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au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

第1回WBSSクルーザー級王者はガシエフかウシクか


 WBA世界バンタム級王者、井上尚弥(25=大橋)が第2回大会に参戦することで日本でも注目を集め始めている高額賞金トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」。その第1回大会のクルーザー級決勝戦が21日(日本時間22日)、ロシアの首都モスクワで行われる。WBA王座とIBF王座を持つムラト・ガシエフ(24=露)と、WBC&WBO王者のオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)が対戦するもので、勝者は4団体の統一王者になるとともに優勝賞金1000万ドル(約11億2000万円)を手にする。

 WBSSの第1回大会はスーパーミドル級とクルーザー級の2階級に各8選手、合計16選手が参加して昨年9月に開幕した。クルーザー級は主要4団体の4王者がエントリーし、いずれも初戦を突破。そのため準決勝2試合は王者同士の対決となり、ガシエフとウシクが激闘を制して決勝に駒を進めた。

 「アイアン(鉄人)」というニックネームを持つガシエフは27戦26勝(19KO)1無効試合という戦績を残している192センチの長身強打者で、WBSS初戦を3回KO、準決勝を12回TKOで勝ち上がってきた。特に22戦全勝(21KO)のWBA王者、ユニエル・ドルティコス(32=キューバ/米)を最終回で仕留めた試合はドラマチックで、自身の評価をアップさせるとともにロシアのファンの期待も大きく跳ね上げた。

 これに対し12年ロンドン・オリンピック(五輪)ヘビー級金メダリストのウシクはサウスポーの技巧派で、プロでは14戦全勝(11KO)の戦績を残している。WBSS初戦は元世界王者に10回TKO勝ち、準決勝では23戦全勝(18KO)のWBC王者、マイリス・ブリエディス(33=ラトビア)の地元に乗り込んで12回判定勝ちを収めている。大会開始時から本命とみられており、決勝まで順当に駒を進めてきたといえる。

 もともと決勝戦は5月にサウジアラビアで予定されていたが、ウシクが左腕を痛めたため延期され、開催地もロシア(モスクワ)に変更された経緯がある。そのためか、当初は7対3でウシク有利と出ていたオッズは徐々に接近。7月に入ってからはウシク有利の数字が5対4まで縮まっている。ちなみに自力で4団体王座の統一を果たした選手は、ミドル級のバーナード・ホプキンス(米)とスーパーライト級のテレンス・クロフォード(米)だけで、ガシエフ対ウシクの勝者が史上3人目となる。

 攻撃型のガシエフが前に出ながら圧力をかけ、技巧派サウスポーのウシクが迎撃する展開が予想される。総合力は接近しており、接戦になりそうだ。ただし、200ポンド(約90・7キロ)を体重リミットとするクルーザー級はヘビー級の次に重い階級だけに、一発でKOという可能性もある。

 ガシエフにはミドル級V20王者、ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)が師事するアベル・サンチェス・トレーナーがついており、一方のウシクには3階級制覇の天才、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)の父親、アナトリー・ロマチェンコ・トレーナーがついている。選手個々の力量だけでなく、参謀の戦術、チーム力にも注目したい。

 なお、井上が参戦する第2回大会のエントリー選手と組み合わせ発表は、このガシエフ対ウシクの試合の前日、20日(日本時間21日)にモスクワで行われることになっている。

パッキャオ1年ぶりのタイトル戦はKOはらむ白熱した戦い期待


 6階級制覇の実績を持つスーパースター、マニー・パッキャオ(39=比)が15日、マレーシアの首都クアラルンプールでルーカス・マティセ(35=亜)の持つWBA世界ウエルター級王座に挑戦する。かつて米国でセンセーションを巻き起こしたサウスポーも12月には40歳になる。近年は衰えを隠せず、昨年7月には伏兵にWBO世界ウエルター級王座を奪われており、これが1年ぶりの再起戦でもある。相手のマティセは82パーセントのKO率を誇る強打者。パッキャオがKO負けを喫するようなことがあれば、引退の危機に瀕する可能性もある。

 パッキャオは19歳で約50.8キロ以下のフライ級王座を獲得したのをはじめ、約69.8キロ以下のスーパーウエルター級まで6階級で世界一の座についた。この間の体重差は実に19キロ。もうひとりの6階級制覇王者、オスカー・デラ・ホーヤ(米)が乗り超えた体重の壁が13キロだったことを考えると、いかにパッキャオの記録が偉大であるかが分かるだろう。

 パッキャオの身長は166センチ、リーチは170センチで、これは現WBA世界バンタム級王者の井上尚弥(25=大橋)とほぼ同じ数字だ。その小さな体で、ひと回り、ときにはふた回りも大きな相手に真っ向勝負を挑んでいったのだから人気が出ないはずがない。6階級目となるスーパーウエルター級王座決定戦で拳を交えたアントニオ・マルガリート(メキシコ)は身長180センチ、リーチ185センチだった。

 しかし、歴戦の疲労が蓄積したのか、単に年齢からくる衰えなのか、12年以降の9戦は5勝4敗とスランプ気味だ。相手がフロイド・メイウェザー(米)ら世界王者経験者がほとんどとはいえ、9年間、13試合もKO勝ちから遠ざかっているとあっては、かつてのような注目度を維持するのは難しいといえる。

 そうした中、今回の試合はパッキャオ自身が相手を指名し、自身でプロモートするかたちで実現した。17年間も指導を仰いだフレディ・ローチ・トレーナーとのコンビを解消し、新チームで臨む試合でもある。ちなみにマレーシアで世界的な注目ファイトが行われるのは、1975年7月のモハメド・アリ(米)対ジョー・バグナー(英)の世界ヘビー級タイトルマッチ以来43年ぶりとなる。

 相手のマティセは44戦39勝(36KO)4敗1無効試合という攻撃型の強打者で、今年1月に現王座を獲得した。ニックネームは「ラ・マキナ(機械)」。強くて正確な左右のパンチで数々の強豪をキャンバスに沈めてきた。知名度ではパッキャオに及ばないが、パワーでは6階級制覇王者の上を行く。「パッキャオが偉大な選手であることは認めるが、全盛期の力はない。私がKOで勝つだろう。この試合で引導を渡す」と強気のコメントを発している。

 オッズは9対5でパッキャオ有利と出ている。スピードを生かして左右に揺さぶりをかけながら機をみて飛び込み、左ストレートで鮮やかなKO勝ち-そんなシーンをパッキャオのファンは期待している。

 一方でリスクの高い試合であることも事実だ。パッキャオは23年半のプロキャリアで22度の世界戦(16勝8KO4敗2分)を含め68戦59勝(38KO)7敗2分のレコードを残しているが、マティセはパッキャオが世界戦で拳を交えたのべ22人の誰よりも高いKO率を残しているのである。

ひとつのミスも許されないのはパッキャオもマティセも同じこと。序盤からKOのスリルをはらんだ白熱した攻防が展開されそうだ。

ディアス、プエルトリコ49人目の世界王者に輝くか


 米国の自治連邦区、カリブのプエルトリコは17連続KO防衛のウィルフレド・ゴメスや4階級制覇のミゲール・コットら数多くのスター選手を輩出してきたボクシング強国のひとつだが、1年半前には世界王者ゼロという低迷期を迎えた。しかし、その後は勢いを取り戻し、現在は世界王者4人(暫定王者含む)を抱えている。現役「5人目」の期待を背負っているのが、7月28日(日本時間29日)に伊藤雅雪(27=伴流)と拳を交えるWBOスーパーフェザー級1位のクリストファー・ディアス(23)だ。米国フロリダ州マイアミで行われるこの試合でディアスが戴冠を果たすと、プエルトリコ史上49人目の世界王者となる。

 プエルトリコに初の世界王座をもたらしたのはバンタム級のシクスト・エスコバルで、1934年の戴冠は日本初の白井義男氏(1957年にフライ級王座獲得)より23年も早い。以後、来日して圧倒的な強さを見せつけたカルロス・オルティス、17歳5カ月の最年少戴冠記録を持つウィルフレド・ベニテス、「バズーカ」の異名を持っていたゴメス、90年代から2000年代初頭にかけて活躍したフェリックス・トリニダードといった世界的なスター選手を輩出してきた。プエルトリコ初の4階級制覇を成し遂げたコットの試合ともなると、人々がテレビにくぎ付けになるため街の大通りがガラガラになったと伝えられたほどだ。世界戦のたびに50パーセント以上の視聴率を記録したファイティング原田の昭和30年代、40年代とオーバーラップするものが感じられる。

 しかし、1年半前には世界王者がゼロになるという危機的状況に陥った。そのピンチはWBOスーパーウエルター級王座を獲得したコットが救ったが、昨年12月の試合で敗れたのを最後に引退した。

 このベテランの奮起に触発されたのか、昨秋からフェザー級のヘスス・ロハス(31)、スーパーフェザー級のアルベルト・マチャド(27)、ライトフライ級のアンヘル・アコスタ(27)、そしてバンタム級のエマヌエル・ロドリゲス(25)が相次いで世界王座を獲得した。特に18戦全勝(12KO)のロドリゲスは次期スター候補と目される逸材で、井上尚弥(25=大橋)との統一戦が期待されている。

 こうしたなか、プエルトリコ史上49人目の世界王者の期待を背負っているのがディアスだ。8歳のときにボクシングを始め、アマチュアで137戦を経験後にプロデビュー。5年間で23連勝(15KO)をマークしているディアスは、伊藤との試合を前に「家族のためにも絶対に負けられない試合。世界王者になり、スーパーフェザー級王座を統一したい」と意気込んでいる。

 ディアスがプエルトリコ49人目の世界王者になるのか、それとも伊藤が日本のジム所属選手として90人目の世界王者になるのか。ボクシング強国の威信をかけた試合まで3週間あまりとなった。

圧倒的不利予想の呂斌、史上最速プロ2戦目での戴冠なるか


 WBA世界ライトフライ級12位にランクされる呂斌(ルー・ビン 23=中国)が7月15日、マレーシアの首都クアラルンプールで同級王者のカルロス・カニサレス(25=ベネズエラ)に挑む。16年リオデジャネイロ五輪に出場した経験を持つ呂は昨年9月のデビュー戦で3回TKO勝ちを収めており、これがプロ2戦目となる。勝てば現WBA世界ライト級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)らが持つ「3戦目」を更新する史上最速の戴冠記録となる。この日のメインカードは、6階級制覇の実績を持つマニー・パッキャオ(39=比)がルーカス・マティセ(35=亜)に挑むWBA世界ウェルター級タイトルマッチだが、記録のかかる前座試合も注目を集めそうだ。

 呂はアマチュア時代に12年ユース世界選手権で優勝し、13年アジア選手権では銅メダルを獲得。21歳のときにはリオデジャネイロ五輪にも出場した(ライトフライ級2回戦で敗退)。昨年9月に北京でプロデビュー戦を行い、3回TKO勝ちを収めた。相手は17戦8勝(6KO)9敗という戦績のタイの選手だったが、この試合で呂は空位のWBCアジア・ライトフライ級シルバー王座を獲得。世界戦の計画が浮上した今年になって、取ってつけたようにランキング入りを果たした。中国系ファンの動員を狙ったマッチメークといわれてもいる。

 サウスポーの呂は細かく動きながら出入りしてワンツーを繰り出すボクサーファイター型で、今回の挑戦が決まってからフィリピンに遠征。パッキャオと一緒にトレーニングしてアドバイスをもらい、モチベーションを上げている。

 そんな呂の挑戦を受けるカニサレスは4年のプロキャリアで21戦20勝(16KO)1分のレコードを残している強打者だ。16KOのうち12度は3ラウンド以内でけりをつけており、速攻型ともいえる。16年12月に来日して当時のWBA王者、田口良一(31=ワタナベ)に挑戦したが、このときは前半でリードしたものの中盤から田口の追い上げにあい引き分けに終わった。その後、IBF王座も獲得した田口がスーパー王者に格上げされたことにともない今年3月にWBA王座決定戦が行われ、カニサレスは小西伶弥(24=真正)に判定勝ちを収め戴冠を果たしている。呂との試合が初防衛戦となる。

 130年超の近代ボクシングの歴史上、最も少ない試合数で世界王座を獲得したのはセンサク・ムアンスリン(タイ=1975年にWBCスーパーライト級王座獲得)とロマチェンコ(2015年にWBOフェザー級王座獲得)の「3戦目」だが、呂が勝てばこれを更新することになる。しかし、ムエタイ(キックボクシング)で豊富な経験があったうえプロでも世界ランカーを連破したセンサクと、アマチュア時代に五輪連覇を果たし、プロデビュー戦で世界ランカーを一蹴したロマチェンコと比べると、呂の実績は心許ないものといえる。

 また、呂が戴冠を果たせば熊朝忠(シオン・チャオ・チョン=2012年にWBCミニマム級王座獲得)、雛市明(ゾウ・シミン=2016年にWBOフライ級王座獲得)に次いで中国3人目の世界王者となる。

 圧倒的不利の予想を覆し、呂は新たな歴史を刻むことができるか。

この秋、ミドル級とヘビー級でスーパーファイト実現


 この秋、ミドル級とヘビー級でスーパーファイトが実現することになった。ミドル級はWBAスーパー王座とWBC王座を持つゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)対元2階級制覇王者、サウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)の再戦で、試合は9月15日、米国内で行われる。ヘビー級はWBAスーパー、IBF、WBOの3団体王者、アンソニー・ジョシュア(28=英)対WBC王者、デオンタイ・ワイルダー(32=米)の4団体統一戦。こちらは10月か11月、英国開催で両陣営が合意している。4選手とも4000万ドル(約44億円)以上の報酬が見込まれている。

 昨年9月の初対戦では12回引き分けに終わったゴロフキン対アルバレスの再戦は、当初5月5日に行われる予定だった。しかし、アルバレスのドーピング違反が発覚したことで一時は空中分解した。その後も両陣営は辛抱強く交渉を続け、やっと条件合意に達したという。もめていた報酬の分配については21度目の防衛を目指すゴロフキンが42・5%なのに対し、集客能力と人気で上回るアルバレスが57・5%という比率に落ち着いた。それでもゴロフキンは4000万ドルを手にするとみられている。アルバレスの代役を相手に2回KO勝ちを収めた5月のV20戦の保証報酬が100万ドル(約1億1000万円)だったことを考えると、文字通り桁違いの金額ということになる。アルバレスの方は約60億円の報酬になる見込みだ。

 開催地は確定していないが、米国ネバダ州アスレチック・コミッションによるアルバレスの資格停止が8月に解除になることから、初戦と同じ同州ラスベガスのT-モバイル・アリーナが最有力視されている。戦績はゴロフキンが39戦38勝(34KO)1分、アルバレスが52戦49勝(34KO)1敗2分。現時点でのオッズは7対4でゴロフキン有利と出ている。

 21戦全勝(20KO)のジョシュアと、40戦全勝(39KO)のワイルダーのヘビー級4団体王座統一戦は、最重量級の英米対決という付加価値もあり、ゴロフキン対アルバレスの再戦を上回る規模になりそうだ。両陣営は開催地を含めて今春から本格的な交渉を続けてきたが、やはり一時は先送りになる可能性もあった。しかし、ワイルダーに5000万ドル(約55億円)の報酬が約束され、さらに初戦は英国、再戦を行う場合は米国開催という付帯条件がついたことで実現することになった。当初は9月開催を予定していたが、先にゴロフキン対アルバレスが決定したため「10月か11月を考えている」(ジョシュア側のプロモーター、エディ・ハーン氏)という。

 驚異的なKO率(ジョシュア=95%、ワイルダー=97・5%)を誇る全勝のハードパンチャー対決だけにジャッジ不要の試合になることは確実といえる。こちらもオッズは7対4でジョシュア有利という数字が出ている。

 この秋、ボクシング界は大きな盛り上がりをみせそうだ。

ゴロフキンvs村田も?注目のミドル級トップ戦線


 主要4団体すべての王座収集を目指していたWBAスーパー、WBC、IBF世界ミドル級王者、ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米 39戦38勝34KO1分)が6日、指名防衛戦の意思がないとみなされIBF王座を剥奪された。一方で9月に計画していたサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ 52戦49勝34KO1敗2分)との再戦も交渉が決裂しており、ゴロフキンは目標と軌道の修正を迫られる状況になった。

 もともとゴロフキンは5月5日、昨年9月のV19戦で引き分けたアルバレスとの再戦に臨むはずだった。しかし、ドーピング違反が発覚したアルバレスが対戦を辞退したためゴロフキンは代役と拳を交えることになり、自慢の強打で2回KO勝ちを収めた。

 それから1カ月。IBFは王者が次戦で1位のセルゲイ・デレビャンチェンコ(32=露/ウクライナ 12戦全勝10KO)の挑戦を受けることを条件に王座保持を認めたものの、その後もゴロフキンが対戦の意思を示さないため王座を剥奪した。空位になったIBFの王座決定戦にデレビャンチェンコが出場することは決まっているが、相手は未定だ。

 こうしたなかゴロフキンはアルバレスと9月15日に対戦する交渉を続けてきたが、報酬の配分を巡って妥協点を見つけられなかった。50-50の比率で分配を要求したゴロフキン陣営に対しアルバレス側が首を縦に振らなかったためだ。王者側はゴロフキン45-アルバレス55まで譲歩したが、それでも快い返事はなかったという。王座を持っているのはゴロフキンだが、メキシコを中心に人気と知名度、商品価値で上回るアルバレスを軸にビジネスが展開していることが分かる。このねじれ減少がスーパーファイトの大きな壁になっているといえる。

 自分を中心にビジネス展開できるアルバレスはゴロフキンを振り、9月に元WBA王者のダニエル・ジェイコブス(31=米 36戦34勝29KO2敗)と対戦する方向で詰めに入っている模様だ。ゴロフキンと分の悪い引き分けに終わっているアルバレスと、ゴロフキンに善戦したものの僅少差の判定負けを喫しているジェイコブス。敗者復活戦の印象がないわけではないが、興味深いカードには違いない。

 次戦が宙に浮いたかたちのゴロフキンだが、WBCから暫定王者のジャモール・チャーロ(28=アメリカ 27戦全勝21KO)と対戦するよう指令を受けている。スピードと強打に定評のあるチャーロは以前からゴロフキンやアルバレスとの対戦を望んでおり、条件さえ合えばすんなりと団体内の統一戦が実現するかもしれない。しかし、一部で「隠れたミドル級最強」ともいわれるチャーロはゴロフキンやアルバレスにとって極めて危険度の高い相手だが、それはチャーロにとっても同じこと。したがってIBFで4位にランクされるチャーロがリスクを回避し、デレビャンチェンコとの王座決定戦に鞍替えする可能性もある。リング外の動向(交渉)が気になるところだ。

 サウスポーのWBO王者、ビリー・ジョー・サンダース(28=英 28戦全勝12KO)はこれまで門外漢の印象が強かったが、今月23日に予定されていたV4戦をキャンセルしたことで思わぬ注目を集めることになった。大腿部を痛めたことが理由とされているが、「ゴロフキン戦を前提にしたキャンセルでは?」と深読みする関係者もいるのだ。サンダースは昨年初夏にカザフスタンでゴロフキンと対戦する計画があっただけに、両陣営間が水面下で動いたとしても驚くことではない。またゴロフキンにとってWBO王座は以前から手に入れたいものでもあった。ゴロフキン対サンダースも実現の可能性があるカードとして挙げておく必要がありそうだ。

 現状ではミドル級の主役は持ち味の異なるゴロフキンとアルバレスのふたりで、ジェイコブス、チャーロ、デレビャンチェンコ、サンダース、さらに元世界スーパーウエルター級王者のデメトリアス・アンドレイド(30=米 25戦全勝16KO)といった力のある個性派が脇を固める構図となっている。そして、忘れてはならないのがWBA王者の村田諒太(32=帝拳 15戦14勝11KO1敗)だ。現時点では村田も脇を固める立場に甘んじているが、9月か10月に米国で予定される次戦で存在感を示せば、本人の希望するゴロフキン戦が現実的なものになってくるはずだ。

 今後は村田を含むトップ8選手のサバイバル戦に突入するミドル級トップ戦線。しばらく目が離せない状況が続きそうだ。

“ハンター”クロフォード“スズメバチ”下し3階級制覇なるか


 全階級を通じたボクサーの強さ指数ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」ランキング上位常連のテレンス・クロフォード(30=米)が9日(日本時間10日)、米国ネバダ州ラスベガスでジェフ・ホーン(30=豪)の持つWBO世界ウェルター級王座に挑む。これまでライト級とスーパーライト級で世界王座を獲得したクロフォードにとっては3階級制覇のかかった重要な試合になる。昨夏、マニー・パッキャオ(39=比)に競り勝って戴冠を果たしたホーンを攻略することができるのか。

 世界王座を持っているのはホーンだが、今回の試合の主役がクロフォードであることは誰もが認めるところであろう。クロフォードは14年にWBO世界ライト級王座を獲得すると、2度防衛後に返上してスーパーライト級に転向。その初戦でWBO王座についた。2年前にWBC王者に勝って2団体統一を果たし、昨年8月には同じく2団体王者だったジュリアス・インドンゴ(35=ナミビア)に3回KO勝ちを収めて主要4団体すべての王座を手に入れた。10度の世界戦(全勝7KO)を含む戦績は32戦全勝(23KO)と完璧だ。

 5月27日付の米国「リング・マガジン」電子版で、クロフォードは「パウンド・フォー・パウンド」の3位という高い評価を受けている。ちなみに1位はミドル級3団体王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)で、2位がWBA世界ライト級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)、4位にミドル級のサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)、5位がWBC世界ライト級王者のマイキー・ガルシア(30=米)、そして6位にはWBA世界バンタム級王者の井上尚弥(25=大橋)がランクされている。

 「ハンター」というニックネームを持つクロフォードは左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターで、スピードとテクニックが最大の持ち味といえる。強打者というイメージは薄いが、世界戦10試合で計14度のダウンを奪っており、攻防とも高い次元の選手といえる。

 そんな実力者の挑戦を受けるホーンは12年ロンドン五輪に出場後、プロ転向した。数々の地域王座を獲得したあと昨年7月、パッキャオを破って戴冠を果たした。名前の韻を踏んだ「HORNET(スズメバチ)」というニックネームを持つが、パンチの鋭さや破壊力よりも馬力、体力を持ち味としている。パッキャオ戦でも分厚く頑丈な体で粘り強く戦って接戦をものにしている。こちらも19戦18勝(12KO)1分と無敗だが、対戦相手の質という点ではクロフォードに劣る。ホーンは今回の試合に向け、アマチュア時代にクロフォードに勝ったことがある元世界ランカーのレイ・ロビンソン(32=米)をスパーリング・パートナーに迎えるなどして対策を講じてきた。その成果が出るかどうか。

 6対1というオッズが出ているように、「ハンター」が「スズメバチ」を退治するという見方が大勢を占めている。挑戦者がスピードとテクニックを生かして戦い、前半からポイントを重ねる展開が予想される。クロフォードに不確定な要素があるとすれば、4月に予定された試合を拳の負傷で2カ月延期したことぐらいだろう。10カ月ぶりの試合となるため実戦の勘という点で若干の不安は残る。それに乗じてホーンが序盤から攻勢をかけて体力勝負の乱戦に持ち込めば番狂わせの可能性も出てくる。

山中倒すも体重超過で無期限出場停止のネリ、復帰戦の行方は…


 昨年8月と今年3月、WBC世界バンタム級王座をめぐり山中慎介(帝拳)と2度対戦し、連勝しながらドーピング違反、体重オーバーという失態を犯したルイス・ネリ(23=メキシコ)が6月9日(日本時間10日)、出身地でもあるメキシコのティファナで“復帰戦”を行う予定だったが、試合の12日前になって中止が決定した。ネリは世界挑戦の経験を持つジェトロ・パブスタン(28=比)とバンタム級10回戦を行うことになっていたが、WBCから警告があったため出場を見送ることになったという。ネリは山中との再戦を前に大幅な体重超過のため失格、日本ボクシングコミッション(JBC)から永久追放されたうえWBCからも無期限の出場資格停止を言い渡されている。

 ネリは4回TKO勝ちを収めて戴冠を果たした山中との初戦(京都)後、ドーピング違反が発覚したが、「汚染された肉を食べたのが原因だと思う」と言い訳。WBCが調査に乗り出したが、確かな証拠がつかめず「意図的に(禁止物質を)摂取したとは断定できない」という灰色判定を下し、王座の保持を認めたうえで山中との再戦を命じた。

 ダイレクト・リマッチは今年3月1日にセットされた(東京)が、ネリは試合前日の計量で大幅な体重超過を犯して失格、その時点で王座を剥奪された。しかし、試合では山中から合計4度のダウンを奪って2回TKO勝ちを収めた。

 こうしたなかJBCは、ネリの計量失敗が極めて悪質なものとして無期限の出場停止処分を科し、日本のリングから締め出した。ただし、これは日本での試合出場が不可能というだけで、ほかの地域でネリがリングに上がることを規制する効力はない。WBCも同様の罰を科しているが、これも同団体の認可試合への出場を制限するものでしかない。

 当初、ネリは6月9日に米国カリフォルニア州サンディエゴ近郊アルパインで試合を行う計画だった。しかし、ニューヨーク州やネバダ州などとともに選手の健康管理や出場資格に厳しいことで知られるカリフォルニア州もネリに無期限のサスペンドを科しており、この地での試合を断念。そこで出身地でもあるメキシコのティファナに会場を移した経緯があった。ネリは「多くの批判を受けたが、自分がバンタム級最強であることは証明済みだし、いまでも世界王者だと思っている。俺はナチュラルなバンタム級なので、早くベルトを取り戻したい」と話していた。

 今回、自らそのティファナでの試合出場を断念したのは、WBCの警告に従う選択をしたからだ。ネリは山中戦後のWBCの聴聞の際、起こした問題に向き合い行動を正していくことを誓っており、もう少しで約束を反故にするところだった。ギリギリのところで踏みとどまったわけだ。

 バンタム級では、世界のトップ選手8人が高額賞金を狙ってトーナメント戦を行う「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」が9月から開催されることになっている。すでにWBA新王者になった井上尚弥(25=大橋)をはじめWBAスーパー王者のライアン・バーネット(26=英国)、IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(25=プエルトリコ)、WBO王者のゾラニ・テテ(30=南ア)らが参戦を表明している。ネリも参加の意思があると伝えられるが、日本やカリフォルニア州、さらにWBC管理下で試合ができない状況とあって、仮に挙手しても受け入れられるかどうか微妙なところといえる。

93年ぶりにフィリピン選手同士の世界戦が実現


 IBF世界スーパーフライ級王者のジェルウィン・アンカハス(26=比)は26日(日本時間27日)、米国カリフォルニア州フレズノで同級1位の指名挑戦者、ジョナス・スルタン(26=比)を相手に5度目の防衛戦に臨む。フィリピンの選手同士が世界戦で拳を交えるのは93年ぶり2度目のことになる。

 日本では白井義男氏が1952年に初めて世界王者になったが、フィリピンはそれよりも29年早い1923年にパンチョ・ビラが米国で世界王座を獲得している。そういった面でもビラはマニー・パッキャオらの大先輩といえる。ちなみに世界王者の輩出数では日本が追い抜き、現在は89人(日本ボクシングコミッション認定下)を数える。対してフィリピンは39人となっている。興味深いのはフィリピンの歴代世界王者のうち半数近くがサウスポーであるという点だ。日本は約25パーセント、メキシコは15パーセント前後だから、いかにフィリピンのサウスポー比率が高いかが分かるだろう。

 さて、フィリピンの初代世界王者となったビラは1925年5月2日、フィリピンのマニラで4度目の防衛戦に臨んだが、そのときの相手が同国人のクレバー・センシオだった。試合では23歳のビラが20歳のセンシオに15回判定勝ちを収めている(当時の世界戦は15回戦制)。これも余談になるが、ビラは2カ月後のV5戦で敗れて王座を失い、その10日後に化膿した歯の毒が原因で亡くなった。センシオも11カ月後、10回判定負けを喫した試合の翌朝に脳出血で死亡している。

 これで同胞対決が忌み嫌われたわけではないのだろうが、以後93年間もフィリピン人同士の世界戦が組まれることはなかった。6階級制覇のパッキャオ、5階級制覇のノニト・ドネア、60年代に活躍したフラッシュ・エロルデなど知名度も実力もある選手たちも世界戦で同胞と戦うことはなかった。

 こうしたなか今回のアンカハス対スルタンはIBFの指名試合として行われる。イベントの宣伝デザインには、両選手の写真とともにモノクロのビラのポーズ写真も配されている。イベントのコピーは「Meet & Greet」。邂逅と歓迎とでも訳せばいいのだろうか。

 サウスポーのアンカハスは31戦29勝(20KO)1敗1分の戦績を誇る強打者で、最近の6年間は16戦全勝(15KO)という手のつけられない強さを発揮している。目下4連続KO防衛中だ。挑戦者のスルタンは15年11月の初来日試合で10回判定負けを喫しているが、以後は5連勝(4KO)と勢いを取り戻している。通算戦績は17戦14勝(9KO)3敗。

 下馬評では、パッキャオのMPプロモーションズ、そのパッキャオや村田諒太(帝拳)が契約を交わしている米国のトップランク社と提携しているアンカハスが圧倒的有利とみられている。しかし、戦闘スタイルや感情面など同国人対決は意外に戦いにくい一面もあるだけに、内容と結果が気になるところだ。

 なお、8月18日にはフィリピン人同士の3度目の世界戦となるドニー・ニエテス(36)対アストン・パリクテ(27)のWBOスーパーフライ級王座決定戦がセブ市で行われることが決まっている。

 ビジネス面の成否にもよるが、これを機に今後は軽量級を中心にフィリピン人同士の世界戦が増えそうな気配だ。

また世界戦で計量失格 今年5人目、全て世界王者経験者


 3月と4月に日本で開催された世界戦で計量失格者が出て問題になったが、5月5日に英国で行われたIBF世界バンタム級王座決定戦でもポール・バトラー(29=英)が体重超過のため戦う前に戴冠資格を失い、試合でも大敗を喫した。これで今年に入ってから世界戦での失格者は5人となった。しかも違反者全員が世界王者経験者だ。それが事態の深刻さを物語っている。

 近年、計量における体重オーバーでの失格は、日本だけではなく世界的に憂慮すべき問題となっている。それにもかかわらず相変わらず違反者があとを絶たない。今年に入ってからだけでも下記のとおり世界戦で5件発生している。

◆1月20日@米国 IBFライト級タイトル戦で挑戦者のハビエル・フォルトゥナ(28=ドミニカ共和国)が約680グラム超過 ※12回判定負け

◆3月1日@日本 WBCバンタム級タイトル戦で王者のルイス・ネリ(23=メキシコ)が約1360グラム超過 ※2回TKO勝ち

◆3月10日@米国 WBOフェザー級タイトル戦で挑戦者のスコット・クイッグ(29=英)が約1130グラム超過 ※12回判定負け

◆4月15日@日本 WBCフライ級タイトル戦で王者の比嘉大吾(22=白井・具志堅)が約900グラム超過 ※9回TKO負け

◆5月5日@英国 IBFバンタム級王座決定戦で4位のポール・バトラー(29=英)が約1360グラム超過 ※12回判定負け

 注目すべきは、計量で失格した5人すべてが世界王者経験者であることだ。つまり初めての大舞台というわけではなく、全員がそれなりに高い経験値の持ち主なのである。フォルトゥナ、クイッグに至っては下の階級から上げてきた選手なのに規定体重をつくれなかった。さらに加えるならばフォルトゥナは世界戦で2度目、ネリも昨年3月の挑戦者決定戦に続き重要な試合で2度目の失敗だった。このふたりは悪い意味でのリピーターなのである。

 日本ボクシングコミッション(JBC)は、悪質だったネリに日本での永久的な活動停止処分を科し、比嘉にも報酬の20パーセント相当額の制裁金の支払いと無期限停止処分を言い渡したが、これらの効力は日本国内に留まる。そのためネリは6月9日に米国カリフォルニア州サンディエゴ近郊のアルパインで次戦を行う予定だと伝えられる。選手の生活権の問題もあるため難しい判断を迫られるところだが、ボクシングという体重制の格闘競技を保護するためにも違反者には地域限定ではなく世界共通の重い罰則を設ける必要があるだろう。

 いまは早急にルールが作成されることと、「6人目」が出ないことを祈るばかりだ。

天才vs天才、凱歌はリナレスとロマチェンコどちらに?


 WBA世界ライト級王者、ホルヘ・リナレス(32=帝拳)の4度目の防衛戦が12日(日本時間13日)、米国ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで行われる。今回の相手は1階級下のスーパーフェザー級でWBO王座に君臨するワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)だ。無類のスピードとテクニック、右ストレートを武器に3階級制覇を成し遂げているリナレスと、ごりんオリンピック連覇後にプロに転向して3戦目で戴冠、7戦目で2階級制覇を達成したサウスポーのロマチェンコ。天才と天才の対決はどちらに凱歌があがるのか。

 ベネズエラから日本にやってきて17歳でプロデビューしたリナレスは、フェザー級、スーパーフェザー級、そしてライト級の3階級で世界王者になった実績を持つ。キャリア16年、47戦44勝(27KO)3敗の戦績のうち13試合(11勝7KO2敗)は世界戦だ。09年から12年にかけて3度のTKO負けを喫しているように耐久力に課題を抱えているが、最近は13連勝(7KO)と勢いを取り戻している。スピードのある左ジャブを突破口にして右ストレートで仕留めるパターンが多く、フックやアッパーなど左も多彩でタイミングも抜群だ。ただ、今回の試合は以前から師事してきたキューバ出身のイスマエル・サラス・トレーナーではなく、王者の実弟カルロス・リナレスがセコンドにつくことになっている。兄弟の組み合わせが吉と出るか凶と出るか、蓋を開けてみないと分からない部分もある。

 ロマチェンコは08年北京五輪、12年ロンドン五輪で連覇を達成し、世界選手権でも2度の優勝を収めている。アマチュア戦績は397戦396勝1敗というから驚きだ。13年10月にプロに転向し、4カ月半後、2戦目で世界王座に挑んだ。そのときは体重オーバーの相手を警戒し過ぎ、前半の失点が響いて小差の判定負けだった。しかし、続く3戦目の王座決定戦では能力を存分に発揮、12回判定勝ちでWBO世界フェザー級王座についた。3戦目での戴冠は史上最速タイ記録でもある。また、7戦目にはWBOスーパーフェザー級王座を獲得しているが、これは井上尚弥(25=大橋)の8戦を更新する史上最速の2階級制覇記録だ。

 正統派のリナレスとは対照的にロマチェンコはサウスポーの技巧派で、特に瞬間移動ともいえる足の動きに定評がある。前後左右に動きながら多彩で角度のある回転の速い左右のパンチを打ち込む連打型の選手だ。目下7連続KO勝ちで、直近の4試合はすべて途中で相手をギブアップさせている。相手が打とうとしたときには目の前にロマチェンコはおらず、反撃の糸口がつかめないまま心を折られてしまうケースが続いている。「ロマチェンコ勝ち」という表現まであるほどだ。

 ロマチェンコは、ミドル級の3団体統一王者、ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)らとともに、ボクサーの強さ指数ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」のトップ3に数えられるだけに、今回のリナレス戦も6対1というオッズが出ている。その数字が示すように、多くのファンや関係者は「ハイテク(高性能)」というニックネームを持つロマチェンコが細かく動いてリナレスを翻弄してしまうとみている。その一方、プロでの経験値や体格、パンチ力で勝るリナレスが右ストレートを打ち抜いてKO防衛を果たす確率も決して低くはないとみる。天才対天才というカードだけに、凡人の想像もつかないような展開になる可能性もある。

 ともにスピードがあるだけに、瞬き厳禁の試合といえる。

ゴロフキンKOで陰り払拭、V20に花を添えるか


 ミドル級のトップ戦線は風雲急を告げる状況ではあるものの、その主役がWBAスーパー王座とWBC王座、IBF王座を持つ3団体統一王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)であることは誰もが認めるところだ。そのゴロフキンが5日(日本時間6日)、米国カリフォルニア州カーソンで1階級下のWBC世界スーパーウエルター級1位、バーネス・マーティロスヤン(32=アルメニア/米)の挑戦を受ける。ゴロフキンが勝てば通算20度目の防衛となる。

 04年アテネ五輪ミドル級で銀メダルを獲得しているゴロフキンは、プロでは38戦37勝(33KO)1分の戦績を残している。8年前にWBAの暫定王座を獲得し、その後、正王者からスーパー王者に昇格した。この間にWBC王座とIBF王座も手に入れている。

 17連続KO防衛を含む通算19度の防衛を果たしているが、直近の2試合は勝負が判定まで持ち込まれており、少なからず陰りが見え始めている。WBAのレギュラー王者で近い将来の対戦を希望している村田諒太(32=帝拳)の言葉を借りるならば「魔法が解けた状態」といえる。

 本来ならば、ゴロフキンは昨年9月に分のいい引き分けという結果に終わったサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)との再戦に臨むはずだった。しかし、ドーピング違反が発覚したアルバレスが試合1カ月前になって対戦を辞退したため、マーティロスヤンと対戦することになった経緯がある。試合地もネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナからカリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センターに変更されている。

 アルバレスの代役を務めることになったマーティロスヤンは、アマチュア時代にゴロフキンと同じアテネ五輪にウエルター級米国代表として出場したことがある。18歳でプロデビューし、13年間に40戦36勝(21KO)3敗1分の戦績を残している。スーパーウエルター級で2度の世界挑戦を経験しているが、まだ目標を達成してはいない。相手によって戦法や戦術を変えることのできる穴のない選手で、スピード、パワー、テクニック、タフネスなど世界レベルでみて平均以上の戦力を備えた選手といえる。

 しかし、16年5月の世界戦で判定負けしたあとは活動休止状態が続いており、今回が2年ぶりのリングとなる。「いつ試合が決まってもいいように常にベストのコンディションを保っていた」とマーティロスヤンは言うが、2年のブランクはプラス材料とはいえない。また、身長(182センチ)では王者を上回っているものの体のフレームでは劣っており、25対1という厳しいオッズは仕方ないところといえる。

 ゴロフキンは「バーネスのことはアテネ五輪のときから知っている。彼は紳士で強い選手なので厳しい試合になることを覚悟している」と警戒している様子だが、序盤から積極的にプレッシャーをかける展開に持ち込むものと思われる。そのうえで距離を潰して中盤あたりで仕留めてしまうのではないだろうか。

 KOでV20に花を添える可能性が高いが、もしもゴロフキンがマーティロスヤンに敗れるようなことがあれば、ミドル級トップ戦線は大混戦状態に陥りそうだ。

目が離せないミドル級トップ戦線左右する注目ファイト


 15日に村田諒太(32=帝拳)がエマヌエーレ・ブランダムラ(38=イタリア)を8回TKOで下してWBA世界ミドル級王座の初防衛戦を果たしたが、その試合を含め4月から5月にかけてミドル級トップ戦線を左右する注目ファイトが続いている。5月5日(日本時間6日)には頂点に君臨するゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)の通算20度目の防衛戦が控えており、目が離せない状況になってきた。

 村田の初防衛戦を含め、以下のように4週連続でミドル級のトップ選手たちのサバイバル戦が組まれている。(試合日はいずれも日本時間)

★4/15@日本:WBAタイトルマッチ

〇村田諒太(帝拳) 8回TKO ●ブランダムラ(イタリア)

★4/21@米国:WBC暫定王座決定戦

〇ジャモール・チャーロ(27=米) 2回KO ●ウーゴ・センテノ(27=米)

★4/28@米国:WBA挑戦者決定戦 ダニエル・ジェイコブス(31=米)vsマシエイ・スレッキ(28=ポーランド)

★5/5@米国:WBAスーパー、WBC、IBFタイトルマッチ ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)vsバーネス・マーティロスヤン(31=アルメニア/米)

 21日に行われたWBC暫定王座決定戦は、ゴロフキンがサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)とのスーパーファイトに臨むことになっていた(ドーピング違反のアルバレスが挑戦を辞退)ため、待たされるランカーたちのために設けられたもので、大方の予想どおりチャーロが戴冠を果たした。チャーロは元IBF世界スーパーウエルター級王者でもあり、これで2階級制覇を成し遂げたことになる。戦績は27戦全勝(21KO)。村田と同じ183センチの長身で、スピードと強打を併せ持った実力者だ。ゴロフキン、アルバレス、村田、WBO王者のビリー・ジョー・サンダース(28=英)らを差し置いて、一部の関係者やファンの間では「隠れた最強選手」との声もある。

 28日に米国ニューヨークで行われるジェイコブス対スレッキのWBA挑戦者決定戦にも注目が集まっている。特に元王者のジェイコブスは35戦33勝(29KO)2敗の戦績を誇る強打者で、骨肉腫を克服してリングに復帰、世界王座に上り詰めた「ミラクルマン(奇跡の男)」としても知られる。26戦全勝(10KO)のスレッキは侮れない相手だが、パンチ力と経験値で勝るジェイコブスが指名挑戦権を獲得するとみられている。ジェイコブスは昨年3月、ゴロフキンに惜敗しており、再戦の権利を主張することになりそうだ。その一方、ゴロフキンとの対戦を待たされるような状況になった場合、標的を村田に変える可能性もあるだけに動向に注目していきたい。

 そして、5月5日にはミドル級トップ戦線の主役でもあるゴロフキンが登場する。<次回につづく>

ヘビー級王座統一戦は来春か 簡単には決まらない事情も


 ヘビー級のWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を持つアンソニー・ジョシュア(28=英)と、WBC王者のデオンタイ・ワイルダー(32=米)の4団体王座統一戦が期待されているが、そんななか両陣営が早くも交渉の駆け引きを始めている。21戦全勝(20KO)のジョシュア、40戦全勝(39KO)のワイルダー。最重量級の英米決戦は来春が濃厚とみられている。

 この3月、統一戦に向けて両者は難関とみられた第一関門を突破した。3日、ワイルダーは元WBA暫定王者のルイス・オルティス(38=キューバ/米)と対戦し、ダウン寸前のピンチを乗り切って10回TKO勝ちを収めた。これで7度目の防衛戦すべてKO(TKO)で片づけたことになる。戴冠試合が判定勝ちだったためデビューからの連続KO勝ちは32で止まったが、世界戦で再び倒しまくっている。身長201センチ、オルティス戦での体重は約97キロと細身の体格だが、パンチにはスピードがあって破壊力もある。以前は耐久力やスタミナに疑問を投げかける関係者やファンもいたが、オルティス戦では両方とも問題ないことを証明した。

 ワイルダーが知名度と評価を上げたのに対し、31日にWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)との統一戦に臨んだジョシュアは、勝ったもののアピールに欠ける内容だった。プレッシャーをかけ続けながら危なげなくポイントを稼いだ末の大差の判定勝ちで、豪快なKOを期待したファンは肩透かしをくらったかたちとなった。それでも抜群の安定感をみせており、評価を落とすことはなかった。デビュー戦からの連続KO勝ちは20で止まったが、「ボクシングだから、こういうこともある。大事なのは私が3団体の統一チャンピオンになったことだ。ワイルダー、私と戦おう」とリング上からライバル王者に対戦を呼びかけた。

 両陣営は4団体王座の統一戦に向け下交渉を開始している。現時点で主導権を握っているのは、人気に加え3本のベルトを持つジョシュアだ。すでに報酬に関してはジョシュアが6、ワイルダーが4という比率で分配されることに両陣営が合意しているという。こうしたなか3団体王者陣営は先制打としてWBC王者に1250万ドル(約13億3700万円)の報酬を提示した。これに対しワイルダー陣営は「私たちの見積もりでは5000万ドル(約53億円)の報酬が見込まれているのに、その金額は解せない。私たちを軽視するのならばワイルダーは別の相手と戦うことになる」として、2年7カ月ぶりに復帰する元3団体王者のタイソン・フューリー(29=英)の名前を出してライバル陣営を牽制している。ジョシュア陣営も「提示した条件がのめないのならばジョシュアは別の相手と防衛戦を行う」と、こちらも譲るつもりはなさそうだ。

 ただし、これは両陣営の軽いジャブの交換とみられており、本格的な交渉はこれからということになる。英米対決だけに開催地や放送するテレビ局の問題もあり、そう簡単にスーパーファイトが決まるとは思えない。8月か9月に両者が1試合ずつを挟み、来年3月か4月に頂上決戦が実現、という可能性が最も高そうだ。

暫定王座の増加はボクシングの将来を危うくする


 王者が負傷や病気のために戦線離脱した場合に設けられることが多い「暫定王座」は、一時期は減少傾向にあったが、今年に入って再び増加している。善用すれば問題はないシステムだが、ビジネスを優先して利用した場合は大きなマイナス効果を生むリスクもあるだけに懸念する声は多い。

 英語で「INTERIM CHAMPION(インテリム・チャンピオン)」と表記される暫定王者の制度は、負傷した世界王者の留守を預かる存在として1980年代に設けられた。日本では90年代前半に網膜裂孔、網膜剥離に罹患したWBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎(大阪帝拳)や、対戦相手が決定戦を経たうえでその肩書を得てファンの間に認知されるようになった。

 この制度は負傷やトラブルなどに遭遇した王者に時間的な猶予を与えて救済するだけでなく、イベントも保護するという点で有効なシステムだが、一方でビジネスを優先するあまり悪用されるケースも目立った。特にWBAでは一時期、17階級のうち常時10階級以上で暫定王者が存在するという事態に陥ったほどだ。これに加えて「スーパー王者」や「休養王者」なども存在するため、収拾がつかない状況に陥りつつあった。WBAは「暫定王者は世界ランク最上位者という扱い」と弁明したが、ベルトが授与されたうえ防衛戦も認められるとあっては説得力に乏しいといわざるを得ない。

 こうしたなか数年前、日本は「WBAの暫定王座については世界王座と認めない」という方針を打ち出して自主規制に乗り出した。こうした圧力が効いたのかWBAは2年前に「世界王者は1階級にひとり」という当たり前の方針を打ち出し、団体内の統一戦を推し進めた。そのためか現在のWBAの暫定王者は4人まで激減している。

 しかし、この3月にはバンタム級で新たな、そして不可解な暫定王者が誕生、波紋を投げかけている。WBAのバンタム級にはスーパー王者としてライアン・バーネット(25=英)がおり、3月31日に指名挑戦者を相手に初防衛を果たしたばかりだ。また、いわゆるレギュラー王座には6度防衛中のジェイミー・マクドネル(32=英)が君臨している。マクドネルは5月25日に井上尚弥(25=大橋)の挑戦を受けることになっている。こうしたなかで暫定王座を設ける必然性はどこにも見当たらない。

 似たようなことはWBC、IBF、WBOでも起こっている。現在、主要4団体で合計10人以上の暫定王者が存在しており、この先もWBOのフェザー級やWBCのウェルター級とミドル級などで暫定王座決定戦が予定されている。増加傾向に拍車がかかっている感がある。

 ヘビー級やクルーザー級などで王座統一が進む一方で、無意味な暫定王座を頻発するという矛盾。この状況に歯止めをかけないと、ボクシングの将来そのものが危うくなってしまうのではないかと危惧している。

ヘビー級4団体王座統一も、壁を越えた王者同士の対決次々と


 昨年の夏あたりから同じ階級の世界王者同士が統一戦で対戦したり、クラスの異なる世界王者同士が拳を交えたりといったケースが目立つ。WBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)の主要4団体が17階級で世界王者を認定している現在、単純計算で68人もの「世界一」が存在するわけだが、そんななか王者同士の対戦は歓迎すべき状況といえる。誰が一番強いのか、どちらが強いのか、そんな声に応える試合は今後も増加していきそうだ。

 昨年12月には米国ニューヨークで五輪連覇の実績を持つ世界王者同士の対戦が実現し、WBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)が、2階級下のWBAスーパーバンタム級王者、ギジェルモ・リゴンドー(37=キューバ/米)に6回終了TKO勝ちを収めた。

 大晦日には東京でライトフライ級の王座統一戦が行われ、WBA王者の田口良一(31=ワタナベ)がIBF王者のミラン・メリンド(30=比)を終盤に引き離して判定勝ち、2団体王者になった。

 今年に入り、王者同士の対決は一気に増加した。ヘビー級の次に重いクルーザー級では大規模の賞金トーナメントが行われていることもあり、1月末にWBC王者対WBO王者、2月初めにWBA王者対IBF王者という2カードが続けて行われた。勝者同士の決勝戦、つまりWBC&WBO王者のオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)対WBA&IBF王者、ムラト・ガシエフ(24=露)の4団体王座統一戦は5月に予定されている。

 3月にはWBCライト級王者のミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)が、1階級上のIBFスーパーライト級王者、セルゲイ・リピネッツ(29=カザフスタン/露)に挑み、ダウンを奪って判定勝ちを収めた。この勝利でガルシアは4階級制覇を達成した。

 そして31日(日本時間4月1日)にはヘビー級でも王者同士の対決が実現した。WBAスーパー王座とIBF王座を持つアンソニー・ジョシュア(28=英)がWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)を12回判定で下して3団体の王座をまとめた。21戦全勝(20KO)ジョシュアは今秋か来春には40戦全勝(39KO)のWBC王者、デオンタイ・ワイルダー(32=米)との頂上決戦を計画している。ヘビー級の4団体王座が統一されれば、1988年にWBOが新設されてから30年で初のこととなる。

 このほか、今週末4月7日(日本時間8日)にはスーパーウエルター級でもWBAスーパー王者のエリスランディ・ララ(34=キューバ/米)対IBF王者、ジャレット・ハード(27=米)の統一戦が組まれており、1カ月後の5月12日にはWBCライト級王者、ホルヘ・リナレス(32=帝拳)がWBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)の挑戦を受けることになっている。

 統括団体が増えたことで世界王座の価値が目減りしてきたなか、関係者は様々な工夫を凝らして対応していく必要に迫られている。その最善策のひとつが団体や階級の壁を越えたスター選手同士の試合の実現であることは間違いない。この流れが続くことを願うばかりだ。

ジョシュアVSパーカー ヘビー級決戦生き残るのはどっちだ


 ヘビー級のWBAスーパー王座とIBF王座を保持するアンソニー・ジョシュア(28=英)と、WBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)が3団体の王座統一をかけて3月31日(日本時間4月1日)、英国カーディフで対戦する。右ストレートに一撃KOの破壊力がある20戦全KO勝ちのジョシュア、スピードを身上とする24戦全勝(18KO)のパーカー。3つのベルトを手にするのは?

 現在、主要4団体のヘビー級王座の持ち主は以下のようになっている。

◆WBAスーパー王者:ジョシュア

◆WBAレギュラー王者:マヌエル・チャー(33=レバノン/シリア)

◆WBC王者:デオンタイ・ワイルダー(32=米)

◆IBF王者:ジョシュア

◆WBO王者:パーカー

 上記4選手以外ではルイス・オルティス(38=キューバ/米)が王者と同等の力量を持っているとみられていた。そのため別路線を行くチャーを除くジョシュア、ワイルダー、パーカー、オルティスが「ヘビー級4強」という括りになっていた。そんななか3月3日にワイルダーがオルティスを10回TKOで撃退し、最終決戦に向け準決勝に相当する試合を勝ち抜いた。

 今回はもう一方のブロックでジョシュアとパーカーが互いの王座をかけて拳を交えるわけだ。もちろんワイルダーはリングサイドで観戦することになっている。

 12年ロンドン五輪スーパーヘビー級金メダリストのジョシュアはプロでも2年半で世界王座に駆け上がり、元王者のウラジミール・クリチコ(ウクライナ)を下すなど4度の防衛を果たしている。身長198センチ、リーチ208センチ、体重115キロという恵まれた体から繰り出す正確な左ジャブ、破壊力抜群の右ストレートが主武器の正統派の強打者だ。最近は接近戦で効果的なアッパーを繰り出すなど攻撃の幅を広げている。

 一方のパーカーは身長193センチ、リーチ193センチ、体重は110キロ前後で、体格ではジョシュアに及ばない。その代わり足をつかって距離やタイミングを計るボクシングができ、機動力という点ではライバル王者の上を行く。フルラウンドを戦いきった経験のないジョシュアに対し、パーカーは4度も12ラウンドを戦いきっており、スタミナにも自信を持っている。「ジョシュアは正面にいる相手には強いが、左右に動かれると対応が遅れる」と相手の弱点を指摘している。

 分かりやすくいえばジョシュアのパワーが勝るのか、それともパーカーのスピードが試合を支配するのかという構図だが、実際はそんな単純な戦いにはならないだろう。ジョシュアは相手の速さに対応するため前戦よりも6キロほど体重を絞って試合に臨むとしており、このところ3戦連続で判定勝負になっているパーカーにも右ストレートという決め手があるからだ。

 ともに左ジャブで探りを入れるスタートになりそうだが、徐々にジョシュアが圧力をかけ、パーカーが動きながら迎撃する展開が予想される。13対2というオッズが出ているようにパワーに加え地の利もあるジョシュアが有利だが、総合力には数字ほどの差はない。パーカーが接戦に持ち込んで終盤に抜け出す可能性もある。

いまや一大勢力、旧ソ連勢が世界的に注目される理由


 今月10日、米国テキサス州サンアントニオで行われたWBAスーパーライト級王座決定戦でキリル・レリク(28=ベラルーシ)が勝利を収め、同国出身者としては史上2人目の世界王者になった。このほか、全階級を通じて最も高い総合評価を得ているWBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ/米)、ミドル級王座を19度防衛中のゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)ら、旧ソビエト連邦(ソ連)から独立した国出身の現役世界王者は9人もいる。いまや世界的にみても一大勢力といえる。今後、その数と勢いはさらに伸びそうだ。

 旧社会主義体制下のソ連ではプロスポーツは原則として禁止されていたが、1991年に国が崩壊して独立国家が相次いでから様相は一変した。90年代にはロシア出身のユーリ・アルバチャコフやコンスタンチン・チュー、キルギス出身のオルズベック・ナザロフらが世界王座を獲得してパイオニアとなった。これにウクライナ出身のビタリ&ウラジミールのクリチコ兄弟がヘビー級王座を獲得して続いた。ただし、ユーリとナザロフが日本、チューがオーストラリア、クリチコ兄弟がドイツを活動拠点としていたこともあり、まだ世界的な勢力と呼ぶには早い印象があった。

 そんななかゴロフキンが12年に米国進出を果たし、また「クラッシャー(破壊者)」という分かりやすいニックネームのライトヘビー級王者、セルゲイ・コバレフ(露/米)の試合も米国の大手ケーブル・ネットワークで放送されるようになった。前後してドイツのマーケットが規模縮小したこともあり、旧ソ連勢の米国進出に拍車がかかったといえる。

 ショーマンシップという点で物足りなさが残ったのは事実だが、彼らは実力でそんな声を封じていった。ゴロフキンは連続KO勝ちで世界的な注目を集め、コバレフも3団体の王座を統一してアンチの口を封じたのだ。

 プロモーターもトップアマたちとの契約に動いた。そんななかで期待どおりの活躍をみせているのがロマチェンコだ。いまやボクシング界の顔ともいえる存在になっている。

 旧ソ連出身の世界王者の数を同じ3月期で5年おきに見てみると、1998年=2人、2003年=3人、2008年=6人、2013年=7人、2018年=9人(暫定王者を除く)と確実に増加している。ゴロフキンやロマチェンコ、コバレフ、アルツール・ベテルビエフ(露)のように米国やカナダを活動拠点にする人気者がいる一方、ムラト・ガシエフ(露)のように自国に留まっている王者がいるのも近年の特徴だ。また、ベラルーシ、キルギスに加え、今年2月にはアゼルバイジャン国籍の世界王者が誕生するなど出身国の幅も広がっている。

 こうした傾向は今後も続きそうだ。2年前のリオデジャネイロ五輪でウズベキスタンが金メダル3個、銀メダル2個、銅メダル2個を獲得し、カザフスタンも金1、銀2、銅1という実績を残している。すでにそのなかの数人はプロで活動しており、近い将来、トップ戦線に浮上してくるとみられているからだ。

 世界を席巻する旧ソ連勢。さらなるスターの誕生に期待したい。

この春注目 風雲急を告げるバンタム級トップ戦線


 ルイス・ネリ(23=メキシコ)の計量失格とWBC王座剥奪、そして資格停止処分、山中慎介(35=帝拳)の2回TKO負けと引退表明。その5日後には井上尚弥(24=大橋)が3階級制覇を狙って転向-と、このところ53・5キロを体重上限とするバンタム級に関する話題が目立つ。これらは日本関連のニュースだが、世界をみてもこの階級は風雲急を告げる状況になっている。

 主要4団体のうちWBCはネリの王座剥奪にともなって空位になり、IBF王座も3月5日発表のランキングで空位になった。これはWBAスーパー王者でもあるライアン・バーネット(25=英)がIBF王座を返上したためだ。この2団体の王座決定戦は現時点では決まっていない。バーネットは3月31日、元WBA暫定王者のヨンフレス・パレホ(31=ベネズエラ)を相手に自国でWBAスーパー王座の防衛戦を行うことになっている。パレホ(24戦21勝10KO2敗1分)は軽量級の層が厚い中南米で活躍している実力者だが、18戦全勝(9KO)と勢いのあるバーネットに相手国で勝つのは難しいとみられている。

 WBAのレギュラー王座にはジェイミー・マクドネル(31=英)が君臨している。14年5月の戴冠から4年近い在位を誇り、この間に6度の防衛を果たしている安定王者だ。バンタム級では珍しい178センチの長身ボクサーで、WBO王者だった亀田和毅(26=現協栄)にも2度競り勝っている。戦績は33戦29勝(13KO)2敗1分。このマクドネルに5月25日、東京・大田区総合体育館で挑むことになったのが井上だ。プロ6戦目でライトフライ級、8戦目でスーパーフライ級王座を獲得した「モンスター」は、15戦全勝(13KO)と飛ぶ鳥を落とす勢いにある。長身王者の懐に潜り込んで左ボディブロー一閃、鮮やかなKO勝ちで3階級制覇、という映像が目に浮かぶようだ。オッズも7対1で井上有利と出ている。

 こうしたなかWBAは4位のステファン・ヤング(29=米 20戦17勝7KO3分)と、5位のレイマルト・ガバリョ(21=比 18戦全勝16KO)に挑戦者決定戦を命じている。試合は今月23日、米国フロリダ州ハリウッドで行われると予定だ。

 WBO王座にはゾラニ・テテ(30=南ア)が君臨している。この長身サウスポーは昨年11月の初防衛戦で11秒KOという世界戦史上最短KO勝ちを収めた強打者だ。バンタム級では井上の最大のライバル的存在といっていいだろう。4月21日に英国で元2階級制覇王者のオマール・ナルバレス(42=亜)を相手にV2戦に臨む。技巧派サウスポーのナルバエスは14年12月、井上に4度のダウンを奪われて2回KO負けを喫したが、以後は5連勝(2KO)を収めている。この試合で間接的に井上とテテの力関係を計ることができそうだ。テテは29戦26勝(21KO)3敗、勝てば3階級制覇となるナルバエスは52戦48勝(25KO)2敗2分。

 3月23日=ヤング対ガバリョ、3月31日=バーネット対パレホ、4月21日=テテ対ナルバエス、そして5月25日=マクドネル対井上。この春はバンタム級トップ戦線から目が離せない。

IBF・Sライト級選手権、ガルシア無敗で4階級制覇なるか


 10日(日本時間11日)、米国テキサス州サンアントニオで行われるIBF世界スーパーライト級タイトルマッチ、王者セルゲイ・リピネッツ(28=カザフスタン/露/米)対ミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)の一戦が注目を集めている。主役はWBC世界ライト級王座を持ったまま1階級上の王者に挑むガルシアだ。勝てば無敗のまま4階級制覇を達成することになる。

 ガルシアは元IBF世界スーパーフェザー級王者、ロベルト・ガルシアの12歳下の弟としても知られ、現在はその兄と父親の指導を受けている。アマチュア時代は二番手、三番手に甘んじたが、プロでは12年のキャリアで37戦全勝(30KO)というみごとな戦績を残している。13年にフェザー級とスーパーフェザー級で世界王座を獲得したあとプロモーターとの確執でリングから遠ざかった時期もあったが、2年半のブランク後に復帰。昨年1月に現在のライト級王座を獲得し、3階級制覇を成し遂げた。速くて正確な左ジャブを多用して相手をコントロールし、切れのある右ストレートで仕留める正統派の強打者だ。

 そんなガルシアの挑戦を受けるリピネッツはカザフスタンの出身で、ロシア国籍を持っている。14年のプロデビューもロシアだったが、いまは米国カリフォルニアを活動拠点としている。現在の王座は昨年11月に近藤明広(一力)との決定戦を制して獲得したもので、これが初防衛戦となる。初めての大舞台となった近藤戦では慎重に戦いすぎたこともあって消極的な姿勢が目立ったが、本来は頑丈な体を利して圧力をかける攻撃型だ。もともとリピネッツはキックボクシングの選手で、そのあとでアマチュアボクシングに転じ、4年前にプロデビューした経歴を持つ。試合数は13戦(全勝10KO)と少ないが、KO率は77パーセントと高く、ガルシアの81パーセントと比べても引けをとらない。

 もともとこの試合は2月10日に予定されていたが、1月中旬にリピネッツが右手を痛めたため1カ月延期された経緯がある。それを含め、近藤戦よりも数倍のプレッシャーがかかると思われるリピネッツにとって好材料は見当たらないカードともいえる。それでもガルシアは「リピネッツは体も大きくて若い。私に勝つために全力でぶつかってくると思う」と警戒している。

 近い将来、ガルシアはWBA世界ライト級王者のホルヘ・リナレス(帝拳)やWBO世界スーパーフェザー級王者、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ/米)らとの対戦が期待されている。そうしたスーパーファイトに向け、存分にアピールすることができるかどうか注目される。

 オッズは10対1でガルシア有利と出ているが、これは開きすぎのように思える。リピネッツが本来の攻撃的なボクシングをしてガルシアの野望を砕く可能性もある。

ワイルダーかオルティスか ヘビー級無敗対決に注目


 3月3日(日本時間4日)、米国ニューヨークのバークレイズ・センターで行われるWBC世界ヘビー級タイトルマッチが注目を集めている。3年間に6連続KO防衛を果たしているデオンタイ・ワイルダー(32=米)に、「キングコング」の異名を持つ元WBA暫定王者、ルイス・オルティス(38=キューバ/米)が挑む一戦だ。ワイルダーが39戦全勝(38KO)、サウスポーのオルティスが30戦28勝(24KO)2無効試合。KO決着が約束された試合といえる。

 身長201センチ、体重104キロ前後という細身のワイルダーは、アマチュア時代には08年北京五輪ヘビー級(91キロ以下)で銅メダルを獲得している。その3カ月後にプロに転向し、いきなり32連続KO勝ちを収めて注目された。慎重なマッチメークの助けがあったことは事実だが、すべて4回以内に倒してしまったのだから驚きだ。長身から打ち下ろす右ストレートに一発KOの威力を秘めている攻撃型で、スピードもある。相手がダメージを受けたと察知したら荒っぽい左右のフックを叩きつけて倒してしまう。世界王座を獲得した試合で初めて12回の長丁場を経験したが、スタミナも問題なかった。その後、6度の防衛を重ねてきたが、どの試合もジャッジの手を煩わせることなくKOで終わらせてきた。

 対するオルティスは選手層の厚いキューバで368戦349勝19敗という豊富なアマチュア・キャリアを積み、30歳でプロに転向した。15年にWBA暫定王座を獲得したが、プロモーターとの摩擦などもあって1年足らずで返上。以来、王座挑戦の機会を待ち続けてきた。本来ならば昨年11月にワイルダーに挑むはずだったが、自身のドーピング違反のためキャンセルになり、今回、あらためて挑戦することになった。こちらもヘビー級を代表する強打者だが、単なる一発屋ではなく、タイミングのいいカウンターなど攻防両面のテクニックを備えたサウスポーの万能型といえる。

 試合が決まった当初のオッズは7対4(ワイルダー有利)と接近していたが、試合が近づくにつれて差が開き、試合10日前時点では11対4となっている。ワイルダーの勢いやオルティスの年齢が数字に反映されているのかもしれない。

 しかし、無敗同士、しかも100キロを超す最重量級の強打者同士のカードだけに、一発でけりがつく可能性もある。予断は禁物といえる。10月に33歳になるワイルダーは3月3日の決戦を控え、「3に縁があるので、試合も3回ぐらいで終わるだろう。もっと早いかもしれない」とKO宣言している。オルティスも「ワイルダーはお喋りが過ぎる。私を倒すって? やってみればいいさ。逆に彼がキャンバスを這うことになるだろう」と舌戦でも譲らない。

 現在、ヘビー級はワイルダーとオルティス、WBAスーパー王座とIBF王座を持つアンソニー・ジョシュア(28=英)、そしてWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド/米)が4強といわれている。年内に期待される最終統一戦に向け、3月31日(日本時間4月1日)にはジョシュア対パーカーが組まれている。今回のワイルダー対オルティスは、準決勝第1試合という位置づけにあるわけだ。

 ワイルダーの右ストレートが炸裂するのか、それともオルティスの左カウンターが先に命中するのか-。

英雄パッキャオが牽引、更に勢い増すフィリピン旋風


 フィリピンのボクサーというと、ほとんどの人は6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(39)を真っ先に思い浮かべるだろう。その英雄に引っ張られ、このところ同国出身の軽量級選手たちの奮闘が目立つ。24日(日本時間25日)には3階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(35)と、元2階級制覇王者のブライアン・ビロリア(37)が米国カリフォルニア州イングルウッドで揃って世界戦のリングに上がる。ニエテスはIBF世界フライ級王座の初防衛戦、ビロリアはWBA世界フライ級王座決定戦に臨む。さらに3月1日には岩佐亮佑(28=セレス)の持つIBF世界スーパーバンタム級王座に同級13位のエルネスト・サウロン(28)が挑戦することになっている。さらなるフィリピン旋風が巻き起こるか。

 21世紀に入ってから、フィリピンのボクシング界は米国で大成功を収めたパッキャオに牽引されてきたといっていいだろう。パッキャオは無名の状態で渡米し、並み居る強豪をバッタバッタと倒してスーパースターの座に上り詰め、3年前のフロイド・メイウェザー(米)戦では約140億円を稼いだほどだ。

 これに続いたのがノニト・ドネア(35)だ。貧しい環境で育ち少年時代に家族で米国に移住していたドネアは、フライ級からフェザー級までの5階級で世界王座を獲得。「フィリピンの閃光」として一時代を築いた。

 24日の試合に出場するニエテス(45戦40勝22KO1敗4分)はミニマム級とライトフライ級で王座についたあと、昨年4月にフライ級王座も獲得。パッキャオ、ドネアに続いてフィリピン人として3人目の3階級制覇を成し遂げた。今回の初防衛戦では元ライトフライ級、フライ級王者のファン・カルロス・レベコ(34=亜 42戦39勝19KO3敗)の挑戦を受ける。レベコは3度の来日経験があり、井岡一翔(井岡)には2敗しているものの世界戦だけで17戦14勝(8KO)3敗という戦績を残している強豪だ。接戦が予想されるなか、ニエテスは王座を守ることができるか。

 ビロリア(45戦38勝23KO5敗2無効試合)は井岡が返上して空位になったWBA世界フライ級王座をアルテム・ダラキアン(30=アゼルバイジャン/ウクライナ 15戦全勝11KO)と争う。ビロリアはハワイ生まれだが、両親がフィリピン人で自身も生後9カ月から5歳までフィリピンで過ごしたことがある。ライトフライ級とフライ級で世界一になった実績を持ち、勝てば5年ぶりの返り咲きとなる。

 フライ級では今月4日に15連続KO勝ちを収めたばかりの比嘉大吾(22=白井・具志堅)がWBC王座に君臨している。統一戦を熱望している比嘉は24日に行われるライバルたちの試合を観戦することになっており、結果と交渉しだいではニエテス、あるいはビロリアとの対戦が現実味を帯びてきそうだ。

 その4日後にはサウロン(24戦21勝8KO2敗1分)が岩佐に挑む。スピードとテクニックを併せ持つ王者にどこまで迫ることができるか。予想は岩佐有利だが、サウロンの攻撃力は侮れない。

 前後するが、今月3日にはIBF世界スーパーフライ級王者のジェルウィン・アンカハス(26)が米国で4度目の防衛戦を行い、10回TKO勝ちを収めたばかりだ。さらに4月にはパッキャオが米国、ドネアが英国のリングに上がる予定になっている。フィリピン勢の活躍は、しばらく続きそうな気配だ。

決勝進出は誰?WBSSスーパーミドル級準決勝に要注目


 前回、賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のクルーザー級の準決勝について触れたが、今週末17日(日本時間18日)と来週末24日(同25日)には、英国とドイツでスーパーミドル級の準決勝を迎える。初戦を勝ち上がった4人ともヨーロッパの選手で、そのうち3人が英国の人気者ということもあって大きな注目を集めている。

 17日に英国マンチェスターでは、WBAスーパーミドル級スーパー王者ジョージ・グローブス(29)対元WBA世界ミドル級暫定王者クリス・ユーバンク・ジュニア(28)という英国人対決が行われる。

 グローブスは14年、当時のWBA、IBF王者カール・フロッチ(英)に再挑戦した際にはロンドンのウェンブリー・スタジアムに7万人の大観衆を集めたこともある人気選手で、昨年5月に4度目の挑戦で念願の世界王座を獲得。10月のWBSS初戦では24戦全勝だった相手を4回にボディブローでKO、準決勝に駒を進めるとともに初防衛を果たしている。戦績は30戦27勝(20KO)3敗。

 対するユーバンク・ジュニアは元世界2階級制覇王者の息子としても知られる。話題先行型ではなく、技量も高く評価されている実力派で、15年には史上6例目の親子世界王者になっている。この3年間は8戦全勝(7KO)と倒しまくっている。WBSS準々決勝では初回に右アッパーでダウンを奪い、3回には左フックで戦慄的なKO勝ちを収めて評価を上げた。戦績は27戦26勝(20KO)1敗。勝てば2階級制覇となる。

 グローブスは「彼は自分が勝つ運命にあると信じているようだが、それは間違いだ。彼の時代なんか来やしないよ」とライバルを挑発しているが、オッズは3対2でユーバンク・ジュニア有利と出ている。

 その1週間後の24日、ドイツのニュルンベルクではWBC1位、WBO2位のカルム・スミス(27=英)と、元WBA、WBOライトヘビー級王者ユルゲン・ブレーマー(39=独)が対戦する。こちらはスミスの評価が高く、6対1のオッズで有利とみられている。

 スミスは英国では有名な「スミス4兄弟」の末弟で、3男(リアム・スミス)に続く兄弟世界王者の期待を背負っている。191センチの長身から繰り出す鋭い右ストレートが主武器で、5年のキャリアで23戦全勝(17KO)をマークしている。無冠ながらスーパーミドル級最強の声もあるほどだ。

 自国開催のアドバンテージを持つブレーマーは、ライトヘビー級から階級を落としてトーナメントに参戦。初戦では22戦全勝のホープを下して準決勝に上がってきた。18年以上のキャリアで52戦49勝(35KO)3敗の戦績を残している連打型のサウスポーだ。

 この4人のうち誰と誰が決勝に進出するのか。ユーバンク・ジュニアとスミスの下馬評が高いが、強靭なハートを持つグローブス、経験豊富なブレーマーが予想を覆す可能性もある。17日と24日、ヨーロッパで行われる2試合に要注目だ。

WBSSで盛り上がるクルーザー級とスーパーミドル級


 3日(日本時間4日)、ロシアのソチ近郊アドレルで行われたクルーザー級世界王座統一戦で、IBF王者のムラト・ガシエフ(24=露)がWBA王者ジュニエル・ドルティコス(31=キューバ/米)に12回TKO勝ちを収め、2団体統一王者になった。この試合は重量級の賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の準決勝でもあったため、勝ったガシエフは5月にWBC、WBO王者のオレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)と決勝で対戦することになった。ヘビー級の次に重いクルーザー級は比較的スポットが当たることの少ないクラスだが、このトーナメントが実施されたことで盛り上がりをみせている。

 WBSSはヨーロッパと米国のプロモーターが共同で企画、プロデュースして昨年9月にスタートした。実施階級はクルーザー級とスーパーミドル級の2クラスに限定されている。各階級に8人のトップ選手がエントリーし、準々決勝、準決勝、決勝を行って覇権を争うという勝ち抜き戦だ。2階級の賞金総額が5000ドル(約55億円)と高額であるためクルーザー級は主要4団体の王者たちが揃って参加。初戦となる準々決勝では4王者全員が防衛を果たすかたちで勝ち上がり、1月27日にはWBOのウシクがWBC王者のマイリス・ブリエディス(33=ラトビア)に判定勝ちを収めて決勝に駒を進めている。ガシエフはもう一方のブロックを勝ち上がったわけだ。

 12年ロンドン五輪ヘビー級金メダリストでもあるサウスポーのウシクは14戦全勝(11KO)の技巧派強打者で、すでに4度の防衛を果たしている。対するガシエフも27戦26勝(19KO)1無効試合と無敗をキープしている。この両者による決勝は5月11日、サウジアラビアのジェッダで行われる。どちらが優勝賞金1000万ドル(約11億円)と「モハメド・アリ・トロフィー」を手にするのか。

 一方、スーパーミドル級の方も佳境に入ってきた。準々決勝を勝ち上がったWBAスーパー王者のジョージ・グローブス(29=英)と、元WBA世界ミドル級暫定王者のクリス・ユーバンク・ジュニア(28=英)が今月17日に英国マンチェスターで対戦する。その1週間後の24日にはWBC1位、WBO2位のカルム・スミス(27=英)が、元WBA&WBO世界ライトヘビー級王者のユルゲン・ブレーマー(39=独)とドイツのニュルンベルクで拳を交える。戦績はグローブス=30戦27勝(20KO)3敗 ユーバンク・ジュニア=27戦26勝(20KO)1敗 スミス=23戦全勝(17KO) ブレーマー=52戦49勝(35KO)3敗。

 世界挑戦を先延ばしにして参戦したスミスとユーバンク・ジュニアの下馬評が高いが、はたして両者は順当に決勝に駒を進めることができるのか。こちらも要注目だ。

アンカハスは「パッキャオ2世」の域に辿り着けるか


 WBO世界スーパーフライ級王者、井上尚弥(24=大橋)の対抗王者でもあるIBF同級王者、ジェルウィン・アンカハス(26=比)が2月3日、9位のイスラエル・ゴンサレス(メキシコ)を相手に米国テキサス州コーパスクリスティで4度目の防衛戦に臨む。井上との統一戦プランが浮上したこともあったアンカハスは、元6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(39=比)がプロモートするサウスポーの強打者で、昨秋にはそのパッキャオも契約している米国の大手プロモート会社、トップランク社と提携。今回の試合を機に本場で「パッキャオ2世」として売り出すことになった。

 アンカハスは09年に17歳でプロデビューしてから9年、30戦28勝(19KO)1敗1分の好戦績を残している。この間、16年9月にはIBF世界スーパーフライ級王座を獲得。昨年は自国を離れマカオ(中国特別行政区)、ブリスベン(オーストラリア)、ベルファスト(英国北アイルランド)で防衛戦を行い、7回終了TKO、7回TKO、6回TKOで3試合とも圧勝した。日本のファンには、7月のV2戦で帝里木下(千里馬神戸)を圧倒したすえ、ボディブローをヒットして7回TKOで退けた試合が記憶に新しいはずだ。このときはパッキャオの防衛戦の前座だった。

 アンカハスはパッキャオと同じサウスポーで、ボディと顔面の打ち分けを得意としている。本家ほどの荒々しさはないが、試合はなかなかエキサイティングだ。KO率は63パーセントと際立って高いわけではないが、直近の15戦(全勝)では14KOと倒しまくっている。

 こうした活躍と好戦的な戦闘スタイルが評価され、パッキャオが契約しているトップランク社と提携することになった。ボブ・アラム・プロモーターは「すでにアンカハスは十分な力を持っているが、まだまだ伸びる可能性がある。米国で実績を積み上げれば軽量級のパッキャオになるだろう」と大きな期待を寄せている。こうした一方、一時は2月下旬に統一戦を行うプランが浮上していた井上にとっては、歯噛みしたくなる思いが残ったはずだ。

 アンカハスの米国進出初戦の相手、ゴンサレスは22戦21勝(8KO)1敗の戦績を残しているが、強豪との対戦は少ない。王者にとっては圧勝がノルマの試合といえそうだ。

 名実ともに「パッキャオ2世」の域に辿り着けるのかどうか。アンカハスの今後に注目していきたい。

リナレス近未来の大舞台へ、勝利&内容問われるV3戦


 WBA世界ライト級王者、ホルヘ・リナレス(32=帝拳)の3度目の防衛戦が27日(日本時間28日)、同級15位のメルシト・ヘスタ(30=比/米)を相手に米国カリフォルニア州イングルウッドで行われる。すでに3階級制覇を成し遂げているリナレスにとっては通過点と位置づけられる試合だが、ビッグマッチのプランも浮上しているだけに取りこぼしは許されない。スピードとテクニックでサウスポーの挑戦者を圧倒することができるか。

 リナレスは14年12月にWBC世界ライト級王座を獲得し、フェザー級、スーパーフェザー級に続き3階級制覇を達成。2年前、そのWBC王座のV3戦を前に拳を負傷したため“休養王者”に格下げされたが、復帰戦ではWBA王座を獲得して鬱憤(うっぷん)をはらした。昨年3月には前王者を返り討ちにし、9月には12年ロンドン五輪金メダリストを退けた。いずれも12回判定勝ちだったが、2試合ともダウンを奪って貫録を示している。02年12月に日本でプロデビューを果たしてから15年、故国ベネズエラのほかメキシコ、アルゼンチン、米国、英国、パナマなど世界各地のリングに上がり46戦43勝(27KO)3敗のレコードを残している。

 そのリナレスには現WBC世界ライト級王者のミゲール・マイキー・ガルシア(30=米 37戦全勝30KO)、WBO世界スーパーフェザー級王者、ワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ/米 11戦10勝8KO1敗)らとの対戦プランが持ち上がっている。ともに世界的な知名度が高いスター選手で、彼らに勝てばリナレス自身がもう一段上のステージに上がることができる。

 そういった意味でも今回の防衛戦は、勝利はもちろんのこと内容も問われる試合といえる。挑戦者のヘスタはキャリア14年、34戦31勝(17KO)1敗2分の戦績を残しているサウスポーで、世界挑戦は2度目となる。12年12月のIBF王座挑戦は12回判定負けに終わったが、以後は6戦5勝(3KO)1分と復調している。リナレスとはスパーリングをしたことがあり「彼の戦い方は頭に入っている。難しい試合になることは覚悟しているが、何が起こるか分からないのがボクシング。勝って世界王者になる」と意気込んでいる。

 体格に加え経験値、さらにスピードやテクニックなど個々の戦力でもリナレスが上回っており防衛が濃厚とみられているが、打たれ脆い面があるだけに油断はできない。存在感を示したうえで近未来の大舞台に繋げることができるか。リナレスのV3戦に要注目だ。

初防衛戦スペンスはウエルター級サバイバルウォーズの核になれるか


 実力のあるスター選手が集結し、激しいサバイバルウォーズが展開されそうなウエルター級で核になる可能性が高いと目されているIBF王者、エロール・スペンス(28=米)が20日(日本時間21日)、米国ニューヨークで元2階級制覇王者のレイモント・ピーターソン(33=米)を相手に初防衛戦を行う。12年ロンドン五輪出場後にプロデビューし、22戦全勝(19KO)と破竹の快進撃を続けているサウスポーは、経験値の高いベテランをも撃破してしまいそうだ。

 ロンドン五輪ではウエルター級ベスト8に甘んじたスペンスだが、12年11月にプロに転向後は圧倒的な強さを見せつけている。身長177センチ、リーチ183センチとバランスのとれた体からスピードに乗ったパワフルなコンビネーションを繰り出して相手を粉砕し、見る者を魅了してしまう。ファイターが相手でも打ち負けることはなく、テクニシャンが相手でもスキルで引けをとることはない。どの距離でも戦える万能型といっていい。現在の王座は昨年5月、相手の地元でもある英国で11回KO勝ちを収めて奪い取ったもので、スタミナも度胸もある。現状に満足することなく努力を続ければスーパースターの座も夢ではない逸材だ。

 初防衛戦の相手、ピーターソンはスーパーライト級時代にWBAとIBFの2冠王者になり、ウエルター級転向後の昨年2月にはWBA王座を獲得した実績を持つ実力者で、39戦35勝(17KO)3敗1分の戦績を誇る。スペンスほどのパワーはないが、こちらも距離をとっても接近しても戦えるタイプだ。世界戦を8度経験しており、その点では王者を上回っている。

 16対1というオッズが示すように圧倒的にスペンス有利とみられているが、多くのファンや関係者の関心は、実はその先にあるといってもいいだろう。このクラスにはWBAスーパー王座とWBC王座を持つキース・サーマン(29=米)という高度安定王者がおり、下の階級からはオールマイティなテレンス・クロフォード(30=米)が上がってきて、スペンスを含めて3強時代を形成しつつある。さらにクロフォードの挑戦を受ける予定のWBO王者、ジェフ・ホーン(29=豪)、そのホーンの前の王者で6階級制覇の実績を持つマニー・パッキャオ(39=比)、元IBF王者のショーン・ポーター(30=米)、元2階級制覇王者のダニー・ガルシア(29=米)と個性的なタレントが揃っているのだ。先ごろプライベートで来日したサーマンは「すごく面白い階級だと思う。私とスペンス、クロフォードが勝ち進んで、統一戦をやればすごいことになるだろう」とライバルの台頭を歓迎している様子だった。

 年内にも実現が期待されるサーマンとの統一戦に向け、スペンスはどんな内容、どんな結果で存在感を示すのか。

シールズ初防衛戦を全米中継へ、女子ボクシング人気復活なるか


 五輪連覇後にプロ転向し、昨年8月に4戦目でWBCとIBFの女子世界スーパーミドル級王座を獲得したクラレッサ・シールズ(22=米)が12日(日本時間13日)、米国ニューヨーク州ベローナで両王座の初防衛戦に臨む。挑戦者は20戦17勝(2KO)3分の戦績を誇る元WBC女子ミドル級王者のトリ・ネルソン(41=米)。無敗対決を前にシールズは「12日から始まる今年の旅が楽しみ」と、試合が待ちきれない様子だ。

 シールズは父親の影響で11歳のときにボクシングを始め、ジュニアの大会に出場して経験を積んだ。12年の世界選手権では2回戦でポイント負けを喫したが、これがアマチュア、プロを通じて唯一の敗北だ。その年のロンドン五輪に17歳で出場すると、3試合を勝ち抜いて75キロ以下の女子ミドル級で金メダルを獲得した。

 14年の世界選手権、16年の世界選手権を制すると、16年リオデジャネイロ五輪でもミドル級で優勝、ロンドン大会に続く連覇を果たした。アマチュア戦績は78戦77勝(18KO)1敗(75戦74勝1敗説もある)。女王の名に相応しい実績といえる。

 16年11月にプロ転向を果たすと2戦目にNABF北米王座、3戦目にWBCシルバー王座を獲得。そして昨年8月には4戦目(全勝2KO)で2団体の世界王座についた。実力はもちろんのことイベントのメインに据えられ、テレビがシールズの試合を生中継するなど米国での人気と注目度は高い。

 挑戦者のネルソンは、シールズがジュニアの大会に出ていたころ(10年)に34歳でプロデビューし、7年半も無敗を保っている。この間、WBC女子ミドル級王座やマイナー団体のミドル級、ウエルター級、スーパーウエルター級、スーパーミドル級王座を獲得しており、侮れない相手といえそうだ。

 米国ではレイラ・アリ(米)やクリスティ・マーティン(米)らの活躍で女子ボクシングは90年代に一時的に米国で人気を集めたが、彼女らの引退を機に下火になっていた。現在、シールズの台頭によって再び注目されるようになりつつある。その点はシールズも十分に理解しており「私の最終目標は女子ボクシングの人気を高めること。そのためにも頑張る」と話している。今回も大手ケーブル・ネットワーク、ショータイムで試合が全米に放送される予定だ。22歳の女王の奮闘に注目したい。

2018年、実現が期待されるスーパー・ファイト


 年の初めということで、今回は2018年中に実現が期待されるスーパー・ファイト、さらに注目選手などを挙げてみたい。

 最注目カードは、ヘビー級の王者対決であろう。主要4団体のうちWBAのスーパー王座とIBF王座を保持しているアンソニー・ジョシュア(28=英)と、WBC王者デオンタイ・ワイルダー(32=米)の英米対決だ。12年ロンドン五輪スーパーヘビー級金メダリストでもあるジョシュアは、プロ転向後20戦全KO勝ちの正統派強打者で、17年4月には通算23度の防衛を誇った元王者ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)を11回TKOで下して引退に追いやっている。

 対するワイルダーは08年北京五輪のヘビー級銅メダリストで、プロ転向後は39戦全勝(38KO)という戦績を残している。現在の王座はジョシュアよりも早い15年1月に獲得し、以来、3年間に6連続KO防衛を果たしている。身長201センチ、体重102キロ前後の細身の体だが、戦いぶりはダイナミックでスリリングだ。統一戦に向け両陣営は下交渉を開始しているが、まだ駆け引きの段階といえる。ともに春に防衛戦を計画しており、それをクリアすることが前提となるが、その後、一気に対戦話が進展する可能性もあるだけに要注目だ。

 昨年のベスト・ファイトのひとつに挙げられるWBA、WBC、IBF3団体統一世界ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)対サウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)の再戦は、5月5日に実現しそうな気配だ。戴冠試合を含めて世界戦で20戦19勝(18KO)1分のゴロフキンと、スーパーウエルター級とミドル級を制覇している52戦49勝(34KO)1敗2分のアルバレス。初戦はゴロフキンが攻め、アルバレスが下がりながら効率的に迎撃する展開に終始したが、再戦では派手な打撃戦を期待したい。

 上記4人以外で注目選手をリストアップするならば、まずWBO世界スーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ/米)を挙げたい。この五輪連覇のサウスポーはプロ7戦で世界2階級制覇を成し遂げ、昨年は3試合連続で相手をギブアップさせるなど乗りに乗っている。今年はライト級への進出が予想される。

 ウエルター級のIBF王者エロール・スペンス(27=米)も、さらなる飛躍が期待される。この9連続KO中のサウスポー王者は1月20日に元2階級制覇王者レイモント・ピーターソン(33=米)と初防衛戦を行う予定だ。WBA、WBC王者のキース・サーマン(29=米)や3階級制覇を狙うテレンス・クロフォード(30=米)らとの対決が期待される。

 このほか12戦全KO勝ちでIBF世界ライトヘビー級王座についたアルツール・ベテルビエフ(32=露/カナダ)、2月に4階級制覇を狙ってIBF世界スーパーライト級王座に挑むミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)、WBC世界スーパーウエルター級王者ジャメール・チャーロ(27=米)と、双子の兄でミドル級制覇を狙うジェモール・チャーロ(27=米)にも注目したい。

 また、今年はWBA世界ミドル級王者の村田諒太(31=帝拳)をはじめとする日本のトップ選手たちの海外進出も増えそうだ。

 実りの多い年になることを祈りたい。

MVPはロマチェンコ/2017世界ボクシング界


 2017年も残り5日となったところで、今年の世界のボクシング界を大まかに振り返ってみたい。分かりやすくMVP、殊勲、敢闘、技能、新鋭といった賞に分けて活躍した選手たちを挙げてみよう。

 MVPはWBO世界スーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ/米)で問題ないだろう。WBA&IBF世界ヘビー級王者のアンソニー・ジョシュア(28=英)、スーパーライト級の4団体統一を果たしたテレンス・クロフォード(30=米)と秋までは肩を並べていたが、ロマチェンコが12月にギジェルモ・リゴンドー(37=キューバ/米)との五輪連覇対決を制して完全に抜け出した。まだプロで11戦(10勝8KO1敗)しか経験していないサウスポーのロマチェンコだが、細かく動きながら正確にパンチを当てる独特のスタイルでどこまで強く、巧くなるのか興味は尽きない。準MVPとしてジョシュアを推したい。

 殊勲賞は、全階級を通じて最も評価の高かったローマン・ゴンサレス(30=ニカラグア)を連破したWBC世界スーパーフライ級王者のシーサケット・ソールンビサイ(30=タイ)だ。3月の初戦は論議を呼ぶ判定勝ちだったが、9月の再戦では右フックでゴンサレスをキャンバスに沈めた。次点で、6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(39=比)を破ってWBO世界ウェルター級王座を獲得したジェフ・ホーン(29=豪)が続く。

 敢闘賞には、自国を離れて年間3度の防衛を果たしたジェルウィン・アンカハス(25=比)を推したい。このほかWBO世界クルーザー級王者のオレクサンデル・ウシク(30=ウクライナ)、3階級制覇を成し遂げたWBC世界ライト級王者ミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)、さらにハイレベルの相手から2度の王座防衛を果たした3団体統一世界ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)、敵地でIBF世界ウェルター級王座を獲得したエロール・スペンス(27=米)もいる。

 技能賞は、MVP候補の項で名前の出たクロフォード、7度の防衛を果たしているWBA世界スーパーウエルター級王者のエリスランディ・ララ(34=キューバ/米)、WBA世界ライト級王者ホルヘ・リナレス(32=帝拳)、そして12月にWBO世界ミドル級王座のV3を果たしたビリー・ジョー・サンダース(28=英)の4人だ。

 新鋭賞は、すでにWBC世界スーパーミドル級王座獲得を成し遂げてはいるものの21歳と若いデビッド・ベナビデス(米)と、もうひとり前IBF世界スーパーフェザー級王者のジャーボンタ・デイビス(23=米)を挙げたい。ベナビデスが19戦全勝(17KO)、デイビスが19戦全勝(18KO)と高いKO率を誇る。来年の活躍が楽しみだ。

 KO賞は、4月と10月に指名挑戦者を相手に痛烈なKO防衛を果たしたWBC世界スーパーウエルター級王者、ジャメール・チャーロ(27=米)が入った。チャーロは30戦全勝(15KO)と驚くほどKO率が高いわけではないが、このところ4連続KO勝ちとパンチが切れまくっている。

 年間最高試合は、4月に9万人を集めて行われたジョシュア対ウラジミール・クリチコ(41=ウクライナ)のWBA&IBF世界ヘビー級タイトルマッチで異論はないだろう。

 5回にダウンを奪ったジョシュアが逆に6回にはキャンバスを這い、さらに展開が変わるなか11回に再逆転となる2度のダウンを奪ってレフェリー・ストップに持ち込むというドラマチックな試合だった。引き分けに終わったゴロフキン対サウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)の3団体統一世界ミドル級タイトルマッチ、シーサケット対ゴンサレスの再戦もスリリングな試合だった。

 また今年は特別に、11月に世界戦史上最短となる11秒KO勝ちを収めたWBOバンタム級王者、ゾラニ・テテ(29=南アフリカ共和国)に「記録賞」を贈りたい。

 ロマチェンコのさらなる活躍、ヘビー級王座統一戦など、世界のボクシング界は2018年も賑やかな年になりそうだ。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。