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大相撲裏話

元隠岐の海の君ケ浜親方と元豪風の押尾川親方 「秋田」つながりの2人が今後の相撲界引っ張る

押尾川部屋“広報部員”のブッチをだっこする押尾川親方(23年1月撮影)

2人にしか分からない絆がある。大相撲初場所の7日目に引退を発表した元関脇隠岐の海改め君ケ浜親方と、元関脇豪風の押尾川親方。押尾川親方の方が6歳上だが、巡業先などで見せた仲むつまじい姿は全く年齢の差を感じさせなかった。相撲ファンの間でもよく知られる存在だった2人の仲について、当人たちから聞いた。

出会いについて、君ケ浜親方の心に深く印象に残っている。若い衆の頃に参加した飲み会。偶然そこに居合わせたのが、当時既に関取だった豪風。父親が同じ秋田出身と伝えると、ひときわうれしそうにしていた。「その場でおやじに連絡したら、電話に代わって話してくれて」。粋な計らいもうれしかった。

押尾川親方は「別にみなさんが思うほど仲良くないですよ」と気恥ずかしそうにしながら、「トレーニングを見たいと言われて、一緒にしたこともありましたね。少しずつ力をつけていった姿を目の当たりにして、こうやって強くなるんだと意識する存在でしたね」。一緒に秋田へ訪れたり、場所後に飲みに行ったりと思い出が絶えない。かわいい後輩の引退会見にもこっそり姿を見せていた。

現役を退いた今、ともに親方として後進の指導に当たる。君ケ浜親方は「どんな稽古をしているのか見てみたいですね」。押尾川親方は「親方として一緒に盛り上げたい」。若い2人の親方が、今後の相撲界を引っ張る。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

引退会見で花束を受け取る隠岐の海(1月14日撮影)

元横綱大鵬の三女納谷美絵子さん、亡くなって知る父の偉大さ 海外の人々や若者にも名前浸透

「昭和の大横綱」大鵬の納谷幸喜さん(享年72)が、2013年に亡くなって、命日の19日で10年の節目を迎えた。

第48代横綱大鵬土俵入り

元横綱大鵬の没後10年を前に取材に応じた三女の納谷美絵子さんは「あっという間でした。10年と聞いて、本当に早かったなあと感じます」と振り返った。亡くなってから、父の偉大さを感じることがしばしばあるという。「海外の人たちや、若い方々にも『大鵬』という名を知ってもらっている。うれしいことです」と喜んだ。

生前の父について思い出すのは「子どもの頃にけがをすると、包帯や薬を取り出して何でも治してくれる」という心優しい姿だ。礼儀作法には厳しかったが、「私は末っ子だったので、姉たちと話していると大分甘かったようです」と笑う。長男(プロレスラーの納谷幸男)をのぞく3人(次男・三段目納谷、三男・平幕王鵬、四男・幕下夢道鵬)が角界入り。「大鵬の孫」として注目されながらも、土俵の上で期待に応えようと奮闘している。

大鵬家家系図(敬称略)

本場所の前後で納谷さんは、都内にある父の墓を訪れる。場所前に子どもたちの15日間の活躍を見守ってほしいと伝え、場所後に結果報告を欠かさない。命日の1月19日は初場所と重なるため家族一同で集まることはないが、在りし日の思い出を振り返る機会にしてほしいと願っていた。【平山連】

新十両の湘南乃海を奮い立たせる原動力は「おやじに認められたい」厳しい父へ白星で恩返し

父に認めてもらうことが、何よりの原動力だ。10日目に狼雅を破り勝ち越しを決めた新十両の湘南乃海(24=高田川)は場所前の取材で「おやじに認められたいから、頑張っているところがあります。十両に上がった時も『俺はおめでとうとは言わない。遅いくらいだ。遅い分を取り返せ』と言われたんですよね」とうれしそうに笑った。

狼雅(左)を引き落としで破る湘南乃海(撮影・河田真司)

野球少年で相撲未経験ながら、神奈川・大磯中時代に高田川部屋を見学したことで入門を決めた。卒業後の進路が決まると、幸先よくスタートを切るために父との猛特訓が始まった。学校から帰ってくると一緒に公園に向かい、1時間の四股踏み、腕立て伏せ300回、電柱めがけたテッポウ、すり足…。冬場でもびっしょりと汗をかくほどのメニューを毎日こなした。「体を動かしているうちに暑くなって、パンツ一丁でやっていました。大人同士がけんかしてるんじゃないかと間違えられて、警察を呼ばれたこともありましたね」という笑い話もあるほど。鍛え上げた足腰は今も自慢だ。

狼雅(右)を攻める湘南乃海(撮影・菅敏)

14年春場所で初土俵を踏んだ“中卒たたき上げ”は、約9年かけて関取の地位をつかんだ。新十両場所で勝ち越しを決めても、浮かれることはない。「明日があるんで。1日一番集中して、全力を出し切ります」と白星を積み重ねる。厳しい父への恩返しになると信じて。【平山連】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

押尾川部屋“広報部員”オスのパグ「ブッチ」にメロメロ 親方が飼うことを決めた理由とは

押尾川親方とブッチ(撮影・平山連)

愛くるしい顔立ちとつぶらな瞳に、うっとりが止まらない。22年2月に新設された押尾川部屋にいるオスのパグ「ブッチ」が、稽古に励む力士たちを和ませている。

師匠の押尾川親方(元関脇豪風)から部屋の“広報部員”に抜てきされ、同部屋のSNSにもたびたび登場する。生後10カ月ほどとまだ小柄だが、その存在は既に部屋に欠かせないものとなっている。

同親方は「ペットを飼うことを決めたのは、息子と娘の教育のためなんです。生き物を飼うことを通して、命の尊さを学んでほしいなと思っていました」。名前の由来は長女が以前大切にしていたぬいぐるみからで、それになぞって同じ名のブッチと付けた。普段は部屋の上階にある押尾川親方の自宅で飼っているが、稽古終わりの食事時になると下に降りて力士たちと触れ合うことも少なくない。部屋頭で幕下の矢後(28)も「僕らも戯れて、安らいでます」とメロメロだ。

ブッチの存在について、押尾川親方は「部屋のマスコット犬として、地域の人たちに相撲部屋を親しんでもらえることにつながる」と期待を寄せる。ペットは飼い主に似るというが、ブッチの顔もどことなく笑った親方に似ている気がする。愛くるしいマスコットの存在で、部屋の雰囲気が一層明るくなっていた。【平山連】

押尾川部屋のブッチ(中央)とたわむれる飛燕力(左)と風賢央(撮影・平山連)
押尾川部屋の“広報部員”のブッチ(左)をしつける、師匠の押尾川親方(撮影・平山連)
押尾川親方と同部屋の“広報部員”のブッチ(撮影・平山連)
押尾川親方と同部屋の“広報部員”のブッチ(撮影・平山連)
押尾川親方と同部屋の“広報部員”のブッチ(撮影・平山連)
押尾川部屋の“広報部員”のブッチを見守る風の湖(左)と風賢央(撮影・平山連)
食卓に並んだ果物を見つめる押尾川部屋の“広報部員”のブッチ(撮影・平山連)

貴景勝と張り手合戦の翠富士 先場所変化で怒られ基本に立ち返る「次もバチバチに」真っ向勝負

大相撲の西前頭3枚目の翠富士(26=伊勢ケ浜)は、最後まで真っ向勝負を挑んだ。初場所7日目の結びの一番で、同学年の大関貴景勝(26=常盤山)とバッチバチの張り手合戦を演じた。白星とはならず対貴景勝戦は3戦全敗となったが、取組後は「気持ち良く負けた感じ。悔いはない」と晴れ晴れした表情を見せ、2カ月前の姿は、そこにはなかった。

貴景勝(左)に張り手を見舞う翠富士(撮影・野上伸悟)

昨年11月の九州場所7日目。2度目の大関戦に挑むが、翠富士は立ち合いで左に変化。が、貴景勝に自分の戦法を見透かされたようについてこられ、そのままなすすべなく土俵外へと押し出された。取組後の取材で語ったのは、自分が選んだ攻め方への後悔だった。大関相手に真っ正面から当たることをしなかった。「情けない」と振り返るほど肩を落として会場を去る姿が印象に残った。

その翌日の取材でも大関戦について話題に上り、翠富士は「めちゃくちゃ怒られました」と反省しきりだった。当時伊勢ケ浜部屋の部屋付き親方だった安治川親方(元関脇安美錦)からは会場から宿舎までの帰りの車中で「変化をやるんだったら、ちゃんと当たってからにしろ」などと散々叱責(しっせき)を受け、師匠の伊勢ケ浜(元横綱旭富士)からも「お前、何考えてんだ」と言われたという。立ち合いから思いっきりぶつかる。もう1度基本に立ち返った。

にらみ合う貴景勝(左)と翠富士(撮影・野上伸悟)

そして2カ月後に迎えた3度目の大関戦。立ち合いから頭と頭でぶつかり、次第にバッチバチの張り手合戦へと突入。貴景勝が右フックを繰り出すと、負けじと翠富士も強烈な張り手を見舞った。取組中には互いににらみ合う場面もあった。最後は貴景勝の執念の小手投げで敗れたが、館内からはこの日一番の大きな拍手と歓声が起きた。

取組を終えて翠富士は「やっぱり力が半端じゃなかったですね」と苦笑い。張り手の応酬については「クラッときたけど、負けたくない気持ちもあった。お客さんも喜んでくれたのでよかった」。敗れはしたが、その顔には全く後悔はない様子だった。

学生時代からトップを走り続ける同学年の貴景勝に、今度こそ勝ちたい。戦法は変わらない。もちろん真っ向勝負だ。「次もバチバチにいきたいなと思います」と語る姿が、何とも言えないほどかっこよかった。【平山連】

張り合う貴景勝(左)と翠富士(撮影・野上伸悟)

◆翠富士一成(みどりふじ・かずなり)1996年(平8)8月30日、静岡県焼津市生まれ。相撲は小学2年から始め、静岡・飛龍高2年時にはインターハイ団体戦で埼玉栄高の佐藤(現大関貴景勝)を破って団体3位に入賞。近大を2年で中退し16年秋場所初土俵。20年春場所新十両、21年初場所新入幕。171センチ、117キロ。

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

元白鵬の宮城野親方まげ姿も今場所が最後 引退相撲前に「関取が出れば良いお祝い」愛弟子に期待

宮城野親方(2022年12月20日撮影)

125年ぶりの1横綱1大関という異例の事態で行われている今場所。史上最多45回の優勝を誇る大横綱も危機感を募らせていた。元横綱白鵬の宮城野親方は昨年の暮れ「弟子を育てる立場である親方の我々にも責任がある。将来の相撲界を盛り上げてくれる力士を育てるべく全国を歩き回って、有望な若手をスカウトしていかなければいけない」と険しい表情で言った。

先代が65歳の定年を迎えたのに伴い、昨年7月に年寄「宮城野」を襲名。宮城野部屋を継承し、部屋には十両の北青鵬(21)をはじめ、幕下上位の川副(23)や向中野(20)といった若手の有望株が多く在籍する。今場所は幕下15枚目格付け出しの落合(19)がデビュー。一番相撲では対戦相手の休場により不戦勝となったが、二番相撲、三番相撲と相手を寄せ付けず3連勝。鳥取城北高時代に2年連続で高校横綱に輝いた実力を披露し、同親方も「本当に相撲を知っている」と太鼓判を押す。

28日には自身の引退相撲が両国国技館で行われる。まげ姿でいられるのも今場所が最後。名残惜しそうにしながら「幕下上位の3人(川副、向中野、落合)の中から関取が出れば、良いお祝いになるね」と愛弟子の活躍に期待していた。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

照強19連敗で止めた「悲観的になっても何も始まらない」土俵に立つことが仕事、揺るがない決意

豪快に塩をまく照強(撮影・中島郁夫)

西十両10枚目の照強(27=伊勢ケ浜)が、長いトンネルを抜けた。激しい攻防の末に英乃海を寄り切り、初日を出した。昨年9月の秋場所14日目以来の白星。十両以上のワースト記録で五ツ海と双ツ龍の21連敗に迫っていたが、この勝利で連敗を19で止めた。取組後の取材対応はなかった。

東前頭16枚目として臨んだ昨年11月の九州場所は15戦全敗した。幕内の同一場所での15戦全敗は、91年名古屋場所の板井以来で31年ぶり5人目。今場所前の取材では、九州場所について持病の糖尿病の影響で力が入らなかったことを明かしていた。体の異変を感じながらも、最後まで出場することを選んだ。土俵に立つことが力士の仕事。揺るがない決意がにじんだ。

「全敗して悲観的になっても、何も始まらない。良い記録も、悪い記録も土俵に立ち続けたからこそ打ち立てられたものだから」。前向きな姿勢が頼もしい。今年の目標については「また上で相撲が取れるように」と幕内復帰を目指す決意だ。阪神・淡路大震災が起きた95年1月17日に兵庫県南あわじ市で生まれ、場所中の17日に28歳となる。ようやくつかんだ初白星。反転攻勢はここからだ。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

3年前V徳勝龍、幕下から黒まわしで再出発 関取で来場所地元に帰る目標へ力強く前進

友風を押し出しで破った徳勝龍(撮影・鈴木正人)

3年前に賜杯を抱いた36歳がちょんまげ、黒まわしで再出発を飾った。20年初場所で14勝1敗、幕内最高優勝を飾った徳勝龍(木瀬)だが、今場所は西幕下2枚目。同じく幕内経験者の友風との同体取り直しの激闘を押し出しで制した。

「取り直しになったが、前に攻めていたんで内容はよかった。やると決めたんで貫いていきたい。どの地位でもやることは同じ。幕下とか関係なく、いい相撲をとっていきたい」

歓喜からわずか3年。初優勝で自己最高の西前頭2枚目まで番付を上げたが、苦難の始まりでもあった。先場所は東十両12枚目で4勝11敗。12年春場所以来の幕下転落となったが、徳勝龍の心は折れなかった。

「ご苦労さま」の言葉を考えていたという母えみ子さん(60)は場所後すぐ、現役を続ける決意を聞いたという。「十分に頑張ってくれたし、できることはやったと思ってこれで引退するのかなと。でも本人は『笑われてもいい。周囲に何を言われても自分が納得して辞めたい』と」。そんな思いを知るだけにこの日の勝利は母にとっても格別だった。

成績次第ですぐ十両復帰はかなう地位だ。奈良出身の徳勝龍にとって来場所は準ご当地の春場所。「白星がついたんで頑張ります」。関取で地元に帰る目標へ力強く進んだ。【実藤健一】

元幕下大司「ごっちゃんこ」として路上パフォーマンス、第2の人生でも土俵と同じ高揚感を

17年秋場所で引退した元幕下の大司。現在は「ごっちゃんこ」の名で路上パフォーマーとして活動している(ごっちゃんこさん提供)

2017年秋場所で現役引退した大相撲の元幕下大司(ひろつかさ、30)は、「ごっちゃんこ」の名で路上パフォーマーとして活動している。11月中旬に東京都内の繁華街に訪れ、まわし姿でお客さんと路上相撲をしたり、自作のフリースタイルラップを披露したりした。投げ銭のかごがわずか30分でいっぱいになる盛況ぶりだった。「お客さんのノリに後押しされて、良いパフォーマンスができた」とうれしそうに言った。

活動の原点は、腰椎椎間板ヘルニアで満足に稽古が積めなかった同志社大の相撲部時代。気を紛らわせようと友人と一緒に音楽バンドを始め、まわし姿でドラムをたたいて歌う「まわしパーカッション」を担当した。ライブハウスに集まった客から受ける声援が気持ち良くなり、次第にソロ活動へ。より手軽にできるフリースタイルラップに目覚め、路上ライブをするようになった。

大学卒業後の15年春に入間川部屋に入門。そこからは活動と離れていたが、引退後は「土俵に立つときと同じくらいの高揚感を味わえるから」と再び路上に戻った。

第2の人生を歩む今、同学年の活躍は大きな励みだ。関脇の御嶽海、小結の翔猿、平幕の北勝富士や宇良など有望株が多い平成4年生まれ。「現役の時は負けないぞと思って気合を入れてもらった」と稽古していたが、引退した今は「けがや痛みと闘って土俵に上がる姿に勇気づけられる。彼らは彼らの道で納得いくまで相撲を取り、俺は俺の人生を楽しむぞ、と刺激を受けてます」と笑った。

ごっちゃんこさんは、今日もどこかの街に出て、路上ライブに精を出す。風変わりな活動に見えるが、「今はこれが一番自分らしさを表現できるんです」。自信満々に訴えかける言葉が印象に残った。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

◆ごっちゃんこ 本名・太田航大。1992(平4)年8月30日、愛知・岡崎市生まれ。6歳から相撲を始め、同志社大卒業後に入間川部屋に入門。大司(ひろつかさ)のしこ名で15年春場所で初土俵を踏み、17年秋場所で引退。最高位は東幕下49枚目(16年秋場所)。引退後は路上パフォーマーとしてまわし一丁でライブや相撲を行っている。自作したラップの代表曲には「ヘルニア」や「路上」がある。

相撲教習所時代の一枚。後列は左から御嶽海、北勝富士、翔猿で、前列は左から大元、宇良、大司(ごっちゃんこさん提供)
ドラムボーカルをする元幕下大司のごっちゃんこさん(ごっちゃんこさん提供)
相撲教習所時代の一枚。左から翔猿、御嶽海、宇良、北勝富士、大司、大元(ごっちゃんこさん提供)
17年秋場所で引退した元幕下の大司。現在は「ごっちゃんこ」の名で路上パフォーマーとして活動している(ごっちゃんこさん提供)
都内の繁華街で路上パフォーマンスを見せる元幕下大司のごっちゃんこさん(撮影・平山連)

相撲よりピアノ歴が長い鳴滝「僕の癒やし」十八番はTM NETWORKの「GET WILD」

鳴滝

西幕下36枚目の鳴滝(24=伊勢ノ海)のストレス発散法は、小学校4年生から始めたピアノを弾くことだ。都内のスタジオで時には6時間以上没頭するほど熱中する趣味で、部屋の力士たちに自作した曲を披露することも少なくない。「相撲は精神的にも負担が結構大きいので、ピアノを弾くのが僕の癒やしになっています」と力説した。

「不純な動機なんですけど…」と打ち明けるピアノとの出合いは、好きな女の子に誘われたから。紹介された教室に通っているうちに夢中になった。曲をマスターするたびに大きな達成感を得て、ついには「好きな子がやめても続けてました」。小4から高3までの約9年間通った。「実はピアノ歴の方が相撲より長いんです」と話す。

十八番はTM NETWORKの「GET WILD」。弾く際の指の感覚が染みついている。気に入った曲を何度も練習して自分が納得するまで仕上げる過程は、相撲とはまた違うやりがいを感じている。「僕は音楽には上とか下がないと思っていて、自分を好きなように表現できるところが良いですよね」。今場所は4勝2敗で既に2場所連続の勝ち越しを決めている。残り一番もしっかり勝ち切り気持ちよく帰って、美しい音色を奏でたい。【平山連】

静岡・飛龍高相撲部で初女性主将、熱海富士の妹・武井陽奈さんは「他の部員の手本になっている」

熱海富士の妹で飛龍高相撲部主将の武井陽奈さん(撮影・平山連)

全国大会で数多くの実績を誇る静岡・飛龍高相撲部で新チームから創部約50年で初となる女性主将が誕生した。九州場所で新入幕の熱海富士(20=伊勢ケ浜)の妹、武井陽奈(ひな)さん(2年)だ。監督の栗原大介教諭は「過去の実績と練習への取り組み方が他の部員の手本になっている」と期待して抜てきした。

「相撲センスは兄より妹」というのが周囲の声。小中学校の頃から数々の全国大会で表彰台に上がった陽奈さんは、3歳年上の兄と同じく飛龍高に進学。相撲部では男子部員らに交じって稽古に励み、今年4月に国際女子相撲選抜大会の軽量級で3位に輝いた。

主将に就いたことに陽奈さんは「他校の生徒たちとかから『女子で大丈夫なの?』とか言われちゃうのかな」と不安もある。自主性を重んじながら強豪校に上り詰めた同校の伝統を受け継ぎながら、部員たちをどうまとめるか。個人競技の性質が強い相撲だが、大会では団体戦もある。自分の成績だけではなく部員一同で団体優勝をつかみ取りたいといい「女子でも大丈夫なんだということを見せたい」と意気盛んだ。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

朝青龍FW選出にサッカー通の鶴竜親方反論「ガッツあるからDF」/大相撲力士ベストイレブン

フットサルの試合で、デルピエロ氏(右)にボールを奪われ、悔しがる元横綱朝青龍

もしも大相撲の引退力士の中からベストイレブンを組んでみたら…。ついに開幕したW杯カタール大会に合わせ、角界きってのサッカー通として知られる元横綱鶴竜の鶴竜親方にこんな話題を振ってみた。記者が考えに考え抜いた布陣(いずれも現役時のしこ名)を力説すると、同親方も興味津々。時折うなずきながら、持論を展開してくれた。

布陣は4-2-3-1。GKは武蔵丸。DFは右から寺尾、千代大海、安美錦、玉乃島。2ボランチに旭国と鶴竜。その上の3枚は左に魁聖、中央に千代の富士、右に白鵬。個性派ぞろいの集団は、はまれば面白い。ここまでは鶴竜親方も理解を示してくれた。

問題の1トップ。記者が選んだのは第68代横綱の朝青龍。驚異的な運動神経と負けん気の強さで得点を量産すると訴えたが、同親方は「ガッツがあるからDFの方がいいね」と反論。では1トップは誰に?と尋ねると、「ヘディングが強そうだから、琴欧洲で決まり」と一択。さらに妄想を膨らませると、あの人は? この人は? と名が出てくる。今度は現役力士縛りで選ぼうか。開幕したばかりのW杯に合わせ、そんな気持ちが芽生えた。【平山連】

記者が選んだ選手とその選考理由は以下の通り。システムは4-2-3-1

▽GK武蔵丸

◆記者の選考理由 正直、曙と迷った。ただ、温厚そうな顔立ちからにじむ懐の深さから、武蔵丸を選んだ。きつい時間帯にも味方を励ます声を掛けられそうだし、何より190センチを超える身長と体重200キロ超の体格は魅力。まさに壁。最後のとりでとしてうってつけだと思った。

▽DF(右から)寺尾、千代大海、安美錦、玉乃島

◆記者の選考理由 いずれも最後まで集中を切らすことなく、走り続けられそうな守備陣を基準に置いた。熱いバトルを展開する千代大海は強度の高い対人ディフェンスが売りで、CBを一緒に組む安美錦はきめ細かいラインコントロールで守備陣を統率する。これならどんなFWにも対応できそう。両サイドは、バランスを見ながら前線まで駆け上がったり、最終ラインまで戻ったりと上下移動を繰り返すことを期待した

▽MF(2ボランチ)旭国、鶴竜

◆記者の選考理由 しぶとい相撲から「ピラニア」の異名で恐れられた旭国には、縦横無尽に顔を出してボールを奪う役割を期待。一方でサッカー通の鶴竜には、高い戦術理解度と確かな足元の技術を生かして攻守で存在感を発揮してほしい。それぞれの出来が試合の結果に直結しそうだ。

▽MF(ボランチの上3枚で左から)魁聖、千代の富士、白鵬

◆記者の選考理由 角界随一のゲーム好きという魁聖はサッカー王国ブラジル出身で、ゲームの腕と同様に、多彩なテクニックで攻撃のタクトを振るうはず。幕内優勝の最多回数(45度)を誇る白鵬と「ウルフ」の愛称で親しまれた千代の富士には、土俵上で見せた勝負強さを今度はピッチの上で表現してほしい。

▽FW(1トップ)朝青龍

◆記者の選考理由 けがで夏巡業の休場届を出しながら母国モンゴルでサッカーに興じたことは話題になったが、改めて当時の映像を見てみると、その華麗な動きに驚きを隠せない。鍛え抜かれた強靱(きょうじん)な肉体から放たれる強烈なシュート。DFと駆け引きをしながら、絶妙なタイミングで裏へ抜け出す得点感覚。試合終了の笛が鳴るまでトライし続ける圧倒的なメンタル…。どんな点においてもストライカーに必要な要素を兼ね備えているはず。まさしく生粋のゴールハンター。最前線で敵の脅威になり続けるはずだ。

フットサルの試合前に握手する、元横綱朝青龍(左)とデルピエロ氏

玉の海を忘れてほしくない 没後半世紀、同級生らが結集して「横綱玉の海展」

土俵入りのポーズをきめる第51代横綱の玉の海(撮影・平山連)

忘れてほしくない人がいる。先月、愛知・蒲郡市で行われた没後半世紀を記念する「横綱玉の海展」に足を運んだ際、玉の海の蒲郡中時代の同級生の荒島伸好さん(78)から聞いた言葉が印象に残った。「若い人たちにとって地元出身の有名人といえば、プロ野球の千賀投手。玉の海を知っている人がほとんどいない。寂しいじゃないですか」。全力士の頂点に立った旧友を後世に伝えたいという思いがあふれた。

約90点の資料が並んだ第51代横綱の玉の海を紹介する企画展(撮影・平山連)

第51代横綱の玉の海のまげなどが展示された企画展(撮影・平山連)

第51代横綱玉の海の座布団(撮影・平山連)

第51代横綱の玉の海が使っていた明け荷(撮影・平山連)

中学3年の頃に相撲大会に出てもらうと、初出場ながら県大会で3位になった旧友。荒島さんは「天性の素質に加えて稽古熱心。わずか数カ月間一緒に練習しただけで、私たち相撲部員を追い抜いていった」といい、卒業後に角界入りして順調に歩む姿を自分ごとのように喜んだ。

70年初場所後に北の富士(現在NHK解説者の北の富士勝昭氏)と横綱に昇進。順風満帆な日々を送っていた矢先、翌年10月右肺動脈幹血栓症により27歳の若さでこの世を去った。

第51代横綱の玉の海の石像の横に立つ中学時代の同級生の荒島さん(撮影・平山連)

第51代横綱の玉の海の墓の前に立つ中学時代の同級生の荒島さん(撮影・平山連)

あれから51年。同級生らが結集して1500人以上が訪れる企画展ができたが、満足しない。自身にとっては今も地元のヒーロー。「今度は玉の海の常設展示や名前を冠した相撲大会を開きたい」と目を輝かせた。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

気は優しくて力持ち…山中で脱輪の約900キロ軽ワゴンを軽々と 立浪部屋の力士たちが救出

大相撲九州場所 2日目 琴裕将に押し出しで敗れた北大地(2022年11月14日撮影)

力士は気は優しくて、力持ち-。まさにその言葉を体現する、あっぱれな救出劇が場所前に起こった。

11月11日。稽古休みだった立浪部屋の幕下北大地(24)と三段目筑波山(20)は、部屋の関取衆の明け荷を会場の福岡国際センターに運びに行った。その帰り道。トレーナーが運転する車に乗って山中を走っていると、対向車線に1台の軽ワゴン車が止まっていた。周囲に複数の人がおり、異変を察知。左前輪が側溝にハマって脱輪し、運転手らが立ち往生していた。

車を降りて助けにいった。北大地とトレーナーが脱輪した左前輪側から車体を持ち上げると、ふわっと浮き上がる約900キロの軽ワゴン車。右前輪側についた筑波山も合わせて持ち上げ、手前に引いて車体をずらす。ものの1分での救出劇。ささやかながら山中に歓声と拍手が沸き起こった。

負傷する可能性もゼロではなかった。それでも両力士は「迷いはなかった」と口をそろえた。北大地が「稽古の方がしんどいです」と話せば、筑波山は「すごく軽かったっすよ」と涼しい顔。ともに一番相撲で黒星発進となったが、きっと相撲の神様は見ている。【佐々木隆史】

大相撲九州場所 初日 透輝の里(左)を攻める筑波山(2022年11月13日撮影)

「博多駅地下街」が式守勘太夫“指定”の懸賞「良い行司いること知ってほしい」付き合い20年以上

行司の式守勘太夫と博多駅マイング駅地下1番街の懸賞旗(撮影・岩下翔太)

大相撲の応援の1つに「懸賞」がある。企業や後援会が、応援する力士や「初口」「結びの一番」など取組を指定して懸けるのが通例だ。今場所の場合、力士指定の最多は「大関貴景勝」の153本、「結びの一番」には164本が懸けられた。15日間の総数は約1300本で新規申し込みは4社。そのうちの1社で今年初登場の「博多駅マイング駅地下1番街」は、力士や取組ではなく、幕内格行司の式守勘太夫(54=朝日山)を“指定”した懸賞だ。

懸賞を出した博多駅地下街の商店街担当の永留和宏さんは「(商店街の)会長から懸賞を出してもいいのではと提案があった」と明かした。博多どんたくに博多祇園山笠。それらの福岡・博多を代表する祭と同様に「11月の大相撲九州場所も福岡の伝統文化」と認識。商店街として九州場所に懸賞を出すことになった。では、どの力士に、はたまたどの取組に懸けるか-。考えていた永留さんは、20年以上の付き合いがある式守勘太夫に相談した。

懸け方の話し合いになると、式守勘太夫から「僕に懸けて下さい」と提案を受けた。式守勘太夫は17年12月に四肢に力が入らなくなる病気、ギラン・バレー症候群を発症。自力で歩行できなくなり緊急入院し、リハビリ開始当初は首しか動かせず、復帰を諦めた時期もあった。18年初場所から5場所連続休場。それでも懸命の治療の末、同年九州場所から土俵に戻った。

その苦労を知る永留さんは「大変な時があったからね。元気づけたかったし、良い行司がいることをみんなに知ってほしいというのもあって」と15日間、式守勘太夫が1日二番裁くうちのどちらか一番に懸賞を懸けることにした。

しかし、懸賞は勝った力士がもらうもの。行司はあくまで力士に渡すだけだ。それでも永留さんは「取組が終わった後、1枚でもいいから懸賞を力士に渡せるのは行司さんにとってもいいことじゃないかな」と話した。

初日は、式守勘太夫が裁いた隆の勝-栃ノ心の一番に懸賞が懸かった。寄り切った栃ノ心に軍配を上げたが物言い。協議の末、先に栃ノ心の足が出ていたとして、差し違えとなった。式守勘太夫は「初日は(懸賞旗を)見ましたが、差し違えてしまいました。緊張するもんですね。この2人のうち、どちらかがもらうんだなということが頭に入ってしまって」と反省。その様子をテレビで見たという永留さんは「いきなり差し違えてましたね。緊張ですかね。わはははは」と豪快に笑った。

あくまで自身が裁く一番に懸かるもので、自身が手にする懸賞ではないが「それでも力士に渡せるのは気持ちがいい。これもまた縁です。本場所後に(力士から)封筒だけをもらって、懸賞を出してくれた方にあげたい」と感謝した。10年以上、懸賞の管理を担当する日本相撲協会員が「行司を指定しての懸賞は聞いたことがないですね」と話すほどまれな行司指定の懸賞。これもまた、年に1回の地方場所らしい懸賞だ。【佐々木隆史】

行司の式守勘太夫(撮影・岩下翔太)
行司の式守勘太夫と博多駅マイング駅地下1番街の懸賞旗(撮影・鈴木正人)

丁寧に教える琴ノ若と端的に問題点を指摘する大関正代 千差万別の関取衆の指導に好感

四股の踏み方をこまめにアドバイスする琴ノ若(撮影・平山連)

丁寧に教える平幕の琴ノ若(24=佐渡ケ嶽)と、ここぞという場面で端的に問題点を指摘する大関正代(31=時津風)。稽古場での若い衆への指導は対照的に映ったが、間近でその様子を見た記者はどちらの対応にも好感を持った。

前者は、九州場所(13日初日、福岡国際センター)前の取材で訪れた千葉・佐渡ケ嶽部屋で目撃した。腕立て伏せのノルマをこなそうと必死の若い力士の横で回数を数える琴勝峰(23)、筋力トレーニングの手本を見せた上で実際にやってみるように促す琴恵光(30)、胸を出して相撲を取りながら、気づいたことをアドバイスする琴ノ若。師匠と一緒に3人の関取が幕下以下の力士たちに率先して教える姿には、きめ細かさと気配りが感じ取れた。

琴ノ若は「下で上がってきている子たちが上に上がれば、他の下の子たちの刺激になる。指導している中でも自分が気づくこともあるので、一緒に伸びていけたら」と積極的な指導の意図を明かした。自身も若い頃には琴奨菊(現・秀ノ山親方)や琴勇輝(現・北陣親方)、部屋付き親方衆やかつて同部屋の若者頭を務めた琴千歳さんから目をかけられた。付きっきりで指導してもらった恩が今の行動につながってる。「自分もいろいろな人たちに面倒を見てもらって、そうやって上がってこれた。そういう感謝の気持ちを忘れず、今度は自分の経験を下の子にもつないでいきたい」と述べた。

かたや大関正代。九州場所に向けた取材で時津風部屋の稽古場に行った際、その日は錦木(32)、北勝富士(30)が出稽古に来ていた。関取衆が申し合いをしていた際、気の抜けた振る舞いを見せた若い衆2人に「しゃべるのなら、出て行っていいよ」と退場するよう促した。

落ち着いた口ぶりで端的に問題点を指摘されると、怒鳴られるよりもずっと怖い。まして普段は温厚な正代となれば、その効果は絶大。自分の経験と重ね合わせると、めったに怒らない先生から叱責(しっせき)された時の方がへこむ。偶然出くわした一連の出来事にはそんな記憶が呼び起こされた。「他の子たちにも影響する」からと理由を説明した正代は、稽古終了後に叱った若い衆に自ら話しかけていた。懐の深さも垣間見た。

相撲担当となって、はや半年。現在43部屋ある部屋のうちわずかしか訪れたことはないが、部屋によって雰囲気が違って面白い。稽古に打ち込む力士たちの1つ1つの動きを見逃すまいとペンを走らせたり、目に焼き付けたり。まだ担当となって日が浅い記者にとっても、関取たちの言葉や行動には目からうろこが落ちることが数々ある。【平山連】

ぶつかり稽古で胸を出す大関正代(撮影・平山連)

ネクスト大関は若隆景が約3割と最多 秋巡業で「大関」について100人アンケート

大相撲の秋巡業で日刊スポーツは、「大関」に関することをテーマに来場者約100人にアンケートを行った。

<1>今の大関陣の活躍についての満足度(大変良い、良い、どちらでもない、やや悪い、悪い)とその理由

<2>大関とはどんな存在であるべきか

<3>ネクスト大関候補とその理由の3点について尋ね、<3>では関脇の若隆景(27=荒汐)を挙げる声が回答のうち約3割に上った。

大関候補No.1に選ばれた若隆景

29票を得た若隆景は、同じ関脇の豊昇龍(23=立浪)らを抑えてダントツだった。ファンからは「安定した相撲を取れている」「今後の相撲界を背負って立つ存在になって」などと好意的な評価が相次いだ。埼玉・久喜市内の男性は「千代の富士のような体をしていて相撲がうまい」。埼玉県在住の38歳女性は「勝ち越しを続けているし、何より『華』があります」と絶賛した。

先場所は初日から3連敗を喫するなど出遅れたが、そこから8連勝。12日目に平幕の高安(32=田子ノ浦)に敗れはしたが、11勝4敗で技能賞を獲得。大関取とりへの起点とした。1年を締めくくる九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)で大関取りの足固めを狙いたいところ。

2位は共に12票で2人の名が挙がった。1人は関脇豊昇龍、もう1人は大関経験者で幕下の朝乃山(28=高砂)だ。

秋巡業で稽古に参加する豊昇龍

前者については叔父の元横綱朝青龍を重ね合わせるファンも少なくなく、「スケールが大きい」(茨城県在住30歳男性)。「血筋からいっても、遅かれ早かれいつか綱を張れる」(埼玉県在住55歳女性)といった声も。新関脇として臨んだ先場所も8勝を挙げて勝ち越すなど、「最近の活躍がめざましい」(群馬・前橋市の43歳男性)と目の肥えた相撲ファンもうならせた。

かたや幕下でありながら、大関経験者の朝乃山。ファンの期待は今も変わらないようで、「大関に返り咲くの時間の問題」(群馬・桐生市の68歳男性)といった声が数多くあった。日本相撲協会の新型コロナウイルス対策ガイドライン違反による6場所出場停止処分が明けた名古屋場所で7戦全勝して三段目優勝し、7戦全勝なら十両復帰が確実だった秋場所は六番相撲で負けて6勝1敗。九州場所での十両復帰とはならずも、「この人しかいない。大関、いや横綱になれる人でしょ!!」(千葉市の51歳男性)と期待を寄せる声は依然高い。

ネクスト大関候補としては他に、6票→琴ノ若、4票→大栄翔、霧馬山、阿炎、高安、3票→明生、隆の勝が続いた。【平山連】

秋巡業で稽古に参加する大関正代

秋巡業でファンのサインに応じる大関貴景勝

○…秋場所時点の3大関(貴景勝、正代、御嶽海)の活躍の満足度については、最多が「やや悪い」(25人)で、1票差で「良い」(24人)が続いた。

「やや悪い」とした理由について、「あっけない取組が多いような気がする」(東京都在住66歳女性)「大関陣が定着せず見ごたえがない」といった厳しい意見が並んだ。その一方で「良い」と答えた人の中には「ずばぬけた存在がいないため、観ていてハラハラする」(群馬・太田市の25歳男性)など実力伯仲の状況について好意的に捉える声も。

埼玉・久喜市内の53歳男性は「ふがいないという部分はあるけどれ、誰が勝ってもおかしくないという場所は逆に面白い」という理由で、「大変良い」と回答していた。

○…「大関とはどんな存在であるべきか」という問いには、優勝争いに絡んでほしいという声が目立った。「横綱を目指し、横綱や勢いのある平幕を倒せる本場所の『要』」(埼玉・久喜市の11歳男性)「最低でも10勝を」(さいたま市38歳男性)というように、その地位にふさわしく求められるハードルの高さがうかがえた。

◆大関 江戸時代を通じて最高位で、1890年までは横綱免許を授与された力士も番付上は「大関」と記載された。1909年に横綱が制度化されたが、大関は番付から欠いてならないとされる。現在、東西に大関が1人ずついない場合、横綱が大関の地位を兼ねて「横綱大関」として地位を書かれることがある。

正代のメンタル的強さを垣間見た 負け越した秋場所…取材の場に現れなかった当時の心境を即答

大関昇進披露祝賀会、壇上であいさつする正代(2022年10月23日=代表撮影)

11月13日に福岡国際センターで、一年納めの大相撲九州場所が開催される。熊本出身でご当地場所となる大関正代(30=時津風)は、10月23日に自身の大関昇進披露祝賀会に参加。九州場所に向けて「(九州)出身としていい相撲を見せたい。いい成績で終えられるようにしっかり調整したい」と意気込んだ。

正代とは言えば、よく“ネガティブ”の代名詞がついてまわった。実際にネガティブな発言が多く、温厚な性格がゆえに、報道陣からもネガティブ思考について少しいじられるような形で取材を受けることも多々あった。ただ、20年秋場所で初優勝して大関に昇進して以降は自信をつけたのか、本人の口からネガティブな言葉が出ることは少なくなったように思えた。

コロナ禍になって、本場所中の取材はオンラインで行われるようになった。取組を終えて帰り支度を済ませた力士は、任意でパソコン画面の前に立って報道陣の質問に受け答えしている。その日の取組に負けたらオンライン取材に応じない力士が多い中、正代は勝っても負けてもオンライン取材の場に現れた。ただ、2日目から9連敗して早くも負け越しが決まってしまった秋場所だけは、オンライン取材の場に現れなかった。

秋場所以降、久しぶりの公の場となった自身の大関昇進祝賀会で、秋場所中の対応について話題を振られた。すると正代は「記者さんにあたりそうになったので。メンタル的に整理できてなくて」と即答した。止まらない連敗、九州場所では自身5度目のかど番、周囲からの声、などなど。簡単には受け止めることができない現実に直面した当時の心境を明かした。この心境にうそ偽りはないと思った。本当にそう思ったのだろう。ここまで正直に答える力士も珍しいと思うと同時に、きっぱりと答えた姿に正代のメンタル的強さを垣間見た気がした。

当然、気持ちを強く持つだけで急に強くなれるわけはない。ただ、ポジティブな気持ちは絶対に有利に働くと記者は思う。正代は祝賀会で「優勝争いを先頭で引っ張りたい。今日祝賀会に来た皆さんがパーティーに来て良かったと思えるようにしたい」と意気込んだ。大関に昇進してからの2年間、優勝争いに絡むことができず歯がゆい場所が続いてきた。秋場所での11敗は大関に昇進して以降ワースト。これ以上ない逆境を乗り越えられるかどうか。“ポジティブ”正代なら、きっとやってくれそうだ。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

正代(2022年9月24日撮影)

九州場所で31年ぶり“珍事”も…全場所で異なる優勝力士 横綱、大関が引っ張るV争いが見たい

1年納めの九州場所が11月13日から始まる。力士にとっては、2カ月に1度は本場所が開催されるサイクルなのだから、1年で何かを区切るということはないかもしれない。私たちのように、1年全ての場所に立ち会ってきた報じる側も、同じような感覚だが、時代の流れをくみとる上で「この1年」と区切って振り返るのも悪くはない。何せ九州場所の結果次第では、31年ぶりの珍事が起こるかもしれない“混戦ぶり”なのだから…。

若隆景(22年7月撮影)

関脇御嶽海の3度目の優勝で始まった2022年。場所後に大関昇進を決め、大関初陣も11勝を挙げ「さあ横綱への足固め…」と思いきや、肩のケガもあってその後の低調ぶりは周知の通り。納めの場所が大関復帰挑戦の場所になろうとは誰が想像しただろうか。その春場所は新顔が賜杯を抱いた。新三役の関脇若隆景が高安との優勝決定戦を制し、出身地の福島に光を当てた。休場明けの照ノ富士が横綱の面目を保ったのが夏場所。中盤からの7連勝で、何とか優勝ラインを12勝でキープした。休場明けといえば名古屋場所の逸ノ城も同じ。前場所をコロナで全休したが、フタを開ければ怪力復活を見せつけ若隆景同様、初優勝をもぎ取った。記憶に新しい秋場所は「鉄人」玉鷲が、突き押しのパワーさく裂で2度目の優勝を果たした。

もうお分かりでしょう。今年はここまで、全ての場所で優勝力士が異なっている。仮に納めの九州場所で前述の5人以外が賜杯を抱くことになれば、年6場所制となった1958年(昭33)以降、3度目の“混戦イヤー”となる(別表<1>)。

別表<1>年6場所で全て異なる優勝力士輩出

最初が今から50年前の72年で、当時の在位とのちの昇進を含めれば横綱3人(北の富士、琴桜、輪島)が名を連ね、名脇役といえる3人(栃東、長谷川、高見山)が賜杯を抱いた。

2度目は31年前の91年。30代に足を踏み入れた私も相撲担当を拝命していた時代で、記憶に残っている。この時は2場所連続で佐渡ケ嶽勢(琴富士、琴錦)の平幕優勝こそあったが、現役終盤ではあっても横綱、大関陣が互いの意地をぶつけ合い横綱北勝海(現八角理事長)ら4人(ほか旭富士、霧島、小錦)がメンツを保った。

仮に今回、3度目の珍事となった場合、過去2度と比べると少々、物足りなさを感じる印象だ。横綱、大関陣で照ノ富士しか名を連ねていないこと、近い将来の横綱、大関をうかがえる力士が果たしているのかを考えると…。現状では辛うじて若隆景がその候補の1人で、その若隆景に非は全くないのだが、明るい未来を描くには心もとないのが現状の勢力図だ。豊昇龍、霧馬山、琴ノ若、隆の勝、明生…ら有望力士として名前は挙がるが、壁を突き破るまでには至っていないのが現状だ。

そんな兆候は、ここ数年に見られる傾向だ。今から2年前も同じように、優勝力士の顔ぶれがコロコロ変わった。この年は5月の夏場所が、新型コロナウイルスの感染拡大で開催が中止され「年5場所」となったため前述の珍事は起こらなかったが、5場所全てで優勝力士が変わった。また、横綱白鵬が引退前の約5年間は休場が繰り返されたが、その休場場所では初優勝力士の誕生や平幕優勝が続出した。その頃から角界の現状を言い表す「過渡期」という言葉は、今も続いているように思う。

優勝力士の顔ぶれが多彩なのは、それはそれで優勝争いが盛り上がる上で悪くはない。ファンによって「推し力士」が分かれるのは、多様化の時代にあって健全な姿かもしれない。ただそれも「番付社会」にあっては、強い横綱、大関が壁となって立ちはだかり、その壁を突き破ってこそ価値も上がろうというもの。ここ数年は場所の中盤にして「今場所は優勝ラインが11勝に下がるんじゃないか」と心配することが多い。やはり強い横綱、大関が引っ張る、ハイレベルの優勝争いが見たい。秋場所の優勝を決める千秋楽の玉鷲-高安戦は、本来の番付順では幕内前半戦に組む割を後半に回したと聞く。審判部の苦肉の策がなければ、千秋楽の後半戦が“消化試合”の様相を呈したと思うと寂しい限りだ。

31年ぶりの“珍事”となるか、回避されるのか-。その結果は九州場所で出る。過去、初場所から秋場所までの5場所全てで異なる優勝力士を輩出したが、最後の九州場所で年間複数回優勝力士が出た例は、別表<2>のように3例ある。

別表<2>初~秋場所まで異なる優勝力士

いずれも珍事を回避したのは大鵬、曙、白鵬の横綱勢だ。その伝で言えば、両膝の状況次第というリスクをはらむが、照ノ富士が3場所ぶりの賜杯で横綱の意地を見せるのか。また、2度目の大関挑戦となる若隆景が足固めを2度目の美酒で飾るのか-。もちろん余勢を駆っての玉鷲、驚異の巻き返しで御嶽海、捲土(けんど)重来の逸ノ城も、珍事回避の担い手だ。

一方で、31年前の混戦イヤー再現に手ぐすね引く力士が出現するのも、活性化の上で悪くはない。過去2度の12場所中、4人が名を連ねた佐渡ケ嶽勢の再現となれば琴ノ若など、そろそろ大化けしてもいいだろう。土俵を所狭しと動き回る翔猿などが旋風を巻き起こしても面白い。もちろん、2年前に優勝を果たした貴景勝が、番付上位の意地を見せてくれるのもいい。どちらに転んでも千秋楽の、これより三役で決まるようなハイレベルの優勝争いに期待したい。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

御嶽海(22年7月13日撮影)

逸ノ城(22年7月15日撮影)

照ノ富士(2022年9月13日撮影)

玉鷲(2022年9月23日撮影)

気になる“くにもん”新十両・対馬洋「幕内、三役を目指していきたい」ご当地九州場所から飛躍

9月28日、新十両会見を行う対馬洋と師匠の境川親方

大相撲の館内アナウンス。力士を呼び上げる際、所属部屋とともに「○○出身」が紹介される。同郷を示す「くにもん」という言葉があるように、同じ地元出身の力士に相撲ファンは熱い視線を注ぐ。

ちなみにこの原稿を書いている記者は長崎市の生まれ。報道する公平であるべき立場ではあるが、やはり「くにもん」は気になる。

秋場所では長崎・平戸出身の22歳、平戸海が新入幕を果たした。若者らしい、立ち合いから思い切りのいい相撲で初日から3連勝と場所を盛り上げたが、4日目に千代翔馬の立ち合い変化を食らってから少し歯車が狂った。千秋楽に残念ながら負け越しとなったが、楽しみな将来性は示した。苦い経験を糧に必ず、幕内上位で活躍してくれると思っている。

そして九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)で、同じ境川部屋の対馬洋(29)が新十両昇進を果たした。秋場所は東幕下4枚目で5勝2敗。何度も幕下10枚目内で関取昇進のチャンスを得ながら、つかめなかった関取の座。新十両会見では「まだ実感がわいていない。ふわふわした感じです。自分が今場所できることはすべてやった。結果だけをドキドキしながら待っていました。師匠の口から昇進したと聞き、すごくうれしかったです」と心からの喜びを語った。

しこ名から長崎・対馬の出身かと思ったが、諫早市で両親が対馬の生まれという。さらに大正時代に出羽海部屋で大関として活躍した「対馬洋弥吉」にちなむ。師匠の境川親方(元小結両国)は「最初は(元大関が)おじいさんだかひいじいさんとか思っていたが、調べたら違った」と裏話を明かした。血縁こそないが対馬洋は「(しこ名は)大きいと思いました」と励みにしてきた。

元大関は資料によると190センチ台の長身ながら体重は100キロを少し超えた細身。しかし、つり技を得意にするなど取り口は豪快だったという。現代の対馬洋も身長は185センチだが、体重は130キロ台後半と大きくはない。「精神的にも肉体的にも強い力士になりたい」と先人に学ぶところは多い。

日大で東日本学生相撲選手権優勝などの実績を残した。しかし4年時に左膝に大けが。16年夏場所で初土俵も、左膝のけがのため全休と異例の事態から大相撲人生がスタートした。

初土俵では1場所“兄弟子”だが、年はかなり下の同郷、平戸海は「気になる存在」だ。これからは稽古場で同じ白まわし。切磋琢磨(せっさたくま)してともに番付を上げていきたい。

境川親方は「運動神経がいい。スピード感がある。最後の最後まであきらめない」と素質を評価する。その言葉を受けた対馬洋は「気合を入れて、相撲に向き合っていきたい。これから番付を上げて幕内、三役を目指していきたいです」と意気込みを語った。ご当地九州場所が“出世の階段”への入り口となる。

さてあなたの「くにもん」は? 調べてみると相撲観戦の楽しみの幅が増えること必至です。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

対馬洋(2021年11月26日撮影)

 取組を見るだけじゃ分からない、日刊スポーツの大相撲担当記者が土俵周辺から集めてきた「とっておきネタ」をお届けします。