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女子ボクシングに再び脚光 五輪金メダリスト3人に要注目

 世界的な傾向として下火になりかけていた女子ボクシングだが、ここにきて再び脚光を浴びつつある。きっかけは12年ロンドン五輪、16年リオデジャネイロ五輪の金メダリスト3人のプロ転向だ。彼女たちは大きな波を起こすことができるか。

 女子ボクシングは80年代以降、米国でクリスティ・マーティン(米)というスター選手を輩出して人気を博した。マーティンはマイク・タイソン(米)の世界ヘビー級タイトルマッチの前座や、フリオ・セサール・チャベス(メキシコ)、フェリックス・トリニダード(プエルトリコ)といったスター選手の前座に出場したこともある。2000年代に入るとモハメド・アリの娘、レイラ・アリ(米)が女子ボクシングを牽引したが、07年の試合を最後に活動を休止。以後もドイツやメキシコ、日本などを中心に世界戦は頻繁に開催されてきたものの、かつてのような世界的な注目度は得られなかった。

 こうしたなか12年ロンドン五輪から女子ボクシングが採用され、フライ級でニコラ・アダムス(英=34)、ライト級でケイティー・テイラー(アイルランド=30)、ミドル級でクラレッサ・シールズ(米=22)という3人の女王が誕生した。アダムスとシールズは16年リオデジャネイロ五輪でも金メダルを獲得して注目を集めた。

 この3人のうち、まずシールズが昨年11月に米国ラスベガスでプロデビュー(4回判定勝ち)した。シールズは今年3月の第2戦では4回TKO勝ちを収めて北米王座を獲得。この試合はテレビが生中継するなかメインイベントとして組まれたほどで、シールズは早くも大きな期待と注目を集めている。

 テイラーはシールズのデビュー戦の1週間後、英国ロンドンで初陣に臨み3回TKO勝ち。その試合を含め現時点で4戦全勝(2KO)を記録している。5戦目は4月29日、アンソニー・ジョシュア(英)対ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)のIBF世界ヘビー級タイトルマッチの前座で8回戦を行うことになっている。

 ふたりに遅れること5カ月、アダムスは今年4月8日に英国マンチェスターでプロ初戦を行い、4回判定勝ちを収めた。すでに次戦が5月13日に組まれている。女子の試合は1ラウンドが2分の設定になっているが、それでは物足りないのかアダムスは「男子と同じ3分で戦わせてほしい」と要求している。

 3人とも来年には世界戦に絡んできそうな勢いがあるだけに、女子ボクシング界にとっては光明といえる。再び大きな波が起こるかどうか。シールズ、テイラー、アダムス、彼女たちの拳に要注目だ。

3団体がSウエルター級選手権同時開催、なるか統一戦


 このところ各階級で王座統一戦が実現したり、あるいは同じ階級の王者たちが一堂に会して防衛戦を行ったりというイベントが目立つ。こうしたなか今度は154ポンド(約69.8キロ)を体重上限とするスーパーウエルター級の世界王者3人が14日(日本時間15日)、米国ニューヨークで揃って防衛戦を行う。経験値の高いベテランから22歳の新鋭まで、実力者や人気者が出場するとあって注目を集めている。

 この8月、スーパーライト級ではテレンス・クロフォード(30=米)がWBA、WBC、IBF、WBO主要4団体の王座を統一し、9月には井上尚弥(24=大橋)のV6戦を含むスーパーフライ級のダブル世界戦が開催された。このほかクルーザー級では賞金トーナメントに4人の王者が出場しており、来年の初夏には王座が統一される見通しとなっている。

 14日にニューヨークのバークレイズ・センターで行われるスーパーウエルター級タイトルマッチ3試合は、以下のカードだ。

 ・WBA(スーパー王座) 王者エリスランディ・ララ(34=キューバ/米 28戦24勝14KO2敗2分)vsテレル・グシェイ(30=米 20戦全勝9KO)

 ・WBC 王者ジャメール・チャーロ(27=米 29戦全勝14KO)vsエリクソン・ルビン(22=米 18戦全勝13KO)

 ・IBF 王者ジャレット・ハード(27=米 20戦全勝14KO)vsオースチン・トラウト(32=米 33戦30勝17KO3敗)

 ララ対グシェイは元アマエリート同士の対決となる。05年の世界選手権で優勝したララは08年北京五輪では金メダルが有力視されたが、その前年に亡命してプロに転じたサウスポーで、スキルに定評がある。グシェイは12年ロンドン五輪に出場した実績を持ち(2回戦敗退)、プロでも順調に白星を重ねてきた。マニア好みの技術戦になりそうだ。

 3試合のなかで最も注目を集めているのがチャーロ対ルビンだ。スピードと技巧が売りだったチャーロだが、昨年5月の戴冠試合と今年4月の初防衛戦は鮮やかなKO勝ちを収めており、自信を増している。対するルビンはサウスポーの技巧派強打者で、将来のスター候補生でもある。総合力は拮抗しており、序盤からスリリングな展開になるものと思われる。

 IBFタイトルマッチは若手の王者対ベテランの元王者という構図だ。今年2月の戴冠試合を含めて5連続勝ちと勢いのあるハードに対し、元WBA王者のトラウトはテクニックに定評がある。若いハードが攻め切るのか、それとも経験値の高いトラウトが相手の強打を空転させるのか。王者に分のあるカードといえる。

 勝者同士の統一戦を念頭においているのは、戦う6選手もファンも同じであろう。3試合の勝負はもちろん、その後のスーパーウエルター級トップ戦線の行方から目が離せなくなってきた。

ロマチェンコVSリゴンドー、五輪金メダリスト決戦


 アマチュア時代に五輪で2大会連続して金メダルを獲得し、プロでも世界王座に君臨する天才ボクサー同士が12月9日、アメリカのニューヨークで世界王座をかけて対戦することになった。WBO世界スーパーフェザー級王者ワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ/米)が、2階級下のWBA世界スーパーバンタム級王者ギジェルモ・リゴンドー(37=キューバ/米)の挑戦を受けるもの。

 8歳の年齢差があるため両者が五輪で戦うことはなかったが、舞台をプロのリングに移して技巧派サウスポー同士の対決が実現することになった。「ハイテク(高性能)」と呼ばれるロマチェンコが勝つのか、それとも「ジャッカル」の異名を持つリゴンドーが先輩の維持を見せるのか。早くも注目を集めている。

 ロマチェンコは08年北京五輪のフェザー級で優勝し、12年ロンドン五輪ではライト級で金メダルを獲得した。このほか07年世界選手権で準優勝、09年と11年の世界選手権では優勝を果たしている。アマチュアの戦績が397戦396勝1敗というのだから驚く。ちなみに07年世界選手権決勝で敗れた相手には、のちに2勝して倍返ししている。

 13年10月、世界ランカー相手に4回KO勝ちを収めてプロデビュー。2戦目で世界挑戦を果たしたが、このときは体重オーバーで王座を剥奪された前王者の狡猾な戦いの前に惜敗した。スタミナの配分に不安があったのか前半をセーブしたのが裏目に出た印象だった。それでも最終12回には相手をKO寸前に追い込んで才能の一端を披露したものだ。その3カ月後、決定戦を制してWBO世界フェザー級王座についた。3戦目での戴冠はボクシング史上最短タイ記録でもある。プロの水に慣れたこともあり、以後は手のつけられない強さ、巧さを見せつけている。昨年6月には現在の王座を獲得、7戦目で2階級制覇を成し遂げた。これは井上尚弥(大橋)の8戦を更新する世界最短記録だ。

 一方のリゴンドーも負けてはいない。2000年シドニー五輪と04年アテネ五輪バンタム級で金メダルを獲得したほか、世界選手権では01年と05年の大会で優勝。475戦463勝12敗というアマチュア戦績を残している。キューバではプロ活動が認められていないためアメリカに亡命し、09年にプロデビューした。

 7戦目でWBA世界スーパーバンタム級王座(当時は暫定王座)を獲得し、王座剥奪と返還を経て通算10度の防衛を果たしている。このなかには、2度のダウンを挽回して天笠尚(FLARE山上)を11回終了TKOで下した勝利も含まれている。卓抜したスピードと勘の持ち主だ。

 ともにディフェンス技術に長けたサウスポーの技巧派だが、年齢に加えベスト体重に3.6キロの差がある。そのためオッズは4対1でロマチェンコ有利と出ているが、リゴンドーは「今度の試合で彼の化けの皮が剥がれる」と自信満々だ。10戦9勝(7KO)1敗のロマチェンコが勲章を増やすのか、それとも18戦17勝(11KO)1無効試合のリゴンドーが時計の針を逆回転させるのか。実現は2カ月先だが、実に興味深いカードだ。

王者ウォード、21年間負け知らずの理想的な引退


 WBA、IBF、WBO3団体統一世界ライト・ヘビー級王者、アンドレ・ウォード(33=米)が引退した。04年アテネ五輪の金メダリストでもあるウォードは、プロではスーパー・ミドル級とライト・ヘビー級の2階級を制覇し、32戦全勝(16KO)という戦績を残した。アマチュア、プロを通じてこれほど輝かしい実績を残して無敗のままグローブを置くボクサーは極めて珍しい。

 ウォードは9歳のとき、元アマチュア・ボクサーだった父親の影響でグローブを手にした。運動神経に加え努力する才能にも恵まれていたのだろう、ウォードはアマチュアで119戦114勝5敗(他説あり)の戦績を残した。01年と03年の全米選手権を制し、04年アテネ五輪ではライト・ヘビー級で金メダルを獲得した。ちなみに2000年シドニー大会以降、ボクシング競技で金メダルを獲得した米国人(男子)はウォードだけである。

 04年12月にプロ転向を果たしたが、ルーキー時代にダウンを喫したこともあり「プロでは通用しないのでは?」と大成を危ぶむ声もあった。しかし、ウォードはスピードとテクニックを生かしたボクシングで勝利を重ね、09年にはWBA世界スーパー・ミドル級王座を獲得。11年にはWBC王者にも勝って統一を果たした。

 そのころから膝や肩などの故障、さらにプロモーターとの確執などでブランクをつくることが多くなり、一時は1年7カ月も実戦から遠ざかった。

 こうしたなか2年前に1階級上のライト・ヘビー級に転向し、昨年11月にはWBA、IBF、WBO3団体王者のセルゲイ・コバレフ(露/米)に挑戦。2回にダウンを喫するなど最悪のスタートだったが、中盤からじわじわと追い上げ、僅差の判定勝ちを収めて2階級制覇を成し遂げた。今年6月の再戦ではダウンを奪って8回KO勝ちでけりをつけた。この試合がラストファイトということになる。最後に負けたのがアマチュア時代の96年だというから、それから21年間も敗北を知らないままキャリアを終えることになるわけだ。これほど理想的な引退はないだろう。

 50パーセントのKO率が示しているようにパワーは重量級では平均の域内だったが、ディフェンス技術と駆け引き、戦術などに長けていた。また、キャリアの途中で指導者を変えることが多いトップ選手のなかにあって、ウォードは9歳のときに初めてボクシングの手ほどきしてくれたバージル・ハンター・トレーナーと最後までコンビを組み続けた。そんなところにウォードの人間性の一端をみる思いがする。

 引退に際しウォードは自身のウェブサイトで「ボクシングを通じて出会った人すべてに感謝したい。いま、私はこのスポーツの厳しさに耐えられる肉体ではないし、戦いたいという欲望も湧いてこない」と綴っている。燃え尽きたということなのだろう。

リナレス有利も挑戦者キャンベルの番狂わせも


 3階級制覇を成し遂げているWBA世界ライト級王者、ホルヘ・リナレス(32=帝拳)が23日(日本時間24日)、米国カリフォルニア州イングルウッドのフォーラムで同級1位のルーク・キャンベル(29=英)の挑戦を受ける。リナレスにとっては2度目の防衛戦だが、今回は12年ロンドン五輪金メダリストが相手とあって、いつも以上に注目度は高い。「ゴールデンボーイ」のニックネームを持つリナレスがスピードとテクニックを武器に防衛を果たすのか、それとも長身サウスポーのキャンベルがプロでも世界一の座を射止めるのか。

 ベネズエラ出身のリナレスは02年12月、17歳のときに大阪でプロデビューした。以来、45戦のキャリアの半分(23試合)を日本で戦ってきた。最近は米国や英国での試合が多いが、日本にも多くのファンを持っている。スピードのある左ジャブを突いて主導権を奪い、チャンスには右ストレートから回転の速いコンビネーションで一気にたたみかける。パワーを売りにする選手ではないが、42勝のうち27KOをマークしている。反面、3敗はいずれもKO(TKO)によるもので、決して打たれ強くはない。それでも最近は敵地での試合でダウンを喫しながら、逆転TKO勝ちで世界王座を防衛するなど逞しさも身につけてきた。

 一方のキャンベルはアマチュア時代、11年の世界選手権で準優勝、翌12年に地元ロンドンで開催された五輪では4試合を勝ち抜いてバンタム級で金メダルを獲得した。準決勝では清水聡(現大橋ジム)にポイント勝ちを収めている。

 プロデビューは13年7月で、以来4年間で18戦17勝(14KO)1敗の戦績を収めている。2年前にダウンを喫して判定負けしたが、以後は元世界王者3人との試合を含むハードなマッチメークのなか5連勝(4KO)を収めて指名挑戦権を手にするまでになった。ライト級では175センチと長身で、その恵まれた体から矢継ぎ早にパンチを繰り出して相手を守勢に追いやり、左ストレートや右フック、左のボディブローなどでKO勝ちを重ねてきた。

 4対1のオッズが出ているように、プロの経験値で勝るリナレス有利は動かないところだ。足をつかいながら角度を変えた速いパンチで翻弄したすえ、中盤から終盤で仕留めるという見方が大勢を占めている。ただ、手足の長い挑戦者の懐の深さに戸惑うようだと苦戦も考えられる。リナレスは決して打たれ強くはないだけに、番狂わせが起こる可能性もある。

 キャンベルが戴冠を果たすと、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、アンソニー・ジョシュア(英)、オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)、ゾウ・シミン(中国)に次いで12年ロンドン五輪金メダリストとして5人目のプロの世界制覇者となる。

ミドル級統一戦、アルバレスは若さとスタミナでゴロフキンに挑む


 16日(日本時間17日)、米国と英国でミドル級の世界戦2試合が行われる。特に米国ネバダ州ラスベガスで開催されるWBA、WBC、IBF3団体統一タイトルマッチ、王者のゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)対サウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)の一戦は、今年の最注目カードといわれる試合だ。豪腕ゴロフキンが19度目の防衛を果たすのか、それとも人気で勝る元2階級制覇王者のアルバレスが再びベルトを腰に巻くのか。

 04年アテネ五輪銀メダリストでもあるゴロフキンは10年にWBA王座(当時は暫定王座)を獲得し、7年間に18度の防衛を重ねてきた。半年前の試合が判定勝ちだったため連続KO防衛は17、無冠時代からの連続KO勝ちは23で止まったが、ミドル級で圧倒的な強さ、存在感を示していることに変わりはない。大きな試合を求めて階級を変える選手が多いなか同じ階級に留まり、相手を選ばずに戦ってきたゴロフキンには潔さ、男臭さが感じられる。

 どちらかといえば童顔のゴロフキンだが、戦い方は獰猛だ。じわじわと相手を追い込み、中間距離になるとハンマーのような左右で襲いかかる。パンチの破壊力は、スパーリングで拳を交えた経験を持つ村田諒太(帝拳)が「異次元の強さ」と驚いたほどだ。五輪で銀メダルを獲得したほどだから、もちろん細かなテクニックも身に着けている。戦績は37戦全勝(33KO)。完璧なレコードといえる。

 挑戦者のアルバレスはスーパーウエルター級で2度、ミドル級でも1度、世界王座を手にした実績を持っている。このWBCミドル級王者時代には、WBC暫定王者だったゴロフキンと戦うよう統括団体から強制されたが、指示に従わずに王座を放棄した経緯がある。そのためゴロフキンが正王者に昇格したわけで、ちょっとした因縁もあるわけだ。

 アルバレスも強打者だが、ゴロフキンほど攻撃が徹底しているわけではなく、ときには適度に足をつかいながら左ジャブを突いて相手をコントロールすることもある。その分、ボクシングの幅という点では上回っているといえよう。もうひとつ勝っているものがあるとすればスタミナだ。37戦のキャリアでゴロフキンは10ラウンド以上の勝負を3度しか経験していないが、アルバレスは10度も12ラウンドをフルに戦いきっているのである。

 10対7のオッズで不利とみられているアルバレスは、若さとスタミナアドバンテージを生かして後半勝負をイメージしているはずだ。直近の試合の終盤、ゴロフキンの攻防が雑になった点も頭に入っていることだろう。中盤までのダメージを最小限に抑えて後半にペースを上げることができれば前評判をひっくり返すことは可能だろう。ただ、それまでゴロフキンの強烈なプレッシャーに抗いきれるかどうか。アルバレスは体格で劣るだけに、ちょっとでも隙をみせれば一気に持って行かれる可能性もある。いずれにしてもスリルに富んだ試合になりそうだ。

 同じ日、厳密にいえばゴロフキン対アルバレスの数時間前、英国ロンドンではミドル級のWBOタイトルマッチが行われる。王者のビリー・ジョー・サンダース(28=英)が2位のウィリー・モンロー(30=米)を迎え撃つ試合だ。スピードが身上のサンダースと懐の深い技巧派のモンロー。サウスポー対決は接戦が予想される。

 1カ月後にはアッサン・エンダム(33=カメルーン/仏)対村田のWBAタイトルマッチも行われる。9月、そして10月とミドル級ウォーズの行方に要注目だ。

井上尚弥、存在感示せるかスーパーフライ級ウォーズ

 井上尚弥(24=大橋)対アントニオ・ニエベス(30=米)のWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチは9日(日本時間10日)、米国カリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センターで行われるが、この日はほかにも同じスーパーフライ級のWBCタイトルマッチと、WBCの次期挑戦者決定戦も組まれている。いつも以上に井上のモチベーションが高いのは、そのなかで存在感を示したいという思いが強いからだ。

 現在、52・1キロを体重リミットとするスーパーフライ級は、WBA王者がカリド・ヤファイ(28=英)、WBC王者がシーサケット・ソールンビサイ(30=タイ)、IBF王者はジェルウィン・アンカハス(25=比)、そしてWBO王座には井上が君臨している。こうしたなか9日には井上のV6戦のほか、シーサケット(48戦43勝39KO4敗1分)が前王者のローマン・ゴンサレス(30=ニカラグア)と再戦を行うことになっており、さらに前座では元王者のカルロス・クアドラス(29=38戦36勝27KO1敗1分)対元WBA、WBOフライ級王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(27=37戦35勝25KO2敗)というメキシコ人同士によるWBC挑戦者決定戦も組まれている。

 特に注目されているのがシーサケット対ゴンサレスの再戦だ。両者は今年3月に拳を交え、初回にダウンを奪ったサウスポーのシーサケットが小差の判定勝ちを収めている。採点は物議をかもすものだったが、この勝利でシーサケットは約3年ぶりに返り咲きを果たした。一方のゴンサレスはプロ12年、47戦目にしてキャリア初の黒星(46勝38KO1敗))を喫した。リベンジと王座奪回を狙い6月から日本でトレーニングを続けてきたゴンサレスは、「前回はいくつかのミスを犯したが、今回はしっかり作戦を練って頭脳的に戦う。必ずKOで王座を取り戻す」と意欲的だ。試合1週間前の時点では9対4のオッズでゴンサレス有利と出ているが、攻撃力のあるシーサケットが返り討ちにする可能性も決して低くはなさそうだ。

 ゴンサレスは王座奪回を前提に井上との対戦を望んでおり、バンタム級転向を視野に入れている井上も「必ず戦えるのならば待つ」と期限つきで対戦を希望している。そのためにもKO勝ちが両者のノルマといえる。

 クアドラスは04年にシーサケットから王座を奪い、昨年9月にはゴンサレスに惜敗したが、実力は紙一重といえる。また、エストラーダはライトフライ級時代にゴンサレスに惜敗しており、階級を変えて雪辱と戴冠の機会を狙っている。この試合の勝者がWBC王座への挑戦権を手にすることになるが、もしもゴンサレスが返り咲きを果たした場合、井上戦を優先することができるのかどうか、リング外の交渉も注目される。

 井上対ニエベス、シーサケット対ゴンサレス、クアドラス対エストラーダ-スーパーフライ級ウォーズの結果は?

井上尚弥、米国進出初戦にモチベーションが高い理由

 WBO世界スーパーフライ級王者、井上尚弥(24=大橋)の米国進出初戦が近づいてきた。井上は9月9日(日本時間10日)、米国カリフォルニア州カーソンの屋外試合場、スタブハブ・センターで同級7位のアントニオ・ニエベス(30=米)を相手に6度目の防衛戦に臨む。プロになって初めて国外で戦う井上は「アメリカで戦うからには判定(勝ち)ではダメ。豪快なKOでアピールしたい」と意気込んでいる。

 近年、日本のジム所属選手が海外のリングで大きな試合に臨むケースは増えたが、もちろん結果はまちまちだ。7月15日に米国カリフォルニア州イングルウッドでWBC世界スーパーフェザー級王座の奪回を狙った元王者の三浦隆司(33=帝拳)は、フランシスコ・バルガス(25=メキシコ)に判定負け。2週間後に引退を表明した。そうかと思えば7月28日には中国の上海で木村翔(28=青木)が五輪連覇のアマチュア実績を持つWBO世界フライ級王者のゾウ・シミン(36=中国)に挑み、不利の予想を覆して11回TKO勝ちを収めて戴冠を果たしている。そして8月26日(日本時間27日)には亀海喜寛(34=帝拳)が4階級制覇の実績を持つ大物、ミゲール・コット(36=プエルトリコ)とWBO世界スーパーウエルター級王座決定戦を行ったものの12回判定で敗れた。

 こうしたなか井上(13戦全勝11KO)が登場するわけだが、115ポンド(約52・1キロ)という軽量級のアジアの選手がプロモーターの強い要請を受けて米国のリングに上がるケースは極めて稀なことといえる。井上はプロ6戦目でWBC世界ライトフライ級王座につき、14年12月には世界戦だけで30戦を経験していたオマール・ナルバエス(亜)を2回KOで屠って現王座を獲得、2階級制覇を成し遂げている。そのナルバエス戦の映像を見た世界中のファンや関係者が井上を高く評価しているのだ。のちに6階級制覇を果たす、あのマニー・パッキャオ(比)でさえ最初は負傷した選手の代役として米国のリングに上がった事実と比較しても、現時点の井上の前評判の高さが分かるだろう。

 相手のニエベスはアマチュアを経て6年前にプロに転向した技巧派の選手で、20戦17勝(9KO)1敗2分の戦績を残している。強豪との対戦経験は少ないが、井上は「(ニエベスは)基礎がしっかりした選手。踏み込んで打ってくる右ストレートは力強さもある」と警戒している。

 それでも不安要素よりも自信の方がはるかに大きいとみえ、井上は「お客さんが湧く試合をして、何ラウンドでもいいので倒したい。大事なのは自分の距離をつくって左ジャブからワンツーを当てること。豪快なKOでアメリカのファンにアピールしたい」と意気込んでいる。

 井上のモチベーションが高い理由は、もうひとつある。9月9日には、同じスーパーフライ級のWBCタイトルマッチ、シーサケット・ソールンビサイ(30=タイ)対ローマン・ゴンサレス(30=ニカラグア)と、さらに元王者同士によるWBC挑戦者決定戦も組まれているからだ。同じ階級のライバルたちとの競演となるだけに存在感を示す必要があるのだ。「(3試合を見れば)誰が強いのか見えてくるはず。自信はある」と井上はきっぱり言い切る。

<次回につづく>

亀海喜寛、憧れのコットに挑み世界王座を手にするか

 日本スーパー・ライト級、東洋太平洋ウェルター級の元王者、亀海喜寛(34=帝拳)が26日(日本時間27日)、米国カリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センターでWBO世界スーパー・ウェルター級王座決定戦に臨む。相手は4階級制覇の実績を持つ元世界王者、ミゲール・コット(36=プエルトリコ)。知名度も実力もあるビッグネームを相手に、亀海は異国の地で世界王座を手にすることができるのか。

 アマチュアを経て05年にプロデビューした亀海は日本とアジア圏では最強の称号を得たが、世界の頂に挑むのは34歳にして初のことだ。11年以降、亀海は中量級の層が厚い米国に主戦場を移して8戦をこなし、3勝(3KO)3敗2分という結果を残している。判定で敗れはしたものの元世界4階級制覇王者のロバート・ゲレロ(米)と激闘を展開するなどして認知度を上げ、昨年は世界挑戦経験者のヘスス・ソト・カラス(メキシコ)と連戦。初戦は引き分けだったが、再戦では8回終了TKOで圧勝している。丈夫な体を生かして圧力をかけ、中近距離で強打を叩きつける攻撃的なスタイルは、ボクシングの本場でも受け入れられている。キャリア12年目を迎えた亀海は、「実力がついてきていると感じている」と話している。32戦27勝(24KO)3敗2分。

 迎え撃つコット(45戦40勝33KO5敗)は2000年シドニー五輪出場後にプロ転向し、スーパーライト級、ウエルター級、スーパー・エルター級、ミドル級の4つの階級で世界一になった実績を持つ。勝利こそ逃したがフロイド・メイウェザー(米)、マニー・パッキャオ(比)らスーパースターとも拳を交えたことがあるトップ選手だ。亀海自身も「(コットは)無冠時代から憧れていた選手」と話している。身長、リーチとも170センチとスーパーウエルター級では小柄だが、前傾姿勢から飛び込んで強打を振り抜くこともあれば、フットワークをつかいながら正確な左ジャブを突いて切り込むなど、幅広いボクシングを身につけている。

 総合的な戦力、経験値で勝るコット有利は動かせず、オッズも4対1で元4階級制覇王者に傾いている。最近の試合がそうであるように、体格で劣るコットは今回もリスクを低く抑えるため足と左ジャブでコントロールしようと試みるものと思われる。これに対し亀海がどこまでプレッシャーをかけて追い込むことができるか。そのあたりがカギになりそうだ。

 このところ日本のボクシング界は元WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志(ワタナベ)と元同級WBC王者の三浦隆司(帝拳)が引退。さらに山中慎介(34=帝拳)が13度目の防衛に失敗するなど明るいニュースから遠ざかっている。そんな負の連鎖を断ち切ることができるか。亀海が勝てば輪島功一(三迫)、工藤政志(熊谷)、三原正(三迫)、石田順裕(グリーンツダ)に続き、スーパーウエルター級では日本のジム所属選手としては5人目の世界王者誕生となる。

クロフォードとインドンゴ 史上2人目の4団体王座統一戦へ

 スーパーライト級のWBC&WBO王者、テレンス・クロフォード(29=米)と、WBA&IBF王者、ジュリアス・インドンゴ(34=ナミビア)が19日(日本時間20日)、米国ネブラスカ州リンカーンで対戦する。勝者は自力で主要4団体の王座を統一することになり、そうなれば04年のバーナード・ホプキンス(米)に次いで史上2人目となる。王座乱立が叫ばれて久しいボクシング界に一石を投じる試合といえる。

 もともとボクシングの世界王座認定団体はWBA(世界ボクシング協会)だけだったが、60年代にWBC(世界ボクシング評議会)が枝分かれし、さらに80年代にはIBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)が設立されて4団体時代に突入。階級も70年代と80年代に6階級が新設され、現在の17階級制が定着した。これに加えスーパー王座や暫定王座などが置かれることもあり、王座乱立という批判は免れない状況が続いている。

 こうしたなか折々で王者同士の対決も行われてはきたが、4団体の王座が統一された例は過去にミドル級のホプキンスの一度しかない。IBF王者だったホプキンスはWBC王者、WBA王者を下し、04年にはWBO王者だったオスカー・デラ・ホーヤ(米)に9回KO勝ちして4つのベルトを収集した。これらの王座はホプキンスに勝ったジャーメイン・テイラー(米)に引き継がれたが、すぐに再び分裂してしまった。選手やプロモーターの計画と利害、統括団体の方針と方向性などが一致することは極めて稀で、それが王座統一を阻んでいる最大の原因といえる。

 スーパーライト級も昨夏までは4団体が別々の王者を認定していたが、その後、クロフォードとインドンゴが2団体の王座を統一し、今回の“決勝戦”を迎えることになった。クロフォードはライト級でも世界王者になった実績を持つ実力者で、「ハンター」の異名がある。左構えでも右構えでも戦えるスイッチ・ヒッターで、スピード、パンチ力、テクニックなど総合的な戦力は高い。戦績は31戦全勝(22KO)。

 対するインドンゴはアマチュア時代に08年北京五輪に出場した経験は持っているものの、プロでは無名に近い存在だった。しかし、昨年12月のIBF王座挑戦試合で開始から40秒、179センチの長身から繰り出した左ストレート一発でKO勝ちを収めて注目を集めた。今年4月にはWBA王者にも大差の判定勝ちを収め、ふたつのベルトを保持することになった。22戦全勝(11KO)。

 全勝同士の対決だが、実績に加え地の利もあるクロフォード圧倒的有利とみられており、9対1というオッズが出ている。4つのベルトを総取りするのはクロフォードか、それともインドンゴか。結果とともに、その後の各団体の動きにも注目したい。

クリチコが引退表明 家族やチーム、ファンに感謝

 21世紀に入ってから常にヘビー級戦線のトップを走り続けてきた元WBA、IBF、WBO3団体同級統一戦王者、ウラジミール・クリチコ(41=ウクライナ)が3日、引退を表明した。「引退を決意するまでに数週間を要したが、かつて夢見ていたことをすべて成し遂げたので第2のキャリアに踏み出すことにした」とクリチコは話している。今年4月、IBF王者のアンソニー・ジョシュア(27=英)に挑み、ダウン応酬の激闘のすえ11回TKOで敗れた試合がラスト・ファイトになった。

 クリチコは96年アトランタ五輪スーパーヘビー級で金メダルを獲得し、その年の秋に5歳上の兄、ビタリ・クリチコとともにドイツでプロデビューした。ビタリが25戦全KO勝ちでWBO王座についたあと3度目の防衛戦で敗れると、半年後、その相手に弟のクリチコが12回判定勝ちを収め、兄の仇討ちを果たして世界王者になった。24歳のときだった。この王座は5度防衛したが、打たれ脆さを突かれてV6戦で2回TKO負けを喫して失った。なお、この相手には、のちに兄のビタリが復讐(8回TKO勝ち)している。

 その兄とは04年に「K2プロモーション」を興し、のちにゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン)を世界王者に導いている。

 こうしたなか06年、クリチコはIBFで王座返り咲きを果たし、WBO王者、WBA王者との統一戦を含めて18度の防衛を果たした。206センチの恵まれたリーチを生かした重量感のある左ジャブで相手を煽り、198センチの長身から打ち下ろす右ストレートで仕留めるKOパターンが多かった。一撃必倒の右は「スティール・ハンマー」と形容されたほどだ。在位は9年半に及び、これは25度防衛の世界記録保持者、ジョー・ルイス(米)の12年に続くヘビー級史上2位の記録でもある。

 年齢を重ねるとともに故障も増え、キャリア晩年は試合のペースが落ちたが、41歳までリングに上がり続けた。今年4月のジョシュア戦では、14歳若い王者の連打を浴びて5回にダウンを喫したが、続く6回には右ストレートでダウンを奪い返し、ウェンブリー・スタジアムに集まった9万人のファンを驚かせたものだ。11回TKOで敗れはしたが、存在感を十分に示した試合でもあった。再戦が11月に計画されたが、クリチコは引退という選択をした。元王者は「アマチュアとプロの両方で夢を成し遂げることができた。家族やチーム、ファンに感謝したい。これを機に第2のキャリアに向けて踏み出す」とコメントしている。29度の世界戦(25勝19KO4敗)を含む通算戦績は69戦64勝(53KO)5敗。

 ヘビー級の未来は19戦全KO勝ちのジョシュアや38戦全勝(37KO)のWBC王者、デオンタイ・ワイルダー(31=米)らに託された。

パッキャオ対ホーン再戦へ前向きもいくつかのハードル

 6階級制覇の実績を持つ前WBO世界ウエルター級王者、マニー・パッキャオ(38=フィリピン)が、年内にも現王者のジェフ・ホーン(29=オーストラリア)と再び拳を交える可能性が高くなった。ホーンが自身のソーシャル・メディアで「11月末か12月初旬にパッキャオと再び戦う」と伝えたもの。両者は7月2日、パッキャオの持つ王座にホーンが挑むかたちでオーストラリアのブリスベンで対戦し、ホーンが3対0の12回判定勝ちを収めた。しかし、パッキャオは判定に不服を唱えていた。

 7月の試合は5対1でパッキャオ有利のオッズが出ていたが、運動量の多いホーンが序盤から主導権を掌握するという予想外の展開になった。サウスポーのパッキャオは中盤から追い上げ、9回には挑戦者をダウン寸前に追い込んだ。しかし、ここで仕留められず、勝負は判定に持ち込まれた。ジャッジの採点は二者が115対113、もうひとりは117対111でいずれもホーンを支持。試合直後、パッキャオも「ホーンは勝利者に相応しい戦いをしたと思う」と新王者誕生を認めるようなコメントを残したものだった。

 しかし、試合を放送したアメリカのテレビ局をはじめ識者やファンのなかには「パッキャオが勝っていた」と唱える人が多く、判定には疑問の声が挙がった。こうしたなかパッキャオ自身もリング上での発言を翻し「自分が勝っていたと思う」と話し、WBOに判定の検証を要請した。これを受けWBOは、国籍の異なる経験値の高い匿名の5人のジャッジによる検証採点を行った。結果は3人がホーンの勝ち、ひとりがパッキャオの勝ち、ひとりが引き分けというものだった。

 ホーンがパッキャオとの再戦に前向きなのは、初戦で勝利を収めた自信だけが理由ではない。高額の報酬が望めるからでもあるのだ。1000万ドル(約11億1000万円)といわれたパッキャオの報酬には遠く及ばないが、ホーンも初戦では50万ドル(約5550万円)を得ている。王者として再戦に応じるとなれば、ギャラは数倍に増えるものと思われる。ちなみに再戦のオッズは2対1でパッキャオ有利と出ている。

 再戦は両選手とも望んでいることだが、フィリピンかアメリカでの試合を希望するパッキャオ陣営と、再びブリスベン開催を目指すホーン陣営の間で食い違いがある。また、フィリピンの上院議員でもあるパッキャオのスケジュール調整も重要なカギとなる。

 いくつかのハードルを越え、パッキャオ対ホーンの再戦が実現するのか。今後の動きに注目していきたい。

ガルシア、「問題を起こす男」との対戦に絶対的自信

 今年1月に3階級制覇を成し遂げたWBC世界ライト級王者、ミゲール・マイキー・ガルシア(29=米)と、4階級制覇の実績を持つエイドリアン・ブローナー(27=米)が29日(日本時間30日)、米国ニューヨークのバークレイズ・センターで対戦する。ガルシアのベスト体重が61・2キロのライト級、ブローナーは66・6キロのウエルター級と2階級の開きがあるが、試合は中間のスーパーライト級(約63・5キロ)で行われる。ノンタイトル12回戦だが、知名度の高い選手同士の興味深いカードといえる。

 ガルシアは12歳上の兄ロベルトに続く兄弟世界王者としても知られ、現在はその兄の指導を受けている。4年前にフェザー級とスーパーフェザー級の王座を獲得するなど一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、プロモーターとビジネス上の摩擦が生じたため試合枯れ状態となり、2年半も活動休止に追い込まれた。昨年7月にカムバックし、今年1月には復帰2戦目でWBC世界ライト級王座に挑戦。勘の鈍りが心配されたが、3回に右アッパーから右フックを叩きつけて無敗の王者をKO、3階級制覇を成し遂げた。WBCから、同団体のダイヤモンド王者でWBA王者でもあるホルヘ・リナレス(31=帝拳)との対戦を義務づけられているが、それよりもブローナー戦を優先させたかたちだ。左ジャブで射程を探り、破壊力のある右ストレートで勝負する正統派の強打者で、36戦全勝(30KO)と高いKO率(83%)を誇る。

 これに対し「ザ・プロブレム(問題を起こす男)」というニックネームを持つブローナーは、実績面ではガルシアを上回っている。6年前、22歳でスーパーフェザー級王者になり、23歳でライト級とウエルター級を制覇。15年にはスーパーライト級でも世界王者になり4階級制覇を達しているのだ。しかし、一気に階級を上げたためウエルター級では2度の敗北を喫してもいる。また、世界戦での2度の計量失敗を含め過去に何度も体重オーバーの失態を犯しており、その点の信頼度は低い。ただ、攻防ともに高いレベルのボクサーであることは間違いない。36戦33勝(24KO)2敗1無効試合。

 10対3というオッズが示すようにガルシア有利の声が多いが、両者間にはそこまでの実力差はない。むしろ体格面では早くからスーパーライト級に転向していたブローナーが勝っている。ガルシアは「私の方が優れたボクサーだ。強打を叩き込むこともできるし距離を保った戦いもできる。そんな私が負けることは考えられない」と絶対的な自信を口にしているが、試される点も少なくはない。リング上での“問題”はガルシアに起こるのか、それともブローナーに起こるのか。

9月スタートのトーナメント戦WBSSは成功するのか

 賞金総額5000万ドル(約56億5000万円)というトーナメント戦、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」が9月からスタートする。世界的なプロモーター数人がタイアップして開催するもので、実施階級は200ポンド(約90・7キロ)のクルーザー級と168ポンド(約76・2キロ)のスーパーミドル級の重量2階級に限定されている。クルーザー級には主要4団体の世界王者すべてがエントリーしており、トーナメント戦が順調に進めば王座も自然に統一されることになる。

 このイベントはスイスを拠点とするサウアランド・イベント社や米国の「リングスター・スポーツ」社などが提携してプロモートするもので、2階級の優勝者にはモハメド・アリ・トロフィーと賞金1000万ドル(約11億3000万円)が贈呈されることになっている。世界王者と世界ランキングトップ15位以内の選手を対象に1階級につき8人、合計16人の参加選手を募ったところ、クルーザー級では全勝の世界王者4人がエントリー。スーパーミドル級でもWBAのスーパー王者、ジョージ・グローブス(29=英)が参戦することになった。

 1回戦となる準々決勝の組み合わせ4試合×2階級=8試合は以下のとおりで、これらは9月と10月(開催日は未定)に分けて行われる。

 <クルーザー級> WBA王者ジュニエル・ドルティコス(31=キューバ/米 21戦全勝20KO)対ドミトリー・クドリャショフ(31=露 22戦21勝21KO1敗)、WBC王者マイリス・ブリエディス(32=ラトビア 22戦全勝18KO)対マイク・ペレス(31=キューバ/アイルランド 25戦22勝14KO2敗1分)、IBF王者ムラト・ガシエフ(23=露 24戦全勝17KO)対クシシュトフ・ウロダルチク(35=ポーランド 57戦53勝37KO3敗1分)、WBO王者オレクサンデル・ウシク(30=ウクライナ 12戦全勝10KO)対マルコ・フック(32=セルビア/独 45戦40勝27KO4敗1分)。

 <スーパーミドル級> WBAスーパー王者ジョージ・グローブス(29=英 29戦26勝19KO3敗)対ジェイミー・コックス(30=英 23戦全勝13KO)、カルム・スミス(27=英 22戦全勝17KO)対エリック・スコッグランド(26=スウェーデン 26戦全勝12KO)、クリス・ユーバンク・ジュニア(27=英 26戦25勝19KO1敗)対アブニ・イルディリム(25=トルコ 16戦全勝10KO)、ユルゲン・ブレーマー(38=独 51戦48勝35KO3敗)対ロブ・ブラント(26=米 22戦全勝15KO)。

 準決勝は来年1月と2月に開催され、決勝は5月に行われることになっている。ボクシングのトーナメント戦は選手の負傷などにより途中で頓挫するケースが多いが、はたしてWBSSは成功するのか。

「ボンバー・レフト」三浦、王座奪還へ「アラクラン」に挑む

 元WBC世界スーパーフェザー級王者で現1位の三浦隆司(33=帝拳)が15日(日本時間16日)、米国カリフォルニア州イングルウッドのフォーラムで同級王者、ミゲール・ベルチェルト(25=メキシコ)に挑む。2代前のベルト保持者でもある三浦にとっては15年11月以来の返り咲きがかかった大事な試合となる。代名詞となった「ボンバー・レフト」が炸裂するか。

 三浦は13年4月に当時のWBC王者、ガマリエル・ディアス(メキシコ)から4度のダウンを奪って9回TKO勝ち、世界王座に駆け上った。初防衛戦はメキシコで行い、ダウン応酬のすえ判定勝ち。V2戦からV4戦までは3試合連続KO勝ちを収めた。サウスポーから繰り出す左ストレートは破壊力十分で、3階級上のウェルター級並みのパワーがあるといわれる。その一方、攻撃型の選手にありがちな防御の甘さが課題として残っている。5度目の防衛戦ではそこを突かれ、フランシスコ・バルガス(32=メキシコ)に9回TKO負けを喫して王座を失った。

 しかし、リスクを恐れずに積極的に仕掛けて出る三浦の攻撃ボクシングは米国やメキシコのファンにも受け入れられ、ラスベガスで行われたバルガス戦は年間最高試合に選ばれたほどだ。今年1月には再び渡米、2位の選手に12回KO勝ちを収めて指名挑戦権を手にした。36戦33勝(24KO)3敗2分。

 そんな三浦の挑戦を受けるベルチェルトは今年1月、三浦に勝ったバルガスを11回KOで破って戴冠を果たした。昨年3月にはWBOの暫定王座も獲得した実績も持っている。

 まだ評価を定める段階ではないが、一戦ごとに強くなっている選手といえる。32戦31勝(28KO)1敗と高いKO率(約88パーセント)を誇り、「アラクラン(サソリ)」というニックネームがある。左右のパンチとも“毒性”は強い。バルガス戦を含め10連続KO勝ち中で、若くて勢いがある。

 ともにパンチ力に自信を持っているが、得意とする距離は若干、ベルチェルトの方が長い。三浦としては中長距離に身を置いて相手の左ジャブ、右ストレートに脅かされるような展開は避けたいところだ。上体を振って圧力をかけ、ボディブローでベルチェルトの戦力を削ぎ落とし、そのうえで「ボンバー・レフト」を叩きつけられれば王座奪還は現実のものになりそうだ。

金子大樹らがロシア4選手と対戦 過去日本側に厳しいデータも

 内山高志(37=ワタナベ)の持つWBA世界スーパーフェザー級王座に挑んだこともある金子大樹(29=横浜光)が9日(日本時間10日)、ロシアのエカテリンブルクでWBA世界ライト級14位のパヴェル・マリコフ(31=露)と対戦する。この日は金子のほかにも3人の日本人ボクサーがリングに上がることになっており、いずれも地元の選手と拳を交える。日本対ロシアの4組の対抗戦、はたしてどんな結果になるのか。

 金子対マリコフはWBAアジア・ライト級タイトルマッチとして行われる予定で、金子が勝てば再び世界挑戦圏内に入るだけに大事な試合といえる。ただし、マリコフは金子よりも1階級上で戦ってきた選手で、戦績も11戦全勝(5KO)と負け知らずだ。そんな強敵を相手に、世界戦を含め34戦26勝(18KO)5敗3分のレコードを残している金子は経験を生かして敵地で勝利をもぎ取ることができるか。

 東洋太平洋ライト級2位にランクされる市川大樹(21=駿河男児)は、ムハマドフジャ・ヤークボフ(22=タジキスタン/露)の持つWBOユース・ライト級王座に挑む(8回戦)。ヤークボフはプロ転向後1年半の新鋭で、7戦全勝(4KO)のレコードを残しているが、11戦9勝(7KO)2敗の市川も3連続TKO勝ちと勢いがあるだけに、打撃戦になりそうだ。

 このほかマーク・ウラノフ(21=露)対三浦仁(23=三迫)のWBOアジア・パシフィック・ユース・フェザー級タイトルマッチ(8回戦)も組まれている。ウラノフはデビュー戦で敗れてから10連勝(6KO)中で、挑戦圏外ではあるがWBC世界フェザー級32位にランクされている。三浦(10戦9勝1KO1敗)は敵地で飛躍のきっかけをつかめるか。

 ライト級4回戦では川西真央(23=三迫)がザウル・アブドゥラエフ(23=露)と対戦する。15年11月以来、これが1年8カ月ぶりの試合となる川西(6戦4勝1KO2敗)に対し、アブドゥラエフは今年3月にデビューしてから4戦全勝(3KO)とハイペースで試合をこなしている。相手の地元に乗り込んでの再起戦ということで川西にはハンデの大きな試合といえそうだ。

 ロシアでは、06年に愛知県の緑ジム所属のオケロ・ピーターがオレグ・マスカエフ(カザフスタン/露)の持つWBC世界ヘビー級王座に挑んで判定負け。さらに昨年9月、三浦と川西のジムの先輩にあたる小原佳太(30)がIBF世界スーパーライト級王座に挑んで地元のエドゥアルド・トロヤノフスキー(37=露)に2回TKO負けを喫するなど、日本側にとっては厳しいデータが残っている。

 そんななか金子らがどんな戦いをみせ、どんな結果を残すか注目したい。

ジェフ・ホーン「新しい時代くる」パッキャオに善戦の可能性も

 20キロ近い体重の壁を破って6階級制覇を成し遂げているスーパースター、マニー・パッキャオ(38=比)が7月2日、オーストラリアのブリスベンで現在保持しているWBO世界ウエルター級王座の初防衛戦を行う。挑戦者はWBO1位にランクされるジェフ・ホーン(29=豪)。世界的な知名度は高くないが、12年ロンドン五輪でベスト8に入った実績を持っており、プロでは無敗を保っている。パッキャオが8年ぶりにKO勝ちするだろうという予想が大勢を占めているが、ホーンは「新しい時代がやってくる」と自信をみせている。

 もともとこの試合は4月に計画されていたが、3月になってパッキャオにUAE(アラブ首長国連邦)の投資グループから巨額の試合報酬のオファーが入り、いったんは棚上げになったと思われた。しかし、それが立ち消えになり、そのためホーン戦が再浮上して決定に至ったという経緯がある。

 いうまでもなくパッキャオは世界的に高い知名度を誇る選手で、フィリピンの上院議員という肩書も持っている。が、ボクサーとしては一時の勢いを失いつつあるのも事実だ。

 09年11月のミゲール・コット(プエルトリコ)戦を最後に12試合もKO勝ちから遠ざかっており、この間、失神KO負けやフロイド・メイウェザー(米)との歴史的一戦を含め三つの敗北を喫している。22年間で積み上げた戦績は67戦59勝(38KO)6敗2分というものだ。

 議員との二足の草鞋を履く多忙な身であることを考えると、以前のようなトレーニングの時間が保てているのかどうか疑問だ。今回、パッキャオは挑戦者と同じオーストラリアからパートナーを招聘してスパーリングをこなしたという。そのパートナーは「パッキャオは速くてパワフル。ホーンは6回ももたないだろう」と王者のKO防衛を予想している。

 一方のホーンはロンドン五輪の翌13年にプロ転向を果たし、この4年間で17戦16勝(11KO)1分の戦績を残している。上体を振りながら相手の肩越しに叩きつける右ストレートが主武器で、最近は元世界王者や世界ランカーらを相手に3連続KO勝ちと乗っている。こちらはフィリピンからオーストラリアに移住したサウスポーの世界ランカーとスパーリングを重ね、パッキャオ対策を練ってきた。「彼の実績や存在はリスペクトするが、これからは私の時代だ」とホーンは豪語している。

 挑戦者も好戦的なタイプだけに両者の戦闘スタイルは噛み合いそうだ。サウスポーのパッキャオが鋭く踏み込んで左ストレートを打ち込むシーンが見られる可能性は高いとみる。ただし、パッキャオは右ストレートを得意とする相手に苦戦するケースもあり、番狂わせはともかく、ホーンが善戦することも考えられる。

揺れるミドル級トップ戦線 次の天下をとるのは誰だ

 村田諒太(31=帝拳)がアッサン・エンダム(33=カメルーン/仏)に物議をかもす12回判定負けを喫してから1カ月。あの試合に端を発したかのように世界のミドル級トップ戦線が揺れている。WBOの暫定王者が米国で逮捕されるという負のニュースがあった一方、WBC1位と2位の選手の挑戦者決定戦が決まるなど、ここに来て動きが活発になっているのだ。9月にはWBA(スーパー王座)、WBC、IBFと三つのベルトを持つゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)対サウル・カネロ・アルバレス(26=メキシコ)の頂上対決が行われるが、それ以降は動きが読み切れない状況といえる。

 村田は6月8日の会見で「(エンダム戦で)すごくいい経験をした。失うものは何もなかったが、ベルトを得られなかったことが残念」と話し、現役続行を宣言。まだ次戦のプランは出ていないが、年内には再起戦、あるいは再び大きな試合をする機会があるかもしれない。

 村田の再起宣言と前後して飛び込んできたのが、WBO暫定王者アフタンディル・クルツィゼ(38=ジョージア/米)逮捕の報だった。クルツィゼは4月の決定戦を制して暫定王者になったばかりで、7月8日にはWBO正王者のビリー・ジョー・サンダース(27=英)と英国で団体内の統一戦を行うことになっていた。しかし、犯罪組織の一員として米国内で逮捕されたことで渡英が不可能になり、試合は中止。WBOはクルツィゼから暫定王座を剥奪した。試合が宙に浮いたサンダースは9月に防衛戦を行いたいと話しているが、まだ相手は決まっていない。もともと村田陣営はサンダースと対戦交渉をしていたが、話がまとまらなかったためエンダム戦が決まった経緯がある。サンダース側は再び村田も候補のひとりとして考えているかもしれないが、9月の実現は難しい状況といえる。

 7月29日にはWBC1位のホルヘ・セバスチャン・ヘイランド(30=亜)と、2位のジャモール・チャーロ(27=米)が挑戦者決定戦を行うことになった。35戦29勝(16KO)4敗2分のヘイランドに対し、今年2月にIBF世界スーパーウエルター級王座を返上してミドル級に転向したチャーロは25戦全勝(19KO)と勢いがある。チャーロが断然有利のカードといえる。

 さらにIBFも1位のトゥレアノ・ジョンソン(33=バハマ/米 21戦20勝14KO1敗)と2位のセルゲイ・デレビャンチェンコ(31=露/米 10戦全勝8KO)で挑戦者決定戦を行うよう指示を出している。

 そして9月16日にはゴロフキン対アルバレスが行われる。現時点のオッズは3対2でゴロフキン有利と出ているが、万能型のアルバレスを推す声も多い。勝敗の行方そのものも興味深いが、試合後の動きにも注目が集まりそうだ。ゴロフキンが勝った場合は3団体の王座を返上してスーパーミドル級に転向するプランがあり、アルバレスが勝った場合も王座が分裂する可能性があるからだ。

 いずれにしても9月でゴロフキンの1強時代が終わることは確実とみられており、そのあとは戦国化が予想される。村田を含め誰が次の天下をとるのか、ミドル級トップ戦線から目が離せなくなってきそうだ。

技巧のウォードvs強打のコバレフ 因縁のLヘビー級戦

 WBA、IBF、WBO3団体統一世界ライトヘビー級タイトルマッチが17日(日本時間18日)、米国ネバダ州ラスベガスで行われる。王者のアンドレ・ウォード(33=米)が前王者セルゲイ・コバレフ(34=露/米)と対戦するものだが、この両者は昨年11月に今回とは逆の立場で対戦してウォードが判定勝ちを収めている。しかし、物議をかもす採点だったため即再戦となった。04年のアテネ五輪で金メダルを獲得した実績を持つウォードの技巧が冴えるのか、それとも「クラッシャー(破壊者)」と呼ばれる強打者のコバレフが雪辱を果たすのか。

 昨年11月の試合ではコバレフが初回から圧力をかけ、2回には相手の出端に右のカウンターを決めてダウンを奪った。前半で圧倒的優位に立ったコバレフに対し、ウォードは中盤から徐々に流れを引き寄せ、微妙なラウンドを拾っていった。終盤になると疲労の色が濃くなったコバレフをコントロール。終わってみればジャッジ三者の採点は114対113で一致、ウォードが接戦を制するかたちになった。しかし、試合を見た人の8割ほどがコバレフの勝利を支持したため場内は騒然となり、敗者自身も「判定を盗まれた」と憤慨。今回の再戦はこうした流れのなかで行われるわけだ。

 04年アテネ五輪で金メダルを獲得しているウォードはスピードとスキルに富んだ技巧派として知られ、スーパーミドル級に加え先のコバレフ戦で2階級制覇を成し遂げている。31戦全勝(15KO)と重量級にしてはKO率は高くないが、アマ、プロを通じて96年以降は21年間も無敗をキープしている。初戦についてもウォードは「たしかに2回にはダウンを喫したが、3回以降は私がコントロールしていた。接戦だったとは思うが私の勝ちは当然だ」と話し、「今度も同じことが起こるだろう」と自信をみせる。

 一方のコバレフは32戦30勝(26KO)1敗1分という戦績が示すとおりの強打者で、ウォードに敗れるまでは8度の防衛を重ねていた。相手にプレッシャーをかけながら重量感のある右ストレートや連携の速い左フックなどで相手をキャンバスに沈めてきた。初戦に関しては「勝ったのは私だ」と主張しながらも「オーバーワーク気味で終盤は疲れた」とも明かしており、今回は調整にも万全を尽くしている様子だ。「彼は偽物のチャンピオン。制裁が必要だ。ベルトは返してもらう」と挑発したうえで、「今度こそ叩きのめしてやる」とKOでの王座奪還を誓っている。

 オッズは4対3でウォード有利と出ているが、コバレフの強打を推す声も多い。初戦同様、接戦になった場合はウォードが巧みにポイントを集めそうだが、コバレフのパワーが凌駕する可能性も十分にある。

三浦隆司、亀海喜寛ら日本トップ選手たちの世界戦に注目

 7月から9月にかけて日本のトップ選手たちが相次いで米国で世界戦のリングに上がることになった。先頭を切るのは元WBC世界スーパー・フェザー級王者の三浦隆司(33=帝拳)で、7月15日(日本時間16日)、カリフォルニア州イングルウッドのフォーラムで同級王者、ミゲール・ベルチェルト(25=メキシコ)に挑む。日本人として9人目の世界王座海外奪取を成し遂げて勢いをつけたいところだ。

 三浦は13年4月に世界王座についたあとの初防衛戦をメキシコのカンクンで行い、ダウン応酬のすえ12回判定勝ち。次いで5度目の防衛戦を米国ネバダ州ラスベガスで行ったが、このときは9回TKO負けという結果に終わった。しかし、これもダウン応酬の打撃戦で、日本のみならず世界の各メディアが「2015年度の年間最高試合」に選ぶほどの激闘だった。これに加え今年1月にはカリフォルニア州インディオで世界王座への挑戦者決定戦に臨み、壮絶な打ち合いのすえ12回KO勝ちを収めている。この3試合で「タカシ・ミウラ」の名前は広く世界中のボクシングファンに知られるところとなっている。

 三浦の挑戦を受けるベルチェルトは32戦31勝(28KO)1敗の戦績を誇る25歳の強打者で、「アラクラン(サソリ)」の異名を持っている。今年1月に王座を獲得したばかりで、三浦戦が初防衛戦となる。

 この試合から42日後の8月26日(日本時間27日)、カリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センターでは三浦のジムメート、亀海喜寛(34=帝拳)が元世界4階級制覇王者のミゲール・コット(36=プエルトリコ)とWBO世界スーパー・ウェルター級王座決定戦を行う。コットはフロイド・メイウェザー(米)やマニー・パッキャオ(比)らと拳を交えたこともあるビッグネームで、これが1年9カ月ぶりのリングとなる。亀海の不利は否めないが、勝てば世界王座とスターの座を射止めることになるだけにモチベーションは高いものがあるはずだ。亀海もラスベガスなど計8度、米国のリングで戦ったことがあり、こうした経験がプラスになると思われる。

 さらに、まだ正式決定はしていないが、WBO世界スーパー・フライ級王者の井上尚弥(24=大橋)も9月に米国西海岸で試合をする計画が進行中だ。6度目の防衛戦になることが濃厚で、井上自身も「本場のリングで認められれば世界のスター選手になれる」と意気込んでいる。

 かつて日本のトップ選手の多くが、海外の選手や関係者から「彼らは国外で戦おうとしない。過保護だ」と揶揄されてきたが、それも過去の話になるときがやってきたようだ。

世界戦6試合で露呈したボクシング界が抱える問題とは

 今月20日に東京で3試合、名古屋で1試合、そして21日に東京で2試合、2日間に日本で世界戦が合計6試合行われた。アッサン・エンダム(33=カメルーン/仏)対村田諒太(31=帝拳)のWBAミドル級王座決定戦の判定結果は物議をかもし、スポーツの枠を超えて話題になってもいる。その騒動に隠れるかたちになっているが、2日間にボクシング界が抱える問題がいくつか露呈した点も見逃すわけにはいかない。採点競技としての危うさはもちろんのこと、団体間でルールの違いがあるなど国際的なスポーツ・エンターテインメントとして是正すべきことは多い。

 20日のトリプル世界戦では、フライ級の比嘉大吾(21=白井・具志堅)が6度のダウンを奪う6回TKOの圧勝でWBC王座を獲得したが、試合前日の計量でファン・エルナンデス(30=メキシコ)が体重オーバーのため失格するという失態を犯している。つい1カ月前には、大阪で行われたWBOバンタム級タイトルマッチでマーロン・タパレス(25=比)が大森将平(24=ウォズ)との防衛戦を前に同じ過ちを犯したばかりだ。2試合とも挑戦者が勝った場合は王座獲得という変則タイトルマッチとして挙行されたが、興ざめしたファンもいたはずだ。なによりもボクシングという体重制格闘技の信用を失墜した罪は重い。エルナンデスもタパレスも1階級上げて出直すことになったが、一定期間の出場停止処分を科すなど厳罰が必要ではないだろうか。

 20日に拳四朗(25=BMB)がWBCライトフライ級王座を獲得したため、この階級の主要4団体の世界王座を一時的にではあるが日本が独占することになった。「快挙」と喜ぶファンもいたが、そもそも同じ階級に世界王者が4人もいることの矛盾に目を向ける必要があるだろう。21日に八重樫東(34=大橋)がミラン・メリンド(29=比)に敗れて一角が崩れたが、メリンドを含む4王者で統一戦を計画してほしいものだ。

 団体によってルールが異なることに戸惑ったファンも少なくなかったようだ。たとえば20日のトリプル世界戦では拳四朗の試合では4回と8回終了時に途中採点が公開され、6回でけりがついた比嘉の試合も4回終了時には採点がアナウンスされた。しかし、直後に行われたエンダム対村田では試合終了時まで採点が公開されなかった。20日に名古屋で行われた田中恒成(21=畑中)のWBOライトフライ級王座の初防衛戦も途中採点の公開はなかった。これはWBCだけがオープン・スコアリング・システム(途中採点公開制)を採っているためだ。このシステムに関してはいまだに賛否両論があるが、速やかにどちらかに統一すべきであろう。

 個人的には公開制を推したい。観戦者に試合の優劣を知らせることで競技の見方を啓蒙することにもなり、一方ではジャッジに他者との見解の統一を図るチャンスを与えることにもなるからだ。エンダム対村田でも途中で採点が公開されていたら、と考えてしまう。8回終了時点ですでに村田はふたりのジャッジから1ポイント劣勢と採点されていたわけで、ここで採点が公開されていれば終盤は違った展開と結果になっていたかもしれない。もっともジャッジの力量が不足していたり視点がずれていたりした場合はどうにもならないのだが……。

 ボクシングにとっては多くの課題、問題点が浮き彫りになったわけだが、救いは村田が試合後に極めて大人の対応をとったことである。誰よりも主張したいことがあるはずの村田は負の感情を胸の奥にしまい込み、試合翌日にはエンダムと健闘を称え合い連絡先を交換したと伝えられる。五輪の金メダリストは、ひとりの人としても金メダリストであると強く感じさせられたしだいである。

ブルックvsスペンス 勝者はパッキャオらと統一戦も

 マニー・パッキャオ(38=比)らスーパースターが集うウェルター級のIBF王者、ケル・ブルック(31=英)が27日(日本時間28日)、英国シェフィールドで1位の指名挑戦者、エロール・スペンス(27=米)を相手に4度目の防衛戦を行う。勝者がパッキャオを含む他団体王者との統一戦に駒を進める可能性があるだけに、要注目のカードといえる。

 ブルックは14年8月に王座を獲得し、3連続KO防衛を果たした。その勢いを駆って昨年9月にはWBA、WBC、IBF世界ミドル級王者、ゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)に挑んだが、善戦したものの5回TKO負けを喫した。試合後には眼窩底骨折が判明し、手術。これが8カ月ぶりの再起戦となる。高い攻防技術を身につけた技巧派の強打者で、「スペシャル(特別な男)」というニックネームを持つ。戦績は37戦36勝(25KO)1敗。「私がスペンスとの対戦を避けるのではないかと予想した人が多いみたいだが、この試合でウェルター級で最強であることを証明するつもりだ」とブルックは話している。

 挑戦者のスペンスは12年ロンドン五輪ウェルター級ベスト8の実績を残したあとプロに転向。5年間で21戦全勝(18KO)のレコードを誇る。サウスポーの万能型強打者で、挑戦者決定戦を含めこのところ8連続KO勝ちと勢いを増している。「世界王者という長年の夢を実現するときがきた。ベルトを持ち帰るために100パーセント集中して戦う」と意気込んでいる。

 試合会場はブルックの地元、シェフィールドのブラモール・レイン・サッカー場で、チケットは最高600ポンド(8万7000円)と高額にもかかわらず当日は3万人の集客が見込まれている。

 ともにスピードがあるが、その点ではサウスポーのスペンスが一枚上か。ブルックは左ジャブで突き放し、相手が入ってくるタイミングに右ストレートを合わせないと苦しくなりそうだ。王者の地元での試合だが、オッズは3対2でスペンス有利と出ている。

 この試合が注目されるのは、両者の力量が高い次元で接近しているという理由からだけではない。勝者が他団体王者との統一戦に向かう可能性が高いことも関心を寄せられる一因とみられている。特に今年3月にWBAとWBCの王座を統一したキース・サーマン(28=米)がブルックとの試合を望んでおり、さらなる統一戦が期待されているのだ。一方、スペンスもサーマンとの対戦を希望していることから、27日の試合でどちらが勝っても3団体の統一戦の可能性が膨らむことになりそうだ。また、WBO王者のパッキャオも7月2日に防衛戦が決まっており、勝つことを前提に11月に次々戦が計画されている。そのタイミングで他団体王者との統一戦が浮上する可能性も十分にある。

 実力も知名度も高いスター選手同士が鎬を削るウェルター級トップ戦線。はたして誰が最後に笑うのか。まずは27日のブルック対スペンスに注目したい。

元五輪王者ディアス 圧倒的不利覆し王座獲得なるか

 20日、ロンドン五輪ミドル級金メダリストの村田諒太(31=帝拳)がプロの世界王座に挑むが、同じ日に海の向こうでも元五輪王者が世界王座に挑戦する。米国ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン(MSG)で行われるWBC、WBO世界スーパーライト級タイトルマッチで、08年北京五輪ライトウエルター級金メダリストのフェリックス・ディアス(33=ドミニカ共和国)が王者のテレンス・クロフォード(29=米)に挑むもの。14対1で不利という厳しいオッズが出ているディアスだが、この数字をもひっくり返すことができるか。

 ディアスは初めて出場した04年アテネ五輪ではライト級で初戦敗退という結果に終わったが、北京五輪では5試合を勝ち抜いて金メダルを獲得した。翌09年にプロ転向を果たし、8年間で20戦19勝(9KO)1敗の戦績を残している。この1敗は15年10月、現WBA世界ウェルター級王者のレイモント・ピーターソン(33=米)戦で判定を落としたものだが、その後は2連勝を収めている。自国のほか米国、ロシア、ドイツ、プエルトリコで戦うなど逞しい一面も持つが、裏返せばチームのマネージメント力、プロモート力の欠如と分析することもできる。大舞台に辿り着くまでに時間がかかったのは、そうした事情が関係しているともいえる。初の世界挑戦を前にディアスは「私を軽視している人たちに泡を吹かせてみせる」と意気込んでいる。

 そんなエリート挑戦者を迎え撃つクロフォードは、アマチュアの実績では及ばないもののプロではライト級とスーパーライト級の2階級を制覇しており、ディアスを圧倒している。右構えでも左構えでも戦える器用さを持っており、スピードもテクニックも特別クラスといえる。30戦全勝(21KO)と7割のKO率を誇り、「ハンター」のニックネームにたがわずパンチ力もある。WBO王者だった昨年7月にはWBC王者との統一戦に臨み、全勝の相手から2度のダウンを奪って完勝している。近い将来に6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(38=比)との対戦が期待されているが、クロフォード有利の声が多いほどだ。

 そのため両選手のプロモーターを務めるトップランク社は、パッキャオの最後の試合としてクロフォード戦を計画しているとも伝えられる。

 元アマエリートがプロでもトップの座を射止めるのか、それともクロフォードが実力差を見せつけるのか。20日(日本時間21日)、MSGの戦いにも注目したい。

ゴロフキンvsアルバレス、頂上対決が9月対戦で合意

 7年間に18度の防衛を重ねているWBA、WBC、IBF世界ミドル級王者、ゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン/米)と、6日(日本時間7日)にフリオ・セサール・チャベス・ジュニア(31=メキシコ)を一方的に下したWBO(世界ボクシング機構)スーパーウエルター級王者、サウル・カネロ・アルバレス(26=メキシコ)の頂上対決が9月16日に行われることになった。チャベス戦直後のリング上でアルバレスとゴロフキンのふたりが対戦合意に達したことを明かしたもの。開催地は確定していないが、ラスベガスが有力とみられている。

 ジャッジ三者が120対108と採点するほどの圧勝を収めた直後、「次は誰と戦うのか」と聞かれたアルバレスは「ゴロフキン、どこにいるんだ?」とライバルに呼びかけた。すでに演出が決まっていたのか、リングサイドで観戦していたゴロフキンは会場の後方に移動しており、そこから歩いてリングインしてアルバレスと並んだ。マイクを向けられたゴロフキンが「カネロ、おめでとう」と声をかけると、アルバレスは「私はプロなんだから誰とでも戦う。恐怖心? それは生まれたときに忘れた。試合を楽しみにしている」と答えた。ゴロフキンも「きょうは素晴らしい試合だったが、これから先はそうはいかない」とやんわりと挑発するなど、早くも心理戦が始まっている。

 この両者は昨年9月に対戦が期待されたが、当時はWBCミドル級王者だったアルバレス側が回避。王座を返上して1階級下のスーパーウエルター級に移った経緯がある。そのあと9月に両者は別々の試合でTKO勝ちを飾り、さらにゴロフキンは今年3月に判定勝ちを収めて防衛回数を18に伸ばしている。ゴロフキンには6月にWBO王者との統一戦の計画もあったが、これを見送ってアルバレス戦を優先させることにしたようだ。

 04年アテネ五輪で銀メダルを獲得後にプロ転向を果たしたゴロフキンは37戦全勝(33KO)の戦績が示すとおりの強打者で、トップ選手たちからは畏怖の念を抱かれている。スパーリングで手合わせした経験を持つ12年ロンドン五輪金メダリストで、20日に世界挑戦を控えている村田諒太(31=帝拳)が「アマチュア、プロを通じて手合わせした選手のなかで最もパンチが強い。特に左のジャブとフックは硬さと重さが異質」と驚いたほどだ。

 一方、2階級制覇のアルバレスも51戦49勝(34KO)1敗1分という豊富なキャリアを持つ万能型で、右ストレートや左フックには一撃で相手を沈める破壊力がある。体格ではゴロフキンに劣るが、先のチャベス・ジュニア戦では身長とリーチで10センチ勝る相手を完封、自信を増しているはずだ。

 ともに強打が売りの攻撃型だけに、KO決着が約束されたカードといえる。試合は4カ月以上も先だというのに早くもオッズが出ており、現時点では3対2でゴロフキン有利とみられている。

チャベス・ジュニアが番狂わせ起こすか アルバレスと対戦

 6日(日本時間7日)、米国ネバダ州ラスベガスでWBO世界スーパーウエルター級王者、サウル・カネロ・アルバレス(26)対元WBC世界ミドル級王者、フリオ・セサール・チャベス・ジュニア(31)というメキシコのスター選手同士の12回戦が行われる。ノンタイトル戦にもかかわらず発売直後に2万枚以上のチケットが完売になったほどの人気カードだ。本来ならば2階級異なる両者だが、今回は中間の164・5ポンド(約74・6キロ)の契約体重で行われる。

 アルバレスは20歳のときにWBC世界スーパーウエルター級(-69・8キロ)王座を獲得し、15年にはミドル級(-72・5キロ)でも戴冠を果たした。しかし、ベスト体重が70キロ前後のためミドル級時代も70・3キロの契約体重で戦っていた。現在の王座は昨年9月に獲得したもので、本来のクラスに戻ったともいえる。26歳と若いが、15歳でプロデビューしたためキャリアは12年に及び、試合数も50戦(48勝34KO1敗1分)と多い。唯一の敗北は4年前にフロイド・メイウェザー(米)に喫した(判定負け)ものだが、以後は6連勝(4KO)と完全に復調している。

 特に昨年は右一発で元世界王者のアミール・カーン(英)を失神KOで屠ったほか、9月の戴冠試合ではボディブローなどで3度のダウンを奪うなど圧倒的な強さを見せつけている。

 これに対し、世界3階級制覇王者(フリオ・セサール・チャベス)の息子としても知られるチャベス・ジュニアは、14年のプロキャリアで54戦50勝(32KO)2敗1分1無効試合という戦績を残している。11年から12年にかけてWBC世界ミドル級王座を3度防衛し、当時は偉大な父親の伝説を継承しつつあった。しかし、4度目の防衛戦で敗れて王座を失い、ドーピング違反も発覚して躓いた。以後は5年間に5戦(4勝1敗)と試合ペースが落ち、拙戦が目立つ。ベスト体重は76キロ~78キロに増えたが、それでも計量でオーバーする失態を犯したこともある。負傷も増え、父親から「やる気がないなら引退しろ!」と叱咤されたこともあった。こうしたなかで今回のアルバレス戦が決まったわけだ。

 両選手の近況や総合的な戦力を考えればアルバレス有利は絶対的なものといえる。スピードで圧倒したすえ右ストレートやボディブローなどでダメージを与えて中盤あたりでレフェリー・ストップに持ち込むというのが大方の見方だ。オッズは11対2でアルバレス有利と出ている。しかし、今回はベスト体重から4キロ以上も増量するうえ、チャベス・ジュニアが身長で10センチ、本来の体重では6キロ以上も重いことを考えると、アルバレスの理想どおりにことが運ぶかどうかは疑問だ。チャベス・ジュニアが体格を生かしてクリンチやもみ合いの多い乱戦に引きずりこみ、アルバレスの体力、スタミナを削いでしまう可能性もある。

 ミドル級3団体王者、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン/アメリカ)とのスーパーファイトが9月に計画されているアルバレスが順当に勝利を収めるのか、それともチャベス・ジュニアが番狂わせを起こして新たな伝説をスタートさせるのか。世界タイトルはかからないが、極めて興味深いカードだ。

ジョシュアvsクリチコ 戦いを制するのは経験か若さか

 IBF世界ヘビー級王者、アンソニー・ジョシュア(27=英)対元王者で現WBA&WBO2位、IBF3位、ウラジミール・クリチコ(41=ウクライナ)のタイトルマッチは29日(日本時間30日)、英国ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われる。ともに五輪のスーパーヘビー級金メダリストだが、ジョシュアが12年ロンドン、クリチコが96年アトランタと4大会のズレがある。プロ18戦全KO勝ちのジョシュアがスピードと勢いで圧倒するのか、それとも経験で大きく勝るクリチコが貫録を示すのか。9万枚のチケットが完売になったほどの注目カード、世代間の戦いを制するのは-。

 ジョシュアは地元で開催された五輪を制した翌13年にプロデビューを果たし、英連邦王座や英国王座などを獲得後、昨年4月に世界王座を手に入れた。プロでのキャリアはわずか3年半、18試合で戦った総ラウンド数も44と少ないが、その素質は高く評価されている。3年前にスパーリングでジョシュアと手合わせしたクリチコ自身が「彼はまだまだ勉強が必要だが、潜在能力は高い。いずれトップ戦線に躍り出てくるだろう」と予測したほどだ。

 ジョシュアの最大の武器はスピードで、この点ではヘビー級でトップといっていいだろう。左ジャブから繋ぐ決め手の右ストレートも速いうえ破壊力がある。ただ、まだ経験が浅いことは否めず、最長でも7回までしか戦ったことがない。それほど圧倒的な勝ち方をしてきたことの裏返しでもあるが、クリチコが12回を8度もフルに戦いきっていることを考えると不安要素といえる。

 そのクリチコはプロキャリア20年、68戦64勝(53KO)4敗の戦績を残している大ベテランだ。世界戦だけでも28戦(25勝19KO3敗)を経験しており、第二次政権では9年半に18度の防衛をマークしている。「スティール・ハンマー」の異名があり、左ジャブで距離とタイミングを計ってから繰り出す右ストレートが最大の武器だ。ただ、41歳という年齢とともに15年11月の王座陥落後は試合から遠ざかっており、コンディション調整が気になる。試合が決まった際、クリチコは「今回の試合がジョシュアにとって実現が早過ぎたのか、それとも私にとって遅過ぎたのか、それは4月29日に分かるだろう」と俯瞰した見方をしたうえで「多くの場合、経験は若さに勝るものだ」と自信をみせた。

 体格はジョシュアが身長198センチ/リーチ208センチ/体重約113キロ、クリチコが198センチ/206センチ/約111・5キロと互角だ。ともに左ジャブから突破口を開くタイプだけに、序盤のリードブローの巧拙が勝負のカギを握りそうだ。スピードと勢いで勝るジョシュアが2対1のオッズで有利とみられており、前半で一気にけりをつけてしまう可能性もある。その一方、勝負が長引いた場合は経験で勝るクリチコが優位に立ちそうだ。

「戦う上院議員」パッキャオの初防衛戦が7月2日に決定

 6階級制覇の実績を持つスーパースター、WBO世界ウエルター級王者、マニー・パッキャオ(38=比)の初防衛戦が7月2日、オーストラリアのブリスベンで行われることが決定した。相手はWBO2位にランクされるジェフ・ホーン(29=オーストラリア)。パッキャオにとっては昨年11月に王座を奪回してから8カ月ぶりの試合となる。

 もともとパッキャオは4月23日にホーンとブリスベンで戦う計画だったが、契約直前にUAE(アラブ首長国連邦)の投資家から「元世界王者のアミール・カーン(英)と戦うなら3800万ドル(約42億円)の資金を用意する」というオファーが舞い込んだ。そのため一時は「パッキャオ対カーンは5月、UAEで開催」という可能性が高まったが、結局、このプランは白紙になった。これを受けパッキャオ対ホーンが再浮上したという経緯がある。パッキャオのプロモートを15年以上も担当しているトップランク社は10日、試合決定を正式にアナウンスした。ブリスベンでは30億円近い経済効果が見込めるとして大歓迎の様子だ。

 19キロの体重の壁を乗り越えてフライ級からスーパーウエルター級までの10階級のうち6階級で世界王座を獲得しているパッキャオは、昨年4月の試合を最後に一度は引退。5月にはフィリピンの上院議員選挙に出馬して当選した。その後、カムバックして11月に現在の王座を獲得した。09年11月の試合を最後に12試合もKO勝ちから遠ざかっているが、攻撃的でエキサイティングなボクシングは依然として人気があり、世界的な知名度も高い。67戦59勝(38KO)6敗3分。

 そんなスーパースターと拳を交えるホーンは、12年ロンドン五輪に出場してライトウエルター級でベスト8に入った実績を持っている。13年3月のプロデビュー後はニュージーランドとオーストラリアで計17戦を行い、16勝(11KO)1分の戦績を残している。直近の試合は昨年12月で、世界ランカー同士の一戦で先にダウンを喫しながら逆転、6回TKO勝ちを収めている。ホーンは「パッキャオが強いことは知っているが、もう彼の時代ではない」と強気なコメントを発している。

 会場は5万5000人の収容が可能なサンコープ・スタジアムが予定されており、当日は満員になることが確実視されている。

 このホーン戦を機にパッキャオは世界ツアーを予定しており、すでに英国やロシアなどからオファーが来ているという。「戦う上院議員」から目が離せない状況はまだまだ続きそうだ。

注目のロマチェンコ防衛戦、結果次第でライト級進出も

 五輪連覇、プロ3戦目で世界王座獲得、7戦目で2階級制覇と、驚異的な歩みをみせる天才サウスポー、WBO世界スーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ/米)が4月8日(日本時間9日)、米国メリーランド州オクソンヒルで前WBA王者、ジェイソン・ソーサ(29=米)の挑戦を受ける。「ハイテク」というニックネームを持つロマチェンコがどんなパフォーマンスをみせるのか要注目だ。

 3月18日に4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(29=ニカラグア)が敗れ、同じ日にミドル級王座の18度目の防衛に成功したゲンナディ・ゴロフキン(34=カザフスタン/米)にも陰りがみえるなか、いまやロマチェンコは体重同一と仮定した最強ランキング、パウンド・フォー・パウンドのトップに躍り出そうな勢いだ。しかもプロキャリアは3年半、わずか8戦(7勝5KO1敗)で極めて高い評価を得ているのだから驚きである。

 ロマチェンコは08年北京五輪、12年ロンドン五輪で金メダルを獲得したほか世界選手権でも2度優勝している。アマチュア戦績に関しては諸説あるものの397戦396勝1敗が通説となっている。13年10月のプロデビュー戦では世界ランカーを一蹴。2戦目で世界挑戦したが、このときは体重オーバーの相手を警戒して中盤までセーブしたのが響いて僅差の判定で敗れた。

 しかし、史上最短タイの3戦目でWBO世界フェザー級王座を獲得すると、あとは手がつけられない強さをみせつけている。昨年6月には7戦目でWBO世界スーパーフェザー級王座を獲得し、井上尚弥(23=大橋)の持つ記録(8戦目で2階級制覇)を更新した。圧巻は昨年11月の初防衛戦だ。5階級制覇王者のノニト・ドネア(34=比/米)を倒して高い評価を得ていた無敗の元WBA世界フェザー級王者、ニコラス・ウォータース(31=ジャマイカ)をスピードとテクニックで翻弄、何もさせずに7回終了で棄権に追い込んだのだ。

 そんなロマチェンコに挑むソーサは昨年6月にWBA王座を獲得し、11月には初防衛にも成功したが、今回の試合が決まったため王座を返上した。戦績は25戦20勝(15KO)1敗4分だが、直近の16戦に限っては15勝(14KO)1分と極めて高いKO率を誇る。ソーサは「高い評価のチャンピオンと対戦できて光栄だ。そんな選手をどう攻略するのか、じっくりと見てほしい」と自信をみせている。

 しかし、プロモーターのボブ・アラム氏は「ソーサは力のある選手だから面白い試合にはなるだろうが、ロマチェンコに勝つのは難しい」と王者の勝利を予想している。それを裏づけるようにオッズも12対1でロマチェンコの圧倒的有利と出ている。

 この試合に勝つことを前提にライト級進出も視野に入れているロマチェンコの戦いぶり、そして結果に注目したい。

群雄割拠のライト級トップ戦線 個性的な猛者たち

 25日に英国マンチェスターで行われたWBA世界ライト級タイトルマッチ、王者ホルヘ・リナレス(31=帝拳)対前WBA王者アンソニー・クロラ(30=英)の12回戦は、7回にダウンを奪ったリナレスが判定で圧勝した。特別な王者に与えられるWBCのダイヤモンド王座保持者でもあるリナレスには、次戦でWBC王者のミゲール・マイキー・ガルシア(29=米)との対戦が待っている。実現すれば3階級制覇王者同士のカードとなる。そのほかにもライト級には個性的な猛者が数多くおり、群雄割拠の様相を呈してきた。

 クロラを圧倒してWBA王座の初防衛を果たしたリナレスはスピードとスキル、強打を併せ持った万能型で、戦績は45戦42勝(27KO)3敗。これに対しガルシアは36戦全勝(30KO)という完璧なレコードを残している。今年1月に3階級制覇を成し遂げた試合では右アッパーから右ストレートで相手を失神させており、パンチ力には絶対の自信を持っている。WBCが両者の対戦をオーダーしており、早ければ夏には実現する可能性が高い。

 IBF王者のロバート・イースター(26=米)も勢いがある。61.2キロが体重上限のライト級では180センチと長身で、リーチは193センチもある。その特大サイズの恵まれた体格から左ジャブを突き、好機には右ストレートや右アッパーを繰り出して仕留めるタイプだ。戦績は19戦全勝(14KO)。昨年9月に王座を獲得し、今年1月には初防衛を果たしている。

 WBO王者のテリー・フラナガン(27=英)も32戦全勝(13KO)とプロでは負け知らずのサウスポーだ。15年7月に王座を獲得し、すでに4度の防衛に成功している。派手さはないが、攻防ともに安定感のあるタイプといえる。4月8日に5度目の防衛戦が決まっているが、その先の計画としてリナレスとの対戦希望を口にしている。

 そのフラナガンへの指名挑戦権を持つ12年ロンドン五輪戦士、フェリックス・ベルデホ(23=プエルトリコ)も力をつけてきた。23戦全勝(15KO)。6月10日に次戦が計画されているが、それがフラナガンへの挑戦になるかどうか注目される。

 12年ロンドン五輪バンタム級金メダリストのサウスポー、ルーク・キャンベル(29=英)にも注目したい。15年12月にプロで初の敗北を喫したが、その後は強豪相手に4連勝(3KO)と復調している。17戦16勝(13KO)1敗。遠からず勝負に出そうだ。

 さらに五輪連覇、プロ3戦で世界王座獲得、7戦目で2階級制覇を成し遂げた天才サウスポー、WBO世界スーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ 8戦7勝5KO1敗)もライト級参入を狙っている。4月8日に2度目の防衛戦が決まっており、これをクリアすることが前提になるが、近い将来、リナレスやガルシアとの対戦が実現する可能性は高いといえる。リナレス自身、クロラを退けたリング上で「ガルシアやロマチェンコと戦いたい」とコメントしている。

 この1年で主要4団体のうちWBA、WBC、IBFで王座の持ち主が変わったライト級トップ戦線。はたして来年のいまごろはどんなメンバーが王座に君臨しているのだろうか。

返り討ちか、雪辱か リナレスとクロラの再戦に注目

 3階級制覇の実績を持つWBA世界ライト級王者、ホルヘ・リナレス(31=帝拳)が25日(日本時間26日)、英国マンチェスターで地元の人気者、前WBA王者で現4位のアンソニー・クロラ(30=英)を相手に初防衛戦に臨む。両者は昨年9月、今回と同じ会場、マンチェスター・アリーナで拳を交え、当時、WBC級王者だったリナレスが12回判定勝ちを収め、WBA王座を獲得するとともにWBCからはダイヤモンド王者の称号を授かった。半年後の再戦はどちらに凱歌が挙がるのか。

 ベネズエラ生まれのリナレスは02年、17歳のときに日本でプロデビューし、以後は華やかなスター街道を歩んだ。21歳でWBC世界フェザー級王座を獲得し、23歳のときにはWBA世界スーパー・フェザー級王座も獲得した。このときの戦績は26戦全勝(17KO)だった。日本のほか故国ベネズエラ、パナマ、アルゼンチン、韓国、米国、メキシコで戦うなど見た目の線の細さとは裏腹に逞しい歩みといえた。

 ところが、09年10月に不覚の1回TKO負けを喫してWBAスーパー・フェザー級王座を失うと、11年、12年に米国、メキシコで連続TKO負け、スランプに陥った。

 7カ月の休養後に戦線復帰を果たすと、勢いを取り戻した。14年には日本でWBC世界ライト級王座を獲得し、3階級制覇を達成。初防衛戦を英国、V2戦をパナマで行うなど場所を気にせず戦って地力を発揮。昨年は右拳を骨折したため休養王者にスライドさせられたが、9月のクロラ戦で実力をみせつけた。

 そのクロラとの初戦は接戦で、中盤にリナレスが右でKOチャンスを掴んだものの拳を痛めて目的は果たせなかった。それでも勝負どころの10回、11回、12回をしっかりと抑え、敵地で勝利のコールを受けたのだった。

 雪辱と王座奪回を狙うクロラは、かつて隣家に押し入った強盗に立ち向かい、ブロックで頭部や足を殴られて瀕死の重傷を負ったことがある“正義の人”でもある。15年11月にWBA王座を獲得した試合と初防衛戦は、いずれもボディブローでKO勝ちしており、マンチェスターでは人気がある。器用なタイプではなく、ガードを固めて距離を潰して根気強く勝負するタイプだ。

 スピード、パンチの破壊力、テクニックなど個々の戦力ではリナレスがほとんど上回るが、打たれ脆い点が唯一の泣きどころといえる。戦績はリナレスが44戦41勝(27KO)3敗、クロラが39戦31勝(13KO)5敗3分。

 初戦のオッズは3対2でクロラ有利だったが、リナレスの勝利を経て行われる再戦は11対5で現王者有利と出ている。再戦が決まった直後、リナレスは「今度も私が勝つよ。チャンスがあれば今度こそ倒したいね」と日本語で意気込みを口にしたものだった。

 返り討ちか、それとも雪辱か。日本時間26日早朝、マンチェスターのリングに注目だ。