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au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

3階級制覇か大番狂わせか NYのリングに熱視線

今年9月、39戦無敗だったWBA、WBC世界ミドル級王者のゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)を僅差判定で破って戴冠を果たしたサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)が15日(日本時間16日)、米国ニューヨークで1階級上のWBA世界スーパーミドル級王者、ロッキー・フィールディング(31=英国)に挑む。11年と16年にスーパーウエルター級王者になっているアルバレスにとっては3階級制覇を狙っての挑戦となる。大方の予想は「アルバレスのKO勝ち」だが、体格で大きく勝るフィールディングは「スーパーミドル級は私の階級だ」と強気だ。

アルバレスは身長173センチ、リーチ179センチで、72・5キロが体重リミットのミドル級でも小柄な部類に入る。その分、胸板は厚く耐久力もあるが、身長183センチ、リーチ184センチの前WBA王者、村田諒太(32=帝拳)らと比較しても体格面での不利は否めない。以前は70キロ弱のスーパーウエルター級が主戦場だったほどだ。それでも最近の3戦は74・3キロ、72・5キロ、72・3キロと72キロを超す体重で戦い、馴染んできた印象が強い。

こうしたなか9月にはゴロフキンに競り勝ち、ミドル級で2度目の戴冠を果たした。1年前の初戦ではゴロフキンの馬力に押され気味だったが、再戦では体力負けすることなく戦い抜き、自信を深めた様子だ。戴冠後、アルバレスはDAZN(ダゾーン)と「5年間に11試合、合計3億6500万ドル(約412億円)」という“驚額”の契約を結んだ。いま最も稼ぐプロボクサーといってもいいだろう。その初戦として今回のフィールディング戦が組まれたことになる。

今回の試合は、ゴロフキンにも勝ち戦績を53戦50勝(34KO)1敗2分に伸ばしたアルバレスが圧倒的有利とみられているが、これはフィールディングが世界王者でありながら知名度が低いためともいえる。身長185センチ、リーチ190センチと大柄なフィールディングは今年7月にドイツで戴冠を果たしたが、それまでは英国外で戦ったことがなかった。もちろん今回が初の米国のリングとなる。戦績は28戦27勝(15KO)1敗と高い勝率を誇るが、唯一の敗北が3度のダウンを喫して1回TKO負けで、耐久力に課題を抱えている。それでもアルバレス戦の打診を受けた際は迷わず「イエス」の返事をしたという。相手は世界的なスター選手だが、フィールディングは「彼が優れたボクサーであることは認めるが、ミドル級よりも4キロ重いスーパーミドル級では私の方が強い」と自信をみせる。長い左ジャブで突き放しておき、それをかいくぐって相手が懐に入ってきたところを得意の左右アッパーで迎え撃つつもりだ。

だが、オッズは14対1で挑戦者のミドル級王者有利と出ている。アルバレスが左右に動きながら揺さぶりをかけて飛び込み、ボディと顔面に強打を打ち分けて攻め落としてしまうとみられているのだ。

アルバレスが超大型契約の初戦を華々しく飾るのか、それともフィールディングが大番狂わせを起こすのか。15日(日本時間16日)、ニューヨークのリングに要注目だ。

ペドラサと決戦「ハイテク」ロマチェンコに死角は?

現在のプロボクシング界で17階級を通じて最も高い評価を受けているボクサー、WBA世界ライト級王者、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)が8日(日本時間9日)、米国ニューヨークでWBO同級王者のホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ)と王座統一戦を行う。今年5月、ホルヘ・リナレス(33=帝拳)にダウンを喫しながら10回に倒し返してTKO勝ち、3階級制覇を成し遂げた天才サウスポーと、「スナイパー(狙撃手)」のニックネームを持つ2階級制覇王者のペドラサ。圧倒的にロマチェンコ有利とみられているカードだが、はたして予想どおりの展開と結果になるのだろうか。

ロマチェンコは08年北京オリンピック(五輪)と12年ロンドン五輪を連覇したほか世界選手権でも2度優勝するなど、アマチュアで397戦396勝1敗という信じがたい戦績を残している。「デビュー戦で世界戦を組んでほしい」とプロモーターに懇願してプロに転向を果たしたのは13年10月のことだった。ロマチェンコの願いは2戦目で実現したが、そのときは体重超過の相手を警戒しすぎて前半をセーブしたのが響き小差の12回判定で敗れた。3戦目でWBO世界フェザー級王座を獲得すると、以後は手がつけられないほどの強さ、巧さを見せつけている。16年に獲得したWBOスーパーフェザー級王座は4度防衛。興味深いのは4人全員が途中でギブアップしている点だ。「ハイテク(高性能)」と呼ばれるロマチェンコの俊敏な動きとハンドスピード、スキルに翻弄され、戦闘意欲を喪失してしまったのである。こうしたことからスペイン語の「ノー・マス(もうイヤだ)」をもじって「ノー・マスチェンコ」などと呼ばれてもいる。

パンチ力がないのかといえばそうではない。5月のリナレス戦では10回にタイミングのいい左ボディブロー一撃で試合を終わらせているし、過去には豪快に倒した試合もある。戦績は12戦11勝(9KO)1敗で、目下8連続KO中だ。

これに対しペドラサもアマチュア時代には08年北京五輪に出場したことがあり(ライト級2回戦敗退)、09年の世界選手権では準優勝を収めている。プロ転向後4年目の15年にはIBF世界スーパーフェザー級王座を獲得し、2度の防衛もこなしている。V3戦で敗れたあとはビジネス・パートナーを変え、階級もアップ。減量苦から解放され、今年8月に12回判定勝ちで現王座を獲得した。ペドラサは戦いながら構えを左右にチェンジするスイッチ・ヒッターで、長距離でも中間距離でも戦え、さらに必要に迫られれば接近戦もこなせる器用なタイプだ。26戦25勝(12KO)1敗とKO率は5割に満たないが、4カ月前の戴冠試合では勝負どころの11回に絶妙な左アッパーでダウンを奪っている。数字以上にパンチ力があるとみた方がよさそうだ。

世界王者同士の統一戦だが、12対1でロマチェンコ有利という一方的なオッズが出ている。高いレベルの相手と戦いながら最上の結果を出し続けているロマチェンコに対する評価は、いまや揺るぎないものといっていいだろう。今回も素早く動いて相手のサイドにまわりこみながら多彩なコンビネーションで翻弄、中盤あたりでストップするだろうという見方が大勢を占めている。

ただ、不安もある。5月のリナレス戦で右肩を痛め、手術してから臨む初の試合でもあるからだ。これが肉体的、あるいは心理面で影響を及ぼすようならば番狂わせも考えられる。また、ロマチェンコはリナレス戦でアマ、プロを通じて初のダウンを喫しており、ライト級での体格、耐久力という点で壁にぶつかる可能性もある。

「ハイテク」が異次元の強さを見せつけるのか、それとも「スナイパー」が意外な一撃で撃ち落とすのか。興味深いカードだ。

注目米英対決!強打ワイルダーか技巧派フューリーか

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ、王者デオンタイ・ワイルダー(33=米)対挑戦者で元WBA、IBF、WBO3団体統一王者タイソン・フューリー(30=英)の12回戦が12月1日(日本時間2日)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われる。7連続KO防衛を含む40戦全勝(39KO)のワイルダー、身長206センチ、体重117キロのフューリー。注目の米英対決を制するのは-。

27戦全勝(19KO)のフューリーは前回で紹介ように構えを左右にチェンジしながら戦うスイッチ・ヒッターで、のらりくらりと相手の打ち気を逸らす頭脳派でもある。

これに対し身長201センチ、体重97キロ~103キロと細身のワイルダーは戦績が示すとおりのスラッガーで、特に狙い撃つ右ストレートの破壊力はすさまじいものがある。

このワイルダーはもともと高校時代にはバスケットボールやフットボールの選手だったが、恋人との間に生まれた難病の娘の治療費を稼ぐためにボクシングに転向した経緯がある。19歳のときのことだ。競技を始めて3年で08年北京オリンピック(五輪)に出場し、91キロ以下のヘビー級で3位に食い込んだ。35戦30勝5敗のアマチュア戦績と五輪の銅メダルを手土産にプロに転向した。

陣営が慎重なマッチメークを施したこともありワイルダーは次から次に対戦相手をキャンバスに沈め、その数は6年間に32人を数えた。しかも、すべて4ラウンド以内だった。

世界ランキングも上昇したが、「スタミナや打たれ強さは試されていない」という声が多かったのも事実だ。

15年1月、ワイルダーは初の世界挑戦でバーマイン・スティバーン(ハイチ)を12回判定で下してWBC王座を獲得。連続KOは32で止まったが、それ以上のものを手に入れた。当時、ヘビー級で米国勢は8年間に世界戦20連敗中だったこともあり、ワイルダーに対する期待は大きいものがあった。その後は再び倒しまくり、目下7連続KO防衛と自信を増している。戴冠前と異なるのは8ラウンド以上を戦って仕留めた試合が5度もある点だ。特に今年3月のルイス・オルティス(39=キューバ)戦では苦境を乗り切って10回TKO勝ちを収めており、スタミナも耐久力も十分にあることを証明している。

今回のフューリー戦をクリアすれば、いよいよWBA、IBF、WBO3団体統一王者のアンソニー・ジョシュア(29=英)との頂上決戦が現実味を帯びてくる。そのためにも勝利はもちろんのこと、次に繋がる内容も求められることになる。

オッズは3対2でワイルダー有利と出ているが、9度目となる世界戦のなかでは最も接近した数字だ。ワイルダーの強打が元王者を射抜くと予想する識者やファンがいる一方、狡猾なフューリーがスキルを生かしてワイルダーの持ち味を封じてしまうのでは、という見方もある。王者陣営も十分に警戒の色を見せているが、対策も十分に練っている様子だ。

ワイルダーと長年のコンビを組んでいるジェイ・ディーズ・トレーナーは「フューリーはルービックキューブみたいな多面性のあるボクシング・スタイルで、攻略するのは簡単ではない。でも、ルービックキューブは解けるからね」と愛弟子の勝利を確信している。

KO率98パーセントのワイルダーの強打が挑戦者の急所を打ち抜くのか、それとも超大型の変則技巧派、フューリーがスキルで翻弄するのか。全勝同士のヘビー級米英対決に注目したい。

帰ってきたフューリー 王者ワイルダーと注目の一戦

12月1日(日本時間2日)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われるWBC世界ヘビー級タイトルマッチが注目を集めている。ここまで7連続KO防衛を果たしている王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)が40戦全勝(39KO)、挑戦者の元WBA、IBF、WBO3団体統一王者、タイソン・フューリー(30=英)は27戦全勝(19KO)。敗北を知らない者同士の米英対決だ。しかもワイルダーが身長201センチ/リーチ211センチ、フューリーは206センチ/216センチという超大型同士のカードなのである。

ヘビー級は3年前までウラジミール・クリチコ(ウクライナ)の独占状態だった。WBA、IBF、WBO3団体王座に君臨し、9年間に18度の防衛を果たしていた。その政権に終止符を打ったのが、当時27歳のフューリーだった。15年11月、クリチコに判定勝ちを収めて3団体王座を引き継いだのだ。

ところがフューリーは戴冠直後にIBF王座を放棄。クリチコとの再戦が決まったあとは延期を繰り返し、あげくはドーピング違反やアルコール依存のため引退してしまった。

こうしたなか15年1月にWBC王者になっていたワイルダーは着々と防衛回数を伸ばし、IBFではアンソニー・ジョシュア(29=英)が王座を獲得(16年4月)。さらにジョシュアはWBAスーパー王座とWBO王座も手に入れた。18年になると、このふたりの頂上決戦が期待される状況になり、一時は年内に実現かと噂されたが、先送りになっている。

そこに割り込もうと再浮上してきたのがフューリーだ。2年半のブランク後、トレーナー、マネージャー、プロモーターを一新して今年6月に4回終了TKO勝ちでカムバック。8月には元世界ランカーに10回判定勝ちを収め、世界戦線に戻ってきた。そして、ジョシュア対ワイルダーがビジネス上の駆け引きで先延ばしになっているなか、WBC王座への挑戦にこぎ着けた経緯がある。

このフューリー、いまでこそ体重は117キロ(8月の試合時)あるが、生まれたときは450グラムだった。予定日よりも2カ月半早い出産だったのだという。マイク・タイソン(米)が世界ヘビー級王者として活躍しているころだったため、強く元気に育ってほしいという願いを込めて父親のジョン・フューリーが「タイソン」と命名したというエピソードがある。

アマチュアを経て08年12月にプロ転向を果たしたフューリーは、英国王座や英連邦王座、欧州王座などを獲得後、3年前にクリチコを下して世界のトップにまで上り詰めた。

大きな体に似合わず足をつかいながら距離と角度を変えて戦ううえ、構えを左右にスイッチする器用さを備えている。パワーは平均の域を出ないが、戦い方は頭脳的だ。今回、米国のリングが2度目となるフューリーは、ベストのコンディションに仕上げるため8週間前から米国西部でトレーニングを続けてきた。

「ワイルダーにパワーがあるのは分かっている。でもパンチが当たらなければ役に立たないだろ。動いて空振りさせるよ」。王座返り咲きに向けフューリーは揺るぎない自信をみせている。

スペンス対ガルシア PFP10傑同士の戦い実現へ

全17階級を通じたトップボクサーの総合評価ともいえる「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で、現役10傑に名を連ねる猛者同士、IBF世界ウエルター級王者のエロール・スペンス(28=米)と、4階級制覇を成し遂げているWBC世界ライト級王者のミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)が来年2月か3月に対戦する方向で交渉が進んでいる。すでに具体的な日程や開催候補地も挙がっており、遠からず決定するものとみられている。

PFPは、選者がボクサーの実績や試合内容を評価して順位づけするため、主観性の強い比較的遊び要素の多いランキングといえる。それでも「誰が本当に強いのか」が分かりやすいため、近年、欧米のメディアが独自にトップ10を選ぶなどしてファンに幅広く浸透しつつある。米国の老舗専門誌「リング」では1位がWBAライト級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)、2位がWBOウエルター級王者のテレンス・クロフォード(31=米)、3位がミドル級のWBAスーパー王者&WBC王者、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)となっており、スペンスは9位、ガルシアは7位に名を連ねている。ちなみに「リング」では井上尚弥(大橋)が6位に入っている。

このほかESPNではスペンスが5位、ガルシアが6位、専門サイトBoxingsceneではスペンスが9位、ガルシアは3位と極めて高い評価を受けている。

9月に行われたゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)対アルバレスがそうだったように、PFP10傑同士が戦う場合、大きなイベントになることが多い。もちろんスペンス対ガルシアも注目ファイトになることは間違いない。

12年ロンドン・オリンピック(五輪)に出場したこともあるスペンスは馬力のあるサウスポーの強打者で、24戦全勝(21KO)の戦績を誇る。目下2度防衛中で、それらを含め11連続KO勝ちと勢いがある。

これに対しフェザー級、スーパーフェザー級、ライト級、スーパーライト級の4階級で戴冠を果たしているガルシアも39戦全勝(30KO)のレコードを残している。こちらは左ジャブで相手を牽制しておいて鋭い右ストレートを打ち込む正統派の強打者だ。10月までライト級のWBC王座とIBF王座を保持していたが、指名防衛戦を迫られたためIBF王座は返上している。

スペンス対ガルシアは来春に行われる可能性が高い。ふたりとも業界で大きな影響力を持つアドバイザーのアル・ヘイモン氏と契約を交わしており、交渉の壁は高くないはずだ。すでに2月16日と23日が候補に挙がっているほか、3月16日ならばテキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで開催という具体的な日程と開催地も出ている。スペンスはテキサス州に住んでおり、またメキシコ系のガルシアもテキサス州で過去に3度の世界戦を行っており、同地での開催となればイベントの成功は間違いないところといえる。

スペンスが身長177センチ/リーチ183センチ、ガルシアが168センチ/173センチと体格面で差があることもあってか、現時点でのオッズは10対3でスペンス有利と出ている。

ウエルター級にはWBO王者のクロフォードのほかWBA王座にはマニー・パッキャオ(39=比)が君臨している。さらなるビッグファイトも望めるだけに、その第一弾としてスペンス対ガルシアの実現を期待したい。

「重量級のロマチェンコ」ウシク ヘビー級へ試金石

ヘビー級の次に重いクルーザー級のWBA、WBC、IBF、WBO4団体統一王者、オレクサンデル・ウシク(31=ウクライナ)が10日(日本時間11日)、英国マンチェスターで元WBC同級王者のトニー・ベリュー(35=英)を相手に通算6度目の防衛戦に臨む。

現役選手として全階級を通じて最も高い評価を受けているWBA世界ライト級王者、ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)に倣って「重量級のロマチェンコ」と称されるサウスポーのテクニシャンは、来年にはヘビー級進出を目論んでいる。これがクルーザー級で最後の試合になりそうだが、「最重量級でも通用するだろう」という評価を得ることができるか。

ウシクとロマチェンコは同じウクライナ出身というだけでなく、アマチュア時代には揃って08年北京五輪、12年ロンドン五輪に出場した。2大会とも金メダルを獲得したロマチェンコに対し、ウシクは北京大会こそヘビー級8強に甘んじたが、ロンドン大会では同級金メダリストになった。アマチュア戦績はロマチェンコが397戦396勝1敗、ウシクが350戦335勝15敗と伝えられる。

プロ転向の時期もほとんど同じで、ロマチェンコが13年10月、ウシクが1カ月遅れの11月にデビュー戦を行い、ともにKO(TKO)勝ちを収めている。世界王座獲得はロマチェンコがプロ3戦目の14年6月と早く、その後、3階級制覇を成し遂げて揺るぎない地位を確立している。ウシクはプロ10戦目となる16年9月に初戴冠を果たし、賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」に出場して4団体の王座統一を果たした。今年7月のことである。

戦闘スタイルは「サウスポーの技巧派」という点で一致しているが、体格で恵まれているとはいえないロマチェンコが中近距離で戦うのに対し、ウシクは長い腕と軽快なステップを生かした中長距離での戦いを得意としている。ふたりともロマチェンコの父親、アナトリー・トレーナーの指導を受けている。

ここまで6度の世界戦を含め15戦全勝(11KO)を収めているウシクは王座統一を機にヘビー級に上がるものとみられていたが、ベリューの要望に応じるかたちで今回の対戦を決めた。アウェーとなる英国での試合を承諾した裏には、同国で絶大な人気を誇るヘビー級のWBA、IBF、WBO3団体統一王者、アンソニー・ジョシュア(29=英)戦に向けたデモンストレーションにする狙いもありそうだ。

ベリューはウシクの2代前のWBC王者で、33戦30勝(20KO)2敗1分の戦績を残している。こちらはすでにヘビー級での試合を経験済みで、昨年3月と今年5月、元世界王者のデビッド・ヘイ(英)に11回TKO、5回TKOで連勝している。「世間は俺が負けるとみているようだが、ヘイ戦がそうだったように今回も予想を覆してみせる」と強気だ。

しかし、オッズは11対2で現王者有利と出ている。「重量級のロマチェンコ」ウシクがスピードとテクニックで元王者を翻弄する可能性が高そうだ。

元5階級王者ドネアの苦戦必至もベテランの意地見せるか

賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」シーズン2、バンタム級とスーパーライト級の準決勝が11月3日(日本時間4日)、英国グラスゴーで行われる。すでにWBAレギュラー王者の井上尚弥(25=大橋)が準決勝進出を決めているバンタム級では、第1シードのWBAスーパー王者、ライアン・バーネット(26=英)が登場。元5階級制覇王者のノニト・ドネア(35=比)の挑戦を受ける。スーパーバンタム級ではジョシュ・テイラー(27=英)対ライアン・マーティン(25=米)の全勝対決が組まれている。

バンタム級トーナメントは10月7日にスタートし、井上が元王者のファン・カルロス・パヤノ(34=ドミニカ共和国)を70秒KOで一蹴。他のエントリー選手たちにプレッシャーをかけるかたちとなった。

1週間後の10月13日にはロシアのエカテリンブルクでWBOタイトルマッチが行われ、王者のゾラニ・テテ(30=南ア)がミーシャ・アロイアン(30=露)に12回判定で勝利を収め、準決勝に駒を進めた。長身サウスポーのテテは初回に軽いダウンを奪ったものの挑戦者の攻撃を持て余した。そのため114対111(2人)、115対110とポイント差は比較的接近していた。

そして先週20日にはIBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)が米国フロリダ州オーランドで3位の指名挑戦者、ジェイソン・マロニー(27=豪)と対戦。準決勝で拳を交える井上が観戦するなか、ロドリゲスは本調子とは遠い出来で、辛うじて12回判定勝ちで初防衛を飾った。ジャッジのスコアは三者とも115対113だったが、二者がロドリゲスを支持、ひとりはマロニー優勢という際どい勝負だった。

決勝進出をかけた井上対ロドリゲスは来春、米国で行われる予定だが、現時点のオッズは5対1で井上有利と出ている。

そして11月3日には、最後の準決勝進出者を決めるためバーネットとドネアが対戦する。19戦全勝(9KO)のバーネットは目下8試合続けてKOを逃しているが、スピード、パワー、テクニックなどバランスのとれた戦力を持っている。基本は右構えだが、機をみて左にチェンジする器用さも兼ね備えている。

ドネアもスイッチ・ヒッターだが、最近は得意とする左フックを生かすためか右構えで戦うことが多い。初めて世界王座を獲得してから11年が経っており、試合の13日後(16日)には36歳になる。戦績は43戦38勝(24KO)5敗。すでに5階級制覇を成し遂げているが、近年はスーパーバンタム級やフェザー級で戦っており、コンディション調整が不安視されている。今年4月にWBO世界フェザー級暫定王座決定戦で12回判定負けを喫したときは56.9キロだったが、今回はさらに約3.4キロの減量が必要になる計算だ。計量をクリアしたとしても若く勢いのあるバーネットが待っており、苦しい戦いは必至といえる。

6対1でバーネット有利のオッズが出ているように、王者が自在な動きとスピーディーなパンチを当てて加点、判定勝ちという線が妥当なところだろう。ただ、ドネアがベストに仕上げてきた場合は番狂わせも考えられる。

ベテランが意地を見せる可能性も決して低くはないように思える。

一方、同じ日に行われるスーパーライト級準々決勝では、地元スコットランドの人気者、13戦全勝(11KO)でWBC1位のテイラーが、WBC6位にランクされる22戦全勝(12KO)のマーティンと対戦する。地の利もあるテイラーが5対1で有利とみられているが、スピードのあるマーティンが予想を覆す可能性もある。

11月3日(日本時間4日)、英国グラスゴーのリングに要注目だ。

村田まさかの敗戦で戦国時代に突入したミドル級トップ戦線

20日(日本時間21日)、米国で行われた試合で2人の世界ミドル級新王者が誕生した。ひとりはネバダ州ラスベガスで村田諒太(32=帝拳)を大差の判定で破ったWBA王者のロブ・ブラント(28=米)、もうひとりはマサチューセッツ州ボストンで行われたWBO王座決定戦を制したデメトリアス・アンドレイド(30=米)だ。主要4団体のうち、約1カ月で3人の新王者が誕生したことになる。さらに27日(日本時間28日)には米国ニューヨークでIBF王座決定戦が組まれている。一時はV20王者、ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)が独走していたミドル級トップ戦線だが、ここにきて戦国時代に突入した感がある。

村田対ブラントは王者の防衛が堅いとみられていた。戦前のオッズは9対2で村田有利と出ていたほどだ。ところがスピードと手数、有効打で勝るブラントが村田のパワーを抑え込み、大差の判定でベルトを奪い取った。

これより35日前、同じラスベガスではサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)がWBAスーパー王座とWBC王座を持つゴロフキンを僅差の判定で破り、2冠を奪取している。この試合も3対2でゴロフキン有利とみられていたが、その数字がひっくり返ったわけだ。

この間、ビリー・ジョー・サンダース(29=英)がドーピング違反のためWBO王座を返上。これを受け20日に王座決定戦が行われ、アンドレイドがウォルター・カウトンドクワ(33=ナミビア)から3度のダウンを奪って大差の判定勝ち、ベルトを腰に巻いた。こちらは12対1のオッズがそのまま結果に出たかたちだ。

この3人に加え、WBCには今年4月に暫定王者を獲得したジャモール・チャーロ(28=米)が存在する。

こうした流れのなか27日にはダニエル・ジェイコブス(31=米)対セルゲイ・デレビャンチェンコ(32=ウクライナ/米)のIBF王座決定戦が行われる。これはゴロフキンがアルバレス戦を優先させたために剥奪された王座だ。ブラントの3代前のWBA王者でもあるジェイコブスは36戦34勝(29KO)2敗、08年北京五輪出場のアマチュア実績を持つデレビャンチェンコは12戦全勝(10KO)と、両者とも高いKO率を誇る。オッズは5対2で地元のジェイコブス有利と出ており、経験値で勝るジェイコブスがデレビャンチェンコの攻撃を戦術とテクニックで抑えるだろうとみられている。いずれにしても引き分けという結果にならない限りIBF王者が誕生するわけだ。

現時点のミドル級主要4団体の王者を整理すると以下のようになる。

■WBAスーパー王者:アルバレス

■WBA王者:ブラント

■WBC王者:アルバレス

■WBC暫定王者:チャーロ

■IBF王者:ジェイコブスorデレビャンチェンコ

■WBO王者:アンドレイド

興味深いのは、チャーロを含め全員がこの半年で戴冠を果たしていることである。これはミドル級がゴロフキンの独走状態から戦国時代に入ったことを示している。

ちなみに上記王者のうち、DAZNと11試合で3億6500万ドル(約410億円)の超大型契約を結んだアルバレスは、その初戦として12月15日に1階級上のWBAスーパーミドル級王座に挑戦することが決まっている。WBC暫定王者のチャーロも12月に次戦が内定している。

アルバレスは転級してしまうのか、ゴロフキンの巻き返しはあるのか、IBF王座を獲得するのは? そして村田の進退は-風雲急を告げるミドル級トップ戦線、まだまだ目が離せない状況が続きそうだ。

村田戦の裏でWBO王座決定戦 どうなるミドル級トップ戦線

20日(日本時間21日)、米国ネバダ州ラスベガスで村田諒太(32=帝拳)対ロブ・ブラント(28=米)のWBA世界ミドル級タイトルマッチが行われるが、同じ日、マサチューセッツ州ボストンでは同じ階級のWBO王座決定戦が挙行される。ドーピング違反が発覚したビリー・ジョー・サンダース(29=英)が11日に王座を返上したため、急遽、1位のデメトリアス・アンドレイド(30=米)と2位のウォルター・カウトンドクワ(33=ナミビア)が拳を交えることになったのだ。20日、リングのなかではどんな動きがあるのだろうか。

ミドル級では9月15日、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)が、8年間に20度の防衛を誇ったゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)を僅差の判定で破ってWBAスーパー王座とWBC王座を獲得したばかりだ。そのアルバレスは12月15日に1階級上のスーパーミドル級でWBA王座に挑戦することが内定しており、その結果しだいでは転級も考えられる状況といえる。

こうしたなか20日にWBAとWBOのミドル級タイトルマッチが行われるわけだが、2試合ともすんなりと挙行にこぎ着けたわけではない。村田対ブラントはWBAが義務づけたカードで、8月には興行権入札が行われたが、村田側は参加せず、ブラント側が落札。

一時は村田が王座を返上する可能性まで浮上したが、その後、両陣営が条件合意に達したという経緯がある。

それ以上に慌ただしかったのがWBOタイトルマッチだ。サンダースのドーピング違反が表面化したのが9月下旬で、試合を管理するマサチューセッツ州のコミッションがサンダースの出場を不可と決めたのが試合10日前のことだった。これを受けサンダースに挑戦する予定だったアンドレイドは、待機状態にあった2位のカウトンドクワと暫定王座決定戦を行うことが決定。その後、11日になってサンダースが王座を返上したためアンドレイド対カウトンドクワ戦が正王座の決定戦になったという経緯がある。

アンドレイドは08年北京五輪ウェルター級ベスト8の実績を持ち、プロではスーパーウエルター級でWBO王座とWBA王座を獲得している。身長185センチ、リーチ187センチの大柄な技巧派サウスポーで、25戦全勝(16KO)と負け知らずだ。カウトンドクワは5年前のデビュー戦で判定勝ちのあと16連続KO中の強打者だが、世界的強豪との対戦経験は皆無で、アフリカ大陸を出て戦ったこともない。17戦全勝(16KO)とKO率は高いが、実力そのものは未知といえる。順当にいけばアンドレイドが2階級制覇を成し遂げそうだが、カウトンドクワがKOで戴冠を果たすようなことがあるとミドル級トップ戦線は大荒れ状態に陥る可能性もある。

村田対ブラント、そしてアンドレイド対カウトンドクワ。日本時間の21日、米国からどんなニュースがもたらされるのだろうか。

WBSSバンタムは好カード目白押し 井上の相手は誰だ

階級最強を決める賞金トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級初戦は、第2シードのWBA王者、井上尚弥(25=大橋)が元王者のファン・カルロス・パヤノ(34=ドミニカ共和国)に70秒でKO勝ち、順当に準決勝に駒を進めた。試合時間は短かったが、そのなかでスキルとパワーを見せつけた衝撃のKO劇だった。このあと13日、20日、11月3日に準々決勝に臨むライバル6選手に与えたプレッシャーは大きいものがあったはずだ。

13日にはロシアのエカテリンブルクでWBO王者のゾラニ・テテ(30=南ア)対6位のミーシャ・アロイアン(30=アルメニア/露)が行われる。スーパー・フライ級に続いて17年4月に戴冠を果たしたテテは175センチのサウスポーの技巧派強打者で、初防衛戦では右フック一発で世界戦史上最短記録となる11秒KO勝ちを収めている。今年4月のV2戦では、フライ級で16度、スーパー・フライ級で11度の防衛実績を持つオマール・ナルバエス(43=アルゼンチン)に大差の12回判定勝ち、長丁場にも強いところを証明した。30戦27勝(21KO)3敗。

挑戦者のアロイアンはプロでは4戦すべて判定勝ちとキャリアは浅いが、アマチュア時代には12年ロンドンオリンピック(五輪)フライ級で銅メダルを獲得。11年と13年の世界選手権では優勝している。16年リオデジャネイロ五輪にも出場して準優勝したが、のちにドーピング違反が発覚して銀メダルを剥奪された。体格、技術、パンチ力で勝る第3シードのテテが勝ち上がりそうだ。

20日、米国フロリダ州オーランドでは18戦全勝(12KO)のIBF王者、エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)対17戦全勝(14KO)のジェイソン・モロニー(27=豪)のタイトルマッチが行われる。勝者が準決勝で井上と拳を交えることになっており、ファンの注目度も高いカードだ。KO率の高い全勝同士の組み合わせだが、12対1のオッズが出ているようにロドリゲス有利は不動と見られている。アマチュアで182戦171勝11敗の戦績を残しているロドリゲスはスピード、テクニック、パワーを備えており、WBA王者自身が「井上が危ないのではないか、と思われている相手」と認める実力者だ。どちらが勝ち上がるにしても井上との試合は興味深いものになりそうだ。

11月3日には井上を差し置いて第1シードに推されたWBAスーパー王者のライアン・バーネット(26=英)が登場する。英国グラスゴーのリングに迎えるのは、5階級制覇の実績を持つスター選手、ノニト・ドネア(35=比)だ。6対1で有利と見られているバーネットは昨年6月にIBF王座につき、4カ月後にはWBAスーパー王座も獲得。ロドリゲスとの指名戦を強制されたためIBFは返上したが、今年3月にはWBAスーパー王座の初防衛を果たしている。戦績は19戦全勝(9KO)だが、相手の質が上がっていることもあってか、このところ8試合続けてKOを逃している。

フライ級からフェザー級までの5階級で世界一になった実績を持つ43戦38勝(24KO)5敗のドネアは左フックや右ストレートに一撃KOの威力を秘めている強打者だが、近年はパワー偏重の雑な戦いぶりが目立つ。年齢に加え7年ぶりのバンタム級ということで減量など不安は少なくないが、万全のコンディションをつくることができればバーネット撃破だけでなく、トーナメントの台風の目になる可能性がある。決勝で井上と戦うことになれば盛り上がることは間違いない。

大本命が井上、対抗がロドリゲスとバーネット、それを追うテテという構図だが、13日、20日、11月3日の3試合で変化があるかもしれない。WBSSバンタム級トーナメント戦、今後の動きに注目していきたい。

米大手HBOテレビが今年限りでボクシング中継から撤退へ

米国のボクシング放送の核となってきたケーブルテレビ局の大手、HBO(ホーム・ボックス・オフィス)が今年限りでボクシング中継から撤退することになった。同局はヘビー級王者、マイク・タイソン(米)や6階級制覇王者のオスカー・デラ・ホーヤ(米)、マニー・パッキャオ(比)らスーパースターの注目ファイトをペイ・パー・ビュー(PPV=有料視聴)で生中継するなどしてきたが、近年は契約選手の減少や視聴件数で苦戦が続いていた。

タイムワーナーの系列会社でもあるHBOテレビは、1973年1月にジャマイカの首都キングストンで行われたジョー・フレージャー(米)対ジョージ・フォアマン(米)の試合を放送したのを皮切りに、45年以上にわたってボクシング中継を続けてきた。91年4月のイベンダー・ホリフィールド(米)対ジョージ・フォアマン(米)=約140万件、99年9月のデラ・ホーヤ対フェリックス・トリニダード(プエルトリコ)=約140万件、2007年5月のデラ・ホーヤ対フロイド・メイウェザー(米)=約240万件、10年5月のメイウェザー対シェーン・モズリー(米)=約150万件、11年11月のパッキャオ対ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)第3戦=約140万件、12年5月のメイウェザー(米)対コット=約150万件と、PPVの契約件数で100万件超えを連発するなどボクシング放送には欠かせない局となっていた。PPVは番組視聴のために1件あたり概ね6000円~8000円程度の金額を支払うことが多く、100万件で60億円~80億円を生む計算になる。それが選手の報酬に還元されるため放送局と出場選手双方にメリットがあるシステムといえる。

しかし、近年はライバル局のショータイムに押され気味の状態が続き、さらに有力プロモート会社のトップランク社が1年前に対抗局のESPNと契約を交わしたため、HBOは看板選手のパッキャオやワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、テレンス・クロフォード(米)らを失うことになった。ストリーミング配信サービスのDAZNがボクシングの映像配信に参入してきたことも、HBOの厳しい状況に拍車をかけることになった。こうしたなか今年9月、HBOは最後の切り札ともいえるゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)対サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)の注目ファイトをPPVで生中継。110万件の視聴件数を記録したものの、デラ・ホーヤ、メイウェザー、パッキャオらが打ち出した数字には遠く及ばなかった。その1週間前、井岡一翔(SANKYO)らが出場した軽量級のイベント「SUPERFLY3」もHBOテレビで生中継されたが、ピーク時で約35万件視聴と低調だったと報告されている。

このあと10月27日に米国ニューヨークで行われるダニエル・ジェイコブス(米)対セルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ)のIBF世界ミドル級王座決定戦がHBO最後の放送になる予定だ。ただ、2019年以降に関して定期的な放送は予定されていないというが、単発でボクシングを中継する可能性はあるという。

最近はDAZNのほかフェイスブックによる映像配信も行われるなどボクシングを含むスポーツ中継の方法が劇的に変化している。HBOの撤退はそんな流れのなかで起こったといえよう。

ホルヘ・リナレス、ロマチェンコとの再戦へ大事な再起戦

3階級制覇の実績を持つ前WBA世界ライト級王者、ホルヘ・リナレス(33=帝拳)が29日(日本時間30日)、米国カリフォルニア州インディオで元世界ランカーのアブネル・コット(31=プエルトリコ)と対戦する。今年5月、全階級を通じて最も高い評価を得ているワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)と激闘を展開、10回TKO負けを喫したリナレスにとっては大事な再起戦となる。

ベネズエラから単身来日、17歳のときに大阪でプロデビューしたリナレスも8月で33歳になった。この間、何度かの挫折も味わったが、フェザー級、スーパーフェザー級、ライト級の3階級で世界王座につき、世界的なスター選手の仲間入りを果たしている。リナレスの持ち味はスピードとテクニックだ。速い左ジャブで煽り、相手の出端に合わせて絶妙のタイミングで繰り出すカウンターの右ストレートを主武器に世界のトップ戦線で確かな足跡を残してきた。16年のキャリアで14度の世界戦(11勝7KO3敗)を含め48戦44勝(27KO)4敗の戦績を残している。56パーセントのKO率を誇る一方、4度の敗北はいずれもKO(TKO)によるもので、打たれ脆さが唯一のウイークポイントだ。世界的な注目を集めたロマチェンコ戦では6回に右ストレートでダウンを奪うなど9回までは互角の展開だったが、10回に左ボディブローを浴びて敗れた。プラスとマイナスの両面が出た試合だった。

リナレスは再戦を希望しているが、ロマチェンコは12月にライト級のWBO王者、ホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ)との統一戦を計画しており、リマッチが実現するとしても早くて来春になる。リナレスは「とにかくもう一度、ロマチェンコと戦いたい。次は勝てる。でも実現しないならばスーパーライト級に上げて4階級制覇を狙いたい」と話している。

今回の再起戦はライト級のリミットを超えた体重での試合になる予定で、リナレスにとってはテストマッチとなる。しかも、相手は12年から13年にかけて世界ランキング入りしていたこともあるコットである。名前でも分かるように、あの元世界4階級制覇王者、ミゲール・コット(プエルトリコ)のまたいとこにあたる血縁の選手だ。プロでは26戦して、元あるいはのちの世界王者に喫した3敗以外はすべて勝利を収めている(23勝12KO3敗)。16年以降は5連勝(4KO)と好調を維持しているだけに、油断できない相手といえる。

ロマチェンコ戦のショックを引きずっていないか、心身ともに十分なコンディションをつくれるか、など不安もないわけではないが、順当にいけばリナレスが中盤から終盤で仕留める可能性が高い。

ジョシュアvsポベトキン いよいよ23日にゴング

ヘビー級トップ戦線の主役のひとり、WBA、IBF、WBO3団体統一王者、アンソニー・ジョシュア(28=英)が22日(日本時間23日)、英国ロンドンのウェンブリー・スタジアムで元WBA王者のアレクサンデル・ポベトキン(39=露)を相手に通算6度目の防衛戦を行う。WBC王者のデオンテイ・ワイルダー(32=米)との4団体統一戦プランもあるジョシュアが大一番に向けて存在感を示すのか、それともポベトキンが番狂わせを起こすのか。KO決着が確実視されている注目カードだ。

12年ロンドン五輪のスーパーヘビー級金メダリストでもあるジョシュアは、プロ転向から2年半後の16年4月にIBF王座を獲得。17年4月、元王者のウラジミール・クリチコ(ウクライナ)を11回TKOで下した際にはWBAから「スーパー王者」の称号を与えられた。そして今年3月にはWBO王者のジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド)に12回判定勝ち。この試合でデビューからの連続KOは20で止まったが、引き換えに三つめのベルトを手に入れた。身長198センチ、リーチ208センチ、体重約110キロの恵まれた体格から速くて正確な左ジャブを突き、射程が合うと破壊力のある右ストレートを打ち抜く。最近は接近戦でアッパーを突き上げるなど攻撃の幅を広げつつある。

21戦全勝(20KO)のジョシュアは人気面でも際立っている。直近の3試合を見てみると、ウェンブリー・スタジアムで行われたクリチコ戦が約9万人、カーディフのプリンシパリティ・スタジアムが会場となった17年10月のカルロス・タカム(37=カメルーン/仏)戦とパーカー戦でも各7万8000人を集めているのだ。この3試合だけでも合計24万6000人の集客となる。最重量級の世界王者に相応しい人気、注目度といえる。今回も実績と知名度のあるポベトキンが相手だけに、ウェンブリー・スタジアムに7万人超の観客が見込まれている。

そのポベトキンは04年アテネ五輪のスーパーヘビー級金メダリストで、プロでは35戦34勝(24KO)1敗の戦績を残している。この1敗は5年前にクリチコに喫したもので、以後は8連勝(6KO)と好調だ。今年3月にはジョシュア対パーカーの前座に出場し、ダウン応酬のすえ豪快な5回KO勝ちを収めている。身長188センチ、リーチ191センチ、体重約103キロと体格ではジョシュアに及ばないが、下から潜り込むようにして打つ左右のパンチは相手にとって脅威といえよう。

とはいえ総合的な戦力と若さに加え地の利もあるジョシュア有利は絶対的なものとみられており、オッズは9対1と出ている。ジョシュアが左ジャブで距離を計り、打ち下ろしの右ストレートでKO勝ち、という可能性が最も高そうだ。

現在のヘビー級はジョシュアを軸にして、統一戦プランが浮上しているWBC王者のワイルダー、さらに戦線復帰した元3団体王者のタイソン・フューリー(30=英)、ワイルダーと激闘を展開した元WBA暫定王者のルイス・オルティス(39=キューバ)、そしてポベトキンと役者が揃っている。こうしたなか、順当にジョシュアが次に駒を進めるのか、それともポベトキンが番狂わせを起こして準主役に躍り出るのか。22日(日本時間23日)、ロンドンのウェンブリー・スタジアムに要注目だ。

因縁の再戦ゴロフキンvsアルバレス 勝つのはどっちだ

今年最大の注目カードといわれ、ふたりの合計報酬額が100億円を超える可能性があるスーパーファイト、ゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン/米)サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)の世界ミドル級タイトルマッチが15日(日本時間16日)、米国ネバダ州ラスベガスで行われる。両者は昨年9月に拳を交え、ゴロフキンが攻めアルバレスが迎え撃つという展開になったが、ジャッジ三者の見解が分かれて12回引き分けという結果に終わっている。あれから1年、ゴロフキンの持つWBAスーパー王座とWBC王座がかかった因縁のリマッチは、初戦とほぼ同じ3対2でゴロフキン有利というオッズが出ている。

両者の初戦を見た人の80パーセントほどがゴロフキンの勝利を推し、15パーセントが引き分け、アルバレスの勝利と採点した人は本人を含めて5パーセント程度だったのではないだろうか。「判定に関しては私の仕事ではないのでコメントは控えたい」とゴロフキンが言えば、アルバレスは強気の姿勢は崩さず、「全12ラウンドのうち7か8ラウンドは私が押さえたはず」と勝利をアピールしたものだ。こうした因縁から再戦は必然とみられた。事実、いったんは5月5日にリマッチが決定した。

ところが、発表の直後にアルバレスのドーピング違反が発覚。そのためアルバレスは自ら5月の再戦を辞退した。ラスベガスでの試合を管理するネバダ州アスレチック委員会が2月に遡ってアルバレスに半年の出場停止を言い渡すなか、ゴロフキンは代役を相手に20度目の防衛戦を行い豪快な2回KO勝ちを収めている。初戦の判定に加えアルバレスのドーピング違反も加わり、両者間の因縁は一層深くなったといえる。

リングを下りれば紳士で知られるゴロフキンだが、今回は珍しく感情を隠そうとせず、「アルバレスは尊敬できるスポーツマンとはいえない」とライバルを切り捨てている。試合に関しては「彼はスピードとテクニックの面で優れているが、私は私の仕事をするだけだ」と攻撃的なボクシングを貫くとしている。一方のアルバレスは「外野の声は聞こえている。今回はそれもモチベーションになっている。最初からKOを狙っていく」と完全決着で汚名返上を狙うつもりだ。

39戦38勝(34KO)1分のゴロフキンが初戦のようにプレッシャーをかけながら前進して自慢の強打を叩き込むチャンスをうかがい、52戦49勝(34KO)1敗2分のアルバレスが細かく立ち位置を変えながらカウンターで迎撃する展開になりそうだ。初戦では互いに警戒心が強かったためか両者とも得意とするボディブローが少なかった。それを含め両陣営の戦術にも注目したい。

この試合では、人気で勝るアルバレスに5000万ドル(約55億円)~6000万ドル(約66億円)、勝てばミドル級史上最多、130年を超える近代ボクシングでも全階級通じて4位タイの連続21度の防衛となるゴロフキンに4000万ドル(約44億円)の報酬が見込まれている。課金システムのペイ・パー・ビュー(PPV)の契約件数によっては合計報酬額が100億円を超えそうだ。

1カ月後にWBA王座のV2戦を控える村田諒太(32=帝拳)をはじめ、WBC暫定王者のジャモール・チャーロ(28=米)らも注目するミドル級頂上決戦。どちらの手が挙がるのか。

井岡一翔、復帰戦勝てば日本人初4階級制覇も視野に

3階級制覇を成し遂げている元世界王者、井岡一翔(29=SANKYO)が8日(日本時間9日)、米国カリフォルニア州イングルウッドのフォーラムで昨年4月以来の実戦に臨む。復帰戦の相手は、2度の世界挑戦経験を持ちWBCとIBFでスーパーフライ級3位にランクされるマクウィリアムス・アローヨ(32=プエルトリコ)。環境を一新してカムバックを決めた井岡にとって敗北は許されない試合となる。

井岡はミニマム級、ライトフライ級、そして15年4月にはフライ級で世界王座を獲得し、叔父の井岡弘樹さんが4度挑んで達成できなかった3階級制覇を成し遂げた。その王座は5度防衛し、安定王者の仲間入りを果たしていた。しかし、昨年秋になって王座を返上し、大晦日には「3階級制覇という夢を達成できて満足している」として引退を表明した。

それから7カ月半後、井岡は父親のジムを離れ、世界ミドル級王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)らを擁するアメリカのトム・ローフラー氏の360プロモーションと契約。階級もひとつ上げてスーパーフライ級での再出発となる。

8日のイベントはローフラー・プロモーターが昨年9月に初めて仕掛けて好評を博した「SUPERFLY」シリーズの第3弾として行われる。今回、井岡はスーパーフライ級トリプルマッチの最初の試合に出場する予定だ。メイン格のカードとしては元WBA、WBO世界フライ級王者で現スーパーフライ級WBC1位のファン・フランシスコ・エストラーダ(28=メキシコ)対WBC同級7位フェリペ・オルクタ(32=メキシコ)、そしてドニー・ニエテス(36=比)対アストン・パリクテ(27=比)のWBO世界スーパーフライ級王座決定戦が組まれている。日本では15度の世界戦を経験している井岡だが、米国では必ずしも知名度が高いとはいえず、評価も定まっていないのだ。今回の顔見せのテストマッチでウィリアムスに敗れるようなことがあると、その先はさらに厳しい道のりになることは間違いない。

その一方、勝った場合のリターンは大きいものがある。カムバック宣言と同時にWBA2位にランクされた井岡(23戦22勝13KO1敗)がウィリアムス(20戦17勝14KO3敗)を下せば、4階級制覇への扉が大きく開かれることになる。ニエテス対パリクテの勝者(WBO王者)、ローマン・ゴンサレス(31=ニカラグア)を連破しているWBC王者のシーサケット・ソールンビサイ(31=タイ)、WBA王者のカリド・ヤファイ(29=英)、IBF王座を5度防衛中のジェルウィン・アンカハス(26=比)らが井岡の挑戦を歓迎してくれるはずだ。

負ければトップ戦線から脱落、勝てば日本人初の4階級制覇が視野に入ってくる。井岡にとってはボクサー生命を左右する大事な試合といえる。初の異国のリングで、元3階級制覇王者がどんなパフォーマンスを披露するのか注目したい。

波乱の人生シリモンコン、41歳が挑む100戦目

辰吉丈一郎との激闘で知られる元WBC世界バンタム級、元WBC世界スーパー・フェザー級王者、シリモンコン・ナコントンパークビュー(タイ)が9月1日、タイの首都バンコク近郊のパトゥムターニー県でプロ100戦目を行う。辰吉戦のときは20歳だったシリモンコンも41歳。直近の3戦は1勝2敗と武運から見放されており、これが引退試合ともいわれている。

シリモンコンは16歳でプロデビューし、1996年8月には19歳でWBC世界バンタム級王者になった。辰吉を相手に4度目の防衛戦を行うために来日したのは97年11月のことだった。このとき27歳の辰吉は世界戦3連敗中で、選手生命の危機という背水の状況にあった。一方のシリモンコンは16戦全勝(6KO)で、体も辰吉よりひとまわり大きかった。「負けるかもしれないという考えはなかったが、リングで向かい合ったとき、あまりに大きいので(6階級上の)ウェルター級かと思った」(辰吉)というほどだった。試合は歴史に残る激闘になったが、ボディを攻められたシリモンコンは7回TKOで敗れた。

これを機に階級を上げたシリモンコンは5年後の2002年に再来日。長嶋健吾(18古河)との決定戦で2回KO勝ちを収め、WBC世界スーパー・フェザー級王座を獲得、2階級制覇を成し遂げた。しかし、2度目の防衛戦で敗れると、以後は世界王座と縁が切れた。

それでもリングに上がり続けたが、09年に違法薬物の取引に絡んだとして逮捕され、20年の刑を言い渡された。32歳のときである。

これで引退かと思われたシリモンコンだが、刑務所内でトレーニングしながら2年後には一時的に外出して試合をすることが許され、ウェルター級の地域王座を獲得。13年には仮釈放され、翌14年にはスーパー・ウェルター級の世界15位以内にランクされた。04年からの連勝は51(35KO)まで伸びたが、昨年2月、新鋭に敗れて連勝がストップ、世界ランクも失った。10月には元世界ランカーにも敗れ岐路に立たされた。ここまでの戦績は99戦95勝(60KO)4敗。KO負けは辰吉戦の一度だけだ。

9月1日の試合は11カ月ぶりの再起戦であると同時に、シリモンコンにとってプロ100戦目となる。節目の試合はタイのライト・ヘビー級王座決定戦として挙行される予定だが、相手のムハマド・ヌスブガ(ウガンダ/タイ)の戦績は7戦6敗1分というもの。6敗はすべてKO負けというから、シリモンコンのために組まれた試合といっていいだろう。ちなみにライト・ヘビー級の上限体重は79.3キロ。53.5キロのバンタム級よりも10階級上で、26キロ近くも重い。

シリモンコンは24年超に及んだ山あり谷ありのプロボクサー生活を勝利で締めくくることができるのか。

6階級制覇パッキャオ争奪戦 王座獲得で価値再浮上

 6階級制覇の実績を持つWBA世界ウエルター級王者、マニー・パッキャオ(39=比)の今後の試合開催権を巡り、世界的なプロモーターたちがビジネス上の駆け引きを展開している。年内に1試合、来年に2試合したあと引退の意向と伝えられるパッキャオだが、はたしてシナリオどおりにいくのか。

 小さな体をエネルギッシュに動かしながら鋭く踏み込み、相手の懐に入ってサウスポーから左ストレート、右フック、アッパーなど多彩なパンチを放って大きな男をKO-そんな漫画のような戦いっぷりで人気を集めたパッキャオだが、12年以降の9戦に限ってみれば5勝4敗と不振気味だった。フロイド・メイウェザー(米)との世紀のメガファイトで判定負けを喫したのは仕方ないとしても、昨年7月には世界的には無名だったジェフ・ホーン(30=豪)にも判定で敗れるなど、衰えは隠せない状況といえた。

 こうしたなかパッキャオはホーン戦後、10年以上も良好な関係を続けてきたトップランク社といったん距離を置き、16年間も師事してきた名匠、フレディ・ローチ・トレーナーとのコンビも解消した。あとは自然にフェードアウトしていくはず-ファンの多くがそうだったように、関係者も同じように見ていたはずだ。

 しかし、パッキャオは先月15日、新チームで臨んだルーカス・マティセ(35=亜)戦で3度のダウンを奪って7回TKO勝ち、WBA世界ウエルター級王座を獲得してみせた。09年以来、14試合ぶりのKO(TKO)勝ちで、十分に老雄健在をアピールする内容だった。パッキャオは12月で40歳になるが、王座を獲得したことで商品価値は再浮上。これをプロモーターたちが見逃すはずがない。

 獲得に動いたのは3社。潤沢な資金を持つ英国のマッチルーム・ボクシングは、英国を中心に活動する元世界王者のアミール・カーン(31=英)との対戦をパッキャオに提示。一方、トップランク社は86歳のボブ・アラム・プロモーターがフィリピンまで飛んで直接交渉した。こちらは同社が契約しているスター選手、WBA世界ライト級王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)、ホーンを一蹴してWBO世界ウエルター級王座についたテレンス・クロフォード(30=米)との対戦をほのめかしている。

 さらに、3年前にパッキャオと対戦したこともあるメイウェザーも、かつてのライバル獲得に乗り出している。「メイウェザー・プロモーションズ」の代表でもあるメイウェザーは、近い関係にあるライト級のWBC&IBF王者、ミゲール・マイキー・ガルシア(30=米)とパッキャオとの対戦を計画している。

 アラム・プロモーターによれば、パッキャオの次戦は12月2日が有力だという。はたして再浮上した6階級制覇王者がどのプロモーターと組んで誰と戦うのか。リングの中だけでなく場外でのパッキャオ争奪戦にも注目したい。

井岡ら米国で日本選手の試合続々 旋風巻き起こすか

 去る7月28日に米国フロリダ州キシミーでWBO世界スーパーフェザー級王座を獲得した伊藤雅雪(27=伴流)に続けとばかり、8月から9月にかけて元世界3階級制覇王者の井岡一翔(29=SANKYO)ら、日本のトップ選手が相次いで米国のリングに上がる。旋風を巻き起こすことができるのか、注目と期待を集めている。

 先陣を切るのはWBAスーパーウエルター級14位の亀海喜寛(35=帝拳 33戦27勝24KO4敗2分)だ。8月17日(日本時間18日)、カリフォルニア州インディオで22戦19勝(12KO)2敗1分のグレグ・ベンデティ(28=米国)と対戦する。亀海は昨年8月に世界的なビッグネーム、ミゲール・コット(プエルトリコ)とのWBO王座決定戦で12回判定負けを喫しており、これが1年ぶりの再起戦となる。過去に9度も米国のリングに上がっており経験は十分。豪快なKO勝ちが期待される。

 25日(日本時間26日)にはアリゾナ州グレンデールでWBOスーパーバンタム級6位の大竹秀典(37=金子 36戦31勝14KO2敗3分)が、同級王者アイザック・ドグボエ(23=ガーナ)に挑む。大竹は14年11月に英国でWBA王座に挑んで12回判定負けを喫したが、以後は9連勝(5KO)と復調している。ただ、王者のドグボエは12年ロンドンオリンピック(五輪)出場の経験を持つうえ、プロでも19戦全勝(13KO)と勢いがあるだけに、大竹にとっては厳しい戦いが予想される。

 9月8日(日本時間9日)には井岡(23戦22勝13KO1敗)がカリフォルニア州イングルウッドのリングに上がる。相手はスーパーフライ級でWBCとWBOで3位にランクされるマクウィリアムス・アローヨ(32=プエルトリコ)。昨年4月のWBAフライ級王座5度目の防衛戦で勝利を収めたのを最後に引退していた井岡にとっては、これが1年5カ月ぶりの実戦となる。父親のジムを離れ、米国のプロモーターと契約を交わすなど環境を一新、4階級制覇を目指して復帰戦に臨む。相手のアローヨは2度の世界挑戦には失敗しているものの20戦17勝(14KO)3敗の戦績を残している実力者。楽観視できない相手といえる。

 9月14日、カリフォルニア州フレズノで行われるWBCスーパーライト級タイトルマッチ、ホセ・カルロス・ラミレス(25=米国)対アントニオ・オロスコ(30=米国/メキシコ)の前座には、同級WBA4位、WBC9位、IBF5位、WBO3位にランクされる岡田博喜(28=角海老宝石)が出場する。岡田は先ごろ、WBAミドル級王者の村田諒太(32=帝拳)も提携している米国のトップランク社とプロモート契約を締結。これが本場のリング初登場となる。35戦27勝(11KO)6敗2分のクリスチャン・ラファエル・コリア(35=アルゼンチン)を相手に、自慢の強打を披露することができるか。存在感を示せば世界挑戦が具体化する可能性もあるだけに、内容も問われることになりそうだ。

 日本勢の活躍に期待したい。

前WBA王者マティセ引退、7月パッキャオにTKO負け

 先月15日にマレーシアの首都クアラルンプールで元6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(39=比)に7回TKO負け、WBA世界ウエルター級王座を失ったルーカス・マティセ(35=亜)が現役引退を表明した。80パーセントのKO率を誇り、2010年代の中量級を湧かせた南米の豪腕は「グローブを壁に吊るし、次のステップを踏むときがきた」とコメントしている。

 マティセは世界的な強豪が集まるスーパー・ライト級(暫定王座)、ウエルター級の2階級で世界王者になったが、必ずしも主役というわけではなかった。同じ時代にパッキャオやフロイド・メイウェザー(米)、ダニー・ガルシア(30=米)といったビッグネームがいたからだ。もともとアルゼンチンのローカル・ファイターだったマティセは10年ごろからアメリカに呼ばれるようになり、元王者たちとのテストマッチを5試合も組まれた。そのうちの3試合でKO(TKO)勝ちを収め、地元判定の声が多かった2試合でもダウンを奪って存在感を示した。

 12年9月、30歳になる直前にWBCスーパー・ライト級暫定王者になったが、そのときの戦績は35戦32勝(30KO)2敗1無効試合というものだった。KO率は約86パーセントだった。ノンタイトル戦では同じ階級のIBF王者を3度倒して3回TKOで下した。このころ(13年5月)が全盛期だったようだ。じわじわと圧力をかけながら前に出て距離を潰し、射程が合うとハンマーのような硬質感のある左右のフック、ストレートなどを繰り出して相手をキャンバスに沈めてしまう。ニックネームは「マキナ(機械)」。精密機械ではなく、前にあるものを押しのけてしまう重機を思わせる戦いぶりだった。

 ただ、強豪との連戦で疲労とダメージが蓄積したのか、3年前にはWBA世界スーパー・ライト級王座決定戦で10回KO負けを喫してしまう。目を傷めたこともあり、いったんはリングから遠ざかった。昨年5月、ウエルター級に上げて再起を果たし、今年1月にはWBO世界ウエルター級王座を獲得、2階級制覇を成し遂げた。先月のパッキャオ戦は主役の座を射止めるチャンスだったが、6階級制覇の実績を持つサウスポーのスピードについていけず、3度のダウンを喫して7回で力尽きた。14年のプロキャリアで残した戦績は45戦39勝(36KO)5敗1無効試合。常にエキサイトティングな試合を提供して多くのファンを持っていたマティセは、引退に際し「自分の人生を変えてくれたボクシングに感謝している。私は夢を達成することができた。10年間もトップで戦い続けることができたことを誇りに思う」と綴っている。

 アルゼンチンはときどき怪物的な強さを持った世界的な選手を輩出するが、近い将来、「第2のマティセ」が登場してくることを期待したい。

何が起こったのか 11人→6人に減少した日本の世界王者

 先週はフィリピン勢の躍進について書いたが、それと反比例するかのように日本からの世界王座流出が目立つ。2018年がスタートしたときには日本のジム所属選手として11人の世界王者がいたが、7月30日の時点で6人にまで減少してしまったのだ。この7カ月の間に何が起こったのか。

 昨年12月30日、31日に日本人選手の出場する世界戦が合計5試合行われ、WBAライトフライ級王者の田口良一がIBF王者との統一戦に12回判定勝ちを収めるなど、5人の王者が揃って防衛を果たした。そのため日本のボクシング界は、以下のように11人の世界王者を擁して新年を迎えた。

◆ミニマム級 IBF王者=京口紘人(ワタナベ) WBO王者=山中竜也(真正)

◆ライトフライ級 WBA&IBF王者=田口良一(ワタナベ) WBC王者=拳四朗(BMB)

◆フライ級 WBC王者=比嘉大吾(白井・具志堅) WBO=木村翔(青木)

◆スーパーフライ級 WBO王者=井上尚弥(大橋)

◆スーパーバンタム級 IBF王者=岩佐亮佑(セレス)

◆スーパーフェザー級 IBF王者=尾川堅一(帝拳)

◆ライト級 WBA王者=ホルヘ・リナレス(帝拳)

◆ミドル級 WBA王者=村田諒太(帝拳)

 このうち、尾川は昨年12月の戴冠試合前のドーピング検査で陽性反応を示したとして2月に王座獲得自体を取り消され、比嘉は4月のV3戦を前に規定体重をつくれず失格。この時点で王座を剥奪され、コンディションが整わないまま臨んだ試合では9回TKO負けを喫した。ふたりともリングの外で世界王座を失ったわけで、ドーピング違反、計量で失格という日本初の事例となってしまった。

 リナレス、田口、山中の3人はいずれも防衛戦で敗れて王座を手放した。3階級制覇王者のリナレスは5月12日、アメリカでワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と激闘を展開したが、ボディブローを浴びて10回TKO負けを喫した。その8日後、田口は元ミニマム級王者のヘッキー・ブドラー(南ア)に敗れ、3年以上君臨したトップの座から陥落。そして山中は7月にフィリピン選手に完敗を喫した。

 また、井上は3月にWBOスーパーフライ級王座を返上して上のクラスに転向。5月にはWBAバンタム級王座を獲得して3階級制覇を成し遂げた。無冠の時期は2カ月半と短かった。同じく京口はライトフライ級への転向のため7月に王座を返上している。

 こうしたなか拳四朗、木村、村田は防衛戦で勝利を収めて王座をキープ。井上と、8月16日に2度目の防衛戦を控えている岩佐、さらに7月28日に米国でWBOスーパーフェザー級王座を獲得したばかりの伊藤雅雪(27=伴流)を加えた6人が、現在の日本のジム所属の世界王者ということになる。

 今後、この数字が再び増えていくのか、それとも減るのか。まずは16日の岩佐のV2戦に注目したい。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。