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WWEの世界

ロウとスマックダウンの最高位王座が統一、22年ベスト男子レスラーは誰?トップ10選定を紹介

WWEヘビー級、ユニバーサル王者として君臨したローマン・レインズ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第49回WWEの世界>

22年が終わる。ロウとスマックダウンの最高位王座となるWWEヘビー級王座、WWEユニバーサル王座、そしてロウ・タッグ王座、スマックダウン・タッグ王座が統一されるなど、両ブランドの選手たちが入り乱れた1年となった。22年のWWEマットで活躍したトップレスラーは誰か? 海外メディアのランキングの男子レスラー編を紹介し、今年を締めくくる。

◇  ◇  ◇  ◇

このほど英スポーツメディア「GIVE ME SPORTS」選定のWWE男子レスラー22年トップ10が発表された。男子はビッグE、ランディ・オートン、コーディ・ローデスといった主力メンバーが故障で長期離脱した一方、両ブランドのシングル、タッグ王座が統一されたことで「一極集中」した1年となった。10位から順に紹介する。

【10位】フィン・ベイラー

USヘビー級王座を獲得したことに加え、本格的にヒール転向。悪党集団「ザ・ジャッジメント・デイ」のリーダーとしてAJスタイルズ率いるユニットO・G(オリジナル・クラブ)との抗争でマットを盛り上げた。

【9位】ウーソズ(ジェイ、ジミーのウーソ兄弟)

ロウ、スマックダウン・タッグ統一王者として君臨。WWEの歴史の中でもっとも長く王座を保持するタッグ王者となっている。WWEヘビー級、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズ、ソロ・シコアら親族、「名誉兄弟」サミ・ゼインを加えたユニット、ザ・ブラッドラインが1年間、WWEをけん引したと言っていい。

【8位】ドリュー・マッキンタイア

22年前半はハッピー・コービン、マッドキャップ・モスとの抗争をステップに統一王者レインズとの開始。夏に調子を上げ、30年ぶりの英スタジアム大会となったクラッシュ・アット・ザ・キャッスル大会でレインズ挑戦した。負けはしたものの、プロボクシングWBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリーとの友情でメインを締めた。

【7位】ケビン・オーエンズ

4月のレッスルマニア38大会で19年ぶりの試合復帰となった“ストーンコールド”スティーブ・オースチンと対戦。WWEファンを熱くさせた。ファンを引きつけるトークと万能のレスリング能力で存在感を示し、現在はブラッドラインの「名誉兄弟」となった元盟友サミ・ザインとの抗争でマットを盛り上げている。

【6位】シェイマス

親友でもあるマッキンタイア、グンターとのシングル戦で存在感を示しつつ、ユニット対決でも目立った。ブッチ、リッジ・ホランドとともにユニット、ブロウイング・ブルーツとして活動。インペリウム(グンター、ルドヴィグ・カイザー、ジョバンニ・ビンチ)との抗争に続き、その後もザ・ブラッドラインと激突し、11月のサバイバーシリーズ大会での男子ウオーゲームズでも激しファイトをみせた。

【6位】ボビー・ラシュリー

46歳になっても「筋肉魔人」の愛称通り、パワフルだった。20歳代と変わらないような軽快な動きをリングでみせ、才能の幅を見せつけている。またトーク能力も飛躍的に向上し、ファンのくぎ付けにしている。WWEヘビー級王座を2度戴冠し、待望のブロック・レスナー戦も実現させた。

【4位】グンター

大型のオーストリア人レスラーとしてスマック談に登場。ユニットのインペリアムとして活動し、WWEインターコンチネンタル王座も半年以上保持。中邑真輔との抗争もあった。来年にはブロック・レスナーとの対決もうわさされるなど期待のレスラーとして期待度は大きい。

【3位】サミ・ゼイン

毎週のテレビ中継される大会で常に動き、問題を起こす。それがWWEリングの大きな波となっている。レスリングスタイル、トーク能力ともにファンをひきつけるオールラウンドな選手。今は「名誉兄弟」としてザ・ブラッドラインで問題を起こし、火種となっている

【2位】セス・ロリンズ

今年もタイトル戦線にも絡みつつ、個人抗争でも目立つタレント性あふれる看板選手として活躍した。AEWから移籍してきたコーディ・ローデスとの抗争、リドルとの全面戦争に加え、年初からユニバーサル王座を巡ってレインズと対戦し、USヘビー級王座を巡ってラシュリーと闘ってUSヘビー級王座も保持するなどメインイベンターの1人として輝いた。

【1位】ローマンレインズ

統一王者として、人気ユニット、ブラッドラインのリーダーとして常にWWEマットの中心にいた。4月のレッスルマニア38大会以降、WWEヘビー級、ユニバーサル王者として君臨。今年途中からフルタイムから試合出場を選ぶスポット参戦契約に変更され、登場回数は減ったものの、ほぼすべてのレスラーを倒してきた。

スマックダウンに所属する日本勢の中邑真輔は仲間のリック・ブーグスが4月のレッスルマニア38大会以降に負傷離脱したことで勢いが止まってしまったことが残念でならない。1月1日にはWWEと契約しつつ、異例中の異例となるノアに参戦。グレート・ムタと対戦する。世界が注目する1戦が23年の起爆剤になるかもしれない。ロウ所属の戸沢陽、NXT所属のイケメン二郎の躍進も待ちたいところだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

ロウ、スマックダウン統一タッグ王者としてWWEを盛り上げたウーソズ(左がジェイ・ウーソ、右がジミー・ウーソ)(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
ザ・ブラッドラインの「名誉兄弟」として活躍したサミ・ゼイン(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWEインターコンチネンタル王者として、ユニット「インペリアム」のリーダーとして活動したグンター(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
年間通じ、タイトル戦線、個人闘争でメインイベンターとして活躍したセス・ロリンズコピー(C) WWE, Inc. All Rights Reserved.
本格敵なヒール転向し、悪党集団ザ・ジャッジメント・デイを率いるフィン・ベイラー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
「筋肉魔人」としてWWEマットを暴れたボビー・ラシュリーコピーライト2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

ロウとスマックダウンの最高位王座が統一、22年ベスト男子レスラーは誰?トップ10選定を紹介

WWEヘビー級、ユニバーサル王者として君臨したローマン・レインズ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第49回WWEの世界>

22年が終わる。ロウとスマックダウンの最高位王座となるWWEヘビー級王座、WWEユニバーサル王座、そしてロウ・タッグ王座、スマックダウン・タッグ王座が統一されるなど、両ブランドの選手たちが入り乱れた1年となった。22年のWWEマットで活躍したトップレスラーは誰か? 海外メディアのランキングの男子レスラー編を紹介し、今年を締めくくる。

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このほど英スポーツメディア「GIVE ME SPORTS」選定のWWE男子レスラー22年トップ10が発表された。男子はビッグE、ランディ・オートン、コーディ・ローデスといった主力メンバーが故障で長期離脱した一方、両ブランドのシングル、タッグ王座が統一されたことで「一極集中」した1年となった。10位から順に紹介する。

【10位】フィン・ベイラー

USヘビー級王座を獲得したことに加え、本格的にヒール転向。悪党集団「ザ・ジャッジメント・デイ」のリーダーとしてAJスタイルズ率いるユニットO・G(オリジナル・クラブ)との抗争でマットを盛り上げた。

【9位】ウーソズ(ジェイ、ジミーのウーソ兄弟)

ロウ、スマックダウン・タッグ統一王者として君臨。WWEの歴史の中でもっとも長く王座を保持するタッグ王者となっている。WWEヘビー級、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズ、ソロ・シコアら親族、「名誉兄弟」サミ・ゼインを加えたユニット、ザ・ブラッドラインが1年間、WWEをけん引したと言っていい。

【8位】ドリュー・マッキンタイア

22年前半はハッピー・コービン、マッドキャップ・モスとの抗争をステップに統一王者レインズとの開始。夏に調子を上げ、30年ぶりの英スタジアム大会となったクラッシュ・アット・ザ・キャッスル大会でレインズ挑戦した。負けはしたものの、プロボクシングWBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリーとの友情でメインを締めた。

【7位】ケビン・オーエンズ

4月のレッスルマニア38大会で19年ぶりの試合復帰となった“ストーンコールド”スティーブ・オースチンと対戦。WWEファンを熱くさせた。ファンを引きつけるトークと万能のレスリング能力で存在感を示し、現在はブラッドラインの「名誉兄弟」となった元盟友サミ・ザインとの抗争でマットを盛り上げている。

【6位】シェイマス

親友でもあるマッキンタイア、グンターとのシングル戦で存在感を示しつつ、ユニット対決でも目立った。ブッチ、リッジ・ホランドとともにユニット、ブロウイング・ブルーツとして活動。インペリウム(グンター、ルドヴィグ・カイザー、ジョバンニ・ビンチ)との抗争に続き、その後もザ・ブラッドラインと激突し、11月のサバイバーシリーズ大会での男子ウオーゲームズでも激しファイトをみせた。

【6位】ボビー・ラシュリー

46歳になっても「筋肉魔人」の愛称通り、パワフルだった。20歳代と変わらないような軽快な動きをリングでみせ、才能の幅を見せつけている。またトーク能力も飛躍的に向上し、ファンのくぎ付けにしている。WWEヘビー級王座を2度戴冠し、待望のブロック・レスナー戦も実現させた。

【4位】グンター

大型のオーストリア人レスラーとしてスマック談に登場。ユニットのインペリアムとして活動し、WWEインターコンチネンタル王座も半年以上保持。中邑真輔との抗争もあった。来年にはブロック・レスナーとの対決もうわさされるなど期待のレスラーとして期待度は大きい。

【3位】サミ・ゼイン

毎週のテレビ中継される大会で常に動き、問題を起こす。それがWWEリングの大きな波となっている。レスリングスタイル、トーク能力ともにファンをひきつけるオールラウンドな選手。今は「名誉兄弟」としてザ・ブラッドラインで問題を起こし、火種となっている

【2位】セス・ロリンズ

今年もタイトル戦線にも絡みつつ、個人抗争でも目立つタレント性あふれる看板選手として活躍した。AEWから移籍してきたコーディ・ローデスとの抗争、リドルとの全面戦争に加え、年初からユニバーサル王座を巡ってレインズと対戦し、USヘビー級王座を巡ってラシュリーと闘ってUSヘビー級王座も保持するなどメインイベンターの1人として輝いた。

【1位】ローマンレインズ

統一王者として、人気ユニット、ブラッドラインのリーダーとして常にWWEマットの中心にいた。4月のレッスルマニア38大会以降、WWEヘビー級、ユニバーサル王者として君臨。今年途中からフルタイムから試合出場を選ぶスポット参戦契約に変更され、登場回数は減ったものの、ほぼすべてのレスラーを倒してきた。

スマックダウンに所属する日本勢の中邑真輔は仲間のリック・ブーグスが4月のレッスルマニア38大会以降に負傷離脱したことで勢いが止まってしまったことが残念でならない。1月1日にはWWEと契約しつつ、異例中の異例となるノアに参戦。グレート・ムタと対戦する。世界が注目する1戦が23年の起爆剤になるかもしれない。ロウ所属の戸沢陽、NXT所属のイケメン二郎の躍進も待ちたいところだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

ロウ、スマックダウン統一タッグ王者としてWWEを盛り上げたウーソズ(左がジェイ・ウーソ、右がジミー・ウーソ)(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
ザ・ブラッドラインの「名誉兄弟」として活躍したサミ・ゼイン(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWEインターコンチネンタル王者として、ユニット「インペリアム」のリーダーとして活動したグンター(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
年間通じ、タイトル戦線、個人闘争でメインイベンターとして活躍したセス・ロリンズコピー(C) WWE, Inc. All Rights Reserved.
本格敵なヒール転向し、悪党集団ザ・ジャッジメント・デイを率いるフィン・ベイラー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
「筋肉魔人」としてWWEマットを暴れたボビー・ラシュリーコピーライト2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

22年WWEマットを駆け抜けた女子レスラーは誰か? アスカやブレアらトップ10選定

WWE女子タッグ王座返り咲き、女子ウォームズ戦勝利に貢献するなど22年も突っ走ったアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第48回WWEの世界>

22年も残り1週間となった。今夏からWWEの現場責任者が会長兼CEOだったビンス・マクマホン氏からトリプルH氏に変更され、コロナ禍による経費削減で解雇されていた選手たちが次々とカムバック。多くの因縁も生まれた1年だった。今年のWWEマットで活躍したトップレスラーは誰か? 海外メディアのランキングを紹介しながら、主要選手たちの躍動ぶりを振り返る。今回は女子レスラー編。

◇  ◇  ◇  ◇

このほど英スポーツメディア「GIVE ME SPORTS」選定のWWE女子レスラー22年トップ10が発表された。年間を通じて数多くの選手が加入、休養しており、入れ替わりの激しい1年と紹介しつつ、WWEの女子10人を選んでいる。

【10位】シャーロット・フレアー

WWEで「女王様」と言われるフレアーは今年5月のレッスルマニア・バックラッシュ大会でロンダ・ラウジーとのアイ・クイット(降参)形式スマックダウン女子王座戦で敗退。その直後から無期限の活動停止が発表されたが、5月までは女王様として存在感を示していた。プライベートでオール・エリート・レスリング(AEW)所属のアンドラデと結婚し、今はリング復帰へのタイミングを待っている状況か。

【9位】サーシャ・バンクス

ナオミとのコンビでレッスルマニアでWWE女子タッグ王座を獲得したが、防衛戦が組まれないとして不満を爆発させ、5月16日のロウ大会を無断欠場。そのまま同王座剥奪となった。俳優業もこなす人気レスラーだが、ナオミとともにWWEから離れている。

【8位】ロンダ・ラウジー

1月のロイヤルランブル大会の女子ロイヤルランブル戦(30人出場時差式バトルロイヤル)で優勝し、スマックダウン女子王座を2度戴冠。しかしGIVE ME SPORTSでは元UFC女子バンタム級王者でもあるラウジーに対し「プロレスは勝敗だけではない」と解説。今年中盤以降のヒール転向がファンの支持を得ていないことを指摘した。

【7位】リブ・モーガン

「かわいい系」レスラーとして人気上昇していたところでマネー・イン・ザ・バンク大会での女子ラダー戦を初制覇。王者ロンダ・ラウジーを下し、スマックダウン女子王座を初めて獲得した。王座保持期間は長くなかったものの、キャリア最高の1年になったことは間違いない。

【6位】ベイリー

昨年7月、練習中にひざを故障し、前十字靱帯(じんたい)損傷。今年7月の真夏の祭典サマースラム大会で復帰した。その際、イヨ・スカイ(紫雷イオ)、ダコタ・カイとユニット結成を示し、現在は3人でダメージCTRL(コントロール)としてWWE女子戦線をかき回している。ロウ女子王者ビアンカ・ブレアへの挑戦は失敗したものの、スカイ、カイのWWE女子タッグ王座獲得もサポートするなどWWEマットに新しい波を起こしている。

【5位】アスカ

22年にシングル王座は獲得できなかったが、アレクサ・ブリスとWWE女子タッグ王座に返り咲き。11月のサバイバーシリーズ大会では女子ウォーゲームズ(5対5チーム戦)で毒霧噴射してチームの勝利をアシスト。GIVE ME SPORTSでは「ここ数年でWWEが獲得した絶対的なレスラーの1人。間違いなく史上最高の日本人スター」と紹介されている。現在は「旅に出る」と一時的な活動休止状態に。

【4位】マンディ・ローズ

昨年10月にNXT女子王座獲得後、SNSなどのセクシー投稿も後押しに「妖艶女王」として人気者に。NXT女子王座保持は1年以上続き、ジジ・ドリン、ジェイシー・ジェインとのユニット、トキシック・アトラクションはNXTで人気を博した。しかし有料SNSでのセクシーすぎる投稿が契約違反と認定され、今月中旬に解雇された。

【3位】リア・リプリー

フィン・ベイラー、ダミアン・プリースト、ドミニク・ミステリオの男子トリオの中で1人、女子レスラーとしてユニット、ザ・ジャッジメント・デイで活動。身長171センチで筋肉質の肉体を持ち、男子との乱闘でも負けない。最近では戸沢陽とのシングル戦でも勝利するなど男子顔負けのパワフルな活躍が高く評価されたようだ。

【2位】ベッキー・リンチ

ヒールの「ビッグタイム・ベックス」として今年前半を走り抜け、4月のレッスルマニアまではロウ女子王者として躍動。7月の真夏の祭典サマースラム大会でビアンカ・ブレアに敗れた後に再び本来の「ザ・マン(超雄)」というベビーフェースに戻った。約3カ月ほどの休養後、11月にリング復帰し、ダメージCTRLらとの抗争を続ける。

【1位】ビアンカ・ブレア

WWEのビッグマッチとなる年間最大の祭典レッスルマニア大会、真夏の祭典サマースラム大会で、ベッキーリンチに連勝。ダメージCRTL結成で勢いづくベイリーも撃破。11月のサバイバーシリーズ大会の女子ウィーゲームズ戦では「大将」として勝利に貢献するなど大活躍だった。

豊富な選手数で年間を通じて活躍するのが難しいWWEマットで22年の1位に輝いたのはブレアだった。ロウ女子の「顔」として十分すぎる活躍をみせており、文句なしのトップとなるだろう。日本勢ではアスカが5位にランキング入り。現在、WWE女子タッグ王座を保持するスカイが来年ランキング入りする可能性は十分ありそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

今年7月から戦列復帰しダコタ・カイ(左端)、イヨ・スカイ(右端)とWWE女子戦線をかき回したベイリー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
スマックダウン女子王座獲得など22年にブレークした「かわいい系」レスラーのリブ・モーガン(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
22年にスマックダウン女子王座を2度戴冠したロンダ・ラウジー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
ロウ女子王者として絶対的な存在感を示したビアンカ・ブレア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
結婚を契機に22年5月からリングを離れている「女王様」シャーロット・フレアー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

新試合形式「アイアン・サバイバー・チャレンジ」とは、主要ルールなど概要を紹介

NXTの選手育成開発部門・上席執行役員のショーン・マイケルズ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第47回WWEの世界>

10日(日本時間11日)に米フロリダ州オーランドでWWEのNXTデッドライン大会が開催される。目玉カードの1つとなるのは新試合形式「アイアン・サバイバー・チャレンジ」。5人の選手が25分間でフォール、サブミッション(関節技)、反則によるポイント獲得で勝利を目指す。優勝者には王座挑戦権も与えられる。今回の出場選手の決定方法、主要ルールなど概要を紹介する。

◇  ◇  ◇  ◇

プレミアム・ライブイベントのNXTデッドライン大会が1週間後に迫った。

11月中旬、NXTの選手育成開発部門の上席執行役員「HBK(ハート・ブレーク・キッド)」ことショーン・マイケルズが新試合形式「アイアン・サバイバー・チャレンジ」の概要を発表。

<1>5選手が25分間の試合でファイト

<2>2選手で試合開始され、その後5分ごとに1選手ずつ追加

<3>フォール、サブミッション、反則で1ポイントを獲得

<4>フォールされた選手は90秒間ペナルティーボックス待機

<5>25分間で最も多くのポイントを獲得した選手が勝者

というルールが紹介された。優勝者はアイアン・サバイバーと呼ばれ、NXT王座、NXT女子王座への挑戦権を獲得することになる。

11月29日配信のNXT大会ではマイケルズがWWE殿堂入りを果たしているロードドッグ、アランドラ・ブレイズ、Xパック、モーリー・ホーリーを集めて出場選手選考会議を開いた。マイケルズは「NXTデッドライン大会は今年最後のNXTプレミアム・ライブ・イベントだ。年間を通して活躍したベストな5選手を選択したい」と提案。WWE殿堂者たちの意見に耳を傾け、出場候補者たちを絞りこんだ。

この会議を通じ、男子アイアン・サバイバー・チャレンジには、カーメロ・ヘイズ、JDマクドナ、グレイソン・ウォーラー、ジョー・ゲイシー。女子アイアン・サバイバー・チャレンジには、ロクサーヌ・ペレス、コーラ・ジェイド、ゾーイ・スターク、キアナ・ジェームスの男女各4人が決定。王座挑戦経験者を中心に選ばれた。

ペレスは「WWE殿堂者たちが私を選んでくれた。次のステップへの準備はできてるし、NXT女子王座の次期挑戦権を奪取する」と意気込みを示した。また男女の残り1枠については次週のNXT大会で、ワイルドカード3WAY形式マッチで決めることで合意。男子はヴォン・ワグナー、アクシアム、アンドレ・チェイス、女子はウェンディ・チュー、ファロン・ヘンリー、インディ・ハートウェルで争うことが決まった。

ポイント獲得で勝者が決まるという新試合形式でもあり、ルール説明から出場選手選考まで概要が丁寧に説明されてきた。22年のNXTをけん引してきた男子王者ブロン・ブレイカー、女子王者マンディ・ローズに挑むレスラーが決まるという「副賞」も分かりやすい。勝ち抜くアイアン・サバイバーは誰になるのか? 1年間を締めくくるビッグイベントで23年に向けたNXTの次なる「主役」が決まる。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

NXTの選手育成開発部門・上席執行役員のショーン・マイケルズ(中央)がWWE殿堂入り4人を集めて会議(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
10日NXTデッドライン大会で開催される女子アイアン・サバイバー・チャレンジの出場選手(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
10日NXTデッドライン大会で開催される男子アイアン・サバイバー・チャレンジの出場選手(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

アスカVSイヨ・スカイ第2幕は異色の5対5チーム戦 26日ウォーゲームズ戦で実現

アスカ(前冽左から2番目)VSイヨ・スカイ(後列左から2番目)の第2幕となる5対5女子ウォーゲームズ戦コピーライト2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第46回WWEの世界>

アスカVSイヨ・スカイ(紫雷イオ)の「第2幕」は異色の5対5によるチーム戦で実現する。WWE女子タッグ王座戦で2度激突した両者は26日(日本時間27日)に開催されるプレミアム・ライブイベント、サバイバーシリーズ大会ウォーゲームズ(米マサチューセッツ州ボストン・TDガーデン)で組まれた女子ウォーゲームズ戦で対戦。WWEでは傘下のNXTで17年から行われてきた2つのリング、ケージ(金網)を使用した独特のチーム戦となる。約1週間後に迫った日本女子対決&異色の試合形式についてクローズアップする。

◇  ◇  ◇  ◇

アスカはアレクサ・ブリス、スカイはダコタ・カイをパートナーにWWE女子タッグ王座で2度激突してきたが、今度は5対5での顔合わせとなる。ロウ女子王者ビアンカ・ブレアのもとアスカはブリス、ミア・イムと未発表の5人目とともにブレア軍入りした。一方、スカイは同じユニット「ダメージCTRL(コントロール)」のベイリーのもと、カイ、ニッキー・クロス、リア・リプリーの5人でベイリー軍に加わった。現在もアスカ-スカイ間の抗争はヒートアップを続けている。

ウォーゲームズは87年にダスティ・ローデスがNWAで行われていた試合形式に由来する。その後、JCP(ジム・クロケット・プロモーション)やWCWのイベントとして組まれた。WWEでは17年11月のNXTで初開催された。屋根のない長方形のケージ(金網)に囲われた隣り合わせで並んだ2つのリングで行われた。これまでは2チーム、あるいは3チームによる対決で開催され、3~5人が1チームを構成。各チームの1人が同時にケージに入った5分後に「アドバンテージ権」を持つチームから選手が加わる。

アドバンテージ権として一時的に2対1の数的優位な時間帯がつくられた後、2分ごとに各チームから選手が加入。全員が入場してから試合開始となる。激しい試合内容となるものの、19年からは初めて女子ウォーゲームズ戦も開催され、実際に紫雷イオ時代のスカイが出場している。

今年のウォーゲームズ戦ルールも既に発表されている。2チームが別々のケージに収容され、各チームから1人のメンバーが試合を開始。5分後に「アドバンテージ権」を持つチームから1人が試合に参加。3分間隔で各チームのメンバーが交互に試合に入る。すべての選手が参加した時点でウォーゲームズのスタートとなり、勝利はピンフォールかサブミッション(関節技による一本勝ち)となる。週明けのロウ大会では女子ウォーゲームズの「アドバンテージ権」を懸けた試合が組まれることも発表されている。

実際、同形式で試合出場しているスカイの経験値は大きいだろう。一方、アスカも過去のサバイバーシリーズ大会で恒例カードだったブランド対抗5対5エリミネーション戦に出場、勝利している。両者ともにチーム戦独特の展開をイメージしているだろう。緊張感高まる日本女子勢2人の抗争が異色の試合形式を通じ、どのように展開するのかが注目される。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

19年のNXT女子ウォーゲームスに出場したイヨ・スカイ(左)コピーライト2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
屋根のない長方形のケージで囲まれた2つのリングで5対5チーム戦が行われるウォーゲームズコピーライト2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWE傘下のNXTで17年11月のテイクオーバー大会から開始された5対5ウォーゲームズ戦のリングコピーライト2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

王者アスカ組VS挑戦者イヨ・スカイ組、日本人同士の中東決戦などクラウン・ジュエル見どころ

WWE女子タッグ王者アスカ(左端)、アレクサ・ブリス(同2番目)とイヨ・スカイ(同3番目)、ダコタ・カイ組が中東で激突(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserve

<第45回WWEの世界>

アスカ、イヨ・スカイ(紫雷イオ)の日本女子勢が初めて中東興行に参戦する。日本時間6日のクラウン・ジュエル大会がサウジアラビア・リヤドで開催される。WWE女子タッグ王者アスカ、アレクサ・ブリス組が前王者スカイ、ダコタ・カイ組の挑戦を受ける。3年前に初めて同興行で女子マッチが組まれたが、女性の行動制限が厳しいサウジアラビアで、ついに日本人対決が組まれた。今年のクラウン・ジュエル大会の見どころを紹介する。

◇  ◇  ◇  ◇

WWEが初めてサウジアラビア開催のクラウン・ジュエル大会で女子マッチを組んだのは19年10月。ナタリヤ-レイシー・エバンス戦が最初だった。以後、組まれた女子マッチは3試合しかない。アスカ組-スカイ組のWWE女子タッグ王座戦は4試合目となる。

10月31日のロウ大会で王者スカイ、カイ組から王座を奪ったばかりのアスカ、ダイレクトリマッチで王座奪回を狙うスカイはサウジアラビアでの前日会見に出席。20年4月以来、約2年6カ月ぶりのWWE女子タッグ王座返り咲きとなったアスカは「(スカイ所属ユニット)ダメージCTRL(コントロール)は私とアスカにかなわない」と挑発すれば、スカイも「私の王座を取り戻す。私たちの王座だぞ」とにらみ合いを展開した。

サウジアラビアはイスラム教徒が主流で、女性の行動制限が厳しいことで有名。宗教的に全身を包むアバヤと呼ばれる黒い布で肌の露出を極力抑え、隠さなければならない。これまで出場した女子選手は上半身にTシャツを着用し、通常のコスチュームではなく、肌の露出を抑えた姿でファイトした。アスカ、スカイもいつもと違うスタイルで出場するとみられており、1つの注目点となる。

メインでは、WWEヘビー、ユニバーサル王者ローマン・レインズが人気ユーチューバー兼格闘家ローガン・ポールの挑戦を受ける。ポールのセコンドには同じく人気ユーチューバー兼プロボクサーの弟ジェイクが入る。サウジアラビアではポール兄弟の人気が絶大で、今回、統一王座の挑戦者に抜てきされた経緯もある。4日の記者会見にポールはラクダに乗って登場し「(レインズを)めちゃくちゃにしてやる」と挑発し、現地ファンを喜ばせた。

また身長221センチの「巨人」オモス-身長211センチの「巨獣」ブラウン・ストローマンの“ビッグ対決”も話題を呼んでいる。前日会見では両者が計量に臨み、オモスは416・66ポンド(約188・99キロ)、ストローマンは335ポンド(151・95キロ)だった。両者合わせて約340キロの肉弾戦。元WWEユニバーサル王者となるストローマンは「俺がモンスターの中のモンスター」と豪語した。

アスカ-イヨ・スカイ戦をはじめ、人気ユーチューバー、ローガン・ポールの王座初挑戦、オモス-ストローマンの巨人対決など話題豊富なクラウン・ジュエル大会。他にも「野獣」ブロック・レスナー-「筋肉魔人」ボビー・ラシュリーのシングル戦、新日本プロレスの王座戦をキャンセルしたNEVER無差別級王者カール・アンダーソンの6人タッグ戦など日本でおなじみのレスラーたちも参戦予定。WWEが繰り広げる中東興行も見逃せない。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

<クラウン・ジュエル大会主要カード>

<1>WWEヘビー、ユニバーサル統一王座戦=王者ローマン・レインズ-挑戦者ローガン・ポール

<2>スチールケージ形式シングル戦=ドリュー・マッキンタイア-カリオン・クロス

<3>ロウ、スマックダウン統一タッグ王座戦=王者ウーソズ(ジェイ、ジミーのウーソ兄弟)-リッチ・ホランド、ブッチ組

<4>ラストウーマン・スタンディング形式ロウ女子王座戦=王者ビアンカ・ブレア-挑戦者ベイリー

<5>シングル戦=ブラウン・ストローマン-オモス

<6>6人タッグ戦=AJスタイルズ、カール・アンダーソン、ルーク・ギャローズ組-フィン・ベイラー、ダミアン・プリースト、ドミニク・ミステリオ組

<7>シングル戦=ブロック・レスナー-ボビー・ラシュリー

<8>WWE女子タッグ王座戦=王者アスカ、アレクサ・ブリス組-イヨ・スカイ、ダコタ・カイ組

◆配信 クラウン・ジュエル大会は6日午前1時よりWWEネットワークで配信

アレクサ・ブリス(左)とWWE女子タッグ王座ベルトを掲げて喜ぶアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserve
アスカ(右)にミサイルキックを放つイヨ・スカイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserve
ロウ女子王者ビアンカ・ブレア(中央)に祝福されるWWE女子タッグ王者アスカ(左端)とアレクサ・ブリス組(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserve

「妖艶女王」マンディ・ローズら所属のNXTの未来は?現場責任者トリプルHの“W杯”構想

NXT女子王者として君臨する「妖艶女王」マンディ・ローズ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved

<第44回WWEの世界>

WWEでロウ、スマックダウンに続く第3のブランド、NXTが7月以降、変わりつつある。22日(日本時間23日)には同ブランドとして22年初のプレミアム・ライブイベント、NXTハロウィーン・ハボック大会が米オーランドで開催される。9月に英ロンドンを拠点にしたNXT・UKが終了。来年にはNXTヨーロッパ設立が予告される。NXTを統括するショーン・マイケルズ(57)、WWEマットの現場責任者となるトリプルH(53)が計画するNXT構想に迫る。

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日米マットで活躍したリック・スタイナー(61)の息子となるブロン・ブレイカー(25)が王者、そして「妖艶女王」マンディ・ローズ(31)が女子王者に君臨しているNXTが変貌しつつある。育成部門とされながらも、現在はロウ、スマックダウン所属のレスラーも登場。「キング・オブ・ストロングスタイル」中邑真輔(42)も3年ぶりにNXTマットに立った。を現在はUSAネットワークで毎週水曜日に生中継されており、人気ブランドとなっている。

12年、トリプルH肝いりで設立され、第3ブランドとして世界各国の団体からのトップレベルの選手を獲得。レベルも上がった。21年には「NXT2.0」としてリニューアルされ、育成重視になったと思われたが、今年7月にビンス・マクマホン会長兼CEOが引退表明した後、再び「NXT」に戻っていた。

現在、NXTの現場を仕切るのはWWEでトップスターとして活動した「HBK(ハートブレイク・キッド)」が愛称のショーン・マイケルズとなる。16年にWWEの「道場」パフォーマンスセンターでトレーナーとして働き始め、18年にNXTプロデューサーに就任。米メディアのインタビューでマイケルズは「NXTからNXT2.0となり、そして現在、そのハイブリッドになった」と進化の様子を口にした。

さらに「WWE、レスリングビジネス全体が楽しさ、エンターテインメントに戻ろうとしている。将来、ロウやスマックダウンのレスラーとなる選手を育成することに興奮している」と付け加えた。1度はロウに“昇格”したローズがNXTに戻った後に人気が高まったような例もあり、ファンはNXTがロウ、スマックダウンと並ぶブランドと認識しているほどだ。

現在、NXTのさらなる育成マットとなる「NXTレベルアップ」が誕生。今月には「NXTデッドライン」という商標が登録されるなどブランド内でレベル分けが始まるムードがある。さらにマクマホン氏に代わり、WWEの全現場を統括する立場となったトリプルHはNXTの世界的な拡大を計画。NXT・UKの終了と同時に来年のNXTヨーロッパの設立を発表し「NXTヨーロッパを世界中にもたらすことが意図。NXTオーストラリア、NXT南アフリカ、南米、メキシコ…これらがすべてW杯のようなシステムにしたい」との構想を明かした。

「W杯」と呼称するだけに、世界一を決めるプランとなる。トリプルHは「NXTのW杯決勝があり、ある年はロンドン、翌年にメキシコシティーで開催されるかもしれない」とのビジョンまで明かした。来年30周年を迎えるロウ、24年目に突入しているスマックダウンという歴史の長いブランドを伝統的に継続。と同時に、設立10年が経過したNXTを米国以外で盛り上げるイメージは膨らむ。いずれ日本、インドなどアジアと広がる可能性もあるだろう。来年以降のNXTにも目が離せなくなりそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

NXTを統括する「HBK」ショーン・マイケルズ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved

解雇された巨獣、紫の妖精、夫婦ユニットらがトリプルH新体制で次々と復帰

<第43回WWEの世界>

WWEマットはビンス・マクマホン会長&CEO(77)の引退後、トリプルH(53)がクリエーティブ部門と選手関連部門の現場責任者に就任した。20~21年まで新型コロナウイルスの影響による経費削減のために選手、スタッフら100人以上が解雇&契約満了となったが、新体制移行とともに退団した選手たちが復帰している。第43回「WWEの世界」は10月1日現在でWWEにカムバックした主要メンバーたちの現状をまとめた。

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<1>ブラウン・ストローマン(39) 最高位王座の1つ、WWEユニバーサル王座も獲得し、「巨獣」の愛称を持つ人気レスラーだったが、昨年6月に突然、解雇。他団体と契約することなく、今年9月5日のロウ大会から電撃復帰。チャド・ゲイブル、オーティスのユニット「アルファアカデミー」らと標的に大暴れしている。

元WWEユニバーサル王者の「巨獣」ブラウン・ストローマン(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<2>カリオン・クロス(37)&スカーレット夫人(31) WWE傘下のNXTでNXT王座2度の戴冠した実力派。ルーマニア系米国人のスカーレット夫人をセコンドにつけた人気夫婦コンビだったが、昨年11月に解雇。その後、「キラー・クロス」のリングネームで米団体MLWや新日本プロレスの米マットに参戦していたが、今年8月5日のスマックダウン大会で電撃カムバック。WWEヘビー、ユニバサール統一王者ローマン・レインズや元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイアと抗争を繰り広げ、最高位シングル王座獲得を狙う。

カリオン・クロス(左)とスカーレット(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<3>ダコタ・カイ(34) NXTを主戦場にしていたが、今年4月に解雇を通達。WWEマットから去ることになったが、今年7月に再契約し、ベイリー、イヨ・スカイ(紫雷イオ)との3人ユニット「ダメージCTRL(コントロール)」を結成。先月にはスカイとのコンビでWWE女子タッグ王座を獲得するなど勢いづく。現在はロウ女子王者ビアンカ・ブレア、アスカ、アレクサ・ブリスらと抗争を繰り広げる。

ベイリー(左端)、イヨ・スカイ(右端)とユニットを組むダコタ・カイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<4>ジョニー・ガルガノ(35) 16年にWWEと契約を結び、参加のNXTを主戦場としていたが、昨年12月に解雇された。8月22日のロウ大会で約9カ月ぶりに復帰し、NXT時代に盟友だったオースティン・セオリーに牙をむいている。

ジョニー・ガルガノ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<5>キャンディス・レラエ(37) ガルガノの妻で今年2月に第1子が誕生した後、同5月にWWEと契約満了。そのまま退団となっていたが、9月26日のロウ大会で再登場。背中に羽根がはえた「紫の妖精」コスチュームで入場し、復帰戦ではニッキー・A.S.Hを「102秒殺」した。

「紫の妖精」キャンディス・レラエ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<6>ヒットロウ “トップ・ドラ”AJ・フランシス、アシャンテ・ジー・アドニス、女子レスラーのF-FABの3人組ユニット。NXTで人気アップし、昨年10月にWWEドラフトでスマックダウンに昇格したものの、翌11月に急きょ解雇の憂き目に。米団体GCWなどに出場していたが、8月13日のスマックダウン大会で再びカムバック。ノリの良い男女ユニットがマットに熱を与えている。

アシャンテ・ジー・アドニス(左端)、B-FAB(中央)、トップ・ベラ・AJフランシスによるユニット「ヒットロウ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

トリプルH新体制で次にカムバックする大物として注目されているのが、“ザ・フィーンド(悪霊)”として人気レスラーだった元WWEユニバーサル王者ブレイ・ワイアット(35)だろう。21年4月のレッスルマニア37大会でランディ・オートン戦を最後にマットを離れ、同年7月にWWEを解雇。今だ他団体にも出場していない。

海外メディアのインタビューで、トリプルHは「私が今まで出会った中で最もクレイジーでクリエーティブ人の1人」と怪奇的かつ、独創性のあるレスラーとして高く評価している。またWWE女子タッグ王座を巡る問題で退団したサーシャ・バンクス、ナオミ組の復帰も期待されている。現在、解雇されたレスラーたちの復帰劇もWWEファンにとって大きな注目となっている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

米マット席巻の統一王者ローマン・レインズ率いるユニット、ザ・ブラッドラインとは?

ローマン・レインズ(前列右)率いるユニット、ザ・ブラッドラインのメンバー。後列左からジェイ・ウーソ、ジミー・ウーソ、ソロ・シコア、サミ・ゼイン。前列左はポール・ヘイマン(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved

<第42回WWEの世界>

WWEヘビー、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズ(37)率いるユニットが米マットを席巻している。そのユニット名はザ・ブラッドライン。血統を意味する名前の由来通り、レインズの親族を中心とした選手で構成される。ユニット顧問のポール・ヘイマン(57)を含めたレインズ一派のメンバーを同ユニットの歴史とともに紹介する。

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有名なプロレス一家となるアノアイ・ファミリーが結束したユニットがザ・ブラッドラインとなる。レインズがヒール転向した20年8月、ブロック・レスナーら数多くの人気レスラーのマネジャーやスポークスマンを務めてきたヘイマンを顧問として迎えたところからユニットは始まった。

◆ローマン・レインズ(37) ザ・ブラッドラインの設立者。20年8月、WWEユニバーサル王者ブレイ・ワイアット、ブラウン・ストローマンとの3WAY形式王座戦を制し、王座獲得。同王座を懸けて対戦したいとこのジェイ・ウーソを皮切りに、ジェイの双子の兄弟ジミー・ウーソも仲間に引き込んでユニットを拡大。王者としても22年4月、年間最大の祭典レッスルマニア38大会でWWEヘビー級王者ブロック・レスナーとの王座統一戦を制した。9月23日現在、ユニバーサル王座の保持期間は754日となる。

◆ジェイ・ウーソ(37) 20年9月、WWEユニバーサル王座挑戦権をつかみ、いとこの同王者レインズに挑戦したものの、陽動作戦にはまって連敗。レインズの軍門に降り「右腕」として活動開始した。ジェイがレインズへの忠誠心が強すぎた時期にジミーと意見相違で対立したものの、最終的に和解。21年7月にはレインズ、ジェイ&ジミーのウーソ兄弟、ヘイマンによる現在のユニットが誕生した。

◆ジミー・ウーソ(37) 21年7月にジミーがザ・ブラッドラインに加入し「ウーソズ」が再結成されると、すぐにジェイとタッグ戦線に殴り込みをかけた。21年7月、プレミアム・ライブイベント、マネー・イン・ザ・バンク大会でスマックダウン(SD)タッグ王者レイ・ミステリオJr.、ドミニク・ミステリオ組を下し、5度目のSDタッグ王座戴冠を果たした。22年5月にはロウ・タッグ王者ランディ・オートン、リドル組とのタッグ王座統一戦に勝利し、ユニットメンバー全員でシングル、タッグ両最高位王座を統一した。

◆ソロ・シコア(29) 「ウーソズ」の弟シコアは22年9月のWWE英国イベント、クラッシュ・アット・ザ・キャッスル大会で初登場。挑戦者ドリュー・マッキンタイアに苦戦した王者ローマン・レインズのセコンドとして姿をみせた。マッキンタイアを妨害し、レインズの王座防衛に貢献した。その直後のSD大会で新メンバーとして正式に紹介された。

◆サミ・ゼイン(38) 22年4月、マッキンタイアとの抗争を繰り広げる中でザ・ブラッドラインのロッカールームに入り込み、レインズとヘイマンに忠誠心をみせた。その後、ユニットの試合を支援し、ユニットのTシャツを着用。最終的にレインズの信頼を得た。所属メンバーの中でただ1人、血族ではない。

シングル、タッグのWWE最高位王座を独占し、今なおザ・ブラッドラインは勢力を拡大し続ける。盤石にも見える同ユニットだが、唯一の懸念材料は「裏切り」「造反」を得意とするお調子者のゼインの存在だろう。時にジェイとはリング内外で“内紛”を起こしている関係にある。ユニット内部崩壊の危機が漂うメンバー構成が、ファンの耳目を集めるという面白いユニットになっている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

ザ・ブラッドラインのメンバー。左端からジェイ・ウーソ、ポール・ヘイマン、ジミー・ウーソ、ローマン・レインズ、ソロ・シコア、サミ・ゼイン(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved

WWE女子部門席巻!イヨ・スカイら3人組「DAMAGE CTRL」とは?次のターゲットは?

イヨ・スカイ(前)、ダコタ・カイ(左後方)、ベイリーのユニット名は「DAMAGE CTRL」に決定(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第41回WWEの世界>

8月からリング復帰したイヨ・スカイ(紫雷イオ=32)、ベイリー(33)、ダコタ・カイ(34)が「DAMAGE CTRL(ダメージ・コントロール)」のユニット名で活動中だ。主戦場となるロウ大会だけでなく、別ブランドのスマックダウン大会にも登場し、次々と女子レスラーたちに「宣戦布告」している。WWE女子部門を席巻している同ユニットの命名の由来、今後のターゲットについて予想する。

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9月3日(日本時間4日)、30年ぶりのWWE英スタジアムイベントとなったクラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会(米カーディフ)でスカイ、ベイリー、カイのユニット名が正式発表された。その名もダメージCTRL(コントロール)。大型画面にユニット名が表示され、新しいユニット入場曲も流れる中、3人がステージから入場し、6万2296人の大観衆をわかせた。

早速、WWEネットワークやWWE公式ユーチューブで視聴できるトーク番組ザ・バンプの7日配信分に3人そろって参加。ユニット名の由来について明かした。カイは「最初から私たちは『コントロール』(支配)という言葉を使っていたのは、WWE女子部門で存在を確立したかったから。少しの間、(負傷や解雇で)レールから外れていたように見られていたからです」と経緯を説明した。

さらにカイは「3人には共通の目標があります。それはWWE女子部門を支配し、手に入れられるものは何でも手に入れ、支配したいということです。そして『ダメージCTRL』という名前が頭に浮かび、全員が同意したと思います」と振り返った。ダメージ・コントロールと言えば、アベンジャーズのVR作品や、劇場版スパイダーマンに登場する異星人などの残骸の処理・保管を目的とする組織を頭に思い浮かべる。世界的にも親しみやすい、認知度が高いユニット名と言えそうだ。

ダメージCTRLはユニット結成からすぐにロウ、スマックダウンの両大会に姿をみせ、次々と対立構図を演出している。最初に襲ったのは前ロウ女子王者ベッキー・リンチで肩負傷に追い込んで戦線離脱。復帰まで数カ月かかるとみられているが、リンチ復帰後は対立は必至だろう。そしてCATC大会の6人タッグで激突した現ロウ女子王者ビアンカ・ブレア、アスカ、アレクサ・ブリスとの抗争も続くに違いない。

3人の連係技でフォール負けを喫したブレアからは早速、シングル戦を要求されており、いずれ3人の誰かが王座挑戦するだろう。また将来的にはユニットに新しいメンバーが加入する可能性もある。米メディアでは早くも元WWEティーガン・ノックス、スマックダウン所属のショッツィが候補として挙がっている。

真っ先に照準を合わせているのがWWE女子タッグ王座にほかならない。次週ロウ大会では、スカイ、カイ組が同王者ラケル・ロドリゲス、アリーヤ組に再び挑戦する。8月下旬のWWE女子タッグ王座決定トーナメント決勝では敗れているだけに雪辱戦でもある。WWE女子部門を支配するユニットになるための勢いは十分にあるだけに今後の展開が楽しみだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

ロウ大会の大観衆の声援を浴びながら存在を誇示するユニット「DAMAGE CTRL」。左からダコタ・カイ、ベイリー、イヨ・スカイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
「DAMAGE CTRL」がユニット名になったダコタ・カイ(左端)、ベイリー(中央)、イヨ・スカイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
7月30日のサマースラム大会でカムバックしたイヨ・スカイ(左端)、ベイリー(中央)、ダコタ・カイの3人(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

イヨ・スカイ「インパクトある」新リングネーム変更の経緯、ユニットの絆語る/インタビュー後編

日刊スポーツのインタビューに応じたWWEのイヨ・スカイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第40回WWEの世界>

WWEの元NXT女子王者イヨ・スカイ(紫雷イオ=32)が8月からロウ所属として活躍している。9月3日(日本時間4日)、英ウェールズのカーディフで開催されるWWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会でアスカとの6人タッグ戦が決定するなど話題に事欠かない。ロウ入りを契機に新リングネームとなった経緯、約3カ月間の戦線離脱、ベイリー、ダコタ・カイとの深い絆などを日刊スポーツのインタビューで明かした。今回は後編となる。

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7月30日の真夏の祭典サマースラム大会で紫雷は新リングネームのイヨ・スカイとして姿をみせた。4月2日のNXTスタンド&デリバー大会以来、119日ぶりの登場。これに合わせて変更されたリングネームについて解説した。

「このタイミングでリングネームを変えないといけないとなりました。いくつか候補があり、私の意見が入っています。『ジーニアス・オブ・ザ・スカイ』を代名詞で使っていたので、スカイはいいかなと。日本で紫雷イオは漢字からイメージがわきやすいですし、インパクトもあると思います。一方で英語表記になるとIO(イオ)が数字の10に見えたり、IがフォントによってはLの小文字に見えたりする。ロウ・スカイと読む人もいたので、間違えにくいIYO(イヨ)はいい。今はイヨ・スカイがインパクトある、覚えやすいイメージになったと思います」

NXTからロウに所属が変わり、レスラー生活は一変した。ロウの選手となって以降、この1カ月間は慣れない移動続きのライフスタイルを体験し、WWEトップのレスラーとしての自覚もさらに確立された。

「これまでNXTは米オーランドのスタジオで収録でした。ロウになってから、例えば金、土、日、月と移動して試合するという生活サイクルになりました。これがメインロースターの生活なのかと感じています。環境が激変した感じはあります。バタバタして大変というよりも、順応していかないといけないですし。生活が新しくなると、人間なので体がこのサイクルに慣れていない。今はこのタフな生活に体が順応してくれるように、と思っています」

この多忙な生活に入る直前まで、スカイはリハビリに専念していた。NXT最後の登場となった4月のNXT大会で組まれた4WAY形式NXT女子王座戦の際、右足首の骨を折った。

「WWEからオフィシャル公開されていないけれど、ケガしていました。王座戦で場外にムーンサルトした時でした。この大会がレッスルマニアと同日開催で試合会場がバタバタだったのです。リング周辺のチェックができない状況のままで試合し、アナウンステーブルのところにつま先を強打しました。試合はアドレナリンが出ているので耐えることができましたが、激痛でしたね。最初は捻挫の診断でしたが、回復が遅いので再検査したら足首の距骨(きょこつ)が骨折していました」

3カ月近くのリハビリはコロナ禍も重なり、松葉づえ生活で、メンタル的にも苦しかった。1度、日本に帰国し、リハビリに取り組んでいたという。

「保存治療では治らず、手術が必要でした。砕けた骨と骨をつなぐボルトを入れました。体重を患部にかけてはいけない期間が2カ月。ジャンプ禁止が3カ月。松葉づえで外にも行けないし、生活用品の買い物さえも行くことができない。もともと運動をたくさんしている人間が動けないので、足の筋肉も、メンタルも落ちました。試合できない事実は変わらないのでポジティブな気持ち、落ち着いた状況で安心してリハビリできるように、と歩けるようになってから日本に戻りました。良い意味でリフレッシュできて、しっかりとリハビリ、調整ができましたね」

ベイリーをリーダーにカイと3人でユニットとして行動している。ベイリーは昨年7月、練習中に前十字靱帯(じんたい)損傷して離脱。負傷こそしていないが、カイは4月にWWEから解雇されていた。3人ともどん底を味わってからの復帰。境遇が似ていた。

「3人ともビッグカムバックだなと思います。ベイリーは長くケガで離脱し、ダコタは1度会社から解雇を言われました。彼女に解雇の連絡がきたところに周りも、私自身もすごくショックだったし『なぜ彼女が!?』という気持ちでした。彼女も精神的につらかった期間があった中での復帰で、私は私で右足を負傷していて。3人の思い入れと絆は強いです。『ここから』と3人でよく話しますし、実際に仲が良いし、2人は性格、試合を含めて素晴らしい選手、人間です。『タイミングの奇跡』という出会いです」

92年のサマースラム大会以来、30年ぶりの英スタジアム大会となるCATC大会では、この3人が同時出場する初試合になりそうだ。対戦相手にアスカ、アレクサ・ブリス、ビアンカ・ブレアと王者経験者が並ぶ6人タッグ戦という注目カードになる。大会には7万人の観衆が集結する。

「今、ベイリー、ダコタと一緒に3人が、このユニットがブレークすること、WWE女子部門を席巻していこうというのが目標です。CATC大会の何が楽しみかって3人がそろって試合するところです。私たちは3人で秘密特訓しています。新しく秘密特訓の成果をみせられると思いますので、CATC大会を楽しみにしていただければと思います」

(おわり)【取材・構成=藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスル大会は日本時間9月4日午前にWWEネットワークでライブ配信

約3カ月の長期離脱期間の負傷について明かしたWWEのイヨ・スカイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
同じユニットを組むベイリー、ダコタ・カイと目指す野望について語ったWWEのイヨ・スカイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
ロウ所属に合わせ、新リングネームのイヨ・スカイに変更した紫雷イオ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

イヨ・スカイ「WWEで1番になる」アスカとの関係、英国大会を語る/インタビュー前編

日刊スポーツの取材に応じたWWEのイヨ・スカイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第39回WWEの世界>

8月からWWEロウに昇格した元NXT女子王者イヨ・スカイ(紫雷イオ=32)が30年ぶりとなる英国スタジアム大会で日本人対決に臨む。9月3日(日本時間4日)、英ウェールズのカーディフで開催されるWWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会でアスカ(40)との6人タッグ戦が決定。約7万人が集結するWWEの英ビッグイベントで日本人同士が対決する意義、「姉御」アスカとの関係性など日刊スポーツのインタビューで明かした。今回は前編となる。

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世界のWWEファンが注目する30年ぶりの英スタジアム大会まで、1週間を切った。スカイにとってWWE加入後に初の英国でのファイトになる。ベイリー、ダコタ・カイと組み、アスカ、アレクサ・ブリス、ロウ女子王者ビアンカ・ブレア組との6人タッグ戦に向けて意気込みを口にした。

「スターダム時代に英国で試合しましたが、印象に残っているのが英国人のプロレス熱がすごいということです。今回のCATC大会は7万人がスタジアムに入ると聞き、とんでもないビッグマッチだなと思います。対戦相手にはアスカさん、超人気者のアレクサさん、王者ビアンカもいる。願ったりかなったりなシチュエーションです。日本人女性の活躍としても注目してもらえればと思います。そして、こんなに世界の大きな舞台で日本女子が頑張っているという姿をみせる舞台でもあるので見てほしいです」

日本ではアスカと10~11年に姉美央と3人でユニット「トリプルテイルズ」を組み、何度も自主興行も開催していた間柄となる。

「知っている方は少ないと思いますが、10年以上前にアスカさんと一緒にユニットを組んでいました。それほど関係性の深い選手。昔も今も『お姉さん』と思っています。尊敬する部分もすごく多い。WWEで生き残ること、地位を確立させることが、WWEに在籍していればいるほど、どれだけ難しいのか思い知らされています。自分が次のステップに進めば進むほど、それを痛感します。この道を通ってきたアスカさん、やっぱりすごいなと」

WWEでもアスカの背中を見て、走り続けてきた。現在は敵対関係にあるが、昔も今もアスカへの尊敬の念は変わらないという。

「アスカさんは常に第一線を走り続けてます。お客さんの前に来た時の歓声、存在感は確立されています。中邑(真輔)さんもそうなのですが、人気者として確立され、知名度もすさまじい。当たり前ですが、自分はまだないなと素直に認めています。この『ないもの』を積み上げるために私には何があるか。それは(ロウ昇格後の)勢いとか、シチュエーションがある。それを爆発力に変えていきます。尊敬しているからこそ、アスカさんに追いつき、いつか追い越せるようにしていきたい」

22日のロウ大会ではWWE女子タッグ王座決定トーナメント準決勝でアスカ、ブリス組と対決。タッグ戦ながら注目の日本人対決でスカイがアスカからピンフォールを奪って決勝進出を決めていた。

「(日本人対決の意識は)ファンだけでなく、もちろん私もあります。世界一の舞台で世界中が見ているすごい団体で、日本人レスラー同士が戦う場面を世界中が熱狂して見ているというのは誇らしいです。アスカさんはその状況を築きあげ、私もはい上がってきた。日本人に限らず、ここまでのぼって来られずに団体に入ることができなかった選手、入ってものぼってこられずにWWEを去っていった選手を国籍問わずにたくさん見てきました。(生存競争が激しい団体で)日本人が戦うところを世界にみてもらえるのはうれしいです」

次回ロウ大会ではNXT時代、ライバル関係にあったラケル・ロドリゲス、アリーヤ組とのWWE女子タッグ王座決定トーナメント決勝が決まった。まず女子タッグ王座獲得が近い目標になるものの、将来的にかなえたい夢がスカイの胸に秘められている。

「なぜ、ここ(WWE)にいるのか。イヨ・スカイでいるのか、と言えば頂点に立ちたいからです。もともと世界で一番すごい選手だと世界中に知ってもらいたいという思いで海を渡りました。日本では女子プロレス大賞MVPなどいろいろな賞をもらい、もう脂のり切ってイケイケ、バリバリでした。それを投げうってここでやっていこうと思ったのはWWEで1番になるためです。いずれロウ、スマックダウンのどちらかの王座を獲得したい。その意識は常にあります」

(後編につづく)【取材・構成=藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆イヨ・スカイ(紫雷イオ) 1990年(平2)5月8日、神奈川・鎌倉市生まれ。器械体操などを経験し、07年3月にプロレスデビュー。姉美央とともに「紫雷姉妹」として活動し、10年にはアスカ(当時は華名)とユニットを結成して自主興行も開催。11年に姉妹コンビ解消し、同年8月にスターダムに初参戦。同団体でワールド・オブ・スターダム王座を皮切りに5大王座を獲得し、同団体初のグランドスラムを達成。3年連続女子プロレス大賞MVPを達成後、18年5月にスターダムを退団。同年6月にWWEへ加入し、同年10月に女子トーナメント、メイ・ヤング・クラシック準優勝。同6月にWWE加入を表明。20年6月、NXT女子王座を獲得。21年7月にNXT女子タッグ王座も奪取(パートナーはゾーイ・スターク)。156センチ、47キロ。

◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルは日本時間9月4日午前にWWEネットワークでライブ配信

スマックダウン1200回記念大会をチケット購入で視察したイヨ・スカイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
8月からロウを主戦場にファイトしているWWEのイヨ・スカイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
9月3日の英スタジアム大会でアスカ(左上)組との日本人対決に臨むイヨ・スカイ(右中央)組(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

マッキンタイアが母国で英雄になれるか 30年ぶり英スタジアム大会で統一王者レインズに挑戦

宝剣を持ち、母国英国でWWEヘビー、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズ撃破に燃えるドリュー・マッキンタイア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第38回WWEの世界>

30年ぶりのWWE英国スタジアム大会クラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会が9月3日(日本時間4日)、英ウェールズのカーディフ・プリンシパリティスタジアムで開催される。英スコットランド出身の元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイア(37)がWWEヘビー、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズ(37)に挑戦する。過去PPVなどテレビマッチでシングル戦4戦全敗という苦手レインズから地元ビッグイベントで初勝利&統一王座獲得を狙う。

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20年4月、当時の王者ブロック・レスナーを下し、英国人初のWWEヘビー級王者となったマッキンタイアの夢がまた1つ実現する。

「子供の頃、レッスルマニアのメインイベントをはじめ、実現可能と思われるすべての大きな瞬間を夢見てきた。スコットランドからWWEに加入した時、誰も私が(WWE王座獲得などを)成し遂げることを信じていなかったはず。英国スタジアム大会は92年のサマースラム大会以後は開催しておらず、実現不可能とされてきた。これは私が王者になった時から各メディアに対して積極的に宣言し、実現に向けて追求してきたことだった」

熱い口調で米メディアのインタビューで感慨深く語ったマッキンタイアは開催に尽力したWWE関係者への感謝の気持ちも忘れていない。7万人以上が収容となる会場の前売りチケットは既に6万人分以上が売れたという。

「私自身の功績と認めたいと思うが、これらのことはWWEの裏方の英雄たちが実現してくれたことだ。もしチケットが売れなかったら、ファンは『マッキンタイアは間違っていた』と指摘するだろう。その責任は私にあったので、うまくいったことはうれしい。そして30年ぶりに開催される英スタジアム大会でWWEの王座を争っていることを誇りに思っている」

英ビッグイベントの成功はマッキンタイアのタイトル挑戦にかかっていると言えるが、統一王者レインズとの相性は良くない。19年4月のレッスルマニア35大会を皮切りにPPVなどテレビマッチで過去4度、シングル戦に臨んだが、全敗というデータが残る。しかも現在のレインズはユニバーサル王座に限れば700日以上も保持。過去2年間、フォール負けもない。過去の記録から劣勢が予想されるものの、コロナ禍でWWEヘビー級王者となったマッキンタイアの自信は揺るがない。

「あの困難な時期にWWEヘビー級王者になれたことを誇りに思う。模範となる王者になれてうれしく思った。英国のスタジアム大会で迎えた王座挑戦は私の人生で最大の機会になる」

92年のサマースタム大会(英ロンドン・ウェンブリースタジアム)のメインイベントは、英マンチェスター出身のブリティッシュ・ブルドッグ(デイビーボーイ・スミス)がインターコンチネンタル王座を獲得し、大成功を収めている。今回はマッキンタイアが、その役目を担う。統一王座をつかみ、ビッグイベントを盛り上げることができるか。必殺技クレイモア(ランニング式片足ドロップキック)のさく裂で母国の英雄になることを期待したい。【取材・構成=藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆ドリュー・マッキンタイア 本名アンドリュー・マクレーン・ギャロウェイ4世。1985年6月6日、英スコットランド・エア生まれ。15歳からプロレスを学び、03年に英国でプロデビュー。06年までインディー団体で活動後、07年にWWEと契約。14年に1度、WWEとの契約が終了。地元スコットランドを拠点とするICWを中心に活動。TNA、インパクト・レスリングなどに参戦後、17年にWWE再契約。20年のレッスルマニア36大会でWWEヘビー級王座を獲得。必殺技はクレイモア。196センチ、120キロ。

◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルは日本時間9月4日午前にWWEネットワークでライブ配信

故郷の英スコットランドでのイベントで存在感を見せるドリュー・マッキンタイア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
30年ぶりの英スタジアム大会成功のカギを握る元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
地元英国ビッグイベントでのWWEヘビー、ユニバーサル統一王座獲得を狙う元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

アスカ「イヨ(紫雷)を崖から落とす」30年ぶり英大会で日本人対決/インタビュー後編

WWE女子トップレスラーとして君臨するアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第37回WWEの世界>

約30年ぶりのWWE英国スタジアム大会クラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会が9月3日(日本時間4日)、英ウェールズのカーディフ・プリンシパリティスタジアムで開催される。「明日の女帝」ことアスカはロウ女子王者ビアンカ・ブレア、アレクサ・ブリスと組み、ベイリー、イヨ・スカイ(紫雷イオ)、ダコタ・カイ組と6人タッグで激突する日本人対決が決定。WWEトップを走り続けるアスカがCATC大会などで控えるスカイとの日本人対決への意気込みや後に続こうとする後輩レスラーにエールを送った。今回は日刊スポーツによるインタビュー後編となる。

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新リングネーム「イヨ・スカイ」として同じロウに昇格してきた元NXT女子王者紫雷とアスカは関係が長い。日本ではスカイの姉美央との3人でユニット「トリプル・テイルズ」も組んでいたほどだが、現在はアスカのライバル、ベイリーと行動を共にしている。

「何か、ベイリーの方にいくんや~、そっちいくんやと。こっちに対して、乱入や介入もしてくるし。はいはい、そっちがそっちならこっちもやらせてもらいますよ、という感じです。」と敵対心を感じるアスカは牙をむいてきた「妹分」との実力差を明確に口にした。「こっちはWWEメインロースター(トップブランド選手)で何年もやっていますから」。

一緒に行動する元ロウ女子王者アレクサ・ブリス、現ロウ女子王者ビアンカ・ブレアの名を挙げながら「3人ともずっとチャンピオンをやってきましたから。私はグランドスラム(WWE主要王座制覇)も取っていますし、経験もありますし、実力差、場数の違い、何千人、何万人の前でマイクパフォーマンスもしてきました。イヨちゃんに違いをみせつけてやろうかな」。上から目線のまま、不敵な笑みを浮かべた。

早速、22日(日本時間24日配信)のロウ大会で、アスカはブリスと組み、ダコタ・カイ、スカイ組とのWWE女子タッグ王座トーナメント準決勝を控える。「こんなに早くも戦うのかと思っています。ちょっと見せつけてやろうかなとも考えております。ベイリーがインタビューで『私の力を使ってイヨやカイの底上げをしたい』と話していましたが、私もその位置にきているのかなと感じています。イヨちゃん、ダコタちゃんがどういう育て方をされるのは分からないですが、私もベイリーとは違った育て方をしようかなと。崖から落として上がってこいという気持ちです(笑い)」とアスカ流でスカイを“育成”する方針だ。

現在、日本では次々と有望な女子レスラーが登場、台頭してきている。15年のWWE入りから約7年。「もしもWWEを目指すなら?」という視点で長く世界で戦う秘訣(ひけつ)を明かした。

「プライドを持ちすぎないことですかね。センスを磨くのはもちろん、プロデュースは自分でやらないといけないです。WWEに入る前はファイトスタイルを決められるとうわさで聞いていたのですが、全然なかったです。逆に欲しいぐらいでしたね。なので自分自身のセンス、表現、個性を築いていかないといけない。そしてNXTよりもロウ、スマックダウンの方がもっと個性、存在感が重要視されます。レスリングだけがいいのでは人気が出ない。もし『世界』を見ているなら、日本のプロレスが1番やと思ってこないほうがいい。米プロレスも学ぶつもりで来ないと試合したら『やばい、全然通用せえへん』と。応援してもらわれへんぞ、という感じになってしまいます」

92年のサマースラム大会以来、約30年ぶりとなる英スタジアム開催となるCATC大会を控える。王座戦以外で、すぐに決定したのはアスカ組-スカイ組の6人タッグ戦だった。現場を仕切るのはWWEが誇るレジェンド戦士トリプルHとなる。アスカは「すごく私に期待してくれていると思います。トリプルHの育てたスーパースターの成功例の1人が私やと思っていますから。思想、哲学も理解し、一緒にNXTもやってきました。トリプルHによる理想のWWEを作り上げるためにも全力でやりたい」とテンションは高い。

前現場責任者でWWEから完全引退したビンス・マクマホン前会長兼CEOにも感謝の気持ちが大きい。

「ビンス元会長はカリスマです。全選手が彼に認めてもらいたいという気持ちでずっとやっていました。私も(関西弁の)マイクパフォーマンスをやって、それをビンス元会長が笑っていた聞いてうれしかったですし。元会長の体制でグランドスラムや記録を達成したことは重要でした。新たトリプルH時代の幕開けで、新時代でも、後々語られる選手になるように頑張りたいです」

長引くコロナ禍で、19年を最後にWWEの日本大会は開催されていない。今回の30年ぶりの英スタジアム大会の盛り上げはWWEで恒例となっている世界ツアーを再開する大きな契機になる。アスカは「本当に日本で試合したいです。日本のWWEユニバース(ファン)に会いたいし、話もしたいし、試合も見てほしいです。今は残念ですけれど、英国大会では対戦相手にイヨちゃんもいますし、楽しみに。ただ日本人のどちらを(ファンは)応援するのという感じですけれど(笑い)。ぜひ見て欲しいなと思います」と笑顔。数多く組まれることが予想されるスカイとの日本人対決でも存在感を示していく決意を言葉に込めていた。(おわり)【取材・構成=藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

これまで獲得したWWE女子主要王座ベルトやマネー・イン・ザ・バンク女子ラダー戦で獲得したブリーフケースを公開するアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
次回ロウ大会でダコタ・カイ(左から3人目)、イヨ・スカイ(右端)組と対戦するアレクサ・ブリス(左端)、アスカ組(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
アレクサ・ブリス(左)と組み、WWE女子タッグ王座トーナメントに参戦中のアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

“明日の女帝”アスカ、WWE入りから7年「今は引っ張る気持ち」/インタビュー前編

発売中の自身のぬいぐるみを手に笑顔をみせるWWEアスカコピーライト2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第36回WWEの世界>

約30年ぶりのWWE英国スタジアム大会クラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会が9月3日(日本時間4日)、英ウェールズのカーディフ・プリンシパリティスタジアムで開催される。日本勢では「明日の女帝」ことアスカがロウ女子王者ビアンカ・ブレア、アレクサ・ブリスと組み、ベイリー、イヨ・スカイ(紫雷イオ)、ダコタ・カイ組と6人タッグで激突することが決定。WWE入りから約7年のアスカが日刊スポーツの取材に応じ、CATC大会への思い、左肩手術で9カ月間離脱した後の心境などを明かした。今回は前編となる。

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ラグビーのウェールズ代表の「聖地」と呼ばれる収容人数7万4500人の会場で、CATC大会が開催される。アスカは「観客が多ければテンションも高くなります。お客さんがバンバンが入っているのと、小規模会場とかでは全然違います。コロナ禍で無観客で試合していたこともあって実はそれも得意なのですが(笑い)、やっぱりブーイングでも歓声でも何かしら欲しいです」と英スタジアム大会の盛り上がりに大きな期待を寄せている。

18年4月、米ニューオーリンズで開催された年間最大の祭典レッスルマニア34大会で、アスカは初めてスタジアム大会を体験した。7万人超えとなったメルセデスベンツ・スーパードームで当時のスマックダウン女子王者シャーロット・フレアーと対戦。リングで耳にする歓声の違いを感じたという。

「初めての時は(ファンの)歓声がワンテンポ遅れてやってくるところがやりづらかったです。後からがーんとやってくる感じ。後で試合動画を見てから、こんなに声援がすごかったのだと感じた記憶があります。今は慣れて理解、想像した上で戦っていますね」

WWEの主力選手として何度も欧州ツアーに参加してきた。欧州の中でも英国のWWEファンの反応は好きだという。「めちゃくちゃ盛り上がってくれますね。すごく私が英国の人に好かれているのは分かります(笑い)。アスカチャント(コール)もありますし。うれしいな、と思っています」と笑顔をみせる。

英プロレスといえば歴史的に関節技などのテクニカルなスタイルが有名だ。アスカも得意技アスカロック(羽根折り式胴絞め裸絞め)、腕ひしぎ逆十字固めと関節技を駆使するファイトのため、共鳴する部分も多いようだ。さらに英国遠征時で楽しみにしているのが、独特な風味の朝食だという。「あの甘い豆とソーセージ、焼いたトマト、マッシュルームの組みあわせがメチャクチャおいしい。朝食だけは絶対に食べたいなあ」。

左肩負傷で昨年7月から約9カ月間、戦線離脱していた。同部の違和感は3、4カ月前からあり「ずっと我慢してやっていた」。MRI検査の結果、5カ所ほどの腱(けん)断裂が確認され、全治5カ月と診断された。NXT卒業直前の17年8月に右鎖骨骨折で約2カ月離脱した以降、長期欠場はなく、WWE内では「鉄人」とも呼ばれていた。WWEでの最長期間の離脱となり「ストレスになるんちゃうかなと思っていたのですが、それがならなかったです」と苦笑した。

「何なのか、ちょっと休みたいなあと思っていた。みんなに忘れられたら嫌やなという不安もありましたが、(試合に)出ずっぱりでプレッシャーとかいろいろなものがあって疲れていたというか。(WWEの主要女子王座をすべて獲得し)本当に全部取ってしまったはいいですが、あとはどうしようという時期もありました…。何を目標にしていいか分からなかったのですが、休んでから『こんなにリフレッシュしたか』という感じになりましたね」

今年4月25日、米ノックスビルで開催されたロウ大会でリング復帰した。ライバルとなる前スマックダウン王者ベッキー・リンチとにらみ合い、デコピンならぬ鼻ピンを放って挑発。ノリノリのダンスもみせながら「ワシがお前を止めてやる! 誰も私にはかなわない」と絶叫し、久しぶりとは思えないパフォーマンスをみせた。

アスカは「こんなに休んだことなくて、不安になりましたよ。練習と本番はホンマ違うじゃないですか。でも、やってみたら結構いけるなと思いました」と手応えを示した上で、現在の目標をこう掲げた。

「(現場がビンス・マクマホン前会長兼CEO体制から)トリプルH体制になりましたし、頑張っていくぞという気持ちでやってます。WWEを盛り上げていくぞ、と。今はWWE全体を引っ張っていく、ぐらいの気持ちです」(後編に続く)【取材・構成=藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルは日本時間9月4日午前にWWEネットワークでライブ配信

30年ぶりのWWE英国スタジアム大会への意気込みを示したアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
左肩負傷のため、約9カ月間の戦線離脱を経て今年4月にリング復帰したWWEアスカ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
9月3日のWWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルでは6人タッグ戦に出場するアスカ(左上段)(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

ロード・ウォリアーズ、デイビーボーイ・スミスら彩った92年英スタジアム大会を振り返る

8万人以上のファンの前でアピールするアルティメット・ウォリアー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第35回WWEの世界>

30年ぶりのWWEによる英国スタジアム大会クラッシュ・アット・ザ・キャッスル大会が9月3日(日本時間4日)、英カーディフ・プリンシパリティスタジアムで開催される。前回は前身WWF時代となる92年8月29日、英ロンドン・ウェンブリースタジアムで開催されたサマースラム大会だった。北米以外で初開催された最初のスタジアム興行は8万355人のファンが集結。日本でおなじみのロード・ウォリアーズが盛り上げ、デイビーボーイ・スミスことブリティッシュ・ブルドッグがメインイベントを締めくくった。

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第5回となった真夏の祭典サマースラム大会はWWF(現WWE)による世界進出第1弾イベントだった。中米、南米、欧州だけでなく、アジアなど日本のプロレス市場も意識したカードがそろった。ダークマッチ3試合を経て、テレビ放送が開始された第4試合にはホーク、アニマルによるロード・ウォリアーズがリージョン・オブ・ドゥームのユニット名でタッグ戦に出場した。

暴走族風バイクに乗って花道から入場したアニマルとホークの姿に、8万人以上のファンが熱狂。テッド・デビアス、I.R.S組と戦い、アニマルがデビアスをロープに投げてI.R.Sとの誤爆を誘発させた。よろめくデビアスを捕獲したアニマルがパワースラムでとどめを刺し、8万人のファンを総立ちにさせた。WWFタッグ王座戦には、元大相撲・琴天山(琴天太)で全日本プロレス入門したジョン・テンタがアースクエイクのリングネームでタッグ王者としてタイフーンと組んで出場し、確実に王座防衛を成功させた。

WWFヘビー級王座戦では90年から抗争が続いた王者ランディ・サベージ-アルティメット・ウォリアー戦が組まれた。試合のなかったリック・フレアーの介入でサベージが左足を負傷して敗退する波乱だった。セミファイナルでは怪奇VSアフリカン対決の異色対決が実現。「地獄の墓堀人」ジ・アンダーテイカーが、全日本プロレス参戦の初代ジャイアント・キマラことカマラと対戦。敵セコンド乱入でアンダーテイカーが反則勝ちした。

メインイベントのWWFインターコンチネンタル王座戦では、義理の兄弟が対決した。王者ブレット・ハートに義弟ブリティッシュ・ブルドッグ(デイビーボーイ・スミス)が挑戦。試合前、ハートの妹でブルドッグの妻ダイアナ夫人が複雑な心境を吐露し、心配そうにスタンドで観戦。ハートによる執拗(しつよう)な裸絞め、シャープシューター(サソリ固め)などをしのいだブルドッグがリバース式回転エビ固めで勝利を収めて王座を奪取した。

次々と花火が打ち上げられる中、ハート一族で繰り広げられた抗争はノーサイドに。勝者ブルドッグ、ダイアナ夫人、王座陥落したハートの3人が並んで8万人のファンの声援に応じる最高のフィナーレとなった。英マンチェスター出身のブルドッグがWWFインターコンチネンタル王座ベルトを獲得したことで、英国のプロレスファンも大満足の幕切れとなった。

30年の時を経て、22年9月、英国にスタジアム大会が戻る。ブルドックに代わり、英スコットランド出身の元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイアがWWEヘビー、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズに挑戦する。両者には30年前のメインイベントで繰り広げられた親族による「メロドラマ」はない。強者同士による好ファイトとなる。マッキンタイアが母国エースとしてのプライドを見せるか。700日以上最高位王座を保持してきた絶対王者レインズが王者の意地をみせるのか。

30年前、ブルドッグのセコンドには元WBA、WBC、IBF世界ヘビー級統一王者レノックス・ルイス(英国)がいた。マッキンタイアのセコンドに、WWE参戦経験のある現WBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(英国)がつくようなことがあれば、大きな話題となりそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆クラッシュ・アット・ザ・キャッスルの発表済みカード◆

☆WWEヘビー、ユニバーサル王座戦=王者ローマン・レインズ-挑戦者ドリュー・マッキンタイア

☆スマックダウン女子王座戦=王者リブ・モーガン-挑戦者シェイナ・ベイズラー

☆6人タッグ戦=ビアンカ・ブレア、アスカ、アレクサ・ブリス組-ベイリー、イヨ・スカイ(紫雷イオ)、ダコタ・カイ組

◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスルは日本時間9月4日にWWEネットワークでライブ配信

WWFヘビー級王座戦で王者ランディ・サベージ(左)と握手するアルティメット・ウォリアー(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFインターコンチネンタル王座戦で王者ブレット・ハート(左)と激闘したブリティッシュ・ブルドッグことデイビーボーイ・スミス(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFインターコンチネンタル王座戦で、王者ブレット・ハート(右)と握手するブリティッシュ・ブルドッグことデイビーボーイ・スミス(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
WWFタッグ王座に防衛したジョン・テンタことアースクエイク(左端)とタイフーン(右端)(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
公式発表8万355人の観客で埋まった英ロンドン・ウェンブリースタジアムでの92年サマースラム大会(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

デビュー20周年「神秘の王」レイ・ミステリオJr. 50歳現役の目標へ息子と亡き親友が力に

WWEデビュー20周年を迎えた「神秘の王」レイ・ミステリオJr.(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第34回WWEの世界>

「神秘の王」レイ・ミステリオJr.(47)が02年7月25日の初登場以来、WWEデビュー20周年を迎えた。身長168センチ、体重78キロの軽量級ながら08年以降はヘビー級にも参戦し、WWE王座も獲得。現在は息子ドミニク・ミステリオ(25)とタッグ戦線で活動中。次の目標は「50歳まで現役」を掲げるマスクマンはまだまだ健在だ。

◇  ◇  ◇

ロープを使った得意技の変形ブーメランキック「619」を武器にキャリア30年以上を誇る。47歳となった今も、ミステリオJr.はWWEトップレスラーとして躍動している。30日(日本時間31日)の真夏の祭典サマースラム大会(米ナッシュビル)ではドミニクと組み、フィン・ベイラー、ダミアン・プリースト組とのノーDQ形式(反則裁定なし)タッグ戦に臨む。人気選手としてのキャリアを歩みつづけているが、軽量級レスラーとしての体格差の影響で数多くの負傷も重ねてきた。

04年以降はヘビー級レスラーとも積極的に戦い、WWEヘビー級王座1度、WWE世界ヘビー級王座2度の計3度の最高位シングル王座を獲得してきた。インターコンチネンタル王座、USヘビー級王座、WWEタッグ王座も獲得し、WWEグランドスラムも達成してきたが、その「代償」も大きかった。

英BTスポーツのインタビューでは左ひざ前十字靱帯(じんたい)損傷で何度も手術を受けてきたことを明かした。「右(ひざ)は無傷だが、左(ひざ)は12回以上の手術を受けた。さらに上腕二頭筋を断裂し2度手術も受けている。この体のサイズで大柄な男たちに殴られているのだから」と告白している。

体重100キロを超えるレスラーたちと対等に戦うことへの肉体的負担は大きいに違いない。それでも「私のキャリアの中で最大の問題だったのはひざだけ」とも。「神は私を世話し、守ってくれた。背中や首は大丈夫なんだ」とWWEデビュー20周年を迎えられたことに安堵(あんど)した。現在も「引退の計画を立てたことは1度もない。ただ続けることが大切。50代が近づいてきた今、息子がプロレスをしている姿を見て、あと3年はやりたいと自分に言い聞かせる」と次なる目標として50歳現役を掲げた。

同じメキシコ系米国人としてWWEの人気スター選手だった親友の故エディ・ゲレロさんが05年11月、動脈硬化性疾患のために38歳で死去している。7月25日、米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催されたロウ大会でセッティングされたWWEデビュー20周年を祝うスピーチの際、ミステリオJr.は「エディ、あなたがいなければ、私はここにいなかっただろう。毎日、エディが恋しい。あなたがいつも見守ってくれていることは分かっている。ありがとう、エディ」と言葉を詰まらせた。

WWEでは当時7歳だったドミニクの親権を巡ってゲレロさんと抗争を繰り広げ、ラダーマッチで戦ったこともある。そのドミニクと組み、21年5月にはスマックダウン・タッグ王座を獲得し、WWE史上初の親子タッグ王者となった。亡き親友の分までミステリオJr.は現役を続けるに違いない。「50歳は超えたくない。でも気分が良かったら『もう1年いけるかな』とか、どうするか考えることになるだろう。今のところ、私の引退は常に50歳は超えないようになっているが」。何年たっても、神秘の王は輝き続ける。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆レイ・ミステリオJr. 本名オスカー・グティエレス・ルビオ。1974年12月11日、米カリフォルニア州チュラビスタ出身。メキシコ系米国人。叔父のレイ・ミステリオ・シニアからマスクとリングネームを引き継ぐ。89年4月にプロレスデビューし、AAA、WCWなどを経て、02年にWWEと契約。03年にWWEクルーザー級王座を獲得。04年にはロブ・ヴァンダムと組み、ケンゾー・スズキ、レネ・デュプリ組を下しWWEタッグ王座獲得。06年に男子ロイヤル・ランブル戦優勝し、WWE世界ヘビー級王座も獲得。09年にインターコンチネンタル王座初奪取。15年にWWE退団後、メキシコAAA復帰。18年には新日本プロレスにも参戦。同年10月にWWE復帰し、19年にはUSヘビー級王座を初奪取し、WWEグランドスラムを達成した。得意技は619。168センチ、78キロ。

息子ドミニク・ミステリオ(右)と組み、サマースラム大会でノーDQ形式タッグ戦に臨むレイ・ミステリオJr.(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.
マスク、コスチュームも多彩な「神秘の王」レイ・ミステリオJr.(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

ロングヘア、規格外の両腕の太さ…ロウ女子王者ビアンカ・ブレアとは

ロウ女子王座ベルトを掲げる王者ビアンカ・ブレア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved

<第33回WWEの世界>

長く束ねたロングヘア、規格外ともいえる両腕の太さ。WWEのビアンカ・ブレア(33)は昨年4月にスマックダウン女子王座を獲得し、今年4月にロウ女子王座を奪取。女子最高位となる両シングル王座を手にし「EST(最上級)」の愛称通りの活躍をみせている。

陸上競技と重量挙げで鍛えたパワフルな技を駆使し、WWE女子のトップ戦線の先頭を突っ走るブレアの近況に迫る。

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自ら「EST」を名乗るロウ女子王者ブレアは全身のシルエットだけでもインパクトがある。長いロングヘアを束ね、両腕の太さを筆頭に筋肉質な肉体の持ち主。まるで格闘ゲームのキャラクターのような存在感がある。注目されたのは21年1月の女子ロイヤルランブル戦(30人出場の時差式バトルロイヤル)だった。最後の1人に残って初優勝。最高位王座挑戦権を得たとともに、ザ・ロック(ハリウッド俳優ドゥエイン・ジョンソン)に次ぎ、2番目となるロイヤルランブル戦を制覇したアフリカ系アメリカ人レスラーとなった。

必殺技KOD(キス・オブ・デス)はパワフルそのもの。アルゼンチン式背骨折りのように相手を担ぎ、顔面からたたきつける開脚式フェイスバスターとなる。レスラーを軽々と持ち上げるパワーは陸上競技の障害走選手として活躍した下半身のバネ、そしてWWE入り直前、負傷するまで続けていた重量挙げで鍛えた両腕の力がバックボーンにある。ベンチプレスの記録もWWE女子トップ。17年のメイ・ヤング・クラシックでは2回戦でカイリ・セイン(現KAIRI)に敗れたものの、着実にプロレスへの順応性をみせ、WWE女子トップまで駆け上がってきた。

昨年4月のレッスルマニア37大会ではスマックダウン女子王者サーシャ・バンクス、今年4月の同38大会ではロウ女子王者ベッキー・リンチと年間最大の祭典で2度も王座奪取する爆破力を持っている。ブレアの次のターゲットとしてリング復帰間近といわれる女子最高位王座12度戴冠を誇るシャーロット・フレアーを指名。過去3度対決しているが、1度も勝利できていない。「女王様」に向けて「誰が(王座に)必要なものを持っているのか、誰が本当にもっともタフなのか実際に示したい」とやる気満々だ。

またフレアーとの対戦する舞台も「サウジアラビアより良い場所はありますか」と今年11月5日、リヤドで開催される予定のWWEクラウン・ジュエル大会での中東決戦を指定するなど女子王者としての貫禄がついてきた。デビュー当初から自ら「EST」を自称し、約7年間の時を経てWWE女子で最上級の存在になろうとしている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆ビアンカ・ブレア 1989年4月9日、米テネシー州ノックスビル生まれのアフリカ系米国人。テネシー大時代は陸上競技の障害走に没頭。その後、重量挙げ選手としても活躍したが、肋骨(ろっこつ)軟骨炎などの負傷が原因で引退。元重量挙げ選手で五輪出場の経験もあるWWEレジェンド、マーク・ヘンリーに誘われ、WWEのトライアウトに参加。16年に契約し、WWE傘下のNXTで活動。20年4月からスマックダウン昇格。21年1月に女子ロイヤルランブルを制覇。同4月のレッスルマニア37大会でスマックダウン女子王座獲得。今年4月のレッスルマニア38大会でロウ女子王座を獲得。18年にWWEのタッグ戦線で活動するモンテス・フォードと結婚。フォードの前妻との間に誕生した子供2人と家族4人で生活。170センチ、75キロ。

長く束ねたヘアと両腕の太さがトレードマークのロウ女子王者ビアンカ・ブレア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved
EST(最上級)が愛称のロウ女子王者ビアンカ・ブレア(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved

フォロワー92万人を誇る女子格闘家ルレダがWWEと契約「本当に興奮。世界を楽しませる好機」

WWEと契約した人気総合格闘家ヴァレリー・ルレダ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第32回WWEの世界>

WWEがインスタグラムで92万人のフォロワーを持つ人気女子格闘家ヴァレリー・ルレダ(23=米国)と選手契約を結んだ。キューバ系米国人で米総合格闘技ベラトールを主戦場にしていたが、4月と5月にWWEパフォーマンスセンターでのトライアウトに参加。6月30日(日本時間7月1日)に正式に契約を結んだことが発表された。WWEでは登録者2350万人を誇る人気ユーチューバーでプロボクサーのローガン・ポールとも契約を結ぶなどSNSの人気者たちを次々とリングに迎えている。

◇  ◇  ◇

総合格闘技で4勝1敗の成績を残したルレダがWWEに新加入した。SNSのインフルエンサーであり、女優であり、モデルでもある人気ファイター。「(契約は)とてもうれしい。何よりも(WWEパフォーマンスセンターにある)オーランドにもうすぐ引っ越して本当の旅をスタートできます。それを発表できることに興奮しています」。24歳となる7月19日にパフォーマンスセンターへ入門し、本格的なトレーニングを開始する予定だ。

もともとプロレスにあこがれを抱き、WWEのシャーロット・フレアー、元UFC女子バンタム級王者でもあるロンダ・ラウジーの大きなファンだった。今年4月に開催されたWWE年間最大の祭典レッスルマニア38大会を招待された際、イベント全体のムードに感激し、WWE入りに気持ちが傾いたそうだ。「本当に興奮している。私のカルチャーを紹介し、世界を楽しませる好機です。WWEと契約した最初のキューバ系米国人になりました。それは私の運命で、今が私の時間なのです」。

19年2月の総合格闘技デビューから5試合でインスタグラムで92万人のフォロワーを獲得したのはルレダの自己プロデュース力のたまもの。ケージ(金網)での勝利後のダンスは炎上気味に目立つ。その美貌とスタイル、筋肉美を強調する水着ショットなどで、ファンを次々と増やしてきた。この人気格闘家を簡単に手放したくないベラトールのスコット・コーカー代表も「ルレダは引き続き、現役格闘家でベラトールと契約している。近い将来、彼女をケージに戻すことを楽しみにしている」と強調するほどだ。

10代後半テコンドー米国代表としてオリンピック出場を目指しながらも、母ミラグロスさんが急性骨髄性白血病となったために断念。「母が病気になった時、私たちの人生すべてが一時停止した」。母の看病、ナタリー、フランチェスカの妹2人の生活を支える役目を担った苦労人でもある。17年に母が骨髄移植によって完治したことを受け、総合格闘技への挑戦が可能となっていた。

WWEとは複数年契約を結んだ。年内にはWWE傘下のNXTでデビューし、1年以内にロウ、スマックダウンに昇格することが目標だという。「私には大きな目標がある。WWEで何ができるかは分かっている」。ルレダによるプロレスラーとしての挑戦が始まる。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆ヴァレリー・ルレダ 1998年7月19日、米フロリダ州マイアミ生まれ。フロリダ国際大卒。テコンドー道場を運営していた父フランクさん、テコンドー黒帯の母ミラグロスさんの影響でテコンドーの道へ。並行してダンスも習う。20年8月に米総合格闘技ベラトールと契約を結び、女子フライ級で活躍。愛称はマスター(ミスMMA)。家族は両親と妹2人の5人家族。168センチ、56・7キロ。

総合格闘技ベラトール参戦時のヴァレリー・ルレダ(ルレダのインスタグラムより)

人妻となった「小悪魔」ブリスと大人の香り漂わせてきた「カワイイ系」モーガンが合体で新コンビ

新タッグをスタートさせた「小悪魔」アレクサ・ブリス(左端)と「かわいい系」リブ・モーガン(右端)(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<第31回WWEの世界>

WWEに新たな女子タッグチームがスタートした。人妻となった「小悪魔」アレクサ・ブリス(30)、大人の薫りを漂わせてきた「かわいい系」リブ・モーガン(28)が緊急合体。早速、タッグ初戦で快勝するなど好発進した。米専門メディアによると、ブリス、モーガン組として女子タッグ戦線に殴り込みをかけることになるという。WWEファンからも歓迎された新コンビが注目されている。

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6月13日のロウ大会(米カンザス州ウィチタ)でブリス、モーガン組が本格的に始動した。ドゥドロップ、ニッキー・A・S・H組と対戦して勝利。この白星で2人は7月2日に米ラスベガスで開催されるプレミアム・ライブ・イベント(旧PPV)のマネー・イン・ザ・バンク(MITB)大会で組まれたMITB女子ラダー戦出場権も獲得していた。

6選手が出場(予定)し、ラダーによじ登り、リングの天井につるされた王座挑戦権利証入りブリーフケースをゲットするMITBラダー戦。新タッグで出場権を手にしたブリス、モーガン組はWWE製作の番組「ロウ・トーク」にそろって出演し、友好的なジョークを交えながらライバル心をのぞかせた。モーガンは「私はブリスとチームを組むのが楽しいが、ブリーフケースをつかむつもりなので、あなたの友人にはなれないわ」と言えば、ブリスも「それ(ブリーフケース)は私のもの。私へのプレゼントだから、ごめん」と笑顔をみせながらお互いに健闘を誓い合っていた。

WWEファンの間でもブリス、モーガン組の可能性について話題になっており、早くもSNS上でタッグチーム名も議論されているほどだ。WWE女子タッグ王者だったサーシャ・バンクス、ナオミ組の無期限活動停止処分の影響で女子タッグ王座は空位の状態。女子タッグ王座トーナメント開催も計画され、正式決定すれば新タッグがエントリーされることは間違いないだろう。

30歳になった「小悪魔」ブリスは今年4月、婚約者の歌手ライアン・カブレラと結婚式を挙げた。古傷の鼻骨6カ所を手術を受け、コンディションを整えている。ロウ女子王座3度、スマックダウン女子王座2度、WWE女子タッグ王座2度獲得。18年MITB女子ラダー戦覇者でもある。タイトル獲得の経験がないモーガンにとってはブリスの存在こそが大きな刺激、プラス材料になるだろう。

WWEで人気の高い「小悪魔」と人気上昇中「かわいい系」の融合が、どのような化学反応を起こすのか。まずは来月の注目イベントで控えるMITB女子ラダー戦に出場するブリス、モーガンの動向から目が離せない。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)