上へ戻る

au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

ウエルター級トップ戦線左右 スペンス対ガルシア 

6階級制覇を成し遂げているマニー・パッキャオ(41=比国)や3階級制覇のテレンス・クロフォード(32=米国)らスター選手がしのぎを削るウエルター級で、トップ戦線の行方を左右する魅力的なカードが実現することになった。WBCとIBFの王座を持つ2団体王者のエロール・スペンス(30=米国)が、3代前のWBC王者で現WBA2位、WBC2位、WBO1位のダニー・ガルシア(32=米国)の挑戦を受けるもの。試合は11月21日、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで行われる予定だ。

12年ロンドンオリンピック(五輪)ウエルター級でベスト8の実績を持つスペンスは、8年のプロキャリアで5度の世界戦(5勝3KO)を含め26戦全勝(21KO)という完璧なレコードを残している。サウスポー・スタンスからじりじりと相手にプレッシャーをかけ、左ストレートや右フックなど多彩なパンチを顔面とボディーに打ち分ける。スピード、パワー、テクニック、スタミナなど高い次元でバランスのとれた戦力を備えている。不安があるとすれば昨年10月に起こした自損事故の影響だろう。飲酒運転、スピード超過でハンドル操作を誤ったのか運転していたフェラーリが横転、車外に投げ出されるという事故だった。奇跡的にスペンスは比較的軽いけがで済んだが、今年1月25日に計画されていたガルシア戦はキャンセルしなければならなかった。

ガルシアはスーパー・ライト級時代の12年にWBCとWBA2団体の王座を獲得し、5度の防衛に成功。16年にはウエルター級でWBC王座についた。翌17年にWBA王者との統一戦で惜敗し、18年には王座決定戦で僅少差の判定で敗れた。以後は2連勝を収めている。戦績は38戦36勝(21KO)2敗。世界戦は9戦7勝(2KO)2敗で、次戦が10度目の世界戦となる。スペンスのような強烈なインパクトはないが、変則的なタイミングと角度で振り抜く左フックには定評がある。

いまのところオッズは3対1でスペンス有利と出ている。1年前までの勢いをみれば妥当な数字だが、スペンスが起こした事故が心理面、肉体面で影響を及ぼすのか否か、やはり気になるところといえる。

同じようなタイミングで対戦が期待されたWBAスーパー王者のパッキャオ対WBO王者のクロフォードの一戦が暗礁に乗り上げていると伝えられるだけに、ぜひともスペンス対ガルシアは予定どおり実現してほしいものだ。

コロナ禍のなか世界王者同士統一戦のゴング鳴ること期待

世界のボクシングをリードしている米国では近年、試合を放送、配信するショータイム、ESPN、DAZNの大手3社が競い合っている状態が続いている。それぞれが有力プロモーターと提携して注目ファイトを提供しているわけだ。コロナ禍のなか6月にはESPNがいち早く放送を再開し、7月にDAZNが続いた。ショータイムはやや遅れをとった印象だったが、7月下旬に8月以降の放送カードを発表。そのなかには世界王者同士の統一戦が2試合含まれていた。

ショータイムは「プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)」として数年前から数々のビッグマッチを提供してきたが、今回の発表カードもファン垂涎のものが多かった。

特に注目すべきは9月26日に米国東海岸のコネチカット州アンカスビルで行われるジャーメル・チャーロ(30=米国)対ジェイソン・ロサリオ(25=ドミニカ共和国)のWBA、WBC、IBF世界スーパー・ウェルター級3団体王座統一戦だ。WBC王者のチャーロが34戦33勝(17KO)1敗、WBAとIBF王座を持つロサリオが22戦20勝(14KO)1敗1分と、ふたりとも驚くほどKO率が高いわけではないが、直近の試合では評価の高かった王者を倒して戴冠を果たしたという共通項がある。経験値で勝るチャーロが4対1で有利とみられているが、ロサリオの強打が炸裂する可能性も低くはない。

10月24日に同じく米国コネチカット州アンカスビルで行われるWBA世界ライト級王者、ジャーボンテイ・デービス(25=米国)対WBA世界スーパー・フェザー級スーパー王者、レオ・サンタ・クルス(31=メキシコ)は、2階級の世界王座が同時にかけられる変則タイトル戦となる。135ポンド(約61.2キロ)のライト級王者、デービスが130ポンド(約58.9キロ)のスーパー・フェザー級まで体重を落として戦うというのだ。勝者が一時的に2階級の王座を保持することになるが、もともとスーパー・フェザー級で2度の戴冠を果たしているデービスは減量苦のために転級した経緯がある。オッズは11対4でデービス有利と出ているが、ライト級王者のコンディション調整が気になるところだ。

もう1試合、12月12日にセットされたWBC世界バンタム級タイトルマッチにも触れておきたい。昨年11月に来日して暫定王者だった井上拓真(24=大橋)を12回判定で下して王座を防衛したWBC王者のノルディーヌ・ウバーリ(33=フランス)が、5階級制覇の実績を持つノニト・ドネア(37=比国/米国)の挑戦を受けるのだ。この試合は当初5月16日に予定されていたが、コロナ禍の影響で延期されていた。五輪に2度出場した経験を持つサウスポーのウバーリが17戦全勝(12KO)、井上尚弥(大橋)との激闘が記憶に新しいドネアが46戦40勝(26KO)6敗。勝者が井上尚弥との統一戦に向かう可能性があるだけに日本のファンの注目度も高いカードだ。この試合もアンカスビルで行われる。

コロナ禍のなか、いまのところ上記試合は無観客で行われる予定と発表されている。これらの試合が延期や中止にならず、無事に開始のゴングが鳴ることを期待している。

再開はしたものの…検査陽性にドーピング違反などトラブル続出 

コロナ禍のなか米国では6月9日からネバダ州ラスベガスなどでイベントが再開されたが、トラブルなく終わったものもあれば選手やブレーンが検査で陽性反応を示したため中止や延期というケースもあった。そのほか選手の負傷も目立つ。この1カ月半を振り返ってみよう。

異常事態のなか米国で最初にボクシングのイベント再開にこぎ着けたのは大手のトップランク社だった。会場をラスベガスのMGMグランドのカンファレンス・センターに定め、すべて無観客とした。選手や関係者がホテル入りする際と計量時に検査を行い、セコンドの数は2名に限定したうえ、マスクとゴム手袋の装着を義務づけるなど対策には万全を期した。以後のイベントに関しても同様の対応がとられている。

6月9日の再開イベントではセミファイナルに出場予定だった女子選手が陽性反応だったため試合は延期に。その女子選手のトレーナーは濃厚接触者と判断され、メインに出場したチームメートのWBO世界フェザー級王者(のちに王座返上)、シャクール・スティーブンソン(米国)のセコンドにはつけなかった。

18日のイベントではメインに出場するミケル・レスピエール(トリニダードトバゴ/米国)のマネージャーが陽性だったため試合は2週間延期。セミファイナルを繰り上げてイベントは開催された。

この2件に関しては以前にも触れたが、その後もトラブルは絶えない。

7月2日にはジャメル・ヘリング(米国)対ジョナサン・オケンド(プエルトリコ)のWBO世界スーパー・フェザー級タイトルマッチが行われるはずだったが、事前の検査でヘリングが新型コロナウィルスの陽性反応が出たため14日に延期された。ところが試合前日の検査でもヘリングの陽性が再確認されたため、またもキャンセルという憂き目に。

このほかコロナ禍とは直接的な関係はないのだろうが、7月7日にセットされていた元IBF世界スーパー・ライト級王者のイバン・バランチク(ベラルーシ)対ホセ・セペダ(米国)のカードは、バランチクが肩を痛めたため延期になっている。その2日後のメインにはヘビー級の元世界ランカー、ジャレル・ミラー(米国)が出場予定だったが、ドーピング検査で陽性だったためキャンセルに。ミラーは昨年6月に3団体統一王座に挑む予定だったが、そのときも薬物検査でクロと判定されてチャンスを逃している。

7月16日にはエレイデル・アルバレス(コロンビア)対ジョー・スミス(米国)のライト・ヘビー級世界ランカー対決が予定されていたが、元世界王者でもあるアルバレスが肩を負傷したため延期になった。また、この日は3度の世界挑戦経験を持つフェザー級の世界ランカー、ミゲール・マリアガ(コロンビア)の試合も予定されていたが、相手のマーク・ジョン・ヤップ(フィリピン)が前日計量で4キロ近くも体重オーバー。そのため試合はキャンセルされた。この日は前座に出場予定だった選手が検査で陽性だったため、これも中止になった。

コロナの陽性判定に加えドーピング違反、体重超過-いつもと異なる環境下でのトレーニングということでコンディション調整は難しいのだろう。それでも、せっかくイベントが再開されただけに選手には最善を尽くしてほしいものだ。

ロマチェンコを食うのは誰?注目ライト級トップ戦線

135ポンド(約61.2キロ)を体重上限とするライト級はWBAスーパー王座、WBCフランチャイズ(特権)王座、WBO王座を持つワシル・ロマチェンコ(32=ウクライナ)がトップ戦線の中心にいるが、この夏以降、大きな動きがありそうだ。

ロマチェンコはオリンピック(五輪)連覇後にプロ転向を果たし、フェザー級、スーパー・フェザー級、ライト級の3階級制覇を成し遂げた実力者で、ボクサーの偏差値評価ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」で最強の声もある。戦績は15戦14勝(10KO)1敗。この「ハイテク(高性能)」のニックネームを持つ技巧派サウスポーがライト級の核であることは間違いない。ただ、32歳になったこともあり、これ以上の伸びしろがあるかというと疑問だ。身長170センチ、リーチ166センチはこの階級では小柄な部類に入り、ライト級転向初戦ではホルヘ・リナレス(34=帝拳)の右ストレートを浴びてダウンを喫するなど体格の壁が薄っすらと見え隠れしている。

ライト級トップ戦線が盛り上がってきたのは、この主役を食ってやろうという若手の台頭が著しいからである。

すでに10月3日にロマチェンコとの統一戦が内定しているのがIBF王者のテオフィモ・ロペス(22=米国)だ。16年リオデジャネイロ五輪に出場した経験を持つロペスはプロ転向後、4年間で15戦全勝(12KO)を収めている。現在の王座は昨年12月に2回TKO勝ちで獲得したもので、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いといえる。戦績が示すとおりの強打者で、得意の右でロマチェンコをキャンバスに沈める可能性もある。ただ、大舞台の経験やスキルで勝る3団体統一王者有利は不動とみられており、オッズは4対1と出ている。

そのロペスに勝るとも劣らぬ評価と期待を集めているのがWBA王者のジャーボンテイ・デービス(25=米国)だ。身長166センチ、リーチ171センチとロマチェンコよりも小柄で、「TANK(装甲戦車)」のニックネームがある。元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(米国)の秘蔵っ子としても知られるサウスポーのスラッガーで、23戦全勝(22KO)と高いKO率を誇る。直近の5年間は14連続KO勝ちと破竹の快進撃を続けている。スーパー・フェザー級とライト級の2階級制覇を成し遂げており、7度の世界戦はすべてKO(TKO)で終わらせている。ただし、そんなデービスをもってしてもオッズは11対4でロマチェンコ有利と出ている。

WBC王者のデビン・ヘイニー(21=米国)は24戦全勝(15KO)の逸材で、「ザ・ドリーム」のニックネームを持つ。反応の良さとハンドスピードが身上だが、ロペスやデービスと比較すると現時点では迫力不足の印象は拭えない。パワーなど総体的なスケールアップができれば2~3年後が楽しみな選手といえる。

まだ世界王座とは縁がないが、WBAとWBOで2位、WBC3位にランクされるライアン・ガルシア(21=米国)も注目の強打者だ。デビューから4年、20戦全勝(17KO)と85%のKO率を誇るパンチャー型で、「フラッシュ(閃光)」のニックネームどおりタイミングよく繰り出される右ストレートと左フックには一撃KOの破壊力がある。この童顔の人気者にはWBCからルーク・キャンベル(32=英国、23戦20勝16KO3敗)との暫定王座決定戦が指示されているほか、WBOからは指名挑戦者決定戦出場の指令が出ている。ガルシアがどちらを選択するのかという点にも要注目だ。

このほか8月28日には3階級制覇の実績を持つリナレス(52戦47勝29KO5敗)対ハビエル・フォルトゥナ(31=ドミニカ共和国、40戦35勝24KO2敗1分2無効試合)というベテラン同士のカードも予定されている。

コロナ禍の影響で今後の試合計画が変更になる可能性もあるが、ライト級トップ戦線から目が離せない状況になってきたことは間違いない。

柴田国明氏、アルゲリョ氏らと戦ったエルネスト・マルセル氏が死去

来日して柴田国明氏(ヨネクラ)の持つWBC世界フェザー級王座に挑み引き分けた経験も持つ元WBA世界フェザー級王者、エルネスト・マルセル氏(パナマ)が6月29日、亡くなった。72歳だった。死因に関する報道はないが、近年は脳の疾患に悩まされていたと伝えられており、COVID-19(新型コロナウィルス感染症)ではないという。

マルセル氏は1966年4月に17歳でプロデビュー。4年後、のちに世界4階級制覇を果たす同胞のロベルト・デュランには10回TKOで敗れたが、その後7連勝を収めてWBC世界フェザー級2位まで上昇。

その余勢を駆り71年11月に来日して愛媛県松山市で柴田氏に挑戦した。マルセル氏は前後左右に素早く動きながら手数やヒット数で主導権を掌握、着々とポイントを積み重ねているように見えた。十分な手応えがあったのだろう、マルセル氏は試合終了と同時に高々と手を挙げ勝利を確信。一方の柴田氏は右目上の傷から鮮血を滴らせ、消化不良の印象を与えた。

そんな試合だったため生中継の終了時間が迫っていたテレビ局は、コミッションが公式採点の集計に手間取っている間、「マルセル タイトル奪取」「柴田 2度目の防衛ならず」とテロップを出す勇み足をしてしまった。実況者も「第6代(WBC)チャンピオン誕生」とアナウンスしてしまうハプニング付きだった。実際の採点は72対69で柴田氏、71対65でマルセル氏、71対71(当時は5点法×15回戦=75点満点)の三者三様で柴田氏の引き分け防衛だった。

そんな苦い経験をしたマルセル氏は翌72年8月、西城正三氏からWBA世界フェザー級王座を奪ったアントニオ・ゴメス(ベネズエラ)を15回判定で破って悲願の戴冠を果たした。パナマ・アル・ブラウン、イスマエル・ラグナ、アルフォンソ・フレーザー、ロベルト・デュラン、エンリケ・ピンダーに続きパナマでは6人目の世界王者だった。

マルセル氏は2度目の防衛戦でゴメスを返り討ちにし、V3戦ではスパイダー根本(草加有沢)を9回KOで撃退。4度目の防衛戦では、のちに世界3階級制覇を果たすアレクシス・アルゲリョ(ニカラグア)の挑戦を受け、15回判定勝ちを収めた。中盤にはストップ負け寸前の窮地もあったが、それを乗り越えての価値ある勝利だった。試合前から「これがラストファイト」と公言していたマルセル氏は「アルゲリョは必ず世界王者になるだろう」と予言し、自身は25歳の若さで引退を表明した。

8年間のプロ生活で記録した戦績は46戦40勝(23KO)4敗2分。柔軟な体を生かした運動量の多い右のボクサーファイター型で、勘の良さに定評があった。

王座を返上してリタイアしたボクサーはのちに戦線復帰するケースが多いが、母親の意向に沿って引退を決断したといわれるマルセル氏は2度とリングに戻らなかった。

金銭清算やめ3年契約でトップ選手のジム移籍容易に

日本初にして唯一の4階級制覇を成し遂げているWBO世界スーパー・フライ級王者、井岡一翔(31)が5月25日、DANGAN AOKIジムから旧オザキジムを母体とする「Ambition GYM」に移籍した。父親が会長を務める井岡ジムからデビューした井岡にとっては2度目の移籍ということになる。マネジャーやトレーナー、練習環境がセットになっているボクシングジムと選手が契約する形態の「クラブ(ジム)制度」が採用されている日本では、以前はトップ選手が所属先を変わることは稀有だった。しかし、昨年5月の伊藤雅雪(29=横浜光)や今回の井岡のように近年は現役の世界王者が移籍することも珍しくなくなった。

欧米ではボクサーがマネジャー、トレーナーと個々に契約を交わし、さらに練習するジムを探してトレーニングする「マネジャー制度」が採られている。試合をする場合にはマネジャー経由でプロモーターとも契約を交わすことになる。そのため選手は自分の素質を伸ばす能力がないと判断したトレーナーとの契約を解除することも可能だし、同様に無能なマネジャーとの関係を自分の意思で終わらせることもできる。

これに対し日本では大正10年(1921年)に日本拳闘倶楽部(ジム)が設立されて以来、昭和27年(1952年)のJBC(日本ボクシングコミッション)設立を経て100年近くも「クラブ(ジム)制度」が続いている。トレーナー、練習場、マネジャー、プロモーターがセットになっているジムと契約を交わして入門すると、のちに問題が発生しても選手が環境を変えることは難しいシステムだったといえる。

こうした背景があったため日本ではトップ選手がジムを移籍した例は少なかった。現役の世界王者がジムを移籍したのは2007年の長谷川穂積(千里馬神戸⇒真正)が最初で、昨年の伊藤が2例目、今回の井岡が3例目となる。

また、高山勝成(エディタウンゼント⇒グリーンツダ⇒真正⇒仲里⇒寝屋川石田)、亀田興毅(グリーンツダ⇒協栄⇒亀田⇒協栄)、亀田和毅(亀田⇒協栄)のように、元王者がジム移籍後に再び戴冠を果たした例もあるが、これらも21世紀に入ってからのことだ。

このほか、ジム移籍後に世界王者になった選手としては川島郭志(相模原ヨネクラ⇒ヨネクラ)、戸高秀樹(宮崎ワールド⇒緑)、徳山昌守(グリーンツダ⇒金沢)、畑山隆則(京浜川崎⇒横浜光)、西岡利晃(JM加古川⇒帝拳)、三浦隆司(横浜光⇒帝拳)、小國以載(VADY⇒角海老宝石)、村田諒太(三迫⇒帝拳)らがいる。

さらに世界王座から陥落後にジム移籍を果たした例としては山口圭司(グリーンツダ⇒TAIKOH小林⇒新日本木村⇒TAIKOH小林)、石田順裕(金沢⇒グリーンツダ)、今年に入ってからは木村翔(青木⇒花形)、比嘉大吾(白井・具志堅⇒Ambition GYM)などがいる。これらの事例も川島を除いて最近の25年間に集中している。なお、木村と比嘉は現役だけに、再戴冠を果たすことができるか注目される。

こうしたなか昨秋には、長い間の業界のあしき慣例だったジム移籍の際の金銭清算が撤廃され、また選手がジムと交わす3年契約が再確認されたことで満了後の移籍が容易になった。要はハードルが低くなったわけで、比嘉の移籍はその典型例といえる。今後、トップ選手のジム移籍に拍車がかかる可能性がある。

試合再開もトラブル続出 ウイズコロナへ模索続く

ボクシングの聖地ともいわれる米国ネバダ州ラスベガスで6月9日(日本時間10日)、約3カ月ぶりに試合が行われた。その後も週に2回ほどのペースでイベントが開催されテレビで中継されているが、コロナ禍が収束していないためすべて無観客試合としての挙行だ。6月下旬から7月の試合計画も発表されているが、しばらくは試行錯誤のなかでのイベント開催が続きそうだ。

6月9日にラスベガスのMGMグランド・カンファレンス・センターで挙行されたイベントでは、選手やトレーナーら出場メンバーはホテル入りする際にコロナの検査を受けたうえで隔離され、外出禁止の措置がとられた。試合時、2名に限定されたトレーナーにはマスクと手袋の着用が課され、止血などの応急処置を施すカットマンはコミッションが派遣した2名が務めた。プロモートしたトップランク社によると、コロナ対策の費用だけで2万5000ドル(約267万円)に上るということだ。こうして5試合が行われ、メインに出場したWBO世界フェザー級王者のシャクール・スティーブンソン(22=米国)がノンタイトル10回戦で6回KO勝ちを収めるなどイベントは終了した。

その後、MGMグランド・カンファレンス・センターでは11日、16日、19日にもイベントが開催されたが、まったく問題がなかったわけではない。9日にはセミファイナルに出場予定だった女子選手が計量前日のコロナ検査で陽性反応を示し、そのため試合は中止に。女子選手のトレーナーはスティーブンソンの指導もしていたため、メインカードでスティーブンソンのセコンドをすることを禁じられるというハプニングがあった。

また、19日のメインカードで組まれていた元世界2階級制覇王者のホセ・ペドラサ(31=プエルトリコ)対ミッケル・レスピエール(35=トリニダードトバゴ/米国)も中止になった。試合2日前に行ったコロナ検査でレスピエールのマネージャーが陽性だったことが判明したためだ。ペドラサとレスピエールは計量も済ませていただけに気の毒な決定だったといえる。

そのためトップランク社は中止になった上記2カードを7月に行う方向で調整に入っていると伝えられる。

このあと25日にはラスベガスで、27日にはメキシコシティでイベントが予定されている。7月にはさらに多くの試合が開催される見込みだが、ウイズコロナを前提に新しいイベント開催の方向性を探るため、しばらくは厳重な管理と検査のなか試行錯誤が繰り返されることになりそうだ。

コロナ禍の影響か 前WBC王者グウォジク引退

コロナ禍が続くなか米国やドイツ、ポーランドなどでボクシングのイベントが再開されたが、その一方、前WBC世界ライト・ヘビー級王者のオレクサンダー・グウォジク(33=ウクライナ)が引退したという寂しいニュースが伝わってきた。グウォジクは昨年10月の王座統一戦でIBF王者のアルツール・ベテルビエフ(ロシア)に10回TKO負けを喫したのがプロでは唯一の敗北で、その試合がラストファイトになった。

グウォジクは10歳でボクシングを始め、アマチュアで255戦175勝80敗という戦績を残した。勝率は約70パーセントと決して高くはなかったが、3年連続でウクライナの国内王者になったほか09年と11年の世界選手権に出場。そして12年ロンドン五輪ではライト・ヘビー級で銅メダルを獲得している。

米国のトップランク社とプロモート契約を交わしてプロに転向し、ラスベガスでデビューした。地域王座を獲得するなど地力をつけたうえで18年3月にWBC世界ライト・ヘビー級暫定王座を獲得。その年の12月には、5年半に9度の防衛を果たしていた正王者のアドニス・スティーブンソン(ハイチ/カナダ)に11回KO勝ち、自力でWBC正王者に昇格した。19年3月のV2戦では5回TKO勝ちを収めている。

しかし、その7カ月後に行ったIBF王者との統一戦では9回までポイントでリードを奪いながら10回に3度のダウンを喫してTKO負け、王座を失った。無冠になってからもWBCで3位、IBFで7位にランクされていた。一時はベテルビエフとの再戦に意欲をみせていたもののコロナ禍の影響で試合の見通しが立たない状態が続いていた。そのため気持ちが引退に傾いたと思われる。

グウォジクは丹念に左ジャブを突いてから右ストレートにつなげる基本に忠実なタイプで、パワーもあった。戦績は18戦17勝(14KO)1敗、プロ活動は実質5年半と短かった。

プロ転向時からコンビを組んできたエギス・クリマス・マネージャーは「彼にはボクシング以外にもやりたいことがたくさんあるらしい。賢い男なのでビジネスでも成功するだろう」とコメントしている。トップランク社のボブ・アラム・プロモーターも「彼の能力、人間性、忍耐強さをもってすれば次のチャレンジもうまくいくと思う」とエールを送っている。

デビュー戦で唯一王座に挑戦したラドメイカー氏死去

1956年メルボルン五輪ヘビー級金メダリストで、プロ転向初戦で世界王座に挑戦した経験を持つピート・ラドメイカー氏(アメリカ)が4日、米国オハイオ州クリーブランドの病院で亡くなった。91歳だった。プロでは十分な実績を残すことができなかったラドメイカー氏だが、「プロデビュー戦で世界王座に挑戦した唯一の男」として歴史に名を残している。

フィンランド系米国人のラドメイカー氏は1928年11月20日、米国ワシントン州のタイトンという町で生まれた。ボクシングはアマチュアでスタートし、79戦72勝7敗の戦績を収めた。ハイライトは28歳になった直後に出場したメルボルン五輪で、3試合すべてにKO勝ちを収めて金メダルを獲得したときであろう。

翌年8月22日にプロ転向を果たすことになるが、いきなり当時の世界ヘビー級王者、フロイド・パターソン(米国=当時22歳)への挑戦試合が組まれた。いまでは原則として世界15位以外の選手には挑戦権がないが、当時は規定が甘かったのだろう。ちなみに現世界ライト級王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が五輪連覇後にプロ転向する際、プロモーターに「デビュー戦で世界挑戦させてほしい」とリクエストした逸話があるが、興行主は「世界15位以内に入れば2戦目で世界戦を組む」と約束。実際にデビュー戦で世界ランカーを破ったロマチェンコはプロ2戦目で世界挑戦(判定負け。3戦目で戴冠)している。

ラドメイカー氏は身長187センチ、リーチ196センチ、体重は約92キロと当時のヘビー級では大柄だった。一方、王者のパターソンは52年ヘルシンキ五輪ミドル級金メダリストで、プロに転向して5年が経っていた。戦績は33戦32勝(23KO)1敗。身長183センチ、リーチ180センチ、体重は約85キロと最重量級のなかでは小柄だった。前年の11月、ちょうどラドメイカー氏が金メダルを獲得したころに世界王座を奪取。7月には10回TKO勝ちで初防衛を果たしたばかりで、前戦からわずか24日でV2戦に臨むことになった。

戦前のオッズは10対1、もちろんパターソン有利である。ミスマッチの声もあるほどだったが、シアトルのシックス・スタジアムを埋めた約1万7000人の観客は同州出身者が初回から快調に飛ばすのを見て期待を膨らませた。2回には得意の右を当てて先制のダウンも奪った。この際、リングサイドの観戦者2人が驚いて心臓発作を起こしたと伝えられる。しかし、ダウンで目が覚めたのかパターソンがペースを上げると、対照的にラドメイカー氏は疲労の色を濃くしていった。5回、左ガードの低い挑戦者にパターソンが右を狙い撃ち。この回だけで5度もダウンを奪った(1度はカウントなし)。続く6回、パターソンが2度のダウンを追加するとレフェリーが試合を止めた。

大記録を達成できなかったラドメイカー氏は11カ月後の再起戦でも、アマチュア時代からのライバルでのちに世界挑戦するゾラ・フォーリー(米国)に4度倒されて4回KO負け。その後、6連勝や7連勝をマークしたこともあるが、32歳を過ぎてから3連続KO負けを喫するなどして引退した。地域王座の獲得もなく、プロでは23戦15勝(8KO)7敗1分という平凡な戦績で終わった。

近年は認知症の症状が出ていたこともあり入院生活を送っていたという。

WBO王者スティーブンソン登場 3カ月半ぶりボクシング再開へ

ボクシングの聖地ともいわれる米国ネバダ州ラスベガスで6月9日(日本時間10日)、久しぶりにボクシングが行われることになった。メインにはWBO世界フェザー級王者のシャクール・スティーブンソン(22=米国)が登場、ノンタイトル10回戦に臨む予定だ。コロナ禍の影響を受けラスベガスで組まれていたボクシングのイベントは2月28日を最後に中止や延期が相次ぎ、これが3カ月半ぶりの試合となる。

16年リオデジャネイロ五輪バンタム級銀メダリストでもあるスティーブンソンは、もともと3月14日にニューヨークで初防衛戦が組まれていたが、直前になって中止が決定したという経緯がある。それだけにプロモートを担当するトップランク社も伸び盛りの22歳に早い時期の試合を提供する必要性を感じていたのかもしれない。相手のフェリックス・カラバリョ(プエルトリコ)はWBC中米カリブ王座を獲得したこともある選手で、戦績も16戦13勝(9KO)1敗2分と悪くない。しかしランキング外ということもあって試合はスーパー・フェザー級ノンタイトル10回戦として挙行される。

これに先立ち5月下旬、スポーツ・イベントを管理するネバダ州アスレティック・コミッション(NSAC)はイベント再開の承認を出しており、試合はホテルの施設内で無観客として行われることが確認されている。戦いの模様はテレビで生中継される予定だ。

スティーブンソンの試合をスタートに、その後もトップランク社はスポーツ専門チャンネルのESPNと組んで以下のようなカードをメインとして週に2度のペースで無観客試合の挙行と放送を計画している。ちなみにナバレッテ対ロペス戦以外はラスベガスで行われる予定だ。

■6月11日 ジェシー・マグダレノ(米国)

対エニフェル・ビセンテ(ドミニカ共和国) 

フェザー級10回戦

■6月16日 ジョシュア・グリーア(米国)

対マイク・プラニア(比国) バンタム級10

回戦

■6月18日 ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)

対ミッケル・レスピエール(トリニダードト

バゴ/米国) スーパー・ライト級10回戦

■6月20日 エマヌエル・ナバレッテ(メキ

シコ)対ウリエル・ロペス(メキシコ) フ

ェザー級10回戦@メキシコ

■6月23日 アンドリュー・マロニー(豪)

対ジョシュア・フランコ(米国) バンタム

級10回戦

■7月 2日  ジャメル・ヘリング(米)対ジ

ョナサン・オケンド(プエルトリコ) WB

O世界スーパー・フェザー級タイトルマッチ

■7月 9日 イバン・バランチク(ベラルー

シ)対ホセ・セペダ(米国) スーパー・ラ

イト級10回戦

スティーブンソン、ナバレッテ、マロニーは現役の世界王者だが、いずれもタイトルをかけない調整試合となる。また、昨年5月に伊藤雅雪(伴流⇒横浜光)に勝ってWBO世界スーパー・フェザー級王座を獲得したヘリングは2度目の防衛戦としてリングに上がる予定だ。バランチク対セペダは世界ランカー同士のカードとなる。

こうした一方、5月30日にドミニカ共和国の首都サントドミンゴで行われる予定だったボクシングのイベントが直前で中止に追い込まれるなど、まだまだコロナ禍の影響は大きいものがある。

聖地ラスベガスで予定される上記試合が順調に挙行されることを祈りたい。

超大型フューリー対正統派ジョシュアの王者対決期待

6月にも欧米で世界王者を含むトップ選手たちの試合が再開されそうな気配になってきたものの、まだCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)が予断を許さない状況であることに変わりはない。こうしたなか、今回はトップ選手として身長206センチ、直近の試合では124キロ近い体重だった超大型のWBC世界ヘビー級王者、タイソン・フューリー(31=英国)を紹介したい。

英国マンチェスター出身のフューリーは、予定日より2カ月半も早く生まれたため体重は450グラムほどの未熟児だった。30年以上経った現在、120キロを超える巨体になると誰が予想しただろうか。ちなみに、「タイソン」というファーストネームは当時の世界ヘビー級王者から拝借したのだという。

ヘビー級の元プロボクサーだった父親の影響でボクシングを始め、

アマチュアで35戦(31勝4敗)したあと20歳でプロデビュー。英国王座や英連邦王座などを獲得して順調にトップ戦線に躍り出たが、当時は色物扱いされることもあった。大柄ではあるものの構えを左右にスイッチするなど戦い方がトリッキーで迫力を欠く傾向があったことが主因だったといえる。また能弁なのは存在をアピールするうえで役に立ったが、それを快く思わない人も少なくなかったようだ。

そうしたなか15年11月、ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)のV19を阻止して3団体統一王者になったことで評価が急上昇した。しかし、最高位についたプレッシャーからかアルコールやドラッグに逃げ場を求めることになり、その結果として王座を放棄して一時は引退してしまった。

2年半のブランク後に戦線復帰を果たし、以後は6戦5勝(3KO)1分をマークしている。復帰3戦目ではWBC王者のデオンタイ・ワイルダー(米国)に挑戦し、2度のダウンを喫しながらドローという結果に終わった。それを受けて行われた今年2月の再戦では2度のダウンを奪って7回TKO勝ち、最高位に返り咲いた。このときは初戦よりも7キロ重い体重で試合に臨み、細身のワイルダーに圧力をかけて攻め落とすなど戦略面でも優れたものをみせたものだ。通算戦績は31戦30勝(21KO)1分。

現在、ヘビー級には3団体(WBA、IBF、WBO)統一王者としてアンソニー・ジョシュア(英国)がいる。昨年6月、格下に7回TKO負けを喫したジョシュアだが、半年後に大差の判定で雪辱して返り咲きを果たしている。こちらは24戦23勝(21KO)1敗の正統派強打者で、英国での試合では9万人の大観衆を集めたこともある人気者だ。

いま、そんな両雄の頂上対決がいつ行われるのかという点にボクシングファンの興味が集まっている。一時、フューリーとワイルダーの第3戦が夏に計画されたが、コロナ禍の影響で秋以降に延期された。その間にフューリー対ジョシュアという英国人王者対決が浮上しているのだ。大柄で変則なフューリー、五輪金の実績も持つ正統派のジョシュア。タイプの異なる王者同士の大一番が実現することを期待したい。

井上尚弥の転級待つナバレッテら北米での試合具体化

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行が収まらない状況に変わりはないが、世界各地で経済活動再開の動きが出始めている。

すでにボクシングも4月下旬に中米ニカラグアや韓国が中堅どころの試合を中心にしたイベントを催したが、今度は北米で世界王者たちの試合が具体化してきている。

メキシコでは6月6日にWBO世界スーパー・バンタム級王者のエマヌエル・ナバレッテ(25=メキシコ)がメキシコシティーで試合をする計画だと伝えられる。無観客イベントとしてテレビ局のスタジオにリングを設置して試合を行い、それをテレビ中継する予定だ。保健当局の特別許可が出るのを待っている状態だという。

ナバレッテは32戦31勝(27KO)1敗の戦績を残している攻撃型の選手で、18年12月に戴冠を果たしてから1年5カ月の間に5度の防衛をこなしている“戦うチャンピオン”だ。1階級下の井上尚弥(27=大橋)が転級してくるのを待っている状態で、「井上に勝てば評価が上がる。もちろん勝つ自信はある」と吹いている。若くて勢いがあるだけに、陣営としてもブランクは最小限に食い止めたいのだろう。

6月9日にはWBO世界フェザー級王者のシャクール・スティーブンソン(22=米国)がラスベガスで試合を計画している。16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)バンタム級銀メダリストのスティーブンソンは3月14日にニューヨークで初防衛戦を行う予定だったが、コロナ禍のため直前になって中止になった経緯がある。次戦はノンタイトル戦になる模様で、試合内容が良ければスーパー・フェザー級に転向する可能性が高い。スティーブンソンは13戦全勝(7KO)の伸び盛りの逸材で、ナバレッテと同じように空白期間を短く抑えたい意向があるようだ。

昨年5月に伊藤雅雪(29=伴流⇒横浜光)からWBO世界スーパー・フェザー級王座を奪ったジャメル・へリング(34=米国)には、7月2日にラスべガスで2度目の防衛戦を行うプランが浮上している。プロモートするトップランク社が計画を明らかにしたもので、スティーブンソンと同様、テレビ局のスタジオで無観客試合として挙行、それが放送される予定だ。

へリングは12年ロンドン五輪に出場した経歴を持つ技巧派サウスポーで、プロでは23戦21勝(10KO)2敗の戦績を残している。再戦と雪辱を目指す伊藤にとってもヘリングの動きは気になるところといえよう。

依然としてCOVID-19は予断を許さない状況であることに変わりはないが、これらの試合が決行されることを多くのボクシングファンが願っている。

誰が一番強いか WBSSシーズン3スタートに期待

井上尚弥(27=大橋)がバンタム級で優勝するなどして日本でも注目を集めた階級最強決定トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」はシーズン3の開催が期待されているが、COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の影響で年内の開始は厳しくなった。チーフ・オフィサーのカレ・ザワランド氏は、「来年1月にスタートさせたい」と話している。

WBSSはスイスを活動拠点とするザワランド・イベント社や、元世界5階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン/米国)らを擁する米国のリングスポーツ社などが提携して2017年9月にスタートした。第1回大会はクルーザー級とスーパー・ミドル級の2階級で実施。原則として出場資格を世界王者と世界ランキング15位以内の選手に絞り、各階級8人が参戦した。

クルーザー級には主要4団体の王者すべてがエントリーしたため、準決勝2試合と決勝は統一戦となった。その結果、オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)が優勝し、試合報酬に加え1000万ドル(約10億6000万円)の賞金を得た。スーパー・ミドル級は途中で欠場者が出るなどしたが、本命視されていたカラム・スミス(英国)が勝ち抜いてWBAスーパー王座を獲得して優勝した。

団体や国の壁を越えて「その階級で誰が一番強いのか」という分かりやすい構図のトーナメントだけに、ファンや関係者へのアピールは絶大だった。

それを受け18年秋から19年秋にかけてシーズン2が3階級で実施され、バンタム級で井上、スーパー・ライト級でジョシュ・テイラー(英国)が優勝した。ふたりとも他団体王者との競り合いを制して評価を上げ、それを機に世界的なスター選手の仲間入りを果たしたといえる。

ただ、シーズン1に続いて実施されたクルーザー級では、決勝戦が19年12月から今年3月、さらに5月と延期されたすえ、コロナ禍の影響で現時点では具体的な開催日程が立てられない状況となっている。

主催者側はシーズン3を開催する方向で検討しているというが、前回大会の決勝戦を前に次の大会を開始するわけにもいかない。「5月の予定(クルーザー級決勝戦)がキャンセルになったばかりなので、いまは状況を見ているところ」(ザワランド氏)という。

財政面では大きな問題を抱えているといわれるWBSSだが、ファンの注目や期待は高いものがある。ザワランド氏は次回大会を2階級に絞る考えがあると明かしている。そのうえで「2021年1月にシーズン3をスタートさせたい」と話している。

実施される場合はどの階級になるのか、日本人選手の参戦はあるのか-コロナ禍が終息した先の話とはいえ興味は尽きない。

6人王者擁す英国などボクシングイベント再開の動き

まだまだCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の勢いは衰えていないが、そんな状況下で見切り発車的に世界各地でボクシングのイベント再開の動きが出てきている。すでに4月25日(日本時間26日)に中米ニカラグアで8試合、26日には韓国で3試合が行われたばかりだ。このあともニカラグア、メキシコ、ポーランドなどで数試合が行われる予定で、時期尚早の声があるなか不安と期待の入り混じったイベント開催となりそうだ。

4月25日にニカラグアの首都マナグアで開催されたイベントでは、選手やトレーナーなどがマスクをして入場。マスク着用が義務づけられた観客は隣の席と2メートルほどの距離を空けて座った。ゴム手袋をしたレフェリーは試合中もマスクを外すことがなく、普段とはかけ離れた光景といえた。

この日の8試合をプロモートした元世界2階級制覇王者のロセンド・アルバレス氏は5月16日にもマナグアで試合を挙行する予定で、すでに世界挑戦経験者のフランシスコ・フォンセカ対エウセビオ・オセホというニカラグア人同士のカードをメインとして組んでいる。4月のイベントと同じ会場が予約されており、次回も観客を入れて挙行することになるという。

その1週間後の5月23日にはメキシコのミチョアカン州パツクアロでも5試合が行われる予定だ。このイベントは同地出身の元IBF世界スーパー・ウエルター級王者のカルロス・モリナ(メキシコ/米国)がプロモートするもので、モリナ自身がメインカードに出場すると発表されている。当日は5試合が予定されているが、無観客試合として行われるという。

さらに6月12日にはポーランドのコナリーで、マリウス・ワフ(ポーランド)対ケビン・ジョンソン(米国)というヘビー級の元世界ランカー対決が組まれている。ふたりとも世界挑戦経験者だが、ともに40歳でピークを過ぎて久しい。現状を考えるとこのあたりのマッチメークが精一杯なのかもしれないが、主催者は無観客で行うこのイベントを課金システムのペイ・パー・ビュー(PPV)で放送するとしている。どのくらいの契約が取れるのかという点にも注目したい。

このほか英国でも再開の動きが出ており、条件が整えば7月にもボクシングのイベントが開催される可能性があると伝えられる。ヘビー級3団体王者のアンソニー・ジョシュア、WBCヘビー級王者のタイソン・フューリーら6人の世界王者(暫定王者を含めれば8人)を擁する英国だけに、どんなイベント形態をとるのか、こちらも世界的な注目を集めそうだ。

目まぐるしく変わったデビン・ヘイニーの王者の肩書

昨年9月から今年4月までの間に、暫定王者 ⇒ 正王者 ⇒ 休養王者 ⇒ 正王者 と肩書が次々に変わった世界王者がいる。WBCライト級王者のデビン・ヘイニー(21=米国)のことだ。7カ月前の戴冠後にヘイニーは防衛戦を1度こなしただけだが、自身の肩の手術やCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響を受けたかたちとなった。

アマチュアを経て17歳でプロデビューしたヘイニーは才能に恵まれた中量級のスター候補で、「ザ・ドリーム」というニックネームを持つ。昨年9月、期待に応えるように20歳の若さでWBC世界ライト級暫定王座を獲得してみせた。翌月、正王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が「フランチャイズ(特権)王者」にスライドしたのを受け、暫定王者から正王者へと昇格した。11月には初防衛にも成功したが、この試合で右肩を痛めたため手術。6カ月間は試合ができないことから12月には一転してWBCから休養王者に格下げされてしまった。空位になった王座は1位のハビエル・フォルトゥナ(ドミニカ共和国)と2位のルーク・キャンベル(英国)で争われることになり、4月17日に米国東海岸で決定戦が挙行されることが決まった。

この間、ヘイニーは正王者への復帰を主張し、いったんはWBCが王座返還に動いた。しかし、今度はフォルトゥナ陣営とキャンベル陣営が異を唱えたため、ヘイニーは休養王者の地位に留められたという経緯がある。

こうしたなか4月22日にWBCの役員投票が行われ、その結果、晴れてヘイニーの正王座復帰が認められた。また戦線復帰となる次期防衛戦では自由に対戦相手を選べることも確認された。元の鞘に収まったかたちだが、ヘイニーにとっては最良の裁定が出たといっていいだろう。フォルトゥナ対キャンベルの試合がCOVID-19の影響で延期されたことがヘイニーにはプラスに作用したといえるかもしれない。ちなみにフォルトゥナ対キャンベルは暫定王座決定戦として挙行される予定(開催日時や場所は未定)で、勝者にはヘイニーとの団体内統一戦が課されている。

24戦全勝(15KO)のヘイニーは早ければ7月にもリングに上がれる状態だというが、もちろんCOVID-19の鎮静化が大前提となる。とにかく一日も早くコロナ禍が終息してほしいものだ。

ルイス対タイソン裁いたエディ・コットン氏コロナ死

2002年に行われた世界ヘビー級タイトルマッチ、レノックス・ルイス(英国)対マイク・タイソン(米国)の大一番を裁いたレフェリーとして知られるエディ・コットン氏(米国)が米国時間の17日朝、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のためニュージャージー州パターソンの病院で亡くなった。72歳だった。コットン氏は2週間ほど前から入院していたという。

アマチュアボクシングの審判員だったコットン氏は1992年7月、プロのレフェリーとして“デビュー”。3年後には早くもIBF世界スーパー・フェザー級王座決定戦の主審を務め、その後、元世界ヘビー級王者、ジョージ・フォアマン(米国)の試合のレフェリーも務めた。98年以降はIBFやWBCで世界戦の主審として起用される機会が増え、南アフリカ共和国やカザフスタンなど国外でも重要な試合を裁いた。

コットン氏の名前が世界的に知られるようになったのは、2002年6月8日に米国テネシー州メンフィスで行われたルイス対タイソンのWBC、IBF世界ヘビー級タイトルマッチのレフェリーを務めたからといっていいだろう。この試合は同年4月にラスベガスで開催される予定だったが、1月の発表会見時に挑戦者のタイソンがルイスに殴りかかり、止めに入ったルイス陣営のガードマンと揉み合いになるというトラブルが発生。これを理由にイベントを管理するネバダ州アスレチック・コミッションがタイソンにライセンスを発給しなかった。これを受けて日程と試合地を変更してメンフィスで開催されることになったという経緯があった。そのため両者が鉢合わせしないように試合前日の計量時間をずらしたり、試合当日もゴング前の“フライング戦闘”を防ぐためにリング中央部分にガードマンが配置されるなどピリピリしたムードのなかで戦いは行われた。すでにタイソンに全盛期の力はなかったが、こうした“前哨戦”もあって世界的な注目を集めた試合だった。

この大一番のレフェリーを務めたのがコットン氏だった。2回からルイス優勢で進んだ試合は8回、2度目のダウンを喫したタイソンに10カウントが数えられて決着をみた。コットン氏はクリンチの際に小柄なタイソンに体重を乗せるルイスに減点を科したり(4回)、8回には大きく腰を落としたタイソンにダウンを宣告するなど物議をかもす判断はあったものの、まずは大きな問題もなく裁いた。

これを機に、最重量級選手に劣らぬ体格のコットン氏はライト・ヘビー級、クルーザー級、ヘビー級など重い階級の世界戦に起用されるケースが増えた。世界ヘビー級王者、ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)のタイトルマッチでは4度、レフェリーを務めている。このほかWBA世界ミドル級王者時代のゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)のV8戦や、無冠時代のタイソン・フューリー(英国=現WBC世界ヘビー級王者)の試合も裁いた。14年にレフェリーを引退するまでの22年間で世界戦の主審を務めた回数は主要4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)だけで40回を超える。

引退後はニュージャージー州に本部があるIBFの役員を務め、15年12月に東京・有明コロシアムで行われた八重樫東(大橋)対ハビエル・メンドサ(メキシコ)のIBF世界ライト・フライ級タイトルマッチの際にはスーパーバイザーとして来日した。同職は、COVID-19が蔓延して世界各地で試合が中止、延期される直前の今年2月まで務めた。

一緒にゴルフをする仲だったというWBOのフランシスコ・バルカルセル会長(プエルトリコ)は「彼はレフェリーとしても、ひとりの人間としても優れた人物だった」と故人を偲んでいる。

「いま最も稼ぐファイター」4階級制覇アルバレス

新型コロナウィルスの感染拡大の影響でボクシングのイベントも中止や延期が相次いでおり、しばらくは選手もファンも我慢を強いられることになる。そこで、この機会に世界のトップボクサーたちを改めて紹介しておきたい。まずは、「いま最も稼ぐファイター」として知られる4階級制覇王者、サウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)をピックアップしてみよう。

アルバレスは1990年7月18日、メキシコのハリスコ州グアダラハラで生まれた。8人きょうだいの7男で、妹がひとりいる。兄弟7人は全員がプロボクサーになり、そのうち12歳上の兄リゴベルトはWBA世界スーパー・ウェルター級暫定王者になっている。ちなみにアルバレスの愛称でもある「カネロ」はシナモンのことで、髪の毛が赤いことからそう呼ばれているという。

兄たちに勧められて13歳でボクシングを始め、アマチュアで46戦44勝2敗(他説あり)の戦績を残し、15歳3カ月でプロデビューした。

順調に白星を重ね11年3月、20歳の若さでWBC世界スーパー・ウェルター級王座を獲得。WBA王者との統一戦でも勝利を収めるなど6度の防衛を果たしたが、23歳のときにフロイド・メイウェザー(米国)に判定負けを喫して王座を失った。これがキャリアで唯一の黒星だ(56戦53勝36KO1敗2分)。

その後、ミドル級で2度王座を獲得したあとスーパー・ミドル級も制覇し、これらの王座を持ったまま昨年11月にはライト・ヘビー級でも戴冠を果たした。1938年のヘンリー・アームストロング(米国)に次ぎ、史上ふたりめの「3階級の世界王座を同時保持したボクサー」になった。現在は異なる階級の王座を同時に保持することはルールで禁じられているのだが、この規定を曲げてまでも各団体はアルバレスを優遇している。なぜなら彼が“金の生る木”でもあるからだ。アルバレスは18年秋にDAZNと「5年間に11試合、3億6500万ドル(約400億円)」という超大型契約を交わしたほどで、ボクシング界を代表するスター選手なのだ。

もちろん実力も折り紙つきだ。高い攻撃能力を持つ一方、防御技術にも優れ、打たれ強いうえスタミナも旺盛。直近の9戦はすべて現役王者か元王者が相手で、対戦相手の質という点でも申し分ない。特に昨年11月には体格で大きく勝るライト・ヘビー級王者のセルゲイ・コバレフ(露)を痛烈な11回KOで下し、評価を大きく上げている。米国の老舗専門誌「リングマガジン」はバンタム級の井上尚弥(大橋)やライト級のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)らを抑えて、アルバレスを全階級を通じて最強を意味するパウンド・フォー・パウンドのNO・1に推している。

本来ならばアルバレスは5月2日にWBO世界スーパー・ミドル級王者のビリー・ジョー・サンダース(英国)と対戦するはずだったが、コロナ禍の影響で見送られた。9月12日には過去2戦1勝1分のIBF世界ミドル級王者、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との決着戦がプランに上がっているが、もちろん確定には至っていない。さらに12月にはWBA世界ミドル級王者の村田諒太(帝拳)との対戦も計画されているが、これも流動的といわざるを得ない状況だ。

すでに15年のプロキャリアを持つアルバレスは、この7月に30歳の誕生日を迎える。これからが円熟期といえそうだ。

コロナ禍KO後はヘビー級4強による最強決定戦だ

新型コロナウィルスの感染拡大の影響でボクシングも世界中のイベントが中止や延期に追い込まれているが、このたび6月20日に英国で予定されていた3団体統一世界ヘビー級タイトルマッチ、アンソニー・ジョシュア(30=英国)対クブラト・プーレフ(38=ブルガリア)も延期が決定した。本来ならば、5月から7月にかけてヘビー級トップ戦線は大きく動くはずだったが、それも夏以降にスライドすることになった。

ジョシュア対プーレフは6万人以上の収容能力を持つロンドンのトッテナム・ホットスパー・スタジアムで行われる予定だった。昨年12月にWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を取り戻したジョシュアの初防衛戦として挙行されるはずだったが、試合まで2カ月半前に日程変更が決まったことになる。もともと両者はジョシュアの第1次政権時代の2017年10月に戦う予定だったが、プーレフが肩を痛めたため試合2週間前に辞退した経緯がある。前回とは異なる理由だが、38歳のプーレフにとっては時間が惜しいはずだ。

ヘビー級では、5月2日に英国のマンチェスターで行われるはずだったWBC暫定王者ディリアン・ホワイト(31=ジャマイカ/英国)対元WBA王者アレクサンデル・ポベトキン(40=露)のタイトルマッチが7月4日に延期されることが発表されたばかりだった。 

さらに5月23日にロンドンで予定されていたWBA3位、WBC2位、IBF3位、WBO1位のオレクサンデル・ウシク(33=ウクライナ)対WBA9位、WBC12位、IBF9位、WBO9位のディレック・チゾラ(36=ジンバブエ/英国)の12回戦も延期が発表されていた。

これだけではない。正式発表こそなかったものの7月18日に米国で計画されていたWBC王者タイソン・フューリー(31=英国)対前WBC王者デオンテイ・ワイルダー(34=米国)の3度目の対決も早々と秋に延びることが主催者から明かされている。

現在、ヘビー級は「4強」-ワイルダーを倒して戦闘に躍り出た超大型のフューリー(31戦30勝21KO1分)、ビジネス面の軸になる正統派のジョシュア(24戦23勝21KO1敗)、米国の威信を背負っている爆発的な強打者のワイルダー(44戦42勝41KO1敗1分)、そしてサウスポーの技巧派で元クルーザー級4団体統一王者のウシク(17戦全勝13KO)-による熾烈な頂上争いが繰り広げられている。

実際の対決は少し先に延びることになったが、いまはファンが個々に仮想対決で最強を占うことで我慢するしかなさそうだ。そして、コロナ禍をKOしたあとは「4強」による最強決定戦を実現させてほしいものだ。

アルバレス対ゴロフキン第3戦の行方 村田が最注目

新型コロナウイルス禍が衰えをみせないため、ボクシングも3月と4月の試合が世界中で中止や延期となった。5月に予定されている試合も予断を許さない状況だが、一方で鎮静化を見据えてビジネス交渉が進められているケースもある。そのひとつとして、世界的なスター選手として知られるサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)対ゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)の第3戦が挙げられる。状況が好転することを前提に9月12日に対戦するプランが具体化しているのだ。

両者は17年9月、WBAスーパー、WBC、IBF王者だったゴロフキンの19度目の防衛戦で拳を交え、三者三様の12回引き分けに終わった。その後、ゴロフキンはIBF王座を剥奪されたが、WBAスーパー王座とWBC王座をかけて18年9月にアルバレスと再戦。今度も接戦になったが、微妙な判定でアルバレスが勝利を収めた。その後、雪辱を狙うゴロフキン陣営が3度目の対決を求めたが、「もう決着はついた」とアルバレス側が応じていなかった。

こうしたなかアルバレスは18年秋にDAZNと「5年間に11試合、計3億6500万ドル(約400億円)」の高額契約を結び、3試合をこなしてきた。現在、アルバレスはミドル級のWBAスーパー王座とWBCフランチャイズ(特権)王座、さらにスーパー・ミドル級のWBA王座を保持している。これを追うようにゴロフキンも昨春にDAZNと契約。こちらは「3年間に6試合、1億ドル(約110億円)」と伝えられる。IBF王座を獲得した昨秋の試合を含め2戦を消化している。

1年半ほど対戦を拒んできたアルバレスが、ここにきてゴロフキンとの第3戦に色よい返事をしたのは、ライバルに顕著な衰えが見られるためと推測される。ゴロフキンは直近の試合では判定で勝ちはしたもののボディーブローを浴びて後退するなど弱点を暴露。リング上で対峙するだけで相手を圧倒してきたオーラは完全に失せていた。4月8日に38歳の誕生日を迎えることもあり、峠を過ぎて久しいという見方が多い。通算戦績は42戦40勝(35KO)1敗1分けだが、17年以降の6戦に限っては4勝(2KO)1敗1分けと勝率もKO率も落ちている。

これに対し7月に30歳になるアルバレスはゴロフキンと引き分けたあとは再戦の勝利を含め4連勝(2KO)中で、昨年11月にはWBOライト・ヘビー級王者のセルゲイ・コバレフ(36=露)を豪快11回KOで屠るなど絶好調だ。通算戦績は56戦53勝(35KO)1敗2分け。ちなみに初戦、再戦ともオッズはイーブンに近かったが、第3戦は2対1で大きくアルバレス有利に傾いている。

両雄の決着戦を期待する関係者やファンは多いが、越えるべきハードルもある。最たるものが新型コロナウイルスの問題であることはいうまでもないだろう。早期の鎮静化を願うばかりだ。加えて、アルバレスは5月2日に予定されながら延期したWBOスーパー・ミドル級王者ビリー・ジョー・サンダース(30=英国)との統一戦をどうするかという問題を抱えている。ゴロフキンにもIBF最上位のカミル・シェルメタ(30=ポーランド)戦が課されている。これらの試合を先送りする交渉が順調に進んだ先にアルバレス対ゴロフキン第3戦があるといえる。

もうひとつ大事なことを加えるならば、この試合の行方はWBA王者の村田諒太(34=帝拳)の近未来にも関係してくるという点だ。村田はアルバレスとの対戦を熱望しており、一時は5月実現の方向で交渉が進んでいたが、12月に延びたと伝えられる。アルバレス対ゴロフキン第3戦が計画どおり9月12日に行われるのか、どちらが勝つのか-もしかしたら両者の決着戦を最も注目しているのは村田かもしれない。

メイウェザー氏を悼む 甥フロイド5階級制覇支える

1980年代にスーパー・フェザー級とスーパー・ライト級の2階級を制覇した元世界王者、ロジャー・メイウェザー氏(米国)が3月17日、糖尿病からの合併症のため亡くなった。58歳だった。引退後にトレーナーに転身したメイウェザー氏は、甥でもあるフロイド・メイウェザー(米国)の5階級制覇を手助けするなど指導者としても実績を残した。

米国ミシガン州グランドラピッズ出身のメイウェザー氏は9歳上の兄フロイド・シニア、4歳下の弟ジェフとともに3兄弟ボクサーとして知られるが、世界王者になったのはメイウェザー氏だけだった。

アマチュアを経て81年に20歳でプロデビュー。83年1月には、来日経験もある技巧派のサムエル・セラノ(プエルトリコ)に8回TKO勝ちを収めてWBA世界スーパー・フェザー級王座を獲得した。初陣からわずか1年半後、15戦目のことだった。3度目の防衛戦で王座を失ったのを含め3年間に5敗するなど一時は限界をみせたかと思われたが、2階級上のスーパー・ライト級に転向して息を吹き返した。87年11月、浜田剛史(帝拳)と1勝1敗のWBC王者、レネ・アルレドンド(メキシコ)に6回TKO勝ちを収めて2階級制覇を達成。この王座は1年半の間に4度の防衛を果たした。

171センチの身長に対しリーチが187センチと長いメイウェザー氏は、中長距離から繰り出す多彩な左で相手を戸惑わせ、そこに右ストレートを打ち込むスタイルを確立。その切り札と獰猛な戦いぶりから「ブラックマンバ(毒蛇)」の異名があった。無冠になってからも戦い続け、99年に引退するまで12度の世界戦(8勝6KO4敗)を含め72戦59勝(35KO)13敗の戦績を残した。強打の半面、打たれもろい欠点があり、それがスター選手への壁になったともいえる。

引退後、メイウェザー氏は兄の子、フロイド・メイウェザー・ジュニアのトレーナーを務め、甥の5階級制覇をサポートした。特に兄とジュニアが仲たがいした時期には先輩王者として、また叔父としてスーパースターを支えた。

トレーナーとしては2000年から13年ごろまで活動したが、50歳を迎えたころから体調を崩したため一線を退いた。以後は健康の問題から表舞台に戻ることはなく、近年は闘病生活が続いていたという。

恩人を失った甥のメイウェザーは「叔父はリングの内外において私の人生で最も重要な人物のひとりだった。彼はボクサーとしてもトレーナーとしても偉大な人だった」と早過ぎる死を悼んだ。

アゴに爆弾を抱えながらも果敢に攻める、スリリングで躍動感のあるボクシングが懐かしい。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。