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リングにかける

RIZIN王者堀口恭司、大みそかは格闘技だけじゃない 釣りと“同時”勝負、魚相手も「本気」

大みそかに釣り番組に登場するRIZINバンタム級王者堀口恭司

総合格闘技RIZINバンタム級王者の堀口恭司(32=アメリカン・トップチーム)が年末に格闘技以外の「戦い」にも挑む。大みそかのRIZIN40大会(さいたまスーパーアリーナ)でUFC時代と同じ1階級下のウエートに挑戦。RIZIN VSベラトールの5対5「全面対抗戦」で、ベラトール代表として扇久保博正(35=パラエストラ松戸)とフライ級ワンマッチで激突する。そして同じ大みそか午後8時からはスカパー!やケーブルテレビで放送される専門チャンネル、釣りビジョンに登場。「釣真剣勝負!~格闘家・堀口恭司にとって釣りとは何か~」に出演し、その腕前を披露する。

ロケは今年9月、米フロリダ州の練習拠点に戻る前に秋の東京湾で収録している。「(番組の)レギュラー化しか狙っていない」と意欲満々で収録に取り組んだ堀口は「釣りも結果がすべてですから、相当、気合を入れていました。ロケした日はめちゃくちゃ海の気合が入って荒波でしたね」と振り返る。今回のターゲットは、体長1メートルにも達する今人気のサワラだったという。

幼少時代、生まれ育った群馬にある釣り堀に親子で足を運び、中学時代にバス釣りを開始したそうだ。作新学院高時代からルアーフィッシングのとりこになったと明かす。「あんなおもちゃみたいなルアーで絶対に釣れないと思っていたのに、魚がえさだと思って食ってくれる。これが格闘技に似ていると思った」。そこに筋金入りの釣り好き格闘家=堀口の原点がある。

格闘技と釣りは共通項ばかりだと言う。対戦相手の動画をチェックするように釣り動画で対策を練る。

「格闘技ならフェイントを入れてパンチ、攻撃を当てる駆け引き、そして釣りは魚に口を使わせる駆け引きがある。もしかしたら釣りしてなかったらベルトを取っていなかったかもしれない(笑い)。物事を考えてやらないと意味ないし、自分は本気で、魚と勝負している」

社会人になる前には趣味を仕事にしたいと真剣に考え、プロ釣り師も有力候補だったそうだ。堀口は「本当に自分は格闘技と釣りがすごく好き。ずっと仕事にしたいと思っていた。格闘家になるか、プロの釣り師になるかを考えたこともあった。食っていけないかなと思って格闘家になった」と当時の心境を口にする。今回の釣り番組は念願の夢がかなったと言える。

ルアーなど釣り道具は日本製を購入し、今回も渡米時には30~40個のルアーを持参した。釣り道具として活用するだけでなく、ルアーを部屋に飾ってインテリアとしても楽しんでいる。「住んでいるフロリダはブラックバスの中心地なので。そこに良いジム(現所属ジム)があると聞いて『よっしゃ』と思った。今は近所のところの丘に歩いていって釣りしている」。調整に影響ない程度に定期的に釣りしている。

大みそかは「体が万全ならやりたかった」というフライ級の試合、そして釣りの腕前をファンに披露することになる。RIZINの試合時間帯次第では、扇久保戦と釣り番組が重なる“同時ファイト”になるかもしれない。年末の堀口は2つの「顔」で“勝負”することになりそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

9月に東京湾で釣りのロケに臨んだRIZINバンタム級王者堀口恭司

USヘビー“飛び級”挑戦・新日本海野翔太 レフェリーの父の前で完敗も「何度でも起き上がる」

2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(中央)にエルボーをさく裂する海野(撮影・菅敏)

今月5日開催の新日本プロレス大阪大会で英国遠征から帰国を果たした海野翔太(25)が、3年ぶりの日本マットで心身の成長を証明した。20日、東京・有明アリーナで行われた新日本と女子プロレス団体スターダムの史上初となる合同興行「ヒストリック・クロスオーバー」のセミファイナルで、ウィル・オスプレイ(29)が保持するIWGP・USヘビー級王座に“飛び級”挑戦。試合には敗れたものの、新しい新日本の幕開けを予感させた。

「止めるな!」。海野は試合中に、この試合を裁いていた実父、レッドシューズ海野レフェリーの足に必死でしがみついた。オスプレイの強烈なエルボーの乱打に、防戦一方になった海野の姿を見かねた父が、試合ストップの動きを見せたその時だった。俺はまだまだやれる。そんな思いを込めて、全身全霊の雄たけびを上げた。

ここまで海外でのオスプレイとのシングル対戦成績は2戦2敗。圧倒的な実力の前に屈してきたが、この日は一味違った。同級王座3度の防衛を果たしてきた世界最高峰のレスラーを相手に、勝ちへの執念を発揮。何度も3カウント寸前のキックアウトを連発し、師匠である元WWE王者モクスリー直伝の必殺技デスライダー(ダブルアーム式DDT)も決めた。最後は23分30秒、オスプレイの渾身(こんしん)のストームブレイカーに沈んだが、進化を実感させる敗北となった。

着々と階段を上ってきた。19年9月のヤングライオン杯で優勝を逃した後に海外武者修行を熱望した海野は、同年11月から英国遠征を開始。レボリューション・プロレスリング(RPW)を中心に活動し、今年6月のオール・エリート・レスリング(AEW)と新日本の合同興行「Fobidden Door(禁断の扉)」にも出場した。身にまとうものも、ヤングライオン時代の黒いパンツから、華やかなコスチュームへと変わった。

凱旋(がいせん)帰国初戦でいきなりタイトルマッチと、団体からも大きな期待を寄せられる。ベルト奪取にはあと1歩届かなかったが、ぎらついた目はそのままだった。「何度でも挑戦してやるよ。諦めねえ。何回転んでも転んだ回数+1起き上がって、お前の前に立ってやるから」と言い切った。「今日が第1歩。必ずまた立ってやる」。新日本の新時代を築いていく。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(上)の足にしがみつく海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(中央)の攻撃を受ける海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(右)の強烈なパイルドライバーを食らう海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(右)の強烈なパイルドライバーを食らう海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(奥)が見つめる前でオスプレイ(左)にキックをさく裂する海野(撮影・菅敏)

ボクシングに光を見いだし荒れた人生やり直し 全日本新人王に王手かけた“元ヤン”ボクサー

11月6日、スーパーフェザー級で勝利した大谷新星

道をそれてもまた戻ればいい。ボクシングの取材を通じてまた、いい出会いがあった。新人王西軍代表戦のスーパーフェザー級を制し、12月17日の全日本決勝(後楽園ホール)に進む大谷新星(21=真正)は、18歳の時に過ちを犯して少年院に入りながら、ボクシングで人生の“やり直し”に成功した1人だ。

小学2年から井岡ジムでボクシングを始めた。ただ、「ボクシングが嫌いだった」と親に言われて、いやいや通うものだった。中学卒業と同時にジムから足は遠のいた。就職して工場勤務も続かない。「自分の意志が弱かったんです。何をやっても長続きしなかった」。もやもやを抱えた心は次第に暗闇へ。強盗、傷害などで少年院に入った。

今なら18歳は成人年齢。選挙権を得て、立派な大人として扱われる。そんな年になり「何をやってるんだ俺は」とわれに返った。母親がそっと差し入れてくれたのが元WBC世界バンタム級王者辰吉丈一郎の自伝。50歳を過ぎた今も「現役ボクサー」として生きる。そんな生きざまを「かっこいいじゃないですか」。もう1度、「ボクサーになろう」と心を決めた。

再出発は真正ジムの門をたたいた。元世界3階級制覇王者の長谷川穂積らを育てた山下正人会長(60)の厳しい指導はうわさに聞いていた。「そういう環境でないと、自分は甘えてしまう。(元暴力団担当の警官だっただけに)気持ちも理解してくれる」。一から鍛え直し、ここまで4戦4勝(3KO)で、全日本新人王に王手をかけた。

かつてはやんちゃを重ねてきたのだろう。しかし、今は研ぎ澄まされた肉体を保持し、取材においても質問に丁寧に言葉を返す。同じくくりにはしたくないが、かつて猛烈にやんちゃしていた矢吹正道は世界王者、弟の力石政法も現・東洋太平洋王者で、今や荒れていたころの面影などかけらも見せない。

気持ちのはき出し方が分からない。それぞれにいろいろな要因があって、荒れた道に踏み外すこともあるだろう。そこからいかに早く気づき、自分で道を修正できるか。出会った3人はいずれも、ボクシングに光を見いだした。

「悪かった」から、人の痛みも分かる。そんな柔らかさを大谷からも感じ取った。

大谷は西軍代表戦で逃したMVPを後楽園ホールにとりにいく。「大振りではなく、倒すパンチを磨いていきたい。今回はいい経験ができた。荒れていた時期も、それがあっての今。全日本でMVPをとります」。新たに出現した“元ヤン”ボクサーの今後も追いかけたい。【実藤健一】

サモアンフック炸裂!48歳マーク・ハントが引退マッチで9戦全勝ウィルアムスに4回TKO勝利

K-1、PRIDE、UFCで活躍し、引退マッチで勝利した「カリブの怪人」マーク・ハント(スタンスポーツ公式インスタグラムより)

K-1、PRIDE、UFCと格闘技トップ団体でファイトしてきた「カリブの怪人」が引退マッチで快勝した。

48歳のマーク・ハント(ニュージーランド)が11月5日、オーストラリア・シドニーのアウェア・スーパーシアターで約2年ぶりにリングに立った。元オールブラックスの元ラガーマンで、9戦全勝のプロボクサーとなるソニー・ビル・ウィリアムズ(37=ニュージーランド)とボクシングルールのヘビー級8回戦で対戦し、4回TKO勝利を挙げた。

劣勢が予想されていたハントが4回、得意のサモアンフック(右オーバーハンドの強打)でウィリアムズの顔面を打ち抜いた。たまらずマウスピースを口から吐き出した相手をロープ際に追い込んでラッシュ。ダウンを奪うと、そのままレフェリーストップ勝ちを収めた。20年12月にもオーストラリアのナショナルラグビーリーグで活躍した元ラガーマンでプロボクサーのポール・ガレンにノンタイトル6回戦で負けて以来のリングで、番狂わせを起こした。

集結した観客からの大歓声を浴びながら、ハントはあらためてプロ生活に終止符を打つことを表明。「試合が終わって『やべえ、またやりたい』と思ったが、私が笑っているのは勝利したからではない。これが最後だからリングに足を踏み入れたんだ」と口にした。ハントにとってボクシングルール4戦目で初勝利が引退マッチとなった。

このウィリアムズ戦はオーストラリアの動画配信サービス「スタンスポーツ」でPPVライブ配信されていた。ハントは手にしたファイトマネーを約5年前から続けるUFCとの法廷闘争の資金に当てるという。16年7月、UFC200大会で元UFCヘビー級王者ブロック・レスナーに判定負けした後、レスナーの禁止薬物の陽性反応が発覚。レスナー戦は無効試合に修正されたが、UFCが薬物違反を隠そうと主張して訴えた。

英デイリーメール紙によると、ハントは「総合格闘技でステロイドを使用していれば誰かを殺す可能性がある。将来的に誰も死なないようにするために訴訟している」と心境を明かしている。K-1、PRIDE、UFCとトップ団体をわたり歩き、18年に総合格闘技から引退。ウィリアムズ戦前には「うまく勝つことができれば、K-1、総合格闘技、ボクシングのルールで勝利し、キャリア最高の状態で終えることができる。グローブを外すまで自分が世界最高のファイターだと常に思っている」と口にしていたという。

01年にK-1 WORLD GPを制覇。総合格闘技ではタイトル獲得経験はなかったものの、世界的に長く愛されたファイターだった。ハントは納得いくプロ生活を終え、法廷闘争という新たな戦いに向かおうとしている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

元オールブラックスのラガーマン兼プロボクサーのソニー・ビル・ウィルアムス(左)と対戦したマーク・ハント(スタンスポーツ公式インスタグラムより)

RIZIN牛久絢太郎「勝率100%」戦でクレベル・コイケに敗れ王座陥落 初敗北糧に今後に期待

22年10月23日、牛久絢太郎対クレベル・コイケ クレベル・コイケに敗れ、観客に頭を下げ引き揚げる牛久絢太郎

「勝率100%」の試合に敗れ去った牛久絢太郎(27=K-Clann)が、再びはい上がる。

10月23日にマリンメッセ福岡で開催された総合格闘技イベントRIZIN39大会。そのメインイベントを飾ったのは、格闘技ファンの誰もが心待ちにしていた一戦だった。RIZIN・DEEPフェザー級王者の牛久が、“鬼神”クレベル・コイケ(ブラジル、32=ボンサイ柔術)と2度目の防衛戦で激突した。

昨年10月、RIZINに初参戦を果たすと、群雄割拠のフェザー級でいきなりタイトル奪取に成功した牛久。片や、20年12月にRIZIN初参戦し5戦全勝、その全てを一本勝ちで飾るという驚異的な成績でタイトルマッチを迎えたクレベル。榊原CEOが「最上級のものが見ていただける」と胸を張ったように、まさに日本最高峰の決戦だった。

その試合で、牛久は勝利を確信していた。所属ジムのK-Clann、出稽古先のパワーオブドリームでは週4、5回の朝練習で走りこみ、体力面で自信を深めた。クレベル戦に向け、今年4月から半年かけて対策を練り上げた。「出来上がっている。(勝率は)100%。すごく自信を持って戦えます」と手応えは十分だった。

だが、試合は思いもよらぬ結末を迎える。「やってはいけないことをやってしまった」。1回に繰り出した左フック。試合後、「あれは出さないように作戦を立ててきたのに…」と唇をかんだ。

パンチのタイミングでできた一瞬の隙。「最強の挑戦者」は、それを見逃してはくれなかった。組み付かれ、相手の得意のグラウンドの攻防に発展。なんとか1回はしのいだものの、体力を消耗。2回に三角絞めを決められる要因を、自らの手で作ってしまった。

もっとも自信のあったはずの体力。そこでも上回られた。翌24日に迎えるはずだった「王座獲得1年記念日」は、幻となった。

それでも、この1年で得たものの大きさを実感した。大会から5日たった28日。自身のユーチューブチャンネルを更新した。「1年前と比べて応援してくれる人が本当に多くなった。恵まれているなと感じました」と、前向きな表情で振り返った。

「まぐれで勝った」「華がない」とバッシングされることもあった初戦から丸1年。牛久は間違いなく、自らの力で道を切り開いてきた。RIZINの王座は失えど、決してその存在感まで失われていないはずだ。今後については「代表と相談している」と話すにとどめた。RIZIN初敗北を糧に、また一回り大きくなった牛久の今後に期待したい。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

22年10月23日、牛久絢太郎対クレベル・コイケ 牛久絢太郎に勝利し、歓喜に沸くクレベル・コイケ

野上奈々会長、夫野上真司とジム立ち上げ後初のタイトルマッチ 夢は日本初の師弟で女子世界王座

初タイトル戦へ意気込む吉川(左)と元世界王者の野上奈々会長(2022年10月12日撮影)

ボクシング元女子世界王者では日本初となるジム会長が、夢へ動きだした。

大阪・堺市のディアマンテジム野上奈々会長(44)は、好川菜々のリングネームでWBO、WBC暫定女子世界フライ級王座を獲得した。15年に元WBOアジアパシフィック・スパーフェザー級王者の野上真司(47)と結婚。4年前にジムを立ち上げ、夫はオーナー兼プロモーター、自身が会長に就任した。

現在、1歳の男の子を育てる母でもある。王者の父母の遺伝子を受け継ぐその未来は? の問いに「世界王者にしないといけないでしょう。宿命です」と会長は即答した。

その前に「愛弟子」を王者にする夢がある。10月12日に、11月27日にソフィア堺で行う興行について会見した。メインはWBO女子アジアパシフィック・ミニマム級王座決定戦で、同ジムの日本同級3位の吉川梨優那(21)が、WBC女子世界アトム級3位のノルジ・グロ(32=フィリピン)と対戦する。ジムがかかわる興行で初のタイトルマッチとなる。

吉川は6戦4勝(1KO)1分け1敗の右ボクサーファイター。小学3年から始めたキックボクシングがスタートだが、野上会長は「彼女が小さい時から見てきた。思い切りのよさは持っている。ジムに初のベルトをもたらしてほしい」。子ども時代から目をかけてきた吉川だけに、思いも期待も深い。

アジア王者の先には当然、世界王者を見据える。師弟で女子世界王座を獲得すれば、もちろん日本初。吉川は「チャンスをもらえれば絶対にチャンピオンになりたい」と意気込む。

野上会長は17年4月にWBOフライ級のベルトを失った。負傷判定の悔しい結果でベルトを奪われた相手が、モンセラート・アラルコン(メキシコ)。現在もWBA世界女子アトム級王座に君臨する。

将来的に“愛弟子”吉川が、師匠の無念を晴らしにいく可能性もある。野上会長は「そうなったらドラマすぎますね。ぜひ実現してもらいたい」とプロモーターの夫に圧をかけた。まさに家族のようなジムが、一丸の力で世界へ乗り出していく。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

井上尚弥の強さ浮き彫り 井上に負けたロドリゲス、モロニーが次期挑戦権獲得も再戦を望まず

ロドリゲス(右)をパンチでのけ反らせる井上(2019年5月18日撮影)

海外リングでプロボクシングWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)の「次期挑戦者」たちが決まった。

15日(日本時間16日)に米ニューヨークで、元IBF世界同級王者で同級6位のエマヌエル・ロドリゲス(30=プエルトリコ)が、同級4位ゲリー・アントニオ・ラッセル(29=米国)とWBA、IBF世界同級挑戦者決定戦に臨み、10回0分2秒、負傷判定勝利を挙げた。8月のラッセル戦は1回の相手バッティングで無効試合となり、今回も相手の頭直撃でカットし負傷判定となったものの、試合内容はロドリゲスが圧倒。9回にはダウン寸前まで追い込んでいた。

ロドリゲスは19年5月、階級最強を決めるトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ準決勝で当時のWBA正規王者井上尚弥(29=大橋)に2回TKO負けを喫して王座陥落。18年5月にはポール・バトラー(33=英国)とのIBF世界同級王座決定戦で判定勝利を収めている。対戦した2人が12月13日、東京・有明アリーナで4団体王座統一戦で拳を交えることが決まった。ラッセル戦前、ロドリゲスは「バトラーが井上と5回も持つとは思えない。井上は私が今まで対戦した中で最高のファイターだ」と褒めちぎった。

WBAスーパー、IBF王座はともに井上が保持しており、ロドリゲスは再戦の権利を得たことになるが「井上はバトラーに勝てば階級を上げると信じているので、世界王座を狙っていきたい」との見通しを明かした。強豪ラッセルに快勝したロドリゲスだったが、井上との再戦を望まず、王座返上を待つ姿勢を貫いた。

さらに16日にはオーストラリア・メルボルンでWBC世界同級挑戦者決定戦も開催された。同級1位ジェーソン・モロニー(31=オーストラリア)が同級2位ナワーポン・ソールンビサイ(31=タイ)と対戦し、3-0の判定勝利でWBC同級挑戦権を獲得した。タフなナワーポンに対し、ボディー攻撃や手数で攻め続けて試合の主導権を握り続けた。

20年10月、米ラスベガスで井上に7回KO負けした後から再起し、再び王座挑戦できるランクまで浮上してきたモロニーは試合後に「井上がどうするか様子を見たい。彼はスーパーバンタム級に上げるようだ。だからWBC王座は空位になるだろう。それが私の夢だ。次はWBC世界王座だ」とロドリゲスと同様、モンスターの王座返上を待つ姿勢を示した。

バンタム級世界王座の次期挑戦者決定戦で、勝者はいずれも井上が撃破した相手だった。いずれも快勝したロドリゲス、モロニーの次期挑戦者2人が再戦を望まず、王座返上を待っていることが、あらためて井上の強さを物語る。バンタム級の世界上位ランカーたちも井上の4団体王座統一を信じて疑っていない。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

細川バレンタイン氏がエンタメ色強める格闘技界に警鐘「競技の価値を下げかねない」

笑顔でポーズを取る細川氏(撮影・勝部晃多)

プロボクシング元日本スーパーライト級王者で、昨年7月に現役を引退した細川バレンタイン氏(41)が、日刊スポーツを通し、エンターテインメント色に傾く現在の格闘技界に警鐘を鳴らした。

先月25日に行われた格闘技イベント「超(スーパー)RIZIN」で行われたボクシングに準じたエキシビションマッチでプロボクシング元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(45=米国)と対戦した総合格闘家の朝倉未来(30=トライフォース赤坂)を、「ぜんぜん相手にならなかった」と辛口評価。現状のままでは、格闘技界の発展はないと一石を投じた。

◇   ◇   ◇

世界50カ国以上に配信された「超(スーパー)RIZIN」では、人気総合格闘家がボクシング界のレジェンドに対し、相手の土俵に立って「挑戦」するという構図が話題を呼んだ。試合では朝倉がメイウェザーの顔面にパンチを当てるなど、善戦。2回終了間際にメイウェザーのカウンターの右ストレートでTKOを喫したものの、朝倉の世間の評価は高まった。

だが、細川氏の意見は異なるものだった。

「たいていの人間は最後のKOで倒れたところだけを見て『やっぱりメイウェザーだ』と思っていると思うんですけど、パンチの当たり方、それまでの持っていき方…。はっきり言ってボクサーやジャッジしている人たちからしてみると、朝倉は相手になっていなかった」と言い切った。

そして「もし3ラウンド戦いきっていたら(世間に)『互角に戦った』と思われていたわけですよ。そうならなくて本当によかった。メイウェザーはよくやってくれた」と、ため息をもらした。

なぜ、こうまで言うのか。細川氏は、運営がボクシングに対するリスペクトを欠いていると主張する。

「ある意味、彼らがやろうとしていることは、『自分の競技でもないボクシングを片手間でやってもこんなにできるんだよ』というのを見せつけることですよね」

確かに、エキシビション戦(非公式試合)であるにもかかわらず、運営側もメディアも「真剣勝負」「世紀の一戦」といったように大々的なプロモーションを行った。細川氏は、そういった行為に対し、「競技の価値を下げかねない」と非難。「あれはただのショー。本来であればそのように伝わらないといけない」と、不快感をあらわにした。

もちろん、細川氏に朝倉やRIZINをおとしめようという魂胆があるわけではない。「RIZINもあんなことができるんだからすごい」「朝倉選手は本当にすごいと思う。当てることのできる日本のボクサーは何人いるの?」と、一定の評価を下した。だが、このままでは格闘技界の発展はないと断言する。

「こういった(否定的な)意見を言うと、必ず『アンチだ』とたたかれてしまう。白か黒か、ゼロか100かでしか物事を見られない人が多い。でも、それはおかしいと思う。格闘技界も、今回のようなプロモーションを続けることで、結果的に競技をしりすぼみにさせていると思います」。

ボクシング、格闘技への愛ゆえ、その訴えには熱がこもっていた。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

◆細川バレンタイン(ほそかわ・ばれんたいん)1981年(昭56)4月16日生まれ。宮崎県宮崎市出身。06年に宮田ジムからプロデビュー。16年に角海老宝石ジムに移籍。17年に4度目となるタイトル挑戦で日本王座を獲得するなど活躍した。昨年7月に引退。現役時代から外資系金融機関で働くなど、“インテリ”ボクサーとして注目を集めており、現在は不動産賃貸事業や宿泊事業、ユーチューブなど、さまざまな分野で幅広く活動。ユーチューブチャンネル「前向き教室」では、歯に衣(きぬ)着せぬ発言で人気を博している。https://www.youtube.com/channel/UCRKutOrnx5S0tTxUR_wNYqA

10年、現役時代の細川バレンタイン氏

今思えば猪木さんらしく思える 03年「猪木祭」“惨敗”後に披露した凡人には理解不能な謎の一句

「神戸ルミナリエ」会場付近でマイクを持ちイノキボンバイエをアピールするアントニオ猪木さん(2003年12月25日撮影)

アントニオ猪木さんが亡くなった。1日に79歳で、心不全だった。

大病を患い、その闘病中の様子も映像などで見せていた。弱々しい姿を隠すことなく、おそらくその後に復活する元気のいい姿を想定していたのだと思う。実際、再び元気になった姿を映像などを通じて見せてくれていた。その直後の訃報に驚きだが、亡くなる間際まで自己プロデュースにたけた人だったのだと、あらためて思う。

猪木さんとは間接的を除けば、かかわりは多くない。直接的には19年前までさかのぼる。03年の年末。当時は格闘技ブームで、テレビ各局による大みそかの「視聴率バトル」の展開となっていた。

TBS系がK-1、フジテレビ系がPRIDE。その先行2大イベントに勝負を仕掛けたのが猪木氏が手がける日本テレビ系の「猪木祭」だった。

舞台は神戸ウイングスタジアム(現ノエビアスタジアム神戸)で、そのPR活動に密着した。先行する2大格闘イベントにより、とにかく選手集めに大苦戦した。約1週間前の会見で猪木氏は「選手が決まんねーんだもん、なかなか。31日までギリギリの勝負だ」と本音をもらした。リング上での勝負よりも、立たせるまでの“大戦争”が舞台裏で繰り広げられていた。

猪木氏の行動力はさすがだった。PRのために神戸市内中を行脚。当時、最も人が集まるイベント「ルミナリエ」の会場にもゲリラ的に登場。「猪木祭に来てくださーい」と声を張り上げた瞬間、警備員が飛んでくるとそそくさ退散した。

カード決定が、遅々として進まない中、猪木氏は語った。「(神戸に)波を起こしに来たんだ」。イベントの成功へ、他人に頼らず自ら突破口を開こうとした。神戸から波を起こせば何かが起きる。「迷わず行けよ 行けば分かるさ」そのものの生きざまだった。

結果的に「猪木祭」は視聴率争いで惨敗した。その結末がうっすら見えていても、猪木氏は全力で盛り上げるために身を注いだ。

神戸の会場での会見後、夕闇をにらみつけながら一句披露した。「暗雲たれこめ…何にしようかな、朝日が見えず、曙暮らしのボブ・サップ…」。凡人には理解不能な謎の句が、今思えば猪木さんらしく思える。あの世でもきっと「道」を貫くのだろう。合掌。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

猪木祭2003(イノキバンバイエ2003) 恒例のカウントダウン「ダー」をリング上で叫ぶアントニオ猪木さん(中央)(2003年12月31日撮影)

11・1京口紘人vs寺地拳四朗 条件、舞台すべてがそろった10年ぶり日本人同士の王座統一戦

WBC・WBA世界ライトフライ級王座統一戦の会見に臨んだ寺地拳四朗(左)と京口紘人(2022年9月14日撮影)

ボクシングWBA世界ライトフライ級スーパー王者の京口紘人(28=ワタナベ)とWBC世界同級王者の寺地拳四朗(30=BMB)が11月1日、さいたまスーパーアリーナで2団体王座統一戦に臨むことが決まった。14日に都内のホテルで発表会見が行われて両者がそろって出席し、静かに火花を散らした。京口は同年齢で親交の深いWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)に以前から寺地との統一戦を勧められていたことを明かした。

井上に寺地戦を直接会った際に報告したという京口は「会った時に話したら『え~(会場に)行こうかな』『頑張ってね』と言ってもらえましたね」と笑みを浮かべた。井上には数年前から「同じ階級で、日本人選手同士なんだから統一戦をやりなよ、とフラットな会話の中で言っていたので。国内で一番盛り上がるカードなのかな」とうなずいた。世界王者同士の会話で、寺地との統一戦という機運を感じてきたことも大きかったようだ。

日本人王者による団体王座統一戦は12年6月のWBC世界ミニマム級王者井岡一翔-WBA世界同級王者八重樫東戦以来、約10年ぶり2度目。10年前は井岡が3度目防衛戦で世界戦4戦目、八重樫は初防衛戦で世界戦3戦目だったが、現在の京口、寺地は経験値が違う。5度目の防衛戦となる京口はIBF世界ミニマム級王者時代を含めて世界戦9戦目となる。一方の寺地は王座陥落前の8度防衛成功を含めて世界戦12度目と世界トップのキャリアが豊富にあり、両者の対決の機が熟したタイミングでもある。

世界ライトフライ級の対抗王者をみてもWBO世界同級王者ジョナサン・ゴンサレス(31=プエルトリコ)は世界戦3試合を経験。同じ11月1日、京口-寺地戦のセミファイナルでWBO世界同級2位岩田翔吉(26=帝拳)との2度目防衛戦が4地合目となる。IBF世界同級王者スベナティ・ノンティンガ(23=南アフリカ)は今年9月4日の王座決定戦で新王者になったばかりで、世界戦経験はこの1試合のみ。世界主要4団体の中でも京口、寺地2人のキャリアが群を抜いている。

同興行の中継も豪華だ。4月の村田諒太-ゲンナジー・ゴロフキン戦、6月の井上尚弥-ノニト・ドネア戦に続き、Amazonプライムビデオでライブ配信されることが発表された。京口は「統一戦に見合った金額、ファイトマネーだった。今までで一番大きな金額でありがたい。(プライムビデオの)第3弾として選んでもらえたこともありがたいですし、期待の表れとも感じている」と歓迎した。

両者の意向、条件、タイミング、舞台すべてがそろったと言える。約7週間後に控える日本人同士の王座統一戦は「世界ライトフライ級祭り」にふさわしいビッグファイトになりそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

全てかっさらったムタが示したヒールレスラーの神髄 O・カーンの人心掌握し突如の裏切り

グレート・ムタ(2022年9月3日撮影)

来春での現役引退を表明している武藤敬司(59)が代理人を務める「悪魔忍者」グレート・ムタが、プロレス界にヒールレスラーの神髄を示した。

今月3日、プロレスリング・ノア大阪大会(エディオンアリーナ大阪)に“降臨”し、1990年に日本初登場を果たした同地でのラストマッチを行った。新日本プロレスのグレート・O・カーン、NOSAWA論外とトリオを結成し、反骨集団「金剛」と6人タッグマッチで対戦。代名詞の毒霧や火炎など「魔界殺法」を惜しみなく披露した。

極め付きは試合後だった。味方で「魔界・帝国同盟」を結んでいたはずのO・カーンを毒霧で急襲。「最強は自分ひとりで十分」とでも言わんばかりの突如の裏切りで、大阪に敵味方なしの魔界ワールドを作り上げた。

しかし、観客を魅了したのは、傍若無人な振る舞いだけではなかった。その行動の裏に、レジェンドヒールたる「クレバーさ」が光った。

実は大会前、NOSAWAとムタの代理人武藤が暗躍し、神奈川の某所で魔界会談が開かれていた。ムタの強い要望で、O・カーンとの同盟が締結。最初は「なぜ余を選んだのか?」「余にメリットはあるのか?」と疑念を抱いていたO・カーンを、この会談ですっかり落としてしまった。ムタの人心掌握術は、鮮やかなものだったのだ。

O・カーンの好物が「甘いもの」ということを事前にリサーチし、魔界からのお土産としてケーキを“献上”。さらに、武藤を使って「O・カーンは最近、人気が急上昇している。集客力がある」とおだてあげ、いい気分にさせてしまった。O・カーンは「それなら納得だ。愉快だ」と快諾。「グレート・ムタのファイナルを食ってもいいんだな?」という問いかけにも、武藤は笑顔であっさりとうなずいていた。

さらに武藤を通し、「O・カーンと組むことで観客を集めて魔界にお金をたくさん持って帰りたい」と発言。引退後の魔界ライフを満喫するための堅実な(?)プランがあることをほのめかし、すっかり安心させてしまったのだった。

ふたを開けてみれば、当日の全てをかっさらったムタ。新日本で猛威を振るう「ユナイテッド・エンパイア」の支配者に一杯食わせた。ヒールレスラーとしての経験、そして格の差を見せつける形となった。

「ファッキン、O・カーン。シーユースーン。メイビーユナイテッドステイツ、アンドヨコハマ。メイビーニュージャパン、トゥー」。試合後にムタはそう言い放った。

まだまだストーリーの続きは見られそうだ。魔界の門が閉じる来年1月22日(ノア横浜大会、神奈川・横浜アリーナ)まで、神出鬼没で予測不能な悪の姿を、この目にしっかりと焼き付けたい。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

退場するグレート・ムタ(2022年9月3日撮影)

ヴァンダレイ・シウバ、総合格闘技「公式引退」もボクシングでの復帰と息子のRIZIN参戦示唆

1番ポーズで歓声に応えるシウバ(2013年3月2日撮影)

総合格闘技RIZINの“前身”と言えるPRIDEの元ミドル級王者で人気スター選手だったヴァンダレイ・シウバ(46)が総合格闘技から「公式に」引退したと8月31日(日本時間9月1日)、米専門メディアMMAファイティングが報じた。同メディアのポルトガル語のポッドキャスト番組でシウバ自身が「公式に総合格闘技から引退した」と表明したという。

気になるのはリングからの引退と言わなかったことだ。同メディアによると、総合格闘技からの引退を口にしたシウバは「再び戦うことになる唯一のチャンスはボクシングになるだろう」と新たな挑戦も示唆。元UFCミドル級王者アンデウソン・シウバ(ブラジル)ら総合格闘技のレジェンドたちが他競技の有名人たちとボクシングルール、あるいはエキシビション形式でファイトしている。その流れをシウバ自らも意識した発言とみられる。

シウバは13年3月、UFC日本大会でブライアン・スタン(米国)にKO勝ちして以降、総合格闘技マッチの勝利はない。ラストマッチは18年9月の米団体ベラトール206大会で組まれたクイントン“ランペイジ”ジャクソン(米国)戦だった。正式な引退表明はなかったが、この後にシウバは「気分のムラ、すぐに怒り出す、忘れっぽい、眠れない」など脳しんとうに似た症状があることを明かしていた。

現在、シウバは母国パラナ州で政治活動を加速させている。8月にはブラジル議会の連邦議会議員に立候補を表明。18年の選挙では落選しているだけにリベンジの決意は強い。さらに息子のトール(19)がアマチュアながら総合格闘技デビューへの準備を進めていることも大きい。9月25日、ブラジル・クリチバにある4500人収容のスタジアムで開催される「ファイト・ミュージック・ショー2大会」でパウロ・ランゲル(ブラジル)と対戦する予定となっている。

シウバは「試合で起きうることは私も分かっている。(息子の試合は)エキサイティングなことだ。すべてを経験してきたし、大変な仕事だと分かっている。有名人の息子で、お金を持っていたとしても、そこで重要なのはハードワークと練習。息子が既にプロのように振る舞っていることを神に感謝している」と愛息による総合格闘技へのまじめな取り組みを評価している。

また、トールの今後についても「今はベラトール、RIZIN、UFCなどの素晴らしいプロモーションが数多くある。アスリートが自分の仕事を披露し、最高の戦いをする機会を与える素晴らしいプロモーションだ。彼のキャリアがどのように進展し、どんな機会があるかを見て、最善の道を選択する」と日本での試合も視野に入れている。シウバが総合格闘技から「公式に引退」するのは寂しいが、将来的なボクシングマッチでのリング復帰、そしてDNAを引き継ぐ息子トールの日本進出の可能性は、日本のファンにとっても楽しみな話題になるはずだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大久保琉唯、平本蓮、三浦孝太らに見る人気ファイターの条件 リング降りてからの振る舞いにあり

前日計量をパスしポーズをとる大久保琉唯(22年6月)

人気ファイターの条件は何か。圧倒的な実績や、ひときわ目立つKO率…? もちろん、それらも重要な要素に違いないが、むしろ、リングを降りてからの振る舞いにこそ、秘訣(ひけつ)があるように思う。

特にツイッターやYouTubeなどのSNSで、個人がいつでもどこでも自身の思いを発信できる現代においては、それが顕著だ。キャラクターやルックスなどが、最も重要な要素の1つと言っても過言ではないだろう。

キックボクシングの「K-1」で活躍する現役高校生ファイター・大久保琉唯(17=K-1ジム・ウルフTEAM ASTER)も、その意味で次代の格闘技人気を担うファイターだ。「K-1甲子園2021-55kg王者」「第11回K-1アマチュア全日本大会チャレンジAクラス-55kg優勝」など、数々のアマチュアタイトルをひっさげて、今年2月にプロデビューを果たした。今年6月19日に行われたキックボクシングの世紀の一戦「THE MATCH2022」のオープニングマッチでは、“神童”那須川天心の弟・龍心に勝利し、一躍注目の的となった。元K-1王者の魔裟斗にも「まだ高校生だけど、3、4年後が楽しみ」と言わしめる実力の持ち主でもある。

だが、何より評判になったのは、その端正なルックスだった。SNSでは「かっこよすぎる」「超イケメン」などと称賛する声が並び、早くもその甘い容姿にKOされたファンが続出。さらに、今月14日からは、ABEMA TVでスタートした人気恋愛リアリティーショー「オオカミ」シリーズの最新作「オオカミちゃんとオオカミくんには騙されない」に出演。競技とは違う顔も見られることで、ファンにとってはさらに身近な存在になる。話題は加速する一方だ。

RIZINの人気ファイター平本蓮も、K-1ファイター時代の17年に同番組に出演し、人気モデルとの交際などで、女子高生を中心に高い人気を獲得した。総合格闘技転向後も、歯に衣(きぬ)着せぬ発言で独自のキャラクターを形成。未勝利にもかかわらずメインイベンターを任されるなど、実績以上にファンからの期待を集めている。

元サッカー日本代表FWカズの次男で総合格闘家の三浦孝太は、昨年12月にデビューしたばかりだが、今月19日にレジェンド、ブアカーオとのエキシビションマッチを実現させた。ファンがSNSにアップした動画が東南アジアで大ヒットし、タイやベトナムなどのファンが爆発的に急増したことが遠縁になったという。

もちろん実力あってこそのプロ格闘家に違いないが、人気はリング上のファイトだけでは語れない。「地位は人を作る」ではないが、中には、人気が実力を押し上げるというケースもあるだろう。彼らの今後に注目したい。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

鈴木博昭(右)にパンチを見舞う平本蓮(22年7月)
会見を終え、キックを披露する三浦孝太(22年8月)

73歳フレアー引退試合で見せた「男の意地」 11年ぶりリングへ猛練習1日500回スクワット

ジ・アンダーテーカー(上左)やブレット・ハート(下左端)、ミック・フォーリー(同2番目)と話すリック・フレアー(フレアーのインスタグラムより)

日米のマットで人気を博した米国人レジェンドレスラー、リック・フレアー(73)はラストマッチで「男の意地」を示していた。7月31日(日本時間8月1日)、米テネシー州ナッシュビルで開催されたプロレスイベント、スターキャスト5大会のメインイベントで「リック・フレアー・ラストマッチ」として引退試合に出場。公式マッチは11年9月以来、約11年ぶり。義理の息子となるアンドラデ・エル・イドロ(32)と組み、WWE殿堂入り者ジェフ・ジャレット(55)、ジェイ・リーサル(37)組と対戦。26分40秒、ジャレットを右ナックルパートと足4の字固めでKOし、3カウントを奪った。

何発も逆水平チョップを放ち、決めぜりふ「Wooo(ウー)!」と叫んだ。試合途中の場外乱闘で額から流血し、顔は血まみれになった。50年近くのキャリアを勝利で締めくくると、フラフラになりながらもリングサイドで試合を見届けた「地獄の墓掘人」ジ・アンダーテイカー、ブレット・ハート、ミック・フォーリーらと抱擁を交わすと涙を流した。

集結したファンから「フレアー、感謝します」コールを受けると、「ナッシュビルのファンを愛している。(ナッシュビル出身のアーティスト)キッド・ロックと一緒にお祝いする」とあいさつ。その後、アンドラデのサポートを受けつつ、自ら花道を歩いてバックステージに戻った。健康状態を懸念するファンの声が上がっていたが、試合後のロッカールームで医師2人に健康チェックを受け、流血以外の問題は特になかったという。フレアーは「空腹でご飯を食べにいきたい。ナッシュビルの夜を楽しみたい」と元気な姿のまま会場を立ち去った。

WWEでは08年のレッスルマニア24大会でショーン・マイケルズ戦が最後のリング。11年9月、米団体インパクト・レスリングでのスティング戦以来のファイトだった。その後、WWEなどでスーツを着用し、娘のシャーロット・フレアーのセコンドに入ったり、他選手と抗争したりとリングに絡んでいたが、試合はしていなかった。

フレアーは「リングに入り気取って『Wooo!』と言うだけの男だと思われているのは分かっていた。私がしなければならないのは自らを満足させ、みんなに『なんてこった』と言わせること」と往年のファイトを見せることを予告。トレーニング中では、1日500回のスクワットやエアロバイクなどのフィジカルから鍛えなおしていた。あまりのハードメニューで急激に心拍数が上がったり、胸の痛みに襲われて肺炎のような症状になったとも振り返っていた。足底筋膜炎も患ったそうだ。しかし「試合延期することは決してない。これを実現するために多くの人々が時間と労力を費やしてきた。今の状態を100%維持したかっただけだ」とプロ意識を貫いた。さらに「お酒を飲まないとうまくいかない」と引退試合まで毎晩、飲酒していた事実も口にしていた。

全日本プロレスでは天龍源一郎、ジャンボ鶴田、長州力、2代目タイガーマスク(三沢光晴)、輪島大士、新日本プロレスでも藤波辰爾、アントニオ猪木と対戦。米WCWでは武藤敬司の化身グレート・ムタと抗争を繰り広げた。米国では16度の世界王座(NWA、WCW、WWEを戴冠した実績を誇る。昭和、平成初期のプロレス界で歴史を築いてきたフレアーが、令和になった現在も大観衆の前で「まだやれる」というファイトをみせた姿は男らしくみえた。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

新日本G1、半数占める海外勢「ぜひ生で見てほしい」社長が明かすユニークな魅力と素顔

大張高己氏(2019年10月21日撮影)

新日本プロレスの真夏の祭典「G1クライマックス32」が、16日に北海道・北海きたえーるで開幕した。団体創設50周年を迎えた今年のG1は、史上最多となる28人が出場。半数の14人が外国人レスラーで、そのうち5人が初参戦となった。新日本の大張高己社長(47)に、外国人G1戦士の素顔を聞いた。

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海外勢が熱い。今春のニュージャパンカップ覇者ザック・セイバーJr(35)やIWGP世界ヘビー級王者ジェイ・ホワイト(29)、USヘビー級王者ウィル・オスプレイ(29)ら、おなじみの外国人選手に加え、米国の新日本で活躍してきたジョナ(33)、デビッド・フィンレー(29)らが海を渡った。

中でも、大張社長が「ぜひ生で見てほしい」とイチオシなのが、オカダ・カズチカらと同じAブロックにエントリーしたトム・ローラー(39)だ。米総合格闘技UFCでも活躍した経験を生かし、初代NJPW STRONG無差別級王者を獲得した経験を持つ。満を持しての初参戦となった。

「MMAから上がってきた選手で、独特のプロレススタイルを持っている。力も十分だし、雰囲気もおもしろい」と大張社長。「なんせ、見た感じが野人。あの骨格の太さは見たことがない。普通のマッチョマンとは違う」。だからこそ、間近で見てほしいと呼びかける。初戦は26日、東京・後楽園ホールで、米AEWで活躍するランス・アーチャー(45)と激突する。

そのアーチャーは、3年ぶりにやってきた身長203センチ、体重120キロの怪物。「そうとう大きい。僕は怖くて話ができていないんです。威圧感がすごくて近づけない」。社長ですらも、本人を目の前にすると萎縮してしまうという迫力の持ち主だ。

2年連続5回目の出場、Bブロックに入ったタマ・トンガ(39)は、決意の夏を迎えている。今年3月に長年在籍してきたヒール集団「バレットクラブ(BC)」から離脱し、本隊と合流した。大張社長は、会場の中ですれ違った際に「今まで散々、悪い事をしてごめんね」と謝られたという。「人間が変わったということを言いたかったんでしょうけど、軽いなと。そんな程度で許されるのかと…」と苦笑。「でも、みんな許してくれているんでしょうね。邪道さんもそうだし、本隊と仲良くやっているんでしょう」と、生まれ変わった姿に期待する。

正義の道に進む者がいれば、悪に身を染めた者もいる。2年ぶり5回目の出場となったジュース・ロビンソン(33)は、今年5月に本隊からBCに寝返った。「普段は本当に陽気な人だった」と大張社長。「BCに入る前はアメリカの大会に行くと、ホテルのロビーで酒盛りを始めて、ピザやワインを買ってきて、抜け出せなくなるくらい一緒にお酒を飲んでいましたね」と懐かしんだ。

「何があったんだろうか…」と、大張社長の頭を悩ませているロビンソン。王座剥奪になったにもかかわらずUSヘビーのベルトを持ち歩き、Dブロック公式戦では元IWGP世界ヘビー級王者鷹木を下すなど、猛威を振るっている。

個性豊かなメンバーが勢ぞろいしたG1クライマックス。8月の東京・日本武道館大会では、史上初めてとなるユニット別応援シートも設置される。まだまだ夏は、始まったばかり。リング上の熱い戦いはもちろん、各選手の裏側にあるストーリーにも注目だ。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

44歳の国内現役最年長ボクサー野中悠樹が3度目防衛戦へ「燃え尽きるまで」現役にこだわる思い

国内現役最年長記録を更新する44歳、WBOアジアパシフィック・ミドル級王者野中悠樹(渥美)の3度目防衛戦が、24日に大阪・堺市産業振興センターで行われる。相手は18歳下の26歳、日本ウエルター級7位の能嶋宏弥(薬師寺)。ベルトを失えば現役も失う野中は「相手は死に物狂いでくると思うが、自分も同じ」。その思いに迫った。

19年2月、国内最年長記録の41歳で東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座を獲得した野中悠樹

試合2週間前にジムを訪れると、野中は大学生3人を相手に10ラウンドのスパーリングをこなしていた。汗だくになり、息も切れる。「さすがに体力的には厳しくなりましたよね。疲れもとれにくくなった」。それでも現役にこだわる理由を「とにかく世界に挑戦だけはしたい。トップレベルの世界を肌で感じたいんです」と熱をこめた。

かつてはサッカー少年だった。兵庫・尼崎市の小田南中で、2学年上に38歳で亡くなった元日本代表MF奥大介さんがいた。一応、FWでプレーしたが、有望だった兄には及ばず、サッカーは断念。手に職をつけようと浪速工高(現・星翔高)に進学、ギターを手にする高校生活だった。

転機は19歳。バイク事故を起こした。「別にやんちゃとかないですよ」と言うが、時速160キロで吹っ飛び、左鎖骨を骨折した。幸い命に別条はなかったが約2週間、自宅で安静療養となった。その間に考えた。「健康のありがたみを痛感した。ダラダラ過ごしていてはダメだと」。健康のためにたどり着いたのがボクシング。「一からやってみよう」と地元の尼崎ジムに入門。プロデビューは21歳と遅咲きだった。

ここまで4ジムを渡り歩き、その間にピンチは何度もあった。14年には左アキレス腱(けん)断裂に、左拳を骨折。それでも気持ちは折れなかった。「やめなあかんでやめたくない。世界戦をしたいという思いだけでした」と振り返る。

ただ、世界のミドル級の壁は分厚い。巨額なファイトマネーも動く。現在、WBO世界同級15位。ランキングを上げるため、今回の試合後は海外の強豪ランカーとの試合を模索する。そのための資金をクラウドファンディングで目標額300万円で募った。

ただ、負ければすべてのプランが崩れ落ちる。「もう少しで世界に手が届く。燃え尽きるまでやりたい」という生きざまを24日の一戦にぶつける。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

日本スーパーウエルター級タイトルマッチ10回戦 判定勝利した野中悠樹(2016年7月20日)

井岡一翔、オンリーワンのプライド 「賛否もあるし好き嫌いもある」井上尚弥とのスタイルの違い

5度目の防衛に成功し、一夜明け会見に臨んだWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔

ボクシングWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(33=志成)は「オンリーワン」としてのプロ意識を口にする。1階級上で3団体を統一しているWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)とのボクシングスタイルの違いについて問われても、そこにブレはなかった。

約18年間負けなし、自らも18年大みそかに敗れている元世界4階級制覇王者ドニー・ニエテス(40=フィリピン)との5度目防衛戦が13日に行われ、3-0の判定勝利でリベンジに成功。試合直後の記者会見で、井上とのスタイルの違いについて問われた。井岡は、こう言った。

「それはスタイルがありますから。僕には僕にしかできないスタイルがある。良くも悪くも自分しかできないボクシングがある。それには賛否もあるし、好き嫌いもある」。

先月7日に1階級上の井上尚弥(29=大橋)が現役王者で世界5階級制覇王者のノニト・ドネア(39=フィリピン)との3団体王座統一戦に臨み、2回TKO勝利を飾っていた。階級の違いはあれど、同じリマッチでもあり、状況は似ていた。同じ日本人世界王者でもあり、比較されるは当然だろう。それをすべて胸に受け止めた上での発言だったと思われる。

1度、井岡は現役引退している。世界王者であり続けること、プロボクサーの苦悩から解放された時期を経て、ボクシングへの捉え方や価値観が間違いなく変わったように見える。前述の発言にもあるように「ナンバーワン」から「オンリーワン」への変化と言える。同階級の最終ターゲットは2団体(WBAスーパー、WBCフランチャイズ)統一王者フアン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)と設定したものの、14日の一夜明け会見では「(王座統一の)タイトルというよりも、世界的に評価が高いエストラーダとやりたい」との言い方だった。

引退期間中だった18年2月、同階級の強豪が集うSuperfly2(米イングルウッド)を視察した際、WBC世界同級タイトル戦に臨むエストラーダの姿を目に焼きつけたことも現役復帰へのきっかけだった。その時に胸に芽生えた「世界的に評価のある選手と試合したい。米国リングで戦いたい」という原点の気持ちにはブレがない。

時に笑顔を交えながら井岡は報道陣に向け「みなさんも一緒に取材しても、違う記事を書くから紙面として違って(読者が)買われるわけじゃないですか。好みがあるじゃないですか。多分、プライドとしてこっちの記事がいいでしょと。それと一緒です。僕にしかできないことをみせて、僕が見せたい景色、一緒に景色をみたいと言っている人に対して、期待に応えたい」と率直な気持ちを口にした。自ら信念を貫くこと。ブレないこと。覚悟を決めて厳しい世界を生き残る術を伝えられたようだった。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

9回、井岡(右)はニエテスを攻める(撮影・足立雅史)
試合後、井岡(手前)を祝福するラウンドガールの、左から波田妃奈、ぽぽちゃん、倭早希(22年7月13日撮影)

無期限休養宣言の武尊、リングを降りると“優しいお兄さん” 魅力と才能あふれる唯一無二の存在

6月27日、会見で心境を話す武尊

6月末、キックボクシングK-1の3階級制覇王者武尊(30)が、保持していたスーパーフェザー級王座を返上し、無期限休養を宣言した。同月19日に行われた「THE MATCH 2022」。RISE世界フェザー級王者那須川天心(23)との58キロ契約体重3分3回(延長1回)で、0-5の判定負けを喫した。1回に左カウンターでダウンを喫するなどし、失意の中で“世紀の一戦”を終えていた。

約10年間、最前線を突き進み続けた代償は、肉体や精神に表れていた。特に精神面ではパニック障害、うつ病と診断されるなど大きな支障をきたしていた。それでも「今日から海外で少しの間療養してきます。久しぶりに何も考えずにゆっくり時間を過ごしてまた元気な姿で帰ってきます!」と、将来のリング復帰を見据え、心身の回復に努める意向を示した。

リング上では「ナチュラル・ボーン・クラッシャー(生まれながらの壊し屋)」と呼ばれても、ひとたび降りると“優しいお兄さん”だ。18年に3階級制覇を達成し、唯一無二のキックボクサーになってからも、若手の時から態度は全く変わらなかった。所属するK-1ジム相模大野KREST渡辺雅和代表からは「困っている人がいたら助けてあげるタイプ」と評される。誰に対しても分け隔てない振る舞いは、記者間でも話題になるほどだった。

特に、子供に対してはひとかたならぬ関心を寄せる。保育士になろうと、高校は保育が学べる学校を選んだほど。格闘技も「子供たちに見てほしい」という思いは強く、「THE MATCH」の地上波での放送がなくなると、同じく子供好きの那須川とともに、都内の子供たち200人を自腹で招待した。

芸能界にも広い交友関係を持ち、信頼関係も厚い。ONE OK ROCKのボーカルTakaは「兄」と慕う存在で、SNSに度々登場。自身も中学時代にバンドを組んでいた経験があり、今でもギターやピアノなどの楽器演奏をたしなむ。歌唱力にも定評があり、過去にはテレビ番組「THEカラオケ★バトル」の「芸能界隠れ歌うま王決定戦」にも出演。アグレッシブな試合からは想像もつかない優しい歌声は、武尊のユーチューブチャンネルでも聞くことができる。

格闘家としての強さだけではなく、人間としてもさまざまな魅力と才能にあふれる武尊。地元鳥取の、穏やかな海岸線が続く弓ケ浜の白砂や、明峰・大山(だいせん)の緑のように、こらからもファンに夢を与える唯一無二の存在であり続ける。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

THE MATCH 2022 判定勝ちした那須川天(右)は雄たけびを上げる。左は武尊(2022年6月19日撮影)
THE MATCH 2022 判定勝ちの那須川(右)は武尊に深々と頭を下げる(2022年6月19日撮影)

亀田興毅氏のボクシング興行改革は「選手ファースト」 前座からド派手演出、すべての選手に光を

7日、ドネア(手前)を破り3団体統一王者となった井上尚弥

ボクシングの興行形態が大きな変革期を迎えているように感じる。

今までの“常識”はいかに大きな箱(=会場)を準備して、どれだけ観客を入れられるか。また、世界戦では地上波によるテレビ中継が当たり前だった。

最近は動画配信が主流になってきた。“モンスター”井上尚弥のドネア戦はAmazonプライムで独占中継。ネットの環境が整っていれば、世界中で視聴することができる。

そんな世の流れに敏感に反応している1人が、元世界3階級制覇王者の亀田興毅氏(35)だ。昨春に大阪市内でジムを立ち上げた時から「選手ファースト」の改革を打ち出していた。

大きな柱は2つ。選手が他に仕事をしなければ生活できない現状を打破するべく、ファイトマネーの明確化と充実。そして、いわゆる興行の前座とされる4回戦の試合まで、すべての選手に光を当てることだ。

興毅氏はアベマTVとタッグを組む形ですでに実行。入場から派手な演出を施し、オープニングの試合から中継した。次回興行は8月14日にエディオンアリーナ大阪の第1競技場というでかい箱で行う。メインに但馬ミツロが最速2戦目でタイトルを狙う日本ヘビー級王座戦、セミは東洋太平洋スーパーフェザー級王者・力石政法の初防衛戦とタイトルマッチは組まれたが、世界戦が行われる舞台で異例の興行となる。

このほどプロモーターライセンスを取得し、会長業からプロモート業に専念する意向で、肩書も「創始者」を意味するファウンダーに変更する。興毅氏は「今の状況のままなら選手がかわいそうやん。だれかが変えていかんと。自分がその口火を切っていきたい」と意気込む。

井上はドネア戦で日本選手最高額のファイトマネー、推定2億円超とされる。しかし海外の選手と比較すれば、決して「高い」とは言えない。

時に命を張り、他競技に比べて選手生命も長いとはいえないのがボクシング。将来を見据え、「やりたい」と思わせる魅力をどれだけ乗せられるか。「先駆者」になろうとしている興毅氏の手腕に注目したい。【実藤健一】

8・14興行の会見を行なった亀田興毅会長(中央右)ら(2022年6月25日撮影)

リハビリ中のぱんちゃん璃奈、来春復帰目指す「1カ月後からシャドーができるようなので楽しみ」

右拳を突き出し、元気な姿をみせる人気キックボクサーのKNOCK OUT女子2階級制覇王者ぱんちゃん璃奈

人気キックボクサーでKNOCK OUT-BLACK女子2階級制覇王者のぱんちゃん璃奈(28=STRUGGLE)は1年後のリング復帰に向けてリハビリを続けている。

4月、練習中に断裂した左ひざ前十字靱帯(じんたい)の手術を受けたぱんちゃんは今月12日、東京・書泉グランデでファースト写真集「虹色ぱんちゃん」の発売記念イベントに参加。ファンとのサイン本お渡し会、特典会前に報道陣に対応し、リハビリ状況なども報告した。

1年後の復帰に向け、はやる気持ちを抑えることはできないのだろう。トレーニングの負荷をあげた影響で左ひざに水がたまり、2週間程度の安静を担当医から指示されたことも明かした。イベントも歩き方も左足をかばっていた。他ファイターがリングで躍動しているところがうらやましいのだという。

ぱんちゃんは「すごくストレスがたまります。格闘技の試合を見るたびに『いいな…』と。1カ月後からシャドー(ボクシング)ができるようなのでそれを楽しみにしています」と自身の気持ちをコントロールしようと心掛けている様子がうかがえた。

アスリートは常にけがと隣り合わせでプレーしている。サッカーなどの取材を通じ、何人もひざ前十字靱帯を断裂する選手を目の当たりにしてきた。アスリートたちが周囲から言われる言葉は共通している。「休むことも練習だ」と。難しいことかもしれないが、立ち止まることもトレーニングという心身のコントロールが大事になる。長く競技生活を続けるためにも重要なのだと思う。

ぱんちゃんは「(リング復帰まで)1年は待てなくて、10カ月とか11カ月弱では復帰したいなと。来年2、3、4月ぐらいにやりたいなと思って、焦ってしまったので…。4月13日に手術したので、1年はかからずに復帰したいです」と意欲を示していた。

再びリングで躍動するため、今は忍耐の時。何も花が咲かぬ日は下へ下へと根を伸ばす-ではないが、来春、パーフェクトな状態でぱんちゃんがカムバックすることも、ファンに向けた恩返しの1つになるのではないか。焦らないで欲しいと切に願うばかりだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

自身の初写真集を披露する人気キックボクサーのKNOCK OUT女子2階級制覇王者ぱんちゃん璃奈