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au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

超大型フューリー対正統派ジョシュアの王者対決期待

6月にも欧米で世界王者を含むトップ選手たちの試合が再開されそうな気配になってきたものの、まだCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)が予断を許さない状況であることに変わりはない。こうしたなか、今回はトップ選手として身長206センチ、直近の試合では124キロ近い体重だった超大型のWBC世界ヘビー級王者、タイソン・フューリー(31=英国)を紹介したい。

英国マンチェスター出身のフューリーは、予定日より2カ月半も早く生まれたため体重は450グラムほどの未熟児だった。30年以上経った現在、120キロを超える巨体になると誰が予想しただろうか。ちなみに、「タイソン」というファーストネームは当時の世界ヘビー級王者から拝借したのだという。

ヘビー級の元プロボクサーだった父親の影響でボクシングを始め、

アマチュアで35戦(31勝4敗)したあと20歳でプロデビュー。英国王座や英連邦王座などを獲得して順調にトップ戦線に躍り出たが、当時は色物扱いされることもあった。大柄ではあるものの構えを左右にスイッチするなど戦い方がトリッキーで迫力を欠く傾向があったことが主因だったといえる。また能弁なのは存在をアピールするうえで役に立ったが、それを快く思わない人も少なくなかったようだ。

そうしたなか15年11月、ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)のV19を阻止して3団体統一王者になったことで評価が急上昇した。しかし、最高位についたプレッシャーからかアルコールやドラッグに逃げ場を求めることになり、その結果として王座を放棄して一時は引退してしまった。

2年半のブランク後に戦線復帰を果たし、以後は6戦5勝(3KO)1分をマークしている。復帰3戦目ではWBC王者のデオンタイ・ワイルダー(米国)に挑戦し、2度のダウンを喫しながらドローという結果に終わった。それを受けて行われた今年2月の再戦では2度のダウンを奪って7回TKO勝ち、最高位に返り咲いた。このときは初戦よりも7キロ重い体重で試合に臨み、細身のワイルダーに圧力をかけて攻め落とすなど戦略面でも優れたものをみせたものだ。通算戦績は31戦30勝(21KO)1分。

現在、ヘビー級には3団体(WBA、IBF、WBO)統一王者としてアンソニー・ジョシュア(英国)がいる。昨年6月、格下に7回TKO負けを喫したジョシュアだが、半年後に大差の判定で雪辱して返り咲きを果たしている。こちらは24戦23勝(21KO)1敗の正統派強打者で、英国での試合では9万人の大観衆を集めたこともある人気者だ。

いま、そんな両雄の頂上対決がいつ行われるのかという点にボクシングファンの興味が集まっている。一時、フューリーとワイルダーの第3戦が夏に計画されたが、コロナ禍の影響で秋以降に延期された。その間にフューリー対ジョシュアという英国人王者対決が浮上しているのだ。大柄で変則なフューリー、五輪金の実績も持つ正統派のジョシュア。タイプの異なる王者同士の大一番が実現することを期待したい。

井上尚弥の転級待つナバレッテら北米での試合具体化

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行が収まらない状況に変わりはないが、世界各地で経済活動再開の動きが出始めている。

すでにボクシングも4月下旬に中米ニカラグアや韓国が中堅どころの試合を中心にしたイベントを催したが、今度は北米で世界王者たちの試合が具体化してきている。

メキシコでは6月6日にWBO世界スーパー・バンタム級王者のエマヌエル・ナバレッテ(25=メキシコ)がメキシコシティーで試合をする計画だと伝えられる。無観客イベントとしてテレビ局のスタジオにリングを設置して試合を行い、それをテレビ中継する予定だ。保健当局の特別許可が出るのを待っている状態だという。

ナバレッテは32戦31勝(27KO)1敗の戦績を残している攻撃型の選手で、18年12月に戴冠を果たしてから1年5カ月の間に5度の防衛をこなしている“戦うチャンピオン”だ。1階級下の井上尚弥(27=大橋)が転級してくるのを待っている状態で、「井上に勝てば評価が上がる。もちろん勝つ自信はある」と吹いている。若くて勢いがあるだけに、陣営としてもブランクは最小限に食い止めたいのだろう。

6月9日にはWBO世界フェザー級王者のシャクール・スティーブンソン(22=米国)がラスベガスで試合を計画している。16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)バンタム級銀メダリストのスティーブンソンは3月14日にニューヨークで初防衛戦を行う予定だったが、コロナ禍のため直前になって中止になった経緯がある。次戦はノンタイトル戦になる模様で、試合内容が良ければスーパー・フェザー級に転向する可能性が高い。スティーブンソンは13戦全勝(7KO)の伸び盛りの逸材で、ナバレッテと同じように空白期間を短く抑えたい意向があるようだ。

昨年5月に伊藤雅雪(29=伴流⇒横浜光)からWBO世界スーパー・フェザー級王座を奪ったジャメル・へリング(34=米国)には、7月2日にラスべガスで2度目の防衛戦を行うプランが浮上している。プロモートするトップランク社が計画を明らかにしたもので、スティーブンソンと同様、テレビ局のスタジオで無観客試合として挙行、それが放送される予定だ。

へリングは12年ロンドン五輪に出場した経歴を持つ技巧派サウスポーで、プロでは23戦21勝(10KO)2敗の戦績を残している。再戦と雪辱を目指す伊藤にとってもヘリングの動きは気になるところといえよう。

依然としてCOVID-19は予断を許さない状況であることに変わりはないが、これらの試合が決行されることを多くのボクシングファンが願っている。

誰が一番強いか WBSSシーズン3スタートに期待

井上尚弥(27=大橋)がバンタム級で優勝するなどして日本でも注目を集めた階級最強決定トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」はシーズン3の開催が期待されているが、COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の影響で年内の開始は厳しくなった。チーフ・オフィサーのカレ・ザワランド氏は、「来年1月にスタートさせたい」と話している。

WBSSはスイスを活動拠点とするザワランド・イベント社や、元世界5階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン/米国)らを擁する米国のリングスポーツ社などが提携して2017年9月にスタートした。第1回大会はクルーザー級とスーパー・ミドル級の2階級で実施。原則として出場資格を世界王者と世界ランキング15位以内の選手に絞り、各階級8人が参戦した。

クルーザー級には主要4団体の王者すべてがエントリーしたため、準決勝2試合と決勝は統一戦となった。その結果、オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)が優勝し、試合報酬に加え1000万ドル(約10億6000万円)の賞金を得た。スーパー・ミドル級は途中で欠場者が出るなどしたが、本命視されていたカラム・スミス(英国)が勝ち抜いてWBAスーパー王座を獲得して優勝した。

団体や国の壁を越えて「その階級で誰が一番強いのか」という分かりやすい構図のトーナメントだけに、ファンや関係者へのアピールは絶大だった。

それを受け18年秋から19年秋にかけてシーズン2が3階級で実施され、バンタム級で井上、スーパー・ライト級でジョシュ・テイラー(英国)が優勝した。ふたりとも他団体王者との競り合いを制して評価を上げ、それを機に世界的なスター選手の仲間入りを果たしたといえる。

ただ、シーズン1に続いて実施されたクルーザー級では、決勝戦が19年12月から今年3月、さらに5月と延期されたすえ、コロナ禍の影響で現時点では具体的な開催日程が立てられない状況となっている。

主催者側はシーズン3を開催する方向で検討しているというが、前回大会の決勝戦を前に次の大会を開始するわけにもいかない。「5月の予定(クルーザー級決勝戦)がキャンセルになったばかりなので、いまは状況を見ているところ」(ザワランド氏)という。

財政面では大きな問題を抱えているといわれるWBSSだが、ファンの注目や期待は高いものがある。ザワランド氏は次回大会を2階級に絞る考えがあると明かしている。そのうえで「2021年1月にシーズン3をスタートさせたい」と話している。

実施される場合はどの階級になるのか、日本人選手の参戦はあるのか-コロナ禍が終息した先の話とはいえ興味は尽きない。

6人王者擁す英国などボクシングイベント再開の動き

まだまだCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の勢いは衰えていないが、そんな状況下で見切り発車的に世界各地でボクシングのイベント再開の動きが出てきている。すでに4月25日(日本時間26日)に中米ニカラグアで8試合、26日には韓国で3試合が行われたばかりだ。このあともニカラグア、メキシコ、ポーランドなどで数試合が行われる予定で、時期尚早の声があるなか不安と期待の入り混じったイベント開催となりそうだ。

4月25日にニカラグアの首都マナグアで開催されたイベントでは、選手やトレーナーなどがマスクをして入場。マスク着用が義務づけられた観客は隣の席と2メートルほどの距離を空けて座った。ゴム手袋をしたレフェリーは試合中もマスクを外すことがなく、普段とはかけ離れた光景といえた。

この日の8試合をプロモートした元世界2階級制覇王者のロセンド・アルバレス氏は5月16日にもマナグアで試合を挙行する予定で、すでに世界挑戦経験者のフランシスコ・フォンセカ対エウセビオ・オセホというニカラグア人同士のカードをメインとして組んでいる。4月のイベントと同じ会場が予約されており、次回も観客を入れて挙行することになるという。

その1週間後の5月23日にはメキシコのミチョアカン州パツクアロでも5試合が行われる予定だ。このイベントは同地出身の元IBF世界スーパー・ウエルター級王者のカルロス・モリナ(メキシコ/米国)がプロモートするもので、モリナ自身がメインカードに出場すると発表されている。当日は5試合が予定されているが、無観客試合として行われるという。

さらに6月12日にはポーランドのコナリーで、マリウス・ワフ(ポーランド)対ケビン・ジョンソン(米国)というヘビー級の元世界ランカー対決が組まれている。ふたりとも世界挑戦経験者だが、ともに40歳でピークを過ぎて久しい。現状を考えるとこのあたりのマッチメークが精一杯なのかもしれないが、主催者は無観客で行うこのイベントを課金システムのペイ・パー・ビュー(PPV)で放送するとしている。どのくらいの契約が取れるのかという点にも注目したい。

このほか英国でも再開の動きが出ており、条件が整えば7月にもボクシングのイベントが開催される可能性があると伝えられる。ヘビー級3団体王者のアンソニー・ジョシュア、WBCヘビー級王者のタイソン・フューリーら6人の世界王者(暫定王者を含めれば8人)を擁する英国だけに、どんなイベント形態をとるのか、こちらも世界的な注目を集めそうだ。

目まぐるしく変わったデビン・ヘイニーの王者の肩書

昨年9月から今年4月までの間に、暫定王者 ⇒ 正王者 ⇒ 休養王者 ⇒ 正王者 と肩書が次々に変わった世界王者がいる。WBCライト級王者のデビン・ヘイニー(21=米国)のことだ。7カ月前の戴冠後にヘイニーは防衛戦を1度こなしただけだが、自身の肩の手術やCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響を受けたかたちとなった。

アマチュアを経て17歳でプロデビューしたヘイニーは才能に恵まれた中量級のスター候補で、「ザ・ドリーム」というニックネームを持つ。昨年9月、期待に応えるように20歳の若さでWBC世界ライト級暫定王座を獲得してみせた。翌月、正王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が「フランチャイズ(特権)王者」にスライドしたのを受け、暫定王者から正王者へと昇格した。11月には初防衛にも成功したが、この試合で右肩を痛めたため手術。6カ月間は試合ができないことから12月には一転してWBCから休養王者に格下げされてしまった。空位になった王座は1位のハビエル・フォルトゥナ(ドミニカ共和国)と2位のルーク・キャンベル(英国)で争われることになり、4月17日に米国東海岸で決定戦が挙行されることが決まった。

この間、ヘイニーは正王者への復帰を主張し、いったんはWBCが王座返還に動いた。しかし、今度はフォルトゥナ陣営とキャンベル陣営が異を唱えたため、ヘイニーは休養王者の地位に留められたという経緯がある。

こうしたなか4月22日にWBCの役員投票が行われ、その結果、晴れてヘイニーの正王座復帰が認められた。また戦線復帰となる次期防衛戦では自由に対戦相手を選べることも確認された。元の鞘に収まったかたちだが、ヘイニーにとっては最良の裁定が出たといっていいだろう。フォルトゥナ対キャンベルの試合がCOVID-19の影響で延期されたことがヘイニーにはプラスに作用したといえるかもしれない。ちなみにフォルトゥナ対キャンベルは暫定王座決定戦として挙行される予定(開催日時や場所は未定)で、勝者にはヘイニーとの団体内統一戦が課されている。

24戦全勝(15KO)のヘイニーは早ければ7月にもリングに上がれる状態だというが、もちろんCOVID-19の鎮静化が大前提となる。とにかく一日も早くコロナ禍が終息してほしいものだ。

ルイス対タイソン裁いたエディ・コットン氏コロナ死

2002年に行われた世界ヘビー級タイトルマッチ、レノックス・ルイス(英国)対マイク・タイソン(米国)の大一番を裁いたレフェリーとして知られるエディ・コットン氏(米国)が米国時間の17日朝、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のためニュージャージー州パターソンの病院で亡くなった。72歳だった。コットン氏は2週間ほど前から入院していたという。

アマチュアボクシングの審判員だったコットン氏は1992年7月、プロのレフェリーとして“デビュー”。3年後には早くもIBF世界スーパー・フェザー級王座決定戦の主審を務め、その後、元世界ヘビー級王者、ジョージ・フォアマン(米国)の試合のレフェリーも務めた。98年以降はIBFやWBCで世界戦の主審として起用される機会が増え、南アフリカ共和国やカザフスタンなど国外でも重要な試合を裁いた。

コットン氏の名前が世界的に知られるようになったのは、2002年6月8日に米国テネシー州メンフィスで行われたルイス対タイソンのWBC、IBF世界ヘビー級タイトルマッチのレフェリーを務めたからといっていいだろう。この試合は同年4月にラスベガスで開催される予定だったが、1月の発表会見時に挑戦者のタイソンがルイスに殴りかかり、止めに入ったルイス陣営のガードマンと揉み合いになるというトラブルが発生。これを理由にイベントを管理するネバダ州アスレチック・コミッションがタイソンにライセンスを発給しなかった。これを受けて日程と試合地を変更してメンフィスで開催されることになったという経緯があった。そのため両者が鉢合わせしないように試合前日の計量時間をずらしたり、試合当日もゴング前の“フライング戦闘”を防ぐためにリング中央部分にガードマンが配置されるなどピリピリしたムードのなかで戦いは行われた。すでにタイソンに全盛期の力はなかったが、こうした“前哨戦”もあって世界的な注目を集めた試合だった。

この大一番のレフェリーを務めたのがコットン氏だった。2回からルイス優勢で進んだ試合は8回、2度目のダウンを喫したタイソンに10カウントが数えられて決着をみた。コットン氏はクリンチの際に小柄なタイソンに体重を乗せるルイスに減点を科したり(4回)、8回には大きく腰を落としたタイソンにダウンを宣告するなど物議をかもす判断はあったものの、まずは大きな問題もなく裁いた。

これを機に、最重量級選手に劣らぬ体格のコットン氏はライト・ヘビー級、クルーザー級、ヘビー級など重い階級の世界戦に起用されるケースが増えた。世界ヘビー級王者、ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)のタイトルマッチでは4度、レフェリーを務めている。このほかWBA世界ミドル級王者時代のゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)のV8戦や、無冠時代のタイソン・フューリー(英国=現WBC世界ヘビー級王者)の試合も裁いた。14年にレフェリーを引退するまでの22年間で世界戦の主審を務めた回数は主要4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)だけで40回を超える。

引退後はニュージャージー州に本部があるIBFの役員を務め、15年12月に東京・有明コロシアムで行われた八重樫東(大橋)対ハビエル・メンドサ(メキシコ)のIBF世界ライト・フライ級タイトルマッチの際にはスーパーバイザーとして来日した。同職は、COVID-19が蔓延して世界各地で試合が中止、延期される直前の今年2月まで務めた。

一緒にゴルフをする仲だったというWBOのフランシスコ・バルカルセル会長(プエルトリコ)は「彼はレフェリーとしても、ひとりの人間としても優れた人物だった」と故人を偲んでいる。

「いま最も稼ぐファイター」4階級制覇アルバレス

新型コロナウィルスの感染拡大の影響でボクシングのイベントも中止や延期が相次いでおり、しばらくは選手もファンも我慢を強いられることになる。そこで、この機会に世界のトップボクサーたちを改めて紹介しておきたい。まずは、「いま最も稼ぐファイター」として知られる4階級制覇王者、サウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)をピックアップしてみよう。

アルバレスは1990年7月18日、メキシコのハリスコ州グアダラハラで生まれた。8人きょうだいの7男で、妹がひとりいる。兄弟7人は全員がプロボクサーになり、そのうち12歳上の兄リゴベルトはWBA世界スーパー・ウェルター級暫定王者になっている。ちなみにアルバレスの愛称でもある「カネロ」はシナモンのことで、髪の毛が赤いことからそう呼ばれているという。

兄たちに勧められて13歳でボクシングを始め、アマチュアで46戦44勝2敗(他説あり)の戦績を残し、15歳3カ月でプロデビューした。

順調に白星を重ね11年3月、20歳の若さでWBC世界スーパー・ウェルター級王座を獲得。WBA王者との統一戦でも勝利を収めるなど6度の防衛を果たしたが、23歳のときにフロイド・メイウェザー(米国)に判定負けを喫して王座を失った。これがキャリアで唯一の黒星だ(56戦53勝36KO1敗2分)。

その後、ミドル級で2度王座を獲得したあとスーパー・ミドル級も制覇し、これらの王座を持ったまま昨年11月にはライト・ヘビー級でも戴冠を果たした。1938年のヘンリー・アームストロング(米国)に次ぎ、史上ふたりめの「3階級の世界王座を同時保持したボクサー」になった。現在は異なる階級の王座を同時に保持することはルールで禁じられているのだが、この規定を曲げてまでも各団体はアルバレスを優遇している。なぜなら彼が“金の生る木”でもあるからだ。アルバレスは18年秋にDAZNと「5年間に11試合、3億6500万ドル(約400億円)」という超大型契約を交わしたほどで、ボクシング界を代表するスター選手なのだ。

もちろん実力も折り紙つきだ。高い攻撃能力を持つ一方、防御技術にも優れ、打たれ強いうえスタミナも旺盛。直近の9戦はすべて現役王者か元王者が相手で、対戦相手の質という点でも申し分ない。特に昨年11月には体格で大きく勝るライト・ヘビー級王者のセルゲイ・コバレフ(露)を痛烈な11回KOで下し、評価を大きく上げている。米国の老舗専門誌「リングマガジン」はバンタム級の井上尚弥(大橋)やライト級のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)らを抑えて、アルバレスを全階級を通じて最強を意味するパウンド・フォー・パウンドのNO・1に推している。

本来ならばアルバレスは5月2日にWBO世界スーパー・ミドル級王者のビリー・ジョー・サンダース(英国)と対戦するはずだったが、コロナ禍の影響で見送られた。9月12日には過去2戦1勝1分のIBF世界ミドル級王者、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との決着戦がプランに上がっているが、もちろん確定には至っていない。さらに12月にはWBA世界ミドル級王者の村田諒太(帝拳)との対戦も計画されているが、これも流動的といわざるを得ない状況だ。

すでに15年のプロキャリアを持つアルバレスは、この7月に30歳の誕生日を迎える。これからが円熟期といえそうだ。

コロナ禍KO後はヘビー級4強による最強決定戦だ

新型コロナウィルスの感染拡大の影響でボクシングも世界中のイベントが中止や延期に追い込まれているが、このたび6月20日に英国で予定されていた3団体統一世界ヘビー級タイトルマッチ、アンソニー・ジョシュア(30=英国)対クブラト・プーレフ(38=ブルガリア)も延期が決定した。本来ならば、5月から7月にかけてヘビー級トップ戦線は大きく動くはずだったが、それも夏以降にスライドすることになった。

ジョシュア対プーレフは6万人以上の収容能力を持つロンドンのトッテナム・ホットスパー・スタジアムで行われる予定だった。昨年12月にWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を取り戻したジョシュアの初防衛戦として挙行されるはずだったが、試合まで2カ月半前に日程変更が決まったことになる。もともと両者はジョシュアの第1次政権時代の2017年10月に戦う予定だったが、プーレフが肩を痛めたため試合2週間前に辞退した経緯がある。前回とは異なる理由だが、38歳のプーレフにとっては時間が惜しいはずだ。

ヘビー級では、5月2日に英国のマンチェスターで行われるはずだったWBC暫定王者ディリアン・ホワイト(31=ジャマイカ/英国)対元WBA王者アレクサンデル・ポベトキン(40=露)のタイトルマッチが7月4日に延期されることが発表されたばかりだった。 

さらに5月23日にロンドンで予定されていたWBA3位、WBC2位、IBF3位、WBO1位のオレクサンデル・ウシク(33=ウクライナ)対WBA9位、WBC12位、IBF9位、WBO9位のディレック・チゾラ(36=ジンバブエ/英国)の12回戦も延期が発表されていた。

これだけではない。正式発表こそなかったものの7月18日に米国で計画されていたWBC王者タイソン・フューリー(31=英国)対前WBC王者デオンテイ・ワイルダー(34=米国)の3度目の対決も早々と秋に延びることが主催者から明かされている。

現在、ヘビー級は「4強」-ワイルダーを倒して戦闘に躍り出た超大型のフューリー(31戦30勝21KO1分)、ビジネス面の軸になる正統派のジョシュア(24戦23勝21KO1敗)、米国の威信を背負っている爆発的な強打者のワイルダー(44戦42勝41KO1敗1分)、そしてサウスポーの技巧派で元クルーザー級4団体統一王者のウシク(17戦全勝13KO)-による熾烈な頂上争いが繰り広げられている。

実際の対決は少し先に延びることになったが、いまはファンが個々に仮想対決で最強を占うことで我慢するしかなさそうだ。そして、コロナ禍をKOしたあとは「4強」による最強決定戦を実現させてほしいものだ。

アルバレス対ゴロフキン第3戦の行方 村田が最注目

新型コロナウイルス禍が衰えをみせないため、ボクシングも3月と4月の試合が世界中で中止や延期となった。5月に予定されている試合も予断を許さない状況だが、一方で鎮静化を見据えてビジネス交渉が進められているケースもある。そのひとつとして、世界的なスター選手として知られるサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)対ゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)の第3戦が挙げられる。状況が好転することを前提に9月12日に対戦するプランが具体化しているのだ。

両者は17年9月、WBAスーパー、WBC、IBF王者だったゴロフキンの19度目の防衛戦で拳を交え、三者三様の12回引き分けに終わった。その後、ゴロフキンはIBF王座を剥奪されたが、WBAスーパー王座とWBC王座をかけて18年9月にアルバレスと再戦。今度も接戦になったが、微妙な判定でアルバレスが勝利を収めた。その後、雪辱を狙うゴロフキン陣営が3度目の対決を求めたが、「もう決着はついた」とアルバレス側が応じていなかった。

こうしたなかアルバレスは18年秋にDAZNと「5年間に11試合、計3億6500万ドル(約400億円)」の高額契約を結び、3試合をこなしてきた。現在、アルバレスはミドル級のWBAスーパー王座とWBCフランチャイズ(特権)王座、さらにスーパー・ミドル級のWBA王座を保持している。これを追うようにゴロフキンも昨春にDAZNと契約。こちらは「3年間に6試合、1億ドル(約110億円)」と伝えられる。IBF王座を獲得した昨秋の試合を含め2戦を消化している。

1年半ほど対戦を拒んできたアルバレスが、ここにきてゴロフキンとの第3戦に色よい返事をしたのは、ライバルに顕著な衰えが見られるためと推測される。ゴロフキンは直近の試合では判定で勝ちはしたもののボディーブローを浴びて後退するなど弱点を暴露。リング上で対峙するだけで相手を圧倒してきたオーラは完全に失せていた。4月8日に38歳の誕生日を迎えることもあり、峠を過ぎて久しいという見方が多い。通算戦績は42戦40勝(35KO)1敗1分けだが、17年以降の6戦に限っては4勝(2KO)1敗1分けと勝率もKO率も落ちている。

これに対し7月に30歳になるアルバレスはゴロフキンと引き分けたあとは再戦の勝利を含め4連勝(2KO)中で、昨年11月にはWBOライト・ヘビー級王者のセルゲイ・コバレフ(36=露)を豪快11回KOで屠るなど絶好調だ。通算戦績は56戦53勝(35KO)1敗2分け。ちなみに初戦、再戦ともオッズはイーブンに近かったが、第3戦は2対1で大きくアルバレス有利に傾いている。

両雄の決着戦を期待する関係者やファンは多いが、越えるべきハードルもある。最たるものが新型コロナウイルスの問題であることはいうまでもないだろう。早期の鎮静化を願うばかりだ。加えて、アルバレスは5月2日に予定されながら延期したWBOスーパー・ミドル級王者ビリー・ジョー・サンダース(30=英国)との統一戦をどうするかという問題を抱えている。ゴロフキンにもIBF最上位のカミル・シェルメタ(30=ポーランド)戦が課されている。これらの試合を先送りする交渉が順調に進んだ先にアルバレス対ゴロフキン第3戦があるといえる。

もうひとつ大事なことを加えるならば、この試合の行方はWBA王者の村田諒太(34=帝拳)の近未来にも関係してくるという点だ。村田はアルバレスとの対戦を熱望しており、一時は5月実現の方向で交渉が進んでいたが、12月に延びたと伝えられる。アルバレス対ゴロフキン第3戦が計画どおり9月12日に行われるのか、どちらが勝つのか-もしかしたら両者の決着戦を最も注目しているのは村田かもしれない。

メイウェザー氏を悼む 甥フロイド5階級制覇支える

1980年代にスーパー・フェザー級とスーパー・ライト級の2階級を制覇した元世界王者、ロジャー・メイウェザー氏(米国)が3月17日、糖尿病からの合併症のため亡くなった。58歳だった。引退後にトレーナーに転身したメイウェザー氏は、甥でもあるフロイド・メイウェザー(米国)の5階級制覇を手助けするなど指導者としても実績を残した。

米国ミシガン州グランドラピッズ出身のメイウェザー氏は9歳上の兄フロイド・シニア、4歳下の弟ジェフとともに3兄弟ボクサーとして知られるが、世界王者になったのはメイウェザー氏だけだった。

アマチュアを経て81年に20歳でプロデビュー。83年1月には、来日経験もある技巧派のサムエル・セラノ(プエルトリコ)に8回TKO勝ちを収めてWBA世界スーパー・フェザー級王座を獲得した。初陣からわずか1年半後、15戦目のことだった。3度目の防衛戦で王座を失ったのを含め3年間に5敗するなど一時は限界をみせたかと思われたが、2階級上のスーパー・ライト級に転向して息を吹き返した。87年11月、浜田剛史(帝拳)と1勝1敗のWBC王者、レネ・アルレドンド(メキシコ)に6回TKO勝ちを収めて2階級制覇を達成。この王座は1年半の間に4度の防衛を果たした。

171センチの身長に対しリーチが187センチと長いメイウェザー氏は、中長距離から繰り出す多彩な左で相手を戸惑わせ、そこに右ストレートを打ち込むスタイルを確立。その切り札と獰猛な戦いぶりから「ブラックマンバ(毒蛇)」の異名があった。無冠になってからも戦い続け、99年に引退するまで12度の世界戦(8勝6KO4敗)を含め72戦59勝(35KO)13敗の戦績を残した。強打の半面、打たれもろい欠点があり、それがスター選手への壁になったともいえる。

引退後、メイウェザー氏は兄の子、フロイド・メイウェザー・ジュニアのトレーナーを務め、甥の5階級制覇をサポートした。特に兄とジュニアが仲たがいした時期には先輩王者として、また叔父としてスーパースターを支えた。

トレーナーとしては2000年から13年ごろまで活動したが、50歳を迎えたころから体調を崩したため一線を退いた。以後は健康の問題から表舞台に戻ることはなく、近年は闘病生活が続いていたという。

恩人を失った甥のメイウェザーは「叔父はリングの内外において私の人生で最も重要な人物のひとりだった。彼はボクサーとしてもトレーナーとしても偉大な人だった」と早過ぎる死を悼んだ。

アゴに爆弾を抱えながらも果敢に攻める、スリリングで躍動感のあるボクシングが懐かしい。

世界的な注目ファイトにも新型コロナウイルスの影が

新型コロナウイルスの世界的蔓延の影響により、ボクシングも世界的にイベントの中止や延期が相次いでいる。4月から夏にかけても数多くの注目ファイトが組まれているが、それらの試合が実施されるのかどうか微妙な状況になってきた。

この14日にはアメリカのニューヨークでシャクール・スティーブンソン(アメリカ)対ミゲール・マリアガ(コロンビア)のWBO世界フェザー級タイトルマッチが組まれていた。主催者のトップランク社はいったんは無観客試合として強行する方針を打ち出したものの、直後にイベントの中止と試合の延期を発表した。

これより前、13日にカナダで行われる予定だったイベントは、選手の計量が済んだあとで急きょ、中止が決定している。このほかカリフォルニア州では3月中の格闘イベントがすべて見送りとなっている。ボクシングの聖地とも呼ばれるラスベガスのあるネバダ州でもアスレチック・コミッションが3月25日までの格闘競技のイベント中止を決めた。それ以降のイベントに関しては25日に協議する予定だという。

こうしたなか、以前から決まっているボクシングの注目ファイトは少なくない。5月1日以降だけでも以下のようなカードが決定、あるいは内定している(3月16日時点)。

■5月2日@米国 WBA、WBO世界スーパー・ミドル級王座統一戦 サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対ビリー・ジョー・サンダース(英国) ※未発表

■5月2日@英国 WBA、IBF世界スーパー・ライト級タイトルマッチ ジョシュ・テイラー(英国)対アピヌン・コーンソン(タイ)

■5月9日@米国 WBC、WBO世界スーパー・ライト級タイトルマッチ ホセ・ラミレス(米国)対ビクトル・ポストル(ウクライナ)

■5月16日@米国 WBC世界バンタム級タイトルマッチ ノルディーヌ・ウバーリ(仏)対ノニト・ドネア(比国/米国) ※未発表

■5月23日@英国 ヘビー級12回戦 オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)対ディレック・チゾラ(ジンバブウェ/英国)

■5月30日@米国 世界ライト級4団体王座統一戦 ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)対テオフィモ・ロペス(米国) ※未発表

■6月9日@米国 IBF世界ミドル級タイトルマッチ ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)対カミル・シェルメタ(ポーランド)

※未発表

■6月20日@英国 WBA、IBF、WBO3団体統一世界ヘビー級タイトルマッチ アンソニー・ジョシュア(英国)対クブラト・プーレフ(ブルガリア)

■7月11日@サウジアラビア WBA世界ウェルター級タイトルマッチ マニー・パッキャオ(比国)対マイキー・ガルシア(米国) ※未発表

■7月18日@米国 WBC世界ヘビー級タイトルマッチ タイソン・フューリー(英国)対デオンタイ・ワイルダー(米国) ※未発表

5月9日に予定されているラミレス対ポストルは当初、2月1日に中国の海口で行われる予定だったが、新型コロナウィルスの影響で開催地を変更したうえ3カ月延期された経緯がある。再延期は避けたいところだ。

また、アルバレス対サンダースのように内定していながら正式発表を先延ばしにしているカードもあり、今後の流れしだいでは延期になる可能性も否定はできない。

世界的な注目ファイトが予定どおり実現できるよう祈るばかりだ。

バーランガ連続1ラウンドKO勝ち記録にどこまで迫れるか

14日(日本時間15日)、米国ニューヨークではシャクール・スティーブンソン(22=米国)対ミゲール・マリアガ(33=コロンビア)のWBO世界フェザー級タイトルマッチをメインとするイベントが開催されるが、この日は前座カードにも注目が集まっている。デビューから13試合連続で1ラウンドKO勝ちを収めているスーパー・ミドル級のホープ、エドガー・バーランガ(22=米国)が出場するからだ。連続1ラウンドKO勝ちの史上最長記録は「21」で、バーランガは道半ばといったところだが、このレコードにどこまで近づけるかニューヨークのファンの期待を集めている。

バーランガはプエルトリコ系のアメリカ人で、アマチュア時代には全米レベルのユース大会やジュニアの大会に何度か出場したが、いつも2番手、3番手に甘んじていた。16年4月、19歳になる直前にプロに転向し、キャリアは4年になる。16年=3試合、17年=3試合、18年=3試合、19年=4試合とコンスタントにリングに上がり、すべて3分以内で片づけてきた。最も長い試合で2分45秒、最も短い試合は41秒で終わらせている

身長185センチと恵まれた体格から重量感のあるワンツーを繰り出し、相手をパワーでねじ伏せてしまうことが多い。まだ骨のある選手との対戦は少ないが、2年前には世界挑戦の経験を持つベテランを下したこともある。昨秋には世界戦を控えたミドル級の強豪、セルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ)のスパーリング・パートナーを務め、トップレベルの力を肌で感じ取った様子だ。最大手のトップランク社がプロモートを担当するなどバックアップ体制も整っている。

14戦目の相手は7日の時点では未定だが、試合は8回戦として行われる予定だ。バーランガは「そろそろ長いラウンドも経験したい。もっと長い時間、自分を見てもらいたいからね」と複雑な心境を明かしている。

ところで、130年超の近代ボクシングにおいて、連続1ラウンドKO勝ちの歴代記録としては以下のものが残っている。

(1)21=アリ・レイミ(ソマリア)

   2011年1月~14年7月

(2)19=タイロン・ブルンソン(米国)

   2005年4月~08年3月

(3)18=エドウィン・バレロ(ベネズエラ)

   2002年7月~10年2月

1位のレイミの「21」はボクシング不毛の地、中東のイエメンで記録されたもので、対戦相手も同国人やソマリア国籍の選手など無名ばかり。認知度は低く、価値も割り引いて考える必要があるだろう。ブルンソンの「19」も対戦相手の多くが負け越し選手で、レイミ同様、価値という点で疑問は残る。

これに対し、バレロの「18」は中身が濃い。世界挑戦経験者や現役の世界ランカーも含んでいるのだから文句なしだ。余談だが、バレロの連続1ラウンドKO勝ちが15になっていたとき、日本で「1ラウンドKOを免れたら100万円」という賞金までつけて対戦相手を募集したことがあった。勇敢な日本人選手が相手を務めたが、116秒で撃沈した。その半年後に1ラウンドKO勝ちは18で途絶えたが、決着ラウンドを問わない連続KO勝ちは継続。06年にバレロはスーパー・フェザー級で世界王座を獲得し、09年にはライト級も制覇した。しかし、28歳のときに家族を道連れに謎の死を遂げた。

8度の世界戦を含めた通算戦績は27戦全KO勝ち。早世が惜しまれる。

さて、こうした歴史にバーランガはどこまで迫れるのか。14日の試合だけでなく、その後も「ザ・チョーズン・ワン(選ばれた者)」というニックネームを持つ22歳の強打者のパフォーマンスと結果に注目していきたい。

ヘビー級トップ戦線 英国人対決か英米3度目対戦か

2月22日に米国ネバダ州ラスベガスで行われたWBC世界ヘビー級タイトルマッチは、挑戦者の元3団体王者タイソン・フューリー(31=英国)が11度目の防衛を狙ったデオンタイ・ワイルダー(34=米国)に7回TKO勝ち、新王者となった。これで3年ほど前から話題になっていた現WBA、IBF、WBO3団体王者アンソニー・ジョシュア(30=英国)とワイルダーの英米頂上対決は先送りになることが確実となった。代わりにフューリー対ジョシュアの英国人対決が現実味を帯びてきた。

ワイルダーとフューリーは18年12月に初めて対戦し、そのときは12回引き分けに終わっていた。今回も接戦を予想する声があったが、試合ではフューリーが主導権を握り続け、2度のダウンを奪ったすえ7回TKOで圧勝した。この試合は有料テレビで全米に生中継されたが、視聴軒数は80万軒を超えることが確実視されている。これは2002年のレノックス・ルイス(英国)対マイク・タイソン(米国)以降、ヘビー級の試合では最高の契約軒数となる。ワイルダーとフューリーの報酬もそれぞれ2500万ドル(約27億5000万円)を超す見込みだ。イベントとしては大成功だったといっていいだろう。

そのため再戦が一方的だったにもかかわらずフューリーとワイルダーの第3戦を期待する声もある。フューリーの共同プロモーターを務めるトップランク社は、契約で再戦の権利を持つ前王者に対し3月下旬までにラバーマッチ(3度目の対決)の意思の有無を明らかにするよう伝えている。もしもワイルダーが早期に3度目の対決を望む場合は東京オリンピック(五輪)直前の7月か五輪終了後の9月か10月に実現する可能性が出てくる。

一方、ワイルダーが第3戦を先送りする場合は、フューリー対ジョシュアの4団体王座統一戦が現実味を帯びてきそうだ。正統派強打者のジョシュアは過去に英国内で開催された世界戦で何度か7万人超の大観衆を集めており、人気も知名度も高い。身長206センチ、体重120キロ超の巨体と異色キャラのフューリーとの大一番は英国内はもちろん、世界的にも大きな注目を集めるはずだ。ただし、ジョシュアはIBFから指名試合の履行を迫られており、これを6月に組み入れる計画と伝えられる。となると、その試合での勝利を前提にフューリーとの統一戦は早くても秋になりそうだ。

31戦30勝(21KO)1分けのフューリー、44戦42勝(41KO)1敗1分けのワイルダー、

24戦23勝(21KO)1敗のジョシュア-風雲急を告げるヘビー級トップ戦線。今後も巨人たちの動向に要注目だ。

元4階級王者ロマゴン ボクサー生命かけヤファイ戦

元4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(32=ニカラグア)が29日(日本時間3月1日)、米国テキサス州フリスコでカリド・ヤファイ(30=英国)の持つWBA世界スーパー・フライ級王座に挑戦する。かつて最強の称号でもある「パウンド・フォー・パウンド」のトップに君臨したこともあるゴンサレスにとってはボクサー生命をかけた一戦となる。

帝拳プロモーションと契約しているゴンサレスは、日本では「ロマゴン」の愛称で知られる。21歳のときに新井田豊(横浜光)からWBA世界ミニマム級王座を奪い、14年には八重樫東(大橋)に勝ってWBC世界フライ級王座を獲得するなど日本では10戦全勝(8KO)をマークしている。08年から16年にかけて4階級制覇を成し遂げるなど一時代を築いた名王者だ。

しかし、17年3月にシーサケット・ソールンビサイ(タイ)に12回判定負けを喫してWBC世界スーパー・フライ級王座を失い、デビューからの連勝も46でストップ。王座奪回を狙った半年後の再戦では4回KOで返り討ちに遭った。1年後に再起(5回TKO勝ち)したものの、その後は膝の手術をしたこともあって実戦から遠ざかり、昨年12月に1年3カ月ぶりに試合(2回TKO勝ち)をしただけだ。まだ老け込む年齢ではないが、歴戦の疲労が気になるところではある。また、身長160センチとスーパー・フライ級では体格のハンデが感じられることが多いのも不安材料といえる。多彩なコンビネーションで攻め込む万能型で、50戦48勝(40KO)2敗と高いKO率を残している。

そんなゴンサレスの挑戦を受けるヤファイは、アマチュア時代に08年北京オリンピック(五輪)に出場(フライ級2回戦敗退)したほか世界選手権には3度も出場した実績を持っている。16年12月に獲得したWBA世界スーパー・フライ級王座は村中優(フラッシュ赤羽)、石田匠(井岡)らを相手に5度防衛中だ。防衛を重ねたことで自信を増したのか18年以降は米国で2試合、モナコで1試合と自国を出て防衛戦を行っている。戦績は26戦全勝(15KO)。ゴンサレスほどの強打は持ち合わせていないが、穴のないバランスのとれた戦力を備えている。

ゴンサレスがプレッシャーをかけ、ヤファイが足をつかいながら迎え撃つ展開が予想される。カギとなるのはゴンサレスの復調具合だ。全盛期のゴンサレスならば早い段階でヤファイを捕えるだろうが、勘やスピードに鈍りが見られるようだと苦しい戦いを覚悟せねばなるまい。その場合、ヤファイが立ち位置を変えながら巧みに迎撃してポイントを重ねていくものと思われる。オッズでも3対2でヤファイが支持されている。

ボクサー生命をかけた挑戦で、はたしてゴンサレスはどんな結果を残すのだろうか。

WBCヘビー級ワイルダーvsフューリー再戦は互角

5年間に10度の防衛を重ねているWBC世界ヘビー級王者、デオンタイ・ワイルダー(34=米国)が22日(日本時間23日)、米国ネバダ州ラスベガスで元3団体統一王者、タイソン・フューリー(31=英国)の挑戦を受ける。両者は18年12月に対戦し、年間最高試合の声が出るほどの激闘のすえ12回引き分けという結果に終わっている。再戦のオッズはフューリー有利と出ているものの11対10と接近しており、今回も激しい主導権争いが予想される。

14カ月前の初戦は11対8でワイルダー有利とみられていたが、先に主導権を握ったのは挑戦者だった。身長206センチ、体重116キロと体重無制限のヘビー級でも特別に大きいフューリーだが、その巨体を敏捷(びんしょう)に動かして王者を挑発。ダメージを与えるほどではないものの折々でパンチをヒットして中盤までに小差のリードを奪った。

後手にまわった感のワイルダーは9回にダウンを奪って互角に戻す。するとフューリーは10回と11回を支配して逃げ切りにかかる。こうしたなかハイライトは最終12回に訪れた。身長201センチ、体重96キロのワイルダーが十八番の右ストレートを直撃してダウンを奪ったのだ。ワイルダーはじめ誰もが「終わった」と思うほどの痛烈なダウンだったが、フューリーはカウントアウトぎりぎりで立ち上がり戦闘を再開。反撃して試合終了ゴングを聞いた。採点は115対111でワイルダー、114対112でフューリー、113対113の三者三様でドローとなった。

その後、ワイルダーは得意の右ストレートで2度のKO防衛を重ね、V10を果たすとともに戦績を43戦42勝(41KO)1分けに伸ばしている。KO率は95パーセントを超える。これは歴代ヘビー級王者のなかでは最も高いKO率だ。

一方のフューリーも初戦後に2勝(1KO)を加えて30戦29勝(20KO)1分けに戦績を伸ばしている。ワイルダーと異なるのは、この14カ月の間にプロモーターを変え、今回の試合を前にトレーナーも変更した点だ。参謀が変わったことがプラス効果を生むのか、それともマイナスに作用するのか。また、昨年9月の試合で右目上をカットし、試合後に47針も縫合したことも気にかかる。そんな不安材料をよそに、注目されることが大好きなフューリーは「ワイルダーを2回でKOする」と吠えている。

構えを左右にスイッチするなど器用な面を持つフューリーが変則的に動きながら小刻みにパンチを繰り出し、それに対しワイルダーが右ストレートを狙うという展開になりそうだ。これは初戦と同じパターンである。そのうえで両者、両陣営がどんな策を上乗せしてくるのか注目される。ワイルダーは右につなげるために左ジャブ、フューリーは足の動きがカギになりそうだ。

総合力はほぼ互角と見ていいだろう。駆け引きを交えながら今回も終盤まで勝負がもつれるかもしれない。その一方、最重量級だけに一発で流れが変わる、あるいは一発でけりがつく可能性も十分にある。開始ゴングから一瞬たりとも目の離せない試合になりそうだ。

もしも「直感でいいからどちらかを選べ」と強要されたならば、「ワイルダーのKO勝ち」と答えようか……。

元3階級王者リナレス モラレス戦で存在感示せるか

フェザー級、スーパーフェザー級、ライト級の3階級で世界王者になった実績を持つホルヘ・リナレス(34=帝拳)が14日(日本時間15日)、米国カリフォルニア州アナハイムのリングに上がる。相手は元世界ランカーのカルロス・モラレス(30=メキシコ)。現在、ライト級でWBA3位、WBC9位、WBO8位にランクされるリナレスは、存在感を示すことができるか。

ベネズエラのバリナス生まれのリナレスは16歳で故郷のベネズエラを離れ来日。02年12月、17歳のときに大阪でプロデビューを果たした。以来、17年のキャリアで51戦46勝(28KO)5敗の戦績を収めている。スピードとテクニックに秀でており、「エル・ニーニョ・デ・オロ(ゴールデンボーイ)」というニックネームを持っている。3階級で世界一の座を獲得するなど実力は誰もが認めるところだ。

その一方、敗北のすべてはKO(TKO)によるもので、打たれもろい面がある。最近では18年5月にワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に10回TKOで敗れてWBA世界スーパーフェザー級王座から陥落。再起戦を挟んだ昨年1月の試合では元WBA世界スーパーライト級暫定王者のパブロ・セサール・カノ(メキシコ)のラフなパンチを浴びて3度ダウン、不覚の1回TKO負けを喫している。9月に日本で10回判定勝ちを収めており、これが再起第2戦となる。リナレスは常々、「もう1度、ロマチェンコと戦いたい」と話しており、そのためにもこれ以上の後退は許されない状況といえる。

相手のモラレスは現在はノーランカーだが、16年から18年にかけてWBAでトップ10内に入っていた実績を持っている。戦績は27戦19勝(8KO)4敗4分。リナレスほどのスピードもテクニックも持ち合わせてはいないが、KO負けは1度もない。自ら攻めるときもあれば相手の出方に合わせて迎え撃つこともできるタイプといえる。

リナレスは経験値を含めた総合的な戦力で勝っているが、打ち終わりを狙ってくるモラレスのパンチには十分に注意したい。特に序盤は慎重に相手の癖やパンチの軌道などを見極める必要があるだろう。

この日はダブルメインとして、ライト級でWBA2位、WBC4位、WBO6位にランクされるライアン・ガルシア(21=米国)が出場、世界挑戦の経験を持つフランシスコ・フォンセカ(25=ニカラグア)と対戦する。19戦全勝(16KO)のガルシアは近未来のスター候補として注目を集めている逸材で、本人は世界挑戦の前にリナレスとの試合を希望している。

今回の揃い踏みで、直接対決に向けてどちらがより強く存在感を示すのか。そんな視点からも楽しみなイベントといえる。

リゴンドーvsソリス 勝者は井上の対戦相手浮上か

8日(日本時間9日)、米国ペンシルベニア州アレンタウンでWBA世界バンタム級王座決定戦が行われる。元WBA世界スーパーバンタム級王者のギジェルモ・リゴンドー(39=キューバ)と、元WBA世界スーパーフライ級王者のリボリオ・ソリス(37=ベネズエラ)が拳を交えるもので、勝者は井上尚弥(26=大橋)の対戦相手候補として浮上してきそうだ。

もともとこの王座は井上が持っていたものだが、昨年11月の「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」決勝で同団体スーパー王者のノニト・ドネア(37=比国)に判定勝ち、井上自身がスーパー王者に昇格したため空位になっていた。それを受けて1位のリゴンドー対2位のソリスの試合が組まれたわけだが、当初は昨年12月に米国カリフォルニア州オンタリオで挙行される予定だった。しかし、ソリスが期日までに査証取得をできなかったため延期になった経緯がある。

リゴンドーは2000年シドニーオリンピック(五輪)と04年アテネ五輪バンタム級金メダリストで、475戦463勝12敗のアマチュア戦績を残している。亡命後の09年に28歳でプロ転向を果たし、1年半後には7戦目でWBA世界スーパーバンタム級暫定王座を獲得。のちに正王者に昇格するなど7年間に10度の防衛を果たした。この間、WBO王者だったドネアに12回判定勝ち、来日して天笠尚(山上)に11回終了TKO勝ちを収めている。「ジャッカル」の異名を持つ技巧派サウスポーで、プロ戦績は21戦19勝(13KO)1敗1無効試合。17年12月に2階級上のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に挑んで6回終了TKO負けを喫したのが唯一の敗北だ。プロ22戦目で初めてバンタム級で戦うのは、近い将来の井上戦を前提にしているからと見られている。

一方のソリスも日本になじみの選手だ。初来日はWBAのスーパーフライ級暫定王者時代の13年5月で、このときは正王者の河野公平(ワタナベ)に12回判定勝ち、自身が正王者になった。7カ月後、IBF王者の亀田大毅(亀田)と統一戦を行うために再来日したが、前日計量で体重オーバーのため失格、王座を剥奪された(試合では12回判定勝ち)。

バンタム級に上げたあと16年3月には山中慎介(帝拳)の持つWBC王座に挑んだが12回判定で敗れた。その後、WBA王座に2度挑戦したが目的は果たせないまま現在に至る。

幅広く均整のとれた戦力を備えた試合巧者で、足かけ20年のキャリアで37戦30勝(14KO)5敗1分け1無効試合の戦績を残している。

スピードやテクニックなどで勝るリゴンドーが有利と見られており、タイミングのいい左ストレートでソリスに初のKO負けを味わわせる可能性も十分にある。圧倒的な勝ち方で戴冠を果たすようならば、井上の近未来の対戦相手候補としてクローズアップされるはずだ。ただ、このところリゴンドーは以前よりも攻撃的になっており、その分だけディフェンスが甘くなっている。加えて打たれもろい面があるだけに予断は禁物といえる。

キンシャサの激闘再現か マカブvsチェスラック

ボクシングの世界戦は米国をはじめとする北米や英国やドイツなどの欧州地域、そして日本やタイなどアジアで開催されることが多いが、31日(日本時間2月1日)にはアフリカの中部に位置するコンゴ民主共和国の首都キンシャサでWBC世界クルーザー級王座決定戦が行われる。1位のイルンガ・マカブ(32=コンゴ民主共和国)と2位のミカル・チェスラック(30=ポーランド)が対戦するもので、同国での世界戦開催はジョージ・フォアマン対モハメド・アリ(ともに米国)の世界ヘビー級タイトルマッチ以来45年ぶりとなる。

フォアマン対アリはコンゴ民主共和国が「ザイール」という国名だった1974年10月30日、同国の首都キンシャサで行われた。ドン・キング・プロモーターとザイール政府が共催したイベントで「RUMBLE IN THE JUNGLE(ジャングルの決闘)」と銘打たれていた。当時のフォアマンは40戦全勝(37KO)という驚異的な戦績を残しており、32歳のアリは7歳若い王者に太刀打ちできないだろうとみられていた。ところがアリはロープを背にしながら相手に攻めさせてスタミナを奪うという極めて危険な罠を仕掛け、それがみごとに的中。3対1のオッズをひっくり返してアリが8回KO勝ち、王座奪回を果たした。「キンシャサの奇跡」と呼ばれる歴史的な一戦だ。

あれから45年、88歳になったキング・プロモーターが、今回も地元のプロモーターと提携してイベントを開催する。

主役は同国出身マカブだ。ボクサーの記録を扱う専門サイトBOXREC.comによると、コンゴ民主共和国には40人超のプロボクサーがいるが、その多くは南アフリカ共和国やドイツ、フランス、英国、米国などを活動拠点としている。マカブも例外ではなく、これまでに9カ国のリングに上がり、4年前には英国でWBC王座の決定戦も経験している。そのときは3回TKO負けだったが、以後は7連勝(6KO)と調子を取り戻している。昨年秋にキング・プロモーターと契約を交わし、今回のチャンスを手にした。

同国出身者としてはキンシャサ生まれのユーリ・カレンガが6年前にWBAクルーザー級の暫定王座を獲得したことがあるだけだ。初の正規王者を狙うマカブはサウスポーの攻撃型で、12年のキャリアで28戦26勝(24KO)2敗の戦績を収めている。KO率は85パーセントを超える。

相手のチェスラックは身長190センチ、リーチ201センチと大柄で、戦いながら構えを右から左にスイッチすることがある。19年3月にカレンガに7回終了TKO勝ちした試合を含め19戦全勝(13KO)と負け知らず。自国を出て戦うのは初めてだが、勝てばポーランド史上5人目の世界王者となる。

マカブにとっては同胞カレンガの仇討ちの意味も持つ試合だ。キンシャサで再び歴史に残るような激闘が生まれるのか注目したい。

新王者ロペス ロマチェンコとの4団体統一戦匂わす

昨年12月14日、米国ニューヨークで行われたIBF世界ライト級タイトルマッチで22歳の新王者が誕生した。衝撃的な2回TKO勝ちで戴冠を果たした男の名はテオフィモ・ロペス(米国)。16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)に出場後にプロ転向を果たしたロペスは、15戦全勝(12KO)と破竹の快進撃を続けている。早くも同じライト級の3団体王者、ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)との頂上対決も噂されている。今回は2020年にさらなる飛躍が期待されるロペスを紹介しよう。

ロペスは1997年7月30日、米国ニューヨークで生まれた。両親はカリブ海に面したホンジュラスの出身で、ロペスは姉ふたりに続く第3子だった。アマチュアで約170戦をこなし「だいたい150回は勝ったと思う」とロペスは話している。15年の全米大会や五輪予選を勝ち抜いたが、すでにポイント制でリオデジャネイロ五輪出場を決めている米国選手がいたため、ロペスは両親の故国、ホンジュラス代表として本戦に出場した。五輪ではライト級初戦で敗退、19歳でプロに転向することを決意した。

村田諒太(帝拳)や井上尚弥(大橋)も所属しているトップランク社と契約を交わして16年11月にプロデビュー。持ち前のパワーを前面に押し出した攻撃的なボクシングでKO勝ちを重ね、18年7月以降は元世界ランカーや現役の世界ランカーら5人を下してランキング1位に躍進。そのなかには東洋太平洋王座を11度防衛した中谷正義(井岡)に12回判定勝ちを収めた試合も含まれている。

IBFの指名挑戦者として挑んだ12月の試合では、前評判の高かった王者、リチャード・コミー(ガーナ)から右のカウンター一発でダウンを奪い、再開後に連打を叩きつけてレフェリー・ストップに持ち込んだ。期待を上回る鮮やかな戴冠劇だった。試合後、ロペスは「俺が次に誰と戦うか、みんな知っているよね」と、リングサイドで観戦していたロマチェンコとの対決を匂わせた。

そのロマチェンコは同じライト級のWBAスーパー王座、WBCフランチャイズ(特権)王座、WBO王座を保持しており、両者の試合が実現すれば4団体統一戦となる。ロマチェンコとも契約を交わしているトップランク社は、この注目カードを5月にも実現させる方向で動いていると伝えられる。五輪連覇、プロ3戦目で世界王座獲得、7戦目で2階級制覇、12戦目で3階級制覇を成し遂げている技巧派サウスポーのロマチェンコ(15戦14勝10KO1敗)と、左右のパンチに破壊的なパワーを秘めた強打者のロペス-4対1のオッズが出ているように先輩王者に分があることは間違いないが、22歳の昇竜が番狂わせを起こすことも十分に考えられるカードだ。

IBF世界ライト級王者、テオフィモ・ロペス、22歳。この名前を覚えておいて損はないはずだ。

日本ジム所属選手のホンモノ志向 海外世界戦楽しみ

日本のボクシング界は井上尚弥(26=大橋)や村田諒太(34=帝拳)をはじめ7人の世界王者(男子)を擁して2020年を迎えた。7王者の試合がすべて10月以降に集中していたこともあり次戦の具体的な日程は発表されていないが、今年はトップ選手の国外での試合が増えそうな気配だ。

以下のデータでも分かるように2010年以降、日本のジム所属選手の海外での世界戦は増加傾向にある。

<年  海外世界戦/世界戦総数 割合>

2010年     2/22  9%

2011年     5/26  19%

2012年     4/26  15%

2013年     11/34  32%

2014年     5/25  20%

2015年     9/28  32%

2016年     5/28  18%

2017年     14/40  35%

2018年     8/29  28%

2019年     10/27  37%

従来のWBA、WBCに加え13年4月からIBFとWBOに加盟したため日本のボクシング界は4団体時代に突入したが、世界戦総数は横ばい状態といえる。これは関係者が自制しているというよりも、年々、国内でのイベント開催が難しくなっているためと解釈した方がよさそうだ。19年に国内での世界戦は17試合あるが、そのうち11試合はダブル(2試合)、あるいはトリプル(3試合)での開催だった。単独(1試合)開催は6度に留まっている。

遡ること20年、畑山隆則(横浜光)対坂本博之(角海老宝石)のWBA世界ライト級タイトルマッチが行われた2000年を例に出すと、この年の日本のジム所属選手が出場した世界戦は14試合、そのうち海外での世界戦は1試合だけだった。しかも国内で行われた13度の世界戦はいずれも単独でのイベント開催だった。こうしたデータからも、日本のジム所属選手の海外での世界戦と、国内では同日複数開催が増加していることが分かる。この傾向は今後も変わらないだろう。

トップ選手たちの意識も大きく変化した。その典型が井上と村田だろう。ふたりともアマチュア時代から海外での試合を数多く経験しており、プロでも国外試合をこなしている。そんななかで自然と芽生えたのが“ホンモノ”志向だ。井上に至ってはプロ転向時から常に「強い相手と戦っていきたい」と口にしているほどだ。階級最強を決めるトーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」への参戦は、そんな井上の願望を満足させるものだったことだろう。

村田も格上とされるサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)やゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)らとの頂上決戦を見据えている。その流れのなかに海外進出が組み込まれているといっていい。

4階級制覇の井岡一翔(30=Reason大貴)、3階級制覇の田中恒成(24=畑中)、7度の防衛を果たしている寺地拳四朗(28=BMB)、2階級制覇の京口紘人(26=ワタナベ)、昨秋に2度目の戴冠を果たした岩佐亮佑(30=セレス)も上昇志向が強く、環境が整えば海外での世界戦に臨むことになりそうだ。遅ればせながら日本のボクシング界にも本格的なボーダーレス(越境)の時代がやってきたといえる。

2020年、日本のジム所属選手の出場する世界戦がどこで何度行われるのか、どんなドラマが生まれるのか楽しみだ。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。