24年ぶり大技決めた炎鵬「何起こった」十両V視野

<大相撲春場所>◇9日目◇22日◇東京・両国国技館
幕内復帰を目指す人気小兵の東十両4枚目炎鵬(26=宮城野)が、十両では24年ぶりとなる大技「つり落とし」を決めた。
自身より66キロ重い西十両筆頭の天空海を持ち上げ、豪快にたたきつけた。7勝目を挙げて勝ち越しに王手。十両では、1997年(平9)春場所3日目に舞の海が決めて以来の決まり手で国技館内を沸かせた。幕内の優勝争いは、小結高安が勝ち越し第1号となり、1敗でトップを守った。
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炎鵬が、また魅せた。懐に潜って右前まわしをつかみ、深い位置で取った左下手で振ると、相手を左肩に乗せた。168センチ、98キロの小兵が182センチ、164キロの巨漢を持ち上げ、土俵にたたきつける。多彩な技を駆使する炎鵬でも「何が起こったのか分からなかった」と未知の体勢だった。「相手のおなかしか見えなかった。つられたことしかないので、つるのは初めての体験。気持ち良かった」。5歳で相撲を始めて20年超。稽古場でも決めたことのない大技を繰り出し「ひとつ引き出しが増えた」と満足げだった。
“人気小兵対決”に敗れた悔しさが、1日たっても収まらなかった。前日8日目に幕内経験者の業師、宇良に敗戦。土俵際までもつれたが、相手の圧力に屈した。「悔しい。昨日帰ってから悔しさがひしひしと込み上げてきた」。鬱憤(うっぷん)を晴らすような一番で仕切り直した。
1場所での幕内復帰を目指した1月の初場所前に、同部屋の横綱白鵬が新型コロナウイルスに感染。濃厚接触の可能性があるとして休場を余儀なくされたが、気持ちを整理する時間になった。「気持ちが楽になった。十両から出直して、また幕内に上がれるように。昔の自分を超えられるように稽古してきた」。
2敗を守って単独トップに浮上。初の十両優勝が視界に入ってきた。「終わってみて、そうなれれば」。ファンが待つ幕内の土俵を目指す26歳は、色気をちらつかせた。【佐藤礼征】
◆つり落とし つり上げた相手を土俵外に運ばず、土俵の中で落として倒す技。相手を後ろから抱え上げて、土俵の中か外で落とした場合もつり落としになる。十両では97年春場所3日目に舞の海が智乃花に決めて以来。幕内では17年初場所初日に嘉風が千代翔馬に決めたのが最後。決まり手が68手に制定された55年5月以降、十両以上では35回目の登場となった。「東北の暴れん坊」の異名をとった元関脇陸奥嵐が最多6回。
- 天空海(右)を持ち上げ土俵際に追い込む炎鵬(撮影・河田真司)
- 天空海(後方)を吊り落としで破る炎鵬(撮影・鈴木正人)