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WWEの世界

マッキンタイアが母国で英雄になれるか 30年ぶり英スタジアム大会で統一王者レインズに挑戦

宝剣を持ち、母国英国でWWEヘビー、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズ撃破に燃えるドリュー・マッキンタイア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第38回WWEの世界>

30年ぶりのWWE英国スタジアム大会クラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会が9月3日(日本時間4日)、英ウェールズのカーディフ・プリンシパリティスタジアムで開催される。英スコットランド出身の元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイア(37)がWWEヘビー、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズ(37)に挑戦する。過去PPVなどテレビマッチでシングル戦4戦全敗という苦手レインズから地元ビッグイベントで初勝利&統一王座獲得を狙う。

◇  ◇  ◇  ◇

20年4月、当時の王者ブロック・レスナーを下し、英国人初のWWEヘビー級王者となったマッキンタイアの夢がまた1つ実現する。

「子供の頃、レッスルマニアのメインイベントをはじめ、実現可能と思われるすべての大きな瞬間を夢見てきた。スコットランドからWWEに加入した時、誰も私が(WWE王座獲得などを)成し遂げることを信じていなかったはず。英国スタジアム大会は92年のサマースラム大会以後は開催しておらず、実現不可能とされてきた。これは私が王者になった時から各メディアに対して積極的に宣言し、実現に向けて追求してきたことだった」

熱い口調で米メディアのインタビューで感慨深く語ったマッキンタイアは開催に尽力したWWE関係者への感謝の気持ちも忘れていない。7万人以上が収容となる会場の前売りチケットは既に6万人分以上が売れたという。

「私自身の功績と認めたいと思うが、これらのことはWWEの裏方の英雄たちが実現してくれたことだ。もしチケットが売れなかったら、ファンは『マッキンタイアは間違っていた』と指摘するだろう。その責任は私にあったので、うまくいったことはうれしい。そして30年ぶりに開催される英スタジアム大会でWWEの王座を争っていることを誇りに思っている」

英ビッグイベントの成功はマッキンタイアのタイトル挑戦にかかっていると言えるが、統一王者レインズとの相性は良くない。19年4月のレッスルマニア35大会を皮切りにPPVなどテレビマッチで過去4度、シングル戦に臨んだが、全敗というデータが残る。しかも現在のレインズはユニバーサル王座に限れば700日以上も保持。過去2年間、フォール負けもない。過去の記録から劣勢が予想されるものの、コロナ禍でWWEヘビー級王者となったマッキンタイアの自信は揺るがない。

「あの困難な時期にWWEヘビー級王者になれたことを誇りに思う。模範となる王者になれてうれしく思った。英国のスタジアム大会で迎えた王座挑戦は私の人生で最大の機会になる」

92年のサマースタム大会(英ロンドン・ウェンブリースタジアム)のメインイベントは、英マンチェスター出身のブリティッシュ・ブルドッグ(デイビーボーイ・スミス)がインターコンチネンタル王座を獲得し、大成功を収めている。今回はマッキンタイアが、その役目を担う。統一王座をつかみ、ビッグイベントを盛り上げることができるか。必殺技クレイモア(ランニング式片足ドロップキック)のさく裂で母国の英雄になることを期待したい。【取材・構成=藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆ドリュー・マッキンタイア 本名アンドリュー・マクレーン・ギャロウェイ4世。1985年6月6日、英スコットランド・エア生まれ。15歳からプロレスを学び、03年に英国でプロデビュー。06年までインディー団体で活動後、07年にWWEと契約。14年に1度、WWEとの契約が終了。地元スコットランドを拠点とするICWを中心に活動。TNA、インパクト・レスリングなどに参戦後、17年にWWE再契約。20年のレッスルマニア36大会でWWEヘビー級王座を獲得。必殺技はクレイモア。196センチ、120キロ。

◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルは日本時間9月4日午前にWWEネットワークでライブ配信

故郷の英スコットランドでのイベントで存在感を見せるドリュー・マッキンタイア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
30年ぶりの英スタジアム大会成功のカギを握る元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
地元英国ビッグイベントでのWWEヘビー、ユニバーサル統一王座獲得を狙う元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
大相撲裏話

元大関小錦八十吉さんは「悲運」なんかじゃなかった「日本に本当に感謝」来日40年情熱衰えず

都内で来日40周年パーティーを開いた元大関小錦の小錦八十吉氏(右)と千絵夫人(2022年6月18日撮影)

「今? 180かな。一度は145まで落ちたんだけどね」。現役時代、「サリー」の愛称で親しまれたその人は、現在の体重を聞かれると笑みを浮かべながら答えてくれた。酸いも甘いもかみ分けながら人生を送ってきた、味わいさえ感じるその笑顔は、現役引退から25年たっても少しも変わりなく感じた。

元大関で、今はタレントとして活動する小錦八十吉さん(58)が6月18日、都内で「小錦来日40周年パーティー」を開いた。「100%相撲を知らなくて、1銭も持たないで」(小錦さん)入門するため来日したのが、ちょうど40年前の6月18日。新弟子検査では、当時の体重計では目盛りを振り切ってしまったため2台で計測、腕が太いため血圧計を使えず…と入門時から話題に事欠かなかった。最後の蔵前国技館開催となった84年秋場所では、千代の富士、隆の里から金星を奪い12勝3敗で殊勲賞と敢闘賞を受賞。「黒船襲来」と、その猛威は恐れられた。

87年夏場所後、大関に昇進した。記者が初めて小錦を取材したのは、その2年後の89年初場所。平成という新元号になって最初の場所だが、支度部屋で目にしたのは文字どおり「黒船」を思わせる巨漢の大関だった。初めてその姿を目にした時に感じたのは「まるで(幕内力士が使用する)控え座布団を全身にまとったような」250キロを超える大きさ。その姿に「ああ、お相撲さんを取材するんだな」と妙に自分に言い聞かせたことを覚えている。

その威圧感と対比するように、先輩記者たちと取材の場は常に笑いにあふれていたと記憶している。あの「圧」は相当のものだったが、取材対象の懐に飛び込みさえすれば溶け込むことが出来る。取材とは、そういうものだと教えられた。

そんな小錦さんだが、柔よく剛を制するという体重無差別の競技にあっては、筋肉質の体で綱を張った千代の富士や、当時は細身の貴花田(のち横綱貴乃花)の台頭にあっては、どちらかといえば「ヒール」の立ち位置に置かれていたように思う。

そんな中、91年九州場所から13勝2敗(優勝)、12勝3敗、13勝2敗(優勝)の好成績を収めたが横審への諮問はなし。「横綱になれないのは人種差別があるから。日本人ならとっくに横綱に上がっている」とのコメントがニューヨーク・タイムズに掲載され大問題になったが、のちにそれが付け人の発言だったことが判明。小錦さん本人に全く非はないのに、それが最後の優勝になり、2年後には大関から陥落。三役から陥落後、平幕で過ごした引退するまでの3年半は、陽気なキャラクターは消え、悲壮感さえ感じられた。

言葉の行き違いで誤解を生むこともあっただろう。識者から「外国人横綱は要らない」とさえ論じられることもあった。現役引退から部屋付き親方になるも、1年もたたずに協会を退職。その後は陽気なキャラクターでミュージシャンやタレント「KONISHIKI」として活動したが、角界で過ごした16年間は、決して納得いくものではなかったのではないか、つきまとったのは「悲運」の2文字ではないか…。そう勝手に推測しながら、この日の取材にあたった。

だが、それが浅はかな推測だったのは、小錦さんの言葉やパーティー開催に尽力した裏方さんの生き生きとした姿で思い知らされた。「みんなのおかげで僕はここまで来た。日本人になって、力士になって本当に良かった。18歳で日本に来て全国を回って言葉、食事、礼儀、文化…。みんな大好きになった。本当にみんなのおかげ。日本に本当に感謝、ありがとうの気持ちで、このパーティーを開いたんだよ」。2月から準備を始めたが、装飾なども「全て手作り。のぼりのデザインも業者なんか使ってない。今日のために元力士や裏方さんが考えてつくってくれたんだ」と話す小錦さんの顔が誇らしい。

この日のパーティーは所属するKP社の小錦さん本人を含めた社員5人に、高砂部屋で呼び出しとして活躍する利樹之丞さんや、小錦さんの現役時代の付け人ら全国から集まった数十人の裏方さんが、来場者をもてなそうと会場をせわしなく動き回っていた。協会を退職して24年。人徳があればこそ人は集まる。日本や相撲界に、恨みっこなどあるはずがない。パーティーには日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)、武蔵川親方(元横綱武蔵丸)、3代目横綱若乃花の花田虎上氏、小錦をスカウトした元関脇高見山の渡辺大五郎さんら角界関係者はじめ、プロレスラーの藤波辰爾らが出席し花を添えた。

そんな小錦さんも、自分の現役時との時代の変化を感じないわけにはいかない。「時代もだいぶ変わって、教える方法も変えないといけない時代だからね。根性も使えない時代。やりにくい時代だよね」。そう嘆く一方で、それでも相撲界の発展を願わずにはいられない。斬新なアイデアも飛び出した。「でもね相撲は文化。若い力士のために何とかならないかな。オオタニ(大谷翔平)を見たら、子どもたちは野球をやりたくなっちゃうからね」と前置きしながら「時代は変わっているんだから、もっと外国から力士が入ってもいいんじゃないかな」と現在は1部屋1人の外国人枠の門戸開放を提言。さらに続けて言う。「5年たっても幕下なら引退とかにしてクオリティーを上げて給料を上げる。500人でなく200人ぐらいのトッププレーヤーでやるとか。スーパースターを作るためにも、やりやすい環境を協会が作るようにすればね。相撲界が、もっと良くなるためにも協会は頑張ってほしいね」。来年の年末には還暦を迎える小錦さん。現役時代、プッシュプッシュで角界を席巻したパワーは発揮しようもないが、その情熱はいまだ衰え知らずに感じられた。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

注目のスーパー・フライ級主役のひとりエストラーダ、1年半ぶりのリング戦いぶりやいかに

2階級制覇を成し遂げているWBC世界スーパー・フライ級“フランチャイズ(特権)”王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)が9月3日(日本時間4日)、メキシコのソノラ州エルモシージョでアルギ・コルテス(27=メキシコ)の挑戦を受ける。エストラーダは同級WBO王者の井岡一翔(33=志成)が対戦を望んでいる意中の選手だが、統一戦実現の道のりは遠いようだ。

エストラーダは昨年3月、WBAスーパー王者だったローマン・ゴンサレス(35=ニカラグア)に僅少差の12回判定勝ちを収め、2団体の王座統一を果たすとともに9年前の借り(12回判定負け)を返した。7カ月後には3度目の対戦が組まれたが、ゴンサレスが新型コロナウィルス検査で陽性だったため試合は今年3月に延期。ところが、今年に入って今度はエストラーダが陽性だったため決着戦は再延期された。

こうしたなかエストラーダはWBAレギュラー王者のジョシュア・フランコ(26=アメリカ)との団体内統一戦を優先させることになったが、ここでも6月、7月と2度にわたって試合は延期された。これを受けWBAは今月、エストラーダのスーパー王座を剥奪した。

9月3日のコルテス戦は1年半ぶりの実戦となるエストラーダだが、「コンディションはすごくいい。勝つためにベストを尽くす」と意気込みを口にしている。12度の世界戦を含めた戦績は45戦42勝(28KO)3敗。

コルテスは27戦23勝(10KO)2敗2分の戦績を残しているが、メキシコを出て戦ったことがなく、世界的な強豪との対戦も皆無といえる。地域王座への挑戦も一度もなく、10回戦の試合も3度だけと経験不足の感は否めない。同じメキシコ人とはいえ地力はもちろんのこと実績と知名度で大きく勝るエストラーダの地元に乗り込んでの試合とあって厳しい戦いは覚悟しなければなるまい。不気味なのは数多くの世界王者を育成してきたイグナシオ・ベリスタイン・トレーナーの門下生という点ぐらいだろうか。

スーパー・フライ級ではWBO王者の井岡だけでなくWBC王者のジェシー・ロドリゲス(22=アメリカ)もエストラーダとの対戦を望んでいる。もちろんゴンサレスも3度目の決着戦を希望しており、エストラーダがコルテス戦をクリアすれば年内にも3度目の対戦が実現するのではないかと伝えられる。近い将来、フライ級のWBO王者、中谷潤人(24=M.T)の参入も確実視されており、スーパー・フライ級の注目度は上がっている。

こうしたなか主役のひとりであるエストラーダが1年半ぶりのリングでどんな戦いを見せるのだろうか。

WWEの世界

アスカ「イヨ(紫雷)を崖から落とす」30年ぶり英大会で日本人対決/インタビュー後編

WWE女子トップレスラーとして君臨するアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第37回WWEの世界>

約30年ぶりのWWE英国スタジアム大会クラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会が9月3日(日本時間4日)、英ウェールズのカーディフ・プリンシパリティスタジアムで開催される。「明日の女帝」ことアスカはロウ女子王者ビアンカ・ブレア、アレクサ・ブリスと組み、ベイリー、イヨ・スカイ(紫雷イオ)、ダコタ・カイ組と6人タッグで激突する日本人対決が決定。WWEトップを走り続けるアスカがCATC大会などで控えるスカイとの日本人対決への意気込みや後に続こうとする後輩レスラーにエールを送った。今回は日刊スポーツによるインタビュー後編となる。

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新リングネーム「イヨ・スカイ」として同じロウに昇格してきた元NXT女子王者紫雷とアスカは関係が長い。日本ではスカイの姉美央との3人でユニット「トリプル・テイルズ」も組んでいたほどだが、現在はアスカのライバル、ベイリーと行動を共にしている。

「何か、ベイリーの方にいくんや~、そっちいくんやと。こっちに対して、乱入や介入もしてくるし。はいはい、そっちがそっちならこっちもやらせてもらいますよ、という感じです。」と敵対心を感じるアスカは牙をむいてきた「妹分」との実力差を明確に口にした。「こっちはWWEメインロースター(トップブランド選手)で何年もやっていますから」。

一緒に行動する元ロウ女子王者アレクサ・ブリス、現ロウ女子王者ビアンカ・ブレアの名を挙げながら「3人ともずっとチャンピオンをやってきましたから。私はグランドスラム(WWE主要王座制覇)も取っていますし、経験もありますし、実力差、場数の違い、何千人、何万人の前でマイクパフォーマンスもしてきました。イヨちゃんに違いをみせつけてやろうかな」。上から目線のまま、不敵な笑みを浮かべた。

早速、22日(日本時間24日配信)のロウ大会で、アスカはブリスと組み、ダコタ・カイ、スカイ組とのWWE女子タッグ王座トーナメント準決勝を控える。「こんなに早くも戦うのかと思っています。ちょっと見せつけてやろうかなとも考えております。ベイリーがインタビューで『私の力を使ってイヨやカイの底上げをしたい』と話していましたが、私もその位置にきているのかなと感じています。イヨちゃん、ダコタちゃんがどういう育て方をされるのは分からないですが、私もベイリーとは違った育て方をしようかなと。崖から落として上がってこいという気持ちです(笑い)」とアスカ流でスカイを“育成”する方針だ。

現在、日本では次々と有望な女子レスラーが登場、台頭してきている。15年のWWE入りから約7年。「もしもWWEを目指すなら?」という視点で長く世界で戦う秘訣(ひけつ)を明かした。

「プライドを持ちすぎないことですかね。センスを磨くのはもちろん、プロデュースは自分でやらないといけないです。WWEに入る前はファイトスタイルを決められるとうわさで聞いていたのですが、全然なかったです。逆に欲しいぐらいでしたね。なので自分自身のセンス、表現、個性を築いていかないといけない。そしてNXTよりもロウ、スマックダウンの方がもっと個性、存在感が重要視されます。レスリングだけがいいのでは人気が出ない。もし『世界』を見ているなら、日本のプロレスが1番やと思ってこないほうがいい。米プロレスも学ぶつもりで来ないと試合したら『やばい、全然通用せえへん』と。応援してもらわれへんぞ、という感じになってしまいます」

92年のサマースラム大会以来、約30年ぶりとなる英スタジアム開催となるCATC大会を控える。王座戦以外で、すぐに決定したのはアスカ組-スカイ組の6人タッグ戦だった。現場を仕切るのはWWEが誇るレジェンド戦士トリプルHとなる。アスカは「すごく私に期待してくれていると思います。トリプルHの育てたスーパースターの成功例の1人が私やと思っていますから。思想、哲学も理解し、一緒にNXTもやってきました。トリプルHによる理想のWWEを作り上げるためにも全力でやりたい」とテンションは高い。

前現場責任者でWWEから完全引退したビンス・マクマホン前会長兼CEOにも感謝の気持ちが大きい。

「ビンス元会長はカリスマです。全選手が彼に認めてもらいたいという気持ちでずっとやっていました。私も(関西弁の)マイクパフォーマンスをやって、それをビンス元会長が笑っていた聞いてうれしかったですし。元会長の体制でグランドスラムや記録を達成したことは重要でした。新たトリプルH時代の幕開けで、新時代でも、後々語られる選手になるように頑張りたいです」

長引くコロナ禍で、19年を最後にWWEの日本大会は開催されていない。今回の30年ぶりの英スタジアム大会の盛り上げはWWEで恒例となっている世界ツアーを再開する大きな契機になる。アスカは「本当に日本で試合したいです。日本のWWEユニバース(ファン)に会いたいし、話もしたいし、試合も見てほしいです。今は残念ですけれど、英国大会では対戦相手にイヨちゃんもいますし、楽しみに。ただ日本人のどちらを(ファンは)応援するのという感じですけれど(笑い)。ぜひ見て欲しいなと思います」と笑顔。数多く組まれることが予想されるスカイとの日本人対決でも存在感を示していく決意を言葉に込めていた。(おわり)【取材・構成=藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

これまで獲得したWWE女子主要王座ベルトやマネー・イン・ザ・バンク女子ラダー戦で獲得したブリーフケースを公開するアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
次回ロウ大会でダコタ・カイ(左から3人目)、イヨ・スカイ(右端)組と対戦するアレクサ・ブリス(左端)、アスカ組(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
アレクサ・ブリス(左)と組み、WWE女子タッグ王座トーナメントに参戦中のアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWEの世界

“明日の女帝”アスカ、WWE入りから7年「今は引っ張る気持ち」/インタビュー前編

発売中の自身のぬいぐるみを手に笑顔をみせるWWEアスカコピーライト2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第36回WWEの世界>

約30年ぶりのWWE英国スタジアム大会クラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会が9月3日(日本時間4日)、英ウェールズのカーディフ・プリンシパリティスタジアムで開催される。日本勢では「明日の女帝」ことアスカがロウ女子王者ビアンカ・ブレア、アレクサ・ブリスと組み、ベイリー、イヨ・スカイ(紫雷イオ)、ダコタ・カイ組と6人タッグで激突することが決定。WWE入りから約7年のアスカが日刊スポーツの取材に応じ、CATC大会への思い、左肩手術で9カ月間離脱した後の心境などを明かした。今回は前編となる。

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ラグビーのウェールズ代表の「聖地」と呼ばれる収容人数7万4500人の会場で、CATC大会が開催される。アスカは「観客が多ければテンションも高くなります。お客さんがバンバンが入っているのと、小規模会場とかでは全然違います。コロナ禍で無観客で試合していたこともあって実はそれも得意なのですが(笑い)、やっぱりブーイングでも歓声でも何かしら欲しいです」と英スタジアム大会の盛り上がりに大きな期待を寄せている。

18年4月、米ニューオーリンズで開催された年間最大の祭典レッスルマニア34大会で、アスカは初めてスタジアム大会を体験した。7万人超えとなったメルセデスベンツ・スーパードームで当時のスマックダウン女子王者シャーロット・フレアーと対戦。リングで耳にする歓声の違いを感じたという。

「初めての時は(ファンの)歓声がワンテンポ遅れてやってくるところがやりづらかったです。後からがーんとやってくる感じ。後で試合動画を見てから、こんなに声援がすごかったのだと感じた記憶があります。今は慣れて理解、想像した上で戦っていますね」

WWEの主力選手として何度も欧州ツアーに参加してきた。欧州の中でも英国のWWEファンの反応は好きだという。「めちゃくちゃ盛り上がってくれますね。すごく私が英国の人に好かれているのは分かります(笑い)。アスカチャント(コール)もありますし。うれしいな、と思っています」と笑顔をみせる。

英プロレスといえば歴史的に関節技などのテクニカルなスタイルが有名だ。アスカも得意技アスカロック(羽根折り式胴絞め裸絞め)、腕ひしぎ逆十字固めと関節技を駆使するファイトのため、共鳴する部分も多いようだ。さらに英国遠征時で楽しみにしているのが、独特な風味の朝食だという。「あの甘い豆とソーセージ、焼いたトマト、マッシュルームの組みあわせがメチャクチャおいしい。朝食だけは絶対に食べたいなあ」。

左肩負傷で昨年7月から約9カ月間、戦線離脱していた。同部の違和感は3、4カ月前からあり「ずっと我慢してやっていた」。MRI検査の結果、5カ所ほどの腱(けん)断裂が確認され、全治5カ月と診断された。NXT卒業直前の17年8月に右鎖骨骨折で約2カ月離脱した以降、長期欠場はなく、WWE内では「鉄人」とも呼ばれていた。WWEでの最長期間の離脱となり「ストレスになるんちゃうかなと思っていたのですが、それがならなかったです」と苦笑した。

「何なのか、ちょっと休みたいなあと思っていた。みんなに忘れられたら嫌やなという不安もありましたが、(試合に)出ずっぱりでプレッシャーとかいろいろなものがあって疲れていたというか。(WWEの主要女子王座をすべて獲得し)本当に全部取ってしまったはいいですが、あとはどうしようという時期もありました…。何を目標にしていいか分からなかったのですが、休んでから『こんなにリフレッシュしたか』という感じになりましたね」

今年4月25日、米ノックスビルで開催されたロウ大会でリング復帰した。ライバルとなる前スマックダウン王者ベッキー・リンチとにらみ合い、デコピンならぬ鼻ピンを放って挑発。ノリノリのダンスもみせながら「ワシがお前を止めてやる! 誰も私にはかなわない」と絶叫し、久しぶりとは思えないパフォーマンスをみせた。

アスカは「こんなに休んだことなくて、不安になりましたよ。練習と本番はホンマ違うじゃないですか。でも、やってみたら結構いけるなと思いました」と手応えを示した上で、現在の目標をこう掲げた。

「(現場がビンス・マクマホン前会長兼CEO体制から)トリプルH体制になりましたし、頑張っていくぞという気持ちでやってます。WWEを盛り上げていくぞ、と。今はWWE全体を引っ張っていく、ぐらいの気持ちです」(後編に続く)【取材・構成=藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルは日本時間9月4日午前にWWEネットワークでライブ配信

30年ぶりのWWE英国スタジアム大会への意気込みを示したアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
左肩負傷のため、約9カ月間の戦線離脱を経て今年4月にリング復帰したWWEアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
9月3日のWWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルでは6人タッグ戦に出場するアスカ(左上段)(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
大相撲裏話

大相撲夏巡業 9割以上が「良い」「大変良い」新鮮、力士との距離近い、改善点にも大きな声

相撲の禁じ手を面白おかしく紹介する「初っ切り」を披露する大野城(左)と恵比寿丸(撮影・平山連)

2年8カ月ぶりに帰ってきた大相撲の夏巡業開催中に日刊スポーツでは、来場者100人に今巡業に関するアンケートを行った。間近で見られる迫力のある稽古や取組、相撲の禁じ手を面白おかしく紹介する「初っ切り」や相撲甚句といった巡業ならではの催しに高評価が寄せられ、9割を超える人たちが「良い」「大変良い」と答えた。

アンケートは11日の古河巡業と14日の春日部巡業で実施。<1>巡業に来るのは何度目か<2>好きな力士とその理由<3>今巡業の満足度(「大変良い」「良い」「どちらでもない」「やや悪い」「悪い」)とその理由<4>今巡業の改善点は、以上4点について尋ねた。「大変良い」と答えた人たちの中には、「初めてだったので稽古、取組と何を見ても新鮮だった」(仙台市20代男性)、「本場所と違い力士との距離が近く、写真撮影とかに快く応じてくれる」(茨城・常総市40代男性)という声が聞かれた。

古河巡業に足を運んだ同市の関友吉さん(71)は、31年前の地元開催に足を運んで以来となる2回目の来訪だった。前回は土俵から少し遠くの席で観戦したが「今回は近い席が取れたから、力士たちが稽古でぶつかる音が伝わってくる。雰囲気が良いね」と声を弾ませた。家族で春日部巡業に訪れたさいたま市の斉藤由芽さん(24)は「力士たちのきれいな声で奏でる『相撲甚句』が大好き」と自分なりの楽しみ方を力説していた。

一方で改善点についてもさまざまな意見が寄せられ、交流に関する点では「写真撮影会の時間がもうちょっと多くして、参加する力士も増やしてほしい」(都内20代女性)、「大相撲にまだ興味を持ったばかりの初心者なので、力士の見分けがつかない。力士たちの個性や素顔を知りたいから、質問コーナーをもっと充実させて」(都内30代女性)など柔軟な対応を求める声が目立った。

また、子育て世代からは「キッズスペースや授乳室があれば、もっとくつろいで見られる」(埼玉・春日部市、東京・葛飾区のともに20代男性)、高齢者からは「他のスポーツイベントみたいに大型モニターを使って、もっと見やすくしてほしい」といった意見もあった。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

○…2会場の来場者にアンケートを行ったことで、相撲人気の底上げに巡業が果たす役割の大きさを感じた。力士との距離感が近い催しにファンからは「待ちに待った瞬間がついに来たよ」など喜ぶ声が寄せられ、「サインもらっちゃった~」「ツーショットで写真を撮ってくれた」と興奮気味に話す人もいた。今年4月に相撲担当となって初めての巡業取材を終え、早くも次の秋巡業が待ち遠しくなっている。コロナ前のように支度部屋に入れる日がいつ来るか分からないが、夏巡業と同じく興行を盛り上げる意味で積極的な取材を続けたい。

相撲の禁じ手を面白おかしく紹介する「初っ切り」(撮影・平山連)
原功「BOX!」

ウシク対ジョシュア、王者と挑戦者の立場変え11カ月ぶり再戦 ガルシア・トレーナーがキーマン

ヘビー級のWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を保持しているオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)と、前3団体王者のアンソニー・ジョシュア(32=英国)が20日(日本時間21日)、サウジアラビアのジッダで対戦する。両者は昨年9月、3団体王者だったジョシュアの防衛戦として英国で拳を交え、7対3の下馬評を覆してウシクが12回判定勝ち、クルーザー級に続いて王座を獲得した。王者と挑戦者の立場を変えて臨む11カ月ぶりの再戦。今度はウシク有利というオッズが出ている。

昨年9月の初戦は技巧派サウスポーのウシクがジョシュアの強打を空転させたうえ、中盤以降にペースを上げてリードを広げた。特に最終回はウシクの攻勢が目立ち、疲労とダメージでダウン寸前に陥ったジョシュアはロープに寄りかかった状態で試合終了のゴングを聞くほどだった。三人のジャッジの採点は117対112、115対113、116対112だったが、それ以上の差が感じられた試合内容だった。

初戦の契約の際に再戦条項が含まれていたためジョシュア側は今春にもリマッチを希望と伝えられた。しかし、ロシアがウクライナに軍事侵攻したこともありウシクの準備が間に合わず、いったん日程は7月23日に内定した。ところが、今度はジョシュア側が新しく組んだロベルト・ガルシア・トレーナーと馴染むために時間が必要となり、「8月20日、ジッダで開催」という線に落ち着いた経緯がある。

互いに調整試合を挟むことなく再戦に臨むため、総合的な戦力そのものの上積みはないとみていいだろう。勝負を占ううえで重要視されるのは戦闘スタイルの違いだ。身長191センチ/リーチ198センチ/体重100キロのウシクがサウスポーの技巧派なのに対し、右ストレートを中心にパンチ力で勝るジョシュアは198センチ/208センチ/108キロと体格でも優位に立っている。初戦では足をつかって巧みに距離とタイミングを操るウシクの前に後手にまわったジョシュアだが、新トレーナーとどんな策を練ってリングに上がるのか注目される。自身が元世界王者でもあるガルシア・トレーナーはノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)や実弟のマイキー・ガルシア(アメリカ)ら10人以上の世界王者のコーチを務めた実績を持っているだけに、ウシク陣営も警戒しているはずだ。このガルシア・トレーナーが今回の試合のキーマンといっていいだろう。

それでも初戦で快勝しているウシク有利は変わらない。オッズは試合が発表された時点の2対1から5対3に差が縮まっているが、ウシクを推す声が多い。11カ月前と同じように相手に間合いを与えずに慎重に戦い、中盤から終盤にペースを上げて引き離したいところだ。ジョシュアは前半で主導権を握りたい。右ストレートで脅威を与えながら左ジャブで追い込むことができればチャンスは広がるだろう。もちろん右が炸裂すれば一撃KOで王座奪還の可能性も十分にある。

ヘビー級では、引退表明していたWBC王者のタイソン・フューリー(33=英国)の戦線復帰が確実になり、前WBC王者のデオンテイ・ワイルダー(36=アメリカ)も10月に再起戦を行う予定となっている。

この先も最重量級トップ戦線から目が離せない状況が続きそうだ。

リングにかける

大久保琉唯、平本蓮、三浦孝太らに見る人気ファイターの条件 リング降りてからの振る舞いにあり

前日計量をパスしポーズをとる大久保琉唯(22年6月)

人気ファイターの条件は何か。圧倒的な実績や、ひときわ目立つKO率…? もちろん、それらも重要な要素に違いないが、むしろ、リングを降りてからの振る舞いにこそ、秘訣(ひけつ)があるように思う。

特にツイッターやYouTubeなどのSNSで、個人がいつでもどこでも自身の思いを発信できる現代においては、それが顕著だ。キャラクターやルックスなどが、最も重要な要素の1つと言っても過言ではないだろう。

キックボクシングの「K-1」で活躍する現役高校生ファイター・大久保琉唯(17=K-1ジム・ウルフTEAM ASTER)も、その意味で次代の格闘技人気を担うファイターだ。「K-1甲子園2021-55kg王者」「第11回K-1アマチュア全日本大会チャレンジAクラス-55kg優勝」など、数々のアマチュアタイトルをひっさげて、今年2月にプロデビューを果たした。今年6月19日に行われたキックボクシングの世紀の一戦「THE MATCH2022」のオープニングマッチでは、“神童”那須川天心の弟・龍心に勝利し、一躍注目の的となった。元K-1王者の魔裟斗にも「まだ高校生だけど、3、4年後が楽しみ」と言わしめる実力の持ち主でもある。

だが、何より評判になったのは、その端正なルックスだった。SNSでは「かっこよすぎる」「超イケメン」などと称賛する声が並び、早くもその甘い容姿にKOされたファンが続出。さらに、今月14日からは、ABEMA TVでスタートした人気恋愛リアリティーショー「オオカミ」シリーズの最新作「オオカミちゃんとオオカミくんには騙されない」に出演。競技とは違う顔も見られることで、ファンにとってはさらに身近な存在になる。話題は加速する一方だ。

RIZINの人気ファイター平本蓮も、K-1ファイター時代の17年に同番組に出演し、人気モデルとの交際などで、女子高生を中心に高い人気を獲得した。総合格闘技転向後も、歯に衣(きぬ)着せぬ発言で独自のキャラクターを形成。未勝利にもかかわらずメインイベンターを任されるなど、実績以上にファンからの期待を集めている。

元サッカー日本代表FWカズの次男で総合格闘家の三浦孝太は、昨年12月にデビューしたばかりだが、今月19日にレジェンド、ブアカーオとのエキシビションマッチを実現させた。ファンがSNSにアップした動画が東南アジアで大ヒットし、タイやベトナムなどのファンが爆発的に急増したことが遠縁になったという。

もちろん実力あってこそのプロ格闘家に違いないが、人気はリング上のファイトだけでは語れない。「地位は人を作る」ではないが、中には、人気が実力を押し上げるというケースもあるだろう。彼らの今後に注目したい。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

鈴木博昭(右)にパンチを見舞う平本蓮(22年7月)
会見を終え、キックを披露する三浦孝太(22年8月)
WWEの世界

ロード・ウォリアーズ、デイビーボーイ・スミスら彩った92年英スタジアム大会を振り返る

8万人以上のファンの前でアピールするアルティメット・ウォリアー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第35回WWEの世界>

30年ぶりのWWEによる英国スタジアム大会クラッシュ・アット・ザ・キャッスル大会が9月3日(日本時間4日)、英カーディフ・プリンシパリティスタジアムで開催される。前回は前身WWF時代となる92年8月29日、英ロンドン・ウェンブリースタジアムで開催されたサマースラム大会だった。北米以外で初開催された最初のスタジアム興行は8万355人のファンが集結。日本でおなじみのロード・ウォリアーズが盛り上げ、デイビーボーイ・スミスことブリティッシュ・ブルドッグがメインイベントを締めくくった。

  ◇  ◇  ◇  ◇

第5回となった真夏の祭典サマースラム大会はWWF(現WWE)による世界進出第1弾イベントだった。中米、南米、欧州だけでなく、アジアなど日本のプロレス市場も意識したカードがそろった。ダークマッチ3試合を経て、テレビ放送が開始された第4試合にはホーク、アニマルによるロード・ウォリアーズがリージョン・オブ・ドゥームのユニット名でタッグ戦に出場した。

暴走族風バイクに乗って花道から入場したアニマルとホークの姿に、8万人以上のファンが熱狂。テッド・デビアス、I.R.S組と戦い、アニマルがデビアスをロープに投げてI.R.Sとの誤爆を誘発させた。よろめくデビアスを捕獲したアニマルがパワースラムでとどめを刺し、8万人のファンを総立ちにさせた。WWFタッグ王座戦には、元大相撲・琴天山(琴天太)で全日本プロレス入門したジョン・テンタがアースクエイクのリングネームでタッグ王者としてタイフーンと組んで出場し、確実に王座防衛を成功させた。

WWFヘビー級王座戦では90年から抗争が続いた王者ランディ・サベージ-アルティメット・ウォリアー戦が組まれた。試合のなかったリック・フレアーの介入でサベージが左足を負傷して敗退する波乱だった。セミファイナルでは怪奇VSアフリカン対決の異色対決が実現。「地獄の墓堀人」ジ・アンダーテイカーが、全日本プロレス参戦の初代ジャイアント・キマラことカマラと対戦。敵セコンド乱入でアンダーテイカーが反則勝ちした。

メインイベントのWWFインターコンチネンタル王座戦では、義理の兄弟が対決した。王者ブレット・ハートに義弟ブリティッシュ・ブルドッグ(デイビーボーイ・スミス)が挑戦。試合前、ハートの妹でブルドッグの妻ダイアナ夫人が複雑な心境を吐露し、心配そうにスタンドで観戦。ハートによる執拗(しつよう)な裸絞め、シャープシューター(サソリ固め)などをしのいだブルドッグがリバース式回転エビ固めで勝利を収めて王座を奪取した。

次々と花火が打ち上げられる中、ハート一族で繰り広げられた抗争はノーサイドに。勝者ブルドッグ、ダイアナ夫人、王座陥落したハートの3人が並んで8万人のファンの声援に応じる最高のフィナーレとなった。英マンチェスター出身のブルドッグがWWFインターコンチネンタル王座ベルトを獲得したことで、英国のプロレスファンも大満足の幕切れとなった。

30年の時を経て、22年9月、英国にスタジアム大会が戻る。ブルドックに代わり、英スコットランド出身の元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイアがWWEヘビー、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズに挑戦する。両者には30年前のメインイベントで繰り広げられた親族による「メロドラマ」はない。強者同士による好ファイトとなる。マッキンタイアが母国エースとしてのプライドを見せるか。700日以上最高位王座を保持してきた絶対王者レインズが王者の意地をみせるのか。

30年前、ブルドッグのセコンドには元WBA、WBC、IBF世界ヘビー級統一王者レノックス・ルイス(英国)がいた。マッキンタイアのセコンドに、WWE参戦経験のある現WBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(英国)がつくようなことがあれば、大きな話題となりそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆クラッシュ・アット・ザ・キャッスルの発表済みカード◆

☆WWEヘビー、ユニバーサル王座戦=王者ローマン・レインズ-挑戦者ドリュー・マッキンタイア

☆スマックダウン女子王座戦=王者リブ・モーガン-挑戦者シェイナ・ベイズラー

☆6人タッグ戦=ビアンカ・ブレア、アスカ、アレクサ・ブリス組-ベイリー、イヨ・スカイ(紫雷イオ)、ダコタ・カイ組

◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルは日本時間9月4日にWWEネットワークでライブ配信

WWFヘビー級王座戦で王者ランディ・サベージ(左)と握手するアルティメット・ウォリアー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFインターコンチネンタル王座戦で王者ブレット・ハート(左)と激闘したブリティッシュ・ブルドッグことデイビーボーイ・スミス(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFインターコンチネンタル王座戦で、王者ブレット・ハート(右)と握手するブリティッシュ・ブルドッグことデイビーボーイ・スミス(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFタッグ王座に防衛したジョン・テンタことアースクエイク(左端)とタイフーン(右端)(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
公式発表8万355人の観客で埋まった英ロンドン・ウェンブリースタジアムでの92年サマースラム大会(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
原功「BOX!」

元世界王者同士オルティス対ルイスなど8、9月はヘビー級注目ファイトが続々

今年に入りヘビー級トップ戦線は4月にWBC王者のタイソン・フューリー(33=英国)が初防衛に成功した以外に大きな動きがなかったが、その静寂を破るかのように8月と9月に複数の注目ファイトが予定されている。最たるものは8月20日(日本時間21日)にアラブ首長国連邦(UAE)で行われるオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)対アンソニー・ジョシュア(32=英国)のWBAスーパー、IBF、WBO3団体統一タイトルマッチだ。この11カ月ぶりの再戦の展望は次回にまわすとして、今回はそれ以外のランカー対決を紹介しよう。

ウシク対ジョシュアの前座では張志磊(ツァン・チレイ 39=中国)対フィリップ・フルゴビッチ(30=クロアチア)のIBF挑戦者決定戦が組まれている。2008年北京五輪スーパー・ヘビー級銀メダリストの張はプロでは25戦24勝(19KO)1分の戦績を残しており、現在はIBF15位にランクされている。IBF3位のフルゴビッチは2016年リオデジャネイロ五輪同級銅メダリストで、プロ戦績は14戦全勝(12KO)。大柄なサウスポー、張の体力は無視できないが、パンチ力とスキルで勝るフルゴビッチが8対1で有利と見られている。

9月4日にはアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスでルイス・オルティス(43=キューバ)対アンディ・ルイス(32=アメリカ)の元世界王者同士のサバイバルマッチが行われる。元WBA暫定王者のオルティスはサウスポーの技巧派強打者で、43歳のいまもWBC8位、IBF2位、WBO5位にランクされている。一方、3年前にジョシュアを7回TKOで破ってWBAスーパー、IBF、WBO王座を獲得した実績を持つルイスは現在、WBA12位、WBC5位に名を連ねている。戦績はオルティスが37戦33勝(28KO)2敗2無効試合、ルイスが36戦34勝(22KO)2敗。オルティスが直近の試合で2度のダウンを喫していることが響いてかオッズは10対3でルイス有利と出ている。

9月24日には英国マンチェスターでWBOの挑戦者決定戦が組まれている。1位のジョー・ジョイス(36=英国)と2位で元WBO王者のジョセフ・パーカー(30=ニュージーランド)が拳を交えるのだ。

2016年リオデジャネイロ五輪スーパー・ヘビー級銀メダリストのジョイスは身長198センチ、体重120キロの巨体を生かした攻撃型で、プロ転向後は14戦全勝(13KO)をマークしている。対するパーカーはスピードが持ち味の選手で32戦30勝(21KO)2敗の戦績を残している。壁のように迫るジョイスをパーカーはさばけるのか。オッズは地の利もあるジョイス有利と出ているが3対2と接近している。

そして、最大の注目カードは8月20日にサウジアラビアのジッダで行われるWBAスーパー、IBF、WBO3団体統一王者のウシク対前王者、ジョシュアの一戦だ。両者は昨年9月に英国で対戦し、技巧派サウスポーのウシクがジョシュアの強打を封じて12回判定勝ち、3本のベルトを奪い取っている。ともに1試合も挟まずに臨むダイレクト・リマッチ。ウシクの再びテクニックが冴えるのか、それとも今度こそジョシュアの強打が炸裂するのか。

<次回につづく>

リングにかける

73歳フレアー引退試合で見せた「男の意地」 11年ぶりリングへ猛練習1日500回スクワット

ジ・アンダーテーカー(上左)やブレット・ハート(下左端)、ミック・フォーリー(同2番目)と話すリック・フレアー(フレアーのインスタグラムより)

日米のマットで人気を博した米国人レジェンドレスラー、リック・フレアー(73)はラストマッチで「男の意地」を示していた。7月31日(日本時間8月1日)、米テネシー州ナッシュビルで開催されたプロレスイベント、スターキャスト5大会のメインイベントで「リック・フレアー・ラストマッチ」として引退試合に出場。公式マッチは11年9月以来、約11年ぶり。義理の息子となるアンドラデ・エル・イドロ(32)と組み、WWE殿堂入り者ジェフ・ジャレット(55)、ジェイ・リーサル(37)組と対戦。26分40秒、ジャレットを右ナックルパートと足4の字固めでKOし、3カウントを奪った。

何発も逆水平チョップを放ち、決めぜりふ「Wooo(ウー)!」と叫んだ。試合途中の場外乱闘で額から流血し、顔は血まみれになった。50年近くのキャリアを勝利で締めくくると、フラフラになりながらもリングサイドで試合を見届けた「地獄の墓掘人」ジ・アンダーテイカー、ブレット・ハート、ミック・フォーリーらと抱擁を交わすと涙を流した。

集結したファンから「フレアー、感謝します」コールを受けると、「ナッシュビルのファンを愛している。(ナッシュビル出身のアーティスト)キッド・ロックと一緒にお祝いする」とあいさつ。その後、アンドラデのサポートを受けつつ、自ら花道を歩いてバックステージに戻った。健康状態を懸念するファンの声が上がっていたが、試合後のロッカールームで医師2人に健康チェックを受け、流血以外の問題は特になかったという。フレアーは「空腹でご飯を食べにいきたい。ナッシュビルの夜を楽しみたい」と元気な姿のまま会場を立ち去った。

WWEでは08年のレッスルマニア24大会でショーン・マイケルズ戦が最後のリング。11年9月、米団体インパクト・レスリングでのスティング戦以来のファイトだった。その後、WWEなどでスーツを着用し、娘のシャーロット・フレアーのセコンドに入ったり、他選手と抗争したりとリングに絡んでいたが、試合はしていなかった。

フレアーは「リングに入り気取って『Wooo!』と言うだけの男だと思われているのは分かっていた。私がしなければならないのは自らを満足させ、みんなに『なんてこった』と言わせること」と往年のファイトを見せることを予告。トレーニング中では、1日500回のスクワットやエアロバイクなどのフィジカルから鍛えなおしていた。あまりのハードメニューで急激に心拍数が上がったり、胸の痛みに襲われて肺炎のような症状になったとも振り返っていた。足底筋膜炎も患ったそうだ。しかし「試合延期することは決してない。これを実現するために多くの人々が時間と労力を費やしてきた。今の状態を100%維持したかっただけだ」とプロ意識を貫いた。さらに「お酒を飲まないとうまくいかない」と引退試合まで毎晩、飲酒していた事実も口にしていた。

全日本プロレスでは天龍源一郎、ジャンボ鶴田、長州力、2代目タイガーマスク(三沢光晴)、輪島大士、新日本プロレスでも藤波辰爾、アントニオ猪木と対戦。米WCWでは武藤敬司の化身グレート・ムタと抗争を繰り広げた。米国では16度の世界王座(NWA、WCW、WWEを戴冠した実績を誇る。昭和、平成初期のプロレス界で歴史を築いてきたフレアーが、令和になった現在も大観衆の前で「まだやれる」というファイトをみせた姿は男らしくみえた。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

原功「BOX!」

アルバレス対ゴロフキン、ウシク対ジョシュア…この夏から秋にかけて注目カードが目白押し

サウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)やアンソニー・ジョシュア(32=英国)ら、直近の世界戦で敗北を喫したトップ選手たちが8月から10月にかけて相次いで再起戦やリベンジマッチを予定している。彼らにとっては背水の陣で臨む戦いだが、決して楽観視できないカードが並んでいる。

先陣を切るのはライト級の元4団体統一王者、テオフィモ・ロペス(24=アメリカ)だ。今月13日(日本時間14日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでWBO世界スーパー・ライト級11位のペドロ・カンパ(30=メキシコ)と対戦する。ロペスは2020年10月にワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)を破って王座統一(WBCはフランチャイズ王座)を果たしたが、昨年11月にジョージ・カンボソス(29=オーストラリア)に不覚の判定負けを喫して4本のベルトを失った。無冠に戻ったのを機に1階級上のスーパー・ライト級に転向することになり、今回は新階級でのテストマッチでもある。戦績はロペスが17戦16勝(12KO)1敗、カンパが36戦34勝(23KO)1敗1分。

8月20日(日本時間21日)、サウジアラビアのジッダではオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)対ジョシュアのWBAスーパー、IBF、WBO世界ヘビー級タイトルマッチが行われる。両者は昨年9月、今回とは逆の立場で対戦し、技巧派サウスポーのウシクが12回判定勝ちで3団体王座を奪った。中盤から後手にまわったジョシュアは最終回にはスタミナも切れてダウン寸前に追い込まれるほどの完敗だった。その印象が強いためか再戦のオッズは8対5でウシク有利と出ている。戦績はウシクが19戦全勝(13KO)、ジョシュアが26戦24勝(22KO)2敗。

9月17日(日本時間18日)にはアルバレスがラスベガスでゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)との第3戦に臨む。両者は2017年と2018年にミドル級で2度拳を交え、初戦は引き分け、再戦はアルバレスが判定勝ちを収めた。しかし、「2試合ともゴロフキンが勝っていた」という意見も多く、長いこと決着戦が待たれていた。現在、アルバレスはスーパー・ミドル級の4団体統一王者だが、5月に1階級上のライト・ヘビー級で判定負けを喫しており、これが再起戦となる。一方、4月に村田諒太(36=帝拳)に9回TKO勝ちを収めたゴロフキンはミドル級のWBAスーパー王座とIBF王座を持ったままアルバレスの持つスーパー・ミドル級王座に挑むことになる。戦績はアルバレスが61戦57勝(39KO)2敗2分、ゴロフキンが44戦42勝(37KO)1敗1分。オッズは4対1でアルバレス有利に傾いている。

今年2月、フェルナンド・マルチネス(31=アルゼンチン)に判定負けを喫し、5年5カ月の長期政権に終止符を打つことになった前IBF世界スーパー・フライ級王者のジェルウィン・アンカハス(30=フィリピン)は、マルチネスとの直接再戦に臨むことになった。試合は10月8日(日本時間9日)、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで予定されている。戦績はアンカハスが37戦33勝(22KO)2敗2分、マルチネスが14戦全勝(8KO)。

ロペスの項で名前が出てきたカンボソスは6月、WBC王者のデビン・ヘイニー(23=アメリカ)に12回判定負けを喫し、WBCフランチャイズ王座を含め4本のベルトを失った。その試合契約に再戦条項があったため、10月16日にヘイニーとダイレクトリマッチに臨む。初戦ではヘイニーのスピードと技巧の前に闘志を空転させられて完敗を喫しているだけに、カンボソスにとっては厳しい戦いが予想される。戦績はヘイニーが28戦全勝(15KO)、カンボソスが21戦20勝(10KO)1敗。試合は初戦と同じくオーストラリアのメルボルンで行われる。

ロペス対カンパ、ウシク対ジョシュア、アルバレス対ゴロフキン、マルチネス対アンカハス、ヘイニー対カンボソス-これら夏から秋にかけて組まれているカードに要注目だ。

WWEの世界

デビュー20周年「神秘の王」レイ・ミステリオJr. 50歳現役の目標へ息子と亡き親友が力に

WWEデビュー20周年を迎えた「神秘の王」レイ・ミステリオJr.(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第34回WWEの世界>

「神秘の王」レイ・ミステリオJr.(47)が02年7月25日の初登場以来、WWEデビュー20周年を迎えた。身長168センチ、体重78キロの軽量級ながら08年以降はヘビー級にも参戦し、WWE王座も獲得。現在は息子ドミニク・ミステリオ(25)とタッグ戦線で活動中。次の目標は「50歳まで現役」を掲げるマスクマンはまだまだ健在だ。

◇  ◇  ◇

ロープを使った得意技の変形ブーメランキック「619」を武器にキャリア30年以上を誇る。47歳となった今も、ミステリオJr.はWWEトップレスラーとして躍動している。30日(日本時間31日)の真夏の祭典サマースラム大会(米ナッシュビル)ではドミニクと組み、フィン・ベイラー、ダミアン・プリースト組とのノーDQ形式(反則裁定なし)タッグ戦に臨む。人気選手としてのキャリアを歩みつづけているが、軽量級レスラーとしての体格差の影響で数多くの負傷も重ねてきた。

04年以降はヘビー級レスラーとも積極的に戦い、WWEヘビー級王座1度、WWE世界ヘビー級王座2度の計3度の最高位シングル王座を獲得してきた。インターコンチネンタル王座、USヘビー級王座、WWEタッグ王座も獲得し、WWEグランドスラムも達成してきたが、その「代償」も大きかった。

英BTスポーツのインタビューでは左ひざ前十字靱帯(じんたい)損傷で何度も手術を受けてきたことを明かした。「右(ひざ)は無傷だが、左(ひざ)は12回以上の手術を受けた。さらに上腕二頭筋を断裂し2度手術も受けている。この体のサイズで大柄な男たちに殴られているのだから」と告白している。

体重100キロを超えるレスラーたちと対等に戦うことへの肉体的負担は大きいに違いない。それでも「私のキャリアの中で最大の問題だったのはひざだけ」とも。「神は私を世話し、守ってくれた。背中や首は大丈夫なんだ」とWWEデビュー20周年を迎えられたことに安堵(あんど)した。現在も「引退の計画を立てたことは1度もない。ただ続けることが大切。50代が近づいてきた今、息子がプロレスをしている姿を見て、あと3年はやりたいと自分に言い聞かせる」と次なる目標として50歳現役を掲げた。

同じメキシコ系米国人としてWWEの人気スター選手だった親友の故エディ・ゲレロさんが05年11月、動脈硬化性疾患のために38歳で死去している。7月25日、米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催されたロウ大会でセッティングされたWWEデビュー20周年を祝うスピーチの際、ミステリオJr.は「エディ、あなたがいなければ、私はここにいなかっただろう。毎日、エディが恋しい。あなたがいつも見守ってくれていることは分かっている。ありがとう、エディ」と言葉を詰まらせた。

WWEでは当時7歳だったドミニクの親権を巡ってゲレロさんと抗争を繰り広げ、ラダーマッチで戦ったこともある。そのドミニクと組み、21年5月にはスマックダウン・タッグ王座を獲得し、WWE史上初の親子タッグ王者となった。亡き親友の分までミステリオJr.は現役を続けるに違いない。「50歳は超えたくない。でも気分が良かったら『もう1年いけるかな』とか、どうするか考えることになるだろう。今のところ、私の引退は常に50歳は超えないようになっているが」。何年たっても、神秘の王は輝き続ける。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆レイ・ミステリオJr. 本名オスカー・グティエレス・ルビオ。1974年12月11日、米カリフォルニア州チュラビスタ出身。メキシコ系米国人。叔父のレイ・ミステリオ・シニアからマスクとリングネームを引き継ぐ。89年4月にプロレスデビューし、AAA、WCWなどを経て、02年にWWEと契約。03年にWWEクルーザー級王座を獲得。04年にはロブ・ヴァンダムと組み、ケンゾー・スズキ、レネ・デュプリ組を下しWWEタッグ王座獲得。06年に男子ロイヤル・ランブル戦優勝し、WWE世界ヘビー級王座も獲得。09年にインターコンチネンタル王座初奪取。15年にWWE退団後、メキシコAAA復帰。18年には新日本プロレスにも参戦。同年10月にWWE復帰し、19年にはUSヘビー級王座を初奪取し、WWEグランドスラムを達成した。得意技は619。168センチ、78キロ。

息子ドミニク・ミステリオ(右)と組み、サマースラム大会でノーDQ形式タッグ戦に臨むレイ・ミステリオJr.(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
マスク、コスチュームも多彩な「神秘の王」レイ・ミステリオJr.(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
原功「BOX!」

WBC王者ジェシー・ロドリゲス 22歳の若武者がスーパー・フライ級トップ戦線に参入

日本初にして唯一の世界4階級制覇王者、井岡一翔(33=志成)が13日、同じく4階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(40=フィリピン)を退けてWBO世界スーパー・フライ級王座の5度目の防衛に成功した。このクラスには井岡のほかにWBAスーパー王座とWBCフランチャイズ(特権)王座を持つファン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)や元4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(35=ニカラグア)ら知名度の高い実力者が揃っているが、ここに来てさらに新しいタレントが登場した。WBC王者のジェシー・ロドリゲス(22=アメリカ)だ。この急成長中のサウスポーはスーパー・フライ級の勢力図を変える可能性を秘めている。

「ジェシー・ジェームス・ロドリゲス・フランコ」というフルネームを持つロドリゲスは、同じ階級のWBA王者、ジョシュア・フランコの4歳半下の弟としても知られている。世界ジュニア選手権準優勝、全米ジュニア選手権優勝などアマチュア時代から才能の一部を開花させていたロドリゲスは、2017年3月にミニマム級でプロデビュー。その後はライト・フライ級、フライ級、スーパー・フライ級、さらにはフェザー級と体重の幅をもって戦ってきた。

大きなチャンスが巡ってきたのは今年2月のことだ。WBC世界スーパー・フライ級王座決定戦に出場するはずだった元王者のシーサケット・ソールンビサイ(タイ)が体調不良のため棄権、代役のオファーが入ったのだ。もともと前座に出場予定だったロドリゲスは転がり込んだ好機に「イエス」と返事。本番では経験値の高い元王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)を軽快な動きとスキルで寄せ付けず、大差の判定勝ちを収めて戴冠を果たした。3回にはサイドに瞬間移動、相手の死角から右アッパーを突き上げてダウンを奪うなど高等技術も披露した。

WBCの指令に従い6月にはシーサケットを相手に初防衛戦に臨み、またもテクニックで元王者の強打を封じた。8回TKOの完勝だった。

この2勝を含めた戦績は16戦全勝(11KO)。身長163センチ、リーチ170センチと決して大柄ではないが攻防のバランスがよく、ボクシングIQも高い。22歳と若いうえ勝負度胸もある。世界王者にして成長途上の逸材といっていいだろう。

指名防衛戦をクリアしたあとロドリゲスは適正階級と思われるフライ級への転向を示唆したが、それに反して9月17日にラスベガスでV2戦が決まった。サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の大一番の前座でイスラエル・ゴンサレス(メキシコ)と対戦するのだ。33戦28勝(11KO)4敗1分のゴンサレスは過去に3度の世界挑戦経験を持っているが、王者を脅かすほどの力はないと思われる。ロドリゲスにとっては注目ファイトの前座で勝ち方が問われる試合といえそうだ。

この数年、スーパー・フライ級はエストラーダ、ゴンサレス、井岡、シーサケット、クアドラスといったビッグネームが支配してきたが、いずれも30歳を超えた。こうしたなか近い将来、WBO世界フライ級王者の中谷潤人(M.T)がスーパー・フライ級への転向を計画中と伝えられる。はたして井岡対ロドリゲス、あるいは中谷対ロドリゲスは実現するのか。

22歳の若武者が参入したことでスーパー・フライ級トップ戦線がさらに熱くなってきた。

リングにかける

新日本G1、半数占める海外勢「ぜひ生で見てほしい」社長が明かすユニークな魅力と素顔

大張高己氏(2019年10月21日撮影)

新日本プロレスの真夏の祭典「G1クライマックス32」が、16日に北海道・北海きたえーるで開幕した。団体創設50周年を迎えた今年のG1は、史上最多となる28人が出場。半数の14人が外国人レスラーで、そのうち5人が初参戦となった。新日本の大張高己社長(47)に、外国人G1戦士の素顔を聞いた。

◇   ◇   ◇

海外勢が熱い。今春のニュージャパンカップ覇者ザック・セイバーJr(35)やIWGP世界ヘビー級王者ジェイ・ホワイト(29)、USヘビー級王者ウィル・オスプレイ(29)ら、おなじみの外国人選手に加え、米国の新日本で活躍してきたジョナ(33)、デビッド・フィンレー(29)らが海を渡った。

中でも、大張社長が「ぜひ生で見てほしい」とイチオシなのが、オカダ・カズチカらと同じAブロックにエントリーしたトム・ローラー(39)だ。米総合格闘技UFCでも活躍した経験を生かし、初代NJPW STRONG無差別級王者を獲得した経験を持つ。満を持しての初参戦となった。

「MMAから上がってきた選手で、独特のプロレススタイルを持っている。力も十分だし、雰囲気もおもしろい」と大張社長。「なんせ、見た感じが野人。あの骨格の太さは見たことがない。普通のマッチョマンとは違う」。だからこそ、間近で見てほしいと呼びかける。初戦は26日、東京・後楽園ホールで、米AEWで活躍するランス・アーチャー(45)と激突する。

そのアーチャーは、3年ぶりにやってきた身長203センチ、体重120キロの怪物。「そうとう大きい。僕は怖くて話ができていないんです。威圧感がすごくて近づけない」。社長ですらも、本人を目の前にすると萎縮してしまうという迫力の持ち主だ。

2年連続5回目の出場、Bブロックに入ったタマ・トンガ(39)は、決意の夏を迎えている。今年3月に長年在籍してきたヒール集団「バレットクラブ(BC)」から離脱し、本隊と合流した。大張社長は、会場の中ですれ違った際に「今まで散々、悪い事をしてごめんね」と謝られたという。「人間が変わったということを言いたかったんでしょうけど、軽いなと。そんな程度で許されるのかと…」と苦笑。「でも、みんな許してくれているんでしょうね。邪道さんもそうだし、本隊と仲良くやっているんでしょう」と、生まれ変わった姿に期待する。

正義の道に進む者がいれば、悪に身を染めた者もいる。2年ぶり5回目の出場となったジュース・ロビンソン(33)は、今年5月に本隊からBCに寝返った。「普段は本当に陽気な人だった」と大張社長。「BCに入る前はアメリカの大会に行くと、ホテルのロビーで酒盛りを始めて、ピザやワインを買ってきて、抜け出せなくなるくらい一緒にお酒を飲んでいましたね」と懐かしんだ。

「何があったんだろうか…」と、大張社長の頭を悩ませているロビンソン。王座剥奪になったにもかかわらずUSヘビーのベルトを持ち歩き、Dブロック公式戦では元IWGP世界ヘビー級王者鷹木を下すなど、猛威を振るっている。

個性豊かなメンバーが勢ぞろいしたG1クライマックス。8月の東京・日本武道館大会では、史上初めてとなるユニット別応援シートも設置される。まだまだ夏は、始まったばかり。リング上の熱い戦いはもちろん、各選手の裏側にあるストーリーにも注目だ。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

31年ぶり2度目の茨城・古河夏巡業 2000席が即日完売 感染対策徹底してファンもてなす

この時を待ちわびていた相撲ファンも多いのではないだろうか。名古屋場所を終えて一息つくと、いよいよ夏巡業が始まる。コロナ禍前の19年12月の冬巡業以来、約2年8カ月ぶりの開催。各実行委員会では、チケットの販促や会場設営など来る日に備えて準備を進めている。

今回の開催地は首都圏の5カ所(8月5日=東京・立川、6日=千葉・船橋、7日=さいたま市、11日=茨城・古河、14日=埼玉・春日部)。このうち31年ぶり2度目の開催となる茨城・古河会場では、既に約2000席のチケットが完売した。担当者は「先行販売が始まったその日に売り切れになりました」と人気の高さに驚く。コロナ禍でも同会場では、ファンをもてなす心遣いを忘れない。禁じ手をユーモアを交えて紹介する「初切(しょっきり)」、相撲甚句、公開稽古、幕内取組などの恒例の催しに加え、力士たちとの記念撮影会も行う予定だ。なお初日の東京・立川会場のチケットは少し残っているという。

名古屋場所14日目までに戦後最多21人が休場に追い込まれるなど、コロナの感染拡大は止まらない。それでも、巡業は地域の活性化、普及面などで重要な役割を持つ。関係者はコロナ対策のさらなる徹底を図り、ファンに満足してもらえるよう努力している。【平山連】

大相撲裏話

コロナ続出の名古屋場所 力士像にマスク、全館消毒や大声声援禁止…場所完遂へ1人1人の努力

会場内にある力士像にもマスクが(撮影・平山連)

力士ら部屋関係者の新型コロナウイルス感染が相次ぎ、途中休場者が続出する今場所。感染症対策を徹底し、いかに大相撲を楽しんでもらうか。運営側は開催を継続するべく腐心している。

大声での声援の禁止を促したり、手洗い30秒を呼びかける掲示物を会場内に貼ったり。等身大ほどの大きさがある木製の力士像には口元にマスクを着用させ、来場客に注意喚起をしている。コロナ感染の急拡大で、10日目の19日から会場のドルフィンズアリーナでは座席での飲食を禁止した。熱中症対策として水分補給は認めるが、アルコール飲料は禁止。飲食の際は同アリーナ内外の専用スペースを利用するよう呼びかけている。

その日の全取組が終わると、清掃作業が行われる。出入り口、トイレ、客席の座布団1枚1枚に至るまで、スタッフが丁寧に消毒作業をする姿があった。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「とにかく千秋楽までなんとか開催していくため、できるかぎりのことをしている」と話した。地道な1人1人の努力が、本場所成功につながる。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

その日の全取組終了後に翌日に向けて清掃作業が行われる会場(撮影・平山連)
大相撲裏話

「ロレックスデイトナほし~い」3年ぶりの七夕企画 短冊に書いた願い事について聞いてみた

七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた千代大龍の短冊(撮影・鈴木正人)

関取衆の書いた七夕の短冊が中日まで会場内に飾られ、来場客を楽しませた。約3年ぶりの企画に参加した力士に願い事について聞いてみた。

「男気のある男になれますように」と書いたのは幕内の翠富士(25=伊勢ケ浜)。理由を尋ねると「おとこ気ある人の方がかっこよくないですか?」と同意を求められた。どんな人物が該当するのかと問うと「期待してもらったら、しっかり勝てるような人になりたいです」と力強く言った。

幕内の千代大龍(33=九重)は「(腕時計の)ロレックスデイトナほし~い」と願望たっぷり。数年前から手に入りづらくなったといい「正規店で300万で買ったとしても、質屋に入ると600万円ぐらいで売られるんですよ」と解説した。十両の天空海(31=立浪)は「甘い物をたらふく食べたいハート」と愛嬌(あいきょう)ある言葉を添えた。今場所は7日目から4連勝で好物の洋菓子カヌレやマスカットをご褒美に、白星を積み上げたい。

上位陣も「角番脱出」(大関正代)、「もっと上に行けますように」(関脇大栄翔)、「自分の相撲を極めたいです」(小結阿炎)など思い思い願いを書きつづった。新型コロナウイルスの影響が深刻さを増す中で「無事に15日間終わりますように」(横綱照ノ富士)と切に願うばかりだ。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた翠富士の短冊(撮影・鈴木正人)
七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた短冊(撮影・鈴木正人)
七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた一山本の短冊(撮影・鈴木正人)
原功「BOX!」

ドニー・ニエテス、井岡一翔から王座奪取ならず フィリピン世界王者5カ月で5→0

去る13日、4階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(40=フィリピン)が、東京・大田区総合体育館でWBO世界スーパー・フライ級王者の井岡一翔(33=志成)に挑んだが12回判定で完敗した。勝てばフィリピンの世界王者不在を4日で止めるところだったが、かなわなかった。フィリピンのボクシング界は今年2月の時点では5人の世界王者を擁していたが、一転して半年後の現在はゼロの状態が続いている。

今年1月22日、マーク・マグサヨ(27)がゲイリー・ラッセル(アメリカ)に判定勝ちを収めてWBC世界フェザー級王座を獲得したことで、フィリピンは5人の世界王者を抱えることになった。バンタム級WBC王者のノニト・ドネア(39)と同級WBO王者のジョンリエル・カシメロ(33)、IBFスーパー・フライ級王者のジェルウィン・アンカハス(30)、IBFミニマム級王者のレネ・マーク・クアトロ(25)、そしてマグサヨである。ベテランと若手のバランスがとれていて、なかなかのメンバーといえた。

ところが、その後、雪崩現象に突入した。4年半に9度の防衛を果たしていたアンカハスが2月26日に伏兵に敗れると、5月3日にはカシメロが王座を剥奪された。英国で予定していた防衛戦を前に減量目的でサウナを使用したことが規定違反にあたるというのが直接の原因だが、それ以前から試合をドタキャンするなどマイナス点の累積ともいえた。

6月7日、ドネアが3団体王座統一戦で井上尚弥(大橋)に2回TKOで敗れ無冠になったことは日本のファンも周知のとおりだ。7月1日、クアトロがメキシコ遠征で僅少差の判定で王座を失い、8日後にはアメリカで初防衛戦に臨んだマグサヨも小差の判定負けを喫して失冠。こうして2月中旬まで5本あったベルトが4カ月半でゼロになってしまったのだ。この間、ジョナス・スルタン(31)がカシメロの後継王者決定戦に出場したが判定負け。ニエテスも井岡に大差の判定で敗れて空白を埋めることはできなかった。

フィリピンは21世紀に入るタイミングでマニー・パッキャオというスーパースターが現れたことで世界的な注目を集めることになったが、もともとボクシング強国として知られている。歴代の男子世界王者は45人(ボクサーのレコード専門サイトboxrec.com)と多く、日本(94人)、タイ(50人)とともに軽い階級の選手層が厚い。現在もニエテスを除き5人のフィリピン選手が軽量級で各団体の最上位(1位)にランクされている。

いつ、誰が世界王者不在にピリオドを打つのか。日本とも深い繋がりのあるフィリピンのボクシング界の今後に注目していきたい。

リングにかける

44歳の国内現役最年長ボクサー野中悠樹が3度目防衛戦へ「燃え尽きるまで」現役にこだわる思い

国内現役最年長記録を更新する44歳、WBOアジアパシフィック・ミドル級王者野中悠樹(渥美)の3度目防衛戦が、24日に大阪・堺市産業振興センターで行われる。相手は18歳下の26歳、日本ウエルター級7位の能嶋宏弥(薬師寺)。ベルトを失えば現役も失う野中は「相手は死に物狂いでくると思うが、自分も同じ」。その思いに迫った。

19年2月、国内最年長記録の41歳で東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座を獲得した野中悠樹

試合2週間前にジムを訪れると、野中は大学生3人を相手に10ラウンドのスパーリングをこなしていた。汗だくになり、息も切れる。「さすがに体力的には厳しくなりましたよね。疲れもとれにくくなった」。それでも現役にこだわる理由を「とにかく世界に挑戦だけはしたい。トップレベルの世界を肌で感じたいんです」と熱をこめた。

かつてはサッカー少年だった。兵庫・尼崎市の小田南中で、2学年上に38歳で亡くなった元日本代表MF奥大介さんがいた。一応、FWでプレーしたが、有望だった兄には及ばず、サッカーは断念。手に職をつけようと浪速工高(現・星翔高)に進学、ギターを手にする高校生活だった。

転機は19歳。バイク事故を起こした。「別にやんちゃとかないですよ」と言うが、時速160キロで吹っ飛び、左鎖骨を骨折した。幸い命に別条はなかったが約2週間、自宅で安静療養となった。その間に考えた。「健康のありがたみを痛感した。ダラダラ過ごしていてはダメだと」。健康のためにたどり着いたのがボクシング。「一からやってみよう」と地元の尼崎ジムに入門。プロデビューは21歳と遅咲きだった。

ここまで4ジムを渡り歩き、その間にピンチは何度もあった。14年には左アキレス腱(けん)断裂に、左拳を骨折。それでも気持ちは折れなかった。「やめなあかんでやめたくない。世界戦をしたいという思いだけでした」と振り返る。

ただ、世界のミドル級の壁は分厚い。巨額なファイトマネーも動く。現在、WBO世界同級15位。ランキングを上げるため、今回の試合後は海外の強豪ランカーとの試合を模索する。そのための資金をクラウドファンディングで目標額300万円で募った。

ただ、負ければすべてのプランが崩れ落ちる。「もう少しで世界に手が届く。燃え尽きるまでやりたい」という生きざまを24日の一戦にぶつける。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

日本スーパーウエルター級タイトルマッチ10回戦 判定勝利した野中悠樹(2016年7月20日)