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au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

軽量級の主役ゴンサレス、初防衛戦はシーサケットと

 井上尚弥(23=大橋)がWBO王座に君臨するスーパーフライ級で、WBCのベルトを持つローマン・ゴンサレス(29=ニカラグア)が18日(日本時間19日)、米国ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで2代前のWBC王者、シーサケット・ソールンビサイ(30=タイ)を相手に初防衛戦に臨む。軽量級シーンの主役、ゴンサレスがどんな試合をするのか注目される。

 ゴンサレスはアマチュアで89戦88勝1敗のレコードを残した。この1敗も「判定を盗まれたもの」(ゴンサレス)という。05年7月に18歳でプロデビューし、KOの山を築いていった。初めて日本のリングに上がったのはデビューから14連続KO勝ちのときで、ここでも世界ランカーを1回で沈めて驚嘆させた。08年には新井田豊(横浜光)の持つWBA世界ミニマム級王座に挑んで4回TKO勝ち、21歳で頂点を極めた。その後、ライトフライ級、フライ級と階級を上げて世界制覇を成し遂げ、昨年9月に36戦無敗のカルロス・クアドラス(28=メキシコ)を破って現在の王座を獲得した。4階級制覇はゴンサレスが師と仰ぐニカラグアの英雄、アレクシス・アルゲリョ(故人)の3階級制覇を上回る記録だ。

 ゴンサレスは左右の強打を間断なくボディ、顔面に打ち分ける攻撃的な選手で、防御技術にも長けている。井上も「すべての面でずば抜けている。欠点は見当たらない」と舌を巻くほどだ。戦績も46戦全勝(38KO)とパーフェクトだ。

 シーサケットも強打という点では負けていない。09年3月のデビュー戦から5戦目までは1勝3敗1分と振るわなかったが、以後の41戦は40勝(37KO)1敗というレコードを残している。この1敗も敵地メキシコでクアドラスに8回負傷判定で惜敗したもので、競った内容だった。その後は14連勝、13連続KO中と勢いがある。サウスポーのシーサケットは前傾姿勢で相手との距離を詰め、踏み込んで左右を強振するタイプで、中間距離での打撃戦を好む。日本のファンには、間合いを計るのが巧みな佐藤洋太(協栄)をロープからコーナーに追い詰めて攻め落とし、戴冠を果たした試合(8回TKO勝ち)が印象深いのではないだろうか。通算戦績は46戦41勝(38KO)4敗1分で、83パーセントのKO率はゴンサレスと同じだ。ちなみに12戦全勝(10KO)の井上のKO率も83パーセントだ。

 右構えと左構えの違いはあるが、ともに攻撃型だけに序盤からスリリングな打撃戦になりそうだ。パンチの連携や正確さ、攻防の幅で勝るゴンサレス有利は絶対的なものといえるが、シーサケットのパワーに手を焼く可能性もある。井上は「7対3でゴンサレス有利だが、リスクもある。どちらが倒れてもおかしくないカード」と話し、ライバルの戦いを注目している。

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返り討ちか、雪辱か リナレスとクロラの再戦に注目

 3階級制覇の実績を持つWBA世界ライト級王者、ホルヘ・リナレス(31=帝拳)が25日(日本時間26日)、英国マンチェスターで地元の人気者、前WBA王者で現4位のアンソニー・クロラ(30=英)を相手に初防衛戦に臨む。両者は昨年9月、今回と同じ会場、マンチェスター・アリーナで拳を交え、当時、WBC級王者だったリナレスが12回判定勝ちを収め、WBA王座を獲得するとともにWBCからはダイヤモンド王者の称号を授かった。半年後の再戦はどちらに凱歌が挙がるのか。

 ベネズエラ生まれのリナレスは02年、17歳のときに日本でプロデビューし、以後は華やかなスター街道を歩んだ。21歳でWBC世界フェザー級王座を獲得し、23歳のときにはWBA世界スーパー・フェザー級王座も獲得した。このときの戦績は26戦全勝(17KO)だった。日本のほか故国ベネズエラ、パナマ、アルゼンチン、韓国、米国、メキシコで戦うなど見た目の線の細さとは裏腹に逞しい歩みといえた。

 ところが、09年10月に不覚の1回TKO負けを喫してWBAスーパー・フェザー級王座を失うと、11年、12年に米国、メキシコで連続TKO負け、スランプに陥った。

 7カ月の休養後に戦線復帰を果たすと、勢いを取り戻した。14年には日本でWBC世界ライト級王座を獲得し、3階級制覇を達成。初防衛戦を英国、V2戦をパナマで行うなど場所を気にせず戦って地力を発揮。昨年は右拳を骨折したため休養王者にスライドさせられたが、9月のクロラ戦で実力をみせつけた。

 そのクロラとの初戦は接戦で、中盤にリナレスが右でKOチャンスを掴んだものの拳を痛めて目的は果たせなかった。それでも勝負どころの10回、11回、12回をしっかりと抑え、敵地で勝利のコールを受けたのだった。

 雪辱と王座奪回を狙うクロラは、かつて隣家に押し入った強盗に立ち向かい、ブロックで頭部や足を殴られて瀕死の重傷を負ったことがある“正義の人”でもある。15年11月にWBA王座を獲得した試合と初防衛戦は、いずれもボディブローでKO勝ちしており、マンチェスターでは人気がある。器用なタイプではなく、ガードを固めて距離を潰して根気強く勝負するタイプだ。

 スピード、パンチの破壊力、テクニックなど個々の戦力ではリナレスがほとんど上回るが、打たれ脆い点が唯一の泣きどころといえる。戦績はリナレスが44戦41勝(27KO)3敗、クロラが39戦31勝(13KO)5敗3分。

 初戦のオッズは3対2でクロラ有利だったが、リナレスの勝利を経て行われる再戦は11対5で現王者有利と出ている。再戦が決まった直後、リナレスは「今度も私が勝つよ。チャンスがあれば今度こそ倒したいね」と日本語で意気込みを口にしたものだった。

 返り討ちか、それとも雪辱か。日本時間26日早朝、マンチェスターのリングに注目だ。

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ゴロフキン、18連続KO防衛で34年ぶり記録更新なるか

 ミドル級のWBAスーパー王座とWBC王座、IBF王座に君臨する王者、ゲンナディ・ゴロフキン(34=カザフスタン/米)と、WBAのレギュラー王者、ダニエル・ジェイコブス(30=米)の世界王者同士の一戦が18日(日本時間19日)、米国ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン(MSG)で行われる。36戦全勝(33KO)のゴロフキン、33戦32勝(29KO)1敗のジェイコブス。KO決着確実の注目カードだ。

 ゴロフキンは戦績が示すとおりの強打者で、世界王座を獲得した試合を含めて18度の世界戦すべてをKOで終わらせている。17連続KO防衛は歴代トップに並ぶ数字で、今度もKOで片づけるようだと34年ぶりに記録を更新することになる。ちなみに世界戦前からの連続KO勝ちは23まで伸びている。防衛戦の決着ラウンドはまちまちで、1回で終わらせた試合もあれば7回や8回のKOもある。10回、11回という長丁場もあり、スタミナにも問題がないことを証明している。ゴロフキンのトレーニング・キャンプに参加してスパーリングで拳を交えたこともある村田諒太(31=帝拳)は「固いもので殴られたような感じ。特に左ジャブと左フックは異質」と話している。

 相手にとって厄介なのは、ゴロフキンが単なる強打者ではないという点だ。アマチュア時代に04年アテネ五輪ミドル級で銀メダルを獲得したほか03年の世界選手権では優勝するなど、テクニックの面でも秀でているのである。

 そんな絶対王者と拳を交えるジェイコブスも現代を代表するハードパンチャーだが、こちらは瞬間的なスピードとパンチの切れに定評がある。全米王者になるなどジェイコブスもアマチュア経験が豊富で、技術レベルも高い。また、10年7月に初の世界戦で5回TKO負けを喫し、その翌年には骨肉腫であることが判明するなど厳しい時期もあったが、それらを乗り越えて世界王座を獲得した不屈の戦士としても知られる。ニックネームは「ミラクルマン」だ。世界王座は14年8月に獲得し、4連続KO防衛を果たしている。初の世界戦やV2戦ではダウンを喫するなど耐久力に課題を抱えている。アマ、プロを通じて一度もダウン経験がないというゴロフキンとは対照的といえる。

 6対1というオッズが出ているように、ゴロフキンのKO勝ちを推す声が多いのは事実だ。順当にいけばゴロフキンが左ジャブであおり、ハンマーのような左右フックで沈めてしまうだろう。番狂わせが起こるとしたらジェイコブスのスピードのある右ストレート、切れのある左フックが命中した場合だろう。

 KO率92パーセントのゴロフキン、88パーセントのジェイコブス。スリリングな試合が期待できそうだ。

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サーマンvsガルシア 近未来左右する無敗王者対決

 28戦27勝(22KO)1無効試合の戦績を誇るWBA世界ウエルター級王者、キース・サーマン(28=米)と33戦全勝(19KO)のWBC同級王者、ダニー・ガルシア(28=米)が4日(日本時間5日)、米国ニューヨークのバークレイズ・センターで対戦する。試合はウエルター級王座統一戦として行われる。注目度の高い無敗の王者対決を制するのはサーマンか、それともガルシアか。

 147ポンド(約66・6キロ)を体重リミットとするウエルター級は欧米を中心に選手層が厚いことで知られ、現在も主要4団体のひとつ、WBOの王座には世界的なスター選手、マニー・パッキャオ(38=比)が君臨している。サーマンもガルシアも実績や知名度ではパッキャオに及ばないが、総合力では決して引けをとってはいない。将来性を加味して考えれば10歳若い彼らの方が上とみることもできる。それだけに今回の統一戦はウエルター級の近未来を左右する試合といってもいいだろう。

 サーマンは足をつかって距離を保ちながら戦うこともあれば、中間距離で自慢の強打を叩き込む好戦的な戦いもできる。スピードとパワー、テクニックに秀でた万能型で、流れを読む術にも長けている。13年7月にWBAの暫定王座を獲得し、正王者から現在はスーパー王者の称号を持つ。この間、元王者らを相手に6度の防衛に成功している。

 対するガルシアは5年前に1階級下のスーパーライト級で世界王座を獲得した実績を持ち、5度防衛後に返上してウエルター級に転向してきた。昨年1月に現在の王座を獲得し、ノンタイトル戦を経て今回の統一戦に臨む。SWIFT(俊敏な男)というニックネームを持ち、独特のタイミングで繰り出す左フックの強打に定評がある。こちらも2階級で計7度の世界戦を経験している。世界戦で拳を交えたのべ7人がすべて元、現、のちの世界王者である点は特筆に値しよう。

 無敗の王者同士の統一戦だが、オッズは2対1でサーマン有利と出ている。体格やパワーの点でアドバンテージがあるとみられているようだ。そのサーマンは「ガルシアの左フックには気をつけて戦うが、彼は中盤以降にペースが落ちるのでそこが狙い目。どんな展開になっても勝つ自信はある」と後半勝負を示唆している。これに対しガルシアは「私の方が彼よりも優れていると思う。私こそが真の王者だ。もちろん勝つ自信がある」と話している。

 群雄割拠のウエルター級でWBAとWBCの王座をひとつにまとめるのはサーマンなのか、それともガルシアなのか。

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ワイルダー5度目防衛戦は異色の経歴のワシントンと

 08年にプロデビューしてから37戦全勝(36KO)という驚異的なレコードを残しているWBC世界ヘビー級王者、デオンタイ・ワイルダー(31=米)の5度目の防衛戦が25日(日本時間26日)、同級8位のジェラルド・ワシントン(34=米)を相手に米国アラバマ州バーミンガムで行われる。挑戦が予定されていた選手がドーピング違反で失格になったため、試合まで1カ月を切ってから代役が決定するという慌ただしい状況だったが、ワイルダーは「地元ファンにすごい試合をみせる」と自信満々だ。

 もともとワイルダーはアンドレイ・ワウルジク(29=ポーランド)を相手にV5戦を行う予定だったが、1月中旬に行ったVADA(任意の反ドーピング協会)の抜き打ち検査でワウルジクのドーピング違反が発覚。そのためWBCはワウルジクの挑戦資格を剥奪し、ランキングからも除外してしまった。1月下旬のことである。

 試合を1カ月後に控えテレビ放送も決まっていたワイルダー陣営は相手探しに奔走したが、短い準備期間でKO率97パーセント超の豪腕と対戦しようという自信家はなかなか見つからなかった。そんななかワシントンが挑戦に名乗りをあげたという経緯がある。

 このワシントンは少年時代にテニスに親しみ、18歳から22歳までは米国海軍のヘリコプター整備士として働いた経歴を持つ。さらに整備士をやめたあとは大学に入ってフットボール選手として活躍したという異色選手だ。その後、12年7月にボクサーとしてプロデビューし、これまで19戦18勝(12KO)1分と無敗を保っている。身長198センチ、リーチ208センチ、体重は約110キロと大柄で、身長201センチ、リーチ211センチ、体重104キロ前後の王者と比べても体格では引けをとらない。ワイルダーほどの迫力はないものの左で相手をコントロールしておいて狙い撃つ右は破壊力がある。KO勝ちの多くはこの右を叩き込んで相手を沈めたものだ。昨年7月にはワイルダーのV4戦の前座で4回KO勝ちを収めており、世界戦の雰囲気は肌で感じとっている。「ワイルダーの地元に乗り込むことになるが、それが私の意欲を掻き立てている。前回と同じようにKOで勝って帰ってくるつもりだ」と意欲をみせている。

 しかし、圧倒的な攻撃力とスピードを備えているワイルダーを攻め落とすことは難しいとみられており、オッズは12対1で王者有利と出ている。主要4団体の王座統一を目標に掲げているワイルダーとしては、4月に防衛戦を控えるWBO王者のジョセフ・パーカー(25=ニュージーランド/米)とIBF王者のアンソニー・ジョシュア(27=英)よりひと足早く勝利を収め、ライバルたちに圧力をかけたいところだ。今回はKO防衛がノルマといえるだろう。

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ピーターソン、ボクサー生命を左右する重要な一戦に臨む

 少年時代に路上生活を送るなど波瀾万丈の半生を歩んできた元WBA、IBF世界スーパーライト級王者、レイモント・ピーターソン(33=米)が18日(日本時間19日)、米国オハイオ州シンシナティで2階級制覇を狙ってWBA世界ウェルター級暫定王者、ダビド・アバネシャン(28=露)に挑む。浮き沈みの激しいストーリーに、もうひとつ栄光を追加することができるか。

 ピーターソンは1984年1月に米国の首都ワシントンDCで生まれたが、幼少時に父親が収監され、やがて母親も蒸発。そのためピーターソンは1歳下の弟アンソニーとともに路上生活を送らなければならなかった。10歳のとき、ボクシング・トレーナーのバリー・ハンター氏が援助の手を差しのべるまで過酷な生活は数年続いたという。

 その後、ハンター氏が親代わりとなった。同氏は兄弟にボクシングの才能があることを見抜き、トレーニングを勧めたところふたりは驚くほどの成長をみせた。01年に兄のレイモントが全米ゴールデン・グローブ大会ライト級で優勝すると、03年には1階級上のライトウエルター級で全米選手権を制覇。同じ03年、アンソニーも全米ゴールデン・グローブ大会ライト級を制覇するなど兄弟で輝かしい実績を残した。

 ふたりは04年9月、同じリングで揃って1回TKO勝ちを収めてプロデビューを飾った。その後、レイモントは27連勝、アンソニーは30連勝を収めるなどプロでも歩みは順調だった。この間、兄はWBO世界スーパーライト級暫定王座を奪取し、弟は北米ライト級王座を獲得している。

 しかし、09年に兄が初黒星を喫して暫定王座を失うと翌10年には弟も初の敗北を経験、ここでも兄弟は足並みを揃えることになった。

 以後、弟が7連勝(4KO)を収めているのとは対照的に、兄のピーターソンの波瀾は続く。11年にWBA、IBF世界スーパーライト級王座を獲得すると、3度防衛後に団体の指名戦を拒否したため王座を剥奪され、さらにウェルター級進出をかけた試合では判定負けを喫してしまう。したがって再起戦を挟んで臨む今回の試合は、ボクサー生命を左右する重要な一戦といえる。戦績は38戦34勝(17KO)3敗1分。

 暫定王者のアバネシャン(24戦22勝11KO1敗1分)は世界的な知名度は低いが、昨年5月には元世界3階級制覇王者のシェーン・モズリー(米)に判定勝ちを収めて自信を深めている。当然のことながらピーターソンにとって楽観視できない相手といえる。

 ピーターソンを待ち受けるのは再びの栄光なのか、それともさらなる挫折なのだろうか。

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大注目のジョシュア対クリチコ、チケット9万枚が完売状態

 18戦全KO勝ちのIBF世界ヘビー級王者、アンソニー・ジョシュア(27=英)対元WBA、IBF、WBO同級王者のウラジミール・クリチコ(40=ウクライナ)のタイトルマッチ12回戦は4月29日、英国ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われることになっているが、用意された9万枚のチケットがすでに完売状態となっている。ジョシュア人気に加え、若さ対経験という分かりやすい構図がファンの興味をひきつけているようだ。

 ジョシュアは12年ロンドン五輪スーパーヘビー級の金メダリストで、13年10月のプロ転向から18戦すべてを規定ラウンド内で片づけてきた。世界王座は昨年4月に獲得し、すでに2度の防衛を記録している。身長198センチ、リーチ208センチという恵まれた体格から速い左ジャブで煽り、踏み込んで右ストレートを打ち抜く正統派の強打者だ。

 一方のクリチコは96年アトランタ五輪のスーパーヘビー級金メダリストで、プロ転向から20年で68戦64勝(53KO)4敗のレコードを残している。2度の戴冠実績を持ち、世界戦だけで28戦25勝(19KO)3敗という戦績を記している。こちらも身長198センチ、リーチ206センチの大型選手で、重量感のある左ジャブと打ち下ろしの右ストレートが主武器だ。

 両者は昨年12月に対戦するプランが浮上したが、クリチコが足を痛めたため流れ、あらためて4月に行われることになった。この延期が功を奏したのか、試合の注目度は異常ともいえるほど高い。イベントはジョシュア側のプロモーターが主催することになっているが、昨年12月に販売した第一次分のチケットは2000ポンド(約28万円)のVIP席を含め5万枚が飛ぶように売れ、今年1月の第2次販売でも3万枚が即完売となったほどだ。

 ウェンブリー・スタジアムのキャパシティは8万人といわれるが、プロモーターはロンドン市と交渉を重ね、さらに1万人の追加承認をとりつけた。2月初旬に発売されたその追加分も完売状態となり、試合当日は9万人の観客で埋まることが確実となっている。同スタジアムでは14年5月に行われたWBA、IBF世界スーパーミドル級タイトルマッチ、カール・フロッチ対ジョージ・グローブスの英国人対決で8万人の観客数を記録したことがあるが、それを超えることになる。

 試合は英国内では課金システムのテレビで放送される予定だが、その契約件数も100万件超えは確実とみられている。

 「伝説の人と戦うにはベストのタイミングだ。勝って歴史に名を刻む」と意気込むジョシュアに対し、3月25日に41歳となるクリチコは「(ジョシュアにとって)戦うのが早過ぎたということになるのか、(クリチコにとって)戦うのが遅すぎたということになるのか。答えは4月29日のリングで出るだろう」とベテランらしいコメントを発している。

 試合まで2カ月半以上あるが、現時点のオッズは2対1から5対2でジョシュア有利と出ている。

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リオ五輪出場のエリートたちが続々とプロ転向

 昨年のリオデジャネイロ五輪に出場したアマチュアのエリートたちが、続々とプロ転向を果たしている。すでに昨秋にデビューした金メダリストもおり、これからプロの世界で激しい出世争いが展開されることになる。

 かつてはプロでもアマでも米国が顕著な実績を残していたが、近年は特にアマで低迷が目立つ。リオ五輪では10階級のうちライトヘビー級、ヘビー級、スーパーヘビー級の重量3階級とウェルター級で大陸予選を勝ち抜けず、本選に代表を送り込めなかったほどで、深刻な不振状態に陥っている。代わりに台頭してきたのが旧ソ連組だ。リオではウズベキスタンが金3、銀2、銅2を獲得し、強豪国キューバの金3、銅3を上回った。カザフスタンも金1、銀2、銅1と健闘した。

 こうしたなか今年に入ってウェルター級金のダニヤル・エレウシノフとスーパーヘビー級銅のカザフスタンのメダル・コンビが、オーストラリアのプロモーターと契約を交わしてプロ転向を発表した。ロンドン五輪にも出場(3回戦敗退)しているエレウシノフは260戦246勝14敗のアマ戦績を残しており、大きな期待がかけられている。ディチコはロンドン五輪では金メダルを獲得するアンソニー・ジョシュア(英=現IBF世界ヘビー級王者)に物議をかもすポイント負けを喫しており、2大会で銅メダルに甘んじた。アマ戦績は199戦181勝18敗。ふたりとも5月にプロデビュー戦を予定している。

 このほかスーパーヘビー級金のトニー・ヨカ(仏)もプロ転向を発表した。契約を交わした米国のプロモーターは「“フランスのジョシュア”になる可能性を秘めた逸材」と大きな期待を寄せている。また、モロッコで絶大な人気を集めるウェルター級銅メダリスト、モハメド・ラビ(モロッコ)もプロ入りを決めている。

 昨年のうちにプロ転向を表明、あるいはデビューしたリオ五輪組もいる。ライト級金のロブソン・コンセイサン(ブラジル)は11月に6回判定勝ちで初陣を飾り、バンタム級銀のシャクール・スティーブンソン(米)もデビュー戦を待っている状態だ。またライトフライ級16強のホセリト・ベラスケス(メキシコ)は帝拳プロモーションと契約し、12月に1回KO勝ちで鮮烈なデビューを果たした。さらにヘビー級のローレンス・オケイン(英)、フライ級ベスト16のアントニオ・バルガス(米)などもプロ転向を表明している。

 一方、ロンドン五輪から採用された女子ボクシングからも、ミドル級連覇のクラレッサ・シールズ(米)が昨年11月に4回判定勝ちでプロデビュー。ロンドン五輪ライト級金、リオ五輪8強のケイティー・テイラー(アイルランド)は、すでに昨年のうちに2勝をマークしている。これに続けとばかりフライ級連覇のニコラ・アダムス(英)も今年に入ってプロ転向を発表した。

 こうしたなかから、はたして何人がプロで成功を収めるのだろうか。

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メキシカン・キラー三浦隆司がミゲール・ローマンに臨む

 WBAスーパー王座に内山高志(37=ワタナベ)を連破したジェスレル・コラレス(25=パナマ)が座り、IBFでは今月14日に22歳の新星、ジャーボンタ・デイビス(米)が新王者になった。WBO王座にはプロ7戦目で2階級制覇を成し遂げた天才、ワシル・ロマチェンコ(28=ウクライナ/米)が君臨し、WBAレギュラー王座はジェイソン・ソーサ(28=米)が保持。130ポンド(約58・9キロ)を体重上限とするスーパーフェザー級は、20代の王者たちを軸に群雄割拠の様相を呈している。こうしたなか28日(日本時間29日)、前WBC王者で現1位の三浦隆司(32=帝拳)が米国カリフォルニア州インディオで2位のミゲール・ローマン(31=メキシコ)と対戦する。勝てば返り咲きに向けた世界王座への挑戦権を獲得することになる。

 三浦は13年4月から15年11月までWBC王座に君臨し、この間に4度の防衛を果たした。戴冠試合と防衛戦ではメキシコ人を倒しまくり、「メキシカン・キラー」とも呼ばれた。しかし、5度目の防衛戦でフランシスコ・バルガス(32=メキシコ)にダウン応酬の激闘のすえ9回TKOで敗れベルトを失った。ラスベガスで行われたこの試合は世界の数多くのメディアやWBCから年間最高試合に選ばれたほどの激闘だったが、三浦自身は「評価してもらえるのは光栄だが、負けた試合なので気持ちは複雑」と胸中を話していたものだ。昨年5月に1回KO勝ちで再起を果たし、満を持してローマン戦に臨む。35戦30勝(23KO)3敗2分。

 そのローマンにとっても、三浦との一戦は負けられない試合だ。11年にフェザー級、12年にはライト級で世界挑戦の経験を持つが、12回判定負け、5回KO負けで目的は果たせないまま現在に至る。勝てば3度目の挑戦が約束されるだけに「十分な三浦対策を立てて最高の状態でリングに上がる。勝って挑戦権を手にするのは私だ」と自信をみせている。67戦56勝(43KO)11敗という豊富なキャリアを誇る連打型のファイターだ。

 サウスポーの三浦、オーソドックスのローマンと構えは異なるが、ともに打撃戦を好む好戦派だけに、序盤から激しいパンチの応酬が予想される。「ボンバー・レフト」と呼ばれる左ストレート、返しの右フックに一撃KOの威力を持つ三浦が有利と思われるが、ローマンの圧力に押されるようだと苦戦も考えられる。

 この日のメインでは、三浦から王座を奪ったWBC王者のバルガスが、WBO暫定王者のミゲール・ベルチェル(25=メキシコ)を相手に2度目の防衛戦を行う。25戦23勝(17KO)2分のバルガス、31戦30勝(27KO)1敗のベルチェル。こちらも連打型の好戦派同士の組み合わせだけに、やはりジャッジ不要の試合になりそうだ。

 風雲急を告げるスーパーフェザー級トップ戦線。WBC王座をめぐるこの2試合にも大きな注目が集まっている。

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風雲急を告げるスーパーフェザー級トップ戦線

 130ポンド(約58・9キロ)を体重上限とするスーパーフェザー級の世界トップ戦線が大きく揺れている。14日(日本時間15日)には米国ニューヨークで22歳の挑戦者、ジャーボンタ・デイビス(22=米)がV3を狙ったホセ・ペドラサ(27=プエルトリコ)を7回TKOで破りIBF王座を獲得。そして28日には米国カリフォルニア州インディオでWBCタイトルマッチと、三浦隆司(32=帝拳)対ミゲール・ローマン(31=メキシコ)のWBC挑戦者決定戦が行われる。

 このクラスはWBAのスーパー王者だった内山高志(37=ワタナベ)が長いこと第一人者として牽引してきたが、昨年4月にジェスレル・コラレス(25=パナマ)に2回KO負け。12月の再戦でも小差の判定負けを喫し、返り咲きを阻止された。

 そのコラレスにはWBO王者のワシル・ロマチェンコ(28=ウクライナイ/米)から対戦のオファーが寄せられている。08年北京大会、12年ロンドン大会と五輪連覇の実績を持つロマチェンコは「ハイテク」というニックネームを持つ天才型で、プロ7戦で世界2階級制覇を成し遂げている。次戦は4月15日に予定されており、交渉がスムーズに進めばこの日程にコラレスとの統一戦が組み込まれる可能性がある。内山を連破して勢いづくコラレスと、世界的な評価が高いロマチェンコ。なかなか興味深いカードといえる。

 内山の敗戦から2週間後、ニューヨークでIBFタイトルマッチが行われたわけだが、若くて才能に恵まれた新王者が誕生することになった。デイビスは世界的には無名だが、あの元世界5階級制覇王者、フロイド・メイウェザー氏(米)がプロモート契約を結んでいる期待のサウスポーで、4年に満たないプロキャリアで世界制覇を成し遂げたことになる。相手のペドラサは08年北京五輪に出場した実績を持ち、プロでは22戦全勝(12KO)と無敗を誇っていたが、デイビスはそんな王者に臆することなく攻勢をとり、大量リードを奪って迎えた7回にダウンを奪って仕留めた。新王者のレコードは17戦全勝(16KO)。このデイビスは強打だけでなく上体の柔らかい動きで相手のパンチの見切る勘とスキルも身に着けており、さらなる飛躍が期待できる逸材といえる。

 風雲急を告げるスーパーフェザー級トップ戦線。28日にはWBC王者のフランシスコ・バルガス(32=メキシコ)とWBO暫定王者のミゲール・ベルチェル(25=メキシコ)が対戦し、ダブルメインとして三浦対ローマンも組まれている。15年11月にバルガスに9回TKO負けを喫してWBC王座を失っている三浦にとっては、雪辱と返り咲きに向けた大きな関門といえる。<次回に続く>

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異なる戦闘スタイルのデゲールvsジャック戦に注目

 2017年最初の注目ファイトともいえるスーパーミドル級の王座統一戦、IBF王者ジェームス・デゲール(30=英)とWBC王者バドゥ・ジャック(33=スウェーデン/米)が14日(日本時間15日)、米国ニューヨークで行われる。ともに戴冠後は評価が停滞しており、ここで一気に上昇させたいところだ。

 この両者には共通点が多い。まずは同じ08年北京五輪ミドル級出場という点が挙げられる。父親の出身国である西アフリカのガンビア代表として出場したジャックは初戦で敗退したが、デゲールは5試合を勝ち抜いて堂々と金メダルを獲得している。

 プロデビューはデゲールが09年2月で、ジャックは09年6月。試合数はデゲールの24戦(23勝14KO1敗)に対し、ジャックは23戦(20勝12KO1敗2分)とほぼ同じだ。世界王座はジャックが15年4月、アンソニー・ディレル(米)を判定で破ってWBCのベルトを獲得。その1カ月後、デゲールはアンソニーの兄アンドレ・ディレルとの決定戦で判定勝ちを収め、IBFで戴冠を果たしている。

 ともに2度の防衛を果たしているが、いずれも判定によるものだ。デゲールは元世界王者のルシアン・ビュテ(ルーマニア/カナダ)、ロヘリオ・メディナ(メキシコ)を下しており、ジャックは指名挑戦者のジョージ・グローブス(英)に2対1の辛勝、V2戦ではビュテと引き分けという結果に終わっている。内容ではデゲールでは上を行くが、ふたりとも3度の世界戦でKO勝ちがないため、ややアピール不足といえる。

 体格はデゲールが身長183センチ、リーチ188センチ、ジャックが身長185センチ、リーチ185センチと大差はない。また、デゲールは英国、ジャックはスウェーデン出身だが、ふたりとも現在は米国が主戦場になっている。

 類似点が多いふたりだが、戦闘スタイルは大きく異なる。サウスポーのデゲールは機をみて右に構えを変えることもある変則型だが、ジャックは基本に忠実な右構えの正統派なのだ。スピード、テクニック、攻防の幅ではデゲールが勝り、ワンツーの破壊力ではジャックが上回っているといえる。デゲールは「彼(ジャック)の戦力は整っているが、ずば抜けたものがない。彼はリングの上で私のスピードに驚くだろう」と自信をみせており、ジャックも「スーパーミドル級最強は私だ。リング上では戦争のような戦いが繰り広げられることになるだろう」と意気込んでいる。オッズは5対2、デゲールのコメントを後押ししている。

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17年のボクシング界は?パッキャオ、日本の世界王者に注目

 年の初めということで今回は2017年の世界のボクシング界を占ってみたい。戦線復帰を果たしたWBO世界ウエルター級王者のマニー・パッキャオ(38=比)は今年も戦い続けるのか、ヘビー級の王者同士の戦いは実現するのか、日本人トップ・ボクサーの海外進出はあるのか-。

 フィリピンの上院議員でもあるパッキャオは今年、2試合を予定している。ボブ・アラム・プロモーターは6月に初戦を計画しているというが、パッキャオ自身は11月に来日した際に「議会がオフになる4月か5月にリングに上がるつもり」と話していた。ビジネス上の調整が必要になるが、いずれにしても上半期と下半期に1試合ずつを行うことになりそうだ。ウエルター級はWBA王者キース・サーマン(28=米)とWBC王者ダニー・ガルシア(28=米)が3月に統一戦を行うことになっており、今年の注目階級のひとつに挙げられる。

 ヘビー級からも目が離せない。まずは4月29日に英国で行われるIBF王者アンソニー・ジョシュア(27=英)対元王者ウラジミール・クリチコ(40=ウクライナ)の新旧対決に注目したい。ここで18戦全KO勝ちのジョシュアが勝つようだと、37戦全勝(36KO)のWBC王者デオンタイ・ワイルダー(31=米)との統一戦が具体化する可能性が出てくる。全勝のKOパンチャー同士のヘビー級英米決戦となればメガファイトになることは間違いない。

 ミドル級の3団体統一王者ゲンナディ・ゴロフキン(34=カザフスタン/米)と、WBO世界スーパーウエルター級王者サウル・カネロ・アルバレス(26=メキシコ)の頂上決戦も期待されている。ゴロフキンが3月にV18戦、アルバレスが5月に次戦を予定しており、両雄がこれをクリアすれば9月に待望の一戦が実現しそうだ。この階級では12年ロンドン五輪金メダリストの村田諒太(30=帝拳)が挑戦の機会を狙っており、いつ、どこで、誰に挑むのか気になるところだ。

 今年は日本の世界王者が海外のリングで大一番に臨む可能性もある。WBCバンタム級王座を5年間に11度防衛中の山中慎介(34=帝拳)は数年前から海外進出を目標にあげており、交渉しだいでは他団体王者との統一戦が実現するかもしれない。また、WBOスーパーフライ級王者の井上尚弥(23=大橋)は、軽量級の世界的なスター、同級WBC王者ローマン・ゴンサレス(29=ニカラグア)との統一戦を希望しており、こちらも条件が合えば海外での対戦もありそうだ。

 昨夏のリオデジャネイロ五輪後、金メダリストをはじめ多くのオリンピアンたちがプロ転向を果たし、あるいは転向を表明しており、今年は彼らの成長と活躍も楽しめそうだ。

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16年はまずまず充実 海外選手MVPはクロフォード

 2016年も残すところわずかとなった。今回は年末の定番ともいえる年間の各賞を選んでみよう。なお、国内では30日と31日に計7試合の世界戦が控えているため、海外の選手を中心としたものとする。

 今年は「誰が選んでもこの選手で決まり」という絶対的な選手がいなかったが、そんななかで統一戦を含め年間3度の防衛戦すべてで圧勝したスーパーライト級のWBC&WBO王者、テレンス・クロフォード(29=米)をMVPに挙げたい。来年は戦線復帰したマニー・パッキャオ(38=比)との対戦も期待されている。

 殊勲賞はプロ7戦目にして2階級制覇を成し遂げたWBOスーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(28=ウクライナ)だ。五輪連覇の実績を持つサウスポーのロマチェンコは「ハイテク」というニックネームを持つ技巧派だが、6月の戴冠試合では攻撃的な一面も披露。さらに11月には無敗だった元フェザー級王者のニコラス・ウォータース(30=ジャマイカ)の挑戦も一蹴した。今年はMVPに匹敵する活躍をみせた。

 敢闘賞は3人。まずは、2月にスーパーバンタム級王座を統一し、7月にはフェザー級王座も獲得したカール・フランプトン(29=英)を挙げたい。そして、連続KO防衛を17に伸ばしたミドル級のWBA、WBC、IBF3団体統一王者のゲンナディ・ゴロフキン(34=カザフスタン/米)と、さらに5月と9月に豪快なKO勝ちを収めたWBOスーパーウエルター級王者、サウル・カネロ・アルバレス(26=メキシコ)だ。このゴロフキンとアルバレスの対決は来年9月に計画されている。

 技能賞は4階級制覇を成し遂げたWBCスーパーフライ級王者のローマン・ゴンサレス(29=ニカラグア)だ。今年は2試合とも判定勝ちに留まったが、その強打とともにテクニックは高い定評がある。来年は井上尚弥(23=大橋)との頂上決戦が期待される。

 KO賞にはIBFヘビー級王者のアンソニー・ジョシュア(27=英)を推したい。12年ロンドン五輪覇者でもあるジョシュアは4月に2回KO勝ちで世界王座を獲得し、6月の初防衛戦、12月のV2もKO(TKO)で片づけた。今年の成長度、活躍は目を見張るものがあった。

 最高試合賞は9月に大阪で行われた山中慎介(34=帝拳)対アンセルモ・モレノ(31=パナマ)のWBCバンタム級タイトルマッチだ。ダウン応酬の見応えある打撃戦は7回TKOで山中が勝利を収め、11度目の防衛に成功した。日本で開催された試合だが、グローバルな視野でみてもベストといえるドラマチックなファイトだった。

 無冠の選手を対象に選ぶ新鋭賞はスーパーミドル級のカルム・スミス(26=英)だ。スミスは今年4試合すべてでKO(TKO)勝ちを収め、戦績を22戦全勝(17KO)に伸ばした。すでにWBCでは指名挑戦権を持っており、来年は大舞台が約束されている。

 たび重なるドーピング違反や体重オーバーによる計量での失格など問題も多かったが、上記の選手の活躍などで、2016年はまずまず充実した年だったといえる。

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来年上半期最注目!4・29ジョシュア対クリチコ正式決定

 12年ロンドン五輪スーパーヘビー級金メダリストで現在はIBF世界ヘビー級王座に君臨するアンソニー・ジョシュア(27=英)と、96年アトランタ五輪スーパーヘビー級金メダリストで元WBA、IBF、WBO3団体統一世界ヘビー級王者、ウラジミール・クリチコ(40=ウクライナ)が来年4月29日、英国ロンドンで対戦することが正式決定した。

 ジョシュアが自力で新時代の扉を開けるのか、それともクリチコが時計の針を逆回転させるのか。気が早いと鬼に笑われるかもしれないが、来年上半期の最注目カードといえる。

 ジョシュアは地元開催の五輪で金メダル獲得から1年後にプロ転向、ここまで18戦すべてKO勝ちという強打者で、次世代のスーパースターとして注目を集めている。身長198センチ、リーチ208センチという恵まれた体から速い左ジャブで切り込み、正確で伸びのある右ストレートで仕留める正統派のハードパンチャーだ。今年4月に2回KO勝ちでIBF王座を獲得し、6月に7回TKO勝ちで初防衛、12月に3回TKO勝ちで2度目の防衛を果たすなど、この1年で完全開花した感がある。

 これに対しクリチコは96年アトランタ五輪で優勝後にプロ転向した20年選手で、ジョシュアの4倍近い68戦(64勝53KO4敗)のキャリアを誇る。過去に2度の戴冠を果たしており、世界戦だけでも28戦25勝(19KO)3敗という戦績を残している。ただ、昨年11月に王座を陥落してからは、試合が決まっては延期、キャンセルを繰り返してきたため、ジョシュア戦が1年5カ月ぶりのリングとなる。試合の1カ月前には41歳になるだけに、時間との戦いも強いられる。

 この両者、クリチコが17度目の防衛戦を前にしたときのトレーニング・キャンプでスパーリングをしたことがある。当時のジョシュアは7戦のプロキャリアしかなかったが、クリチコは「弟」と呼んで後輩をかわいがり、「彼には驚くべき才能がある。まだまだ学ぶべきことは多いが、優れたスキルとアマチュア経験があり、いずれ大成するだろう」と将来に太鼓判を押していたものだ。ただし、2年半後に自分が挑戦者の立場で世界王者のジョシュアと対峙するとは思いもしなかったに違いない。

 今回の試合の発表会見の席でジョシュアは「もしも私が負けるようなことがあれば、今後も私は彼のことを『兄』と呼ばなければならない。でも、勝利を確信している。新しい時代が到来するんだ」と自信をみせている。これに対しクリチコは「王座を失って目が覚めた。王座を奪い返すという大きな目標があるので、今回はモチベーションが高い」と意欲を燃やしている。

 14歳の年齢差がある世代間対決は、8万人以上を収容できるロンドンのウェンブリー・スタジアムが会場となる。チケットは40ポンド(約6000円)や60ポンド(約9000円)という比較的安価なものもあるが、VIP席には2000ポンド(約30万円)の値がつけられている。それほどの注目カードといえる。

 春が待ち遠しい-。

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“レジェンド”ホプキンス、18日注目の引退試合

 ミドル級王座を20度防衛したあとライトヘビー級に転向し、46歳と48歳で戴冠を果たした元世界王者、バーナード・ホプキンス(51=米)が、17日(日本時間18日)に米国カリフォルニア州イングルウッドで行われる試合を最後に引退することになった。WBC2位、WBA5位にランクされるジョー・スミス(27=米)との試合を前に、ボクシング界のレジェンドは、「いまは相手をKOすることに集中している」と話している。

 ホプキンスはアマチュアで99戦95勝4敗の戦績を残したが、十代のときに社会と隔離された時期があったためプロ転向は23歳と比較的遅かった。しかも初陣は4回判定負けだった。「生活に追われてボクシングどころではなかった」(ホプキンス)ため、次戦まで1年4カ月の期間が空いたが、以後は順調に白星を重ね、28歳と29歳のときには世界戦の舞台に上がるまでになった。この2回のチャンスは判定負け、引き分けで実らなかったが、95年に3度目のチャレンジでIBF世界ミドル級王座を獲得。以後、ホプキンスは10年間に20度の防衛を果たすことになる。特筆すべきはIBF王座を保持しながら次々に統一戦に臨み、WBC、WBA、WBOの王者を下して自力で主要4団体の王座を統一したことである。

 この4王座を40歳のときに失った際は関係者やファンの多くが引退を予想したが、ホプキンスは現役続行を決断。そして11年には46歳4カ月で、さらに13年には48歳1カ月でライトヘビー級の世界王座を獲得して驚かせた。これらは94年にヘビー級のジョージ・フォアマン(米)が王座を獲得した時の45歳9カ月を更新する最年長戴冠記録でもある。

 ライトヘビー級でも2団体統一王者になったホプキンスは、「これからはエイリアン(宇宙人)と呼んでくれ」と吠え、緑色のマスクを被ってリングに上がるようになった。

 50歳の誕生日を2カ月後に控えた14年11月、WBO王者のセルゲイ・コバレフ(露/米)と拳を交えたが、初回にダウンを喫したすえ判定負けという結果に終わった。これが現時点での最新試合だ。スミス戦はホプキンスにとって2年ぶりの実戦ということになる。

 そのスミスは、ホプキンスがプロデビューした翌年に生まれた27歳で、プロ戦績は23戦22勝(18KO)1敗。ちなみに24歳上のホプキンスの戦績は66戦55勝(32KO)7敗2分2無効試合で、その半分の33戦(24勝13KO5敗2分2無効試合)が世界戦だ。

 親子ほど年齢差のあるカードだが、オッズは5対2でホプキンス有利と出ている。大ベテランが経験を生かして若さを封じ込めてしまうという予想が多いのだ。主役のホプキンスは「多くの人は私の年齢やキャリアに注目するが、私はスミスをKOすることに集中している」と、なかなかカッコいいコメントを発している。どんなかたちで28年のキャリアを閉じるのか、レジェンドのラスト・ファイトに要注目だ。

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ヘビー級戦線の大本命ジョシュア、2度目防衛戦に注目

 ドーピング違反や王座返上など今年のヘビー級はリングの外で大荒れの1年だった。そんななかにあって4月にIBF王者になったアンソニー・ジョシュア(27=英)の台頭は大きな救いといえる。若くて17戦全KO勝ちという完璧なレコードを持つジョシュアは、37戦全勝(36KO)のWBC王者、デオンタイ・ワイルダー(31=米)とともにヘビー級に新時代を築く可能性を秘めている逸材だ。そのジョシュアの2度目の防衛戦が10日(日本時間11日)、英国マンチェスターで行われる。

 ジョシュアは高校時代に100メートル走で11秒を切るほどの俊足の持ち主で、フットボールなど他競技を経て18歳のときにボクシングに転向した。アマチュアで43戦40勝3敗の戦績を残し、12年ロンドン五輪ではスーパーヘビー級で金メダルを獲得した。そしてプロ転向からわずか2年半、今年4月に世界一の座についた。6月には同じロンドン五輪の米国代表を相手に初防衛戦に臨み、まったく付け入る隙を与えずに7回TKOで一蹴、実力差を見せつけたものだ。世界レベルの選手のなかでは今年一番の成長株といっていいだろう。

 騒動が続くヘビー級トップ戦線だが、ジョシュアは大きなトラブルには巻き込まれなかった。ただ、今回のV2戦は元WBA、IBF、WBO王者のウラジミール・クリチコ(40=ウクライナ)と対戦する計画もあったが、クリチコが負傷したため先送りされることになった経緯がある。ジョシュアとクリチコの年齢差が13もあることを考えると、むしろ延期は若いジョシュアにとってプラスと考えることができよう。

 今回、クリチコの代わりにリングに上がるのは28戦25勝(19KO)3敗の戦績を残しているIBF8位、エリック・モリナ(34=米)だ。モリナは身長193センチ、リーチ201センチ、体重106キロ~108キロと大柄だが、ジョシュアは身長198センチ、リーチ208センチ、体重110キロ~112キロとさらに大きい。そのうえジョシュアはスピードとパワーがあるのだから、相手にとっては厄介な存在といえる。25対1というオッズが出ているように、ジョシュアの圧勝が予想されるカードだ。モリナは1年半前にワイルダーの持つWBC王座に挑んで3度のダウンを喫して9回KO負けしており、最大の興味はジョシュアが何回でモリナを仕留めるかという点になるといっても過言ではない。来年4月に対戦が計画されているクリチコや、前座に出場する前WBA暫定王者のルイス・オルティス(キューバ/米)、そしてその先にあるワイルダーとの頂上決戦に向けてアピールするためにも、ここは豪快なKO防衛がノルマといえよう。

 同じ10日にはニュージーランドでWBO王座の決定戦が行われ、1週間後の17日にはロシアでWBC暫定王座決定戦が挙行されることになっている。こうしたなかヘビー級戦線の大本命に浮上してきたジョシュアが、どんなかたちで16年を締めくくるか注目したい。

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今年大きく揺れたヘビー級で12月に3つの世界戦

 ボクシングの象徴ともいえる最重量級のヘビー級は今年、トップ選手の相次ぐドーピング違反や王座返上で大きく揺れたが、少しずつ収束に向かっている。12月には10日と17日に団体の異なる三つの世界戦が行われる予定だ。

 16年はヘビー級にとって厄年のような1年だった。特に目立ったのがWBA王座関連のトラブルだ。3月にWBAレギュラー王座を獲得したルーカス・ブラウン(37=豪)から禁止薬物が検出されたのがケチのつき始めといえる。ブラウンは王座を剥奪され、半年の出場停止の処分を受けた。王座はルスラン・チャガエフ(38=ウズベキスタン/独)に返還されたが、今度はチャガエフが指名防衛戦に応じる意思を示さなかったため、これも剥奪の憂き目に。また、暫定王座を持っていたルイス・オルティス(37=キューバ/米)も指名防衛戦をこなさなかったため、9月に王座を剥奪された。さらにWBAスーパー王座とWBO王座保持者のタイソン・フューリー(28=英)も10月の防衛戦を前に試合をキャンセル。前後してコカイン使用が明らかになり、2団体の王座を返上して活動休止状態に入ってしまった。いまもWBAのヘビー級はスーパー王座、レギュラー王座、暫定王座が空いたままだ。

 WBCでは王者のデオンタイ・ワイルダー(31=米)が年間2度のKO防衛を果たしたが、7月の試合で右拳と右腕を痛めたため現在は休養をとっている。そのため暫定王座が設けられることになり、12月17日にロシアでアレクサンデル・ポベトキン(37=露)対バーメイン・スティバーン(38=ハイチ/米)のカードで決定戦が行われる。ポベトキンは04年アテネ五輪の金メダリストで、プロ転向後はWBAで王者になった経験を持つ実力者だが、今年5月に予定されたワイルダーへの挑戦を自身のドーピング違反で棒に振った苦い経験を持つ。王者の負傷で暫定王座決定戦のチャンスが転がり込んだかたちだが、その幸運を生かせるかどうか。戦績は、ポベトキンが31戦30勝(22KO)1敗、前WBC王者のスティバーンは28戦25勝(21KO)2敗1分。オッズは17対2でポベトキン有利と出ている。この試合の勝者はワイルダーとの対戦義務を負う。

 フューリーが返上したWBO王座の決定戦は12月10日、ニュージーランドのオークランドで行われる。1位のジョセフ・パーカー(24=ニュージーランド/米)は21戦全勝(18KO)、3位のアンディ・ルイス(27=メキシコ)は29戦全勝(19KO)と、ふたりとも若くて無敗という新鮮なカードだ。一時はニュージーランド開催が危ぶまれたが、パーカー陣営が彼の両親の出身国であるサモア政府の援助を得て自国開催にこぎ着けた経緯がある。パーカーが勝てばニュージーランド初、ルイスが勝てばメキシコ初の世界ヘビー級王者の誕生となる。

 こうしたなか、近い将来のスーパースターと目されるIBF王者、アンソニー・ジョシュア(27=英)も12月10日に2度目の防衛戦を予定している。(次週につづく)

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“天才”ロマチェンコ 4連続KO勝利なるか

 アマチュア時代に五輪連覇、プロでは3戦目で世界フェザー級王座を獲得し、7戦目で2階級制覇を成し遂げたWBO世界スーパーフェザー級王者、ワシル・ロマチェンコ(28=ウクライナ/米)が26日(日本時間27日)、米国ネバダ州ラスベガスで元WBA世界フェザー級スーパー王者のニコラス・ウォータース(30=ジャマイカ)の挑戦を受ける。「ハイテク」と呼ばれるロマチェンコのパフォーマンスに注目が集まる。

 ロマチェンコはアマチュア時代に08年北京五輪フェザー級、12年ロンドン五輪ライト級で金メダルを獲得したほか、06年の世界ジュニア選手権、09年と11年の世界選手権を制覇。07年の世界選手権準優勝という輝かしい実績を誇る。アマチュア戦績は397戦396勝1敗といわれる。3年前にプロ転向する際はプロモーターに「デビュー戦で世界挑戦させてほしい」と頼んだという逸話が残っているほどだ。その願いは却下されたが、デビュー戦で世界ランカーに圧勝したロマチェンコは2戦目で世界王座に挑戦。終盤には王者をKO寸前に追い込んだものの前半をセーブしすぎたことが影響し、惜しくも判定負けという結果に終わった。この試合は相手が公式計量で体重超過をしていたため、敗れたロマチェンコには次戦で王座決定戦に出場するチャンスが与えられ、今度は確実にものにして3戦目でプロの世界一の座についた。

 ロマチェンコはサウスポーの技巧派で、前後左右に上体を動かしながら相手を牽制し、相手が出てこないとみると自ら踏み込み、攻めてくるとみると巧みに間合いを外す頭脳的な戦いを身上としている。今年6月に現王座を獲得した試合ではスピードで相手を圧倒したうえ、最後は鮮やかなコンビネーションでダウンを奪うなどパンチ力もあるところを印象づけた。ちなみに3戦目での世界王座獲得は史上最速タイで、7戦目での世界2階級制覇は井上尚弥(大橋)の8戦目を更新する最速記録でもある。戦績は7戦6勝(4KO)1敗で、目下3連続KO中だ。

 そんな快進撃を続けるロマチェンコだが、今回のウォータースはリスクの高い相手といえる。「アックスマン(斧、木こり)」というニックネームを持つウォータースは4年前にWBA世界フェザー級王座を獲得し、5階級制覇王者ノニト・ドネア(比/米)をも倒すなど3度防衛。4度目の防衛戦を前に体重超過のため計量で失格、王座を失った。それを機に階級を上げ、今回のロマチェンコ戦で2階級制覇を狙う。戦績は27戦26勝(21KO)1分。斧を振り下ろすように打ち込む右フックや意表を突いたアッパーなどパンチは多彩で破壊力がある。170センチの身長に対してリーチが185センチと長く、ロマチェンコよりも身長で2センチ、リーチでは19センチも上回っている。

 それでもオッズは5対1でロマチェンコ有利と出ている。この天才サウスポーの評価がいかに高いかが分かる数字といえよう。ウォータースの強打をかい潜って左ストレートを一閃-そんなシーンが見られるだろうか。

 この階級では前WBAスーパー王者の内山高志(ワタナベ)、前WBC王者の三浦隆司(帝拳)が返り咲きを狙っており、日本のファンにとっても気になる試合だ。

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「破壊者」コバレフと「神の子」ウォード 注目の無敗対決

 KO率84パーセントの「破壊者」セルゲイ・コバレフ(33=露/米)と、アマとプロを通じて20年以上も負けなしの「神の子」アンドレ・ウォード(32=米)のWBA、IBF、WBO世界ライトヘビー級タイトルマッチが19日(日本時間20日)、米国ネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで行われる。POUND FOR POUND(パウンド・フォー・パウンド=全階級を通じて最強)というイベント・コピーがつけられた注目の無敗対決。コバレフの強打が炸裂するのか、それともウォードのスキルが勝るのか。

 これほど対照的なタイプのスター選手同士の対決は極めて珍しい。3団体統一王者のコバレフは31戦30勝(26KO)1分で、9度の世界戦では全勝(7KO)を記録している。右ストレート、左フックなどパワーが売りのハードパンチャーだ。「クラッシャー(破壊者)」の異名そのままの強打者で、馬力があるうえパンチの繋ぎが速いため、相手は守勢に立たされて被弾してしまうケースが目立つ。パウンド・フォー・パウンドのランキングでは、米国の老舗専門誌「リング」と専門サイト「ボクシングシーン」で2位、スポーツ専門局ESPNの電子版では3位に名を連ねている。

 対するウォードは04年アテネ五輪の金メダリストで、アマチュアでは119戦114勝5敗という見事な戦績を残した。プロ転向後も12年間で30戦全勝(15KO)と無敗だ。最後に喫した敗北がアマ時代の96年だったというから、もう20年も負け知らずということになる。スーパーミドル級でWBAとWBC王座についた実績もあり、世界戦では7戦全勝(1KO)をマークしている。こちらはコバレフとは対照的なスピードを生かしたテクニシャンで、駆け引きにも長けている。足をつかいながら間合いを計り、相手が出てこないとみると攻めて出て、相手が攻めてくるとみるとタイミングを外すなど巧者としても知られる。ニックネームは「S.O.G.」(SON OF GOD=神の子)。パウンド・フォー・パウンド・ランキングでは「リング」で4位、「ボクシングシーン」で3位、ESPNでも5位につけている。

 プロでの実績は同等で、体格もコバレフが身長183センチ/リーチ184センチ、ウォードが183センチ/180センチとほぼ互角だ。一流の攻撃型選手と一流の防御型選手の対戦だけに予想は難しく、オッズは5対4でウォード有利と接近している。コバレフの強打が炸裂すれば王者の9度目の防衛、ウォードがその強打を空回りさせれば2階級制覇ということになりそうだ。どちらが最強の称号を手にするのだろうか。

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五輪連覇シールズがプロ転向 デビュー戦は因縁対決

 12年ロンドン五輪、16年リオデジャネイロ五輪の女子ボクシングで75キロ以下のミドル級連覇を果たしたクラレッサ・シールズ(21=米)がプロに転向することになった。デビュー戦は19日(日本時間20日)、米国ネバダ州ラスベガスで予定されている。

 シールズは女子ボクシングが初めて採用されたロンドン五輪に出場。ミドル級で3試合を勝ち抜いて頂点を極めた。このときの年齢は17歳だった。アメリカの男子ボクシングがメダル0に終わったこともあり、シールズは救世主ともいわれた。その後、世界選手権で優勝するなどして第一人者の座を不動にしたシールズは、今夏のリオデジャネイロ五輪にも出場して再び3勝、4年前に続いて金メダルを獲得した。

 シールズはミシガン州フリントの出身で、彼女が2歳のときに父親が逮捕され、5歳のときには母親も家族のもとを去るという不遇の幼少期をおくった。7年の隔離後に社会復帰した父親の影響を受けたシールズは11歳のときにボクシングを始め、ジュニアの大会に出場しながら力をつけていった。

 五輪2大会の6勝を含めたアマチュア戦績は78戦77勝(18KO)1敗というみごとなもの(74勝1敗説もある)。まだ21歳と若いこともあり、大きな期待のなかでのプロデビューとなる。

 そのデビュー戦は、セルゲイ・コバレフ(33=露/米)対アンドレ・ウォード(32=米)のWBA、IBF、WBO3団体統一世界ライトヘビー級タイトルマッチの前座で行われる。相手のフランチョン・クリューズ(29=米)は世界選手権で銀メダルと銅メダルを獲得した実績を持つ実力者で、こちらもプロデビュー戦となる。シールズとクリューズは5年前に対戦したことがあり、そのときはシールズが勝利を収めている。プロデビュー戦がいきなり因縁対決というのもにくい演出といえよう。

 90年代以降、アメリカの女子ボクシングはヘビー級のマイク・タイソン(米)の前座にも出場したクリスティ・マーティン(米)やモハメド・アリの娘レイラ・アリ(米)を擁して注目を集めた時期があったが、ここ数年は沈滞気味といえる。大きな期待を背負ったシールズは「19日が待ちきれない。女子ボクシングにとって歴史的で画期的な日になるはず」と自信をみせている。アメリカのみならず女子ボクシング界の核になれるかどうか。五輪女王のプロ初陣に注目したい。

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11・5世界戦4試合、アジア勢5人の奮闘に期待

 11月5日(日本時間6日)、米国ネバダ州ラスベガスのトーマス&マックセンターではジェシー・バルガス(27=米)対マニー・パッキャオ(37=比)のWBO世界ウエルター級タイトルマッチをメインとするイベントが行われる。この日はアンダーカードでもWBOの世界戦が3カード組まれている。興味深いのは、メインを含めこれら世界戦4試合にアジア出身の選手が5人も出場する点だ。

 前座で組まれているカードは以下のとおりだ。WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ:ノニト・ドネア(33=比/米)対ジェシー・マグダレノ(24=米)、WBO世界フェザー級タイトルマッチ:オスカル・バルデス(25=メキシコ)対大沢宏晋(31=ロマンサジャパン)、WBO世界フライ級王座決定戦:ゾウ・シミン(35=中国)対クワンピチット・ワンソンチャイジム(35=タイ)。

 フィリピン出身のドネアは十代前半のときに家族でアメリカに渡り、以来、西海岸に住んでいる。「フィリピーノ・フラッシュ(フィリピンの閃光)」というニックネームを持つスター選手で、フライ級からフェザー級までの5階級で世界王者になった実績を持っている。40戦37勝(24KO)3敗。挑戦者のマグダレノは23戦全勝(17KO)のサウスポーで、地元ラスベガスで生まれ育ったホープだ。勢いがあるだけに侮れない相手といえる。

 大沢は元東洋太平洋王者の肩書を持つが、世界挑戦は初めてとなる。「記念挑戦にするつもりはない。ラスベガスはギャンブルの街なので自分自身を賭ける」と意気込んでいる。37戦30勝(19KO)3敗4分。相手のバルデスは08年北京大会、12年ロンドン大会と2度の五輪出場の実績を持つエリートで、プロでも20戦全勝(18KO)というレコードを誇るハードパンチャーだ。「大沢は背が高くて戦いにくいタイプかもしれない」とバルデスは警戒している。パワーで勝るバルデス有利は動かしがたいだけに、大沢は序盤から先手をとって攻めたい。

 フライ級はアジア人同士による世界王座決定戦となった。ゾウとクワンピチットは2年前に対戦したことがあり、そのときはゾウが4度のダウンを奪って大差の12回判定勝ちを収めている。その4カ月後、ゾウは世界王座に挑んだが判定負け。再起2連勝を収めて2度目の大舞台に臨む。08年北京大会、12年ロンドン大会と五輪連覇の実績を持つゾウは9戦8勝(2KO)1敗。クワンピチットはゾウに敗れてから2年間に12試合を行い、すべてKO勝ちを収めている。42戦39勝(24KO)1敗2分。

 現在、ベネズエラ出身のホルヘ・リナレス(帝拳)を含めて日本が8人、フィリピンが4人、タイが2人の世界王者を擁するなど、アジアは軽量級を中心に世界マーケットの重要な位置にいる。無冠ではあるが、パッキャオはそんなアジアの象徴的な存在といっていいだろう。

 世界中が注目するイベントで、アジア勢の奮闘を期待したい。

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“二刀流”パッキャオ、ウエルター級3度目の戴冠なるか

 元世界6階級制覇王者、マニー・パッキャオ(37=比)が11月5日(日本時間6日)、米国ネバダ州ラスベガスでWBO世界ウエルター級王者のジェシー・バルガス(27=米)と対戦する。今年4月の試合を最後にいったんはグローブを壁に吊るしたパッキャオだが、「ボクシングは私の情熱そのもの。そしてフィリピンの人たちを救うためにもボクシングを続ける」と夏には復帰を表明。引退から7カ月で再びリングに上がることになった。勝てばウエルター級では3度目の戴冠となるが、10歳若いバルガスを侮ることは危険だ。

 6年前からフィリピンの下院議員を務めていたパッキャオは、4月の試合から1カ月後、今度は上院議員選に出馬して当選を果たした。そんななか夏には戦線復帰に向けトレーニングを開始。議員の仕事に支障のないよう早朝にロードワークとジムワークを行って体力と勘をキープしてきたという。当初、プロモーターは10月29日に復帰戦を計画したが、パッキャオは「その日程だと議会と重なってしまう。11月にしてほしい」と要請。その希望が優先されるかたちで日程が決まった経緯がある。

 今回の復帰戦に向けてパッキャオは「議員として、ボクサーとしてフィリピンの人たちの役に立ちたい」と話している。数人の対戦候補者のなかからバルガスを選択した理由については「彼がウエルター級の世界王者だから」と説明している。これまでに6階級で世界一になってきたパッキャオだが、それでもなお世界王者の地位は特別なものなのだろう。戦績は66戦58勝(38KO)6敗2分。試合に向け、バルガスと体格の似た長身選手とスパーリングを重ねていると伝えられる。

 そんなスーパースターの挑戦を受けるバルガスは、アマチュアを経て08年9月にプロデビューした。パッキャオが4階級制覇を成し遂げた3カ月後のことである。14年にWBA世界スーパーライト級王座を獲得し、ウエルター級に転向するため2度防衛後に返上。そして今年3月、現在の王座を獲得している。この戴冠試合では前評判の高かった元五輪出場者から2度のダウンを奪って9回TKO勝ち、一気に評価を上げた。28戦27勝(10KO)1敗とKO率は40パーセントに満たないが、タイミングのいい右ストレートは威力がある。「多くの人が尊敬しているパッキャオと戦えることを光栄に思う。彼をやっつけて私がのし上がるつもりだ。この試合で自分の才能と力を証明する」と意気込んでいる。

 知名度や実績ではパッキャオが大きく勝っていることもあり、オッズは7対1と大差がついている。サウスポーのパッキャオが前後左右に動いて若い王者を揺さぶり、飛び込んで左ストレートを一閃。終盤のKO勝ちか大差の判定勝ち、という予想が大勢を占めるなか、パッキャオの出端にバルガスが右をカウンターでヒットすれば番狂わせもありえる、という見方もある。序盤から速いテンポのスリリングな攻防がみられそうだ。

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ドーピングに厳しく取り組むボクシング界

 今夏のリオデジャネイロ五輪時、ロシアをはじめとした選手の禁止薬物使用が問題になったが、ドーピング違反の蔓延に関しては残念ながらプロボクシング界も例外とはいえない。そのためWBC(世界ボクシング評議会)は、5月からVADA(ボランティア反ドーピング協会)と提携して「クリーン・ボクシング・プログラム(CBP)」と銘打った取り組みをスタート。このほど非賛同選手をランキングから除外するという強硬とも思える手段に出た。

 今年に入ってから世界のボクシング界はたび重なるドーピング違反によって揺れ続けてきた。2月にWBAスーパーミドル級王者になったフェリックス・シュトルム(37=独)は筋肉増強剤アナボリック・ステロイドの陽性反応を示し、3月にWBAヘビー級王者を獲得したルーカス・ブラウン(37=豪)からは筋肉増強や減量効果があるとされるクレンブテロールの成分が検出された。両者とも意図的な使用は否定したが受け入れられず、ブラウンは王座を剥奪されたうえ6カ月の出場停止処分を受けた。シュトルムは薬物問題とは別の理由で10月に王座を返上した。

 また5月には、三浦隆司(帝拳)からWBCスーパーフェザー級王座を奪ったフランシスコ・バルガス(31=メキシコ)が抜き打ち検査でクレンブテロールの陽性反応を示した。バルガスは「メキシコで食べた肉が汚染されていたようだ」と説明。その後、複数回の検査で陰性が確認されたため6月の防衛戦は予定どおり挙行することができた。しかし、5月にWBCヘビー級王座に挑戦予定だったアレクサンデル・ポベトキン(37=露)は、持久力向上や疲労回復効果があるといわれるメルドニウムの成分が検出されたため、WBCの判断に従い1週間前に試合を中止せざるをえなかった。

 「クリーン・ボクシング・プログラム」は、こうした状況下で動き出した対応策といえる。

 WBCはVADAと組んで予告なしの血液、尿検査を課すとし、対象となる世界挑戦権のあるランキング15位内の選手たちに同意と登録、必要書類の提出を求めた。ほとんどの選手や関係者は賛同してWBCの指令に従ったが、一部は要求に応じなかった。そのためWBCは10月12日に発表した各階級のランキングから非賛同選手を除外した。そのリストのなかにはヘビー級のデビッド・ヘイ(英)、ライトヘビー級のジャン・パスカル(ハイチ/カナダ)、ウエルター級のアミール・カーン(英)、スーパーフェザー級のユリオルキス・ガンボア(キューバ/米)、フライ級のブライアン・ビロリア(比/米)といった世界王者経験者の名前が入っており、この時点ではいずれもWBC王座への挑戦権を失った。リストが出てからカーンは慌てて賛同の意思表示をしたが、ランキング復帰は来月以降ということになりそうだ。ちなみに山中慎介(帝拳)、ホルヘ・リナレス(帝拳)、長谷川穂積(真正)の3王者をはじめ日本人選手24人は除外リストには入っていない。

 こうした取り組みが行われる一方、ヘビー級のWBAスーパー王座とWBO王座を持っていたタイソン・フューリー(28=英)が、かつて常習的にコカインを使用していたことを明かしたうえ、13日には両王座を返上してしまった。これも前向きな一歩ととらえればいいのだろうか。ボクシングに限らずドーピングの根は深いが、一掃しなければならない重要な問題といえる。

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ゴンサレス、井上を軸にスーパーフライ級ウォーズ

 「怪物」のニックネームを持つ井上尚弥(23=大橋)がWBO王座に君臨するスーパーフライ級トップ戦線が、ここにきて俄然賑やかになってきた。世界的評価の高い4階級制覇王者、ローマン・ゴンサレス(29=ニカラグア)に続いて、前WBA、WBO世界フライ級王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(26=メキシコ)も参入してきたのだ。

 去る8月31日から9月10日にかけ、115ポンド(約52.1キロ)を体重上限とするスーパーフライ級の世界タイトルマッチが4試合行われた。その結果、WBA王座の持ち主が河野公平(35=ワタナベ)からルイス・コンセプション(31=パナマ 39戦35勝24KO4敗)に替わり、IBFではマクジョー・アローヨ(30=プエルトリコ)を破ったジェルウィン・アンカハス(24=比 27戦25勝16KO1敗1分)が新王者になった。WBO王座は井上(11戦全勝9KO)が守ったが、WBCタイトルマッチではV7を狙ったカルロス・クアドラス(28=メキシコ)をゴンサレス(46戦全勝38KO)が攻略して4階級制覇を達成した。

 こうしたなか、3年半の間にフライ級王座を5度防衛したエストラーダが9日にスーパーフライ級転向初戦を行い、大差の10回判定勝ちを収めた。このエストラーダ(36戦34勝24KO2敗)は4年前、ライトフライ級王者時代のゴンサレスに挑戦して判定負けを喫したが、無敵と思われた王者に大善戦している。右拳を痛めたため昨年9月から1年のブランクをつくってしまったが、今回の転級に際して「ゴンサレス、井上、コンセプション、誰とでも戦う」と王者たちに宣戦布告している。ゴンサレスは「すでに決着済み」として再戦に乗り気ではないが、WBOでは2位にランクされており、近い将来、井上の指名挑戦者になる可能性もある。エストラーダは強打とテクニックを併せ持った万能型の実力者だけに彼らのベルトを脅かす一番手といえる。

 ゴンサレスに王座を明け渡したクアドラス(37戦35勝27KO1敗1分)も再戦を熱望している。9月の試合ではライバルの顔面を切り裂いたうえ大きく腫れ上がらせ、「勝ったと思った」と手応えを感じたが、小差の判定負けだった。「今度は違う結果を出す」と意気込んでいる。

 クアドラスの前の王者、シーサケット・ソー・ルンビサイ(29=タイ 46戦41勝38KO4敗1分)も無冠になってから13連勝(12KO)と好調だ。WBC1位にランクされており、ゴンサレスへの挑戦を狙っている。

 井上もゴンサレスとの統一戦を熱望している。「来年の春がベストだが、いずれにしても戦う時期は近づいてきていると思う」と話しており、先のゴンサレス対クアドラスをリングサイドで観戦した。試合後、ゴンサレスも井上戦との頂上決戦について「喜んで戦う」と前向きなコメントを残している。

 ゴンサレス、井上を軸にしたスーパーフライ級ウォーズ。今後、どんなカードが実現するのか注目していきたい。

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誰がヘビー級の迷走状態にストップをかけるのか

 10月29日に英国マンチェスターで予定されていたWBA、WBO世界ヘビー級タイトルマッチ、王者タイソン・フューリー(28=英)対前王者ウラジミール・クリチコ(40=ウクライナ)の12回戦は、試合1カ月前になって延期が発表された。王者側は「フューリーの健康上の理由」としているが具体的な説明はなく、このままいけば2団体の王座は剥奪を免れない状況だ。今年は活性が見込まれていたヘビー級だが、フューリーをはじめ多くのトップ選手が期待を裏切ることになってしまい、一転して迷走状態となっている。

 昨年11月、10年近い在位を誇ったクリチコをフューリーが破り、WBA(スーパー王座)、IBF、WBO3団体の王者になったときは、「ヘビー級に新しい時代が到来する」と大きな期待を抱かせたものだった。しかし、その番狂わせは逆に混迷の度合いを深めるという皮肉な結果を招いたようだ。

 戴冠後、フューリーは指名防衛戦を嫌ってIBF王座を返上。7月にはクリチコとの再戦が決まったが、試合まで2週間というときに左足首を痛めて延期することになった。やっと決まった再日程が10月29日だったが、これも先延ばしにしたわけだ。陣営が具体的な事情説明をしていないため一部では「ドーピングの問題を抱えている」、「精神的に極めて不安定な状態」などと報じられている。「このまま引退してしまうのでは」と危惧する声もある。

 WBAのレギュラー王者は3月にルスラン・チャガエフ(37=ウズベキスタン/独)からルーカス・ブラウン(37=豪)に替わったが、その新王者はドーピング違反のため王座を剥奪されてしまった。これを受け王座はチャガエフに返還されたが、指名防衛戦の意思を示さなかったため、これも剥奪。現在、WBAのレギュラー王座は空いたままとなっている。WBA暫定王者のルイス・オルティス(37=キューバ/米)は今春までハイペースでリングに上がっていたが、プロモーターとの確執が表面化。3月から試合枯れ状態が続いている。

 37戦全勝(36KO)という驚異的なレコードを誇るWBC王者のデオンタイ・ワイルダー(30=米)は1月と7月にKO防衛を果たしたが、右拳の骨折と右上腕部分の負傷のため現在は休養中だ。このワイルダーに5月に挑戦するはずだったアレクサンデル・ポベトキン(37=露)は、試合1週間前にドーピング違反が発覚、大きなチャンスを逃してしまった。その後、ワイルダーの戦線離脱にともない暫定王座決定戦に出場することになったが、まだ試合は具体化していない。

 4団体のなかで唯一、活発だったのがIBFだ。1月にチャールズ・マーティン(30=米)が決定戦を制して新王者になり、4月には12年ロンドン五輪金メダリストのアンソニー・ジョシュア(26=英)がこれを継承。ジョシュアは6月の初防衛戦も突破し、戦績を17戦全KO勝ちに伸ばしている。11月26日には2度目の防衛戦を予定している。

 フューリー、ワイルダー、ジョシュアの3王者が着々と全勝記録と防衛回数を伸ばして秋を迎え、17年に直接対決-という図がヘビー級の理想だったが、現状は構想から大きくずれてしまった。王座の行方が混沌とするなか、ランカーたちも標的を定めきれない状況が続いている。いつ、誰がヘビー級の迷走状態にストップをかけるのだろうか。

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フィリピン勢の快進撃 パッキャオ復帰戦で勢い続くか

 このところ世界戦のリングでフィリピンの選手の活躍が目立っている。5月、7月、9月と3人が世界王座を獲得し、若手の台頭も目覚ましいものがある。そんななか11月5日(日本時間6日)には同国が誇る世界的なスーパースター、マニー・パッキャオ(37)の復帰戦が予定されており、勢いに拍車がかかりそうな気配だ。

 もともとフィリピンは1923年にアジアで最初に世界王者を輩出するなどボクシングの盛んな国だが、21世紀に入ってからはパッキャオの影響で勢いを増した感がある。ただし経済的事情から自国での世界戦開催が容易ではなく、大きなチャンスを求めてハンディの多い異国に行くトップ選手も少なくはない。その典型が米国で成功を収めたパッキャオだったといえる。

 そのパッキャオは昨年5月にフロイド・メイウェザー(米)との世紀の一戦で判定負け、一時は引退を表明した。このあとフィリピンの世界王者はドニー・ニエテス(34=WBOライトフライ級)ただひとりになってしまった。しかし、昨年12月に5階級制覇の実績を持つノニト・ドネア(33)がWBOスーパーバンタム級王座に返り咲き、若手に刺激を与えた。

 これに応えるように、今年5月には中国でジョンリエル・カシメロ(26)がアムナット・ルエンロエン(タイ)を逆転の4回KOで屠りIBF世界フライ級王座を獲得。7月、敵地タイに出向いたマーロン・タパレス(24)もプンルアン・ソー・ルンビサイ(タイ)とのダウン応酬の激闘を11回KOで制し、WBO世界バンタム級王座を奪い取った。さらに9月にはジェルウィン・アンカハス(24)が無敗のIBF世界スーパーフライ級王者、マクジョー・アローヨ(プエルトリコ)を自国に招き、ダウンを奪って堂々の判定勝ちを収めた。いずれも不利の予想を覆しての勝利で、フィリピン勢の逞しさを感じさせる結果といえる。戦績はカシメロが26戦23勝(15KO)3敗、タパレスが31戦29勝(12KO)2敗、アンカハスが27戦25勝(16KO)1敗1分で、タパレスとアンカハスはフィリピンに多いサウスポーだ。

 こうした勢いのなか11月5日にはパッキャオがジェシー・バルガス(27=米)の持つWBO世界ウェルター級王座に挑む。その前座ではドネアが23戦全勝(17KO)のジェシー・マグダレノ(24=米)を相手に2度目の防衛戦を行うことになっている。フィリピン勢の快進撃は続くのか、それとも足踏みすることになるのか。11月5日が待ち遠しい。

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リナレス、クロラに勝ち「ダイヤモンド・ベルト」獲得へ自信

 3階級制覇の実績を持つWBC世界ライト級休養王者、ホルヘ・リナレス(31=帝拳)が24日(日本時間25日)、英国マンチェスターでWBA同級王者、アンソニー・クロラ(29=英)と対戦する。相手の地元に乗り込んでのタイトルマッチとなるが、リナレスは「ブーイングがすごいだろうね。でも、まったく問題ないよ。チャンスがあればKOする」と自信をみせている。

 リナレスは16歳のときに来日し、02年に17歳でプロデビュー。以来、43戦40勝(27KO)3敗という戦績を積み上げてきた。フェザー級、スーパーフェザー級、そしてライト級の3階級で世界一の座につき、これが10度目の世界戦となる。リナレスの最大の武器はスピードで、左ジャブ、右ストレート、左右のコンビネーション・ブローなど繰り出すパンチはとにかく速い。反面、敗北のすべてがTKOによるものであることからも察せられるように、耐久面で課題を抱えてもいる。最近の4年半は9連勝(7KO)と好調で、目下4連続KO勝ちと乗っている。昨年5月には英国遠征を経験しており、地元の選手からダウンを奪われながら立ち直り、逆転の10回TKO勝ちを収め逞しさを見せつけた。不安があるとすれば、2月に右拳を骨折して7カ月のブランクができたことだ。そのためWBCから休養王者にスライドさせられたが、今回の試合で勝てば特別な王者だけに与えられる「ダイヤモンド・ベルト」が授与される予定だ。

 WBA王者のクロラは「ミリオン・ダラー(100万ドルの男)」のニックネームを持つマンチェスターの人気者で、これがWBA王座の2度目の防衛戦となる。クロラは一昨年12月、隣家に押し入った強盗を取り押さえようとして頭部と足に重傷を負い、決まっていた世界挑戦をキャンセルする羽目に陥ったことがある。選手生命が絶たれたかと思われたが、奇跡的に戦線復帰し、昨年11月に現在の王座を獲得した。ガードを固めながら辛抱強く戦うタイプで、今年5月の初防衛戦では相手にリードを許しながら7回に左ボディブローで逆転KO勝ちを収めている。戦績は38戦31勝(13KO)4敗3分。

 WBA王者の地元での開催ということもあり、オッズは3対2でクロラ有利と出ているが、リナレスは「今回はスピードとスタミナがテーマ。クロラは打たれ強くはないと思うので、ボディと顔面を打ち分けながら攻めるつもり。チャンスがあればKOする」と自信をみせている。マンチェスターからの朗報を待ちたい。

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スミス家のエース・リアム対アルバレス家の切り札サウルに注目

 17日(日本時間18日)、米国テキサス州アーリントンのAT&TスタジアムでWBO世界スーパーウエルター級タイトルマッチが行われる。3度目の防衛を狙うリアム・スミス(28=英)に、高い知名度を誇る元2階級制覇王者、サウル・アルバレス(26=メキシコ)が挑むもので、世界的に大きな注目を集めている。この両者はともに兄弟4人がボクサーという家系で、ファイティング・ファミリー同士の戦いとしても興味深いものがある。

 王者のリアム・スミスは「英国のスミス4兄弟」のひとりとして知られている。長兄ポール(33)はスーパーミドル級で2度の世界挑戦を経験。王座獲得は果たせなかったが、夢を追って現役を続けている。43戦37勝(21KO)6敗。次兄スティーブン(31)は今年4月、IBF世界スーパーフェザー級王座に挑んだが判定で敗れた。翌月には再起を果たすなど王座に執念をみせている。26戦24勝(14KO)2敗。

 3番目のリアムは昨年10月、決定戦を制してWBO世界スーパーウエルター級王座を獲得した。4兄弟のなかで最初の世界制覇ということになる。すでに2度の防衛を果たしており、自信を深めてアルバレス戦に臨む。24戦23勝(13KO)1分と決してKO率は高くないが、このところ世界戦3試合を含め8連続KO勝ちと勢いがある。

 リアムの弟カルム(26)はスーパーミドル級でWBC1位にランクされており、近い将来の世界挑戦が約束されている。20戦全勝(15KO)。

 アルバレス家も負けてはいない。8人兄弟のうち末弟のサウルを含め、こちらも4人がボクサーだ。36歳のリゴベルト(31戦27勝20KO4敗)はすでに引退したが、10年には石田順裕(グリーンツダ)を破ってWBA世界スーパーウエルター級暫定王座を獲得した実績を持っている。世界ランク入りしたこともあるスーパーライト級のリカルド(34)は、30戦24勝(14KO)3敗3分のレコードを残しているが、この2年は活動実績がない。サウルと同じスーパーウエルター級のラモン(30)は元北米王者で、現在はWBC19位にランクされている。31戦23勝(15KO)5敗2分1無効試合。リゴベルト、サウルに次いで世界王者になれるか。

 こうしたなかスミス家のエース、リアム・スミスと、アルバレス家の切り札、サウル・アルバレスが世界戦の舞台で拳を交えるわけだ。17対2のオッズが出ているように、49戦47勝(33KO)1敗1分の戦績を誇るアルバレスが圧倒的有利とみられているが、スミスに臆した様子はみられない。「アルバレスの実力は認めるが、私のように大きくて強い相手とは戦ったことがないはず。世界をアッと驚かせてみせる」と自信に満ちている。

 右ストレートや左フックなどパンチの破壊力や回転力で勝るアルバレス有利は不動で、中盤あたりにヤマをつくる可能性が高いとみる。左ジャブ、左ボディブローを得意とするスミスは接戦に持ち込んで勝機を探りたいところだが、難しい仕事になりそうだ。

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ウエルター級王者ブルックがミドル級絶対王者ゴロフキンに挑む

 6年間に16連続KO防衛を記録しているミドル級の絶対王者、ゲンナディ・ゴロフキン(34=カザフスタン/米)が10日(日本時間11日)、英国ロンドンで地元の人気選手、IBF世界ウエルター級王者、ケル・ブルック(30=英)の挑戦を受ける。無人の野を突っ走ってきたゴロフキンに対し、一気に2階級上げて挑むブルックは「本当のベストになるためにはベストの選手を倒さなければならない。それを成し遂げてみせる」と自信をみせている。

 ゴロフキンは04年アテネ五輪ミドル級で銀メダルを獲得するなどアマチュアで350戦345勝5敗(他説のある)を収めたあと、ドイルでプロデビュー。10年にWBA世界ミドル級王座を獲得し、2年後から活動拠点を米国に移した。その後、WBC王座とIBF王座も獲得し、連続KO防衛は16まで伸びている。35戦全勝(32KO)の戦績が示すとおりの無類のハードパンチャーだが、単なる一発屋ではない。五輪で銀メダルを獲得するほどのテクニックも併せ持っており、相手はいつのまにかロープやコーナーに追い詰められて決定打を浴びることが多い。また、ボクサーからも尊敬を集めるほどの好人物で、4年前にウクライナで挑戦して3回TKO負けを喫した渕上誠(八王子中屋)は「リングを降りると誰にでも優しくて、ファンになってしまった」というほどだ。米国で一緒にトレーニングした村田諒太(帝拳)も「真面目なのでボクサーとしても人としてもリスペクトできる人物」と評している。今回の試合に際しても相手を挑発することはなく「私にとって試練になる大事な試合」と自らを戒めている。

 ブルックはそんなゴロフキンにあえて挑む道を選んだ。今回、もともとは英国のミドル級選手がゴロフキンに挑む交渉をしていたのだが、契約直前で破談に。困ったプロモーターがブルックに話を持ち掛けたところ「イエス」と即答したのだという。2年前にIBFの世界ウエルター級王座を獲得して3連続KO防衛を果たしているだけに、ブルックには揺るぎない自信があるのだろう。36戦全勝(25KO)という勢いもある。

 しかし、ブルックの自信とは裏腹に、ウエルター級とミドル級の間には約6キロの体重差があり、その壁は厚いとみられている。ミドル級の元WBA暫定王者でゴロフキンに11回TKO負けを喫しているマーティン・マレー(英)は「ブルックはスピードがあってパワーもある。体も大きい方だが、それはウエルター級でのこと。ゴロフキンはミドル級でも別次元の強さを持っている。ブルックも頑張るだろうが、それでも6回はもたないだろう」と厳しい予想を立てている。

 ブルックは「ゴロフキンの体格とパワーにスピードで対抗する」と作戦の一端を明かしており、その策が奏功すれば勝機を見出すことはできるかもしれない。しかし、6対1のオッズが示すように、12ラウンドのどこかでゴロフキンの強打がブルックを捉える確率の方がはるかに高そうだ。

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ゴンサレスは無敗の世界王者対決制し4階級制覇なるか

 日本では「ロマゴン」の愛称で知られるWBC世界フライ級王者、ローマン・ゴンサレス(29=ニカラグア)が9月10日(日本時間11日)、米国カリフォルニア州イングルウッドのフォーラムで1階級上のスーパーフライ級WBC王者、カルロス・クアドラス(28=メキシコ)に挑戦する。ミニマム級、ライトフライ級、そして現在のフライ級と三つのクラスで世界王座を獲得してきたゴンサレスは、クアドラスに勝てば4階級制覇となる。軽量級を代表する強打者同士の注目カードを制するのは-。

 ゴンサレスは05年のプロデビュー後、11年のキャリアで45戦全勝(38KO)というレコードを残している。50キロ前後の軽量級で84パーセントのKO率は驚異的といっていいだろう。その実力は日本のトップ選手たちとの試合でも証明済みだ。08年に新井田豊(横浜光)を4回TKOで破ってWBA世界ミニマム級王座を獲得すると、10年にはWBA世界ライトフライ級暫定王座決定戦を制して2階級制覇を達成。そして2年前には八重樫東(33=大橋 ※現IBF世界ライトフライ級王者)を9回TKOで屠ってWBC世界フライ級王座を獲得した。いずれも日本で開催された試合だった。無冠時代を含め日本のリングには9度上がり全勝(7KO)を収めている。「日本の人は親切で優しいので大好き」という親日家だ。

 一方のクアドラスにとっても日本は験のいい国だ。これまで東京、名古屋、神戸、仙台など6度、日本のリングに上がって全勝(5KO)を収めている。昨年11月、WBC世界スーパーフライ級王座5度目の防衛戦で江藤光喜(28=白井・具志堅)を大差の12回判定で退けた試合は、ボクシングファンの記憶に新しいところであろう。トレーニングでも何度か来日しており、片言の日本語を話すことができる。江藤戦の前も「ワタシ、速くて強い。勝つよ」と日本語でコメントを発したほどだった。戦績は36戦35勝(27KO)1分。クアドラスは75パーセントのKO率が示すとおりの強打者で、最近は足をつかって巧みに出入りする幅広いボクシングも身につけている。

 無敗の世界王者同士の好カードだが、オッズは7対1の大差でゴンサレス有利と出ている。攻防ともに隙のないゴンサレスが圧力をかけながら巧みに追い込み、ボディ、顔面へのコンビネーションを打ち込んで仕留めてしまうという見方が多い。クアドラスは動きを止めずに中長距離からパンチを叩き込みたいところだが、それが難しい作業であることはクアドラス自身も分かっているはず。リスクを承知で思い切った打撃戦を仕掛けてくる可能性もありそうだ。

 同じ階級にはWBO王者の井上尚弥(23=大橋)がおり、近い将来、ゴンサレスとの頂上対決が期待されている。その井上は今回の試合を「両者のスタイルの噛み合わせなどを考えるとゴンサレスが有利」とみている。そして「来年の春ぐらいにはゴンサレスと戦いたい」と腕を撫している。

 クアドラス対ゴンサレスは日本のファンにとっても要注目のカードだ。

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原功(はら・いさお)

1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間、同誌編集長を務める。2001年、フリーのライターとして活動を開始。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。