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au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

ゴロフキンがDAZNと契約 アルバレス戦に現実味

世界ミドル級王座を約8年間に20度防衛した実績を持つゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)が、このほど動画配信サービスのDAZN(ダゾーン)と「3年間に6試合」という契約を交わした。これにより過去1敗1分の宿敵、現WBAスーパー王座とWBC王座に君臨するサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)との第3戦が早ければ9月にも実現しそうな気配になってきた。

現在の主要4団体のミドル級王者は、WBAスーパー:アルバレス(54戦51勝35KO1敗2分)、WBA:ロブ・ブラント(28=米 26戦25勝17KO1敗)、WBC:アルバレス、WBC暫定:ジャモール・チャーロ(28=米 28戦全勝21KO)、IBF:ダニエル・ジェイコブス(32=米 37戦35勝29KO2敗)、WBO:デメトリアス・アンドレイド(31=米 27戦全勝17KO)となっている。アルバレスは3階級制覇を果たしたメキシコのヒーローで、ブラントは村田諒太(33=帝拳)から王座を奪った技巧派として知られる。チャーロは爆発的な強打を持つパンチャーで、ジェイコブスは骨肉腫を克服した「ミラクルマン(奇跡の男)」として米国東海岸で人気がある。アンドレイドは2階級制覇を成し遂げている長身の技巧派だ。

いずれ劣らぬ実力者だけに彼らが順を追って直接対決-というのが理想だが、そこはスポーツ・ビジネスの世界、なかなかうまくいかないのが現実だ。最も大きな壁が彼らと放送メディアとの関係である。上記5王者のうちアルバレス、ジェイコブス、アンドレイドの3人はDAZN、ブラントは米国のESPN、チャーロはフォックス系のPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)と契約を交わしており、それが大きな障壁となっているのだ。

こうしたなか昨年でボクシング中継を打ち切った米国HBOテレビと契約を交わしていたゴロフキンが、どこと組むのかが注目されていた。そして、このほどDAZNと契約したというわけだ。正式な金額は発表されていないが、6月に計画される初戦で1000万ドル(約11億1000万円)が最低保証され、アルバレスとの第3戦が実現すれば3000万ドル(約33億3000万円)以上の報酬を約束する内容だと伝えられる。ちなみにアルバレスは5カ月前、DAZNと「5年間に11試合、総額3億6500万ドル(約400億円)」という巨額の契約を交わしている。

ゴロフキンがESPNでもPBCでもなくDAZNを選んだのは、アルバレスとの決着戦を熱望しているからといわれ、すでに両者の第3戦は具体的な動きを見せ始めているようだ。気の早いメディアは9月14日という日程もあげて煽っている。

ただし、その前にアルバレスは5月4日にIBF王者のジェイコブスと統一戦を行うことになっており、これを無傷でクリアしなければならない。ゴロフキンも6月8日か15日に計画される試合で圧勝することがノルマとなる。対戦候補にはWBA2位で19戦全勝(4KO)のカミル・ツェメルタ(29=ポーランド)の名前が挙がっている。

仮にジェイコブスがアルバレスに勝つようなことがあれば、そのときはジェイコブスがゴロフキン戦に大きく前進するはずだ。ゴロフキンとジェイコブスは17年3月に対戦し、ダウンを奪ったゴロフキンが小差の判定で勝利を収めており、こちらも因縁の再戦となる。

アルバレス対ゴロフキンの第3戦は早期実現するのか、それとも5月、6月に波瀾が起こるのか。ブラント、チャーロ、アンドレイドがどう動くのか、そして再起を宣言している村田は? 今後のミドル級トップ戦線の行方に注目したい。

技のガルシアか強打のスペンスか 注目の全勝対決

24戦全勝(21KO)のIBF世界ウエルター級王者、エロール・スペンス(29=米)と、4階級制覇を成し遂げている39戦全勝(30KO)のWBC世界ライト級王者、マイキー・ガルシア(31=米)が16日(日本時間17日)、米国テキサス州アーリントンで拳を交える。

本来、両者は2階級異なるためベスト体重が約5キロ違うが、ガルシアがウェートを上げて5階級制覇に挑むことになる。体格で大きく勝るスペンスが圧倒的に有利とみられているが、ガルシアは「私の方が優れたボクサーであることを証明する」と自信満々だ。

フェザー級(約57・1キロ以下)、スーパーフェザー級(約58・9キロ以下)、ライト級(約61・2キロ以下)、スーパーライト級(約63・5キロ以下)で世界王座を獲得してきたガルシアだが、身長は168センチ、リーチは173センチと決して大柄というわけではない。身長174センチ、リーチ179センチの現WBO世界スーパーフェザー級王者、伊藤雅雪(28=伴流)よりも体は小さいことになる。それでも4階級で世界制覇を成し遂げることができたのは、卓抜したスキルと強打、勝負勘を備えているからだ。左ジャブで相手を煽りながら自分の間合いとタイミングを計り、ここというところで切り札の右ストレートを打ち抜く。返しの左フックも強い。

オルランド・サリド(メキシコ)、ファン・マヌエル・ロペス(プエルトリコ)、ローマン・マルチネス(プエルトリコ)という2階級制覇王者3人に勝っているほか、4階級制覇の実績を持つエイドリアン・ブローナー(米)にも完勝。また、それまで全勝だったデヤン・ズラティカニン(モンテネグロ)、セルゲイ・リピネッツ(カザフスタン/露)、ロバート・イースター(米)らを世界戦で下している。実績面も申し分ないといえる。階級の壁を越えたボクサーの強さ指数ともいうべき「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」では、米国の老舗専門誌「リング誌」で井上尚弥(大橋=WBA世界バンタム級王者)のひとつ下、7位にランクされている。

そんなガルシアだが、今回は厳しい予想のなかでリングに上がることになる。迎え撃つスペンスは12年ロンドンオリンピック(五輪)に出場した経歴を持つ実力者で、プロ転向後の歩みも順調だ。現在持っているIBF世界ウエルター級王座は17年5月に英国で手に入れたもので、これまで2度の防衛を果たしている。それら3度の世界戦を含め目下11連続KOと飛ぶ鳥を落とす勢いだ。「リング誌」のPFPではガルシアの三つ下、10位にランクされている。

スペンスは身長177センチ、リーチ183センチのサウスポーで、とにかくパンチが強い。村田諒太(帝拳)からWBA世界ミドル級王座を奪ったロブ・ブラント(米)は、無冠時代にスペンスとスパーリングしたことがあるが、「2階級上のミドル級選手よりもパワーがある」と話しているほどだ。スペンスは「多くの人は体格のことを言うが、そうではなく技術でも上回っていることを試合で示す。ガルシアのことを侮ってはいないが、もしも彼が打ち合いに来るならば勝負は早いだろう」と事実上のKO宣言をしている。

4対1のオッズが示すように、体格に加えパワーで勝るスペンスに大きなアドバンテージがあることは間違いない。挑戦者がスペンスの圧力に抗いきれずに序盤から戸惑いをみせるようなら、勝負は4回を待たずに決する可能性もある。ガルシアが番狂わせを起こすには、前半を互角で乗り切り、スペンスの焦りを誘ったうえで右ストレートのカウンターを数多く決めることが条件といえそうだ。

“スコーピオン”ペドロサ死去 フェザー級最多防衛

7年以上の在位中に連続19度の防衛を記録した元WBA世界フェザー級王者、エウセビオ・ペドロサ(パナマ)が3月1日、膵臓ガンのためパナマ市内の自宅で亡くなった。63歳の誕生日を翌日に控えての逝去だった。ペドロサは17歳でプロデビューし、1992年に引退するまで49戦したが、この間、日本でも2度の防衛戦を行っている。

パナマ市で貧しい家庭に生まれたペドロサはアマチュアで86戦(80勝6敗)を経験したあと、73年12月に17歳でプロの世界に飛び込んだ。2年4カ月後、20歳のときにバンタム級で初の世界挑戦を試みたが、このときは23戦全KO勝ちのアルフォンソ・サモラ(メキシコ)の強打に捕まり2回KO負けを喫した。再起戦でもKO負けを喫したが、それを機にフェザー級に転向。78年にはセシリオ・ラストラ(スペイン)を破って22歳1カ月の若さでWBA世界フェザー級王座についた。

その後は、173センチの長身を生かした左ジャブや右ストレート、中近距離で繰り出すアッパーなど多彩なパンチ、必要に応じて距離をとりながら戦う戦術、そしてスキルに長けたボクシングで7年以上の長期政権を築いた。一発で仕留める強打者ではなかったが、「スコーピオン(サソリ)」の異名があるように相手をコントロールしながら徐々にダメージを与えていくボクシングを得意としていた。

3度目の防衛戦では来日してロイヤル小林(国際)の挑戦を13回終了TKOで撃退。1年後にはV7戦で再来日し、スパイダー根本(草加有沢)に大差の15回判定勝ちを収めている。

日本での2勝を含む連続19度の防衛はフェザー級では史上最多で、全階級合わせても史上8位タイ記録である。特筆すべきは、そのうち13度が自国パナマ以外での試合だという点だ。プエルトリコ、アメリカ、韓国、ベネズエラ、イタリア、パプアニューギニアなど声がかかればどこでも戦う逞しさがあった。また、19度の防衛のうち、小林を含めたのべ6人が元あるいはのちの世界王者であることも加えておく必要があるだろう。ちなみにペドロサと世界戦で2度にわたって拳を交えたライバルのロッキー・ロックリッジ(米)も、今年2月7日に60歳で亡くなっている。

ペドロサは、同じ時代に中量級で活躍したロベルト・デュラン(パナマ)やアレクシス・アルゲリョ(ニカラグア)、ウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ)らと比べると、スター性や華やかさという点では見劣りしたが、テクニックや実績では十分に伍するものがあった。

85年6月、バリー・マクギガン(アイルランド)の挑戦を受けるために英国ロンドンのリングに上がったが、7回にダウンを喫するなど持ち味を発揮できずに大差の15回判定負け。7年2カ月の政権に終止符を打った。翌年、いったん引退したあと5年後の91年に戦線復帰したが、4戦目に黒星を喫して正式に引退した。足かけ20年のプロ生活で残した戦績は49戦41勝(25KO)6敗1分1無効試合。99年には米国ニューヨーク州カナストータの「名誉の国際ボクシング殿堂(IBHOF)」入りを果たしている。

井上尚弥に70秒KO負けのパヤノが戦線復帰、再び世界王者目指す

昨年10月7日、井上尚弥(25=大橋)の持つWBA世界バンタム級王座に挑んで70秒KO負けを喫したファン・カルロス・パヤノ(34=ドミニカ共和国)が戦線復帰することになった。再起戦は3月9日(日本時間10日)、米国カリフォルニア州カーソンでセットされている。相手はスーパーフライ級でWBA14位、WBC34位にランクされるダミエン・バスケス(21=米)。アマチュア時代に2度のオリンピック(五輪)出場、プロ転向後も世界王座を獲得するなど輝かしい実績を残しているパヤノは再び脚光を浴びることができるのか。

井上対パヤノは、階級最強を決めるトーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の初戦として横浜で行われた。戦前の予想は井上が圧倒的に有利ではあったものの、経験値の高いサウスポーのパヤノが王者を苦しめるのではないかという見方もあった。しかし、試合では井上が狙い澄ました右ストレートを一閃。これをアゴに浴びたパヤノは射抜かれたように後方に弾かれ、辛うじて上半身を持ち上げたあと体を反転させた状態で10カウントを聞かされた。試合開始から70秒での決着だった。これは日本人選手の世界戦勝利としては史上最短記録でもある。また、この試合は米国の老舗専門誌「リング・マガジン」の年間最高KO賞にも選ばれた。敗れたパヤノは「油断したということはない。あのパンチは見えなかった」と肩を落とし、一方の主役として記録と記憶に名を残すことになってしまった。

このパヤノ、井上には完敗したものの長いこと世界のトップ戦線に名を連ねてきた実力者であることに変わりはない。アマチュア時代には04年アテネ大会、08年北京大会と2度の五輪出場を果たしており、プロに転向後の14年9月にはアンセルモ・モレノ(パナマ)のV13を阻止してWBA世界バンタム級王座を獲得するなど申し分ない実績を残しているのだ。井上に敗れたあとも世界挑戦圏内に留まり、現在はバンタム級でWBA11位、WBC8位にランクされている。戦績は22戦20勝(9KO)2敗。パヤノは「井上戦のあとは十分な休養をとった。今回の試合は再び世界王者になるための第一歩」と話している。

そんなパヤノの再起戦の相手に選ばれたバスケスは、スーパーバンタム級で3度の戴冠を果たした元世界王者、イスラエル・バスケスの20歳下の弟としても知られる。16歳の誕生日を迎えた3カ月後の13年8月、メキシコのカンクンで行われた三浦隆司(帝拳)対セルヒオ・トンプソン(メキシコ)のWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチの前座でプロデビューし、5年半で14戦全勝(7KO)をマークしているサウスポーのホープだ。井上との試合で意図せざるかたちで知名度を上げたパヤノを破れば一気に将来の展望が開けるだけに、陣営は勝負に出たものと思われる。

ベテランが意地をみせてトップ戦線に踏みとどまるのか、それとも勢いのある21歳のホープが元王者を踏み台にするのか。気になる試合だ。

多士済々 五輪が生んだヘビー級の次世代スター

現在、ヘビー級は3団体統一王者のアンソニー・ジョシュア(29=英)、WBC王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)、さらに昨年12月にワイルダーと引き分けた元3団体統一王者のタイソン・フューリー(30=英)が「3強」といわれている。今年か来年には最終的な頂上決戦が行われるだろうと期待を集めているところだ。こうしたなか次世代のスター候補も徐々に頭角を現してきている。今回はそんななかから4選手を紹介しよう。

この半世紀ほど、オリンピック(五輪)はのちのプロのスター登竜門的な意味も持つようになった。現にジョシュアは12年ロンドン大会の金メダリスト、ワイルダーは08年北京大会の銅メダリストである。そういった流れからすると、16年リオデジャネイロ五輪スーパーヘビー級金のトニー・ヨカ(26=仏)を近未来の王者候補として真っ先に挙げなければなるまい。身長201センチ、体重約108キロのヨカは17年6月にプロデビューし、1年で5連勝(4KO)を収めた。まだ世界的な強豪との対戦はないが、WBCでは12位にランクされている。ただ、ドーピング違反のためフランスのコミッションから1年の出場停止処分を受けており、現在は活動を自粛している状態だ。復帰戦が6月か7月に計画されている。

アマチュア時代からヨカのライバルだったのがジョー・ジョイス(33=英)だ。15年の欧州選手権ではヨカに勝ったジョイスだが、その年の世界選手権で敗れたあと16年リオデジャネイロ五輪決勝では惜敗した。身長198センチ、体重117キロの巨体から打ち下ろすワンツーを主武器に、プロでは7連続KO勝ちを記録している。英連邦王座やWBAコンチネンタル王座を獲得しており、WBAで5位にランクされている。23日には前WBC王者のバーメイン・スティバーン(40=ハイチ/米)との試合に臨む。これをクリアするようだと注目度がさらに上がりそうだ。

WBC28位に名を連ねるダニエル・ドゥボア(21=英)は素質の塊のような選手だ。身長196センチ、体重108キロの鋼のような肉体から基本に忠実なワンツーを繰り出す強打者で、プロで9連勝(8KO)をマークしている。3月8日には世界挑戦経験者との試合が組まれており、徐々に対戦相手の質が上がってきた。このまま伸びれば2~3年後には世界戦の舞台に上がっていても不思議ではない逸材だ。

16年リオデジャネイロ五輪ベスト8のエファ・アジャバ(24=ナイジェリア)も順調に成長している。17年7月にプロ転向してからの戦績は8戦全勝(7KO)。KOを逃したのは、相手が開始ゴングと同時に戦いを放棄、リング下りた試合だけだ。ちなみに、この試合は相手の失格=反則負けとなり、ボクシング史上最短決着(1回1秒)として記録されている。アジャバは身長196センチ、リーチ224センチ、体重107キロと恵まれた体格の持ち主で、その筋肉質の体から放つ右ストレートでKOの山を築いている。3月9日には元世界ランカーとのテストマッチが組まれている。

トニー・ヨカ、ジョー・ジョイス、ダニエル・ドゥボア、そしてエファ・アジャバ-

彼らが世界ヘビー級トップの座に君臨する日は近い?

村田破ったブラントが初防衛濃厚、どうなるミドル級トップ戦線

昨年10月、村田諒太(33=帝拳)を大差の12回判定で破ってWBA世界ミドル級王者になったロブ・ブラント(28=米)の初防衛戦が15日(日本時間16日)、同級8位のカーサン・バイサングロフ(21=露)を相手に米国ミネソタ州ヒンクリーで行われる。バイサングロフは17戦全勝(7KO)のホープだが、村田に勝って自信を増しているブラントの防衛が濃厚とみられる。

ブラントは村田戦では9対2のオッズで不利とみられていたが、試合では巧みな位置どりと手数でポイントをかき集めた。パンチの多くは軽打だったが、放った総数は1262発、ヒット数は356発だった。ミドル級の世界戦では12回まで戦った場合、600発前後が平均といわれるなか、いかにブラントが多くのパンチを繰り出したのかが分かるデータといえる。敗れた村田も774発を打ち、そのうち180発を当てたが及ばなかった。

村田戦後、新王者のブラント(25戦24勝16KO1敗)には、12年ロンドン・オリンピック(五輪)決勝で村田に惜敗したエスキーバ・ファルカン(29=ブラジル)との初防衛戦プランが浮上したが、これは見送りとなった。ブラントの地元での試合をファルカンが嫌ったためとも伝えられる。

代わりに挑戦することになったのがバイサングロフだ。このロシア出身の21歳は185センチの長身で、ガードを比較的高く上げた構えから左ジャブを突き、右フックや左ボディブローに繋げる攻撃パターンを持っている。機をみて左構えにスイッチすることもある。

ただ、41パーセントのKO率が示すようにパワーには欠ける。12対1というオッズが出ているように、ブラントが手数とテクニックで試合を支配したすえ中盤から終盤でストップする可能性が高そうだ。

試合以上に注目したいのは、ブラントとミドル級トップ戦線の今後である。現在、ミドル級ではWBAレギュラー王者(ブラント)の上にスーパー王座が設けられており、そこにサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)が君臨している。WBCには正王者アルバレスと暫定王者ジャモール・チャーロ(28=米)がおり、IBFではダニエル・ジェイコブス(32=米)、WBOではデメトリアス・アンドレイド(30=米)がそれぞれ王座に君臨している。このうちアルバレスとジェイコブスは5月に統一戦を行うことが決まっている。その勝者がアンドレイドとの4団体統一戦に向かうというプランがある。この3人はDAZNと試合放映の契約を交わしているため、マッチメークの面で壁が少ないのだ。

アルバレスと2度にわたって大接戦を演じた元3団体統一王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)も返り咲きを狙っている。そのゴロフキンにはDAZNがアンドレイド戦とアルバレスとの第3戦で合計約50億円という条件で契約を持ちかけており、その行方が注目されている。

一方、WBC暫定王者のチャーロと契約しているPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンシップ)もゴロフキンに条件提示をして接近していると伝えられる。また、村田とファルカンを擁するトップランク社&ESPNチームは、村田戦後にブラントと契約を交わして王座の一角を占めている。

ゴロフキンの例が示すように米国ではボクシングを放送する前出3グループがトップ選手の囲い込みに躍起になっており、契約下の選手同士でカードを組んでいく傾向が顕著になっている。したがって、たとえば「アルバレス対チャーロ」は、よほどのウルトラCがない限り実現は難しいのが現実だ。

リング外が巴戦の様相になっている現在、ブラントの今後の対戦候補は自ずと絞られてくる。したがって、再起戦で勝利を収めることが大前提になるが、村田が王座奪回を狙ってブラントと再び拳を交える可能性は決して低くはないのだ。そういった意味でも、まずは15日(日本時間16日)に行われるブラント対バイサングロフに要注目といえる。

世界へ“追試”の岡田、復活期す岩佐に重要な一戦

2月10日(日本時間11日)と16日(日本時間17日)、日本のトップ選手が米国カリフォルニア州で相次いで“準世界戦”のリングに上がる。まず10日、主要4団体すべてで10位内にランクされるスーパー・ライト級の岡田博喜(29=角海老宝石)がフレズノで元WBO世界ライト級王者のレイムンド・ベルトラン(37=メキシコ)と対戦。16日には前IBF世界スーパー・バンタム級王者の岩佐亮佑(29=セレス)がロサンゼルスで同級5位のセサール・フアレス(27=メキシコ)と拳を交える。岡田と岩佐にとって、勝てば近い将来に世界戦が具体化する重要な一戦だ。

日本スーパー・ライト級王座を6度防衛後、WBOアジアパシフィック王座も獲得した実績を持つ岡田は昨年、米国の大手プロモーター、トップランク社と契約。9月には標的とするWBC世界同級タイトル戦の前座に出場してアルゼンチンの選手に10回判定勝ち、戦績を19戦全勝(13KO)に伸ばした。しかし、最終回にはダウンを喫するなど不本意な内容だった。そのため即世界挑戦とはいかず、今回のベルトラン戦がセットされた経緯がある。岡田にとっては“追試”の意味がある試合だが、極めてリスクの高いカードといえる。

ベルトランは20年のプロキャリアで45戦35勝(21KO)8敗1分1無効試合の戦績を残しているベテラン強打者で、かつて6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(40=比:現WBA世界ウェルター級王者)のスパーリング・パートナーを務めていたこともある猛者だ。昨年8月に世界王座を失ったあと引退宣言をしたが翻意。岡田を倒せば2階級制覇の展望が開けるだけに、こちらも高いモチベーションを抱いているものと思われる。

17対2でベルトラン有利というオッズが出ているが、体格で勝る岡田が得意の左ジャブを突いて攻めれば勝機は広がりそうだ。

岩佐対フアレスはIBF世界スーパー・バンタム級挑戦者決定戦として行われる。昨年8月、TJドヘニー(32=アイルランド/豪)に12回判定負けで王座を失った岩佐にとっては、返り咲きのために通過しなければならない関門といえる。相手のフアレスは過去に2度の世界挑戦を経験している攻撃型の選手で、IBF5位のほかWBA3位、WBC12位、WBO7位と主要4団体すべてで挑戦圏内にいる実力者だ。

再起戦でもあるサウスポーの岩佐は、スピードとテクニックを駆使してフアレスの接近を阻みたいところだ。そのうえでチャンスには一気に攻めてジャッジと観客にアピールしたい。岡田同様、岩佐にとって楽な展開は予想しにくいカードだが、ドヘニーとの再戦に繋げるためにも奮起を期待したい。戦績は岩佐が28戦25勝(16KO)3敗、フアレスが29戦23勝(17KO)6敗。

佳境に入る“ウェルター級ウォーズ”最強は誰だ

147ポンド(約66.6キロ)を体重リミットとするウェルター級が年初から賑やかだ。すでに1月にWBAレギュラー王者のマニー・パッキャオ(40=比)とWBAスーパー王者のキース・サーマン(30=米)が防衛に成功しており、遠からず団体内の統一戦が期待される状況といえる。このあと3月、4月にも他団体王者たちの試合が組まれており、スター選手が集結している「ウェルター級ウォーズ」は佳境に入っていくことになる。

1月19日、6階級制覇の実績を持つパッキャオ(70戦61勝39KO7敗2分)は元4階級制覇王者のエイドリアン・ブローナー(29=米:39戦33勝24KO4敗1分1無効試合)を大差の12回判定で退け、昨年7月に獲得した王座の初防衛を果たした。パッキャオは昨年12月に40歳になったが、ブローナー戦では最後まで手数もスタミナも落ちず、まだまだトップで十分にやっていけることを証明した。

その1週間後の26日、WBAスーパー王者のサーマン(30戦29勝22KO1無効試合)はホセシト・ロペス(34=米:45戦36勝19KO8敗)に12回判定勝ちを収め、暫定王者時代からの防衛回数を8に伸ばした。17年3月以降、肘や拳の負傷で2年近くを休養に充てることになったサーマンだが、この試合でリングに戻ってきた。

このあと3月9日にはWBC王者のショーン・ポーター(31=米:32戦29勝17KO2敗1分)が、08年北京オリンピック銅メダリストのヨルデニス・ウガス(32=キューバ:26戦23勝11KO3敗)を迎え撃つ。攻撃型のポーター、技巧派のウガスという組み合わせだけに激しいペース争いが展開されそうだが、プロでの経験値と馬力で勝るポーターが9対2のオッズで有利とみられている。

その1週間後、3月16日にはエロール・スペンス(28=米:24戦全勝21KO)対マイキー・ガルシア(31=米:39戦全勝30KO)のIBFタイトルマッチが行われる。すでにスーパースターへの道を歩み始めている王者のスペンスと、勝てば5階級制覇となる正統派パンチャーのガルシア。4対1のオッズが出ているように体格とパワーで勝るサウスポーのスペンスが有利とみられているが、ガルシアの右ストレートが番狂わせを起こす可能性もある。

4月20日にはWBO王者のテレンス・クロフォード(31=米:34戦全勝25KO)が、元スーパー・ライト級王者のアミール・カーン(32=英:37戦33勝20KO4敗)の挑戦を受ける。左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターのクロフォードと、スピードと右ストレートの切れに定評のあるカーン。3階級制覇を成し遂げているクロフォード有利は不動だが、カーンの右ストレートには注意が必要だろう。オッズは6対1でクロフォード有利と出ている。

これだけのスター選手が集結しているだけに、ファンの注目は「ウェルター級で誰が最強なのか」という点に絞られている。各団体の思惑に加えマネージメントやプロモーターの問題もあり王座統一戦は容易ではないだろうが、選手と関係者はファンの要望に耳を傾け最大限の努力をするべきだろう。3月と4月の試合を楽しみに待つと同時に、5月以降にどんなカードが組まれていくのか、大いに期待したい。

井上岳志が絶対王者候補ムンギア挑戦「勝つイメージできている」

WBO世界スーパー・ウェルター級3位の井上岳志(29=ワールドスポーツ)が26日(日本時間27日)、米国テキサス州ヒューストンで同級王者のハイメ・ムンギア(22=メキシコ)に挑戦する。近い将来のスーパースター候補と目されているムンギアが相手だけに、井上にとって厳しい戦いが予想されている。しかし、井上は「超接近戦を仕掛けてタイトルを持ち帰る。勝つイメージはできている」と自信をみせている。

154ポンド(約69.8キロ)を体重上限とするスーパー・ウェルター級は世界的な選手層が厚いことで知られる。80年代以降、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、オスカー・デラ・ホーヤ、フロイド・メイウェザー(いずれも米国)、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)といった歴史に残るような名王者たちもベルトを保持していた階級だ。また、マニー・パッキャオ(40=フィリピン)が6階級目の王座獲得を果たしたクラスでもある。

現在、そんな階級でムンギアはWBO王座に君臨しているわけだが、この22歳は世界王者でありながら成長途上にあるとみられている。このまま伸びていけば2~3年後には手のつけられない絶対王者になる可能性があると期待されているのだ。

ムンギアは11歳でボクシングを始め、アマチュアで120戦111勝9敗を記録。13年7月に16歳でプロデビュー後は5年半に31戦して全勝(26KO)をマークしている。約84パーセントのKO率が示すとおりの強打者で、183センチの長身から繰り出す右ストレートに加え左フックの上下打ちなど攻撃は多彩だ。昨年5月の戴冠試合では4回TKO勝ちを収めるまでに4度のダウンを奪い、元王者を相手にしての初防衛戦は判定勝ちに留まったが、6回にはダウンを奪っている。V2戦では3回TKO勝ちを収めている。右を顔面に決めて倒したあと左フックをボディにめり込ませてダウンを追加するという圧勝だった。

対する井上はアマチュアで55戦(39勝21KO16敗)したあと14年8月にプロに転向。日本王座、東洋太平洋王座とWBOアジアパシフィック王座を獲得した試合を含め、4年半で14戦13勝(7KO)1分の戦績を収めている。身長は174センチで、その体を低く構えて接近、ボディから顔面にパンチを打ち分けるスタイルを持つ。

井上は「ムンギアは体にバネがあってパンチは群を抜いて強い。中間距離の戦いでは相手の方が上なので、体をつけた超接近戦に持ち込みたい」と話す。ワールドスポーツジムの齊田竜也会長は「相手が左を打ってくるところに右を合わせる。そして接近戦でボディを攻めたい」と策の一端を明かす。陣営は「ヒット&ジョロウ蜘蛛作戦」と名付けた近距離での戦いに活路を見出すつもりだ。

16対1というオッズが出ているように、飛ぶ鳥を落とす勢いのムンギア有利は動かしがたいが、若い王者は攻防ともにまだ粗削りでもある。そこに井上が付け入るスキがありそうだ。

日本人ボクサーとしては昨年7月、伊藤雅雪(28=伴流)が37年ぶりに米国(フロリダ州キシミー)で世界王座(WBOスーパー・フェザー級)を獲得したが、1カ月後にはアリゾナ州グレンデールでWBOスーパー・バンタム級王座に挑んだ大竹秀典(37=金子)が1回TKO負け。10月には村田諒太(33=帝拳)がネバダ州ラスベガスでWBA世界ミドル級王座を失い、今年1月19日には高橋竜平(29=横浜光)がニューヨークでIBFスーパー・バンタム級王座に挑んで11回TKO負けと、日本勢は伊藤以降、米国のリングで結果を残せていない。井上はその流れをも止め、世界王座を持ち帰ることができるか。井上が勝てば日本では輪島功一(三迫)、工藤政志(熊谷)、三原正(三迫)、石田順裕(金沢)に次いで5人目のスーパー・ウェルター級世界王者となる。

40歳の鉄人か、問題を起こす男か 興味深い世界戦

6階級制覇の実績を持つスーパースター、WBA世界ウエルター級王者のマニー・パッキャオ(40=比)が19日(日本時間20日)、米国ネバダ州ラスベガスで元4階級制覇王者のエイドリアン・ブローナー(29=米)の挑戦を受ける。40歳になってもなお世界の頂点に君臨するサウスポーの鉄人が節目となるプロ70試合目を勝利で飾るのか、それとも「ザ・プロブレム(問題を起こす男)」と呼ばれるブローナーがパッキャオを混乱に陥れるのか。興味深いカードだ。

昨年12月17日、パッキャオは40歳の誕生日を迎えた。これによりパッキャオは19歳11カ月で初戴冠を果たしたのに始まり20代、30代、そして40代でも世界王座に君臨することになった。130年を超す近代ボクシングの歴史で初のことだ。誕生日に際しパッキャオは「アスリートとして、(フィリピンの)上院議員として、父親として成し遂げたいことはいっぱいある。人生は40歳から始まるんだ」と意欲的なコメントを残している。

今回の試合に向けパッキャオは1年前に訣別したフレディ・ローチ・トレーナーとのコンビを復活させた。階級とタイプの異なる相手とスパーリングを重ね、さらに自信を増したようだ。「40歳になったが気持ちと肉体は25歳のような感じ。でも若い時よりも経験から得た知恵が加わっている」と話している。

現王座を獲得した昨年7月の試合で14試合ぶりのKO勝ちを収めたこともあり、「久しぶりに倒してKOの感触を思い出した。今回も(KO勝ちを)狙って攻める」と珍しくKO宣言をしているほどだ。95年1月に16歳でプロデビューしてから24年、これが節目の70戦目となる(69戦60勝39KO7敗2分)。

一方のブローナーはアマチュアで319戦(300勝19敗)を経験後、08年5月にプロデビューした11年選手で、これまでにスーパーフェザー級、ライト級、スーパーライト級、ウエルター級の4階級で世界王座を獲得している。その実力と戦闘スタイルから一時は「フロイド・メイウェザー(米)の後継者」と期待されたが、直近の10戦は6勝(2KO)3敗1分と頭打ち状態になっている。リングの内外でトラブルが多いことでも知られ、世界戦では2度の体重オーバーを犯して王座を剥奪されている。私生活でもしばしば警察の厄介になっており、昨年12月にも短期間とはいえ身柄を拘束された。今回の試合に向けた調整を不安視する関係者もいるほどだ。戦績は38戦33勝(24KO)3敗1分1無効試合。

充実のパッキャオ、相変わらず問題の多いブローナー。こうした近況が反映されてかオッズは5対2で王者有利と出ている。サウスポーのパッキャオが鋭く踏み込んで左ストレートを直撃すれば、前戦に続く鮮やかなKO防衛も考えられる。その一方、柔軟な攻防スタイルを持つブローナーが的を絞らせずにベテラン王者を迷路に誘い込み、カウンターで王者を倒す可能性もある。序盤から目の離せない試合になりそうだ。

なお、前座ではラウシー・ウォーレン(31=米)対ノルディン・ウーバーリ(32=仏)のWBC世界バンタム級王座決定戦が組まれている。この試合の勝者は、昨年12月30日にひと足早く暫定王座を獲得している井上拓真(23=大橋)との団体内統一戦を行うことになる。五輪出場3度のウォーレン(19戦16勝4KO2敗1無効試合)、2度のウーバーリ(14戦全勝11KO)。このサウスポー対決にも要注目だ。

どうなる? 19年世界を狙う日本のホープたち

2018年の日本のボクシング界は、WBA世界バンタム級王者、井上尚弥(25=大橋)の衝撃の連続1ラウンドKO勝ちと弟・拓真(23=大橋)の戴冠、田中恒成(23=畑中)の3階級制覇、37年ぶりに米国で世界王座を獲得した伊藤雅雪(27=伴流)の活躍、さらに拳四朗(27=BMB)がV5を達成するなど華やかな話題が多かった。一方で村田諒太(32=帝拳)が世界ミドル級王座から陥落するという喜べないニュースもあった。

さて、7人の世界王者を擁してスタートした2019年の日本ボクシング界はどうなるのだろうか。現時点では無冠だが、今年、世界戦線に絡みそうな選手たちをピックアップしてみよう。

1月26日(日本時間27日)、先陣をきるかたちでWBOスーパーウエルター級3位の井上岳志(29=ワールドスポーツ)が米国テキサス州ヒューストンで同級王座に挑む。

王者のハイメ・ムンギア(22=メキシコ)は31戦全勝(26KO)の戦績を誇る強打者で、これが3度目の防衛戦となる。地域王座を獲得して上位に進出してきた井上も14戦13勝(7KO)1分と無敗だが、厳しい戦いになりそうだ。

IBFフライ級王座への優先的な挑戦権を持つ黒田雅之(32=川崎新田)は、同級王者のモルティ・ムザラネ(36=南ア)へのチャンレンジを狙う。交渉しだいでは夏までに挑戦が実現するかもしれない。

IBFスーパーフライ級1位の船井龍一(33=ワタナベ)も指名挑戦の機会を待っている。V6王者のジェルウィン・アンカハス(27=比)は米国でも評価と知名度を上げているサウスポー。この高い壁を破れるか。

12年ロンドンオリンピックバンタム級銅メダリストで、プロ転向後は8戦全KO勝ちを収めている長身サウスポーの清水聡(32=大橋)は、フェザー級で挑戦を狙う。スター選手が揃う階級だけに対戦交渉が難しそうだが、挑戦が実現すれば大きな話題になるはずだ。

スーパーライト級の岡田博喜(29=角海老宝石)は2月10日(日本時間11日)に米国カリフォルニア州フレズノで次戦が計画されている。相手は元WBOライト級王者のレイムンド・ベルトラン(37=メキシコ)が有力だが、これをクリアすれば大舞台が用意されるものと思われる。

このほかミニマム級の小浦翼(24=E&Jカシアス)、谷口将隆(24=ワタナベ)も遠からず挑戦の機会を得そうだ。さらにフライ級で17戦全勝(12KO)の戦績を残している中谷潤人(21=MT)、2度目の挑戦を狙うスーパーバンタム級の和氣慎吾(31=FLARE山上)も控えている。

村田をはじめ返り咲きを狙う元世界王者も多い。すでに3階級制覇を成し遂げているホルヘ・リナレス(33=帝拳)と八重樫東(35=大橋)、井岡一翔(29)は4階級制覇に照準を合わせている。田中恒成への挑戦を狙う田口良一(32=ワタナベ)、昨年9月に田中に王座を明け渡した木村翔(30=青木)も捲土重来を期している。

スーパーフェザー級の元王者、小国以載(30=角海老宝石)、岩佐亮佑(29=セレス)も王座奪回に意欲的だ。さらにミニマム級の福原辰弥(29=本田フィットネス)、フェザー級に転向した久保隼(28=真正)もいる。

計量で体重超過のためWBCフライ級王座を剥奪された比嘉大吾(23=白井・具志堅)、ドーピング検査で陽性反応を示したためIBFスーパーフェザー級の戴冠を取り消された尾川堅一(30=帝拳)も名誉回復と王座奪回に動き出す予定だ。

今年も国内外のボクシングに要注目だ。

19年はどんなドラマが…注目階級&期待のホープは

新年最初の今回は、2019年に実現が期待される海外のカードや注目のトップ選手、さらに躍進が見込まれるホープなどを挙げてみたい。

19年で注目すべき階級を三つ挙げるとすれば、最重量級のヘビー級、人気者サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)を軸にしたミドル級、そしてスター選手が揃ったウエルター級ということになる。ヘビー級はWBA、IBF、WBO3団体の統一王者、アンソニー・ジョシュア(29=英)とWBC王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)の頂上対決の実現が期待されている。他団体王者との統一戦を含めて6度の防衛を重ねている22戦全勝(21KO)のジョシュアと、41戦40勝(39KO)1分のV8王者ワイルダー。ジョシュアの次戦が4月13日に英国で行われる予定だが、現時点ではここに頂上決戦が組み込まれる可能性は低い。ワイルダーは昨年12月に元3団体王者のタイソン・フューリー(30=英)と引き分けており、その再戦が優先されそうだからだ。フューリーも28戦27勝(19KO)1分の無敗戦士で、2強に割って入るかたちとなっている。この1年で大きな動きが出そうだ。

ミドル級はアルバレスがトップを走っているが、前3団体王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)、WBC暫定王者のジャモール・チャーロ(28=米)、IBF王者のダニエル・ジェイコブス(31=米)、WBO王者のデメトリアス・アンドレイド(30=米)らがピッタリとついている。さらに村田諒太(32=帝拳)からWBA王座を奪ったロブ・ブラント(28=米)、捲土重来を期す村田を含め、トップ戦線の行方から目が離せない状況だ。

ウエルター級もおもしろい。実績では6階級制覇のWBA王者、マニー・パッキャオ(40=比)が飛び抜けているが、現時点の総合力ではWBO王者のテレンス・クロフォード(31=米)やIBF王者のエロール・スペンス(28=米)の方が高い評価を受けている。

ファイター型のWBC王者、ショーン・ポーター(31=米)、ケガからの復帰が決まったWBAスーパー王者のキース・サーマン(30=米)を加えた5人の王者たちの統一戦が実現するか要注目だ。

このほか、軽中量級の核となっているWBA、WBO世界ライト級王者、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)の快進撃がどこまで続くのか、さらに井上尚弥(25=大橋)が参戦している「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のバンタム級戦線にも注目したい。

また、スーパーウエルター級のハイメ・ムンギア(22=メキシコ)、スーパー・フェザー級のジャーボンタ・デービス(24=米)、スーパー・ライト級のホセ・ラミレス(26=米)、ライト・ヘビー級のドミトリー・ビボル(28=キルギス/露)、スーパー・ミドル級のカラム・スミス(28=英)といった比較的若くて無敗の世界王者たちの活躍も楽しみだ。

19年に戴冠が期待されるホープとしては、17戦全勝(14KO)のスーパー・フェザー級、ライアン・ガルシア(20=米)、14戦全勝(12KO)のスーパー・ライト級、ジョシュ・テイラー(27=英)らがいる。さらに16年リオデジャネイロ五輪出場組も成長してきており、世界のリングを賑やかなものにしてくれそうだ。

2019年のボクシング界には、どんなドラマが生まれるのだろうか。

今年の海外ボクシング界を「賞」形式で振り返る

今年も残すところ6日。世界戦は30日に東京で3試合、31日にマカオでも3試合が予定されている。6試合すべて日本人選手が出場する予定だ。一方、すでに欧米ではクリスマス前に注目ファイトは終了している。そこで恒例ともいえる「賞」の形式で今年の海外ボクシング界を振り返ってみよう。

2018年のボクシング界の特徴のひとつとして、中量級と重量級を中心に注目ファイトが数多く行われたことが挙げられる。7万8000人を集めたアンソニー・ジョシュア(29=英)対ジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド)のWBA(スーパー王座)、IBF、WBO世界ヘビー級王座統一戦(3月)、再戦となったゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)対サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)のWBA(スーパー王座)、WBC世界ミドル級タイトルマッチ(9月)などが代表格といえる。また、テレンス・クロフォード(31=米)、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)、前出のアルバレスの3階級制覇、マイキー・ガルシア(30=米)の4階級制覇も光る。

こうしたなか、個人的なMVPとしてはクルーザー級で4団体の王座を統一したオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)を挙げたい。このサウスポーの12年ロンドン五輪金メダリストはWBO王者として2018年を迎え、まず1月に賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の準決勝でWBC王者に12回判定勝ち。7月にはWBA王座とIBF王座を持つムラト・ガシエフ(25=露)にも12回判定勝ちを収めて優勝、同時に4本のベルト収集を成し遂げた。さらに11月、元王者のトニー・ベリュー(36=英)を8回TKOで退けている。3試合とも相手の地元に乗り込んで戦っており、世界王者の称号に相応しい活躍だった。16戦全勝(12KO)のウシクは2019年にはヘビー級進出を計画している。

殊勲賞は21歳でWBO世界スーパーウエルター級王者になったハイメ・ムンギア(22=メキシコ)だ。5月の戴冠試合、7月と9月の防衛戦を含め今年は5勝(4KO)している。来年1月26日(日本時間27日)には井上岳志(29=ワールドスポーツ)とのV3戦が決まっている。31戦全勝(26KO)のレコードをどこまで伸ばすが注目したい。

敢闘賞にはクロフォード、ガルシア、アルバレス、ジョシュア、WBC世界ヘビー級王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)、さらに39歳でWBA世界ウエルター級王座を獲得したマニー・パッキャオ(40=比)の6人を推したい。

技能賞はロマチェンコだ。5月にホルヘ・リナレス(33=帝拳)に10回TKO勝ちを収めてWBA世界ライト級王座を獲得して3階級制覇を成し遂げ、12月には同級WBO王者にも勝っている。

KO賞にはIBF世界ウエルター級王者のエロール・スペンス(28=米)を推したい。サウスポーのスペンスは自慢の強打で1月に元王者を7回終了時点でギブアップさせ、6月には最上位者を1回3分で仕留めている。

24戦全勝(21KO)のスペンスは来年3月、39戦全勝(30KO)のマイキー・ガルシアとのV3戦が決まっており、試合が近づけば大きな注目を集めることになりそうだ。

年間最高試合はワイルダー対ルイス・オルティス(39=キューバ)のWBC世界ヘビー級タイトルマッチ(3月)だ。10回TKOでワイルダーがV7を果たした試合だが、ヘビー級らしい迫力、二転三転した試合展開、衝撃の結末と、ボクシングの醍醐味が詰まった激闘だった。リナレス対ロマチェンコ、ゴロフキン対アルバレス、引き分けに終わったワイルダー対タイソン・フューリー(30=英)なども記憶に残る名勝負だった。

新鋭賞にはスーパーフェザー級のライアン・ガルシア(20=米)を選んだ。アマチュアで230戦215勝15敗の戦績を残したあと17歳でプロに転向したガルシアは、2年半で17戦全勝(14KO)をマーク。今年は北米王座を獲得するなど4勝(2KO)している。178センチの長身から繰り出す右ストレート、左フックに破壊力を秘めた強打者で、すでにWBA5位、WBC8位、WBO3位にランクされている。WBO王座を保持する伊藤雅雪(27=伴流)をはじめ王者たちを脅かす存在になっている。

こうした選手たちを軸に2019年も熱い戦いが繰り広げられそうだ。

無敗の双子世界王者チャーロ兄弟が7度目の“共演”

22日(日本時間23日)、米国ニューヨークでWBC世界ミドル級暫定王者のジャモール・チャーロ(28=米)と、双子の弟でWBC世界スーパーウエルター級王者のジャーメル・チャーロ(28=米)が揃って防衛戦に臨む。兄のジャモールは27戦全勝(21KO)、弟のジャーメルは31戦全勝(15KO)と、ふたりとも無敗をキープしている。弟がセミ、兄がメインで戦う予定だが、揃って王座を守ることができるか。

130年を超す近代ボクシングの歴史上、兄弟で世界王者になった例は過去に30以上あるが、双子の世界王者となるとカオサイ&カオコーのカオサイ兄弟(タイ)、チャナ&ソンクラームのポーパオイン兄弟(タイ)、ラウル&ラモンのガルシア兄弟(メキシコ)、そしてチャーロ兄弟の4組しかいない。そのなかで、このチャーロ兄弟は16年5月から17年2月にかけて「双子で同時期に同階級(スーパーウエルター級)で世界王座に君臨」という珍しい記録を打ち立てている。

米国テキサス州ヒューストン出身のチャーロ兄弟は、ふたりともアマチュアの経験があり、兄が71戦65勝6敗、弟が64戦56勝8敗の戦績を収めている。プロデビューは弟が07年12月で、兄は9カ月遅れで初陣に臨んだ。体格は兄ジャモールが身長183センチ/リーチ187センチなのに対し、弟ジャーメルは180センチ/185センチで、わずかに兄が大きい。

戦闘スタイルも異なる。78パーセントのKO率を誇る兄のジャモールがパンチの破壊力を売りにする強打者なのに対し、弟のジャーメルはスピードを生かした技巧派として知られる。それでも最近の5試合で4KOをマークしており、兄に似たパンチャー型に変貌しつつあるといえるかもしれない。

ふたりはこれまで同じイベントに6度出場しており、ともに6勝(3KO)という戦績を残している。16年5月21日にはセミに出場した弟がWBC世界スーパーウエルター級王座を獲得し、メインでは兄がIBF世界スーパーウエルター級王座を防衛して前出の記録をつくっている。

7度目の“共演”となる今回はコイントスによって出場順が決められ、兄がメインを務めることになった。WBA世界ミドル級暫定王者のジャモールはウィリー・モンロー(32=米)を迎え撃つはずだったが、相手のドーピング違反が発覚。そのため5日前になって、前座に出場予定だったマット・コロボフ(35=露/米)に相手が変更された。アマチュア時代に世界選手権連覇、08年北京五輪出場の実績を持つコロボフ(29戦28勝14KO1敗)を派手に倒すようだと、混戦のミドル級戦線でチャーロの存在感はさらに増すはずだ。

弟のジャーメルは、29戦27勝(21KO)2敗のトニー・ハリソン(28=米)を相手にV4戦に臨む。この難敵を下せばWBA、IBF王者のジャレット・ハード(28=米)との3団体王座統一戦が具体化しそうだ。そのためにもKOか大差判定での勝利がノルマといえる。

米国で開催される2018年最後の世界戦で、双子のチャーロ兄弟がどんな戦いをみせるのか注目したい。

3階級制覇か大番狂わせか NYのリングに熱視線

今年9月、39戦無敗だったWBA、WBC世界ミドル級王者のゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)を僅差判定で破って戴冠を果たしたサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)が15日(日本時間16日)、米国ニューヨークで1階級上のWBA世界スーパーミドル級王者、ロッキー・フィールディング(31=英国)に挑む。11年と16年にスーパーウエルター級王者になっているアルバレスにとっては3階級制覇を狙っての挑戦となる。大方の予想は「アルバレスのKO勝ち」だが、体格で大きく勝るフィールディングは「スーパーミドル級は私の階級だ」と強気だ。

アルバレスは身長173センチ、リーチ179センチで、72・5キロが体重リミットのミドル級でも小柄な部類に入る。その分、胸板は厚く耐久力もあるが、身長183センチ、リーチ184センチの前WBA王者、村田諒太(32=帝拳)らと比較しても体格面での不利は否めない。以前は70キロ弱のスーパーウエルター級が主戦場だったほどだ。それでも最近の3戦は74・3キロ、72・5キロ、72・3キロと72キロを超す体重で戦い、馴染んできた印象が強い。

こうしたなか9月にはゴロフキンに競り勝ち、ミドル級で2度目の戴冠を果たした。1年前の初戦ではゴロフキンの馬力に押され気味だったが、再戦では体力負けすることなく戦い抜き、自信を深めた様子だ。戴冠後、アルバレスはDAZN(ダゾーン)と「5年間に11試合、合計3億6500万ドル(約412億円)」という“驚額”の契約を結んだ。いま最も稼ぐプロボクサーといってもいいだろう。その初戦として今回のフィールディング戦が組まれたことになる。

今回の試合は、ゴロフキンにも勝ち戦績を53戦50勝(34KO)1敗2分に伸ばしたアルバレスが圧倒的有利とみられているが、これはフィールディングが世界王者でありながら知名度が低いためともいえる。身長185センチ、リーチ190センチと大柄なフィールディングは今年7月にドイツで戴冠を果たしたが、それまでは英国外で戦ったことがなかった。もちろん今回が初の米国のリングとなる。戦績は28戦27勝(15KO)1敗と高い勝率を誇るが、唯一の敗北が3度のダウンを喫して1回TKO負けで、耐久力に課題を抱えている。それでもアルバレス戦の打診を受けた際は迷わず「イエス」の返事をしたという。相手は世界的なスター選手だが、フィールディングは「彼が優れたボクサーであることは認めるが、ミドル級よりも4キロ重いスーパーミドル級では私の方が強い」と自信をみせる。長い左ジャブで突き放しておき、それをかいくぐって相手が懐に入ってきたところを得意の左右アッパーで迎え撃つつもりだ。

だが、オッズは14対1で挑戦者のミドル級王者有利と出ている。アルバレスが左右に動きながら揺さぶりをかけて飛び込み、ボディと顔面に強打を打ち分けて攻め落としてしまうとみられているのだ。

アルバレスが超大型契約の初戦を華々しく飾るのか、それともフィールディングが大番狂わせを起こすのか。15日(日本時間16日)、ニューヨークのリングに要注目だ。

ペドラサと決戦「ハイテク」ロマチェンコに死角は?

現在のプロボクシング界で17階級を通じて最も高い評価を受けているボクサー、WBA世界ライト級王者、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)が8日(日本時間9日)、米国ニューヨークでWBO同級王者のホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ)と王座統一戦を行う。今年5月、ホルヘ・リナレス(33=帝拳)にダウンを喫しながら10回に倒し返してTKO勝ち、3階級制覇を成し遂げた天才サウスポーと、「スナイパー(狙撃手)」のニックネームを持つ2階級制覇王者のペドラサ。圧倒的にロマチェンコ有利とみられているカードだが、はたして予想どおりの展開と結果になるのだろうか。

ロマチェンコは08年北京オリンピック(五輪)と12年ロンドン五輪を連覇したほか世界選手権でも2度優勝するなど、アマチュアで397戦396勝1敗という信じがたい戦績を残している。「デビュー戦で世界戦を組んでほしい」とプロモーターに懇願してプロに転向を果たしたのは13年10月のことだった。ロマチェンコの願いは2戦目で実現したが、そのときは体重超過の相手を警戒しすぎて前半をセーブしたのが響き小差の12回判定で敗れた。3戦目でWBO世界フェザー級王座を獲得すると、以後は手がつけられないほどの強さ、巧さを見せつけている。16年に獲得したWBOスーパーフェザー級王座は4度防衛。興味深いのは4人全員が途中でギブアップしている点だ。「ハイテク(高性能)」と呼ばれるロマチェンコの俊敏な動きとハンドスピード、スキルに翻弄され、戦闘意欲を喪失してしまったのである。こうしたことからスペイン語の「ノー・マス(もうイヤだ)」をもじって「ノー・マスチェンコ」などと呼ばれてもいる。

パンチ力がないのかといえばそうではない。5月のリナレス戦では10回にタイミングのいい左ボディブロー一撃で試合を終わらせているし、過去には豪快に倒した試合もある。戦績は12戦11勝(9KO)1敗で、目下8連続KO中だ。

これに対しペドラサもアマチュア時代には08年北京五輪に出場したことがあり(ライト級2回戦敗退)、09年の世界選手権では準優勝を収めている。プロ転向後4年目の15年にはIBF世界スーパーフェザー級王座を獲得し、2度の防衛もこなしている。V3戦で敗れたあとはビジネス・パートナーを変え、階級もアップ。減量苦から解放され、今年8月に12回判定勝ちで現王座を獲得した。ペドラサは戦いながら構えを左右にチェンジするスイッチ・ヒッターで、長距離でも中間距離でも戦え、さらに必要に迫られれば接近戦もこなせる器用なタイプだ。26戦25勝(12KO)1敗とKO率は5割に満たないが、4カ月前の戴冠試合では勝負どころの11回に絶妙な左アッパーでダウンを奪っている。数字以上にパンチ力があるとみた方がよさそうだ。

世界王者同士の統一戦だが、12対1でロマチェンコ有利という一方的なオッズが出ている。高いレベルの相手と戦いながら最上の結果を出し続けているロマチェンコに対する評価は、いまや揺るぎないものといっていいだろう。今回も素早く動いて相手のサイドにまわりこみながら多彩なコンビネーションで翻弄、中盤あたりでストップするだろうという見方が大勢を占めている。

ただ、不安もある。5月のリナレス戦で右肩を痛め、手術してから臨む初の試合でもあるからだ。これが肉体的、あるいは心理面で影響を及ぼすようならば番狂わせも考えられる。また、ロマチェンコはリナレス戦でアマ、プロを通じて初のダウンを喫しており、ライト級での体格、耐久力という点で壁にぶつかる可能性もある。

「ハイテク」が異次元の強さを見せつけるのか、それとも「スナイパー」が意外な一撃で撃ち落とすのか。興味深いカードだ。

注目米英対決!強打ワイルダーか技巧派フューリーか

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ、王者デオンタイ・ワイルダー(33=米)対挑戦者で元WBA、IBF、WBO3団体統一王者タイソン・フューリー(30=英)の12回戦が12月1日(日本時間2日)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われる。7連続KO防衛を含む40戦全勝(39KO)のワイルダー、身長206センチ、体重117キロのフューリー。注目の米英対決を制するのは-。

27戦全勝(19KO)のフューリーは前回で紹介ように構えを左右にチェンジしながら戦うスイッチ・ヒッターで、のらりくらりと相手の打ち気を逸らす頭脳派でもある。

これに対し身長201センチ、体重97キロ~103キロと細身のワイルダーは戦績が示すとおりのスラッガーで、特に狙い撃つ右ストレートの破壊力はすさまじいものがある。

このワイルダーはもともと高校時代にはバスケットボールやフットボールの選手だったが、恋人との間に生まれた難病の娘の治療費を稼ぐためにボクシングに転向した経緯がある。19歳のときのことだ。競技を始めて3年で08年北京オリンピック(五輪)に出場し、91キロ以下のヘビー級で3位に食い込んだ。35戦30勝5敗のアマチュア戦績と五輪の銅メダルを手土産にプロに転向した。

陣営が慎重なマッチメークを施したこともありワイルダーは次から次に対戦相手をキャンバスに沈め、その数は6年間に32人を数えた。しかも、すべて4ラウンド以内だった。

世界ランキングも上昇したが、「スタミナや打たれ強さは試されていない」という声が多かったのも事実だ。

15年1月、ワイルダーは初の世界挑戦でバーマイン・スティバーン(ハイチ)を12回判定で下してWBC王座を獲得。連続KOは32で止まったが、それ以上のものを手に入れた。当時、ヘビー級で米国勢は8年間に世界戦20連敗中だったこともあり、ワイルダーに対する期待は大きいものがあった。その後は再び倒しまくり、目下7連続KO防衛と自信を増している。戴冠前と異なるのは8ラウンド以上を戦って仕留めた試合が5度もある点だ。特に今年3月のルイス・オルティス(39=キューバ)戦では苦境を乗り切って10回TKO勝ちを収めており、スタミナも耐久力も十分にあることを証明している。

今回のフューリー戦をクリアすれば、いよいよWBA、IBF、WBO3団体統一王者のアンソニー・ジョシュア(29=英)との頂上決戦が現実味を帯びてくる。そのためにも勝利はもちろんのこと、次に繋がる内容も求められることになる。

オッズは3対2でワイルダー有利と出ているが、9度目となる世界戦のなかでは最も接近した数字だ。ワイルダーの強打が元王者を射抜くと予想する識者やファンがいる一方、狡猾なフューリーがスキルを生かしてワイルダーの持ち味を封じてしまうのでは、という見方もある。王者陣営も十分に警戒の色を見せているが、対策も十分に練っている様子だ。

ワイルダーと長年のコンビを組んでいるジェイ・ディーズ・トレーナーは「フューリーはルービックキューブみたいな多面性のあるボクシング・スタイルで、攻略するのは簡単ではない。でも、ルービックキューブは解けるからね」と愛弟子の勝利を確信している。

KO率98パーセントのワイルダーの強打が挑戦者の急所を打ち抜くのか、それとも超大型の変則技巧派、フューリーがスキルで翻弄するのか。全勝同士のヘビー級米英対決に注目したい。

帰ってきたフューリー 王者ワイルダーと注目の一戦

12月1日(日本時間2日)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われるWBC世界ヘビー級タイトルマッチが注目を集めている。ここまで7連続KO防衛を果たしている王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)が40戦全勝(39KO)、挑戦者の元WBA、IBF、WBO3団体統一王者、タイソン・フューリー(30=英)は27戦全勝(19KO)。敗北を知らない者同士の米英対決だ。しかもワイルダーが身長201センチ/リーチ211センチ、フューリーは206センチ/216センチという超大型同士のカードなのである。

ヘビー級は3年前までウラジミール・クリチコ(ウクライナ)の独占状態だった。WBA、IBF、WBO3団体王座に君臨し、9年間に18度の防衛を果たしていた。その政権に終止符を打ったのが、当時27歳のフューリーだった。15年11月、クリチコに判定勝ちを収めて3団体王座を引き継いだのだ。

ところがフューリーは戴冠直後にIBF王座を放棄。クリチコとの再戦が決まったあとは延期を繰り返し、あげくはドーピング違反やアルコール依存のため引退してしまった。

こうしたなか15年1月にWBC王者になっていたワイルダーは着々と防衛回数を伸ばし、IBFではアンソニー・ジョシュア(29=英)が王座を獲得(16年4月)。さらにジョシュアはWBAスーパー王座とWBO王座も手に入れた。18年になると、このふたりの頂上決戦が期待される状況になり、一時は年内に実現かと噂されたが、先送りになっている。

そこに割り込もうと再浮上してきたのがフューリーだ。2年半のブランク後、トレーナー、マネージャー、プロモーターを一新して今年6月に4回終了TKO勝ちでカムバック。8月には元世界ランカーに10回判定勝ちを収め、世界戦線に戻ってきた。そして、ジョシュア対ワイルダーがビジネス上の駆け引きで先延ばしになっているなか、WBC王座への挑戦にこぎ着けた経緯がある。

このフューリー、いまでこそ体重は117キロ(8月の試合時)あるが、生まれたときは450グラムだった。予定日よりも2カ月半早い出産だったのだという。マイク・タイソン(米)が世界ヘビー級王者として活躍しているころだったため、強く元気に育ってほしいという願いを込めて父親のジョン・フューリーが「タイソン」と命名したというエピソードがある。

アマチュアを経て08年12月にプロ転向を果たしたフューリーは、英国王座や英連邦王座、欧州王座などを獲得後、3年前にクリチコを下して世界のトップにまで上り詰めた。

大きな体に似合わず足をつかいながら距離と角度を変えて戦ううえ、構えを左右にスイッチする器用さを備えている。パワーは平均の域を出ないが、戦い方は頭脳的だ。今回、米国のリングが2度目となるフューリーは、ベストのコンディションに仕上げるため8週間前から米国西部でトレーニングを続けてきた。

「ワイルダーにパワーがあるのは分かっている。でもパンチが当たらなければ役に立たないだろ。動いて空振りさせるよ」。王座返り咲きに向けフューリーは揺るぎない自信をみせている。

スペンス対ガルシア PFP10傑同士の戦い実現へ

全17階級を通じたトップボクサーの総合評価ともいえる「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で、現役10傑に名を連ねる猛者同士、IBF世界ウエルター級王者のエロール・スペンス(28=米)と、4階級制覇を成し遂げているWBC世界ライト級王者のミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)が来年2月か3月に対戦する方向で交渉が進んでいる。すでに具体的な日程や開催候補地も挙がっており、遠からず決定するものとみられている。

PFPは、選者がボクサーの実績や試合内容を評価して順位づけするため、主観性の強い比較的遊び要素の多いランキングといえる。それでも「誰が本当に強いのか」が分かりやすいため、近年、欧米のメディアが独自にトップ10を選ぶなどしてファンに幅広く浸透しつつある。米国の老舗専門誌「リング」では1位がWBAライト級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)、2位がWBOウエルター級王者のテレンス・クロフォード(31=米)、3位がミドル級のWBAスーパー王者&WBC王者、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)となっており、スペンスは9位、ガルシアは7位に名を連ねている。ちなみに「リング」では井上尚弥(大橋)が6位に入っている。

このほかESPNではスペンスが5位、ガルシアが6位、専門サイトBoxingsceneではスペンスが9位、ガルシアは3位と極めて高い評価を受けている。

9月に行われたゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)対アルバレスがそうだったように、PFP10傑同士が戦う場合、大きなイベントになることが多い。もちろんスペンス対ガルシアも注目ファイトになることは間違いない。

12年ロンドン・オリンピック(五輪)に出場したこともあるスペンスは馬力のあるサウスポーの強打者で、24戦全勝(21KO)の戦績を誇る。目下2度防衛中で、それらを含め11連続KO勝ちと勢いがある。

これに対しフェザー級、スーパーフェザー級、ライト級、スーパーライト級の4階級で戴冠を果たしているガルシアも39戦全勝(30KO)のレコードを残している。こちらは左ジャブで相手を牽制しておいて鋭い右ストレートを打ち込む正統派の強打者だ。10月までライト級のWBC王座とIBF王座を保持していたが、指名防衛戦を迫られたためIBF王座は返上している。

スペンス対ガルシアは来春に行われる可能性が高い。ふたりとも業界で大きな影響力を持つアドバイザーのアル・ヘイモン氏と契約を交わしており、交渉の壁は高くないはずだ。すでに2月16日と23日が候補に挙がっているほか、3月16日ならばテキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで開催という具体的な日程と開催地も出ている。スペンスはテキサス州に住んでおり、またメキシコ系のガルシアもテキサス州で過去に3度の世界戦を行っており、同地での開催となればイベントの成功は間違いないところといえる。

スペンスが身長177センチ/リーチ183センチ、ガルシアが168センチ/173センチと体格面で差があることもあってか、現時点でのオッズは10対3でスペンス有利と出ている。

ウエルター級にはWBO王者のクロフォードのほかWBA王座にはマニー・パッキャオ(39=比)が君臨している。さらなるビッグファイトも望めるだけに、その第一弾としてスペンス対ガルシアの実現を期待したい。

「重量級のロマチェンコ」ウシク ヘビー級へ試金石

ヘビー級の次に重いクルーザー級のWBA、WBC、IBF、WBO4団体統一王者、オレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)が10日(日本時間11日)、英国マンチェスターで元WBC同級王者のトニー・ベリュー(35=英)を相手に通算6度目の防衛戦に臨む。

現役選手として全階級を通じて最も高い評価を受けているWBA世界ライト級王者、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)に倣って「重量級のロマチェンコ」と称されるサウスポーのテクニシャンは、来年にはヘビー級進出を目論んでいる。これがクルーザー級で最後の試合になりそうだが、「最重量級でも通用するだろう」という評価を得ることができるか。

ウシクとロマチェンコは同じウクライナ出身というだけでなく、アマチュア時代には揃って08年北京五輪、12年ロンドン五輪に出場した。2大会とも金メダルを獲得したロマチェンコに対し、ウシクは北京大会こそヘビー級8強に甘んじたが、ロンドン大会では同級金メダリストになった。アマチュア戦績はロマチェンコが397戦396勝1敗、ウシクが350戦335勝15敗と伝えられる。

プロ転向の時期もほとんど同じで、ロマチェンコが13年10月、ウシクが1カ月遅れの11月にデビュー戦を行い、ともにKO(TKO)勝ちを収めている。世界王座獲得はロマチェンコがプロ3戦目の14年6月と早く、その後、3階級制覇を成し遂げて揺るぎない地位を確立している。ウシクはプロ10戦目となる16年9月に初戴冠を果たし、賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」に出場して4団体の王座統一を果たした。今年7月のことである。

戦闘スタイルは「サウスポーの技巧派」という点で一致しているが、体格で恵まれているとはいえないロマチェンコが中近距離で戦うのに対し、ウシクは長い腕と軽快なステップを生かした中長距離での戦いを得意としている。ふたりともロマチェンコの父親、アナトリー・トレーナーの指導を受けている。

ここまで6度の世界戦を含め15戦全勝(11KO)を収めているウシクは王座統一を機にヘビー級に上がるものとみられていたが、ベリューの要望に応じるかたちで今回の対戦を決めた。アウェーとなる英国での試合を承諾した裏には、同国で絶大な人気を誇るヘビー級のWBA、IBF、WBO3団体統一王者、アンソニー・ジョシュア(29=英)戦に向けたデモンストレーションにする狙いもありそうだ。

ベリューはウシクの2代前のWBC王者で、33戦30勝(20KO)2敗1分の戦績を残している。こちらはすでにヘビー級での試合を経験済みで、昨年3月と今年5月、元世界王者のデビッド・ヘイ(英)に11回TKO、5回TKOで連勝している。「世間は俺が負けるとみているようだが、ヘイ戦がそうだったように今回も予想を覆してみせる」と強気だ。

しかし、オッズは11対2で現王者有利と出ている。「重量級のロマチェンコ」ウシクがスピードとテクニックで元王者を翻弄する可能性が高そうだ。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。