上へ戻る

au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

新王者ロペス ロマチェンコとの4団体統一戦匂わす

昨年12月14日、米国ニューヨークで行われたIBF世界ライト級タイトルマッチで22歳の新王者が誕生した。衝撃的な2回TKO勝ちで戴冠を果たした男の名はテオフィモ・ロペス(米国)。16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)に出場後にプロ転向を果たしたロペスは、15戦全勝(12KO)と破竹の快進撃を続けている。早くも同じライト級の3団体王者、ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)との頂上対決も噂されている。今回は2020年にさらなる飛躍が期待されるロペスを紹介しよう。

ロペスは1997年7月30日、米国ニューヨークで生まれた。両親はカリブ海に面したホンジュラスの出身で、ロペスは姉ふたりに続く第3子だった。アマチュアで約170戦をこなし「だいたい150回は勝ったと思う」とロペスは話している。15年の全米大会や五輪予選を勝ち抜いたが、すでにポイント制でリオデジャネイロ五輪出場を決めている米国選手がいたため、ロペスは両親の故国、ホンジュラス代表として本戦に出場した。五輪ではライト級初戦で敗退、19歳でプロに転向することを決意した。

村田諒太(帝拳)や井上尚弥(大橋)も所属しているトップランク社と契約を交わして16年11月にプロデビュー。持ち前のパワーを前面に押し出した攻撃的なボクシングでKO勝ちを重ね、18年7月以降は元世界ランカーや現役の世界ランカーら5人を下してランキング1位に躍進。そのなかには東洋太平洋王座を11度防衛した中谷正義(井岡)に12回判定勝ちを収めた試合も含まれている。

IBFの指名挑戦者として挑んだ12月の試合では、前評判の高かった王者、リチャード・コミー(ガーナ)から右のカウンター一発でダウンを奪い、再開後に連打を叩きつけてレフェリー・ストップに持ち込んだ。期待を上回る鮮やかな戴冠劇だった。試合後、ロペスは「俺が次に誰と戦うか、みんな知っているよね」と、リングサイドで観戦していたロマチェンコとの対決を匂わせた。

そのロマチェンコは同じライト級のWBAスーパー王座、WBCフランチャイズ(特権)王座、WBO王座を保持しており、両者の試合が実現すれば4団体統一戦となる。ロマチェンコとも契約を交わしているトップランク社は、この注目カードを5月にも実現させる方向で動いていると伝えられる。五輪連覇、プロ3戦目で世界王座獲得、7戦目で2階級制覇、12戦目で3階級制覇を成し遂げている技巧派サウスポーのロマチェンコ(15戦14勝10KO1敗)と、左右のパンチに破壊的なパワーを秘めた強打者のロペス-4対1のオッズが出ているように先輩王者に分があることは間違いないが、22歳の昇竜が番狂わせを起こすことも十分に考えられるカードだ。

IBF世界ライト級王者、テオフィモ・ロペス、22歳。この名前を覚えておいて損はないはずだ。

日本ジム所属選手のホンモノ志向 海外世界戦楽しみ

日本のボクシング界は井上尚弥(26=大橋)や村田諒太(34=帝拳)をはじめ7人の世界王者(男子)を擁して2020年を迎えた。7王者の試合がすべて10月以降に集中していたこともあり次戦の具体的な日程は発表されていないが、今年はトップ選手の国外での試合が増えそうな気配だ。

以下のデータでも分かるように2010年以降、日本のジム所属選手の海外での世界戦は増加傾向にある。

<年  海外世界戦/世界戦総数 割合>

2010年     2/22  9%

2011年     5/26  19%

2012年     4/26  15%

2013年     11/34  32%

2014年     5/25  20%

2015年     9/28  32%

2016年     5/28  18%

2017年     14/40  35%

2018年     8/29  28%

2019年     10/27  37%

従来のWBA、WBCに加え13年4月からIBFとWBOに加盟したため日本のボクシング界は4団体時代に突入したが、世界戦総数は横ばい状態といえる。これは関係者が自制しているというよりも、年々、国内でのイベント開催が難しくなっているためと解釈した方がよさそうだ。19年に国内での世界戦は17試合あるが、そのうち11試合はダブル(2試合)、あるいはトリプル(3試合)での開催だった。単独(1試合)開催は6度に留まっている。

遡ること20年、畑山隆則(横浜光)対坂本博之(角海老宝石)のWBA世界ライト級タイトルマッチが行われた2000年を例に出すと、この年の日本のジム所属選手が出場した世界戦は14試合、そのうち海外での世界戦は1試合だけだった。しかも国内で行われた13度の世界戦はいずれも単独でのイベント開催だった。こうしたデータからも、日本のジム所属選手の海外での世界戦と、国内では同日複数開催が増加していることが分かる。この傾向は今後も変わらないだろう。

トップ選手たちの意識も大きく変化した。その典型が井上と村田だろう。ふたりともアマチュア時代から海外での試合を数多く経験しており、プロでも国外試合をこなしている。そんななかで自然と芽生えたのが“ホンモノ”志向だ。井上に至ってはプロ転向時から常に「強い相手と戦っていきたい」と口にしているほどだ。階級最強を決めるトーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」への参戦は、そんな井上の願望を満足させるものだったことだろう。

村田も格上とされるサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)やゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)らとの頂上決戦を見据えている。その流れのなかに海外進出が組み込まれているといっていい。

4階級制覇の井岡一翔(30=Reason大貴)、3階級制覇の田中恒成(24=畑中)、7度の防衛を果たしている寺地拳四朗(28=BMB)、2階級制覇の京口紘人(26=ワタナベ)、昨秋に2度目の戴冠を果たした岩佐亮佑(30=セレス)も上昇志向が強く、環境が整えば海外での世界戦に臨むことになりそうだ。遅ればせながら日本のボクシング界にも本格的なボーダーレス(越境)の時代がやってきたといえる。

2020年、日本のジム所属選手の出場する世界戦がどこで何度行われるのか、どんなドラマが生まれるのか楽しみだ。

井上尚弥4団体統一か 20年日本ボクシング界占う

現在の日本ボクシング界はバンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座を持つ井上尚弥(26=大橋)、WBAミドル王座を奪回した村田諒太(33=帝拳)、4階級制覇を成し遂げた井岡一翔(30=Reason大貴)らを中心に回っているといっていいだろう。その活躍は国内にとどまらず、いまや世界的な注目を集めるまでになっている。そんな彼らを軸に2020年の日本ボクシング界を占ってみよう。

井上は4月25日に米国ネバダ州ラスベガスで次戦が計画されており、相手候補にはWBO王者のジョンリエル・カシメロ(30=比国)とWBC王者のノルディーヌ・ウバーリ(33=仏)の名前が挙がっている。ふたりとも井上が契約したトップランク社系の選手であることから、順番に対戦することも考えられる。井上の実力を考えれば、その2試合を勝ち抜いて年内に4団体統一王者という夢が達成される可能性は十分にある。

村田は、4階級制覇を成し遂げているサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)か、20度の防衛実績を持つゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)との対戦実現を目指している。世界的なスター選手である相手側が選択権を持っているような状態のため村田は待つ立場といえるが、日本開催となった場合は大きなイベントになるはずだ。

井岡は他団体王者との統一戦や海外防衛戦を視野に入れている。ターゲットはWBA王者のカリド・ヤファイ(30=英国)、WBC王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(29=メキシコ)、IBF王者のジェルウィン・アンカハス(28=比国)だ。このほか4階級制覇の実績を持つローマン・ゴンサレス(32=ニカラグア)も対戦候補のひとりといえる。

このほか3階級制覇のWBOフライ級王者、田中恒成(24=畑中)、V7中のWBCライトフライ級王者、寺地拳四朗(27=BMB)、同じライトフライ級のWBAスーパー王者、京口紘人(26=ワタナベ)、IBFスーパーバンタム級暫定王者の岩佐亮佑(30=セレス)らも、前年以上の活躍が期待される。

2月には元世界王者たちの試合が続く。2日に中国で伊藤雅雪(28=横浜光)が再起第2戦、13日には比嘉大吾(24=白井・具志堅)が1年10カ月ぶりの復帰戦を行う。14日にはホルヘ・リナレス(34=帝拳)が米国で再起第2戦を予定している。内容と結果しだいでは遠からず返り咲きのチャンスが巡ってくるものと思われる。

小国以載(31=角海老宝石)、亀田和毅(28)、井上拓真(24=大橋)ら元世界王者も再戴冠の機会を狙っている。また、意図せざるドーピング違反で“幻の世界王者”となったスーパーフェザー級の尾川堅一(31=帝拳)も世界挑戦のチャンスを待つ身だ。

若手では、20戦全勝(15KO)のフライ級新鋭、中谷潤人(22=MT)の世界挑戦と戴冠が期待される。このほか飛躍が期待されるホープとしては、トップランク社とプロモート契約を交わした平岡アンディ(23=大橋)、日本を含むアジア圏の3冠王者、吉野修一郎(28=三迫)、元世界王者の薬師寺保栄氏の秘蔵っ子で11戦全勝(6KO)の森武蔵(20=薬師寺)らがいる。すでに3人とも世界15位内に入っているが、どこまでランクを上げることができるか注目だ。

2020年も日本のボクシング界が充実した実り多い年になることを願いたい。

村田諒太、井上尚弥の相手は?今年の見どころ大公開

2020年のスタートということで、今回は実現が望まれる世界的な注目カードや活躍が期待されるトップ選手を軸に話を進めてみよう。もちろん2019年を湧かせた「モンスター」、井上尚弥(26=大橋)も入っている。

重いクラスから順に話を進めていこう。まずはヘビー級だ。主役は、WBC王座を10度防衛中のデオンタイ・ワイルダー(34=米国)、WBA、IBF、WBO3団体王座に君臨するアンソニー・ジョシュア(30=英国)、2月22日(日本時間23日)にワイルダーに挑戦する元3団体王者のタイソン・フューリー(31=英国)の3人。ワイルダー対フューリーの勝者が4団体統一戦でジョシュアと対戦するという構図が理想だが、その前にジョシュアがIBF1位のクブラト・プーレフ(38=ブルガリア)、さらにWBO1位のオレクサンデル・ウシク(32=ウクライナ)との指名防衛戦を課されており、最終決戦がどんなカードになるか不透明なところがある。

村田諒太(33=帝拳)がWBA王座に君臨するミドル級も風雲急を告げる状態だ。WBCフランチャイズ(特権)王座を持つ世界的なスター選手、サウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)がこの階級の核となる存在だが、村田との対戦が実現するかどうかが日本のファンにとっては最大の注目といえよう。IBF王者のゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)と村田の強打者対決も興味深い。帝拳ジムの本田明彦会長は「村田対カネロが実現するとしたら5月、村田対ゴロフキン戦が実現するとしたら6月」と、それぞれのカードの実現可能性の時期を明かしている。

ウェルター級では、41歳になった「戦う伝説」、WBAスーパー王者のマニー・パッキャオ(比)と、WBC&IBF王者のエロール・スペンス(29=米国)、そしてWBO王者のテレンス・クロフォード(32=米国)の3強の対決が期待される。それぞれが上半期に別々の相手と試合することが確定的なことから、注目ファイトは実現するとしても早くて下半期ということになりそうだ。

スーパーライト級では、16戦全勝(12KO)のWBA&IBF王者、ジョシュ・テイラー(28=英国)と、25戦全勝(17KO)のWBC&WBO王者、ホセ・ラミレス(27=米国)の英米全勝王者対決の実現が待たれる。

その前にラミレスは2月2日、元WBC王者のビクトル・ポストル(35=ウクライナ)戦をクリアしなければならない。4団体統一戦の実現可能性は30パーセントぐらいか。

ライト級では、WBAスーパー王者、WBCフランチャイズ王者、WBO王者のワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)と、WBO王座を獲得したばかりのテオフィモ・ロペス(22=米国)の4団体王座統一戦が実現しそうだ。すでに両陣営は4月に対戦することで基本合意していると伝えられる。スピードとスキルに長けた「ハイテク(高性能)」ロマチェンコと、15戦全勝(12KO)の強打者、ロペスというタイプの異なる王者同士の対決だけに試合前から大いに盛り上がりそうだ。

そして、バンタム級の井上尚弥である。井上と米国での興行権契約を交わしたトップランク社のボブ・アラム・プロモーターは、WBAスーパー王座とIBF王座を持つ「モンスター」の次戦を4月25日(日本時間26日)に米国ネバダ州ラスベガスで開催する方向で調整に入っていることを明かしている。対戦相手候補としてWBO王者のジョンリエル・カシメロ(30=比)とWBC王者のノルディーヌ・ウバーリ(33=仏)の名前が挙がっている。実現すれば3団体の王座統一戦となる。爆発的な強打を持つカシメロ、尚弥の弟・拓真に勝った技巧派サウスポーのウバーリ。井上との対戦が実現すれば、どちらも興味を引くカードといえる。

このほか、15戦全KO勝ちのWBC&IBF世界ライトヘビー級王者、アルツール・ベテルビエフ(34=露)、19年に4度のKO防衛を果たしたWBO世界スーパーバンタム級王者、エマヌエル・ナバレッテ(24=メキシコ)の活躍も期待される。特に、井上尚弥の近未来の対戦候補として名前の挙がっているナバレッテには今年も要注目だ。

19年ボクシング界のMVPは4階級制覇アルバレス

階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」シーズン2で、井上尚弥(26=大橋)がバンタム級優勝を飾るなど日本人選手の活躍も目立った2019年の世界のボクシング界。この1年を「賞」形式で振り返ってみよう。

MVPは4階級制覇を果たしたサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)で文句ないだろう。直近の4試合すべて相手が現役の世界王者である点や、11月にWBO世界ライト・ヘビー級王座を獲得したことなどを高く評価したい。王座統一を果たしたバンタム級の井上、ウエルター級のエロール・スペンス(29=米国)、スーパー・ライト級のジョシュ・テイラー(28=英国)、41歳にして世界王座に君臨しているウエルター級のマニー・パッキャオ(比国)らが続く。

殊勲賞は22戦全勝(21KO)だったアンソニー・ジョシュア(30=英国)を7回TKOで破って3団体統一世界ヘビー級王者になったアンディ・ルイス(30=米国)で決まりだ。この試合は16対1というオッズだった。再戦では本来の力量差が出てジョシュアが大差の判定勝ち、王座を奪回している。

敢闘賞は年間4度のKO防衛を果たしたWBO世界スーパー・バンタム級王者のエマヌエル・ナバレッテ(24=メキシコ)でいいだろう。そう遠くない将来、井上のライバルになる可能性を秘めた強打者だけに今後も注目していきたい。日本人初の4階級制覇を成し遂げた井岡一翔(30=Reason大貴)、井上との対決を熱望しているWBO世界バンタム級王者の3階級制覇者、ジョンリエル・カシメロ(30=比国)、中国3人目の世界王者になったWBAフェザー級のシュー・チャン(25)などの奮闘も目立った。

技能賞はふたり。ライト級の3団体王者、ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)とWBO世界ウエルター級王者のテレンス・クロフォード(32=米国)だ。「ハイテク」のニックネームどおりのスキルを発揮し続けるロマチェンコ、世界戦で7連続KO勝ち中の「ハンター」、クロフォード。甲乙つけがたいところだ。

KO賞はWBC世界ヘビー級王者のデオンタイ・ワイルダー(34=米国)で異論なしだろう。5月のV9戦は1回、11月のV10戦は7回、ともに右ストレート一発で仕留めた。これぞヘビー級という迫力だった。

年間最高試合はルイス対ジョシュア初戦を推したい。最重量級、ダウン応酬、歴史的番狂わせ、KO決着、と多くの要素を含んだ試合だった。バンタム級の井上対ノニト・ドネア(37=比国)、ウエルター級のスペンス対ショーン・ポーター(32=米国)とパッキャオ対キース・サーマン(31=米国)、スーパー・ライト級のテイラー対レジス・プログレイス(30=米国)、ライト・ヘビー級のアルツール・ベテルビエフ(34=露)対オレクサンデル・グウォジク(32=ウクライナ)の王座統一戦(団体内含む)も激闘だった。

新鋭賞にはテオフィモ・ロペス(22=米国)がふさわしいだろう。12月15日に右一発で2回TKO勝ち、デビューから15連勝(12KO)でIBF世界ライト級王座を獲得した。来年はロマチェンコとの統一戦など多くの話題を提供しそうだ。

2020年にはどんな選手が活躍し、どんなドラマが生まれるのだろうか。

風雲急を告げるヘビー級トップ戦線 最後に笑うのは誰だ

プロボクシングはウェート別に17階級に細分されているが、唯一、体重制限がないのが最重量級のヘビー級だ。200ポンド(約90・7キロ)以上の体重があれば仮に200キロでもOKで、もちろん身長も制限がない。近年は超大型化が顕著で、元3団体王者のタイソン・フューリー(31=英国)のように身長206センチ、リーチ216センチ、体重115キロ超という選手もいる。もちろん選手の報酬も他階級と比較すると桁違いである。そんなヘビー級トップ戦線が、ここにきて風雲急を告げる状態となってきた。

WBA、WBC、IBF、WBOという主要4団体のうち、まず11月23日にWBC王者のデオンテイ・ワイルダー(34=米国)が10度目の防衛戦を行い、ルイス・オルティス(40=キューバ)に7回KO勝ちを収めた。その2週間後の12月7日にはWBCを除く3団体の王座を持つアンディ・ルイス(30=メキシコ)が初防衛戦に臨んだが、前王者のアンソニー・ジョシュア(30=英国)に一方的な判定で敗れた。この結果、「5強」からオルティスとルイスが脱落。残ったワイルダー(43戦42勝41KO1分)、ジョシュア(24戦23勝21KO1敗)、フューリー(30戦29勝20KO1分)が「3強」を形成することとなった。

こうしたなか来年2月22日にはワイルダーとフューリーが拳を交える予定だ。両者は18年12月に対戦し、三者三様の12回引き分けという結果に終わっている。巧みな試合運びでポイントを奪ったフューリーに対し、ワイルダーが9回と12回にダウンを奪って帳尻を合わせたという内容だった。その後、ワイルダーは2度のKO防衛を重ね、フューリーも世界ランカー相手に2勝している。まずはこの再戦の勝者が“最強”の称号に王手をかけることになる。

一方、返り咲きを果たしたジョシュアはIBFから1位のクブラト・プーレフ(38=ブルガリア)、WBOからは元世界クルーザー級王者のオレクサンデル・ウシク(32=ウクライナ)との防衛戦を課されている。それぞれの陣営と統括団体が合意すれば順に戦うことになるが、交渉がこじれた場合はどちらかの王座が宙に浮く可能性もある。いずれにしてもジョシュアは来夏までスケジュールに縛られることになりそうだ。

興味深いのは、ワイルダーが米国のディベラ・エンタテインメント社、フューリーとプーレフが米国のトップランク社、ジョシュアとウシクが英国のマッチルーム・ボクシングとプロモート契約を交わしている点だ。特に無冠のフューリーとプーレフを擁するトップランク社が王者陣営にどうプレッシャーをかけて出るのか注目される。直近の試合でジョシュアが約70億円、ルイスが約14億円、ワイルダーが約20億円の報酬を得たと伝えられるように、ヘビー級は動く金額も桁違いだ。それだけにリング外のビジネス競争も激化は必至とみられている。

最後に笑うのはワイルダーなのかジョシュアなのか、はたまたフューリーなのか。それともプーレフ、ウシクが割り込んで総取りしていくのか。ヘビー級トップ戦線は2020年も多くの話題を提供しそうだ。

WBOウエルター級 王者クロフォードV3戦に注目

3階級制覇を成し遂げているWBO世界ウエルター級王者、テレンス・クロフォード(32=米国)の3度目の防衛戦が14日(日本時間15日)、同級1位のエギディウス・カバラウスカス(31=リトアニア)を相手に米国ニューヨークで行われる。一時期はワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)や井上尚弥(26=大橋)らを抑えて体重無差別のボクサー評価ランキング、「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」でトップに位置づけられることもあったクロフォードだが、いまは米国「リング誌」のPFPでは4位に後退している。無敗の挑戦者を一蹴して強さと巧さをアピールできるか。

クロフォードは14年にWBO世界ライト級王座を獲得し、2度防衛後に返上してスーパー・ライト級に転向。15年にWBO王座を手にすると通算6度の防衛を果たした。この間、WBC王座、WBA王座、IBF王座も獲得しており、ミドル級のバーナード・ホプキンス(米国)に続き自力で4団体のベルトを収集した2人目の世界王者となった。現在の王座は昨年6月、ジェフ・ホーン(31=豪州)から奪ったもので、すでに2度の防衛を果たしている。35戦全勝(26KO)のうち世界戦だけで13度を数え全勝、そのうち10度はKO(TKO)で終わらせている。目下6連続KO勝ちと無敵状態が続いている。

それでもPFPのランキングでずるずると後退しているわけだが、これはほかの選手が強豪との試合でよりインパクトの強い勝利を収めているからといえる。たとえばリング誌で1位にランクされるサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)は直近の4試合で世界王者4人を相手に4勝(2KO)。3位の井上とクロフォードは4試合のうち世界王者2人、元世界王者2人が相手で、2位のロマチェンコは世界王者2人、元王者と最上位者(WBC1位)ひとりと大差はない。しかし、ロマチェンコと井上の方がクロフォードよりも上質の相手と戦い、かつ中身の濃い試合をしているという評価がなされているのだ。このトップ4選手の差は紙一重だけに、今後のカード、内容、結果しだいで順位が入れ替わることは十分に考えられる。

今回、クロフォードに挑戦するカバラウスカスは北欧リトアニアの出身で、13年6月のプロデビューから22戦(21勝17KO1分)すべて米国内で戦ってきた。世界的な知名度は高いとはいえないが、アマチュア時代にはオリンピックに2度出場した実績を持っている。腕力に頼ったボクシングをする攻撃型で、体も頑丈だ。柔軟性に欠ける傾向はあるが、ツボにはまると怖い選手といえる。KO率は77パーセントで、クロフォードの74パーセントよりも高い。

左右どちらの構えでも戦えるクロフォードはスピード、スキル、インテリジェンス、経験値など多くの部分で上回っており、10対1のオッズが示すとおり圧倒的有利といえる。挑戦者に付け入るスキを与えずに完封してしまうという見方が大勢を占めている。カバラウスカスが大番狂わせを起こすには、強引に接近戦を仕掛けて王者のアゴに右ストレートを当てる必要があるだろう。

「ハンター」の異名を持つ絶対王者、クロフォードがどんなパフォーマンスを見せるのか注目したい。

ヘビー級直接再戦経て頂上決戦へ 最後に笑うのは?

7日(日本時間8日)、サウジアラビアの首都リヤド近郊ディルイーヤでWBA、IBF、WBO3団体統一世界ヘビー級タイトルマッチ、王者アンディ・ルイス(30=米国)対前王者アンソニー・ジョシュア(30=英国)の12回戦が行われる。両者は今年6月、今回とは逆の立場で対戦し、16対1のオッズをひっくり返してルイスが7回TKO勝ち、戴冠を果たした。半年のスパンで行われる直接再戦には「Clash On The Dunes(砂丘の激突)」というイベントコピーがつけられている。

ルイスが返り討ちにするのか、それともジョシュアがリベンジして3団体の王座を取り戻すのか、注目の一戦だ。

今年6月1日、ジョシュアは別の相手と通算7度目の防衛戦を行うはずだったが、その選手がドーピング違反が発覚したため挑戦を取り消され、41日前に試合をしたばかりのルイスがピンチヒッターに起用された経緯があった。そんなこともあり初戦はジョシュアの圧勝が予想されていた。

はたして試合が始まっても序盤は王者が優勢だった。身長で10センチ、リーチで20センチ勝るジョシュアが3回、左フックをヒットして先制のダウンを奪ったときは結末が近いと思われたものだ。ところが勝負を急いで距離が詰まったことでルイスの反撃に遭うことになった。ルイスは左右フックを浴びせて同じラウンド内に2度のダウンを奪い返した。ダメージはジョシュアの方が深く、一時は持ち直したものの7回に再び捕まり、2度のダウンを追加されて万事休した。

初戦の契約に沿って短期間で即再戦が行われることになったわけだが、ボクシングでは珍しいサウジアラビアで試合が挙行されることになったのは、同国の投資家グループの誘致があったからだ。提示金額は1億ドル(約109億円)と伝えられる。

両者合わせて5度のダウンシーンがあったカードのパート2とあって、世界的な注目度は高い。オッズは9対4、今回もジョシュア有利と出ている。初戦ではミスを犯して敗れたが、再戦では左ジャブを突いて距離をとる慎重なボクシングに徹するだろうとみられている。そのうえで好機とみれば破壊力のある右ストレートの長距離砲を繰り出すのではないかという見方が多い。

これに対し身長、リーチとも188センチで体重約120キロのルイスは、ガードを上げた構えで接近を図るタイプで、中近距離で回転の速い左右フックを得意としている。踏み込みもパンチも寸胴体型からは想像できないスピードがあるため、そのギャップに相手は戸惑い対応に苦慮することが多い。初戦ではジョシュアの気持ちをも折っており、返り討ちに自信満々だ。

戦績はルイスが34戦33勝(22KO)1敗、12年ロンドンオリンピック(五輪)金メダリストでもあるジョシュアが23戦22勝(21KO)1敗。

同じヘビー級では11月23日にWBC王者のデオンテイ・ワイルダー(34=米国)が右の一撃でルイス・オルティス(40=キューバ)に7回KO勝ち、V10を果たしたばかりだ。そのワイルダーは来年2月22日、18年12月に引き分けた元3団体統一王者のタイソン・フューリー(31=英国)と再び拳を交えることが決まった。

ルイス対ジョシュア、そしてワイルダー対フューリー。当然、この2試合の勝者同士による頂上決戦が期待されるところだ。熾烈を極めるヘビー級トップ戦線。最後に笑うのは?

ナバレッテが4度目の防衛戦 井上尚弥のライバルになる存在

WBO世界スーパーバンタム級王者、エマヌエル・ナバレッテ(24=メキシコ)が12月7日(日本時間8日)、メキシコのプエブラで同級13位のフランシスコ・オルタ(26=メキシコ)を相手に4度目の防衛戦を行う。

まだナバレッテの知名度は高くはないが、遠くない将来に井上尚弥(26=大橋)のライバルになる可能性を秘めた強打者だ。ボクシングファンはいまからナバレッテをチェックしておいて損はしないはずだ。

ナバレッテは12年2月、17歳になってすぐにプロデビューし、ここまで30戦して29勝(25KO)1敗という戦績を残している。唯一の敗北はプロ6戦目に4回判定負けを喫したもので、以後は24連勝(20KO)をマークしている。昨年12月、ロンドン五輪にも出場した経験を持つアイザック・ドグボエ(ガーナ/英国)に米国ニューヨークで挑戦し、番狂わせの12回判定勝ちで現在の王座を獲得した。地域王座にすら挑戦したことがなかったナバレッテにとってはメキシコ国外で初の試合でもあった。

このときは「ドグボエの調子が悪かったのだろう」という声もあったが、今年5月の再戦で新王者は12回TKOで前王者を返り討ちにした。一方的に打ちまくっての圧勝とあって、今度は多くのファンや関係者がナバレッテの実力を認めることになった。ボクシング界最大手ともいえるトップランク社がナバレッテとプロモート契約を結んだのは、単に力量だけではなく積極的でエキサイティングなファイト・スタイルを評価してのことと思われる。同社が井上と契約したのと理由は同じといってもいいだろう。

若くて怖いもの知らずのナバレッテは8月にセットされた2度の防衛戦を3回KOでクリアすると、その28日後にV3戦を行い4回TKOで挑戦者を一蹴してみせた。そして今度は3カ月足らずの短いスパンで4度目の防衛戦に臨むわけだ。

公表されているナバレッテのサイズは身長170センチ、リーチ183センチだが、リング上ではもっと大きく感じられる。躍動的なスタイルがそうした印象を与えるのかもしれない。パンチは左右とも強く、中近距離でそれらをテンポよく打ち込んでくる。スタミナもあり、一戦ごとに経験値も高めている。

今回の挑戦者、オルタは24戦20勝(10KO)3敗1分の戦績を残しているが、地域王座への挑戦もなくメキシコ国外での試合経験もない。25対1で王者有利というオッズも当然といえよう。戴冠前のナバレッテ自身がそうだったように、上を目指す者のモチベーションを甘くみるのは危険だが、現時点での両者間の力量差は大きい。ナバレッテのKO防衛が濃厚だ。

いまのところ井上はバンタム級の4団体王座統一を狙っているが、目的を果たしたあとはスーパーバンタム級に転向する計画と伝えられる。ナバレッテは井上と同じトップランク社傘下ということもあり、マッチメークの障壁は少ない。このままふたりが勝ち進めば1年半後、あるいは2年後に井上対ナバレッテが実現するかもしれない。

まずはナバレッテが今回のV4戦でどんな結果を残すのか注目したい。

右の長距離砲VS「キングコング」再戦WBCヘビー

42戦41勝(40KO)1分けという驚異的なレコードを誇るWBC世界ヘビー級王者、デオンタイ・ワイルダー(34=米国)が23日(日本時間24日)、米国ネバダ州ラスベガスで元WBA暫定王者で現WBC3位のルイス・オルティス(40=キューバ)を相手に10度目の防衛戦を行う。ワイルダーは昨年3月、7度目の防衛戦でオルティスと対戦し、ダウン寸前の窮地を脱して10回TKO勝ちを収めている。今回も最重量級らしい迫力のある攻防が見られそうだ。

ワイルダーは身長201センチ、リーチ211センチと大柄だが、体重は97キロ~104キロとヘビー級にしては常に軽めだ。ワイルダーとの初戦時、オルティスは約109キロ、V8の相手だったタイソン・フューリー(31=英国)は約116キロ、V9戦の相手は約115キロもあった。08年11月にプロデビューしてから11年、ワイルダーが相手よりも重い体重でリングに上がったことはわずか7回しかない。

それでも1度も負けていないだけでなく、95パーセント超のKO率を残しているのだから驚きだ。恵まれたリーチを生かしたスピーディーな左ジャブで距離を測り、相手のガードの間を割って右ストレート一閃(いっせん)。この攻撃パターンで多くの猛者をキャンバスに叩きつけてきた。粘る相手には強引ともいえる左右の連打を叩き込んで戦闘不能状態に追いやってきた。

そんなワイルダーだが、プロになって2度、敗北寸前まで追い込まれたことがある。最終回にダウンを奪って辛うじて引き分けに持ち込んだフューリー戦と、20カ月前のオルティス戦だ。特にオルティスとの初戦は厳しい戦いだった。ワイルダーは5回に軽いダウンを奪って優位に立ったものの7回に猛反撃に遭い、あわやレフェリー・ストップかというほどのダメージを負っている。態勢を立て直し10回に2度のダウンを追加してけりをつけたが、危ない試合だった。

その後、ワイルダーが2戦1勝1分けなのに対しオルティスは世界ランカーらを相手に3連勝(2KO)を収めている。

オルティスはアマチュアで368戦349勝19敗の戦績を残したあと30歳でプロに転向した遅咲きの選手で、15年から16年にかけてWBAの暫定王座に君臨したこともある。

プロ戦績は34戦31勝(26KO)1敗2無効試合。ワイルダーにはおよばないがKO率は76パーセントと高い。スピードとスキル、強打を併せ持ったサウスポーで、「キングコング」というニックネームがある。勝利のあと自らの胸を叩くパフォーマンスは有名だ。

実際に拳を交え10回まで戦ったことで、ともに相手の長所と弱点は分かっているはず。

現有戦力に加え初戦の反省と研究が今回の再戦のカギになりそうだ。それでも、オッズが初戦の11対4から9対2に広がっているようにワイルダー有利は揺るがない。右の長距離砲が序盤で火を噴く可能性もありそうだ。

なお、ワイルダー対オルティスの2週間後には、サウジアラビアのリヤド近郊ディリヤでWBA、IBF、WBO3団体統一世界ヘビー級タイトルマッチ、アンディ・ルイス(30=米国)対アンソニー・ジョシュア(30=英国)が行われることになっている。この2試合で最重量級の勢力図に変化が起こるのか、それとも安定化に向かうのか。まずは日本時間24日にラスベガスで行われるWBCタイトルマッチに要注目したい。

群雄割拠のミドル級 年末村田戦までの動きに注目

WBA世界ミドル級王者の村田諒太(33=帝拳)は12月23日、同級9位のスティーブン・バトラー(24=カナダ)を相手に横浜アリーナで初防衛戦を行うことになっているが、そのミドル級の周辺状況が大きく変化しつつある。

村田は2年前に初めてWBA王座を獲得したころから近未来の対戦希望相手として、世界的なスター選手のサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)とゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)の名前を挙げていた。しかし、アルバレスはミドル級王座を持ったまま昨年12月にスーパーミドル級のWBA王座を獲得し、さらに今月2日にはWBO世界ライト・ヘビー級王座に挑戦。体格差に悩まされはしたもののセルゲイ・コバレフ(36=露)を11回KOで破り戴冠を果たした。これによりアルバレスは160ポンド(約72・5キロ)、168ポンド(約76・2キロ)、175ポンド(約79・3キロ)の3階級の王座を同時に保持することになった。常識的に考えてアルバレスがミドル級に戻ってくる可能性は極めて低くなったといえる。

一方、昨年9月にアルバレスに惜敗して無冠になっていたゴロフキンは10月にIBF王座決定戦で辛勝、返り咲きを果たしている。今後、将来的な村田の標的はゴロフキンに絞られるものと思われる。

こうしたなか12月7日(日本時間8日)、米国ニューヨークでWBA暫定王座決定戦が行われることになった。元暫定王者で現1位のクリス・ユーバンク・ジュニア(30=英)と3位のマット・コロボフ(36=露/米)が団体内三つ目のベルトを争うのだ。スーパー王者にアルバレス、正規王者に村田が君臨しているにもかかわらず、もうひとり王者を増やそうというWBAのやり方には首を傾げたくなる。ただ、この先にWBAが正規王者と暫定王者に統一戦を命じる可能性があるだけに注視していく必要はあるだろう。

ユーバンク対コロボフのイベントでは、メインでWBCタイトルマッチが組まれている。

王者のジャモール・チャーロ(29=米)が5位のデニス・ホーガン(34=アイルランド)を迎え撃つものだが、チャーロの3度目の防衛が濃厚とみられている。

また元WBA、IBF王者で現WBA2位のダニエル・ジェイコブス(32=米)の動きにも注目したい。アルバレス、ゴロフキンと戦っていずれも12回判定で惜敗しているジェイコブスは12月20日(日本時間21日)、米国アリゾナ州フェニックスで元WBC王者のフリオ・セサール・チャベス・ジュニア(33=メキシコ)とスーパーミドル級12回戦を行うことが決まった。これを機に上の階級に転向するのか、あるいはミドル級に留まるのか気になるところだ。

村田対バトラーの一戦もミドル級トップ戦線の動きのひとつといえる。ロブ・ブラント(29=米)との再戦で豪快な2回TKO勝ちを収め王座返り咲きを果たした村田と、30戦28勝(24KO)1敗1分のバトラー。強打者同士の対決がいまから楽しみだ。

個性派揃いのバンタム級トップ戦線から目が離せない

いよいよ明日7日、さいたまスーパーアリーナで階級最強を決めるトーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級決勝戦、WBA&IBF王者、井上尚弥(26=大橋)対WBAスーパー王者、ノニト・ドネア(36=比)が行われる。ダブルメインとしてWBC内の同級王座統一戦、正規王者のノルディーヌ・ウバーリ(33=仏)対暫定王者、井上拓真(23=大橋)も挙行される。この2試合を含め、11月には主要4団体の世界王者が全員リングに上がる予定だ。WBSS決勝で最強が決まるものの、それは一時的なものといえる。バンタム級ウォーズはこれからが佳境といえそうだ。

現在の主要4団体の王座保持者は以下のとおりだ。

WBAスーパー王座 : ノニト・ドネア(36=比)

WBA王座     : 井上尚弥(26=大橋)

WBC王座     : ノルディーヌ・ウバーリ(33=仏)

WBC暫定王座   : 井上拓真(23=大橋)

IBF王座     : 井上尚弥(26=大橋)

WBO王座     : ゾラニ・テテ(31=南ア)

WBO暫定王座   : ジョンリエル・カシメロ(30=比)

スーパー王者や暫定王者を含め6人がベルトを持っている混戦状態といえる。実績では5階級制覇を果たしているドネア(45戦40勝26KO5敗)がトップだが、最も高い評価を受けているのは井上尚弥(18戦全勝16KO)だ。したがってこの両者の対決で勝った方がバンタム級最強といっていいだろう。16戦全勝(12KO)のウバーリと13戦全勝(3KO)の井上拓真のWBC内統一戦も注目カードだ。

この2試合のあともバンタム級ウォーズは続く。23日(日本時間24日)には米国ネバダ州ラスベガスでWBCの挑戦者決定戦が組まれている。元WBC王者で現1位のルイス・ネリ(24=メキシコ)と前IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(27=プエルトリコ)が拳を交えるのだ。ネリは17年8月に山中慎介(帝拳)のV13を阻止して戴冠を果たしたが、試合後にドーピング違反が発覚。翌年3月の再戦では大幅な体重オーバーで失格、王座を剥奪されたうえ出場停止処分を科されたことがある。しかしサウスポーから繰り出す強打と実力は折り紙つきで、ここまで30戦全勝(24KO)をマークしている。

一方のロドリゲスは今年5月、WBSS準決勝で井上に2回KO負けを喫してIBF王座を失った前王者で、これが再起戦でもある。20戦19勝(12KO)1敗。こちらも総合的に高い戦闘能力を備えている。勝者がウバーリ対井上拓真の勝者に対する指名挑戦権を手に入れることになるだけに日本のファンも気になる試合といえる。

その1週間後、30日(日本時間12月1日)には英国バーミンガムでWBO内の王座統一戦、正規王者のテテ対暫定王者のカシメロというカードが組まれている。テテはサウスポーの長身強打者で、11秒KOの世界戦最短記録保持者としても知られる。本来なら今年4月にWBSS準決勝でドネアと対戦するはずだったが、右肩を痛めて離脱。これが13カ月ぶりの戦線復帰戦となる。戦績は31戦28勝(21KO)3敗。

テテのWBSS参戦にともなって設けられた暫定王座を獲得し、ライト・フライ級、フライ級に続く3階級制覇を果たしたのがカシメロだ。8月の初防衛戦を含めて4連続KO勝ちと勢いを増している。32戦28勝(19KO)4敗。サウスポー同士の一戦は体格で勝るテテ有利といえるが、打たれ脆い面があるだけにカシメロにも十分にチャンスがある。

井上兄弟をはじめ力のある個性派が揃ったバンタム級トップ戦線。

しばらくは目が離せない状況が続きそうだ。

史上2人目アルバレス世界王座3階級同時制覇なるか

11月2日(日本時間3日)、米国ネバダ州ラスベガスで行われるWBO世界ライト・ヘビー級タイトルマッチが注目を集めている。「クラッシャー(破壊者)」の異名を持つ王者、セルゲイ・コバレフ(36=露)に、世界的な人気を誇るサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)が挑む一戦だ。アルバレスが勝てば4階級制覇となるうえ、ミドル級、スーパー・ミドル級とともに3階級の世界王座を同時に保持することになる。

アルバレスは05年に15歳でプロデビューし、以後の14年間にスーパー・ウェルター級、ミドル級、スーパー・ミドル級の3階級で世界王座を獲得した。戦績は55戦52勝(35KO)1敗2分。唯一の敗北は6年前、あのフロイド・メイウェザー(米国)との試合を判定で落としたものだが、その後は11戦10勝(5KO)1分と無敗をキープしている。

現在はミドル級のWBAスーパー王者とWBC“フランチャイズ(特権)王者“の肩書を持ち、さらにスーパー・ミドル級のWBA王座に君臨中だ。ルール上は複数階級の王座を同時に保持することは禁じられているが、各統括団体が寛容的な対応をみせている。なにしろアルバレスは昨年、DAZNと3年間に11試合で約400億円という超大型契約を結んだほどのスーパースターなのである。今回の試合に際してもWBAとWBCが王座剥奪に動くことはなく、このまま試合が行われてアルバレスが勝った場合は3階級の王座を同時に保持することになる。まさに特権を享受しているかたちだ。

3階級の世界王座を同時に保持といえば、1930年代後半~40年代前半にフェザー級、ライト級、ウェルター級王座に君臨したヘンリー・アームストロング(米国)の例がある。4団体×17階級時代の現在とは異なり、統括団体はひとつ、8階級しか存在しなかった時代に達成した偉業だ。価値の高低はともかく、アルバレスが3階級同時制覇を成し遂げれば史上2例目となる。

ただし、立ち塞がるコバレフの壁は厚い。アマチュア時代からライト・ヘビー級で戦ってきたコバレフは、プロで3度の戴冠を果たしている実力者だ。この3年間こそ7戦4勝(3KO)3敗と苦しんでいるが、通算戦績は38戦34勝(29KO)3敗1分で、KO率は76パーセントを超える。パンチは左右とも破壊力があり、特に左ジャブ、右ストレートは強いうえに正確だ。身長183センチ/リーチ184センチと体格はライト・ヘビー級の平均サイズだが、それでもアルバレスの173センチ/179センチを大きく上回っている。

その一方、最近はアゴとボディの打たれ脆さを突かれてKO負け、あるいは苦戦するケースが目立つ。すでに峠を過ぎたというのが衆目の一致した見方だ。アルバレスがミドル級よりも約7キロ、スーパー・ミドル級よりも約3キロ重いライト・ヘビー級で冒険をする気になったのは、コバレフの耐久力不足を考慮してのことと思われる。

体格で勝るコバレフがプレッシャーをかけ、スキルとスピードで勝る挑戦者がカウンター・アタックを狙う展開になりそうだ。アルバレスもパンチ力はあるが、正面から打ち合う選択はしないだろう。サイドに動きながらコバレフを引き付け、そのうえでタイムリーな右ストレート、左ボディブローで迎え撃つものと思われる。両者ともにミスの許されない試合になりそうだ。

コバレフの打たれ脆さが響いてかオッズは4対1でアルバレス有利と出ているが、その数字がひっくり返る可能性も十分にある。

3階級決勝が王座統一戦 WBSS成功見えた

階級最強を決める賞金トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のシーズン2が佳境を迎えている。

実施された3階級のうちバンタム級の決勝戦、井上尚弥(26=大橋)対ノニト・ドネア(36=比)が11月7日にさいたまスーパーアリーナで予定されているが、その前に10月26日(日本時間27日)には英国ロンドンでスーパー・ライト級の決勝戦が行われる。WBC王者のレジス・プログレイス(30=米国)とIBF王者のジョシュ・テイラー(28=英国)が統一戦で拳を交えるもの。全勝対決を制してWBSS優勝を飾るのは?

世界王者を含む8人のトップ選手が参戦したスーパー・ライト級では、最初からプログレイスが本命視されていた。その声に応えるようにプログレイスは初戦となる準々決勝で元世界王者のテリー・フラナガン(30=英国)を大差の判定で下し、今年4月の準決勝ではキリル・レリク(29=ベラルーシ)に6回TKO勝ち。この試合で決勝進出を決めると同時にWBA王座を獲得した。ところが、夏になっても決勝の日程と開催地が決まらないことに不信感を抱いた陣営は、主催者であるWBSSに対しトーナメントからの離脱を示唆。

これに危機感を持ったのかWBSSが慌ててロンドン開催を決定した経緯がある。

一方のテイラーはトーナメント初戦で22戦全勝(12KO)のライアン・マーティン(26=米国)を7回TKOで一蹴。今年5月の準決勝ではIBF王者のイバン・バランチク(26=ロシア/ベラルーシ)から2度のダウンを奪って12回判定勝ちを収めた。このバランチクも19戦全勝(12KO)だったので、プログレイス戦を含めテイラーは3試合続けて全勝の相手との対戦ということになる。

24戦全勝(20KO)のプログレイス、15戦全勝(12KO)のテイラーとも攻撃型のサウスポーで、KO率はふたりとも80パーセントを超える。3対2のオッズが示すように経験値を含めた総合力で勝るプログレイスが有利とみられているが、体格で上回り地の利もあるテイラーを推す声も少なくない。中長距離をキープして戦いたいテイラーをプログレイスが追う展開が予想されるが、接戦になりそうだ。

この試合の11日後、WBSSバンタム級決勝戦、WBA&IBF王者の井上対WBAスーパー王者のドネアが行われる。さらにクルーザー級の決勝戦、IBF王者のユニエル・ドルティコス(33=キューバ)対WBO王者のマイリス・ブリエディス(34=ラトビア)が計画されている。3階級とも決勝が世界王座の統一戦になったことを考えると、収支面はともかくとしてWBSSシーズン2も成功が見えてきたといえそうだ。

旧ソ連勢の統一戦グウォジクVSベテルビエフはKO決着濃厚

17戦全勝(14KO)のWBC世界ライト・ヘビー級王者オレクサンダー・グウォジク(32=ウクライナ)と、14戦全KO勝ちのIBF同級王者アルツール・ベテルビエフ(34=露)が18日(日本時間19日)、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアで拳を交える。主要4団体の王者同士の統一戦は近年になって増加傾向にあるが、旧ソ連勢のカードは珍しい。総合力は互角だが、ともに強打が売りだけにKO決着が濃厚だ。

WBA、WBC、IBF、WBOの4団体の王者同士による統一戦は今年、9月末日時点で5例を数える。バンタム級の井上尚弥(大橋)対エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)、スーパー・バンタム級のダニエル・ローマン(米国)対TJドヘニー(アイルランド/豪)、スーパー・ライト級のホセ・ラミレス(米国)対モーリス・フッカー(米国)、ウェルター級のエロール・スペンス(米国)対ショーン・ポーター(米国)、ミドル級のサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対ダニエル・ジェイコブス(米国)で、いずれも前者が勝利を収めている。このほか団体内の統一戦や階級の異なる王者同士の対戦も3試合ある。

高い次元で技量が接近しているためか凡戦もあるが、井上対ロドリゲスのようにスリルに富んだ好勝負が多い。今回のグウォジク対ベテルビエフもKO決着が間違いないとみられている。

WBC王者のグウォジクは12年ロンドン五輪ライト・ヘビー級で銅メダルを獲得後、14年2月にプロ転向。米国西海岸をホームに定めて着実に実力を伸ばし、昨年3月にWBC暫定王座を獲得した。12月に団体内統一戦で勝利を収めて正王者に昇格。今回の統一戦が3度目の防衛戦でもある。左ジャブで切り込んで右ストレートに繋げる正統派の強打者だが、耐久面が不安視されている。

IBF王者のベテルビエフもアマチュア出身者で、メダル獲得は逃したが08年北京大会、12年ロンドン大会と2度の五輪出場を果たしている。13年6月にカナダでプロデビューし、ハンマーのような左右の強打でKOの山を築いてきた。2年前に戴冠を果たしたが、故障やビジネス上の摩擦もあって17年と18年は防衛戦を1度ずつ行っただけで試合枯れ状態にあった。今年になって大手のトップランク社と契約を交わし、さっそく大きな試合に恵まれた。攻撃偏重のファイター型だが、攻め急ぐあまり被弾してダウンを喫したこともある。

ベテルビエフのディフェンスの甘さがマイナス要因とみられているためか、オッズは6対5の小差ながらグウォジク有利と出ている。強打者同士のチャンピオン対決だけに初回からスリリングな試合が期待される。短期決着ならばベテルビエフ、長引けばグウォジクといったところだが、展開予想の難しいカードだ。

元クルーザー級王者ウシク 混戦状態ヘビー級頂点に立てるか

WBA、WBC、IBF、WBOという主要4団体の世界王座を統一した実績を持つ元クルーザー級王者、オレクサンダー・ウシク(32=ウクライナ)が、ヘビー級に殴り込みをかける。その転向初戦が12日(日本時間13日)、WBC22位のタイロン・スポーン(34=スリナム/オランダ)を相手に米国イリノイ州シカゴで行われる。主役と見られていた3団体王者のアンソニー・ジョシュア(29=英国)が6月に敗れたのを機に、一転して混戦状態となったヘビー級でウシクは結果を出すことができるのか。まずは12日の試合に注目したい。

ウシクはアマチュア時代に2度の五輪出場を果たし、08年北京大会では8強に甘んじたが12年ロンドン大会では91キロ以下のヘビー級で金メダルを獲得した。アマチュア戦績は350戦335勝15敗で、勝率は95パーセントを超す。ビタリ&ウラジミールのクリチコ兄弟が代表を務めるK2プロモーションズと契約して13年11月にプロ転向を果たし、6年間に16戦全勝(12KO)をマークしている。3年前に200ポンド(約90.7キロ)が体重上限のクルーザー級でWBO王座を獲得したあと階級最強決定トーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」に参戦。18年1月の準決勝戦でWBC王者に勝利を収め、7月には決勝でWBA王座とIBF王座を持つムラト・ガシエフ(ロシア)にも完勝、4団体の王座統一を果たした。

身長190センチ/リーチ198センチというウシクの体格は元世界ヘビー級王者のモハメド・アリ(米国)とほぼ同じだが、大型化が進む現在のヘビー級トップ戦線では決して大きくはない。WBC王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米国)は201センチ/211センチ、ジョシュアも198センチ/208センチある。元3団体王者のタイソン・フューリー(31=英国)は206センチ/216センチの特大サイズだ。この1年、ウシクはヘビー級にマッチした体をつくってきたはずだが、はたして何キロの体重でリングに上がるのか。中量級のような自在な動きとスピード、テクニックを身上とするサウスポーのウシクだけに、単純に体重を増やせばいいというわけにいかないのが悩ましいところだ。

転向初戦で対戦するスポーンは元キックボクサーで、4年半前に国際式に転向してからは14戦全勝(13KO)という戦績を収めている。体格は188センチ/189センチとウシクに劣るが、KO率93パーセントのパワーは侮れない。

ヘビー級トップ戦線は風雲急を告げる状況だ。このウシク対スポーンのあと11月23日にワイルダー対ルイス・オルティス(40=キューバ)のWBCタイトルマッチが決まっている。さらに12月7日にはジョシュアが3団体の王座奪回を狙って現王者のアンディ・ルイス(30=米国)との再戦に臨むことになっている。

転級して試運転を行う前からヘビー級でWBO1位、WBA2位にランクされているウシクは、大巨人たちが待ち受ける最重量級でも頂点に立つことができるのか。スポーン戦は期待と不安のなかでの試合になりそうだ。

様々な思惑が見える ゴロフキンのIBF王座決定戦

17連続KOを含む20度の防衛を記録した元3団体統一世界ミドル級王者、ゲンナディ・ゴロフキン(37=カザフスタン)が5日(日本時間6日)、米国ニューヨークでIBF同級王座決定戦に出場する。相手は14戦13勝(10KO)1敗の戦績を残しているIBF1位のセルゲイ・デレビャンチェンコ(33=ウクライナ)。昨年9月、サウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)との再戦で惜敗して無冠になったゴロフキンにとっては返り咲きの好機である反面、負ければ選手生命に影響を及ぼす可能性もある重要な試合だ。

もともとゴロフキンはWBA(スーパー王者)、WBC、IBFの3団体のベルトを保持していたが、昨年9月のアルバレスとの再戦(アルバレスが判定勝ち)を前にIBF王座を剥奪された。デレビャンチェンコとの指名試合に応じなかったというのが理由だった。それを受け10月にIBF王座の決定戦が行われ、デレビャンチェンコに12回判定勝ちを収めたダニエル・ジェイコブス(32=米国)が王座を獲得。今年5月、そのジェイコブスとアルバレスが統一戦を行い、アルバレスが12回判定勝ちで3団体の王座を統一した。ところが、アルバレスもデレビャンチェンコとの指名試合に応じる構えをみせなかったためIBFが王座を剥奪した。これが昨夏以降のIBFのミドル級王座を巡る動きだ。

これだけをみるとゴロフキンとアルバレスがデレビャンチェンコから逃げてきたように映るが、必ずしもそういうわけではない。極端な言い方をすれば、実績も知名度もあるゴロフキンとアルバレスにとってデレビャンチェンコはリスクがある反面、多くのリターン(報酬)が見込める相手とはいえなかっただけのことだ。こうしたなか今回、ゴロフキンが対戦に応じたのは、勝てば王座復帰が叶い、その先に大きなビジネスとなるアルバレスとの第3戦がおぼろげながら見えてくるからといっていいだろう。

かつて全階級を通じたボクサーの総合評価「パウンド・フォー・パウンド」で現役最強の声もあったゴロフキンだが、17年以降は5戦3勝(2KO)1敗1分と勝率が落ちている。KO率85パーセントを超す(41戦39勝35KO1敗1分)強打は37歳のいまも健在だが、最近の試合では被弾が目立つなど経年劣化の気配がみられる。今春、9年前から師事してきた指導者とコンビを解消し、前戦から新コーチのもとでトレーニングしているが、それがプラス効果をもたらすかどうか。

一方のデレビャンチェンコはニックネームこそ「テクニシャン」だが、実際の戦いぶりはファイターに近い。積極的に圧力をかけて距離を潰し、右ストレートや左ボディブローなどを矢継ぎ早に打ち込んでくる。1年前、ジェイコブスに惜敗後、スーパーウエルター級の元世界王者を判定で下して最上位に戻ってきた。

オッズは4対1、ゴロフキン有利と出ている。早い段階で歯車が噛み合えばパワー勝負になる可能性もある。そうなれば体格、経験値、一撃の破壊力で勝るゴロフキンのKO勝ちが濃厚だ。

ところで、ゴロフキンの宿敵ともいえるアルバレスは、特例でミドル級王座とスーパーミドル級王座を保持したまま11月2日(日本時間3日)、ライトヘビー級王座に挑戦することが決まっている。ゴロフキン対アルバレス第3戦実現の前には多くの壁がある状況だが、まずは先陣をきるかたちのゴロフキンがインパクトのある勝利で存在感を示すことが求められる。また、同じミドル級にはWBA王者の村田諒太(33=帝拳)もいる。ゴロフキンやアルバレスら世界的なスター選手たちの動向しだいではあるが、大きな試合が決まる可能性もある。

様々な意味でゴロフキン対デレビャンチェンコに注目したい。

スペンスに死角なし ウェルター級王座統一戦

 ウェルター級のIBF王者エロール・スペンス(29=米国)とWBC王者のショーン・ポーター(31=米国)が28日(日本時間29日)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで統一戦を行う。選手層の厚いことで知られるこのクラスにはWBAスーパー王者として6階級制覇のマニー・パッキャオ(40=比国)、WBO王者として3階級制覇のテレンス・クロフォード(31=米国)がおり、近い将来の4団体統一戦が期待されている。こうしたなかスペンスが次のステージに駒を進めるのか、それとも下馬評を覆してポーターが勝ち上がるのか。注目度の高い試合だ。

 12年ロンドン五輪ウェルター級ベスト8の実績を持つスペンスは、距離をとっても接近しても戦えるサウスポーの万能型で、25戦全勝(21KO)の戦績が示すとおりパンチ力がある。村田諒太(帝拳)に勝って一度はWBA世界ミドル級王者になったロブ・ブラント(米国)は無名時代にスペンスとスパーリングをした経験を持つが、「2階級の差があるのに彼のパワーはミドル級でも経験したことがないほどだった」と話している。また、同じくスペンスとスパーリングで手合わせしたことがあるフロイド・メイウェザー(米国)は「彼こそが私の後継者だ」と太鼓判を押したエピソードがある。

 現在、スペンスが保持するIBF王座は17年5月に英国遠征でケル・ブルック(英国)を11回KOで下して獲得したもので、これまで3度の防衛を果たしている。内容も圧倒的なものだ。初防衛戦では元2階級制覇王者のレイモント・ピーターソン(米国)を7回終了時点で棄権に追い込み、22戦全勝だった指名挑戦者のカルロス・オカンポ(メキシコ)は3分ちょうどで片づけた。今年3月のV3戦では5階級制覇を狙うマイキー・ガルシア(米国)の挑戦を受けたが、39戦全勝の相手に付け入るスキを与えず、120対108(二者)、120対107の完封勝ちを収めた。身長177センチ、リーチ183センチと体格にも恵まれており、現時点では死角が見当たらない。

 WBC王者のポーターはアマチュア時代はミドル級で活躍したが、プロ転向後はスーパー・ウェルター級からウェルター級に体を絞って成功を収めた。13年12月から14年8月までIBF王座に君臨したが、ブルックに敗れてベルトを失った。現在の王座は昨年9月に獲得したもので、今年3月には指名挑戦者に競り勝って初防衛を果たしている。戦績は33戦30勝(17KO)2敗1分。身長170センチ、リーチ177センチとウェルター級では小柄だが、上体を伸ばすようにして相手の懐に飛び込み、荒々しいフックを浴びせる戦闘スタイルで知られる。10ラウンド以上の戦いを14度も経験しており、スタミナとタフネスに定評がある。

 王者同士の統一戦だが、スペンスの評価が高いためオッズは7対1と大差がついている。

ポーターに飛び込む機会を与えず、逆にスペンスが圧力をかけて攻め落としてしまうだろうという予想が多い。勝者との対戦を望んでいるパッキャオやクロフォードも注目するなか、スペンスが下馬評どおりの強さを見せつけるのか。それともポーターが先輩王者としての意地を見せるのか。

アルバレス4階級制覇なるか コバレフは危険な相手

現役ボクサーのなかで「最も稼ぐ男」として知られるサウル・カネロ・アルバレス(29=メキシコ)が11月2日(日本時間3日)、米国ネバダ州ラスベガスでWBO世界ライトヘビー級王者のセルゲイ・コバレフ(36=露)に挑むことが決まった。アルバレスはスーパーウエルター級、ミドル級、スーパーミドル級で世界王者になっており、勝てば4階級制覇となる。ただ、「クラッシャー(破壊者)」の異名を持つコバレフは76パーセントのKO率を誇る強打者だけに、アルバレスにとってはリスクの高い冒険マッチといえそうだ。

現在もミドル級のWBAスーパー王座とWBAスーパーミドル級王座を同時に保持しているアルバレスは、昨秋にDAZNと「5年間に11試合、総額3億6500万ドル(当時のレートで約412億円)」という超大型契約を結んだ。1試合につき約37億円が保証される好条件だが、代わりに強敵とのマッチメークが続くハイリスクの契約でもある。事実、12月の初戦ではWBAスーパーミドル級王座への挑戦試合が組まれ(3回TKO勝ちで戴冠)、今年5月の第2戦ではIBFミドル級王者のダニエル・ジェイコブス(32=米)との統一戦がセットされた(12回判定勝ち)。この2試合でアルバレスは3階級制覇とミドル級3団体王座統一を果たしたが、のちにミドル級のIBF王座は剥奪され、WBCからは「フランチャイズ(特権)王者」にスライドさせられた経緯がある。それでも、このまま2階級の王座を保持したままコバレフに挑んで勝った場合、3階級の王座を同時に保持する可能性があるわけだ。

そんなアルバレス(55戦52勝35KO1敗2分)だが、コバレフ(38戦34勝29KO3敗1分)は文字どおり大きな壁になるかもしれない。米国を主戦場にしているコバレフは10年前のプロデビュー時からライトヘビー級で戦っており、この階級の主ともいえる存在だ。13年8月以降の16戦はすべて世界戦(13勝10KO3敗)で、3度の戴冠を果たしている。身長173センチ/リーチ179センチのアルバレスに対しコバレフは183センチ/184センチと体格でも大きく勝る。体重もライトヘビー級はミドル級よりも約7キロ、スーパーミドル級よりも約3キロ重い。アルバレス自身も「コバレフは大きくて危険な強打者」と認めているが、「だからこそリスクと向き合って挑戦する意味がある」とも話している。

アルバレスにとって危険なカードには違いないが、試合が発表された直後のオッズは9対2で挑戦者有利と出ている。直近の7戦でコバレフがアゴとボディの打たれ脆さを露呈して3敗(2KO負け)していることが理由だと思われる。ボディ攻撃が巧みなアルバレスがコバレフの弱点を突いて攻略してしまうだろうという見方が多いのだ。

予想どおりの結果になるのか、それともアルバレスの冒険が失敗に終わるのか。ゴングが待ち遠しい。

統一王者ロマチェンコとデービス 直接対決に現実味

階級を超越したボクサーの総合的偏差値ともいえる「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で現役最強の評価を得ているライト級3団体統一世界王者、ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)に、注目すべきライバルが現れた。前WBA世界スーパーフェザー級のスーパー王者、ジャーボンテイ・デービス(24=米)だ。21戦全勝(20KO)という驚異的なKO率を誇るデービスは、このほどライト級に転向。いきなりWBA1位にランクされた。

WBAとWBOライト級王者だったロマチェンコは8月31日、12年ロンドンオリンピック(五輪)金メダリストのルーク・キャンベル(31=英)を12回判定で退け、空位になっていたWBC王座も獲得し、3団体のベルト保持者になった。翌9月1日付でWBAランキングが発表されたが、ロマチェンコは月間最優秀選手に選ばれた。それ以上に注目すべきは、デービスがスーパーフェザー級王座を返上してライト級に転向、いきなり1位にランクされたことである。

もともとデービスはロマチェンコとの対戦希望を口にしてはいたが、プロモーターや階級が異なるため、仮に対戦が実現するとしても2~3年先になるだろうとみられていた。それが今回の転級によって一気に直接対決が現実味を帯びてきたといえる。

デービスはアマチュアで220戦(205勝15敗)を経験後、13年2月にプロデビュー。17年1月にIBF世界スーパーフェザー級王座を獲得した。このときはV2戦を前に体重オーバーのため計量で失格してベルトを失ったが、昨年4月にWBAのスーパー王座を手に入れた。今回の返上を前に2度のKO防衛を果たしている。身長は170センチのロマチェンコよりもさらに小さい166センチのデービスだが、距離を潰しながら積極的に仕掛け、左構えから回転の速い左右のフックやアッパーを顔面とボディに打ち分ける攻撃的なスタイルを確立している。ニックネームは「TANK(装甲戦車)」。計量で失格になった試合も含め世界戦では6試合すべてをKOで終わらせている。5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー(米)がプロモーターを務めるなど話題性もある。

同じサウスポーのロマチェンコはアマチュアで五輪と世界選手権を連覇し、プロでは3階級制覇を成し遂げている。戦績は15戦14勝(10KO)1敗。「ハイテク(高性能)」のニックネームどおりスピードと攻防のテクニックに長けている。

そのロマチェンコはライト級で主要4団体制覇を目標に掲げているが、残るIBF王座を持つリチャード・コミー(32=ガーナ)は12月に防衛戦を控えている状況だ。仮にロマチェンコとIBF王者の最終統一戦が実現するとしても早くて来春ということになる。その前にロマチェンコ対デービスが実現するのか、それとも4団体統一後に両雄の対決が見られるのか。ロマチェンコ、そしてデービスの今後に要注目だ。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。