上へ戻る

au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

旧ソ連勢の統一戦グウォジクVSベテルビエフはKO決着濃厚

17戦全勝(14KO)のWBC世界ライト・ヘビー級王者オレクサンダー・グウォジク(32=ウクライナ)と、14戦全KO勝ちのIBF同級王者アルツール・ベテルビエフ(34=露)が18日(日本時間19日)、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアで拳を交える。主要4団体の王者同士の統一戦は近年になって増加傾向にあるが、旧ソ連勢のカードは珍しい。総合力は互角だが、ともに強打が売りだけにKO決着が濃厚だ。

WBA、WBC、IBF、WBOの4団体の王者同士による統一戦は今年、9月末日時点で5例を数える。バンタム級の井上尚弥(大橋)対エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)、スーパー・バンタム級のダニエル・ローマン(米国)対TJドヘニー(アイルランド/豪)、スーパー・ライト級のホセ・ラミレス(米国)対モーリス・フッカー(米国)、ウェルター級のエロール・スペンス(米国)対ショーン・ポーター(米国)、ミドル級のサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対ダニエル・ジェイコブス(米国)で、いずれも前者が勝利を収めている。このほか団体内の統一戦や階級の異なる王者同士の対戦も3試合ある。

高い次元で技量が接近しているためか凡戦もあるが、井上対ロドリゲスのようにスリルに富んだ好勝負が多い。今回のグウォジク対ベテルビエフもKO決着が間違いないとみられている。

WBC王者のグウォジクは12年ロンドン五輪ライト・ヘビー級で銅メダルを獲得後、14年2月にプロ転向。米国西海岸をホームに定めて着実に実力を伸ばし、昨年3月にWBC暫定王座を獲得した。12月に団体内統一戦で勝利を収めて正王者に昇格。今回の統一戦が3度目の防衛戦でもある。左ジャブで切り込んで右ストレートに繋げる正統派の強打者だが、耐久面が不安視されている。

IBF王者のベテルビエフもアマチュア出身者で、メダル獲得は逃したが08年北京大会、12年ロンドン大会と2度の五輪出場を果たしている。13年6月にカナダでプロデビューし、ハンマーのような左右の強打でKOの山を築いてきた。2年前に戴冠を果たしたが、故障やビジネス上の摩擦もあって17年と18年は防衛戦を1度ずつ行っただけで試合枯れ状態にあった。今年になって大手のトップランク社と契約を交わし、さっそく大きな試合に恵まれた。攻撃偏重のファイター型だが、攻め急ぐあまり被弾してダウンを喫したこともある。

ベテルビエフのディフェンスの甘さがマイナス要因とみられているためか、オッズは6対5の小差ながらグウォジク有利と出ている。強打者同士のチャンピオン対決だけに初回からスリリングな試合が期待される。短期決着ならばベテルビエフ、長引けばグウォジクといったところだが、展開予想の難しいカードだ。

元クルーザー級王者ウシク 混戦状態ヘビー級頂点に立てるか

WBA、WBC、IBF、WBOという主要4団体の世界王座を統一した実績を持つ元クルーザー級王者、オレクサンダー・ウシク(32=ウクライナ)が、ヘビー級に殴り込みをかける。その転向初戦が12日(日本時間13日)、WBC22位のタイロン・スポーン(34=スリナム/オランダ)を相手に米国イリノイ州シカゴで行われる。主役と見られていた3団体王者のアンソニー・ジョシュア(29=英国)が6月に敗れたのを機に、一転して混戦状態となったヘビー級でウシクは結果を出すことができるのか。まずは12日の試合に注目したい。

ウシクはアマチュア時代に2度の五輪出場を果たし、08年北京大会では8強に甘んじたが12年ロンドン大会では91キロ以下のヘビー級で金メダルを獲得した。アマチュア戦績は350戦335勝15敗で、勝率は95パーセントを超す。ビタリ&ウラジミールのクリチコ兄弟が代表を務めるK2プロモーションズと契約して13年11月にプロ転向を果たし、6年間に16戦全勝(12KO)をマークしている。3年前に200ポンド(約90.7キロ)が体重上限のクルーザー級でWBO王座を獲得したあと階級最強決定トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」に参戦。18年1月の準決勝戦でWBC王者に勝利を収め、7月には決勝でWBA王座とIBF王座を持つムラト・ガシエフ(ロシア)にも完勝、4団体の王座統一を果たした。

身長190センチ/リーチ198センチというウシクの体格は元世界ヘビー級王者のモハメド・アリ(米国)とほぼ同じだが、大型化が進む現在のヘビー級トップ戦線では決して大きくはない。WBC王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米国)は201センチ/211センチ、ジョシュアも198センチ/208センチある。元3団体王者のタイソン・フューリー(31=英国)は206センチ/216センチの特大サイズだ。この1年、ウシクはヘビー級にマッチした体をつくってきたはずだが、はたして何キロの体重でリングに上がるのか。中量級のような自在な動きとスピード、テクニックを身上とするサウスポーのウシクだけに、単純に体重を増やせばいいというわけにいかないのが悩ましいところだ。

転向初戦で対戦するスポーンは元キックボクサーで、4年半前に国際式に転向してからは14戦全勝(13KO)という戦績を収めている。体格は188センチ/189センチとウシクに劣るが、KO率93パーセントのパワーは侮れない。

ヘビー級トップ戦線は風雲急を告げる状況だ。このウシク対スポーンのあと11月23日にワイルダー対ルイス・オルティス(40=キューバ)のWBCタイトルマッチが決まっている。さらに12月7日にはジョシュアが3団体の王座奪回を狙って現王者のアンディ・ルイス(30=米国)との再戦に臨むことになっている。

転級して試運転を行う前からヘビー級でWBO1位、WBA2位にランクされているウシクは、大巨人たちが待ち受ける最重量級でも頂点に立つことができるのか。スポーン戦は期待と不安のなかでの試合になりそうだ。

様々な思惑が見える ゴロフキンのIBF王座決定戦

17連続KOを含む20度の防衛を記録した元3団体統一世界ミドル級王者、ゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)が5日(日本時間6日)、米国ニューヨークでIBF同級王座決定戦に出場する。相手は14戦13勝(10KO)1敗の戦績を残しているIBF1位のセルゲイ・デレビャンチェンコ(33=ウクライナ)。昨年9月、サウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)との再戦で惜敗して無冠になったゴロフキンにとっては返り咲きの好機である反面、負ければ選手生命に影響を及ぼす可能性もある重要な試合だ。

もともとゴロフキンはWBA(スーパー王者)、WBC、IBFの3団体のベルトを保持していたが、昨年9月のアルバレスとの再戦(アルバレスが判定勝ち)を前にIBF王座を剥奪された。デレビャンチェンコとの指名試合に応じなかったというのが理由だった。それを受け10月にIBF王座の決定戦が行われ、デレビャンチェンコに12回判定勝ちを収めたダニエル・ジェイコブス(32=米国)が王座を獲得。今年5月、そのジェイコブスとアルバレスが統一戦を行い、アルバレスが12回判定勝ちで3団体の王座を統一した。ところが、アルバレスもデレビャンチェンコとの指名試合に応じる構えをみせなかったためIBFが王座を剥奪した。これが昨夏以降のIBFのミドル級王座を巡る動きだ。

これだけをみるとゴロフキンとアルバレスがデレビャンチェンコから逃げてきたように映るが、必ずしもそういうわけではない。極端な言い方をすれば、実績も知名度もあるゴロフキンとアルバレスにとってデレビャンチェンコはリスクがある反面、多くのリターン(報酬)が見込める相手とはいえなかっただけのことだ。こうしたなか今回、ゴロフキンが対戦に応じたのは、勝てば王座復帰が叶い、その先に大きなビジネスとなるアルバレスとの第3戦がおぼろげながら見えてくるからといっていいだろう。

かつて全階級を通じたボクサーの総合評価「パウンド・フォー・パウンド」で現役最強の声もあったゴロフキンだが、17年以降は5戦3勝(2KO)1敗1分と勝率が落ちている。KO率85パーセントを超す(41戦39勝35KO1敗1分)強打は37歳のいまも健在だが、最近の試合では被弾が目立つなど経年劣化の気配がみられる。今春、9年前から師事してきた指導者とコンビを解消し、前戦から新コーチのもとでトレーニングしているが、それがプラス効果をもたらすかどうか。

一方のデレビャンチェンコはニックネームこそ「テクニシャン」だが、実際の戦いぶりはファイターに近い。積極的に圧力をかけて距離を潰し、右ストレートや左ボディブローなどを矢継ぎ早に打ち込んでくる。1年前、ジェイコブスに惜敗後、スーパーウエルター級の元世界王者を判定で下して最上位に戻ってきた。

オッズは4対1、ゴロフキン有利と出ている。早い段階で歯車が噛み合えばパワー勝負になる可能性もある。そうなれば体格、経験値、一撃の破壊力で勝るゴロフキンのKO勝ちが濃厚だ。

ところで、ゴロフキンの宿敵ともいえるアルバレスは、特例でミドル級王座とスーパーミドル級王座を保持したまま11月2日(日本時間3日)、ライトヘビー級王座に挑戦することが決まっている。ゴロフキン対アルバレス第3戦実現の前には多くの壁がある状況だが、まずは先陣をきるかたちのゴロフキンがインパクトのある勝利で存在感を示すことが求められる。また、同じミドル級にはWBA王者の村田諒太(33=帝拳)もいる。ゴロフキンやアルバレスら世界的なスター選手たちの動向しだいではあるが、大きな試合が決まる可能性もある。

様々な意味でゴロフキン対デレビャンチェンコに注目したい。

スペンスに死角なし ウェルター級王座統一戦

 ウェルター級のIBF王者エロール・スペンス(29=米国)とWBC王者のショーン・ポーター(31=米国)が28日(日本時間29日)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで統一戦を行う。選手層の厚いことで知られるこのクラスにはWBAスーパー王者として6階級制覇のマニー・パッキャオ(40=比国)、WBO王者として3階級制覇のテレンス・クロフォード(31=米国)がおり、近い将来の4団体統一戦が期待されている。こうしたなかスペンスが次のステージに駒を進めるのか、それとも下馬評を覆してポーターが勝ち上がるのか。注目度の高い試合だ。

 12年ロンドン五輪ウェルター級ベスト8の実績を持つスペンスは、距離をとっても接近しても戦えるサウスポーの万能型で、25戦全勝(21KO)の戦績が示すとおりパンチ力がある。村田諒太(帝拳)に勝って一度はWBA世界ミドル級王者になったロブ・ブラント(米国)は無名時代にスペンスとスパーリングをした経験を持つが、「2階級の差があるのに彼のパワーはミドル級でも経験したことがないほどだった」と話している。また、同じくスペンスとスパーリングで手合わせしたことがあるフロイド・メイウェザー(米国)は「彼こそが私の後継者だ」と太鼓判を押したエピソードがある。

 現在、スペンスが保持するIBF王座は17年5月に英国遠征でケル・ブルック(英国)を11回KOで下して獲得したもので、これまで3度の防衛を果たしている。内容も圧倒的なものだ。初防衛戦では元2階級制覇王者のレイモント・ピーターソン(米国)を7回終了時点で棄権に追い込み、22戦全勝だった指名挑戦者のカルロス・オカンポ(メキシコ)は3分ちょうどで片づけた。今年3月のV3戦では5階級制覇を狙うマイキー・ガルシア(米国)の挑戦を受けたが、39戦全勝の相手に付け入るスキを与えず、120対108(二者)、120対107の完封勝ちを収めた。身長177センチ、リーチ183センチと体格にも恵まれており、現時点では死角が見当たらない。

 WBC王者のポーターはアマチュア時代はミドル級で活躍したが、プロ転向後はスーパー・ウェルター級からウェルター級に体を絞って成功を収めた。13年12月から14年8月までIBF王座に君臨したが、ブルックに敗れてベルトを失った。現在の王座は昨年9月に獲得したもので、今年3月には指名挑戦者に競り勝って初防衛を果たしている。戦績は33戦30勝(17KO)2敗1分。身長170センチ、リーチ177センチとウェルター級では小柄だが、上体を伸ばすようにして相手の懐に飛び込み、荒々しいフックを浴びせる戦闘スタイルで知られる。10ラウンド以上の戦いを14度も経験しており、スタミナとタフネスに定評がある。

 王者同士の統一戦だが、スペンスの評価が高いためオッズは7対1と大差がついている。

ポーターに飛び込む機会を与えず、逆にスペンスが圧力をかけて攻め落としてしまうだろうという予想が多い。勝者との対戦を望んでいるパッキャオやクロフォードも注目するなか、スペンスが下馬評どおりの強さを見せつけるのか。それともポーターが先輩王者としての意地を見せるのか。

アルバレス4階級制覇なるか コバレフは危険な相手

現役ボクサーのなかで「最も稼ぐ男」として知られるサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)が11月2日(日本時間3日)、米国ネバダ州ラスベガスでWBO世界ライトヘビー級王者のセルゲイ・コバレフ(36=露)に挑むことが決まった。アルバレスはスーパーウエルター級、ミドル級、スーパーミドル級で世界王者になっており、勝てば4階級制覇となる。ただ、「クラッシャー(破壊者)」の異名を持つコバレフは76パーセントのKO率を誇る強打者だけに、アルバレスにとってはリスクの高い冒険マッチといえそうだ。

現在もミドル級のWBAスーパー王座とWBAスーパーミドル級王座を同時に保持しているアルバレスは、昨秋にDAZNと「5年間に11試合、総額3億6500万ドル(当時のレートで約412億円)」という超大型契約を結んだ。1試合につき約37億円が保証される好条件だが、代わりに強敵とのマッチメークが続くハイリスクの契約でもある。事実、12月の初戦ではWBAスーパーミドル級王座への挑戦試合が組まれ(3回TKO勝ちで戴冠)、今年5月の第2戦ではIBFミドル級王者のダニエル・ジェイコブス(32=米)との統一戦がセットされた(12回判定勝ち)。この2試合でアルバレスは3階級制覇とミドル級3団体王座統一を果たしたが、のちにミドル級のIBF王座は剥奪され、WBCからは「フランチャイズ(特権)王者」にスライドさせられた経緯がある。それでも、このまま2階級の王座を保持したままコバレフに挑んで勝った場合、3階級の王座を同時に保持する可能性があるわけだ。

そんなアルバレス(55戦52勝35KO1敗2分)だが、コバレフ(38戦34勝29KO3敗1分)は文字どおり大きな壁になるかもしれない。米国を主戦場にしているコバレフは10年前のプロデビュー時からライトヘビー級で戦っており、この階級の主ともいえる存在だ。13年8月以降の16戦はすべて世界戦(13勝10KO3敗)で、3度の戴冠を果たしている。身長173センチ/リーチ179センチのアルバレスに対しコバレフは183センチ/184センチと体格でも大きく勝る。体重もライトヘビー級はミドル級よりも約7キロ、スーパーミドル級よりも約3キロ重い。アルバレス自身も「コバレフは大きくて危険な強打者」と認めているが、「だからこそリスクと向き合って挑戦する意味がある」とも話している。

アルバレスにとって危険なカードには違いないが、試合が発表された直後のオッズは9対2で挑戦者有利と出ている。直近の7戦でコバレフがアゴとボディの打たれ脆さを露呈して3敗(2KO負け)していることが理由だと思われる。ボディ攻撃が巧みなアルバレスがコバレフの弱点を突いて攻略してしまうだろうという見方が多いのだ。

予想どおりの結果になるのか、それともアルバレスの冒険が失敗に終わるのか。ゴングが待ち遠しい。

統一王者ロマチェンコとデービス 直接対決に現実味

階級を超越したボクサーの総合的偏差値ともいえる「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で現役最強の評価を得ているライト級3団体統一世界王者、ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)に、注目すべきライバルが現れた。前WBA世界スーパーフェザー級のスーパー王者、ジャーボンテイ・デービス(24=米)だ。21戦全勝(20KO)という驚異的なKO率を誇るデービスは、このほどライト級に転向。いきなりWBA1位にランクされた。

WBAとWBOライト級王者だったロマチェンコは8月31日、12年ロンドンオリンピック(五輪)金メダリストのルーク・キャンベル(31=英)を12回判定で退け、空位になっていたWBC王座も獲得し、3団体のベルト保持者になった。翌9月1日付でWBAランキングが発表されたが、ロマチェンコは月間最優秀選手に選ばれた。それ以上に注目すべきは、デービスがスーパーフェザー級王座を返上してライト級に転向、いきなり1位にランクされたことである。

もともとデービスはロマチェンコとの対戦希望を口にしてはいたが、プロモーターや階級が異なるため、仮に対戦が実現するとしても2~3年先になるだろうとみられていた。それが今回の転級によって一気に直接対決が現実味を帯びてきたといえる。

デービスはアマチュアで220戦(205勝15敗)を経験後、13年2月にプロデビュー。17年1月にIBF世界スーパーフェザー級王座を獲得した。このときはV2戦を前に体重オーバーのため計量で失格してベルトを失ったが、昨年4月にWBAのスーパー王座を手に入れた。今回の返上を前に2度のKO防衛を果たしている。身長は170センチのロマチェンコよりもさらに小さい166センチのデービスだが、距離を潰しながら積極的に仕掛け、左構えから回転の速い左右のフックやアッパーを顔面とボディに打ち分ける攻撃的なスタイルを確立している。ニックネームは「TANK(装甲戦車)」。計量で失格になった試合も含め世界戦では6試合すべてをKOで終わらせている。5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー(米)がプロモーターを務めるなど話題性もある。

同じサウスポーのロマチェンコはアマチュアで五輪と世界選手権を連覇し、プロでは3階級制覇を成し遂げている。戦績は15戦14勝(10KO)1敗。「ハイテク(高性能)」のニックネームどおりスピードと攻防のテクニックに長けている。

そのロマチェンコはライト級で主要4団体制覇を目標に掲げているが、残るIBF王座を持つリチャード・コミー(32=ガーナ)は12月に防衛戦を控えている状況だ。仮にロマチェンコとIBF王者の最終統一戦が実現するとしても早くて来春ということになる。その前にロマチェンコ対デービスが実現するのか、それとも4団体統一後に両雄の対決が見られるのか。ロマチェンコ、そしてデービスの今後に要注目だ。

「それはもう文化だ」プエルトリコのボクシング事情

去る8月24日、プエルトリコのサンファンではWBO世界ミニマム級タイトルマッチが行われ、挑戦者のウィルフレド・メンデス(22=プエルトリコ)が王者のビック・サルダール(28=フィリピン)に12回判定勝ちを収め、新たなベルト保持者になった。プエルトリコに本部を置くWBO会長のフランシスコ・バルカルセル会長(プエルトリコ)は「メンデスはプエルトリコのボクシング史上60人目の世界王者。長く王座を守ってほしい」と祝福のメッセージを送った。今回はそんなカリブ海の“ボクシング強国”にスポットを当ててみよう。

プエルトリコは厳密にいえば独立国ではなく、米国の自治連邦区という立場にある。面積は9100平方キロメートルほどで、これは東京、神奈川、埼玉を合わせた面積よりも小さい。住民数は370万人ほどで、静岡県と同じぐらいの人口だ。ボクシングのほか野球やバスケットボールが盛んな地域として知られる。

プエルトリコで最初に世界王者になったのはバンタム級のシクスト・エスコバルで、1934年のことだった。白井義男氏が世界フライ級王者になったのが1952年だから、初代世界王者は日本よりもプエルトリコの方が18年早いことになる。世界戦開催能力の問題もあり世界王者の総数では91人の日本に及ばないが、総人口におけるプエルトリコの戴冠率は極めて高いといえる。ちなみに世界王者輩出数では、同じカリブのドミニカ共和国(22人)、中米パナマ(31人)、南米のベネズエラ(39人)、コロンビア(39人)を大きく引き離している(数字はboxrec参照)。

60人の歴代王者のなかには世界記録保持者が何人かいる。70年代に史上最年少の17歳5カ月で戴冠を果たしたウィルフレド・ベニテス、同じく70年代に17連続KO防衛を果たしたウィルフレド・ゴメス、さらに親子世界王者のウィルフレド・バスケス&バスケス・ジュニア父子もいる。

前出のゴメス、バスケス父をはじめ来日して日本のトップ選手と拳を交えた選手も多い。

1960年代のカルロス・オルティス、70年代のアルフレド・エスカレラ、80年代のサムエル・セラノらは強烈な印象を残していったものだ。ガッツ石松(ヨネクラ)から世界ライト級王座を奪ったエステバン・デ・ヘススも強打と技巧を備えた好選手だった。

90年代以降では、3階級制覇を果たしたフェリックス・トリニダード、4階級制覇のミゲール・コットらが世界のボクシング界をリードするスター選手として注目を集めた。

近年では16戦全KO勝ちという戦績を引っ下げて田中恒成(24=畑中)の持つWBO世界ライト・フライ級王座に挑んだアンヘル・アコスタ(28)や、先月、同じく田中に挑んだジョナサン・ゴンサレス(28)、今年5月にWBA世界バンタム級王者の井上尚弥(26=大橋)と対戦したIBF同級王者のエマヌエル・ロドリゲス(27)が日本のボクシングファンの記憶に残っているはずだ。3人とも前評判は高かったが、その強敵を田中は12回判定と7回TKO、井上は2回TKOで下している。

なぜプエルトリコではボクシングが盛んなのか-数年前、同地の有力選手を数多く抱えるピーター・リベロ・プロモーターに米国で取材したことがある。リベロ氏は「プエルトリコでボクシングが盛んなのはラテンの血がボクシングに合っているためだと思う。ボクシングはプエルトリコが世界に誇れるスポーツで、いまでは文化になっている。プエルトリコで有名選手の試合が行われるときは街から人がいなくなり、交通量も激減する」と話していたものだ。

そんなプエルトリコだが現役世界王者はメンデスのみと、やや寂しい状態といえる。バルカルセルWBO会長は「メンデスが少年たちの模範になって活気を取り戻してほしい」と期待を寄せている。

そういえば先月、2度の五輪出場実績を持つスーパー・フライ級のジェイビエール・シントロン(24)が、江藤光喜(31=白井・具志堅)に勝って井岡一翔(30=Reason大貴)の持つWBO同級王座への指名挑戦権を獲得したばかりだ。早ければ年内にも日本(井岡)対プエルトリコ(シントロン)の世界戦が見られるかもしれない。

天才ロマチェンコはライト級3団体王座を独占できるか

ライト級のWBAスーパー王座とWBOを持つ世界王者、ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)が31日(日本時間9月1日)、英国ロンドンでWBC1位のルーク・キャンベル(31=英国)と対戦する。この試合はWBC王座の決定戦も兼ねており、勝者が3団体の王座を独占することになる。ロマチェンコは08年北京オリンピック(五輪)(フェザー級)と12年ロンドン五輪(ライト級)を制覇者で、キャンベルもロンドン五輪のバンタム級で優勝している。サウスポー同士の金メダリスト対決を制するのは-。

ロマチェンコは五輪のほか世界選手権も連覇するなど、アマチュア時代に397戦396勝1敗という驚異的な戦績を残している。プロ転向後も「ハイテク(高性能)」のニックネームどおりの活躍をみせ、史上最速タイの3戦目でフェザー級王座を獲得し、7戦目でスーパー・フェザー級、12戦目でライト級を制覇した。身長170センチ、リーチ166センチとライト級では小柄なため転級当初は苦戦したが、3試合をこなして十分に慣れたようだ。以前は下の階級に戻るプランも出ていたが、いまは近未来の目標としてライト級の主要4団体王座統一を掲げている。戦績は14戦13勝(10KO)1敗。そのうちデビュー戦を除く13試合が世界戦という内容の濃さだ。唯一の敗北はプロ2戦目で挑んだ世界戦で、体重オーバーの相手に惜敗したものだ。

そんな天才に挑むキャンベルも五輪金のほか世界選手権に2度出場し、11年の大会ではバンタム級で準優勝している。十分に輝かしい実績を残しているのだが、ロマチェンコと比較すると見劣りしてしまう。

キャンベルは13年7月にプロ転向を果たし、6年間に22戦20勝(16KO)2敗の戦績を収めている。2年前にホルヘ・リナレス(帝拳)の持つWBA世界ライト級王座に挑んで12回判定負けを喫したが、以後は3連勝(2KO)と調子を上げている。両ガードを高く上げた構えから左ストレートを狙っていくタイプで、KO率(73パーセント)ではロマチェンコ(71パーセント)を上回っている。身長でもロマチェンコよりも5センチ高く(175センチ)、リーチは14センチも長い(180センチ)。こうした体格データに加え、地元での挑戦という点がキャンベルの数少ないアドバンテージだ。

金メダリスト対決という付加価値がついたカードだが、オッズは14対1と大差がついている。もちろんロマチェンコが有利とみられているのだ。細かく立ち位置を変えながら相手を揺さぶり、瞬時に懐に飛び込んでボディから顔面にコンビネーションを散らすというロマチェンコならではの戦いが今回も見られそうだ。特にボディブローが効果を発揮しそうだ。大番狂わせが起こるとしたらキャンベルの左ストレートがカウンターで命中した場合だが、可能性は極めて低いといわざるをえない。

王者コバレフが意地を見せるか 俊英ヤードと防衛戦

2013年以降の6年間、浮き沈みはあったもののライト・ヘビー級の主役を務めてきたWBO王者のセルゲイ・コバレフ(36=ロシア)が24日(日本時間25日)、ロシアのチェリャビンスクで同級1位の指名挑戦者、アンソニー・ヤード(27=英)を相手に防衛戦を行う。今年2月、3度目の戴冠を果たしたコバレフにとっては初防衛戦だが、相手のヤードが18戦全勝(17KO)という強打者だけに厳しい戦いが予想されている。

「クラッシャー(破壊者)」というニックネームを持つコバレフは37戦33勝(28KO)3敗1分の戦績を誇るスラッガーで、右でも左でもKOするパワーを持っている。13年8月~16年11月の第1次政権では8度の防衛を記録し、その間にWBA王座とIBF王座も吸収した。しかし、下の階級から上がってきたアンドレ・ウォード(米)に惜敗して3団体の王座を失い、再戦では打たれ脆さを露呈して8回TKOで敗れた。そのウォードが引退すると、それにともなって行われたWBO王座決定戦に出場。格下を2回TKOで一蹴して返り咲きを果たし、初防衛戦でもTKO勝ちを収めた。

第2次政権も長く続くかと思われたが、昨年8月のV2戦でエレイデル・アルバレス(コロンビア)の強打に捕まり、7回TKO負けを喫した。ポイントでリードしていながら突然崩れ、3度のダウンを奪われて敗れるという試合だった。

それでもコバレフは王座に執念を見せ、今年2月の再戦ではアウトボクシングと手数でアルバレスを封じ、3度目の戴冠を果たした。

そんなベテランを脅かすヤードは19歳でボクシングを始めたため、アマチュア経験はコバレフの215戦(193勝22敗)と比べ12戦(11勝1敗)と極端に少ない。2年前からWBO1位にランクされながら挑戦を急がなかったのは、じっくりと経験を積む必要があったからといわれている。今回は指名挑戦権を行使して勝負に出たといえる。ヤードは接近しても離れても戦える万能型の強打者で、目下16連続KOと勢いがある。ただ、英国外での試合となると米国で1度経験しているだけで、今回はアウェーというハンデもある。さらに前半のKOが多いため最長でも7ラウンドまでしか戦ったことがなく、このあたりも不安要素といえる。

ともに相手をKOするだけのパンチ力があるだけに序盤からスリリングな攻防が展開されそうだ。隙をみせた方が一気に崩壊する可能性もある。経験値に加え地の利があるコバレフが7対4のオッズで有利とみられているが、打たれ脆さがあるだけに数字はあてにならない。

36歳のベテラン王者が意地をみせるのか、それとも94パーセントのKO率を誇る27歳の俊英が新時代の扉を開けるのか-。

ヘビー級統一王者と前王者再戦 再び番狂わせあるか

ヘビー級の3団体統一王者のアンディ・ルイス(29=米)と、前王者アンソニー・ジョシュア(29=英)のダイレクト・リマッチが12月7日、サウジアラビアの首都リヤド近郊のディリヤで行われることになった。両者は今年6月1日に米国ニューヨークで対戦し、圧倒的不利とみられたルイスが最初のダウンから立ち上がって4度倒し返し、7回TKO勝ちで戴冠を果たしている。ジョシュアが雪辱を果たすのか、それともルイスが返り討ちにするのか。この注目の試合には「CLASH ON THE DUNES(砂丘の激突)」というイベント・コピーがつけられている。

今年6月の初戦は、ジョシュアに挑戦するはずだった選手がドーピング違反で出場不可能となり、代役としてルイスに白羽の矢が立った経緯があった。試合まで1カ月を切った時点でのことだった。ルイスは33戦32勝(21KO)1敗という好戦績を残していたが、22戦全勝(21KO)の3団体王者には歯が立たないと見られていた。戦前のオッズは16対1でジョシュア有利というものだった。

はたして3回、ジョシュアの左フックでルイスがダウン。ダメージは深刻ではなかったが、関係者やファンの多く、そしてジョシュア自身もそのまま王者のペースで試合が進むと思ったはずだ。ところがジョシュアが仕留めにかかったことで両者の距離が縮まり、これを機に戦況が一変。寸胴体型のルイスの回転の速い連打が筋骨隆々の王者を捉え、たちまちジョシュアから2度のダウンを奪う。7回、さらにルイスはジョシュアから2度のダウンを奪いTKO勝ちを収めた。

再戦の舞台としてはニューヨークや英国など複数の会場が候補に挙がっていたが、サウルアラビアの投資家グループが1億ドル(約106億円)を提示してイベントを誘致したと伝えられる。

ところで、ヘビー級では過去にも何度か大番狂わせが起こってきた。1978年には10対1で有利とみられたモハメド・アリ(米)がレオン・スピンクス(米)に敗れ、1990年には東京ドームでマイク・タイソン(米)がジェームス・ダグラス(米)に10回KO負けを喫したこともあった。このときのオッズは42対1だった。2001年には9度の防衛を重ねていた絶対王者、レノックス・ルイス(英)が20対1で有利とみられていたにも拘らずハシム・ラクマン(米)に5回KOで敗れる大波乱もあった。アンディ・ルイスの殊勲はレノックス・ルイス対ラクマン以来の衝撃だったといえる。

ただ、興味深いデータもある。アリは7カ月後の再戦でスピンクスに雪辱を果たして王座を奪回。再戦ではないが、タイソンに勝ったダグラスは8カ月後の初防衛戦でイベンダー・ホリフィールド(米)にあっさり3回KO負けを喫してしまう。レノックス・ルイスは7カ月後、ラクマンとの再戦で4回KO勝ちを収め王座を取り戻しているのだ。ちなみにアリ対スピンクス再戦、レノックス・ルイス対ラクマン再戦のオッズはいずれも5対2

で前王者有利。ダグラス対ホリフィールドは9対5で挑戦者有利と出ていた。そして実際の試合もそのとおりの結果に落ち着いている。

アンディ・ルイス対ジョシュア再戦のオッズは11対4でジョシュア有利と出ている。「初戦はあくまでもジョシュアのポカ、今度こそ実力どおりの結果になるだろう」という予想が大勢を占めているのだ。再び番狂わせが起こるのか、それともジョシュアが主役の座に返り咲くのか。年末が待ち遠しい。

世界王者同士の対戦増加 主因はメディアの場外戦

2019年も7カ月が過ぎたが、今年は団体内の統一戦を含め世界王者同士の対戦が目立って多い。5月にWBA世界バンタム級王者の井上尚弥(26=大橋)がIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を衝撃的な2回TKOで屠ったが、あの試合も統一戦だった。それを含めすでに今年は7試合も世界王者同士のカードが行われた。下半期も多くの統一戦が組まれている。その主因として世界のトップ選手たちが試合を放映するメディアによって大きく3つのグループに分かれていることが挙げられる。

今年4月にはスーパーバンタム級のWBA王者ダニエル・ローマン(29=米国)対IBF王者TJドヘニー(32=アイルランド/豪)、5月にはミドル級のサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)対ダニエル・ジェイコブス(32=米国)のWBA(スーパー王座)、WBC、IBF3団体統一戦が行われ、いずれも前者が判定勝ちを収めている。

7月には、13日にレイ・バルガス(28=メキシコ)対亀田和毅(28=協栄)のWBC団体内の世界スーパーバンタム級王座統一戦が行われ、正王者バルガスが暫定王者の亀田を12回判定で下した。その1週間後の20日にはマニー・パッキャオ(40=比)対キース・サーマン(30=米国)のWBA団体内世界ウエルター級王座統一戦が挙行され、パッキャオが判定で勝利を収め、スーパー王者のサーマンに初黒星をつけた。さらに1週間後の27日、スーパーライト級の世界王座統一戦が行われ、WBC王者ホセ・カルロス・ラミレス(26=米国)がWBO王者モーリス・フッカー(29=米国)に6回TKO勝ちを収めた。無敗の世界王者同士の一戦とあって見応えのある攻防だった。

同じ階級の統一戦ではないが、3月にはIBF世界ウエルター級王者エロール・スペンス(29=米国)対WBC世界ライト級王者マイキー・ガルシア(31=米国)というスター対決も実現した(スペンスが12回判定勝ち)。

こうした傾向が顕著になっている主因として、近年になって参入してきたストリーミング配信サービスのDAZNと、以前から存在するプレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)、そしてトップランク社と提携するESPNによるトップボクサーの囲い込み競争の激化を挙げることができる。たとえばアルバレスとジェイコブス、ローマンとドヘニー、フッカーはDAZN、パッキャオとサーマンはPBC、ラミレスはESPNの契約選手なのだ。よりインパクトの強いカードを提供してファン(加入者、視聴者)を増やそうと躍起になっているのだ。ラミレスがフッカーと対戦したように条件次第では提携するケースもあるが、そんな例はいまのところ稀だ。

下半期も数多くの世界王者同士の好カードが決定、あるいは内定している。「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級決勝、WBA&IBF王者の井上対WBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=比)をはじめ、WBSSのクルーザー級とスーパーライト級の決勝も王者同士の統一戦となる。9月28日にはウエルター級のIBF王者スペンスとWBC王者ショーン・ポーター(31=米国)も決まっている。

リング内の戦いはもちろんだが、スター選手を巡るリング外のビジネスの動きにも注目していきたい。

イバン・ホリフィールドは偉大な父に追いつくことができるのか

クルーザー級とヘビー級で世界王者になったイベンダー・ホリフィールド(56=米)の息子、イバン・ホリフィールド(21=米)がスーパーウエルター級のプロボクサーとしてスタートすることになった。24日、トレーニング拠点のある米国テキサス州ヒューストンで発表したもので、親子での世界王者を目指す。

父ホリフィールドは84年ロサンゼルス五輪銅メダリストで、プロ転向後は1年8カ月でWBA世界クルーザー級王者になり、統一戦でIBF王座とWBC王座も獲得。その後、ヘビー級に階級を上げ、90年10月にジェームス・ダグラス(米)を3回KOで屠って2階級制覇を成し遂げた。ジョージ・フォアマン(米)やラリー・ホームズ(米)らを退けて3度の防衛を果たしたが、リディック・ボウ(米)に敗れて王座を失った。96年11月にはマイク・タイソン(米)に11回TKO勝ちを収めてヘビー級で3度目の戴冠を果たし、翌年の再戦では耳を噛みちぎられたが、相手の失格(反則負け)によって防衛に成功。37歳のときに4度目の王座につき、ヘビー級では最多の戴冠記録をつくった。

身長189センチ、体重100キロ前後と最重量級では小柄な方だったが、ハートの強さと戦術でカバーし、ボウとの3試合やタイソンとの初戦など数々の名勝負を残した。5度目の戴冠を目指して48歳まで戦い続け、27年間で57戦44勝(29KO)10敗2分1無効試合の戦績を残して引退した。

イバンは11人きょうだいの6番目で、アマチュアで85戦70勝15敗の戦績を収めている。154ポンド(約69.8キロ)が体重リミットのスーパーウエルター級にあって身長185センチと体格に恵まれている。プロ転向に際しては父親と同じメインイベンツ社とプロモート契約を結び、同じく父親がコンビを組んでいたコンディションニング・コーチの指導を仰いでいる。現時点ではデビュー戦は未定だが、イバンは「私を支えてくれるチームに感謝したい。世界チャンピオンというゴールを目指して日々努力していく」と決意を口にしている。

ただ、130年を超える近代ボクシングの歴史上、兄弟の世界王者が30例を超しているのに対し親子の世界王者はエスパダス親子、スピンクス親子、バスケス親子、チャベス親子、アリ親娘、ユーバンク親子の6例しかない。年齢が近いため切磋琢磨しながら同じ目標を目指せる兄弟と異なり、20歳~30歳の年齢差がある親子となると環境や価値観に大きな違いが出てくる。そのあたりが数字に表れているのではないだろうか。現にジョー・フレージャー(米)、ロベルト・デュラン(パナマ)、カルロス・サラテ(メキシコ)、アーロン・プライアー(米)といった歴史に名を刻む名王者の息子たちも父親の背中を追いかけたが果たせなかった。

イバン・ホリフィールドは偉大な父親に近づき、いつの日か追いつくことができるのだろうか。

Sフェザー級WBOとIBFで注目のタイトルマッチ

27日(日本時間28日)、スーパーフェザー級の世界タイトルマッチが2試合、米国で開催される。この階級には5月のV2戦でWBO王座から陥落した伊藤雅雪(28=横浜光)と、一度はIBF王座を獲得しながらドーピング検査で陽性反応が出て戴冠を取り消された「幻の王者」尾川堅一(31=帝拳)らが控えているだけに、王座の行方が気になるところだ。

メリーランド州ボルティモアではWBAスーパー王者のジャーボンタ・デービス(24=米)が、2位にランクされるリカルド・ヌニェス(25=パナマ)を相手に2度目の防衛戦に臨む。デービスは元世界5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー(米)の秘蔵っ子としてしても知られる逸材で、プロでは21戦全勝(20KO)というレコードを残している。かつて体重オーバーのため計量で失格して王座を失ったが、昨年4月に2度目の戴冠を果たした。Tank(装甲戦車)というニックネームを持つ小柄なサウスポーで、スピードと勘、パンチ力が売りの攻撃型だ。メイウェザー譲りなのか口も達者で、盛んに対抗団体の王者や1階級上のWBA&WBO王者、ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)らを挑発している。

そんなデービスに挑むヌニェスは23戦21勝(19KO)2敗の元南米王者で、このところ10連勝(9KO)と上り調子だ。ひと泡吹かせてやりたいところだが、凱旋防衛戦となるデービスを破るのは難しそうだ。

一度は尾川に12回判定負けを喫したものの「ノーコンテスト(無効試合)」に結果が変更され、別の相手との王座決定戦に勝ってIBF王者になったテビン・ファーマー(28=米)は、3位のギヨーム・フレノア(35=仏)と拳を交える。昨年8月に戴冠を果たしたファーマーにとっては早くも4度目の防衛戦である。打たれないことを身上とするサウスポーのファーマーだからこそ11カ月の短期間で5試合が可能なのだろう。戦績はファーマーが35戦29勝(6KO)4敗1分1無効試合、同じく技巧派サウスポーのフレノアは48戦46勝(12KO)1敗1分。試合はテキサス州アーリントンで行われるが、初めてヨーロッパを出て戦うフレノアにとっては厳しい戦いが予想される。

このIBF王座には尾川が挑戦の準備を進めている。9月にも挑戦者決定戦を計画している尾川は、それをクリアしてファーマーとの再戦に駒を進めたいところだ。

また、無冠に戻ったものの伊藤も現役続行を決めている。現在はWBO9位、WBC11位にランクされており、王者たちから逆指名される可能性もある。さらにWBO3位には尾川のジムメートでもある日本王者の末吉大(28=帝拳)が控えている。

27日(日本時間28日)の2試合には、日本からも熱い視線が向けられている。

40歳パッキャオ 敗北=引退の団体統一戦に挑む

6階級制覇の実績を持つスーパースター、WBA世界ウエルター級王者のマニー・パッキャオ(40=比)が20日(日本時間21日)、米国ネバダ州ラスベガスで同じWBAウエルター級のスーパー王者、キース・サーマン(30=米)と拳を交える。試合はWBA団体内の統一戦として行われる。フィリピンの上院議員でもある40歳のパッキャオにとっては、敗北=引退を意味する重要な戦いとなる。

パッキャオは19キロもの体重の壁を破って32歳になる直前に6階級制覇を成し遂げたが、以後はライバルのファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)に失神KO負け(12年12月)を喫したり、フロイド・メイウェザー(米)との世紀の一戦で敗れたり(15年5月)と、かつての勢いは影を潜めていた。2年前、世界的には無名だったジェフ・ホーン(豪)に12回判定負けを喫してWBO世界ウエルター級王座を失ったときは、多くの関係者やファンが引退のタイミングが来たと思ったほどだった。

しかし昨年7月、1年ぶりのリングで歴戦の強者、ルーカス・マティセ(亜)から3度のダウンを奪って7回TKO勝ちを収めて現在の王座を奪い、世界王者として18年12月に40歳の誕生日を迎えた。フライ級での初戴冠が19歳で、スーパー・バンタム級、スーパー・フェザー級、ライト級で王座獲得を果たした20代を経て、30代前半にウエルター級とスーパーウエルター級も制覇。その結果、10代、20代、30代、40代で世界王者という前人未到の記録を樹立した。早熟かつ晩成という、スポーツ選手だけでなく誰もが羨むようなことをやってのけたわけだ。16歳でプロデビューしてから24年、パッキャオにとってはこれが71戦目となる(61勝39KO7敗2分)。

一方のサーマンも実績十分の実力者だ。12年のキャリアで30戦29勝(22KO)1無効試合の戦績を残しており、6年前にWBA世界ウエルター級暫定王座を獲得後、正王者からスーパー王者に昇格しながら8度の防衛をこなしてきた。左フックや右クロスはタイミングが抜群で破壊力もある。73パーセントのKO率はパッキャオの56パーセントを大きく上回っている。ただ、直近の3年ほどは王者経験者など手強い相手と苦戦続きで、加えて右肘を手術したり左拳を痛めたりしたため活動が不活発だった。今年1月、約2年ぶりにリングに上がったが、格下相手に苦戦を強いられた。

オッズは4対3でサーマン有利という数字でスタートしたが、試合が近づくにつれて13対10、6対5、8対7、12対11、20対19と接近。7月に入ると11対10でパッキャオ有利に逆転した。これでも分かるように、両者の総合力は拮抗しているとみられている。それだけに試合当日のコンディションや戦術が勝負を分けるカギになりそうだ。サウスポーのパッキャオはいつものように揺さぶりをかけながら踏み込んで左ストレートを狙うものと思われる。これに対しサーマンがどう迎え撃つか。右ストレートのカウンターがクリーンヒットすれば6階級制覇王者も立っていられないだろう。逆にパッキャオの左ストレートか左ボディブローが絶妙のタイミングで命中すれば、サーマンが膝を折るシーンが見られるかもしれない。

経験値の高い世界王者同士の試合だけに、駆け引きを含め初回から目の離せない攻防が展開されそうだ。

井上尚弥が近い将来トップに? PFP最新ランク

WBA&IBF世界バンタム級王者、井上尚弥(26=大橋)の世界的な評価上昇が続いている。ボクサーの偏差値ともいえる「パウンド・フォー・パウンド(以下、PFP)」でも複数のメディアが4位以内にランクしており、遠からずトップの座につくのではないかとの予想もあるほどだ。

PFPとは階級の枠を超えたボクサーの総合的な評価のことで、どんな相手と戦い、どんな内容でどんな結果を残したか、それらをもとに仮想順位づけしたものといえる。明確な基準や数値があるわけではなく、また階級が異なる選手同士の直接対決が少ないこともあり、選者の主観が入る余地も十分にある。したがって以前はボクシングファンや関係者の遊びの範囲を出なかったのだが、階級や王座認定団体が増加した近年は“ホンモノ”を見分ける基準として認知度を上げている感がある。

そのため最近はボクシングの情報を扱うメディアが独自のPFPランキングを作成するケースが多い。以下は世界的に知られたボクシング雑誌、情報サイトのPFP最新ランキングである。

■リング・マガジン

(1)ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)=10

(2)テレンス・クロフォード(米)=9

(3)サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)=8

(4)井上尚弥(大橋)=7

(5)オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)=6

(6)エロール・スペンス(米)=5

(7)ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)=4

(8)ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)=3

(9)マイキー・ガルシア(米)=2

(10)ドニー・ニエテス(フィリピン)=1

■ESPN.com

(1)ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)=10

(2)テレンス・クロフォード(米)=9

(3)サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)=8

(4)井上尚弥(大橋)=7

(5)エロール・スペンス(米)=6

(6)オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)=5

(7)ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)=4

(8)ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)=3

(9)マイキー・ガルシア(米)=2

(10)デオンテイ・ワイルダー(米)=1

■BOXINGSCENE.com

(1)テレンス・クロフォード(米)=10

(2)井上尚弥(大橋)=9

(3)ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)=8

(4)サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)=7

(5)オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)=6

(6)エロール・スペンス(米)=5

(7)ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)=4

(8)ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)=3

(9)マイキー・ガルシア(米)=2

(10)シーサケット・ソールンビサイ(タイ)=1

1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点としてポイント計算すると、WBA&WBOライト級王者のロマチェンコ=28点、WBOウェルター級王者のクロフォード=28点、井上=23点、アルバレス=23点となる。この4人が現在の世界のボクシングシーンの「4強」といっていいだろう。奇しくも4人全員が3階級制覇を成し遂げているが、興味深いのは彼らの年齢である。ロマチェンコとクロフォードが31歳、アルバレスが7月18日で29歳になるのに対し井上は4月に26歳になったばかりで、群を抜いて若い。つまり最も多くの可能性を残しているともいえるのだ。井上は秋には階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の決勝で、5階級制覇王者のノニト・ドネア(36=フィリピン)と対戦することになっている。ここで内容のともなった結果を残せば、さらにランクアップすることは確実といえる。

ロマチェンコやクロフォードら他の選手の動向次第という面はあるが、近い将来、井上がPFPトップに躍り出る日が来そうだ。

フランチャイズ・チャンピオン? 王座乱発の裏事情

このほどWBCが同団体の世界ミドル級王者、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)を「WBCフランチャイズ・チャンピオン」にスライドさせると発表した。これまでにも従来の世界王者に加え各団体でスーパー王者や統一王者、名誉王者にダイヤモンド王者、さらにゴールド王者、暫定王者、休養王者など数えきれないほどのベルト保持者が誕生している。そこに、さらに聞きなれない新しい呼称が登場したことになる。世界王座乱発に歯止めがかからない状態といえる。

WBA、WBCに加えIBFとWBOが世界王座認定団体として誕生し、体重別のクラスが11階級から17階級に増加したのは1970年代後半から80年代後半にかけてのことだ。単純計算で世界王座は2団体×11階級=22王座だったのが、4団体×17階級=68王座に増えたことになる。

同じ階級に世界王者が4人もいる矛盾が生じたわけだが、これだけでは済まなかった。90年代以降、各団体が競うように“世界王座”を新設したのだ。まずは、正規王者が負傷や病気でブランクをつくる際の救済措置として設けられていた「暫定王座」が目立つようになった。これを本来の目的とは異なるかたちで頻発したのがWBAだった。そのため日本ボクシングコミッション(JBC)は数年前に「日本では無意味なWBAの暫定王座は世界王座と認めない」との判断を下して権威保持に努めたほどだ。

しかし、歯止めはきかず、WBAは複数の団体の王座を獲得した選手などに「スーパー王者」の称号を与え、それとは別にWBA王座とIBF王座を持つ井上尚弥(26=大橋)のような「統一王者」という肩書も認定している。さらに昨年あたりから「ゴールド王者」も誕生させている。その結果、WBAのヘビー級では<1>スーパー王者、<2>従来の正規王者、<3>ゴールド王者、<4>暫定王者の計4人が世界王者としてランキング表に載っている状態だ。

後発のIBFとWBOは緊急事態以外には1階級に1王者の原則を守っているが、近年、WBCが無意味と思われる王座を乱発している点が気になる。名誉王者、ダイヤモンド王者、さらに休養王者といった肩書を安易に与えるケースが目立つのだ。これらは実績のある正規王者が転級を計画していたり、あるいはドーピング違反で出場停止になったりといった状況時に王座剥奪を避けるために都合よく使い分けされている印象が強い。

今回のアルバレスの場合はさらにレアなケースだったといえる。アルバレスはWBCのミドル級王座だけでなく同級のWBAスーパー王座とIBF王座も保持しており、さらに1階級上のWBAスーパーミドル級の正規王座も持っている。昨年来、WBCはアルバレスに暫定王者のジャモール・チャーロ(29=米国)との団体内統一戦を課しているが、その義務を果たせない状態といえる。こうしたなか、スター選手を手放したくないWBCがアルバレスのために新たな称号をつくって与えたものと思われる。これを受け暫定王者のチャーロが正規王者に昇格した。

ところで、この「WBCフランチャイズ・チャンピオン」だが、日本語では<WBC特権王者>あるいは<WBC占有王者>とでも意訳表記すればいいのだろうか。

各団体の世界王者も参戦して階級最強を決めるトーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」が実施されるなど王座統一の機運が盛り上がっているなか、今回のようなご都合主義がファンの理解や支持を得られるとは思えない。これ以上、都合優先で実態のない、混乱を招く「ペーパー・チャンピオン(紙上の王者)」をつくらないでほしいものだ。

井岡一翔、統一戦勝ち抜けば5階級制覇も視野に

19日に井岡一翔(30=Reason大貴)がアストン・パリクテ(28=比)に10回TKO勝ち、空位だったWBO世界スーパーフライ級王座を獲得して日本男子初の4階級制覇を達成した。体重制が採られているボクシングで複数のクラスで世界一になるのは容易ではないが、井岡の前には19人の4階級制覇者がいる。興味深いのは、井岡を含めた20例がすべて1980年代以降に成し遂げられている点だ。これは階級と統括団体の増加と無関係ではない。

プロボクシングで現在のような階級制と王者制が定着したのは1880年代だが、しばらくは8階級時代が続いた。こうしたなか1930年代までにボブ・フィッシモンズ(英)、トニー・カンゾネリ(米)、バーニー・ロス(米)、ヘンリー・アームストロング(米)と4人の3階級制覇王者が誕生している。特にアームストロングは史上唯一のフェザー級、ライト級、ウエルター級の3階級王座を同時に保持する離れ業をやってのけている。まさに鉄人といえる。

アームストロング以降、40年以上も“トリプルクラウン”は出現しなかったが、81年にウィルフレド・ベニテス(プエルトリコ)とアレクシス・アルゲリョ(ニカラグア)が5人目、6人目として続いた。WBA、WBCの2団体×12階級時代のことである。

80年代にIBFとWBOが設立され、さらにミニマム級、スーパーフライ級、スーパーバンタム級、スーパーミドル級、クルーザー級が新設された。4団体×17階級時代に突入したわけだ。

そんな背景も手伝い、特別な才能を持った世界王者のなかには複数階級制覇をひとつのステータスとしてとらえる傾向が出てきた。

88年、すでに初の4階級制覇を達成していたトーマス・ハーンズ(米)がWBO設立とともに同団体のスーパーミドル級王座を獲得して5階級制覇を成し遂げると、3日後にはライバルのシュガー・レイ・レナード(米)が1試合でスーパーミドル級とライトヘビー級王座を獲得して追いつくということもあった。

90年代に入るとオスカー・デラ・ホーヤ(米)が6階級で戴冠を果たし、2010年にはマニー・パッキャオ(比)がデラ・ホーヤに並んだ。現時点では、このふたりが記録保持者である。ちなみにパッキャオの場合は50・8キロがリミットのフライ級から69・8キロが体重上限のスーパーウエルター級まで19キロもの体重の壁を突き破るという驚異の記録でもある。この間に含まれる4階級では世界王座を獲得していないが、「事実上の10階級制覇」という捉え方もあるほどだ。

5階級制覇は前出のハーンズ、レナードに加えフロイド・メイウェザー(米)、ホルヘ・アルセ(メキシコ)、ノニト・ドネア(比)の計5人が達成している。

4階級制覇は井岡を含め13人いる。ロベルト・デュラン(パナマ)、ロイ・ジョーンズ(米)、ミゲール・コット(プエルトリコ)らに加え現役のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)、マイキー・ガルシア(米)、昨年12月に井岡に競り勝ったドニー・ニエテス(比)ら錚々たるメンバーが並ぶ。

こうしたレジェンドたちと肩を並べた井岡は30歳。まだまだ可能性を感じさせる年齢だ。当面の目標としては「海外で強い選手と戦いたい」として他団体王者との統一戦などを挙げているが、そうした戦いを勝ち抜いた場合、5階級制覇も視野に入ってくるはずだ。

井上はドネアと WBSS3階級の全決勝カード決定

15日(日本時間16日)にラトビアの首都リガでクルーザー級のダブル世界戦が行われ、WBOタイトルマッチでマイリス・ブリエディス(34=ラトビア)が3回TKO、IBF暫定王座決定戦ではユニエル・ドルティコス(33=キューバ)が10回KOでそれぞれ勝利を収めた。この2試合は最強決定トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のクルーザー級準決勝も兼ねていた。これにより井上尚弥(26=大橋)が勝ち残っているバンタム級を含め、実施されている3階級の全決勝カードが決まった。

WBSSは17年9月に欧米の有力プロモーターが提携してスタートした賞金トーナメントで、シーズン1ではクルーザー級とスーパー・ミドル級の2階級で実施された。両階級とも世界王者を含む実力者8選手がエントリー。クルーザー級では3試合を勝ち抜いて4団体王座を統一したオレクサンデル・ウシク(32=ウクライナ)、スーパー・ミドル級では決勝でWBA王座を獲得したカラム・スミス(29=英国)が優勝した。

シーズン2はバンタム級、スーパー・ライト級、そしてクルーザー級の3階級で実施され、昨年10月に始まった。そのオープニング・イベントでは井上が元王者のファン・カルロス・パヤノ(35=ドミニカ共和国)を芸術的な右一発で70秒KO。今年5月の準決勝ではIBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)から3度のダウンを奪って2回KO勝ち、決勝に駒を進めている。このバンタム級では、もう一方の櫓を5階級制覇王者のノニト・ドネア(36=比)が勝ち上がってきた。

この井上対ドネアを含む決勝3カードは以下のとおりだ。

<バンタム級>

WBA&IBF王者井上尚弥(26歳=大橋 18戦全勝16KO)対WBAスーパー王者ノニト・ドネア(36歳=比 45戦40勝26KO5敗)

<スーパー・ライト級>

WBA王者レジス・プログレイス(30=米国 24戦全勝20KO)対IBF王者ジョシュ・テイラー(28=英 15戦全勝12KO)

<クルーザー級>

WBO王者マイリス・ブリエディス(34=ラトビア 27戦26勝19KO1敗)対IBF王者ユニエル・ドルティコス(33=キューバ 25戦24勝22KO1敗)

3階級とも世界王者同士の統一戦となる。井上対ドネアは新旧スター対決、プログレイス対テイラーは米英の全勝対決、クルーザー級はラトビア出身者対キューバ出身者のカードとなる。

決勝戦は10月~12月の間に行われる可能性が高いが、時期だけでなく開催地も未定だ。

主催者側の発表が待ち遠しい。

風雲急告げるヘビー級 フューリーは存在感示せるか

ヘビー級の元3団体統一王者、タイソン・フューリー(30=英)が15日(日本時間16日)、米国ネバダ州ラスベガスでWBO2位、IBF8位のトム・シュワルツ(25=独)とノンタイトル12回戦で拳を交える。フューリーは昨年12月、WBC王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)に挑戦したが、2度のダウンを喫して引き分けという結果に終わっている。試合後、フューリーは米国のトップランク社とプロモート契約を交わしており、これが新たな環境での再出発戦となる。3団体統一王者のアンソニー・ジョシュア(29=英)が敗れるなど風雲急を告げる状況の最重量級で、フューリーは存在感を示すことができるのか。

つい1カ月前まで、ヘビー級は41戦40勝(39KO)1分けのWBC王者ワイルダー、WBA、IBF、WBO3団体の王座を持つ22戦全勝(21KO)のジョシュア、そして28戦27勝(19KO)1分の元3団体王者フューリーが「3強」と呼ばれ、近い将来の頂上決戦が期待されていた。

そうしたなか5月18日、ワイルダーが12年ロンドン五輪戦士のドミニク・ブリージール(33=米)を右一発で137秒KOに仕留め、9度目の防衛を果たした。V8戦ではフューリーと引き分けたワイルダーだが、スピードと強打が健在であることを強烈にアピールした試合だった。6対1のオッズ以上の力量差を示したといえる。

ところが、その2週間後の6月1日、米国ニューヨークのリングで大番狂わせが起こった。米国初登場のジョシュアは16対1という賭け率で圧倒的有利と見られていたが、なぜか初回から慎重をとおり越して自信のなさそうな戦いぶりだった。3回に先制のダウンを奪ったが、33戦32勝(21KO)1敗のアンディ・ルイス(29)の反撃を受けて同じ回にジョシュア自身が2度ダウン。7回、再び2度のダウンを奪われてTKO負けを喫したのだ。主役の王座陥落でヘビー級は一気に混乱状態に陥ったといっていいだろう。

口の悪さに定評のあるフューリーだが、自身が薬物やアルコールに逃げた過去を思い出したのか「俺らはみんな行ったり来たり(勝ったり負けたり)なんだ。ヘビー級だからこういうこともある。いったん休んで、それから戻ってくればいいさ」とライバルを思いやった。

次は、そのフューリーの出番だ。フューリーは身長206センチ、体重125キロという巨漢だが、意外にも動きは軽快で構えを左右にチェンジする器用さも持っている。ワイルダー戦ではポイントでリードしていながら最終回にダウン。立ち上がって最後まで戦い抜いたが、王座を取り戻すことはできなかった。それでも「フューリーが勝っていた」という声は多く、本人も「リマッチが実現すれば間違いなく俺が勝つ」と息巻いている。

相手のシュワルツは24戦全勝(16KO)のレコードを持つホープで、地域王座を防衛しながら上位に進出してきた。正面から圧力をかけながら飛び込んで放つ右はなかなかパワフルだ。しかし、世界的な強豪との対戦経験に乏しく、米国のリングは今回が初めてとなる。体格やスピード、経験、テクニックなどで勝るフューリーが圧倒的有利と見られており、オッズは33対1と出ている。

フューリー対シュワルツはノンタイトル戦だが、注目度は世界戦に準じたものといっていいだろう。ジョシュア対ルイスのような歴史的番狂わせが再び起こるようだとヘビー級は大混乱状態に陥ることになる。それをフューリーが止めるのか、それともシュワルツがトップ戦線に割って入るのか。15日(日本時間16日)、ラスベガスのリングに要注目だ。

無冠となったゴロフキン 8日の再起戦は要注目

2010年から18年までの8年間に20度の防衛を果たした前世界ミドル級王者、ゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)が8日(日本時間9日)、米国ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでIBF同級8位、WBC15位のスティーブ・ロールズ(35=カナダ)と対戦する。昨年9月、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)との再戦で微妙な判定負けを喫して無冠になったゴロフキンにとっては、重要な再起戦となる。

ゴロフキンは40戦38勝(34KO)1敗1分の戦績が示すとおりの強打者で、アマチュア時代に04年アテネ五輪で銀メダルを獲得したように高度な攻防のテクニックも備えている。10年にWBAの暫定王座を獲得し、のちに正規王者からスーパー王者へと昇格。14年にWBC王座(当時は暫定王座)、15年にはIBF王座もコレクションに加え通算20度の防衛に成功した。これはバーナード・ホプキンス(米)と並ぶミドル級歴代最多防衛記録だ。また10年から17年にかけてマークした17連続KO防衛は、ウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ)と並ぶ史上最長記録でもある。

3団体統一王者として一時代を築いたゴロフキンだが、4月で37歳になった。アルバレスに惜敗したことで商品価値は若干落ちたものの強打と知名度の高さは変わらない。こうしたなか今年3月、ゴロフキンは動画配信サービスのDAZNと3年契約を交わした。その金額は6試合で1億ドル(約109億円)と伝えられる。アルバレスとの第3戦が実現した場合は3000万ドル(約32億7000万円)の報酬が保証されるという。今回のロールズ戦は再起戦であると同時にDAZNと契約後の初戦となる。

相手のロールズは全米王座を獲得した試合を含め19戦全勝(10KO)の戦績を残しているが、世界的な強豪との対戦経験は少ない。両ガードを高めに置いて戦う右構えのボクサーファイター型で、パワーは平均の域を出ない。「ゴロフキン陣営がこの試合をチューンナップと考えていたら痛い目に遭う」とロールズ側は息巻いているが、よほどのことがない限り33対1のオッズはひっくり返らないだろう。極論をいえば、ゴロフキンがどんな勝ち方をするのか-それがこの試合の最大の焦点といえるかもしれない。

ただ、かつての無敵王者にとっても気の抜けない試合であることは間違いない。ゴロフキンはDAZNとの契約と前後して、戴冠試合と王座陥落試合を含め22度の世界戦をともに戦ってきたアベル・サンチェス・トレーナーと決別。新たにジョナサン・バンクス・トレーナーとコンビを組んだ。これが吉と出るか、あるいは凶と出るのか。コーナーの指示とチームワークに要注目だ。また、今回の試合がミドル級よりも4ポンド(約1・8キロ)重い164ポンド(約74・3キロ)契約で行われる点にも注目したい。これはスーパー・ミドル級(168ポンド≒76・2キロ)のWBA王座も持つアルバレスを意識してのことと思われる。ゴロフキンにとっては13年のプロ生活で最重量のウェートとなるが、はたしてパフォーマンスに影響があるのかどうか。

ミドル級では今月29日(日本時間30日)に米国ロードアイランド州プロビデンスでデメトリアス・アンドレイド(31=米)対マチエイ・スレツキ(30=ポーランド)のWBOタイトルマッチが組まれており、来月12日には大阪でロブ・ブラント(28=米)対村田諒太(33=帝拳)のWBAタイトルマッチが予定されている。それらの試合を前にゴロフキンはどんな戦いをして存在感を示すのだろうか。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。