳志(ワールドスポーツ)戦、テレル・ゲシェイ(アメリカ)戦の勝利も含まれている。重心を低くした構えから前に出て相手にプレッシャーをかけ、重量感のある右ストレート、左フックを狙い撃ちするスタイルは父親とよく似ている。接近戦での右アッパーも強烈だ。

身長174センチ/リーチ183センチのチューに対しチャーロは183センチ/185センチと体格で勝っており、加えてチャーロにはスピードと経験値でアドバンテージがある。そうした点が反映されてかオッズは11対4で4団体王者有利と出ている。

双子の兄弟世界王者チャーロが4本のベルトを守るのか、それともチューが史上7組目となる親子世界王者になるのか。いまから楽しみな一戦だ。

クロフォードがスペンスとの統一戦にらみ6度目の防衛戦 慢心ないかぎり王座移動なし

3階級制覇の実績を持つWBO世界ウェルター級王者、テレンス・クロフォード(35=アメリカ)が10日(日本時間11日)、生まれ故郷でもあるネブラスカ州オマハに同級6位のダビド・アバネシャン(34=ロシア)を迎えて6度目の防衛戦を行う。11月19日にウェルター級3団体王者のエロール・スペンス(32=アメリカ)との統一戦が計画されながら先送りになったクロフォードが、前哨戦ともいえる試合でどんな戦いを見せるのか注目される。

10月中旬に「12月10日、オマハでクロフォード対アバネシャンが決定」というニュースが流れた際、驚くとともに落胆したファンは少なくないはずだ。クロフォードは11月19日にスペンスとの統一戦に臨むものと思われていたからだ。交渉が詰めの段階にきて暗礁に乗り上げていたことは伝えられていたが、年内に別カードが開催されるとは予想外だった。ここは「スペンス戦は近い将来に実現するだろう」というクロフォードの言葉を信じるとして、それを前提に3階級制覇王者が調整試合を挟む選択をしたと理解したい。

クロフォードは昨年11月20日に5度目の防衛戦をこなしてからリングに上がっておらず、もしもスペンス戦が来年3月か4月開催となれば1年4~5カ月のブランクができてしまう。その懸念を払拭する意味があるのだろう。もちろん今回の試合で得る1000万ドル(約13億8000万円)の報酬も魅力には違いない。

クロフォードは2008年にプロデビューし、2014年にWBO世界ライト級王座を獲得。翌2015年にはスーパーライト級でWBO王座に就き、2017年には4団体王座の統一を果たした。これを機にウェルター級に転向し、2018年6月にWBO王座を獲得した。戦績は38戦全勝(29KO)。この8年間の16試合はすべて世界戦で、スーパーライト級王者時代からの連続KO勝ちは9まで伸びている。

挑戦者に抜擢されたアバネシャンは33戦29勝(17KO)3敗1分の戦績を残している好戦的な選手で、2015年にウェルター級のWBA暫定王座を獲得した実績がある(2017年に正王者に昇格)。2019年以降は6連続KO勝ちと好調を維持している。もともと11月19日に別の相手と試合が決まっていたが、クロフォードから対戦オファーが舞い込んだため予定された試合をキャンセルしてオマハ行きを決めたという経緯がある。

ふたりとも左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターだが、スピード、テクニック、攻防のスキルなど個々の戦力ではクロフォードがはるか上を行く。王者が序盤で相手の動きと攻防パターンを読み切った場合、中盤を待たずに勝負が決する可能性もありそうだ。

ただし、アバネシャンが中間距離で振り抜く左右フックには注意が必要だろう。オッズは9対1の大差でクロフォード有利と出ている。

「アバネシャンは6連続KO勝ちを収めている危険な相手。この試合をクリアしたら再びスペンス戦を考える」というクロフォードによほどの慢心がないかぎり王座の移動はなさそうだ。

タイソン・フューリー、かつての好敵手チゾラとの防衛戦は調整試合 ウシクとの統一戦を希望

WBC世界ヘビー級王者、タイソン・フューリー(34=イギリス)の3度目の防衛戦が12月3日(日本時間4日)、同級14位のディレック・チゾラ(38=ジンバブウェ/イギリス)を相手にロンドンで行われる。両者は2011年と2014年に地域王座をかけて戦ったことがあり、フューリーが12回判定、10回終了TKOで連勝している。世界王座をかけて行われる3度目の対決は、当然のことながら圧倒的にフューリー有利と見られている。

フューリーとチゾラが最初に拳を交えたのは2011年7月のこと。当時、22歳のフューリーは14戦全勝(10KO)だった。一方、イギリス国内王座と英連邦王座を保持していた27歳のチゾラも14戦全勝(9KO)で、ホープ同士の対決だった。オッズはわずかにチゾラ有利と出ていた。小柄なチゾラが積極的に仕掛け、体格で勝るフューリーが応戦するというエキサイティングな展開になったが、フューリーは相手のパンチの多くを巧みにブロックして優勢を印象づけ、118対111、117対112、117対112の3-0で判定勝ちを収めた。

再戦は2014年11月、初戦と同じくロンドンで行われた。チゾラ(24戦20勝13KO4敗)の持つEBU欧州王座とWBOインターナショナル王座、さらに空位のイギリス国内王座がかけられた試合だったが、3年前と一転してフューリー(22戦全勝16KO)が左構えでスタート。右ジャブを有効につかってアウトボクシングを展開し、チゾラを懐に入り込ませなかった。初戦のような打撃戦を期待したファンからブーイングも飛んだが、劣勢のチゾラが10回終了時点で棄権して試合は終わった。

その1年後、フューリーはウラジミール・クリチコ(ウクライナ)を攻略してWBA、IBF、WBO3団体統一世界ヘビー級王者になり、引退を挟んで2021年にWBCで返り咲きを果たしている。現在の戦績は33戦32勝(23KO)1分。今年4月のV2戦後に引退を示唆したが翻意し、前3団体王者のアンソニー・ジョシュア(イギリス)に対戦を呼びかけていた。その試合が実現しなかったため、チゾラとの第3戦に臨むことになった経緯がある。

一方のチゾラはフューリーとの再戦に敗れたあとも強豪との対戦を続け、勝ったり負けたりを繰り返しながらも辛うじて世界挑戦圏内をキープしている。2019年から2021年にかけて3連敗を喫したが、今年7月に世界挑戦経験者のクブラト・プーレフ(ブルガリア)を破ってトップ戦線に踏みとどまっているというのが現状だ。戦績は45戦33勝(23KO)12敗。

身長206センチ/リーチ216センチ、体重120キロ前後のフューリーに対し、チゾラは187センチ/188センチ、117キロ前後と体格差は歴然としている。初戦のようにファイター型のチゾラが相手の懐に潜り込めれば勝機は出てくるが、フューリーが再戦のように距離を保った戦いに徹した場合は一方的な試合になりそうだ。オッズは14対1の大差でフューリー有利と出ている。3団体王者のオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)との統一戦を望んでいるフューリーにとっては調整試合といえそうだ。

この日はWBA世界ヘビー級タイトルマッチも組まれており、19戦18勝(17KO)1敗の王者、ダニエル・デュボア(25=イギリス)が、29戦28勝(14KO)1敗のケビン・レリーナ(30=南アフリカ共和国)の挑戦を受けることになっている。パワーで勝るデュボアが10対1で有利と見られているが、スピードのある小柄なサウスポーの挑戦者に手を焼く可能性もある。

ヘビー級トップ戦線は安泰なのか、それとも大きな変化が起こるのか。

ゴンサレス対エストラーダ3度目の対戦迫る 風雲急を告げるスーパーフライ級トップ戦線に注目

井岡一翔(33=志成)がWBO王座に君臨し、前WBO世界フライ級王者の中谷潤人(24=MT)が参入するなど注目度が増しているスーパーフライ級のWBC王座決定戦が12月3日(日本時間4日)、アメリカのカリフォルニア州グレンデールで行われる。元世界4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(35=ニカラグア)と、このクラスを含め2階級制覇の実績を持つファン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)が拳を交えるもの。両者は過去に世界戦で2度対戦して1勝1敗と星を分けており、実力は伯仲している。今回も接戦が予想される。

ふたりが最初に戦ったのは10年前の2012年9月で、このときはWBA世界ライトフライ級王者のゴンサレスがエストラーダを12回判定で退けた。すでに世界的な注目を集めていたゴンサレスが無名の挑戦者に手を焼いたという印象の試合だった。採点は118対110、116対112、116対112の3-0だった。

2度目の対戦は昨年3月で、ゴンサレスがWBA世界スーパーフライ級のスーパー王者、エストラーダがWBC王者としてリングに上がった。試合は初戦よりもさらに競ったものになり、ふたりとも一歩も引かずに最後まで打ち合った。のちに集計されたパンチ数はゴンサレスが1317発、エストラーダが1212発だった。軽量級でも800発パンチを打てば多いといわれるが、ふたりともその1.5倍以上を繰り出したところに意地が感じられる。パワーパンチに限ってみればゴンサレスが883発打って352発命中、エストラーダは817発打って297発命中させたというデータが残っている。採点は際どいものになったが、終盤で印象点を稼いだエストラーダが117対111、115対113でジャッジ二者から支持された。しかし、もうひとりが115対113でゴンサレスを支持したようにゴンサレス優勢と見たファンや関係者の方が多かったようだ。

「年間最高試合」の声も出るほどの激闘だっただけに決着戦が8カ月後に行われることになったが、折悪くゴンサレスが新型コロナウィルスに感染。試合は今年3月にリセットされたが、今度はエストラーダが感染。こうして3度目の対決は再び先送りになり、このほど12月3日に行われる運びとなった。この間、ゴンサレスは今年3月にWBC世界フライ級王者のフリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)に大差の12回判定勝ちを収めて健在ぶりを印象づけている。一方のエストラーダは今年9月、1年半ぶりの試合で無名選手に苦戦、辛うじて12回判定勝ちを収めている。

戦績はゴンサレスが54戦51勝(41KO)3敗、エストラーダが46戦43勝(28KO)3敗。第2戦の印象に加え直近の試合の内容が反映されてかオッズは12対7でゴンサレス有利と出ている。

スーパーフライ級ではWBO王座に井岡が君臨しており、年内にもWBA王者のジョシュア・フランコ(27=アメリカ)との統一戦が計画されている。その勝者に対してWBOは中谷の挑戦を受けることを課している。

風雲急を告げるスーパーフライ級トップ戦線。まずはゴンサレス対エストラーダに注目だ。

グーラミリアン、2年11カ月ぶりリングへ エゴノフも1年8カ月ぶり、両者ブランク吹き飛ばせ

コロナ禍のなか、たび重なる試合延期によって3年近いブランクをつくった世界王者がいる。WBA世界クルーザー級スーパー王者、アーセン・グーラミリアン(35=アルメニア/フランス)だ。「Feroz(獰猛な男)」というニックネームを持つグーラミリアンは19日、フランスでWBA1位のアレクセイ・エゴノフ(31=ロシア)を相手に2度目の防衛戦に臨む。2019年12月28日以来、実に2年11カ月ぶりのリングとなる。

新型コロナウィルスは2020年2月ごろから世界中に感染拡大していったが、ボクシング界もその影響をもろに受けた。その年3月中旬を最後にアメリカをはじめ世界中のイベントが開催見送りとなり、約3カ月の空白ができた。日本でも世界ミドル級スーパー王者の村田諒太(帝拳)の試合が内定しては流れ、結局、今年4月の試合まで2年4カ月のブランクができてしまったほどだ。こうした事情を考慮して各統括団体は結果として活動不活発になってしまった王者から無闇に王座剥奪することを避けてきた。グーラミリアンもそんな対象のひとりといえる。

2019年11月15日に4回KO勝ちでWBA世界クルーザー級スーパー王座を獲得したグーラミリアンは、戴冠からわずか43日後の12月28日に初防衛戦に臨み、9回終了TKO勝ちで王座を守った。翌年、2度目の防衛戦が計画されたタイミングでコロナ禍に突入したため試合が組みにくくなったことは想像に難くない。やっと2020年12月に防衛戦が決まったが、折悪くグーラミリアンが負傷、試合をキャンセルせざるを得なかった。

1年後の2021年12月、今回の相手、エゴロフとの防衛戦が決定したが、今度はグーラミリアンが新型コロナウィルスに感染。試合を中止しただけでなく自身の回復に努めなければならなかった。こうした経緯があって今回、やっとエゴロフを相手に2度目の防衛戦が実現することになったわけだ。

26戦全勝(18KO)のグーラミリアンは積極的に相手を追って左右のフックやアッパーを叩きつけるパワー型のファイターで、小細工なしの分かりやすいボクシングをする。約3年ぶりの実戦に向け、ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)らを指導したアベル・サンチェス・トレーナーと一緒にアメリカのカリフォルニア州ビッグベアで集中トレーニング・キャンプを張り、攻撃力に磨きをかけてきたという。

挑戦者のエゴロフも11戦全勝(7KO)とプロでは挫折を知らないまま王座挑戦のチャンスをつかんだ。筋骨隆々の正統派で、中間距離で打ち込む右ストレートは破壊力がある。グーラミリアンへの挑戦が決まったあと試合がキャンセルになったため、こちらも1年8カ月ぶりのリングとなる。

下馬評はグーラミリアン有利に傾いているが、ともにブランクがあるだけに蓋を開けてみないと分からない不確定要素があるといえる。両者とも精神面でも肉体面でも難しい調整を強いられることになるだろうが、新型コロナウィルスを吹っ飛ばすような思い切りのいいボクシングを見せてほしいものだ。

スペンス対クロフォード 2022年最大の注目ファイトが先送り “賞味期限”を心配する声

2022年最大の注目ファイトになると見られていたウェルター級の4団体王座統一戦、WBA、WBC、IBF王者のエロール・スペンス(32=アメリカ)対WBO王者、テレンス・クロフォード(35=アメリカ)が、先送りになることが確実になった。クロフォードが12月10日に出身地のネブラスカ州オマハで元WBA同級暫定王者のダビド・アバネシャン(34=ロシア)と対戦することになったからだ。夏までに両陣営が対戦合意に至り、発表間近と伝えられただけに落胆したファンや関係者は少なくないはずだ。32歳のスペンス、35歳のクロフォード、ふたりはいつリング上で交わるのだろうか。

7度の世界戦を含め28戦全勝(22KO)の戦績を残しているスペンスと、3階級制覇を成し遂げ38戦全勝(29KO)をマークしているクロフォード。ふたりの頂上決戦が現在のボクシング界で最も注目度の高いカードであることは間違いないだろう。しかし、両者の力量が接近していればいるほど、条件面の詰めは難しいらしい。今回も最後の最後ですれ違いになったようだ。

こうしたなか、この黄金カードの“賞味期限”を心配する声が出始めている。いまのところ両雄に力の衰えは感じられないが、いつまでピークを持続できるかという疑問が芽生えつつあるのだ。

同じ中量級でシュガー・レイ・レナードやマービン・ハグラー、トーマス・ハーンズ(いずれもアメリカ)らスーパースターが何度も直接対決した1980年代を振り返ってみよう。レナード対ハーンズのウェルター級王座統一戦時、レナードが25歳、ハーンズは22歳の若さだった。8年後の再戦時はレナード33歳、ハーンズ30歳だったが、初戦と比べると明らかに両者の力量は落ちていた。ちなみに3回TKOで勝負が決したハグラー対ハーンズは30歳と26歳、その2年後に行われたハグラー対レナードは32歳と31歳だった。

ウェルター級でみると1999年に行われた全勝同士の統一戦、オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)対フェリックス・トリニダード(プエルトリコ)は、ふたりとも26歳だった。試合は噛み合わせの甘いものになったが、両雄とも全盛期だった。

21世紀に入ってからのデータを見ると、スーパーファイトに出場する選手の年齢が上昇傾向にあることが分かる。すなわちデラ・ホーヤ対メイウェザーが34歳と30歳、メイウェザー対サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)は36歳と23歳という世代間の対決だった。

さらに顕著なのが7年前のメイウェザー対マニー・パッキャオ(フィリピン)の対決だ。当時はメイウェザーが38歳、パッキャオが36歳だった。十分に堪能できる試合ではあったが「5年早く実現していたらなぁ」という慨嘆の声が多数あったものだ。

アルバレス対ゴロフキンのライバル対決3試合も同様だ。初戦がゴロフキン35歳、アルバレス27歳だった。1年後の再戦を経て今年9月に行われた3度目の対決時はゴロフキン40歳、アルバレス32歳である。第3戦のゴロフキンに全盛期の動き、迫力が感じられなかったことは残念としか言いようがないが、年齢を考えれば当然といえば当然か。

さて、スペンス対クロフォードだが、早くても実現は来年春になる。スペンスも一戦挟むとなると来夏にずれ込む可能性もある。「機が熟した」となるのか、それともメイウェザー対パッキャオのように「熟し過ぎた」となるのか。

ビボル対ラミレス、全勝の技巧派同士の好カード アルバレス下したビボル有利も番狂わせ十分

WBA世界ライトヘビー級スーパー王者、ドミトリー・ビボル(31=キルギス/ロシア)の12度目の防衛戦が5日(日本時間6日)、同級1位のヒルベルト・ラミレス(31=メキシコ)を相手にUAEアラブ首長国連邦の首都アブダビで行われる。20戦全勝(11KO)のビボル、44戦全勝(30KO)の元WBO世界スーパーミドル級王者のラミレス、高度な技術戦が展開されそうだ。

もともと左ジャブと右ストレートを軸にした堅実なボクシングに定評のあったビボルは2016年5月の戴冠後、4連続KO防衛を果たして早々とスター選手の仲間入りを果たすかと思われた。

ところが一転して2018年8月以降は慎重な戦いぶりが目立ち、5度目の防衛戦以降は12回判定勝ちが続いている。元世界王者のジャン・パスカル(ハイチ/カナダ)、のちに世界王者になるジョー・スミス(アメリカ)らが相手であることを考えれば十分な実績なのだが、アピールが不十分だったことは事実だ。

そんなビボルが11度目の防衛戦の相手として迎えたのが世界的なスター選手、4階級制覇王者のサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)だった。戦前のオッズは4対1で不利だったが、ビボルは体格の利を生かしつつ正確な左ジャブで主導権を握り、終盤には伸びのある右ストレートを打ち込んでアルバレスを追い込む場面もつくった。採点は接近していたが内容的にはビボルの完勝といえるものだった。結果として7連続判定防衛となったものの、それ以前とは価値の異なる勝利だった。ボクサーの総合的な評価ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」では、アメリカの老舗専門誌リング・マガジンで7位にランクされている。

一方のラミレスは2016年4月にWBO世界スーパーミドル級王座を獲得した。このときの戦績は34戦全勝(24KO)だったが、戴冠後は5度の防衛のうち4度が判定勝ちに留まった。ビボル同様、自然と周囲の期待と評価は停滞した。

その一因が減量苦にあったのか、3年前に約3キロ重いライトヘビー級に転向してからは一転して5連続KO勝ちと好調だ。189センチの長身と191センチのリーチを生かしたサウスポーのボクサーファイター型で、好機には左ストレート、右フック、アッパーを思い切りよく上下に打ち分ける。

全勝の技巧派同士の好カードだが、試合が発表されてからオッズは6対1で王者有利が続いている。やはりアルバレスに完勝した実績が高く評価されているようだ。ただ、ビボルはサウスポーとの対戦が5年5カ月ぶりとなるだけに、ラミレスのスタイルに戸惑うことも考えられる。番狂わせの可能性も十分にあるカードだ。

この日はダブルメインとしてシャフカッツ・ラヒモフ(28=タジキスタン)対ゼルファ・バレット(29=英国)のIBF世界スーパーフェザー級王座決定戦も組まれている。6月に尾川堅一(帝拳)を2回KOで破って王座を獲得したジョー・コーディナ(英国)が負傷によって指名試合ができずベルトを剥奪されたことを受け、その後継王者を決める試合だ。17戦16勝(13KO)1分のラヒモフ、29戦28勝(16KO)1敗のバレット。好戦的なサウスポーと左ジャブの名手という興味深い組み合わせといえる。元王者の尾川も再起を宣言しているだけに、こちらにも注目したい。

「ハイテク」ロマチェンコ再起第3戦 「テクニシャン」オルティス倒しヘイニーへ挑戦アピール

2年前まで「パウンド・フォー・パウンド」現役最強の評価を受けていた元世界3階級制覇王者、ワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)が29日(日本時間30日)、アメリカのニューヨーク市で再起第3戦に臨む。相手はライト級でWBC8位、WBO12位にランクされるジャメイン・オルティス(26=アメリカ)。17戦無敗の新鋭を侮ることはできないが、王座奪回に向けロマチェンコがどんなパフォーマンスを見せるかという点に注目が集まる。

ロマチェンコは五輪連覇後にプロに転向し、3戦目にフェザー級、7戦目にスーパーフェザー級、12戦目にライト級王座を獲得した技巧派サウスポーで、「ハイテク(高性能)」というニックネームを持つ。瞬間的に立ち位置を変えながら攻防を組み立て、攻めてよし守ってよしという極めて高度で隙のないボクシングに定評がある。世界中のボクサーのなかで最も高い評価を受けていたのもうなずける。

しかし、30歳を超えたころから故障やブランクが増え、2020年10月には若くて勢いのあるテオフィモ・ロペス(アメリカ)に12回判定負けを喫してライト級王座から陥落した。昨年6月、中谷正義(帝拳)に9回TKO勝ちを収めて再起し、12月には元世界王者のリチャード・コミー(ガーナ)に12回判定勝ちを収めている。戦績は18戦16勝(11KO)2敗。現在はライト級でWBCとWBOで1位、IBFで3位、WBAで4位にランクされている。

一方、「テクニシャン」というニックネームを持つオルティスは半年前までは無名に近い存在だったが、5月に元WBO世界スーパーフェザー級王者のジャメル・ヘリング(アメリカ)に10回判定で完勝し、WBC世界ライト級8位、WBO12位に浮上してきた。戦いの最中に右から左、左から右と頻繁に構えを変える変則のスイッチヒッターで、17戦16勝(8KO)1分と無敗をキープしている。どちらの構えでも細かくジャブを突き、それを突破口にして攻めることが多いがパワーには欠ける。

「ハイテク」と「テクニシャン」の試合だけに技術戦が予想されるが、オッズが14対1でロマチェンコ有利と出ているようにレベルの差は歴然としている。元3階級制覇王者が瞬間移動しながら速くて多彩な左右のコンビネーションを叩きつけて圧倒しそうだ。

ライト級は4団体王座に君臨するデビン・ヘイニー(アメリカ)、WBAレギュラー王座を持つジャーボンテイ・デービス(アメリカ)、そしてロマチェンコの「3強」が並走している状態が続いている。ロマチェンコは新鋭に圧勝してヘイニーへの挑戦をアピールしたいところだ。

井上尚弥対バトラー、4団体王座統一戦12・13決定 2度の“すれ違い”経て実現

バンタム級のWBAスーパー、WBC、IBF王者の井上尚弥(29=大橋)とWBO王者のポール・バトラー(33=英国)が12月13日、東京・有明アリーナで4団体王座統一戦として拳を交えることになった。

直接対決は今回が初めてとなる両者だが、実は過去に2度の“すれ違い”があった。

井上がバンタム級に転向したのは2018年5月25日のこと。東京でWBA王者のジェイミー・マクドネル(英国)に挑戦して1回TKO勝ち、ライトフライ級、スーパーフライ級に続く戴冠で3階級制覇を達成した。

これより20日前の5月5日、バトラーはエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)の持つIBF世界バンタム級王座に挑戦するはずだったが、前日計量で1.5キロ近くも体重超過して失格。試合は行われたが、バトラーは初回に2度のダウンを奪われたすえ大差の12回判定負けを喫した。

この1年後、井上とロドリゲスは階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の準決勝で対戦することになる。ここから先は「たら、れば」を繋ぎ合わせた強引な仮説になるが、もしもバトラーが規定体重でロドリゲスに勝ってIBF王者になり、かつWBSSに参戦していれば、その時点で井上とバトラーは対戦していた可能性があったことになる。

もうひとつは2019年5月18日、英国スコットランドのグラスゴーで行われた井上対ロドリゲスの王者対決の際、バトラーが同じイベントに出場していたという事実だ。この日、バトラーは引き分けを挟んで3連敗中のサルバドル・エルナンデス・サンチェス(メキシコ)と戦い6回KO勝ちを収めている。当時、バンタム級でIBF3位にランクされていたバトラーが井上対ロドリゲスに興味を抱いていないはずはなく、会場のどこかで頂上対決を凝視していたものと思われる。もしかしたら記者会見や前日計量の際、井上とバトラーはすれ違っていた可能性もあるわけだ。当時のことに関して井上は「バトラーも出ていたんですか? 知らなかった」と話している。そもそも井上がバトラーの存在を意識するようになったのは、バトラーがジョンリエル・カシメロ(フィリピン)の持つWBO王座に挑戦することが決まったころ(2021年秋 ⇒ 2022年4月に延期 ⇒ 中止)だったというから、3年半前の時点で気にしていなかったのも当然といえよう。

2度の“すれ違い”を経て実現することになった井上対バトラーの4団体王座統一戦。オッズは25対1で圧倒的に井上有利と出ている。バトラーの勝利は20倍の配当になっているほどだ。それでも井上は「いつものように相手を過大評価して、自分が圧倒的不利だとイメージして(練習に)入っていく」と気を引き締めている。

ますます2カ月後の試合が楽しみになってきた。

ウェルター級4団体王座統一戦スペンス対クロフォード、暗礁に乗り上げる 半年以内に実現するか

ウェルター級のWBA、WBC、IBF王者、エロール・スペンス(32=アメリカ)対WBO王者のテレンス・クロフォード(35=アメリカ)の4団体王座統一戦は当初、11月19日にアメリカのネバダ州ラスベガスで行われる計画だったが、契約の詰めの段階に来て暗礁に乗り上げたと伝えられる。まだぎりぎり年内開催か来年1月か2月に開催の余地はありそうだが、先行きは不透明になってきた。

5年前にIBF王座を獲得し、2019年にWBC王座、今年4月にWBA王座を吸収したスペンスは28戦全勝(22KO)の戦績を誇る。アマチュア時代には2012年ロンドン五輪にも出場しウェルター級でベスト8入りを果たしており、10年以上もエリート街道を走り続けてきたことになる。身長177センチ、リーチ183センチと体格にも恵まれた万能型サウスポーで、「THE TRUTH(本物)」と呼ばれる。

一方のクロフォードはライト級時代にWBO王座を獲得し、2度防衛後に返上。転向したスーパーライト級では主要4団体王座を統一するなど通算6度の防衛を記録した。この王座も返上してウェルター級に転向し、初戦で現在の王座を獲得して5度防衛中だ。構えを左右に変えるスイッチヒッターで、38戦全勝(29KO)の戦績を残している。ライト級から上げてきたこともあり身長173センチと決して大きくはないが、直近の5年間で世界戦9連続KO勝ちと手の付けられない強さを見せつけている。

ちなみにボクサーの強さ指標ともいえるアメリカのリング誌の「パウンドフォーパウンド」ではクロフォードが3位、スペンスが4位にランクされている。

そんな両雄の直接対決はクロフォードが3階級制覇を果たした4年前から期待されてきたが、プロモーターが異なるため交渉は一向に進まないまま時間だけが無為に過ぎていった。しかし、昨年11月にクロフォードがトップランク社を離れてフリーになったことで両陣営は急接近。この夏には「11月19日、ラスベガス開催で基本合意」と報じられた。あとは細かな部分を詰めて発表-と思われた。

ところが、以後は情報が途絶え、最近は「11月19日開催はなくなった模様」と複数のメディアで報じられている。報酬面で折り合いがつかなくなった、再戦条項に関する意見が食い違っている、などと推測が飛び交っているが、真相は不明だ。

こうしたなかIBF1位にランクされるジャロン・エニス(25=アメリカ)が指名挑戦権の行使を主張し、スペンスへの挑戦をアピールするのではないかともいわれている。“三角関係”になってスペンス対クロフォードは先送りという可能性も出てきたわけだ。エニスは30戦29勝(27KO)1無効試合の戦績を残しているスラッガーで、身長178センチ、リーチ188センチと体も大きくて勢いがある。スペンス、クロフォードどちらと戦っても勝つ可能性を持っているスター候補だ。

待望のスペンス対クロフォードは半年以内に実現するのか、あるいは先にスペンス対エニスが行われることになるのか、そして勝者がクロフォードとの統一戦に臨むことになるのか-。ウェルター級戦線、場外戦の行方に注目したい。

ライト級4団体統一王者ヘイニーが前王者カンボソスと4カ月ぶり再戦 存在感示す結果出せるか

スター選手が揃うライト級の4団体統一王者、デビン・ヘイニー(23=アメリカ)が16日、オーストラリアのメルボルンで前王者のジョージ・カンボソス(29=オーストラリア)の挑戦を受ける。両者は今年6月5日に対戦し、そのときはWBC王者のヘイニーがWBAスーパー、WBCフランチャイズ、IBF、WBOの4王座を持っていたカンボソスに12回判定勝ちを収めている。4カ月の短期間で行われる直接再戦はヘイニーが圧倒的有利とみられている。

ヘイニー対カンボソスの初戦はメルボルンのマーベル・スタジアムに4万人超の観衆を集めて行われた。カンボソスは地元ファンの期待に応えようとしたが、闘志が空転。ヘイニーのスピードとテクニックの前に見せ場をつくれないまま敗れた。採点は118対110がひとり、116対112がふたり、完敗といえる内容だった。プロ21戦目にして初の敗北(20勝10KO1敗)を喫し4本のベルトを失ったカンボソスだが、意気消沈している間もなくダイレクト・リマッチを要求。初戦の際の契約に基づいて今回の試合が行われることになった。

再戦はメルボルンのロッド・レーバー・アリーナで行われる。集客数は約1万5000人で、マーベル・スタジアムの3分の1程度となる。これがそのままカンボソスに対する地元の期待度ということになりそうだ。初戦はヘイニー有利のオッズだったが5対4と接近。しかし、今回は8対1と大差がついている。「両者の力関係は初戦で証明済み」という見方が多いようだ。28戦全勝(15KO)のヘイニーが冷静にカンボソスの動きを見極めてテクニックでコントロール、ポイントを積み重ねていく可能性が高い。

今回の再戦よりも、むしろファンや関係者の関心はヘイニーの近未来、つまりいつ元王者のワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)やWBAレギュラー王者のジャーボンテイ・デービス(27=アメリカ)と戦うのかという点に移っている感がある。そのためにもヘイニーは存在感を示す内容と結果を出す必要があるといえる。

この日は前座でWBC世界バンタム級挑戦者決定戦、1位のジェイソン・マロニー(31=オーストラリア)対2位のナワーポン・ソールンビサイ(31=タイ)の12回戦が組まれている。いうまでもなくWBCの世界バンタム級王者は井上尚弥(29=大橋)だが、この試合の勝者が井上に対する最優先挑戦権を手にするというわけだ。ただし井上は12月にWBO王者のポール・バトラー(33=英国)との4団体王座統一戦が計画されており、その試合後にスーパー・バンタム級に転向することが既定路線となっている。2年前、井上に7回KOで敗れたマロニーが悲願の戴冠に王手をかけるのか、それとも58戦56勝(46KO)1敗1分の戦績を誇るナワーポンが初の国外試合で力を発揮するのか。メインともどもメルボルンから届く結果を楽しみに待ちたい。

ユーバンク・ジュニア対ベン 親子2代にわたる壮大なライバル対決、どんな形で決着するか

元WBA暫定世界ミドル級王者のクリス・ユーバンク・ジュニア(33=英国)と、ウェルター級の世界ランカー、コナー・ベン(26=英国)が10月8日(日本時間9日)、英国ロンドンで対戦する。このふたりは、父親がともに元世界2階級制覇王者で1990年代前半に2度対戦したことがある。つまりユーバンク家とベン家は親子2代にわたってライバル関係にあるわけだ。親はユーバンクが1勝1分と勝ち越したが、はたして息子たちは?

父ユーバンクと父ベンは1990年11月に初対戦し、ユーバンクが9回TKO勝ちを収めてWBO世界ミドル級王座を奪い取った。最後は挑戦者のユーバンクが連打でレフェリー・ストップに持ち込んだのだが、それまではジャッジ二者が1ポイント差で王者のベン有利と採点していた接戦だった。1993年10月、ふたりは再び拳を交える。今度はユーバンクがスーパー・ミドル級のWBO王者、ベンがWBC王者として統一戦に臨んだのだ。結果は115対113(ユーバンク)、114対113(ベン)、114対114の三者三様のドローだった。この試合の観衆が4万7000人だったことでも両者の人気ぶりが分かるだろう。その後、ユーバンクはWBO王座の防衛回数を14まで伸ばしたが1998年に引退。ベンは9度防衛後、1996年の試合を最後に引退した。戦績はユーバンクが52戦45勝(23KO)5敗2分、ベンは48戦42勝(35KO)5敗1分。

そんな英雄ふたりの息子同士が対戦するのだから話題にならないはずがない。

ユーバンク・ジュニアは2011年11月にプロデビューし、2015年と2019年の2度、WBA暫定世界ミドル級王座を獲得している。自分から攻めて出るボクシングもできる一方、相手に攻めさせておいてカウンターを合わせる迎撃ボクシングもできる。ワンツー、左フック、右アッパーなどパンチは多彩だ。戦績は34戦32勝(23KO)2敗。現在は72.5キロが体重上限のミドル級でWBO2位、WBC3位にランクされている。

対するベンは2016年4月にプロデビューし、6年間で21連勝(14KO)をマーク。実績面ではユーバンク・ジュニアに及ばないが、2018年に獲得したWBAコンチネンタル王座を7度防衛中だ。特に直近の5試合は元世界王者ら強豪を相手に圧勝しており勢いを増している。卓抜したスピードと切れのあるワンツー、左ボディブローなどが主武器だ。66.6キロがリミットのウェルター級でWBAとWBOで4位、WBCとIBFで5位にランクされている。

本来ならばベスト体重が約6キロ異なるが、両者が歩み寄って157ポンド(約71.2キロ)の契約体重で試合が行われる。しかし、ユーバンク・ジュニアが身長180センチ、ベンが173センチと体格差は歴然で、実際にふたりが並ぶと一回り違う。それもありオッズは2対1でユーバンク・ジュニア有利と出ている。

「体重をつくることは厳しいが、それだけの価値がある試合だと思う。私にとって最も重要な試合」とユーバンク・ジュニア。ベンも「これは運命、避けては通れない戦い。タイトルやランキングは関係なく、私たちファミリーにとっては終わっていない試合なんだ」と父の仇討ちに意気込む。

親子2代にわたる壮大なライバル対決。どちらがどんなかたちでけりをつけるのだろうか。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。