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拳四朗「見てもらいたい」笑ってまうほど裏表のなさ

京都府スポーツ特別奨励賞を受け、山田・京都府知事(左)と記念撮影をする拳四朗(撮影・加藤裕一)

 テレビのバラエティー番組とかで、プロスポーツ選手がニコニコしているのを良く見る。MCやお笑い芸人のツッコミにはにかんでみたり、天然風にボケたり、びっくりするほど上手な返しをしてみたり。そんな様を見て、世間の人は「めっちゃ感じええがな」と思う。ええことです。プロたるもの、自分を発信するのはとても大事なことです。映像は基本、ありのままを伝える。それが持ち味のメディアですから。

 ただですね、テレビに映る姿が、映ってへん時の姿とほぼ同じ人もいれば、映ってへん時は仏頂面で「おいおい、ええ加減にせえよ」とこぼしたくなる人もたま~にいます。まあ、そこはその人の本音、魅力を引き出せない、こちらの力不足でもあるんですが。

 WBC世界ライトフライ級王者・拳四朗(25=BMB)のことを書きましょう。彼はバラエティー番組とかにすごく出たがってます。先日、京都府庁で京都府スポーツ特別奨励賞を受けた時なんか、マツコ・デラックスのフジ系「アウト×デラックス」出演が決まって「めちゃめちゃテンション上がりますわ~」と喜んでました。

 ついでに聞きました。「他にテレビ出演の話はあるの?」

 「こないだ『せやねん!』に出るチャンスあったんですよ。僕が、食べ歩くんが好きってことで、お薦めの店を紹介する形で。ところが、お薦めの店の紹介だけに終わってしまったんです。僕は出れずですわ」

 ちなみに「せやねん!」は大阪・毎日放送の情報番組です。関西ローカルやけど、漫才コンビのトミーズ、吉本新喜劇の未知やすえらが出てる、おもろい番組です。

 さて、何が言いたいかと言うと、拳四朗の笑ってまうほどの裏表のなさです。

 「僕、ボクサーに見られないじゃないですか? だから、いろんな所に出て行って、いろんな人に見てもらいたいんです。(取材する人には)どんどんいじっていただければ、と思う。まあ、ほめられて伸びるタイプなんですけど。ははは…」

 こんな風に言われたら「絶対にこの子を応援したる!」と思いますわな。確かに彼みたいなタイプは、かなりレアです。こんなありがたい取材対象者はちょっとおりません。ただ、彼ほどとは言わんまでもね。取材する側とされる側に垣根はあります。でも、基本は人と人。もうちょっとだけ取材に協力してくれたら…。

 まあ、力のない記者の愚痴なんですけどね。【加藤裕一】

スーパー、正規、暫定…乱立王座 誰が真の最強か

村田諒太(2018年6月13日撮影)


ボクシングの「ミドル級頂上決戦第2弾」のゴングが鳴る前に、残念な知らせが届いた。

WBAスーパー、WBCの2団体統一王者ゲンナジー・ゴロフキン対元2階級制覇王者サウル・アルバレスの1年ぶりの決着戦。そのアンダーカードで組まれたWBA同級3位ゲーリー・オサリバン(アイルランド)対同4位デビッド・レミュー(カナダ)戦が、WBAスーパー王者挑戦者決定戦として認められたという報道だった。この決定は、認定団体としてのWBAの方針に関し、さらに疑問を募らせた。

思い返せば17年2月、WBAのメンドーサ・ジュニア会長は日本で会見を開き、スーパー、正規、暫定と王座が乱立する状況に歯止めをかけるために、一本化していく宣言をしていた。具体的には、スーパー王者は他団体のベルトも保持する統一王者に限定すること、統一王者が設置される階級は正規王者を空けること、暫定王座はけがなど正当な理由で正規王者が試合を行えない場合にのみ設置すること、以上を明言。18年までに統一させていくと説いた。

それから1年7カ月、状況は進んでない。レミュー対オサリバン戦の情報を知ると、一層そう思えた。WBAのミドル級の事情で言えば、統一王者として長く君臨してきたゴロフキンの存在が、正規王者や暫定を作らざるを得ない状況を生んだ。そして、現在の正規王者としてベルトを巻くのは村田諒太(32=帝拳)だ。であるならば、一本化という意味ですべきことは、挑戦者決定戦の承認ではなく、スーパー王者と正規王者による統一戦以外にないはずだった。

結果としてゴロフキンは敗れ、アルバレスが新王者となったが、次戦は挑戦者決定戦に勝利したレミューとのV1戦になるとの報道も出ている。統一という機運に傾く流れはなさそうだ。村田自身も、興行面での難しさからアルバレス戦を行うには、「2、3ステップ踏み出さないと行けない」と険しい道のりであることを認識している。

村田を取材する身として知りたいのは、きっと村田自身もそうだが、どれだけ強いのか、ということだ。正規王者にはなったが、スーパー王者がその上にいる事実からして、最強ではない。ただ、それはむしろ前向きな要素で、自分の力がどれほどなのかを追い求めることができる環境に、いま村田は生きがいを感じているように思う。そうであるならば、最強決定戦を見たい。

王座乱立はWBAだけの問題ではなく、ボクシング界全体を覆う。誰が一番強いのか。その単純な事実が分かりにくい状況は、ファン層の拡大への障害にもなる。「だって、誰がチャンピオンか分からないでしょ!」。昨年、具志堅用高氏は、声を荒らげて言った。4団体も王座認定団体があり、ただでさえ王者が大勢いる。その中で、さらにスーパーやら、暫定やら…。その通り、誰が王者か分からない。王者とは最も強い者であるべき。

アルバレス勝利で置かれてた状況を険しいと表現した村田。最強を追い求めるその道にも、しっかりと道筋が敷かれることを願う。

【阿部健吾】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」

再起戦を完勝、井岡一翔の新ストーリーが始まった

復帰戦判定勝ち後、顔を腫らしながら報道陣の質問に答える井岡一翔(2018年9月8日撮影)


ロサンゼルス郊外で井岡一翔の復帰戦を見て、成田空港に帰国した。税関チェックで、若い検査官のお兄ちゃんに物言いをつけられた。「あの~お客様の荷物なんですが、麻薬犬が興味を示してまして…」

麻薬犬?

「それでですね、別室でチェックさせていただけませんか?」。そりゃあ、嫌とは言えんがな。先輩とおぼしき中年男性の係員も出てきて、3人で別室へ。キャリーバッグを開けて、さあどうぞと見てもらう。パンパンに膨らんだ袋が気になるようで「それ、洗濯物ですよ。洗ってませんから。すみませんね」。当然何も出てこず、無罪放免。私がTシャツに半ズボン姿やったんで怪しまれた気がするけど、麻薬犬て。おったか? そんな犬。

人間、間違ったことをしてなければ、堂々とできるもんです。

9月8日の井岡はどうやったか。昨年大みそかの引退表明で「ボクシングに未練はない」「3階級制覇した時点で(引退を)考えていた」と言いながら、2月に渡米して「SUPERFLY2を見て、米国の空気、雰囲気を感じて」リングに戻ってきた。おいおい話が違うがな、と思った。引退表明から2カ月ちょっとでしょ? 大みそかに語ってた「新しいビジョン」は結局、米国での復帰やったんちゃうの? 整合性の取れんカムバック-。少なくとも、井岡陣営、井岡に近い関係者以外はみんな、ファンも含めてそう感じたはずやし、本人にも気まずさのようなものがあったんちゃうかと思います。

ところが、アローヨ戦は圧巻でした。最初から左をバシバシ打つ。先にジャブ、ボディーを出し、下がることなく、前に出続ける。3ラウンド、きれいなワンツーで奪ったダウンはカウンター気味やったけど、偶然ではなく必然の出来事やったと思います。あんなに激しく、攻撃的な井岡を初めて見ました。

「本当にいっぱいいっぱいでした。余裕がなかった」。スーパーフライ級の試合、米国の試合はともに初めて。その緊張感はあったでしょう。しかし、それ以上に彼を追い込んでいたのは、不可思議な引退表明に終止符を打たんとあかんっちゅうプレッシャーやったんやないでしょうか。

復帰戦の完勝で全部とは言えんまでも、井岡一翔のボクサー人生はほぼリセットされ、新たなストーリーが始まったと思う。決意、意地を拳で語ったととらえましょう。次戦からはきっと、より純粋なボクサー井岡一翔が期待できる。そう思うようにしましょう。【加藤裕一】

プロレス実況15年清野茂樹アナの夢を叶えた生き方

プロレス実況15年目を迎え、プロレス本「コブラツイストに愛をこめて」を上梓した清野茂樹アナウンサー(撮影・桝田朗)


今年でプロレス実況15年を迎えたフリーアナウンサーの清野茂樹さん(45)が、プロレス本を出した。「コブラツイストに愛をこめて」(1600円+税、立東舎)だ。新日本プロレスを中心に実況アナを務め、15年には新日本、WWE、UFCの“世界3大メジャー”の実況を初めて達成。プロレス界では第一人者として活躍している。

清野さんは小学生時代に聞いた古舘伊知郎のプロレス実況のとりこになって、この仕事を志した。ラジカセで録音した古舘の実況を丸暗記し、小学校ではプロレスごっこの実況で腕を磨いた。青学大を卒業後、東京、地方とテレビ局の採用試験は全滅。96年4月にプロレス実況とは縁遠い広島FMに入社した。

しかし、そんな清野さんに転機が訪れる。新日本の広島大会のPRに来ていた蝶野正洋のトークショーの司会を担当。新日本とつながりができ、03年4月の広島大会で場内FMの実況を提案すると、それが通ってしまう。清野さんのプロレス実況のスタートだ。「実は、そのときがプロレスの実況は初めて。でも、全試合を1人でしゃべり続けた」と清野さん。

これを機に、新日本の実況に声がかかるようになり、会社を辞めて06年に上京。フリーアナウンサーとして活動するようになった。プロレス以外にも、K-1やDREAM、最近では大相撲、米国プロバスケットボールのNBA、東京五輪の新種目となった空手の実況も務める。

自身7冊目という本には、実況アナの仕事や、プロレスラーのエピソード。目標とする古舘伊知郎さんの実況への思いなどがつづられている。新日本のどん底時代を支えてきた棚橋と、駆け出し時代に励まし合った話。オカダ・カズチカの新日本デビュー戦となった内藤哲也戦の話など、実況アナならではの秘蔵エピソード満載だ。

本のデザインとなっている覆面レスラーに清野さんがコブラツイストを掛ける人形は、獣神サンダーライガー自作の粘土細工だ。楽しいプロレスラーの話、実況アナウンサーという職業の紹介も楽しいが、「プロレス実況アナウンサーになる」という思いを実現させた清野さんの生き方が、とてもステキだと感じさせる本だ。【桝田朗】

失格、棄権続いた計量問題 重い腰上げルール改正

再計量で1.3キロオーバーとなるネリ(2018年2月28日撮影)


スポーツ界が揺れている。プロボクシングでは一連の計量騒動があった。3月の山中とネリの直接再戦は世間でも大きく問題視された。国内が怒りで沸騰したが、約1カ月後には落胆が渦巻いた。比嘉が世界戦で日本人で初めて王座剥奪。前戦で日本タイ15連続KOで故郷に錦も、試合はタオル投入でのTKO負けで日本新記録もフイになった。

日本タイトル戦なども失格や棄権が続き、業界も重い腰を上げた。日本ボクシングコミッション(JBC)の現行ルールは「契約書に規定した違約金の支払い、その他の制裁を科す」というもの。通常は厳重注意、階級変更勧告程度にとどまっていた。ネリ、比嘉の場合は倫理委員会で日本で活動停止、ライセンス無期限停止処分などを下した。新ルールが以下のように決まり、9月1日から適用される。

◆試合出場の可否

(1)体重超過が契約体重の3%以上の場合 JBCルールに基づく2時間の猶予は与えない。よって計量失格となり試合出場は不可(試合は中止)

(2)3%未満の場合 ルールに基づき2時間の猶予が与えられる

2時間の猶予後も体重超過の場合

<1>計量失格とし、試合出場は不可(試合中止)

<2>試合中止をしない場合は、試合当日に再計量を義務付ける。再計量時の体重が契約体重を8%以上超過した場合、試合出場は不可(試合中止)

◆ペナルティー及び処分

(1)上記の(1)及び(2)の<1>に基づき試合中止する場合 ファイトマネー相当額を制裁金として、1年間ライセンス停止、次戦以降は1階級以上の階級への転向を義務付け、体重超過ボクサーのマネジャーを戒告

(2)上記の(2)の<2>に基づき試合中止をしない場合

ファイトマネーの20%を制裁金として、6カ月ライセンス停止、マネジャーを厳重注意

3%の線引きは経験とデータから「落ちないし、落とさせるのも危ない」と決められた。バンタム級の3%は1・6キロのため、2・3キロオーバーのネリは今後即試合中止となる。減量は大半が本人任せも再犯も多く、ジムの管理体制の甘さを指摘する声も強い。最近は計量に現れずに棄権のケースが増えた。

アマの日本ボクシング連盟では山根会長体制が大問題となった。他競技も不祥事などが相次ぎ、ガバナンスやコンプライアンスが問題になった。日本は独自のジム制度が基盤だが、時代遅れした部分もある。減量以外でもファイトマネー、移籍などの課題があり、JBCと日本プロボクシング協会が協議している。

1年前は男子の日本の世界王者が12人いたが、ここにきて5人に減った。ボクサー人口も減っている。今回のルール改正は世界でも画期的なものと言える。旧態依然とした体制、体質の改善への積極的取り組みも望まれる。

【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

前日計量で900グラムオーバーとなった比嘉はその後の再計量を断念(2018年4月14日撮影)

新日本&ROH共催とWWE祭典、大会日接近に注目

ハングマン・ペイジ(左)にドロップキックを決めるオカダ・カズチカ(2018年7月19日撮影)


 新日本プロレスが7月13日、来年4月6日(現地時間)に米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG=約2万人収容)大会を米団体ROHと共催すると発表した。MSGは、プロレス界ではWWEがほぼ独占的に大会を開催してきた格闘技の殿堂。何より日にちと会場を知って頭によぎったのはWWE最大の祭典レッスルマニアに「近すぎないか」ということだった。

 19年のレッスルマニア35大会は4月7日(現地時間)に米ニュージャージー州のメットライフ・スタジアム(約8万人収容)で開催することが発表済み。NFLで親しまれる同スタジアムはニューヨークのマンハッタンから電車で30分程度で到着するほど近い。レッスルマニア週には同じ開催地域で裏レッスルマニアと呼ばれるイベント「レッスルコン」が開かれ、世界中からファンやマスコミが集結するのが恒例だ。今年も同34大会が開催されたニュージャージー州でROHや英団体RPWなどがレッスルコン枠で大会を行った。

 特にROHはレッスルマニア前日に「スーパーカード・オブ・オナー」というPPV大会を開いた。新日本との共催となった来年の大会名は「G1スーパーカード」に変更し、ライオンマーク色が強く打ち出された。米メディアによると共催大会の発表前にWWE側から一時、横やりが入ったとの情報もあった。

 一方のWWEはレッスルマニアの2日前にWWE殿堂入り式典、前日に傘下となるNXTの大会を開催し、ビッグイベントの機運を盛り上げる。ちなみに来年のNXTの前日大会は米ブルックリンのバークレイズセンターで行われる。MSGとはブルッリン橋のかかるイーストリバーを挟んで近い。新日本とROH共催大会はモロかぶりと言える。

 新日本の海外戦略はパワーアップを続けている。海外への動画配信とともに選手たち自身も積極的に海外進出する。最近でも、今月17日にはオカダ・カズチカがメキシコシティーでアレナメヒコ金曜定期大会に出場。同じ日には石井智宏も英団体RPWのロンドン大会に参戦してウォルターを下し、RPW英国ヘビー級王座の挑戦権を得ている。

 欧米を中心に認知度アップし、ファンを増やすことには地道な努力と時間が必要だ。難しい作業だが、数年かけ、新日本は着実に土台作りしている印象が強い。18年は米国内で計4大会を開催。そして9月1日には新日本のユニット「バレットクラブ」に所属するCodyとヤングバックス(マット&ニックのジャクソン兄弟)が主催する1万人興行「オールイン」大会(米シカゴ)にもオカダら新日本勢が多く参戦する。来年の新日本&ROHとWWEの大会接近は、来春の大きなインパクトになるだろう。19年4月6、7日。海外ファンの動向が楽しみでならない。【藤中栄二】

棚橋弘至、苦境語らずとも想起させる絶妙な言語感覚


G1を制し祝福のテープを浴びる棚橋(2018年8月12日撮影)

 「今まで、苦しんだ分……」。

 棚橋弘至、G1クライマックス28を3年ぶり3度目の制覇で飾った直後。バックステージでの2問目だった。「今のお気持ちは?」。定番の質問に、ゆっくりと息を整え、気持ちを吐き出し続ける…、かに思えたが、すぐに訂正した。

 「苦しんでない! 苦しんでない!」。

 そう、それが棚橋弘至。「楽しんで、喜んでやってきたけど、結果が出なかった分、今日はいつもより、倍うれしいです」。思わず出た本音に照れ笑いなのか、勝利の喜びなのか、止めどなく噴き出る汗をぬぐう顔には笑顔が広がっていた。

 「疲れない、落ち込まない、あきらめない。それが逸材三原則ですから」。100年に1人の逸材は、この2年あまり、IWGPヘビー級のベルト戦線から離れ、故障の連鎖に苦しむ中でも、そのスタンスを崩さなかった。苦労話を探る報道陣との“攻防戦”は度々だっただろう。記者もその1人だ。スポーツに付き物の逆境をはねのける物語を求め、数々の質問を浴びてきたはずだ。ただ、逸材はぶれなかった。G1優勝後のバックステージでもそうだった。「苦しんでないと言われましたが、気持ち的には追い込まれたりは?」の問いかけにも、「はい……、ないです! ないです!」と切り返した。

 苦境に雄弁である必要はない。この日のバックステージの棚橋を見て思った。苦しかったかと聞かれ、思わず透けてしまう本音、それを必至に打ち消すまでの間。その絶妙な言語感覚で十分だ。苦境はあった。ただ「逸材三原則」はぶれない。だから、少し、ほんのわずかのぞいたその本音をきっかけに、想像力を働かせれば十分。そしてその想像を喚起させるところが、棚橋の類いまれな魅力ではないか。

 優勝で来年1月4日の東京ドーム大会メイン、IWGPヘビー級選手権の挑戦権利証を手にした。18年の下半期は、その言語感覚を発揮してくれる場が多々あるだろう。耳を傾けたい。【阿部健吾】

G1を制し優勝旗を手にポーズを決める棚橋(2018年8月12日撮影)

武骨さ貫く石井智宏、42歳王者の勇姿がぜひ見たい


 佳境を迎えた新日本のG1クライマックス。シングルのリーグ戦はやはり楽しくて、通常のタイトルマッチにない番狂わせがしばしば起こる。8月4日の大阪大会でもあった。輝いたのは石井智宏だ。

新日本プロレスG1クライマックス出場者記者会見 入場時、ポーズをする石井智宏=2018年7月13日

 日本人男性の平均身長とほぼ同じ170センチで、体重100キロ。短めの手足で、スタイルはお世辞にも「いい」とは言えない。その体の上に丸刈り頭、無精(?)ひげのごつめの顔がのっている。見た目は明らかにオカダ・カズチカ、棚橋弘至、内藤哲也ら華やかな一群とは違う。典型的なバイプレーヤータイプだ。

オメガ(左)にラリアートを決める石井(撮影・垰建太)(2018年8月4日)

 しかし、強い。その日はBブロック公式戦で、相手はIWGPヘビー級王者ケニー・オメガ。王者の躍動感あふれる、多種多様な技を、体全体で受け止め、跳ね返した。要所で見せる頭突き(あえてヘッドバットとは言わんでおきましょう)や、パワー系の技で試合にアクセントを加え、垂直落下式ブレーンバスターでとどめを刺した。

右が石井智宏、左は長州力、中央はニコラス・ペタス(2005年9月7日)

 天龍源一郎、長州力の薫陶を受けてきたことが手に取るようにわかる、ゴツゴツしたファイトスタイル。見ていて、とても痛い。かつて山崎一夫や藤田和之が絶賛したのが、よくわかる。鈴木みのるとは少し違うけど「説得力」という点では、多士済々の新日本でも出色だと思う。

 ファンが彼の力を百も承知なことは、オメガ戦での歓声、拍手で手に取るようにわかった。「番狂わせ」と言うには失礼で、IWGPヘビー級王者の全勝街道に立ちふさがったレスラーが「石井でよかった」という空気感が、場内には確かにあった。

 「あいつ、今が一番楽しいだろうな。すべて思い通りで。でもな、世の中そんなに甘くねえんだよ。山あり谷ありで、必ず障害があるんだよ。おめえ(オメガ)にとっては、それが俺だ。今だけじゃねえぞ。これからもだ」。オメガ戦後、それだけを言い残して、インタビューエリアを後にした。俺にもっと仕事をさせろ、と言わんばかりに。

 42歳。今のパフォーマンスをどれだけ維持できるのか。だから、早いとこもうひと花咲かせてほしい。近いうちに、IWGPへの挑戦はないかな。10年10月から11年2月まで、第55代王者として君臨した小島聡以来となる40代王者の勇姿がぜひ見たい。【加藤裕一】

陰で新日支えたマサ斎藤さん、みんなに愛されていた

リングの形をしているマサ斎藤さんの祭壇


 巌流島の戦いで有名な元プロレスラーのマサ斎藤さん(享年75)が亡くなった。米国で活躍し、新日本プロレスでは、巌流島でアントニオ猪木と名勝負を演じ、引退後は渉外担当として、ドーム興行などビッグマッチを陰で支えた。東京・青山の梅窓院で営まれた葬儀は、故人の人柄もあり多くの参列者も集まったすばらしい式だった。

 ドン荒川さんが昨年亡くなったときに取材した、新日本の元執行役員、上井文彦氏の言葉を思い出した。「プロレスラーは静かに死んじゃいけないんです」。白い花でリングをあしらった祭壇に、倫子夫人が選んだ遺影。それを囲むように、赤い花は、巌流島のかがり火を再現したとか。闘志あふれる遺影に、斎藤さんの代名詞「GO FOR BROKE(当たってくだけろ)」の文字版。その祭壇の中で、斎藤さんが今も戦っているような雰囲気があった。

 会場となった梅窓院は、倫子夫人が選んだ。青山通りを1本入ったところにある、静かで品のある寺院。斎藤さんが生前「青山通りは昔、戦車が走ったことがるんだ」と話したことを覚えていた倫子さんが、通りからたまたま見かけた梅窓院を選んだと話してくれた。もともと親族だけでという通夜、告別式だったが、訃報を聞き付け、かつての仲間や世話になった人たちが数多く足を運んだ。

 かつてリング上で、長州力の顔面を蹴って、新日本を解雇された前田日明氏と、長州の2人が、そろって出棺の際に棺を抱えていた。前田氏は「試合のあとマサさんにちょっとあやまったら、『あやまることないよ。元気があるのはいいことだよ』と言われた」と思い出を語った。長州は「この年までやってきて、あそこまでにはなれないね」と故人の偉大さをたたえた。

 米国時代のマサさんの思い出を弔辞で切々と語ったザ・グレート・カブキの米良さん。マサさんにビジネスのイロハを教わったという蝶野正洋。明大時代にレスリング部と柔道部で切磋琢磨(せっさたくま)したという新日本の坂口征二相談役は「同じ体育会で仲が良くて、おとこ気のあるやつだった。オレが社長で、マサが渉外部長で一緒に頑張ったんだよ」と寂しそうに話していた。

 マサさんはみんなに愛されていた。パーキンソン病で早すぎた死であったが、参列した人々の言葉と、倫子夫人の姿を見て、マサ斎藤さんの人生はとてもすばらしいものだったと教えられた。【バトル担当=桝田朗】

昨年新人王の森武蔵ストイックな昔ながらのボクサー

スーパーフェザー級新人王に輝いた森武蔵。右は薬師寺保栄会長(2017年12月23日撮影)


 昨年1度取材しただけだが、ちょっと気になる若手ボクサーがいる。スーパーフェザー級で全日本新人王となり、敢闘賞も獲得した薬師寺ジムの森武蔵。まだ18歳。15日にジムの地元愛知の刈谷市で、プロ7戦目に臨んだ。

 相手のバレスピンはフィリピン同級王者で、東洋太平洋でも6位につける難敵だった。接戦となったが2-0の判定勝ち。森を勝者としたジャッジはいずれも1ポイント差と際どい白星も、これで7戦全勝(5KO)となった。

 取材したのは新人王の時だが、計量にただ一人スーツ姿で現れた。プロ3戦目の新人王西軍代表決定戦からスーツで計量がお決まり。「海外のスターはビシッと決めている。身だしなみはきちんとしたい」と話す。元世界王者の薬師寺会長にも「スーツで着てください」とお願いしたほどだ。

 小さいころからは空手をやっていた。キックボクシングも考えていたが、小3で「世界王者になる」と決意し、地元熊本・菊池にあるボクシングジムに通い始めた。決意のほどは食事に表れていた。おやつは甘い菓子ではなく、いりこや骨せんべい。中学までは鶏肉しか食べなかったという。

 その成果は11、14年のU15全国大会で優勝で示した。15年3月の中学卒業翌日には単身で名古屋に向かい、知人に紹介された薬師寺ジムに入門した。いくつか見学した中で「世界王者になるにはここだと思った」という。

 中2の時に危機があった。ロードワーク中に交通事故に遭ってヒザを痛めた。選手生命にも影響しかねない重傷だったが、森らしい自慢の逸話がある。事故は後ろからひき逃げされたものだった。森は痛みにも車のナンバーを見逃さず、逮捕につながったという。動体視力に根性もある?

 最近は高校や大学でアマの実績を作り、プロ入りするボクサーが多くなってきた。森もアマ経験者ではあるが、中卒で一獲千金を狙う昔のボクサーに通じるたたき上げと言える。

 プロ入り後に牛肉を食べて「こんなうまいものがある」と思ったそうだ。一方で不摂生を理由にラーメンを食べるのはやめた。まだ10代でこんな禁欲生活で、ストイックなボクサーはあまり聞かない。将来は「地元熊本で世界戦」という夢を持っている。【河合香】

松葉づえ姿で「できることをやる」中邑のプロの流儀


 胸にスッと入ってくるコメントだった。「今、自分ができることをやるしかないってことですね」。6月29、30日のWWE日本公演で一時帰国した中邑真輔のメリハリの効いた言葉は心地よく感じた。

WWE日本公演であいさつする中邑真輔(C)2018 WWE,Inc.All Rights Reserved

 日本公演の直前となる6月25日のスマックダウン大会の前、警察犬にかまれて左足を負傷した。全治は2週間。「自分としては2年ぶりの東京。パフォーマンス、トレーニングと最善と尽くしてきた。まったく本当に想定していないことが起こった」と振り返り「もう悪夢としか思いようがないですよね。いろんな人に『何、笑い話を作ってるんだ』って言われましたよ。(自分は)シャレにならねえよと」。一瞬、くすぶる怒りを抑えているようにも見えたが、最終的には現状を受け入れ、消化している姿勢に中邑のプロフェッショナルを感じた。

 日本に同行していたWWEのトレーナー、ドクター、プロデューサーと協議し「その中で自分ができること」と、両日ともに松葉づえ姿でリングに上がった。第1日は自らの口で「悔しいワン」とジョーク交じりに欠場報告。サモア・ジョーの襲撃も受け、コキーナクラッチで絞められた。第2日にはサモア・ジョー、ダニエル・ブライアンを挑戦者に迎えたWWEヘビー級王者AJスタイルズのトリプルスレット形式の王座戦に乱入。前日に襲われたサモア・ジョーに対し、お返しの急所攻撃を見舞った。メインイベント後にはマイクを握り、WWEヘビー級王者なって帰国することを約束して大会を締めくくった。

WWE日本公演でのあいさつで笑顔もみせた中邑真輔 (C)2018 WWE,Inc.All Rights Reserved

 試合はしなくても、2日ともに中邑の試合を楽しみにしていた観客たちを喜ばせた。「少し無理した部分もありますけど」と苦笑しつつ「リングに立って足が痛いです。かわいそうでしょっていうのは中邑真輔ではない。いかに制約された中で、中邑真輔を落とし込めるかっていうのが、日々、日ごろやってきたことですから。それをみせるってこと」。言行一致した2日間をみせたと言っていい。

 好きなことばかりを仕事にできるわけではない。好きなことだけやってお金をもらえる時代でもない。取り巻く環境や世界、そして関係する人間に責任を転嫁し、不平不満を態度に示す人が意外に多いこの世の中。与えられた環境に不満を募らせ、あからさまに態度や行動で表す人も少なくない。最終的にすべてを受け入れ、現時点の最大限、フルパワーで目の前の仕事に取り組むことは容易ではないからなのだろう。「今、自分ができることをやるしかないってことですね」。簡単に聞こえるが、実に難しい行動なのだと思える。

15日のPPV大会でUS王座を獲得した中邑真輔(C)2018 WWE,Inc.All Rights Reserved

 松葉づえ姿でもスーパースターとしての仕事をまっとうした中邑のプロの流儀。負傷の癒えた2週間後の7月15日のPPV大会エクストリーム・ルールズ(米ピッツバーグ)で、中邑は日本人3人目のUS王座(02年以降、WWEとなってからは日本人初)を獲得した。老若男女関係なく、彼の言葉に見習うことが多い。【藤中栄二】

笑いと驚き大好き新日メイ社長はタグチジャパン系?

大阪城ホール大会の試合前にリング上で握手を交わす新日本プロレスのハロルド・メイ社長(左)と菅林直樹会長(2018年6月9日撮影)


 つかみはばっちりだったのではないか。新日本プロレスの新社長に就任したハロルド・メイ氏だ。

 6月9日の大阪城ホール、第1試合前に流された3分超の“大作”あおりVTR。作り込まれたそれは、メイ社長自らが出演し、シャワーシーンのサービスショット? まで盛り込まれた、紹介映像だった。外資系企業で数々の実績を重ねた「プロ経営者」が、なぜ新日本プロレスを新天地に選んだのか。

 東京の木谷オーナーから携帯電話に連絡が入り、それをニューヨークで受ける設定。木谷オーナーは打診の理由を述べる。

 「新日本プロレスはこれから何が大事かというと、もっと世間に対してメジャーにする、いわゆるマーケティングやブランディングの強化。そんな時に誰が適任なのかと思ったら、もうこの人しかいないんじゃないかなと。すごい経営者だと思いますよ」。

 その言葉を背景に、映像では飛行機が日本に降り立ち、サングラス姿の名社長が来日した姿が描かれる。日本に住んでいた8歳の時にテレビでプロレスを見て魅了され、10年前に再び新日本にのめり込んでいったことなどが語られる。英語のせりふとともに、なんとも「出来る男」ぶりが描かれるのだが、ここからの転調に目を見張った。

 大阪城ホールに向かう車内に映像は移るのだが、ここで登場するのは、なんとたこ焼きだ。大阪の名物であるが、なんともコテコテ感が満載。それまでのすご腕のイメージとはギャップが大きいような感覚。箸を使って、舟皿からなんともおいしそうにほお張るが、どこかおかしみがある…。

 その後、なぜ「たこ焼き」だったのかが、少し分かった気がした。メイ社長、実は人一倍サービス精神旺盛で、人を笑わせ、驚かせることが大好き。大阪城ホールから数日後にインタビューした際に、「自分が分類されるならタグチジャパン」と定義していた。タグチジャパンと言えば、田口隆祐が監督を務める、どこか間の抜けたような楽しさを提供するユニット。戦いの中にも笑いを忘れない、そんなメンバーに自身を位置付けていた。確かに前職のタカラトミー社長時代には、率先してハロウィーンの仮装に凝ったり…。

 「お披露目は1回しかないから」と気合が入っていた大阪城ホールでの登場にも、そんな精神に満ちていたのだろう。あえてシャワーシーンで格好良く決めてからの、たこ焼きシーンの落差は確実に「狙い」にきていたと思う。そして、その人柄こそが、このオランダ人新社長の魅力の1つだ。

 6カ国語を操り、流ちょうに日本語を話す姿は、「外資系」というどこか冷たさのある響きとは無縁。インタビュー中も、陽気に明るく、楽しい話を聞かせてもらった。これからどんな「サプライズ」を提供してくれるだろうか。【阿部健吾】

ベイダー追悼…規格外だった懐かしの外国人レスラー


甲冑をまとって入場するビッグ・バン・ベイダー

 あのビッグバン・ベイダーが他界した。87年12月、新日本プロレスの両国大会に「たけしプロレス軍団」(TPG…タマゴかけご飯=TKGみたい)の刺客という触れ込みで、猪木をあっさりフォールした。当時学生の私はテレビで見て憤ったもんな…TPGも、「皇帝戦士」いうキャッチもようわからんかった。何より唐突過ぎて「何じゃこれ?」てな感じで。場内のファンは「なめとんのか?」と騒いで暴動になった。プロレスの“うさんくささ”は毒にも薬にもなるけど、まあ猛毒でしたなあ…。

スタン・ハンセン(左)にドロップキックを放つビッグ・バン・ベイダー

 ただ力はすごかった。パワー殺法はもちろん、190センチ、170キロで宙を舞う軽やかさまであったりしましたからね。

 当時はスーパーヘビー級レスラーが山ほどおった。新日本では、ベイダーの約1年前に初来日したスティーブ・ウイリアムス。岡八郎さんもビックリの奥目でいかつい顔は、キャッチの「殺人医師」にぴったり。強烈でえげつない投げ。「岩」みたいな体つき。プロレスが上手な印象はなかったけど、逆にそれがすごみを感じさせて“最強説”を唱える向きも多かったと思います。

 クラッシャー・バンバン・ビガロもすごかった。初来日が87年1月。つるつる頭に彫り物をして191センチ、170キロの体でムーンサルト・プレスを決めたりしてた。体形はマッチョやなく、明らかなデブやのに。当時実況の古舘アナがつけたキャッチは確か「空飛ぶ入れ墨獣」。うまいよな。

 90年に初来日したトニー・ホームもいかつかった。元はフィンランドのヘビー級ボクサー。橋本真也をパンチで圧倒してた。「腕っ節が強い」という言葉が彼ほど似合うレスラーはおらんのやないでしょうか。

 全日本に来てた外国人では、テリー・ゴディもすごかった。キャッチは「人間魚雷」。パワーボムの元祖って言われてるけど、引っこ抜くようなバックドロップもえげつなかった。195センチ、135キロの体つきはビルドアップしたというよりバランス良く鍛えた感じで、ナチュラルな強さが印象的でした。

左からスティーブ・ウィリアムス、クラッシャー・バンバン・ビガロ、テリー・ゴディ

 …てな感じが、53歳のオヤジによる30年ほど前の“独断的スーパーヘビー級列伝”です。ベイダーの死で思い出すまま書きました。大変驚くことに彼らは全員、すでに他界しております。中にはステロイド服用の影響があった人もおるんでしょうが、実に悲しい。規格外のパワーに圧倒され、もん絶する日本人レスラーとの攻防。…見てて力入ったもんなあ。

左からケニー・オメガ、クリス・ジェリコ、ジェイ・ホワイト

 最近はどうか。フィールドを新日本に絞って見ると、IWGPヘビー級王者ケニー・オメガは183センチ、92キロ。IWGPインターコンチネンタルヘビー級王者クリス・ジェリコは182センチ、103キロ。IWGP USヘビー級王者ジェイ・ホワイトは186センチ、100キロ。みんな、うまい、速い、技もすごい。見てて、楽しい。素直にそう思う。でもちょっと物足らん。文句なしのド迫力っちゅうプラスアルファがないもんか…。まあ、いにしえのプロレスを愛するオヤジのたわごとですけど。【加藤裕一】

世界一性格悪い鈴木みのるは仲間、ファンのため闘う


 プロレスラー鈴木みのる(50)のキャッチフレーズは「世界一性格の悪い男」だ。その鈴木が、頸椎(けいつい)完全損傷で首から下が動かなくなった高山善広(51)を支援するTAKAYAMANIA実行委員会で、高山のために働いている。

3冠ヘビー選手権 敗れた鈴木みのるは防衛に成功した高山善広の右腕を持ち上げ健闘をたたえる(2009年5月30日撮影)

 8月31日には、後楽園ホールで高山支援大会「TAKAYAMANIA ENPIRE」を開催するという。鈴木はメインの6人タッグに出場する。「相変わらず口は達者なので、今回の大会であいつをどんどん悔しがらせてやろうと思う。いつか、あいつには、トップロープをまたいでリングに入ってもらいますよ。自分でけじめをつけてもらいます」と、口は悪いが愛情あふれるコメントをした。

 自分の30周年記念大会を横浜赤レンガ倉庫の広場で無料開催した。「一番最初に出した条件が、無料で青空の下でやることだった」と、新日本プロレスIWGPヘビー級前王者オカダ・カズチカとのビッグマッチを無料で実施した。生まれ育った横浜のプロレスを知らない人や、子どもたちに見せるためだ。

横浜赤レンガ倉庫での30周年記念大会でオカダ・カズチカ(左)と対戦した鈴木みのる(2018年6月23日撮影)

 今やプロレス界で独り勝ちの新日本で、フリーながら異彩を放つ鈴木。プロレスラーとして、近寄りがたいオーラをまとっている。そんな鈴木が中心になって開催する2つのイベントから、鈴木の人間らしさが垣間見えた。

 50歳になっても、リング上では、オカダや内藤、棚橋らとひけを取らない動きで、会場を盛り上げる。「プロレス界で1番練習しているから」と、自信満々で胸を張る。「世界一性格の悪い男」は、今日も、闘病中の仲間や、ファンのため、プロレスのために戦い続ける。【バトル担当=桝田朗】

WWEで夢をつかめ!世界中からスター候補を募集


 WWEの「虎の穴」に門戸開放の動きがあった。

 今夏に5周年を迎えるプロレスラー育成施設WWEパフォーマンスセンターがトライアウト参加用の専用サイトをこのほど開設。世界から希望者を募る新たな試みをスタートさせた。

 WWEのリクルート用ウェブサイトURL=https://www.wweperformancecenter.com/#!/

WWEパフォーマンスセンターには計7つのリングが設置されている(C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved.

 同パフォーマンスセンターは東京ドーム面積の半個分近くとなる2万6000平方メートルもの大きさで、7個のリングが設置されている大型施設だ。5年前の開設以来、WWE傘下となるNXTのウィリアム・リーガルGMのもと、元新日本プロレスで活躍したマット・ブルーム(ジャイアント・バーナード)がヘッドコーチを務めている。リーガルGMは現在、全日本プロレスを中心に活躍する元WWEのTAJIRIとの関係が深い。また中邑真輔やアスカ(華名)がWWE入団時にはトレーニングを積みながらNXTに参加。現在でもカイリ・セイン(宝城カイリ)ら70選手以上がトレーニングするなど、日本と縁がある施設とも言えるだろう。

中邑真輔もWWE加入初期はパフォーマンスセンターでトレーニングを積んだ(C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved.

 この5年間で、ロウで活躍する巨獣ブラウン・ストローマンをはじめ、前ロウ女子王者アレクサ・ブリス、前スマックダウン女子王者シャーロット・フレアーらがトップレスラーが育ってきた。公式サイトには「スーパースターの旅はここから始まる。WWEスーパースターになる夢がある」とつづられている。WWEレスラーになることはプロとしての知名度や人気だけでなく、高額な収入も得られる。

 このほど米経済誌フォーブスが17年度の長者番付が発表した。WWE所属選手の年収ランキングでは、過去16度の王座戴冠を誇るジョン・シナが1位。年収は1000万ドル(約11億円)だった。2位には現ユニバーサル王者ブロック・レスナーで650万ドル(約7億1500万円)、3位はローマン・レインズで430万ドル(約4億7300万円)と続いた。中邑との抗争が続くWWEヘビー級王者AJスタイルズは350万ドル(約3億8500万円)で4位にランクイン。10位のケビン・オーエンズであっても、200万ドル(約2億2000万円)を稼いでいる。フォーブスによるとWWE所属選手の平均年収は50万ドル(約5500万円)。来年あたりは中邑も10位以内にランキングされるかもしれない。

フォーブス発表の18年WWE収入ランキング1位のジョン・シナ(C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved.

 今回のWWEパフォーマンスセンターのトライアウトにはプロレス経験者だけでなく、他競技のアスリートの参加も広く募っている。世界から集結している強者との競争は決して簡単ではないだろうが、WWE版「虎の穴」にはアメリカンドリームが詰まっていることは間違いない。日本人アスリートたちがWWEパフォーマンスセンターから夢をつかむ。そんなビッグなストーリーを実現する日本人プロレスラーが今後登場することを、取材する記者の1人として楽しみにしている。【藤中栄二】

ジュニア最強の高橋ヒロム、予知できない言動が魅力


 「ヒロムワールド」が面白い。4日の新日本プロレス、ジュニアヘビー級の最強決定戦「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」優勝決定戦を制した高橋ヒロム(28)の予知できない言動が加速し、そして魅力的に映る。

ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア優勝決定戦で石森(左)に勢いを付けてからドロップキックを浴びせる髙橋(撮影・小沢裕)

 突然の話題転換、突拍子もない言動はお手の物なのだが、石森太二との死闘を制した初優勝直後のバックステージでも全くいつもの高橋だった。

 「おーい! 聞こえるか! 2019年の高橋ヒロム。お前も知っていると思うけど、2018年のスーパージュニアはめちゃくちゃ、史上最高に盛り上がったぞ。なあ、2019年の高橋ヒロム! 必ず、越えてみろ!」

 まずは未来の自分へ語りかけてみた。

 「後楽園ホールさん、いつも、いつも、ありがとうね。いつもありがとうね~。分かってる、分かってるよ、ありがとうね」

 次はいきなり会場の柱を触って語りかけた。ベルトにも語りかけるレスラーなので、なにやら生物外の声も聞こえるらしい。

 「最後に1つだけ。知ってるぞ。この会場で、あなたが、あなたが見ていたこと、知っているぞ、イニシャル“K”」

 そして、去り際に残していったのは謎かけ。K…。報道陣はどこかあっけにとられたまま、これが高橋ヒロムだよなとうなずくように見送っていた。

ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア優勝決定戦を制しトロフィーを手に笑顔を見せる髙橋(撮影・小沢裕)

 いままでもそうだった。その予想不可能さにはまる人が続出していると感じる。試合では舌を出し、不気味に笑い、緩慢なようで、時に怒り前面のフルファイト。マイクでも同じ単語の永遠の連呼など異彩を放つが、それは試合外でも同じ。

 今大会の開幕前日の会見では出場16人がそろった都内の明治記念館で、突然「おい! がんばれヒロム!」と叫び始め、必殺技D(変形三角絞め)が開発したいきさつを一人芝居で、脈絡なく説明して他選手とは異なる空気感を発揮。3月のIWGPタッグ王者調印式では自作ポエムを書いたノートを読み上げ、ヒロム色を全開にさせた。今大会も昨年に続き自作の「攻略本」を試合ごとに持参。スケッチブックに手書きの似顔絵や文字は、誰にもまねできない技以外の武器だった。「ジュニアが最高」と公言するが、独自のパフォーマンスは、その愛するジュニア戦線への注目度を集める一助となっている。

 そんな変幻自在の自己プロデュース能力の高さは、予想外の出来事も呼び込むらしい。スーパージュニアを制したリングには「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」のメンバーが参集したが、内藤が優勝トロフィーを壊してしまう事態が発生。羽の部分が折れていることに気付いた高橋はがくぜんとして、トロフィーに土下座することになった。「内藤、帰ったのか、あの野郎! 聞いてよ、あの内藤哲也という男は、俺のトロフィーを奪い、そして壊れたことに気付き、俺の耳元で『ごめん、ちょっと壊れた』と俺に渡した。俺はパニックになった。どしたらいいんだと。だったらちょっと笑いに走るしかねえだろ」とバックステージの第一声では猛クレームした。

ベスト・オブ・ザ・スーパージュニアを制した髙橋だったが贈呈されたばかりのトロフィーが壊れ、ぼうぜんとする(撮影・小沢裕)

 冒頭に列挙したコメントはそんな不運に見舞われた後に発した言葉になる。しっかりとアクシデントに言及しながら、自身の世界観はしっかりと表現する。そんな動じない精神性も感じられた出来事だった。

 次は6月9日、大阪大会でIWGPジュニアヘビー級王者ウィル・オスプレイに挑戦表明した。ジュニアを誰よりも愛すると公言する男が、どんな言動をみせてくれるのか注目だ。【阿部健吾】

知名度アップへ「拳四朗&会長」セット売りいかが?


 気がつけば、安定王者である。WBC世界ライトフライ級王者拳四朗(26=BMB)。25日、東京・大田区総合体育館で3度目の防衛戦を行い、昨年5月にベルトを奪った前王者ガニガン・ロペスに2回1分58秒、KO勝ち。右ボディーストレートでもん絶させた。

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ 2回、ボディでダウンを奪う拳四朗(右)(2018年5月25日撮影)

 お見事。圧巻。瞬殺。拳四朗と、父の寺地永会長(54)が「想定外!」と口をそろえる鮮やかさ。当然2人とも「今度は目立ったやろ」と思ったはずが、メインで“モンスター”井上尚弥がバンタム転向初戦にして、さらに早い1回1分52秒KO勝ちで3階級制覇を達成…。井上の勝利はもちろん喜ばしいけど、また目立ち損ねてしまったと言えなくもない。

 拳四朗は昨年5月から計4度、世界戦を行ったものの、1度も自分だけの“シングル世界戦”がない。最初の2試合はWBA世界ミドル級王者村田諒太、最近2試合は井上と同日、同会場で行った。帝拳ジムがプロモーションする興行に“入れてもらって”のダブル、トリプル世界戦。つまり、村田、井上のスケジュールに合わせて、試合が決まる立場にいる。

左からWBC世界ライトフライ級王者拳四朗、井上尚弥、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル、ガニガン・ロペス(2018年5月23日撮影)

 寺地会長は「ウチは帝拳さんにお世話になってますから。それで全然問題ないし、ええと思ってますよ」という。拳四朗は拳四朗で、誰とやりたいとか、最強を目指したいとか、プロボクサーが持っていて当然の“ギラギラ感”が皆無のタイプで「う~ん、相手は誰でもいいですからね。僕は決まった相手に勝つだけと思ってます」という。

 しかし、計4度の世界戦を取材したこちらにすれば、もうちょいグイグイいってもええんちゃうの、と思う。今回の防衛戦でロペス陣営が持っていたオプション(対戦相手等を選ぶ権利)は消化され、指名試合(WBC同級1位選手の挑戦を、1年以内に受ける義務試合)を除けば、次戦から相手を好きに選べる立場になった。さらに、村田、井上の両王者が次戦は米国で行う予定。いろんな意味で“縛り”はない。じゃあ、次は初の地元関西での防衛戦開催チャンスでは…と思ったりしたのだが…。「いや~、まだ無理でしょ。関西で、1人で世界戦やっても、お客さんは集められませんよ」と寺地会長に、あっさり可能性を否定されてしまった。

 ダブル、トリプル世界戦が別に悪いと思いません。ただ、そればっかりやなくて、もうちょい有名に、ビッグになってほしいだけな訳です。

 「有名になりたい」が口癖の拳四朗はバラエティー番組からオファーが来たら、喜んで出演してるし、寺地会長も「ぜひぜひ」と後押ししてる。防衛を重ねることで、自然と知名度、存在感は高まってくるものですが、それだけではつまらんし、時間もかかる。そこで、考えた。「拳四朗&会長のパック売り」はどうでしょう?

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチで防衛に成功した拳四朗(右から2人目)と父の寺地永会長(左から2人目)(2018年5月25日撮影)

 親子そろって天然キャラで、人に好かれることはあっても、嫌われることはまずないタイプ。父は元日本ミドル級&東洋太平洋ライトヘビー級王者で、身長189センチ。対して拳四朗は164センチ。その差25センチのデコボコ具合には、漫才コンビ「オール阪神・巨人」を思わせる、見た目のおもしろさがある。いらうのが上手なMCの番組なら、人気出ると思うんですけど。拳四朗の世界戦がメインになる日が来るために。テレビ局のみなさん、どないですか?【加藤裕一】

全日四天王・川田利明、現役時に寡黙キャラ貫いた訳

丸藤とトークバトルを行った川田利明(2018年4月26日撮影)


 大相撲では、現役時代に取り組み後のインタビューでひと言もしゃべらず記者泣かせの横綱、大関がいた。

 しかし、引退すると、急に笑顔で話し掛けられ驚いたことがあった。そんな話を思い出したのは、川田利明(54)のトークショーを見たからだ。

 全日本プロレス時代は、四天王と呼ばれ、故三沢光晴さん、小橋建太氏、田上明氏とともに黄金時代を築いた伝説のレスラーだ。まだ、引退はしていないが、10年を最後にプロレスはしていない。そんな川田が、再びプロレス界に戻ってきた。自身がプロデュースする大会を4月26日に、新木場1st Ringで開催したのだ。

 もちろん、プロレスはやらなかった。その代わりに、全日本の後輩、丸藤正道(38=ノア)とリングでトークショーを行った。現役時代は常に何かに怒っているような表情で、近づきがたかった。コメントもぶっきらぼうだった。しかし、三沢さんとの激闘は、プロレス史に残る名勝負だった。リング上に登場した川田は、プロレスをやる前のように屈伸運動をした。そして「控室で30分1本勝負でしゃべるなら、試合やった方が、楽じゃない? って言われたけど、オレがイヤだと断った」と笑いを誘った。

 トークショーで川田が話したのは、しゃべらないキャラクターづくりによって、川田自身がプロレスラーとして確立されたということだった。タイガーマスク(三沢)が登場して人気を博していた時代、川田は師匠の故ジャイアント馬場さんから「タイガーマスクよりすごい技をやるな」と言われたという。「何もやらなくなったときに、自分がプロレスラーとして確立できた」と話す。しゃべらないことも、その一環だった。

 「マスコミに対して話さないのは、マスコミが川田がどう(考え、行動する)だろうと考えてくれるから」と当時のダンマリを解説した。それにしても、試合後の川田は怖かった。「近づくな」オーラを出して、記者もびびっていた。そんな川田の考えが、30分1本勝負のトークショーから伝わってきた。

 全日本時代、三沢さんの付け人だった丸藤も、川田から口を聞いてもらえない1人だった。その丸藤が、川田の得意技、ステップキックの伝承を川田にお願いした。「最近、丸藤が気を使ってオレに似たようなことやってくれるんだけど、もうちょっと勉強してからにして」。川田の顔は本当にうれしそうだった。【プロレス担当 桝田朗】

「なんか起きる」予想は当たった亀田興毅の試合

10カウントの途中でゴングを止める亀田興毅


 何かやるかもしれない。そんな思いで後楽園ホールに向かった。

 東京ドームでは安室奈美恵のコンサートがあったが、開演時間が近く人通りは少なかった。ところが後楽園ホールのあるビルにたどり着くと、5階の会場から1階入り口の外まで長蛇の列。やっぱりなんか起きるなと会場入りした。

 亀田興毅の一夜限りの現役復帰での引退試合で、亀田一家が久々表舞台に登場した。数々の騒動や物議を醸したが、一時は日本中が注目したボクサーだったのは間違いない。最近は1000人を切る興行も珍しくなく、リングサイド席は1万円以下が多い。倍の2万円だったが、1803人の観客が詰めかけた。

 客席にネット中継のひな壇が設けられた。MC陣内智則、アシスタント神田愛花、ゲストは板野友美、市原隼人、K-1の武尊ら、解説は元世界王者の竹原慎二、内山高志の両氏に、客席に浜崎あゆみ、佐々木主浩氏、御嶽海、照ノ富士ら。あのASKAもいた。亀田家の血が騒がないわけはなかった。

 ポンサクレックには8年前に判定で初黒星を喫して王座陥落し、父史郎氏が暴言などで大騒動の因縁があった。引退試合とぶち上げてしぶとく粘ったが、結局は単なるスパーリングになった。国内規定でポンサクレックのライセンスが認められず。8オンスのグローブで10回戦の希望が、10オンスでの6回戦でヘッドギアなしのスパーになり、ジャッジはいなかった。

 それでも入場ではライセンスを剥奪された史郎氏を先頭にした亀田トレインも復活させた。3兄弟にメキシコでプロデビュー勝利した妹姫月、前座でプロ初勝利のいとこ京之介も連なった。

 31歳の興毅は2年半、40歳のポンサクレックは直前にタイで突然復帰戦も実に5年ぶりリング。差は歴然でポンサクレックが不憫に思えた。亀田は2回に右ストレートでぶっ倒すと「どんなもんじゃい!」と叫んだ。

 さて、10カウントゴングの引退式となったところで事件は起きた。5つ目のゴングが鳴ると、マイクを手にして「ちょっと待った」。あのロマゴンことゴンサレスと「もう1試合やりたい」と言いだした。ゴング前に足元へマイクを置くよう促していたという。あとで「迷いに迷った」とは言ったが…。

 会場は華やかさがあったが、いつもと違う雰囲気だった。見慣れたボクシングファンより、見慣れぬ一般ファンが多かった。「現役復帰プラス1」に喜ぶ観客もいたが、何人もが「うそつき!!」と叫び、場内騒然となった。

 亀田は当初から「戦いたいボクサーが2人いる」と言い、ロマゴンがその1人とみられていた。一時期は世界最強と言われた現役バリバリのボクサーで王座奪回を狙っている。実現性は極めて低い。

 内山氏は京之介を指導した縁で駆けつけた。指導効果発揮でKO勝ちを見届けると「所用」を理由に会場を後にした。「亀田劇場」は見ていない。ボクシング関係者の姿もほとんどなく、亀田復帰への業界の見方、思いを示す。

 昨年7度目の引退をしたプロレスラー大仁田厚を思い出した。【河合香】

オカダ・カズチカ、米基準の王座保持期間でも金字塔


 新日本プロレスのIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(30)が、4日の福岡大会で歴代最多となる12度目の防衛に成功した。初代王者アントニオ猪木が88年に4度、89年には藤波辰爾が7度、95年に橋本真也が9度、03年に永田裕志が10度、そして12年に棚橋弘至が11度まで伸ばした防衛記録を「レインメーカー」が超えた。ケニー・オメガ(34)とのV13戦は6月9日の大阪城ホール大会。この間に王座返上しない限り、保持期間は720日に伸びる。こちらも史上最長記録を更新中だ。

IWGPヘビー級選手権12度目の防衛に成功したオカダ・カズチカ(2018年5月4日撮影)

 今、米国ではWWEヘビー級王座と並ぶ2大王座の1つ、ユニバーサル王座を保持する王者ブロック・レスナー(40)のベルト保持期間が話題になっている。昨年4月2日のレッスルマニア33大会での同王座奪取後、米国時間5月7日で区切りの400日となる。米メディアはCMパンクが持つ434日を超えることは確実だろうと報じる。6月17日のPPV大会では、ユニバーサル王座の防衛戦が組まれるとみられており、レスナーは441日まで保持期間を伸ばすことになるだろう。

ブロック・レスナー

 WWEではハウスショー(動画中継なしの興行)でもWWEヘビー級王座、ユニバーサル王座の防衛戦がマッチメークされる。頻繁にビッグタイトルが組まれるため、日本のように防衛回数よりも王座保持期間が注目される「文化」がある。WWE前身のWWWFまでさかのぼれば、最高峰ヘビー級王座の最多保持期間は先月他界したブルーノ・サンマルチノの2803日が歴代1位。先月、藤波辰爾による招へいで来日したボブ・バックランドの2135日が2位。3位にはハルク・ホーガンの持つ1474日が続く。前身団体を含めればCMパンクの434日は歴代6位ではあるものの、02年5月にWWEとなって以降では歴代1位。レスナーの「新記録」更新が注目を集めている。

 興行形態、マッチメーク方式、ベルトそのものの違いはあるが、CMパンクやレスナーの保持記録よりも長いオカダの720日は誇っていい記録だ。弊社の新日本プロレス担当阿部健吾記者が「金字塔」と表現したオカダのV12記録。米国で重視される王座保持期間という側面からも胸を張って「金字塔」と表現していいはずだ。

IWGPヘビー級選手権試合ケニー・オメガ(左)をレインメーカーで仕留めるオカダ・カズチカ(2017年1月4日撮影)

 オカダの記録はどこまで伸びるのか。まずは、オメガとの約1年ぶりとなるIWGP対決を楽しみに待ちたい。【藤中栄二】

ボブ・バックランドに「とげぬき地蔵」は似合わない

倒立してのストレッチをみせるバックランドに驚く藤波(2018年4月18日撮影)


 その68歳は太い幹だった。

 4月20日、後楽園ホールでドラディションの「バック・トゥー・ザ・ニューヨーク・ツアー」を取材した。

 主宰の藤波辰爾(64)の依頼を快諾し、目玉として来日したのは元WWF(現WWE)世界ヘビー級王者ボブ・バックランド(68)。驚かされたのは18日に都内で行われた来日記者会見だった。

 巣鴨に移転したばかりのプロレスを中心とした格闘技グッズ専門「闘道館」の2階に姿を現した「ニューヨークの帝王」は、とてもとげぬき地蔵が似合うような存在ではなかった。

 赤いサスペンダーがピンと張って、ワイシャツ越しからも明らかな筋肉の隆起を感じさせる。肉厚すぎる肉体は、いまだに現役だった。刈り上げられた頭髪は白髪交じりだったが、もし顔を隠して年齢当てクイズでもすれば、正解率は著しく低いだろう。

 「いまも午前6時半に起床して毎日エクササイズをしているからね」。肉体維持の秘訣(ひけつ)を聞かれると、得意げに言った。そして、そこからの行動がさらに驚くものだった。

 「ここでお見せしましょう」とおもむろに立ち上がると、両手を地面に着き。さらに頭頂部も床につける。そのまま脚がきれいに上がっていく。68歳の倒立。そして、さらにその脚を前後に動かして見せた。

 ワイシャツの胸ポケットからコインが落ちて、「これは妻からのお駄賃だね」とアメリカンジョークを飛ばす姿に、会見場のどよめきは止まらなかった。「今でも高校3年生、大学1年生とスパーリングをやっている」という言葉にも説得力があった。

 バックランドが70年代後半から5年以上ベルトを保持していた最中に生まれた記者には、正直言ってなじみが薄い「伝説」の男だった。名前を聞いてぴんと来るのはもう少し上の世代だろう。

 映像や画像で現役時代の姿は予習してから取材に行ったが、衰えた選手の姿のどこかにノスタルジーを探して発見に喜びを見いだすような機会、試合なんだろうと思っていた。ところが、当人を目の前にし、その「エクササイズ」を見せつけられ、レスラーのすごさをまざまざと感じさせられる時間となった。

 「さっき、一度やっただろう」。会見の最後、写真撮影の時間に、そうつぶやきながらももう1度倒立を披露するサービス精神まで見せつけた。

 最近聞いたプロレス好きの識者の言葉に「プロレスラーは異世界の住人です」という指摘があった。20日の後楽園大会、21日の大阪大会と試合でも年齢からかけ離れた動きと肉体とをファンに見続けた「帝王」。

 誰もが予期しないことをできるからこそ、異世界の中心人物として本場マットに君臨し続けたのだと、たった20分ほどの会見で十分に納得させられた。【阿部健吾】

KAZMA SAKAMOTO(左)をチキンウイングフェースロックで仕留めたボブ・バックランド(2018年4月20日撮影)

比嘉大吾の“明日のために”長谷川穂積氏が贈る言葉


 プロボクサー比嘉大吾(22=白井・具志堅スポーツ)が減量に失敗し、WBC世界フライ級王座を失った。前王者としてリングに上がり、9回途中TKO負けを喫した翌日の16日、元世界3階級王者長谷川穂積氏(37)に話が聞けた。「もうこれ以上ええでしょ? 彼をたたくんは、もう今日までにしましょう。まだほんまに若いし、先があるボクサーやから」。少し悲しそうだが、優しかった。

WBC世界フライ級タイトルマッチ ロサレスに破れ、一礼する比嘉大吾(2018年4月15日撮影)

 自らも苦しんだ。死ぬ思いで体重を落とした。「あかんと思ったこと、ありますよ。バンタムの時は毎回。最後は必死で練習して(落ちるのは)50グラム。50グラムってたまご1個分。“こんなんやったら、練習せん方がええ”と思ったりしてね」。最初に世界王者になったバンタム級で11度目の防衛に失敗するとフェザー級に転向。一気に2階級上げた。結果「国内ジム所属選手初の飛び級2階級制覇」を成したが、裏返せば、スーパーバンタム級でも苦しかったのだ。

WBC世界フェザー級王座決定戦でブルゴス(左)を破り2階級制覇を達成した長谷川穂積氏(2010年11月26日撮影)

 比嘉の罪は重い。具志堅会長、トレーナーら周囲の責任もあるが、最終的には本人の問題。だから、問うべき責任を問うことが、逆に比嘉のためだ。比嘉と同じ沖縄出身で元WBC世界スーパーライト級王者浜田剛史氏は「減量は何キロ落としても自慢ではなく当たり前。沖縄ファイターが出て盛り上がっていたが、大きく裏切った。技術、根性すべてが飛んだ」と言った。比嘉を思えばこそ、強烈な叱責(しっせき)が口を突いた。

1回目の計量で900グラムオーバーとなりうなだれる比嘉大吾(左)は具志堅用高会長から声をかけられる(2018年4月14日撮影)

 浜田氏が責め、長谷川氏がかばうのは、すべて“比嘉の明日”を守るためなのではないだろうか。

 長谷川氏は引退後も「ボクサー」であり続けている。体重63キロは現役時のナチュラルウエートと変わらない。基本的に毎朝7キロ~12キロ走る。ミット打ちを最低6回はこなし、サンドバッグもたたく。「やってないの、ダッシュぐらいですかね」。仕事や用事がなければ、ほぼ毎日、現役時と同じ練習をする。

ミット打ちを披露する長谷川穂積氏(2018年4月16日撮影)

 引退したのに、なぜ?

 「ボクシングをやってたら、僕はすべてに自信を持てる。自分に負けない自分でいられる。(プロで)17年間やって、そうなった。練習も、その日の自分に勝ちたいと思ってやる。達成感はやった者にしかわからんと思いますよ」

 10年後か、15年後か。比嘉がグローブを置いた時、同じ言葉を口にしてほしい。【加藤裕一】

宮原健斗を支えるプロレス愛 ホーガン参考に高みへ

宮原健斗(2018年3月25日撮影)


 プロレスの世界でトップに立つ選手には、独特の雰囲気がある。畏敬の念を抱かせるようなオーラと、観客の期待を一身に集めるような存在。そんな選手が、全日本プロレスにも出てきた。3冠ヘビー級王者宮原健斗(29)だ。1番気に入っているのは、宮原がコーナーのロープに足をかけ、観客席に向かって手を耳にあて、歓声をあおるポーズつくる姿だ。

 それが、ある選手のポーズとダブって見えることがある。宮原が最も尊敬し、目標にもしてきた米国のスーパースター、ハルク・ホーガンだ。体格は一回りほど違うが、かつて世界を熱狂させたホーガンのように、宮原も全日本の観客を熱狂させている。

 「子どものころから、ビデオを借りて何回も見てきた。ただのあこがれだったんですが、今、チャンピオンになってホーガンの動きがとても参考になることが分かった。お客さんのじらし方であるとか、お客さんの求めるものに120%応えようとするパフォーマンスとか」。

 福岡の市立福翔高校を卒業して、健介オフィス入り。08年にデビューして今年が10年目となる。14年1月に入団した全日本では、16年2月に26歳11カ月で、史上最年少の若さで3冠ヘビー級のベルトを巻いた。そこから歴代2位の連続8回防衛を達成し、一気に団体のトップを背負う存在になった。

 「全日本の3冠王者は誰でも背負えるものじゃない。オレは、全日本を神様に託された、選ばれた存在だと思っています」と宮原は言い切る。その思いに負けないくらいの練習。練習と食事、寝るとき以外は、ほとんど昔のプロレスのビデオを見るというプロレス愛が、宮原を支えている。

 「全日本をさらなる高みに持って行きますよ。全日本はこんなもんじゃない」。趣味はないと言っていた宮原が、最近は歌手の安室奈美恵に注目しているという。「安室さんのコンサートで、アンコールへの持って行き方とか、マイクパフォーマンスとか参考になりますね」。やっぱり、プロレスのことしか考えていない。【桝田朗】

武尊3階級制覇 第3期K1はこの男にかかっている

3階級制覇を達成した武尊(2018年3月21日撮影)


 久しぶりにK-1を取材した。14年に新生K-1となって、3月21日にさいたまスーパーアリーナのメインで初開催。魔裟斗がいた00年代以来の取材だった。ふたを開ければ、約10時間で24試合が実施された長丁場に、1万5000人が詰めかけていた。

 最初の93年K-1ワールドGPも取材した。無差別級トーナメントがメインで、日本勢は空手から格闘家になった佐竹雅昭がトップだった。ピーター・アーツ、アーネスト・ホーストらがいたが優勝は伏兵ブランコ・シカティックも、代々木第1体育館に1万人が集まった。

 K-1とはうまく考えたなと思ったものだ。空手、キックボクシング、カンフー、拳法などの立ち技系格闘技で、キングも意味するKにNO・1の1がつけられたという。今やお笑いでM-1やR-1もある。F1が出発点だろうが、K-1が定着した効果といえるだろう。

 当初の5回から現在は3回制で、キックもあることで早期決着、KOの多さが魅力。今大会も中盤判定が続いたが、結局は半分の12試合がKO。メインの8選手のスーパー・フェザー級トーナメントも7試合中4試合がKOで盛り上がった。

 今は第3期K-1といえる。創成期はサイズとパワーの迫力があった。かかと落としのアンディ・フグが96年優勝などで人気となったが、白血病で帰らぬ人となった。00年代はワールドMAXでミドル級が中心となり、魔裟斗が女性も含めて人気を集めた。さらに元横綱曙、ボブ・サップらも参戦した総合格闘技イベントに発展した。

 魔裟斗の引退、経営陣の交代などから下火になり、新生K-1へと移行した。日本人中心のイベントだけに、創成期からは徐々にサイズダウンしてきた。世界大会という部分でも、物足りなさは否めない。選手たちもいろいろキャラをつくって、ここぞとアピールしていた。

 その中で武尊が初の3階級制覇を達成した。1回戦は判定も、準決勝、決勝はKOで決めた。ストイックな姿勢を貫くイケメン。しゃべりは控えめでリングに徹する。名前でもあるリングネームは、ヤマトタケルノミコトから命名されたという。第3期K-1はこのエースにかかっている。【河合香】

棚橋ら新日本勢、裏レッスルマニアでファン強奪!?

左から棚橋弘至、鈴木みのる、石井智宏、飯伏幸太


 8日(日本時間9日)にWWE最大の祭典レッスルマニア34大会が開催される米ルイジアナ州ニューオーリンズ。レッスルマニアウイークと称される今週、新日本プロレスのレスラーたちが同地で多くの試合を控えている。

 裏レッスルマニアとも言われるプロレス大型イベント「レッスルコン」(5~8日)では、5日にスーパーショーと呼ばれる大会が予定。ここに飯伏幸太、ケニー・オメガのユニット「ゴールデン☆ラヴァーズ」が参戦し、バレッタ、チャッキーT組(ベストフレンズ)とのタッグマッチに臨む。翌6日には英団体RPWによるニューオーリンズ大会が開催され、棚橋弘至、ジュース・ロビンソンがタッグマッチに出場。石井智宏がRPW英国ヘビー級王者ザック・セイバーJr.に挑戦する。また鈴木みのる、飯伏、IWGPジュニア王者ウィル・オスプレイも参戦予定だ。

 レッスルマニア前日7日には米団体ROH主催のニューオーリンズ大会が開かれ、棚橋、ジェイ・リーサル組がROHタッグ王者ブリスコ・ブラザーズに挑戦する。またオメガ-Codyのバレットクラブ頂上決戦、飯伏-ハングマン・ペイジのシングル戦も組まれる。本隊、CHAOS、バレットクラブ、鈴木軍の各ユニットの実力者たちがニューオーリンズで戦う。

 レッスルマニアウイークには世界中からプロレスファンが開催地に集まる。今年のレッスルマニア34大会も約7万人以上の来場が予想される。動画配信が発達しているとはいえ、生観戦に勝るものはない。新日本プロレスのスタイルをアピールするには絶好の機会だ。近年、米国内のプロレスのメディアから新日本プロレスのレスラーたちが、そして試合内容が、WWEのそれよりも高く評価される傾向にある。例えば棚橋の華、鈴木の醸し出す怖さ、石井のゴツゴツぶり、飯伏の異次元な飛び技は米プロレスでは見られない、独特のスタイルだ。

 レッスルマニア34大会では、元新日本プロレスの2人によるWWE王座戦が控えている。王者AJスタイルズ-挑戦者中邑真輔のカードはメイン候補の1つで注目度も高い。一方で、新日本プロレスのレスラーたちが持ち前の「キラー・インスティンクト」を発揮すればファンの心を根こそぎわしづかみすることも可能だ。レッスルマニアウイークが終わったら、どのカードが世界のファンから高く評価されているのだろうか? 楽しみでならない。【藤中栄二】

ベストパンチは?「神の左」山中慎介が答えたKO劇


 選手が現役生活を引退する時にしか聞けない質問がある。

 「ベスト○○はなんですか?」

 試合や大会が主だが、終わりを迎えていない段階では更新中で総括は適さない。だから引退会見という場では、必ず聞かれることになる。

 26日に都内のホテルで会見を開いたプロボクシングの元WBC世界バンタム級王者山中慎介さん(35)の場合は、「ベストパンチ」だった。世界戦で31回のダウンを生み出してきた通称「神の左」。そのストレートで、日本歴代2位の世界戦連続防衛12回を成し遂げた男の答えは…。

 「迷いなくV2のロハス戦ですね。あの最後の1発。あれがあるからこそ、常にこれくらいのKOしてやろうという思いで調整してこれましたし、あのKOは本当に自分にとっても後援会にもファンにも記憶に残っている試合だと思ってます」

WBC世界バンタム級タイトルマッチ 7回、左ストレートでトマス・ロハス(右)をKOした山中慎介(2012年11月3日撮影)

 2012年11月3日、ゼビオアリーナ仙台、元世界王者トマス・ロハス(メキシコ)を迎えた2度目の防衛戦。左ストレート2発などで7回36秒TKO勝利。ロハスは失神し、そのまま病院に送られた衝撃の試合だった。

 翌4日付の弊紙には「左コークスクリューで失神病院送り」「ホセ・メンドーサだ」「劇画的KO」の文字が躍る。試合を決めた1発は、パンチが当たる瞬間に手首を内側にひねり込む「コークスクリューパンチ」。漫画「あしたのジョー」で矢吹ジョーと対戦した最強王者ホセ・メンドーサも武器にした必殺パンチで、ロハスはその場で失神し、前のめりに頭から崩れ落ちた。

WBC世界バンタム級タイトルマッチ 7回、トマス・ロハス(右)を前のめりに倒し、KO勝ちを飾った山中慎介(2012年11月3日撮影)

 この日、山中が登場する前、会場内には防衛戦の映像などが映し出されたが、集まった報道陣、関係者約150人以上から「おおー」と感嘆の声が上がったのはやはりロハス戦。衝撃シーンはいま見ても、何回見ても鮮烈だ。それは放った本人も同様だった。

 「あれくらいのKOしてやろう」。とてつもなく高いハードルを自分に課すことになったが、次戦から4連続KO勝利、さらに試合内容でも「劇画的」なダウンシーンを量産した。

 会見の最後、その左拳にかける言葉を聞かれると、こう言った。

 「強かったよ、と。まあまあ強かったんじゃないですか(笑)」

 謙遜するところがらしさだが、「まあまあ」なんてとんでもない。間違いなく漫画的とも言えるくらい、とてつもなく強かった。【阿部健吾】

引退会見を行った山中慎介さんは神の左と呼ばれた手をじっと見つめる(撮影・松本俊)

鈴木みのる どこまで行っても本物感がある“強さ”

鈴木みのる


 プロレスの話を書こうと思うのだが、その前に別ジャンルの話を少々。

 ボクシングのWBOアジア太平洋フライ級王者・坂本真宏(27=六島)を取材した。彼は“私が落ちた”大阪市立大の現役大学院生で、4月1日に防衛戦を行う。つまりとても勉強ができる。それなのに“殴り合い”に足を踏み入れた。

 「う~ん…非日常ですかね。普通に生活してたら、あり得ない空間でしょ?」

 大相撲春場所の前相撲で土俵を踏んだ新弟子の神谷元気(15=陸奥)を取材した。彼は宮崎・川南町で生まれ育ち、地元の極真空手の道場で中学日本一になった。それなのに、全く別の格闘技を選んだ。

 「高校で別のスポーツをやろうかと思ってたんです。そんな時、昨年の秋、宮崎で陸奥部屋の合宿があって、参加させてもらったら、もう全然何もできなくて…。それで“おもしろいなあ”と思ったから」

 違うジャンルの話だが、2人が求めたものは“自分ができないこと”や、単純な素手の戦闘能力における“強さ”なのでは、と思う。乱暴に言えば、男なら誰もが強者への憧れがある。そこじゃないか、と思う。

 で、プロレスの話。子どもの頃、単純に「誰が1番強いのか?」と思っていたらアントニオ猪木が「IWGP構想」をぶち上げた。スタン・ハンセンがいて、ローラン・ボックなんかもいて、スティーブ・ウイリアムスとかも強烈やった。やがてUWFが生まれて、前田日明がいて、佐山聡がいて、藤原喜明がいて…で、リングス、パンクラス、UWFインターナショナル、藤原組とかに派生して…。今、プロレス界で強烈に“強さ”を発信してるんは、鈴木みのるじゃないか、と思っている。

 船木誠勝と腕を磨き、パンクラスを立ち上げ、キック・ボクシングの世界王者モーリス・スミスと異種格闘技戦をやって、ボロボロになった。そんなこんなのバックボーンを持って、ザ・プロレスラーとしてリングに立つ。だから「本気出したら、マジでヤバいんちゃうの?」と思わせる。

 新日本プロレスで言えば、オカダ・カズチカも、棚橋弘至も、内藤哲也も個性がある。キャラも濃い。魅力的なレスラーだ。でも、誰が1番怖そうか、ヤバいことやりそうか、と考えたら、やっぱり鈴木みのる、なのだ。狂気じみた表情、超傲慢(ごうまん)なたたずまい。イメージ作りの部分もあるやろうが、どこまで行っても本物感がある。試合後の取材も、ちょっとビビるしね。彼がいるから、オカダも棚橋も内藤も、より輝く。今のプロレスがあるのは、鈴木みのるのおかげやないか。何となくやけど、そう思う今日この頃である。【加藤裕一】

天才武藤敬司最後のムーンサルト、心に焼き付けたい


 「破壊王」故橋本真也さんの長男で大日本プロレスの橋本大地(25)が最近、決め技によく使うのがシャイニングウィザードという技だ。助走をつけての飛びヒザ蹴りで、武藤敬司(55)のオリジナル技だ。

 助走して片ヒザをついたその足を踏み台にジャンプして、相手の頭部にヒザをぶつける。技名の和訳「閃光(せんこう)魔術」も、いかにも天才武藤にふさわしい。それを同じ闘魂三銃士として活躍した故橋本さんの長男が使っている。父親譲りのハイキックや袈裟切りチョップよりも様になっていると思う。

橋本大地(左)と武藤敬司のシャイニングウィザード

 プロレス界の中でも、武藤は多くの後輩に影響を与えている。新日本プロレスの棚橋弘至や内藤哲也、その他多くのレスラーが、武藤の技や動きを研究し、自分の技に取り入れている。そんな武藤の代名詞の1つがムーンサルトプレス。コーナーのロープ最上段にリングを背にして立ち、バック転をして相手の体をプレスする大技だ。

 そのムーンサルトプレスを武藤は、3月14日のW-1後楽園大会を最後に封印する。3月末に両ヒザに人工関節を入れる手術をする。普段の生活で歩くことさえ困難なヒザの状況を改善するためだ。術後はまたプロレスができると医者には言われたが、その際ムーンサルトプレスは禁止された。それだけ、ヒザへの負担が大きいということだ。

武藤敬司のムーンサルトプレス

 武藤は「オレもヒザへの影響を考えて本当はやりたくなかったが、リングに上がればファンの期待を感じるから、ついやってしまうんだ」と話していた。最近では、空港などでは車いすで移動し、試合前の花道を歩く姿も痛々しかった。手術を決断した武藤は「3月14日の試合が最後のムーンサルトプレスになる」と宣言した。

 3月14日、後楽園ホールの第7試合の8人タッグマッチ。武藤のムーンサルトプレスの最後の餌食になるのは誰か? 今後、武藤以上のムーンサルトプレスの使い手が現れるとしたら誰か? そんなことを考えながら、武藤の必殺技を心に焼き付けたい。【プロレス担当=桝田朗】

食物連鎖のトップ!7連続KO防衛ワイルダーの魅力


 ボクシングの面白さの、やるか、やられるか。世界の頂点を争うにもふさわしい、迫力あるファイトだった。WBC世界ヘビー級王者デオンタイ・ワイルダー(32=米国)が7連続KO防衛した。挑戦者の同級3位ルイス・オルティス(38=キューバ)も逆転へあと1歩まで追い込み、手に汗握る試合になった。

 ワイルダーは10月には33歳になる。3月3日の試合もあって「好きな数字」と3回KO宣言していた。実際には慎重な試合運びでブーイングも浴びた。相手の強さを認めて、体も97・4キロまで絞っていた。12キロ差もリーチを生かして左を突いて踏み込ませない。大振りは少なくコンパクトで、さぐり合い、神経戦の序盤となった。

 5回についに右ストレート1発が入った。畳み掛けて最初のダウンを奪う。ゴングに救われたオルティスに7回には反撃を食った。右フックからラッシュをクリンチ、ホールドで必死に逃げる。ロープを背にグラグラのKO寸前だった。

 オルティスはアマ王国キューバ出身で、五輪こそ出てないが30歳のプロ転向まで349勝19敗の戦績を持つ。テクニックもあり、フットワークのよさもみせた。14年にWBA暫定王座獲得もドーピング違反で空白をつくった。高血圧治療のためで、強さに対戦も敬遠されていたが、待望の試合で強さを示した。

 39戦全勝(38KO)の王者陥落かとも思われたが徐々に回復し、逆にオルティスはスタミナが奪われていた。ワイルダーが10回に右からラッシュで再びダウンを奪い、最後は右アッパーで仕留めた。最後はまさにワイルドならしい攻撃だった。「この惑星一番の最強王者だ。食物連鎖のトップがオレ」。こういうユニークなコメントも魅力の一つだろうが、世界ヘビー級戦線の準決勝第1試合だったと言える。

 31日に英国で、WBAスーパー&IBF王者アンソニー・ジョシュア(28=英国)とWBO王者ジョセフ・パーカー(26=ニュージーランド)が激突する。準決勝第2試合も無敗対決だが、ナイジェリア系のジョシュア優位は動かないところ。昨年元統一王者ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)と9万人の前でダウン応酬の激闘を演じ、劇的11回TKOを飾った。ロンドン五輪で金メダルを獲得してプロ入りし、20戦オールKO勝ちしている。

 ヘビー級は時代ごとにアリ、タイソンらが世界の注目を集め、脚光を浴びた。その後はクリチコが強すぎて注目度が下降した。何よりも本場の本家米国にスターが不在だったのが大きかった。ここにきてワイルダーが現れ、強打に個性を発揮している。ボクシング母国の英国にもジョシュアというライバルがいて、願ってもない展開になってきた。早く決勝の全勝対決が見たいものだ。【河合香】

レスラー間投票3位の中邑真輔が目指すトップの意味

WWEスマックダウンの新たな試み「トップ10リスト」で初登場3位の中邑真輔(C)2018 WWE, Inc. All Rights Reserved


 2月24日に38歳の誕生日を迎えたWWEスマックダウンの「ロックスター」中邑真輔は初登場3位にランクしました。この順位、WWEファンの人気投票でも、米プロレス専門サイトによるパワーランキングでもありません。では「何の順位?」と思われるでしょう。同6日、スマックダウンのダニエル・ブライアンGM(35)から発表された「トップ10リスト」というランキングです。

 この新たな試みはロウにはなく、スマックダウン所属の選手たちが投票して決まります。基準は<1>ロッカールームでのリーダーシップ<2>タレント性<3>運動能力という3点。必ず自分以外の選手に投票するというルールで「ライバルたちを評価する」指標と言ってもいいでしょう。公平性を保つため、マッチメークなどの権限を持つシェイン・マクマホン・コミッショナー(48)とブライアンGMには投票権がないそうです。

 初めて発表されたランキングの1位はWWEヘビー級王者AJスタイルズ(40)、2位はスマックダウン女子王者シャーロット・フレアー(31)、続いて3位が中邑でした。日本人初優勝を飾ったロイヤルランブル戦直後の発表ではあったものの、男女の各王者に続く順位。9位の「毒蛇」ランディ・オートン(37)や、5位のUS王者ボビー・ルード(41)より上位でした。特にバックステージでの態度も投票基準に含められており、観客やファンに向けた「外面」だけではない評価も高いことが分かりました。

 このランキング発表直後、中邑は自らのツイッターで「3位はいいね。1位ならよりいい。オレにはトップ10リストでのプランがある」とつづった上で、英語と日本語で「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と記していました。新日本プロレスからWWEへ移籍して2年が経過。まだ「ロックスター」は発展途上なのでしょう。確かに現時点のランクでもすごいことに感じますが、その一方でまだ1位ではないのも事実です。

 アントニオ猪木のWWF獲得が認定されていない以上、日本人でWWEヘビー級王座を獲得した日本人はいません。中邑は4月8日の祭典レッスルマニア34大会(米ニューオーリンズ)でWWE王座挑戦が決まっており、日本人初の快挙を達成できるチャンスを得ています。ただ、中邑がリスクを負って目指す「虎子」とはベルト奪取だけではないのでしょう。リング内外の評価、世界的な人気などなど、さまざまの面でのトップを狙おうとしているのではないでしょうか。まだ何もつかんでいない-という中邑の貪欲さが伝わってきます。【藤中栄二】

比嘉大吾が目指す羽生、小平の「すばらしい」強さ


 19日に都内ホテルで行われたボクシングの世界戦発表会見で、WBC世界フライ級王者比嘉大吾(22=白井・具志堅スポーツ)を鍛え上げる名物トレーナー、野木丈司氏(57)に話を聞いた。

防衛戦が決まりポーズをとるWBC世界フライ級王者の比嘉大吾(2018年2月19日撮影)

 「羽生さん、小平さん、ああいうすばらしさに近づきたいですよね」。

 4月15日に横浜アリーナで愛弟子が挑む同級2位クリストファー・ロサレス(23=ニカラグア)との防衛戦に向けた調整について質問を向けると、いの一番にそんな感嘆が返ってきた。

 前日18日に平昌五輪スピードスケート女子500メートルで小平奈緒が金メダルを獲得したばかり。17日にはフィギュアスケート男子で羽生結弦が66年ぶりの2連覇を成し遂げた。

 同氏は元プロボクサーながら千葉・佐倉高時代は陸上部に在籍。シドニー金メダリストの女子マラソン高橋尚子らを育てた小出義雄監督の薫陶を受けた。五輪を観戦しているのは五輪競技(ボクシングはアマチュアが参加)出身の出自もあるだろうが、すごく視野が広く、比嘉の強さの源を感じた。

野木丈司トレーナー(左)と二人三脚でフィジカルトレに臨む比嘉大吾

 というのは、その「すばらしさ」についてこう続けたから。「全体的な強さがある。だからああいう状態でも勝てるんですよね」。それは右足首の負傷で試合は4カ月ぶりのぶっつけだった羽生を指した言葉で、「それがあるから自信もあるし、動きも美しくなると思うんです」と25連勝とした小平のスケーティング技術にも対象を向けた。そして、「大吾も最近の発言をみるとね…」。

 比嘉は2月4日に37年ぶりとなる故郷沖縄での世界戦で、1回KOで日本記録に並ぶ15連続KO勝ちで防衛に成功した。その時を振り返り、「『調子悪くても自分の方が少し上』と言っていたでしょう。いいですねえ、あれは」とニッコリした。「勝負の舞台では100%の力を出せないものですよね。ただ絶対的な力量差があれば、それでも相手を封じ込めることはできる。本人も(普段から)猛練習している意味を理解しているのかな」。猛烈な練習の意図を自然と体得していそうな教え子の発言だった。

15連続KO勝ちで防衛に成功した比嘉大吾(左)は具志堅用高会長と笑顔を見せる(2018年2月4日撮影)

 次戦は日本新記録の16連続KO記録がかかる。試合間隔2カ月にも、比嘉は「何の問題もない。1回から12回のどこかで必ず倒す」と意に介さない。「すばらしい」強さでの快勝を期待したい。【阿部健吾】